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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-11
(45)【発行日】2022-04-19
(54)【発明の名称】温度検知センサおよび温度測定装置
(51)【国際特許分類】
   G01K 7/22 20060101AFI20220412BHJP
【FI】
G01K7/22 J
G01K7/22 L
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018045608
(22)【出願日】2018-03-13
(65)【公開番号】P2019158596
(43)【公開日】2019-09-19
【審査請求日】2020-12-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100127111
【弁理士】
【氏名又は名称】工藤 修一
(72)【発明者】
【氏名】梁田 敏雄
(72)【発明者】
【氏名】橋口 雅史
(72)【発明者】
【氏名】福島 安秀
(72)【発明者】
【氏名】鷹尾 幹彦
【審査官】平野 真樹
(56)【参考文献】
【文献】実開昭56-051042(JP,U)
【文献】特開昭62-121324(JP,A)
【文献】特開平09-243468(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01K 1/00-19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
温度検出素子および保持部材およびケースを有する温度検知センサであって、
前記温度検出素子は、素子本体部と、該素子本体部に接続された複数のリード線と、前記素子本体部を封止する熱伝導性の封止材による封止部と、を有し、
前記保持部材は低熱伝導性で、前記温度検出素子を保持し、
前記ケースは、前記保持部材を介して前記温度検出素子をケース内部に保持し、前記封止部用の開口と、前記リード線の引き出し用の開口と、前記引き出し用の開口の開口径が、前記封止部用の開口の開口径よりも小さくなる断面形状とを有し、
前記保持部材は、保持した前記温度検出素子の前記リード線が前記引き出し用の開口から引き出され、且つ、前記封止部の少なくとも一部が前記封止部用の開口側に前記保持部材から露呈するように、前記ケースの内側に嵌り合って固定的に設けられ
前記ケースの内周面の前記断面形状は、前記保持部材が、少なくとも前記引き出し用の開口の側へ変位するのを防止するように1以上の段差を有することを特徴とする温度検知センサ。
【請求項2】
請求項1記載の温度検知センサであって、
前記封止部は高熱伝導性であり、前記保持部材は断熱性である温度検知センサ。
【請求項3】
請求項1または2記載の温度検知センサであって、
前記封止部および、前記保持部材と前記ケースの、少なくとも前記封止部側の部分は耐薬品性である温度検知センサ。
【請求項4】
請求項1ないし3の何れか1項に記載の温度検知センサであって、
前記保持部材が弾性体であり、収縮状態で前記ケース内部に設けられている温度検知センサ。
【請求項5】
請求項1ないし4の何れか1項に記載の温度検知センサであって、
前記ケースの外周面が円筒状であり、この円筒状の外周面に、センサ装着構造を有する温度検知センサ。
【請求項6】
請求項1ないし5の何れか1項に記載の温度検知センサであって、
前記温度検出素子の複数のリード線が接続される電極を有し、該電極が前記保持部材および前記ケースの少なくとも一方に固定される温度検知センサ。
【請求項7】
請求項1ないし6の何れか1項に記載の温度検知センサを用いる温度測定装置
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は温度検知センサおよび温度測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
温度測定は種々の産業分野で不可欠であり、温度測定のためのセンサである「温度検知センサ」も従来から種々のタイプのものが知られている。水、溶液等の液中や腐食性ガスの雰囲気中において設置可能なものが特許文献1に開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
この発明は、新規な温度検知センサの実現を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この発明の、温度検知センサは、温度検出素子および保持部材およびケースを有する温度検知センサであって、前記温度検出素子は、素子本体部と、該素子本体部に接続された複数のリード線と、前記素子本体部を封止する熱伝導性の封止材による封止部と、を有し、前記保持部材は低熱伝導性で、前記温度検出素子を保持し、前記ケースは、前記保持部材を介して前記温度検出素子をケース内部に保持し、前記封止部用の開口と、前記リード線の引き出し用の開口と、前記引き出し用の開口の開口径が、前記封止部用の開口の開口径よりも小さくなる断面形状とを有し、前記保持部材は、保持した前記温度検出素子の前記リード線が前記引き出し用の開口から引き出され、且つ、前記封止部の少なくとも一部が前記封止部用の開口側に前記保持部材から露呈するように、前記ケースの内側に嵌り合って固定的に設けられ、前記ケースの内周面の前記断面形状は、前記保持部材が、少なくとも前記引き出し用の開口の側へ変位するのを防止するように1以上の段差を有することを特徴とする
【発明の効果】
【0005】
この発明によれば、新規な温度検知センサを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】温度検知センサの実施の形態の1例を説明するための図である。
図2】温度検知センサの保持部材12への圧力を説明するための図である。
図3】温度検知センサのケースの断面形状を4例説明する図である。
図4】温度検知センサの実施の形態の別例を説明するための図である。
図5】温度検知センサの実施の形態の他の例を説明するための図である。
図6図5(a)に示す温度検知センサの流路部分への取り付けの他の例を説明するための図である。
図7】温度検知センサの実施の形態のさらに他の例を説明するための図である。
図8】温度検知センサの実施の形態の別例を説明するための図である。
図9】温度検知センサの具体例を説明するための図である。
図10】温度測定装置の実施の1例を概念的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、実施の形態につき、説明する。
図1は、この発明の温度検知センサの実施の形態の1例である。
図示のように、温度検知センサ10は、温度検出素子11と、保持部材12と、ケース13とを有する。
温度検出素子11は、素子本体部110と2本のリード線111、112と封止部113とを有する。
リード線111、112は素子本体部110に接続されている。この実施の形態例ではリード線は2本であるが、これに限らず3本以上のリード線を有していてもよい。リード線は被覆されたものであることもできる。
素子本体部110としては、熱電対やサーミスタ等の公知の種々の感熱センサを用いることができ、「温度変化に応じて電気的な特性が変化するもの」であれば特に限定されることなく用いることができる。
【0008】
封止部113は、素子本体部110を「封止材」により封止した部分である。
封止部113は、温度検出の対象となる被検出体(液体や蒸気等の気体)に直接触れ、検出対象の熱を素子本体部110に伝熱するためのものである。従って、封止部113をなす封止材は「伝熱性の材料」である必要がある。
封止部113の大きさが大きくなると、被検出体から素子本体部への伝熱時間が長くなる。また封止材の熱伝導率が低いと、被検出体から素子本体部110への伝熱効率が低くなる。
温度検知センサとして「応答性の良いもの」を実現する場合には、なるべく熱伝導率の高い封止材を用い、封止部113の大きさを小さく形成するのが良い。封止部113を小さくして封止部113に接触する被検出体と素子本体部110を近接させることにより、封止部113による素子本体部110への伝熱時間を短縮できるが、この場合、封止部表面と素子本体部の間の封止材の厚さが薄くなりすぎると、封止部113の機械強度が弱くなるので「温度検知センサとして必要な機械強度」が確保されるように、封止材と封止部113の大きさを設定する。
【0009】
保持部材12は低伝熱性の材料であり温度検出素子11を保持する。
ケース13は、保持部材12を介して温度検出素子11をケース内部に保持する。
ケース13は、封止部用の開口と「リード線111、112の引き出し用の開口」とを有する。
温度検出素子11は、保持部材12に図示の如くに保持される。即ち、保持された温度検出素子11のリード線111、112は、ケース13の「引き出し用の開口(図の上方の開口)」から引き出され、封止部113は、その少なくとも一部が「封止部用の開口側(図の下方の開口)」から露呈する。
【0010】
温度検出素子11を上記の如く保持した保持部材12は、ケース13の内側に固定的に設けられる。
保持部材12は、例えば接着剤等によりケース13の内周部に固着させることによってケース13に固定してもいが、これに限らず、保持部材を「弾性体」で構成し、圧縮状態でケース13の内側に挿入し、保持部材12の弾発力によりケース13の内側に圧接させて摩擦力により固定されるようにしてもよい。
【0011】
図1の実施の形態では、弾性体による保持部材12が想定されており、保持部材12はその弾発力によりケース13の内周面に圧接し、摩擦力によりケース13に対して固定的に保持されるようになっている。
図1の如き温度検知センサが使用状態におかれると、封止部113が保持部材12から被検出体(図示を省略されているが、図1で保持部材12の下側にある。)側に露呈し、封止部113を露呈させている保持部材12の面が被検出体に曝される。この場合、被検出体が「ある程度大きい圧力」を有していると、封止部113を露呈させている保持部材12の面に外圧として作用する。
【0012】
図2はこの状態を示している。被検出体の圧力(保持部材12の下方の面に向かう矢印で示す。)が保持部材12に図の如く作用すると、封止部113を露呈させている面は図の如く、凹面をなすように弾性変形し、保持部材12には、図において上方へ向かう圧力が作用する。該圧力は保持部材12を圧縮するように作用し、保持部材12のケース13の内壁に作用する弾発力(矢印で示す。)も増大する。
【0013】
仮に、ケース13の「リード線111、112を引き出す側の開口部が、封止部113側の開口部以上の径」を有していたとすると、被検出体の圧力が強い場合には、保持部材12をケース13から押し出してしまう場合が考えられる。
【0014】
図1の実施の形態では、この点を鑑みて、ケース13の「リード線111、112を引き出す側の開口部の径を、封止部113側の開口部よりも小径」とし、被検出体による圧力が作用しても、保持部材12がケース13から抜け出ないようにしている。本発明の構成により、耐久性が向上できる。
【0015】
保持部材がケースから抜け出るのを防止する構成は、図1の構成に限らず種々の構成が可能である。図3には、このような構成を4例示す。勿論、これらの構成に限定されるものではない。
【0016】
繁雑を避けるため、保持部材および温度検出素子に関しては「図1におけると同一の符号」を付した。これらの例において、温度検出素子11を保持する保持部材12は「弾性体」が想定されている。
図3(a)に示す温度検知センサ10Aのケース13Aは、温度検出素子11の封止部側の開口近傍に形成された段差13A1により封止部113側の開口径が大きくなっている。
図3(b)に示す温度検知センサ10Bのケース13Bの内周面13B1は、封止部113側からリード線の引き出し側へ向かって狭まるような「テーパ」を有している。
図3(c)に示す温度検知センサ10Cのケース13Cは、封止部113側の開口とリード線の引き出し側の開口との間に、内径が大きい凹部溝13C1が形成されている。
図3(d)に示す温度検知センサ10Dのケース13Dの内周面13D1は、封止部113側の開口からリード線の引き出し側の開口に向かって波状に内径が変化している。
図1および図3に示す例は何れも、ケースの内周面が「保持部材12が、少なくともリード線の引き出し用の開口の側へ変位するのを防止する断面形状」を有している。
図1および図3(a)に示す例では、ケース13、13Aは、リード線の引き出し用の開口の開口径が、封止部用の開口の開口径よりも小さくなる断面形状を有する。
【0017】
また、図1図3(a)、(c)に示す例では、ケース13、13A、13Cの内周面の断面形状が「1以上の段差」を有する。段差は2以上あってもよい。
【0018】
前述の如く、封止部113は「熱伝導性」で、保持部材12は「低熱伝導性」であるが、上記の如く、封止部113は高熱伝導性であることが好ましい。
また、保持部材12は「保持部材を通して被検出体の熱が逃げる」ことや、保持部材自体の温度が高温化することを回避するためには、できるだけ伝熱性が低く、断熱性が高いことが好ましく、また、熱容量が小さいことが好ましい。
【0019】
封止部113に好ましく用いられる「熱導電率の高い封止材」としては、例えば「セラミックや水晶、ガラスなど」を例示することができるが、勿論、これらに限定されるものではない。
また、保持部材12の材料としては、各種のゴム(一般的に断熱性が高い。)を用いることができる。この場合、保持部材を「発泡させたゴム」を用いることにより、断熱性をより有効に高めることができる。
被検出体は液体であることも気体であることもあるが、「中性」に限らず「酸性」であることも「アルカリ性」であることもあり、また、各種の薬物が含まれていることもある。従って、封止部および「保持部材とケースの、被検出体と触れる部分」は耐薬品性であることが好ましい。
封止材として上に例示したセラミック、水晶、ガラスは高い耐薬品性を有している。
【0020】
保持部材の材料として、例えば、フッ素ゴムやフッ素樹脂などは高い耐薬品性を有しており「検体」等の被検出体や「被検出体に含まれる試薬」の種類に応じて各種のゴム材料を適宜に選択することができる。
ケースは、各種の金属やプラスチックで形成することができるが、ケース材料に「耐薬品性」がない場合には、被検出体に曝される部分に「耐薬品処理」を施して用いることができる。なお、被検出体の温度が高温である場合には、封止材、保持部材、ケースの何れも耐熱性の材料を用いる。
【0021】
上に実施の形態を説明した温度検知センサは、温度検出素子11の封止部113が直接、被検出体に接するので、封止部113の周囲を「断熱性の高い材料による保持部材」で覆うことで、温度検出素子11以外の部位への熱伝導を抑制でき、温度検知の応答性を高めることが可能となる。
また、被検出体に接する可能性のある部位を「耐薬品性を有する材料」で形成することで、検体や試薬による腐食を有効に防止もしくは軽減でき、温度検知センサを長寿命化できる。
さらに、ケースの内周面は、保持部材が、少なくともリード線引き出し用の開口の側へ変位するのを防止する断面形状を有しており、封止部や保持部材に被検出体からの気圧や水圧、その他の外力が加えられても、保持部材がリード線引き出し用の開口側へ抜け出るのを防ぐことができる。
また、保持部材を弾性体で構成することにより、図2のように保持部材や封止部に被検出体からの圧力が加わったとき保持部材が圧縮され、弾性変形してケースに密着し、被検出体が外部へ漏れるのを防ぐことができる。
【0022】
図4は、温度検知センサの実施の他の形態を説明するための図である。繁雑を避けるため、温度検出素子と保持部材に関しては、図1等におけると同一の符号を付した。
図4(a)に実施の形態を示す温度検知センサ10Eは、ケース13Eの外周部が円筒面となっている。因みに、図1図3に示した温度検知センサ10~10Eにおけるケースの外周形状は円筒面でもよいが、これに限らず、柱面状であってもよい。
図4(a)に示す温度検知センサ10Eは、ケース13Eの円柱面状の外周面に円周状に溝13E1を形成し、この溝13E1にOリングOLを嵌めている。
図4(b)は、図4(a)に示す温度検知センサ10Eを、温度測定装置に用いた例を説明図的に示している。
図に、符号200で示す部分は「被検出体の流路」を構成する流路構成部分であり、その一部をなす符号201で示す部分の管壁に、温度検知センサ10Eを嵌め合わせる円筒状の孔を穿設し、この部分に図の如く温度検知センサ10Eを嵌め込んで固定している。このとき、溝13E1に「ぴったり」と嵌めたOリングOLが温度検知センサ13Eと流路管壁との隙間を塞ぐので、流路203を流れる気体や液体の被検出体が流路外部に漏れ出るのを防止することができる。即ち、温度検出センサを流路に組み込む際に、接着材等を用いることなく、温度検知センサと流路との隙間を塞ぐことができる。
【0023】
図4(b)に示すように、OリングOLは圧縮されて、弾発力により流路の嵌め込み孔に圧接して、両者間の隙間を塞ぐ。
【0024】
図5には、温度検知センサの別の実施形態と、これを流路に組み込んだ状態を説明図的に示す。この実施の形態における温度検知センサ10Fは、図5(a)に示す如く、ケース13Fの円柱状の周面に螺子部13F1が形成され、この螺子部13F1が、同図(b)に示すように、流路構成部分200の「符号201で示す部分に穿設された孔壁」に形成された螺子溝と螺合することにより、流路に固定されている。
【0025】
また、ケース13Fの「リード線引き出し側」の端部はフランジに形成され、フランジの下面が流路構成部分の外壁面に密接している。
この実施の形態のように、温度検知センサ10Fと流路構成部分200とを「螺合」により固設するようにすると、両者の固設に接着剤等の固定手段が不要になる。
【0026】
ただし、螺子による螺合部には「隙間」が生じるため、そこから液状や気体状の被検出体が漏れる可能性があるので、螺合部にシールテープを巻いたりガスケットを設けるなどして、隙間を密閉するのがよい。
螺子構造により、流路構成部分への温度検知センサの取り付けを行う場合、図6に示すように、温度検知センサ13Fのフランジ部と流路構成部分との間にOリングOLを設けて、流路内部と外部とを密閉状態にしてもよい。
【0027】
図4ないし図6に示す実施の形態では、温度検知センサのケースの外周面は「円筒状」であり、この円筒状の外周面に「センサ装着構造」を有する。
センサ装着構造は、温度検知センサを流路構成部分に装着する構造である。
図4に示す温度検知センサ10Eでは、ケース13Eの円柱面状の外周面に円周状に形成された溝13E1と、この溝13E1に嵌め合わせられたOリングOLが「センサ装着構造」である。
図5に示す温度検知センサ10Fでは、ケース13Fの外周部に形成された螺子部13F1が「センサ装着構造」をなし、図6に示す例では、螺子部13F1とOリングOLがセンサ装着構造をなしている。
なお、図4ないし図6における流路構成部分200は、符号201と202で示す部分で構成されている。
【0028】
図7は、温度検知センサの実施の他の形態例を示している。
この実施の形態では、温度検知センサ10Gは、図1に示した温度検知センサ10と同様の構成であり、混同の恐れが無いと思われるものについては、図1におけると同一の符号を用いた。温度検知センサ10Gは、温度検出素子のリード線111、112が接続される電極11A、11Bを有し、これら電極11A、11Bは保持部材12に固定されている。
このような構成にすることで、リード線111、112の断線を有効に防止することができる。
【0029】
図8は、温度検知センサの別の実施の形態を示す図である。繁雑を避けるため、混同の恐れが無いと思われるものについては、図1におけると同一の符号を用いた。
温度検知センサ10Hでは、温度検出素子の素子本体部110を封止する封止部113AがタブレットTB上に一体に設けられている。図1ないし図7に示す温度検知センサでは封止部113の一部のみを保持部材12から露呈させているが、図8の構成では、封止部113Aの全体を露呈させて、被検出体に接触させることができ、両者の接触面積が大きくなることにより、温度検出の応答性をさらに向上させることができる。
【0030】
以下、具体的な例を挙げる。
図9を参照する。図9(a)は温度検知センサの具体的な1例を説明するための図である。図に示す温度検知センサは、上に図4に即して説明した温度検知センサ10Eを具体化したものである。
温度検出素子11として、市販のサーミスタの素子本体部を「ガラスを封止材として略球形状に封止」して封止部113としたものを用いた。図9(a)に示す封止部113の直径:Aは1mmとした。
保持部材12は、断熱性の高いフッ素ゴムを用いて形成した。
ケース13Eは、低熱伝導性の樹脂である「ポリプロピレン」を用いて構成した。
図9(a)に示すケース13Eの上下方向の高さ:Cは6mmである。
ケース13Eの図で上方の「狭い方の開口(円形状である。)」の直径は2mm、下方の「広い方の開口(円形状である。)」の直径は3mmである。
図の如くに温度検出素子11を保持した保持部材12を圧縮状態で、ケース13E内に挿入し、弾発力による摩擦でケース13E内に固定的に設けた。
このように構成した温度検知センサ10Eを、先に図4(b)に即して説明したように、流路構成部分200の符号201で示す管壁に嵌め込んでOリングOLにより固定した。
【0031】
流路構成部分200は、断熱性の高いポリプロピレンにより円形の断面をなす流路を形成したものである。流路の内径は1.5mmである。
この流路に「温度を40℃に調整した水」を流通させた。外部の環境温度は22度である。流通は連続的に行った。
【0032】
この温水の温度を温度検知センサ10Eで測定したところ、検出温度は環境温度:22度から急速に上昇して液温:40℃に近づき、略6秒で39度となり、100秒度には液温:40℃と等しくなった。
【0033】
上に具体例を説明した温度検知センサ10Eは、被検出体の温度に対する応答性が極めて高い。上に説明した測定では、被検出体である「温度を40℃に調整した水」を連続的に流通させたが、被検出体の流通は断続的に行ってもよく、1度に検出部を流れる時間が例えば100秒以上あれば「流通が続いている流通時間内」に正確な温度測定が可能である。
【0034】
また、上に具体例を説明したように、この発明の温度検知センサは極めて小型に構成することが可能である。
図10に、この発明の温度測定装置の実施の1形態を概念的な説明図として示す。
図において、符号10は温度検知センサ、符号20は制御演算部、符号30は電源、符号40はディスプレイ、符号50は貯液部、符号60は流路、符号70は開閉弁を示している。
【0035】
この温度測定装置では、貯液部50に貯液された液状の被検出体を流路60に断続的に流通させ、流路60に設けられた温度検知センサ10により液温を検知し、制御演算部60により演算処理して求められる被検出体の液温をディスプレイ40に表示する。
図の如く、制御演算部20は、温度検知センサ10を制御するほか、開閉弁70の開閉を制御して被検出体の断続的な流れを制御する。
温度検知センサとしては、この発明の温度検知センサを用いるが、例えば、上に説明した温度検知センサ10~10Gの適宜のものを用いることができる。
【0036】
以上のように、この発明によれば、以下の如き新規な温度検知センサおよび温度測定装置を実現できる。
[1]
温度検出素子および保持部材およびケースを有する温度検知センサであって、前記温度検出素子(11)は、素子本体部(110)と、該素子本体部に接続された複数のリード線(111、112)と、前記素子本体部を封止する熱伝導性の封止材による封止部(113)と、を有し、前記保持部材(12)は低熱伝導性で、前記温度検出素子(11)を保持し、前記ケース(13~13F)は、前記保持部材を介して前記温度検出素子をケース内部に保持し、前記封止部用の開口と、前記リード線の引き出し用の開口とを有し、前記保持部材(12)は、保持した前記温度検出素子の前記リード線が前記引き出し用の開口から引き出され、且つ、前記封止部(113)の少なくとも一部が前記封止部用の開口側に前記保持部材から露呈するように、前記ケースの内側に嵌り合って固定的に設けられる、温度検知センサ(図1図8)。
【0037】
[2]
[1]記載の温度検知センサであって、前記封止部(113)は高熱伝導性であり、前記保持部材(12)は断熱性である温度検知センサ。
【0038】
[3]
[1]または[2]記載の温度検知センサであって、前記封止部(113)および、前記保持部材(12)と前記ケース(13~13F)の、少なくとも前記封止部側の部分は耐薬品性である温度検知センサ。
【0039】
[4]
[1]ないし[3]の何れか1に記載の温度検知センサであって、前記保持部材(12)が弾性体であり、収縮状態で前記ケース内部に設けられている温度検知センサ。
【0040】
[5]
[1]ないし[4]の何れか1に記載の温度検知センサであって、前記ケースの内周面は、前記保持部材が、少なくとも前記引き出し用の開口の側へ変位するのを防止する断面形状を有する温度検知センサ。
【0041】
[6]
[5]記載の温度検知センサであって、前記ケースは、前記引き出し用の開口の開口径が、前記封止部用の開口の開口径よりも小さくなる前記断面形状を有する温度検知センサ(図1図3(a)、図3(b)等)。
【0042】
[7]
[6]記載の温度検知センサであって、前記ケースの内周面の断面形状が、1以上の段差を有する温度検知センサ(図1図3(a)、図3(c)、図4等)。
【0043】
[8]
[1]ないし[7]の何れか1に記載の温度検知センサであって、前記ケースの外周面が円筒状であり、この円筒状の外周面に、センサ装着構造を有する温度検知センサ(図4図6等)。
【0044】
[9]
[1]ないし[8]の何れか1に記載の温度検知センサであって、前記温度検出素子の複数のリード線が接続される電極(11A、11B)を有し、該電極が前記保持部材および前記ケースの少なくとも一方に固定される温度検知センサ(図7)。
【0045】
[10]
[1]ないし[9]の何れか1に記載の温度検知センサを用いる温度測定装置(図10)。
【0046】
以上、発明の好ましい実施の形態について説明したが、この発明は上述した特定の実施形態に限定されるものではなく、上述の説明で特に限定していない限り、特許請求の範囲に記載された発明の趣旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
例えば、上には被検出体として液体の場合を説明したが、前述したように、被検出体は液体に限らず気体であることもできる。液体の被検体としては、各種の液状化学薬品や、生体の「検体(尿や血液)」等が可能である。
また、上には、断続して流れる流体の温度を測定する場合を説明したが、勿論、被検出体である液体や気体が連続して流れる場合の温度測定にも本発明の温度検知センサを用いることができる。また、被検出体は必ずしも流れている場合のみならず、静止状態にある場合にも測定に用い得ることは言うまでもない。
【0047】
この発明の実施の形態に記載された効果は、発明から生じる好適な効果を列挙したに過ぎず、発明による効果は「実施の形態に記載されたもの」に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0048】
10 温度検知センサ
11 温度検出素子
110 素子本体部
113 封止部
111、112 リード線
12 保持部材
13 ケース
【先行技術文献】
【特許文献】
【0049】
【文献】特開平9-243468号公報
図1
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図8
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図10