(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-11
(45)【発行日】2022-04-19
(54)【発明の名称】画像形成装置、記録媒体の搬送方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
B41J 29/393 20060101AFI20220412BHJP
G01J 3/52 20060101ALI20220412BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20220412BHJP
【FI】
B41J29/393 103
G01J3/52
B41J2/01 451
(21)【出願番号】P 2018051810
(22)【出願日】2018-03-19
【審査請求日】2021-01-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【氏名又は名称】酒井 宏明
(72)【発明者】
【氏名】藤井 正幸
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 信行
(72)【発明者】
【氏名】升永 傑
(72)【発明者】
【氏名】岩波 智史
【審査官】佐藤 孝幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-129192(JP,A)
【文献】特開2008-254221(JP,A)
【文献】特開2013-115476(JP,A)
【文献】特開2013-111774(JP,A)
【文献】特開2017-035837(JP,A)
【文献】特開2018-160825(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0237683(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 29/393
G01J 3/52
B41J 2/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体を第1の方向および該第1の方向の逆方向である第2の方向に搬送可能な搬送手段と、
前記記録媒体に
複数のマーカパターンを形成するとともに、該
複数のマーカパターンの形成後に前記搬送手段により前記第1の方向に所定距離搬送された前記記録媒体に測色パターンを形成する画像形成手段と、
前記マーカパターンを撮像する撮像手段と、を備え、
前記複数のマーカパターンは、前記測色パターンとの間の前記第1の方向における距離がそれぞれ異なり、かつ、色が互いに異なり、
前記搬送手段は、
前記測色パターンの定着後に、前記撮像手段から前記マーカパターンまでの距離以上、前記記録媒体を前記第2の方向に搬送した後、前記撮像手段により前記
複数のマーカパターン
のうちの1つが検知されるまで前記記録媒体を前記第1の方向に搬送し、
前記撮像手段により前記
複数のマーカパターン
のうちの1つが検知されると、前記測色パターンを測色可能な位置まで前記記録媒体を前記第1の方向に搬送する、
画像形成装置。
【請求項2】
記録媒体を第1の方向および該第1の方向の逆方向である第2の方向に搬送可能な搬送手段と、
前記記録媒体に複数のマーカパターンを形成するとともに、該複数のマーカパターンの形成後に前記搬送手段により前記第1の方向に所定距離搬送された前記記録媒体に測色パターンを形成する画像形成手段と、
前記マーカパターンを撮像する撮像手段と、を備え、
前記複数のマーカパターンは、前記測色パターンとの間の前記第1の方向における距離がそれぞれ異なり、かつ、形状が互いに異なり、
前記搬送手段は、
前記測色パターンの定着後に、前記撮像手段から前記マーカパターンまでの距離以上、前記記録媒体を前記第2の方向に搬送した後、前記撮像手段により前記複数のマーカパターンのうちの1つが検知されるまで前記記録媒体を前記第1の方向に搬送し、
前記撮像手段により前記複数のマーカパターンのうちの1つが検知されると、前記測色パターンを測色可能な位置まで前記記録媒体を前記第1の方向に搬送する、
画像形成装置。
【請求項3】
前記複数のマーカパターンは、前記第1の方向と直交する方向において異なる位置に形成される、
請求項
1または2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記搬送手段は、前記撮像手段により前記マーカパターンが検知されると、検知された前記マーカパターンの画像上の位置と前記所定距離とに基づいて前記撮像手段から前記測色パターンまでの距離を算出し、算出した距離だけ前記記録媒体を前記第1の方向に搬送し、
前記撮像手段は、前記測色パターンをさらに撮像する、
請求項1乃至
3のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記撮像手段は、撮像した前記測色パターンの画像データを用いて前記測色パターンの測色値を算出する、
請求項
4に記載の画像形成装置。
【請求項6】
画像形成装置における記録媒体の搬送方法であって、
複数のマーカパターンが形成された前記記録媒体を第1の方向に所定距離搬送し、
前記所定距離搬送した前記記録媒体に形成された測色パターンの定着後に、前記マーカパターンを撮像する撮像手段から前記マーカパターンまでの距離以上、前記記録媒体を前記第1の方向の逆方向である第2の方向に搬送した後、前記撮像手段により前記
複数のマーカパターン
のうちの1つが検知されるまで前記記録媒体を前記第1の方向に搬送し、
前記複数のマーカパターンは、前記測色パターンとの間の前記第1の方向における距離がそれぞれ異なり、かつ、色が互いに異なり、
前記撮像手段により前記
複数のマーカパターン
のうちの1つが検知されると、前記測色パターンを測色可能な位置まで前記記録媒体を前記第1の方向に搬送する、
記録媒体の搬送方法。
【請求項7】
請求項
6に記載の記録媒体の搬送方法を画像形成装置に実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置、記録媒体の搬送方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、測色パターンを形成した記録媒体を下流側に搬送して乾燥装置により測色パターンを乾燥させた後、上流側に巻き戻して測色器による測色を行う画像形成装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。この構成の画像形成装置によれば、測色パターンを記録媒体に形成してから測色パターンの測色を行うまでの時間を短縮できる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、記録媒体を上流側に巻き戻して測色パターンの測色を行う構成では、巻き戻しの搬送によって測色パターンを測色器に正確に位置合わせするのが難しく、測色パターンを正しく測色できない懸念があった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上述した課題を解決するために、本発明に係る画像形成装置は、記録媒体を第1の方向および該第1の方向の逆方向である第2の方向に搬送可能な搬送手段と、前記記録媒体に複数のマーカパターンを形成するとともに、該複数のマーカパターンの形成後に前記搬送手段により前記第1の方向に所定距離搬送された前記記録媒体に測色パターンを形成する画像形成手段と、前記マーカパターンを撮像する撮像手段と、を備え、前記複数のマーカパターンは、前記測色パターンとの間の前記第1の方向における距離がそれぞれ異なり、かつ、色が互いに異なり、前記搬送手段は、前記測色パターンの定着後に、前記撮像手段から前記マーカパターンまでの距離以上、前記記録媒体を前記第2の方向に搬送した後、前記撮像手段により前記複数のマーカパターンのうちの1つが検知されるまで前記記録媒体を前記第1の方向に搬送し、前記撮像手段により前記複数のマーカパターンのうちの1つが検知されると、前記測色パターンを測色可能な位置まで前記記録媒体を前記第1の方向に搬送する。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、記録媒体に形成した測色パターンに対する測色位置の位置合わせを精度良く行うことができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】
図1は、画像形成装置の内部を透視して示す斜視図である。
【
図2】
図2は、キャリッジの走査機構を示す平面図である。
【
図3】
図3は、記録媒体の搬送機構を示す側面図である。
【
図4】
図4は、画像形成装置の制御機構の概略構成を示すブロック図である。
【
図5】
図5は、画像形成装置のキャリブレーション時に記録媒体に形成される画像例を示す図である。
【
図6】
図6は、副走査上流方向の搬送誤差を説明する図である。
【
図7】
図7は、副走査上流方向への搬送後の記録媒体上のマーカパターンおよび測色パターンと撮像ユニットの撮像範囲との位置関係を示す図である。
【
図8】
図8は、撮像ユニットが撮像した画像上のマーカパターンの一例を示す図である。
【
図9】
図9は、測色パターンの中で最初に測色を行うパッチを撮像ユニットで撮像した様子を示す図である。
【
図10】
図10は、キャリブレーション時に画像形成装置により実行される処理の手順を示すフローチャートである。
【
図11】
図11は、副走査上流方向への搬送後の記録媒体上のマーカパターンおよび測色パターンと撮像ユニットの撮像範囲との位置関係を示す図である。
【
図12】
図12は、撮像ユニットが撮像した画像上のマーカパターンの一例を示す図である。
【
図13】
図13は、キャリブレーション時に画像形成装置により実行される処理の手順を示すフローチャートである。
【
図14】
図14は、複数のマーカパターンの他の例を説明する図である。
【
図15】
図15は、副走査上流方向への搬送後の記録媒体上のマーカパターンおよび測色パターンと撮像ユニットの撮像範囲および測色ユニットの測色範囲との位置関係を示す図である。
【
図16】
図16は、画像形成装置の制御機構の概略構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下に添付図面を参照して、この発明に係る画像形成装置、記録媒体の搬送方法およびプログラムの実施形態を詳細に説明する。なお、以下で説明する実施形態では、本発明を適用した画像形成装置の一例としてシリアルヘッド方式のインクジェットプリンタを例示する。
【0008】
まず、
図1乃至
図3を参照しながら、本実施形態の画像形成装置100の機械的構成について説明する。
図1は、画像形成装置100の内部を透視して示す斜視図、
図2は、画像形成装置100が備えるキャリッジ5の走査機構を示す平面図、
図3は、記録媒体Mの搬送機構を示す側面図である。
【0009】
図1および
図2に示すように、本実施形態の画像形成装置100は、図中矢印Aで示す主走査方向に往復移動するキャリッジ5を備える。キャリッジ5は、主走査方向Aに沿って延設された主ガイドロッド3により支持されている。また、キャリッジ5には連結片5aが設けられている。連結片5aは、主ガイドロッド3と平行に設けられた副ガイドレール4に係合し、キャリッジ5の姿勢を安定化させる。
【0010】
キャリッジ5には、
図2に示すように、4つの記録ヘッド6y,6m,6c,6kが搭載されている。記録ヘッド6yは、イエロー(Y)インクを吐出する記録ヘッドである。記録ヘッド6mは、マゼンタ(M)インクを吐出する記録ヘッドである。記録ヘッド6cは、シアン(C)インクを吐出する記録ヘッドである。記録ヘッド6kは、ブラック(Bk)インクを吐出する複数の記録ヘッドである。以下、これら記録ヘッド6y,6m,6c,6kを総称する場合は、記録ヘッド6という。記録ヘッド6は、その吐出面(ノズル面)が下方(記録媒体M側)に向くように、キャリッジ5に支持されている。
【0011】
記録ヘッド6にインクを供給するためのインク供給体であるカートリッジ7は、キャリッジ5には搭載されず、画像形成装置100内の所定の位置に配置されている。カートリッジ7と記録ヘッド6とは図示しないパイプで連結されており、このパイプを介して、カートリッジ7から記録ヘッド6に対してインクが供給される。
【0012】
キャリッジ5は、駆動プーリ9と従動プーリ10との間に張架されたタイミングベルト11に連結されている。駆動プーリ9は、主走査モータ8の駆動により回転する。従動プーリ10は、駆動プーリ9との間の距離を調整する機構を有し、タイミングベルト11に対して所定のテンションを与える役割を持つ。キャリッジ5は、主走査モータ8の駆動によりタイミングベルト11が送り動作されることにより、主走査方向Aに往復移動する。キャリッジ5の主走査方向Aの移動は、例えば
図2に示すように、キャリッジ5に設けられた主走査エンコーダセンサ13がエンコーダシート14のマークを検知して得られるエンコーダ値に基づいて制御される。
【0013】
また、本実施形態の画像形成装置100は、記録ヘッド6の信頼性を維持するための維持機構15を備える。維持機構15は、記録ヘッド6の吐出面の清掃やキャッピング、記録ヘッド6からの不要なインクの排出などを行う。
【0014】
キャリッジ5が往復移動する移動経路の下方には、
図2に示すように、プラテン16が配置されている。プラテン16は、記録ヘッド6から記録媒体M上にインクを吐出する際に、記録媒体Mを支持するためのものである。すなわち、記録媒体Mは、
図3に示す搬送機構によって図中矢印Bで示す副走査下流方向(第1の方向)に間欠的に搬送される。そして、記録媒体Mの副走査下流方向Bの搬送が停止している間に、キャリッジ5を主走査方向Aに移動させながら、キャリッジ5に搭載された記録ヘッド6のノズル列からプラテン16上の記録媒体M上にインクを吐出することにより、記録媒体Mに画像を形成する。その後、画像が形成された記録媒体Mは、副走査下流方向Bにさらに搬送され、乾燥ヒータ17により乾燥処理される。
【0015】
本実施形態の画像形成装置100は、色調整などのキャリブレーションを行う際に、記録ヘッド6から記録媒体M上にインクを吐出し、測色対象となるパッチ群からなる測色パターンと、測色パターンの位置を特定するためのマーカパターンを記録媒体Mに形成する。測色パターンは、インクが未乾燥の状態であると色が安定せず、正しい測色値が得られない。このため、本実施形態の画像形成装置100は、記録媒体Mに測色パターンとマーカパターンを形成した後、この記録媒体Mを副走査下流方向Bに搬送して乾燥ヒータ17により乾燥処理する。そして、この乾燥処理によりインクが乾燥して測色パターンの色が安定した後、記録媒体Mを図中矢印Cで示す副走査上流方向(第2の方向)に搬送し、測色パターンの測色を行う。
【0016】
本実施形態の画像形成装置100は、記録媒体Mに形成された測色パターンの測色を行うための撮像ユニット20を備える。撮像ユニット20は、
図2に示すように、記録ヘッド6が搭載されたキャリッジ5に支持され、記録媒体Mの搬送とキャリッジ5の移動により記録媒体M上の所望の位置に移動することができる。この撮像ユニット20は、記録媒体Mに形成された測色パターンの各パッチと対向する位置にあるときに撮像を行い、撮像により得られた画像のRGB値をもとに測色パターンを構成する各パッチの測色値(標準色空間における表色値であり、例えばL
*a
*b
*色空間におけるL
*a
*b
*値)を算出する。また、この撮像ユニット20は、後述のように、測色パターンの位置を特定するために、記録媒体Mに形成されたマーカパターンを検知する機能を持つ。
【0017】
本実施形態の画像形成装置100を構成する上記の各構成要素は、外装体1の内部に配置されている。外装体1にはカバー部材2が開閉可能に設けられている。画像形成装置100のメンテナンス時やジャム発生時には、カバー部材2を開けることにより、外装体1の内部に設けられた各構成要素に対して作業を行うことができる。
【0018】
記録媒体Mは、
図3に示すように、給紙ローラ31に巻かれた状態で画像形成装置100にセットされる。記録媒体Mの先端は、給紙ガイド32、搬送ローラ33、プラテン16および排紙ガイド34上を通して、巻き取りローラ35に固定される。
【0019】
給紙ローラ31、搬送ローラ33および巻き取りローラ35は、それぞれ、給紙モータ、搬送モータおよび巻き取りローラにより駆動される。記録媒体Mを副走査下流方向Bに搬送する場合は、搬送ローラ33および巻き取りローラ35が、
図3において反時計回りとなる方向に回転駆動される。この際、搬送中の記録媒体Mに搬送経路上で撓みが発生しないように、給紙ローラ31は、
図3において時計回りの方向にトルクが発生するように回転速度が制御される。一方、記録媒体Mを副走査上流方向Cに搬送(巻き戻し搬送)する場合は、搬送ローラ33および給紙ローラ31が、
図3において時計回りとなる方向に回転駆動される。この際、搬送中の記録媒体Mに搬送経路上で撓みが発生しないように、巻き取りローラ35は、
図3において時計回りの方向にトルクが発生するように回転速度が制御される。
【0020】
給紙ローラ31の回転は、給紙ローラ31に設けられた給紙エンコーダセンサ36がエンコーダシート37のマークを検知して得られるエンコーダ値に基づいて制御される。また、巻き取りローラ35の回転は、巻き取りローラ35に設けられた巻き取りエンコーダセンサ38がエンコーダシート39のマークを検知して得られるエンコーダ値に基づいて制御される。また、給紙エンコーダセンサ36が出力するエンコーダ値を用いて給紙ローラ31側のロール径(給紙ロール径)を算出し、巻き取りエンコーダセンサ38が出力するエンコーダ値を用いて巻き取りローラ35側のロール径(巻き取りロール径)を算出することもできる。
図3は、給紙ロール径が大きく、巻き取りロール径が小さい状態を示している。
【0021】
記録媒体Mは、搬送ローラ33への食い込みによりグリップ力を受けて搬送される。搬送ローラ33への記録媒体Mの食い込みが大きいと、搬送ローラ33の見かけ上のローラ径が小さくなり、逆に、搬送ローラ33への記録媒体Mの食い込みが小さいと、搬送ローラ33の見かけ上のローラ径が大きくなる。このため、搬送ローラ33の回転量が同じであっても、記録媒体Mの食い込みが小さい場合の方が、記録媒体Mの食い込みが大きい場合よりも搬送量が大きくなる。
【0022】
搬送ローラ33への記録媒体Mの食い込みは、給紙ロール径や搬送ロール径に依存して変化する。記録媒体Mを副走査下流方向Bに搬送する場合は、巻き取りロール径が小さいほど、また、給紙ロール径が大きいほど、搬送ローラ33への記録媒体Mの食い込みが小さくなり、その結果、記録媒体Mの搬送量が大きくなる。一方、記録媒体Mを副走査上流方向Cに搬送する場合は、記録媒体Mを副走査下流方向Bに搬送する場合とは逆に、巻き取りロール径が小さいほど、また、給紙ロール径が大きいほど、搬送ローラ33への記録媒体Mの食い込みが大きくなり、その結果、記録媒体Mの搬送量が小さくなる。また、搬送ローラ33への記録媒体Mの食い込みは、記録媒体Mの種類によって差が発生する。
【0023】
記録媒体Mに画像を形成する際は、上述のように、記録媒体Mを副走査下流方向Bに搬送するため、副走査下流方向Bへの記録媒体Mの搬送量は高精度に制御する必要がある。このため、記録媒体Mを副走査下流方向Bに搬送する際は、給紙ロール径や巻き取りロール径と記録媒体Mの種類とに応じて搬送ローラ33の回転量を調整することで、記録媒体Mの搬送量が一定になるように制御している。
【0024】
一方、記録媒体Mの副走査上流方向Cへの搬送(巻き戻し搬送)は、通常、画像形成時のように正確な位置合わせは必要とされず、記録媒体Mの搬送量を高精度に制御する必要はない。しかし、従来技術のように記録媒体Mを巻き戻し搬送して測色パターンの測色を行おうとすると正確な位置合わせが必要となり、記録媒体Mの搬送量を高精度に制御する必要が生じる。ここで、給紙ロール径や搬送ロール径に応じた記録媒体Mの搬送誤差は、上述のように、副走査下流方向Bへの搬送時と副走査上流方向Cへの搬送時とで逆の特性になるため、副走査下流方向Bへの搬送時に行う制御をそのまま搬送時と副走査上流方向Cへの搬送時に適用することはできない。また、副走査下流方向Bへの搬送時と副走査上流方向Cへの搬送時とで個別に記録媒体Mの搬送量を高精度に制御しようとすると、制御が煩雑となる。
【0025】
そこで、本実施形態では、記録媒体Mに形成した測色パターンの測色を行う際は、測色パターンとマーカパターンを形成した記録媒体Mを搬送量の誤差も含めて多めに副走査上流方向Cに搬送する。その後、この記録媒体Mを副走査下流方向Bに搬送しながら撮像ユニット20によりマーカパターンを検知し、マーカパターンが検知された位置を基準に記録媒体Mを副走査下流方向Bに搬送して測色パターンと撮像ユニット20との位置合わせを行う。これにより、副走査上流方向Cへの搬送時に記録媒体Mの搬送量を高精度に制御することなく、測色パターンと撮像ユニット20との位置合わせを精度良く行って、測色パターンの測色を適切に行うことができる。
【0026】
なお、本実施形態では、上述の搬送ローラ33に金属ローラを用いることを想定している。金属ローラはローラの山に記録媒体Mを食い込ませることで搬送時のグリップ力を得るが、上述のように、記録媒体Mの食い込みの差によって搬送誤差を生じさせることになる。これに対し、搬送ローラ33にセラミックローラやゴムローラを用いた場合は、搬送ローラ33への記録媒体Mの食い込みの差による搬送誤差は発生しないが、給紙ロール径や搬送ロール径に依存して記録媒体Mが搬送ローラ33上をスリップする場合があり、結果的に同様の搬送誤差が生じる。したがって、本実施形態の手法は、搬送ローラ33に金属ローラを用いる場合に限らず、セラミックローラやゴムローラを用いた場合にも有効な手法である。
【0027】
次に、
図4を参照しながら、本実施形態の画像形成装置100の制御機構の概略構成について説明する。
図4は、画像形成装置100の制御機構の概略構成を示すブロック図である。本実施形態の画像形成装置100は、
図4に示すように、主走査部40、搬送部50、巻き取り部60、給紙部70および制御部80を備える。
【0028】
主走査部40は、キャリッジ5と、キャリッジ5を駆動する主走査モータ8とを含む。キャリッジ5には、上述したように、記録ヘッド6と、主走査エンコーダセンサ13と、撮像ユニット20とが搭載されている。撮像ユニット20は、固体撮像素子を用いたカラーイメージセンサである二次元センサ21と、この二次元センサ21の動作を制御するとともに二次元センサ21が出力する画像データを処理する二次元センサ用CPU22とを備える。特にこの二次元センサ用CPU22は、測色パターンの測色時に二次元センサ21が出力する画像データを用いて測色パターンの測色値を算出する機能を持つ。二次元センサ用CPU22が測色パターンの測色値を算出する方法は、例えば、特開2015-131483号公報に開示される方法を用いることができる。
【0029】
搬送部50は、上述の搬送ローラ33と、搬送ローラ33を駆動する副走査モータ51と、搬送ローラ33の回転量に応じたエンコーダ値を出力する副走査エンコーダセンサ52とを含む。
【0030】
巻き取り部60は、上述の巻き取りローラ35と、巻き取りローラ35を駆動する巻き取りモータ61と、巻き取りローラ35の回転量に応じたエンコーダ値を出力する巻き取りエンコーダセンサ38とを含む。
【0031】
給紙部70は、上述の給紙ローラ31と、給紙ローラ31を駆動する給紙モータ71と、給紙ローラ31の回転量に応じたエンコーダ値を出力する給紙エンコーダセンサ36とを含む。
【0032】
制御部80は、CPU81と、FPGA82と、モータドライバ83とを含む。制御部80は、これらCPU81、FPGA82およびモータドライバ83を用いて、画像形成装置100の各種動作を制御する。例えば、制御部80は、主走査エンコーダセンサ13が出力するエンコーダ値に基づいて主走査モータ8の動作を制御することで、キャリッジ5の移動を制御する。また、制御部80は、副走査エンコーダセンサ52が出力するエンコーダ値に基づいて副走査モータ51の動作を制御し、巻き取りエンコーダセンサ38が出力するエンコーダ値に基づいて巻き取りモータ61の動作を制御し、給紙エンコーダセンサ36が出力するエンコーダ値に基づいて給紙モータ71の動作を制御することで、記録媒体Mの搬送を制御する。また、制御部80は、これらキャリッジ5の移動制御と記録媒体Mの搬送制御と併せて、キャリッジ5に搭載された記録ヘッド6からのインクの吐出を制御することで、記録媒体Mに所望の画像を形成させる。その他、制御部80は、目的に応じた様々な制御機能を持つ。
【0033】
本実施形態の画像形成装置100において、搬送部50、巻き取り部60、給紙部70および制御部80は、記録媒体Mを搬送する「搬送手段」に相当する。この画像形成装置100の搬送手段は、制御部80の制御により、記録媒体Mを副走査下流方向Bと副走査上流方向Cとの双方に搬送可能である。
【0034】
また、本実施形態の画像形成装置100において、キャリッジ5に搭載された記録ヘッド6と制御部80は、記録媒体Mに画像を形成する「画像形成手段」に相当する。この画像形成装置100の画像形成手段は、色調整などのキャリブレーションを行う際に、記録媒体Mにマーカパターンと測色パターンとを形成する。マーカパターンは、測色パターンの位置を特定するためのものである。測色パターンは、マーカパターンから副走査下流方向Bに所定距離離れた位置に形成される。つまり、測色パターンは、マーカパターンの形成後に搬送手段により副走査下流方向Bに所定距離搬送された記録媒体Mに形成される。
【0035】
また、本実施形態の画像形成装置100において、キャリッジ5に搭載された撮像ユニット20は、記録媒体Mに形成された測色パターンを撮像する「撮像手段」に相当する。この撮像ユニット20は、上述のように、記録媒体Mに形成されたマーカパターンを検出する機能と、撮像した測色パターンの画像データを用いて測色パターンの測色値を算出する機能を持つ。
【0036】
図5は、画像形成装置100のキャリブレーション時に記録媒体Mに形成される画像例を示す図である。画像形成装置100は、色調整などのキャリブレーションを行う際に、例えば
図5に示すように、m行×n列のパッチ群P1-1~Pm-nからなる測色パターンPとマーカパターンXを記録媒体Mに形成する。1行目のパッチ中心からm行目のパッチ中心までの距離をDとする。マーカパターンXは、1行目のパッチ中心から所定距離L[mm]だけ副走査下流方向Bに離れた位置であって、かつ、最初に測色を行うパッチP1-1と主走査方向Aにおいて重なる位置に形成する。
【0037】
次に、記録媒体Mに形成した測色パターンPの測色時における記録媒体Mの搬送制御の詳細について説明する。本実施形態の画像形成装置100は、マーカパターンXと測色パターンPを形成した記録媒体Mを副走査下流方向Bに搬送し、乾燥ヒータ17による乾燥処理を行う。そして、乾燥処理によって測色パターンPが乾燥した後、撮像ユニット20がマーカパターンXを検知できる位置まで、記録媒体Mを副走査上流方向Cに搬送する。このとき、搬送誤差を考慮して、記録媒体Mを副走査上流方向Cに多めに搬送する。
【0038】
なお、本実施形態の画像形成装置100は、マーカパターンXと測色パターンPを形成した記録媒体Mを副走査下流方向Bに搬送し、乾燥ヒータ17による乾燥処理を行う構成であるが、自然乾燥によって測色パターンPを乾燥させる構成としてもよい。この場合、マーカパターンXと測色パターンPを形成した記録媒体Mは副走査下流方向Bに搬送されず、測色パターンPが乾燥するまでその位置で待機する。そして、測色パターンPが乾燥した後、撮像ユニット20がマーカパターンXを検知できる位置まで、記録媒体Mを副走査上流方向Cに搬送する。
【0039】
図6は、副走査上流方向Cの搬送誤差を説明する図である。搬送誤差ΔSは、「狙いの搬送量S-実際の搬送量」と定義できる。搬送誤差ΔSが取り得る範囲(図中の斜線部)は、狙いの搬送量Sに比例して大きくなる。また、搬送誤差ΔSが取り得る範囲の傾きは、記録媒体Mの種類によって変化する。搬送誤差ΔSがプラス側の値となるのは、狙いの搬送量Sに対して実際の搬送量が不足している場合である。逆に、搬送誤差ΔSがプラス側の値となるのは、狙いの搬送量Sより実際の搬送量が大きい場合である。本実施形態では、搬送誤差ΔSのプラス側の最大値ΔSmaxを搬送量マージンとする。
【0040】
なお、狙いの搬送量Sに応じた搬送誤差ΔSのプラス側の最大値ΔSmaxは、記録媒体Mの種類に応じて変化する。このため、予め記録媒体Mの種類ごとに、狙いの搬送量Sに応じた搬送誤差ΔSのプラス側の最大値ΔSmaxを算出するための算出式やテーブルなどのデータを作成して記憶しておき、例えば制御部80のCPU81が、このデータに基づいて、記録媒体Mの種類と狙いの搬送量Sとに応じた搬送量マージンを算出する構成とすることが望ましい。
【0041】
本実施形態では、乾燥処理によって測色パターンPが乾燥した後に記録媒体Mを副走査上流方向Cに搬送する際に、煩雑な搬送量の制御を行わない代わりに、狙いの搬送量Sに搬送量マージンを加えた距離だけ記録媒体Mを搬送する。狙いの搬送量Sは、搬送前の記録媒体MにおけるマーカパターンXの位置と撮像ユニット20の位置(撮像ユニット20による撮像範囲の中心)との間の距離に応じた搬送量である。
【0042】
図7は、副走査上流方向Cへの搬送後の記録媒体M上のマーカパターンXおよび測色パターンPと撮像ユニット20の撮像範囲との位置関係を示す図である。狙いの搬送量Sに搬送量マージンを加えた距離だけ記録媒体Mを副走査上流方向Cに搬送することにより、
図7に示すように、マーカパターンXが撮像ユニット20の撮像範囲20aよりも上流側に位置することになる。
【0043】
本実施形態の画像形成装置100は、以上のように記録媒体Mを副走査上流方向Cに搬送した後、キャリッジ5の位置を調整して、撮像ユニット20の主走査方向Aの位置が測色パターンPの中で最初に測色を行うパッチP1-1の主走査方向Aの位置と重なるように、主走査方向Aの位置合わせを行う。そして、記録媒体Mを副走査下流方向Bに搬送しながら、撮像ユニット20により記録媒体Mを撮像してマーカパターンXの検知を行う。すなわち、撮像ユニット20により撮像された画像にマーカパターンXが映り込んでいるか否かを確認し、マーカパターンXが映り込んでいない場合は、撮像ユニット20の撮像範囲20aに相当する距離分だけ記録媒体Mを副走査下流方向Bに搬送して撮像ユニット20による撮像を再度行う。この処理を、撮像ユニット20により撮像された画像にマーカパターンXが映り込むまで繰り返す。なお、撮像ユニット20はキャリッジ5に搭載され、記録媒体Mに対して一定の距離が保たれるため、撮像ユニット20の撮像範囲20aに相当する距離は、記録媒体Mの厚みを無視できると仮定すると固定値となる。
【0044】
本実施形態の画像形成装置100は、撮像ユニット20によりマーカパターンXが検知されると、撮像ユニット20が撮像した画像上のマーカパターンXの位置と、記録媒体Mに形成したマーカパターンXと測色パターンPの1行目のパッチ中心との間の距離Lとに基づいて、撮像ユニット20から測色パターンPの中で最初に測色を行うパッチP1-1までの距離を算出する。そして、この距離分だけ、記録媒体Mを副走査下流方向Bに搬送する。
【0045】
図8は、撮像ユニット20が撮像した画像上のマーカパターンXの一例を示す図である。撮像ユニット20によりマーカパターンXが検知された際は、
図8に示すように、撮像ユニット20の撮像範囲20aの中心位置に対するマーカパターンXの中心位置の副走査方向(副走査下流方向Bあるいは副走査上流方向C)におけるずれ画素数(Y画素)を求める。ここで、画像の1画素あたりの距離α[mm]は、記録媒体M上のマーカパターンXの副走査方向の大きさa[mm]が既知であるため、撮像ユニット20が撮像した画像上のマーカパターンXの副走査方向の大きさ(A画素)から、α=a/A[mm]により正確に求めることができる。そして、Yの値とαの値から、記録媒体M上のマーカパターンXと撮像ユニット20の撮像範囲20aの中心との間の距離Y×α[mm]を算出することができる。
【0046】
なお、上述のように、撮像ユニット20はキャリッジ5に搭載され、記録媒体Mに対して一定の距離が保たれるため、画像の1画素あたりの距離αのおおよその値を事前に求めることもできる。この距離αのおおよその値を用いることで、正確な距離αの算出を省略してもよい。
【0047】
ここで、マーカパターンXが撮像ユニット20の撮像範囲20aの中心から副走査下流方向Bにずれている場合は、撮像ユニット20から測色パターンPの中で最初に測色を行うパッチP1-1までの距離は、L-Y×α[mm]となる。逆に、マーカパターンXが撮像ユニット20の撮像範囲20aの中心から副走査上流方向Cにずれている場合は、撮像ユニット20から測色パターンPの中で最初に測色を行うパッチP1-1までの距離は、L+Y×α[mm]となる。
【0048】
本実施形態の画像形成装置100は、撮像ユニット20によりマーカパターンXを検知した後、以上のように算出した距離(L-y×α[mm]またはL+y×α[mm])分だけ記録媒体Mを副走査下流方向Bに搬送することにより、測色パターンPと撮像ユニット20との位置合わせを精度良く行うことができる。そして、この位置で撮像ユニット20により測色パターンPを撮像し、その画像データを用いて測色パターンPの測色値を適切に算出することができる。
【0049】
図9は、測色パターンPの中で最初に測色を行うパッチP1-1を撮像ユニット20で撮像した様子を示す図である。撮像ユニット20の二次元センサ用CPU22は、例えば
図9に示すように、二次元センサ21が出力する画像データのうち、撮像範囲20aの中心付近の所定領域Rcの画像データ(RGB値)を用いて、このパッチP1-1の測色値を算出する。
【0050】
測色パターンPの中で最初に測色を行うパッチP1-1の測色が終了すると、画像形成装置100は、キャリッジ5の主走査方向Aへの移動と記録媒体Mの副走査下流方向Bへの搬送により、撮像ユニット20を他のパッチの位置に順次移動させる。そして、撮像ユニット20の撮像範囲20aの中心にパッチが位置している状態で撮像ユニット20により各パッチを撮像し、各パッチの測色値を算出する。
【0051】
次に、本実施形態の画像形成装置100のキャリブレーション時の動作例について、
図10を参照して説明する。
図10は、キャリブレーション時に画像形成装置100により実行される処理の手順を示すフローチャートである。
【0052】
画像形成装置100は、まず、記録媒体MにマーカパターンXを形成する(ステップS101)。その後、記録媒体Mを副走査下流方向Bに所定距離Lだけ搬送し(ステップS102)、記録媒体Mに測色パターンPを形成する(ステップS103)。そして、測色パターンPの形成が終了すると、測色パターンPを乾燥させるための乾燥処理を行う(ステップS104)。このとき、乾燥ヒータ17を用いて乾燥処理を行う場合は記録媒体Mを副走査下流方向Bに搬送する。測色パターンPを自然乾燥させる場合は、測色パターンPの形成が終了した位置で、測色パターンPが乾燥するまで待機する。
【0053】
乾燥処理によって記録媒体Mに形成した測色パターンPが乾燥すると、画像形成装置100は、狙いの搬送量Sに搬送量マージンを加えた距離だけ、記録媒体Mを副走査上流方向Cに搬送する(ステップS105)。そして、撮像ユニット20の主走査方向Aの位置合わせを行った後、撮像ユニット20により画像を撮像し(ステップS106)、マーカパターンXが検知されたか否かを確認する(ステップS107)。ここで、マーカパターンXが検知されていなければ(ステップS107:No)、撮像ユニット20の撮像範囲20aに相当する距離だけ記録媒体Mを副走査下流方向Bに搬送し(ステップS108)、ステップS106に戻って撮像ユニット20による画像の撮像を再度行う。
【0054】
マーカパターンXが検知された場合は(ステップS107:Yes)、撮像ユニット20が撮像した画像上のマーカパターンXの位置と、記録媒体M上のマーカパターンXと測色パターンP(1行目のパッチ中心)との間の距離Lとに基づいて、撮像ユニット20から測色パターンPまでの距離を算出する(ステップS109)。そして、ステップS109で算出した距離だけ記録媒体Mを副走査下流方向Bに搬送する(ステップS110)。
【0055】
ステップS110の記録媒体Mの搬送により撮像ユニット20と測色パターンPとの位置合わせがなされると、撮像ユニット20により測色パターンPのパッチ群P1-1~Pm-nを順次撮像し、各パッチの測色値を算出する(ステップS111)。測色パターンPのパッチ群P1-1~Pm-nの位置関係は既知であるため、キャリッジ5の主走査方向Aへの移動と記録媒体Mの副走査下流方向Bへの搬送により、撮像ユニット20を各パッチの位置に順次移動させることができる。
【0056】
以上、具体的な例を挙げながら詳細に説明したように、本実施形態の画像形成装置100は、記録媒体MにマーカパターンXを形成した後、この記録媒体Mを副走査下流方向Bに所定距離Lだけ搬送して測色パターンPを形成する。そして、乾燥処理により測色パターンPが乾燥した後、記録媒体Mを狙いの搬送量Sに搬送量マージンを加えた距離だけ副走査上流方向Cに搬送する。その後、この記録媒体Mを副走査下流方向Bに搬送しながら撮像ユニット20によりマーカパターンXを検知し、マーカパターンXが検知された位置を基準に記録媒体Mを副走査下流方向Bに搬送して測色パターンPと撮像ユニット20との位置合わせを行う。したがって、この画像形成装置100によれば、副走査上流方向Cへの搬送時に記録媒体Mの搬送量を高精度に制御することなく、測色パターンPと撮像ユニット20との位置合わせを精度良く行って、測色パターンPの測色を適切に行うことができる。
【0057】
<変形例1>
上述の実施形態では、記録媒体Mに1つのマーカパターンXを形成したが、記録媒体Mを副走査上流方向Cに搬送した後にマーカパターンXを検知し易くするために、記録媒体M上の副走査方向の異なる位置に、測色パターンPとの間の距離が異なる複数のマーカパターンを形成してもよい。
【0058】
図11および
図12は本変形例を説明する図であり、
図11は、副走査上流方向Cへの搬送後の記録媒体M上のマーカパターンXおよび測色パターンPと撮像ユニット20の撮像範囲20aとの位置関係を示し、
図12は、撮像ユニット20が撮像した画像上のマーカパターンXの一例を示している。
【0059】
本変形例では、例えば
図11に示すように、測色パターンPの1行目のパッチ中心から所定距離L1[mm]だけ副走査下流方向Bに離れた位置にマーカパターンX3、マーカパターンX3の中心から所定距離L2[mm]だけ離れた位置にマーカパターンX2、マーカパターンX2の中心から所定距離L3[mm]だけ離れた位置にマーカパターンX1をそれぞれ形成する。また、マーカパターンX2の中心が最初に測色を行うパッチP1-1の中心と主走査方向Aにおいて重なるようにし、このマーカパターンX2に対してマーカパターンX2が主走査方向Aの一方側、マーカパターンX3が主走査方向Aの他方側に配置されるように、これらマーカパターンX1~X3を形成する。
【0060】
このとき、マーカパターンX1とマーカパターンX2との間の主走査方向Aにおける距離と、マーカパターンX3とマーカパターンX2との間の主走査方向Aにおける距離は、それぞれ、撮像ユニット20の撮像範囲20aの主走査方向Aにおけるサイズの半分(撮像画像の主走査画素数Hの半分(H/2))よりも短い距離とする。また、マーカパターンX1とマーカパターンX2との間の副走査方向(副走査下流方向Bあるいは副走査上流方向C)における距離と、マーカパターンX3とマーカパターンX2との間の副走査方向における距離は、それぞれ、撮像ユニット20の撮像範囲20aの副走査方向におけるサイズ(撮像画像の副走査画素数V)よりも短い距離とすることが望ましい。なお、ここでは3つのマーカパターンX1~X3を形成する例を説明しているが、形成するマーカパターンXの数はこれに限らない。
【0061】
本変形例においても、上述の実施形態と同様に、乾燥処理によって測色パターンPが乾燥した後、記録媒体Mを副走査上流方向Cに搬送する。このとき、搬送前の記録媒体MにおけるマーカパターンX2の位置と撮像ユニット20の位置との間の距離に応じた搬送量を狙いの搬送量Sとし、この狙いの搬送量Sに搬送量マージンを加えた距離だけ記録媒体Mを副走査上流方向Cに搬送する。ただし、本変形例では撮像ユニット20によりマーカパターンX(X1~X3)を検知できる範囲が広くなるため、搬送量マージンを加えずに、狙いの搬送量Sに応じた距離だけ記録媒体Mを副走査上流方向Cに搬送してもよい。
【0062】
以上のように記録媒体Mを副走査上流方向Cに搬送した後は、上述の実施形態と同様に、キャリッジ5の位置を調整して撮像ユニット20の主走査方向Aの位置合わせを行う。そして、撮像ユニット20により記録媒体Mを撮像してマーカパターンXの検知を行う。このとき、例えば
図12に示すように、撮像ユニット20が撮像した画像上で撮像範囲20aの中心より右側にマーカパターンXが検知された場合、このマーカパターンXは、測色パターンPの1行目のパッチ中心からL1+L2+L3[mm]だけ副走査下流方向Bに離れた位置に形成されたマーカパターンX1であることが分かる。また、
図12に示すように、マーカパターンX1が撮像ユニット20の撮像範囲20aの中心から副走査上流方向Cにy画素ずれた位置で検知された場合、撮像ユニット20から測色パターンPの中で最初に測色を行うパッチP1-1までの距離は、L1+L2+L3+y×α[mm]となる。
【0063】
なお、撮像ユニット20が撮像した画像上で撮像範囲20aの中心にマーカパターンXが検知された場合、このマーカパターンXは、測色パターンPの1行目のパッチ中心からL1+L2[mm]だけ副走査下流方向Bに離れた位置に形成されたマーカパターンX2であることが分かる。また、撮像ユニット20が撮像した画像上で撮像範囲20aの中心よりも左側にマーカパターンXが検知された場合、このマーカパターンXは、測色パターンPの1行目のパッチ中心からL1[mm]だけ副走査下流方向Bに離れた位置に形成されたマーカパターンX3であることが分かる。そして、この検知されたマーカパターンXの画像上の位置(撮像範囲20aの中心に対する副走査方向の画素ずれ量および方向(上流側か下流側か))と、記録媒体M上のパッチP1-1までの距離とに基づいて、撮像ユニット20からパッチP1-1までの距離を算出できる。なお、撮像ユニット20によりマーカパターンXが検知されない場合は、上述の実施形態と同様に、マーカパターンXが検知されるまで記録媒体Mの副走査下流方向Bへの搬送と撮像ユニット20による撮像を繰り返し行えばよい。
【0064】
本変形例においても、上述の実施形態と同様に、撮像ユニット20によりマーカパターンXを検知した後、以上のように算出した距離分だけ記録媒体Mを副走査下流方向Bに搬送することにより、測色パターンPと撮像ユニット20との位置合わせを精度良く行うことができる。そして、この位置で撮像ユニット20により測色パターンPを撮像し、その画像データを用いて測色パターンPの測色値を適切に算出することができる。
【0065】
図13は、本変形例におけるキャリブレーション時に画像形成装置100により実行される処理の手順を示すフローチャートである。
【0066】
本変形例の画像形成装置100は、まず、記録媒体Mの副走査方向において異なる位置に複数のマーカパターンX1~X3を形成する(ステップS201)。その後、上述の実施形態と同様に、記録媒体Mを副走査下流方向Bに所定距離L1だけ搬送し(ステップS202)、記録媒体Mに測色パターンPを形成する(ステップS203)。そして、測色パターンPの形成が終了すると、画像形成装置100は、測色パターンPを乾燥させるための乾燥処理を行う(ステップS204)。
【0067】
その後、乾燥処理によって記録媒体Mに形成した測色パターンPが乾燥すると、画像形成装置100は、記録媒体Mを副走査上流方向Cに搬送し(ステップS205)、撮像ユニット20の主走査方向Aの位置合わせを行った後、記録媒体Mを副走査下流方向Bに搬送しながら、撮像ユニット20により記録媒体Mを撮像してマーカパターンXの検知を行う(ステップS206~ステップS208)。ここで、マーカパターンXが検知されると(S207:Yes)、画像形成装置100は、画像上のマーカパターンXの主走査方向Aの位置をもとに、検知されたマーカパターンXが複数のマーカパターンX1~X3のいずれであるかを特定する(ステップS209)。そして、上述の実施形態と同様に、画像上のマーカパターンXの副走査方向の位置と、記録媒体M上のマーカパターンXと測色パターンPとの間の距離L(L1~L3のいずれか)とに基づいて、撮像ユニット20から測色パターンPまでの距離を算出し(ステップS210)、ステップS210で算出した距離だけ記録媒体Mを副走査下流方向Bに搬送する(ステップS211)。
【0068】
ステップS211の記録媒体Mの搬送により撮像ユニット20と測色パターンPとの位置合わせがなされると、上述の実施形態と同様に、撮像ユニット20により測色パターンPのパッチ群P1-1~Pm-nを順次撮像し、各パッチの測色値を算出する(ステップS212)。
【0069】
本変形例のように、記録媒体M上の副走査方向の異なる位置に測色パターンPとの間の距離が異なる複数のマーカパターンX(X1~X3)を形成し、撮像ユニット20の撮像によってこれら複数のマーカパターンX1~X3のいずれかを検知する構成とすることにより、記録媒体Mを副走査上流方向Cに搬送した後にマーカパターンXを検知し易くすることができる。
【0070】
なお、以上の説明では、複数のマーカパターンX(X1~X3)を主走査方向Aにおける位置の違いにより識別できるようにしているが、撮像ユニット20が撮像した画像をもとに複数のマーカパターンX(X1~X3)を識別できる構成であればよい。例えば、
図14(a)に示すように、記録媒体Mに色が異なる複数のマーカパターンX1’~X3’を形成し、色の違いからこれらマーカパターンX1’~X3’を識別できるようにしてもよい。また、
図14(c)に示すように、記録媒体Mに形状が異なる複数のマーカパターンX1”~X3”を形成し、形状の違いからこれらマーカパターンX1”~X3”を識別できるようにしてもよい。
【0071】
<変形例2>
上述の実施形態では、撮像ユニット20により測色パターンPを撮像し、その画像データを用いて測色パターンPの測色値を算出するようにしているが、
図15および
図16に示すように、撮像ユニット20とは別ユニットとなる測色ユニット200を撮像ユニット20とともにキャリッジ5に搭載し、測色パターンPの測色は測色ユニット200が行う構成としてもよい。
【0072】
この場合、撮像ユニット20がマーカパターンXを検知した後、撮像ユニット20が撮像した画像上のマーカパターンXの位置(y×α[mm])と、記録媒体Mに形成したマーカパターンXと測色パターンPの1行目のパッチ中心との間の距離Lと、撮像ユニット20の撮像範囲20aの中心と測色ユニット200の測色範囲(
図15の破線の丸で示す範囲)の中心との間の距離Lcとに基づいて、測色ユニット200が測色パターンPの中で最初に測色を行うパッチP1-1を測色可能な位置までの距離(L-y×α+Lc[mm]またはL+y×α+Lc[mm])を算出できる。そして、この距離分だけ、記録媒体Mを副走査下流方向Bに搬送することにより、測色パターンPと測色ユニット200との位置合わせを精度良く行って、測色パターンPの測色を適切に行うことができる。
【0073】
<変形例3>
上述の実施形態では、シリアルヘッド方式のインクジェットプリンタとして構成された画像形成装置100を例示したが、本発明は上述した例に限らず、記録媒体Mに測色パターンPを形成し、その測色パターンPの色が安定した後に測色を行う様々な画像形成装置に対して有効に適用可能である。
【0074】
また、上述の実施形態では、測色パターンPの色を安定させるために乾燥処理を行うようにしているが、他の方法で測色パターンPの色を安定させる構成であってもよい。例えば、紫外線照射や電子線照射により硬化する色材を用いて測色パターンPを形成する場合は、紫外線や電子線を照射して色材を硬化させることで測色パターンPの色を安定させる構成であってもよい。また、電子写真方式の画像形成装置のように、定着機構による加熱および加圧により硬化するトナーを用いて測色パターンPを形成する場合は、加熱および加圧によりトナーを硬化させることで測色パターンPの色を安定させる構成であってもよい。なお、特許請求の範囲に記載の「定着」の用語は、上述の実施形態で説明した「乾燥」と本変形例で説明した「硬化」を含む概念として用いている。
【0075】
以上、本発明の具体的な実施形態および変形例を詳細に説明したが、本発明は上述した実施形態や変形例そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で様々な変形や変更を加えながら具体化することができる。
【符号の説明】
【0076】
5 キャリッジ
6 記録ヘッド
20 撮像ユニット
50 搬送部
60 巻き取り部
70 給紙部
80 制御部
100 画像形成装置
【先行技術文献】
【特許文献】
【0077】