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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-11
(45)【発行日】2022-04-19
(54)【発明の名称】計数装置
(51)【国際特許分類】
   G06M 7/00 20060101AFI20220412BHJP
   G01V 1/00 20060101ALI20220412BHJP
【FI】
G06M7/00 301P
G01V1/00 A
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018041605
(22)【出願日】2018-03-08
(65)【公開番号】P2019159450
(43)【公開日】2019-09-19
【審査請求日】2020-12-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100127111
【弁理士】
【氏名又は名称】工藤 修一
(72)【発明者】
【氏名】菅原 智明
(72)【発明者】
【氏名】近藤 玄章
(72)【発明者】
【氏名】小田切 瑞樹
(72)【発明者】
【氏名】有住 夕子
【審査官】平野 真樹
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-244159(JP,A)
【文献】特開平11-306313(JP,A)
【文献】特開2012-253405(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06M 1/00-15/00
G01V 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可聴域外の周波数の音波を発生する面状発射体と、
所定の受信領域内に生じた前記音波の強度を測定する複数の指向性受信機と、を有し、
前記複数の指向性受信機の前記受信領域は、少なくとも一部が重複して配置されることを特徴とする計数装置。
【請求項2】
請求項1に記載の計数装置において、
前記面状発射体と、前記指向性受信機とは対向して配置され、
前記面状発射体と、前記指向性受信機との間を通過した被測定物を検知することを特徴
とする計数装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の計数装置において、
隣接した前記受信領域の信号同士の整合性を確認する通過検知部を有することを特徴と
する計数装置。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか1つに記載の計数装置において、
前記指向性受信機は、前記面状発射体の上方に取り付けられていることを特徴とする計数装置。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れか1つに記載の計数装置において、
前記面状発射体は、圧電性を有するフィルム状の超音波トランスデューサであることを特徴とする計数装置。
【請求項6】
請求項1乃至の何れか1つに記載の計数装置において、
前記面状発射体は、互いに対向して配置された一対の電極と、前記一対の電極の間に配置された中間層と、を有し、
前記中間層は、少なくともシリコーンゴムを含んだ材料で構成され、
当該中間層の前記電極と対向する側の面は、コロナ放電による表面改質処理がなされたことを特徴とする計数装置。
【請求項7】
請求項に記載の計数装置において、
前記面状発射体は、前記中間層の前記表面改質処理がなされた側の面のうち、少なくとも1方と、前記電極との間に形成された空隙部を有することを特徴とする計数装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、計数装置に関する。
【背景技術】
【0002】
所定の範囲内における歩行者等の移動体の通過を検知するための計測方法としては、光学カメラやマトリックス状のフットスイッチ等を用いる方法が知られている(例えば特許文献1、2等参照)。
【0003】
このようなマトリックス状のフットスイッチによる方法では、例えば通過したものが、人物なのか物品なのかの区別をつけることが非常に困難であり、また光学カメラによる画像認識は、精度が向上するものの個人情報保護の観点から不特定多数の継続的な撮影が難しいという問題がある。
そこで、例えば音波の反射を用いて、個人の識別をすることなく、通過だけを計測する方法が考えられている(特許文献3等参照)。
しかしながら、このような測定方法では、基本的には狭い面積、あるいは各点での反射を積算することになるため、精度を向上させるためには非常に煩雑なデータ処理が必要となってしまう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記に鑑みてなされたものであって、簡易な構成による移動体の計数測定を可能とする計数装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の計数装置は、可聴域外の周波数の音波を発生する面状発射体と、所定の受信領域内に生じた前記音波の強度を測定する複数の指向性受信機と、を有し、前記複数の指向性受信機の前記受信領域は、少なくとも一部が重複して配置されることを特徴とする
【発明の効果】
【0006】
本発明の計数装置によれば、簡易な構成による移動体の計数測定を可能とする計数装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明にかかる計数装置の概略構成である。
図2図1に示された計数装置の測定範囲の構成例を示す図である。
図3図2に示された動作による測定結果の一例を示す図である。
図4】計数装置の指向性マイクから得られた通過人数の一例を示す図である。
図5図4に示された通過人数と、通行人の移動との対応関係を模擬する図である。
図6】計数装置の指向性マイクから得られた測定結果の他の一例を示す図である。
図7図6に示された測定結果から推定される通過人数の一例を示す図である。
図8図1に示された計数装置の構成例を示す図である。
図9図1に示された計数装置の受信領域の構成の一例を示す図である。
図10図1に示された面状発射体の第1の実施例を示す図である。
図11図1に示された面状発射体の第2の実施例を示す図である。
図12】計数装置の比較例1を示す図である。
図13】計数装置の比較例2を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明に係る計数装置、及び当該計数装置を用いた通行者の計数方法の第1の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0009】
計数装置100は、図1に示すように、複数の被測定対象たる通行人Pが通過する床下に面状に形成された超音波を発生する超音波発生体たる面状発射体20と、超音波の強度を測定する指向性受信機たる指向性マイク30A、30B、30Cと、を有している。
計数装置100は、かかる指向性マイク30A、30B、30Cからの信号を確認して通行人Pの通過を検知するための通過検知部40を有している。
なお、図1においては3つの指向性マイクを配置しているが、1つ以上であれば良い。
ここで、『超音波』とは人の可聴域外の周波数の音波を指している。面状発射体20は、照射面積が広く、音波の波長が短い方が音波の指向性が強いことが一般的に知られている。そのため本実施形態では特に可聴域よりも高い周波数帯域の超音波を用いる。
【0010】
面状発射体20は、超音波生成手段であり、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)を用いた圧電性を有するフィルム状の超音波トランスデューサである。なお、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)を用いることとしても良い。
【0011】
面状発射体20は、通行人Pが通過する床下に設置されており、上方へ向けて一様に超音波を発信している。
【0012】
指向性マイク30A、30B、30Cは、図1に破線で示すように、所定の立体角内の特定の波長の音波の強度を検知するための指向性を備える集音器であり、面状発射体20側に集音側を向けて配置されている。
言い換えると指向性マイク30A、30B、30Cとは、何れも図1に一点鎖線で示す立体角θを頂角とする円錐状の受信領域31を有し、受信領域31内に生じた音波の強度を計測する指向性受信機である。
すなわち、指向性マイク30A、30B、30Cによって、面状発射体20の発する超音波の強度が測定される。
【0013】
かかる構成を用いて通行人Pの数を計測する計数方法について説明する。
まず、通行人Pがいないとき面状発射体20の発する超音波は、指向性マイク30A、30B、30Cによってそれぞれ計測され、所定の強度で超音波波形が検知される。
受信領域31内に通行人Pがいるときには、図1に破線で示すように、超音波の通らない『影』となる部分が生じるから、影の面積に応じて指向性マイク30A~30Cに検知される超音波の強度が減少する。
【0014】
ここで、説明を簡単にするために、図2(a)~(c)に示すようにまず単一の指向性マイク30Aを用いて、1人の通行人Pが受信領域31外から受信領域31を横切って通過するような場合を計測する。
図3は、通行人Pがかかる動作を行ったときの指向性マイク30Aの検知した超音波の強度の変遷の計測結果例を示している。
通行人Pが受信領域31にいないときには、指向性マイク30Aは、受信領域31内で生じた超音波を全て計測可能な状態である。
すなわち、面状発射体20から生じる超音波の強度を一定に維持すれば、指向性マイク30Aによって計測される超音波の強度も図3に(a)で示したように一定の最大値をとる。
次に、通行人Pが受信領域31内に向かって移動する場合には、図2(b)に示すように、過渡的に通行人Pによって面状発射体20から生じる超音波が遮られていくため、図3に(b)で示したように、指向性マイク30Aによって検知される超音波の強度は時間と共に減少していく。
【0015】
更に通行人Pが受信領域31に入ると、通行人Pによって生じる影の面積となるから、通行人Pが遮る超音波が一定量になって図3に(c)で示すように維持される。
通行人Pが受信領域31を出ていくときには、上述した状態から逆順を通り、また指向性マイク30Aの検知する超音波の強度は初期の最大値に戻ることとなる。
このように、受信領域31を1人の通行人Pが通過する時、図3(a)~(c)に示すように指向性マイク30Aの検知する超音波の強度は、2段階のステップ状に変動する。
【0016】
同じように、2人の通行人Pが受信領域31を通過する場合には、指向性マイク30Aが受信可能な超音波の強度は、過渡的な部分を省くと、図4図5(a)~(c)に示すように、0人がいる状態、1人のみ入った状態、2人とも入った状態、の3段階のステップ状に変動する。
これらのステップそれぞれの強度の値は、受信領域31の広さと通行人Pのサイズによって定まり、予め測定しておくことができるため、比較的容易に人数を把握することが可能である。
同様に、通行人P以外の例えば車椅子、子供、キャリーケース等の切り分けについても、階段状に変化する強度の値と通行人1人当たりによって生じる影の量の比から、通過した対象の大きさを凡そ推しはかることができる。
【0017】
このように、予め通過する可能性のある被対象物について、指向性マイク30Aの検知する超音波の強度にどの程度影響を与えるかについて測定しておくことで、より高精度に対象が通過したこと及びその数を検知することができる。
【0018】
本実施形態の計数装置100は、超音波を発生する面状発射体20と、所定の受信領域31内に生じた超音波の強度を測定する指向性マイク30Aと、を有している。
かかる構成により、簡単な構成で受信領域31内を通過する対象物をもれなく検知することができる。さらに、画像を用いてないため、個人としての特定を行うことが無く、プライバシーの問題を回避できる。
【0019】
また本実施形態では、被対象物たる移動体としての通行人Pは、指向性マイク30Aと、面状発射体20との間を通過する。
このように透過型の超音波測定方法を用いることにより、従来の超音波を発してその反射波から移動体の位置を推定する方法よりも多重反射や周囲の騒音などのノイズに対して強く、S/N比が良いから、精度よく通行人Pを検知することが可能である。
【0020】
かかる構成を用いて、さらに複数の受信領域31を跨いでのデータ処理について説明する。
図6(a)、(b)は、何れも指向性マイク30Aの受信領域31Aを何かが通過した時のデータの変遷例を示している。
横軸は時間変化を、縦軸は指向性マイク30Aが受信した音波の強度を示しており、縦軸の数値は一例として大人1人が通過した時の減衰量を1.0としている。
さて、図7(a)に示したケースAのように、仮に大人の通行人Pが受信領域31の端部を歩いた場合に、体の半分だけが受信領域31Aを通過した場合には、図6(a)に示したように減衰量は0.5となると考えられる。
【0021】
しかしながら、同じ通行人Pが図7(b)のように受信領域31Aの真ん中を通過した場合には、図6(b)に示したように減衰量は1.0となる。単一の受信領域31のみを用いるのでは、例えば形状の差による受信感度の減衰量と、位置の差による受信感度の減衰量とを混同してしまう場合があると考えられる。
【0022】
しかしながら本発明のように、複数の受信領域31Aと受信領域31Bとを用いて、通過検知部40がかかる複数の受信領域に跨る信号の整合性を取るように通行人Pの数を検知することで、かかる混同を防ぐことが可能である。
例えば図8に示したような場合には、受信領域31Aにおいては通行人Pは体半分だけが通過するから図6(a)のように減衰量は0.5になるが、受信領域31Aと隣接する受信領域31Bにおいては、通行人Pの体全体が受信領域31Bを通過するから、減衰量は1.0となる。
【0023】
そこで本実施形態の計数装置100では、かかる指向性マイク30A、30B、30Cを複数列、例えば3行3列のマトリクス状に配置することがより望ましい。
図9は、このようにマトリクス状に配置された9つの指向性マイク30Aa~Ccが形成する3行3列の受信領域31Aa~31Ccを模式的に示した図である。なお、説明を簡単化するために正方形の受信領域としたが、かかる形状に限定されるものではなく、また互いに一部重複した部分を有していても良い。
【0024】
図6から明らかなように、3行3列の受信領域31Aa~31Ccにおいて、例えば受信領域31Aa、受信領域31Baのように互いに隣接する受信領域31同士に0.5ずつの減衰量が検知されたときには、通過検知部40は、たとえ0.5ずつの信号しか検知されなくとも、通行人Pが大人1人であることを推定可能である。
そこで、通過検知部40は、かかる複数の受信領域31Aa~31Ccの信号を用いて、通行人Pの数を検知する。
かかる構成とすることで、さらに精度よく通行人Pを検知することが可能である。
【0025】
また、減衰量が0.5となるような子どもが2人並んで歩いてるような場合には、2人が完璧に同期して歩くことは難しいと考えられるため、受信領域31Aaと受信領域31Baとに検知される信号に、時間的なずれが生じる。通過検知部40は、このように受信強度のみならず時間経過とともに変化する受信強度についても併せて整合性を取るように判断することで、より精度を向上させることができる。
【0026】
さらに、多数の通行人Pが様々な方向に移動した場合には、かかる複数の受信領域における減衰量の数値の組み合わせとして扱うこともできる。
結果的に、このように複数の指向性マイク30Aa~Ccを用いたときには、画素数がかかる指向性マイク30Aa~Ccの受信領域31Aa~Ccに対応し各画素の画像強度がステップ状に変化するモノクロ動画と同様の扱いによって、通行人Pの数を検知することができる。
また、少なくとも一部が重複するように、円形の受信領域31Aa~31Ccを設定するとすれば、隣接する受信領域31Aaと受信領域31Baと、等から得られる信号から複合的に通行人Pの数を判断できるから、より精度よく通行人Pの数を推定することができる。
【0027】
さて、このような構成の計数装置100を用いた具体例として、面状発射体20に下記に実施例1、実施例2として示すような積層型の超音波素子を用いた場合について挙げる。
【0028】
なお、指向性マイク30として日本セラミック製の防滴型超音波センサ(PR40-18)と筒状の部材とを用いて指向性のコントロールを行い、3行3列のマトリクス状に複数の受信領域31を、面状発射体20の上面側に形成した。受信領域31はそれぞれ遮蔽版で覆いながら各受信領域のサイズを測定して、直径1.5mの円形の受信領域を形成するように、指向性マイク30の筒状部材の長さを調整されている。
【0029】
指向性マイク30は、受信領域31から高さ4mの位置に吊り下げられており、全部で9つが配置されている。
通行人Pは、かかる受信領域31上をランダムに歩行し、皆大人であって受信領域31に全身が入った状態において、受信強度の減衰量は1.0であるとする。
【0030】
(実施例1)
実施例1に用いた面状発射体20の構成について述べる。
まず、ベース材料となるシリコーンゴム(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製)に添加剤としてチタン酸バリウム(和光純薬株式会社製)を混合し、平均厚み150±20μm、幅120mmでPETフィルム上にロールコートを実施する。
かかる混合物を、120℃で5分間の連続加熱を行うことで、中間層前駆体を得る。
中間層前駆体を印加電圧:100V、積算エネルギー30J/cm2、雰囲気:空気、の環境下でコロナ放電処理を行う表面改質処理を行う。
表面改質した後、かかる処理面にオプツールDSX(ダイキン工業株式会社製)をパーフルオロヘキサンで希釈した0.1%溶液を引き上げ速度10mm/minのディッピング工法にて塗布する。その後、相対湿度90%、温度60℃の環境下で30分間以上保持し、50℃で10分間の乾燥処理を行い、不活性処理を行った。
【0031】
最後に、PETフィルムを剥離することで、図10に示すように、面状発射体20の中間層25が形成される。かかる中間層25の両面には、前記表面改質処理と、前記不活性処理とによって形成された改質面25aが形成されている。また、改質面25aの外側には、第1の電極26a、第2の電極26bとして、平均厚み12μmのアルミニウムシートが貼り付けられている。第1の電極26aと、第2の電極26bとには40kHzのアンプが接続されており、電圧を印加することで面状発射体20は超音波発射体としての機能を有している。
つまり第1の電極26aと第2の電極26bとは互いに対向する一対の電極であり、当該電極の間に中間層25が挟持された態様で面状発射体20が構成されている。
かかる構成の面状発射体20を用いることにより、電圧印加時に逆圧電的な動作を示すこと、大面積化が容易であることから、より広い範囲において移動体の計測が可能となる。
また、上述したようなコロナ放電による処理等の表面処理(特許文献1等参照)を行うことにより、面状発射体20に電圧を印加した時に生じる音圧を向上させることができる。かかる構成により、超音波に対応した数ボルトレベルの交番電圧を面状発射体20に印加することで、指向性マイク30で受信するのに十分な音圧が発生するようになる。
【0032】
(実施例2)
次に実施例2に用いた面状発射体20の構成について述べる。
実施例2においては、図11に示すように、中間層25は実施例1と同一であるが、中間層25と、第1の電極26aとの間に、導電布テープ27(星和電機社製)が5mm幅で張り付けられている。
これにより、導電布テープ27と第1の電極26aと中間層25とによって囲まれた空間に、5mm幅、0.12mm厚の空隙層28が形成されている。
すなわち、本実施例2において面状発射体20は、『中間層25の表面改質処理がなされた側の面のうち、少なくとも1方と、電極との間に形成された空隙部28を有している』。
かかる構成により、第1の電極26aと中間層25の表面処理面との間において交番電圧により、電気的に引き合ったり、第1の電極26aの弾性で元に戻ったり、電気的に戻ったり、様々な理由によって振動を繰り返すこととなる。
なお空隙部28がなくとも、このような振動は生じるが、空隙部28が第1の電極26aと中間層25との間にあることによって、面状発射体20の振動が、より空気の振動として伝わりやすく(≒音波を生じやすく)なるため好ましい。
さらに、かかる空隙部28は両面にあっても良いが、一方の空隙部28で生じた音波が他方の空隙部で共鳴吸収される虞もあるため、最も振動のための変位が大きく生じやすい側の面だけに空隙部28を設けることが最も好ましい。
【0033】
かかる実施例1、実施例2に加えて、図12図13に示すように、反射型の超音波センサ200を9つ用いた例を比較例1とし、反射型の超音波センサ200を30個用いて受信領域を細かく設定した場合の例を比較例2とする。
それぞれの実施例における正しい通行人Pの数を通過人数とし、それぞれの実施例・比較例を用いて受光範囲31を通過したと判断された通行人Pの数についてそれぞれ表1に示す。なお、かかる実験においては、通行人Pは皆大人で全身が受信領域31に入ったとき1.0の減衰量となり、左から右へ通過するものとして、初期の配置はランダムである。また、表1は通過する通行人Pは全て大人サイズとして人数を変えて12回測定した結果である。
【0034】
【表1】
【0035】
表1から明らかなように、実施例1、2では比較例と比べて通行人Pの数が精度よく検知されることがわかる。
反射型の超音波センサ200を用いた場合には、特に比較例1では、減少誤差人数が多いことから、超音波センサ200の個数が少なすぎて、本来検知せねばならない通行人Pが抜けてしまっているものと考えられる。
しかしながら、かかる比較例1の結果を基に、超音波センサ200の数を比較例2のように増やしただけでは、減少誤差人数は抑えられるものの、増加誤差人数までもは抑えることができない。これは、多くの超音波センサ200を用いただけでは、指向性が低いために互いの受信領域において生じた反射音までも検知してしまうためと考えられる。
【0036】
そこで、本発明の実施形態においては、床側に面状発射体20を配置し、上方に指向性マイク30を複数配置することにより、簡単な構成で床上を移動する通行人Pの数を精度よく検知することができる。
さらに、かかる受信領域の少なくとも一部が重複するように配置することで、より精度よく通行人Pの数を検知することができる。
【0037】
以上、本発明に係る実施形態について説明したが、本発明は、上述の各実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上述の実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに異なる実施形態や変形例を適宜に組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0038】
20 面状発射体
30 指向性受信機(指向性マイク)
31、31A、31B、31C 受信領域
40 通過検知部
100 計数装置
P 被測定物(通行人)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0039】
【文献】特開2016-103967号公報
【文献】特許第3218521号公報
【文献】特許第2963236号公報
【文献】特許第2938907号公報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13