(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-11
(45)【発行日】2022-04-19
(54)【発明の名称】造形装置、造形方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
B29C 64/393 20170101AFI20220412BHJP
B33Y 30/00 20150101ALI20220412BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20220412BHJP
B33Y 50/02 20150101ALI20220412BHJP
【FI】
B29C64/393
B33Y30/00
B33Y10/00
B33Y50/02
(21)【出願番号】P 2018051723
(22)【出願日】2018-03-19
【審査請求日】2021-02-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【氏名又は名称】酒井 宏明
(72)【発明者】
【氏名】行本 礼嗣
【審査官】坂本 薫昭
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/221884(WO,A1)
【文献】特開2013-067018(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/10,64/20,64/386,64/393
B33Y 10/00,30/00,50/00,50/02,
70/00,80/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
造形物の造形装置であって、
前記造形物の造形開始予定時刻の指定を受付ける受付部と、
前記造形装置
による造形処理の実行に影響を与える事象を示す状態の変化を検知する検知部と、
前記造形開始予定時刻の指定を受付けた後に前
記状態の変化が検知されたときに、前記造形装置の前
記状態に変化が生じたことを示す変化情報を出力する出力制御部と、
を備える造形装置。
【請求項2】
前記検知部は、
前記造形装置による造形動作に支障が生じる支障状態を、前
記状態の変化として検知する、請求項1に記載の造形装置。
【請求項3】
前記受付部は、
前記造形開始予定時刻の指定と、前記造形開始予定時刻に強制造形開始の許可または非許可を示す許可可否情報の指定と、を受付け、
前記出力制御部は、
前記造形開始予定時刻の指定を受付けた後に前
記状態の変化が検知され、且つ前記許可可否情報が前記強制造形開始の非許可を示す場合、前記変化情報を出力する、
請求項1または請求項2に記載の造形装置。
【請求項4】
受付けた前記造形開始予定時刻を登録する登録部と、
前
記状態の変化が検知されたときに、登録済の前記造形開始予定時刻の造形開始を解除する解除部と、
を備える、請求項3に記載の造形装置。
【請求項5】
前記解除部は、
前記許可可否情報が前記造形開始の非許可を示す場合、登録済の前記造形開始予定時刻の造形開始を解除する、
請求項4に記載の造形装置。
【請求項6】
前記受付部は、
複数の前記造形物の各々の前記造形開始予定時刻の指定を受付ける、
請求項1~請求項5の何れか1項に記載の造形装置。
【請求項7】
造形物の造形装置を用いた造形方法であって、
前記造形物の造形開始予定時刻の指定を受付けるステップと、
前記造形装置
による造形処理の実行に影響を与える事象を示す状態の変化を検知するステップと、
前記造形開始予定時刻の指定を受付けた後に前
記状態の変化が検知されたときに、前記造形装置の前
記状態に変化が生じたことを示す変化情報を出力するステップと、
を含む造形方法。
【請求項8】
造形物の造形装置に接続されたコンピュータに、
前記造形物の造形開始予定時刻の指定を受付けるステップと、
前記造形装置
による造形処理の実行に影響を与える事象を示す状態の変化を検知するステップと、
前記造形開始予定時刻の指定を受付けた後に前
記状態の変化が検知されたときに、前記造形装置の前
記状態に変化が生じたことを示す変化情報を出力するステップと、
を実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、造形装置、造形方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
金型などを用いずに造形物を作製する装置として、3Dプリンタが普及しつつある。例えば、造形材とサポート材を吐出して硬化させた後にサポート材を除去する材料噴射造形方式(マテリアルジェット方式)や、熱溶解積層法(FFF(Fused Filament Fabrication))や、SLS(Selective Laser Sintering)方式を用いた3Dプリンタが知られている。
【0003】
また、造形開始時間を予約し、ユーザが指定した開始予定時刻に造形処理を自動的に開始するシステムが開示されている(例えば、特許文献1)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし従来技術では、造形開始予定時刻の前に、次の造形ができるのに十分な時間があったとしても、造形ができなかった。つまり、造形可能な状態であることを担保するために、造形開始予定時刻が設定された造形の条件を崩しうる次の造形を造形できないように制御されていた。従って、従来技術では、造形効率が低下する場合があった。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、造形効率の低下を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するために、造形装置は、造形物の造形装置であって、前記造形物の造形開始予定時刻の指定を受付ける受付部と、前記造形装置による造形処理の実行に影響を与える事象を示す状態の変化を検知する検知部と、前記造形開始予定時刻の指定を受付けた後に前記状態の変化が検知されたときに、前記造形装置の前記状態に変化が生じたことを示す変化情報を出力する出力制御部と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、造形効率の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、造形装置の一例を示す模式図である。
【
図3】
図3は、造形装置のハードウェア構成の一例を示す模式図である。
【
図4】
図4は、造形装置の機能的構成の一例を示す模式図である。
【
図5】
図5は、スケジュールDBのデータ構成の一例を示す模式図である。
【
図6】
図6は、造形処理の手順の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照しながら、本実施の形態の造形装置の実施の形態を詳細に説明する。なお、本明細書において、同じ構成および機能を示す部分には、同じ符号を付与し、詳細な説明を省略する場合がある。
【0010】
なお、本実施の形態では、材料噴射造形方式(マテリアルジェット方式)により造形物を造形する造形装置を、一例として説明する。なお、造形装置は、三次元の造形物を造形する装置であればよく、造形方法はマテリアルジェット方式に限定されない。例えば、造形装置は、熱溶解積層法(FFF)や、SLS方式を用いた造形装置であってもよい。
【0011】
図1は、本実施の形態の造形装置10の一例を示す模式図である。
【0012】
造形装置10は、造形ステージ14と、造形ユニット20と、を備える。造形ステージ14および造形ユニット20は、造形装置10の筐体40内に配置されている。造形ステージ14は、造形ユニット20によって造形された造形物31を支持する。
【0013】
造形ユニット20は、造形ステージ14上に造形層30を積層し、複数の造形層30の積層体である造形物31を造形する。
【0014】
造形ユニット20は、第1ヘッド11と、第2ヘッド12と、造形ステージ14と、平坦化ローラ16と、を備える。
【0015】
第1ヘッド11は、モデル材を吐出する。モデル材は、造形対象の造形物31を造形するための材料である。本実施の形態では、モデル材は、紫外線の照射によって硬化する材料である。
【0016】
第2ヘッド12は、サポート材を吐出する。サポート材は、造形物31の造形時に造形層30をサポートするために用いられる。本実施の形態では、サポート材は、紫外線の照射によって硬化する材料である。サポート材によって形成されたサポート部18は、最終的には、造形された造形物31から除去される。
【0017】
平坦化ローラ16は、造形層30を平坦化する。
【0018】
本実施の形態では、第1ヘッド11は、X方向に2つの第2ヘッド12によって挟まれて配置されている。なお、X方向は、鉛直方向に沿った方向であるZ方向に対して垂直な水平面を構成する、互いに直交する2軸方向の内の1軸方向である。
【0019】
また、第2ヘッド12、第1ヘッド11、および第2ヘッド12は、X方向に2つのUV照射ユニット13によって挟まれて配置されている。また、これらのUV照射ユニット13、第2ヘッド12、第1ヘッド11、第2ヘッド12、およびUV照射ユニット13は、X方向に、2つの平坦化ローラ16によって挟まれて配置されている。
【0020】
造形ユニット20は、X方向に往復移動されるとともに、造形ステージ14に対してY方向にも相対的に移動可能とされている。また、造形ステージ14は、Z方向昇降部15によってZ方向に昇降可能に配置されている。
【0021】
本実施の形態では、造形装置10の筐体40は、本体部40Aと、カバー40Bと、を有する。カバー40Bは、本体部40Aに対して開閉可能に設けられている。ユーザは、カバー40Bを開けることで、筐体40内の装置各部のメンテナンスや、筐体40内に造形された造形物31の取り出しなどを行う。
【0022】
また、造形装置10には、1または複数のセンサ42が設けられている。センサ42は、造形装置10の筐体40内の状態を検出するセンサである。
【0023】
本実施の形態では、造形装置10は、センサ42として、センサ42Aとセンサ42Bを備える場合を説明する。
【0024】
センサ42Aは、カバー40Bの開閉を検出する。すなわち、センサ42Aは、カバー40Bが開いている状態、または、カバー40Bが閉じられている状態、の何れの状態であるかを検出する。
【0025】
センサ42Bは、造形ステージ14上の、造形層30(モデル部17、サポート部18)以外の異物(例えば、メンテ中に載置された工具など)を検出する。
【0026】
次に、造形装置10による造形動作の概要を説明する。
図1および
図2を用いて説明する。
図2は、造形物31の一例の説明図である。
【0027】
造形ユニット20をX方向に移動させながら、第1ヘッド11からモデル材301を造形領域に吐出し、第2ヘッド12からサポート材302を造形領域以外のサポート領域に吐出する。
【0028】
そして、UV照射ユニット13によって、モデル材301およびサポート材302上に紫外線を照射して硬化させ、モデル部17とサポート部18を含む1層分の造形層30を形成する。
【0029】
この造形層30の形成を繰り返して順次積層することで、複数の造形層30(
図2では造形層30A~造形層30C、
図1では造形層30A~造形層30E)の積層体を構成する。そして、この積層体からサポート部18を除去することで、造形物31を得る。
【0030】
次に、造形装置10のハードウェア構成を説明する。
図3は、造形装置10のハードウェア構成の一例を示す模式図である。
【0031】
造形装置10は、制御部500と、操作パネル522と、温湿度センサ560と、センサ42と、造形部70と、を備える。制御部500と、操作パネル522、温湿度センサ560、センサ42、および造形部70と、は、データや信号を授受可能に接続されている。
【0032】
操作パネル522は、ユーザによる操作指示を受付けると共に、各種情報を出力する。操作パネル522は、入力部72と、出力部74と、を含む。入力部72は、ユーザによる操作指示を受付ける。入力部72は、例えば、キーボード、マウス、タッチパネルなどである。出力部74は、各種情報を出力する。
【0033】
出力部74は、各種情報を表示する表示機能、音声を出力する音声出力機能、振動を出力する振動出力機能、各種情報を外部装置へ送信する通信機能、の少なくとも1つを備える。本実施の形態では、出力部74は、各種情報を表示する表示機能を有する場合を、一例として説明する。
【0034】
温湿度センサ560は、造形装置10の設置環境である温度や湿度を検出するセンサである。
【0035】
造形部70は、第1ヘッド11と、第2ヘッド12と、X方向走査機構550と、Y方向走査機構552と、Z方向昇降部15と、モータ26と、メンテナンス機構61と、UV照射ユニット13と、を含む。
【0036】
X方向走査機構550およびY方向走査機構552は、造形ユニット20をX方向およびY方向に移動させる。モータ26は、平坦化ローラ16のローラを回転させる。メンテナンス機構61は、第1ヘッド11および第2ヘッド12のメンテナンスを行う公知の機構である。
【0037】
制御部500は、造形部70を制御することで、造形物31の造形を制御する。
【0038】
制御部500は、主制御部500Aと、外部I/F506と、ASIC(ApplicationSpecific Integrated Circuit)505と、I/O507と、NVRAM(Non-Volatile Random access memory)504と、駆動制御部520と、を備える。
【0039】
主制御部500Aは、CPU(Central Processing Unit)501と、ROM(Read Only Memory)502と、RAM503とを含む。
【0040】
ASIC505は、画像データに対する各種信号処理等を行う画像処理やその他装置全体を制御するための入出力信号を処理する。外部I/F506は、造形データ作成装置600から造形データを取得し、主制御部500Aへ出力する。造形データは、造形物31の造形に用いるデータである。造形データは、造形物31を造形層30ごとにスライスしたスライスデータを複数含む。
【0041】
I/0507は、温湿度センサ560およびセンサ42の検出結果を受付け、主制御部500Aへ出力する。
【0042】
駆動制御部520は、ヘッド駆動制御部508と、ヘッド駆動制御部509と、モータ駆動部510と、モータ駆動部511と、モータ駆動部512と、モータ駆動部516と、メンテナンス駆動部518と、硬化制御部519と、を含む。
【0043】
ヘッド駆動制御部508は、第1ヘッド11を駆動制御す。ヘッド駆動制御部509は、第2ヘッド12を駆動制御する。モータ駆動部510、モータ駆動部511、およびモータ駆動部512は、各々、X方向走査機構550、Y方向走査機構552、およびZ方向昇降部15の各々を駆動する。モータ駆動部516は、平坦化ローラ16のモータ26を駆動する。メンテナンス駆動部518は、メンテナンス機構61を駆動する。硬化制御部519は、UV照射ユニット13を制御する。
【0044】
制御部500は、上述したように、造形データ作成装置600から造形データを取得する。この造形データには、サポート材を付与するサポート領域のデータを付加したデータが含まれている。そして、制御部500は、取得した造形データに基づいて、駆動制御部520を制御する。なお、制御部500は、造形データに基づいて、サポート材を付与するサポート領域のデータを付加したデータを作成してもよい。
【0045】
駆動制御部520は、第1ヘッド11から液状のモデル材301の液滴を造形領域に吐出させ、第2ヘッド12から液状のサポート材302の液滴をサポート領域に吐出させる。これらの制御によって、制御部500は、造形データに応じた造形物31を造形するように制御する。
【0046】
次に、造形装置10の機能的構成を説明する。
図4は、造形装置10の機能的構成の一例を示す模式図である。
【0047】
造形装置10の制御部500は、取得部80Aと、受付部80Bと、出力制御部80Cと、検知部80Dと、スケジューリング部80Eと、記憶部80Iと、造形制御部80Kと、を備える。スケジューリング部80Eは、登録部80Fと、解除部80Gと、再開部80Hと、を含む。
【0048】
取得部80A、受付部80B、出力制御部80C、検知部80D、スケジューリング部80E、登録部80F、解除部80G、再開部80H、および造形制御部80Kは、例えば、1または複数のプロセッサにより実現される。例えば上記各部は、CPUなどのプロセッサにプログラムを実行させること、すなわちソフトウェアにより実現してもよい。上記各部は、専用のIC(Integrated Circuit)などのプロセッサ、すなわちハードウェアにより実現してもよい。上記各部は、ソフトウェアおよびハードウェアを併用して実現してもよい。複数のプロセッサを用いる場合、各プロセッサは、各部のうち1つを実現してもよいし、各部のうち2以上を実現してもよい。
【0049】
取得部80Aは、造形対象の造形物31の造形データを取得する。本実施の形態では、取得部80Aは、造形データ作成装置600から造形データを取得する。なお、取得部80Aは、外部メモリやNVRAM504等から、造形データを取得してもよい。
【0050】
受付部80Bは、ユーザによる操作指示によって入力された各種情報を受付ける。本実施の形態では、受付部80Bは、操作パネル522の入力部72から各種情報を受付ける。
【0051】
具体的には、受付部80Bは、造形物31の造形開始予定時刻の指定を受付ける。造形開始予定時刻は、造形物31の造形を開始する予定の時刻である。ユーザは、操作パネル522の入力部72を操作することで、所望の造形開始予定時刻を操作入力する。すなわち、入力部72は、ユーザによる操作入力によって指定された造形開始予定時刻を、受付部80Bへ出力する。受付部80Bは、造形開始予定時刻の指定を入力部72から受付ける。
【0052】
なお、受付部80Bは、造形開始予定時刻の指定と、許可可否情報の指定と、を受付けてもよい。本実施の形態では、受付部80Bは、造形開始予定時刻の指定と、許可可否情報の指定と、を受付ける場合を説明する。
【0053】
許可可否情報は、造形開始予定時刻に強制造形開始を許可するか非許可とするかを示す情報である。強制造形開始とは、造形開始予定時刻に、造形装置10が造形動作に支障が生じる状態である場合であっても、強制的に造形を開始することを意味する。すなわち、許可可否情報が許可を示す場合、造形装置10の造形動作に支障が生じる状態である場合であっても、造形開始予定時刻になると、造形開始を許可することを示す。一方、許可可否情報が非許可を示す場合、造形装置10の造形動作に支障が生じる状態である場合には、造形開始予定時刻になっても、造形開始を行わないことを示す。
【0054】
ユーザは、入力部72を操作指示することで、許可または非許可を示す許可可否情報を操作入力すればよい。そして、受付部80Bは、入力部72から許可可否情報を受付ければよい。
【0055】
なお、受付部80Bは、造形開始予定時刻および許可可否情報を、取得部80Aを介して造形データ作成装置600から取得してもよい。この場合、造形データ作成装置600は、造形データと、造形データ作成装置600を操作するユーザによって指定された造形開始時刻および許可可否情報を、取得部80Aへ出力すればよい。例えば、造形データ作成装置600は、CAM(Computer-aided Manufacturing)を用いて、CAMデータに、造形データ、造形開始時刻、および許可可否情報を含むCAMデータを生成し、造形装置10へ出力する。この場合、制御部500の受付部80Bは、CAMデータに含まれる造形開始時刻および許可可否情報を読取ることで、これらのデータを受付ければよい。
【0056】
検知部80Dは、造形装置10の造形可能状態の変化を検知する。造形可能状態とは、造形装置10による造形処理の実行に影響を与える事象を示す。本実施の形態では、検知部80Dは、センサ42の検出結果を用いて、造形可能状態の変化を検知する。
【0057】
本実施の形態では、検知部80Dは、造形装置10による造形動作に支障が生じる支障状態を、造形可能状態の変化として検知する。
【0058】
造形動作に支障が生じる支障状態とは、例えば、カバー40Bが開けられた状態や、造形ステージ14上に異物が載置された状態などである。カバー40Bが開けられた状態の場合、造形ステージ14上に異物が載置される可能性があるためである。
【0059】
この場合、検知部80Dは、センサ42Aによる検出結果が、カバー40Bが閉じられた状態を示す検出結果からカバー40Bが開けられた状態を示す検出結果に変化したときに、支障状態と判定し、造形可能状態の変化を検知する。
【0060】
また、例えば、検知部80Dは、センサ42Bによる検出結果が、造形ステージ14上に異物が載置された状態を示す場合に、支障状態と判定し、造形可能状態の変化を検知する。
【0061】
なお、検知部80Dは、センサ42Aによる検出結果が、カバー40Bが開けられた状態を示す検出結果からカバー40Bが閉じられた状態を示す検出結果に変化したときに、支障状態と判定し、造形可能状態の変化を検知してもよい。
【0062】
造形制御部80Kは、取得部80Aで取得した造形データに応じた造形物31を造形するように、造形部70を制御する。本実施の形態では、造形制御部80Kは、後述するスケジュールDB80Jに基づいて、造形部70による造形を制御する。
【0063】
スケジューリング部80Eは、取得部80Aで受付けた造形開始予定時刻に基づいて、造形部70による造形タイミングをスケジューリングする。詳細には、スケジューリング部80Eは、登録部80Fと、解除部80Gと、再開部80Hと、を備える。
【0064】
登録部80Fは、受付部80Bで受付けた造形開始予定時刻を登録する。本実施の形態では、登録部80Fは、記憶部80Iに刻されたスケジュールDB80Jに、造形開始予定時刻を登録する。
【0065】
スケジュールDB80Jは、スケジュール管理に用いるためのデータベースである。なお、スケジュールDB80Jのデータ形式は、データベースに限定されない。
図5は、スケジュールDB80Jのデータ構成の一例を示す模式図である。
【0066】
スケジュールDB80Jは、IDと、造形データと、造形開始予定時刻と、許可可否情報と、スケジュール実行可否情報と、を対応づけたデータベースである。
【0067】
IDは、造形データを識別するための識別情報である。スケジュール実行可否情報は、対応する造形開始予定時刻に造形を開始する“実行”、該造形開始予定時刻の造形実行を解除する“解除”、の何れかを示す。スケジュール実行可否情報は、初期状態では、“実行”を示す。
【0068】
造形制御部80Kは、スケジュールDB80Jに示されるスケジュール実行可否情報が“実行”を示す場合に、対応する造形開始予定時刻となったときに、対応する造形データによって示される造形物31を造形するように、造形部70を制御する。
【0069】
一方、造形制御部80Kは、スケジュールDB80Jに示されるスケジュール実行可否情報が“解除”を示す場合には、対応する造形開始予定時刻となっても、対応する造形データによって示される造形物31の造形制御を行わない。
【0070】
取得部80Aは、造形データを取得するごとに、取得した造形データにIDを付与し、スケジュールDB80Jに登録する。
【0071】
登録部80Fは、受付部80Bで受付けた造形開始予定時刻と許可可否情報を、該造形開始予定時刻に造形を開始する対象の造形物31の造形データに対応づけて、スケジュールDB80Jに登録する。
【0072】
解除部80Gは、検知部80Dによって造形可能状態の変化が検知されたときに、スケジュールDB80Jに登録済の造形開始予定時刻の造形開始を解除する。すなわち、解除部80Gは、検知部80Dによって造形可能状態の変化が検知されたときに、スケジュールDB80Jに登録されている造形開始予定時刻に対応するスケジュール実行可否情報を、“実行”から“解除”に変更する。
【0073】
なお、解除部80Gは、検知部80Dによって造形可能状態の変化が検知され、且つ、許可可否情報が造形開始の非許可を示す場合に、スケジュールDB80Jに登録されている造形開始予定時刻の造形開始を解除してもよい。すなわち、解除部80Gは、検知部80Dによって造形可能状態の変化が検知され、且つ、許可可否情報が造形開始の非許可を示す場合に、スケジュールDB80Jに登録されている造形開始予定時刻に対応するスケジュール実行可否情報を、“実行”から“解除”に変更する。
【0074】
解除部80Gによってスケジュール実行可否情報が“解除”に変更された場合、造形制御部80Kは、対応する造形開始予定時刻になっても、対応する造形データによって示される造形物31の造形制御を行わない。
【0075】
再開部80Hは、解除部80Gによって“実行”から“解除”に変更されたスケジュール実行可否情報を、“実行”に変更する。例えば、スケジューリング部80Eは、ユーザによる入力部72の操作指示によって、受付部80Bが許可可否情報として“許可”を受付けたと仮定する。この場合、スケジューリング部80Eの登録部80Fが、“許可”を示す許可可否情報をスケジュールDB80Jに登録し、再開部80Hは、対応するスケジュール実行可否情報を“実行”に変更する。
【0076】
この処理によって、造形制御部80Kは、対応する造形開始予定時刻になると、対応する造形データによって示される造形物31の造形制御を開始可能な状態となる。すなわち、造形制御部80Kが、造形処理を再開可能な状態となる。このため、例えば、造形開始予定時刻までに、受付部80Bが、ユーザによる入力部72の操作指示によって“許可”を示す許可可否情報を受付けたと仮定する。この場合、スケジュールDB80Jに登録されている造形開始予定時刻になったときに造形を開始するスケジュールが再開されることとなる。
【0077】
また、解除部80Gによってスケジュール実行可否情報が“解除”に変更され、受付部80Bが造形開始予定時刻までに“許可”を示す許可可否情報を受付けない場合、対応する造形開始予定時刻になっても、造形制御部80Kは、対応する造形データによって示される造形物31の造形制御を行わない。
【0078】
出力制御部80Cは、造形開始予定時刻の指定を受付けた後に造形可能状態の変化が検知されたときに、変化情報を出力部74から出力する。
【0079】
変化情報は、造形装置10の造形可能状態に変化が生じたことを示す情報である。検知部80Dが、造形動作に支障が生じる支障状態を、造形可能状態の変化として検知した場合、変化情報は、該支障状態を示す情報であってもよい。
【0080】
ユーザは、出力部74から出力された変化情報を確認することで、造形装置10の造形可能状態が変化したことを確認することができる。
【0081】
なお、出力制御部80Cは、造形開始予定時刻の指定を受付けた後に造形可能状態の変化が検知され、且つ許可可否情報が強制造形開始の非許可を示す場合、変化情報を出力してもよい。
【0082】
また、出力制御部80Cは、Webブラウザーを使って造形装置10の監視や設定を行う管理ツール(例えば、公知のWeb Image Monitor)のインストールされたパーソナルコンピュータ等の外部機器に、変化情報を出力してもよい。また、操作パネル522に該管理ツールをインストールし、操作パネル522における管理ツールの画面に、変化情報を出力してもよい。なお、管理ツールは、パーソナルコンピュータ等の外部機器にインストールせずに、代わりに制御部500が提供する情報をブラウザーで表示し、これに基づいて管理してもよい。
【0083】
なお、受付部80Bは、複数の造形物31の各々の造形開始予定時刻の指定を受付けてもよい。この場合、取得部80Aは、複数の造形物31の各々の造形データを取得し、各々にIDを付与した上で、スケジュールDB80Jへ登録すればよい。また、スケジューリング部80Eは、受付部80Bで受付けた造形開始予定時刻および許可可否情報を、対応する造形データに対応付けて、スケジュールDB80Jへ登録すればよい。
【0084】
次に、本実施の形態の造形装置10が実行する造形処理の手順を説明する。
図6は、本実施の形態の造形装置10が実行する、造形処理の手順の一例を示す、フローチャートである。なお、
図6では、スケジュールDB80Jには、1つの造形データが登録される場合の手順を、一例として説明する。
【0085】
まず、取得部80Aが造形データを取得する(ステップS100)。すると、取得部80Aは、取得した造形データにIDを付与し、スケジュールDB80Jに登録する(ステップS102)。
【0086】
次に、受付部80Bが、ステップS100で取得した造形データの造形開始予定時刻を入力部72から受付ける(ステップS104)。スケジューリング部80Eの登録部80Fは、ステップS104で受付けた造形開始予定時刻を、ステップS100で取得した造形データに対応付けて、スケジュールDB80Jに登録する(ステップS106)。
【0087】
次に、受付部80Bが、許可可否情報を入力部72から受付ける(ステップS108)。ステップS108の処理によって、造形装置10では、指定された造形開始予定時刻に造形を開始しても問題無いか否かを、ユーザに指定させることができる。
【0088】
スケジューリング部80Eの登録部80Fは、ステップS108で受付けた許可可否情報を、ステップS100で取得した造形データに対応付けて、スケジュールDB80Jに登録する(ステップS110)。
【0089】
次に、検知部80Dが、センサ42から受付けた検出結果に基づいて、造形可能状態の変化を検知したか否かを判断する(ステップS112)。造形可能状態の変化を検知しなかった場合(ステップS112:No)、後述するステップS120へ進む。
【0090】
造形可能状態の変化を検知した場合(ステップS112:Yes)、ステップS114へ進む。ステップS114では、解除部80Gが、スケジュールDB80Jに登録されている造形可否情報が非許可を示すか否かを判断する(ステップS114)。許可を示す場合(ステップPS114:No)、後述するステップS124へ進む。非許可を示す場合(ステップS114:Yes)、ステップS116へ進む。
【0091】
ステップS116では、解除部80Gが、スケジュールDB80Jのスケジュール実行可否情報に登録されている“実行”を“解除”に変更することで、造形開始を解除する(ステップS116)。
【0092】
次に、出力制御部80Cが、ステップS112で検知した変化情報を出力部74から出力する(ステップS118)。
【0093】
次に、受付部80Bが、許可可否情報を入力部72から受付けたか否かを判断する(ステップS120)。所定時間内に許可可否情報を受付けなかった場合(ステップS120:No)、後述するステップS124へ進む。一方、許可可否情報を受付けた場合(ステップS120:Yes)、ステップS122へ進む。
【0094】
ステップS122では、ステップS122で受付けた許可可否情報を、ステップS100で取得した造形データに対応付けて、スケジュールDB80Jに登録する(ステップS122)。
【0095】
次に、造形制御部80Kが、スケジュールDB80Jに登録されている造形開始予定時刻となったか否かを判断する(ステップS124)。造形開始予定時刻となっていない場合には(ステップS124:No)、上記ステップS112へ戻る。一方、造形開始予定時刻となった場合(ステップS124:Yes)、ステップS126へ進む。
【0096】
ステップS126では、890Kが、スケジュールを実行可能であるか否かを判断する(ステップS126)。造形制御部80Kは、スケジュールDB80Jにおけるスケジュール実行可否情報が“実行”を示すか否かを判別することで、ステップS126の判断を行う。ステップS126で否定判断すると(ステップS126:No)、本ルーチンを終了する。一方、ステップS126で肯定判断すると(ステップS126:Yes)、ステップS128へ進む。
【0097】
ステップS1289でHが、造形制御部80Kが、スケジュールDB80JにおけるステップS124で判断した造形開始予定時刻に対応する造形データを用いて、造形物31を造形するように造形部70を制御する(ステップS128)。そして、本ルーチンを終了する。
【0098】
なお、造形開始予定時刻を過ぎた後に(ステップS124:Yes)、受付部80Bが“許可”を示す許可可否情報を受付けた場合には、造形制御部80Kは、該許可可否情報を受付けたときに、造形物31の造形制御を行ってもよい(ステップS128)。
【0099】
なお、造形装置10では、ステップS100で1つの造形データを取得してから、該造形データに対してステップS104で指定を受付けた造形開始予定時刻に造形が行われるまでの期間(ステップS100~ステップS128)、新たな造形データの取得を受付けないように制御してもよい。
【0100】
以上説明したように、本実施の形態の造形装置10は、造形物31の造形装置である。造形装置10は、受付部80Bと、検知部80Dと、出力制御部80Cと、を備える。受付部80Bは、造形物31の造形開始予定時刻の指定を受付ける。検知部80Dは、造形装置10の造形可能状態の変化を検知する。出力制御部80Cは、造形開始予定時刻の指定を受付けた後に造形可能状態の変化が検知されたときに、造形装置10の造形可能状態に変化が生じたことを示す変化情報を出力する。
【0101】
このように、本実施の形態の造形装置10では、造形開始予定時刻の指定を受付けた後に造形可能状態の変化が検知されたときに、造形装置10の造形可能状態に変化が生じたことを示す変化情報を出力する。
【0102】
このため、造形開始予定時刻を予約した後に装置状態が変化した場合、ユーザに対して、造形可能状態に変化が生じたことを提示することができる。すなわち、ユーザに対して、造形開始予定時刻の変更や、造形装置10の状態の確認などを促すための情報を提供することができる。
【0103】
よって、本実施の形態の造形装置10では、造形に支障をきたす状態になっている場合や、造形開始予定時刻より前に造形可能な状況になった場合であっても、造形開始予定時刻まで装置を非稼働の状態を維持したり、該造形開始予定時刻に強制的に造形処理を開始することを、抑制することができる。
【0104】
従って、本実施の形態の造形装置10では、造形効率の低下を抑制することができる。
【0105】
また、本実施の形態の造形装置10は、造形装置10の造形可能状態の変化に拘らず、造形開始予定時刻まで装置を非稼働の状態が維持されることが抑制される。このため、本実施の形態の造形装置10は、上記効果に加えて、造形装置10の有効活用を行うことができる。また、本実施の形態の造形装置10では、ユーザに対して変化情報を提供することができるため、造形開始予定時刻に造形装置10が造形に支障の生じる状態になっていることを抑制することができる。
【0106】
また、検知部80Dは、造形装置10による造形動作に支障が生じる支障状態を、造形可能状態の変化として検知する。
【0107】
受付部80Bは、造形開始予定時刻の指定と、造形開始予定時刻に強制造形開始の許可または非許可を示す許可可否情報の指定と、を受付ける。
【0108】
出力制御部80Cは、造形開始予定時刻の指定を受付けた後に造形可能状態の変化が検知され、且つ許可可否情報が強制造形開始の非許可を示す場合、変化情報を出力する。
【0109】
登録部80Fは、受付けた造形開始予定時刻を登録する。解除部80Gは、造形可能状態の変化が検知されたときに、登録済の造形開始予定時刻の造形開始を解除する。
【0110】
解除部80Gは、許可可否情報が造形開始の非許可を示す場合、登録済の造形開始予定時刻の造形開始を解除する。
【0111】
受付部80Bは、複数の造形物31の各々の造形開始予定時刻の指定を受付ける。
【0112】
また、本実施の形態の造形方法は、造形物31の造形装置10を用いた造形方法であって、造形物31の造形開始予定時刻の指定を受付けるステップと、造形装置10の造形可能状態の変化を検知するステップと、造形開始予定時刻の指定を受付けた後に造形可能状態の変化が検知されたときに、造形装置10の造形可能状態に変化が生じたことを示す変化情報を出力するステップと、を含む。
【0113】
また、本実施の形態のプログラムは、造形物31の造形装置10に接続されたコンピュータに、造形物31の造形開始予定時刻の指定を受付けるステップと、造形装置10の造形可能状態の変化を検知するステップと、造形開始予定時刻の指定を受付けた後に造形可能状態の変化が検知されたときに、造形装置10の造形可能状態に変化が生じたことを示す変化情報を出力するステップと、を実行させるためのプログラムである。
【0114】
なお、上述した実施の形態における、造形装置10で実行する上記処理を実行するためのプログラムは、インストール可能な形式または実行可能な形式のファイルでCD-ROM、フレキシブルディスク(FD)、CD-R、DVD(Digital Versatile Disk)、USB(Universal Serial Bus)メモリ等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録して提供するように構成してもよいし、インターネット等のネットワーク経由で提供または配布するように構成してもよい。また、各種プログラムを、ROM等に予め組み込んで提供するように構成してもよい。
【0115】
また、上述した実施の形態における、造形装置10で実行されるプログラムは、上記各機能部を含むモジュール構成となっており、実際のハードウェアとしては、例えば、CPU501がROM502からプログラムを読み出して実行することにより、上述した各機能部がRAM503上にロードされ、上述した各機能部がRAM503上に生成されるようになっている。なお、造形装置10の一部または全部の機能を、ASIC505やFPGA(Field-Programmable Gate Array)などの専用のハードウェアを用いて実現することも可能である。
【0116】
なお、上記には、実施の形態を説明したが、上記実施の形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。上記新規な実施の形態およびその変形例は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。上記実施の形態は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0117】
10 造形装置
80A 取得部
80B 受付部
80C 出力制御部
80D 検知部
80F 登録部
80G 解除部
80K 造形制御部
【先行技術文献】
【特許文献】
【0118】