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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-11
(45)【発行日】2022-04-19
(54)【発明の名称】光アイソレータ素子
(51)【国際特許分類】
   G02B 27/28 20060101AFI20220412BHJP
【FI】
G02B27/28 A
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020530472
(86)(22)【出願日】2018-12-12
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-02-18
(86)【国際出願番号】 KR2018015754
(87)【国際公開番号】W WO2019117615
(87)【国際公開日】2019-06-20
【審査請求日】2020-06-08
(31)【優先権主張番号】10-2017-0173335
(32)【優先日】2017-12-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2018-0158326
(32)【優先日】2018-12-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】キム、ビュン ムク
(72)【発明者】
【氏名】ハン、サン チョル
(72)【発明者】
【氏名】パク、ソン ミン
【審査官】右田 昌士
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-129146(JP,A)
【文献】特開平08-021748(JP,A)
【文献】特開2007-279424(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0212790(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 27/28
G02F 1/09
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光制御フィルム、第1および第2光路変更素子を順に含み、
前記第1光路変更素子は、正方向入光面に第1角度の入射角で入射した入射光を前記第1角度とは異なる第2角度の出射角で出射させ、正方向出光面に前記第2角度で入射した光を前記第1角度で出射させ、
前記第2光路変更素子は正方向入光面に前記第2角度の入射角で入射した入射光を第1角度の出射角で出射させ、正方向出光面に第1角度の入射角で入射した入射光を前記第2角度の出射光及び前記第2角度とは異なる第3角度の出射光で出射させ、
前記第1光路変更素子は、正方向出光面に前記第3角度の入射角で入射した入射光を前記第1角度ではない異なる角度の出射光として出射させ、
前記光制御フィルムは、正方向入光面または正方向出光面に前記第1角度の入射角で入射した入射光は透過させ、前記第1角度とは異なる角度で入射した光は遮断する、光アイソレータ素子。
【請求項2】
前記第1光路変更素子は、正方向入光面に前記第1角度の入射角で入射した入射光を前記第1角度と異なる前記第2角度の出射角の出射光のみで出射させる、請求項1に記載の光アイソレータ素子。
【請求項3】
前記第2光路変更素子は、正方向出光面に前記第1角度の入射角で入射した入射光を前記第2角度の出射角の出射光および前記第3角度の出射角の出射光のみで出光させる、請求項1または2に記載の光アイソレータ素子。
【請求項4】
前記第1角度は-90度超過~90度未満範囲内の角度であり、
前記第2角度は-65度~-5度または5度~65度の範囲内の角度であり、
前記第3角度は前記第2角度と同じ大きさの角度を有し、符号が反対である角度である、請求項1から3の何れか一項に記載の光アイソレータ素子。
【請求項5】
前記第1光路変更素子および前記第2光路変更素子は線形の単位プリズム構造が一面に複数形成されているプリズムフィルムである、請求項1から4の何れか一項に記載の光アイソレータ素子。
【請求項6】
前記プリズムフィルムは屈折率が550nm波長の光を基準として1.35~1.70の範囲内である、請求項5に記載の光アイソレータ素子。
【請求項7】
前記第1光路変更素子の単位プリズム構造の断面は不等辺三角形の形態であり、前記第2光路変更素子の単位プリズム構造の断面は二等辺三角形の形態である、請求項5または6に記載の光アイソレータ素子。
【請求項8】
前記第1光路変更素子の単位プリズム構造の断面は直角三角形の形態である、請求項7に記載の光アイソレータ素子。
【請求項9】
前記光制御フィルムは吸収型ルーバーフィルムである、請求項1から8の何れか一項に記載の光アイソレータ素子。
【請求項10】
請求項1からの何れか一項に記載された光アイソレータ素子を少なくとも2個以上含み、前記光アイソレータ素子が直列に配置されている構造を有する、光アイソレータ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願との相互引用]
本出願は2017年12月15日付大韓民国特許出願第10-2017-0173335号および2018年12月10日付大韓民国特許出願第10-2018-0158326号に基づいた優先権の利益を主張し、該当韓国特許出願の文献に開示されたすべての内容は本明細書の一部として含まれる。
【0002】
[技術分野]
本出願は光アイソレータ素子に関する。
【背景技術】
【0003】
光アイソレータ装置は、正方向での光透過率が逆方向での光透過率に比べて高い装置であり、光ダイオード(optical diode)とも呼ばれる。光アイソレータ装置は、光通信やレーザー光学分野で不要な反射光を防ぐことに使われ得、その他にも建物や自動車ガラスに適用されてセキュリティーや私生活の保護などに使われてもよい。また、光アイソレータ装置は多様なディスプレイでの輝度向上のために、または隠蔽・掩蔽が要求される軍用製品などにも適用され得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本出願は光アイソレータ素子および光アイソレータ装置に関する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本出願に関する一例において、本出願は光アイソレータ素子に関する。図1および図2を参照して本出願の発明を説明すれば下記の通りである。
【0006】
本明細書で用語「光アイソレータ素子」とは、正方向に入射した光の透過率が逆方向に入射した光の透過率に比べて相対的に大きくなるように構成された素子を意味し得る。前記正方向(Forward direction)は光アイソレータ素子に入射した光の透過率が最も大きい方向を意味し得、逆方向(Backward direction)は光アイソレータ素子に入射した光の透過率が最も低い方向を意味し得る。前記正方向の透過率Fと逆方向の透過率Bの比率(B/F)は0.7以下、0.6以下または0.5以下であり得、下限は特に制限されるものではないが、例えば0以上、または0超過であり得る。本出願で入光面は光アイソレータ素子の正方向に入射する光が入射する面を意味し得、出光面は光アイソレータ素子の正方向に入射する光が出射する面を意味し得る。
【0007】
本明細書で用語「透過率」、「位相差値」、「反射率」および「屈折率」などのように、光学的物性に関する基準波長は、光アイソレータ素子または光アイソレータ装置を使ってアイソレートさせようとする光により決定され得る。例えば、本出願の素子または装置を利用して可視光領域の光をアイソレートさせようとする場合に前記透過率などは例えば、400nm~700nmの範囲内のいずれか一つの波長または約550nm波長の光を基準とした数値であり得、赤外線領域の光をアイソレートさせようとする場合に前記透過率などは例えば、700nm~1000nmの範囲内のいずれか一つの波長または約850nm波長の光を基準とした数値であり得、紫外線領域の光をアイソレートさせようとする場合には前記透過率などは例えば、100nm~400nmの範囲内のいずれか一つの波長または約300nm波長の光を基準とした数値であり得る。
【0008】
本出願で用語「入射角」は、特に別途に規定しない限り、入光面の法線を基準として測定された角度であり得る。この時、前記法線を基準として時計回り方向に測定された角度は正数(+)で、反時計回り方向に測定された角度は負数(-)で表示する。また、本出願で用語「出射角」は、特に別途に規定しない限り、出光面の法線を基準として測定された角度であって、前記法線を基準として時計回り方向に測定された角度は正数(+)で、反時計回り方向に測定された角度は負数(-)で表示する。
【0009】
本出願で、角度(degree、°)を表す値は誤差範囲を考慮した値であり得る。前記角度を表す値は例えば、垂直、平行、入射角および/または出射角などを意味し得、前記誤差範囲は±1度、±2度、±3度、±4度または±5度の範囲内であり得る。
【0010】
本出願は光アイソレータ素子に関する。本出願の光アイソレータ素子は光制御フィルム、第1光路変更素子、および第2光路変更素子を含むことができる。
【0011】
一つの例示において、前記光路変更素子および光制御フィルムはそれぞれ入光面と出光面を有することができ、光制御フィルムの出光面と第1光路変更素子の入光面は互いに対向し得る。
【0012】
もう一つの例示において、第1光路変更素子の出光面と第2光路変更素子の入光面は互いに対向することができる。
【0013】
一つの例示において、前記素子は光制御フィルム、第1光路変更素子、および第2光路変更素子を順に含むことができる。
【0014】
もう一つの例示において、前記光制御フィルムの出光面と第1光路変更素子の入光面は互いに接することができる。
【0015】
もう一つの例示において、前記第1光路変更素子の出光面と第2光路変更素子の入光面は互いに接することができる。
【0016】
本明細書で用語「光路変更素子」は入射する光の経路を変更できる光学素子を意味し得る。例えば、光路変更素子は入射光を屈折または回折させて光の進行経路を変更できる素子を意味し得る。また、用語「光制御フィルム」は所定の角度で入射した入射光のみを透過させるフィルムを意味し得る。
【0017】
前記第1光路変更素子は、正方向入光面に第1角度の入射角で入射した光を第2角度の出射角で出射させることができる素子であり得る。また、前記第1光路変更素子は、正方向出光面に第2角度の入射角で入射した光を第1角度の出射角で出射させることができる素子であり得る。前記で第1および第2角度は互いに異なる角度であり得る。
【0018】
前記第2光路変更素子は正方向入光面に第2角度の入射角で入射した入射光を第1角度の出射角で出射させることができ、正方向出光面に第1角度の入射角で入射した入射光を第2角度および/または第3角度の出射光で出射させることができる光学素子であり得る。一つの例示において、前記第2角度と第3角度は大きさが同一または異なり得る。もう一つの例示において、前記第2角度と第3角度は符号が互いに異なる角度であり得る。もう一つの例示において、前記第3角度は第2角度と同じ大きさの角度を有し、第2角度と異なる符号を有することができる。
【0019】
一方、前記光制御フィルムは、正方向入光面または正方向出光面に第1角度の入射角で入射した入射光は透過させ、前記第1角度とは異なる角度で入射した入射光は遮断させることができる光学素子であり得る。この時、前記遮断は吸収または反射を意味し得る。
【0020】
一つの例示において、前記第1光路変更素子は正方向入光面に第1角度の入射角で入射した入射光を前記第1角度とは違った第2角度の出射角の出射光のみで出射させることができる。「第1光路変更素子が前記正方向入光面に第1角度の入射角で入射した入射光を第2角度の出射角の出射光のみで出射させる」とは、前記第1角度の入射角で入射する入射光Iのうち、第2角度の出射角で出射する出射光Iの比率(I/I)が10%以上、20%以上、30%以上、40%以上、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、または95%以上である場合を意味し得、最も理想的には100%である場合を意味し得る。
【0021】
本出願の一例において、第2光路変更素子は正方向出光面に第1角度の入射角で入射した入射光を第2角度の出射角の出射光および第3角度の出射角の出射光のみで出光させることができる。「第2光路変更素子が前記正方向出光面に第1角度の入射角で入射した入射光を第2角度の出射角の出射光および第3角度の出射角の出射光のみで出光させる」とは、前記正方向出光面に第1角度の入射角で入射した入射光Lのうち、第2角度の出射角の出射光Lおよび第3角度の出射角の出射光Lで出射する光の和に対する比率((L+L)/L)が80%以上、85%以上、90%以上または95%以上である場合を意味し得、最も理想的には100%である場合を意味し得る。
【0022】
一つの例示において、前記第1角度は-90度超過~90度未満(-90度~90度)の角度であり得る。例えば、前記第1角度は-80度以上、-70度以上、-60度以上、-50度以上、-40度以上、-30度以上、-20度以上、-10度以上または-5度以上である。または前記第1角度は例えば、80度以下、70度以下、60度以下、50度以下、40度以下、30度以下、20度以下、10度以下または5度以下であり得る。一つの例示において、前記第1角度は、実質的に約0度であり得る。
【0023】
一つの例示において、前記第2角度は5度以上でありながら65度以下(5度~65度)であり得る。前記第2角度は他の例示において、5度以上、10度以上、15度以上、20度以上、25度以上、30度以上、35度以上または40度以上であり得る。または前記第2角度は65度以下、60度以下、58度以下、56度以下、54度以下、52度以下または50度以下であり得る。一つの例示において、前記第2角度は実質的に約45度であり得る。
【0024】
もう一つの例示において、前記第2角度は、-65度以上でありながら-5度以下(-65度~-5度)であり得る。前記第2角度は他の例示において、-5度以下、-10度以下、-15度以下、-20度以下、-25度以下、-30度以下、-35度以下または-40度以下であり得る。または前記第2角度は-65度以上、-60度以上、-58度以上、-56度以上、-54度以上、-52度以上または-50度以上であり得る。一つの例示において、前記第2角度は実質的に約-45度であり得る。
【0025】
一つの例示において、前記第3角度は前記第2角度と同じ量(大きさ)を有し、符号が反対の角度であり得る。例えば、前記第2角度が正方向入光面または正方向出光面の法線に対して時計回り方向の値であれば、前記第3角度は正方向入光面または正方向出光面の法線に対して反時計回り方向の値であり得る、また、前記第2角度が正方向入光面または正方向出光面の法線に対して反時計回り方向の値であれば、前記第3角度は正方向入光面または正方向出光面の法線に対して時計回り方向の値であり得る。
【0026】
本出願の光アイソレータ素子は前記第1~第3角度を満足する構造を具現して、入光面に入射した光の透過率が出光面に入射した光の透過率に比べて相対的に高い素子を具現することができる。また、これを通じて両方向に入射する光の透過率が非対称である光学素子を具現することができる。
【0027】
図1は、本出願に関する一例により、本出願の光アイソレータ素子とそれによる光路変更を概略的に図示する。図1を参照すると、本出願の光アイソレータ素子1は、光制御フィルム10、第1光路変更素子20および第2光路変更素子30を含むことができる。前記光制御フィルム10の正方向入光面に第1角度の入射角で入射する入射光100は、前記光制御フィルム10を透過した後、第1光路変更素子20の正方向入光面に入射する、前記第1光路変更素子20は正方向入光面に第1角度の入射角で入射する入射光100を第2角度の出射角の出射光200として出射することができる。前記第2角度の出射光200は第2光路変更素子30の正方向入光面に入射し、前記第2光路変更素子30の正方向入光面に第2角度の入射角で入射する入射光200は第1角度の出射角の出射光300として出射することができる。
【0028】
その反面、本出願光アイソレータ素子1で、第2光路変更素子30の正方向の出光面に対して入射する第1角度の入射光400は、第2角度の出射光500および/または第3角度の出射光700として出射することができる。前記第2角度の出射光500および第3角度の出射光700は、第1光路変更素子20の正方向出光面にそれぞれ第2角度の入射光500および第3角度の入射光700として入射し、このうち第2角度の入射光500は前記第1光路変更素子20で第1角度の出射光600として出射するが、第3角度の入射光700は第1角度ではない異なる角度の出射光700として出射する。前記第1光路変更素子20で出射する光のうち、第1角度で出射する出射光600は光制御フィルム10を透過して出射するが、第1角度ではない角度で出射する出射光700は光制御フィルム10により遮断されて光アイソレータ素子1の逆方向に出射することができない。本出願の光アイソレータ素子は前記のように光の経路を調節して両方向の透過率が異なる素子を具現することができる。
【0029】
本出願の一例において、第1光路変更素子および第2光路変更素子は線形の単位プリズム構造が一面に複数形成されているプリズムフィルムであり得る。本出願で用語「プリズム」は、光が入射する平たい表面を有する多面体状の光学素子を意味し得、光を屈折させたり反射する透明な固体材料で形成された透明な光学素子を意味し得る。第1光路変更素子および第2光路変更素子の入光面または出光面に入射する光の経路を前述した光路のように変更できるものであれば、前記プリズムの形状は特に制限されない。例えば、本出願ではプリズムの稜線(方向)に直交する垂直断面の形状が三角形であるプリズムを使うことができる。この時、各光路変更素子内で、複数であるプリズムの稜線が平行するように配置されているようにプリズムが形成され得る。このような配置を線形プリズム配列と称することができる。
【0030】
一つの例示において、第1光路変更素子は、「第1光路変更素子に含まれる各プリズムの入光面に第1角度の入射角で入射した入射光の光幅A」と「前記各プリズムで第2角度の出射角で出射する出射光の光幅B」とが異なるように出射させることができる素子であり得る。前記光幅は、前記第1角度の入射角で入射する入射光および前記第2角度の出射角で出射する出射光に対して垂直な方向で観察した前記入射光および/または出射光の幅を意味し得る。例えば、第1光路変更素子が(稜線方向に直交する)垂直断面の形状が不等辺直角三角形であるプリズムを含み、直角をなす辺のうち一つの面(底辺)が入光面と一致する場合、第1角度の入射角で正方向に入射する入射光の光幅Aと前記第1角度の入射角で第1光路変更素子に入射して第2角度の出射角で出射する出射光の光幅Bとが異なり得る。このような場合、第1光路変更素子の正方向入光面に第1角度の入射角で入射する入射光は、光量を維持しつつ第2角度の出射角で出射するようにすることができるのに比べて、第1光路変更素子の正方向出光面に第2角度の入射角で入射する入射光は、光幅の差によって入射光の光量のうち一部のみが第1角度の出射角で出射するようにすることができる。これを通じて正方向の透過率と逆方向の透過率の差を高めることができる。
【0031】
前記第1光路変更素子の各プリズムの入光面に第1角度の入射角で入射した入射光の光幅Aと前記各プリズムで第2角度の出射角で出射する出射光の光幅Bの比率(A/B)は、0.0001以上であり得る。前記比率(A/B)は、0.0001以上、0.0002以上、0.0003以上、0.0004以上、0.0005以上、0.0006以上、0.0007以上、0.0008以上、0.0009以上または0.001以上であり得、上限は特に制限されるものではないが、例えば、1以下であり得る。前記第1光路変更素子の各プリズムの入光面に第1角度の入射角で入射した入射光の光幅Aと前記各プリズムで第2角度の出射角で出射する出射光の光幅Bの比率(A/B)が前記範囲を満足する場合、正方向に入射する光を高い透過率で出射させながらも逆方向に入射する光の透過率を低くすることができる。
【0032】
一つの例示において、本出願の光アイソレータ素子に含まれるプリズムは屈折率が1.2~1.8の範囲以内であり得る。前記屈折率はメトリコン製造プリズムカプラーを使って波長550nmで測定した値を意味し得る。前記プリズムの屈折率は第1光路変更素子および/または第2光路変更素子の厚さに応じて適切な範囲で調節され得る。例えば、前記範囲内で前記プリズムの屈折率は1.20以上、1.25以上、1.30以上、1.35以上、1.40以上、1.45以上、1.50以上、1.55以上、または1.60以上であり得、1.80以下、1.75以下、1.70以下、または1.65以下であり得る。前記屈折率を満足する範囲内で第1光路変更素子および/または第2光路変更素子は所定の入射光を優秀な効率で目的とする角度で出射させることができる。
【0033】
一つの例示において、前記第1光路変更素子が有する単位プリズム構造の断面と第2光路変更素子が有する単位プリズム構造の断面とは互いに異なり得る。この時、断面とは,プリズムの稜線(方向)に直交する垂直断面を意味し得る。前記光路変更素子は複数の単位プリズムを含むことができ、この時、各単位プリズムの稜線は平行するように配列され得る。
【0034】
例えば、前記第1光路変更素子に含まれる単位プリズム構造の断面は不等辺三角形の形態であり、第2光路変更素子に含まれる単位プリズム構造の断面は二等辺三角形の形態であり得る。
【0035】
本出願で単位プリズム構造の断面が三角形の形態であるプリズムは三角形プリズムと呼称され得る。例えば、プリズムの稜線に直交する垂直断面の形状が三角形であるプリズムを意味し得、より具体的には前記垂直断面の形状が一つの底辺と二つの斜辺を有する三角形状であるプリズムを意味し得る。本出願で、底辺は正方向入光面または逆方向入光面であり得、または正方向入光面または逆方向入光面の一部を形成することができる。
【0036】
本出願で用語「不等辺三角形プリズム」は、プリズムの稜線に直交する垂直断面の三角形の形状のうち、(少なくとも)二つの斜辺の長さが互いに異なる三角形であるプリズムを意味し得る。本出願で用語「二等辺三角形」は、二つの斜辺が実質的に同じ長さを有する三角形を意味し得る。二等辺三角形が実質的に同じ長さを有するとは、実際に二つの斜辺が同じ長さを有するだけでなく、所定範囲内の誤差、例えば両斜辺の長さの差がいずれか一つの斜辺の長さの5%以内である場合を含む意味で使われ得る。この時、前記言及された不等辺または二等辺三角形の断面を説明するために使われた斜辺を除いた辺は底辺と呼称され得、底辺は正方向入光面または逆方向入光面であり得、または正方向入光面または逆方向入光面の一部を形成することができる。
【0037】
例えば、前記第1光路変更素子に含まれる単位プリズム構造の断面は直角三角形の形態であり得る。前記直角三角形の形態は一つの底辺と一つの斜辺が直交する形態の三角形を意味し得る。前記底辺と一つの斜辺が直交するとは、底辺と斜辺が形成する角度が約90度であることを意味し得、前記角度は前述した誤差範囲を考慮した角度であり得る。
【0038】
一つの例示において、第1光路変更素子に含まれるプリズムの頂角は5度~120度の範囲内であり得る。前記頂角は不等辺プリズムの二つの斜辺が形成する角を意味し得る。例えば、第1光路変更素子に含まれるプリズムは、前記頂角を満足し、不等辺三角形の断面を有することができる。例えば、前記範囲内で、第1光路変更素子に含まれるプリズムの頂角は、10度以上、15度以上、20度以上、25度以上、30度以上、35度以上、40度以上、45度以上、50度以上、55度以上または60度以上であり得、その上限は115度以下、110度以下、105度以下、100度以下、95度以下、90度以下、85度以下、80度以下、75度以下、65度以下または60度以下であり得る。または例えば、第1光路変更素子に含まれるプリズムは、前記頂角を満足する直角三角形の断面を有することができる。第1光路変更素子として所定の断面形態の三角形プリズムを含むプリズムフィルムを使うことによって、入光面に第1角度の入射角で入射した光を第2角度の出射角で出射させることができ、出光面に第2角度の入射角で入射した入射光を第1角度で出射させることができる。
【0039】
他の例示において、第2光路変更素子に含まれるプリズムは頂角が5度~120度の範囲内であるプリズムであり得る。例えば、第2光路変更素子に含まれるプリズムは、前記頂角を満足する三角形の断面を有することができる。例えば、第2光路変更素子に含まれるプリズムは、前記頂角を満足する二等辺三角形の断面を有することができる。すなわち、前記頂角は三角形断面のプリズムで、二つの斜辺が形成する角を意味し得、例えばその下限は10度以上、15度以上、20度以上、25度以上、30度以上、35度以上、40度以上、45度以上、50度以上、55度以上または60度以上であり得、その上限は115度以下、110度以下、105度以下、100度以下、95度以下、90度以下、85度以下、80度以下、75度以下、65度以下または60度以下であり得る。前記三角形プリズムまたは前記二等辺三角形プリズムの頂角が前記範囲を満足する場合、前記プリズムの入光面に第2角度の入射角で入射する光を第1角度の出射角で出射させることができ、前記プリズムの出光面に第1角度の入射角で入射した入射光を第2角度または第3角度の出射光で出射させることができる。前記プリズムの出光面に第1角度で入射した入射光を第3角度の出射光で出射する場合、前記第3角度の出射光は後述する光制御フィルムによって遮断され得る。これを通じて光アイソレータ素子の出光面に入射する光が入射面に出射しないようにすることができ、逆方向透過率を低くすることができる。
【0040】
一つの例示において、複数のプリズム単位構造が光路変更素子に含まれる場合、プリズム単位構造は互いに連結された構造を有することができる。
【0041】
一つの例示において、前記光路変更素子は大きさと形態が同じである複数の単位プリズム構造を含むことができる。
【0042】
一つの例示において、本出願の光アイソレータ素子に含まれる光制御フィルムは吸収型ルーバーフィルムであり得る。前記吸収型ルーバーフィルムは所定の角度で入射する入射光のみを透過させ、その異なる角度で入射する入射光を吸収するルーバーフィルムであり得る。前記光制御フィルムとして吸収型ルーバーフィルムを使って、所定角度の光のみを透過させることができ、これを通じて逆方向に入射する光の透過率を低くすることができる。
【0043】
前記光制御フィルムに適用される吸収型ルーバーフィルムは、複数のルーバーが前述した第1角度と平行な方向に形成されていてもよい。ルーバーが第1角度と平行な方向に形成されているとは、第1角度で入射する光を透過させることができるように形成されていることを意味し得る。前記第1角度と平行な方向は前述した誤差範囲を含む方向を意味し得る。前記吸収型ルーバーフィルムが第1角度と平行な方向に形成されている場合、第1光路変更素子の入光面に出射する第1角度の光を透過させることができ、前記第1角度と異なる角度で出射する光は遮断させることができる。
【0044】
本出願に適用されるルーバーフィルムを製造する方法は特に制限されるものではない。例えば、前記ルーバーフィルムは光透過部および光吸収部を含むことができる。前記光透過部は高い光透過率を有する重合体で製造され得、このような重合体としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、UV光線などの化学線で硬化可能な樹脂などが使われ得る。このような樹脂の例としては、セルロース樹脂(例えば、セルロースアセテートブチレート、トリアセチルセルロースなど)、ポリオレフィン樹脂(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなど)、ポリエステル樹脂(例えば、ポリエチレンテレフタレートなど)、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリビニルクロライド、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂などが挙げられる。前記光吸収部は光を吸収する材料で形成されたフィルムを付着したり、または前記光透過部に光を吸収する材料を蒸着して形成することができる。このような材料の例としては、(1)カーボンブラックなどの黒色または灰色顔料または染料などの暗い色相の顔料または染料、(2)アルミニウム(Al)、銀(Ag)、銅(Cu)、金(Au)、ニッケル(Ni)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)およびクロム(Cr)等の金属、(3)前記金属の酸化物および(4)カーボンブラックなどの暗い色相の顔料または染料を含有する前述した重合体などが挙げられる。
【0045】
一つの例示において、本出願の光アイソレータ素子に含まれる光制御フィルムの厚さは1μm~400μmの範囲内であり得る。前記光制御フィルムの厚さは、1μm以上、2μm以上、3μm以上、4μm以上、5μm以上、6μm以上、7μm以上または8μm以上であり得、400μm以下、390μm以下、380μm以下、370μm以下、360μm以下または350μm以下であり得るが、これに制限されるものではない。
【0046】
他の例示において、第1光路変更素子および/または第2光路変更素子の厚さは5μm~500μmの範囲内であり得る。前記第1光路変更素子および/または第2光路変更素子の厚さは5μm以上、6μm以上、7μm以上または8μm以上であり得、500μm以下、490μm以下、480μm以下、470μm以下、460μm以下、450μm以下、440μm以下、430μm以下、420μm以下、410μm以下または400μm以下であり得るが、これに制限されるものではない。例えば、前記光路変更素子は、底辺から頂点までの距離が前記厚さ範囲を満足できる三角形プリズムを含むことができる。または前記光路変更素子は前記厚さ範囲を満足するフィルム内に前述されたプリズムを含む構造を有することができる。
【0047】
本出願に関する他の一例において、光アイソレータ素子は光制御フィルム、第1プリズムフィルム、および第2プリズムフィルムを順に含むことができる。
【0048】
前記第1および第2プリズムフィルムは、それぞれの一面に一つ以上の単位プリズム構造が線形で形成されているフィルムであり得る。単位プリズム構造は、前述された断面状を有することができるプリズム構造体であって、方向性を有する稜線を有する。複数のプリズム単位構造は各構造の稜線が互いに平行し得るように配列されてプリズムフィルムを形成することができる。
【0049】
一つの例示において、前記単位プリズム構造の各断面は、前述した通り、三角形の形状を有することができ、三角形の形状が有する底辺が互いに連結された構造を有することができる。この場合、各単位プリズム構造が有する断面三角形の中で底辺に該当する部分は、プリズムフィルムの入光面、出光面またはこれらの一部を形成することができる。
【0050】
一つの例示において、第1および/または第2プリズムフィルムは同じ構造の単位プリズム構造を複数個含むことができる。例えば、第1プリズムフィルムは図2に図示された構造のうち、一つの断面を有するプリズム構造が繰り返されたものであり得る。
【0051】
前記第1および第2プリズムフィルムの単位プリズム構造は、それぞれのプリズムフィルムの正方向出光面に頂角を有するように形成されていてもよい。例えば、前記第1プリズムフィルムの単位プリズム構造の断面は不等辺三角形の形態であり、第2光路変更素子の単位プリズム構造の断面は二等辺三角形の形態であり、頂角が正方向出光面に向かうようにまたは正方向出光面と接するように構成され得る。
【0052】
プリズムフィルムおよび光制御フィルムに関する具体的な説明は前述と同じであるため、省略する。
【0053】
本出願はまた、光アイソレータ装置に関する。本出願の光アイソレータ装置は前述した光アイソレータ素子を少なくとも一つ以上含むことができる。用語「光アイソレータ装置」とは、光アイソレータ素子を含む装置であって、光アイソレータ機能を有する。したがって、光アイソレータ装置も正方向に入射した光の透過率が逆方向に入射した光の透過率に比べて相対的に大きくなるように構成されており、このとき、アイソレーション度、正方向透過率および逆方向透過率の範囲は前記光アイソレータ素子で言及した内容を同様に適用することができる。
【0054】
光アイソレータ装置は、前述した光アイソレータ素子を1個または2個以上含むことができる。光アイソレータ素子が2個以上含まれる場合に各光アイソレータ素子は、正方向に沿っていずれか一つの光アイソレータ素子を透過した光が他の光アイソレータ素子の第1光路変更素子側に入射できるように配置され得る。このような方式で複数の光アイソレータ素子が正方向に直列に配置され得る。このように複数個の光アイソレータ素子を適用することによって、光アイソレーション度をより向上させることができる。理論的に正方向に複数の光アイソレータ素子を透過する光は損失なく継続して透過されるが、逆方向に透過する光の場合、1/2の指数倍で継続的に減少する。したがって、光アイソレータ素子の数を制御することによって、光アイソレーション度を最大化することができる。
【0055】
一つの例示において、光アイソレータ装置で正方向に入射した光の透過率と逆方向に入射した光の透過率の比率は、下記の数式1によるアイソレーション度(IR、isolation ratio)による時、約3dB以上であり得る。
【0056】
[数式1]
IR=10×n×log(F/B)
【0057】
数式1でIRはアイソレーション度であり、nは光アイソレータ装置内に含まれる後述する光アイソレータ素子の個数であり、Fは正方向に光アイソレータ装置に入射した光の透過率であり、Bは逆方向に光アイソレータ装置に入射した光の透過率である。
【0058】
光アイソレータ装置の正方向に入射した光の透過率は約50%以上、約55%以上、約60%以上、約65%以上、約70%以上、約75%以上、約80%以上、約85%以上、約90%以上または約95%以上であり得る。前記正方向透過率の上限は約100%であり得る。また、光アイソレータ装置の逆方向に入射した光の透過率は、約50 %以下、約50%未満、約45%以下、約40%以下、約35%以下、約30%以下、約25%以下、約20%以下、約15%以下、約10%以下、約5%以下または約1%以下であり得る。前記逆方向透過率の下限は約0%程度であり得る。
【0059】
前記のような光アイソレータ装置は追加的な構成を含んでもよい。例えば、前記光アイソレータ装置は、前述した光アイソレータ素子に含まれ得るものの他に必要な場合、追加的に光の経路を制御できるプリズムまたは反射板のような光経路制御器をさらに含むことができる。
【0060】
また、光アイソレータ装置は必要な場合、前記以外に追加的な光学要素を含むことができる。例えば、光アイソレータ装置は、ルーバープレートのような光学要素を含むことができる。
【0061】
このようなルーバープレートなどは、例えば、正方向に進行する光が最終的に出射する側、例えば前述した第2光路変更素子の前方および/または後方に存在することができる。
【発明の効果】
【0062】
本出願では、正方向への透過率が高く、光アイソレーション度が優秀な光アイソレータ素子および光アイソレータ装置が提供される。このような光アイソレータ素子または装置は、例えば、光通信やレーザー光学分野、セキュリティー、私生活保護の分野だけでなく、ディスプレイの輝度向上のための部材および隠蔽・掩蔽などが要求される軍事用の製品に適用され得る。
【図面の簡単な説明】
【0063】
図1】本出願に係る光アイソレータ素子の構造を示す模式図。
図2】本出願の一例に係る光路変更素子と関連して、使用可能なプリズムの断面を概略的に図示したものであって、点線の部分は三角形断面の底辺、θは前記断面の形状を説明するために図示された頂角。
【発明を実施するための形態】
【0064】
以下、実施例を通じて本出願を詳細に説明する。しかし、本出願の範囲は下記に提示された範囲によって制限されるものではない。
【0065】
[実施例1]
Breault Research Organization、Inc社の光学モデリングソフトウェアASAP Pro 2014 V1 SP1およびSynopsys社の光線追跡シミュレーションソフトウェアlight toolsを使って、図1のような光経路を有することができるように光アイソレータ素子をモデリングし、両方向の透過率、FとB、そしてアイソレーション度に関する数値をシミュレーションした。モデリングされた光アイソレータ素子1は、光制御フィルム10、第1光路変更素子20、および第2光路変更素子30が順に積層された構造を有するようにした。具体的には、光制御フィルム10は屈折率1.5の樹脂の内部に吸収層ルーバーが光進行方向に水平に形成されており、第1光路変更素子20は屈折率が1.52であり、正方向出光面側に形成された頂角が52度である直角三角形プリズムアレイを形成した素子であり、第2光路変更素子30は屈折率が1.52であり、正方向出光面側に形成された頂角が59度である二等辺三角形プリズムアレイで構成される。そして、前記光制御フィルム10、第1光路変更素子20および第2光路変更素子30はそれぞれ厚さを200μmに設定し、前記光制御フィルム10、第1光路変更素子20、および第2光路変更素子30がラミネーションを通じて一つのフィルム形態に製作された姿をコンピュータモデリングし、両方向の透過率、FとB、そしてアイソレーション度をそれぞれ計算した。
【0066】
その結果、正方向透過率Fは100%であり、反対方向に光を透過させて確認した逆方向透過率Bは50%であった。また、数式1によるアイソレーション度(IR)は約3.01であった。
【0067】
[実施例2]
第1光路変更素子20として、屈折率が1.62であり、正方向出光面側に形成された頂角が48度である不等辺プリズムアレイを使い、第2光路変更素子30として、屈折率が1.62であり、正方向出光面側に形成された頂角が57度である二等辺三角形アレイを使ったことを除いては、実施例1と同じ構造の積層された構造をモデリングした。
【0068】
その結果、得られた正方向透過率Fは100%であり、反対方向に光を透過させて確認した逆方向透過率Bは1%であった。また、数式1によるアイソレーション度(IR)は約20であった。
【0069】
前記実施例1および2のシミュレーション結果を通じて、本出願の光アイソレータ素子が正方向透過率と逆方向透過率が大きな差を示すことを確認することができ、光アイソレーション度が優秀な光アイソレータ素子を形成できることを確認することができる。
【符号の説明】
【0070】
1:光アイソレータ素子
10:光制御フィルム
20:第1光路変更素子
30:第2光路変更素子
100:正方向に入射する第1角度の入射光
200:正方向に出射する第2角度の出射光
300:正方向に出射する第1角度の出射光
400:逆方向に入射する第1角度の入射光
500:逆方向に出射する第2角度の出射光
600:逆方向に出射する第1角度の出射光
700:逆方向に入射し、光制御フィルムで遮断される入射光
図1
図2(a)】
図2(b)】
図2(c)】
図2(d)】
図2(e)】