(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-11
(45)【発行日】2022-04-19
(54)【発明の名称】研磨液、研磨液セット及び研磨方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/304 20060101AFI20220412BHJP
B24B 37/00 20120101ALI20220412BHJP
C09K 3/14 20060101ALI20220412BHJP
C09G 1/02 20060101ALI20220412BHJP
【FI】
H01L21/304 622D
H01L21/304 622X
B24B37/00 H
C09K3/14 550Z
C09G1/02
(21)【出願番号】P 2019565631
(86)(22)【出願日】2018-01-18
(86)【国際出願番号】 JP2018001404
(87)【国際公開番号】W WO2019142292
(87)【国際公開日】2019-07-25
【審査請求日】2020-06-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】昭和電工マテリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100169454
【氏名又は名称】平野 裕之
(74)【代理人】
【識別番号】100160897
【氏名又は名称】古下 智也
(72)【発明者】
【氏名】荒川 敬太
(72)【発明者】
【氏名】飯倉 大介
【審査官】山口 祐一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-215336(JP,A)
【文献】特開2013-016830(JP,A)
【文献】国際公開第2014/175397(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
B24B 37/00
C09K 3/14
C09G 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
砥粒と、第4級ホスホニウムカチオンと、液状媒体と、を含有し、
前記砥粒が金属水酸化物を含み、
前記第4級ホスホニウムカチオンが、リン原子に結合する炭素数2以上の炭化水素基を有する、研磨液。
【請求項2】
前記金属水酸化物がセリウム水酸化物を含む、請求項1に記載の研磨液。
【請求項3】
ポリシリコンを含む被研磨面を研磨するために使用される、請求項1又は2に記載の研磨液。
【請求項4】
ポリシリコンを含む被研磨面を研磨するために使用される研磨液であって、
砥粒と、第4級ホスホニウムカチオンと、液状媒体と、を含有し、
前記砥粒がセリウム酸化物を含み、
前記第4級ホスホニウムカチオンが、リン原子に結合する炭素数2以上の炭化水素基を有する、研磨液。
【請求項5】
前記炭化水素基がブチル基を含む、請求項1~
4のいずれか一項に記載の研磨液。
【請求項6】
前記炭化水素基がフェニル基を含む、請求項1~
5のいずれか一項に記載の研磨液。
【請求項7】
前記第4級ホスホニウムカチオンが、下記一般式(I)で表されるホスホニウムカチオンを含む、請求項1~
6のいずれか一項に記載の研磨液。
【化1】
[式中、R
1、R
2、R
3及びR
4は、それぞれ独立に、水素原子、又は、置換基を有していてもよい炭化水素基を示し、R
1、R
2、R
3及びR
4のうち少なくとも一つは、置換基を有していてもよい炭素数2以上の炭化水素基であり、式中のリン原子P同士がR
1、R
2、R
3又はR
4を介して互いに結合していてもよい。]
【請求項8】
前記一般式(I)においてR
1、R
2、R
3及びR
4からなる群より選ばれる少なくとも一種が、カルボキシル基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、ハロゲノ基、エーテル基、エステル基、アルデヒド基、カルボニル基、ニトロ基、シリル基、シアノ基、アミノ基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、単素環基、及び、複素環基からなる群より選ばれる少なくとも一種で置換された炭化水素基である、請求項
7に記載の研磨液。
【請求項9】
前記一般式(I)においてR
1、R
2、R
3及びR
4のうち2つ以上が非置換の炭化水素基である、請求項
7又は
8に記載の研磨液。
【請求項10】
前記一般式(I)においてR
1、R
2、R
3及びR
4がアリール基である、請求項
7~
9のいずれか一項に記載の研磨液。
【請求項11】
前記第4級ホスホニウムカチオンを有する第4級ホスホニウム塩の含有量が0.001~1質量%である、請求項1~
10のいずれか一項に記載の研磨液。
【請求項12】
pHが8.0未満である、請求項1~
11のいずれか一項に記載の研磨液。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか一項に記載の研磨液の構成成分が複数の液に分けて保存され、第1の液が前記砥粒を含み、第2の液が前記第4級ホスホニウムカチオンを含む、研磨液セット。
【請求項14】
請求項1~12のいずれか一項に記載の研磨液、又は、請求項13に記載の研磨液セットにおける前記第1の液と前記第2の液とを混合して得られる研磨液を用いて被研磨面を研磨する工程を備える、研磨方法。
【請求項15】
前記被研磨面がポリシリコンを含む、請求項14に記載の研磨方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、研磨液、研磨液セット及び研磨方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の半導体素子の製造工程では、高密度化・微細化のための加工技術の重要性がますます高まっている。加工技術の一つであるCMP(ケミカル・メカニカル・ポリッシング:化学機械研磨)技術は、半導体素子の製造工程において、シャロートレンチ分離(シャロー・トレンチ・アイソレーション。以下「STI」という。)の形成、プリメタル絶縁材料又は層間絶縁材料の平坦化、プラグ又は埋め込み金属配線の形成等に必須の技術となっている。CMP研磨液としては、ヒュームドシリカ、コロイダルシリカ等のシリカ(酸化珪素)粒子を含むシリカ系CMP研磨液が知られている。また、酸化セリウム(セリア)粒子を含む酸化セリウム系CMP研磨液も知られている(例えば、下記特許文献1及び2参照)。
【0003】
近年の半導体素子の製造工程では、更なる配線の微細化を達成することが求められており、研磨時に発生する研磨傷が問題となっている。すなわち、従来の酸化セリウム系研磨液を用いて研磨を行った際に、微小な研磨傷が発生しても、この研磨傷の大きさが従来の配線幅より小さいものであれば問題にならなかったが、更なる配線の微細化を達成しようとする場合には、研磨傷が微小であっても問題となってしまう。
【0004】
この問題に対し、4価金属元素の水酸化物粒子を用いた研磨液が検討されている(例えば、下記特許文献3参照)。また、4価金属元素の水酸化物粒子の製造方法についても検討されている(例えば、下記特許文献4参照)。これらの技術は、4価金属元素の水酸化物粒子が有する化学的作用を活かしつつ機械的作用を極力小さくすることによって、粒子による研磨傷を低減しようとするものである(例えば、下記特許文献5参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平10-106994号公報
【文献】特開平08-022970号公報
【文献】国際公開第2002/067309号
【文献】特開2006-249129号公報
【文献】特開2002-241739号公報
【文献】国際公開第2012/070544号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
CMP工程において、所定の位置で研磨を停止するための手段の1つとしてストッパ(研磨停止部材。ストッパ材料を含む部材)を用いることがある。ストッパを用いるCMP工程の一例では、凹凸パターンを有する基板と、当該基板の凸部上に配置されたストッパと、凹部を埋めるように基板及びストッパ上に配置された絶縁材料と、を有する基体を研磨して絶縁材料の不要部が除去される。これは、絶縁材料の研磨量(絶縁材料が除去される量)を制御することが難しいためであり、ストッパが露出するまで絶縁材料を研磨することによって研磨の程度を制御している。このような研磨では、ストッパ材料の研磨速度を抑制する必要があり、近年では、ストッパ材料としてポリシリコンを用いることが増えてきていることから、ポリシリコンの研磨速度を抑制する必要がある。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、ポリシリコンの研磨速度を抑制することが可能な研磨液を提供することを目的とする。本発明は、前記研磨液を得るための研磨液セットを提供することを目的とする。本発明は、前記研磨液又は前記研磨液セットを用いた研磨方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る研磨液の第1実施形態は、砥粒と、第4級ホスホニウムカチオンと、液状媒体と、を含有し、前記砥粒が金属水酸化物を含み、前記第4級ホスホニウムカチオンが、リン原子に結合する炭素数2以上の炭化水素基を有する。本発明に係る研磨液の第2実施形態は、砥粒と、第4級ホスホニウムカチオンと、液状媒体と、を含有し、前記砥粒がセリウム酸化物を含み、前記第4級ホスホニウムカチオンが、リン原子に結合する炭素数2以上の炭化水素基を有する。
【0009】
本発明に係る研磨液によれば、ポリシリコンの研磨速度を抑制することができる。また、本発明に係る研磨液によれば、除去対象材料(高い研磨速度で積極的に研磨して除去すべき材料。例えば絶縁材料)の研磨速度を確保しつつポリシリコンの研磨速度を抑制することが可能であり、ポリシリコンに対する除去対象材料の研磨選択性(研磨速度比:除去対象材料の研磨速度/ポリシリコンの研磨速度)を高めることができる。本発明に係る研磨液によれば、ポリシリコンに対する絶縁材料(例えば酸化珪素)の研磨選択性(研磨速度比:絶縁材料の研磨速度/ポリシリコンの研磨速度)を高めることができる。本発明によれば、ポリシリコンを含むストッパと、絶縁材料(例えば酸化珪素)を含む部材と、を有する基体の研磨をストッパで停止することができる。
【0010】
本発明に係る研磨液の第1実施形態における前記金属水酸化物は、セリウム水酸化物を含むことが好ましい。
【0011】
前記炭化水素基は、ブチル基を含んでいてもよく、フェニル基を含んでいてもよい。
【0012】
本発明に係る研磨液において前記第4級ホスホニウムカチオンは、下記一般式(I)で表されるホスホニウムカチオンを含むことが好ましい。
【化1】
[式中、R
1、R
2、R
3及びR
4は、それぞれ独立に、水素原子、又は、置換基を有していてもよい炭化水素基を示し、R
1、R
2、R
3及びR
4のうち少なくとも一つは、置換基を有していてもよい炭素数2以上の炭化水素基であり、式中のリン原子P同士がR
1、R
2、R
3又はR
4を介して互いに結合していてもよい。]
【0013】
前記一般式(I)においてR1、R2、R3及びR4からなる群より選ばれる少なくとも一種は、カルボキシル基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、ハロゲノ基、エーテル基、エステル基、アルデヒド基、カルボニル基、ニトロ基、シリル基、シアノ基、アミノ基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、単素環基、及び、複素環基からなる群より選ばれる少なくとも一種で置換された炭化水素基であってよい。
【0014】
前記一般式(I)においてR1、R2、R3及びR4のうち2つ以上は、非置換の炭化水素基であってよい。
【0015】
前記一般式(I)においてR1、R2、R3及びR4は、アリール基であってよい。
【0016】
前記第4級ホスホニウムカチオンを有する第4級ホスホニウム塩の含有量は、0.001~1質量%であることが好ましい。
【0017】
本発明に係る研磨液のpHは、8.0未満であることが好ましい。
【0018】
本発明に係る研磨液は、ポリシリコンを含む被研磨面を研磨するために使用されてよい。
【0019】
本発明に係る研磨液セットは、上述の研磨液の構成成分が複数の液に分けて保存され、第1の液が前記砥粒を含み、第2の液が前記第4級ホスホニウムカチオンを含む。本発明に係る研磨液セットによれば、本発明に係る研磨液と同様の上記効果を得ることができる。
【0020】
本発明に係る研磨方法は、上述の研磨液、又は、上述の研磨液セットにおける前記第1の液と前記第2の液とを混合して得られる研磨液を用いて被研磨面を研磨する工程を備える。本発明に係る研磨方法によれば、本発明に係る研磨液と同様の上記効果を得ることができる。
【0021】
本発明に係る研磨方法において前記被研磨面は、ポリシリコンを含んでいてよい。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、ポリシリコンの研磨速度を抑制することができる。本発明によれば、ポリシリコンを含むストッパと、絶縁材料(例えば酸化珪素)を含む部材と、を有する基体の研磨をストッパで停止することができる。
【0023】
本発明は、半導体素子の製造技術である、基体表面の平坦化工程に用いることができる。本発明は、絶縁材料(例えば、STI絶縁材料、プリメタル絶縁材料、及び、層間絶縁材料)の平坦化工程に用いることができる。
【0024】
本発明によれば、ポリシリコンに対して絶縁材料を選択的に研磨する研磨工程への研磨液又は研磨液セットの応用を提供することができる。本発明によれば、ポリシリコンを含むストッパと、絶縁材料を含む部材と、を有する基体の研磨をストッパで停止する研磨工程への研磨液又は研磨液セットの応用を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】半導体のSTI構造を形成する際における研磨工程を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態について説明する。
【0027】
本明細書において、「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。本明細書に段階的に記載されている数値範囲において、ある段階の数値範囲の上限値又は下限値は、他の段階の数値範囲の上限値又は下限値と任意に組み合わせることができる。本明細書に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。「A又はB」とは、A及びBのどちらか一方を含んでいればよく、両方とも含んでいてもよい。本明細書に例示する材料は、特に断らない限り、一種を単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。本明細書において、組成物中の各成分の含有量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。
【0028】
<研磨液及び研磨液セット>
本実施形態に係る研磨液は、研磨時に被研磨面に触れる組成物であり、例えばCMP研磨液である。本実施形態に係る研磨液は、砥粒と、第4級ホスホニウムカチオンと、液状媒体とを含有し、砥粒が、金属水酸化物(金属元素の水酸化物)及びセリウム酸化物からなる群より選ばれる少なくとも一種を含み、前記第4級ホスホニウムカチオンが、リン原子に結合する炭素数2以上の炭化水素基を有する。
【0029】
本実施形態によれば、ポリシリコン、アモルファスシリコン、結晶シリコン等のストッパ材料の研磨速度を抑制することができる。このような効果が奏される要因は必ずしも明らかではないが、本発明者は以下のように推測している。
【0030】
すなわち、リン原子に結合する炭素数2以上の炭化水素基を有する第4級ホスホニウムカチオン(以下、場合により「特定第4級ホスホニウムカチオン」という)のリン原子は正電荷を帯びるため、負に帯電しているストッパ材料(ポリシリコン、アモルファスシリコン、結晶シリコン等)の表面に特定第4級ホスホニウムカチオンが静電引力によって吸着し、ストッパ材料の表面に保護層が形成される。
次に、金属水酸化物を含む砥粒を用いる場合、化学的作用によって除去対象材料(例えば、酸化珪素等の絶縁材料)が研磨される(例えば、前記特許文献5参照)。また、セリウム酸化物を含む砥粒を用いる場合、セリウム酸化物の酸化作用等の化学的作用によって除去対象材料(例えば、酸化珪素等の絶縁材料)が研磨される。
このような化学的作用を活用した砥粒と、特定第4級ホスホニウムカチオンと、を併用してストッパ材料を研磨する場合には、ストッパ材料の表面に形成される上述の保護層によって砥粒と除去対象材料との化学的作用が阻害される。これにより、ストッパ材料の研磨速度が抑制される。
【0031】
第4級アンモニウムカチオンの窒素原子も正電荷を帯びるが、ストッパ材料の研磨速度を抑制することができない。この要因は必ずしも明らかではないが、本発明者は以下のように推測している。すなわち、一般的に、イオンの価数が同じであれば、イオン半径が大きいほど、イオンは、水和エントロピーが小さいため疎水的な性質を示す。したがって、リン原子と窒素原子とを比較すると、リン原子のイオン半径の方が窒素原子のイオン半径よりも大きいため、特定第4級ホスホニウムカチオンは第4級アンモニウムカチオンよりも疎水的な性質を有する(例えば、日本化学会誌,1980,(7),p.1148~1153には、同一官能基を有する(C4H9)4NBr及び(C4H9)4PBrの溶解度パラメータ(値が大きいほど疎水性が大きいことを示す)が示されており、(C4H9)4PBrの溶解度パラメータが(C4H9)4NBrに比べて大きいことが示されている)。そして、一般的に、ストッパ材料の表面は、疎水的な表面状態を有する。そのため、特定第4級ホスホニウムカチオンを用いる場合には、特定第4級ホスホニウムカチオン及びストッパ材料の双方が充分に疎水的な性質を有することから、特定第4級ホスホニウムカチオンがストッパ材料の表面に吸着しやすい。したがって、ストッパ材料の表面に保護層が形成されてストッパ材料の抑制効果が得られる。一方、第4級アンモニウムカチオンを用いる場合には、特定第4級ホスホニウムカチオンと比較して第4級アンモニウムカチオンの疎水的な性質が弱いことから、ストッパ材料の表面に保護層が形成されづらい。したがって、ストッパ材料の抑制効果が得られない。
【0032】
また、特定第4級ホスホニウムカチオンにおいて、リン原子に結合する炭素数2以上の炭化水素基は、炭素数2未満の炭化水素基と比較して疎水性が高い。この場合、疎水的な性質が充分に発現するため、特定第4級ホスホニウムカチオンがストッパ材料の表面に吸着しやすい。一方、第4級ホスホニウムカチオンが、リン原子に結合する炭素数2以上の炭化水素基を有することなく、リン原子に結合する炭素数2未満の炭化水素基のみを有する場合、炭化水素基の疎水性が低い。この場合、疎水的な性質が充分に発現しないことから、ストッパ材料の表面に保護層が形成されづらいため、ストッパ材料の抑制効果が得られない。
【0033】
(砥粒)
本実施形態に係る研磨液は、砥粒を含有する。砥粒は、金属水酸化物及びセリウム酸化物からなる群より選ばれる少なくとも一種を含む。すなわち、砥粒は、金属水酸化物を含む態様であってよく、セリウム酸化物を含む態様であってよい。
【0034】
金属水酸化物は、ストッパ材料(例えばポリシリコン)に対する除去対象材料(例えば絶縁材料)の研磨選択性を更に向上させつつ、被研磨面における研磨傷の発生を抑制する観点から、希土類元素及びジルコニウムからなる群より選択される少なくとも一種の水酸化物を含むことが好ましい。金属水酸化物は、除去対象材料(例えば絶縁材料)の研磨速度を更に向上させる観点から、希土類元素の水酸化物を含むことが好ましい。希土類元素としては、セリウム、プラセオジム、テルビウム等のランタノイドなどが挙げられる。金属水酸化物は、入手が容易であり且つ除去対象材料(例えば絶縁材料)の研磨速度に更に優れる観点から、セリウム水酸化物を含むことが好ましい。希土類元素の水酸化物とジルコニウムの水酸化物とを併用してもよく、希土類元素の水酸化物から二種以上を選択して使用することもできる。
【0035】
金属水酸化物としては、4価金属元素の水酸化物を用いることができる。「4価金属元素の水酸化物」は、4価の金属イオン(M4+)と、少なくとも一つの水酸化物イオン(OH-)とを含む化合物である。4価金属元素の水酸化物は、水酸化物イオン以外の陰イオン(例えば、硝酸イオンNO3-、及び、硫酸イオンSO4
2-)を含んでいてもよい。例えば、4価金属元素の水酸化物は、除去対象材料(例えば、酸化珪素等の絶縁材料)の研磨速度が更に向上する観点から、4価金属元素に結合した陰イオン(水酸化物イオンを除く。例えば、硝酸イオンNO3-、及び、硫酸イオンSO4
2-)を含むことが好ましく、4価金属元素に結合した硝酸イオンを含むことがより好ましい。
【0036】
金属元素の水酸化物(例えば4価金属元素の水酸化物)は、金属元素(例えば4価金属元素)の塩(金属塩)と、アルカリ源(塩基)とを反応させることにより作製可能である。金属元素の水酸化物は、金属元素の塩とアルカリ液(例えばアルカリ水溶液)とを混合することにより作製されることが好ましい。これにより、粒径が極めて細かい粒子を得ることができ、研磨傷の低減効果に更に優れた研磨液を得ることができる。このような手法は、例えば、前記特許文献6に開示されている。金属元素の水酸化物は、金属元素の塩を含む金属塩溶液(例えば金属塩水溶液)とアルカリ液とを混合することにより得ることができる。金属元素の塩としては、従来公知のものを特に制限なく使用でき、M(NO3)4、M(SO4)2、M(NH4)2(NO3)6、M(NH4)4(SO4)4(Mは希土類元素を示す。)、Zr(SO4)2・4H2O等が挙げられる。Mとしては、化学的に活性なセリウム(Ce)が好ましい。
【0037】
セリウム酸化物は、炭酸塩、硝酸塩、硫酸塩、シュウ酸塩等のセリウム塩を酸化して得ることができる。前記酸化の方法としては、前記セリウム塩を600~900℃で焼成する焼成法、過酸化水素等の酸化剤を用いて前記セリウム塩を酸化する化学的酸化法などが挙げられる。
【0038】
セリウム酸化物は、炭酸塩、硝酸塩、硫酸塩、シュウ酸塩等のセリウム塩を出発原料として得られたセリウム化合物を熱分解して得ることもできる。前記熱分解を用いた方法としては、沈殿法、加水分解法、sol-gel法等が挙げられる。
【0039】
セリウム酸化物は、固相法、液相法及び気相法のいずれの方法でも得ることができる。例えば、セリウム酸化物としては、液相法により得られる酸化物(例えばコロイダルセリア)を用いることができる。固相法としては、焼成法、熱分解法、固相反応法等が挙げられる。液相法としては、沈殿法、溶媒蒸発法、液相反応法等が挙げられる。気相法としては、気相反応法、蒸発凝縮法等が挙げられる。
【0040】
本実施形態に係る研磨液は、他の種類の砥粒を更に含有していてもよい。具体的には例えば、シリカ、アルミナ、ジルコニア、有機樹脂粒子等を含む砥粒が挙げられる。
【0041】
砥粒の含有量は、研磨液の全質量を基準として下記の範囲が好ましい。砥粒の含有量の下限は、除去対象材料(例えば絶縁材料)の所望の研磨速度が得られやすい観点から、0.005質量%以上が好ましく、0.01質量%以上がより好ましく、0.02質量%以上が更に好ましく、0.03質量%以上が特に好ましく、0.04質量%以上が極めて好ましく、0.05質量%以上が極めて好ましい。砥粒の含有量の上限は、砥粒の凝集を避けることが容易であると共に、砥粒が効果的に被研磨面に作用して研磨がスムーズに進行する観点から、20質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましく、5質量%以下が更に好ましく、3質量%以下が特に好ましく、1質量%以下が極めて好ましく、0.5質量%以下が非常に好ましく、0.3質量%以下がより一層好ましい。これらの観点から、砥粒の含有量は、0.005~20質量%が好ましい。
【0042】
砥粒が金属水酸化物(例えば、4価金属元素の水酸化物)を含む場合、砥粒の含有量は、研磨液の全質量を基準として下記の範囲が好ましい。砥粒の含有量の下限は、金属水酸化物の機能を充分に発現しやすい観点から、0.005質量%以上が好ましく、0.01質量%以上がより好ましく、0.02質量%以上が更に好ましく、0.03質量%以上が特に好ましく、0.04質量%以上が極めて好ましく、0.05質量%以上が非常に好ましい。砥粒の含有量の上限は、砥粒の凝集を避けることが容易であると共に、被研磨面との化学的な相互作用が良好に得られやすく、砥粒の特性を有効に活用しやすい観点から、20質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましく、5質量%以下が更に好ましく、3質量%以下が特に好ましく、1質量%以下が極めて好ましく、0.5質量%以下が非常に好ましく、0.3質量%以下がより一層好ましく、0.1質量%以下がより好ましい。これらの観点から、砥粒の含有量は、0.005~20質量%が好ましい。
【0043】
砥粒がセリウム酸化物を含む場合、砥粒の含有量は、研磨液の全質量を基準として下記の範囲が好ましい。砥粒の含有量の下限は、除去対象材料(例えば絶縁材料)の所望の研磨速度が得られやすい観点から、0.005質量%以上が好ましく、0.01質量%以上がより好ましく、0.02質量%以上が更に好ましく、0.03質量%以上が特に好ましく、0.04質量%以上が極めて好ましく、0.05質量%以上が非常に好ましく、0.1質量%以上がより一層好ましく、0.2質量%以上がより好ましい。砥粒の含有量の上限は、砥粒の凝集を避けることが容易であると共に、被研磨面との化学的な相互作用が良好に得られやすく、砥粒の特性を有効に活用しやすい観点から、20質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましく、5質量%以下が更に好ましく、3質量%以下が特に好ましく、1質量%以下が極めて好ましく、0.5質量%以下が非常に好ましく、0.3質量%以下がより一層好ましい。これらの観点から、砥粒の含有量は、0.005~20質量%が好ましい。
【0044】
砥粒が金属水酸化物(例えば、4価金属元素の水酸化物)を含む場合、砥粒の含有量は、砥粒全体(研磨液に含まれる砥粒全体)を基準として下記の範囲が好ましい。金属水酸化物を含む砥粒の含有量の下限は、ストッパ材料(例えばポリシリコン)の研磨速度を更に抑制する観点から、50質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、90質量%以上が更に好ましく、95質量%以上が特に好ましく、97質量%以上が極めて好ましい。金属水酸化物を含む砥粒の含有量の上限は、100質量%であってよい。
【0045】
砥粒がセリウム酸化物を含む場合、砥粒の含有量は、砥粒全体(研磨液に含まれる砥粒全体)を基準として下記の範囲が好ましい。セリウム酸化物を含む砥粒の含有量の下限は、ストッパ材料(例えばポリシリコン)の研磨速度を更に抑制する観点から、50質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、90質量%以上が更に好ましく、95質量%以上が特に好ましく、97質量%以上が極めて好ましい。セリウム酸化物を含む砥粒の含有量の上限は、100質量%であってよい。
【0046】
砥粒の平均粒径(平均二次粒径)がある程度小さい場合、被研磨面に接する砥粒の比表面積が増大することにより除去対象材料(例えば絶縁材料)の研磨速度を更に向上させることができると共に、機械的作用が抑えられて研磨傷を更に低減できる。そのため、金属水酸化物を含む砥粒の平均粒径の上限は、除去対象材料(例えば絶縁材料)の更に優れた研磨速度が得られると共に研磨傷が更に低減される観点から、300nm以下が好ましく、200nm以下がより好ましく、150nm以下が更に好ましく、100nm以下が特に好ましく、80nm以下が極めて好ましく、60nm以下が非常に好ましく、40nm以下がより一層好ましく、20nm以下がより好ましく、10nm以下が更に好ましい。金属水酸化物を含む砥粒の平均粒径の下限は、除去対象材料(例えば絶縁材料)の更に優れた研磨速度が得られると共に研磨傷が更に低減される観点から、1nm以上が好ましく、2nm以上がより好ましく、3nm以上が更に好ましく、5nm以上が特に好ましい。これらの観点から、金属水酸化物を含む砥粒の平均粒径は、1~300nmが好ましい。
【0047】
砥粒の平均粒径(平均二次粒径)がある程度小さい場合、被研磨面に接する砥粒の比表面積が増大することにより除去対象材料(例えば絶縁材料)の研磨速度を更に向上させることができると共に、機械的作用が抑えられて研磨傷を更に低減できる。そのため、セリウム酸化物を含む砥粒の平均粒径の上限は、除去対象材料(例えば絶縁材料)の更に優れた研磨速度が得られると共に研磨傷が更に低減される観点から、300nm以下が好ましく、250nm以下がより好ましく、200nm以下が更に好ましく、180nm以下が特に好ましい。セリウム酸化物を含む砥粒の平均粒径の下限は、除去対象材料(例えば絶縁材料)の更に優れた研磨速度が得られると共に研磨傷が更に低減される観点から、1nm以上が好ましく、2nm以上がより好ましく、10nm以上が更に好ましく、50nm以上が特に好ましく、100nm以上が極めて好ましく、150nm以上が非常に好ましい。これらの観点から、セリウム酸化物を含む砥粒の平均粒径は、1~300nmが好ましい。
【0048】
砥粒の平均粒径は、光子相関法、レーザ回折散乱法等で測定できる。例えば、金属水酸化物を含む砥粒の平均粒径は、ベックマン・コールター株式会社製の装置名:N5等で測定できる。セリウム酸化物を含む砥粒の平均粒径は、日機装株式会社製のマイクロトラック粒度分布計(例えば、装置名:MT-3000II)等で測定できる。
【0049】
N5を用いた測定では、例えば、まず、砥粒の含有量を1.0質量%に調整した水分散液を調製し、この水分散液を1cm角のセルに約1mL(Lは「リットル」を示す。以下同じ)入れ、装置内にセルを設置する。そして、分散媒の屈折率を1.333、分散媒の粘度を0.887mPa・sに設定し、25℃において測定を行うことで得られる値を砥粒の平均粒径として採用できる。
【0050】
MT-3000IIを用いた測定では、例えば、溶媒として水(屈折率1.33)を循環させ、試料濃度のdv値(回折光量。マイクロトラックでの測定濃度の目安)が0.0010~0.0011の範囲になるまで、砥粒を含有する水分散液を前記溶媒に添加した後に測定することで得られる平均粒径(MV)を砥粒の平均粒径として採用できる。
【0051】
砥粒が4価金属元素の水酸化物を含む場合、下記光透過率又は吸光度を満たすことが好ましい。
【0052】
本実施形態に係る研磨液は、可視光に対する透明度が高い(目視で透明又は透明に近い)ことが好ましい。具体的には、本実施形態に係る研磨液に含まれる砥粒は、当該砥粒の含有量を1.0質量%に調整した水分散液において波長500nmの光に対して光透過率50%/cm以上を与えるものであることが好ましい。これにより、添加剤の添加に起因する除去対象材料(例えば絶縁材料)の研磨速度の低下を更に抑制できるため、研磨速度を維持しつつ他の特性を得ることが容易である。同様の観点から、前記光透過率の下限は、60%/cm以上がより好ましく、70%/cm以上が更に好ましく、80%/cm以上が特に好ましく、90%/cm以上が極めて好ましく、92%/cm以上が非常に好ましい。光透過率の上限は100%/cmである。
【0053】
このように砥粒の光透過率を調整することで除去対象材料(例えば絶縁材料)の研磨速度の低下を抑制することが可能な理由は詳しくは分かっていないが、4価金属元素(例えばセリウム)の水酸化物を含む砥粒が有する砥粒としての作用は、機械的作用よりも化学的作用の方が優勢であると考えられる。そのため、砥粒の大きさよりも砥粒の数の方が、より研磨速度に寄与すると考えられる。
【0054】
砥粒の含有量を1.0質量%に調整した水分散液において光透過率が低い場合、その水分散液に存在する砥粒は、粒径の大きい粒子(以下「粗大粒子」という)が相対的に多く存在すると考えられる。このような砥粒を含む研磨液に添加剤を添加すると、粗大粒子を核として他の粒子が凝集する。その結果として、単位面積当たりの被研磨面に作用する砥粒数(有効砥粒数)が減少し、被研磨面に接する砥粒の比表面積が減少するため、研磨速度が低下すると考えられる。
【0055】
一方、砥粒の含有量を1.0質量%に調整した水分散液において光透過率が高い場合、その水分散液に存在する砥粒は、前記「粗大粒子」が少ない状態であると考えられる。このように粗大粒子の存在量が少ない場合は、研磨液に添加剤を添加しても、凝集の核になるような粗大粒子が少ないため、砥粒同士の凝集が抑えられるか、又は、凝集粒子の大きさが相対的に小さい。その結果として、単位面積当たりの被研磨面に作用する砥粒数(有効砥粒数)が維持され、被研磨面に接する砥粒の比表面積が維持されるため、研磨速度が低下し難いと考えられる。
【0056】
一般的な粒径測定装置において測定される砥粒の粒径が同じ研磨液であっても、目視で透明である(光透過率の高い)もの、及び、目視で濁っている(光透過率の低い)ものがあり得ることが過去の検討からわかっている。これにより、前記のような作用を起こし得る粗大粒子は、一般的な粒径測定装置で検知できないほどのごくわずかの量であっても研磨速度の低下に寄与すると考えられる。
【0057】
前記光透過率は、波長500nmの光に対する透過率である。前記光透過率は、分光光度計で測定されるものであり、具体的には例えば、株式会社日立製作所製の分光光度計U3310(装置名)で測定される。
【0058】
より具体的な測定方法としては、砥粒の含有量を1.0質量%に調整した水分散液を測定サンプルとして調製する。この測定サンプルを1cm×1cmのセルに約4mL入れ、装置内にセルをセットし測定を行う。
【0059】
4価金属元素の水酸化物を含む砥粒が、当該砥粒の含有量を1.0質量%に調整した水分散液において波長400nmの光に対して吸光度1.00以上を与えるものであることにより、除去対象材料(例えば絶縁材料)の研磨速度を更に向上させることができる。この理由は必ずしも明らかではないが、4価金属元素の水酸化物の製造条件等に応じて、1個の4価の金属イオン(M4+)に対して、1~3個の水酸化物イオン(OH-)及び1~3個の陰イオン(Xc-)を有する、組成式がM(OH)aXb(式中、a+b×c=4である)で表される粒子が砥粒の一部として生成すると考えられる(なお、このような粒子も「4価金属元素の水酸化物を含む砥粒」である)。M(OH)aXbでは、電子吸引性の陰イオン(Xc-)が作用して水酸化物イオンの反応性が向上しており、M(OH)aXbの存在量が増加するに伴い研磨速度が向上すると考えられる。そして、組成式がM(OH)aXbで表される粒子が波長400nmの光を吸光するため、M(OH)aXbの存在量が増加して波長400nmの光に対する吸光度が高くなるに伴い、研磨速度が向上すると考えられる。
【0060】
4価金属元素の水酸化物を含む砥粒は、組成式がM(OH)aXbで表される粒子だけでなく、組成式がM(OH)4、MO2等で表される粒子も含み得ると考えられる。陰イオン(Xc-)としては、NO3
-、SO4
2-等が挙げられる。
【0061】
なお、砥粒が組成式M(OH)aXbを有することは、砥粒を純水でよく洗浄した後にFT-IR ATR法(Fourier Transform Infra Red Spectrometer Attenuated Total Reflection法(フーリエ変換赤外分光光度計全反射測定法))を用いて陰イオン(Xc-)に該当するピークを検出する方法により確認できる。XPS法(X-ray Photoelectron Spectroscopy(X線光電子分光法))により、陰イオン(Xc-)の存在を確認することもできる。また、X線吸収微細構造(XAFS)測定から、EXAFS解析をすることによって、Mと陰イオン(Xc-)の結合の有無を確認することもできる。
【0062】
ここで、M(OH)aXb(例えばM(OH)3X)の波長400nmの吸収ピークは、後述する波長290nmの吸収ピークよりもはるかに小さいことが確認されている。これに対し、砥粒の含有量が比較的多く、吸光度が大きく検出されやすい砥粒含有量1.0質量%の水分散液において波長400nmの光に対する吸光度1.00以上を与える砥粒を用いる場合、除去対象材料(例えば絶縁材料)の研磨速度の向上効果に優れる。
【0063】
波長400nmの光に対する吸光度の下限は、除去対象材料(例えば絶縁材料)の更に優れた研磨速度が得られる観点から、1.00以上が好ましく、1.20以上がより好ましく、1.40以上が更に好ましく、1.50以上が特に好ましく、1.80以上が極めて好ましく、2.00以上が非常に好ましい。
【0064】
4価金属元素の水酸化物を含む砥粒が、当該砥粒の含有量を0.0065質量%に調整した水分散液において波長290nmの光に対して吸光度1.000以上を与えるものであることにより、除去対象材料(例えば絶縁材料)の研磨速度を更に向上させることができる。この理由は必ずしも明らかではないが、4価金属元素の水酸化物の製造条件等に応じて生成する、組成式がM(OH)aXb(例えばM(OH)3X)で表される粒子は、計算上、波長290nm付近に吸収のピークを有し、例えばCe4+(OH-)3NO3
-からなる粒子は波長290nmに吸収のピークを有する。そのため、M(OH)aXbの存在量が増加して波長290nmの光に対する吸光度が高くなるに伴い研磨速度が向上すると考えられる。
【0065】
ここで、波長290nm付近の光に対する吸光度は、測定限界を超えるほど大きく検出される傾向がある。これに対し、砥粒の含有量が比較的少なく、吸光度が小さく検出されやすい砥粒含有量0.0065質量%の水分散液において波長290nmの光に対する吸光度1.000以上を与える砥粒を用いる場合、除去対象材料(例えば絶縁材料)の研磨速度の向上効果に優れる。
【0066】
波長290nmの光に対する吸光度の下限は、更に優れた研磨速度で除去対象材料を研磨する観点から、1.000以上が好ましく、1.050以上がより好ましく、1.100以上が更に好ましく、1.150以上が特に好ましく、1.190以上が極めて好ましい。波長290nmの光に対する吸光度の上限は、特に制限はないが、例えば10.000以下が好ましい。
【0067】
波長400nmの光に対する吸光度1.00以上を与える前記砥粒が、砥粒の含有量を0.0065質量%に調整した水分散液において波長290nmの光に対して吸光度1.000以上を与える場合には、更に優れた研磨速度で除去対象材料を研磨できる。
【0068】
4価金属元素の水酸化物(例えばM(OH)aXb)は、波長450nm以上、特に波長450~600nmの光を吸光しない傾向がある。従って、不純物を含むことにより研磨に対して悪影響が生じることを抑制して更に優れた研磨速度で除去対象材料を研磨する観点から、砥粒は、当該砥粒の含有量を0.0065質量%(65ppm)に調整した水分散液において波長450~600nmの光に対して吸光度0.010以下を与えるものであることが好ましい。すなわち、砥粒の含有量を0.0065質量%に調整した水分散液において波長450~600nmの範囲における全ての光に対する吸光度が0.010を超えないことが好ましい。波長450~600nmの光に対する吸光度の下限は、0が好ましい。
【0069】
水分散液における吸光度は、例えば、株式会社日立製作所製の分光光度計(装置名:U3310)を用いて測定できる。具体的には例えば、砥粒の含有量を1.0質量%又は0.0065質量%に調整した水分散液を測定サンプルとして調製する。この測定サンプルを1cm角のセルに約4mL入れ、装置内にセルを設置する。次に、波長200~600nmの範囲で吸光度測定を行い、得られたチャートから吸光度を判断する。
【0070】
砥粒が水分散液において与える吸光度及び光透過率は、砥粒以外の固体成分、及び、水以外の液体成分を除去した後、所定の砥粒含有量の水分散液を調製し、当該水分散液を用いて測定できる。固体成分又は液体成分の除去には、研磨液に含まれる成分によっても異なるが、数千G以下の重力加速度をかけられる遠心機を用いた遠心分離、数万G以上の重力加速度をかけられる超遠心機を用いた超遠心分離等の遠心分離法;分配クロマトグラフィー、吸着クロマトグラフィー、ゲル浸透クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー等のクロマトグラフィー法;自然ろ過、減圧ろ過、加圧ろ過、限外ろ過等のろ過法;減圧蒸留、常圧蒸留等の蒸留法などを用いることができ、これらを適宜組み合わせてもよい。
【0071】
例えば、重量平均分子量が数万以上(例えば5万以上)の化合物を研磨液が含む場合の方法としては、クロマトグラフィー法、ろ過法等が挙げられ、ゲル浸透クロマトグラフィー、限外ろ過が好ましい。ろ過法を用いる場合、研磨液に含まれる砥粒は、適切な条件の設定により、フィルタを通過させることができる。重量平均分子量が数万以下(例えば5万未満)の化合物を研磨液が含む場合の方法としては、クロマトグラフィー法、ろ過法、蒸留法等が挙げられ、ゲル浸透クロマトグラフィー、限外ろ過、減圧蒸留が好ましい。4価金属元素の水酸化物を含む砥粒以外の砥粒が研磨液に含まれる場合の方法としては、ろ過法、遠心分離法等が挙げられ、ろ過の場合はろ液に、遠心分離の場合は液相に、4価金属元素の水酸化物を含む砥粒がより多く含まれる。
【0072】
クロマトグラフィー法で砥粒を分離する方法としては、例えば、下記条件によって砥粒及び/又は他成分を分取できる。
【0073】
試料溶液:研磨液100μL
検出器:株式会社日立製作所製、UV-VISディテクター、商品名:L-4200、波長:400nm
インテグレーター:株式会社日立製作所製、GPCインテグレーター、商品名:D-2500
ポンプ:株式会社日立製作所製、商品名:L-7100
カラム:日立化成株式会社製、水系HPLC用充填カラム、商品名:GL-W550S
溶離液:脱イオン水
測定温度:23℃
流速:1mL/min(圧力:40~50kgf/cm2(3.9~4.9MPa)程度)
測定時間:60min
【0074】
なお、クロマトグラフィーを行う前に、脱気装置を用いて溶離液の脱気処理を行うことが好ましい。脱気装置を使用できない場合は、溶離液を事前に超音波等で脱気処理することが好ましい。
【0075】
研磨液に含まれる成分によっては、上記条件でも砥粒を分取できない可能性があるが、その場合、試料溶液量、カラム種類、溶離液種類、測定温度、流速等を最適化することで砥粒を分離できる。また、研磨液のpHを調整することで、研磨液に含まれる成分の留出時間を調整することにより、当該成分を砥粒と分離できる可能性がある。研磨液に不溶成分がある場合、必要に応じ、ろ過、遠心分離等で不溶成分を除去することが好ましい。
【0076】
(添加剤)
本実施形態に係る研磨液は、添加剤を含有する。ここで、「添加剤」とは、砥粒及び液状媒体以外に研磨液が含有する物質を指す。添加剤を用いることにより、例えば、研磨速度、研磨選択性等の研磨特性;砥粒の分散性、保存安定性等の研磨液特性などを調整することができる。
【0077】
[第4級ホスホニウムカチオン]
本実施形態に係る研磨液は、リン原子に結合する炭素数2以上の炭化水素基を有する第4級ホスホニウムカチオン(特定第4級ホスホニウムカチオン)を含有する。本実施形態に係る研磨液において特定第4級ホスホニウムカチオンは液状媒体中に分散している。特定第4級ホスホニウムカチオンは、一種を単独で又は二種以上を組み合わせて使用できる。
【0078】
特定第4級ホスホニウムカチオンは、リン原子に結合する炭素数2以上の炭化水素基を少なくとも一つ有していればよく、炭素数2以上の炭化水素基に加えて、炭素数2以上の炭化水素基とは異なる基がリン原子に結合していてもよい。炭素数2以上の炭化水素基とは異なる基としては、炭素数1の炭化水素基(例えばメチル基)、炭化水素基とは異なる基(例えばハロゲノ基)等が挙げられる。
【0079】
リン原子に結合する炭化水素基の炭素数の下限は、ストッパ材料(例えばポリシリコン)の研磨速度を更に抑制する観点から、2、3、4、5又は6以上であってよい。リン原子に結合する炭化水素基の炭素数の上限は、液状媒体(例えば水)への溶解性に優れることからストッパ材料(例えばポリシリコン)の研磨速度を抑制しやすい観点から、30、20、16、14又は10以下であってよい。これらの観点から、炭化水素基の炭素数は、2~30であってよい。
【0080】
炭化水素基としては、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基等が挙げられる。アルケニル基としては、ビニル基、アリル基、シンナミル基等が挙げられる。アリール基としては、フェニル基、ベンジル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、ナフチルメチル基等が挙げられる。炭化水素基は、ブチル基を含んでいてもよく、フェニル基を含んでいてもよい。
【0081】
リン原子に結合する炭化水素基は、置換基を有していてもよい(置換又は非置換の炭化水素基である)。置換炭化水素基における置換基としては、カルボキシル基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、ハロゲノ基、エーテル基、エステル基、アルデヒド基、カルボニル基、ニトロ基、シリル基、シアノ基、アミノ基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、単素環基、複素環基等が挙げられる。除去対象材料の研磨速度を確保しつつストッパ材料(例えばポリシリコン)の研磨速度を抑制する効果が得られやすい観点から、一般式(I)において、R1、R2、R3及びR4からなる群より選ばれる少なくとも一種は、カルボキシル基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、ハロゲノ基、エーテル基、エステル基、アルデヒド基、カルボニル基、ニトロ基、シリル基、シアノ基、アミノ基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、単素環基、及び、複素環基からなる群より選ばれる少なくとも一種で置換された炭化水素基であってよい。アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等が挙げられる。ハロゲノ基としては、フルオロ基、クロロ基、ブロモ基、ヨード基等が挙げられる。単素環基としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキレン基などが挙げられる。複素環基としては、チエニル基、ジオキソラン基、ジオキサン基、ベンゾトリアゾリル基等が挙げられる。特定第4級ホスホニウムカチオンは、単環化合物であってよく、複環化合物であってよい。
【0082】
除去対象材料の研磨速度を確保しつつストッパ材料(例えばポリシリコン)の研磨速度を抑制する効果が得られやすい観点から、リン原子に結合する炭素数2以上の炭化水素基の数は、2つ以上であってよく、3つ以上であってよく、4つであってよい。
【0083】
特定第4級ホスホニウムカチオンは、1つのリン原子を含むモノホスホニウムカチオンであってよく、複数のリン原子を含むポリホスホニウムカチオン(例えばジホスホニウムカチオン)であってよい。
【0084】
特定第4級ホスホニウムカチオンは、ストッパ材料(例えばポリシリコン)の研磨速度を更に抑制する観点から、下記一般式(I)で表されるホスホニウムカチオンを含むことが好ましい。
【化2】
[式(I)中、R
1、R
2、R
3及びR
4は、それぞれ独立に、水素原子、又は、置換基を有していてもよい炭化水素基を示し、R
1、R
2、R
3及びR
4のうち少なくとも一つは、置換基を有していてもよい炭素数2以上の炭化水素基であり、式(I)中のリン原子P同士がR
1、R
2、R
3又はR
4を介して互いに結合していてもよい。]
【0085】
一般式(I)中のR1、R2、R3及びR4は、それぞれ独立に、水素原子、又は、置換もしくは非置換の炭化水素基を示す。R1、R2、R3及びR4は、互いに同一であっても異なっていてもよい。一般式(I)で表される一のホスホニウムカチオンのリン原子と、一般式(I)で表される他のホスホニウムカチオンのリン原子とがR1、R2、R3又はR4を介して互いに結合することにより2量体以上の多量体が形成されてよい。
【0086】
R1、R2、R3及びR4の炭化水素基としては、上述した炭化水素基等が挙げられる。R1、R2、R3及びR4の炭化水素基の炭素数の範囲は、リン原子に結合する炭化水素基の炭素数の範囲として上述した範囲が好ましい。R1、R2、R3及びR4の炭化水素基の置換基としては、上述した置換炭化水素基における置換基等が挙げられる。
【0087】
除去対象材料の研磨速度を確保しつつストッパ材料(例えばポリシリコン)の研磨速度を抑制する効果が得られやすい観点から、一般式(I)において、R1、R2、R3及びR4のうち1つ以上が非置換の炭化水素基であってよく、R1、R2、R3及びR4のうち2つ以上が非置換の炭化水素基であってよく、R1、R2、R3及びR4のうち3つ以上が非置換の炭化水素基であってよく、R1、R2、R3及びR4の全てが非置換の炭化水素基であってよい。前記非置換の炭化水素基の炭素数は、ストッパ材料(例えばポリシリコン)の研磨速度を更に抑制する観点から、4以上が好ましく、5以上がより好ましく、6以上が更に好ましい。
【0088】
除去対象材料の研磨速度を確保しつつストッパ材料(例えばポリシリコン)の研磨速度を抑制する効果が得られやすい観点から、一般式(I)において、R1、R2、R3及びR4のうち1つ以上がアルキル基であってよく、R1、R2、R3及びR4のうち2つ以上がアルキル基であってよく、R1、R2、R3及びR4のうち3つ以上がアルキル基であってよく、R1、R2、R3及びR4の全てがアルキル基であってよい。前記アルキル基の炭素数は、ストッパ材料(例えばポリシリコン)の研磨速度を更に抑制する観点から、4以上が好ましく、5以上がより好ましく、6以上が更に好ましい。
【0089】
除去対象材料の研磨速度を確保しつつストッパ材料(例えばポリシリコン)の研磨速度を抑制する効果が得られやすい観点から、一般式(I)において、R1、R2、R3及びR4のうち1つ以上がアリール基であってよく、R1、R2、R3及びR4のうち2つ以上がアリール基であってよく、R1、R2、R3及びR4のうち3つ以上がアリール基であってよく、R1、R2、R3及びR4の全てがアリール基であってよい。
【0090】
一般式(I)で表されるホスホニウムカチオンとしては、ストッパ材料(例えばポリシリコン)の研磨速度を更に抑制する観点から、トリブチルヘキサデシルホスホニウムカチオン、トリブチル(オクチル)ホスホニウムカチオン、トリヘキシル(テトラデシル)ホスホニウムカチオン、テトラブチルホスホニウムカチオン、及び、テトラフェニルホスホニウムカチオンからなる群より選ばれる少なくとも一種が好ましく、テトラフェニルホスホニウムカチオンがより好ましい。
【0091】
特定第4級ホスホニウムカチオンを含有する研磨液は、例えば、特定第4級ホスホニウムカチオンを有する第4級ホスホニウムカチオン塩(以下、場合により「特定第4級ホスホニウム塩」という)を液状媒体に溶解させることにより得ることができる。特定第4級ホスホニウム塩における対アニオンとしては、水酸化物イオン、フッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、ヘキサフルオロリン酸イオン、テトラフルオロホウ酸イオン、テトラフェニルホウ酸イオン、ジシアナミドイオン、アルキルリン酸イオン(例えばジエチルリン酸イオン)、硫酸水素イオン、リン酸二水素イオン、リン酸水素イオン、スルファミン酸イオン、過塩素酸塩イオン、ベンゾトリアゾリドアニオン、テトラトリルボラートアニオン(例えばテトラ-p-トリルボラートアニオン)等が挙げられる。対アニオンとしては、ストッパ材料(例えばポリシリコン)の研磨速度を更に抑制する観点から、塩化物イオン、臭化物イオン及びベンゾトリアゾリドアニオンからなる群より選ばれる少なくとも一種が好ましい。
【0092】
特定第4級ホスホニウム塩は、ストッパ材料(例えばポリシリコン)の研磨速度を更に抑制する観点から、一般式(I)で表されるホスホニウムカチオンを有する化合物として、下記一般式(Ia)で表される化合物を含むことが好ましい。
【化3】
[式(Ia)中、R
1、R
2、R
3及びR
4は、それぞれ独立に、水素原子、又は、置換基を有していてもよい炭化水素基を示し、R
1、R
2、R
3及びR
4のうち少なくとも一つは、置換基を有していてもよい炭素数2以上の炭化水素基であり、X
-は、陰イオンを示す。]
【0093】
一般式(Ia)中のX-としては、上述した対アニオン等が挙げられる。
【0094】
一般式(Ia)で表される化合物である特定第4級ホスホニウム塩としては、テトラエチルホスホニウムブロミド、テトラエチルホスホニウムヘキサフルオロホスファート、テトラエチルホスホニウムテトラフルオロボラート、トリブチルメチルホスホニウムヨージド、トリブチル(シアノメチル)ホスホニウムクロリド、テトラキス(ヒドロキシメチル)ホスホニウムクロリド、テトラキス(ヒドロキシメチル)ホスホニウムスルファート、テトラブチルホスホニウムヒドロキシド、テトラブチルホスホニウムクロリド、テトラブチルホスホニウムブロミド、テトラブチルホスホニウムテトラフルオロボラート、テトラブチルホスホニウムヘキサフルオロホスファート、テトラブチルホスホニウムテトラフェニルボラート、トリブチル(オクチル)ホスホニウムブロミド、テトラ-n-オクチルホスホニウムブロミド、トリブチルドデシルホスホニウムブロミド、トリヘキシル(テトラデシル)ホスホニウムクロリド、トリヘキシル(テトラデシル)ホスホニウムジシアナミド、トリブチルヘキサデシルホスホニウムブロミド、メチルトリフェニルホスホニウムクロリド、メチルトリフェニルホスホニウムブロミド、メチルトリフェニルホスホニウムヨージド、テトラフェニルホスホニウムクロリド、テトラフェニルホスホニウムブロミド、テトラフェニルホスホニウムヨージド、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボラート、テトラフェニルホスホニウムテトラ-p-トリルボラート、トリブチル(エチル)ホスホニウムジエチルホスファート、(ブロモメチル)トリフェニルホスホニウムブロミド、(クロロメチル)トリフェニルホスホニウムクロリド、(シアノメチル)トリフェニルホスホニウムクロリド、エチルトリフェニルホスホニウムクロリド、エチルトリフェニルホスホニウムブロミド、エチルトリフェニルホスホニウムヨージド、2-ジメチルアミノエチルトリフェニルホスホニウムブロミド、(1,3-ジオキソラン-2-イル)メチルトリフェニルホスホニウムブロミド、2-(1,3-ジオキサン-2-イル)エチルトリフェニルホスホニウムブロミド、2-(1,3-ジオキソラン-2-イル)エチルトリフェニルホスホニウムブロミド、イソプロピルトリフェニルホスホニウムヨージド、アリルトリフェニルホスホニウムクロリド、アリルトリフェニルホスホニウムブロミド、ブチルトリフェニルホスホニウムブロミド、(ホルミルメチル)トリフェニルホスホニウムクロリド、(メトキシメチル)トリフェニルホスホニウムクロリド、トリフェニルプロピルホスホニウムブロミド、トリフェニルプロパルギルホスホニウムブロミド、アミルトリフェニルホスホニウムブロミド、アセトニルトリフェニルホスホニウムクロリド、ベンジルトリフェニルホスホニウムクロリド、ベンジルトリフェニルホスホニウムブロミド、4-エトキシベンジルトリフェニルホスホニウムブロミド、3-ブロモプロピルトリフェニルホスホニウムブロミド、シクロプロピルトリフェニルホスホニウムブロミド、ヘキシルトリフェニルホスホニウムブロミド、ヘプチルトリフェニルホスホニウムブロミド、トリフェニル(テトラデシル)ホスホニウムブロミド、(tert-ブトキシカルボニルメチル)トリフェニルホスホニウムブロミド、(4-ブロモベンジル)トリフェニルホスホニウムブロミド、シンナミルトリフェニルホスホニウムブロミド、(4-クロロベンジル)トリフェニルホスホニウムクロリド、(3-カルボキシプロピル)トリフェニルホスホニウムブロミド、(2-クロロベンジル)トリフェニルホスホニウムクロリド、メトキシカルボニルメチル(トリフェニル)ホスホニウムブロミド、エトキシカルボニルメチル(トリフェニル)ホスホニウムブロミド、(1-ナフチルメチル)トリフェニルホスホニウムクロリド、フェナシルトリフェニルホスホニウムブロミド、(4-カルボキシブチル)トリフェニルホスホニウムブロミド、(5-カルボキシペンチル)トリフェニルホスホニウムブロミド、(2,4-ジクロロベンジル)トリフェニルホスホニウムクロリド、(3,4-ジメトキシベンジル)トリフェニルホスホニウムブロミド、(2-ヒドロキシベンジル)トリフェニルホスホニウムブロミド、(4-ニトロベンジル)トリフェニルホスホニウムブロミド、テトラブチルホスホニウムベンゾトリアゾラート、[(1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)メチル]トリフェニルホスホニウムクロリド等が挙げられる。一般式(Ia)で表される化合物以外の特定第4級ホスホニウム塩としては、trans-2-ブテン-1,4-ビス(トリフェニルホスホニウムクロリド)等が挙げられる。
【0095】
特定第4級ホスホニウム塩としては、ストッパ材料(例えばポリシリコン)の研磨速度を更に抑制する観点から、テトラブチルホスホニウムブロミド、トリブチルヘキサデシルホスホニウムブロミド、トリブチル(オクチル)ホスホニウムブロミド、トリヘキシル(テトラデシル)ホスホニウムクロリド、テトラブチルホスホニウムベンゾトリアゾラート、テトラフェニルホスホニウムブロミド、及び、テトラフェニルホスホニウムクロリドからなる群より選ばれる少なくとも一種が好ましく、テトラフェニルホスホニウムブロミド、及び、テトラフェニルホスホニウムクロリドからなる群より選ばれる少なくとも一種がより好ましい。
【0096】
前記一般式(I)で表されるホスホニウムカチオン以外のホスホニウムカチオンとしては、トリクロロエチルホスホニウムカチオン等が挙げられる。
【0097】
本実施形態に係る研磨液は、特定第4級ホスホニウムカチオン以外の第4級ホスホニウムカチオン(テトラメチルホスホニウムカチオン、テトラクロロホスホニウムカチオン等)を更に含有してもよい。
【0098】
特定第4級ホスホニウムカチオンを有する特定第4級ホスホニウム塩の含有量は、研磨液の全質量を基準として下記の範囲が好ましい。特定第4級ホスホニウム塩の含有量の下限は、ストッパ材料(例えばポリシリコン)の研磨速度が更に抑制される観点から、0.001質量%以上が好ましく、0.003質量%以上がより好ましく、0.006質量%以上が更に好ましく、0.008質量%以上が特に好ましく、0.01質量%以上が極めて好ましく、0.05質量%以上が非常に好ましく、0.08質量%以上がより一層好ましく、0.1質量%以上がより好ましい。特定第4級ホスホニウム塩の含有量の上限は、除去対象材料の研磨速度に更に優れる観点から、1質量%以下が好ましく、0.5質量%以下がより好ましく、0.3質量%以下が更に好ましい。これらの観点から、特定第4級ホスホニウム塩の含有量は、0.001~1質量%が好ましく、0.001~0.5質量%がより好ましい。
【0099】
本実施形態に係る研磨液に含まれる第4級ホスホニウムカチオンにおける特定第4級ホスホニウムカチオンの含有量は、第4級ホスホニウムカチオンの全質量(特定第4級ホスホニウムカチオン、及び、特定第4級ホスホニウムカチオン以外の第4級ホスホニウムカチオンの合計量)を基準として、50質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、90質量%以上が更に好ましく、95質量%以上が特に好ましく、98質量%以上が極めて好ましい。本実施形態に係る研磨液に含まれる第4級ホスホニウム塩における特定第4級ホスホニウム塩の含有量は、第4級ホスホニウム塩の全質量(特定第4級ホスホニウム塩、及び、特定第4級ホスホニウム塩以外の第4級ホスホニウム塩の合計量)を基準として、50質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、90質量%以上が更に好ましく、95質量%以上が特に好ましく、98質量%以上が極めて好ましい。
【0100】
[その他の添加剤]
本実施形態に係る研磨液は、第4級ホスホニウムカチオンを有する化合物に該当しない他の添加剤を更に含有していてもよい。添加剤としては、水溶性高分子、pH調整剤等が挙げられる。
【0101】
「水溶性高分子」とは、25℃において水100gに対して0.1g以上溶解する高分子として定義する。水溶性高分子を用いることにより、研磨速度、平坦性、面内均一性、ストッパ材料(例えばポリシリコン)に対する除去対象材料の研磨選択性(除去対象材料の研磨速度/ストッパ材料(例えばポリシリコン)の研磨速度)等の研磨特性を調整することができる。
【0102】
水溶性高分子の具体例としては、アルギン酸、ペクチン酸、カルボキシメチルセルロース、寒天、カードラン、グアーガム等の多糖類;ポリビニルピロリドン、ポリアクロレイン等のビニル系ポリマなどが挙げられる。水溶性高分子は、一種を単独で又は二種以上を組み合わせて使用できる。
【0103】
pH調整剤を用いることにより、研磨液のpHを調整することができる。pH調整剤としては、無機酸、有機酸等の酸成分;アンモニア、水酸化ナトリウム、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)、イミダゾール、アルカノールアミン(例えばトリスヒドロキシメチルアミノメタン)、トリアジン(例えば1,3,5-トリス(ジメチルアミノプロピル)ヘキサヒドロ-1,3,5-トリアジン)等のアルカリ成分などが挙げられる。また、本実施形態に係る研磨液は、pHを安定化させるため、緩衝剤を含有してもよい。緩衝液(緩衝剤を含む液)として緩衝剤を添加してもよい。このような緩衝液としては、酢酸塩緩衝液、フタル酸塩緩衝液等が挙げられる。
【0104】
(液状媒体)
本実施形態に係る研磨液は、液状媒体を含有する。液状媒体としては、水を用いることができる。水としては、脱イオン水、超純水等が挙げられる。液状媒体の含有量は、他の構成成分の含有量を除いた研磨液の残部でよい。
【0105】
(研磨液の特性)
本実施形態に係る研磨液のpHの下限は、除去対象材料(例えば絶縁材料)の研磨速度を更に向上させる観点から、2.0以上が好ましく、2.5以上がより好ましく、3.0以上が更に好ましく、3.5以上が特に好ましく、4.0以上が極めて好ましい。本実施形態に係る研磨液のpHの上限は、ストッパ材料(例えばポリシリコン)の研磨抑制効果を更に向上させる観点から、12.0以下が好ましく、10.0以下がより好ましく、8.0以下が更に好ましく、8.0未満が特に好ましく、7.5以下が極めて好ましく、7.0以下が非常に好ましい。研磨液のpHは、ストッパ材料(例えばポリシリコン)に対する除去対象材料の研磨選択性を更に向上させつつ、被研磨面におけるディッシングの進行及び研磨傷の発生が抑制される観点から、2.0~12.0が好ましい。また、研磨液のpHは、研磨液の保存安定性及びストッパ材料(例えばポリシリコン)の研磨抑制効果に更に優れる観点から、3.0~8.0がより好ましい。研磨液のpHは、液温25℃におけるpHと定義する。
【0106】
本実施形態に係る研磨液のpHは、pHメータ(例えば、東亜ディーケーケー株式会社製の型番:PHL-40)で測定できる。具体的には例えば、フタル酸塩pH緩衝液(pH:4.01)及び中性リン酸塩pH緩衝液(pH:6.86)を標準緩衝液として用いてpHメータを2点校正した後、pHメータの電極を研磨液に入れ、2min以上経過して安定した後の値を測定する。このとき、標準緩衝液及び研磨液の液温は共に25℃とする。
【0107】
本実施形態に係る研磨液は、砥粒と、特定第4級ホスホニウムカチオンと、液状媒体とを少なくとも含む一液式研磨液として保存されてもよく、複数液式(例えば二液式)の研磨液セットとして、研磨液の構成成分が複数の液に分けて保存されてもよい。本実施形態に係る研磨液は、例えば、研磨液セットとして、スラリ(第1の液)と添加液(第2の液)とを混合して前記研磨液となるように前記研磨液の構成成分をスラリと添加液とに分けて保存されてもよい。スラリは、例えば、砥粒を少なくとも含む。添加液は、例えば、特定第4級ホスホニウムカチオンを少なくとも含む。特定第4級ホスホニウムカチオン、その他の添加剤(例えば、水溶性高分子及び緩衝剤)は、スラリ及び添加液のうち添加液に含まれることが好ましい。なお、前記研磨液の構成成分は、三液以上に分けた研磨液セットとして保存してもよい。例えば、前記研磨液の構成成分は、砥粒及び液状媒体を含むスラリと、特定第4級ホスホニウムカチオン及び液状媒体を含む添加液と、その他の添加剤及び液状媒体を含む添加液とに分けて保存されてもよい。
【0108】
前記研磨液セットにおいては、研磨直前又は研磨時に、スラリ及び添加液が混合されて研磨液が作製される。また、一液式研磨液は、液状媒体の含有量を減じた研磨液用貯蔵液として保存されると共に、研磨時に液状媒体で希釈して用いられてもよい。複数液式の研磨液セットは、液状媒体の含有量を減じたスラリ用貯蔵液及び添加液用貯蔵液として保存されると共に、研磨時に液状媒体で希釈して用いられてもよい。
【0109】
<研磨方法>
本実施形態に係る研磨方法は、前記一液式研磨液を用いて被研磨面を研磨する研磨工程を備えていてもよく、前記研磨液セットにおけるスラリと添加液を混合して得られる研磨液を用いて被研磨面を研磨する研磨工程を備えていてもよい。
【0110】
被研磨面は、ストッパ材料を含んでいてよい。被研磨面は、ストッパ材料及び除去対象材料(例えば絶縁材料)を含んでいてよく、ストッパ材料と、酸化珪素及び窒化珪素からなる群より選ばれる少なくとも一種とを含んでいてよい。本実施形態に係る研磨方法は、例えば、前記一液式研磨液、又は、前記研磨液セットにおけるスラリと添加液とを混合して得られる研磨液を用いて、除去対象材料をストッパ材料に対して選択的に研磨する研磨工程を備えていてよい。「材料Aを材料Bに対して選択的に研磨する」とは、同一研磨条件において、材料Aの研磨速度が材料Bの研磨速度よりも高いことをいう。ポリシリコンに対する酸化珪素の研磨速度比は、6.0以上が好ましく、10以上がより好ましく、15以上が更に好ましい。ポリシリコンに対する窒化珪素の研磨速度比は、1.5以上が好ましく、2.0以上がより好ましく、3.0以上が更に好ましい。ポリシリコンの研磨速度は、25nm/min以下が好ましく、20nm/min以下がより好ましく、15nm/min以下が更に好ましく、10nm/min以下が特に好ましく、5nm/min以下が極めて好ましい。
【0111】
除去対象材料としては、絶縁材料(ストッパ材料を除く)等が挙げられる。絶縁材料としては、酸化珪素、窒化珪素等が挙げられる。ストッパ材料としては、ポリシリコン、アモルファスシリコン、結晶シリコン等が挙げられる。アモルファスシリコン及び結晶シリコンは、ポリシリコンと似た表面状態(濡れ性、ゼータ電位等)を示す。
【0112】
除去対象材料及びストッパ材料の作製方法としては、例えば、低圧CVD法、準常圧CVD法、プラズマCVD法等のCVD法;回転する基板に液体原料を塗布する回転塗布法などが挙げられる。
【0113】
除去対象材料及びストッパ材料のそれぞれは、単一の材料であってよく、複数の材料であってよい。複数の材料が被研磨面に露出している場合、それらを除去対象材料及びストッパ材料と見なすことができる。除去対象材料及びストッパ材料は、膜状であってよく、酸化珪素膜、窒化珪素膜、ポリシリコン膜等であってよい。
【0114】
被研磨面は、ポリシリコンを含んでいてよい。被研磨面は、ポリシリコン及び除去対象材料(例えば絶縁材料)を含んでいてよく、ポリシリコンと、酸化珪素及び窒化珪素からなる群より選ばれる少なくとも一種とを含んでいてよい。本実施形態に係る研磨方法は、例えば、前記一液式研磨液、又は、前記研磨液セットにおけるスラリと添加液とを混合して得られる研磨液を用いて、除去対象材料をポリシリコンに対して選択的に研磨する研磨工程を備えていてよい。
【0115】
本実施形態に係る研磨方法は、基体の研磨方法であってよい。基体は、例えばストッパ(ストッパ材料を含む部材)を有している。基体は、例えば、ストッパと、除去対象材料を含む部材とを有していてもよい。本実施形態では、ストッパ材料(例えばポリシリコン)を含むストッパと、絶縁材料(例えば酸化珪素)を含む部材と、を有する基体の研磨をストッパで停止することができる。本実施形態によれば、除去対象材料(例えば絶縁材料)及びストッパ材料を有する基体の研磨方法であって、上述の研磨液を用いて除去対象材料をストッパ材料に対して選択的に研磨する工程を備える研磨方法を提供することができる。本実施形態によれば、除去対象材料(例えば絶縁材料)及びストッパ材料を有する基体の研磨方法であって、上述の研磨液セットにおけるスラリと添加液とを混合して得られる研磨液を用いて除去対象材料をストッパ材料に対して選択的に研磨する工程を備える研磨方法を提供することができる。
【0116】
研磨対象である基体としては、基板等が挙げられ、例えば、除去対象材料を含む部材と、ストッパとが半導体素子製造に係る基板(例えば、STIパターン、ゲートパターン、配線パターン等が形成された半導体基板)上に形成された基板が挙げられる。
【0117】
研磨工程では、例えば、基体の被研磨面を研磨定盤の研磨パッドに押圧した状態で、前記研磨液を被研磨面と研磨パッドとの間に供給し、基体と研磨定盤とを相対的に動かして被研磨面を研磨する。研磨工程では、例えば、被研磨面における除去対象材料の少なくとも一部を研磨により除去する。
【0118】
図1は、半導体のSTI構造を形成する際における研磨工程を示す模式断面図である。
図1(a)は、研磨前の基体を示す模式断面図である。
図1(b)は、研磨途中の基体を示す模式断面図である。
図1(c)は、研磨後の基体を示す模式断面図である。
図1(a)に示すように、基体は、凹凸パターンを有する基板(例えば、シリコン基板等の半導体基板)1と、基板1の凸部上に配置されたストッパ2と、凹部を埋めるように基板1及びストッパ2上に配置された絶縁膜3と、を有する。絶縁膜3の表面には、段差Dが形成されている。
図1(b)に示すように、研磨過程では、絶縁膜3の表面において部分的に突出した不要な箇所がCMPによって優先的に除去されることにより、絶縁膜3の段差Dが解消される。このような研磨では、
図1(c)に示すようにストッパ2が露出した段階で絶縁膜3の研磨がストッパ2により停止されて、埋め込み部5を有するSTI構造が形成される。
【0119】
このように、基板上に形成された除去対象材料(例えば絶縁材料)を上述の研磨液で研磨して余分な部分を除去することによって除去対象材料の表面の凹凸を解消すると共に、ストッパが露出した時に研磨を停止させることによって除去対象材料が過剰に研磨されることを防止することにより、除去対象材料の表面全体にわたって平滑な面を得ることができる。本実施形態に係る研磨液は、ストッパ材料(例えばポリシリコン)を含む被研磨面を研磨するために使用することができる。本実施形態に係る研磨液は、酸化珪素及び窒化珪素のうち少なくとも一方を含む被研磨面を研磨するために使用することができる。
【0120】
本実施形態に係る研磨方法において、研磨装置としては、被研磨面を有する基体(例えば半導体基板)を保持可能なホルダーと、研磨パッドを貼り付け可能な研磨定盤とを有する一般的な研磨装置を使用できる。ホルダー及び研磨定盤のそれぞれには、回転数が変更可能なモータ等が取り付けてある。研磨装置としては、例えば、APPLIED MATERIALS社製の研磨装置、商品名:Reflexion;株式会社荏原製作所製の研磨装置、商品名:F-REXを使用できる。
【0121】
研磨パッドとしては、一般的な不織布、発泡体、非発泡体等が使用できる。研磨パッドの材質としては、ポリウレタン、アクリル樹脂、ポリエステル、アクリル-エステル共重合体、ポリテトラフルオロエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ4-メチルペンテン、セルロース、セルロースエステル、ポリアミド(例えば、ナイロン及びアラミド)、ポリイミド、ポリイミドアミド、ポリシロキサン共重合体、オキシラン化合物、フェノール樹脂、ポリスチレン、ポリカーボネート、エポキシ樹脂等の樹脂が使用できる。研磨パッドの材質としては、特に、研磨速度及び平坦性の観点から、発泡ポリウレタン及び非発泡ポリウレタンが好ましい。研磨パッドには、研磨液がたまるような溝加工が施されていてもよい。
【0122】
研磨条件に制限はないが、研磨定盤の回転速度(回転数)は、基体が飛び出さないように200min-1以下が好ましく、基体にかける研磨圧力(加工荷重)は、研磨傷が発生することを充分に抑制する観点から、100kPa以下が好ましい。研磨している間、ポンプ等で連続的に研磨液を研磨パッドに供給することが好ましい。この供給量に制限はないが、研磨パッドの表面が常に研磨液で覆われていることが好ましい。
【0123】
研磨終了後の基体は、流水中でよく洗浄して基体に付着した粒子を除去することが好ましい。洗浄には、純水以外に、希フッ酸、アンモニア水等の洗浄用の薬液を用いてもよく、洗浄効率を高めるためにブラシを用いてもよい。また、洗浄後は、基体に付着した水滴を、スピンドライヤ等を用いて払い落としてから基体を乾燥させることが好ましい。
【0124】
本実施形態に係る研磨液、研磨液セット及び研磨方法は、STIの形成工程、プリメタル絶縁材料、層間絶縁材料等の研磨等に使用できる。プリメタル絶縁材料としては、酸化珪素の他、例えば、リン-シリケートガラス、ボロン-リン-シリケートガラス、シリコンオキシフロリド、フッ化アモルファスカーボン等が使用できる。
【0125】
本実施形態に係る研磨液、研磨液セット及び研磨方法は、膜状の研磨対象だけでなく、ガラス、シリコン、SiC、SiGe、Ge、GaN、GaP、GaAs、サファイヤ、プラスチック等から構成される各種基板にも適用できる。
【0126】
本実施形態に係る研磨液、研磨液セット及び研磨方法は、半導体素子の製造だけでなく、TFT液晶、有機EL等の画像表示装置;フォトマスク、レンズ、プリズム、光ファイバー、単結晶シンチレータ等の光学部品;光スイッチング素子、光導波路等の光学素子;固体レーザ、青色レーザLED等の発光素子;磁気ディスク、磁気ヘッド等の磁気記憶装置の製造に用いることができる。
【実施例】
【0127】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0128】
<砥粒の準備>
(4価金属元素の水酸化物を含む砥粒)
[4価金属元素の水酸化物の合成]
350gのCe(NH4)2(NO3)650質量%水溶液(日本化学産業株式会社製、商品名:CAN50液)を7825gの純水と混合して溶液を得た。次いで、この溶液を撹拌しながら、750gのイミダゾール水溶液(10質量%水溶液、1.47mol/L)を5mL/minの混合速度で滴下して、セリウム水酸化物を含む沈殿物を得た。セリウム水酸化物の合成は、温度25℃、撹拌速度400min-1で行った。撹拌は、羽根部全長5cmの3枚羽根ピッチパドルを用いて行った。
【0129】
得られた沈殿物(セリウム水酸化物を含む沈殿物)を遠心分離(4000min-1、5分間)した後に、デカンテーションで液相を除去することによって固液分離を施した。固液分離により得られた粒子10gと、水990gと、を混合した後、超音波洗浄機を用いて粒子を水に分散させて、セリウム水酸化物を含む砥粒(以下、「セリウム水酸化物粒子」という)を含有するセリウム水酸化物スラリ(粒子の含有量:1.0質量%)を調製した。
【0130】
[砥粒の構造分析]
セリウム水酸化物スラリを適量採取し、真空乾燥して砥粒を単離した後に、純水で充分に洗浄して試料を得た。得られた試料について、FT-IR ATR法による測定を行ったところ、水酸化物イオン(OH-)に基づくピークの他に、硝酸イオン(NO3
-)に基づくピークが観測された。また、同試料について、窒素に対するXPS(N-XPS)測定を行ったところ、NH4
+に基づくピークは観測されず、硝酸イオンに基づくピークが観測された。これらの結果より、セリウム水酸化物スラリに含まれる砥粒が、セリウム元素に結合した硝酸イオンを有する粒子を少なくとも一部含むことが確認された。また、セリウム元素に結合した水酸化物イオンを有する粒子が砥粒の少なくとも一部に含まれることから、砥粒がセリウム水酸化物を含むことが確認された。これらの結果より、セリウムの水酸化物が、セリウム元素に結合した水酸化物イオンを含むことが確認された。
【0131】
[吸光度及び光透過率の測定]
セリウム水酸化物スラリを適量採取し、砥粒含有量が0.0065質量%(65ppm)となるように水で希釈して測定サンプル(水分散液)を得た。この測定サンプルを1cm角のセルに約4mL入れ、株式会社日立製作所製の分光光度計(装置名:U3310)内にセルを設置した。波長200~600nmの範囲で吸光度測定を行い、波長290nmの光に対する吸光度と、波長450~600nmの光に対する吸光度とを測定した。波長290nmの光に対する吸光度は1.192であり、波長450~600nmの光に対する吸光度は0.010未満であった。
【0132】
セリウム水酸化物スラリ(粒子の含有量:1.0質量%)を1cm角のセルに約4mL入れ、株式会社日立製作所製の分光光度計(装置名:U3310)内にセルを設置した。波長200~600nmの範囲で吸光度測定を行い、波長400nmの光に対する吸光度と、波長500nmの光に対する光透過率とを測定した。波長400nmの光に対する吸光度は2.25であり、波長500nmの光に対する光透過率は92%/cmであった。
【0133】
(セリウム酸化物を含む砥粒)
セリウム酸化物を含む砥粒(以下、「セリウム酸化物粒子」という)の水分散液(セリウム酸化物粒子の含有量:30質量%)として、Solvay社製のコロイダルセリア(商品名:Zenus(登録商標)HC60)を準備した。
【0134】
<CMP研磨液の調製>
[実施例1]
上述のセリウム水酸化物スラリ50gと、トリブチルヘキサデシルホスホニウムブロミド1質量%及び水99質量%を含有する添加液10gと、酢酸と、水とを混合することにより、セリウム水酸化物粒子を0.05質量%、トリブチルヘキサデシルホスホニウムブロミドを0.01質量%含有するCMP研磨液を1000g調製した。CMP研磨液のpHは、4.0になるように酢酸を用いて適宜調整した。
【0135】
[実施例2]
上述のセリウム水酸化物スラリ50gと、トリブチル(オクチル)ホスホニウムブロミド1質量%及び水99質量%を含有する添加液10gと、酢酸と、水とを混合することにより、セリウム水酸化物粒子を0.05質量%、トリブチル(オクチル)ホスホニウムブロミドを0.01質量%含有するCMP研磨液を1000g調製した。CMP研磨液のpHは、4.0になるように酢酸を用いて適宜調整した。
【0136】
[実施例3]
上述のセリウム水酸化物スラリ50gと、トリヘキシル(テトラデシル)ホスホニウムクロリド1質量%及び水99質量%を含有する添加液10gと、酢酸と、水とを混合することにより、セリウム水酸化物粒子を0.05質量%、トリヘキシル(テトラデシル)ホスホニウムクロリドを0.01質量%含有するCMP研磨液を1000g調製した。CMP研磨液のpHは、4.0になるように酢酸を用いて適宜調整した。
【0137】
[実施例4]
上述のセリウム水酸化物スラリ50gと、テトラブチルホスホニウムベンゾトリアゾラート1質量%及び水99質量%を含有する添加液10gと、酢酸と、水とを混合することにより、セリウム水酸化物粒子を0.05質量%、テトラブチルホスホニウムベンゾトリアゾラートを0.01質量%含有するCMP研磨液を1000g調製した。CMP研磨液のpHは、4.0になるように酢酸を用いて適宜調整した。
【0138】
[実施例5]
上述のセリウム水酸化物スラリ50gと、テトラフェニルホスホニウムブロミド1質量%及び水99質量%を含有する添加液10gと、酢酸と、水とを混合することにより、セリウム水酸化物粒子を0.05質量%、テトラフェニルホスホニウムブロミドを0.01質量%含有するCMP研磨液を1000g調製した。CMP研磨液のpHは、4.0になるように酢酸を用いて適宜調整した。
【0139】
[実施例6]
上述のセリウム水酸化物スラリ50gと、テトラフェニルホスホニウムクロリド1質量%及び水99質量%を含有する添加液10gと、酢酸と、水とを混合することにより、セリウム水酸化物粒子を0.05質量%、テトラフェニルホスホニウムクロリドを0.01質量%含有するCMP研磨液を1000g調製した。CMP研磨液のpHは、4.0になるように酢酸を用いて適宜調整した。
【0140】
[実施例7]
上述のセリウム水酸化物スラリ50gと、テトラブチルホスホニウムブロミド1質量%及び水99質量%を含有する添加液10gと、酢酸と、水とを混合することにより、セリウム水酸化物粒子を0.05質量%、テトラブチルホスホニウムブロミドを0.01質量%含有するCMP研磨液を1000g調製した。CMP研磨液のpHは、4.0になるように酢酸を用いて適宜調整した。
【0141】
[実施例8]
上述のセリウム水酸化物スラリ50gと、トリブチルヘキサデシルホスホニウムブロミド1質量%及び水99質量%を含有する添加液5gと、酢酸と、水とを混合することにより、セリウム水酸化物粒子を0.05質量%、トリブチルヘキサデシルホスホニウムブロミドを0.005質量%含有するCMP研磨液を1000g調製した。CMP研磨液のpHは、4.0になるように酢酸を用いて適宜調整した。
【0142】
[実施例9]
上述のセリウム水酸化物スラリ50gと、トリブチルヘキサデシルホスホニウムブロミド1質量%及び水99質量%を含有する添加液100gと、酢酸と、水とを混合することにより、セリウム水酸化物粒子を0.05質量%、トリブチルヘキサデシルホスホニウムブロミドを0.1質量%含有するCMP研磨液を1000g調製した。CMP研磨液のpHは、4.0になるように酢酸を用いて適宜調整した。
【0143】
[実施例10]
上述のセリウム水酸化物スラリ50gと、テトラフェニルホスホニウムブロミド1質量%及び水99質量%を含有する添加液5gと、酢酸と、水とを混合することにより、セリウム水酸化物粒子を0.05質量%、テトラフェニルホスホニウムブロミドを0.005質量%含有するCMP研磨液を1000g調製した。CMP研磨液のpHは、4.0になるように酢酸を用いて適宜調整した。
【0144】
[実施例11]
上述のセリウム水酸化物スラリ50gと、テトラフェニルホスホニウムブロミド1質量%及び水99質量%を含有する添加液100gと、酢酸と、水とを混合することにより、セリウム水酸化物粒子を0.05質量%、テトラフェニルホスホニウムブロミドを0.1質量%含有するCMP研磨液を1000g調製した。CMP研磨液のpHは、4.0になるように酢酸を用いて適宜調整した。
【0145】
[実施例12]
上述のセリウム水酸化物スラリ50gと、トリブチルヘキサデシルホスホニウムブロミド1質量%及び水99質量%を含有する添加液10gと、酢酸と、水とを混合することにより、セリウム水酸化物粒子を0.05質量%、トリブチルヘキサデシルホスホニウムブロミドを0.01質量%含有するCMP研磨液を1000g調製した。CMP研磨液のpHは、3.4になるように酢酸を用いて適宜調整した。
【0146】
[実施例13]
上述のセリウム水酸化物スラリ50gと、トリブチルヘキサデシルホスホニウムブロミド1質量%及び水99質量%を含有する添加液10gと、酢酸と、水とを混合することにより、セリウム水酸化物粒子を0.05質量%、トリブチルヘキサデシルホスホニウムブロミドを0.01質量%含有するCMP研磨液を1000g調製した。CMP研磨液のpHは、7.0になるように酢酸を用いて適宜調整した。
【0147】
[実施例14]
上述のセリウム水酸化物スラリ50gと、テトラフェニルホスホニウムブロミド1質量%及び水99質量%を含有する添加液10gと、酢酸と、水とを混合することにより、セリウム水酸化物粒子を0.05質量%、テトラフェニルホスホニウムブロミドを0.01質量%含有するCMP研磨液を1000g調製した。CMP研磨液のpHは、3.4になるように酢酸を用いて適宜調整した。
【0148】
[実施例15]
上述のセリウム水酸化物スラリ50gと、テトラフェニルホスホニウムブロミド1質量%及び水99質量%を含有する添加液10gと、酢酸と、水とを混合することにより、セリウム水酸化物粒子を0.05質量%、テトラフェニルホスホニウムブロミドを0.01質量%含有するCMP研磨液を1000g調製した。CMP研磨液のpHは、7.0になるように酢酸を用いて適宜調整した。
【0149】
[比較例1]
上述のセリウム水酸化物スラリ50gと、酢酸と、水とを混合することにより、セリウム水酸化物粒子を0.05質量%含有するCMP研磨液を1000g調製した。CMP研磨液のpHは、4.0になるように酢酸を用いて適宜調整した。
【0150】
[比較例2]
上述のセリウム水酸化物スラリ50gと、ベンジルトリメチルアンモニウムクロリド1質量%及び水99質量%を含有する添加液10gと、酢酸と、水とを混合することにより、セリウム水酸化物粒子を0.05質量%、ベンジルトリメチルアンモニウムクロリドを0.01質量%含有するCMP研磨液を1000g調製した。CMP研磨液のpHは、4.0になるように酢酸を用いて適宜調整した。
【0151】
[比較例3]
上述のセリウム水酸化物スラリ50gと、ヘキシルトリメチルアンモニウムブロミド1質量%及び水99質量%を含有する添加液10gと、酢酸と、水とを混合することにより、セリウム水酸化物粒子を0.05質量%、ヘキシルトリメチルアンモニウムブロミドを0.01質量%含有するCMP研磨液を1000g調製した。CMP研磨液のpHは、4.0になるように酢酸を用いて適宜調整した。
【0152】
[比較例4]
上述のセリウム水酸化物スラリ50gと、テトラメチルアンモニウムブロミド1質量%及び水99質量%を含有する添加液10gと、酢酸と、水とを混合することにより、セリウム水酸化物粒子を0.05質量%、テトラメチルアンモニウムブロミドを0.01質量%含有するCMP研磨液を1000g調製した。CMP研磨液のpHは、4.0になるように酢酸を用いて適宜調整した。
【0153】
[比較例5]
上述のセリウム水酸化物スラリ50gと、テトラメチルホスホニウムブロミド1質量%及び水99質量%を含有する添加液10gと、酢酸と、水とを混合することにより、セリウム水酸化物粒子を0.05質量%、テトラメチルホスホニウムブロミドを0.01質量%含有するCMP研磨液を1000g調製した。CMP研磨液のpHは、4.0になるように酢酸を用いて適宜調整した。
【0154】
[比較例6]
上述のセリウム水酸化物スラリ50gと、テトラブチルアンモニウムブロミド1質量%及び水99質量%を含有する添加液10gと、酢酸と、水とを混合することにより、セリウム水酸化物粒子を0.05質量%、テトラブチルアンモニウムブロミドを0.01質量%含有するCMP研磨液を1000g調製した。CMP研磨液のpHは、4.0になるように酢酸を用いて適宜調整した。
【0155】
[実施例16]
上述のセリウム酸化物粒子の水分散液8.33gと、トリブチルヘキサデシルホスホニウムブロミド1質量%及び水99質量%を含有する添加液10gと、酢酸と、水とを混合することにより、セリウム酸化物を0.25質量%、トリブチルヘキサデシルホスホニウムブロミドを0.01質量%含有するCMP研磨液を1000g調製した。CMP研磨液のpHは、4.5になるように酢酸を用いて適宜調整した。
【0156】
[実施例17]
上述のセリウム酸化物粒子の水分散液8.33gと、テトラフェニルホスホニウムブロミド1質量%及び水99質量%を含有する添加液10gと、酢酸と、水とを混合することにより、セリウム酸化物粒子を0.25質量%、テトラフェニルホスホニウムブロミドを0.01質量%含有するCMP研磨液を1000g調製した。CMP研磨液のpHは、4.5になるように酢酸を用いて適宜調整した。
【0157】
[比較例7]
上述のセリウム酸化物粒子の水分散液と、酢酸と、水とを混合することにより、セリウム酸化物粒子を0.25質量%含有するCMP研磨液を1000g調製した。CMP研磨液のpHは、4.5になるように酢酸を用いて適宜調整した。
【0158】
<液状特性評価>
CMP研磨液のpH、及び、砥粒の平均粒径を下記の条件で評価した。
【0159】
(pH)
測定温度:25±5℃
測定装置:東亜ディーケーケー株式会社製、型番:PHL-40
測定方法:標準緩衝液(フタル酸塩pH緩衝液、pH:4.01(25℃);中性リン酸塩pH緩衝液、pH:6.86(25℃))を用いて2点校正した後、電極をCMP研磨液に入れて、2min以上経過して安定した後のpHを前記測定装置により測定した。
【0160】
(セリウム水酸化物粒子の平均粒径)
ベックマン・コールター株式会社製、装置名:N5を用いて前記セリウム水酸化物スラリにおける砥粒(セリウム水酸化物を含む砥粒)の平均粒径を測定したところ、7nmであった。測定法は下記のとおりである。まず、1.0質量%の砥粒を含む測定サンプル(セリウム水酸化物スラリ、水分散液)を1cm角のセルに約1mL入れ、N5内にセルを設置した。N5ソフトの測定サンプル情報の屈折率を1.333、分散媒の粘度を0.887mPa・sに設定し、25℃において測定を行い、Unimodal Size Meanとして表示される値を読み取った。
【0161】
(セリウム酸化物粒子の平均粒径)
レーザ回折散乱式マイクロトラック粒度分布計(日機装株式会社製、装置名:MT-3000II)を用いて前記セリウム酸化物粒子の水分散液における砥粒(セリウム酸化物を含む砥粒)の平均粒径を測定したところ、175nmであった。測定法は下記のとおりである。溶媒として水(屈折率1.33)を循環させ、試料濃度のdv値(回折光量。マイクロトラックでの測定濃度の目安)が0.0010~0.0011の範囲になるまで前記水分散液を前記溶媒に添加した後に測定を行い、平均粒径(MV)を計測した。
【0162】
<CMP評価>
前記CMP研磨液を用いて下記研磨条件でCMP評価用ウエハを研磨した。
【0163】
(CMP研磨条件)
CMP評価用ウエハの研磨には、株式会社荏原製作所製の研磨装置(商品名:F-REX300)を用いた。基板取り付け用の吸着パッドを貼り付けたホルダーにCMP評価用ウエハをセットした。研磨装置の直径600mmの研磨定盤に多孔質ウレタン樹脂製の研磨布(ダウ・ケミカル日本株式会社製、型番IC1010)を貼り付けた。被研磨膜(酸化珪素膜、窒化珪素膜及びポリシリコン膜)が配置された面を下にして前記ホルダーを研磨定盤上に載せ、加工荷重を14.0kPa(2.4psi)に設定した。
【0164】
(CMP評価用ウエハ)
CMP評価用ウエハとして、パターンが形成されていないブランケットウエハ(Blanketウエハ)を使用した。ブランケットウエハとして、酸化珪素膜をシリコン(Si)基板(直径:300mm)上に有するウエハ、窒化珪素膜をシリコン(Si)基板(直径:300mm)上に有するウエハ、及び、ポリシリコン膜をシリコン(Si)基板(直径:300mm)上に有するウエハを用いた。
【0165】
前記研磨定盤上に前記CMP用研磨液を200mL/minの速度で滴下しながら、研磨定盤とCMP評価用ウエハとをそれぞれ100min-1、107min-1で回転させてCMP評価用ウエハを研磨した。研磨は30秒間行った。そして、PVAブラシ(ポリビニルアルコールブラシ)を使用して研磨後のウエハを純水でよく洗浄した後、乾燥させた。
【0166】
(評価)
フィルメトリクス株式会社製の光干渉式膜厚測定装置(装置名:F80)を用いて、研磨前後の被研磨膜(酸化珪素膜、窒化珪素膜及びポリシリコン膜)の膜厚を測定し、膜厚変化量の平均に基づきブランケットウエハにおける被研磨膜の研磨速度を算出した。研磨速度の単位はnm/minである。
【0167】
各測定結果を表1~表4に示す。
【0168】
【0169】
【0170】
【0171】
【0172】
表1~4に示されるように、金属水酸化物又はセリウム酸化物を含む砥粒と、リン原子に結合する炭素数2以上の炭化水素基を有する第4級ホスホニウムカチオンとを用いた実施例では、比較例と比較して、絶縁材料の研磨速度を確保しつつポリシリコンの研磨速度を抑制することができることが分かる。
【符号の説明】
【0173】
1…基板、2…ストッパ、3…絶縁膜、5…埋め込み部、D…段差。