IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ キヤノントッキ株式会社の特許一覧

特許7057334基板保持ユニット、基板保持部材、基板保持装置、基板処理装置および電子デバイスの製造方法
<>
  • 特許-基板保持ユニット、基板保持部材、基板保持装置、基板処理装置および電子デバイスの製造方法 図1
  • 特許-基板保持ユニット、基板保持部材、基板保持装置、基板処理装置および電子デバイスの製造方法 図2
  • 特許-基板保持ユニット、基板保持部材、基板保持装置、基板処理装置および電子デバイスの製造方法 図3
  • 特許-基板保持ユニット、基板保持部材、基板保持装置、基板処理装置および電子デバイスの製造方法 図4
  • 特許-基板保持ユニット、基板保持部材、基板保持装置、基板処理装置および電子デバイスの製造方法 図5A
  • 特許-基板保持ユニット、基板保持部材、基板保持装置、基板処理装置および電子デバイスの製造方法 図5B
  • 特許-基板保持ユニット、基板保持部材、基板保持装置、基板処理装置および電子デバイスの製造方法 図5C
  • 特許-基板保持ユニット、基板保持部材、基板保持装置、基板処理装置および電子デバイスの製造方法 図6
  • 特許-基板保持ユニット、基板保持部材、基板保持装置、基板処理装置および電子デバイスの製造方法 図7
  • 特許-基板保持ユニット、基板保持部材、基板保持装置、基板処理装置および電子デバイスの製造方法 図8
  • 特許-基板保持ユニット、基板保持部材、基板保持装置、基板処理装置および電子デバイスの製造方法 図9
  • 特許-基板保持ユニット、基板保持部材、基板保持装置、基板処理装置および電子デバイスの製造方法 図10
  • 特許-基板保持ユニット、基板保持部材、基板保持装置、基板処理装置および電子デバイスの製造方法 図11
  • 特許-基板保持ユニット、基板保持部材、基板保持装置、基板処理装置および電子デバイスの製造方法 図12
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-11
(45)【発行日】2022-04-19
(54)【発明の名称】基板保持ユニット、基板保持部材、基板保持装置、基板処理装置および電子デバイスの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/683 20060101AFI20220412BHJP
   C23C 14/50 20060101ALI20220412BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20220412BHJP
   H05B 33/10 20060101ALI20220412BHJP
【FI】
H01L21/68 N
C23C14/50 A
H05B33/14 A
H05B33/10
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2019196791
(22)【出願日】2019-10-29
(65)【公開番号】P2021072319
(43)【公開日】2021-05-06
【審査請求日】2020-11-02
(73)【特許権者】
【識別番号】591065413
【氏名又は名称】キヤノントッキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】特許業務法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大川 顕
(72)【発明者】
【氏名】鍋島 健
【審査官】杢 哲次
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/117509(WO,A1)
【文献】特開2013-074197(JP,A)
【文献】登録実用新案第3113494(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/683
C23C 14/50
H01L 51/50
H05B 33/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
保持面において基板を保持するための基板保持ユニットであって、
前記基板に粘着する粘着材料が設けられた粘着面を有する粘着部材と、
前記粘着部材に接続されたコイルバネと、
前記コイルバネの内周側に挿通され、前記粘着部材と連結された軸部と、を有し、
前記粘着部材の前記粘着面が前記保持面に対して傾動可能、かつ、進退可能となるように、前記粘着部材が前記コイルバネを介して基体に取り付けられ
前記粘着部材は、前記軸部の径よりも大きい開口を有する底部と、上部に前記粘着面を有する筒状の壁部と、によって構成され、
前記軸部の一端に、前記開口の径よりも大きいボルトが取り付けられ、
前記軸部が前記開口を挿通することで前記粘着部材と連結される
ことを特徴とする基板保持ユニット。
【請求項2】
前記粘着部材は前記軸部に固定されている
ことを特徴とする請求項1に記載の基板保持ユニット。
【請求項3】
前記粘着部材は前記軸部に傾動可能に連結されている
ことを特徴とする請求項1に記載の基板保持ユニット。
【請求項4】
前記コイルバネは、前記粘着部材の前記粘着面を前記基板側へと付勢することで、前記粘着面が前記保持面から突出する
ことを特徴とする請求項1からのいずれか一項に記載の基板保持ユニット。
【請求項5】
前記軸部の前記粘着部材とは反対側の一端に取り付けられた磁石を有する
ことを特徴とする請求項1からのいずれか一項に記載の基板保持ユニット。
【請求項6】
前記保持面を有する基体と、複数の基板保持ユニットと、を有する基板保持部材であって、
前記複数の基板保持ユニットの各々は、請求項1からのいずれか一項に記載の基板保
持ユニットであり、
前記複数の基板保持ユニットそれぞれの前記粘着面が前記基板に粘着することにより前記基板を保持する
ことを特徴とする基板保持部材。
【請求項7】
基板保持部材に対して基板を保持させる基板保持装置であって、
前記基板保持部材は、
基板を保持する保持面を有する基体と、複数の基板保持ユニットと、を有
前記基板保持部材の前記複数の基板保持ユニットのそれぞれは、
軸部と、
前記軸部の第1端に連結され、前記基板に粘着する粘着材料が設けられた粘着面を有する粘着部材と、
前記軸部の前記第1端とは反対の第2端に連結されたストッパ部と、
前記粘着部材に接続された弾性部材と、を有し、
前記基板保持部材の前記基体は、開口の設けられた保持部を有し、
前記基板保持部材において、前記粘着部材と前記ストッパ部とが前記保持部を間に挟む位置に配置されるように、前記軸部が前記保持部の前記開口に挿通され、
前記基板保持部材において、前記粘着部材の前記粘着面が前記保持面に対して傾動可能、かつ、進退可能となるように、前記複数の基板保持ユニットのそれぞれが前記基体に取り付けられ
前記基板保持装置は、
前記基板を、前記保持面と当接しない第1の位置と、前記基板と前記保持面が当接する第2の位置と、の間で移動させる基板移動手段と、
前記基板が前記第1の位置にあるときに前記粘着面を前記保持面より前記基板から離れた位置に移動し、前記基板移動手段が前記基板を前記第2の位置に移動させた後に前記粘着面を前記基板に当接させる粘着部材移動手段と、を有し、
前記基板保持装置の前記粘着部材移動手段は、電磁力により前記粘着面を移動させるための電磁コイルを有する
ことを特徴とする基板保持装置
【請求項8】
前記複数の基板保持ユニットのそれぞれは、前記粘着部材に接続された弾性部材を介して前記保持部に取り付けられている
ことを特徴とする請求項に記載の基板保持装置
【請求項9】
前記粘着部材の前記粘着面が前記保持面から突出するように、前記弾性部材が前記粘着部材を前記基板側へと付勢する
ことを特徴とする請求項に記載の基板保持装置
【請求項10】
前記ストッパ部の径は、前記開口の径より大きい
ことを特徴とする請求項からのいずれか一項に記載の基板保持装置
【請求項11】
前記粘着部材移動手段は、基板保持ユニットに対して非接触で前記粘着面を移動させることを特徴とする請求項7から10のいずれか一項に記載の基板保持装置。
【請求項12】
前記基板を保持している前記基板保持部材を反転する反転手段を備える
ことを特徴とする請求項から11のいずれか一項に記載の基板保持装置。
【請求項13】
請求項から12のいずれか一項に記載の基板保持装置と、
前記基板保持装置によって前記基板保持部材に保持された基板上に成膜を施す成膜装置と、を備える
ことを特徴とする基板処理装置。
【請求項14】
請求項13に記載の基板処理装置によって前記基板に処理を行うことにより電子デバイスを製造する、電子デバイスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板保持ユニット、基板保持部材、基板保持装置、基板処理装置、基板処理方法および電子デバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
産業用や民生用など様々な分野に、表示パネルに画像を表示するディスプレイ装置が広く用いられている。ディスプレイ装置として例えば、有機材料の電界発光を用いた有機EL素子を備えた有機EL装置や、液晶ディスプレイ装置などがある。かかるディスプレイ装置の製造時には、成膜装置において、基板上に成膜材料(金属電極材料や有機材料など)を付着させて成膜を行う。基板の成膜室内への搬出入時や成膜工程時には、保持機構で保持した基板を、搬送機構により移動または反転させることがある。そのため、位置ずれ等が発生しないように、基板を安定的に保持する必要がある。
【0003】
搬送時や成膜時に基板を保持する機構として、クランプによる挟持、受け爪への載置、静電チャックによる吸着等の方法のほか、粘着材料を用いて基板を粘着保持する方法がある。粘着材料を用いた物理的な粘着は、PSC(Physical Sticky Chuck)とも呼ばれ、大型のガラス基板等にも好ましく利用できる。
【0004】
特許文献1には、保持板上に設けられた粘着部材(粘着パッド)によってガラス基板を保持し、粘着保持されたガラス基板を保持板ごと搬送および反転し、保持板に粘着保持された状態でガラス基板を処理する構成が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2013-55093号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、粘着部材を用いて基板を保持する場合において、基板をより良好に保持する方法が求められている。
【0007】
本発明はかかる課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、粘着部材を用いて基板をより良好に保持するための技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は以下の構成を採用する。すなわち、
保持面において基板を保持するための基板保持ユニットであって、
前記基板に粘着する粘着材料が設けられた粘着面を有する粘着部材と、
前記粘着部材に接続されたコイルバネと、
前記コイルバネの内周側に挿通され、前記粘着部材と連結された軸部と、を有し、
前記粘着部材の前記粘着面が前記保持面に対して傾動可能、かつ、進退可能となるように、前記粘着部材が前記コイルバネを介して基体に取り付けられ
前記粘着部材は、前記軸部の径よりも大きい開口を有する底部と、上部に前記粘着面を有する筒状の壁部と、によって構成され、
前記軸部の一端に、前記開口の径よりも大きいボルトが取り付けられ、
前記軸部が前記開口を挿通することで前記粘着部材と連結される
ことを特徴とする基板保持ユニットである。
本発明はまた、以下の構成を採用する。すなわち、
基板保持部材に対して基板を保持させる基板保持装置であって、
前記基板保持部材は、
基板を保持する保持面を有する基体と、複数の基板保持ユニットと、を有
前記基板保持部材の前記複数の基板保持ユニットのそれぞれは、
軸部と、
前記軸部の第1端に連結され、前記基板に粘着する粘着材料が設けられた粘着面を有する粘着部材と、
前記軸部の前記第1端とは反対の第2端に連結されたストッパ部と、
前記粘着部材に接続された弾性部材と、を有し、
前記基板保持部材の前記基体は、開口の設けられた保持部を有し、
前記基板保持部材において、前記粘着部材と前記ストッパ部とが前記保持部を間に挟む位置に配置されるように、前記軸部が前記保持部の前記開口に挿通され、
前記基板保持部材において、前記粘着部材の前記粘着面が前記保持面に対して傾動可能、かつ、進退可能となるように、前記複数の基板保持ユニットのそれぞれが前記基体に取り付けられ
前記基板保持装置は、
前記基板を、前記保持面と当接しない第1の位置と、前記基板と前記保持面が当接する第2の位置と、の間で移動させる基板移動手段と、
前記基板が前記第1の位置にあるときに前記粘着面を前記保持面より前記基板から離れた位置に移動し、前記基板移動手段が前記基板を前記第2の位置に移動させた後に前記粘着面を前記基板に当接させる粘着部材移動手段と、を有し、
前記基板保持装置の前記粘着部材移動手段は、電磁力により前記粘着面を移動させるための電磁コイルを有する
ことを特徴とする基板保持部材である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、粘着部材を用いて基板をより良好に保持するための技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態1の基板保持装置の概略構成を示す図
図2】実施形態1の基板保持ユニットの前進および後退動作を示す断面図
図3】実施形態1の基板保持ユニットの傾動動作を示す断面図
図4】実施形態1の基板保持ユニットの傾動動作を示す断面図
図5A】実施形態1の基板保持ユニットの動作の流れを説明する図
図5B】実施形態1の基板保持ユニットの動作の流れを説明する別の図
図5C】実施形態1の基板保持ユニットの動作の流れを説明する別の図
図6】実施形態1の反転装置の動作説明図
図7】実施形態1の成膜装置の動作説明図
図8】実施形態1の基板剥離装置の動作説明図
図9】実施形態2の基板保持ユニットの前進および後退動作を示す断面図
図10】実施形態2の基板保持ユニットの傾動動作を示す断面図
図11】実施形態3の電子デバイスの製造装置を示す平面図
図12】実施形態4の電子デバイスを説明する図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しつつ本発明の好適な実施形態及び実施例を説明する。ただし、以下の実施形態及び実施例は本発明の好ましい構成を例示的に示すものにすぎず、本発明の範囲をそれらの構成に限定するものではない。また、以下の説明における、装置のハードウェア構成及びソフトウェア構成、処理フロー、製造条件、寸法、材質、形状、各部材の個数や配置箇所などは、特に特定的な記載がないかぎりは、本発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0012】
本発明は、基板を保持するための基板保持装置および基板保持方法、それを用いた成膜装置および成膜方法もしくは基板処理装置および基板処理方法、成膜された基板を用いた電子デバイスの製造装置および電子デバイスの製造方法などに、好ましく適用できる。成膜方法は蒸着やスパッタリングなど方法を問わず、成膜材料や蒸着材料の種類を問わない。本発明はまた、基板保持方法や成膜方法をコンピュータに実行させるプログラムや、当該プログラムを格納した記憶媒体としても捉えられる。記憶媒体は、コンピュータにより読み取り可能な非一時的な記憶媒体であってもよい。
【0013】
本発明は、基板を洗浄したり、基板の表面や基板表面に形成された別の材料の膜の上に、所望のパターンの薄膜(材料層)を形成したりする装置に好ましく適用できる。基板の材料としては、ガラス、樹脂、金属、シリコンなど任意の材料を選択できる。成膜材料として、有機材料、無機材料(金属、金属酸化物など)などの任意の材料を選択できる。本発明の技術は、例えば、電子デバイスや光学部材の製造装置に適用可能であり、特に、有機電子デバイス(例えば、有機EL素子を用いた有機EL装置、薄膜太陽電池、有機CMOSイメージセンサ)などの製造装置に適用可能である。
【0014】
本発明は成膜用途以外にも、粘着部材によって基板を保持する工程を有する装置、例えばディスプレイの製造装置や加工装置などにも適用でき、特に大型基板が処理対象となる
装置や、基板を反転する工程がある装置に好ましく適用できる。
【0015】
<検討>
本願発明者らの検討によれば、基板保持装置によって平面状に設けられた粘着部材を用いて基板を安定的に保持するためには、基板と、粘着部材が設けられた粘着面が平行な状態で粘着保持を行うことが重要だと分かった。例えば平面状に粘着材料が設けられた粘着パッドを用いる場合、粘着材料と基板の間の当接面積が広いほど粘着力が大きくなる。一方、粘着面と基板の平行度が低下すると、当接面積が減少して保持力が低下するおそれがある。
【0016】
また、特に大型の基板においては、基板が波打ったり撓んだりした状態になりやすく、かかる状態で複数の粘着パッドを一様に基板に当接させると、基板の部位ごとに保持力が異なってしまうことがある。すなわち、ある粘着パッドについては基板に対して平行に当接できたとしても、基板の撓みやうねりの影響で、他の粘着パッドについては基板に対して傾いて当接してしまうことがある。粘着パッドと基板とが平行ではなく傾いていると、上述のとおり十分な保持力を発揮できず、安定的な基板保持に支障をきたすおそれがある。
【0017】
そこで本願発明者が鋭意検討した結果、粘着パッド等の粘着面を持つ基板保持装置により基板を保持するときに、該粘着パッドを基板に対して進退可能かつ傾動可能として粘着パッドが基板の傾斜にならうようにすることにより、粘着パッドの粘着面と基板との平行度を向上させられることが分かり、本発明を創出するに至った。以下、本発明の実施例について説明する。
【0018】
[実施形態1]
図面を参照して、本実施形態の基板保持装置の構成について説明する。図1は基板保持装置の内部構成を説明するための図であり、図1(a)は基板保持部材の平面図、図1(b)は基板保持装置の側面断面図である。
【0019】
<基板保持部材>
基板保持部材100は、基板10を保持する面(以下、保持面110Xと称する)を有する基体を備えている。本実施例では、基体は、保持面110Xが平面で構成される平板状部材110と、平板状部材110を支持する枠体115とを備えている。この平板状部材110には、基板10を上下動させるためのピン240を、平板状部材110における保持面110Xから出没させるための貫通孔111が複数設けられている。また、基板保持部材100は、粘着力を利用して基板10を保持するための基板保持ユニット(粘着ユニット)120を複数備えている。基板保持ユニット120の構成と機能については後述する。また、平板状部材110には、基板保持ユニット120の構成部材(粘着パッド123等)を移動可能に構成する貫通孔112も複数設けられている。後述するように粘着部材駆動機構によって粘着パッド123を駆動することで、粘着パッド123を貫通孔112を介して保持面110Xから突出または没入させたり、粘着パッド123の粘着面を保持面110Xと面一(同一面)の状態にさせたりすることができる。
【0020】
さらに、基板保持部材100は、基板10の周囲を平板状部材110に固定させるための固定具130を複数備えている。なお、本実施例では、固定具130の一例としてクランプの場合を示すが、固定具としてはクランプに限られず、各種公知技術を採用することができる。また、平板状部材110の形状及び寸法については、基板10のサイズ、及び基板10における成膜領域に応じて適宜設定される。そして、貫通孔111、基板保持ユニット120及び固定具130の個数及び配置に関しても、基板10のサイズ、及び基板10における成膜領域に応じて適宜設定される。なお、本実施例では基体が平板状部材1
10と枠体115とで構成される例について説明するが、本発明はこれに限定はされない。すなわち、基体は平板状部材110および枠体115の少なくとも一方を備えていればよい。あるいは、基体は平面上の保持面110Xを有する構成であれば、他の任意の部材で構成することもできる。
【0021】
<基板保持装置>
図1(b)に示すように、基板保持部材100は、基板保持室R1(第1のチャンバ)を有している。基板保持室R1内は、典型的には真空雰囲気に維持されており、基板10やマスクを搬出入するための開口を備える。なお、本明細書における真空とは、通常の大気圧(1013hPa)より低い圧力の気体で満たされた空間の状態を意味する。そして、基板保持装置は、基板10を上下動させるためのピンユニット200(基板移動機構)と、電磁コイル360を有する電磁コイルユニット300(粘着部材駆動機構)と、基板保持部材100を支持(固定)する支持台400とを備えている。支持台400に基板保持部材100が支持された状態においては、基板保持部材100(平板状部材110)における保持面110Xは水平面と平行になるように構成されている。
【0022】
基板保持室R1は、基板処理領域A1と、駆動源配置領域A2に区画される。基板処理領域A1には、基板保持部材100などが配置される。駆動源配置領域A2には、ピンユニット200におけるモータ210、及び電磁コイルユニット300におけるモータ310などが配置される。このような構成により、モータ210、310の回転によって発生する異物や、ボールねじ機構部分の摺動部で発生する異物が基板処理領域A1に侵入してしまうことを抑制することができる。ピン240にピンユニット200も含めて基板移動機構としてもよい。
【0023】
なお、本実施形態では上記の2つの領域(A1、A2)をすべて基板保持室R1の真空雰囲気内に配置する構成を説明したが、これに限定はされない。例えば、基板処理領域A1のみを基板保持室R1の真空雰囲気内に配置し、駆動源配置領域A2は大気雰囲気化に配置してもよい。このようにすることで、上述の、異物が基板処理領域A1への侵入を抑制する効果を、より高めることができる。
【0024】
基板保持部材100が備える各ユニットは、電源710から電力が供給されるとともに、制御部720から制御信号を受けて制御され、動作する。電源710としては任意の既知の電源装置を利用できる。制御部720としては例えば、プロセッサやメモリ等の演算資源を備え、プログラムに従って動作するPCやワークステーションなどの情報処理装置を利用できる。
【0025】
基板保持部材100は、上述したピン240により基板10を上下動させるためのピンユニット200と、電磁コイル360を上下動させるための電磁コイルユニット300と、基板保持部材100を支持(固定)する支持台400とを備えている。支持台400は、基板保持部材100を、平板状部材110が構成する保持面110Xが略水平となるように支持可能である。
【0026】
ピンユニット200は、モータ210と、モータ210により回転するネジ軸220と、ネジ軸220の回転動作に伴って、ネジ軸220に沿って上下動するナット部230と、ナット部230に固定され、ナット部230と共に上下動するピン240とを備えている。なお、ナット部230の内周面とネジ軸220の外周面との間には、複数のボールが無限循環するように構成されている。なお、ピン240を上下動させる構成はボールねじ機構に限定されず、ラックアンドピニオン方式など、その他の公知技術を採用し得る。
【0027】
また、図示例では、一つのピン240に対して、それぞれモータ210等の駆動機構が
備えられている。この構成であれば個別にピンの上下を調整可能である。ただし、一つの駆動機構によって、複数のピン240を同時に駆動させる構成を可能である。例えば、上記のボールねじ機構を採用する場合には、一つのナット部230に複数のピン240を設ければよい。
【0028】
電磁コイルユニット300は、モータ310と、モータ310により回転するネジ軸320と、ネジ軸320の回転動作に伴って、ネジ軸320に沿って上下動するナット部330と、ナット部330に固定され、ナット部330と共に上下動する軸部340と、軸部340の先端に設けられる支持部350と、支持部350に支持される電磁コイル360とを備えている。なお、ナット部330の内周面とネジ軸320の外周面との間には、複数のボールが無限循環するように構成されている。なお、電磁コイル360を上下動させる構成はボールねじ機構に限定されず、ラックアンドピニオン方式など、その他の公知技術を採用し得る。
【0029】
また、図示の例では、一つの電磁コイル360に対して、それぞれモータ310等の駆動機構が備えられている。この構成であれば個別に電磁コイルの上下動を調整できる。ただし、一つの駆動機構によって、複数の電磁コイル360を同時に駆動させる構成を採用することもできる。例えば、上記のボールねじ機構を採用する場合には、一つのナット部330に対して、複数の軸部340、支持部350及び電磁コイル360を設ければよい。
【0030】
また、電磁コイル360に対しては、制御部720の制御に従い、電源710によって電流が流れるように構成されている。制御部720が電磁コイル360に対して流す電流の向きや電流の大きさを変更することにより、電磁コイル360の動作を制御できる。
【0031】
ここで、電磁コイル360は、複数の基板保持ユニット120の各々に対応するように、複数設けられている。これにより、電磁コイルユニット300が、各基板保持ユニット120における粘着パッド123を駆動させるための粘着部材駆動機構として機能する。すなわち、電磁コイルユニット300は、各基板保持ユニット120のそれぞれが有する進退機構に対して非接触に作用することによって、粘着パッド123の粘着面を保持面に対して進退させることができる。その結果、基板10の波打ち等によって保持面と基板10の間の距離が場所ごとに異なる場合でも、基板10に接触できる位置まで粘着パッド123が移動できる。また、基板保持ユニット120のそれぞれが有する進退機構に対して非接触に作用して粘着パッド123の粘着面を進退させるので、接触して粘着パッド123の粘着面を進退させる際に摺動等によって生じてしまう異物(摩耗粉等)の発生を抑制しつつ、粘着パッド123の粘着面の進退を実現できる。
【0032】
<基板保持ユニットの構成>
図2図3は、基板保持ユニット120の模式的断面図であり、図1のAA線部分の断面を示す。個々の基板保持ユニット120は、断面L字形状の基板保持ユニット保持部150に保持される。この基板保持ユニット保持部150は、平板状部材110に固定される被固定部151と、基板保持ユニット120を保持する保持部152とを備えている。保持部152には貫通孔153が設けられている。なお、本実施例では基板保持ユニット保持部150が枠体115に固定される例を説明するが、これに限定はされず、基板保持ユニット保持部150は基体に固定されていればよい。
【0033】
基板保持ユニット120は、軸部121と、軸部121の一端に固定される支持フランジ部122と、支持フランジ部122に固定される粘着パッド123とを備えている。粘着パッド123は、シリコン系樹脂、フッ素系樹脂、ジエン系樹脂等からなる粘着材料を成形した、粘着面を有するシート状の部材である。粘着パッド123が本発明の粘着部材
だと考えてもよく、支持フランジ部122と粘着パッド123を合わせて粘着部材だと考えてもよい。粘着パッド123は、粘着性を有し把持面(または粘着面)を有する粘着層と、粘着層を支持フランジ部122に接着するための接着層とが積層された構造を有していてもよい。
【0034】
支持フランジ部122は、回動軸としての軸部121の一端側に、傾動可能に固定される。例えば、支持フランジ部122に軸端部を受ける受け部を設けることで、支持フランジ部122を軸部121の延伸方向の軸に対して傾動可能に軸支できる。このような、軸端部と軸受け部122aを含む傾動機構としては、ボールジョイント構造など既知の構成を採用できる。例えば、図3(a)においては粘着パッド123の粘着面が基板10に沿って略水平になっているのに対し、基板10が波打っている図3(b)においては、粘着パッド123の粘着面が基板10に沿うように、水平面に対して傾動している。
【0035】
なお、本実施形態では支持フランジ部122が軸部121の一端側に傾動可能に固定されるものとしたが、これに限定はされず、支持フランジ部122は溶接固定等によって軸部121にリジッドに固定されていてもよい。この場合であっても、一体固定された支持フランジ部122および軸部121は後述する弾性体128によって支持されているため、支持フランジ部122は保持面に対して傾動可能となる。すなわち、支持フランジ部122が傾動すると弾性体128が屈曲するとともに軸部121が傾く。その結果、図4に示したように、保持部152に設けられた貫通孔153の遊びの範囲内で揺動することができる。これにより、粘着パッド123の粘着面を基板10の傾斜に追従させることができる。すなわち、弾性体128は傾動機構としても機能する。
【0036】
また、基板保持ユニット120は、軸部121に固定されるストッパ部124と、軸部121が挿通され、かつストッパ部124に隣接した状態で軸部121に固定される円筒状の永久磁石125と、永久磁石125を軸部121に固定させるためのワッシャ126及びナット127とを備えている。なお、軸部121の他端側には雌ネジが形成されており、この雌ネジにナット127をねじ込むことで永久磁石125を軸部121に固定させることができる。ストッパ部124は、軸部121の両端のうち、粘着パッドが配置される一端側とは逆の他端側に、ネジ締結や溶接等によって固定される。
【0037】
ナット127がねじ込まれた状態においては、軸部121と、支持フランジ部122と、粘着パッド123と、ストッパ部124と、永久磁石125と、ワッシャ126及びナット127は一体化された状態となり、一体化された軸部121等を構成している。また、円筒状の永久磁石125は軸方向の一端側と他端側で磁極が異なるように構成されている。図示の例では、粘着パッド123が設けられている側がN極で、その反対側がS極となる場合を示しているが、逆向きに配置させてもよい。
【0038】
そして、基板保持ユニット120は、軸部121の往復移動(上下動)を可能にしつつ、軸部121の揺動を可能にした状態で、一体化された軸部121等を支持するための弾性体128を備えている。図示例では弾性体128として金属製のスプリング(コイルバネ)が用いられている。ただし、弾性体については、金属製の板バネやエラストマー材料からなる円筒状の部材など、適宜の構成を採用し得る。しかしながら、基板保持部材100を真空中で使用する場合には、弾性体128としては、構成材料からの脱ガスを低減する観点から、金属製の弾性部材を用いることが好ましい。
【0039】
保持部152を挟んで保持面110X側に粘着パッド123等が配置され、その反対側にストッパ部124等が配置されるように、貫通孔153に軸部121が挿通された状態で、基板保持ユニット120は基板保持ユニット保持部150に保持される。このとき、弾性体128の一端は支持フランジ部122に固定され、他端は保持部152に固定され
た状態で設けられる。なお、弾性体128の内周側の面と軸部121の外周面との間には隙間が設けられ、弾性体128と軸部121は接しないように構成されている。また、ストッパ部124は貫通孔153よりも大径に設定されることで、一体化された軸部121等が貫通孔153から抜け落ちてしまうことを防止している。以上のように、基板保持ユニット120は、弾性体128の他端のみが保持部152に固定されており、基板保持ユニット120を構成する他の部材は、基板保持ユニット120以外の構成部材には接しないように構成されている。このように構成することで、接触摩耗による異物(パーティクル)の発生を抑制することができる。なお、本実施例ではストッパ部124が、永久磁石125と隣接して配置され、永久磁石125の軸部121の軸方向における位置決め固定機能と、保持部152と突き当たることで一体化された軸部121等が貫通孔153から抜け落ちることを防止する機能(メカストッパ機能)との両方を有するが、この構成には限定はされない。すなわち、メカストッパ機能を有するストッパ部124とは別に、永久磁石125の位置決め固定機能を備えた部材を設けてもよい。
【0040】
粘着パッド123は、図2(a)に示す前進状態と、図2(b)に示す後退状態の間で位置を変化させることができる。すなわち、保持面110Xが水平面に平行かつ鉛直方向上方を向いた状態であり、かつ、基板保持ユニット120には、その自重のみが作用している状態においては、粘着パッド123は、保持面110Xよりも僅かに鉛直方向上方に飛び出している。この前進状態においては、一体化された軸部121等は、弾性体128によってのみ支持されている。これにより、一体化された軸部121等は、粘着パッド123の粘着面が保持面110Xに対して進退可能となるように、往復移動(上下動)が許容されている。従って、粘着パッド123は保持面110Xから進退可能となっている。また、粘着パッド123の粘着面が傾動しているときには、図3(b)に示すように弾性体128を構成するスプリングが変形することにより圧力を吸収できる。なお、本実施例では上述の状態において粘着パッド123が保持面110Xよりも僅かに突出した状態となる例について説明するが、これに限定はされず、上述の状態において粘着パッド123の粘着面が保持面110Xと同一平面上に位置してもよい。
【0041】
ここで、制御部720の制御により電源710が電磁コイル360に電流を流すことで、電磁コイル360の内部に永久磁石125を引き込む電磁力を発生させる。これにより、基板保持ユニット120における弾性体128の弾性反発力(スプリングのバネ力)に抗して、一体化された軸部121等は鉛直方向下方に移動する。これにより図2(b)のように、粘着パッド123は、保持面110Xよりも鉛直方向下方に移動する。なお、ここでは基板保持ユニット120が永久磁石125を有するものとしたが、本発明はこれに限定はされず、永久磁石ではなくとも磁性体によって構成された磁性部材を用いてもよい。磁性体としては強磁性体または反磁性体を用いることが好ましい。これにより、電磁コイル360によって発生した電磁力等の外部磁力によって、一体化された軸部121等を鉛直方向下方または上方に移動させることができる。
【0042】
<基板保持工程>
図5A図5Cを参照して、本実施形態の、図4に例示したような基板保持ユニット120が基板10に粘着する様子を説明する。
図5Aは、ピン240が保持面110Xよりも上方で基板10を保持している様子を示す。すなわち、基板保持室R1に基板10が搬入される前に、ピンユニット200は複数のピン240それぞれの一端部がなす面が、保持面110XよりもZ方向で上方に来るように制御する。また制御部720は、電源710による電磁コイル360への通電を制御して、基板保持ユニット120の粘着パッド123を後退状態としておく。そして状態で基板保持室R1に基板10を搬入することで、図示された状態となる。図示状態では、基板10の高さは保持面110Xより上方であり、両者は当接しない。このときの基板の高さを第1の高さとする。
【0043】
図5Bでは、ピンユニット200が複数のピン240を下方に移動させる。これにより、基板10が保持面110Xに当接する。このときの基板の高さを第2の高さとする。ただし図示例では、基板10の波打ちが発生しているため、該基板10の一部が保持面110Xに当接しておらず、基板10の角度も水平面に対して一部傾いた、保持面110Xと非平行な状態となっている。
【0044】
なお、デポアップ方式ではなく、例えばサイドデポ方式を用いる場合、基板10は昇降動作ではなく横方向移動を行う。その場合、基板10は、基板移動機構によって、保持面と当接しない第1の位置と、保持面と当接する第2の位置との間で移動する。このとき基板保持ユニットは、基板が前記第1の位置にあるときには、粘着面を保持面よりも基板から離れた位置に後退させる。そして、基板移動機構が基板を保持面と当接しない第1の位置に移動させた後に、粘着面を保持面まで前進させて、基板と粘着面を当接させる。
【0045】
図5Cでは、制御部720が電源710による電磁コイル360への通電を制御して、基板保持ユニット120の粘着パッド123を前進させて保持面110Xよりも僅かに突出した状態とする。粘着パッド123は、弾性体128により保持面に対して基板の側に付勢されているため基板10に当接する。このとき、傾動機構により粘着パッド123の傾きが許容され、基板10と粘着パッド123の粘着面が略平行な状態で当接する。すなわち、弾性体128は、粘着パッド123の粘着面を基板10側へと付勢する付勢手段としての機能も有する。かかる付勢手段としての弾性体128が粘着パッド123を揺動可能な状態で基板側へと付勢することにより、粘着面と基板の当接状態が向上する。
【0046】
図2図5Cで示されたように本実施例では、粘着パッド123が保持面に対して進退可能、かつ傾動可能となっている。すなわち、一体化された軸部121等によって粘着パッド123を保持面110Xに対して進退可能とし、かつ、弾性体128により粘着パッド123が基板に対して付勢された状態とすることにより、基板10の波打ち等によって基板10の位置ごとに保持面110Xとの距離が異なる場合であっても、粘着パッド123が基板10の高さまで到達して基板に粘着することが可能になる。軸部121等や、電磁コイルユニット300、電磁コイル360は、粘着パッド123を保持面に対して進退可能とする進退機構だと考えることができる。
【0047】
さらに、傾動機構によって、粘着パッド123における粘着面の保持面110Xに対する傾き(保持面に平行な面をXY平面とした場合に、任意のXY方向に対する傾き)の変更も許容されている。このように基板保持ユニット120が粘着パッド123の傾動(首振り動作)を許容していることで、基板10の波打ち等によって基板10の角度が水平面に対して傾いている場合でも、粘着パッド123の粘着面と基板10とが当接する際の平行度が向上するため、粘着力の低下が抑止される。
【0048】
なお、図5Bに示した状態の後、ピン240をさらに下方に移動させ、基板10を基体上に載置した後に、不図示の押圧部を用いて基板10を上方から押圧して基板10を平らにする押圧工程をさらに設けてもよい。基板10を押圧部(不図示)と基体の保持面110Xとで挟み込むことで基板10がより平らな状態になるように矯正することができる。その上で、図5Cに示したように粘着パッド123を前進させることで、より良好に基板10を保持させることができる。なお、このようにして基板10を矯正した上で粘着パッド123によって保持させた場合であっても、時間が経過するにつれて、基板10そのものや基板10上に形成された各種膜の内部応力等に起因して基板10が撓んだりうねったりしてくることがある。このような場合であっても、本実施形態によれば、粘着パッド230が弾性体128によって基板10に接近する(あるいは、押し付けられる)方向に付勢されつつ、粘着パッド230が傾動可能に構成されているため、粘着パッド230は基
板10の傾動や浮きに追従して動く。そのため、本実施形態によれば、長時間にわたって安定的に基板10を保持することができる。
【0049】
なお、本実施例では基板保持部材100の保持面110Xが水平面と平行かつ鉛直方向上向きを向くように配置された状態で基板保持部材100に基板10を保持させるものとしたが、本発明はこれに限定はされない。例えば、基板保持部材100の保持面110Xが水平面と直行するように配置された状態、すなわち、保持面110Xが水平方向を向くように配置された状態で、基板保持部材100に基板10を保持させるようにしてもよい。この場合には、基板移動機構として、基板10の主面(成膜面)が水平方向を向いた状態で基板10を支持し、その状態で基板10を基板保持部材100の保持面110Xに近づけたり離したりすることができる機構を用いればよい。このような基板移動機構としては従来公知の機構を採用することができるが、例えば、主面が水平方向を向いた状態の基板10の上辺および下辺をクランプするクランプ部と、クランプ部を水平方向に移動させるアクチュエータと、を用いることができる。あるいは、主面が水平方向を向いた状態の基板10の成膜面とは反対側の面を静電吸着する静電チャックと、静電チャックを水平方向に移動させるアクチュエータと、を用いることもできる。
【0050】
また、本実施例では基板移動機構としてピン240およびアクチュエータを備えたピンユニット200を用いたが、本発明はこれに限定はされないことは上述のとおりである。基板移動機構としては、上述の例の他、主面(成膜面)が水平面と平行な状態で配置された基板10の周辺部を支持する1つまたは複数の支持部(受け爪)と、この支持部を移動させるアクチュエータと、を用いることもできる。この場合には、基板保持部材100の基体は、1つまたは複数の支持部のそれぞれに対応した位置に切り欠き等が設けられており、支持部による支持面と基板保持部材100の保持面110Xとを同一平面状に位置させることができるようにすることが好ましい。
【0051】
以上により、基板保持工程が終了し、基板10を保持した基板保持部材100は基板保持室R1から搬出される。
【0052】
<その他の工程>
<<反転工程>>
図6(a)(b)は反転装置の全体の概略構成を断面的に示している。反転装置は、反転室R2を備えている。この反転室R2内は、真空雰囲気となるように構成されている。反転装置は、基板保持部材100を保持する保持部材610と、保持部材610に固定される回転軸620と、回転軸620を回転させるモータ630と、回転軸620を軸支する支持部材640とを備えている。
【0053】
基板10を保持した基板保持部材100は、基板保持室R1から搬出された後に、反転装置(反転室R2)に送られる。そして、反転室R2内に搬入された基板保持部材100は保持部材610により保持される(図6(a)参照)。その後、モータ630により、基板保持部材100は反転(180°回転)される。これにより、基板10は基板保持部材100に対して、鉛直方向下向きに向いた状態となる。図6(b)は反転後の状態を示している。本実施形態によれば、粘着パッド123の粘着面と基板10が略平行に当接しているため、粘着力が低下すること無く基板10を保持できる。なお、反転動作の前に固定具130を用いたクランプ動作により基板を基板保持部材100に固定することも好ましい。基板保持部材100が反転した状態においては、ストッパ部124が基板保持ユニット保持部材150の保持部152に突き当たった状態となる。これにより、基板10は平行な状態を維持したまま複数の基板保持ユニット120により保持された状態となる。
【0054】
以上により、反転工程が終了し、基板10を保持した基板保持部材100は反転室R2
から搬出される。
【0055】
<<マスク保持工程>>
基板10を保持した基板保持部材100は、反転室R2から搬出された後に、アライメント装置(アライメント室)に送られる。アライメント室においては、基板10に対して位置合わせ(アライメント)を行った状態で、基板10上にマスク20が保持される。なお、マスク20を保持する手法としては、永久磁石や電磁石、永電磁石等による磁気力を利用することもできるし、クランプなどの機械的な保持手段を採用することもできる。勿論、これらを併用することもできる。基板10に対して位置合わせを行った状態でマスク20を保持させるための装置に関しては、各種公知技術を適用すればよいので、その説明は省略する。
【0056】
以上により、マスク保持工程が終了し、基板10とマスク20を保持した基板保持部材100は、アライメント室から搬出される。
【0057】
<<成膜工程>>
図7は成膜装置(本実施例においては蒸着装置)の全体の概略構成を断面的に示している。成膜装置は、成膜室(第2のチャンバ)R3を備えている。この成膜室R3内は、真空雰囲気となるように構成されている。また、成膜装置は、成膜源としての蒸発源30を備えている。
【0058】
基板10とマスク20を保持した基板保持部材100は、アライメント室から搬出された後に、成膜装置(成膜室R3)に送られる。成膜室R3には成膜を行うための成膜源が配置されており、基板保持部材100に保持された基板10上に、マスク20を介して成膜が行われる。本実施例においては、真空蒸着による成膜(蒸着)が行われる。具体的には、成膜源としての蒸発源30から成膜材料が蒸発または昇華し、基板10上に成膜材料が蒸着することにより基板10上に薄膜が形成される。蒸発源30については、公知技術であるので、その詳細な説明は省略する。例えば、蒸発源30は、坩堝等の成膜材料を収容する容器と、容器を加熱する加熱装置等により構成することができる。なお、成膜室R3は複数のチャンバで構成され、それぞれのチャンバに異なる成膜材料を成膜するための成膜源がそれぞれ配置されていてもよい。そして、基板10を保持した基板保持部材100がそれぞれのチャンバ内を順次搬送されることで、それぞれの成膜材料による成膜が順次なされてもよい。また、成膜源は蒸発源30に限定されるものではなく、成膜源はスパッタリングによって成膜を行うためのスパッタリングカソードであってもよい。
【0059】
以上により、成膜工程が終了する。その後、基板10からマスク20が取り外される。基板10からマスク20を取り外す装置等については、公知技術であるので、その説明は省略する。また、マスク20が取り外された後に、別のマスクを用いて別の成膜材料による成膜がなされる工程が繰り返されることもある。そして、全ての成膜工程が完了し、マスクが取り外された後に、基板保持部材100から基板10が剥離される処理が施される。
【0060】
<<基板剥離工程>>
図8(a)(b)は基板剥離装置の全体の概略構成を断面的に示している。基板剥離装置は、基板剥離室R4を備えている。この基板剥離室R4内は、真空雰囲気となるように構成されている。基板剥離装置は、基板保持装置と同様に、基板10を上下動させるためのピンユニット200(基板移動機構)と、電磁コイルユニット300(第1の粘着部材駆動機構)と、基板保持部材100を支持する支持台500とを備えている。これらの構成自体については、上記の通りであるので、その説明は省略する。
【0061】
そして、基板剥離装置は、電磁コイルユニット300を支持する支持台370と、支持台370を保持面110Xと平行に移動させることで電磁コイルユニット300を保持面110Xと平行に移動させることを可能とする駆動装置380(第2の粘着部材駆動機構)とを備えている。なお、駆動装置380に関しては、ボールねじ機構、ラックアンドピニオン方式によるアクチュエータなど各種公知技術を適用することができる。なお、図示の例では、複数の電磁コイルユニット300が設けられており、支持台370は全ての電磁コイルユニット300を支持するように構成されている。
【0062】
マスクが取り外された後に、基板10を保持した基板保持部材100は、基板剥離室R4に搬入される。そして、この基板保持部材100は、支持台500に支持される(固定される)。図8(a)は基板保持部材100が支持台500に支持された状態を示している。その後、電磁コイル360に電流を流すことで、電磁コイル360の内部に永久磁石125を引き込む電磁力を発生させる。本実施例においては、粘着パッド123の粘着力が高いため、この電磁力だけでは、粘着パッド123が基板10から剥がれることはない。
【0063】
そして、上記の電磁力を発生させた状態で、駆動装置380により、支持台370を移動させることによって、全ての電磁コイル360を、同時に保持面110Xと平行に移動させる。これにより、基板保持ユニット120における永久磁石125が保持面110Xと平行な方向に引っ張られて、軸部121が少し傾くことで、粘着パッド123も傾き、基板10から剥がれた状態となる。その後、弾性体128の弾性反発力に抗して、一体化された軸部121等は、電磁力によって鉛直方向下方に移動することで、粘着パッド123は基板10から離れた状態となる。なお、本実施例においては、一つの支持台370と一つの駆動装置380により、同時に全ての電磁コイル360を移動させる場合を示した。しかしながら、本発明はそのような構成に限定されることはない。例えば、複数の電磁コイル360について、複数組に分け、各組に対して、それぞれ支持台370と駆動装置380を設けることもできる。この場合、全ての組について、同時に電磁コイル360を移動させてもよいし、組毎に時期を分けて電磁コイル360を移動させてもよい。各組には一つ以上の電磁コイル360が存在すればよい。なお、各組に複数の電磁コイル360が存在する場合においては、一つの電磁コイル360に対して、個々にモータ310等の駆動機構が備えられる構成を採用することもできるし、上記の通り、一つの駆動機構によって、複数の電磁コイル360を同時に駆動させる構成を採用することもできる。従って、各組については、一つの電磁コイルユニット300のみ(ただし、電磁コイル360は複数設けられる)が備えられる構成も採用し得る。また、基板剥離装置には、一つの電磁コイルユニット300のみ(ただし、電磁コイル360は複数設けられる)が備えられる構成も採用し得る。
【0064】
粘着パッド123が基板10から離れた後に、固定具130による基板10の固定が解除される。図8(b)は支持台370が移動し、かつ固定具130による基板10の固定が解除された状態を示している。なお、固定具130による基板10の固定の解除動作については、支持台370を移動させる前に行うように制御してもよい。その後、モータ210によって、ピン240が鉛直方向上方に移動し、基板10は複数のピン240によって持ち上げられて、基板保持部材100から離間する。その後、基板10は基板剥離室R4から搬出される。
【0065】
なお、本実施例では基板保持部材100の保持面110Xが水平面と平行かつ鉛直方向上向きを向くように配置された状態で基板保持部材100から基板10を剥離させるものとしたが、本発明はこれに限定はされない。例えば、基板保持部材100の保持面110Xが水平面と直行するように配置された状態、すなわち、保持面110Xが水平方向を向くように配置された状態で、基板保持部材100から基板10を剥離させるようにしても
よい。また、基板移動機構としては、基板保持工程の説明において述べたとおり、従来公知の他の機構を用いることができることは言うまでもない。
【0066】
[実施形態2]
図9図10を参照して、基板保持部材100の別の構成について説明する。実施形態1と同じ構成には同じ符号を付し、説明を省略する。
【0067】
図9(a)は、本実施形態の基板保持部材100の粘着パッド123の粘着面が保持面110Xよりも上方に突出している前進状態であり、図9(b)は、該粘着面が保持面110Xよりも下方に後退している後退状態である。実施形態1の粘着パッド123との相違点を説明する。図9(c)は、Z方向上方から粘着パッド123を見た平面図である。
図9(a)~図9(c)に示すように、本実施形態の支持フランジ部122は中央部に軸部121が挿通する穴が開けられた有底円筒容器状に構成されており、粘着パッド123の粘着材料が該円筒容器の壁の上部に配されて粘着面を構成している。挿通孔を介して軸部121をボルト129が固定することにより、基板保持部材100の上下が反転したときでも粘着パッド123が脱落することがない。
【0068】
本実施形態でも、粘着パッド123が保持面110Xから下方に後退した状態で基板10が搬入され、ピン240によって保持面110Xよりも上方において支持される。そして、ピン240が下降して、基板10が保持面110Xに載置される。その後、制御部720の制御により電磁コイル360が動作して基板保持ユニット120を上方に移動させることにより、粘着パッド123が基板10に当接する。
図10(a)は、基板10が略水平に保持面110Xに載置されたときの当接状態を示す。一方、図10(b)は、基板10が波打ったために保持面110Xに対してある角度を持って載置された様子を示す。図示のように、弾性体128により付勢された支持フランジ部122が基板10の傾きに応じて傾動可能な構成となっているために、粘着パッド123の粘着面と基板10が略平行に当接できる。
【0069】
実施形態2においても、粘着パッド123の粘着面が保持面に対して進退可能かつ傾動可能であることにより、基板10と粘着パッド123の当接面積が増加し、粘着力の低下を抑制できる。
【0070】
[実施形態3]
本実施形態では、有機ELディスプレイ等を製造するための電子デバイス製造装置に、上記各実施形態の成膜装置を適用する方法について説明する。図11は、電子デバイスの製造装置500の一部を模式的に示す平面図である。電子デバイスの製造装置500は、電子デバイス製造において、基板の前処理から成膜・封止までの工程を自動で行う。
なお、図示したような、搬送室の周囲に複数の処理室を配置したクラスタ型の構成に代えて、複数の処理室を工程順に配置したインライン型の構成を採用してもよい。インライン型の構成を採用する場合に、基板を保持する基板保持装置を搬送キャリアに設けておき、各処理室の間を移動させてもよい。その場合に、電子デバイス製造装置に搬入された基板を、被成膜面が上を向いた状態で搬送キャリアに保持させたのち、基板上にマスクをアライメントしながら設置してから、搬送キャリアを上下反転させてもよい。これにより被成膜面が下を向いた状態となった基板を搬送キャリアごと成膜室に搬入し、成膜材料を用いた成膜が行われる。
【0071】
搬送室510の周囲には、前処理室511、有機処理室512、金属処理室513、測定室514が放射状に配置されている。なお、図11は簡略化した図であり、処理室の種類や数はこれに限られない。例えば正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層、電子注入層などの処理室を設けてもよいし、R(赤),G(緑),B(青)などの色ごとに発光層の処
理室を設けてもよい。搬送室510には、基板10を保持し搬送する搬送ロボット519が設けられている。搬送ロボット519は、例えば、多関節アームに、基板を保持するロボットハンドが取り付けられた構造をもつロボットであり、各処理室および測定室への基板の搬入と搬出を行う。
【0072】
電子デバイスの製造プロセスは概略次のとおりである。まず、基板10が前処理室511に搬入され、洗浄等の前処理が行われる。その後基板は、成膜材料の種類に応じて、搬送ロボット519により有機処理室512や金属処理室513に搬送される。各処理室では、蒸発源からの蒸着やスパッタリングにより、蒸着材料が基板に付着して膜が形成される。次いで、基板10が測定室514に搬入される。測定室内では、膜厚や成膜の均一性などが測定される。
【0073】
成膜を行う各処理室にはそれぞれ成膜装置が設けられている。搬送ロボットとの基板の受け渡し、基板とマスクの相対位置の調整(アライメント)、マスク上への基板の固定、成膜(蒸着)などの一連のプロセスは、成膜装置によって自動で行われる。また、測定室における測定の工程も自動化が可能である。さらに測定後の処理として、乾燥剤や接着剤を塗布した封止ガラスによる封止処理が行われてもよい。完成したパネルは製造装置から自動搬出され、次の工程(例えばディスプレイパネルのアセンブル工程)へと供給される。ただし、上記の構成は一例であり、本発明の成膜装置やそれを含んだ電子デバイス製造装置の構成を限定するものではない。
【0074】
以上の電子デバイス製造装置や、それを用いた電子デバイス製造方法によれば、成膜装置において基板の温度調節が良好に行われているので、良好に成膜がなされる。その結果、品質の良い電子デバイスを製造可能となる。
【0075】
[実施形態4]
<有機電子デバイスの製造方法>
本実施形態では、蒸発源装置を備える成膜装置を用いた有機電子デバイスの製造方法の一例を説明する。以下、有機電子デバイスの例として有機EL表示装置の構成及び製造方法を例示する。まず、製造する有機EL表示装置について説明する。図12(a)は有機EL表示装置60の全体図、図12(b)は一つの画素の断面構造を表している。
【0076】
図12(a)に示すように、有機EL表示装置60の表示領域61には、発光素子を複数備える画素62がマトリクス状に複数配置されている。発光素子のそれぞれは、一対の電極に挟まれた有機層を備えた構造を有している。なお、ここでいう画素とは、表示領域61において所望の色の表示を可能とする最小単位を指している。本図の有機EL表示装置の場合、互いに異なる発光を示す第1発光素子62R、第2発光素子62G、第3発光素子62Bの組合せにより画素62が構成されている。画素62は、赤色発光素子と緑色発光素子と青色発光素子の組合せで構成されることが多いが、黄色発光素子とシアン発光素子と白色発光素子の組み合わせでもよく、少なくとも1色以上であれば特に制限されるものではない。また、各発光素子は複数の発光層が積層されて構成されていてもよい。
【0077】
また、画素62を同じ発光を示す複数の発光素子で構成し、それぞれの発光素子に対応するように複数の異なる色変換素子がパターン状に配置されたカラーフィルタを用いて、1つの画素が表示領域61において所望の色の表示を可能としてもよい。例えば、画素62を少なくとも3つの白色発光素子で構成し、それぞれの発光素子に対応するように、赤色、緑色、青色の各色変換素子が配列されたカラーフィルタを用いてもよい。あるいは、画素62を少なくとも3つの青色発光素子で構成し、それぞれの発光素子に対応するように、赤色、緑色、無色の各色変換素子が配列されたカラーフィルタを用いてもよい。後者の場合には、カラーフィルタを構成する材料として量子ドット(Quantum Dot
:QD)材料を用いた量子ドットカラーフィルタ(QD-CF)を用いることで、量子ドットカラーフィルタを用いない通常の有機EL表示装置よりも表示色域を広くすることができる。
【0078】
図12(b)は、図12(a)のA-B線における部分断面模式図である。画素62は、基板10上に、第1電極(陽極)64と、正孔輸送層65と、発光層66R,66G,66Bのいずれかと、電子輸送層67と、第2電極(陰極)68と、を備える有機EL素子を有している。これらのうち、正孔輸送層65、発光層66R,66G,66B、電子輸送層67が有機層に当たる。また、本実施形態では、発光層66Rは赤色を発する有機EL層、発光層66Gは緑色を発する有機EL層、発光層66Bは青色を発する有機EL層である。なお、上述のようにカラーフィルタまたは量子ドットカラーフィルタを用いる場合には、各発光層の光出射側、すなわち、図12(b)の上部または下部にカラーフィルタまたは量子ドットカラーフィルタが配置されるが、図示は省略する。
【0079】
発光層66R,66G,66Bは、それぞれ赤色、緑色、青色を発する発光素子(有機EL素子と記述する場合もある)に対応するパターンに形成されている。また、第1電極64は、発光素子ごとに分離して形成されている。正孔輸送層65と電子輸送層67と第2電極68は、複数の発光素子62R,62G,62Bと共通で形成されていてもよいし、発光素子毎に形成されていてもよい。なお、第1電極64と第2電極68とが異物によってショートするのを防ぐために、第1電極64間に絶縁層69が設けられている。さらに、有機EL層は水分や酸素によって劣化するため、水分や酸素から有機EL素子を保護するための保護層Pが設けられている。
【0080】
次に、電子デバイスとしての有機EL表示装置の製造方法の例について具体的に説明する。まず、有機EL表示装置を駆動するための回路(不図示)および第1電極64が形成された基板10を準備する。
【0081】
次に、第1電極64が形成された基板10の上にアクリル樹脂をスピンコートで形成し、アクリル樹脂をリソグラフィ法により、第1電極64が形成された部分に開口が形成されるようにパターニングし絶縁層69を形成する。この開口部が、発光素子が実際に発光する発光領域に相当する。
【0082】
次に、絶縁層69がパターニングされた基板10を第1の成膜装置に搬入し、基板保持ユニットにて基板を保持し、正孔輸送層65を、表示領域の第1電極64の上に共通する層として成膜する。正孔輸送層65は真空蒸着により成膜される。実際には正孔輸送層65は表示領域61よりも大きなサイズに形成されるため、高精細なマスクは不要である。ここで、本ステップでの成膜や、以下の各レイヤーの成膜において用いられる成膜装置は、上記各実施形態のいずれかに記載された成膜装置である。
【0083】
次に、正孔輸送層65までが形成された基板10を第2の成膜装置に搬入し、基板保持ユニットにて保持する。基板とマスクとのアライメントを行い、基板をマスクの上に載置し、基板10の赤色を発する素子を配置する部分に、赤色を発する発光層66Rを成膜する。本例によれば、マスクと基板とを良好に重ね合わせることができ、高精度な成膜を行うことができる。
【0084】
発光層66Rの成膜と同様に、第3の成膜装置により緑色を発する発光層66Gを成膜し、さらに第4の成膜装置により青色を発する発光層66Bを成膜する。発光層66R、66G、66Bの成膜が完了した後、第5の成膜装置により表示領域61の全体に電子輸送層67を成膜する。電子輸送層67は、3色の発光層66R、66G、66Bに共通の層として形成される。本実施形態では、電子輸送層67、発光層66R、66G、66B
は真空蒸着により成膜される。
【0085】
電子輸送層67までが形成された基板をスパッタリング装置に移動し、第2電極68を成膜し、その後プラズマCVD装置に移動して保護層Pを成膜して、有機EL表示装置60が完成する。なお、ここでは第2電極68をスパッタリングによって形成するものとしたが、これに限定はされず、第2電極68も電子輸送層67までと同様に真空蒸着により形成されてもよい。
【0086】
絶縁層69がパターニングされた基板10を成膜装置に搬入してから保護層Pの成膜が完了するまでは、水分や酸素を含む雰囲気にさらしてしまうと、有機EL材料からなる発光層が水分や酸素によって劣化してしまうおそれがある。従って、本例において、成膜装置間の基板の搬入搬出は、真空雰囲気または不活性ガス雰囲気の下で行われる。
【0087】
本実施形態に係る基板保持ユニット、基板保持部材、基板保持装置、基板処理装置、基板処理方法および電子デバイスの製造方法によれば、、基板を保持する際の基板と粘着部材の間の当接領域が向上し、粘着部材による粘着性能を発揮できるので、安定性が向上して基板を良好に保持することが可能となる。
【符号の説明】
【0088】
100:基板保持装置、120:基板保持ユニット、122:支持フランジ部、122a:傾動機構、123:粘着パッド、300:電磁コイルユニット、360:電磁コイル、720:制御部
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12