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特許7056648樹脂組成物、その製造方法及び防汚塗料組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-11
(45)【発行日】2022-04-19
(54)【発明の名称】樹脂組成物、その製造方法及び防汚塗料組成物
(51)【国際特許分類】
   C08F 290/06 20060101AFI20220412BHJP
   C09D 5/16 20060101ALI20220412BHJP
   C09D 5/14 20060101ALI20220412BHJP
   C09D 7/40 20180101ALI20220412BHJP
   C09D 7/65 20180101ALI20220412BHJP
   C09D 201/00 20060101ALI20220412BHJP
   C09D 133/14 20060101ALI20220412BHJP
   C09D 183/10 20060101ALI20220412BHJP
   C09D 183/04 20060101ALI20220412BHJP
【FI】
C08F290/06
C09D5/16
C09D5/14
C09D7/40
C09D7/65
C09D201/00
C09D133/14
C09D183/10
C09D183/04
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019509947
(86)(22)【出願日】2018-03-28
(86)【国際出願番号】 JP2018012652
(87)【国際公開番号】W WO2018181429
(87)【国際公開日】2018-10-04
【審査請求日】2020-12-28
(31)【優先権主張番号】P 2017066013
(32)【優先日】2017-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100152146
【弁理士】
【氏名又は名称】伏見 俊介
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(72)【発明者】
【氏名】谷口 佳奈
(72)【発明者】
【氏名】中村 淳一
(72)【発明者】
【氏名】勝間田 匠
【審査官】辰己 雅夫
(56)【参考文献】
【文献】特表2011-523969(JP,A)
【文献】国際公開第2011/162129(WO,A1)
【文献】特開2000-248029(JP,A)
【文献】特開平11-116857(JP,A)
【文献】特開平08-269389(JP,A)
【文献】特開平08-269388(JP,A)
【文献】特開平07-102193(JP,A)
【文献】国際公開第2013/108880(WO,A1)
【文献】特開2012-005934(JP,A)
【文献】特許第6056751(JP,B2)
【文献】特開2015-011314(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F290/00-290/14
C08F299/00-299/08
C08L1/00-101/14
C08K3/00- 13/08
C09D1/00-10/00
C09D101/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(メタ)アクリル系共重合体及び有機溶剤を含む樹脂組成物であり、
前記(メタ)アクリル系共重合体が、
下記式(1)、下記式(2)又は下記式(3)で表される構造(I)の少なくとも1種を有する構成単位(A1)、トリオルガノシリルオキシカルボニル基を有する構成単位(A2)、及び下記式(4)又は下記式(5)で表される構造(III)の少なくとも1種を有する構成単位(A3)からなる群から選ばれる少なくとも1種の構成単位(A)と、
下記式(b1)で表される重合性単量体、下記式(b2)で表される重合性単量体、下記式(b3)で表される重合性単量体及び下記式(b4)で表される重合性単量体からなる群から選ばれる少なくとも1種のポリシロキサンブロック含有重合性単量体(b)由来の構成単位(B)と、
下記式(c’)で表される構成単位を2以上有するマクロモノマー(c)由来の構成単位(C)と、
を有し、
前記樹脂組成物の全量に対して、前記(メタ)アクリル系共重合体の含有量が45質量%以上85質量%以下、前記有機溶剤の含有量が15質量%以上55質量%以下である、樹脂組成物
【化1】
-COO-M-OCO- ・・・(4)
-COO-M-R22 ・・・(5)
CH=CR3a-CO-O-(C2u-O)-C2w-(SiR3b3c-O)-SiR3d3e3f ・・・(b1)
CH=CR4a-CO-O-(Cu’2u’-O)v’-Cw’2w’-Si(OSiR4b4c4d ・・・(b2)
CH=CR2a-CO-O-(Ck’2k’-O)l’-Cm’2m’-Si((OSiR2b2c-OSiR2d2e2f-OSi((OSiR2g2h-OSiR2i2j2k-Cо’2о’-(O-Cp’2p’q’-O-CO-CR2l=CH ・・・(b3)
CH=CR1a-CO-O-(C2k-O)-C2m-(SiR1b1c-O)-SiR1d1e-Cо2о-(O-C2p-O-CO-CR1f=CH ・・・(b4)
(式(1)~(5),(b1)~(b4)中、Xは-O-、-S-又は-NR14-を示し、R14は水素原子又はアルキル基を示し、R及びRはそれぞれ、水素原子又は炭素数1~10のアルキル基を示し、R及びRはそれぞれ、炭素数1~20のアルキル基、シクロアルキル基又はアリール基を示し、R及びRはそれぞれ、炭素数1~10のアルキレン基を示し、
MはZn、Cu、Mg又はCaを示し、R22は一価の有機酸残基を示し、
3aは水素原子又はメチル基を示し、uは2~5の整数を示し、vは0~50の数を示し、wは2~5の整数を示し、xは3~80の数を示し、R3b~R3fはそれぞれアルキル基、アルコキシ基、フェニル基、置換フェニル基、フェノキシ基又は置換フェノキシ基を示し、
4aは水素原子又はメチル基を示し、u’は2~5の整数を示し、v’は0~50の数を示し、w’は2~5の整数を示し、R4b~R4dはそれぞれアルキル基、-(OSiR5152-OSiR535455(ここで、yは0~20の整数、R51~R55はアルキル基を示す。)、又は-R56-(OCy’-OR57(ここで、y’は1~20の整数、R56はアルキレン基、R57はアルキル基を示す。)を示し、
2a及びR2lはそれぞれ水素原子又はメチル基を示し、k’及びp’はそれぞれ2~5の整数を示し、l’及びq’はそれぞれ0~50の数を示し、m’及びo’はそれぞれ2~5の整数を示し、r及びsはそれぞれ0~20の数を示し、R2b~R2kはそれぞれアルキル基を示し、
1a及びR1fはそれぞれ水素原子又はメチル基を示し、k及びpはそれぞれ2~5の整数を示し、l及びqはそれぞれ0~50の数を示し、m及びoはそれぞれ2~5の整数を示し、nは3~80の数を示し、R1b~R1eはそれぞれアルキル基、アルコキシ基、フェニル基、置換フェニル基、フェノキシ基又は置換フェノキシ基を示す。)
【化2】
(式(c’)中、R 41 は水素原子、メチル基又はCH OHを示し、R 42 はOR 43 、ハロゲン原子、COR 44 、COOR 45 、CN、CONR 46 47 又はR 48 を示す。R 43 ~R 47 はそれぞれ独立に水素原子、非置換の若しくは置換基を有するアルキル基、非置換の若しくは置換基を有する脂環式基、非置換の若しくは置換基を有するアリール基、非置換の若しくは置換基を有するへテロアリール基、非置換の若しくは置換基を有する非芳香族の複素環式基、非置換の若しくは置換基を有するアラルキル基、非置換の若しくは置換基を有するアルカリール基、又は非置換の若しくは置換基を有するオルガノシリル基を示し、R 48 は非置換の若しくは置換基を有するアリール基又は非置換の若しくは置換基を有するヘテロアリール基を示す。)
【請求項2】
前記マクロモノマー(c)の数平均分子量が500~50000である、請求項1に記載の樹脂組成物
【請求項3】
シリコーンオイルをさらに含む請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記(メタ)アクリル系共重合体が、前記構成単位(A1)を有し、
下記式(31)で表される化合物、下記式(32)で表される化合物、及び下記式(33)で表される化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物(Y)をさらに含む請求項のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【化3】
(式(31)~(33)中、Xは-O-、-S-又は-NR14-を示し、R14は水素原子又はアルキル基を示し、Rは、水素原子又は炭素数1~9のアルキル基を示し、Rは、水素原子又は炭素数1~10のアルキル基を示し、R及びR11はそれぞれ、炭素数1~20のアルキル基、シクロアルキル基又はアリール基を示し、R10は、単結合、又は炭素数1~9のアルキレン基を示し、R12は、炭素数1~9のアルキレン基を示す。)
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の樹脂組成物の製造方法であって、
下記式(1)、下記式(2)又は下記式(3)で表される構造(I)の少なくとも1種を有する重合性単量体(a1)、トリオルガノシリルオキシカルボニル基を有する重合性単量体(a2)、及び下記式(4)又は下記式(5)で表される構造(III)の少なくとも1種を有する重合性単量体(a3)からなる群から選ばれる少なくとも1種の重合性単量体(a)と、
下記式(b1)で表される重合性単量体、下記式(b2)で表される重合性単量体、下記式(b3)で表される重合性単量体及び下記式(b4)で表される重合性単量体からなる群から選ばれる少なくとも1種のポリシロキサンブロック含有重合性単量体(b)と、
下記式(c’)で表される構成単位を2以上有するマクロモノマー(c)と、
を含む単量体混合物を重合して(メタ)アクリル系共重合体を得る工程を有する、樹脂組成物の製造方法。
【化4】
-COO-M-OCO- ・・・(4)
-COO-M-R22 ・・・(5)
CH=CR3a-CO-O-(C2u-O)-C2w-(SiR3b3c-O)-SiR3d3e3f ・・・(b1)
CH=CR4a-CO-O-(Cu’2u’-O)v’-Cw’2w’-Si(OSiR4b4c4d ・・・(b2)
CH=CR2a-CO-O-(Ck’2k’-O)l’-Cm’2m’-Si((OSiR2b2c-OSiR2d2e2f-OSi((OSiR2g2h-OSiR2i2j2k-Cо’2о’-(O-Cp’2p’q’-O-CO-CR2l=CH ・・・(b3)
CH=CR1a-CO-O-(C2k-O)-C2m-(SiR1b1c-O)-SiR1d1e-Cо2о-(O-C2p-O-CO-CR1f=CH ・・・(b4)
(式(1)~(5),(b1)~(b4)中、Xは-O-、-S-又は-NR14-を示し、R14は水素原子又はアルキル基を示し、R及びRはそれぞれ、水素原子又は炭素数1~10のアルキル基を示し、R及びRはそれぞれ、炭素数1~20のアルキル基、シクロアルキル基又はアリール基を示し、R及びRはそれぞれ、炭素数1~10のアルキレン基を示し、
MはZn、Cu、Mg又はCaを示し、R22は一価の有機酸残基を示し、
3aは水素原子又はメチル基を示し、uは2~5の整数を示し、vは0~50の数を示し、wは2~5の整数を示し、xは3~80の数を示し、R3b~R3fはそれぞれアルキル基、アルコキシ基、フェニル基、置換フェニル基、フェノキシ基又は置換フェノキシ基を示し、
4aは水素原子又はメチル基を示し、u’は2~5の整数を示し、v’は0~50の数を示し、w’は2~5の整数を示し、R4b~R4dはそれぞれアルキル基、-(OSiR5152-OSiR535455(ここで、yは0~20の整数、R51~R55はアルキル基を示す。)、又は-R56-(OCy’-OR57(ここで、y’は1~20の整数、R56はアルキレン基、R57はアルキル基を示す。)を示し、
2a及びR2lはそれぞれ水素原子又はメチル基を示し、k’及びp’はそれぞれ2~5の整数を示し、l’及びq’はそれぞれ0~50の数を示し、m’及びo’はそれぞれ2~5の整数を示し、r及びsはそれぞれ0~20の数を示し、R2b~R2kはそれぞれアルキル基を示し、
1a及びR1fはそれぞれ水素原子又はメチル基を示し、k及びpはそれぞれ2~5の整数を示し、l及びqはそれぞれ0~50の数を示し、m及びoはそれぞれ2~5の整数を示し、nは3~80の数を示し、R1b~R1eはそれぞれアルキル基、アルコキシ基、フェニル基、置換フェニル基、フェノキシ基又は置換フェノキシ基を示す。)
【化5】
(式(c’)中、R 41 は水素原子、メチル基又はCH OHを示し、R 42 はOR 43 、ハロゲン原子、COR 44 、COOR 45 、CN、CONR 46 47 又はR 48 を示す。R 43 ~R 47 はそれぞれ独立に水素原子、非置換の若しくは置換基を有するアルキル基、非置換の若しくは置換基を有する脂環式基、非置換の若しくは置換基を有するアリール基、非置換の若しくは置換基を有するへテロアリール基、非置換の若しくは置換基を有する非芳香族の複素環式基、非置換の若しくは置換基を有するアラルキル基、非置換の若しくは置換基を有するアルカリール基、又は非置換の若しくは置換基を有するオルガノシリル基を示し、R 48 は非置換の若しくは置換基を有するアリール基又は非置換の若しくは置換基を有するヘテロアリール基を示す。)
【請求項6】
請求項のいずれか一項に記載の樹脂組成物を含む防汚塗料組成物。
【請求項7】
防汚剤をさらに含む請求項に記載の防汚塗料組成物。
【請求項8】
前記(メタ)アクリル系共重合体以外の熱可塑性樹脂をさらに含む請求項又はに記載の防汚塗料組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、(メタ)アクリル系共重合体、その製造方法、樹脂組成物及び防汚塗料組成物に関する。
本出願は、2017年3月29日に日本に出願された特願2017-066013号に基づき、優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
海洋構造物や船舶には、海水と接する部分の腐食や航行速度低下の原因となる海中生物の付着防止を目的として、防汚塗料を塗装することが知られている。従来から、防汚塗料として、自己研磨型の防汚塗料が知られている。
自己研磨型の防汚塗料は、典型的には、加水分解性樹脂と、防汚剤とを含む。このような防汚塗料から得られる塗膜は、塗膜表面が徐々に海水に溶解して表面更新(自己研磨)され、塗膜表面に常に防汚剤が露出することにより、長期にわたって防汚効果を発揮する。
【0003】
自己研磨型の防汚塗料として、例えば、側鎖にヘミアセタールエステル基及び/又はヘミケタールエステル基を有するビニル重合体と有機溶剤とを含有する防汚塗料用組成物を用いたものが提案されている(特許文献1)。前記ビニル重合体は加水分解性を有しており、これを含む塗膜は自己研磨性を示す。かかる組成物は、防汚剤等が配合されて防汚塗料とされる。
【0004】
他の自己研磨型の防汚塗料として、例えば、シリコン含有重合性単量体由来の構成単位と、2価の金属原子を含有する金属原子含有重合性単量体由来の構成単位とを有する共重合体を含有する塗料組成物(特許文献2)、シリコン含有基とトリオルガノシリルオキシカルボニル基とを有する加水分解性樹脂を含有する防汚塗料組成物(特許文献3)等が提案されている。かかる防汚塗料組成物を用いた塗膜は、自己研磨性を示し、また、シリコン構造を含むことで表面エネルギーが小さくなっている。そのため、防汚剤を含まなくても防汚効果を発揮する。
【0005】
また、近年、環境等への影響から、揮発性有機化合物(Volatile Organic Compound;以下、「VOC」ともいう。)の低減が重要になっており、防汚塗料についてもVOCの低減が検討されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平4-103671号公報
【文献】特開2004-300410号公報
【文献】国際公開第2011/046087号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1の防汚塗料用組成物には有機溶剤が多量に含まれており、この防汚塗料用組成物を用いた防汚塗料はVOC含有量が多い。有機溶剤の含有量を減らせばVOCは低減されるが、固形分が増えることで粘度が上昇し、防汚塗料の調製や塗装が困難となる。さらに、この防汚塗料組成物の粘度を低くしようとした場合、分子量を下げたり、ガラス転移温度(Tg)を下げる必要がある。その場合、塗膜の硬度が不足し、耐盤木性に劣る問題がある。具体的には、塗装後の船舶等を盤木上に仮置きしたときに、塗膜の盤木が当たっている部分に跡が残ったり、その部分の周囲が盛り上がったりして塗膜の欠陥が生じやすい。特許文献2~3記載の塗料組成物においても同様の問題がある。
【0008】
本発明の目的は、高固形分かつ低粘度の有機溶剤溶液とすることができ、硬度が良好な塗膜を形成できる(メタ)アクリル系共重合体、前記(メタ)アクリル系共重合体を用いた樹脂組成物及び防汚塗料組成物、ならびに前記(メタ)アクリル系共重合体の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、以下の態様を有する。
〔1〕下記式(1)、下記式(2)又は下記式(3)で表される構造(I)の少なくとも1種を有する構成単位(A1)、トリオルガノシリルオキシカルボニル基を有する構成単位(A2)、及び下記式(4)又は下記式(5)で表される構造(III)の少なくとも1種を有する構成単位(A3)からなる群から選ばれる少なくとも1種の構成単位(A)と、
下記式(b1)で表される重合性単量体、下記式(b2)で表される重合性単量体、下記式(b3)で表される重合性単量体及び下記式(b4)で表される重合性単量体からなる群から選ばれる少なくとも1種のポリシロキサンブロック含有重合性単量体(b)由来の構成単位(B)と、
マクロモノマー(c)由来の構成単位(C)と、
を有する、(メタ)アクリル系共重合体。
【化1】
-COO-M-OCO- ・・・(4)
-COO-M-R22 ・・・(5)
CH=CR3a-CO-O-(C2u-O)-C2w-(SiR3b3c-O)-SiR3d3e3f ・・・(b1)
CH=CR4a-CO-O-(Cu’2u’-O)v’-Cw’2w’-Si(OSiR4b4c4d ・・・(b2)
CH=CR2a-CO-O-(Ck’2k’-O)l’-Cm’2m’-Si((OSiR2b2c-OSiR2d2e2f-OSi((OSiR2g2h-OSiR2i2j2k-Cо’2о’-(O-Cp’2p’q’-O-CO-CR2l=CH ・・・(b3)
CH=CR1a-CO-O-(C2k-O)-C2m-(SiR1b1c-O)-SiR1d1e-Cо2о-(O-C2p-O-CO-CR1f=CH ・・・(b4)
(式(1)~(5),(b1)~(b4)中、Xは-O-、-S-又は-NR14-を示し、R14は水素原子又はアルキル基を示し、R及びRはそれぞれ、水素原子又は炭素数1~10のアルキル基を示し、R及びRはそれぞれ、炭素数1~20のアルキル基、シクロアルキル基又はアリール基を示し、R及びRはそれぞれ、炭素数1~10のアルキレン基を示し、
MはZn、Cu、Mg又はCaを示し、R22は一価の有機酸残基を示し、
3aは水素原子又はメチル基を示し、uは2~5の整数を示し、vは0~50の数を示し、wは2~5の整数を示し、xは3~80の数を示し、R3b~R3fはそれぞれアルキル基、アルコキシ基、フェニル基、置換フェニル基、フェノキシ基又は置換フェノキシ基を示し、
4aは水素原子又はメチル基を示し、u’は2~5の整数を示し、v’は0~50の数を示し、w’は2~5の整数を示し、R4b~R4dはそれぞれアルキル基、-(OSiR5152-OSiR535455(ここで、yは0~20の整数、R51~R55はアルキル基を示す。)、又は-R56-(OCy’-OR57(ここで、y’は1~20の整数、R56はアルキレン基、R57はアルキル基を示す。)を示し、
2a及びR2lはそれぞれ水素原子又はメチル基を示し、k’及びp’はそれぞれ2~5の整数を示し、l’及びq’はそれぞれ0~50の数を示し、m’及びo’はそれぞれ2~5の整数を示し、r及びsはそれぞれ0~20の数を示し、R2b~R2kはそれぞれアルキル基を示し、
1a及びR1fはそれぞれ水素原子又はメチル基を示し、k及びpはそれぞれ2~5の整数を示し、l及びqはそれぞれ0~50の数を示し、m及びoはそれぞれ2~5の整数を示し、nは3~80の数を示し、R1b~R1eはそれぞれアルキル基、アルコキシ基、フェニル基、置換フェニル基、フェノキシ基又は置換フェノキシ基を示す。)
〔2〕前記マクロモノマー(c)が、下記式(c’)で表される構成単位を2以上有する、〔1〕に記載の(メタ)アクリル系共重合体。
【化2】
(式(c’)中、R41は水素原子、メチル基又はCHOHを示し、R42はOR43、ハロゲン原子、COR44、COOR45、CN、CONR4647又はR48を示す。R43~R47はそれぞれ独立に水素原子、非置換の若しくは置換基を有するアルキル基、非置換の若しくは置換基を有する脂環式基、非置換の若しくは置換基を有するアリール基、非置換の若しくは置換基を有するへテロアリール基、非置換の若しくは置換基を有する非芳香族の複素環式基、非置換の若しくは置換基を有するアラルキル基、非置換の若しくは置換基を有するアルカリール基、又は非置換の若しくは置換基を有するオルガノシリル基を示し、R48は非置換の若しくは置換基を有するアリール基又は非置換の若しくは置換基を有するヘテロアリール基を示す。)
〔3〕前記マクロモノマー(c)の数平均分子量が500~50000である、〔1〕又は〔2〕に記載の(メタ)アクリル系共重合体。
〔4〕前記構造(I)の少なくとも1種を有する重合性単量体(a1)、トリオルガノシリルオキシカルボニル基を有する重合性単量体(a2)、及び前記構造(III)の少なくとも1種を有する重合性単量体(a3)からなる群から選ばれる少なくとも1種の重合性単量体(a)と、
前記ポリシロキサンブロック含有重合性単量体(b)と、
マクロモノマー(c)と、
を含む単量体混合物を重合して(メタ)アクリル系共重合体を得る工程を有する、(メタ)アクリル系共重合体の製造方法。
〔5〕前記〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の(メタ)アクリル系共重合体を含む樹脂組成物。
〔6〕シリコーンオイルをさらに含む〔5〕に記載の樹脂組成物。
〔7〕有機溶剤をさらに含む〔5〕又は〔6〕に記載の樹脂組成物。
〔8〕前記(メタ)アクリル系共重合体が、前記構成単位(A1)を有し、
下記式(31)で表される化合物、下記式(32)で表される化合物、及び下記式(33)で表される化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物(Y)をさらに含む〔5〕~〔7〕のいずれかに記載の樹脂組成物。
【化3】
(式(31)~(33)中、Xは-O-、-S-又は-NR14-を示し、R14は水素原子又はアルキル基を示し、Rは、水素原子又は炭素数1~9のアルキル基を示し、Rは、水素原子又は炭素数1~10のアルキル基を示し、R及びR11はそれぞれ、炭素数1~20のアルキル基、シクロアルキル基又はアリール基を示し、R10は、単結合、又は炭素数1~9のアルキレン基を示し、R12は、炭素数1~9のアルキレン基を示す。)
〔9〕前記〔5〕~〔8〕のいずれかに記載の樹脂組成物を含む防汚塗料組成物。
〔10〕防汚剤をさらに含む〔9〕に記載の防汚塗料組成物。
〔11〕前記(メタ)アクリル系共重合体以外の熱可塑性樹脂をさらに含む〔9〕又は〔10〕に記載の防汚塗料組成物。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、高固形分かつ低粘度の有機溶剤溶液とすることができ、硬度が良好な塗膜を形成できる(メタ)アクリル系共重合体、前記(メタ)アクリル系共重合体を用いた樹脂組成物及び防汚塗料組成物、ならびに前記(メタ)アクリル系共重合体の製造方法を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下の用語の定義は、本明細書及び特許請求の範囲にわたって適用される。
「構成単位」とは、重合性単量体が重合することによって形成された重合性単量体由来の構成単位、又は重合体を処理することによって構成単位の一部が別の構造に変換された構成単位を意味する。
「(メタ)アクリレート」は、アクリレート及びメタクリレートの総称であり、「(メタ)アクリル酸」は、アクリル酸とメタクリル酸の総称であり、「(メタ)アクリロイル基」は、アクリロイル基とメタクリロイル基の総称であり、「(メタ)アクリルアミド」は、アクリルアミドとメタクリルアミドの総称である。
「(メタ)アクリル系共重合体」は、構成単位の少なくとも一部が(メタ)アクリル系単量体由来の構成単位である共重合体を意味する。(メタ)アクリル系重合体は、(メタ)アクリル系単量体以外の単量体(例えばスチレン等のビニル系単量体)由来の構成単位をさらに有していてもよい。
「(メタ)アクリル系単量体」は、アクリロイル基又はメタクリロイル基を有する単量体を意味する。
「揮発性有機化合物(VOC)」とは、常温常圧で容易に揮発する有機化合物(揮発性有機化合物)を意味する。なお、常温常圧とは、10℃~30℃、1000Pa~1050Paをいう。
【0012】
〔(メタ)アクリル系共重合体〕
本発明の(メタ)アクリル系共重合体(以下、「共重合体(X)」ともいう。)は、下記の構成単位(A)と、構成単位(B)と、構成単位(C)とを有する。
共重合体(X)は、構成単位(A)、構成単位(B)及び構成単位(C)以外の他の構成単位(以下、「構成単位(D)」ともいう。)をさらに有していてもよい。
【0013】
共重合体(X)が有する構成単位の少なくとも一部は(メタ)アクリル系単量体由来の構成単位である。共重合体(X)中の全構成単位の合計(100質量%)に対する(メタ)アクリル系単量体由来の構成単位の割合は、20~100質量%が好ましく、40~100質量%がより好ましい。
【0014】
<構成単位(A)>
構成単位(A)は、構成単位(A1)、構成単位(A2)及び構成単位(A3)からなる群から選ばれる少なくとも1種の構成単位である。
構成単位(A1)、構成単位(A2)及び構成単位(A3)は、加水分解可能な構造を有する点で共通する。構成単位(A)を有することで、共重合体(X)が加水分解性を有し、共重合体(X)を含む塗膜が水中(特に海水中)で自己研磨性を示すものとなる。すなわち、共重合体(X)は、構造(I)、トリオルガノシリルオキシカルボニル基及び構造(III)のいずれか1以上を有しており、この状態では海水等に溶解しないが、海水等との接触によりこの構造が加水分解すると、カルボキシ基等が生成し、海水等に溶解可能となる。塗膜表面が徐々に海水に溶解することで塗膜が表面更新(自己研磨)される。
【0015】
(構成単位(A1))
構成単位(A1)は、構造(I)の少なくとも1種を有する構成単位である。
構造(I)は、下記式(1)、下記式(2)又は下記式(3)で表される。各式中、カルボニル基の炭素原子から伸びる一重線のうち、酸素原子に結合していない線は、結合手を示す。
【0016】
【化4】
(式(1)~(3)中、Xは-O-、-S-又は-NR14-を示し、R14は水素原子又はアルキル基を示し、R及びRはそれぞれ、水素原子又は炭素数1~10のアルキル基を示し、R及びRはそれぞれ、炭素数1~20のアルキル基、シクロアルキル基又はアリール基を示し、R及びRはそれぞれ、炭素数1~10のアルキレン基を示す。)
【0017】
式(1)~(3)中、Xは、-O-(エーテル性酸素原子)、-S-(スルフィド系硫黄原子)、-NR14-のいずれであってもよく、-O-が好ましい。
【0018】
式(1)中、R及びRにおける炭素数1~10のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、2-エチルヘキシル基等が挙げられる。
及びRにおけるアルキル基の炭素数は、1~4が好ましく、1~3がより好ましく、1又は2がさらに好ましい。
【0019】
及びRの好ましい組み合わせとして、水素原子とメチル基との組み合わせ、メチル基とメチル基との組み合わせ、水素原子と炭素数2~10のアルキル基(以下、「長鎖アルキル基」ともいう。)との組み合わせ、メチル基と長鎖アルキル基との組み合わせ、水素原子と水素原子との組み合わせ、長鎖アルキル基と長鎖アルキル基との組み合わせ等が挙げられる。これらの中でも、加水分解性の点で、水素原子とメチル基との組み合わせが好ましい。
【0020】
式(1)中、Rにおける炭素数1~20のアルキル基としては、例えば、前述の炭素数1~10のアルキル基として挙げたアルキル基、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基等が挙げられる。Rにおけるアルキル基の炭素数は、1~10が好ましい。
シクロアルキル基としては、炭素数4~8のシクロアルキル基が好ましく、例えばシクロヘキシル基、シクロペンチル基等が挙げられる。
アリール基としては、炭素数6~20のアリール基が好ましく、例えばフェニル基、ナフチル基等が挙げられる。
としては、炭素数1~10のアルキル基、シクロアルキル基が好ましい。
【0021】
前記アルキル基、シクロアルキル基又はアリール基は、シクロアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アルカノイルオキシ基、アラルキル基及びアセトキシ基からなる群から選ばれる置換基により置換されていてもよい。置換基により置換されている場合、置換基の数は1つでもよく2つ以上でもよい。
置換基としてのシクロアルキル基、アリール基はそれぞれ、前記と同様のものが挙げられる。アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等が挙げられる。アルカノイルオキシ基としては、エタノイルオキシ基等が挙げられる。アラルキル基としては、ベンジル基等が挙げられる。
【0022】
式(2)中、Rにおける炭素数1~10のアルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ヘキシレン基等が挙げられる。
におけるアルキレン基の炭素数は、2~7が好ましく、3~4がより好ましい。
前記アルキレン基は、シクロアルキル基、アリール基、アルコキシル基、アルカノイルオキシ基、アラルキル基及びアセトキシ基からなる群から選ばれる置換基により置換されていてもよい。置換基により置換されている場合、置換基の数は1つでもよく2つ以上でもよい。アルキレン基に置換してもよい置換基の具体例としては、Rで挙げた置換基と同様のものが挙げられる。
【0023】
式(3)中、Rは、式(1)中のRと同様であり、好ましい態様も同様である。
は、式(2)中のRと同様であり、好ましい態様も同様である。
【0024】
構成単位(A1)としては、構造(I)を有する重合性単量体(a1)由来の構成単位が挙げられる。重合性単量体(a1)は、典型的には、構造(I)とエチレン性不飽和結合(重合性炭素-炭素二重結合)とを有する。
重合性単量体(a1)は、共重合体(X)を有機溶剤に溶解したときの粘度がより低くなる点から、エチレン性不飽和結合を1つ有する単官能単量体であることが好ましい。
重合性単量体(a1)としては、例えば、下記式(a11)で表される化合物、下記式(a12)で表される化合物、下記式(a13)で表される化合物等が挙げられる。
【0025】
【化5】
(式(a11)~(a13)中、Zは、CH=CH-COO-、CH=C(CH)-COO-、CHR=CH-COO-、CH=C(CH)-COO-又はCH=CR-CHCOO-を示し、Rは、前記構造(I)又はアルキルエステル基を示し、Xは-O-、-S-又は-NR14-を示し、R14は水素原子又はアルキル基を示し、R~Rは前記と同義である。)
【0026】
式(a11)~(a13)中のZにおいて、CH=CH-COO-はアクリロイルオキシ基、CH=C(CH)-COO-はメタクリロイルオキシ基である。
CH(CH)=CH-COO-は、クロトノイルオキシ基(エチレン性不飽和結合がトランス型)又はイソクロトノイルオキシ基(エチレン性不飽和結合がシス型)である。
CHR=CH-COO-は、カルボキシ基が構造(I)又はアルキルエステル基に置換された、マレイノイルオキシ基(エチレン性不飽和結合がシス型)又はフマロイルオキシ基(エチレン性不飽和結合がトランス型)である。
における構造(I)は前記と同様である。Rは、Zが結合した基と同じ構造を有することが好ましい。例えば、式(a11)で表される化合物の場合、Rは、-CR-ORで表される基であることが好ましい。
におけるアルキルエステル基は、-COORX1で表される。RX1はアルキル基を示す。RX1のアルキル基としては、炭素数1~6のアルキル基が好ましく、メチル基が特に好ましい。
CH=C(CH)-COO-又はCH=CR-CHCOO-は、カルボキシ基が構造(I)又はアルキルエステル基に置換されたイタコノイルオキシ基である。
は前記と同様である。
Zとしては、CH=CH-COO-又はCH(CH)=CH-COO-が好ましい。
【0027】
重合性単量体(a1)の具体例として、以下に示すものが挙げられる。
【0028】
【化6】
【0029】
重合性単量体(a1)は、市販品を購入して用いることも可能であり、公知の方法を利用して適宜合成することも可能である。
例えば、カルボキシ基を有する重合性単量体(m0)のカルボキシ基を構造(I)に変換することにより、重合性単量体(a1)を合成できる。
単量体(m0)としては、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、マレイン酸モノメチル、フマル酸モノメチル等が挙げられる。
【0030】
重合性単量体(m0)のカルボキシ基を構造(I)に変換する方法としては、例えば、重合性単量体(m0)と、下記式(31)で表される化合物、下記式(32)で表される化合物、及び下記式(33)で表される化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物(Y)とを反応(付加反応)させる方法が挙げられる。化合物(Y)は、単独で又は二種以上組み合わせて使用してもよい。
【0031】
【化7】
(式(31)~(33)中、Xは-O-、-S-又は-NR14-を示し、R14は水素原子又はアルキル基を示し、Rは、水素原子又は炭素数1~9のアルキル基を示し、Rは、水素原子又は炭素数1~10のアルキル基を示し、R及びR11はそれぞれ、炭素数1~20のアルキル基、シクロアルキル基又はアリール基を示し、R10は、単結合、又は炭素数1~9のアルキレン基を示し、R12は、炭素数1~9のアルキレン基を示す。)
【0032】
化合物(Y)として式(31)で表される化合物を用いると、重合性単量体(a1)として、前記式(a11)中のRがCH、RがR、RがRである化合物が得られる。
式(31)中、Rにおける炭素数1~9のアルキル基は、炭素数が9以下である以外は、Rにおける炭素数1~10のアルキル基と同様である。
式(31)中、R、Rはそれぞれ、前記式(a11)におけるR、Rと同様である。
【0033】
式(31)で表される化合物としては、例えば、式(31)中のXが-O-である1-アルケニルアルキルエーテル、式(31)中のXが-S-である1-アルケニルアルキルスルフィド、式(31)中のXが-NR14-である1-アルケニルジアルキルアミン等が挙げられる。1-アルケニルアルキルエーテルとしては、例えば、アルキルビニルエーテル(例えば、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、t-ブチルビニルエーテル、2-エチルヘキシルビニルエーテル)、シクロアルキルビニルエーテル(例えば、シクロへキシルビニルエーテル)等のビニルエーテル類;エチル-1-プロペニルエーテル等の1-プロペニルエーテル類;エチル-1-ブテニルエーテル等の1-ブテニルエーテル類;等が挙げられる。1-アルケニルアルキルスルフィドとしては、例えば、1-(エテニルチオ)エタン、1-(エテニルチオ)プロパン、1-(エテニルチオ)ブタン、2-(エテニルチオ)ブタン、1-(エテニルチオ)-2-メチルプロパン、1-(プロピルチオ)-1-プロペン、2-(プロピルチオ)-1-プロペン等の1-アルケニルアルキルスルフィド類;等が挙げられる。1-アルケニルジアルキルアミンとしては、例えば、N,N-ジメチルエテナミン、N-メチル-N-エチルエテナミン、N,N-ジエチルエテナミン、N-ビニルピロリジン等の1-アルケニルジアルキルアミン類等が挙げられる。
これらのなかでは、1-アルケニルアルキルエーテルが好ましく、ビニルエーテル類、1-プロペニルエーテル類がより好ましい。
【0034】
化合物(Y)として式(32)で表される化合物を用いると、重合性単量体(a1)として、前記式(a12)中のRがCH-R10である化合物が得られる。
式(32)中、R10における炭素数1~9のアルキレン基は、炭素数が9以下である以外は、Rと同様である。
【0035】
式(32)で表される化合物としては、例えば、2,3-ジヒドロフラン、5-メチル-2,3-ジヒドロフラン等のジヒドロフラン類;3,4-ジヒドロ-2H-ピラン、5,6-ジヒドロ-4-メトキシ-2H-ピラン等のジヒドロピラン類;2,3-ジヒドロチオフェン等のジヒドロチオフェン類;3,4-ジヒドロ-2H-チオピラン等のジヒドロチオピラン類;2,3-ジヒドロ-1-メチルピロール等のジヒドロピロール類;1,2,3,4-テトラヒドロ-1-メチルピリジン等のテトラヒドロピリジン類;等が挙げられる。
これらのなかでは、ジヒドロフラン類、ジヒドロピラン類が好ましく、ジヒドロピラン類がより好ましい。
【0036】
化合物(Y)として式(33)で表される化合物を用いると、重合性単量体(a1)として、前記式(a13)中のRがR11、RがCH-R12である化合物が得られる。
式(33)中、R11は、Rと同様である。R12は、炭素数が9以下である以外は、Rと同様である。
【0037】
式(33)で表される化合物としては、例えば、1-メトキシ-1-シクロペンテン、1-メトキシ-1-シクロヘキセン、1-メトキシ-1-シクロヘプテン、1-エトキシ-1-シクロペンテン、1-エトキシ-1-シクロヘキセン、1-ブトキシ-1-シクロペンテン、1-ブトキシ-1-シクロヘキセン等の1-アルコキシ-1-シクロアルキレン類;1-エトキシ-3-メチル-1-シクロヘキセン等の置換基含有1-アルコキシ-1-シクロアルキレン類;1-(メチルチオ)-1-シクロペンテン、1-(メチルチオ)-1-シクロヘキセン等の1-(アルキルチオ)-1-シクロアルキレン類;1-(1-ピロリジニル)-1-シクロペンテン、1-(1-ピロリジニル)-1-シクロヘキセン等の1-(1-ピロリジニル)-1-シクロアルキレン類;等が挙げられる。
化合物(Y)は、市販品を購入して用いることも可能であり、適宜合成することも可能である。
【0038】
重合性単量体(m0)と化合物(Y)との反応は、比較的マイルドな条件で進行する。
例えば、塩酸、硫酸、燐酸などの酸性触媒の存在下又は非存在下に、40~100℃の反応温度に保って5~10時間反応させることにより目的物を得ることができる。
反応終了後、所定の条件で減圧蒸留を行って目的の単量体を回収することができる。
【0039】
(構成単位(A2))
構成単位(A2)は、トリオルガノシリルオキシカルボニル基を有する構成単位である。
トリオルガノシリルオキシカルボニル基としては、例えば、下記式(II)で表される基が挙げられる。
-CO-O-SiR141516 ・・・(II)
(式(II)中、R14~R16はそれぞれ、炭素数1~20の炭化水素基を示す。)
【0040】
式(II)中、R14~R16における炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基等の炭素数1~20のアルキル基;シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;フェニル基、ナフチル基等のアリール基等が挙げられる。
シクロアルキル基、アリール基はそれぞれ、置換基を有していてもよい。置換基としては、例えばハロゲン原子、アルキル基、アシル基、ニトロ基、アミノ基等が挙げられる。
置換基としてのアルキル基の炭素数は、1~18程度が好ましい。
14~R16はそれぞれ同一でもよく異なってもよい。
安定したポリッシングレート(研磨速度)を示す塗膜が得られ、防汚性能を長期間安定して維持できる点で、R14~R16のうち少なくとも1つがイソプロピル基であることが好ましく、全てがイソプロピル基であることが特に好ましい。
【0041】
構成単位(A2)としては、例えば、トリオルガノシリルオキシカルボニル基を有する重合性単量体(a2)由来の構成単位が挙げられる。重合性単量体(a2)は、典型的には、トリオルガノシリルオキシカルボニル基とエチレン性不飽和結合(重合性炭素-炭素二重結合)とを有する。
重合性単量体(a2)は、共重合体(X)を有機溶剤に溶解したときの粘度がより低くなる点から、エチレン性不飽和結合を1つ有する単官能単量体であることが好ましい。
【0042】
重合性単量体(a2)としては、例えば、下記式(a21)で表される単量体、下記式(a22)で表される単量体等が挙げられる。これらの中でも前記式(a21)で表される化合物が好ましい。
CH=C(R17)-CO-O-SiR141516 ・・・(a21)
CH(COOR18)=C(R17)-CO-O-SiR141516 ・・・(a22)
(式(a22)中、R14~R16は前記と同義であり、R17は水素原子又はメチル基を示し、R18はアルキル基を示す。)
【0043】
前記式(a21)で表される単量体の具体例として、以下に示すものが挙げられる。
トリメチルシリル(メタ)アクリレート、トリエチルシリル(メタ)アクリレート、トリ-n-プロピルシリル(メタ)アクリレート、トリ-n-ブチルシリル(メタ)アクリレート、トリ-n-アミルシリル(メタ)アクリレート、トリ-n-ヘキシルシリル(メタ)アクリレート、トリ-n-オクチルシリル(メタ)アクリレート、トリ-n-ドデシルシリル(メタ)アクリレート、トリフェニルシリル(メタ)アクリレート、トリ-p-メチルフェニルシリル(メタ)アクリレート、トリベンジルシリル(メタ)アクリレート、トリイソプロピルシリル(メタ)アクリレート、トリイソブチルシリル(メタ)アクリレート、トリ-s-ブチルシリル(メタ)アクリレート、トリ-2-メチルイソプロピルシリル(メタ)アクリレート、トリ-t-ブチルシリル(メタ)アクリレート、エチルジメチルシリル(メタ)アクリレート、n-ブチルジメチルシリル(メタ)アクリレート、ジイソプロピル-n-ブチルシリル(メタ)アクリレート、n-オクチルジ-n-ブチルシリル(メタ)アクリレート、ジイソプロピルステアリルシリル(メタ)アクリレート、ジシクロヘキシルフェニルシリル(メタ)アクリレート、t-ブチルジフェニルシリル(メタ)アクリレート、ラウリルジフェニルシリル(メタ)アクリレート等。
【0044】
前記式(a22)中、R18におけるアルキル基としては、例えば炭素数1~5のアルキル基が挙げられる。
前記式(a22)で表される化合物の具体例として、以下に示すものが挙げられる。
トリイソプロピルシリルメチルマレート、トリイソプロピルシリルアミルマレート、トリ-n-ブチルシリル-n-ブチルマレート、t-ブチルジフェニルシリルメチルマレート、t-ブチルジフェニルシリル-n-ブチルマレート、トリイソプロピルシリルメチルフマレート、トリイソプロピルシリルアミルフマレート、トリ-n-ブチルシリル-n-ブチルフマレート、t-ブチルジフェニルシリルメチルフマレート、t-ブチルジフェニルシリル-n-ブチルフマレート等。
重合性単量体(a2)は、市販品を購入することも可能であり、公知の方法を利用して適宜合成することも可能である。
【0045】
(構成単位(A3))
構成単位(A3)は、下記式(4)又は(5)で表される構造(III)の少なくとも1種を有する構成単位である。
-COO-M-OCO- ・・・(4)
-COO-M-R22 ・・・(5)
(式(4),(5)中、MはZn、Cu、Mg又はCaを示し、R22は一価の有機酸残基を示す。)
【0046】
式(4),(5)中、Mとしては、Zn又はCuが好ましい。
式(5)中、R22の有機酸残基は、有機酸からプロトン1つを除いた残りの部分(例えばカルボン酸のカルボキシ基からプロトンを除いた残りの部分)をいい、このプロトンの代わりにMとイオン結合している。
有機酸としては、カルボン酸が好ましく、例えば、モノクロル酢酸、モノフルオロ酢酸、酢酸、プロピオン酸、オクチル酸、バーサチック酸、イソステアリン酸、パルミチン酸、クレソチン酸、α-ナフトエ酸、β-ナフトエ酸、安息香酸、2,4,5-トリクロロフェノキシ酢酸、2,4-ジクロロフェノキシ酢酸、キノリンカルボン酸、ニトロ安息香酸、ニトロナフタレンカルボン酸、ピルビン酸、ナフテン酸、アビエチン酸、水添アビエチン酸、(メタ)アクリル酸等のモノカルボン酸等が挙げられる。
22としては、貯蔵安定性の点では、(メタ)アクリロイルオキシ基以外の有機酸残基が好ましい。
22としては、長期にわたりクラックや剥離を防止できる耐久性の高い塗膜が得られる点で、炭素数1~20の脂肪酸残基(脂肪族モノカルボン酸残基)が好ましい。
【0047】
構成単位(A3)としては、構造(III)を有する重合性単量体(a3)由来の構成単位が挙げられる。
重合性単量体(a3)としては、例えば、前記式(4)で表される基の両末端に、非置換又は置換基を有するビニル基が結合した単量体、前記式(5)で表される基の片末端(R22側とは反対側)に、非置換又は置換基を有するビニル基が結合した単量体等が挙げられる。
前記式(4)で表される基の両末端に前記ビニル基が結合した単量体として、例えば、下記式(a31)で表される単量体(以下、「単量体(a31)」ともいう。)が挙げられる。
前記式(5)で表される基の片末端に前記ビニル基が結合した単量体として、例えば、下記式(a32)で表される単量体(以下、「単量体(a32)」ともいう。)が挙げられる。
【0048】
(CH=C(R21)-CO-O)M ・・・(a31)
CH=C(R21)-CO-O-M-R22 ・・・(a32)
式(a31),(a32)中、MはZn、Cu、Mg又はCaを示し、R21は水素原子又はメチル基を示し、R22は一価の有機酸残基を示す。
M及びR22はそれぞれ前記と同様であり、好ましい態様も同様である。
【0049】
単量体(a31)としては、例えば、アクリル酸亜鉛[(CH=CHCOO)Zn]、メタクリル酸亜鉛[(CH=C(CH)COO)Zn]、アクリル酸銅[(CH=CHCOO)Cu]、メタクリル酸銅[(CH=C(CH)COO)Cu]、アクリル酸マグネシウム[(CH=CHCOO)Mg]、メタクリル酸マグネシウム[(CH=C(CH)COO)Mg]、アクリル酸カルシウム[(CH=CHCOO)Ca]、メタクリル酸カルシウム[(CH=C(CH)COO)Ca]等が挙られる。これらは、いずれか1種を単独で用いてもよく、2種以上を組合わせて用いてもよい。
中でも、共重合体(X)の透明性が高くなり、これを含む塗膜の色調が美しくなる傾向にある点から、(メタ)アクリル酸亜鉛、(メタ)アクリル酸銅が好ましい。
【0050】
単量体(a32)としては、例えば、モノクロル酢酸マグネシウム(メタ)アクリレート、モノクロル酢酸カルシウム(メタ)アクリレート、モノクロル酢酸亜鉛(メタ)アクリレート、モノクロル酢酸銅(メタ)アクリレート;モノフルオロ酢酸マグネシウム(メタ)アクリレート、モノフルオロ酢酸カルシウム(メタ)アクリレート、モノフルオロ酢酸亜鉛(メタ)アクリレート、モノフルオロ酢酸銅(メタ)アクリレート;酢酸マグネシウム(メタ)アクリレート、酢酸カルシウム(メタ)アクリレート、酢酸亜鉛(メタ)アクリレート、酢酸銅(メタ)アクリレート;プロピオン酸マグネシウム(メタ)アクリレート、プロピオン酸カルシウム(メタ)アクリレート、プロピオン酸亜鉛(メタ)アクリレート、プロピオン酸銅(メタ)アクリレート;オクチル酸マグネシウム(メタ)アクリレート、オクチル酸カルシウム(メタ)アクリレート、オクチル酸亜鉛(メタ)アクリレート、オクチル酸銅(メタ)アクリレート;バーサチック酸マグネシウム(メタ)アクリレート、バーサチック酸カルシウム(メタ)アクリレート、バーサチック酸亜鉛(メタ)アクリレート、バーサチック酸銅(メタ)アクリレート;イソステアリン酸マグネシウム(メタ)アクリレート、イソステアリン酸カルシウム(メタ)アクリレート、イソステアリン酸亜鉛(メタ)アクリレート、イソステアリン酸銅(メタ)アクリレート;パルミチン酸マグネシウム(メタ)アクリレート、パルミチン酸カルシウム(メタ)アクリレート、パルミチン酸亜鉛(メタ)アクリレート、パルミチン酸銅(メタ)アクリレート;クレソチン酸マグネシウム(メタ)アクリレート、クレソチン酸カルシウム(メタ)アクリレート、クレソチン酸亜鉛(メタ)アクリレート、クレソチン酸銅(メタ)アクリレート;α-ナフトエ酸マグネシウム(メタ)アクリレート、α-ナフトエ酸カルシウム(メタ)アクリレート、α-ナフトエ酸亜鉛(メタ)アクリレート、α-ナフトエ酸銅(メタ)アクリレート;β-ナフトエ酸マグネシウム(メタ)アクリレート、β-ナフトエ酸カルシウム(メタ)アクリレート、β-ナフトエ酸亜鉛(メタ)アクリレート、β-ナフトエ酸銅(メタ)アクリレート;安息香酸マグネシウム(メタ)アクリレート、安息香酸カルシウム(メタ)アクリレート、安息香酸亜鉛(メタ)アクリレート、安息香酸銅(メタ)アクリレート;2,4,5-トリクロロフェノキシ酢酸マグネシウム(メタ)アクリレート、2,4,5-トリクロロフェノキシ酢酸カルシウム(メタ)アクリレート、2,4,5-トリクロロフェノキシ酢酸亜鉛(メタ)アクリレート、2,4,5-トリクロロフェノキシ酢酸銅(メタ)アクリレート;2,4-ジクロロフェノキシ酢酸マグネシウム(メタ)アクリレート、2,4-ジクロロフェノキシ酢酸カルシウム(メタ)アクリレート、2,4-ジクロロフェノキシ酢酸亜鉛(メタ)アクリレート、2,4-ジクロロフェノキシ酢酸銅(メタ)アクリレート;キノリンカルボン酸マグネシウム(メタ)アクリレート、キノリンカルボン酸カルシウム(メタ)アクリレート、キノリンカルボン酸亜鉛(メタ)アクリレート、キノリンカルボン酸銅(メタ)アクリレート;ニトロ安息香酸マグネシウム(メタ)アクリレート、ニトロ安息香酸カルシウム(メタ)アクリレート、ニトロ安息香酸亜鉛(メタ)アクリレート、ニトロ安息香酸銅(メタ)アクリレート;ニトロナフタレンカルボン酸マグネシウム(メタ)アクリレート、ニトロナフタレンカルボン酸カルシウム(メタ)アクリレート、ニトロナフタレンカルボン酸亜鉛(メタ)アクリレート、ニトロナフタレンカルボン酸銅(メタ)アクリレート;ピルビン酸マグネシウム(メタ)アクリレート、ピルビン酸カルシウム(メタ)アクリレート、ピルビン酸亜鉛(メタ)アクリレート、ピルビン酸銅(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは、いずれか1種を単独で用いてもよく、2種以上を組合わせて用いてもよい。
上記の中では、共重合体(X)の透明性が高くなり、これを含む塗膜の色調が美しくなる傾向にある点から、MがZnである亜鉛含有モノマーが好ましい。さらに、得られる塗膜の耐久性の点から、脂肪酸亜鉛(メタ)アクリレート(式(a32)中のMがZn、R22が脂肪酸残基であるもの)、又は脂肪酸銅(メタ)アクリレート(式(a32)中のMがCu、R22が脂肪酸残基であるもの)がより好ましい。
【0051】
重合性単量体(a3)は、得られる塗膜の自己研磨性が長期にわたり維持され、良好な防汚性が得られる点から、単量体(a31)及び単量体(a32)の両方を含むことができる。すなわち、共重合体(X)は、単量体(a31)由来の構成単位(以下、「単量体(a31)単位」ともいう。)及び単量体(a32)由来の構成単位(以下、「単量体(a32)単位」ともいう。)の両方を有することができる。
単量体(a31)と単量体(a32)との組み合わせとしては、(メタ)アクリル酸亜鉛と脂肪酸亜鉛(メタ)アクリレートとの組み合わせ、又は(メタ)アクリル酸銅と脂肪酸銅(メタ)アクリレートとの組み合わせが好ましい。
【0052】
共重合体(X)が単量体(a31)単位及び単量体(a32)単位の両方を有する場合、共重合体(X)中の単量体(a31)単位と単量体(a32)単位との比率(モル比)は、単量体(a31)単位/単量体(a32)単位=10/90~90/10が好ましく、20/80~80/20がより好ましく、30/70~70/30がさらに好ましい。
この比率が90/10以下であると、塗膜の耐クラック性や密着性が優れ、10/90以上であると、塗料が低粘度化しやすい傾向にある。
【0053】
重合性単量体(a3)は、公知の方法により製造したものを用いてもよく、市販のものを用いてもよい。
単量体(a31)は、例えば、式(a31)中のMに対応する金属元素を含む無機金属化合物と、(メタ)アクリル酸とを、有機溶剤等の希釈剤又はエチレン性不飽和単量体等の重合性不飽和基を有する反応性希釈剤中で反応させる方法により得られる。この方法で得られる金属含有重合性単量体を含有する混合物は、有機溶剤や他の単量体との相溶性に優れ、重合を容易に行うことができる。前記反応は、水の存在下で行うことが好ましく、反応物中の水の含有量を0.01~30質量%の範囲とすることが好ましい。前記無機金属化合物としては、例えば、Zn、Cu、Mg及びCaから選ばれる金属の酸化物、水酸化物、塩化物等が挙げられる。
【0054】
単量体(a32)は、例えば、式(a32)中のMに対応する金属元素を含む無機金属化合物と、(メタ)アクリル酸と、式(a32)中の有機酸残基R22に対応する有機酸とを、有機溶剤等の希釈剤あるいはエチレン性不飽和単量体等の重合性不飽和基を有する反応性希釈剤中で反応させる方法により得られる。前記無機金属化合物としては、単量体(a31)を得るための無機金属化合物と同様のものが挙げられる。
【0055】
単量体(a31)と単量体(a32)とを含有する単量体混合物は、例えば、式(a31)~(a32)中のMに対応する金属元素を含む無機金属化合物と、(メタ)アクリル酸と、式(a32)中の有機酸残基R22に対応する有機酸とを、有機溶剤等の希釈剤あるいはエチレン性不飽和単量体等の反応性希釈剤中で反応する方法等により得られる。
その際、R22に対応する有機酸の使用量は、無機金属化合物に対して0.01~3倍モルであることが好ましく、0.01~0.95倍モルがより好ましく、0.1~0.7倍モルがさらに好ましい。この有機酸の含有量が0.01倍モル以上であると、この単量体混合物の製造工程において固体の析出が抑制されると共に、得られる塗膜の自己研磨性、耐クラック性がより良好となる。3倍モル以下であると、得られる塗膜の防汚性がより長期間維持される傾向にある。
【0056】
<構成単位(B)>
構成単位(B)は、ポリシロキサンブロック含有重合性単量体(b)(以下、「重合性単量体(b)」ともいう。)由来の構成単位である。
共重合体(X)が構成単位(B)を有することで、共重合体(X)を含む塗膜がポリシロキサンブロックを含み、該塗膜の表面に海洋生物や各種の汚れ等が付着しにくくなる。
そのため、該塗膜は、防汚剤を含まなくても防汚性を示すものとなる。
【0057】
重合性単量体(b)は、下記の重合性単量体(b1)、重合性単量体(b2)、重合性単量体(b3)及び重合性単量体(b4)からなる群から選ばれる少なくとも1種である。これらのうち、重合性単量体(b1)、(b2)は、ポリシロキサンブロックの一方の末端にエチレン性不飽和結合を有する片末端型であり、重合性単量体(b3)、(b4)は、ポリシロキサンブロックの両方の末端にエチレン性不飽和結合を有する両末端型である。
【0058】
(重合性単量体(b1))
重合性単量体(b1)は、下記式(b1)で表される。
CH=CR3a-CO-O-(C2u-O)-C2w-(SiR3b3c-O)-SiR3d3e3f ・・・(b1)
【0059】
式(b1)中、R3aは水素原子又はメチル基を示し、uは2~5の整数を示し、vは0~50の数を示し、wは2~5の整数を示し、xは3~80の数を示し、R3b~R3fはそれぞれアルキル基、アルコキシ基、フェニル基、置換フェニル基、フェノキシ基又は置換フェノキシ基を示す。
【0060】
式(b1)中、R3b~R3fにおいて、アルキル基、アルコキシ基の炭素数はそれぞれ、1~18が好ましい。置換フェニル基、置換フェノキシ基における置換基としては、アルキル基、アルコキシ基等が挙げられる。
3b~R3fはそれぞれ、炭素数1~18のアルキル基が好ましく、メチル基又はエチル基がより好ましく、メチル基が特に好ましい。
【0061】
uは2~5の整数であり、安価な点で、2又は3が好ましい。uが2のものと3のものとを併用することも可能である。
vは0~50の数であり、0より大きく30以下であることが好ましく、0より大きく25以下であることがより好ましく、0より大きく20以下であることが特に好ましい。vが前記範囲の上限値以下であれば、塗膜の耐水性が良好となる傾向にある。特に20以下であることが、旧塗膜とのリコート性に優れることから好ましい。
wは2~5の整数であり、2又は3が好ましい。
【0062】
xはポリシロキサン構造の平均重合度である。xが前記範囲の下限値以上であれば、共重合体(X)を含有する防汚塗料組成物が防汚剤を含まない場合でも、その塗膜に防汚効果が発現する傾向にあり、前記範囲の上限値以下であれば、重合性単量体(b1)とポリシロキサンブロックを含まない重合性単量体(例えば構成単位(A)を形成する重合性単量体)との相溶性、共重合体(X)の溶剤溶解性が良好になる傾向にある。xは5~50が好ましく、7~40がより好ましく、8~30が特に好ましい。
なお、R3a~R3f、u、v、w及びxはそれぞれ独立であり、また、分子中又は分子間において同一符号が存在する場合、それらは異なっていてもよい。
【0063】
重合性単量体(b1)の具体例としては、例えば、vが0のものとして、JNC社製のFM-0711、FM-0721、FM-0725(以上、商品名)、信越化学社製のX-24-8201、X-22-174ASX、X-22-174DX、X-22-2426(以上、商品名)等が挙げられる。
【0064】
(重合性単量体(b2))
重合性単量体(b2)は、下記式(b2)で表される。
CH=CR4a-CO-O-(Cu’2u’-O)v’-Cw’2w’-Si(OSiR4b4c4d ・・・(b2)
【0065】
式(b2)中、R4aは水素原子又はメチル基を示し、u’は2~5の整数を示し、v’は0~50の数を示し、w’は2~5の整数を示し、R4b~R4dはそれぞれアルキル基、-(OSiR5152-OSiR535455(ここで、yは0~20の整数、R51~R55はアルキル基を示す。)、又は-R56-(OCy’-OR57(ここで、y’は1~20の整数、R56はアルキレン基、R57はアルキル基を示す)。
【0066】
式(b2)中、R4b~R4dにおけるアルキル基は、前記R3b~R3fにおけるアルキル基と同様であり、好ましい態様も同様である。
y及びy’は、それぞれポリシロキサン構造の平均重合度である。y及びy’が前記上限値以下であれば、重合性単量体(b2)とポリシロキサンブロックを含まない重合性単量体との相溶性、共重合体(X)の溶剤溶解性が良好になる傾向にある。y及びy’は、それぞれ10以下が好ましく、5以下がより好ましい。
51~R55、R57におけるアルキル基としては、R4b~R4dにおけるアルキル基と同様のものが挙げられ、好ましい態様も同様である。R56において、アルキレン基の炭素数は、1~18が好ましい。
【0067】
式(b2)中、u’は2~5の整数であり、安価な点で、2又は3が好ましい。また、u’が2のものと3のものとを併用することも可能である。
式(b2)中、v’は前記式(b1)中のvと同様であり、好ましい範囲も同様である。
w’は2~5の整数であり、2又は3が好ましい。
なお、R4a~R4d、u’、v’、w’、y及びy’はそれぞれ独立であり、また、分子中又は分子間において同一符号が存在する場合、それらは異なっていてもよい。
【0068】
重合性単量体(b2)の具体例としては、例えば、v’が0のものとして、JNC社製のTM-0701(商品名)、信越化学社製のX-22-2404(商品名)等が挙げられる。
【0069】
(重合性単量体(b3))
重合性単量体(b3)は、下記式(b3)で表される。
CH=CR2a-CO-O-(Ck’2k’-O)l’-Cm’2m’-Si((OSiR2b2c-OSiR2d2e2f-OSi((OSiR2g2h-OSiR2i2j2k-Cо’2о’-(O-Cp’2p’q’-O-CO-CR2l=CH ・・・(b3)
【0070】
式(b3)中、R2a及びR2lは、それぞれ水素原子又はメチル基を示し、k’及びp’は、それぞれ2~5の整数を示し、l’及びq’は、それぞれ0~50の数を示し、m’及びo’は、それぞれ2~5の整数を示し、r及びsは、それぞれ0~20の数を示し、R2b~R2kは、それぞれアルキル基を示す。
【0071】
2b~R2kにおけるアルキル基は、前記R3b~R3fにおけるアルキル基と同様であり、好ましい態様も同様である。
k’及びp’は2~5の整数であり、安価な点で、2又は3が好ましい。k’及びp’が2のものと3のものとを併用することも可能である。
l’及びq’は、それぞれ前記式(b1)中のvと同様であり、好ましい範囲も同様である。
m’及びo’は2~5の整数であり、2又は3が好ましい。
【0072】
r及びsはそれぞれ、ポリシロキサン構造の平均重合度である。r及びsが前記上限値以下であれば、重合性単量体(b3)とポリシロキサンブロックを含まない重合性単量体との相溶性、共重合体(X)の溶剤溶解性が良好になる傾向にある。r及びsはそれぞれ10以下が好ましく、5以下がより好ましい。
なお、R2a~R2l、k’、l’、m’、n’、o’、p’、q’、r及びsは、それぞれ独立であり、また、分子中又は分子間において同一符号が存在する場合、それらは異なっていてもよい。
【0073】
(重合性単量体(b4))
重合性単量体(b4)は、下記式(b4)で表される。
CH=CR1a-CO-O-(C2k-O)-C2m-(SiR1b1c-O)-SiR1d1e-Cо2о-(O-C2p-O-CO-CR1f=CH ・・・(b4)
【0074】
式(b4)中、R1a及びR1fは、それぞれ水素原子又はメチル基を示し、k及びpは、それぞれ2~5の整数を示し、l及びqは、それぞれ0~50の数を示し、m及びoは、それぞれ2~5の整数を示し、nは3~80の数を示し、R1b~R1eは、それぞれアルキル基、アルコキシ基、フェニル基、置換フェニル基、フェノキシ基又は置換フェノキシ基を示す。
【0075】
式(b4)中、R1b~R1eは、それぞれ前記R3b~R3fと同様であり、好ましい態様も同様である。
k及びpは2~5の整数であり、安価な点で、2又は3が好ましい。k及びpが2のものと3のものとを併用することも可能である。
l及びqはそれぞれ前記式(b1)中のvと同様であり、好ましい範囲も同様である。
m及びoは2~5の整数であり、2又は3が好ましい。
nは前記式(b1)中のxと同様であり、好ましい範囲も同様である。
なお、R1a~R1f、k、l、m、n、o、p及びqは、それぞれ独立であり、また、分子中又は分子間において同一符号が存在する場合、それらは異なっていてもよい。
【0076】
重合性単量体(b4)の具体例としては、例えば、l及びqが0のものとして、JNC社製のFM-7711、FM-7721、FM-7725(以上、商品名)等が挙げられる。
【0077】
重合性単量体(b)は、防汚性が良好となる点で、重合性単量体(b1)を含むことが好ましい。重合性単量体(b1)と、重合性単量体(b2)~(b4)のいずれか1以上とを併用してもよい。
【0078】
<構成単位(C)>
構成単位(C)は、マクロモノマー(c)由来の構成単位である。共重合体(X)が構成単位(C)を有することで、共重合体(X)を高固形分かつ低粘度の有機溶剤溶液とすることができる。また、共重合体(X)を含む塗膜が良好な硬度を示す。
マクロモノマー(c)は、ラジカル重合性基を有し、かつラジカル重合性基を有する単量体(以下「単量体(c1)」ともいう)由来の構成単位を2以上有する化合物である。
マクロモノマー(c)が有する2以上の構成単位はそれぞれ同じでも異なってもよい。
【0079】
マクロモノマー(c)が有するラジカル重合性基としては、エチレン性不飽和結合を有する基が好ましい。エチレン性不飽和結合を有する基としては、例えば、CH=C(COOR)-CH-、(メタ)アクリロイル基、2-(ヒドロキシメチル)アクリロイル基、ビニル基等が挙げられる。
ここで、Rは水素原子、非置換の若しくは置換基を有するアルキル基、非置換の若しくは置換基を有する脂環式基、非置換の若しくは置換基を有するアリール基又は非置換の若しくは置換基を有する複素環基を示す。
【0080】
Rにおけるアルキル基としては、例えば、炭素数1~20の分岐又は直鎖アルキル基が挙げられる。炭素数1~20の分岐又は直鎖アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、t-ブチル基、i-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基及びイコシル基等が挙げられる。
【0081】
Rにおける脂環式基としては、単環式のものでも多環式のものでもよく、例えば、炭素数3~20の脂環式基が挙げられる。脂環式基としては、シクロアルキル基等の飽和脂環式基が好ましく、具体例としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、ビシクロ[2.2.1]ヘプチル基、シクロオクチル基、及びアダマンチル基等が挙げられる。
【0082】
Rにおけるアリール基としては、例えば、炭素数6~18のアリール基が挙げられる。
炭素数6~18のアリール基の具体例としては、フェニル基及びナフチル基が挙げられる。
【0083】
Rにおける複素環式基としては、例えば、炭素数5~18の複素環式基が挙げられる。
炭素数5~18の複素環式基の具体例としては、γ-ブチロラクトン基及びε-カプロラクトン基等の酸素原子含有複素環式基、ピリジル基、カルバゾリル基、ピロリジニル基、ピロリドン基等の窒素原子含有複素環式基、モルホリノ基等が挙げられる。
【0084】
前記アルキル基、脂環式基、アリール基、複素環基はそれぞれ置換基を有していてもよい。置換基としては、例えば、アルキル基(ただしRが置換基を有するアルキル基である場合を除く)、アリール基、-COOR51、シアノ基、-OR52、-NR5354、-CONR5556、ハロゲン原子、アリル基、エポキシ基、シロキシ基、及び親水性又はイオン性を示す基からなる群から選択される少なくとも1種が挙げられる。
ここで、R51~R56はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、脂環式基又はアリール基を示す。これらの基はそれぞれ、前記と同様のものが挙げられる。
【0085】
前記置換基としてのアルキル基、アリール基は、それぞれ、Rにおけるアルキル基、アリール基と同様のものが挙げられる。
前記置換基における-COOR51のR51としては、水素原子又はアルキル基が好ましい。すなわち、-COOR51は、カルボキシ基又はアルコキシカルボニル基が好ましい。アルコキシカルボニル基としては、例えば、メトキシカルボニル基が挙げられる。
前記置換基における-OR52のR52としては、水素原子又は非置換のアルキル基が好ましい。すなわち、-OR52は、ヒドロキシ基又はアルコキシ基が好ましい。アルコキシ基としては、例えば、炭素数1~12のアルコキシ基が挙げられ、具体例としては、メトキシ基が挙げられる。
【0086】
前記置換基における-NR5354としては、例えば、アミノ基、モノメチルアミノ基、ジメチルアミノ基等が挙げられる。
前記置換基における-CONR5556としては、例えば、カルバモイル基(-CONH),N-メチルカルバモイル基(-CONHCH)、N,N-ジメチルカルバモイル基(ジメチルアミド基:-CON(CH)等が挙げられる。
【0087】
前記置換基におけるハロゲン原子としては、例えば、ふっ素原子、塩素原子、臭素原子及びよう素原子等が挙げられる。
前記置換基における親水性又はイオン性を示す基としては、例えば、カルボキシ基のアルカリ塩又はスルホキシ基のアルカリ塩、ポリエチレンオキシド基、ポリプロピレンオキシド基等のポリ(アルキレンオキシド)基及び四級アンモニウム塩基等のカチオン性置換基が挙げられる。
【0088】
Rとしては、アルキル基又は飽和脂環式基が好ましく、アルキル基、又は非置換の若しくは置換基としてアルキル基を有する飽和脂環式基がより好ましい。
上記の中でも、入手のし易さから、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、t-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基及びオクチル基が好ましく、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、t-ブチル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、イソボルニル基及びアダマンチル基が好ましい。
【0089】
単量体(c1)が有するラジカル重合性基としては、マクロモノマー(c)が有するラジカル重合性基と同様に、エチレン性不飽和結合を有する基が好ましい。
単量体(c1)としては、種々のものが用いられ得るが、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸イソアミル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸イソステアリル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸3,5,5-トリメチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニルオキシエチル、テルペンアクリレートやその誘導体、水添ロジンアクリレートやその誘導体、(メタ)アクリル酸ドコシル等の炭化水素基含有(メタ)アクリル酸エステル;
(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル、グリセロール(メタ)アクリレート等の水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル;
(メタ)アクリル酸、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2-(メタ)アクリロイルオキシプロピルヘキサヒドロフタル酸、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルフタル酸、2-(メタ)アクリロイルオキシプロピルフタル酸、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルマレイン酸、2-(メタ)アクリロイルオキシプロピルマレイン酸、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルコハク酸、2-(メタ)アクリロイルオキシプロピルコハク酸、クロトン酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、マレイン酸モノオクチル、イタコン酸モノメチル、イタコン酸モノエチル、イタコン酸モノブチル、イタコン酸モノオクチル、フマル酸モノメチル、フマル酸モノエチル、フマル酸モノブチル、フマル酸モノオクチル、シトラコン酸モノエチル等のカルボキシル基含有ビニル系単量体;無水マレイン酸、無水イタコン酸等の酸無水物基含有ビニル系単量体;ジメチルマレート、ジブチルマレート、ジメチルフマレート、ジブチルフマレート、ジブチルイタコネート、ジパーフルオロシクロヘキシルフマレート等の不飽和ジカルボン酸ジエステル単量体;
(メタ)アクリル酸グリシジル、α-エチルアクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸3,4-エポキシブチル等のエポキシ基含有ビニル系単量体;ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のアミノ基含有(メタ)アクリル酸エステル系のビニル系単量体;(メタ)アクリルアミド、N-t-ブチル(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピルアクリルアミド、ヒドロキシエチルアクリルアミド、N-メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、ダイアセトンアクリルアミド、マレイン酸アミド、マレイミド等のアミド基を含有するビニル系単量体;
スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、(メタ)アクリロニトリル、塩化ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニル系単量体;ジビニルベンゼン、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3-ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、トリアリルシアヌレート、マレイン酸ジアリル、ポリプロピレングリコールジアリルエーテル、N,N’-メチレンビス(メタ)アクリルアミド等の多官能性のビニル系単量体;
アクリロイルモルホリン、(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコール、(メタ)アクリル酸ポリプロピレングリコール、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル、(メタ)アクリル酸n-ブトキシエチル、(メタ)アクリル酸イソブトキシエチル、(メタ)アクリル酸t-ブトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエトキシエチル、(メタ)アクリル酸フェノキシエチル、(メタ)アクリル酸ノニルフェノキシエチル、(メタ)アクリル酸3-メトキシブチル、(メタ)アクリル酸アセトキシエチル、「プラクセルFM」(ダイセル化学(株)製カプロラクトン付加モノマー、商品名)、「ブレンマーPME-100」(日油(株)製メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(エチレングリコールの連鎖が2であるもの)、商品名)、「ブレンマーPME-200」(日油(株)製メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(エチレングリコールの連鎖が4であるもの)、商品名)、「ブレンマーPME-400」(日油(株)製メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(エチレングリコールの連鎖が9であるもの)、商品名)、「ブレンマー50POEP-800B」(日油(株)製オクトキシポリエチレングリコール-ポリプロピレングリコール-メタクリレート(エチレングリコールの連鎖が8であり、プロピレングリコールの連鎖が6であるもの)、商品名)及び「ブレンマー20ANEP-600」(日油(株)製ノニルフェノキシ(エチレングリコール-ポリプロピレングリコール)モノアクリレート、商品名)、「ブレンマーAME-100」(日油(株)製、商品名)、「ブレンマーAME-200」(日油(株)製、商品名)及び「ブレンマー50AOEP-800B」(日油(株)製、商品名)、サイラプレーンFM-0711(JNC(株)製、商品名)、サイラプレーンFM-0721(JNC(株)製、商品名)、サイラプレーンFM-0725(JNC(株)製、商品名)、サイラプレーンTM-0701(JNC(株)製、商品名)、サイラプレーンTM-0701T(JNC(株)製、商品名)、X-22-174DX(信越化学工業(株)製、商品名)、X-22-2426(信越化学工業(株)製、商品名)、X-22-2475(信越化学工業(株)製、商品名)、
3-(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等のシランカップリング剤含有モノマー、
前記単量体(a2)等の、シランカップリング剤含有モノマー以外のオルガノシリル基含有モノマー;
塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、クロロトリフルオロエチレン等のハロゲン化オレフィン、
2,2,2-トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3,3-ペンタフルオロフェニル(メタ)アクリレート、2-(パーフルオロブチル)エチル(メタ)アクリレート、3-(パーフルオロブチル)-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-(パーフルオロヘキシル)エチル(メタ)アクリレート、3-パーフルオロヘキシル-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-(パーフルオロ-3-メチルブチル)-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2,2,3,3-テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、1H,1H,5H-オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、1H,1H,5H-オクタフルオロペンチル(メタ)メタクリレート、1H,1H,2H,2H-トリデカフルオロオクチル(メタ)アクリレート、1H-1-(トリフルオロメチル)トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、1H,1H,3H-ヘキサフルオロブチル(メタ)アクリレート、1,2,2,2-テトラフルオロー1-(トリフルオロメチル)エチル(メタ)アクリレート等のフッ素含有モノマー(ただしハロゲン化オレフィンを除く)、
1-ブトキシエチル(メタ)アクリレート、1-(2-エチルへキシルオキシ)エチル(メタ)アクリレート、1-(シクロへキシルオキシ)エチルメタクリレート、2-テトラヒドロピラニル(メタ)アクリレート等のアセタール構造を持つモノマー、4-メタクリロイルオキシベンゾフェノン、(メタ)アクリル酸2-イソシアナトエチル等が挙げられる。これらの単量体は1種を単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
単量体(c1)の少なくとも一部は(メタ)アクリル系単量体であることが好ましい。
【0090】
単量体(c1)由来の構成単位としては、下記式(c’)で示される構成単位(以下「構成単位(c’)」ともいう)が好ましい。すなわち、マクロモノマー(c)は、ラジカル重合性基を有し、かつ構成単位(c’)を2以上有することが好ましい。
【0091】
【化8】
(式(c’)中、R41は水素原子、メチル基又はCHOHを示し、R42はOR43、ハロゲン原子、COR44、COOR45、CN、CONR4647又はR48を示す。R43~R47はそれぞれ独立に水素原子、非置換の若しくは置換基を有するアルキル基、非置換の若しくは置換基を有する脂環式基、非置換の若しくは置換基を有するアリール基、非置換の若しくは置換基を有するへテロアリール基、非置換の若しくは置換基を有する非芳香族の複素環式基、非置換の若しくは置換基を有するアラルキル基、非置換の若しくは置換基を有するアルカリール基、又は非置換の若しくは置換基を有するオルガノシリル基を示し、R48は非置換の若しくは置換基を有するアリール基又は非置換の若しくは置換基を有するヘテロアリール基を示す。)
【0092】
43~R47におけるアルキル基、脂環式基、アリール基はそれぞれ、前述のRにおけるアルキル基、脂環式基、アリール基と同様のものが挙げられる。
ヘテロアリール基としては、例えば、ピリジル基、カルバゾリル基等が挙げられる。
非芳香族の複素環式基としては、例えば、ピロリジニル基、ピロリドン基等が挙げられる。
アラルキル基としては、例えばベンジル基、フェニルエチル基等が挙げられる。
オルガノシリル基としては、例えばトリオルガノシリル基が挙げられる。トリオルガノシリル基としては、構成単位(A2)のトリオルガノシリルオキシカルボニル基におけるトリオルガノシリル基(例えば、-SiR141516)と同様のものが挙げられる。
【0093】
前記アルキル基、脂環式基、アリール基、ヘテロアリール基、非芳香族の複素環式基、アラルキル基、アルカリール基、オルガノシリル基は、それぞれ置換基を有していてもよい。置換基としては、カルボン酸基(COOH)、カルボン酸エステル基、エポキシ基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、1級アミノ基、2級アミノ基、3級アミノ基、イソシアナト基、スルホン酸基(SOH)、ハロゲン原子等が挙げられる。
カルボン酸エステル基としては、例えば、前記Rの説明で挙げた-COOR51のR51がアルキル基、脂環式基又はアリール基である基が挙げられる。
アルコキシ基としては、前記-OR52のR52がアルキル基である基が挙げられる。
2級アミノ基としては、前記-NR5354のR53が水素原子、R54がアルキル基、脂環式基又はアリール基である基が挙げられる。
3級アミノ基としては、前記-NR5354のR53及びR54がそれぞれアルキル基、脂環式基又はアリール基である基が挙げられる。
アルキル基、アリール基、ハロゲン原子は、それぞれ前記と同様のものが挙げられる。
【0094】
48におけるアリール基、ヘテロアリール基は、それぞれ前記と同様のものが挙げられる。
前記アリール基、ヘテロアリール基は、それぞれ置換基を有していてもよい。置換基としては、カルボン酸基、カルボン酸エステル基、エポキシ基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、1級アミノ基、2級アミノ基、3級アミノ基、イソシアナト基、スルホン酸基、ハロゲン原子等が挙げられる。
カルボン酸エステル基、アルコキシ基、1級アミノ基、2級アミノ基、3級アミノ基、アルキル基、アリール基及びハロゲン原子は、それぞれ前記と同様のものが挙げられる。
オレフィン基としては、例えば、アリル基等が挙げられる。オレフィン基は置換基を有していてもよい。オレフィン基における置換基としては、R48における置換基と同様のものが挙げられる。
【0095】
構成単位(c’)としては、R41が水素原子又はメチル基であり、R42がCOOR45である構成単位が好ましい。R45は、水素原子、アルキル基、飽和脂環式基、アリール基、ヘテロアリール基又は非芳香族の複素環式基が好ましい。
【0096】
構成単位(c’)は、CH=CR4142に由来する構成単位である。CH=CR4142の具体例としては、以下のものが挙げられる。
置換又は非置換のアルキル(メタ)アクリレート[例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、i-プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、i-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート、1-メチル-2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、3-メトキシブチル(メタ)アクリレート、3-メチル-3-メトキシブチル(メタ)アクリレート]、置換又は非置換のアラルキル(メタ)アクリレート[例えば、ベンジル(メタ)アクリレート、m-メトキシフェニルエチル(メタ)アクリレート、p-メトキシフェニルエチル(メタ)アクリレート]、置換又は非置換のアリール(メタ)アクリレート[例えば、フェニル(メタ)アクリレート、m-メトキシフェニル(メタ)アクリレート、p-メトキシフェニル(メタ)アクリレート、o-メトキシフェニルエチル(メタ)アクリレート]、脂環式(メタ)アクリレート[例えば、イソボルニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート]、ハロゲン原子含有(メタ)アクリレート[例えば、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、パーフルオロオクチル(メタ)アクリレート、パーフルオロシクロヘキシル(メタ)アクリレート]等の疎水基含有(メタ)アクリル酸エステル単量体;
2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、2-エトキシエチル(メタ)アクリレート、2-ブトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、2-(2-エチルヘキサオキシ)エチル(メタ)アクリレート等のオキシエチレン基含有(メタ)アクリル酸エステル単量体;
2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート等の水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル単量体;
メトキシポリエチレングリコールアリルエーテル、メトキシポリプロピレングリコールアリルエーテル、ブトキシポリエチレングリコールアリルエーテル、ブトキシポリプロピレングリコールアリルエーテル、メトキシポリエチレングリコール-ポリプロピレングリコールアリルエーテル、ブトキシポリエチレングリコール-ポリプロピレングリコールアリルエーテル等の末端アルコキシアリル化ポリエーテル単量体;
(メタ)アクリル酸グリシジル、α-エチルアクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸3,4-エポキシブチル等のエポキシ基含有ビニル単量体;
ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド等の第一級または第二級アミノ基含有ビニル単量体;
ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノブチル(メタ)アクリレート、ジブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等の第三級アミノ基含有ビニル単量体;
ビニルピロリドン、ビニルピリジン、ビニルカルバゾール等の複素環系塩基性単量体;
トリメチルシリル(メタ)アクリレート、トリエチルシリル(メタ)アクリレート、トリ-n-プロピルシリル(メタ)アクリレート、トリ-n-ブチルシリル(メタ)アクリレート、トリ-n-アミルシリル(メタ)アクリレート、トリ-n-ヘキシルシリル(メタ)アクリレート、トリ-n-オクチルシリル(メタ)アクリレート、トリ-n-ドデシルシリル(メタ)アクリレート、トリフェニルシリル(メタ)アクリレート、トリ-p-メチルフェニルシリル(メタ)アクリレート、トリベンジルシリル(メタ)アクリレート、トリイソプロピルシリル(メタ)アクリレート、トリイソブチルシリル(メタ)アクリレート、トリ-s-ブチルシリル(メタ)アクリレート、トリ-2-メチルイソプロピルシリル(メタ)アクリレート、トリ-t-ブチルシリル(メタ)アクリレート、エチルジメチルシリル(メタ)アクリレート、n-ブチルジメチルシリル(メタ)アクリレート、ジイソプロピル-n-ブチルシリル(メタ)アクリレート、n-オクチルジ-n-ブチルシリル(メタ)アクリレート、ジイソプロピルステアリルシリル(メタ)アクリレート、ジシクロヘキシルフェニルシリル(メタ)アクリレート、t-ブチルジフェニルシリル(メタ)アクリレート、ラウリルジフェニルシリル(メタ)アクリレート等のオルガノシリル基含有ビニル単量体;
メタクリル酸、アクリル酸、ビニル安息香酸、テトラヒドロフタル酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフタル酸モノヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフタル酸モノヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、フタル酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、フタル酸モノヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、コハク酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、コハク酸モノヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、マレイン酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、マレイン酸モノヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等のカルボキシ基含有エチレン性不飽和単量体;
アクリロニトリル、メタクリロニトニル等のシアノ基含有ビニル単量体;
アルキルビニルエーテル[例えば、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、ヘキシルビニルエーテル、2-エチルヘキシルビニルエーテル等]、シクロアルキルビニルエーテル[例えば、シクロヘキシルビニルエーテル等]等のビニルエーテル単量体;
酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、安息香酸ビニル等のビニルエステル単量体;
スチレン、ビニルトルエン、α-メチルスチレン等の芳香族ビニル単量体;
塩化ビニル、フッ化ビニル等のハロゲン化オレフィン;等。
【0097】
マクロモノマー(c)は、構成単位(c’)以外の他の構成単位をさらに有していてもよい。他の構成単位としては、例えば、前述の単量体(c1)のうちCH=CR414に該当しない単量体に由来する構成単位が挙げられる。
他の構成単位の好ましい具体例として、以下の単量体由来の構成単位が挙げられる。
トリイソプロピルシリルメチルマレート、トリイソプロピルシリルアミルマレート、トリ-n-ブチルシリル-n-ブチルマレート、t-ブチルジフェニルシリルメチルマレート、t-ブチルジフェニルシリル-n-ブチルマレート、トリイソプロピルシリルメチルフマレート、トリイソプロピルシリルアミルフマレート、トリ-n-ブチルシリル-n-ブチルフマレート、t-ブチルジフェニルシリルメチルフマレート、t-ブチルジフェニルシリル-n-ブチルフマレート等のオルガノシリル基含有ビニル単量体;
無水マレイン酸、無水イタコン酸等の酸無水物基含有ビニル単量体;
クロトン酸、フマル酸、イタコン酸、マレイン酸、シトラコン酸、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、マレイン酸モノブチル、マレイン酸モノオクチル、イタコン酸モノメチル、イタコン酸モノエチル、イタコン酸モノブチル、イタコン酸モノオクチル、フマル酸モノメチル、フマル酸モノエチル、フマル酸モノブチル、フマル酸モノオクチル、シトラコン酸モノエチル等のカルボキシ基含有エチレン性不飽和単量体;
ジメチルマレート、ジブチルマレート、ジメチルフマレート、ジブチルフマレート、ジブチルイタコネート、ジパーフルオロシクロヘキシルフマレート等の不飽和ジカルボン酸ジエステル単量体;
塩化ビニリデン、フッ化ビニリデン、クロロトリフルオロエチレン等のハロゲン化オレフィン;
エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、アリルメタクリレート、トリアリルシアヌレート、マレイン酸ジアリル、ポリプロピレングリコールジアリルエーテル等の多官能単量体等。
【0098】
マクロモノマー(c)としては、2以上の構成単位(c’)を含む主鎖の末端にラジカル重合性基が導入されたマクロモノマーが好ましく、下記式(c-1)で表されるマクロモノマーがより好ましい。
【0099】
【化9】
(式(c-1)中、Rは前記と同義であり、Qは2以上の構成単位(c’)を含む主鎖部分を示し、Eは末端基を示す。)
【0100】
式(c-1)中、Rは、前述のCH=C(COOR)-CH-におけるRと同様であり、好ましい態様も同様である。
式(c-1)中、Qに含まれる2以上の構成単位(c’)は、それぞれ、同じでもよく異なってもよい。
Qは、構成単位(c’)のみからなるものでもよく、構成単位(c’)以外の他の構成単位をさらに含むものであってもよい。
Qを構成する構成単位の数は、マクロモノマー(c)の数平均分子量が後述する好ましい範囲内となる値が好ましい。
式(c-1)中、Eとしては、例えば、公知のラジカル重合で得られるポリマーの末端基と同様に、水素原子、ラジカル重合開始剤に由来する基、ラジカル重合性基等が挙げられる。
【0101】
マクロモノマー(c)としては、下記式(c-2)で表されるマクロモノマーが特に好ましい。
【0102】
【化10】
(式(c-2)中、R、R41、R45及びEはそれぞれ前記と同義であり、nは2以上の自然数を示す。)
【0103】
式(c-2)中、nは、マクロモノマー(c)の数平均分子量(Mn)が500~50000となる範囲内であることが好ましい。数平均分子量のより好ましい範囲は下記のとおりである。
n個のR41はそれぞれ同じでも異なってもよい。n個のR45はそれぞれ同じでも異なってもよい。
【0104】
マクロモノマー(c)の数平均分子量(Mn)は、500~50000が好ましく、500以上50000未満がより好ましく、800~30000がさらに好ましく、1000~20000が特に好ましい。マクロモノマー(c)の数平均分子量が前記範囲の下限値以上であれば、塗膜の硬度、耐水性がより優れる。マクロモノマー(c)の数平均分子量が前記範囲の上限値以下であれば、共重合体(X)の溶液や、これを含む樹脂組成物、防汚塗料組成物の粘度が下がりやすい。
マクロモノマー(c)の数平均分子量は、ゲルろ過クロマトグラフィー(GPC)により、ポリスチレンを基準物質として測定される。
マクロモノマー(c)の数平均分子量は、マクロモノマー(c)の製造時における重合開始剤や連鎖移動剤の使用量等によって調整できる。
【0105】
したがって、マクロモノマー(c)としては、構成単位(c’)を2以上有する、数平均分子量(Mn)が500~50000であるマクロモノマーが好ましい。このマクロモノマーにおける構成単位(c’)の好ましい種類、より好ましい数平均分子量の範囲は前記と同様である。
【0106】
マクロモノマー(c)のガラス転移温度は、-50~120℃が好ましく、-20~100℃がより好ましく、20~80℃がさらに好ましい。マクロモノマー(c)のガラス転移温度が前記範囲の下限値以上であれば、塗膜の硬度、耐水性がより優れる。マクロモノマー(c)のガラス転移温度が前記範囲の上限値以下であれば、共重合体(X)の溶液や、これを含む組成物(樹脂組成物、防汚塗料組成物)の貯蔵安定性がより優れる。また、それらの溶液や組成物を高固形分でも低粘度のものとしやすい。
マクロモノマー(c)のガラス転移温度は、示差走査熱量計(DSC)で測定することができる。
マクロモノマー(c)のガラス転移温度は、マクロモノマー(c)を形成する単量体の組成等によって調整できる。
【0107】
マクロモノマー(c)は、公知の方法により製造したものを用いてもよく、市販のものを用いてもよい。
マクロモノマー(c)の製造方法としては、例えば、コバルト連鎖移動剤を用いて製造する方法、α-メチルスチレンダイマー等のα置換不飽和化合物を連鎖移動剤として用いる方法、重合体にラジカル重合性基を化学的に結合させる方法、熱分解による方法等が挙げられる。
これらの中で、マクロモノマー(c)の製造方法としては、製造工程数が少なく、連鎖移動定数の高い触媒を使用する点で、コバルト連鎖移動剤を用いて製造する方法が好ましい。なお、コバルト連鎖移動剤を用いて製造した場合のマクロモノマー(c)は、前記式(c-1)で表される構造を有する。
【0108】
コバルト連鎖移動剤を用いてマクロモノマー(c)を製造する方法としては、例えば、塊状重合法、溶液重合法、及び懸濁重合法、乳化重合法等の水系分散重合法が挙げられる。回収工程が簡便である点から、水系分散重合法が好ましい。
重合体にラジカル重合性基を化学的に結合させる方法としては、例えば、ハロゲン基を有する重合体のハロゲン基を、ラジカル重合性の炭素-炭素二重結合を有する化合物で置換することにより製造する方法、酸基を有するビニル系単量体とエポキシ基を有するビニル系重合体とを反応させる方法、エポキシ基を有するビニル系重合体と酸基を有するビニル系単量体とを反応させる方法、水酸基を有するビニル系重合体とジイソシアネート化合物とを反応させ、イソシアネート基を有するビニル系重合体を得て、このビニル系重合体と水酸基を有するビニル系単量体とを反応させる方法等が挙げられ、いずれの方法によって製造されても構わない。
【0109】
<構成単位(D)>
構成単位(D)としては、特に限定されず、例えば、重合性単量体(a1)、重合性単量体(a2)、重合性単量体(a3)、重合性単量体(b)及びマクロモノマー(c)以外の他の重合性単量体(以下、「重合性単量体(d)」ともいう。)由来の単位が挙げられる。
重合性単量体(d)としては、重合性単量体(a1)、重合性単量体(a2)、重合性単量体(a3)、重合性単量体(b)及びマクロモノマー(c)等と共重合可能なものであれば特に限定されず、エチレン性不飽和結合等のラジカル重合性基を有する種々の単量体を用いることができる。例えば、前記で挙げたマクロモノマー(c)を得るための単量体(c1)と同様のものを用いることができる。
【0110】
構成単位(D)は、共重合体(X)を有機溶剤に溶解したときに高固形分でも低粘度としやすい点から、エチレン性不飽和結合を1つ有する単官能単量体由来の構成単位であることが好ましく、エチレン性不飽和結合が、アクリロイル基に由来するものであることが特に好ましい。すなわち構成単位(D)は、アクリロイル基を1つ有する単官能単量体由来の構成単位であることが特に好ましい。
【0111】
構成単位(D)は、形成される塗膜の可撓性や耐クラック性及び耐剥離性と、長期の自己研磨性とをバランスよく良好にすることができる点では、疎水基含有(メタ)アクリル酸エステル由来の構成単位を含むことが好ましい。
疎水基含有(メタ)アクリル酸エステルとしては、上記のCH=CR4142の例として挙げたものと同様のものが挙げられ、アルキル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0112】
構成単位(D)は、形成される塗膜の溶解性や耐クラック性がより優れる点では、オキシエチレン基含有(メタ)アクリル酸エステル由来の構成単位を含むことが好ましい。
オキシエチレン基含有(メタ)アクリル酸エステルとしては、下記式(d1)で表される化合物が好ましい。
-(CHCHO)50 ・・・(d1)
(式(d1)中、Zはアクリロイルオキシ基又はメタクリロイルオキシ基を示し、R50は水素原子、炭素数1~10のアルキル基、又はアリール基を示し、nは1~15の整数を示す。)
【0113】
前記式(d1)中、Zがアクリロイルオキシ基の場合とメタクリロイルオキシ基の場合とでは、アクリロイルオキシ基の場合の方が加水分解速度を速い傾向があり、溶解速度にあわせて任意に選択することができる。
式(d1)中、R50における炭素数1~10のアルキル基、アリール基は、それぞれ前記R、Rで挙げたものと同様のものが挙げられる。
式(d1)中、fは、耐水性、耐クラック性の点から、1~10の整数が好ましく、1~5の整数がより好ましく、1~3の整数がさらに好ましく、1又は2が特に好ましい。
重合性単量体(d)は、市販品を購入することも可能であり、公知の方法を利用して適宜合成することも可能である。
【0114】
(各構成単位の含有量)
共重合体(X)における構成単位(A)の含有量は、全構成単位の合計(100質量%)に対し、1~60質量%が好ましく、5~50質量%がより好ましく、10~40質量%がさらに好ましい。構成単位(A)の含有量が前記範囲の下限値以上であれば、形成される塗膜の自己研磨性がより優れる。構成単位(A)の含有量が前記範囲の上限値以下であれば、形成される塗膜が適度な加水分解性を有し、長期にわたって自己研磨性が維持され、防汚効果がより優れたものとなる。
【0115】
共重合体(X)における構成単位(B)の含有量は、全構成単位の合計(100質量%)に対し、1~80質量%が好ましく、2~70質量%がより好ましく、5~60質量%がさらに好ましい。構成単位(B)の含有量が前記範囲の下限値以上であれば、形成される塗膜の防汚性がより優れる。構成単位(u2)の含有量が前記範囲の上限値以下であれば、形成される塗膜の耐クラック性がより優れる。
【0116】
共重合体(X)における構成単位(C)の含有量は、全構成単位の合計(100質量%)に対し、0質量%より多く88質量%以下であることが好ましく、2~70質量%がより好ましく、5~50質量%がさらに好ましい。構成単位(C)の含有量が前記範囲の下限値以上であれば、共重合体(X)を有機溶剤に溶解したときの溶液粘度及びこの溶液を含む樹脂組成物や防汚塗料組成物の粘度がより低くなる。また、形成される塗膜の硬度、耐水性がより優れる。構成単位(C)の含有量が前記範囲の上限値以下であれば、耐クラック性及び重合安定性がより優れる。
【0117】
共重合体(X)は、重合性単量体(a1)、重合性単量体(a2)及び重合性単量体(a3)からなる群から選ばれる少なくとも1種の重合性量体(a)と、重合性単量体(b)と、マクロモノマー(c)とを含む単量体混合物(α1)を重合して得られた共重合体であることが好ましい。このような共重合体であれば、エチレン性不飽和結合及びカルボキシ基を有する単量体(m0)と重合性単量体(b)とマクロモノマー(c)とを含む単量体混合物(β1)を重合し、カルボキシ基を有する共重合体(X0)を得て、この共重合体(X0)のカルボキシ基を構造(I)、トリオルガノシリルオキシカルボニル基及び構造(III)のいずれかに変換して得られた共重合体に比べて、形成される塗膜の耐水性がより優れる。
単量体混合物(α1)、単量体混合物(β1)については後で詳しく説明する。
【0118】
共重合体(X)の重量平均分子量(Mw)は、1,000~100,000が好ましく、2,000~80,000がより好ましく、3,000~60,000がさらに好ましい。重量平均分子量が前記範囲の上限値以下であれば、共重合体(X)を有機溶剤に溶解した溶液の粘度がより低くなり、樹脂組成物や防汚塗料組成物として高固形分かつ低粘度のものを得やすい。また、形成される塗膜の防汚性がより優れる。重量平均分子量が前記範囲の下限値以上であれば、形成される塗膜の硬度、耐久性がより優れる。
【0119】
共重合体(X)の数平均分子量(Mn)は、500~50,000が好ましく、1,000~40,000がより好ましい。
共重合体(X)の分子量分布(Mw/Mn)は、1.5~5.0が好ましく、2.2~3.0がより好ましい。
共重合体(X)の重量平均分子量及び数平均分子量は、それぞれ、ゲルろ過クロマトグラフィー(GPC)により、ポリスチレンを基準樹脂として測定される。
【0120】
共重合体(X)の酸価は、1~140mgKOH/gが好ましく、5~130mgKOH/gがより好ましく、10~120mgKOH/gがさらに好ましい。共重合体(X)の酸価が前記範囲の上限値以下であれば、塗膜の耐水性、耐クラック性がより優れる。
共重合体(X)の酸価は、水酸化カリウム溶液による中和滴定等公知の手法により測定される。
【0121】
共重合体(X)は、架橋構造を有しない鎖状の重合体であることが好ましい。鎖状であると、架橋構造を有する場合に比べて、共重合体(X)の有機溶剤溶液の粘度が低くなる。
【0122】
(共重合体(X)の製造方法)
共重合体(X)の製造方法としては、例えば、以下の製造方法(α)が挙げられる。
製造方法(α):重合性単量体(a1)、重合性単量体(a2)及び重合性単量体(a3)からなる群から選ばれる少なくとも1種の重合性量体(a)と、重合性単量体(b)と、マクロモノマー(c)とを含む単量体混合物(α1)を重合する方法。
【0123】
単量体混合物(α1)は、重合性単量体(d)をさらに含んでもよい。
単量体混合物(α1)の組成、すなわち単量体混合物(α1)を構成する単量体の種類及び全単量体の合計質量に対する各単量体の含有量(質量%)は、共重合体(X)の組成、すなわち共重合体(X)を構成する各単量体由来の構成単位の種類及び全構成単位の合計質量に対する各構成単位の含有量(質量%)と同様である。
したがって、単量体混合物(α1)は、重合性単量体(a)1~60質量%と、重合性単量体(b)1~60質量%と、マクロモノマー(c)0質量%より多く88質量%以下と、重合性単量体(d)0質量%以上98質量%未満とからなることが好ましい。各単量体の含有量は、単量体混合物(α1)の全量に対する割合であり、重合性単量体(a)と重合性単量体(b)とマクロモノマー(c)と重合性単量体(d)との合計は100質量%である。各重合性単量体(a)~(b)及びマクロモノマー(c)のより好ましい含有量の範囲は、各単量体に対応する構成単位の好ましい含有量の範囲と同様である。
【0124】
単量体混合物(α1)の重合方法としては、特に限定されず、溶液重合法、懸濁重合法、塊状重合法、乳化重合法等の公知の重合方法を用いることができる。生産性、塗膜性能の点で、溶液重合法が好ましい。
重合は、公知の重合開始剤を用いて、公知の方法で行えばよい。例えば、上記した単量体成分をラジカル開始剤の存在下に60~120℃の反応温度で4~14時間反応させる方法が挙げられる。重合の際、必要に応じて、連鎖移動剤を用いてもよい。
【0125】
ラジカル重合開始剤としては、公知のものを使用でき、例えば、2,2-アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)等のアゾ系化合物;過酸化ベンゾイル、クメンヒドロペルオキシド、ラウリルパーオキシド、ジ-t-ブチルパーオキシド、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート等の有機過酸化物;等が挙げられる。重合開始剤の含有量は、特に限定されず、適宜設定することができる。
連鎖移動剤としては、公知のものを使用でき、例えば、n-ドデシルメルカプタン等のメルカプタン類、チオグリコール酸オクチル等のチオグリコール酸エステル類、α-メチルスチレンダイマー、ターピノーレン等が挙げられる。連鎖移動剤の含有量は、特に限定されず、適宜設定することができる。
溶液重合で用いられる溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン、メチルイソブチルケトン、酢酸n-ブチル等の一般の有機溶剤を使用する事ができる。
【0126】
ただし、共重合体(X)の製造方法は、上記製造方法(α)に限定されるものではない。
例えば、以下の製造方法(β)によっても共重合体(X)を製造できる。
製造方法(β):エチレン性不飽和結合及びカルボキシ基を有する重合性単量体(m0)と、重合性単量体(b)とマクロモノマー(c)とを含む単量体混合物(β1)を重合し、カルボキシ基を有する共重合体(X0)を得て、この共重合体(X0)のカルボキシ基を構造(I)、トリオルガノシリルオキシカルボニル基及び構造(III)のいずれかに変換する方法。
【0127】
重合性単量体(m0)は、前記重合性単量体(a1)の説明で挙げたものと同様である。
単量体混合物(β1)は、重合性単量体(d)をさらに含んでもよい。
単量体混合物(β1)の組成は、重合性単量体(a)が重合性単量体(m0)である以外は、単量体混合物(α1)の組成と同様である。
単量体混合物(β1)の重合は、製造方法(α)における単量体混合物(α1)の重合と同様にして行うことができる。
【0128】
共重合体(X0)のカルボキシ基を構造(I)に変換する方法としては、例えば、共重合体(X0)と、前記化合物(Y)とを反応(付加反応)させる方法が挙げられる。共重合体(X0)と前記化合物(Y)との反応は、前記重合性単量体(m0)と前記化合物(Y)との反応と同様にして行うことができる。
共重合体(X0)のカルボキシ基を構造(III)に変換する方法としては、例えば、共重合体(X0)と、酢酸銅、酢酸亜鉛等の有機酸金属塩とを反応させる方法が挙げられる。有機酸金属塩の金属は前記Mに対応する。共重合体(X0)と有機酸金属塩との反応は、例えば、還流温度まで昇温し、留出する酢酸等の有機酸、水及び有機溶剤の混合液を除去しつつ、同量の有機溶剤を補充しながら、反応を10~20時間継続すること等で行うことができる。
【0129】
共重合体(X)にあっては、構成単位(A)を有し、構造(I)、トリオルガノシリルオキシカルボニル基及び構造(III)のいずれか1以上を含むため、海水中等における加水分解が可能である。そのため、共重合体(X)を含む塗膜は、海水中等で自己研磨性を示す。また、構成単位(B)を有し、ポリシロキサンブロックを含むため、共重合体(X)を含む塗膜表面には海中生物やその他の汚れが付着しにくい。したがって、共重合体(X)を含む塗膜は、防汚剤を含まない場合でも、優れた防汚効果を発揮できる。
また、共重合体(X)にあっては、構成単位(C)を有するため、高固形分かつ低粘度の有機溶剤溶液とすることができる。また、共重合体(X)を含む塗膜は、硬度が高い。
そのため、優れた耐盤木性が期待される。かかる効果を奏するのは、マクロモノマー(c)を用いていることで、塗膜がミクロ相分離構造を形成しているためと考えられる。
【0130】
〔樹脂組成物〕
本発明の樹脂組成物は、上述した共重合体(X)を含む。樹脂組成物に含まれる共重合体(X)は1種でもよく2種以上でもよい。
【0131】
本発明の樹脂組成物中の共重合体(X)の含有量は、特に限定されないが、樹脂組成物の全量に対して45質量%以上が好ましく、50質量%以上がより好ましく、55質量%以上がさらに好ましい。共重合体(X)の含有量が前記下限値以上であれば、VOC含有量の少ない防汚塗料組成物を容易に得ることができる。
共重合体(X)の含有量の上限は、特に限定されず、100質量%であってもよい。樹脂組成物が溶剤を含む場合は、樹脂組成物の25℃における粘度が、後述する好ましい上限値以下となる量で含むことが好ましい。具体的には、共重合体(X)の重量平均分子量、ガラス転移温度、架橋構造の有無等によっても異なるが、溶剤の含有量は、樹脂組成物の全量に対して85質量%以下が好ましく、80質量%以下がより好ましい。
【0132】
共重合体(X)が構成単位(A1)を有する場合、本発明の樹脂組成物は、酸と反応する化合物、塩基性化合物、酸性化合物及び脱水剤からなる群から選ばれる少なくとも1種をさらに含むことが好ましい。これにより、樹脂組成物やこれを含む防汚塗料組成物の貯蔵安定性が向上する。
共重合体(X)が構成単位(A1)を有する場合、共重合体(X)を含む樹脂組成物やこれを含む防汚塗料組成物においては、貯蔵中に構造(I)が意図せずに分解してしまうことがある。構造(I)が分解すると、カルボン酸が生成する。これによって、共重合体(X)のガラス転移温度が上昇したり、カルボン酸と塗料中の他成分とが架橋構造を形成し、共重合体(X)の溶液やこれを含む塗料の粘度が上昇したりする。また、フリーのカルボン酸が生成することにより、有機溶剤に対する溶解安定性や耐水性が低下する。また発生したカルボン酸が酸として触媒的に加水分解反応を促進させることにより、構造(I)のさらなる分解が進行する。樹脂組成物に酸と反応する化合物を含有させることにより、共重合体(X)中の構造(I)が分解してカルボン酸が生成したときに、酸と反応する化合物によってカルボン酸が捕捉され、貯蔵安定性が向上する。
また、高pH領域や低pH領域では、構造(I)の分解が促進されることにより貯蔵安定性が低下する。高pH領域では、化合物(Y)とカルボン酸との反応性が低下することによっても貯蔵安定性が低下する。塩基性化合物又は酸性化合物の添加によって樹脂組成物のpHを調整することで、構造(I)の分解を抑制し、貯蔵安定性の低下を抑制することができる。
また、水分は、構造(I)の分解(加水分解)を促進する。樹脂組成物に脱水剤を含有させることにより、樹脂組成物中の水分を捕捉し、貯蔵安定性の低下を抑制することができる。
【0133】
酸と反応する化合物としては、前述の化合物(Y)、塩基性化合物、エポキシ基を有する化合物等が挙げられる。
塩基性化合物としては、ジメチルアミン、ジエチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、アニリン、ピリジン等が挙げられる。
エポキシ基を含有する化合物としては、2-エチルオキシラン、2,3-ジメチルオキシラン、2,2-ジメチルオキシラン、(メタ)アクリル酸グリシジル、α―エチルアクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸3,4-エポキシブチル等が挙げられる。
酸と反応する化合物としては、貯蔵安定性の観点で、化合物(Y)が好ましい。化合物(Y)としては、前記で挙げたもののなかでも、貯蔵安定性の向上効果がより優れる点で、前記式(31)中のXが-O-である1-アルケニルアルキルエーテルが好ましく、ブチルビニルエーテルやイソブチルビニルエーテル等のビニルエーテル類がより好ましい。
【0134】
pH調整のための塩基性化合物としては、前述の塩基性化合物と同様のものが挙げられる。
酸性化合物としては、アビエチン酸、ネオアビエチン酸、パラストリン酸、ピマル酸、イソピマル酸、レボピマル酸、デキストロピマル酸、サンダラコピマル酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、ラウリル酸、ステアリン酸、リノール酸、オレイン酸、クロル酢酸、フルオロ酢酸等が挙げられる。
【0135】
脱水剤としては、シリケート系、イソシアネート系、オルソエステル系、無機系等が挙げられる。より具体的には、オルトギ酸メチル、オルトギ酸エチル、オルト酢酸メチル、オルトホウ酸エステル、オルト珪酸テトラエチル、無水石膏、焼石膏、合成ゼオライト(モレキュラーシーブ)等が挙げられる。特にモレキュラーシーブが好ましい。
【0136】
これらの添加剤は、1種を単独で、或いは2種以上を組み合わせて使用できる。
2種以上の添加剤の組み合わせ例としては、化合物(Y)と脱水剤との組み合わせ、化合物(Y)と酸性化合物と脱水剤との組み合わせ、化合物(Y)と塩基性化合物と酸性化合物と脱水剤との組み合わせ、塩基性化合物と脱水剤との組み合わせ等が挙げられる。
【0137】
樹脂組成物に化合物(Y)を含有させる場合、樹脂組成物中の化合物(Y)の含有量は、共重合体(X)が有する構造(I)に対して20モル%以上であることが好ましく、30~1000モル%がより好ましく、40~800モル%がさらに好ましい。化合物(Y)の含有量が前記範囲内であれば、貯蔵安定性の向上効果がより優れる。
【0138】
樹脂組成物に塩基性化合物又は/及び酸性化合物を含有させる場合、樹脂組成物中の塩基性化合物又は/及び酸性化合物の含有量は、貯蔵安定性の観点から、水中で測定されるpHが2~12となる濃度の塩基性化合物量が好ましく、前記pHが6~9となる濃度の塩基性化合物量がより好ましい。
ここで、水中で測定されるpHとは、具体的には、水中に塩基性化合物を添加することにより測定される値である。前記pHは、23℃における値である。
【0139】
樹脂組成物に脱水剤を含有させる場合、樹脂組成物中の脱水剤の含有量は、樹脂組成物の総質量に対し、0.1~40質量%が好ましく、1~20質量%がより好ましい。脱水剤の含有量が前記範囲の下限値以上であれば、貯蔵蔵安定性がより優れる。脱水剤の含有量が前記範囲の上限値以下であれば、溶解安定性が良好である。
【0140】
本発明の樹脂組成物は、シリコーンオイルをさらに含んでもよい。樹脂組成物がシリコーンオイルを含むと、形成される塗膜の防汚性がより優れる。
シリコーンオイルとしては、例えば、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、メチルハイドロジェンシリコーンオイル等のストレートシリコーンオイル、変性シリコーンオイル等が挙げられる。変性シリコーンオイルは、ストレートシリコーンオイルのケイ素原子の一部にメチル基及びフェニル基以外の有機基(以下「変性基」ともいう。)が導入されたシリコーンオイルである。変性基としては、例えば、クロロフェニル基、メチルスチレン基、長鎖アルキル基(例えば、炭素数2~18のアルキル基)、ポリエーテル基、カルビノール基、アミノアルキル基、エポキシ基、(メタ)アクリロイル基等が挙げられる。これらのシリコーンオイルはいずれか1種を単独で、又は2種以上を組合わせて用いることができる。
【0141】
シリコーンオイルとしては市販品を用いることができる。市販のシリコーンオイルとしては、例えば「KF-96」、「KF-50」、「KF-54」、「KF-56」、「KF-6016」(以上、信越化学工業(株)製)、「TSF451」(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製)、「Fluid47」((仏)ローヌプラン社製)、「SH200」、「SH510」、「SH550」、「SH710」、「DC200」、「ST-114PA」、「FZ209」(以上、東レ・ダウコーニング社製)等が挙げられる。
【0142】
本発明の樹脂組成物は、有機溶剤を含むことが好ましい。樹脂組成物が有機溶剤を含むと、これを用いた防汚塗料組成物の塗工適性、形成される塗膜の耐水性、成膜性等がより優れる。
有機溶剤としては、共重合体(X)を溶解できるものであれば、特に限定されず、例えば、トルエン、キシレン等の炭化水素系溶剤;前記化合物(Y)、プロピレングリコールモノメチルエーテル-2-アセタート等のエーテル系溶剤;メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤;酢酸n-ブチル等のエステル系溶剤;等が挙げられる。これらは、いずれか1種を単独で、又は2種以上を組合わせて用いることができる。
【0143】
本発明の樹脂組成物中の有機溶剤の含有量は、防汚塗料組成物のVOC含有量の低減の観点から、樹脂組成物の全量に対して55質量%以下が好ましく、50質量%以下がより好ましく、45質量%以下がさらに好ましい。
有機溶剤の含有量は、樹脂組成物の25℃における粘度が後述する好ましい上限値以下となる量が好ましく、共重合体(X)の重量平均分子量、ガラス転移温度、架橋構造の有無等によっても異なるが、樹脂組成物の全量に対して15質量%以上が好ましく、20質量%以上がより好ましい。
なお、前記化合物(Y)は、有機溶剤としても機能し得る。したがって、樹脂組成物が化合物(Y)を含む場合、化合物(Y)の含有量は有機溶剤の含有量に含まれる。
【0144】
本発明の樹脂組成物は、共重合体(X)、酸と反応する化合物、塩基性化合物、酸性化合物、脱水剤、シリコーンオイル及び有機溶剤以外の他の成分をさらに含んでもよい。
他の成分としては、例えば、後述する防汚塗料組成物における他の成分と同様のものが挙げられる。
他の成分の含有量は、共重合体(X)に対して200質量%以下が好ましく、0質量%であってもよい。
【0145】
本発明の樹脂組成物の固形分は、45質量%以上が好ましく、50質量%以上がより好ましく、55質量%以上がさらに好ましい。樹脂組成物の固形分が前記範囲の下限値以上であれば、防汚塗料組成物のVOC含有量が充分に低くなる。
樹脂組成物の固形分の上限は特に限定されず、100質量%であってもよい。樹脂組成物が有機溶剤を含む場合は、樹脂組成物の粘度の観点から、85質量%以下が好ましく、80質量%以下がより好ましい。
樹脂組成物の固形分は、後述する実施例に記載の測定方法により測定される。
【0146】
本発明の樹脂組成物が有機溶剤を含む場合、この樹脂組成物の25℃にてB型粘度計で測定される粘度(以下、「B型粘度」ともいう。)は、5000mPa・s未満が好ましく、3000mPa・s未満がより好ましく、2,000mPa・s未満がさらに好ましく、1,000mPa・s未満が特に好ましい。
前記樹脂組成物の25℃にてガードナー気泡粘度計により測定される粘度(以下、「ガードナー粘度」ともいう。)は、Z3以下であることが好ましく、V以下であることがより好ましい。
樹脂組成物の粘度(B型粘度又はガードナー粘度)が前記上限値以下であれば、樹脂組成物に希釈のための溶剤を加えなくても、防汚剤等を配合したり塗装したりすることができ、VOC含有量の少ない防汚塗料組成物が得られる。
樹脂組成物は、固形分が少なくとも50質量%での粘度が上記の好ましい上限値以下であることが好ましい。
前記樹脂組成物の粘度の下限は特に限定されない。塗装時の塗料タレ抑制の点では、25℃におけるB型粘度が100mPa・s以上であることが好ましい。
したがって、前記樹脂組成物の25℃におけるB型粘度は、100mPa・s以上5,000mPa・s未満が好ましく、100mPa・s以上3,000mPa・s未満がより好ましく、100mPa・s以上2,000mPa・s未満がさらに好ましく、100mPa・s以上1,000mPa・s未満が特に好ましい。
【0147】
樹脂組成物の粘度は、樹脂組成物の固形分量(共重合体(X)及び他の成分の含有量)、共重合体(X)の重量平均分子量、ガラス転移温度、架橋構造の有無等によって調整できる。例えば、固形分量、特に共重合体(X)の含有量が少ないほど、低粘度になる傾向がある。また、共重合体(X)の重量平均分子量が小さいほど、又はガラス転移温度が低いほど、低粘度になる傾向がある。
【0148】
<構造(I)の分解率>
共重合体(X)が構成単位(A1)を有する場合、本発明の樹脂組成物にあっては、40℃30日間貯蔵後における共重合体(X)中の構造(I)の分解率が20%以下であることが好ましく、7%以下であることがより好ましく、4%以下であることがさらに好ましく、3%以下であることが特に好ましく、2%以下であることが最も好ましい。樹脂組成物を40℃30日間貯蔵した後の構造(I)の分解率が上記上限値以下であれば、樹脂組成物や、これを含む防汚塗料組成物の貯蔵安定性が優れる。また、樹脂組成物が有機溶剤を含む場合に、共重合体(X)の有機溶剤に対する溶解安定性にも優れる。前記分解率は低い程好ましく、下限は0%であってもよい。
40℃30日間貯蔵後における構造(I)の分解率は、例えば、樹脂組成物に酸と反応する化合物、塩基性化合物、酸性化合物、脱水剤等を含有させることによって20%以下に低減できる。
【0149】
構造(I)の分解率の測定において、樹脂組成物の貯蔵とは、樹脂組成物をガラス瓶に入れて密封し、乾燥庫内で遮蔽の環境下にて放置することを示す。
構造(I)の分解率は、樹脂組成物(40℃30日間貯蔵後)の測定固形酸価(a)から、共重合体(X)に含まれる構造(I)が全て分解していない際の理論固形酸価(b)を引いた値を、共重合体(X)に含まれる構造(I)が全て分解した際の理論酸価(c)で除した下記の値として定義される。
(分解率)={(測定固形酸価(a))-(理論固形酸価(b))}/(理論固形酸価(c))×100
測定固形酸価に関しては後述する実施例の固形酸価の項目で説明する。
理論固形酸価は以下の式で計算できる。
(理論固形酸価)=Σ(561×100/Mw×w
上記理論固形酸価の計算式中、wは、共重合体(X)を構成する単量体のうち酸官能基を有する単量体iの質量分率を表し、Mwは、酸官能基を有する単量体の分子量を表す。酸官能基はカルボン酸等の官能基である。
分解した際の酸価としては、酸官能基を有する単量体として扱い計算する。
分解していない際の酸価としては、酸官能基を有しない単量体として扱い計算する。
【0150】
(樹脂組成物の製造方法)
本発明の樹脂組成物は、公知の方法を用いて製造できる。例えば、前述の製造方法(α)又は(β)により共重合体(X)を製造し、必要に応じて、得られた共重合体(X)に、酸と反応する化合物、塩基性化合物、酸性化合物、脱水剤、シリコーンオイル、有機溶剤、他の成分等を配合することにより樹脂組成物を調製できる。
樹脂組成物が化合物(Y)を含む場合、化合物(Y)を配合するタイミングは、共重合体(X)の製造時であってもよく、共重合体(X)の製造後であってもよく、特に限定されない。例えば、前記製造方法(α)において、単量体混合物の重合時に化合物(Y)を共存させてもよく、重合終了後に化合物(Y)を添加してもよい。前記製造方法(β)において、単量体混合物の重合終了後、生成した共重合体(X0)に化合物(Y)を反応させて共重合体(X)を得る際に、共重合体(X0)のカルボキシ基に対して等量よりも多い化合物(Y)を添加して、未反応の化合物(Y)が残存するようにしてもよい。重合反応時に化合物(Y)を共存させると化合物(Y)の一部がラジカル重合するため、重合終了後に化合物(Y)を添加する方法が好ましい。
重合性単量体(b)等の原料として、シリコーンオイルが含まれるものを用いてもよい。この場合、重合生成物は共重合体(X)及びシリコーンオイルを含む。
【0151】
本発明の樹脂組成物は、そのまま、又は必要に応じて防汚剤等と混合して、防汚塗料組成物とすることができる。
本発明の樹脂組成物は、防汚塗料組成物のほか、防曇塗料組成物等に用いることもできる。
本発明の樹脂組成物を用いた塗膜は、海水中等で優れた防汚効果を発揮することから、本発明の樹脂組成物は防汚塗料組成物用として好適である。
【0152】
〔防汚塗料組成物〕
本発明の防汚塗料組成物は、前述の本発明の樹脂組成物を含有する。したがって、共重合体(X)を含有する。
本態様の防汚塗料組成物は、防汚塗料組成物の貯蔵安定性の観点から、酸と反応する化合物、塩基性化合物、酸性化合物及び脱水剤からなる群から選ばれる少なくとも1種をさらに含んでもよい。酸と反応する化合物、塩基性化合物、酸性化合物及び脱水剤はそれぞれ前記と同様のものが挙げられる。好ましい含有量も同様である。
本態様の防汚塗料組成物は、塗膜の防汚性の観点から、シリコーンオイルをさらに含んでもよい。シリコーンオイルは前記と同様のものが挙げられる。
本態様の防汚塗料組成物は、有機溶剤を含んでもよい。有機溶剤は前記と同様のものが挙げられる。
本態様の防汚塗料組成物は、防汚剤をさらに含んでもよい。
本態様の防汚塗料組成物は、共重合体(X)、酸と反応する化合物、塩基性化合物、酸性化合物、脱水剤、シリコーンオイル、有機溶剤及び防汚剤以外の他の成分をさらに含んでもよい。
防汚塗料組成物が酸と反応する化合物、塩基性化合物、酸性化合物、脱水剤、シリコーンオイル、有機溶剤、他の成分等を含む場合、これらの成分は、それぞれ、前記樹脂組成物に由来するものであってもよく、由来しないもの(防汚塗料組成物の製造時に配合されたもの)であってもよく、それらの混合物であってもよい。
【0153】
<防汚剤>
防汚剤としては、無機防汚剤、有機防汚剤等が挙げられ、要求性能に応じて1種又は2種以上を適宜選択して使用することができる。
防汚剤としては、例えば、亜酸化銅、チオシアン銅、銅粉末等の銅系防汚剤、他の金属(鉛、亜鉛、ニッケル等)の化合物、ジフェニルアミン等のアミン誘導体、ニトリル化合物、ベンゾチアゾール系化合物、マレイミド系化合物、ピリジン系化合物等が挙げられる。これらは、1種を単独で、或いは2種以上を組み合わせて使用できる。
【0154】
防汚剤として、より具体的には、4-ブロモ-2-(4-クロロフェニル)-5-(トリフルオロメチル)-1H-ピロール-3-カルボニトリル、マンガニーズエチレンビスジチオカーバメイト、ジンクジメチルジチオカーバメート、2-メチルチオ-4-t-ブチルアミノ-6-シクロプロピルアミノ-s-トリアジン、2,4,5,6-テトラクロロイソフタロニトリル、N,N-ジメチルジクロロフェニル尿素、ジンクエチレンビスジチオカーバメイト、ロダン銅、4,5-ジクロロ-2-nオクチル-3(2H)イソチアゾロン、N-(フルオロジクロロメチルチオ)フタルイミド、N,N’-ジメチル-N’-フェニル-(N-フルオロジクロロメチルチオ)スルファミド、2-ピリジンチオール-1-オキシド亜鉛塩、テトラメチルチウラムジサルファイド、Cu-10%Ni固溶合金、2,4,6-トリクロロフェニルマレイミド2,3,5,6-テトラクロロ-4-(メチルスルホニル)ピリジン、3-ヨード-2-プロピニルブチルカーバメイト、ジヨードメチルパラトリルスルホン、ビスジメチルジチオカルバモイルジンクエチレンビスジチオカーバメート、フェニル(ビスピリジル)ビスマスジクロライド、2-(4-チアゾリル)-ベンゾイミダゾール、メデトミジン、ピリジン-トリフェニルボラン等が挙げられる。
【0155】
防汚塗料組成物が防汚剤を含有する場合、防汚塗料組成物中の防汚剤の含有量は、特に制限されないが、共重合体(X)100質量部に対し、2~200質量部が好ましく、10~150質量部がより好ましい。防汚剤の含有量が前記範囲の下限値以上であれば、形成される塗膜の防汚効果がより優れる。防汚剤の含有量が前記範囲の上限値以下であれば、塗膜物性が優れる。
【0156】
<他の成分>
他の成分としては、例えば、共重合体(X)以外の他の樹脂が挙げられる。他の樹脂は、構成単位(A)、構成単位(B)及び構成単位(C)のうちの少なくとも1種を有しない樹脂である。他の樹脂としては、例えば、熱可塑性樹脂等が挙げられる。
本発明の防汚塗料組成物は、共重合体(X)以外の熱可塑性樹脂を含むことが好ましい。防汚塗料組成物が共重合体(X)以外の熱可塑性樹脂を含むと、耐クラック性や耐水性等の塗膜物性がより優れる。
【0157】
共重合体(X)以外の熱可塑性樹脂としては、例えば、塩素化パラフィン;塩化ゴム、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン等の塩素化ポリオレフィン;ポリビニルエーテル;ポリプロピレンセバケート;部分水添ターフェニル;ポリ酢酸ビニル;(メタ)アクリル酸メチル系共重合体、(メタ)アクリル酸エチル系共重合体、(メタ)アクリル酸プロピル系共重合体、(メタ)アクリル酸ブチル系共重合体、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル系共重合体等のポリ(メタ)アクリル酸アルキルエステル;ポリエーテルポリオール;アルキド樹脂;ポリエステル樹脂;塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル-プロピオン酸ビニル共重合体、塩化ビニル-イソブチルビニルエーテル共重合体、塩化ビニル-イソプロピルビニルエーテル共重合体、塩化ビニル-エチルビニルエーテル共重合体等の塩化ビニル系樹脂;ワックス;ワックス以外の常温で固体の油脂、ひまし油等の常温で液体の油脂及びそれらの精製物;ワセリン;流動パラフィン;ロジン、水添ロジン、ナフテン酸、脂肪酸及びこれらの2価金属塩;等が挙げられる。ワックスとしては、例えば、蜜蝋等の動物由来のワックス;植物由来のワックス;アマイド系ワックス等の半合成ワックス;酸化ポリエチレン系ワックス等の合成ワックス等が挙げられる。これらの熱可塑性樹脂は、1種のみを単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0158】
防汚塗料組成物中の共重合体(X)以外の熱可塑性樹脂の含有量は、特に制限されないが、共重合体(X)100質量部に対し、0.1~50質量部が好ましく、0.1~10質量部がより好ましい。共重合体(X)以外の熱可塑性樹脂の含有量が前記範囲の下限値以上であれば、耐クラック性や耐水性等の塗膜物性がより優れ、前記範囲の上限値以下であれば、加水分解性がより優れる。
【0159】
本発明の防汚塗料組成物は、塗膜表面に潤滑性を付与し、生物の付着を防止する目的で、ジメチルポリシロキサン、シリコーンオイル等のシリコン化合物、フッ素化炭化水素等の含フッ素化合物等を含んでもよい。
【0160】
本発明の防汚塗料組成物は、各種の顔料、消泡剤、レベリング剤、顔料分散剤(例えば、沈降防止剤)、たれ防止剤、艶消し剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、耐熱性向上剤、スリップ剤、防腐剤、可塑剤、粘性制御剤等を含んでもよい。
顔料としては、酸化亜鉛、タルク、シリカ、硫酸バリウム、カリ長石、水酸化アルミニウム、炭酸マグネシウム、マイカ、カーボンブラック、弁柄、酸化チタン、フタロシアニンブルー、カオリン、石膏等が挙げられる。
熱可塑性樹脂以外の沈降防止剤やたれ防止剤としては、ベントナイト系、微粉シリカ系、ステアレート塩、レシチン塩、アルキルスルホン酸塩等が挙げられる。
【0161】
熱可塑性樹脂以外の可塑剤としては、例えば、ジオクチルフタレート、ジメチルフタレート、ジシクロヘキシルフタレート、ジイソデシルフタレート等のフタル酸エステル系可塑剤;アジピン酸イソブチル、セバシン酸ジブチル等の脂肪族二塩基酸エステル系可塑剤;ジエチレングリコールジベンゾエート、ペンタエリスリトールアルキルエステル等のグリコールエステル系可塑剤;トリクレジルホスフェート(TCP)、トリアリールホスフェート、トリクロロエチルホスフェート等のリン酸エステル系可塑剤;エポキシ大豆油、エポキシステアリン酸オクチル等のエポキシ系可塑剤;ジオクチルすずラウリレート、ジブチルすずラウリレート等の有機すず系可塑剤;トリメリット酸トリオクチル、トリアセチレン等が挙げられる。防汚塗料組成物に可塑剤を含有させることによって塗膜の耐クラック性や耐剥離性を高めることができる。
【0162】
<防汚塗料組成物の諸特性>
本発明の防汚塗料組成物のVOCの含有量は、450g/L以下が好ましく、420g/L以下がより好ましく、400g/L以下がさらに好ましい。
VOC含有量は、防汚塗料組成物の比重及び固形分の値を用いて、下記式から算出される。
VOC含有量(g/L)=組成物の比重×1000×(100-固形分)/100
防汚塗料組成物の比重は、25℃において、容量が100mLの比重カップに、防汚塗料組成物を満たし、質量を測定することにより算出される。防汚塗料組成物の固形分(加熱残分)は、後述する実施例に記載の方法により測定される。
VOC含有量は、有機溶剤の含有量により調整できる。防汚塗料用樹脂組成物の固形分を上げることで、防汚塗料の粘度が同じであってもVOC含有量を下げることができる。
【0163】
本発明の防汚塗料組成物の固形分は、50~100質量%が好ましく、55~90質量%がより好ましく、60~80質量%がさらに好ましい。
防汚塗料組成物の固形分が前記範囲の下限値以上であれば、VOC含有量が充分に低くなる。固形分が前記範囲の上限値以下であれば、防汚塗料組成物の粘度を低くしやすい。
【0164】
本発明の防汚塗料組成物の、25℃においてB型粘度計で測定される粘度は、10,000mPa・s未満であることが好ましく、7,000mPa・s未満が好ましく、5,000mPa・s未満がより好ましい。防汚塗料組成物の粘度が前記上限値以下であれば、塗装しやすい。
防汚塗料組成物の粘度の下限は特に限定されないが、塗膜物性の点では、100mPa・s以上が好ましい。
防汚塗料組成物の粘度は、樹脂組成物の粘度、樹脂組成物への溶剤の添加量等によって調整できる。
【0165】
本発明の防汚塗料組成物は、本発明の樹脂組成物を調製し、必要に応じて防汚剤や他の成分、溶剤を添加し、混合することにより調製できる。
【0166】
本発明の防汚塗料組成物は、船舶や各種の漁網、港湾施設、オイルフェンス、橋梁、海底基地等の水中構造物等の基材表面に塗膜(防汚塗膜)を形成する用途に使用できる。
本発明の防汚塗料組成物を用いた塗膜は、基材表面に、直接に、又は下地塗膜を介して形成することができる。
下地塗膜としては、ウォッシュプライマー、塩化ゴム系やエポキシ系等のプライマー、中塗り塗料等を用いて形成できる。
塗膜の形成は、公知の方法により行うことができる。例えば、基材表面又は基材上の下地塗膜の上に、防汚塗料組成物を、刷毛塗り、吹き付け塗り、ローラー塗り、沈漬塗り等の手段で塗布し、乾燥することにより塗膜を形成できる。
防汚塗料組成物の塗布量は、一般的には乾燥塗膜として10~400μmの厚さになる量に設定できる。
塗膜の乾燥は、通常、室温で行うことができ、必要に応じて加熱乾燥を行ってもよい。
【実施例
【0167】
以下、本発明を実施例及び比較例によりさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの例によって何ら限定されるものではない。なお、実施例中の部は質量部を表す。
実施例中で用いた評価方法を以下に示す。
【0168】
<評価方法>
(マクロモノマーの重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn))
ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)(東ソー株式会社製HLC-8320)を用いて測定した。マクロモノマーを0.2質量%になるようにテトラヒドロフラン溶液を調製し、東ソー社製カラム(TSKgelSuperHZM-M×HZM-M×HZ2000、TSKguardcolumn SuperHZ-L)が装着された装置に上記の溶液10μlを注入し、流量:0.35ml/分、溶離液:テトラヒドロフラン(安定剤BHT)、カラム温度:40℃の条件で測定を行った。標準ポリスチレン換算にて重量平均分子量(Mw)または数平均分子量(Mn)を算出した。
【0169】
(共重合体の重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、分子量分布(Mw/Mn))
ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)(東ソー株式会社製HLC-8320)を用いて測定した。(メタ)アクリル系共重合体を0.4質量%になるようにテトラヒドロフラン溶液を調製し、東ソー社製カラム(TSKgelG4000HXL*G2000HXL(東ソー株式会社製、7.8mm×30cm)、TSKguardcolumnHXL-L(東ソー株式会社製、6.0mm×4cm))が装着された装置に上記の溶液100μlを注入し、カラム温度:40℃の条件で測定を行った。標準ポリスチレン換算にて重量平均分子量(Mw)または数平均分子量(Mn)を算出した。算出したMw、Mnから分子量分布(Mw/Mn)を算出した。
【0170】
(粘度)
乾燥した粘度管(ガードナー気泡粘度管)に試料(樹脂組成物)を粘度管の指示線まで入れコルク栓で栓をした。この試料を採取した粘度管を、規定の温度(25.0±0.1℃)に調節した恒温水槽中に少なくとも2時間垂直に浸漬して試料を恒温にし、基準管となる粘度管と試料を入れた粘度管を同時に180°回転させ、試料のアワ上昇速度を基準管と比較することで粘度(ガードナー粘度)を決定した。
【0171】
(固形分(加熱残分))
試料(樹脂組成物)0.50gをアルミニウム製の皿に測りとり、トルエン3mLをスポイトで加えて皿の底に一様に広げ、予備乾燥を行った。予備乾燥は、測定試料を皿全体にのばし、本乾燥で溶剤を揮発させやすくするための処理である。予備乾燥では、70~80℃の水浴上で測定試料及びトルエンを加熱溶解させ、蒸発乾固させた。予備乾燥後、105℃の熱風乾燥機で2時間の本乾燥を行った。測定試料の予備乾燥前の質量(乾燥前質量)と、本乾燥後の質量(乾燥後質量)とから、以下の式により固形分(加熱残分)を求めた。
固形分(質量%)=乾燥後質量/乾燥前質量×100
【0172】
(消耗度)
試料(防汚塗料組成物)を、50mm×50mm×2mm(厚さ)の硬質塩化ビニル板に、乾燥膜厚120μmになるようにアプリケーターで塗布し、乾燥して塗膜を形成し、試験板を得た。この試験板を、人工海水中に設置した回転ドラムに取り付け、周速7.7m/s(15ノット)で回転させて6カ月後の塗膜の膜厚を測定し、測定された膜厚から1ヶ月当りの消耗膜厚(μm/M){=(120-測定された膜厚(μm))/6}を算出した。消耗度は、1~150μm/Mの範囲内が好ましい。
【0173】
(塗膜硬度)
ガラス基板上に、500μmアプリケーターを用いて試料(樹脂組成物)を乾燥膜厚が80~150μmとなるように塗布し、25℃で1週間乾燥させて、試料の塗膜が形成された試験板を得た。この試験板の塗膜について、25℃において、超微小硬度計(株式会社フィッシャー・インストルメンツ製、商品名:HM2000)により塗膜硬度(マルテンス硬さ)を測定した。
測定条件は、dQRST(F)/dt=一定、F(試験力)=10mN/10秒、C(最大荷重クリープ時間)=5秒、最大押し込み荷重=10mN、最大押し込み深さ=6μmとした。試験板の塗膜のそれぞれ異なる3カ所について塗膜硬度(マルテンス硬さ)を測定し、それらの平均値を塗膜の硬度とした。
なお、マルテンス硬度は3.0~40.0N/mmの範囲であることが好ましく、4.0~20.0N/mmの範囲であることが好ましい。3.0N/mm以上であれば、塗膜硬度が十分に高く、40.0N/mm以下であれば、塗膜のクラック性が良好である。
【0174】
(防汚性)
あらかじめ防さび塗料が塗布してあるサンドブラスト板に試料(樹脂組成物又は防汚塗料組成物)を、乾燥膜厚が200μmになるように塗布して試験板を作製した。この塗膜に対し、愛知県内の湾にて3か月静置浸漬し、付着生物の付着面積(塗膜の全面積に対する、生物が付着している面積の割合)を調べた。以下の基準で防汚性を評価した。
◎(優):付着面積が5%未満
○(良):付着面積が5%以上~20%未満
△(可):付着面積が20%以上40%未満
×(不良):付着面積が40%以上
【0175】
<製造例1:金属含有重合性単量体混合物(MM-Zn1)の製造>
撹拌機、温度調整機、滴下ロートを備えた反応容器にPGM(プロピレングリコールメチルエーテル)85.4部及び酸化亜鉛40.7部を仕込み、撹拌しながら75℃に昇温した。続いて、滴下ロートからメタクリル酸43.1部、アクリル酸36.1部、水5部からなる混合物を3時間で等速滴下した。さらに2時間撹拌した後、PGMを36部添加して、固形分44.8質量%の透明な金属原子含有単量体混合物(MM-Zn1)を得た。
【0176】
<製造例2:金属含有重合性単量体混合物(MM-Zn2)の製造>
冷却器、温度計、滴下ロートおよび攪拌機を備えた四つ口フラスコにPGM72.4部および酸化亜鉛40.7部を仕込み、撹拌しながら75℃に昇温した。続いて、滴下ロートからメタクリル酸30.1部、アクリル酸25.2部、バーサチック酸51.6部からなる混合物を3時間で等速滴下した。さらに2時間撹拌した後PGMを11部添加して、固形分59.6質量%の透明な金属原子含有重合性単量体混合物(MM-Zn2)を得た。
【0177】
<製造例3:分散剤1の製造>
撹拌機、冷却管、温度計を備えた重合装置中に、脱イオン水900部、メタクリル酸2-スルホエチルナトリウム60部、メタクリル酸カリウム10部及びメチルメタクリレート(MMA)12部を入れて撹拌し、重合装置内を窒素置換しながら、50℃に昇温した。その中に、重合開始剤として2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩0.08部を添加し、更に60℃に昇温した。昇温後、滴下ポンプを使用して、MMAを0.24部/分の速度で75分間連続的に滴下した。反応溶液を60℃で6時間保持した後、室温に冷却して、透明な水溶液である固形分10質量%の分散剤1を得た。
【0178】
<製造例4:連鎖移動剤1の製造>
撹拌装置を備えた合成装置中に、窒素雰囲気下で、酢酸コバルト(II)四水和物1.00g及びジフェニルグリオキシム1.93g、あらかじめ窒素バブリングにより脱酸素したジエチルエーテル80mlを入れ、室温で30分間攪拌した。ついで、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体10mlを加え、さらに6時間攪拌した。混合物をろ過し、固体をジエチルエーテルで洗浄し、15時間真空乾燥して、赤褐色固体である連鎖移動剤1を2.12g得た。
【0179】
<製造例5:マクロモノマー1の製造>
撹拌機、冷却管、温度計を備えた重合装置中に、脱イオン水145部、硫酸ナトリウム0.1部及び分散剤1(固形分10質量%)0.25部を入れて撹拌し、均一な水溶液とした。次に、MMAを100部、連鎖移動剤1を0.004部及び1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシ2-エチルヘキサノエート(パーオクタO(登録商標)、日油株式会社製)0.40部を加え、水性懸濁液とした。
次に、重合装置内を窒素置換し、80℃に昇温して1時間反応し、さらに重合率を上げるため、90℃に昇温して1時間保持した。その後、反応液を40℃に冷却して、ポリマーを含む水性懸濁液を得た。この水性懸濁液を目開き45μmのナイロン製濾過布で濾過し、濾過物を脱イオン水で洗浄し、脱水し、40℃で16時間乾燥することにより、マクロモノマー1を得た。マクロモノマー1の数平均分子量は3000、重量平均分子量は7000であった。
【0180】
<製造例6:マクロモノマー2の製造>
撹拌機、冷却管、温度計を備えた重合装置中に、脱イオン水145部、硫酸ナトリウム0.1部及び分散剤1(固形分10質量%)0.25部を入れて撹拌し、均一な水溶液とした。次に、MMAの75部、2-メトキシエチルメタクリレート(2-MTMA)の25部、連鎖移動剤1の0.010部及び1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシ2-エチルヘキサノエート(パーオクタO、日油株式会社製)の1.50部を加え、水性懸濁液とした。
次に、重合装置内を窒素置換し、80℃に昇温して1時間反応し、さらに重合率を上げるため、90℃に昇温して1時間保持した。その後、反応液を40℃に冷却して、ポリマーを含む水性懸濁液を得た。この水性懸濁液を目開き45μmのナイロン製濾過布で濾過し、濾過物を脱イオン水で洗浄し、脱水し、40℃で16時間乾燥することにより、マクロモノマー2を得た。マクロモノマー2の数平均分子量は2000、重量平均分子量は3800であった。
【0181】
<製造例7:マクロモノマー3の製造>
反応容器に仕込むマクロモノマーの種類及び仕込み量(部)、昇温後に滴下する混合物の組成を下記表1に示すように変更した点以外は、実施例1と同様にして、樹脂組成物を製造した。
【0182】
【表1】
【0183】
<製造例7>
イソブチルビニルエーテル90.1部(0.9mol)、ヒドロキノン0.14部、フェノチアジン0.28部を室温で撹拌して均一になるまで混合した。空気(10ml/min)を吹込みながら、メタクリル酸51.7部(0.6mol)を、反応液の温度が60℃以下を保つようにして滴下した。滴下後、反応液の温度を80℃まで上げて、6時間反応させた。反応液にt-ブチルメチルエーテル158.7部(1.8mol)を加えて混合し、有機相を20質量%炭酸カリウム水溶液200部で1回洗浄した。有機相に4-ベンゾイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-N-オキシル0.03部を加え、エバポレータにより低沸分を留出させた。得られた残渣を減圧蒸留して、沸点60℃/3torrの1-イソブトキシエチルメタクリレート(IBEMA)97.5部(0.52mol)を得た。
【0184】
<実施例1>
撹拌機、温度調整機、滴下ロートを備えた反応容器に、キシレン34部、PGM15部、EA4部、マクロモノマー1の18.5部を仕込み、撹拌しながら100℃に昇温した。続いて、滴下ロートから、エチルアクリレート(EA)の51.8部、金属原子含有単量体混合物(MM-Zn1)の21.6部、ポリシロキサンブロック含有重合性単量体(JNC(株)製、FM-0711)20部、2,2-アゾビス(イソブチロニトリル)(AIBN)の0.5部、2,2-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)(AMBN)の0.7部、連鎖移動剤(日油株式会社製、ノフマー(登録商標)MSD、α-メチルスチレンダイマー)の1.2部、キシレン5部からなる混合物を6時間かけて等速滴下した。
滴下終了後、キシレン3部を添加した後、t-ブチルパーオキシオクトエート0.5部とキシレン4部を30分間隔で4回滴下し、さらに1時間撹拌した後、キシレン8部を添加し、固形分56.0質量%、粘度STの溶液状の樹脂組成物を得た。
【0185】
<実施例2~5、比較例1~2>
反応容器に仕込むマクロモノマーの種類及び仕込み量(部)、昇温後に滴下する混合物の組成を下記表2及び表4に示すように変更した点以外は、実施例1と同様にして、樹脂組成物を製造した。
【0186】
<実施例6>
撹拌機、温度調整機、滴下ロートを備えた反応容器に、キシレンの50部、マクロモノマー2の20部を仕込み、撹拌しながら90℃に昇温した。続いて、滴下ロートからIBEMAの25部、FM-0711(商品名、JNC(株)製)の20部、エチルアクリレートの35部、AMBN0.5部からなる混合物を4時間かけて等速滴下した。滴下終了後、AMBN2.0部とキシレン4.0部を30分かけて等速滴下し、さらに2時間撹拌した後、イソブチルビニルエーテル6.7部、酢酸ブチル3部を添加し、固形分61.0質量%、ガードナー粘度+Jの重合体溶液(樹脂組成物)A-6を得た。
【0187】
<実施例7、比較例3~4>
反応容器に仕込むマクロモノマーの種類及び仕込み量(部)、昇温後に滴下する混合物の組成を下記表2及び表4に示すように変更した点以外は、実施例6と同様にして、樹脂組成物を製造した。
【0188】
<実施例8~26,31,32>
反応容器に仕込むマクロモノマーの種類及び仕込み量(部)、昇温後に滴下する混合物の組成を下記表2~表4に示すように変更した点以外は、実施例1と同様にして、樹脂組成物を製造した。
【0189】
<実施例27~28>
反応容器に仕込むマクロモノマーの種類及び仕込み量(部)、昇温後に滴下する混合物の組成を下記表4に示すように変更した点以外は、実施例6と同様にして、樹脂組成物を製造した。
【0190】
<実施例29~30>
反応容器に仕込むマクロモノマーの種類及び仕込み量(部)、昇温後に滴下する混合物の組成を下記表4に示すように変更した点以外は、実施例7と同様にして、樹脂組成物を製造した。
【0191】
下記表2~表4に、実施例1~32、比較例1~4で得られた樹脂組成物の特性(粘度、固形分(質量%))、各樹脂組成物に含まれる共重合体の特性(数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)、分子量分布)、及び評価結果(塗膜硬度)を記載した。
【0192】
【表2】
【0193】
【表3】
【0194】
【表4】
【0195】
表2~4中、仕込み単量体、混合物組成の欄に示す略号はそれぞれ以下の材料を示す。また、各欄に記載の数値は、各材料の仕込み量(部)を示す。
マクロモノマー1、2:各々、製造例5、6で得たマクロモノマー1、2。
MMA:メチルメタクリレート。
EA:エチルアクリレート。
MM-Zn1:製造例1で得た金属原子含有単量体混合物(MM-Zn1)。
MM-Zn2:製造例2で得た金属原子含有単量体混合物(MM-Zn2)。
IBEMA:製造例7で得た合成品、1-イソブトキシエチルメタクリレート。
FM-0711:商品名、JNC株式会社製(前記式(b1)中のvが0、R3a~R3fがメチル基、wが3、xが10である片末端型ポリシロキサンブロック含有重合性単量体)。
X-24-8201:商品名、信越化学社製(前記式(b1)中のvが0、R3a~R3fがメチル基、wが3、xが25である片末端型ポリシロキサンブロック含有重合性単量体)。
FM-7721:商品名、JNC株式会社製(前記式(b4)中のvが0、R3a~R3fがメチル基、wが3、xが65である両末端型ポリシロキサンブロック含有重合性単量体)。
AIBN:2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)。
AMBN:2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)。
ノフマーMSD:商品名、日油株式会社製、α-メチルスチレンダイマー。
CHMA:シクロヘキシルメタクリレート。
BA:ブチルアクリレート。
MTA:2-メトキシエチルアクリレート。
AA-6:東亜合成製MMAマクロモノマー(数平均分子量6000)。
【0196】
<実施例33~71、比較例5~8>
下記表5~8に示す配合に従い、各成分を高速ディスパーにより混合して、防汚塗料組成物を得た。得られた防汚塗料組成物を用いて及び防汚性消耗度を評価した。結果を下記表5~8に示す。
【0197】
【表5】
【0198】
【表6】
【0199】
【表7】
【0200】
【表8】
【0201】
表5~8中に示す略号はそれぞれ以下の材料を示す。また、各欄に記載の数値は、各材料の仕込み量(部)を示す。樹脂組成物A-1~A-11の仕込み量は、各樹脂組成物の総質量を示す。
KF-6016:商品名、信越化学工業(株)製、ポリエーテル変性シリコーンオイル。
トヨパラックス(登録商標)150:東ソー(株)製、塩素化パラフィン。
ディスパロン(登録商標)4200-20:楠本化成(株)製、酸化ポリエチレンワックス。
ディスパロンA603-20X:楠本化成(株)製、ポリアマイドワックス。
【0202】
実施例1~32の樹脂組成物は、高固形分かつ低粘度であった。また、塗膜硬度が充分に高いことが確認できた。
構成単位(A3)を有する比較例1~2は、マクロモノマーを併用していないため、実施例1~5等と比べて低固形分であるにもかかわらず、高粘度であった。また、塗膜硬度も劣っていた。
同様に、構成単位(A1)を有する比較例3、構成単位(A2)を有する比較例4はそれぞれ、実施例6と比べて、実施例7と比べて低固形分であるにもかかわらず、高粘度であった。また、塗膜硬度も劣っていた。
実施例1~32の樹脂組成物を用いた実施例33~71の防汚塗料組成物の塗膜はいずれも、良好な消耗度及び防汚性を示した。