(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-11
(45)【発行日】2022-04-19
(54)【発明の名称】重金属吸着用マスクパックの製造方法およびこれを用いて製造されたマスクパック
(51)【国際特許分類】
A45D 44/22 20060101AFI20220412BHJP
A61K 8/02 20060101ALI20220412BHJP
A61K 8/73 20060101ALI20220412BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20220412BHJP
【FI】
A45D44/22 C
A61K8/02
A61K8/73
A61Q19/00
(21)【出願番号】P 2020517413
(86)(22)【出願日】2018-12-11
(86)【国際出願番号】 KR2018015665
(87)【国際公開番号】W WO2019117582
(87)【国際公開日】2019-06-20
【審査請求日】2020-04-02
(31)【優先権主張番号】10-2017-0171982
(32)【優先日】2017-12-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2018-0156084
(32)【優先日】2018-12-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(73)【特許権者】
【識別番号】501413220
【氏名又は名称】エルジー・ハウスホールド・アンド・ヘルス・ケアー・リミテッド
【住所又は居所原語表記】LG Gwanghwamun Building, 58 Saemunan-ro, Jongro-gu, Seoul 03184, Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】パク、ミンスン
(72)【発明者】
【氏名】ユン、ヘスン
(72)【発明者】
【氏名】キム、ジュハン
(72)【発明者】
【氏名】リー、ウォンジェ
(72)【発明者】
【氏名】ジェオン、クヮン セオング
(72)【発明者】
【氏名】カン、スル ギ
(72)【発明者】
【氏名】オ、スン ミン
(72)【発明者】
【氏名】パク、ジ ウン
【審査官】大内 康裕
(56)【参考文献】
【文献】韓国登録特許第10-1607939(KR,B1)
【文献】韓国登録特許第10-1559815(KR,B1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0147033(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2017-0099572(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A45D 44/00
A45D 44/22
A45D 33/38
A61K 8/00~ 8/99
A61Q 1/00~11/02
A61Q 15/00~90/00
D04H 1/00~18/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セルロース不織布をコールドパッドバッチ法によってアルカリ溶液中に浸漬させた後、常温で10分~50分間熟成するステップと、
コールドパッドバッチ法によってカルボキシメチル化溶液に浸漬させた後、常温~60℃で10分~3時間熟成するステップとを含む重金属吸着用
マスクパックの製造方法であって、
前記製造方法で製造された前記重金属吸着用
マスクパックの水分蒸発率は、15分で20%以下である、重金属吸着用
マスクパックの製造方法。
【請求項2】
前記製造方法は、水で水洗し、濾過するステップをさらに含むものである、請求項1に記載の重金属吸着用
マスクパックの製造方法。
【請求項3】
前記アルカリ溶液は、重量比率が10:5~10:8である水およびアルコールを含む溶媒に、水酸化ナトリウムをさらに含むものである、請求項1または2に記載の重金属吸着用
マスクパックの製造方法。
【請求項4】
前記カルボキシメチル化溶液は、重量比率が1:10~4:10である水およびアルコールを含む溶媒に、モノクロロ酢酸をさらに含むものである、請求項1から3のいずれか一項に記載の重金属吸着用
マスクパックの製造方法。
【請求項5】
前記重金属吸着用
マスクパックの製造方法は、前記アルカリ溶液または前記カルボキシメチル化溶液に浸漬させた後、熟成するステップの前に、ゴムローラを用いて絞る(squeezing)ステップをさらに含むものである、請求項1から4のいずれか一項に記載の重金属吸着用
マスクパックの製造方法。
【請求項6】
前記アルコールは、エタノール、メタノール、およびイソプロパノールからなる群より選択されるものである、請求項3または4に記載の重金属吸着用
マスクパックの製造方法。
【請求項7】
カルボキシレート含有量が0.10mmol/g~0.58mmol/gであるカルボキシメチルセルロース繊維を含むものである、請求項1から6のいずれか一項に記載の重金属吸着用
マスクパックの製造方法。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項に記載の製造方法から製造された重金属吸着用
マスクパック。
【請求項9】
重金属吸着量が4~11mg/gである、請求項8に記載の重金属吸着用
マスクパック。
【請求項10】
前記重金属吸着用
マスクパックの湿潤状態の引張強度は、3~7MPaである、請求項8または9に記載の重金属吸着用
マスクパック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2017年12月14日付で韓国特許庁に出願された韓国特許出願第10-2017-0171982号の出願日の利益を主張し、その内容のすべては本明細書に組み込まれる。
【0002】
本出願は、2018年12月6日付で韓国特許庁に出願された韓国特許出願第10-2018-0156084号の出願日の利益を主張し、その内容のすべては本明細書に組み込まれる。
【0003】
本明細書は、重金属吸着用マスクパックの製造方法およびこれを用いて製造されたマスクパックに関する。
【背景技術】
【0004】
最近、重要な環境問題として浮上している細かいホコリは、疾病を誘発する多量の重金属を含有している。このような重金属から人体を保護するために、空気フィルタ、水処理フィルタに関する研究は盛んに進められているが、皮膚に直接付着する重金属を除去することに関する研究は不十分な状態である。
【0005】
マスクパックは、顔を覆って水分と美容成分を皮膚に供給することで皮膚を綺麗にし、皮膚の生理機能を回復させる化粧品である。このようなマスクパックを用いて皮膚に直接付着する重金属を除去するために、重金属吸着が可能な物質を添加してマスクパックを製造している。
【0006】
しかし、単純な添加、混合の方法では、重金属吸着性能の増大に限界があり、吸着可能な物質が高価であるので、経済性に劣るという問題がある。
【0007】
このような問題点を克服するために、重金属吸着を効率的に行えるマスクパックの研究が求められる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本明細書は、重金属吸着用マスクパックの製造方法およびこれを用いて製造されたマスクパックを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本明細書の一実施態様は、セルロース不織布をコールドパッドバッチ法によってアルカリ溶液中に浸漬させた後、常温で10分~50分間熟成するステップと、コールドパッドバッチ法によってカルボキシメチル化溶液に浸漬させた後、常温~60℃で10分~3時間熟成するステップとを含む重金属吸着用マスクパックの製造方法を提供する。
【0010】
本明細書のもう一つの実施態様は、前述した製造方法から製造された重金属吸着用マスクパックを提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の製造方法から製造された重金属吸着用マスクパックは、水が使用されるマスクパック生産工程に容易に適用可能な強い物性を有する。また、重金属吸着が可能な高価な物質を別途に添加しなくても、マスクパックの表面改質により重金属吸着性能に優れたマスクパックを製造することにより、経済的であるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の重金属吸着用マスクパックの製造方法による製造工程の模式図の例を示すものである。
【
図2】本発明の製造方法により製造されたマスクパックの時間に応じた水分蒸発率をグラフで示すものである。
【
図3】実施例1および2、比較例1および2の走査電子顕微鏡(SEM)のイメージを示すものである。
【
図4】実施例2により製造された湿潤状態の重金属吸着用マスクパックの様子を示すものである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0014】
本明細書において、ある部分がある構成要素を「含む」とする時、これは、特に反対の記載がない限り、他の構成要素を除くのではなく、他の構成要素をさらに包含できることを意味する。
【0015】
本発明は、セルロース不織布をコールドパッドバッチ法によってアルカリ溶液中に浸漬させた後、常温で10分~50分間熟成するステップと、コールドパッドバッチ法によってカルボキシメチル化溶液に浸漬させた後、常温~60℃以下で10分~3時間熟成するステップとを含む重金属吸着用マスクパックの製造方法を提供する。
【0016】
本発明の重金属吸着用マスクパックの製造方法において、不織布を一次的にアルカリ溶液によって浸漬させた後に熟成するステップを行い、二次的にカルボキシメチル化溶液によって浸漬させた後に熟成するステップを行うことにより、セルロースのカルボキシメチレーション反応性を高めることができる。
【0017】
既存の重金属吸着が可能な物質を不織布に添加してマスクパックを製造する製造方法は、重金属吸着性能を増大させることに限界があり、前記物質を多量添加する場合、マスクパック本来の特性が低下することがある。また、重金属吸着が可能な物質は価格が高くて過剰使用するには非経済的であるという問題点がある。
【0018】
本発明の一実施態様に係る製造方法によりマスクパックを製造する場合、重金属吸着が可能な物質を不織布に別途に添加しなくても、セルロース繊維の表面をカルボキシメチレーション反応により改質して重金属吸着性能を向上させることができ、また、大量生産が可能で生産工程の効率を高めることができ、経済的な方法で重金属吸着が可能なマスクパックを製造することができる。
【0019】
本発明において、コールドパッドバッチ法とは、繊維素材を溶液に浸漬させた後、直に適正な圧力で絞る連続式加工後に一定時間熟成しながら低い温度で反応を起こす方法である。本発明は、前記コールドパッドバッチ法を利用してマスクパックを製造することにより、生産工程の効率を高めることができる。
【0020】
本明細書の一実施態様において、前記アルカリ溶液は、重量比率が10:5~10:8である水およびアルコールを含む溶媒に、水酸化ナトリウムをさらに含んでもよい。
【0021】
本明細書の一実施態様において、アルカリ溶液の濃度は、5~15%が好ましく、8~12%がさらに好ましい。5%未満の場合、カルボキシメチレーションにより所望の置換度を得ることができず、15%超過の場合、カルボキシメチレーションによる置換度が過度に高く、酸とアルカリとの副反応が起こる問題がありうる。
【0022】
本明細書において、「%」は、「重量%」を意味する。
【0023】
本明細書の一実施態様において、前記カルボキシメチル化溶液は、重量比率が1:10~4:10である水およびアルコールを含む溶媒に、モノクロロ酢酸をさらに含んでもよい。
【0024】
前記カルボキシメチル化溶液は、水20%、アルコール80%を含む溶媒にモノクロロ酢酸を溶解させた、10%モノクロロ酢酸溶液であってもよい。
【0025】
前記アルコールは、炭素1~4個を含むアルコールの群から選択される単独または混合形態が使用できる。前記アルコールは、エタノール、メタノール、イソプロパノールであってもよいし、好ましくは、イソプロパノールが使用できるが、これに限定されない。
【0026】
本明細書の一実施態様において、前記アルコールは、エタノール、メタノール、およびイソプロパノールからなる群より選択される。
【0027】
本明細書の一実施態様において、前記アルコールは、エタノール、メタノール、およびイソプロパノールからなる群より選択される単独または混合形態であってもよい。
【0028】
本発明において、カルボキシメチレーションとは、セルロースを構成しているグルコース残基のC6に置換されたヒドロキシ基(celluose-OH)をカルボキシメチル基(-CH2COOH)で置換することを意味する(celluose-O-CH2COOH)。
【0029】
本明細書の一実施態様において、アルカリ溶液によるコールドパッドバッチ法を行う場合、熟成温度は、常温で行われる。一般的に、熟成温度が常温より低い場合、反応が十分に起こらず、常温より高い場合、反応速度が速くてカルボキシメチレーションにより不織布の全面積にわたって均一な置換度を得ることができない。本発明では、熟成させるステップの前に絞る(squeezing)ステップを含むことにより、常温より高い温度で均一な反応が起こり得る。
【0030】
本明細書において、「常温」とは、「20±5℃」を意味する。
【0031】
本明細書の一実施態様において、アルカリ溶液によるコールドパッドバッチ法を行う場合、熟成時間は、10~50分、好ましくは、25~35分であってもよい。熟成時間が10分未満の場合、アルカリ溶液による十分な熟成が行われず、50分超過の場合、過度の熟成で製造されるマスクパックの物性が弱くなりうる。
【0032】
本明細書の他の実施態様において、カルボキシメチル化溶液によってコールドパッドバッチ法を行う場合、熟成温度は、常温~60℃、好ましくは、常温~55℃であってもよい。熟成温度が常温以下の場合、カルボキシメチレーション反応が十分に起こらず、60℃超過の場合、高温による過度の熟成でマスクパックの物性が弱くなって、破れやすくなる。
【0033】
本明細書の一実施態様において、カルボキシメチル化溶液によってコールドパッドバッチ法を行う場合、熟成時間は、10分~3時間、好ましくは、1時間~2時間であってもよい。熟成時間が10分未満の場合、カルボキシメチル化溶液によるカルボキシメチレーション反応が十分に行われず、セルロースにカルボキシメチル基の含有量が過度に低くなりうる。熟成時間が3時間を超える場合、過度の熟成によってマスクパックの物性が弱くなって、破れやすいか、損傷することがある。
【0034】
本明細書の一実施態様において、重金属吸着用マスクパックの製造方法は、水で水洗し、濾過するステップをさらに含んでもよい。水で水洗し、濾過する過程を経ることにより、製造されるマスクパックの物性がさらに強化できる。
【0035】
本発明のマスクパックの製造方法において、前記水洗および濾過過程を経たマスクパックは、乾燥する過程をさらに含んでもよい。乾燥温度は、30~50℃、好ましくは、35~55℃で乾燥することができる。乾燥温度が30℃未満の場合、マスクパックの乾燥が十分に行われず、50℃を超える場合、高温によってマスクパックの収縮および弾性が低下する現象が発生することがある。
【0036】
本明細書の一実施態様において、前記重金属吸着用マスクパックの製造方法は、前記アルカリ溶液または前記カルボキシメチル化溶液に浸漬させた後、熟成するステップの前に、ゴムローラを用いて絞る(squeezing)ステップをさらに含んでもよい。ゴムローラを用いることにより、セルロース不織布にアルカリ溶液またはカルボキシメチル化溶液が均一に浸透し、カルボキシメチレーション反応が効果的に起こるように補助する。
【0037】
本発明は、重金属吸着用マスクパックは、カルボキシレート含有量が0.10mmol/g~0.58mmol/gであるカルボキシメチルセルロース繊維を含むことができる。前記範囲を満足するマスクパックは、重金属吸着能力に優れ、取り扱いおよび保管が容易である。カルボキシレート含有量が0.10mmol/g未満の場合、マスクパックの重金属吸着力が低下し、0.58mmol/g超過の場合、湿潤状態でカルボキシメチル化されたセルロースが溶けてマスクパックとしての使用が不可能になる。前記カルボキシレート含有量は、本発明のコールドパッドバッチ法による熟成温度および熟成時間を最適化して調節することができる。セルロースにカルボキシレートが導入されるとしても、
図3に示されるように、カルボキシレートの導入前/後にセルロース繊維の形態学的変化は起こらない。
【0038】
本明細書において、前記カルボキシレート含有量は、後述する方法で測定することができる。粉砕した0.6gのサンプルと0.1MのNaCl2ml、脱イオン水を含めて、計200gとなるように250mLビーカーに用意する。Suspensionを撹拌しながら、0.1M HClを添加して、CNFのpHが3となるように調節する。CNF(pH=3)suspensionに0.05M NaOHを0.5mLずつ添加および撹拌した後、conductivityを記録する。Conductivityが減少してから一定になる地点(V1)と、一定の区間を経て急激に増加する地点(V2)とを求める。下記式1によりacidic groupのcontentsを計算する。
[式1]
【数1】
前記式1において、
V1、V2=volume of NaOH(ml)、
C
NaOH=NaOH concentration(mol L
-1)、
m
sample=Dry weight of the sample(kg)。
【0039】
本明細書の一実施態様において、前記不織布は、セルロースで製造された生地を製織方式で作ったものであってもよい。前記不織布は、テンセルまたはベンリーゼのような高密度セルロース不織布であってもよいが、これに限定されない。
【0040】
本明細書は、前述した製造方法から製造された重金属吸着用マスクパックを提供する。
【0041】
本明細書の一実施態様は、重金属吸着量が4~11mg/gである重金属吸着用マスクパックを提供する。
【0042】
前記重金属吸着用マスクパックは、セルロース不織布材料の乾燥重量(g)あたりの重金属吸着量(mg)が4~11mg/gであってもよい。具体的には、前記重金属吸着量は4.3~10.15mg/gであってもよい。
【0043】
本明細書において、前記重金属は、銅(Cu)または鉛(Pb)であってもよい。前記銅(Cu)は、硫酸銅(CuSO4)として吸着され、前記鉛(Pb)は、塩化鉛(PbCl2)として吸着される。具体的には、前記重金属のうち、銅(Cu)吸着量は4~11mg/gであり、鉛(Pd)吸着量は7~9mg/gであってもよい。さらに具体的には、前記重金属中の銅(Cu)吸着量は4.3~10.15mg/gであり、鉛(Pd)吸着量は7.8~8mg/gであってもよい。
【0044】
1日に成人の顔に吸着される重金属の最大量が1mg程度であることを考慮した時、本明細書の重金属吸着用マスクパックを用いる場合、顔に吸着される重金属を十分に吸着させることができる。
【0045】
前記重金属吸着量は、ICP機器を用いて測定することができる。前記ICP機器とは、誘導結合プラズマ質量分析法(ICP MS、Inductively coupled plasma mass spectroscopy)を利用できる装備である。本明細書の一実施態様において、前記重金属吸着量の測定にはICP-OES(Optima 7300DV)が使用できる。
【0046】
本明細書において、マスクパックとは、顔に栄養、水分などを供給するために使用され、一般的に、不織布のような基材上に化粧水のような美容成分を含浸させ、前記美容成分が皮膚に伝達できるようにマスクパックを皮膚に付けた後、一定時間後に剥がす用途に多く使用されている。また、前記マスクパックは、顔だけではなく、首、肩、腕、足部分用の他に全身に使用することができ、前記化粧水のような美容成分には、水とともに、保湿剤、界面活性剤、増粘剤、防腐剤、香料、またはオイルなどが含まれ、その他、当該技術分野において水分供給、美白、老化防止、リフティング、鎮静などの皮膚美容機能を向上させるものであれば特に限定はない。
【0047】
本発明において、前記マスクパックの形状は、皮膚の付着する部位によって多様な形状に製造される。一般的に、マスクパックの形状は、
図4のように、目と口部分が開いており、顔の形状に合わせて製造される。その他にも、目、鼻、唇専用のマスクパックがあり得、形状は特に限定されない。また、前記マスクパックは、平面構造であるか、立体構造であってもよい。
【0048】
図1は、本発明の重金属吸着用マスクパックの製造方法による製造工程の模式図を示すものである。具体的には、不織布をガイドローラを用いてアルカリ溶液に浸漬させる工程1を経た後、ゴムローラを用いて不織布に付いたアルカリ溶液を絞る(squeezing)工程2により不織布にアルカリ溶液をよく染み込ませる。この後、常温で10~50分間、アルカリ溶液を処理した不織布を熟成する工程3を行う。
【0049】
その後、ガイドローラを用いてカルボキシメチル化溶液に浸漬させる工程4を経た後、ゴムローラを用いて不織布に付いたカルボキシメチル化溶液を絞る(squeezing)工程5により不織布にカルボキシメチル化溶液をよく染み込ませる。この後、常温~60℃以下で10分~3時間カルボキシメチル化溶液を処理した不織布を熟成する工程6を行う。この後、水に浸漬させて水洗する工程7を経た後、ゴムローラを用いて絞る(squeezing)工程8を行う。その後、水で濾過する工程9を経た後、40℃で乾燥10して、重金属吸着用マスクパックを製造する。
【0050】
本発明の製造方法により製造された重金属吸着用マスクパックの湿潤状態の引張強度は3~7MPaであってもよい。具体的には、前記引張強度は3.42~6MPaであってもよい。さらに具体的には、前記引張強度は4.34~6MPaであってもよい。前記範囲を満足する場合、湿潤状態だけでなく、乾燥状態でもマスクパックの物性が強くて形状がよく維持され、容易に損傷しない。前記引張強度は、本発明のコールドパッドバッチ法による熟成温度および熟成時間を最適化して調節することができる。
【0051】
前記重金属吸着用マスクパックの湿潤状態の引張強度は、本明細書に係るマスクパックのサンプルでUTM(Universal test machine)を用いて測定することができる。前記UTM(Universal test machine)を用いる場合、長さは3cm、速度は10mm/minの条件にして測定することができる。また、前記サンプルは、本明細書に係るマスクパックを水道水に浸して3日間30℃保管後、横×縦が2cm×5cmとなるように製造することができる。
【0052】
本発明の製造方法により製造された重金属吸着用マスクパックの水分蒸発率は、15分で60%以下である。好ましくは、前記水分蒸発率は、15分で20%以下であってもよい。他の例として、前記水分蒸発率は、15分で0超過20%以下であってもよい。さらに他の例として、前記水分蒸発率は、15分で1以上20%以下であってもよい。本明細書のもう一つの実施態様において、前記水分蒸発率は、15分で20%以下であり、30分で35%以下であり、45分で52%以下であり、60分で65%以下であってもよい。好ましくは、15分で0超過20%以下であり、30分で0超過35%以下であり、45分で0超過52%以下であり、60分で0超過65%以下であってもよい。さらに好ましくは、15分で1以上20%以下であり、30分で21以上35%以下であり、45分で36以上52%以下であり、60分で53以上65%以下である。さらに他の実施態様において、前記水分蒸発率は、15分で1以上19%以下であり、30分で20以上30%以下であり、45分で31以上45%以下であり、60分で46以上56%以下である。カルボキシメチレーション反応によってカルボキシレート含有量が増加したセルロースを含むマスクパックは、親水性が強くなり、水分をよく取るため、時間に応じた水分蒸発率が低い。これによって、本発明の一実施態様に係るマスクパックは、重金属吸着能力に優れるだけでなく、保湿効果にも優れるという特徴がある。前記水分蒸発率は、マスクパックを水に1時間以上含浸させた後、30℃、湿度60%のインキュベータで時間ごとに初期重量対比の重量変化率を測定したものである。具体的には、下記式を用いて計算することができる。
【数2】
【0053】
前記水分蒸発率は15分で60%以下であるというのは、本発明の製造方法により製造された重金属吸着用マスクパックの製造後、15分間放置した後に測定したマスクパックの水分蒸発率が60%以下であることを意味する。このような説明は、前記水分蒸発率に関する内容に適用される。
【実施例】
【0054】
以下、本明細書を具体的に説明するために実施例を挙げて詳細に説明する。しかし、本明細書に係る実施例は種々の異なる形態に変形可能であり、本明細書の範囲が以下に詳述する実施例に限定されると解釈されない。本明細書の実施例は、当業界における平均的な知識を有する者に本明細書をより完全に説明するために提供されるものである。
【0055】
実施例1.
【0056】
1.アルカリ溶液を用いたコールドパッドバッチ法を行うステップ
水とイソプロパノールを6:4の重量比率で混合製造した溶媒に、水酸化ナトリウム(NaOH)を添加して10%アルカリ溶液を製造した。セルロース不織布を前記アルカリ溶液に1分間浸漬させた後、ゴムローラを用いて不織布を絞る(squeezing)過程を経た。この後、前記不織布を常温で30分間熟成させた。
【0057】
2.カルボキシメチル化溶液を用いたコールドパッドバッチ法を行うステップ
水とイソプロパノールを2:8の比率で混合製造した溶媒に、モノクロロ酢酸を添加して10%カルボキシメチル化溶液(モノクロロ酢酸溶液)を製造した。前記アルカリ溶液によって浸漬後、熟成した不織布を前記カルボキシメチル化溶液に5分間浸漬させた後、ゴムローラを用いて不織布を絞る(squeezing)過程を経た。この後、前記不織布を常温で3時間熟成させた。
【0058】
3.水洗、濾過および乾燥するステップ
前記カルボキシメチル化溶液に浸漬後、熟成した不織布を水で水洗および濾過する過程を経た。この後、40℃のオーブンで乾燥して重金属吸着用マスクパックを製造した。
【0059】
実施例2.
前記実施例1の2.カルボキシメチル化溶液を用いたコールドパッドバッチ法を行うステップにおいて、不織布の熟成温度を50℃、熟成時間を30分にしたことを除けば、前記実施例1と同様の方法でマスクパックを製造した。製造したマスクパックの様子は
図4に示した。
【0060】
実施例3.
前記実施例1の3.水洗、濾過および乾燥するステップにおいて、濾過する過程を経ていないことを除けば、前記実施例2と同様の方法でマスクパックを製造した。
【0061】
比較例1.
前記実施例1の2.カルボキシメチル化溶液を用いたコールドパッドバッチ法を行うステップにおいて、熟成温度を80℃、熟成時間を30分にしたことを除けば、前記実施例1と同様の方法でマスクパックを製造した。
【0062】
比較例2.
常温でセルロース不織布を水に30分間浸漬させた後、1時間熟成させた。この後、40℃のオーブンで乾燥した。
【0063】
比較例3.
前記実施例1の2.カルボキシメチル化溶液を用いたコールドパッドバッチ法を行うステップにおいて、不織布の熟成温度を50℃、熟成時間を3時間30分にし、3.水洗、濾過および乾燥するステップにおいて、濾過する過程を経ていないことを除けば、前記実施例1と同様の方法でマスクパックを製造した。
【0064】
前記実施例および比較例に適用した条件は下記表1の通りであり、実施例1および2、比較例1および2により製造されたマスクパックを走査電子顕微鏡(SEM)を用いて撮影した表面イメージは
図3に示される通りである。
【表1】
【0065】
実験例.
前記実施例および比較例により製造されたマスクパックの引張強度および重金属吸着量を測定した。前記実施例および比較例の条件ごとに改質された不織布を水道水に浸して3日間30℃保管後、横×縦が2cm×5cmとなるように切断してサンプルを用意した。この時、縦(MD)方向に物性を測定できるように切断した。
【0066】
1.重金属吸着用マスクパックの物性(湿潤状態の引張強度)の測定
用意されたサンプルは、UTM(Universal test machine)を用いて湿潤状態の引張強度を測定した。測定長さは3cm、速度は10mm/minにした。実施例および比較例によりそれぞれ製造されたサンプルの湿潤状態の引張強度を下記表2に示した。
【0067】
2.重金属吸着用マスクパックの重金属吸着量の測定
【0068】
(1)重金属(鉛)吸着方法
塩化鉛(PbCl2)1.34gを1Lの水に溶解させて、1000mg/l(Pb2+)の塩化鉛原液を製造した。塩化鉛原液(pH4.1)を希釈して塩化鉛水溶液50mg/lを製造した。前記製造された塩化鉛水溶液(50mg/l)40gに、前記実施例および比較例により製造されたマスクパックを24時間浸漬した
【0069】
(2)重金属(銅)吸着方法
硫酸銅(CuSO4)2.512gを1Lの水に溶解させて、1000mg/l(Cu2+)の硫酸銅原液を製造した。硫酸銅原液(pH4.3)を希釈して硫酸銅水溶液100mg/lを製造した。前記製造された硫酸銅水溶液50mg/l 40gに、前記実施例および比較例により製造されたマスクパックを24時間浸漬した。
【0070】
(3)重金属吸着量の測定方法
吸着が完了した水溶液をポリテトラフルオロエチレン(PTFE)フィルタを用いて濾過した。濾過した試料(水溶液)1gを15mlの円形チューブ(coning tube)に入れた。前記円形チューブに内部標準物質のスカンジウム(Sc)を100μL添加した後、超純水で全体溶液が10mLとなるように希釈した。希釈した後、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)フィルタを用いて再び濾過した。標準溶液として1ug/mL、5ug/mLおよび10ug/mLを調製した後、重金属吸着量をICP-OES(Optima 7300DV)で分析した。
【0071】
(4)重金属吸着量の計算方法
製造されたマスクパックの重金属吸着量は下記の計算式を用いて計算し、その結果を下記表2に示した。
[計算式]
【数3】
前記計算式において、
Adsorption capacity(mg/g):吸着剤の1gあたりの重金属イオンの吸着量(mg)、
C
i:重金属吸着前の塩化鉛または硫酸銅水溶液の初期濃度(Initial concentration)(mg/L)、
C
f:重金属吸着が完了した水溶液の濾過後の最終濃度(Final concentration)(mg/L)、
V:実験に用いた初期溶液の体積(solution volume)(L)、
M:不織布の重量(Adsorbent dose)(g)。
【表2】
【0072】
前記表2によれば、湿潤状態のマスクパックの引張強度は、実施例1~3の方が、比較例1および3より高くて優れた機械的物性を有することが分かる。また、実施例1~3により製造されたマスクパックの重金属吸着量は、比較例2より高い値を有することが分かり、本発明により製造されたマスクパックは、優れた機械的物性を有しかつ、重金属吸着量も高いことを確認することができる。比較例3の場合、湿潤状態でマスクパックの構造が崩れるほど物性が弱くて湿潤状態の引張強度および重金属吸着量を測定することができず、これを前記表2に「-」と表示した。
【0073】
3.重金属吸着用マスクパックの水分蒸発率の測定
実施例および比較例により製造されたマスクパックをそれぞれ1時間以上水に含浸させた。この後、30℃、湿度60%のインキュベータで時間ごとに初期重量対比の重量変化率を測定した。具体的には、下記の計算式を用いて水分蒸発率を計算し、その結果を下記表3に示した。
[計算式]
【数4】
【表3】
【0074】
前記表3の結果により、本発明の製造方法により製造された重金属吸着用マスクパックの時間に応じた水分蒸発率を下記の
図2にグラフで示した。前記表3および下記の
図2によれば、実施例1~3は、比較例2より時間に応じた水分蒸発率が低くて、保湿効果に優れていることを確認することができた。
【0075】
一方、比較例1は、実施例1~3より水分蒸発率が低いものの、前記表2によれば、比較例1によるマスクパックの引張強度が実施例1~3によるマスクパックの引張強度より極めて低くて、機械的強度が低下することを確認することができた。
【0076】
そして、比較例3によるマスクパックは、水分吸収過程で一部が水に溶解して水分蒸発率の測定のための前記マスクパックの重量を測定することができなかった。
【0077】
したがって、本発明の製造方法によるマスクパックは、優れた機械的強度、十分な重金属吸着能力および保湿効果を有し、経済的な方法で重金属吸着が可能なマスクパックを大量製造できることを確認した。
【0078】
以上、本発明の好ましい実施例について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、特許請求の範囲と発明の詳細な説明の範囲内で多様に変形して実施することが可能であり、これも発明の範疇に属する。
【符号の説明】
【0079】
1:アルカリ溶液に浸漬させる工程
2:ゴムローラを用いて不織布に付いたアルカリ溶液を絞る工程
3:アルカリ溶液を処理した不織布を熟成する工程
4:カルボキシメチル化溶液に浸漬させる工程
5:ゴムローラを用いて不織布に付いたカルボキシメチル化溶液を絞る工程
6:カルボキシメチル化溶液を処理した不織布を熟成する工程
7:水に浸漬させて水洗する工程
8:ゴムローラを用いて絞る工程
9:水で濾過する工程
10:乾燥する工程