(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-11
(45)【発行日】2022-04-19
(54)【発明の名称】緩衝シート用組成物及び緩衝シート
(51)【国際特許分類】
H01L 21/60 20060101AFI20220412BHJP
【FI】
H01L21/60 311Q
(21)【出願番号】P 2021025258
(22)【出願日】2021-02-19
(62)【分割の表示】P 2019026933の分割
【原出願日】2016-08-26
【審査請求日】2021-02-19
(31)【優先権主張番号】P 2015169048
(32)【優先日】2015-08-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】昭和電工マテリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小関 裕太
(72)【発明者】
【氏名】藤本 大輔
(72)【発明者】
【氏名】山田 薫平
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 直也
(72)【発明者】
【氏名】小野関 仁
(72)【発明者】
【氏名】高橋 宏
【審査官】小池 英敏
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-179419(JP,A)
【文献】国際公開第2012/133760(WO,A1)
【文献】特表2008-547205(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/60
H01L 21/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の上に、複数個の電子部品を配置する工程と、
熱硬化性化合物を含有する熱硬化性の組成物層を有する緩衝シートを、前記複数個の電子部品の上に架け渡して配置する工程と、
前記緩衝シートの上から、加熱用部材により電子部品を加熱して前記電子部品を
前記基板に実装
する工程と、
を有する電子部品装置の製造方法。
【請求項2】
前記加熱用部材による加熱温度が、230℃以上である、請求項1に記載の電子部品装置の製造方法。
【請求項3】
前記加熱用部材による加熱温度が、320℃以下である、請求項1又は請求項2に記載の電子部品装置の製造方法。
【請求項4】
前記電子部品がバンプを有し、前記実装では、電子部品と基板とがバンプを介して接合される請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の電子部品装置の製造方法。
【請求項5】
前記実装が、フリップチップ実装である、請求項4に記載の電子部品装置の製造方法。
【請求項6】
前記バンプが、無鉛はんだ材を含む、請求項4又は請求項5に記載の電子部品装置の製造方法。
【請求項7】
前記バンプ間の平均距離が、200μm以下である、請求項4~請求項6のいずれか1項に記載の電子部品装置の製造方法。
【請求項8】
前記電子部品と前記基板との間の平均距離が、50μm以下である、請求項1~請求項7のいずれか1項に記載の電子部品装置の製造方法。
【請求項9】
前記基板の上に電子部品を配置する工程の前に、前記電子部品における前記基板と対向する面及び前記基板における前記電子部品と対向する面からなる群より選択される少なくとも一方に、アンダーフィル材を付与する付与工程をさらに有する、請求項1~請求項8のいずれか1項に記載の電子部品装置の製造方法。
【請求項10】
前記アンダーフィル材を、スクリーン印刷法又はディスペンサーを用いる方法で付与する、請求項9に記載の電子部品装置の製造方法。
【請求項11】
前記アンダーフィル材が、フィルム状である、請求項9に記載の電子部品装置の製造方法。
【請求項12】
前記緩衝シートが、片面又は両面に支持体を有する、請求項
1~請求項11のいずれか1項に記載の電子部品装置の製造方法。
【請求項13】
前記組成物層の平均厚みが20μm以上である、請求項
1~請求項12のいずれか1項に記載の電子部品装置の製造方法。
【請求項14】
基板の上に、複数個の電子部品を配置する工程と、
熱硬化性化合物を含有する熱硬化性の組成物層を有する緩衝シートを、前記複数個の電子部品の上に架け渡して配置する工程と、
前記緩衝シートの上から、加熱用部材により電子部品を加熱して前記電子部品を
前記基板に実装
する工程と、
を有する緩衝シートの使用方法。
【請求項15】
前記加熱用部材による加熱温度が、230℃以上である、請求項14に記載の緩衝シートの使用方法。
【請求項16】
前記加熱用部材による加熱温度が、320℃以下である、請求項14又は請求項15に記載の緩衝シートの使用方法。
【請求項17】
前記電子部品がバンプを有し、前記実装では、電子部品と基板とがバンプを介して接合される請求項14~請求項16のいずれか1項に記載の緩衝シートの使用方法。
【請求項18】
前記実装が、フリップチップ実装である、請求項17に記載の緩衝シートの使用方法。
【請求項19】
前記バンプが、無鉛はんだ材を含む、請求項17又は請求項18に記載の緩衝シートの使用方法。
【請求項20】
前記バンプ間の平均距離が、200μm以下である、請求項17~請求項19のいずれか1項に記載の緩衝シートの使用方法。
【請求項21】
前記電子部品と前記基板との間の平均距離が、50μm以下である、請求項14~請求項20のいずれか1項に記載の緩衝シートの使用方法。
【請求項22】
前記基板の上に電子部品を配置する工程の前に、前記電子部品における前記基板と対向する面及び前記基板における前記電子部品と対向する面からなる群より選択される少なくとも一方に、アンダーフィル材を付与する付与工程をさらに有する、請求項14~請求項21のいずれか1項に記載の緩衝シートの使用方法。
【請求項23】
前記アンダーフィル材を、スクリーン印刷法又はディスペンサーを用いる方法で付与する、請求項22に記載の緩衝シートの使用方法。
【請求項24】
前記アンダーフィル材が、フィルム状である、請求項22に記載の緩衝シートの使用方法。
【請求項25】
前記緩衝シートが、片面又は両面に支持体を有する
、請求項
14~請求項24のいずれか1項に記載の緩衝シートの使用方法。
【請求項26】
前記組成物層の平均厚みが20μm以上である、請求項
14~請求項25のいずれか1項に記載の緩衝シートの使用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、緩衝シート用組成物及び緩衝シートに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体素子等の電子部品は、外部環境から保護して各種信頼性を確保し、基板への実装を容易にするため、一般にパッケージに内蔵される。パッケージには種々の形態があり、一般には低圧トランスファ成形法で封止したパッケージが広く用いられている。このパッケージは、金属製リードフレームに形成されたタブに電子部品を固着し、電子部品表面の電極とインナーリードとを金ワイヤで電気的に接続し、電子部品、金ワイヤ、及びリードフレームの一部をエポキシ樹脂組成物で封止して製造される。
【0003】
このような樹脂封止型のパッケージは、電子部品のサイズに比べてパッケージの外形が大きい。そのため、高密度実装の観点から、パッケージ形態はピン挿入型から表面実装型へと移行しつつあり、小型化及び薄型化が積極的に進められている。しかし、金属製リードフレームに電子部品を搭載し、ワイヤボンディングしたものを樹脂で封止する構造を採用する以上、実装効率を高めるには限界がある。
【0004】
そこで、近年は、パッケージ用基板に電子部品を搭載する方法として、実装効率のほか電気特性及び多ピン化対応に優れるフリップチップ実装の採用が増えている。フリップチップ実装は、表面にバンプを形成したベアチップを、バンプを介して基板にフェイスダウンで実装するものである。
【0005】
例えば、COB(Chip on Board)、ハイブリッドIC(Integrated Circuit)、モジュール、カード等の分野では、一部の電子部品を高密度実装するため、フリップチップ実装が採用されている。最近では、電子部品の高集積化、高機能化、多ピン化、システム化、高速化、低コスト化等に対応するため、CSP(Chip Scale Package)と称される種々の小型パッケージが開発されており、フリップチップ実装が採用されている。端子がエリアアレイ状に配置された最近の表面実装型パッケージにおいても、フリップチップ実装が採用されている。
【0006】
ところで、フリップチップ実装を行う場合、電子部品と基板とはそれぞれ熱膨張係数が異なり、加熱により接合部に熱応力が発生するため、接続信頼性の確保が重要な課題である。また、ベアチップは回路形成面が充分に保護されていないため、水分及びイオン性不純物が浸入しやすく、耐湿信頼性の確保も重要な課題である。これらの課題への対策として、電子部品と基板との間隙にアンダーフィル材を介在させ、加熱等により硬化させて接合部の補強及び素子の保護を図ることが通常行われている。
【0007】
電子部品と基板との間隙にアンダーフィル材を介在させる方法には、後入れ型、先付与型等の種々の方式がある。中でも、CSPの小型化及び薄肉化に伴い、電子部品と基板との接合と、接合部の補強とを目的とした、先付与型のアンダーフィル材を用いた方法が注目を集めている(例えば、特許文献1参照)。
【0008】
先付与型のアンダーフィル材を用いた実装方式としては、TCB(Thermal Compression Bonding)プロセスが知られている。現在、TCBプロセスにおいては、先付与したアンダーフィル材が実装時に染み出し、ヘッド(加熱用部材)が汚染されるのを防ぐ目的から、熱可塑性の防汚シートが用いられることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
前述の先付与型のアンダーフィル材を用いた実装方式では、通常、各電子部品を個別に基板に実装する方式がとられている。そのため、生産性が低く、製造にかかるコストが増加してしまう問題がある。そこで近年では、ヘッドの多段化及び大型化により、複数の電子部品を一括して基板に実装することが検討されている。
【0011】
複数の電子部品を一括して基板に実装する際には、ヘッドの歪み、基材の反り等に起因し、ヘッドとの接触状態が電子部品間でばらついてしまい、実装時の荷重が不均一になることが課題となる。荷重の不均一さが及ぼす影響としては、下記のことが考えられる。まず、荷重の不均一さによって、電子部品間で荷重に差異が生じることが考えられる。この場合、一部の電子部品に充分な荷重がかからず、基板に接合できない可能性があり、また、過荷重の生じた箇所では電子部品が破損する懸念がある。また、荷重の不均一さによって、電子部品の位置が面方向でずれることが考えられる。電子部品のバンプが基板上のパッドから大きくずれた場合には、所望する接続部位にバンプが配置されず、導通がとれなくなる可能性がある。
【0012】
前述したように、TCBプロセスにおいては、防汚シートとして熱可塑性のフィルムが用いられることがある。しかし、複数の電子部品を一括して基板に実装する際に熱可塑性の防汚シートを用いたとしても、荷重の不均一さを低減することは困難であった。
【0013】
本発明は、かかる状況に鑑みなされたものであり、電子部品と基板との位置ずれを抑制することが可能であり、且つ、複数個の電子部品装置を一括して製造する際に好適に用いられる緩衝シート、及びその緩衝シートの製造に用いられる緩衝シート用組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するための具体的な手段には、以下の実施態様が含まれる。
<1> 熱硬化性化合物を含有し、
加熱用部材により電子部品を加熱して前記電子部品を基板に実装する際に、前記加熱用部材と前記電子部品との間に介在される緩衝シートを製造するために用いられる緩衝シート用組成物。
【0015】
<2> 更に重合開始剤を含有する、<1>に記載の緩衝シート用組成物。
【0016】
<3> 更に硬化剤を含有する、<1>又は<2>に記載の緩衝シート用組成物。
【0017】
<4> 更に溶剤を含有する、<1>~<3>のいずれか1項に記載の緩衝シート用組成物。
【0018】
<5> <1>~<4>のいずれか1項に記載の緩衝シート用組成物をシート状に成形した熱硬化性の組成物層を有する緩衝シート。
【0019】
<6> 片面又は両面に支持体を有する<5>に記載の緩衝シート。
【0020】
<7> 前記組成物層の平均厚みが20μm以上である、<5>又は<6>に記載の緩衝シート。
【発明の効果】
【0021】
本開示によれば、電子部品と基板との位置ずれを抑制することが可能であり、且つ、複数個の電子部品装置を一括して製造する際に好適に用いられる緩衝シート、及びその緩衝シートの製造に用いられる緩衝シート用組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1A】本実施形態の電子部品装置の製造方法の製造工程を示す概略図である。
【
図1B】本実施形態の電子部品装置の製造方法の製造工程を示す概略図である。
【
図1C】本実施形態の電子部品装置の製造方法の製造工程を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態について説明する。但し、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。以下の実施形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合を除き、必須ではない。数値及びその範囲についても同様であり、本発明を制限するものではない。
【0024】
本明細書において「~」を用いて示された数値範囲には、「~」の前後に記載される数値がそれぞれ最小値及び最大値として含まれる。
本明細書中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本明細書中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本明細書において組成物中の各成分の含有率又は含有量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数種存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の物質の合計の含有率又は含有量を意味する。
本明細書において組成物中の各成分の粒径は、組成物中に各成分に該当する粒子が複数種存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の粒子の混合物についての値を意味する。
本明細書において「層」との語には、当該層が存在する領域を観察したときに、当該領域の全体に形成されている場合に加え、当該領域の一部にのみ形成されている場合も含まれる。
本明細書において「平均厚み」、「平均距離」、及び「平均幅」とは、任意に選択した3点での測定値の算術平均値を意味する。
本明細書において「工程」との語には、他の工程から独立した工程に加え、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の目的が達成されれば、当該工程も含まれる。
【0025】
<緩衝シート用組成物>
本実施形態の緩衝シート用組成物は、熱硬化性化合物を含有し、加熱用部材により電子部品を加熱して電子部品を基板に実装する際に、加熱用部材と前記電子部品との間に介在される緩衝シートを製造するために用いられる。緩衝シート用組成物は、重合開始剤、硬化剤、熱可塑性樹脂、無機充填材、硬化促進剤、溶剤等の他の成分を更に含有していてもよい。
【0026】
加熱用部材により電子部品を加熱して電子部品を基板に実装する際に、加熱用部材と電子部品との間に、本実施形態の緩衝シート用組成物により製造される緩衝シートを介在させることで、電子部品と基板との位置ずれを抑制し、且つ、複数個の電子部品装置を一括して製造することが可能となる。この理由は、例えば、以下のように考えることができる。
加熱用部材と電子部品との間に緩衝シートを介在させることで、緩衝シートが硬化する結果、加熱用部材及び電子部品の熱膨張が抑えられ、熱膨張差に起因する位置ずれが抑制されると考えられる。また、例えば、複数個の電子部品装置を一括して製造する際に、加熱用部材との接触状態が電子部品間でばらついていたとしても、加熱用部材と電子部品との間に生じ得る間隙を緩衝シートによって埋めることができる。そして、その状態で緩衝シートが硬化する結果、荷重の不均一さが低減され、位置ずれが抑制されると考えられる。
【0027】
以下、本実施形態の緩衝シート用組成物に含有される各成分について詳細に説明する。
【0028】
(熱硬化性化合物)
本実施形態の緩衝シート用組成物は、熱硬化性化合物の少なくとも1種を含有する。熱硬化性化合物としては、例えば、(メタ)アクリレート化合物、エポキシ樹脂、ビスマレイミド化合物、シアネート化合物、及びフェノール化合物が挙げられる。中でも、緩衝シート用組成物の粘度及び緩衝シート用組成物の硬化物の熱膨張率の観点から、(メタ)アクリレート化合物、エポキシ樹脂、ビスマレイミド化合物、及びフェノール化合物からなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、(メタ)アクリレート化合物、エポキシ樹脂、及びビスマレイミド化合物からなる群より選択される少なくとも1種がより好ましく、硬化速度の観点から、(メタ)アクリレート化合物及びエポキシ樹脂からなる群より選択される少なくとも1種が更に好ましい。これらの熱硬化性化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
なお、本明細書において「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート又はメタクリレートを意味する。
【0029】
緩衝シート用組成物が熱硬化性化合物として(メタ)アクリレート化合物を含有する場合、(メタ)アクリレート化合物としては特に制限されず、通常用いられる(メタ)アクリレート化合物から適宜選択することができる。(メタ)アクリレート化合物は単官能(メタ)アクリレート化合物であっても、2官能以上の(メタ)アクリレート化合物であってもよい。(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、エリスリトール型ポリ(メタ)アクリレート化合物、グリシジルエーテル型(メタ)アクリレート化合物、ビスフェノールA型ジ(メタ)アクリレート化合物、シクロデカン型ジ(メタ)アクリレート化合物、メチロール型(メタ)アクリレート化合物、ジオキサン型ジ(メタ)アクリレート化合物、ビスフェノールF型(メタ)アクリレート化合物、ジメチロール型(メタ)アクリレート化合物、イソシアヌル酸型ジ(メタ)アクリレート化合物、及びトリメチロール型トリ(メタ)アクリレート化合物が挙げられる。中でも、トリメチロール型トリ(メタ)アクリレート化合物、イソシアヌル酸型ジ(メタ)アクリレート化合物、ビスフェノールF型(メタ)アクリレート化合物、シクロデカン型ジ(メタ)アクリレート化合物、及びグリシジルエーテル型(メタ)アクリレート化合物からなる群より選択される少なくとも1種が好ましい。これらの(メタ)アクリレート化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0030】
緩衝シート用組成物が熱硬化性化合物としてエポキシ樹脂を含有する場合、エポキシ樹脂としては、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂であれば特に制限されず、電子部品用エポキシ樹脂組成物に一般的に使用されているエポキシ樹脂を用いることができる。エポキシ樹脂は固体であっても液体であってもよく、固体のエポキシ樹脂と液体のエポキシ樹脂とを併用してもよい。エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールAD、ビスフェノールS、ナフタレンジオール、水添ビスフェノールA等とエピクロルヒドリンとの反応により得られるグリシジルエーテル型エポキシ樹脂;オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂を代表とする、フェノール化合物とアルデヒド化合物とを縮合又は共重合させて得られるノボラック樹脂をエポキシ化したノボラック型エポキシ樹脂;フタル酸、ダイマー酸等の多塩基酸とエピクロルヒドリンの反応により得られるグリシジルエステル型エポキシ樹脂;p-アミノフェノール、ジアミノジフェニルメタン、イソシアヌル酸等のアミン化合物とエピクロルヒドリンとの反応により得られるグリシジルアミン型エポキシ樹脂;オレフィン結合を過酢酸等の過酸で酸化して得られる線状脂肪族エポキシ樹脂;及び脂環族エポキシ樹脂が挙げられる。これらのエポキシ樹脂は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。緩衝シート用組成物の粘度を低くする観点からは液状のエポキシ樹脂が好ましく、反応性及び耐熱性の観点からは、ビスフェノール型エポキシ樹脂及びグリシジルアミン型エポキシ樹脂が好ましい。
【0031】
緩衝シート用組成物における熱硬化性化合物の含有率は特に制限されない。充分な硬化性を得る観点からは、緩衝シート用組成物の総量中の熱硬化性化合物の含有率は、例えば、30質量%以上であることが好ましく、40質量%以上であることがより好ましい。緩衝シート用組成物の流動性の観点からは、緩衝シート用組成物の総量中の熱硬化性化合物の含有率は、例えば、70質量%以下であることが好ましく、60質量%以下であることがより好ましい。
【0032】
(重合開始剤)
緩衝シート用組成物が熱硬化性化合物として(メタ)アクリレート化合物を含有する場合、緩衝シート用組成物は、重合開始剤を含有することが好ましい。重合開始剤としては、例えば、熱重合開始剤及び光重合開始剤が挙げられる。
【0033】
緩衝シート用組成物が重合開始剤として熱重合開始剤を含有する場合、熱重合開始剤としては特に制限されず、例えば、ラジカル重合開始剤が挙げられる。ラジカル重合開始剤としては、例えば、ケトンパーオキサイド類、ハイドロパーオキサイド類、ジアシルパーオキサイド類、ジアルキルパーオキサイド類、パーオキシケタール類、アルキルパーエステル類(パーオキシエステル類)、及びパーオキシカーボネート類が挙げられる。これらのラジカル重合開始剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0034】
ケトンパーオキサイド類の具体例としては、例えば、メチルエチルケトンパーオキサイド、メチルイソブチルケトンパーオキサイド、アセチルアセトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド、及びメチルシクロヘキサノンパーオキサイドが挙げられる。
【0035】
ハイドロパーオキサイド類の具体例としては、例えば、1,1,3,3-テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、t-ブチルハイドロパーオキサイド、p-メンタンハイドロパーオキサイド、及びジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイドが挙げられる。
【0036】
ジアシルパーオキサイド類の具体例としては、例えば、ジイソブチリルパーオキサイド、ビス-3,5,5-トリメチルヘキサノールパーオキサイド、ジラウロイルパーオキサイド、ジベンゾイルパーオキサイド、m-トルイルベンゾイルパーオキサイド、及びコハク酸パーオキサイドが挙げられる。
【0037】
ジアルキルパーオキサイド類の具体例としては、例えば、ジクミルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ビス(t-ブチルペルオキシ)ヘキサン、1,3-ビス(t-ブチルペルオキシイソプロピル)ヘキサン、t-ブチルクミルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、ジ-t-ヘキシルパーオキサイド、及び2,5-ジメチル-2,5-ビス(t-ブチルペルオキシ)ヘキシン-3等が挙げられる。
【0038】
パーオキシケタール類の具体例としては、例えば、1,1-ビス(t-ヘキシルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス(t-ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)-2-メチルシクロヘキサン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2-ビス(t-ブチルパーオキシ)ブタン、及び4,4-ビス(t-ブチルパーオキシ)ペンタン酸ブチルが挙げられる。
【0039】
アルキルパーエステル類(パーオキシエステル類)の具体例としては、例えば、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、α-クミルパーオキシネオデカノエート、t-ブチルパーオキシネオデカノエート、t-ヘキシルパーオキシネオデカノエート、t-ブチルパーオキシネオヘプタノエート、t-ヘキシルパーオキシピバレート、t-ブチルパーオキシピバレート、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-アミルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシイソブチレート、ジ-t-ブチルパーオキシヘキサヒドロテレフタレート、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサネート、t-アミルパーオキシ3,5,5-トリメチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシアセテート、t-ブチルパーオキシベンゾエート、ジブチルパーオキシトリメチルアジペート、2,5-ジメチル-2,5-ジ-2-エチルヘキサノイルパーオキシヘキサン、t-ヘキシルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t-ブチルパーオキシラウレート、t-ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキシルモノカーボネート、及び2,5-ジメチル-2,5-ジ-ベンゾイルパーオキシヘキサンが挙げられる。
【0040】
パーオキシカーボネート類の具体例としては、例えば、ジ-n-プロピルパーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシカーボネート、ジ-4-t-ブチルシクロヘキシルパーオキシカーボネート、ジ-2-エチルヘキシルパーオキシカーボネート、ジ-sec-ブチルパーオキシカーボネート、ジ-3-メトキシブチルパーオキシジカーボネート、ジ-2-エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジイソプロピルオキシジカーボネート、t-アミルパーオキシイソプロピルカーボネート、t-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキシルカーボネート、及び1,6-ビス(t-ブチルパーオキシカルボキシロキシ)ヘキサンが挙げられる。
【0041】
これらのラジカル重合開始剤の中でも、硬化性の観点から、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン等のシクロヘキサン型の過酸化物が好ましい。
【0042】
緩衝シート用組成物が熱重合開始剤を含有する場合、熱重合開始剤の含有量は、(メタ)アクリレート化合物の合計100質量部に対して、例えば、0.01質量部~10質量部であることが好ましく、0.1質量部~5質量部であることがより好ましい。
【0043】
緩衝シート用組成物が重合開始剤として光重合開始剤を含有する場合、光重合開始剤としては特に制限されず、例えば、分子内にアルキルフェノン構造を有する化合物、分子内にオキシムエステル構造を有する化合物、及び分子内にリン元素を有する化合物が挙げられる。これらの光重合開始剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、必要に応じて増感剤を併用してもよい。
【0044】
分子内にアルキルフェノン構造を有する化合物の具体例としては、例えば、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル]フェニル}-2-メチル-プロパン-1-オン、2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン-1、及び2-(ジメチルアミノ)-2-[(4-メチルフェニル)メチル]-1-[4-(4-モルホリニル)フェニル]-1-ブタノンが挙げられる。
分子内にアルキルフェノン構造を有する化合物の市販品としては、例えば、IRGACURE 651、IRGACURE 184、IRGACURE 1173、IRGACURE 2959、IRGACURE 127、IRGACURE 907、IRGACURE 369E、及びIRGACURE 379EG(いずれもBASF社製)が挙げられる。
【0045】
分子内にオキシムエステル構造を有する化合物の具体例としては、例えば、1,2-オクタンジオン1-[4-(フェニルチオ)-2-(O-ベンゾイルオキシム)]、エタノン1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-1-(O-アセチルオキシム)、及びエタノン1-[9-エチル-6-(2-メチル-4-(2-(1,3-ジオキソ-2-ジメチル-シクロペンチ-5-イル)エトキシ)-ベンゾイル)-9H-カルバゾイル-3-イル]-1-(O-アセチルオキシム)が挙げられる。
分子内にオキシムエステル構造を有する化合物の市販品としては、例えば、IRGACURE OXE01、IRGACURE OXE02(いずれもBASF社製)、及びN-1919(株式会社ADEKA製)が挙げられる。
【0046】
構造中にリン元素を含有する化合物の具体例としては、例えば、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド及び2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイドが挙げられる。
構造中にリン元素を含有する化合物の市販品としては、例えば、IRGACURE 819及びIRGACURE TPO(いずれもBASF社製)が挙げられる。
【0047】
緩衝シート用組成物が光重合開始剤を含有する場合、光重合開始剤の含有量は、(メタ)アクリレート化合物の合計100質量部に対して、例えば、0.01質量部~3質量部であることが好ましく、0.1質量部~0.5質量部であることがより好ましい。光重合開始剤の含有量が0.01質量部以上であると、光照射による反応率が高まり、シート形成が容易になる傾向がある。光重合開始剤の含有量が3質量部以下であると、光照射による反応率の過度な増大が抑えられ、熱硬化時の反応性が十分なものになる傾向がある。
【0048】
(硬化剤)
緩衝シート用組成物が熱硬化性化合物としてエポキシ樹脂を含有する場合、緩衝シート用組成物は、硬化剤を含有することが好ましい。硬化剤としては特に制限されず、通常用いられる硬化剤から選択することができる。硬化剤は固体であっても液体であってもよく、固体の硬化剤と液体の硬化剤とを併用してもよい。短時間での硬化の観点からは、酸無水物の少なくとも1種を硬化剤として用いることが好ましい。
【0049】
エポキシ樹脂のエポキシ基の当量数と、エポキシ基と反応する硬化剤の官能基の当量数との比は特に制限されない。各成分の未反応分を少なくする観点からは、例えば、エポキシ樹脂のエポキシ基1当量に対して、硬化剤の官能基を0.1当量~2.0当量とすることが好ましく、0.5当量~1.25当量とすることがより好ましく、0.8当量~1.2当量とすることが更に好ましい。
【0050】
(熱可塑性樹脂)
本実施形態の緩衝シート用組成物は、熱可塑性樹脂の少なくとも1種を含有していてもよい。熱可塑性樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、スチレン樹脂、ブタジエン樹脂、イミド樹脂、及びアミド樹脂が挙げられる。これらの熱可塑性樹脂は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0051】
熱可塑性樹脂は、例えば、重合性単量体をラジカル重合することにより製造することができる。重合性単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ベンジル等の(メタ)アクリル酸エステル;ジアセトン(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド;スチレン、ビニルトルエン、α-メチルスチレン等のスチレン又はスチレン誘導体;ビニル-n-ブチルエーテル等のビニルアルコールのエーテル;マレイン酸;マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル等のマレイン酸モノエステル;フマル酸;ケイ皮酸;イタコン酸;及びクロトン酸が挙げられる。これらの重合性単量体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
なお、本明細書において「(メタ)アクリル酸」とは、アクリル酸又はメタクリル酸を意味し、「(メタ)アクリルアミド」とは、アクリルアミド又はメタクリルアミドを意味する。
【0052】
熱可塑性樹脂の重量平均分子量は、成膜性及び流動性の観点から、例えば、5000~1000000であることが好ましく、20000~500000であることがより好ましい。
【0053】
なお、本明細書における重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定され、標準ポリスチレンを用いて作成した検量線により換算された値である。GPCの条件を以下に示す。
ポンプ:L-6000型((株)日立製作所製、商品名)
カラム:Gelpack GL-R420+Gelpack GL-R430+Gelpack GL-R440(計3本)(日立化成(株)製、商品名)
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
測定温度:40℃
流速:2.05mL/分
検出器:L-3300型RI((株)日立製作所製、商品名)
【0054】
緩衝シート用組成物が熱可塑性樹脂を含有する場合、熱可塑性樹脂の含有率は、例えば、緩衝シート用組成物の総量中に1質量%~70質量%であることが好ましく、5質量%~50質量%であることがより好ましい。熱可塑性樹脂の含有率が1質量%以上であると、成膜性が向上する傾向にある。熱可塑性樹脂の含有率が70質量%以下であると、硬化性が向上し、電子部品と基板との接合性が向上する傾向にある。
【0055】
(無機充填材)
本実施形態の緩衝シート用組成物は、無機充填材の少なくとも1種を含有していてもよい。無機充填材としては、例えば、溶融シリカ、結晶シリカ等のシリカ粒子;炭酸カルシウム、クレー、アルミナ等の粒子;窒化珪素、炭化珪素、窒化ホウ素、珪酸カルシウム、チタン酸カリウム、窒化アルミニウム、ベリリア、ジルコニア、ジルコン、フォステライト、ステアタイト、スピネル、ムライト、チタニア等の粒子;これらの粒子を球形化したビーズ;及びガラス繊維が挙げられる。これらの無機充填材は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0056】
無機充填材の体積平均粒径は、例えば、0.01μm~20μmの範囲が好ましく、0.3μm~10μmの範囲がより好ましい。無機充填材の体積平均粒径が0.01μm以上であると、無機充填材の添加量により、緩衝シート用組成物の粘度調整が容易になる傾向がある。無機充填材の体積平均粒径が20μm以下であると、緩衝フィルムの凹凸追従性を損なうことなく、硬化性を調整し、硬化物の弾性率を制御することができる傾向にある。
【0057】
なお、本明細書において「体積平均粒径」とは、レーザー回折式粒度分布測定装置を用いて小径側から体積累積分布曲線を描いた場合に、累積50%となる粒子径(D50)を意味する。
【0058】
緩衝シート用組成物が無機充填材を含有する場合、無機充填材の含有率は、例えば、緩衝シート用組成物の総量中に5質量%~70質量%であることが好ましく、20質量%~60質量%であることがより好ましい。無機充填材の含有率が5質量%以上であると、熱膨張係数の低減効果が大きくなる傾向にあり、且つ、耐湿信頼性が向上する傾向にある。無機充填材の含有率が70質量%以下であると、無機充填材の添加による、緩衝フィルムの成形性の低下、粉落ち等の影響を抑えることができる傾向にある。
【0059】
緩衝シート用組成物が無機充填材を含有する場合、無機充填材の含有率は、緩衝シート用組成物の総量中に1体積%~70体積%であることが好ましく、5体積%~20体積%であることがより好ましい。
【0060】
緩衝シート用組成物中における無機充填材の体積基準の含有率は、以下のようにして測定される。まず、25℃における緩衝シート用組成物の質量(Wc)を測定し、その緩衝シート用組成物を空気中400℃で2時間、次いで700℃で3時間熱処理し、樹脂分を燃焼して除去した後、25℃における残存した無機充填材の質量(Wf)を測定する。次いで、電子比重計又は比重瓶を用いて、25℃における無機充填材の比重(df)を求める。次いで、同様の方法で25℃における緩衝シート用組成物の比重(dc)を測定する。次いで、緩衝シート用組成物の体積(Vc)及び残存した無機充填材の体積(Vf)を求め、(式1)に示すように残存した無機充填材の体積を緩衝シート用組成物の体積で除すことで、無機充填材の体積比率(Vr)として求める。
【0061】
(式1)
Vc=Wc/dc
Vf=Wf/df
Vr=Vf/Vc
【0062】
Vc:緩衝シート用組成物の体積(cm3)
Wc:緩衝シート用組成物の質量(g)
dc:緩衝シート用組成物の密度(g/cm3)
Vf:無機充填材の体積(cm3)
Wf:無機充填材の質量(g)
df:無機充填材の密度(g/cm3)
Vr:無機充填材の体積比率
【0063】
(硬化促進剤)
本実施形態の緩衝シート用組成物は、硬化促進剤の少なくとも1種を含有していてもよい。硬化促進剤としては、例えば、リン系硬化促進剤、アミン系硬化促進剤、イミダゾール系硬化促進剤、及びグアニジン系硬化促進剤が挙げられ、リン系硬化促進剤、アミン系硬化促進剤、及びイミダゾール系硬化促進剤が好ましい。これらの硬化促進剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0064】
緩衝シート用組成物が硬化促進剤を含有する場合、硬化促進剤の含有率は、例えば、エポキシ樹脂及び硬化剤の不揮発成分の合計を100質量%としたとき、0.05質量%~3質量%であることが好ましい。
【0065】
(溶剤)
本実施形態の緩衝シート用組成物は、溶剤の少なくとも1種を含有していてもよい。溶剤としては、例えば、メチルエチルケトン、キシレン、トルエン、アセトン、エチレングリコールモノエチルエーテル、シクロヘキサノン、エチルエトキシプロピオネート、N,N-ジメチルホルムアミド、及びN,N-ジメチルアセトアミドが挙げられる。これらの溶剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0066】
緩衝シート用組成物が溶剤を含有する場合、溶剤の含有率は特に制限されない。例えば、緩衝シートを作製する設備に合わせてその含有率を調整することが好ましい。
【0067】
(その他の成分)
本実施形態の緩衝シート用組成物は、必要に応じてその他の成分を含有していてもよい。その他の成分としては、例えば、重合禁止剤、カップリング剤、着色剤、界面活性剤、及びイオントラップ剤が挙げられる。
【0068】
<緩衝シート>
本実施形態の緩衝シートは、本実施形態の緩衝シート用組成物をシート状に成形した熱硬化性の組成物層を有する。緩衝シートは、片面又は両面に支持体を有していてもよい。
【0069】
緩衝シート用組成物をシート状に成形する際には、作業性の観点から、溶剤を含有するワニスの形態の緩衝シート用組成物を用いることが好ましい。例えば、緩衝シート用組成物のワニスを支持体上に塗工し、乾燥して組成物層を形成することにより、緩衝シートを得ることができる。本実施形態では、電子部品と加熱用部材との間に緩衝シートを介在させるため、緩衝シートの両面に支持体を有することが好ましい。
【0070】
支持体としては、例えば、ポリエチレンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム等のポリオレフィンフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリイミドフィルムなどの有機樹脂フィルム;離型紙;及び銅箔、アルミニウム箔等の金属箔が挙げられる。支持体は、離型層を有していてもよい。支持体としては、耐熱性の観点から、ポリイミドフィルム、及び銅箔、アルミニウム箔等の金属箔が好ましい。
【0071】
支持体上へのワニスの塗工は、公知の方法により実施することができる。具体的には、コンマコート、ダイコート、リップコート、グラビアコート等の方法が挙げられる。
支持体上に塗工したワニスの乾燥は、ワニスに含まれる溶剤の少なくとも一部を除去できれば特に制限されず、通常用いられる乾燥方法から適宜選択することができる。また、乾燥方法のほか、紫外線照射による光反応により、塗膜性をもたせる塗工法を用いてもよい。
【0072】
組成物層の平均厚みは、電子部品と基板との面方向での位置ずれを抑制する観点から、例えば、20μm以上であることが好ましく、50μm以上であることがより好ましく、100μm以上であることが更に好ましい。また、組成物層の平均厚みは、成膜性の観点から、例えば、300μm以下であることが好ましく、200μm以下であることがより好ましい。支持体を含めた緩衝シートの平均厚みは、例えば、50μm~400μmであることが好ましい。組成物層又は緩衝シートの厚みは、マイクロメーター等を用いて測定することができる。
【0073】
<電子部品装置の製造方法>
前述した本実施形態の緩衝シートは、加熱用部材により電子部品を加熱して電子部品を基板に実装し、電子部品装置を製造する際に、加熱用部材と電子部品との間に介在される。本実施形態の緩衝シートを用いた電子部品装置の製造方法は、電子部品と基板とがバンプを介して接触した状態で、緩衝シートを介して加熱用部材により電子部品を加熱することによって、電子部品と基板とをバンプを介して接合する加熱工程を有することが好ましい。
なお、本明細書において「接合」とは、電子部品と基板とがバンプを介して電気的に接続することを意味する。
【0074】
先付与型のアンダーフィル材を用いる場合、本実施形態の緩衝シートを用いた電子部品装置の製造方法は、電子部品における基板と対向する面及び基板における電子部品と対向する面からなる群より選択される少なくとも一方に、アンダーフィル材を付与する付与工程と、電子部品と基板とがバンプを介して対向した状態で加圧して、電子部品と基板との間隙にアンダーフィル材を充填し、且つ、電子部品と基板とをバンプを介して接触させる加圧工程と、を更に有することが好ましい。
【0075】
ここで、先付与型のアンダーフィル材を用いて電子部品装置を製造する従来の製造方法は、例えば、以下のとおりである。まず、電子部品と基板との間にアンダーフィル材を付与し、電子部品と基板とがバンプを介して対向した状態で加圧して、電子部品と基板との間隙にアンダーフィル材を充填し、且つ、電子部品と基板とをバンプを介して接触させる。次いで、加熱用部材により電子部品を加熱することによって、電子部品と基板とをバンプを介して接合し、且つ、アンダーフィル材を硬化させる。
このような従来の製造方法では、加熱用部材と電子部品及び基板との間に熱膨張差が存在すると、アンダーフィル材の硬化前に、電子部品と基板との間で位置ずれが生じることがある。また、例えば、複数個の電子部品装置を一括して製造する場合には、加熱時における荷重の不均一さによって位置ずれが生じ、電子部品が傾いた状態で接続されてしまうことがある。このような位置ずれ又は傾いた状態での接続は、電子部品装置の接続不良の原因となる。また、位置ずれが電子部品装置の接続不良を発生させるほどではない場合であっても、不充分な接続形状は電子部品装置の信頼性低下の一因となる。
【0076】
この点、本実施形態の緩衝シートを用いることで、電子部品と基板との位置ずれを抑制し、且つ、複数個の電子部品装置を一括して製造することが可能となる。
【0077】
以下、先付与型のアンダーフィル材を用いる場合における電子部品装置の製造方法の一例について、詳細に説明する。
【0078】
(付与工程)
付与工程では、電子部品における基板と対向する面及び基板における電子部品と対向する面からなる群より選択される少なくとも一方に、アンダーフィル材を付与する。付与工程の具体的な方法は特に制限されず、基板のみにアンダーフィル材を付与しても、電子部品のみにアンダーフィル材を付与しても、両方にアンダーフィル材を付与してもよい。生産性の観点から、電子部品のみにアンダーフィル材を付与する方法が好ましい。
【0079】
基板の種類は特に制限されない。基板の一例としては、例えば、FR4、FR5等の繊維基材を含む有機基板、繊維基材を含まないビルドアップ型の有機基板、ポリイミド、ポリエステル等の有機フィルム、及びセラミック、ガラス、シリコン等の無機材料を含む基材に、接続用の電極を含む導体配線が形成された配線板を挙げることができる。基板には、セミアディティブ法、サブトラクティブ法等の手法により、回路、基板電極等が形成されていてもよい。
また、基板の他の例としては、シリコンウェハを挙げることができる。シリコンウェハは、表面に接続用の電極を含む導体配線が形成されたものであってもよい。また、シリコンウェハは、貫通電極(シリコン貫通電極;TSV(Through Silicon Via))が形成されたものであってもよい。
【0080】
電子部品の種類は特に制限されず、樹脂等によってパッケージングされていないダイ(チップ)そのもの、樹脂等によってパッケージングされているCSP、BGA(Ball Grid Array)等と呼ばれている半導体パッケージなどを挙げることができる。
電子部品は、複数個のダイを厚み方向に配置する構成であってもよく、加熱工程において複数個のダイが貫通電極(TSV)によって接続される構成であってもよい。このとき、ダイの片面又は両面にアンダーフィル材を付与してもよい。
【0081】
バンプの材質は特に制限されず、はんだ等の通常使用される材質から選択することができる。バンプは、金属ポストとはんだとの組み合わせであってもよい。環境問題及び安全性の観点から、バンプには、Cu又はAuのほか、Ag-Cu系はんだ、Sn-Cu系はんだ、Sn-Bi系はんだ等の無鉛はんだを使用してもよい。バンプは、電子部品側に形成されていても、基板側に形成されていてもよい。
なお、バンプを無鉛はんだから形成する場合、無鉛はんだの濡れ不良に起因してバンプ周辺に微細な隙間が生じやすい。しかし、本実施形態の緩衝シートを用いることで、無鉛はんだをバンプに使用した場合にも、位置ずれの発生を効果的に抑制することができる。
【0082】
アンダーフィル材としては、従来使用されているアンダーフィル材を使用することができる。例えば、特開2013-151642号公報、特開2013-219285号公報、特開2015-032637号公報、特開2015-032638号公報、特開2015-083633号公報、及び特開2015-083634号公報に記載されているアンダーフィル材を使用することができる。
なお、隣接する接続部間のピッチは、より狭くなる(狭ピッチ化する)傾向にあるため、接続信頼性の観点から、アンダーフィル材としては導電性粒子を含有しないものが好ましい。
【0083】
アンダーフィル材の形状は特に制限されず、フィルム状であっても、液状であってもよい。加圧工程における電子部品と基板との面方向での位置ずれを抑制する観点から、アンダーフィル材の形状は、フィルム状であることが好ましい。
【0084】
アンダーフィル材を電子部品又は基板の上に付与する方法は特に制限されない。
アンダーフィル材が液状の場合、付与方法としては、例えば、スクリーン印刷法、及びエアーディスペンサー、ジェットディスペンサー、オーガータイプディスペンサー等のディスペンサーを用いる方法が挙げられる。
アンダーフィル材がフィルム状の場合、付与方法としては、ダイアフラム方式のラミネータ、ロール方式のラミネータ等を用いる方法が挙げられる。
【0085】
アンダーフィル材を電子部品又は基板に付与する際の形状は特に制限されない。
液状のアンダーフィル材を基板の上に付与する場合は、例えば、電子部品の搭載位置の全体に付与する方法、電子部品の搭載位置に対応する四角形の対角線に沿った2本の線からなるクロス形状に付与する方法、クロス形状に更にクロス形状を45°ずらして重ねた形状に付与する方法、及び電子部品の搭載位置の中心に一点で付与する方法が挙げられる。信頼性の観点からアンダーフィル材のクリーピング等を抑制するためには、クロス形状、又はクロス形状に更にクロス形状を45°ずらして重ねた形状で付与することが好ましい。基板に基板電極が設けられている場合は、基板電極が設けられた箇所を含む電子部品の搭載位置にアンダーフィル材を付与することが好ましい。
フィルム状のアンダーフィル材を電子部品又は基板の上に付与する場合は、電子部品における基板と対向する面の全体、又は電子部品の搭載位置の全体に付与することが望ましい。
【0086】
アンダーフィル材を基板又は電子部品の上に付与する際の温度は、アンダーフィル材の性質等に応じて選択することができる。フィルム状のアンダーフィル材をダイアフラム方式のラミネータにより電子部品に付与する場合には、アンダーフィル材及び電子部品表面の温度を、例えば、それぞれ50℃~100℃とすることが好ましく、ラミネート時のボイド巻き込みを抑制する観点からは、それぞれ70℃~90℃とすることがより好ましく、それぞれ80℃付近とすることが更に好ましい。
【0087】
(加圧工程)
加圧工程では、電子部品と基板とがバンプを介して対向した状態で加圧して、電子部品と基板との間隙にアンダーフィル材を充填し、且つ、電子部品と基板とをバンプを介して接触させる。
【0088】
加圧工程におけるアンダーフィル材の温度(以下、「充填温度」ともいう。)は、アンダーフィル材の硬化温度未満であることが好ましい。例えば、アンダーフィル材の充填温度は、200℃未満であることが好ましい。アンダーフィル材の充填温度を200℃未満とすることで、加圧によりアンダーフィル材を電子部品と基板との間隙に充填する際に、アンダーフィル材の増粘が抑えられ、アンダーフィル材の流動性が充分なものとなり、接続が確保されやすく、且つ、ボイドの発生を避けることができる傾向にある。
アンダーフィル材の充填温度の下限は特に制限されない。樹脂の低粘度化の観点からは、アンダーフィル材の充填温度は、例えば、30℃以上であることが好ましく、50℃以上であることがより好ましく、80℃以上であることが更に好ましい。
【0089】
アンダーフィル材の充填温度を調節する具体的な方法は特に制限されない。例えば、電子部品及び基板の少なくとも一方の温度を充填温度に調節してアンダーフィル材に接触させる方法を挙げることができる。
【0090】
加圧工程において付与される圧力の大きさは、一般的なフリップチップの実装工程と同様に、バンプの数又は高さのばらつき、加圧によるバンプ又はバンプを受ける基板上の配線の変形量等を考慮して設定することができる。具体的には、例えば、バンプ1個あたりが受ける荷重が1g~10g程度になるように設定することが好ましい。また、例えば、1チップあたりに掛かる荷重が10N~100N程度になるように設定することが好ましい。
【0091】
(加熱工程)
加熱工程では、電子部品と基板とがバンプを介して接触した状態で、緩衝シートを介して加熱用部材により電子部品を加熱することによって、電子部品と基板とをバンプを介して接合する。この加熱工程において、緩衝シート及びアンダーフィル材が硬化する。
【0092】
加熱工程は、アンダーフィル材を硬化させずに緩衝シートを硬化させた後、アンダーフィル材を硬化させるものであってもよい。
【0093】
加熱工程は、電子部品と基板とのバンプを介した接続を確保する観点から、バンプの融点以上の温度で行われることが好ましい。すなわち、バンプと基板上の配線等との金属接合が形成される温度で行われることが好ましい。例えば、バンプがはんだバンプである場合、加熱工程は、230℃以上の温度で行われることが好ましい。緩衝シート及びアンダーフィル材の耐熱性の観点からは、加熱工程は、例えば、320℃以下の温度で行われることが好ましく、300℃以下の温度で行われることがより好ましい。
【0094】
なお、はんだ接合による接続手法は、導電性粒子を用いた接続手法等と比べて高温を必要とする一方、高い接続信頼性を有しているため、接続部の数がより増加した場合、及び隣接する接続部間のピッチがより狭くなった場合にも対応可能である。このようなはんだ接合による高温実装を実現するため、緩衝シートとしては、200℃以上の高温実装可能な耐熱性を有することが好ましい。
【0095】
加熱工程における基板の温度及び電子部品の温度は、例えば、それぞれ25℃~200℃及び230℃~300℃の範囲内であることが好ましい。
【0096】
加熱工程における電子部品及び基板の数は特に制限されない。生産効率の観点からは、それぞれ複数個の電子部品及び基板を一括して加熱することが好ましい。複数個の電子部品及び基板を一括して加熱する場合、1枚の緩衝シートを、複数個の電子部品に架け渡すことが好ましい。一括して加熱する電子部品及び基板の数は、例えば、それぞれ2個以上であることが好ましく、それぞれ3個以上であることがより好ましく、それぞれ5個以上であることが更に好ましい。本実施形態の緩衝シートを用いた製造方法による効果は、一括して加熱する電子部品及び基板の数が多いほど顕著である。
【0097】
加熱工程は、生産効率の観点からは、短時間で行われることが好ましい。具体的には、例えば、昇温速度が5℃/秒以上であることが好ましく、10℃/秒以上であることがより好ましく、15℃/秒以上であることが更に好ましい。加熱時間は、バンプを構成する材料の種類により異なるが、生産効率の観点からは、短時間であるほど好ましい。バンプがはんだバンプである場合、加熱時間は、例えば、30秒以下であることが好ましく、20秒以下であることがより好ましく、10秒以下であることが更に好ましい。Cu-Cu又はCu-Auの金属接合の場合は、加熱時間は、例えば、30秒以下であることが好ましい。
【0098】
加熱工程において電子部品と基板との面方向での位置ずれを抑制する観点から、緩衝シートの硬化速度は、アンダーフィル材の硬化速度よりも速いことが好ましい。緩衝シートの硬化速度をアンダーフィル材の硬化速度よりも速くすることで、加熱時における熱膨張がより抑えられ、位置ずれを抑制しやすくなる傾向にある。
【0099】
以下、図面を参照しながら電子部品装置の製造方法の一例について更に説明する。以下の製造方法においては、電子部品における基板と対向する面にアンダーフィル材を付与し、緩衝シートを電子部品の上部に被覆し、電子部品と基板とを接合する態様について説明する。バンプは電子部品側に設けられており、当該バンプを介して電子部品と基板とが接合される。また、加熱工程では、それぞれ3個の電子部品及び基板を一括して加熱する。但し、緩衝シートを用いた電子部品装置の製造方法は、これらの態様に限定されるものではない。
【0100】
まず、
図1Aに示すように、半導体チップ(電子部品)1のはんだバンプ2の設けられた側(基板5の接続パッド4と対向する側)の面に、アンダーフィル材3を付与する(付与工程)。
【0101】
次いで、
図1Bに示すように、半導体チップ1と基板5とをはんだバンプ2を介して対向させる。そして、半導体チップ1の上から加圧用部材6で加圧して、半導体チップ1と基板5との間隙にアンダーフィル材3を充填し、且つ、半導体チップ1と基板5の接続パッド4とをはんだバンプ2を介して接触させる(加圧工程)。
【0102】
次いで、
図1Cに示すように、半導体チップ1と基板5の接続パッド4とがはんだバンプ2を介して接触している状態で、緩衝シート7を介して半導体チップ1に加熱用部材8を押し付け、半導体チップ1と基板5の接続パッド4とをはんだバンプ2を介して接合し、且つ、緩衝シート7及びアンダーフィル材3を硬化させる(加熱工程)。
以上の工程を経ることで、電子部品装置が製造される。
【0103】
<電子部品装置>
前述した製造方法により製造される電子部品装置は、例えば、基板と、アンダーフィル材の硬化物と、電子部品とがこの順に配置され、基板と電子部品とがバンプを介して接合しており、且つ、アンダーフィル材の硬化物が基板と電子部品との間隙を充填しているものである。このような電子部品装置は、電子部品と基板との面方向の位置ずれが少なく、信頼性に優れる。
【0104】
本実施形態の緩衝シートを用いた製造方法の効果は、電子部品と基板との間の距離及びバンプ間の距離が小さい電子部品装置を製造する場合に特に顕著である。具体的には、電子部品装置における電子部品と基板との間の平均距離は、例えば、50μm以下であることが好ましく、40μm以下であることがより好ましく、30μm以下であることが更に好ましい。また、電子部品装置におけるバンプ間の平均距離は、例えば、200μm以下であることが好ましく、150μm以下であることがより好ましく、100μm以下であることが更に好ましく、80μm以下であることが特に好ましい。
【0105】
電子部品装置の基板は、配線パターン及びレジストパターンによる凹凸部を有していてもよい。基板が配線パターン及びレジストパターンを有する場合は、例えば、配線パターンの平均幅が50μm~300μmであり、レジスト開口部の平均幅が50μm~150μmであり、レジストの平均厚みが10μm~20μmであることが好ましい。本実施形態の緩衝シートを用いた製造方法によれば、上記のような凹凸部を有する基板を使用した場合であっても、電子部品と基板との面方向での位置ずれを抑制することが可能である。
【実施例】
【0106】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0107】
[合成例1]
熱可塑性樹脂を以下のように合成した。
撹拌機、還流冷却器、温度計、滴下ロート、及び窒素ガス導入管を備えたフラスコに、メチルセロソルブ及びトルエンの配合物(メチルセロソルブ:トルエン=6:4(質量比))400gを加え、窒素ガスを吹き込みながら撹拌して、80℃まで加熱した。一方、重合性単量体としてメタクリル酸125g、メタクリル酸メチル25g、メタクリル酸ベンジル125g、及びスチレン225gと、アゾビスイソブチロニトリル1.5gとを混合した溶液aを準備した。80℃に加熱されたメチルセロソルブ及びトルエンの上記配合物に溶液aを4時間かけて滴下した後、80℃で撹拌しながら2時間保温した。更に、メチルセロソルブ及びトルエンの配合物(メチルセロソルブ:トルエン=6:4(質量比))100gにアゾビスイソブチロニトリル1.2gを溶解した溶液を、10分間かけてフラスコ内に滴下した。滴下後の溶液を撹拌しながら80℃で3時間保温した後、30分間かけて90℃に加温した。90℃で2時間保温した後、冷却して、熱可塑性樹脂を得た。熱可塑性樹脂の不揮発分(固形分)は46.2質量%であり、重量平均分子量は45000であった。
【0108】
[実施例1~2]
<緩衝シートの作製>
撹拌機を備えたフラスコに、合成例1で得られた熱可塑性樹脂58gと、熱硬化性化合物としてトリメチロールプロパントリアクリレート(日立化成(株)製、商品名「TMPT21」)42gとを加え、更に熱重合開始剤として1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン(日油(株)製、商品名「パーヘキサC」)2gを加え、撹拌してワニスを得た。
【0109】
得られたワニスをポリイミドフィルム(東レ・デュポン(株)製、商品名「カプトン100H」、平均厚み:25μm)のベルト面側に塗工した後、60℃の乾燥機で10分間乾燥することにより、組成物層の平均厚みが70μm又は100μmであるシートを得た。得られたシートの組成物層側に、ポリイミドフィルム(東レ・デュポン(株)製、商品名「カプトン100H」、平均厚み:25μm)をベルト面が組成物層側となるように重ね、ホットロールラミネーターを用いて60℃、0.5MPa、1.0m/分の条件で積層し、熱硬化性の組成物層を有する緩衝シートA(平均厚み:120μm)及び緩衝シートB(平均厚み:150μm)を得た。
【0110】
<電子部品装置の作製>
電子部品装置の材料として、アルミニウム配線を有する7.3mm×7.3mm×0.1mmのシリコンチップ((株)ウォルツ製、商品名「WALTS-TEG CC80-0101JY-MODEL 1」、バンプ:Sn-Ag-Cu系、バンプ間隔:80μm)を電子部品として、及び回路が形成された18mm×18mm×0.4mmの基板((株)ウォルツ製、商品名「WALTS-KIT CC80-0102JY-MODEL 1」、ソルダーレジスト:PSR4000-AUS703、基材:E679FGS)を基板として、それぞれ用意した。
【0111】
フィルム状のアンダーフィル材(日立化成(株)製、エポキシ系NCF(Non-conductive Film))を、ダイアフラム方式の真空ラミネータ(ニチゴー・モートン(株)製、商品名「V130」)を用いて、温度が80℃となるように調節した電子部品にラミネートした(付与工程)。
次いで、充填温度が80℃となるように温度を調節したシリコンチップのバンプを有する面を基板側に向け、バンプが基板と接触するように、シリコンチップの上から120Nの荷重で加圧用部材により加圧した(加圧工程)。この際、シリコンチップ上に付与されたアンダーフィル材が加圧により流動して基板とシリコンチップとの間隙を充填した。このようにして、電子部品実装基板を作製した。
【0112】
上記で得られた電子部品実装基板5個を、10cm角の四角形の四隅及び中心に位置するように、シリコンチップ側を上面として載置した。5個のシリコンチップの上に上記で得られた緩衝シートA又は緩衝シートBを被覆し、あらかじめ160℃に熱し、且つ、50μm傾けた加熱用部材を600Nの荷重で接触させ、その後10秒間で加熱用部材を260℃に加熱し、260℃到達後に15秒間維持することで、シリコンチップと基板とを接合した(加熱工程)。このようにして、電子部品装置5個を一括して作製した。
【0113】
上記で得られた電子部品装置について、以下のようにして、剥離の観察、接続性の確認、及びシリコンチップと基板との位置ずれの確認を行った。評価結果を表1に示す。
【0114】
<剥離の観察>
剥離の観察は、加熱工程を行った後の電子部品装置について、電子部品装置の内部を超音波観察装置(インサイト(株)製、商品名「INSIGHT-300」)を用いて観察することで行い、下記の評価基準に従って評価した。
-評価基準-
A:加熱後にすべての電子部品で剥離が観察されなかった。
B:仮加熱後に一部の電子部品で剥離が観察された。
【0115】
<接続性の確認>
接続性の確認は、加熱工程を行った後の電子部品装置について、導通をテスター(カイセ(株)製、商品名「SK-6500」)で確認することで行い、下記の評価基準に従って評価した。
-評価基準-
A:加熱後にすべての電子部品で導通が取れている。
B:加熱後に一部の電子部品で導通が取れない。
【0116】
<シリコンチップと基板との位置ずれの確認>
位置ずれの確認は、加熱工程を行った後の電子部品装置について、シリコンチップのはんだバンプと基板の接続パッド部分との面方向での位置ずれをX線観察装置(ノードソン・アドバンスト・テクノロジー(株)製、商品名「XD-7600NT100-CT)で確認することで行い、下記の評価基準に従って評価した。なお、位置ずれは5箇所を測定し、その算術平均値を求めた。
-評価基準-
A:加熱後のシリコンチップと基板の接続パッド部分との面方向での位置ずれの平均が7μm未満である。
B:加熱後のシリコンチップと基板の接続パッド部分との面方向での位置ずれの平均が7μm以上、10μm未満である。
C:加熱後のシリコンチップと基板の接続パッド部分との面方向での位置ずれの平均が10μm以上である。
【0117】
[実施例3]
<緩衝シートの作製>
撹拌機を備えたフラスコに、熱硬化性化合物としてトリメチロールプロパントリアクリレート(日立化成(株)製、商品名「TMPT21」)98.32gを加え、更に光重合開始剤として2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン(BASF社製、商品名「IRGACURE 1173」)0.15gと、熱重合開始剤として1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン(日油(株)製、商品名「パーヘキサC」)1.5gとを加え、撹拌してワニスを得た。
【0118】
得られたワニスをポリイミドフィルム(東レ・デュポン(株)製、商品名「カプトン100H」、平均厚み:25μm)のベルト面側に塗工した後、紫外線露光機を用いて200mJの露光量で紫外線を照射することにより、組成物層の平均厚みが100μmであるシートを得た。得られたシートの組成物層側に、ポリイミドフィルム(東レ・デュポン(株)製、商品名「カプトン100H」、平均厚み:25μm)をベルト面が組成物層側となるように重ね、ホットロールラミネーターを用いて60℃、0.5MPa、1.0m/分の条件で積層し、熱硬化性の組成物層を有する緩衝シートC(平均厚み:150μm)を得た。
【0119】
<電子部品装置の作製>
加熱工程において、緩衝シートAの代わりに緩衝シートCを用い、加熱用部材の傾きを表1に示すように設定したこと以外は実施例1と同様にして、実施例3の電子部品実装基板及び電子部品装置を作製した。その後、実施例1と同様にして、剥離の観察、接続性の確認、及びシリコンチップと基板との位置ずれの確認を行い、評価した。結果を表1に示す。
【0120】
[実施例4]
<緩衝シートの作製>
実施例3で調製したワニスに対して、無機充填材としてシリカ粒子(電気化学工業(株)製、商品名「FB-5SDCH」、体積平均粒径:5.0μm)20gを加え、撹拌してワニスを得た。そして、得られたワニスを用いたほかは実施例3と同様にして、熱硬化性の組成物層を有する緩衝シートD(厚み:150μm)を得た。
【0121】
<電子部品装置の作製>
加熱工程において、熱硬化性シートAの代わりに熱硬化性シートDを用い、加熱用部材の傾きを表1に示すように設定したこと以外は実施例1と同様にして、実施例3の電子部品実装基板及び電子部品装置を作製した。その後、実施例1と同様にして、剥離の観察、接続性の確認、及びシリコンチップと基板との位置ずれの確認を行い、評価した。結果を表1に示す。
【0122】
[比較例1~2]
加熱工程において、緩衝シートAを用いず、加熱用部材の傾きを表1に示すように設定したこと以外は実施例1と同様にして、比較例1~2の電子部品実装基板及び電子部品装置を作製した。その後、実施例1と同様にして、剥離の観察、接続性の確認、及びシリコンチップと基板との位置ずれの確認を行い、評価した。結果を表1に示す。
【0123】
[比較例3]
加熱工程において、緩衝シートAの代わりにアルミニウム箔(平均厚み:45μm)を用い、加熱用部材の傾きを表1に示すように設定したこと以外は実施例1と同様にして、比較例3の電子部品実装基板及び電子部品装置を作製した。その後、実施例1と同様にして、剥離の観察、接続性の確認、及びシリコンチップと基板との位置ずれの確認を行い、評価した。結果を表1に示す。
【0124】
【0125】
表1に示す結果から明らかなように、熱硬化性の組成物層を有する緩衝シートを用いることで、電子部品と基板との位置ずれを抑制し、且つ、複数個の電子部品装置を一括して製造することができる。また、熱硬化性の組成物層を有する緩衝シートを用いて製造される電子部品装置は、剥離の発生が少なく、接続性及び信頼性に優れる。
【0126】
2015年8月28日に出願された日本出願2015-169048の開示はその全体が参照により本明細書に取り込まれる。
本明細書に記載された全ての文献、特許出願、及び技術規格は、個々の文献、特許出願、及び技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書中に参照により取り込まれる。
【符号の説明】
【0127】
1 半導体チップ(電子部品)
2 はんだバンプ
3 アンダーフィル材
4 接続パッド
5 基板
6 加圧用部材
7 緩衝シート
8 加熱用部材