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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-11
(45)【発行日】2022-04-19
(54)【発明の名称】読取装置および造形装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 64/393 20170101AFI20220412BHJP
   B29C 64/386 20170101ALI20220412BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20220412BHJP
   B33Y 50/00 20150101ALI20220412BHJP
   B33Y 50/02 20150101ALI20220412BHJP
【FI】
B29C64/393
B29C64/386
B33Y30/00
B33Y50/00
B33Y50/02
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018123993
(22)【出願日】2018-06-29
(65)【公開番号】P2020001301
(43)【公開日】2020-01-09
【審査請求日】2021-02-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明
(72)【発明者】
【氏名】西 亮輔
(72)【発明者】
【氏名】萬 恭明
【審査官】▲高▼村 憲司
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-025190(JP,A)
【文献】特開2012-213970(JP,A)
【文献】特開2016-060063(JP,A)
【文献】特開2000-280354(JP,A)
【文献】国際公開第2007/058160(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/00 - 64/40
B33Y 10/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
計測対象物にパターン光線を投影し、前記パターン光線が投影された前記計測対象物の投影画像を計測データとして取得する計測データ取得部と、
前記計測対象物を造形するための造形データを用い、前記パターン光線を前記計測対象物に投影した場合に出現する確からしい画像を予測して予測データとする予測部と、
前記予測データを用いて前記計測データを補正した補正済みデータを用いて前記計測対象物までの3次元データを計算する計算部と、
を備え
前記予測部は、確からしさを階調化して前記確からしい画像としてまとめ、前記予測データとする、
ことを特徴とする計測装置。
【請求項2】
前記計測データ取得部は、ライン状のパターン光線を前記計測対象物に投影する光切断法を用いる、
ことを特徴とする請求項に記載の計測装置。
【請求項3】
造形データに基づき、立体造形物を造形する造形部と、
前記立体造形物を計測対象物とする請求項1または2に記載の計測装置と、
前記造形データと、前記計測装置により計測した3次元データとに基づいて、前記造形部を制御する制御部と、
を備えることを特徴とする造形装置。
【請求項4】
前記造形部は、前記造形データとして立体造形物を高さ方向に対して分割した造形層を示すデータに基づいて、造形層を造形することで立体造形物を造形し、
前記制御部は、計測された造形層の上部に造形される造形層を示す造形データを変更するように制御する、
ことを特徴とする請求項に記載の造形装置。
【請求項5】
前記計測装置は、前記造形層の高さを測定し、
前記制御部は、前記計測装置によって測定された高さに基づいて、造形の動作を変更するように制御する、
ことを特徴とする請求項に記載の造形装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、読取装置および造形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
入力されたデータに基づいて、立体造形物を造形する造形装置(いわゆる「3Dプリンタ」)が開発されている。立体造形を行う方法は、例えば、FFF(Fused Filament Fabrication、熱溶解フィラメント製造法)、SLS(Selective Laser Sintering、粉末焼結積層造形法)、MJ(Material Jetting、マテリアルジェッティング)、EBM(Electron Beam Melting、電子ビーム溶解法)、SLA(Stereolithography Apparatus、光造形法)など、種々の方法が提案されている。
【0003】
また、特許文献1には、造形装置による立体造形の対象となる計測対象物の3次元形状のスキャンにおいて、計測処理時間を短縮する目的で、局所領域毎に適応的に計測点の空間分解能を設定する技術が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の3次元形状スキャンの精度を向上させるためには、計測対象物へ照射させるパターン光を高解像度で生成するか、パターン光が照射された画像をカメラで高解像度に取得するかが必要となる。一般的には、パターン光を高解像度で生成する場合と、パターン光が照射された画像をカメラで高解像度に取得する場合とのいずれであっても、計算量が増大し、実現には高い費用が必要になる、という課題がある。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、立体造形物や造形中間物の3次元データの高精度化を安価かつ容易に実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、計測対象物にパターン光線を投影し、前記パターン光線が投影された前記計測対象物の投影画像を計測データとして取得する計測データ取得部と、前記計測対象物を造形するための造形データを用い、前記光線パターンを前記計測対象物に投影した場合に出現する確からしい画像を予測して予測データとする予測部と、前記予測データを用いて前記計測データを補正した補正済みデータを用いて前記計測対象物までの3次元データを計算する計算部と、を備え、前記予測部は、確からしさを階調化して前記確からしい画像としてまとめ、前記予測データとする、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、立体造形物や造形中間物の3次元データの高精度化を安価かつ容易に実現することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施の形態にかかる立体造形システムの全体の概略構成を示す図である。
図2図2は、造形装置に含まれるハードウェア構成を示す図である。
図3図3は、造形装置の機能構成を示す機能ブロック図である。
図4図4は、予測部における予測データの生成手法の一例を示す図である。
図5図5は、3次元データ計算部における3次元データの計算手法を示す図である。
図6図6は、造形装置が立体造形物を造形する処理の流れを概略的に示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に添付図面を参照して、読取装置および造形装置の実施の形態を詳細に説明する。
【0010】
図1は、実施の形態にかかる立体造形システム1の全体の概略構成を示す図である。なお、以下では、説明の便宜上、立体造形物の高さ方向をz軸方向とし、z軸に直交する面をxy平面として説明する。
【0011】
図1(a)に示すように、立体造形システム1は、3次元の立体造形物を造形する造形装置100と、情報処理端末150とを備えている。情報処理端末150は、造形したい立体造形物の形状データを造形装置100に対して送信する。造形装置100は、情報処理端末150から送信された造形したい立体造形物の形状データを受信する。造形装置100は、当該形状データに基づいて、立体造形物を造形する。
【0012】
なお、情報処理端末150は、造形装置100が実行する処理を制御する制御装置として動作してもよい。なお、造形装置100は、情報処理端末150の機能を組み込まれていてもよい。
【0013】
図1(b)に示すように、造形装置100は、xy平面と平行に移動可能なヘッド110と、ステージ120と、を備えている。造形装置100は、ヘッド110からステージ120上に造形材料140を吐出し、xy平面に層形状を造形する。造形装置100は、1次元の線描を、同一平面内に描画することで、立体造形物のうち1層分の造形層を造形する。
【0014】
造形装置100は、1層目の造形層の造形が終了すると、ステージ120をz軸に沿う方向に1層分の高さ(積層ピッチ)だけ下げる。その後、造形装置100は、1層目と同様にヘッド110を駆動して、2層目の造形層を造形する。造形装置100は、これらの動作を繰り返すことで、造形層を積層し、立体造形物を造形する。
【0015】
なお、造形装置100は、xy平面においてヘッド110を移動させ、z軸方向にステージ120を移動させる構成を例に説明したが、上述した構成は本実施形態を限定するものではなく、これ以外の構成であってもよい。
【0016】
また、造形装置100は、図1(c)に示すように、造形中の造形層もしくは造形後の立体造形物の形状を測定するための形状センサ130を備えている。形状センサ130は、立体造形物のx軸、y軸およびz軸方向の寸法などを測定する。
【0017】
形状センサ130の例としては、赤外線センサ、カメラ、および3D計測センサ(例えば、光切断プロファイルセンサ)などが挙げられる。すなわち、造形装置100は、読取装置としても機能する。本実施の形態においては、形状センサ130として3D計測センサ(例えば、光切断プロファイルセンサ)を適用する。形状センサ130(3D計測センサ)は、パターン光線を計測対象物に投影する投影部130a(図4参照)と、パターン光線が投影された計測対象物の2D画像(カメラ画像)の画像データを取得するカメラ130b(図4参照)と、を備える。
【0018】
図1(c)に示すように、形状センサ130は、例えば、ヘッド110による造形動作に連動して、造形層の形状を測定してもよい。また、形状センサ130は、1層の造形層が造形されるごとに、造形層の形状を測定してもよい。なお、形状センサ130が、立体造形物の測定をどのタイミングで、どの範囲で行うかは、任意に選択することができ、特に実施形態を限定するものではない。
【0019】
次に、造形装置100のハードウェア構成について説明する。
【0020】
図2は、造形装置100に含まれるハードウェア構成を示す図である。図2に示すように、造形装置100は、CPU(Central Processing Unit)201と、RAM(Random Access Memory)202と、ROM(Read Only Memory)203と、記憶装置204と、インターフェース205と、造形ユニット206と、形状センサ130とを備えている。各ハードウェアは、バス208を介して接続されている。
【0021】
CPU201は、造形装置100の動作を制御するプログラムを実行し、所定の処理を行う装置である。RAM202は、CPU201が実行するプログラムの実行空間を提供するための揮発性の記憶装置であり、プログラムやデータの格納用、展開用として使用される。ROM203は、CPU201が実行するプログラムやファームウェアなどを記憶するための不揮発性の記憶装置である。
【0022】
記憶装置204は、造形装置100を機能させるOSや各種アプリケーション、プログラム、設定情報、各種データなどを記憶する、読み書き可能な不揮発性の記憶装置である。
【0023】
本実施形態の造形装置100で実行されるプログラム(OSや各種アプリケーションも含む)は、インストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD-ROM、フレキシブルディスク(FD)、CD-R、DVD(Digital Versatile Disk)等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録されて提供される。
【0024】
また、本実施形態の造形装置100で実行されるプログラム(OSや各種アプリケーションも含む)を、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供するように構成しても良い。また、本実施形態の造形装置100で実行されるプログラム(OSや各種アプリケーションも含む)をインターネット等のネットワーク経由で提供または配布するように構成しても良い。
【0025】
また、本実施形態の造形装置100で実行されるプログラム(OSや各種アプリケーションも含む)を、ROM等に予め組み込んで提供するように構成してもよい。
【0026】
インターフェース205は、造形装置100と他の機器とを接続する装置である。インターフェース205は、例えば、情報処理端末150や、ネットワーク、外部記憶装置などと接続することができる。造形装置100は、インターフェース205を介して、造形動作の制御データや、立体造形物の形状データなどを受信することができる。
【0027】
造形ユニット206は、造形材料140から所望の立体造形物を造形する造形部である。造形ユニット206は、ヘッド110や、ステージ120などを含んで、造形方式に応じて構成される。例えば、FFF方式における造形ユニット206は、造形材料140を溶融する加熱機構や、造形材料140を吐出するノズルなどを含む。SLS方式における造形ユニット206は、レーザ光源などを含む。
【0028】
形状センサ130は、上述したように、造形中の造形層もしくは造形後の立体造形物の形状を測定する装置である。
【0029】
次に、造形装置100のCPU201が記憶装置204やROM203に記憶されたプログラムを実行することによって発揮する機能について説明する。なお、ここでは従来から知られている機能については説明を省略し、本実施の形態の造形装置100が発揮する特徴的な機能について詳述する。
【0030】
図3は、造形装置100の機能構成を示す機能ブロック図である。
【0031】
図3に示すように、造形装置100のCPU201は、データ入力部310、造形データ生成部320、造形ユニット制御部330、造形物形状測定部340、比較部350、補正部360、記憶部370、予測部380、3次元データ計算部390、として機能する。
【0032】
なお、本実施の形態においては、造形装置100が発揮する特徴的な機能をCPU201がプログラムを実行することにより実現するものとしたが、これに限るものではなく、例えば、上述した各部の機能のうちの一部または全部が専用のハードウェア回路で実現されてもよい。
【0033】
データ入力部310は、立体造形物を造形するための形状データなどの入力を受け付ける手段である。形状データは、一例として、情報処理端末150などで作成され、インターフェース205を介して、データ入力部310に入力される。
【0034】
造形データ生成部320は、データ入力部310に入力された形状データを立体造形物の高さ方向に対して分割し、複数の造形層の造形データを生成する手段である。造形データは、造形される立体造形物を積層ピッチ単位で分割することで、積層される各層を造形するための造形層を示すデータとして生成される。造形データは、各層のxy平面座標において、造形するかしないかを示す二値データとすることができる。また、好ましい実施形態では、単に各座標での造形の有無だけでなく、各座標における造形量や造形材料の吐出量などをパラメータとして含んでもよい。
【0035】
なお、図3では、造形データ生成部320は造形装置100に含まれているが、情報処理端末150に含まれてもよい。この場合、情報処理端末150で生成された造形データが、造形装置100に送信され、造形処理が実行される。
【0036】
造形物形状測定部340は、形状センサ130を制御し、造形中の造形層もしくは造形後の立体造形物である計測対象物の形状として、高さデータなどの計測データを計測する手段である。造形物形状測定部340は、計測データ取得部として機能するものであって、測定した結果を計測データとして取得する。
【0037】
より詳細には、造形物形状測定部340は、造形物の形状の測定のためのデータを取得する。例えば、造形物形状測定部340は、光切断法による高さデータの計測を行う場合、ライン状のレーザ光(パターン光線)を計測対象物に照射し、その反射光の画像を形状センサ130のカメラ130bで取得する。造形物形状測定部340は、取得した画像データを3次元データ計算部390に送る。
【0038】
造形ユニット制御部330は、造形データに基づいて、造形ユニット206が造形する動作を制御する制御部である。造形ユニット制御部330は、造形データに基づいてヘッド110の位置やステージ120の高さを調整することで、造形の速度、積層ピッチなどの種々のパラメータやアルゴリズムを制御しながら造形できる。また、造形ユニット制御部330は、造形データに基づいて造形量を制御することができる。例えば、FFF方式では、造形材料140の吐出量を制御でき、SLS方式では、レーザの強度を制御できる。
【0039】
予測部380は、計測対象物の形状データ(立体造形物を造形するための形状データ)を用いて、パターン光線を計測対象物に投影した場合の確からしい画像を予測する。予測部380は、確からしさ(確率)を階調化して確からしい画像としてまとめ、予測データとして3次元データ計算部390に送る。
【0040】
ここで、予測部380について詳述する。予測部380は、計測対象物(造形中の造形層もしくは造形後の立体造形物)を造形するための造形データを用い、計測対象物の高さ変動などのシミュレーションを実行して予測データを生成する。
【0041】
図4は、予測部380における予測データの生成手法の一例を示す図である。図4に示す例は、段差があるような計測対象物(造形中の造形層もしくは造形後の立体造形物)に対して、形状センサ130(3D計測センサ)の投影部130aからパターン光線を照射させてカメラ130bで2D画像(カメラ画像)を取得する場合を示すものである。
【0042】
図4(a)は、計測対象物bの高さzが理想的な場合を示すものである。図4(a)における輝線Aは、パターン光線が計測対象物aの段差bに照射されている理想的なケースをカメラ130bで撮像したものである。すなわち、図4(a)に示す理想的なケースでは、輝線Aが計測対象物aの段差bに位置するカメラ画像が取得できる。
【0043】
一方、計測対象物aの高さzが理想的なケースよりも高い場合、図4(b)に示すように、パターン光線が計測対象物aの段差bよりも投影部130a側に照射されてしまう。このような場合、図4(a)に示す理想的なケースに比べて、輝線Bは輝線Aよりも投影部130a側にずれることになる。
【0044】
一方、計測対象物aの高さzが理想的なケースよりも低い場合、図4(c)に示すように、パターン光線が計測対象物aの段差bよりも投影部130aから離れる側に照射されてしまう。このような場合、図4(a)に示す理想的なケースに比べて、輝線Cは輝線Aよりも投影部130aから離れる側にずれることになる。
【0045】
予測部380は、計測対象物を造形するための造形データを用い、上述の図4(a)~(c)に示すような高さzの変動についてのシミュレーションを実行し、図4(d)に示すような確からしい画像を得る。図4(d)に示す確からしい画像においては、輝線A、輝線B、輝線Cが重み付けされて表示されている。すなわち、理想的なケースにおける輝線Aが、輝線Bおよび輝線Cよりも重み付けが大きくなっている。このような図4(d)に示す確からしい画像は、予測データとして使われる。つまり、予測部380は、確からしさを階調化して確からしい画像としてまとめ、予測データとする。
【0046】
3次元データ計算部390は、予測データを用いて計測データを補正することで、確からしい計測補正済みデータを得る。3次元データ計算部390は、計算部として機能するものであって、計測補正済みデータを用いて、計測対象物の3次元データ(実際の高さデータ)を計算する。
【0047】
次に、3次元データ計算部390について詳述する。
【0048】
図5は、3次元データ計算部390における3次元データの計算手法を示す図である。3次元データ計算部390は、図5に示すように、予測データを用いて計測データを補正することで、確からしい計測補正済みデータを得る。3次元データ計算部390は、計測補正済みデータを用いて、計測対象物の3次元データ(実際の高さデータ)を計算する。
【0049】
具体的には、3次元データ計算部390は、予測データをマスク処理に用いる。予測データの輝線A、輝線B、輝線Cに一致する計測データの検出値は、重み付けが大きいほど発生確率が高いものとなる。そして、計測データにはノイズ成分が多く含まれる。したがって、3次元データ計算部390は、予測データをマスクとすることで、発生確率が低い検出値をノイズとして除去し、計測補正済みデータを得る。
【0050】
比較部350は、造形データと、3次元データ計算部390で計算された高さデータ(3次元データ)とを比較し、両者の差分から、造形によって生じた誤差を算出する手段である。立体造形物の形状は、造形材料140の種類や、周囲温度などの各種条件によって変動することがある。ここで用いられる高さデータ(3次元データ)は、1層目からn層目までに造形された複数の造形層を測定してノイズを除去したデータを指す。また、造形材料140が冷却や硬化した後では、造形直後と比べて、収縮や反りが生じることもある。収縮などが生じたまま積層を続けると、所望する立体造形物と異なる立体造形物が造形される場合がある。したがって、造形データと、実際に造形された造形層の形状を示す、3次元データ計算部390で計算された高さデータ(3次元データ)との誤差を、次層以降の造形データにフィードバックして補正を行う。
【0051】
補正部360は、立体造形物を造形する造形データを補正する手段である。例えば、補正部360は、比較部350が比較した差分に応じて、造形ユニット制御部330が実行する造形の動作が変更されるように、造形データを補正することができる。ここで、造形の動作を変更とは、造形データに含まれるパラメータやアルゴリズムの変更を示す。パラメータやアルゴリズムの一例として、造形される立体造形物の形状、造形層ごとの寸法や、高さ、造形データに基づく造形量、造形材料の溶融温度、造形の速度、積層ピッチなどが含まれる。造形データが補正された場合には、造形ユニット制御部330は、補正造形データに基づいて、造形処理を実行する。
【0052】
記憶部370は、形状データ、造形データ、計測データ、3次元データ計算部390で計算された高さデータ(3次元データ)などの種々のデータを記憶装置204に記憶する手段である。記憶部370は、各機能手段によって、各種データが書き込まれ、また、読み出される。
【0053】
図6は、造形装置100が立体造形物を造形する処理の流れを概略的に示すフローチャートである。
【0054】
まず、ステップS1で、データ入力部310は、形状データの入力を受け付ける。ステップS2では、造形データ生成部320は、入力された形状データを、立体造形物の高さ方向に対してN層に分割した造形データを生成する。生成された造形データは、記憶部370に記憶されてもよい。
【0055】
その後、ステップS3では、造形ユニット制御部330は、n=1として設定する。ステップS4で、造形ユニット制御部330は、第n層目の造形データに基づいて、造形ユニット206の動作を制御して第n層目の造形層を造形する。ステップS5では、造形ユニット制御部330は、n=Nであるか否かによって処理を分岐する。すなわち、nとNとが一致する場合(ステップS5のYes)には、造形ユニット制御部330は、全ての造形層を造形し、立体造形物が完成したとして、造形処理を終了する。また、nとNとが一致しない場合(ステップS5のNo)には、造形ユニット制御部330は、造形していない造形層があることから、次層を造形するためにステップS6に分岐する。
【0056】
ステップS6では、造形物形状測定部340は、造形した第n層目の造形層の形状を測定する。
【0057】
続く、ステップS7では、3次元データ計算部390は、予測データを用いて計測データを補正した計測補正済みデータを用いて、計測対象物の3次元データ(実際の高さデータ)を計算する。
【0058】
ステップS8では、比較部350が、第n層目の造形データと、第n層目の3次元データ(実際の高さデータ)とを比較し、差分を算出する。
【0059】
次に、ステップS9で、補正部360は、第n層目の差分に基づいて、第n+1層目を造形する造形データを補正する。なお、補正処理は、1層ごとに行われても良いし、複数の層の差分に基づいて行われてもよい。また、各層の差分は適宜記憶部370に格納されてもよく、補正部360は、記憶部370に格納されている各層の差分を読み出し、第1層目から第n層目までの差分に基づいて、第n+1層目の造形データを補正してもよい。
【0060】
その後、ステップS10では、造形ユニット制御部330は、nの値をn+1にカウントアップし、ステップS4の処理に戻る。ここで、2回目以降に実行するステップS4の処理においては、補正された造形データによって造形を行う。造形装置100は、第N層目の造形データに基づく造形を完了するまで、上記のステップS4~S10の処理を繰り返す。
【0061】
上述したフローチャートの処理によって、造形した造形層に基づく差分を、次に積層する造形層にフィードバックすることで、造形動作を変更することができるので、所望とする立体造形物を造形することができる。
【0062】
このように本実施の形態によれば、計測対象物の形状データ(立体造形物を造形するための形状データ)を用いてカメラ130bで観測される画像を予測し、その予測データを用いてカメラ画像を補正し、計測補正済みデータを用いて計測対象物の3次元データ(実際の高さデータ)を計算する。これにより、計測対象物の3次元データの予測値を計算できる場合において、安価かつ容易に計測対象物の3次元データ(実際の高さデータ)を取得することができる。特に、3次元の立体造形物を造形する造形装置において、造形中間物の3次元データの高精度化を安価かつ容易に実現することができる。
【符号の説明】
【0063】
100 計測装置、造形装置
206 造形部
330 制御部
340 計測データ取得部
380 予測部
390 計算部
【先行技術文献】
【特許文献】
【0064】
【文献】特開2012-194061号公報
図1
図2
図3
図4
図5
図6