(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-11
(45)【発行日】2022-04-19
(54)【発明の名称】液体吐出システム、液体吐出装置、および方法
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20220412BHJP
【FI】
B41J2/01 201
B41J2/01 301
B41J2/01 401
B41J2/01 451
(21)【出願番号】P 2018051784
(22)【出願日】2018-03-19
【審査請求日】2021-01-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【氏名又は名称】酒井 宏明
(72)【発明者】
【氏名】高橋 大樹
【審査官】牧島 元
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-038647(JP,A)
【文献】特開平09-048110(JP,A)
【文献】特開2003-159839(JP,A)
【文献】特開2008-302577(JP,A)
【文献】特開2010-247424(JP,A)
【文献】特開平04-366645(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0152727(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吐出周期信号、画像データ、
およびヘッドに対応する駆動波形に
基づいて対象物に液体を吐出する液体吐出ヘッドと、
前記液体吐出ヘッドが搭載され、前記対象物上を所定の方向に走査するキャリッジと、
前記キャリッジの何回の走査によって所定の行の画像を形成するかに応じて、
前記画像データを
複数回のスキャン毎の画像データに分解し、間引きするパターン
の情報を出力するパターンデータ出力部と、
前記
間引きするパターン
の情報に基づいて前記吐出周期信号を間引く吐出周期信号生成部と、
前記間引きするパターンの情報に基づいて前記スキャン毎の画像データのうち微駆動期間の無効データを間引く間引き制御部と、
を有する液体吐出システム。
【請求項2】
前記キャリッジの複数回の走査で前記所定の行の画像が形成されるように走査毎に前記画像データを分解する分解処理部を有する、
請求項
1に記載の液体吐出システム。
【請求項3】
前記パターンデータ出力部は、複数のパターン
の情報のうちから選択的にパターン
の情報を出力する、
請求項1
または2に記載の液体吐出システム。
【請求項4】
前記パターン
の情報に基づいて前記キャリッジの速度を変化させるキャリッジ制御部を有する、
請求項1乃至
3の内の何れか一項に記載の液体吐出システム。
【請求項5】
前記パターン
の情報に基づいて前記キャリッジの冷却装置を制御する冷却制御部を有する、
請求項1乃至4の内の何れか一項に記載の液体吐出システム。
【請求項6】
液体吐出ヘッドが搭載され、対象物上を所定の方向に走査するキャリッジと、
前記キャリッジの何回の走査によって所定の行の画像を形成するかに応じて、
画像データを
複数回のスキャン毎の画像データに分解した画像データと、間引きするパターン
の情報を受信する受信部と、
前記
間引きするパターン
の情報に基づい
て吐出周期信号を間引く吐出周期信号生成部と、
前記間引きするパターンの情報に基づいて前記スキャン毎の画像データのうち微駆動期間の無効データを間引く間引き制御部と、
を有する液体吐出装置。
【請求項7】
吐出周期信号、画像データ、
およびヘッドに対応する駆動波形に
基づいて対象物に液体を吐出する液体吐出ヘッドがキャリッジに搭載され、対象物上を所定の方向に走査する液体吐出装置における方法であって、
前記画像データを
複数回のスキャン毎の画像データに分解し、間引きするパターン
の情報を出力するステップと、
前記
間引きするパターン
の情報に基づいて前記吐出周期信号を間引くステップと、
前記間引きするパターンの情報に基づいて前記スキャン毎の画像データのうち微駆動期間の無効データを間引くステップと、
を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体吐出システム、液体吐出装置、および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インクジェットシリアルプリンタに於いて画像を高解像度の設定で印字する際、元の画像をスキャン毎の画像データに分解するレンダリング処理を行い、複数回のスキャンで画像を完成させる多パス印字の技術がある。この技術では、インクジェット記録ヘッドの駆動周波数に上限があるため、高解像度での印字になるにつれ記録ヘッドのキャリッジスピードが遅くなる。
【0003】
高速印字を行うために、ドットを間引いてヘッド駆動周波数を上げる技術を開示したものがある。この技術では、インク滴の吐出が連続することのないように印字ドットを間引き、間引き後の印字ドットデータに基づいてインクジェットヘッドの駆動を行う(特許文献1参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来技術ではヘッド駆動周波数を上げるために有効なドットまでもが間引かれてしまい、解像度が低下するという問題があった。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、解像度を低下させずにヘッド駆動周波数を上げることが可能な液体吐出システム、液体吐出装置、および方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するために、発明の一実施の形態の液体吐出システムは、吐出周期信号、画像データ、およびヘッドに対応する駆動波形に基づいて対象物に液体を吐出する液体吐出ヘッドと、前記液体吐出ヘッドが搭載され、前記対象物上を所定の方向に走査するキャリッジと、前記キャリッジの何回の走査によって所定の行の画像を形成するかに応じて、前記画像データを複数回のスキャン毎の画像データに分解し、間引きするパターンの情報を出力するパターンデータ出力部と、前記間引きするパターンの情報に基づいて前記吐出周期信号を間引く吐出周期信号生成部と、前記間引きするパターンの情報に基づいて前記スキャン毎の画像データのうち微駆動期間の無効データを間引く間引き制御部と、を有する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、解像度を低下させずにヘッド駆動周波数を上げることが可能になるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本実施の形態に係る液体吐出システムの全体構成の一例を示す図である。
【
図2】
図2は、シリアル型インクジェット記録装置の全体構成について説明する図である。
【
図3】
図3は、インクヘッドの一例を示す図である。
【
図4】
図4は、キャリッジ内部の構成の一例を示す図である。
【
図5】
図5は、液体吐出システムのシステムブロックの構成の一例を示す図である。
【
図6】
図6は、レンダリング部で行うレンダリング処理の説明図である。
【
図7】
図7は、吐出周期信号生成部が吐出周期信号を生成することについて説明する図である。
【
図8】
図8は、間引き制御部における間引き処理の一例を示す図である。
【
図9】
図9は、キャリッジ制御部の動作の一例を示す図である。
【
図10】
図10は、分割画像において無効データを間引かない場合と間引く場合の動作の違いを示した比較図である。
【
図11】
図11は、冷却ファンの制御方法についての説明図である。
【
図12】
図12は、第2の実施の形態に係る液体吐出装置の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照しながら、液体吐出システム、液体吐出装置、および方法の実施の形態を詳細に説明する。なお、以下の実施の形態により本発明が限定されるものではない。
【0010】
本願において、「液体を吐出する装置(液体吐出装置)」は、液体吐出ヘッドを備え、液体吐出ヘッドを駆動させて液体を吐出させる装置である。液体を吐出する装置には、液体が付着可能なもの(対象物)に対して液体を吐出することが可能な装置だけでなく、液体を気中や液中に向けて吐出する装置も含まれる。
【0011】
この「液体を吐出する装置」は、液体が付着可能なものの給送、搬送、排紙に係わる手
段、その他、前処理装置、後処理装置なども含むことができる。
【0012】
「液体を吐出する装置」として、例えばインクを吐出させて用紙に画像を形成する装置である画像形成装置、立体造形物(三次元造形物)を造形するために、粉体を層状に形成した粉体層に造形液を吐出させる立体造形装置(三次元造形装置)がある。
【0013】
また、「液体を吐出する装置」は、吐出された液体によって文字、図形等の有意な画像
が可視化されるものに限定されるものではない。例えば、それ自体意味を持たないパター
ン等を形成するもの、三次元像を造形するものも含まれる。
【0014】
上記「液体が付着可能なもの」とは、液体が少なくとも一時的に付着可能なものであって、付着して固着するもの、付着して浸透するものなどを意味する。具体例としては、用紙、記録紙、記録用紙、フィルム、布などの被記録媒体、電子基板、圧電素子などの電子部品、粉体層(粉末層)、臓器モデル、検査用セルなどの媒体であり、特に限定しない限り、液体が付着するすべてのものが含まれる。
【0015】
上記「液体が付着可能なもの」の材質は、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックスなど液体が一時的でも付着可能であればよい。
【0016】
また、「液体」は、ヘッドから吐出可能な粘度や表面張力を有するものであればよく、特に限定されないが、常温、常圧下において、または加熱、冷却により粘度が30mPa・s以下となるものであることが好ましい。より具体的には、水や有機溶媒等の溶媒、染料や顔料等の着色剤、重合性化合物、樹脂、界面活性剤等の機能性付与材料、DNA、アミノ酸やたんぱく質、カルシウム等の生体適合材料、天然色素等の可食材料、などを含む溶液、懸濁液、エマルジョンなどであり、これらは例えば、インクジェット用インク、表面処理液、電子素子や発光素子の構成要素や電子回路レジストパターンの形成用液、3次元造形用材料液等の用途で用いることができる。
【0017】
また、「液体を吐出する装置」は、液体吐出ヘッドと液体が付着可能なものとが相対的に移動する装置があるが、これに限定するものではない。具体例としては、液体吐出ヘッドを移動させるシリアル型装置、液体吐出ヘッドを移動させないライン型装置などが含まれる。
【0018】
また、「液体を吐出する装置」としては他にも、用紙の表面を改質するなどの目的で用
紙の表面に処理液を塗布するために処理液を用紙に吐出する処理液塗布装置、原材料を溶
液中に分散した組成液をノズルを介して噴射させて原材料の微粒子を造粒する噴射造粒装
置などがある。
【0019】
また、本願の用語における、画像形成、印字、印刷等はいずれも同義語とする。
また、本願の用語における「解像度」は、印刷設定の解像度を指すものとする。
【0020】
以下、「液体を吐出する装置(液体吐出装置)」の一例としてシリアル型インクジェット記録装置を示す。以下に示すシリアル型インクジェット記録装置においてインクジェット記録ヘッドが「液体吐出ヘッド」に相当する。
【0021】
(第1の実施の形態)
図1は、本実施の形態に係る液体吐出システムの全体構成の一例を示す図である。
図1に示す液体吐出システム1は、PC100とシリアル型インクジェット記録装置200とを含む。PC100は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)などのコンピュータ構成の端末である。PC100は、操作部からの起動命令に基づきCPUがROMやHDD(Hard Disk Drive)の基本ソフトやアプリケーションをRAMに読み出して実行し、実現した各種機能により画像処理を行う。また、PC100は、通信インタフェースを通じてシリアル型インクジェット記録装置200に印刷の実行を指示し、印刷データを出力する。PC100における画像処理およびシリアル型インクジェット記録装置200へ出力する印刷データ等については後述する。
【0022】
図2は、シリアル型インクジェット記録装置200の全体構成について説明する図である。
図2には、シリアル型インクジェット記録装置200の全体構成を模式的に示している。
【0023】
キャリッジ201には各色のインクジェット記録ヘッド(以下、「インクヘッド」と略す)202が配置されている。インクヘッド202は、モノクロやカラーなどの各色のインク(液体)をインク滴(液滴)として吐出する。
図2には一例としてY(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)、Bk(黒)の各色のインクを吐出する4色構成のインクヘッドを配置したものを示している。各インクヘッド202は、多数の吐出ノズルが配列されたノズル面を有し、各吐出ノズルからインク滴を吐出させる。
【0024】
キャリッジ201は、
図2の矢印A方向(主走査方向A)に往復移動可能なようにガイドロッド203により支持されている。キャリッジ201は、主走査モータ204(キャリッジモータ)の駆動により、駆動軸205と従動軸206とに架け渡したタイミングベルト207の走行を受けて主走査方向Aにスキャン動作として往復移動する。キャリッジ201にはエンコーダセンサ208が備えられている。主走査方向Aにおけるキャリッジ201の位置は、キャリッジ201の移動方向に沿って延在するエンコーダシート(リニアスケール)209をエンコーダセンサ208が読み取ることにより検出する。
【0025】
プラテン221は、インクヘッド202の上記ノズル面に対向する位置に設けられている。記録紙(液体が付着可能なもの)222は、プラテン221により吸着されながら、記録紙222の背面側に隠れている搬送機構により矢印Bの方向(副走査方向B)へ送られる。
【0026】
従って、
図2に示すシリアル型インクジェット記録装置200は、キャリッジ201の主走査方向Aへのスキャン走査と、記録紙222の副走査方向Bへの搬送とを交互に繰り返し、その過程で記録紙222上にインク滴を吐出することにより、インク滴のドットで構成される画像を記録紙222上に形成する。
【0027】
図3は、インクヘッド202の一例を示す図である。
図3(a)に、インクヘッド202のノズル面(ノズルプレートとも言う)の吐出ノズル配列の一例を示し、
図3(b)に、インクヘッド202の分解図を示している。
【0028】
図3(a)には、ノズル面311に千鳥状に配列した吐出ノズル312を示している。一例として、2列且つ各列64個の吐出ノズル312を示している。このような多数の吐出ノズル312を千鳥状に配列しているものでは高解像度の画像形成にも対応している。
【0029】
続いて、
図3(b)を参照しながらインクヘッド202の構成について説明する。なお、
図3(b)に示す図は、インクヘッド202の要部の構成を分かり易くするために、吐出ノズル312、圧力室322、リストリクタ332、圧電素子363などの数を減らして示したものである。
【0030】
インクヘッド202は、ノズルプレート311、圧力室プレート321、リストリクタプレート331、ダイアフラムプレート341、剛性プレート351、および圧電素子群361などを主に有する。
【0031】
ノズルプレート311は、吐出ノズル312が形成されたプレートであり、ノズル面を有する。圧力室322を形成した圧力室プレート321と、共通インク流路352と圧力室322を連通して圧力室322へのインク流量を制御するリストリクタ332を形成したリストリクタプレート331と、振動板342とフィルタ343を設けたダイアフラムプレート341を順次重ねて位置決めして接合することにより流路板が構成される。この流路板を剛性プレート351に接合して、フィルタ343を共通インク流路352の開口部と対向させる。インク導入パイプ353の上側開口端は、剛性プレート351の共通インク流路352に接続され、インク導入パイプ353の下側開口端は、対応色のインクタンクに接続される。
【0032】
圧電素子支持基板362上に圧電素子363を多数個配列して構成した圧電素子群361を、剛性プレート351に設けられている開口部354から挿入し、各圧電素子363の自由端を振動板342に接着固定することにより、インクヘッド202が構成される。
【0033】
圧電素子支持基板362には、駆動制御基板30(
図4参照)と接続するための電極パッド364が設けられ、駆動制御基板30と半田付けで電気的に接続される。また、圧電素子支持基板362には、駆動制御基板30からシリアル伝送される画像データ信号の指令値に応じて、圧電素子363に駆動波形を印加する圧電素子駆動IC365が搭載される。
【0034】
なお、圧電素子駆動IC365と各圧電素子363とは、銅箔パターン366により電気的に接続されている。また、圧電素子接続用電極パッド367は、圧電素子363と銅箔パターン366とを電気的に接続し、且つ、圧電素子363と圧電素子支持基板362を接着させるためのものである。
【0035】
このような構成により、インクヘッド202では、各吐出ノズル312に対応する圧電素子363の駆動状態に基づいてインク滴が吐出ノズル312から吐出する。駆動状態には、駆動と微駆動の2種類があり、駆動でインク滴を吐出する。なお、吐出動作について、ここでのこれ以上の説明は省略する。
【0036】
図4は、キャリッジ201内部の構成の一例を示す図である。キャリッジ201は、駆動制御基板30と、インクヘッド202と、ケーブル211と、冷却ファン(冷却FAN)212などを主に備える。ここで、冷却ファン212は「冷却装置」の一例である。
【0037】
インクヘッド202は、駆動制御基板30からケーブル211を通じて送信される駆動波形信号及び画像データ信号の指令値に応じて記録紙222にインク滴を吐出する。なお、
図4には、2組のインクヘッド202の装着例を示しているが、その他のインクヘッド202については図示を省略している。また、
図4に示すインクヘッド202の配置や数は、これらに限定されるものではない。
【0038】
冷却ファン212、ヘッド冷却フィン213、および基板冷却フィン214は、インクヘッド202を駆動する際に発生する熱を冷やすように機能する。
【0039】
図5は、液体吐出システム1のシステムブロックの構成の一例を示す図である。
図5には、主に、PC基板10、メインコントローラ基板20、および駆動制御基板30間のシステムブロックを示している。ここで、駆動制御基板30は、キャリッジ201に搭載されている基板である。なお、
図5に示すメインコントローラ基板20および駆動制御基板30に示す各ブロックの搭載位置を、これに限定するものではない。例えば、駆動制御基板30の一部又は全てをキャリッジ201の外部のシリアル型インクジェット記録装置200本体に搭載してもよい。
【0040】
RIP11は、例えばPC100にインストールされているソフトウエアが実行されることにより機能部として実現される。RIP11は、カラープロファイルやユーザーの設定に応じて画像処理を行い、メインコントローラ基板20に印刷を指令する。レンダリング部12は、RIP11の機能モジュールであり、印刷設定に応じて印刷画像をスキャン毎の画像データに分解し、間引きパターンの情報を出力する。ここで、レンダリング部12は「分解処理部」および「パターンデータ出力部」に相当する。間引きパターンの情報は「パターンデータ」に相当する。間引きパターンの情報は以下において「間引きパターン」と称す。
【0041】
オペレーションパネル230は、シリアル型インクジェット記録装置200のユーザインタフェースである。オペレーションパネル230は、操作部や表示部を有する。
【0042】
システム制御部21は、プリンタシステム全体を制御する。例えば、システム制御部21は、RIP11から送信される印刷指令に基づいてRIP11から印刷情報を受信し、各部を制御して印刷を実行する。本実施の形態では、レンダリング部12から印刷設定の解像度や、画像データや、間引きパターンなどの情報を受信し、各情報に基づいて各部を制御し、印刷を実行する。
【0043】
画像データ格納部22は、レンダリング部12から送信された画像データを一次的に格納するためのメモリである。
【0044】
メモリ制御部23は、画像データ格納部22に画像データを格納する。また、画像データ格納部22から画像データを読み込み、その画像データを画像データ間引き制御部(以下、「間引き制御部」と称す)25に出力する。
【0045】
吐出周期信号生成部24は、レンダリング部12から送信された間引きパターンを設定するレジスタと、解像度を設定するレジスタとを有する。吐出周期信号生成部24は、各レジスタに設定されている間引きパターンと解像度とに従い、エンコーダセンサ208からの出力信号を使用して吐出周期信号を生成し、生成した吐出周期信号を駆動波形生成部32に出力する。
【0046】
間引き制御部25は、メモリ制御部23から出力される画像データを間引きパターンに応じて間引く。メモリ制御部23は、吐出周期信号生成部24による駆動波形生成部32への吐出周期信号の出力を契機に、画像データ格納部22から画像データを読み込み、その画像データと、レジスタに設定されている間引きパターンとを間引き制御部25に出力する。間引き制御部25は、その間引きパターンで、その間引きパターンと共に出力された画像データを間引く。なお、間引きパターンが間引きなしを示すものである場合、間引き制御部25は、画像データの間引きを行わない。間引き制御部25からは、それに応じた画像データ信号がインクヘッド202に出力される。画像データ信号は、画像の有効データにおけるインク滴の大きさ(大滴、中滴、小滴など)を指定するマスクデータである。
【0047】
キャリッジ制御部26は、レンダリング部12から送信された間引きパターンを設定するレジスタと、解像度を設定するレジスタとを有する。キャリッジ制御部26は、各レジスタに設定されている間引きパターンと解像度とに基づき主走査モータ204を制御する。キャリッジ201の位置は、エンコーダセンサ208の出力信号に基づいて算出する。
【0048】
駆動波形データ格納部31は、インクヘッド202に対応した駆動波形を格納する。
【0049】
駆動波形生成部32は、吐出周期信号生成部24が出力した吐出周期信号の入力を契機に、駆動波形データ格納部31からリードした駆動波形を駆動波形データとしてD/Aコンバータ(DAC)33に出力する。
【0050】
D/Aコンバータ33は、駆動波形データをアナログ信号に変換する。オペアンプ(電圧増幅部)34は、D/Aコンバータ33から出力されるアナログ信号を電圧増幅する。電流増幅部35は、オペアンプ34から出力される駆動波形電圧を電流増幅し、電流増幅した駆動波形をインクヘッド202内の各圧電素子363(
図3(b)参照)へ供給する。
【0051】
サーミスタ41は、インクヘッド202の発熱を検知する。冷却ファン制御部36は、サーミスタ41が検出した温度に応じて冷却ファン212を制御する。
【0052】
(レンダリング処理)
印刷設定の解像度が1200dpiなどのように高い場合、記録紙222(
図2参照)の紙面上に形成されるインク滴のドット間の距離が短くなるため、隣り合うインク滴が合一する現象が発生する。これを防止するため、隣接するドットを複数スキャンに分けて紙面に形成し、この時間差により隣接するインク滴の乾燥時間を稼ぐことを行う。
【0053】
レンダリング部12は、RIP11からの指示に基づき、印刷対象の画像をスキャン毎の画像データに分解するレンダリング処理を行う。
【0054】
図6は、レンダリング部12で行うレンダリング処理の説明図である。
図6に示す元画像M1は、高解像度(一例として1200dpiとする)の画像の2次元画像イメージである。各ドットdは、主走査方向Aにおいて1200dpiの間隔で打たれる一つのドットを示している。元画像M1がベタ画像である場合、各ドットのデータは全て有効データであり、この部分を間引くと画質が低下してしまう。元画像がベタ画像でない場合などのように、有効データの一部が無効データである場合にも同様の効果は得られるが、説明を分かり易くするため、以下では元画像M1の各ドットのデータを全て有効データとして取り扱う。
【0055】
レンダリング部12は、上記レンダリング処理により、
図6に示すように元画像M1をスキャン毎の画像データ(分解画像m1、m2、・・・)に分解する。分解画像m1、m2、・・・の数は、同じ回のスキャンにおいて有効データを何個とばしで打つかに応じて変わる。
図6には、原理を分かり易く説明するために、元画像M1として主走査方向Aに8ドットのデータを有する構成のものを示している。分解画像m1、m2、・・・については、元画像M1を主走査方向Aにスキャンを4回繰り返して(4パスとも言う)で形成する場合の4つの分解画像m1、m2、m3、m4を示している。4つの分解画像m1、m2、m3、m4は、隣接するドットが同じパスで打たれないような組み合わせで分解されたものの一例である。この組み合わせの指定は、RIP11などが行い、レンダリング部12が選択的に分割を実行する。
【0056】
各分解画像m1、m2、m3、m4は、それぞれ、同じエリア(ある行の同じエリア)でのスキャンの順番を示すSCAN1、SCAN2、SCAN3、SCAN4に対応する画像データである。各分解画像m1、m2、m3、m4中の有効データを示すドットには、何回目のパスで打たれるドットなのか分かるようにするために、説明のためのものとしてスキャン番号「1」、「2」、「3」、「4」を付している。各分解画像m1、m2、m3、m4において、スキャン番号を付していないドットは、レンダリング部12で付加した無効データでる。この無効データはドットとして打たれることのないデータであり、インクヘッド202にはこの期間においてインクが吐出されることがないように微駆動を行わせる信号が出力される。
【0057】
このように、分解画像m1、m2、m3、m4はインク滴を吐出する有効データとインク滴を吐出しない無効データとによって構成されている。4回のパスにより、分解画像m1、m2、m3、m4の各有効データが順に紙面上に形成され、元画像M1に対応する画像が紙面上に構成されることになる。なお、
図6には、紙面上に構成される画像の各ドットが、どの分解画像m1、m2、m3、m4を使用して形成されたものであるか対応関係が分かるように、紙面上に全てが構成される画像も示している。各ドットには、ドットが形成されるスキャン番号を付している。
【0058】
更に、レンダリング部12は、分解画像m1、m2、m3、m4のそれぞれについて、無効データを付加したレンダリングパターンの間引きパターンを出力する。間引きパターンは、レンダリングパターンの無効データの位置を示すパターンである。本例では、各スキャン(SCAN1、SCAN2、SCAN3、SCAN4)で使用する分割画像の有効データが
図6に示す配置をとるため、SCAN1で、SCAN2、SCAN3、SCAN4の各間引きパターンを、それぞれ「0x88」、「0x22」、「0x44」、「0x11」とする。なお、各間引きパターンは16進数標記で表している。
【0059】
レンダリング部12からは、この間引きパターンと、各分割画像の画像データと、印刷設定の解像度とが、システム制御部21に送信される。
【0060】
(吐出周期信号の生成)
図7は、吐出周期信号生成部24が、レジスタに設定された間引きパターンと解像度とに従い、エンコーダセンサ208からの出力信号を使用して吐出周期信号を生成することについて説明する図である。
図7には、解像度1200dpiで間引きなし(
図7(a))の場合と、間引きあり(
図7(b))の場合との吐出周期信号を示している。
図7(a)および
図7(b)には、リニアスケール209と、エンコーダセンサ208の出力信号と、吐出周期信号生成部24が生成する吐出周期信号の一例をタイミングチャートで示している。リニアスケール209には、一例としてパターン周期が300dpiに対応するものを示している。
【0061】
図7(a)に示す間引きパターン無しでは、吐出周期信号生成部24は、1200dpiの吐出周期信号を生成するために、エンコーダセンサ208の出力信号から
図7(a)に示す吐出周期信号を生成している。インクヘッド202は、各立ち上がりのタイミングで吐出のための駆動(大滴を吐出する駆動や、微駆動等)を行う。
【0062】
図7(b)に示す間引きパターン(「0x88」、「0x22」、「0x44」、「0x11」)のものでは、間引き制御部25から、各間引きパターンに応じて各分割画像m1、m2、m3、m4から無効データを間引いた画像データが出力されるため、吐出周期信号生成部24は、それぞれの間引きパターンに応じた吐出周期信号を生成する。
図7(b)において、実線と破線とを組み合わせた吐出周期信号が
図7(a)に示す吐出周期信号である。実線のみで示される吐出周期信号は、それぞれの間引きパターンに応じて間引きを行った後の吐出周期信号である。このように、吐出周期信号を間引き、スキャン毎に吐出タイミングをずらすことにより、各スキャン時に有効データにおいてのみ駆動させる。
【0063】
(間引き処理)
メモリ制御部23は、吐出周期信号生成部24が生成した吐出周期信号の出力を契機とし、画像データ格納部22からスキャン毎に分解された画像データをそれぞれの吐出周期信号の出力タイミングでリードし、吐出周期信号を生成した間引きパターンと共に間引き制御部25に受け渡す。
【0064】
図8は、間引き制御部25における間引き処理の一例を示す図である。
図8(a)に示すようにレンダリング後の画像データは、本例では主走査方向Xの8ドットを4パス(SCAN1、SCAN2、SCAN3、SCAN4)で完成させるレンダリングパターンである。このため、各間引きパターンを「0x88」、「0x22」、「0x44」、「0x11」と表している。間引き制御部25では、画像データ格納部22から順次所定のタイミングで読み出された画像データ(分割画像m1、m2、m3、m4)を対象に、それぞれの間引きパターンに従って無効データ(付加された無効データ)を周期的に間引く。
図8(a)において破線で示すドットは、データが間引かれたドットを示している。
【0065】
具体的に、間引き制御部25は、
図8(a)に示すように、それぞれの間引きパターンに基づいてレンダリング後の画像データを間引く。間引きパターンは、この例では、分割画像m1、m2、m3、m4において3/4の無効データを間引く設定のものであるため、レンダリング部12で付加された無効データが全てここで間引かれ、元画像M1を構成する有効データが残ることになる。
【0066】
ここで、その他の間引きパターンによる間引き処理について説明する。
図8(a)は、レンダリング部12が分割画像m1、m2、m3、m4において3/4の無効データを間引く間引きパターンを一例として示したものであるが、間引きパターンは、これに限らない。レンダリング部12が無効データを間引くパターンであれば、その他の間引きパターン、2/4や1/4であってもよい。例えば、印刷設定の解像度や作像のシーケンスなどにより、その他の最適なパターンを出力してよい。
【0067】
図8(b)は、8ドットを2パス(SCAN1、SCAN2)で完成させる場合の間引きの例である。
図8(b)においては、各間引きパターンは「0xAA」、「0x55」で示される。
図8(b)に示すように、2パスの場合、ドットを一つとばしに設定し、2回のスキャンで画像を構成する。間引きは、各パスの間引きパターンに従って行われ、
図8(b)に破線で示すドットのように無効データが間引かれる。
【0068】
(キャリッジ制御)
図9は、キャリッジ制御部26の動作の一例を示す図である。キャリッジ制御部26は、
図9に示す速度対応表から、解像度と間引きパターンとに対応するキャリッジ速度を選択し、キャリッジ201の速度を切り替える。
図9に示すように、高解像度であっても、間引きなしの場合に比べ間引きありでは、キャリッジ201の速度が上がることになる。例えば、解像度1200dpiの画像形成を間引き無しで行うと、キャリッジ201の速度は200mm/sにしかならないが、1/2間引き(
図8(b)に対応)で行うと、速度が400mm/sと上がり、3/4間引き(
図8(a)に対応)で行うと、速度が800mm/sにもなる。つまり、高解像度において高速印刷が可能となり、さらに有効データは間引かないので画質の低下も抑止することができる。これは、解像度600dpiにおいても同様のことが言える。
【0069】
図10は、分割画像m1、m2、・・・において無効データを間引かない場合と間引く場合の動作の違いを隣り合わせで並べて示した比較図である。なお、
図10において「微」で示す期間は、無効データの微駆動期間を示している。「大」は大滴を吐出する駆動時間を示している。
【0070】
図10において、間引きなしの場合、1回の吐出当たり、4回の駆動が必要になるため、キャリッジ201が低速になる。間引き有りの場合、無効データの微駆動時間を省略することができるので、その省略時間に応じてキャリッジ201がより高速に動作する。
【0071】
一般に、キャリッジの速度を上げるためには、インクヘッドの最大駆動周波数を向上させる必要があり、技術的難易度が高く、コストアップにも繋がる。しかし、本実施の形態では、分割画像の無効データを間引き、これに合わせて吐出周期信号の駆動回数を減らすため、1回の吐出当たり、1回の駆動で済むことになり、インクヘッドの最大駆動周波数を向上することなく、キャリッジの速度を従来方式に比べ高速(本例では4倍)にすることが可能になる。従って、生産性も高まる。
【0072】
以上により、本実施の形態においては、解像度を低下させずにヘッド駆動周波数を上げることが可能になるという効果を奏する。
【0073】
図11は、冷却ファン212の制御方法についての説明図である。
図11のグラフに示すように、キャリッジ201の発熱量は駆動周波数の増加と共に高くなる。インクヘッド202と駆動制御基板30は,駆動周期が高くなる程発熱量が多くなることが知られている。これは、時間当たりに流れる電流が増加するためである。そこで、駆動周期をそのままにすることを考える。
【0074】
高速化せずに同じ速度に維持する構成において、同様の間引きを行えば、駆動周波数が下がり、発熱量を下げることが可能になる。発熱量が下がると装置の小型化が可能になる。一般的に、インクヘッドと駆動制御基板には、ヘッド冷却フィン213や基板冷却フィン214などの放熱用のフィン(
図4参照)が設けられている。さらに、冷却ファン212によりフィンを冷やしている。これらは、発熱量が多い程、大型化しコストアップに繋がっている。
【0075】
図11に示す表には、間引きパターンと冷却ファンの消費電力との関係を示している。
図11に示すように、本実施の形態において示す間引きを取り入れれば、発熱量を低く抑えることが可能になるので、冷却ファンの消費電力が抑えられる。また、フィンなどの小型化、部品コストの削減なども可能になる。
【0076】
また、冷却ファン制御部36が間引きパターンに応じて冷却ファン212の駆動を切り替えることで
図11の表に示すような消費電力を削減することも可能になる。
【0077】
本実施の形態においては主走査方向への複数回のスキャンで画像を形成する例を示したが、これは原理説明のための例であり、主走査と副走査のうちの一つまたはこれらの組み合わせにより画像を形成するあらゆるスキャン方式に採用してよい。
【0078】
(第2の実施の形態)
図12は、第2の実施の形態に係る液体吐出装置の一例を示す図である。
図12には、液体吐出装置の一例のシリアル型インクジェット記録装置200のシステム構成を示している。
図12において、
図5と異なる点は、RIP11とレンダリング部12とがメインコントローラ基板20に搭載されていることである。つまり、
図12に示すシリアル型インクジェット記録装置200は、装置内で印刷画像のレンダリング処理等を行うことができる。その他の各部の機能や、信号の流れなどについては、第1の実施の形態と略同様であるため、これ以上の説明は省略する。第2の実施の形態に係る液体吐出装置においても第1の実施の形態にかかる液体吐出システムにおける効果と同等の効果が得られる。
【符号の説明】
【0079】
10 PC基板
11 RIP
12 レンダリング部
20 メインコントローラ基板
21 システム制御部
22 画像データ格納部
23 メモリ制御部
24 吐出周期信号生成部
25 間引き制御部
26 キャリッジ制御部
30 駆動制御基板
31 駆動波形データ格納部
32 駆動波形生成部
33 D/Aコンバータ
34 電圧増幅部
35 電流増幅部
36 冷却ファン制御部
41 サーミスタ
100 PC
200 シリアル型インクジェット記録装置
201 キャリッジ
204 主走査モータ
208 エンコーダセンサ
212 冷却ファン
230 オペレーションパネル
【先行技術文献】
【特許文献】
【0080】