(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-11
(45)【発行日】2022-04-19
(54)【発明の名称】研磨液、研磨液セット及び研磨方法
(51)【国際特許分類】
C09K 3/14 20060101AFI20220412BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20220412BHJP
B24B 37/00 20120101ALN20220412BHJP
【FI】
C09K3/14 550M
C09K3/14 550J
C09K3/14 550D
C09K3/14 550Z
H01L21/304 622D
B24B37/00 H
(21)【出願番号】P 2020507899
(86)(22)【出願日】2019-03-20
(86)【国際出願番号】 JP2019011867
(87)【国際公開番号】W WO2019182061
(87)【国際公開日】2019-09-26
【審査請求日】2020-09-01
(31)【優先権主張番号】PCT/JP2018/011464
(32)【優先日】2018-03-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】PCT/JP2018/028105
(32)【優先日】2018-07-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】PCT/JP2018/035480
(32)【優先日】2018-09-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】昭和電工マテリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100169454
【氏名又は名称】平野 裕之
(74)【代理人】
【識別番号】100160897
【氏名又は名称】古下 智也
(72)【発明者】
【氏名】松本 貴彬
(72)【発明者】
【氏名】岩野 友洋
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 智康
(72)【発明者】
【氏名】久木田 友美
【審査官】中野 孝一
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-137297(JP,A)
【文献】特開2016-029123(JP,A)
【文献】特表2013-540851(JP,A)
【文献】特開2012-186339(JP,A)
【文献】特表2016-538359(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K3/14
H01L21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
砥粒と、ヒドロキシ酸と、水酸基及びアミド基からなる群より選ばれる少なくとも一種を有する高分子化合物と、液状媒体と、を含有し、
前記砥粒のゼータ電位が正であり、
前記ヒドロキシ酸が、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)酪酸、2-ヒドロキシイソ酪酸、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)グリシン、及び、N-[2-ヒドロキシ-1,1-ビス(ヒドロキシメチル)エチル]グリシンからなる群より選ばれる少なくとも一種を含み、
前記高分子化合物が、水酸基を有する2個以上の同一の構造単位を有する化合物を含み、
前記高分子化合物の重量平均分子量が3000以上であ
り、
pHが8.0未満である、研磨液。
【請求項2】
砥粒と、ヒドロキシ酸と、水酸基及びアミド基からなる群より選ばれる少なくとも一種を有する高分子化合物と、液状媒体と、を含有し、
前記砥粒のゼータ電位が正であり、
前記ヒドロキシ酸が、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)酪酸、2-ヒドロキシイソ酪酸、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)グリシン、及び、N-[2-ヒドロキシ-1,1-ビス(ヒドロキシメチル)エチル]グリシンからなる群より選ばれる少なくとも一種を含み、
前記高分子化合物が、アミド基を含む側鎖を有する化合物を含み、
前記高分子化合物の重量平均分子量が3000以上であり、
pHが8.0未満である、研磨液。
【請求項3】
前記高分子化合物が、2級アミド基を含む側鎖を有する化合物を含む、請求項2に記載の研磨液。
【請求項4】
前記高分子化合物が、3級アミド基を含む側鎖を有する化合物を含む、請求項2又は3に記載の研磨液。
【請求項5】
砥粒と、ヒドロキシ酸と、水酸基及びアミド基からなる群より選ばれる少なくとも一種を有する高分子化合物と、液状媒体と、を含有し、
前記砥粒のゼータ電位が正であり、
前記ヒドロキシ酸が、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)酪酸、2-ヒドロキシイソ酪酸、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)グリシン、及び、N-[2-ヒドロキシ-1,1-ビス(ヒドロキシメチル)エチル]グリシンからなる群より選ばれる少なくとも一種を含み、
前記高分子化合物が、両末端に水酸基を含む主鎖を有する化合物を含み、
前記高分子化合物の重量平均分子量が3000以上であり、
pHが8.0未満である、研磨液。
【請求項6】
前記高分子化合物が、ポリオキシアルキレン構造を有する化合物を含む、請求項
5に記載の研磨液。
【請求項7】
前記砥粒がセリウム酸化物を含む、請求項1
~6のいずれか一項に記載の研磨液。
【請求項8】
前記砥粒が、第1の粒子と、当該第1の粒子に接触した第2の粒子と、を含み、
前記第2の粒子の粒径が前記第1の粒子の粒径よりも小さく、
前記第1の粒子がセリウム酸化物を含有し、
前記第2の粒子がセリウム化合物を含有する、請求項1
~7のいずれか一項に記載の研磨液。
【請求項9】
前記セリウム化合物がセリウム水酸化物を含む、請求項8に記載の研磨液。
【請求項10】
前記砥粒が、当該砥粒の含有量を1.0質量%に調整した水分散液を遠心加速度5.8×10
4Gで5分間遠心分離したときに、波長380nmの光に対する吸光度が0を超える液相を与える、請求項1~
9のいずれか一項に記載の研磨液。
【請求項11】
前記ヒドロキシ酸の含有量が0.01~1.0質量%である、請求項1~
10のいずれか一項に記載の研磨液。
【請求項12】
前記高分子化合物の含有量が0.01~5.0質量%である、請求項1~
11のいずれか一項に記載の研磨液。
【請求項13】
請求項1~
12のいずれか一項に記載の研磨液の構成成分が第1の液と第2の液とに分けて保存され、前記第1の液が、前記砥粒と、液状媒体と、を含み、前記第2の液が、前記ヒドロキシ酸と、前記高分子化合物と、液状媒体と、を含む、研磨液セット。
【請求項14】
請求項1~
12のいずれか一項に記載の研磨液、又は、請求項
13に記載の研磨液セットにおける前記第1の液と前記第2の液とを混合して得られる研磨液を用いて被研磨面を研磨する研磨工程を備える、研磨方法。
【請求項15】
前記被研磨面が酸化珪素を含む、請求項
14に記載の研磨方法。
【請求項16】
前記研磨工程の後に、アルカリ液を前記被研磨面に接触させる工程を更に備える、請求項
14又は
15に記載の研磨方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、研磨液、研磨液セット及び研磨方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の半導体素子の製造工程では、高密度化及び微細化のための加工技術の重要性がますます高まっている。加工技術の一つであるCMP(ケミカル・メカニカル・ポリッシング:化学機械研磨)技術は、半導体素子の製造工程において、シャロートレンチ分離(シャロー・トレンチ・アイソレーション。以下「STI」という。)の形成、プリメタル絶縁材料又は層間絶縁材料の平坦化、プラグ又は埋め込み金属配線の形成等に必須の技術となっている。
【0003】
最も多用されている研磨液としては、例えば、砥粒として、ヒュームドシリカ、コロイダルシリカ等のシリカ(酸化珪素)粒子を含むシリカ系研磨液が挙げられる。シリカ系研磨液は、汎用性が高いことが特徴であり、砥粒含有量、pH、添加剤等を適切に選択することで、絶縁材料及び導電材料を問わず幅広い種類の材料を研磨できる。
【0004】
一方で、主に酸化珪素等の絶縁材料を対象とした研磨液として、セリウム化合物粒子を砥粒として含む研磨液の需要も拡大している。例えば、セリウム酸化物粒子を砥粒として含むセリウム酸化物系研磨液は、シリカ系研磨液よりも低い砥粒含有量でも高速に酸化珪素を研磨できる(例えば、下記特許文献1及び2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平10-106994号公報
【文献】特開平08-022970号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、半導体素子の製造工程では、研磨時に発生する研磨傷が問題となっている。研磨傷を減らす方法としては、研磨時の砥粒の含有量を少なくする方法、砥粒の大きさを小さくする方法(例えば、1μm以上の粗大粒子を少なくする方法)、研磨時の荷重を下げる方法等が挙げられる。しかしながら、これらの方法では、研磨時の機械的作用が小さくなることから絶縁材料の研磨速度が低下してしまうという問題がある。
【0007】
そのため、近年では、砥粒と絶縁材料との反応性を高めて研磨速度を向上させるために、正のゼータ電位を有する砥粒(陽イオン性砥粒)が使用され始めている。同等の大きさを有する砥粒の比較において、正のゼータ電位を有する砥粒は、負のゼータ電位を有する砥粒と比較して絶縁材料の高い研磨速度を有する傾向がある。しかしながら、正のゼータ電位を有する砥粒を用いた場合、砥粒が研磨後の被研磨面に残りやすいことから洗浄性に劣るという問題がある。研磨後に被研磨面に残った砥粒は、研磨傷と同様にデバイスの歩留まりを低下させる原因の1つとなる。そのため、正のゼータ電位を有する砥粒を含有する研磨液に対しては、研磨後の被研磨面の洗浄性に優れることが求められる。
【0008】
本発明は、前記課題を解決しようとするものであり、研磨後の被研磨面の洗浄性に優れる研磨液、研磨液セット及び研磨方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一側面に係る研磨液は、砥粒と、ヒドロキシ酸と、水酸基及びアミド基からなる群より選ばれる少なくとも一種を有する高分子化合物と、液状媒体と、を含有し、前記砥粒のゼータ電位が正であり、前記高分子化合物の重量平均分子量が3000以上である。
【0010】
このような研磨液によれば、砥粒が研磨後の被研磨面に残ることを抑制することが可能であり、研磨後の被研磨面の洗浄性に優れる。このような研磨液によれば、研磨後の砥粒残りを低減させることによりデバイスの歩留まりを向上させることができる。
【0011】
本発明の他の一側面に係る研磨液セットは、上述の研磨液の構成成分が第1の液と第2の液とに分けて保存され、前記第1の液が、前記砥粒と、液状媒体と、を含み、前記第2の液が、前記ヒドロキシ酸と、前記高分子化合物と、液状媒体と、を含む。このような研磨液セットによれば、上述の研磨液と同様の効果を得ることができる。
【0012】
本発明の他の一側面に係る研磨方法は、上述の研磨液、又は、上述の研磨液セットにおける前記第1の液と前記第2の液とを混合して得られる研磨液を用いて被研磨面を研磨する研磨工程を備える。このような研磨方法によれば、上述の研磨液と同様の効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、研磨後の被研磨面の洗浄性に優れる研磨液を提供することができる。本発明によれば、前記研磨液を得るための研磨液セットを提供することができる。本発明によれば、前記研磨液又は前記研磨液セットを用いた研磨方法を提供することができる。
【0014】
本発明によれば、基体表面の平坦化工程への研磨液又は研磨液セットの使用を提供することができる。本発明によれば、STI絶縁材料、プリメタル絶縁材料又は層間絶縁材料の平坦化工程への研磨液又は研磨液セットの使用を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。但し、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0016】
<定義>
本明細書において、「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。本明細書に段階的に記載されている数値範囲において、ある段階の数値範囲の上限値又は下限値は、他の段階の数値範囲の上限値又は下限値と任意に組み合わせることができる。本明細書に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。「A又はB」とは、A及びBのどちらか一方を含んでいればよく、両方とも含んでいてもよい。本明細書に例示する材料は、特に断らない限り、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。本明細書において、組成物中の各成分の含有量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。「工程」との語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の作用が達成されれば、本用語に含まれる。
【0017】
本明細書において、「研磨液」(polishing liquid、abrasive)とは、研磨時に被研磨面に触れる組成物として定義される。「研磨液」という語句自体は、研磨液に含有される成分を何ら限定しない。後述するように、本実施形態に係る研磨液は砥粒(abrasive grain)を含有する。砥粒は、「研磨粒子」(abrasive particle)ともいわれるが、本明細書では「砥粒」という。砥粒は、一般的には固体粒子であって、研磨時に、砥粒が有する機械的作用(物理的作用)、及び、砥粒(主に砥粒の表面)の化学的作用によって、除去対象物が除去(remove)されると考えられるが、これに限定されない。
【0018】
<研磨液及び研磨液セット>
本実施形態に係る研磨液は、例えばCMP用研磨液である。本実施形態に係る研磨液は、砥粒と、ヒドロキシ酸と、水酸基(ヒドロキシル基)及びアミド基からなる群より選ばれる少なくとも一種を含む高分子化合物(以下、「高分子化合物A」という)と、液状媒体と、を含有し、前記砥粒のゼータ電位が正であり、前記高分子化合物Aの重量平均分子量が3000以上である。
【0019】
本実施形態によれば、砥粒が研磨後の被研磨面に残ることを抑制することが可能であり、研磨後の被研磨面の洗浄性(以下、場合により、単に「洗浄性」という)に優れる。本実施形態によれば、研磨後の砥粒残りを低減させることによりデバイスの歩留まりを向上させることができる。本実施形態によれば、研磨後の被研磨面から砥粒を除去するためにフッ酸等の毒物を使用することなく、アンモニア等のアルカリ液を用いて砥粒を除去することができる。このように優れた洗浄性が得られる理由としては、例えば、下記の理由が挙げられる。但し、理由は下記に限定されない。
【0020】
すなわち、水酸基及びアミド基からなる群より選ばれる少なくとも一種を含む高分子化合物Aが、正のゼータ電位を有する砥粒に接触することでゼータ電位の値が小さくなる。そして、高分子化合物Aの重量平均分子量が3000以上であると、高分子化合物Aが砥粒を覆いやすいことからゼータ電位の値が小さくなりやすい。この場合、負の電荷を有する傾向のある絶縁材料に対する砥粒の吸着性(反応性)が下がりやすい。
また、高分子化合物Aを用いることによって、洗浄工程で使用される洗浄液に対する被研磨面のぬれ性が向上する。さらに、ヒドロキシ酸を用いると、ヒドロキシ酸が砥粒に吸着することで親水性が向上することによって、砥粒と洗浄液との親和性が向上する。
以上により、本実施形態によれば、研磨後の洗浄工程で砥粒が除去されやすいことから優れた洗浄性が得られると推察される。
【0021】
また、本実施形態によれば、高分子化合物Aを用いることによって、研磨液に対する研磨パッド及び被研磨面のぬれ性が向上する。これにより、研磨液が研磨パッド及び被研磨面の間に留まりにくいことから、高分子化合物Aを用いない場合と比較して研磨終了後に残存する砥粒の量を少なくすることもできる。
【0022】
本実施形態によれば、優れた研磨速度を得つつ、優れた洗浄性を得ることができる。さらに、本実施形態によれば、研磨傷を減らす方法として、研磨時の砥粒の含有量を少なくする方法、砥粒の大きさを小さくする方法(例えば、1μm以上の粗大粒子を少なくする方法)、研磨時の荷重を下げる方法等を用いた場合であっても、研磨傷を低減すると共に優れた研磨速度を得つつ、優れた洗浄性を得ることができる。
【0023】
(砥粒)
本実施形態に係る研磨液は、研磨液中において正のゼータ電位を有する砥粒を含有する。砥粒は、絶縁材料を高い研磨速度で研磨しやすい観点から、セリウム酸化物(例えば、セリア(酸化セリウム(IV)))、シリカ、アルミナ、ジルコニア、イットリア及び4価金属元素の水酸化物からなる群より選択される少なくとも一種を含むことが好ましく、セリウム酸化物を含むことがより好ましい。砥粒は、一種を単独で又は二種以上を組み合わせて使用することができる。
【0024】
「4価金属元素の水酸化物」とは、4価の金属(M4+)と、少なくとも1つの水酸化物イオン(OH-)とを含む化合物である。4価金属元素の水酸化物は、水酸化物イオン以外の陰イオン(例えば、硝酸イオンNO3
-及び硫酸イオンSO4
2-)を含んでいてもよい。例えば、4価金属元素の水酸化物は、4価金属元素に結合した陰イオン(例えば、硝酸イオンNO3
-及び硫酸イオンSO4
2-)を含んでいてもよい。4価金属元素の水酸化物は、4価金属元素の塩(金属塩)とアルカリ源(塩基)とを反応させることにより作製できる。
【0025】
4価金属元素の水酸化物は、絶縁材料の研磨速度を向上させやすい観点から、セリウム水酸化物(4価セリウムの水酸化物)を含むことが好ましい。セリウム水酸化物は、セリウム塩とアルカリ源(塩基)とを反応させることにより作製できる。セリウム水酸化物は、セリウム塩とアルカリ液(例えばアルカリ水溶液)とを混合することにより作製されることが好ましい。これにより、粒径が極めて細かい粒子を得ることができ、優れた研磨傷の低減効果を得やすい。セリウム水酸化物は、セリウム塩溶液(例えばセリウム塩水溶液)とアルカリ液とを混合することにより得ることができる。セリウム塩としては、Ce(NO3)4、Ce(SO4)2、Ce(NH4)2(NO3)6、Ce(NH4)4(SO4)4等が挙げられる。
【0026】
セリウム水酸化物の製造条件等に応じて、4価セリウム(Ce4+)、1~3個の水酸化物イオン(OH-)及び1~3個の陰イオン(Xc-)からなるCe(OH)aXb(式中、a+b×c=4である)を含む粒子が生成すると考えられる(なお、このような粒子もセリウム水酸化物である)。Ce(OH)aXbでは、電子吸引性の陰イオン(Xc-)が作用して水酸化物イオンの反応性が向上しており、Ce(OH)aXbの存在量が増加するに伴い研磨速度が向上すると考えられる。陰イオン(Xc-)としては、例えば、NO3
-及びSO4
2-が挙げられる。セリウム水酸化物を含む粒子は、Ce(OH)aXbだけでなく、Ce(OH)4、CeO2等も含み得ると考えられる。
【0027】
セリウム水酸化物を含む粒子がCe(OH)aXbを含むことは、粒子を純水でよく洗浄した後に、FT-IR ATR法(Fourier transform Infra Red Spectrometer Attenuated Total Reflection法、フーリエ変換赤外分光光度計全反射測定法)で、陰イオン(Xc-)に該当するピークを検出する方法により確認できる。XPS法(X-ray Photoelectron Spectroscopy、X線光電子分光法)により、陰イオン(Xc-)の存在を確認することもできる。
【0028】
砥粒がセリウム酸化物を含む場合、セリウム酸化物の含有量の下限は、絶縁材料の研磨速度を更に向上させる観点から、砥粒全体(研磨液に含まれる砥粒全体。以下同様)を基準として、50質量%以上が好ましく、50質量%を超えることがより好ましく、60質量%以上が更に好ましく、70質量%以上が特に好ましく、80質量%以上が極めて好ましく、90質量%以上が非常に好ましく、95質量%以上がより一層好ましく、98質量%以上がより好ましく、99質量%以上が更に好ましい。砥粒が後述の複合粒子を含まない態様においてこれらの数値範囲が満たされていてよい。
【0029】
研磨液、又は、後述する研磨液セットにおけるスラリ中の砥粒の平均粒径の下限は、絶縁材料の研磨速度を向上させやすい観点から、16nm以上が好ましく、20nm以上がより好ましく、30nm以上が更に好ましく、40nm以上が特に好ましく、50nm以上が極めて好ましく、50nmを超えることが非常に好ましく、100nm以上がより一層好ましく、120nm以上がより好ましく、140nm以上が更に好ましい。砥粒の平均粒径の上限は、被研磨面に傷がつくことを抑制しやすい観点から、1050nm以下が好ましく、1000nm以下がより好ましく、800nm以下が更に好ましく、600nm以下が特に好ましく、500nm以下が極めて好ましく、400nm以下が非常に好ましく、300nm以下がより一層好ましく、200nm以下がより好ましく、160nm以下が更に好ましく、155nm以下が特に好ましい。これらの観点から、砥粒の平均粒径は、16~1050nmであることがより好ましく、20~1000nmであることが更に好ましい。
【0030】
平均粒径は、例えば、光回折散乱式粒度分布計(例えば、ベックマン・コールター株式会社製、商品名:N5、又は、マイクロトラック・ベル株式会社製、商品名:マイクロトラックMT3300EXII)を用いて測定することができる。
【0031】
研磨液中における砥粒のゼータ電位(表面電位)は、研磨後の被研磨面の洗浄性に優れる(砥粒が研磨後の被研磨面に残ることが抑制される)観点から、正である(ゼータ電位が0mVを超える)。砥粒のゼータ電位の下限は、優れた洗浄性が得られやすい観点から、10mV以上が好ましく、20mV以上がより好ましく、25mV以上が更に好ましく、30mV以上が特に好ましく、40mV以上が極めて好ましく、50mV以上が非常に好ましい。砥粒のゼータ電位の上限は、特に限定されないが、200mV以下が好ましい。これらの観点から、砥粒のゼータ電位は、10~200mVがより好ましい。
【0032】
砥粒のゼータ電位は、例えば、動的光散乱式ゼータ電位測定装置(例えば、ベックマン・コールター株式会社製、商品名:DelsaNano C)を用いて測定することができる。砥粒のゼータ電位は、添加剤を用いて調整できる。例えば、セリウム酸化物を含有する砥粒にモノカルボン酸(例えば酢酸)を接触させることにより、正のゼータ電位を有する砥粒を得ることができる。また、セリウム酸化物を含有する砥粒に、リン酸二水素アンモニウム、カルボキシル基を有する材料(例えばポリアクリル酸)等を接触させることにより、負のゼータ電位を有する砥粒を得ることができる。
【0033】
砥粒の含有量の下限は、絶縁材料の研磨速度を向上させやすい観点から、研磨液の全質量を基準として、0.005質量%以上が好ましく、0.005質量%を超えることがより好ましく、0.01質量%以上が更に好ましく、0.02質量%以上が特に好ましく、0.03質量%以上が極めて好ましく、0.04質量%以上が非常に好ましく、0.05質量%以上がより一層好ましく、0.07質量%以上がより好ましく、0.1質量%以上が更に好ましい。砥粒の含有量の上限は、優れた洗浄性が得られやすい観点から、研磨液の全質量を基準として、20質量%以下が好ましく、15質量%以下がより好ましく、10質量%以下が更に好ましく、5質量%以下が特に好ましく、4質量%以下が極めて好ましく、3質量%以下が非常に好ましく、1質量%以下がより一層好ましく、0.5質量%以下がより好ましく、0.3質量%以下が更に好ましく、0.2質量%以下が特に好ましい。これらの観点から、砥粒の含有量は、研磨液の全質量を基準として0.005~20質量%であることがより好ましい。
【0034】
砥粒は、互いに接触した複数の粒子から構成される複合粒子を含んでいてよい。例えば、砥粒は、第1の粒子と、当該第1の粒子に接触した第2の粒子と、を含む複合粒子を含んでいてよく、複合粒子と遊離粒子(例えば、第1の粒子と接触していない第2の粒子)とを含んでいてよい。
【0035】
砥粒は、複合粒子を含む態様として、第1の粒子と、当該第1の粒子に接触した第2の粒子と、を含み、第2の粒子の粒径が第1の粒子の粒径よりも小さく、第1の粒子がセリウム酸化物を含有し、第2の粒子がセリウム化合物を含有する態様であってよい。このような砥粒を用いることにより絶縁材料(例えば酸化珪素)の研磨速度を向上させやすい。このように絶縁材料の研磨速度が向上する理由としては、例えば、下記の理由が挙げられる。但し、理由は下記に限定されない。
【0036】
すなわち、セリウム酸化物を含有すると共に、第2の粒子よりも大きい粒径を有する第1の粒子は、第2の粒子と比較して、絶縁材料に対する機械的作用(メカニカル性)が強い。一方、セリウム化合物を含有すると共に、第1の粒子よりも小さい粒径を有する第2の粒子は、第1の粒子と比較して、絶縁材料に対する機械的作用は小さいものの、粒子全体における比表面積(単位質量当たりの表面積)が大きいため、絶縁材料に対する化学的作用(ケミカル性)が強い。このように、機械的作用が強い第1の粒子と、化学的作用が強い第2の粒子と、を併用することにより研磨速度向上の相乗効果が得られやすい。
【0037】
第2の粒子のセリウム化合物としては、セリウム水酸化物、セリウム酸化物等が挙げられる。第2の粒子のセリウム化合物としては、セリウム酸化物とは異なる化合物を用いることができる。セリウム化合物は、絶縁材料の研磨速度を向上させやすい観点から、セリウム水酸化物を含むことが好ましい。
【0038】
第2の粒子の粒径は、第1の粒子の粒径よりも小さいことが好ましい。第1の粒子及び第2の粒子の粒径の大小関係は、複合粒子のSEM画像等から判別することができる。一般的に、粒径が小さい粒子では、粒径が大きい粒子に比べて単位質量当たりの表面積が大きいことから反応活性が高い。一方、粒径が小さい粒子の機械的作用(機械的研磨力)は、粒径が大きい粒子に比べて小さい。しかしながら、本実施形態においては、第2の粒子の粒径が第1の粒子の粒径より小さい場合であっても、第1の粒子及び第2の粒子の相乗効果を発現させることが可能であり、優れた反応活性及び機械的作用を容易に両立することができる。
【0039】
第1の粒子の粒径の下限は、絶縁材料の研磨速度を向上させやすい観点から、15nm以上が好ましく、25nm以上がより好ましく、35nm以上が更に好ましく、40nm以上が特に好ましく、50nm以上が極めて好ましく、80nm以上が非常に好ましく、100nm以上がより一層好ましい。第1の粒子の粒径の上限は、優れた洗浄性が得られやすい観点、及び、被研磨面に傷がつくことが抑制されやすい観点から、1000nm以下が好ましく、800nm以下がより好ましく、600nm以下が更に好ましく、400nm以下が特に好ましく、300nm以下が極めて好ましく、200nm以下が非常に好ましく、150nm以下がより一層好ましい。これらの観点から、第1の粒子の粒径は、15~1000nmであることがより好ましい。第1の粒子の平均粒径(平均二次粒径)が上述の範囲であってもよい。
【0040】
第2の粒子の粒径の下限は、絶縁材料の研磨速度を向上させやすい観点から、1nm以上が好ましく、2nm以上がより好ましく、3nm以上が更に好ましい。第2の粒子の粒径の上限は、優れた洗浄性が得られやすい観点、及び、被研磨面に傷がつくことが抑制されやすい観点から、50nm以下が好ましく、30nm以下がより好ましく、25nm以下が更に好ましく、20nm以下が特に好ましく、15nm以下が極めて好ましく、10nm以下が非常に好ましい。これらの観点から、第2の粒子の粒径は、1~50nmであることがより好ましい。第2の粒子の平均粒径(平均二次粒径)が上述の範囲であってもよい。
【0041】
第1の粒子は、負のゼータ電位を有することができる。第2の粒子は、正のゼータ電位を有することができる。
【0042】
砥粒は、上述の複合粒子と遊離粒子とを含む態様として、当該砥粒の含有量を1.0質量%に調整した水分散液(砥粒及び水からなる混合物)を遠心加速度5.8×104Gで5分間遠心分離したときに、波長380nmの光に対する吸光度が0を超える液相(上澄み液)を与えることが好ましい。この場合、絶縁材料(例えば酸化珪素)の研磨速度を向上させやすい。
【0043】
このように研磨速度が向上する理由としては、例えば、下記の理由が挙げられる。但し、理由は下記に限定されない。
すなわち、水分散液を遠心分離したときに得られる液相における波長380nmの光に対する吸光度が0を超える場合、このような遠心分離では、複合粒子が選択的に除去されやすく、遊離粒子を固形分として含有する液相を得ることが可能であり、吸光度が0を超える場合、砥粒は、複合粒子に加えて遊離粒子を含む。遊離粒子は複合粒子と比較して粒径が小さいため、拡散速度が高く、絶縁材料の表面に優先的に吸着して当該表面を被覆する。この場合、複合粒子は、絶縁材料に直接的に作用するだけでなく、絶縁材料に吸着した遊離粒子にも作用して間接的にも絶縁材料に作用することができる(例えば、絶縁材料に吸着した遊離粒子を介して物理的作用を絶縁材料へ伝達することができる)。これにより、絶縁材料の研磨速度を向上させやすいと推察される。
【0044】
波長380nmの光に対する上述の吸光度は、下記の範囲が好ましい。前記吸光度の下限は、絶縁材料の研磨速度を更に向上させやすい観点から、0.001以上が好ましく、0.0015以上がより好ましく、0.002以上が更に好ましい。遊離粒子の含有量が多い場合には、絶縁材料に対する遊離粒子の吸着量が増加することから、絶縁材料の研磨速度を更に向上させやすいと推察される。前記吸光度の上限は、絶縁材料の研磨速度を更に向上させやすい観点から、0.5以下が好ましく、0.4以下がより好ましく、0.3以下が更に好ましく、0.25以下が特に好ましく、0.2以下が極めて好ましい。前記観点から、前記吸光度は、0を超え0.5以下であることがより好ましい。砥粒における遊離粒子の含有量を調整することにより前記吸光度を調整できる。例えば、第2の粒子が接触する第1の粒子の表面積を増加させること、第1の粒子と第2の粒子とを接触させる際に不充分な分散状態に調整すること(分散時間を減少させること、第1の粒子及び第2の粒子を含む液の撹拌における回転数を減少させること、粒子間に生じる静電反発力を弱める等)などによって前記吸光度を減少させることができる。
【0045】
本実施形態では、上述の波長380nmの光に対する吸光度が0である砥粒を用いてもよい。このような砥粒は、遠心分離によって遊離粒子を除去することにより得ることができる。
【0046】
砥粒は、絶縁材料(例えば酸化珪素)の研磨速度を更に向上させやすい観点から、当該砥粒の含有量を1.0質量%に調整した水分散液(砥粒及び水からなる混合物)を遠心加速度5.8×104Gで5分間遠心分離したときに、波長500nmの光に対する下記の範囲の光透過率の液相(上澄み液)を与えることが好ましい。前記光透過率の下限は、50%/cm以上が好ましく、60%/cm以上がより好ましく、70%/cm以上が更に好ましく、80%/cm以上が特に好ましく、90%/cm以上が極めて好ましく、92%/cm以上が非常に好ましい。光透過率の上限は100%/cmである。
【0047】
第1の粒子及び第2の粒子を含む複合粒子は、ホモジナイザー、ナノマイザー、ボールミル、ビーズミル、超音波処理機等を用いて第1の粒子と第2の粒子とを接触させること、互いに相反する電荷を有する第1の粒子と第2の粒子とを接触させること、粒子の含有量が少ない状態で第1の粒子と第2の粒子とを接触させることなどにより得ることができる。
【0048】
第1の粒子におけるセリウム酸化物の含有量の下限は、絶縁材料の研磨速度を向上させやすい観点から、第1の粒子の全体(研磨液に含まれる第1の粒子の全体。以下同様)を基準として、50質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、90質量%以上が更に好ましく、95質量%以上が特に好ましい。第1の粒子は、実質的にセリウム酸化物からなる態様(実質的に第1の粒子の100質量%がセリウム酸化物である態様)であってもよい。
【0049】
第2の粒子におけるセリウム化合物の含有量の下限は、絶縁材料の研磨速度を向上させやすい観点から、第2の粒子の全体(研磨液に含まれる第2の粒子の全体。以下同様)を基準として、50質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、90質量%以上が更に好ましく、95質量%以上が特に好ましい。第2の粒子は、実質的にセリウム化合物からなる態様(実質的に第2の粒子の100質量%がセリウム化合物である態様)であってもよい。
【0050】
研磨液に特定の波長の光を透過させた際に分光光度計によって得られる下記式の吸光度の値により第2の粒子の含有量を推定することができる。すなわち、粒子が特定の波長の光を吸収する場合、当該粒子を含む領域の光透過率が減少する。光透過率は、粒子による吸収だけでなく、散乱によっても減少するが、第2の粒子では、散乱の影響が小さい。そのため、本実施形態では、下記式によって算出される吸光度の値により第2の粒子の含有量を推定することができる。
吸光度 =-LOG10(光透過率[%]/100)
【0051】
複合粒子を含む砥粒における第1の粒子の含有量は、砥粒全体を基準として下記の範囲が好ましい。第1の粒子の含有量の下限は、絶縁材料の研磨速度を向上させやすい観点から、50質量%以上が好ましく、50質量%を超えることがより好ましく、60質量%以上が更に好ましく、70質量%以上が特に好ましく、75質量%以上が極めて好ましく、80質量%以上が非常に好ましく、85質量%以上がより一層好ましく、90質量%以上がより好ましい。第1の粒子の含有量の上限は、絶縁材料の研磨速度を向上させやすい観点から、95質量%以下が好ましく、93質量%以下がより好ましく、91質量%以下が更に好ましい。これらの観点から、第1の粒子の含有量は、50~95質量%であることがより好ましい。
【0052】
複合粒子を含む砥粒における第2の粒子の含有量は、砥粒全体を基準として下記の範囲が好ましい。第2の粒子の含有量の下限は、絶縁材料の研磨速度を向上させやすい観点から、5質量%以上が好ましく、7質量%以上がより好ましく、9質量%以上が更に好ましい。第2の粒子の含有量の上限は、絶縁材料の研磨速度を向上させやすい観点から、50質量%以下が好ましく、50質量%未満がより好ましく、40質量%以下が更に好ましく、30質量%以下が特に好ましく、25質量%以下が極めて好ましく、20質量%以下が非常に好ましく、15質量%以下がより一層好ましく、10質量%以下がより好ましい。これらの観点から、第2の粒子の含有量は、5~50質量%であることがより好ましい。
【0053】
複合粒子を含む砥粒におけるセリウム酸化物の含有量は、砥粒全体を基準として下記の範囲が好ましい。セリウム酸化物の含有量の下限は、絶縁材料の研磨速度を向上させやすい観点から、50質量%以上が好ましく、50質量%を超えることがより好ましく、60質量%以上が更に好ましく、70質量%以上が特に好ましく、75質量%以上が極めて好ましく、80質量%以上が非常に好ましく、85質量%以上がより一層好ましく、90質量%以上がより好ましい。セリウム酸化物の含有量の上限は、絶縁材料の研磨速度を向上させやすい観点から、95質量%以下が好ましく、93質量%以下がより好ましく、91質量%以下が更に好ましい。これらの観点から、セリウム酸化物の含有量は、50~95質量%であることがより好ましい。
【0054】
複合粒子を含む砥粒におけるセリウム水酸化物の含有量は、砥粒全体を基準として下記の範囲が好ましい。セリウム水酸化物の含有量の下限は、絶縁材料の研磨速度を向上させやすい観点から、5質量%以上が好ましく、7質量%以上がより好ましく、9質量%以上が更に好ましい。セリウム水酸化物の含有量の上限は、絶縁材料の研磨速度を向上させやすい観点から、50質量%以下が好ましく、50質量%未満がより好ましく、40質量%以下が更に好ましく、30質量%以下が特に好ましく、25質量%以下が極めて好ましく、20質量%以下が非常に好ましく、15質量%以下がより一層好ましく、10質量%以下がより好ましい。これらの観点から、セリウム水酸化物の含有量は、5~50質量%であることがより好ましい。
【0055】
第1の粒子の含有量は、第1の粒子及び第2の粒子の合計量を基準として下記の範囲が好ましい。第1の粒子の含有量の下限は、絶縁材料の研磨速度を向上させやすい観点から、50質量%以上が好ましく、50質量%を超えることがより好ましく、60質量%以上が更に好ましく、70質量%以上が特に好ましく、75質量%以上が極めて好ましく、80質量%以上が非常に好ましく、85質量%以上がより一層好ましく、90質量%以上がより好ましい。第1の粒子の含有量の上限は、絶縁材料の研磨速度を向上させやすい観点から、95質量%以下が好ましく、93質量%以下がより好ましく、91質量%以下が更に好ましい。これらの観点から、第1の粒子の含有量は、50~95質量%であることがより好ましい。
【0056】
第2の粒子の含有量は、第1の粒子及び第2の粒子の合計量を基準として下記の範囲が好ましい。第2の粒子の含有量の下限は、絶縁材料の研磨速度を向上させやすい観点から、5質量%以上が好ましく、7質量%以上がより好ましく、9質量%以上が更に好ましい。第2の粒子の含有量の上限は、絶縁材料の研磨速度を向上させやすい観点から、50質量%以下が好ましく、50質量%未満がより好ましく、40質量%以下が更に好ましく、30質量%以下が特に好ましく、25質量%以下が極めて好ましく、20質量%以下が非常に好ましく、15質量%以下がより一層好ましく、10質量%以下がより好ましい。これらの観点から、第2の粒子の含有量は、5~50質量%であることがより好ましい。
【0057】
研磨液における第1の粒子の含有量は、研磨液の全質量を基準として下記の範囲が好ましい。第1の粒子の含有量の下限は、絶縁材料の研磨速度を向上させやすい観点から、0.005質量%以上が好ましく、0.008質量%以上がより好ましく、0.01質量%以上が更に好ましく、0.05質量%以上が特に好ましく、0.08質量%以上が極めて好ましく、0.09質量%以上が非常に好ましい。第1の粒子の含有量の上限は、研磨液の保存安定性を高くしやすい観点から、5質量%以下が好ましく、3質量%以下がより好ましく、1質量%以下が更に好ましく、0.5質量%以下が特に好ましく、0.3質量%以下が極めて好ましく、0.2質量%以下が非常に好ましく、0.1質量%以下がより一層好ましい。これらの観点から、第1の粒子の含有量は、0.005~5質量%であることがより好ましい。
【0058】
研磨液における第2の粒子の含有量は、研磨液の全質量を基準として下記の範囲が好ましい。第2の粒子の含有量の下限は、砥粒と被研磨面との化学的な相互作用が更に向上して絶縁材料の研磨速度を向上させやすい観点から、0.005質量%以上が好ましく、0.008質量%以上がより好ましく、0.009質量%以上が更に好ましい。第2の粒子の含有量の上限は、砥粒の凝集を避けることが容易になると共に、砥粒と被研磨面との化学的な相互作用が更に良好となり、砥粒の特性を有効に活用しやすい観点から、5質量%以下が好ましく、3質量%以下がより好ましく、1質量%以下が更に好ましく、0.5質量%以下が特に好ましく、0.1質量%以下が極めて好ましく、0.05質量%以下が非常に好ましく、0.04質量%以下がより一層好ましく、0.035質量%以下がより好ましく、0.03質量%以下が更に好ましく、0.02質量%以下が特に好ましく、0.01質量%以下が極めて好ましい。これらの観点から、第2の粒子の含有量は、0.005~5質量%であることがより好ましい。
【0059】
複合粒子を含む砥粒を含有する研磨液におけるセリウム酸化物の含有量は、研磨液の全質量を基準として下記の範囲が好ましい。セリウム酸化物の含有量の下限は、絶縁材料の研磨速度を向上させやすい観点から、0.005質量%以上が好ましく、0.008質量%以上がより好ましく、0.01質量%以上が更に好ましく、0.05質量%以上が特に好ましく、0.08質量%以上が極めて好ましく、0.09質量%以上が非常に好ましい。セリウム酸化物の含有量の上限は、研磨液の保存安定性を高くしやすい観点から、5質量%以下が好ましく、3質量%以下がより好ましく、1質量%以下が更に好ましく、0.5質量%以下が特に好ましく、0.3質量%以下が極めて好ましく、0.2質量%以下が非常に好ましく、0.1質量%以下がより一層好ましい。これらの観点から、セリウム酸化物の含有量は、0.005~5質量%であることがより好ましい。
【0060】
複合粒子を含む砥粒を含有する研磨液におけるセリウム水酸化物の含有量は、研磨液の全質量を基準として下記の範囲が好ましい。セリウム水酸化物の含有量の下限は、砥粒と被研磨面との化学的な相互作用が更に向上して絶縁材料の研磨速度を向上させやすい観点から、0.005質量%以上が好ましく、0.008質量%以上がより好ましく、0.009質量%以上が更に好ましい。セリウム水酸化物の含有量の上限は、砥粒の凝集を避けることが容易になると共に、砥粒と被研磨面との化学的な相互作用が更に良好となり、砥粒の特性を有効に活用しやすい観点から、5質量%以下が好ましく、3質量%以下がより好ましく、1質量%以下が更に好ましく、0.5質量%以下が特に好ましく、0.1質量%以下が極めて好ましく、0.05質量%以下が非常に好ましく、0.04質量%以下がより一層好ましく、0.035質量%以下がより好ましく、0.03質量%以下が更に好ましく、0.02質量%以下が特に好ましく、0.01質量%以下が極めて好ましい。これらの観点から、セリウム水酸化物の含有量は、0.005~5質量%であることがより好ましい。
【0061】
(添加剤)
本実施形態に係る研磨液は、添加剤を含有する。ここで、「添加剤」とは、砥粒及び液状媒体以外に研磨液が含有する物質を指す。
【0062】
[ヒドロキシ酸]
本実施形態に係る研磨液は、ヒドロキシ酸(高分子化合物Aに該当する化合物を除く)を含有する。ヒドロキシ酸は、少なくとも1個のカルボキシル基と少なくとも1個の水酸基とを有している。「水酸基」に、カルボキシル基中の「-OH」は含まれない。「水酸基」は、アルコール性水酸基及びフェノール性水酸基のいずれであってもよい。ヒドロキシ酸は、フェノール性水酸基を有していなくてよい。
【0063】
ヒドロキシ酸は、優れた洗浄性が得られやすい観点から、1個のカルボキシル基と1~3個の水酸基(例えばアルコール性水酸基)とを有することが好ましい。ヒドロキシ酸の水酸基の数は、優れた洗浄性が得られやすい観点から、1~2個が好ましく、2個がより好ましい。ヒドロキシ酸の水酸基の数は、2~3個であってもよい。
【0064】
ヒドロキシ酸としては、グリコール酸、グリセリン酸、乳酸(例えばDL-乳酸)、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)酪酸、2-ヒドロキシイソ酪酸(別名:2-メチル乳酸)、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)グリシン、N-[2-ヒドロキシ-1,1-ビス(ヒドロキシメチル)エチル]グリシン、ビシン、トリシン、チロシン、セリン、トレオニン等が挙げられる。ヒドロキシ酸は、優れた洗浄性及び研磨速度が得られやすい観点から、乳酸(例えばDL-乳酸)、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)酪酸、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)グリシン、及び、N-[2-ヒドロキシ-1,1-ビス(ヒドロキシメチル)エチル]グリシンからなる群より選ばれる少なくとも一種を含むことが好ましく、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸及び2,2-ビス(ヒドロキシメチル)酪酸からなる群より選ばれる少なくとも一種を含むことがより好ましく、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸を含むことが更に好ましい。
【0065】
ヒドロキシ酸は、優れた洗浄性が得られやすい観点から、脂肪族ヒドロキシ酸を含むことが好ましい。ヒドロキシ酸は、窒素原子を含むヒドロキシ酸を含んでいてもよく、窒素原子を含まないヒドロキシ酸を含んでいてもよい。ヒドロキシ酸は、アミノ基を有していてよく、アミノ基を有していなくてもよい。ヒドロキシ酸は、アミノ酸を含んでいてよく、アミノ酸を含んでいなくてもよい。
【0066】
本実施形態に係る研磨液は、1個のカルボキシル基と1~3個の水酸基とを有するヒドロキシ酸以外のヒドロキシ酸を含有してよい。このようなヒドロキシ酸としては、2個以上のカルボキシル基を有するヒドロキシ酸、4個以上の水酸基を有するヒドロキシ酸等が挙げられる。具体例としては、グルクロン酸、グルコン酸、クエン酸、酒石酸等が挙げられる。
【0067】
ヒドロキシ酸の水酸基価の上限は、優れた洗浄性が得られやすい観点から、1500以下が好ましく、1300以下がより好ましく、1100以下が更に好ましく、1000以下が特に好ましく、900以下が極めて好ましい。ヒドロキシ酸の水酸基価の下限は、優れた洗浄性が得られやすい観点から、50以上が好ましく、150以上がより好ましく、250以上が更に好ましく、500以上が特に好ましく、600以上が極めて好ましく、650以上が非常に好ましい。これらの観点から、ヒドロキシ酸の水酸基価は、50~1500がより好ましい。「水酸基価」とは、当該ヒドロキシ酸に含まれる水酸基数の大小の指標となる数値であり、下記式(1)から算出されるものとする。
水酸基価=56110×水酸基数/分子量 …(1)
【0068】
ヒドロキシ酸の含有量の下限は、優れた洗浄性が得られやすい観点から、研磨液の全質量を基準として、0.001質量%以上が好ましく、0.003質量%以上がより好ましく、0.005質量%以上が更に好ましく、0.008質量%以上が特に好ましく、0.01質量%以上が極めて好ましく、0.03質量%以上が非常に好ましく、0.05質量%以上がより一層好ましく、0.08質量%以上がより好ましく、0.1質量%以上が更に好ましく、0.2質量%以上が特に好ましく、0.3質量%以上が極めて好ましく、0.4質量%以上が非常に好ましい。ヒドロキシ酸の含有量の上限は、優れた研磨速度が得られやすい観点から、研磨液の全質量を基準として、1.0質量%以下が好ましく、0.8質量%以下がより好ましく、0.5質量%以下が更に好ましい。これらの観点から、ヒドロキシ酸の含有量は、研磨液の全質量を基準として、0.001~1.0質量%がより好ましく、0.01~1.0質量%が更に好ましい。
【0069】
ヒドロキシ酸の含有量の下限は、優れた洗浄性が得られやすい観点から、砥粒100質量部に対して、10質量部以上が好ましく、20質量部以上がより好ましく、30質量部以上が更に好ましく、40質量部以上が特に好ましい。ヒドロキシ酸の含有量の上限は、優れた研磨速度が得られやすい観点から、砥粒100質量部に対して、100質量部以下が好ましく、100質量部未満がより好ましく、80質量部以下が更に好ましく、70質量部以下が特に好ましく、60質量部以下が極めて好ましく、50質量部以下が非常に好ましい。これらの観点から、ヒドロキシ酸の含有量は、砥粒100質量部に対して10~100質量部がより好ましい。
【0070】
1個のカルボキシル基と1~3個の水酸基とを有するヒドロキシ酸の含有量の下限は、優れた洗浄性が得られやすい観点から、研磨液に含まれるヒドロキシ酸の全質量を基準として、50質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、90質量%以上が更に好ましく、95質量%以上が特に好ましく、97質量%以上が極めて好ましく、99質量%以上が非常に好ましい。
【0071】
[高分子化合物A]
本実施形態に係る研磨液は、水酸基及びアミド基からなる群より選ばれる少なくとも一種を有する高分子化合物Aを含有する。高分子化合物Aとしては、水溶性高分子を用いることができる。「水溶性高分子」とは、水100gに対して0.1g以上溶解する高分子として定義する(以下同様)。
【0072】
高分子化合物Aは、優れた洗浄性が得られやすい観点から、水酸基を有する高分子化合物として、ポリオールを含むことが好ましい。ポリオールとは、分子中に2個以上の水酸基を有している化合物である。高分子化合物Aは、被研磨面に保護層を形成して研磨速度を緩やかに調整することが容易であることから、凹部の過研磨が容易に抑制され、研磨後のウエハを平坦に仕上げることが容易である観点から、水酸基を有する高分子化合物として、ポリエーテルポリオール(ポリエーテル構造を有する高分子化合物)を含んでよい。
【0073】
水酸基を有する高分子化合物Aとしては、ポリグリセリン、ポリビニルアルコール、ポリアルキレングリコール(ポリエチレングリコール等)、ポリオキシアルキレングリコール、ポリオキシアルキレンソルビトールエーテル(ポリオキシプロピレンソルビトールエーテル等)、エチレンジアミンのポリオキシアルキレン縮合物(エチレンジアミンテトラポリオキシエチレンポリオキシプロピレン等)、2,2-ビス(4-ポリオキシアルキレン-オキシフェニル)プロパン、ポリオキシアルキレングリセリルエーテル、ポリオキシアルキレンジグリセリルエーテル、ポリオキシアルキレントリメチロールプロパンエーテル、ポリオキシアルキレンペンタエリスリトールエーテル、ポリオキシアルキレンメチルグルコシドなどが挙げられる。
【0074】
アミド基を有する高分子化合物Aとしては、ポリビニルピロリドン、ポリ-N-ビニルアセトアミド等が挙げられる。高分子化合物Aは、1級アミド基、2級アミド基及び3級アミド基からなる群より選ばれる少なくとも一種を有することができる。高分子化合物Aは、優れた洗浄性及び研磨速度が得られやすい観点から、2級アミド基を有する化合物を含むことが好ましい。高分子化合物Aは、優れた洗浄性及び研磨速度が得られやすい観点から、3級アミド基を有する化合物を含むことが好ましい。
【0075】
高分子化合物Aは、ポリオキシアルキレン構造を有する化合物を含むことが好ましい。これにより、被研磨面に保護層を形成して研磨速度を緩やかに調整することが更に容易であることから、凹部の過研磨が更に容易に抑制され、研磨後のウエハを平坦に仕上げることが更に容易である。ポリオキシアルキレン構造におけるオキシアルキレン基(構造単位)の炭素数は、優れた洗浄性が得られやすい観点から、1以上が好ましく、2以上がより好ましい。ポリオキシアルキレン構造におけるオキシアルキレン基(構造単位)の炭素数は、優れた洗浄性が得られやすい観点から、5以下が好ましく、4以下がより好ましく、3以下が更に好ましい。これらの観点から、前記炭素数は、1~5が好ましい。ポリオキシアルキレン鎖は、単独重合鎖であってもよく、共重合鎖であってもよい。共重合鎖は、ブロック重合鎖であってもよく、ランダム重合鎖であってもよい。
【0076】
高分子化合物Aは、優れた洗浄性が得られやすい観点から、下記の特徴の少なくとも一つを満たしていてよい。高分子化合物Aの水酸基の数は、4個以下であってよく、3個以下であってよく、1個又は2個であってよい。高分子化合物Aは、鎖式化合物であってよい。高分子化合物Aは、水酸基及びアミド基からなる群より選ばれる少なくとも一種を有するモノマーの単独重合体を含んでよい。高分子化合物Aは、グルコースに由来する構造単位を有さなくてよい。高分子化合物Aは、水酸基を側鎖のみに有する化合物を含んでよい。高分子化合物Aは、水酸基を有する複数の構造単位を有する化合物を含んでいてよい。高分子化合物Aは、水酸基を有する2個以上の同一の構造単位を有する化合物を含んでよい。高分子化合物Aは、アミド基を有する複数の構造単位を有する化合物を含んでいてよい。高分子化合物Aは、アミド基を有する2個以上の同一の構造単位を有する化合物を含んでよい。これらの構造単位におけるアミド基は、1級アミド基、2級アミド基及び3級アミド基からなる群より選ばれる少なくとも一種であってよい。高分子化合物Aは、アミド基を含む側鎖を有する化合物を含んでよく、炭素鎖又はポリオキシアルキレン鎖を含む主鎖と、当該主鎖に結合すると共にアミド基を含む側鎖と、を有する化合物を含んでよい。高分子化合物Aは、両末端に水酸基を含む主鎖を有する化合物を含んでよく、両末端に水酸基を含む炭素鎖又はポリオキシアルキレン鎖を有する化合物を含んでよい。「主鎖」としては、高分子化合物を構成する分子鎖のうちの最も長い分子鎖を用いることができる。
【0077】
高分子化合物Aは、優れた洗浄性が得られやすい観点から、ポリビニルアルコール、ポリアルキレングリコール、ポリビニルピロリドン、及び、ポリ-N-ビニルアセトアミドからなる群より選ばれる少なくとも一種を含むことが好ましい。高分子化合物Aは、優れた洗浄性が得られやすい観点から、芳香族基を有しない高分子化合物を含むことが好ましい。
【0078】
高分子化合物Aの重量平均分子量の下限は、研磨後の被研磨面の洗浄性に優れる(砥粒が研磨後の被研磨面に残ることが抑制される)観点から、3000以上である。高分子化合物Aの重量平均分子量の下限は、優れた洗浄性が得られやすい観点から、4000以上が好ましく、5000以上がより好ましく、6000以上が更に好ましく、8000以上が特に好ましく、10000以上が極めて好ましい。高分子化合物Aの重量平均分子量の上限は、優れた洗浄性が得られやすい観点から、1000000以下が好ましく、750000以下がより好ましく、500000以下が更に好ましく、400000以下が特に好ましく、200000以下が極めて好ましく、100000以下が非常に好ましく、50000以下がより一層好ましく、30000以下がより好ましく、20000以下が更に好ましい。これらの観点から、高分子化合物Aの重量平均分子量は、3000~1000000であることがより好ましい。
【0079】
高分子化合物Aが水酸基を有する場合、高分子化合物Aの重量平均分子量の下限は、優れた洗浄性が得られやすい観点から、上述の重量平均分子量の範囲に加えて下記の範囲が好ましい。高分子化合物Aの重量平均分子量は、10000を超えることが好ましく、12000以上がより好ましく、15000以上が更に好ましく、18000以上が特に好ましく、20000以上が極めて好ましい。
【0080】
高分子化合物Aがアミド基を有する場合、高分子化合物Aの重量平均分子量の上限は、優れた洗浄性が得られやすい観点から、上述の重量平均分子量の範囲に加えて下記の範囲が好ましい。高分子化合物Aの重量平均分子量は、15000以下が好ましく、12000以下がより好ましく、10000以下が更に好ましい。
【0081】
高分子化合物Aの重量平均分子量は、例えば、標準ポリスチレンの検量線を用いてゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC)により下記の条件で測定することができる。
使用機器:日立L-6000型[株式会社日立製作所製]
カラム:ゲルパックGL-R420+ゲルパックGL-R430+ゲルパックGL-R440[日立化成株式会社製 商品名、計3本]
溶離液:テトラヒドロフラン
測定温度:40℃
流量:1.75mL/min
検出器:L-3300RI[株式会社日立製作所製]
【0082】
高分子化合物Aの含有量は、研磨液の全質量を基準として下記の範囲が好ましい。高分子化合物Aの含有量の下限は、優れた洗浄性が得られやすい観点から、0.01質量%以上が好ましく、0.03質量%以上がより好ましく、0.05質量%以上が更に好ましく、0.08質量%以上が特に好ましく、0.1質量%以上が極めて好ましい。高分子化合物Aの含有量の下限は、優れた研磨速度が得られやすい観点から、0.2質量%以上が好ましく、0.3質量%以上がより好ましく、0.4質量%以上が更に好ましく、0.5質量%以上が特に好ましい。高分子化合物Aの含有量の下限は、特に優れた洗浄性が得られやすい観点から、0.6質量%以上が好ましく、0.8質量%以上がより好ましく、1.0質量%以上が更に好ましい。高分子化合物Aの含有量の上限は、優れた洗浄性及び研磨速度が得られやすい観点から、5.0質量%以下が好ましく、3.0質量%以下がより好ましく、2.0質量%以下が更に好ましく、1.0質量%以下が特に好ましい。これらの観点から、高分子化合物Aの含有量は、0.01~5.0質量%であることがより好ましく、0.05~5.0質量%であることが更に好ましい。
【0083】
砥粒の含有量に対する高分子化合物Aの含有量の質量比(高分子化合物Aの含有量/砥粒の含有量)は、下記の範囲が好ましい。前記質量比の下限は、優れた洗浄性が得られやすい観点から、0.1以上が好ましく、0.3以上がより好ましく、0.5以上が更に好ましく、0.8以上が特に好ましく、1以上が極めて好ましい。前記質量比の下限は、優れた研磨速度が得られやすい観点から、2以上が好ましく、3以上がより好ましく、4以上が更に好ましく、5以上が特に好ましい。前記質量比の下限は、特に優れた洗浄性が得られやすい観点から、6以上が好ましく、8以上がより好ましく、10以上が更に好ましい。前記質量比の上限は、優れた洗浄性及び研磨速度が得られやすい観点から、50以下が好ましく、30以下がより好ましく、10以下が更に好ましい。これらの観点から、前記質量比は、0.1~50であることがより好ましい。
【0084】
ヒドロキシ酸の含有量に対する高分子化合物Aの含有量の質量比(高分子化合物Aの含有量/ヒドロキシ酸の含有量)は、下記の範囲が好ましい。前記質量比の下限は、優れた洗浄性が得られやすい観点から、0.01以上が好ましく、0.05以上がより好ましく、0.1以上が更に好ましく、0.2以上が特に好ましく、0.25以上が極めて好ましい。前記質量比の下限は、優れた研磨速度が得られやすい観点から、0.3以上が好ましく、0.5以上がより好ましく、1以上が更に好ましく、1.25以上が特に好ましい。前記質量比の下限は、特に優れた洗浄性が得られやすい観点から、1.5以上が好ましく、2以上がより好ましく、2.5以上が更に好ましい。前記質量比の上限は、優れた洗浄性及び研磨速度が得られやすい観点から、10以下が好ましく、5以下がより好ましく、2.5以下が更に好ましい。これらの観点から、前記質量比は、0.01~10であることがより好ましい。
【0085】
[任意の添加剤]
本実施形態に係る研磨液は、任意の添加剤(ヒドロキシ酸又は高分子化合物Aに該当する化合物を除く)を含有していてもよい。任意の添加剤としては、水溶性高分子、酸化剤(例えば過酸化水素)、分散剤(例えばリン酸系無機塩)等が挙げられる。水溶性高分子としては、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸共重合体、ポリアクリル酸塩、ポリアクリル酸共重合体塩等のポリアクリル酸系ポリマ;ポリメタクリル酸、ポリメタクリル酸塩等のポリメタクリル酸系ポリマなどが挙げられる。
【0086】
(液状媒体)
本実施形態に係る研磨液における液状媒体としては、特に制限はないが、脱イオン水、超純水等の水が好ましい。液状媒体の含有量は、他の構成成分の含有量を除いた研磨液の残部でよく、特に限定されない。
【0087】
(研磨液の特性)
本実施形態に係る研磨液のpHの下限は、優れた洗浄性が得られやすい(例えば、砥粒の正のゼータ電位の絶対値が低下することにより砥粒と絶縁材料との静電引力を低減させやすい)観点から、2.0以上が好ましく、2.5以上がより好ましく、3.0以上が更に好ましく、3.2以上が特に好ましく、3.4以上が極めて好ましく、3.5以上が非常に好ましく、4.0以上がより一層好ましい。pHの上限は、優れた洗浄性が得られやすい観点から、8.0以下が好ましく、8.0未満がより好ましく、7.5以下が更に好ましく、7.0以下が特に好ましく、6.5以下が極めて好ましく、6.0以下が非常に好ましく、5.0以下がより一層好ましい。これらの観点から、研磨液のpHは、2.0~8.0がより好ましく、2.0~7.0が更に好ましい。pHは、3.0未満であってよく、2.8以下であってよく、2.5以下であってよい。研磨液のpHは、液温25℃におけるpHと定義する。
【0088】
研磨液のpHは、無機酸、有機酸等の酸成分;アンモニア、水酸化ナトリウム、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)、イミダゾール、アルカノールアミン、ピラゾール(例えば3,5-ジメチルピラゾール)等のアルカリ成分などによって調整できる。pHを安定化させるため、緩衝剤を添加してもよい。緩衝液(緩衝剤を含む液)として緩衝剤を添加してもよい。このような緩衝液としては、酢酸塩緩衝液、フタル酸塩緩衝液等が挙げられる。
【0089】
本実施形態に係る研磨液のpHは、pHメータ(例えば、東亜ディーケーケー株式会社製の型番PHL-40)で測定することができる。具体的には例えば、フタル酸塩pH緩衝液(pH:4.01)及び中性リン酸塩pH緩衝液(pH:6.86)を標準緩衝液として用いてpHメータを2点校正した後、pHメータの電極を研磨液に入れ、2分以上経過して安定した後の値を測定する。標準緩衝液及び研磨液の液温は、共に25℃とする。
【0090】
本実施形態に係る研磨液は、砥粒と、ヒドロキシ酸と、高分子化合物Aと、液状媒体と、を少なくとも含む一液式研磨液として保存してもよく、スラリ(第1の液)と添加液(第2の液)とを混合して前記研磨液となるように前記研磨液の構成成分をスラリと添加液とに分けた複数液式(例えば二液式)の研磨液セットとして保存してもよい。すなわち、前記研磨液の構成成分は、スラリと添加液とに分けて保存されてよい。スラリは、例えば、砥粒と、液状媒体とを少なくとも含む。添加液は、例えば、ヒドロキシ酸と、高分子化合物Aと、液状媒体とを少なくとも含む。ヒドロキシ酸、高分子化合物A、任意の添加剤、及び、緩衝剤は、スラリ及び添加液のうち添加液に含まれることが好ましい。なお、前記研磨液の構成成分は、三液以上に分けた研磨液セットとして保存してもよい。
【0091】
前記研磨液セットにおいては、研磨直前又は研磨時に、スラリ及び添加液が混合されて研磨液が作製される。また、一液式研磨液は、液状媒体の含有量を減じた研磨液用貯蔵液として保存されると共に、研磨時に液状媒体で希釈して用いられてもよい。複数液式の研磨液セットは、液状媒体の含有量を減じたスラリ用貯蔵液及び添加液用貯蔵液として保存されると共に、研磨時に液状媒体で希釈して用いられてもよい。
【0092】
<研磨方法>
本実施形態に係る研磨方法(基体の研磨方法等)は、前記一液式研磨液、又は、前記研磨液セットにおけるスラリと添加液とを混合して得られる研磨液を用いて被研磨面(基体の被研磨面等)を研磨する研磨工程を備えていてよい。被研磨面は、絶縁材料を含んでいてよく、酸化珪素を含んでいてよい。絶縁材料は、負のゼータ電位を有していてよい。
【0093】
絶縁材料(例えば酸化珪素)の研磨速度の下限は、170nm/min以上が好ましく、180nm/min以上がより好ましく、200nm/min以上が更に好ましく、250nm/min以上が特に好ましく、270nm/min以上が極めて好ましい。
【0094】
本実施形態によれば、絶縁材料をストッパ材料に対して選択的に研磨する研磨工程への研磨液又は研磨液セットの使用を提供することができる。ストッパ材料としては、窒化珪素、ポリシリコン等が挙げられる。
【0095】
本実施形態に係る研磨方法は、絶縁材料及び窒化珪素を有する基体の研磨方法であってもよく、例えば、前記一液式研磨液、又は、前記研磨液セットにおけるスラリと添加液とを混合して得られる研磨液を用いて、絶縁材料を窒化珪素に対して選択的に研磨する研磨工程を備えていてもよい。この場合、基体は、例えば、絶縁材料を含む部材と、窒化珪素を含む部材とを有していてもよい。
【0096】
本実施形態に係る研磨方法は、絶縁材料及びポリシリコンを有する基体の研磨方法であってもよく、例えば、前記一液式研磨液、又は、前記研磨液セットにおけるスラリと添加液とを混合して得られる研磨液を用いて、絶縁材料をポリシリコンに対して選択的に研磨する研磨工程を備えていてもよい。この場合、基体は、例えば、絶縁材料を含む部材と、ポリシリコンを含む部材とを有していてもよい。
【0097】
本実施形態に係る研磨方法は、ストッパ材料を含む第1部材と、絶縁材料を含むと共に第1部材上に配置された第2部材と、を有する基体の研磨方法であってよい。研磨工程は、前記一液式研磨液、又は、前記研磨液セットにおけるスラリと添加液とを混合して得られる研磨液を用いて、第1部材が露出するまで第2部材を研磨する工程を有していてよい。研磨工程は、第1部材が露出した後に、前記一液式研磨液、又は、前記研磨液セットにおけるスラリと添加液とを混合して得られる研磨液を用いて、第1部材及び第2部材を研磨する工程を有していてよい。
【0098】
「材料Aを材料Bに対して選択的に研磨する」とは、同一研磨条件において、材料Aの研磨速度が材料Bの研磨速度よりも高いことをいう。より具体的には、例えば、材料Bの研磨速度に対する材料Aの研磨速度の研磨速度比が80以上で材料Aを研磨することをいう。
【0099】
研磨工程では、例えば、被研磨材料を有する基体の当該被研磨材料を研磨定盤の研磨パッド(研磨布)に押圧した状態で、前記研磨液を被研磨材料と研磨パッドとの間に供給し、基体と研磨定盤とを相対的に動かして被研磨材料の被研磨面を研磨する。研磨工程では、例えば、被研磨材料の少なくとも一部を研磨により除去する。
【0100】
研磨対象である基体としては、被研磨基板等が挙げられる。被研磨基板としては、例えば、半導体素子製造に係る基板(例えば、STIパターン、ゲートパターン、配線パターン等が形成された半導体基板)上に被研磨材料が形成された基体が挙げられる。被研磨材料としては、酸化珪素等の絶縁材料(ストッパ材料に該当する材料を除く);ポリシリコン、窒化珪素等のストッパ材料などが挙げられる。被研磨材料は、単一の材料であってもよく、複数の材料であってもよい。複数の材料が被研磨面に露出している場合、それらを被研磨材料と見なすことができる。被研磨材料は、膜状(被研磨膜)であってもよく、酸化珪素膜、ポリシリコン膜、窒化珪素膜等であってもよい。
【0101】
このような基板上に形成された被研磨材料(例えば、酸化珪素等の絶縁材料)を前記研磨液で研磨し、余分な部分を除去することによって、被研磨材料の表面の凹凸を解消し、被研磨材料の表面全体にわたって平滑な面を得ることができる。本実施形態に係る研磨液は、絶縁材料を含む被研磨面を研磨するために使用されることが好ましい。本実施形態に係る研磨液は、酸化珪素を含む被研磨面を研磨するために使用されることが好ましい。
【0102】
本実施形態では、少なくとも表面に酸化珪素を含む絶縁材料と、絶縁材料の下層に配置されたストッパ(研磨停止層)と、ストッパの下に配置された基板(半導体基板等)とを有する基体における絶縁材料を研磨することができる。ストッパを構成するストッパ材料は、絶縁材料よりも研磨速度が低い材料であり、窒化珪素、ポリシリコン等が好ましい。このような基体では、ストッパが露出したときに研磨を停止させることにより、絶縁材料が過剰に研磨されることを防止できるため、絶縁材料の研磨後の平坦性を向上させることができる。
【0103】
本実施形態に係る研磨液により研磨される被研磨材料の作製方法としては、低圧CVD法、準常圧CVD法、プラズマCVD法等のCVD法;回転する基板に液体原料を塗布する回転塗布法などが挙げられる。
【0104】
以下、基体(例えば、半導体基板上に形成された絶縁材料を有する基体)の研磨方法を一例に挙げて、本実施形態に係る研磨方法を説明する。本実施形態に係る研磨方法において、研磨装置としては、被研磨面を有する基体を保持可能なホルダーと、研磨パッドを貼り付け可能な研磨定盤とを有する一般的な研磨装置を使用できる。ホルダー及び研磨定盤のそれぞれには、回転数が変更可能なモータ等が取り付けてある。研磨装置としては、例えば、APPLIED MATERIALS社製の研磨装置:Reflexionを使用できる。
【0105】
研磨パッドとしては、一般的な不織布、発泡体、非発泡体等が使用できる。研磨パッドの材質としては、ポリウレタン、アクリル樹脂、ポリエステル、アクリル-エステル共重合体、ポリテトラフルオロエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ4-メチルペンテン、セルロース、セルロースエステル、ポリアミド(例えば、ナイロン(商標名)及びアラミド)、ポリイミド、ポリイミドアミド、ポリシロキサン共重合体、オキシラン化合物、フェノール樹脂、ポリスチレン、ポリカーボネート、エポキシ樹脂等の樹脂が使用できる。研磨パッドの材質としては、特に、研磨速度及び平坦性に更に優れる観点から、発泡ポリウレタン及び非発泡ポリウレタンからなる群より選択される少なくとも一種が好ましい。研磨パッドには、研磨液がたまるような溝加工が施されていることが好ましい。
【0106】
研磨条件に制限はないが、研磨定盤の回転速度の上限は、基体が飛び出さないように200min-1(min-1=rpm)以下が好ましく、基体にかける研磨圧力(加工荷重)の上限は、研磨傷が発生することを充分に抑制する観点から、15psi(103kPa)以下が好ましい。研磨している間、ポンプ等で連続的に研磨液を研磨パッドに供給することが好ましい。この供給量に制限はないが、研磨パッドの表面が常に研磨液で覆われていることが好ましい。
【0107】
本実施形態に係る研磨方法は、研磨工程の後に、アルカリ液(洗浄液)を被研磨面に接触させる洗浄工程を更に備えてよい。洗浄工程では、アルカリ液を被研磨面に接触させることにより被研磨面を洗浄することができる。洗浄工程では、研磨工程で被研磨面に付着した砥粒を除去することにより被研磨面を洗浄することができる。アルカリ液のアルカリ源としては、アンモニア、TMAH(水酸化テトラメチルアンモニウム)等を用いることができる。洗浄工程では、フッ酸、アンモニア-過酸化水素混合液、塩酸-過酸化水素混合液、硫酸-過酸化水素混合液等を被研磨面に接触させなくてよい。
【0108】
洗浄工程では、洗浄効率を高めるためにブラシを併用してもよい。また、洗浄後は、スピンドライヤ等を用いて、基体に付着した水滴を払い落としてから基体を乾燥させることが好ましい。
【0109】
本実施形態は、プリメタル絶縁材料の研磨にも使用できる。プリメタル絶縁材料としては、酸化珪素、リン-シリケートガラス、ボロン-リン-シリケートガラス、シリコンオキシフロリド、フッ化アモルファスカーボン等が挙げられる。
【0110】
本実施形態は、酸化珪素等の絶縁材料以外の材料にも適用できる。このような材料としては、Hf系、Ti系、Ta系酸化物等の高誘電率材料;シリコン、アモルファスシリコン、SiC、SiGe、Ge、GaN、GaP、GaAs、有機半導体等の半導体材料;GeSbTe等の相変化材料;ITO等の無機導電材料;ポリイミド系、ポリベンゾオキサゾール系、アクリル系、エポキシ系、フェノール系等のポリマ樹脂材料などが挙げられる。
【0111】
本実施形態は、膜状の研磨対象だけでなく、ガラス、シリコン、SiC、SiGe、Ge、GaN、GaP、GaAs、サファイヤ、プラスチック等から構成される各種基板にも適用できる。
【0112】
本実施形態は、半導体素子の製造だけでなく、TFT、有機EL等の画像表示装置;フォトマスク、レンズ、プリズム、光ファイバー、単結晶シンチレータ等の光学部品;光スイッチング素子、光導波路等の光学素子;固体レーザ、青色レーザLED等の発光素子;磁気ディスク、磁気ヘッド等の磁気記憶装置などの製造に用いることができる。
【実施例】
【0113】
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。但し、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
【0114】
<砥粒の作製>
(セリウム酸化物粒子の作製)
市販の炭酸セリウム水和物40kgをアルミナ製容器に入れ、830℃、空気中で2時間焼成することにより黄白色の粉末を20kg得た。この粉末の相同定をX線回折法により行い、セリウム酸化物粉末が得られたことを確認した。得られたセリウム酸化物粉末20kgを、ジェットミルを用いて乾式粉砕し、セリウム酸化物粒子を含むセリウム酸化物粉末を得た。
【0115】
(複合粒子の作製)
[セリウム酸化物スラリの準備]
前記セリウム酸化物粉末と、和光純薬工業株式会社製の商品名:リン酸二水素アンモニウム(分子量:97.99)とを混合して、セリウム酸化物粒子(第1の粒子)を5.0質量%(固形分含量)含有するセリウム酸化物スラリ(pH:7)を調製した。リン酸二水素アンモニウムの配合量は、セリウム酸化物粒子の全量を基準として1質量%に調整した。
【0116】
マイクロトラック・ベル株式会社製の商品名:マイクロトラックMT3300EXII内にセリウム酸化物スラリを適量投入し、セリウム酸化物粒子の平均粒径を測定した。表示された平均粒径値を平均粒径(平均二次粒径)として得た。セリウム酸化物スラリにおけるセリウム酸化物粒子の平均粒径は145nmであった。
【0117】
ベックマン・コールター株式会社製の商品名:DelsaNano C内に適量のセリウム酸化物スラリを投入し、25℃において測定を2回行った。表示されたゼータ電位の平均値をゼータ電位として得た。セリウム酸化物スラリにおけるセリウム酸化物粒子のゼータ電位は-55mVであった。
【0118】
[セリウム水酸化物スラリの準備]
480gのCe(NH4)2(NO3)650質量%水溶液(日本化学産業株式会社製、商品名:CAN50液)を7450gの純水と混合して溶液を得た。次いで、この溶液を撹拌しながら、750gのイミダゾール水溶液(10質量%水溶液、1.47mol/L)を5mL/minの混合速度で滴下して、セリウム水酸化物を含む沈殿物を得た。セリウム水酸化物の合成は、温度20℃、撹拌速度500min-1で行った。撹拌は、羽根部全長5cmの3枚羽根ピッチパドルを用いて行った。
【0119】
得られた沈殿物(セリウム水酸化物を含む沈殿物)を遠心分離(4000min-1、5分間)した後にデカンテーションで液相を除去することによって固液分離を施した。固液分離により得られた粒子10gと、水990gと、を混合した後、超音波洗浄機を用いて粒子を水に分散させて、セリウム水酸化物粒子(第2の粒子)を含有するセリウム水酸化物スラリ(粒子の含有量:1.0質量%)を調製した。
【0120】
ベックマン・コールター株式会社製、商品名:N5を用いてセリウム水酸化物スラリにおけるセリウム水酸化物粒子の平均粒径(平均二次粒径)を測定したところ、10nmであった。測定法は次のとおりである。まず、1.0質量%のセリウム水酸化物粒子を含む測定サンプル(セリウム水酸化物スラリ。水分散液)を1cm角のセルに約1mL入れた後、N5内にセルを設置した。N5のソフトの測定サンプル情報の屈折率を1.333、粘度を0.887mPa・sに設定し、25℃において測定を行い、Unimodal Size Meanとして表示される値を読み取った。
【0121】
ベックマン・コールター株式会社製の商品名:DelsaNano C内に適量のセリウム水酸化物スラリを投入し、25℃において測定を2回行った。表示されたゼータ電位の平均値をゼータ電位として得た。セリウム水酸化物スラリにおけるセリウム水酸化物粒子のゼータ電位は+50mVであった。
【0122】
セリウム水酸化物スラリを適量採取し、真空乾燥してセリウム水酸化物粒子を単離した後に純水で充分に洗浄して試料を得た。得られた試料について、FT-IR ATR法による測定を行ったところ、水酸化物イオン(OH-)に基づくピークの他に、硝酸イオン(NO3
-)に基づくピークが観測された。また、同試料について、窒素に対するXPS(N-XPS)測定を行ったところ、NH4
+に基づくピークは観測されず、硝酸イオンに基づくピークが観測された。これらの結果より、セリウム水酸化物粒子は、セリウム元素に結合した硝酸イオンを有する粒子を少なくとも一部含有することが確認された。また、セリウム元素に結合した水酸化物イオンを有する粒子がセリウム水酸化物粒子の少なくとも一部に含有されることから、セリウム水酸化物粒子がセリウム水酸化物を含有することが確認された。これらの結果より、セリウムの水酸化物が、セリウム元素に結合した水酸化物イオンを含むことが確認された。
【0123】
<上澄み液の吸光度及び光透過率の測定>
後述する実施例9において使用する砥粒が上澄み液において与える吸光度及び光透過率を測定した。
【0124】
2枚羽根の撹拌羽根を用いて300rpmの回転数で撹拌しながら、前記セリウム水酸化物スラリと、脱イオン水とを混合して混合液を得た。続いて、前記混合液を撹拌しながら前記セリウム酸化物スラリを前記混合液に混合した後、株式会社エスエヌディ製の超音波洗浄機(装置名:US-105)を用いて超音波を照射しながら撹拌した。これにより、セリウム酸化物粒子と、当該セリウム酸化物粒子に接触したセリウム水酸化物粒子と、を含む複合粒子に加えて、セリウム酸化物粒子に接触していないセリウム水酸化物粒子(遊離粒子)を含有する試験用スラリ(セリウム酸化物粒子の含有量:0.1質量%、セリウム水酸化物粒子の含有量:0.01質量%)を調製した。
【0125】
前記試験用スラリにおける砥粒の含有量(粒子の合計量)を0.1質量%に調整(イオン交換水で希釈)して試験液を調製した。試験液7.5gをベックマン・コールター株式会社製の遠心分離機(商品名:Optima MAX-TL)に入れ、遠心加速度5.8×104G、設定温度25℃で5分間処理して上澄み液を得た。
【0126】
前記上澄み液を1cm角の石英製セルに約4mL入れた後、セルを株式会社日立製作所製の分光光度計(装置名:U3310)内に設置した。波長200~600nmの範囲で吸光度の測定を行い、得られたチャートから波長380nmにおける吸光度の値を読み取った。吸光度は0.002であった。また、得られたチャートから波長500nmにおける光透過率の値を読み取ったところ、92%/cm以上であった。
【0127】
<CMP用研磨液の調製>
(実施例1~8、10~13及び比較例1~2)
前記セリウム酸化物粉末(セリウム酸化物粒子)と脱イオン水とを混合して混合液を得た。次に、表1又は表2に示すヒドロキシ酸(比較例2は無添加)、高分子化合物及びpH調整剤(3,5-ジメチルピラゾール)を前記混合液に混合した。そして、攪拌しながら超音波分散を行うことにより、CMP用研磨液の全質量を基準としてセリウム酸化物粒子0.1質量%、ヒドロキシ酸0.4質量%及びpH調整剤0.1質量%に加えて、表1又は表2に示す含有量の高分子化合物を含有するCMP用研磨液を得た。超音波分散は、超音波周波数400kHz、分散時間30分で行った。
【0128】
重量平均分子量4000のポリエチレングリコールとして、和光純薬工業株式会社製の商品名「ポリエチレングリコール4000」を用いた。重量平均分子量20000のポリエチレングリコールとして、和光純薬工業株式会社製の商品名「ポリエチレングリコール20000」を用いた。ポリビニルアルコールとして、和光純薬工業株式会社製の商品名「ポリビニルアルコール」を用いた。ポリ-N-ビニルアセトアミドとして、昭和電工株式会社製の商品名「ポリ-N-ビニルアセトアミド」を用いた。重量平均分子量10000のポリビニルピロリドンとして、東京化成工業株式会社製の商品名「ポリビニルピロリドン(K15)」を用いた。重量平均分子量40000のポリビニルピロリドンとして、東京化成工業株式会社製の商品名「ポリビニルピロリドン(K30)」を用いた。重量平均分子量360000のポリビニルピロリドンとして、東京化成工業株式会社製の商品名「ポリビニルピロリドン(K90)」を用いた。重量平均分子量2500のポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリセリルエーテルとして、青木油脂工業株式会社製の商品名「ブラウノン GEP-2500」を用いた。
【0129】
(実施例9)
2枚羽根の撹拌羽根を用いて300rpmの回転数で撹拌しながら、前記セリウム水酸化物スラリ200gと、脱イオン水1400gとを混合して混合液を得た。続いて、前記混合液を撹拌しながら前記セリウム酸化物スラリ400gを前記混合液に混合した後、株式会社エスエヌディ製の超音波洗浄機(装置名:US-105)を用いて超音波を照射しながら撹拌した。続いて、高分子化合物(重量平均分子量20000のポリエチレングリコール、和光純薬工業株式会社製、商品名「ポリエチレングリコール20000」)と、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸と、pH調整剤(3,5-ジメチルピラゾール)と、脱イオン水とを混合した。これにより、CMP用研磨液の全質量を基準として、砥粒0.1質量%、ヒドロキシ酸0.4質量%、高分子化合物0.1質量%及びpH調整剤0.1質量%を含有するCMP用研磨液を得た。CMP用研磨液は、砥粒として、セリウム酸化物粒子と、当該セリウム酸化物粒子に接触したセリウム水酸化物粒子と、を含む複合粒子を含有しており、セリウム酸化物粒子とセリウム水酸化物粒子との質量比は10:1(セリウム酸化物:セリウム水酸化物)であった。CMP用研磨液は、砥粒として、上述の複合粒子に加えて、セリウム酸化物粒子に接触していないセリウム水酸化物粒子(遊離粒子)を含有していた。
【0130】
<砥粒のゼータ電位測定>
ベックマン・コールター株式会社製の商品名:DelsaNano C内に適量のCMP用研磨液を投入し、25℃において測定を2回行った。表示されたゼータ電位の平均値をゼータ電位として得た。実施例及び比較例の双方において砥粒のゼータ電位は+50mVであった。
【0131】
<砥粒の平均粒径の測定>
マイクロトラック・ベル株式会社製の商品名:マイクロトラックMT3300EXII内に上述の各CMP用研磨液を適量投入し、砥粒の平均粒径の測定を行った。表示された平均粒径値を砥粒の平均粒径(平均二次粒径)として得た。実施例1~8、10~13及び比較例1~2の平均粒径は145nmであった。実施例9の平均粒径は155nmであった。
【0132】
<CMP用研磨液のpH測定>
CMP用研磨液のpHを下記の条件で測定した。結果を表1及び表2に示す。
測定温度:25℃
測定装置:東亜ディーケーケー株式会社製、型番PHL-40
測定方法:標準緩衝液(フタル酸塩pH緩衝液、pH:4.01(25℃);中性リン酸塩pH緩衝液、pH:6.86(25℃))を用いて2点校正した後、電極をCMP用研磨液に入れ、2分以上経過して安定した後のpHを前記測定装置により測定した。
【0133】
<CMP評価>
前記CMP用研磨液を用いて下記研磨条件で被研磨基板を研磨した。
研磨装置:Reflexion LK(APPLIED MATERIALS社製)
CMP用研磨液の流量:250mL/min
被研磨基板:酸化珪素膜(TEOS膜)をシリコン基板上に有する被研磨基板
研磨パッド:ローム・アンド・ハース・ジャパン株式会社製、型番IC1010
研磨圧力:3psi
回転数:被研磨基板/研磨定盤=93/87rpm
研磨時間:1min(60秒)
ウエハの洗浄:CMP処理後、超音波を印加しながら水で洗浄した。さらに、0.25質量%のアンモニア水を流しながら、ブラシを用いて45秒間洗浄した後、スピンドライヤで乾燥させた。
【0134】
(洗浄性評価)
前記条件で研磨及び洗浄した酸化珪素膜上に残っている0.15μm以上の欠陥数(残存した砥粒の数)を、欠陥測定装置(APPLIED MATERIALS社製、商品名:Complus)を用いて測定した。また、下記式より、比較例1の欠陥数に対する他の実施例の欠陥数の割合(欠陥減少率)を算出した。結果を表1及び表2に示す。
欠陥減少率[%]=[(比較例1の欠陥数)-(実施例の欠陥数)]/(比較例1の欠陥数)×100
【0135】
(研磨速度評価)
前記条件で研磨及び洗浄した酸化珪素膜の研磨速度(SiO2RR)を下記式より求めた。研磨前後における酸化珪素膜の膜厚差は、光干渉式膜厚測定装置(フィルメトリクス社製、商品名:F80)を用いて求めた。結果を表1及び表2に示す。
研磨速度=(研磨前後での酸化珪素膜の膜厚差[nm])/(研磨時間:1[min])
【0136】
【0137】