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特許7057337基板剥離装置、基板処理装置、及び基板剥離方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-11
(45)【発行日】2022-04-19
(54)【発明の名称】基板剥離装置、基板処理装置、及び基板剥離方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/683 20060101AFI20220412BHJP
   C23C 14/04 20060101ALI20220412BHJP
   C23C 14/50 20060101ALI20220412BHJP
【FI】
H01L21/68 N
C23C14/04 A
C23C14/50 B
C23C14/50 D
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2019196797
(22)【出願日】2019-10-29
(65)【公開番号】P2021072323
(43)【公開日】2021-05-06
【審査請求日】2020-11-04
(73)【特許権者】
【識別番号】591065413
【氏名又は名称】キヤノントッキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】特許業務法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】戸江 由也
(72)【発明者】
【氏名】下窄 義行
(72)【発明者】
【氏名】小川 滋之
【審査官】杢 哲次
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-039185(JP,A)
【文献】特開2006-108133(JP,A)
【文献】国際公開第2003/075343(WO,A1)
【文献】特開2015-216364(JP,A)
【文献】特開平8-294889(JP,A)
【文献】国際公開第2012/147725(WO,A1)
【文献】特開2013-55093(JP,A)
【文献】国際公開第2010/113485(WO,A1)
【文献】特開2016-119337(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/683
C23C 14/04
C23C 14/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を保持する保持面を有する基体と、複数の粘着ユニットと、を備える基板保持部材から、保持された基板を剥離する基板剥離装置であって、
前記基板保持部材に備えられた前記複数の粘着ユニットのそれぞれは、
前記保持面と交差する第1の方向に延びる軸部と、
前記軸部の第1端側に連結され、粘着力により前記基板に貼り付く粘着パッドと、
前記軸部の前記第1端とは反対の第2端側に設けられる磁性部材と、を有し、
前記軸部の前記第1の方向における長さは、前記保持面と平行な第2の方向における前記粘着パッドの長さよりも長く、
前記基板剥離装置は、前記軸部に対して前記第2の方向の成分を含む力を与えることで、前記軸部及び前記粘着パッドを傾かせて、前記粘着パッドを前記基板から剥がす剥離手段を備え、
前記剥離手段は、電磁力によって前記磁性部材に対し前記第2の方向の成分を含む力を与えるための電磁コイルを有することを特徴とする基板剥離装置。
【請求項2】
前記剥離手段は、前記粘着ユニットを前記第1の方向に移動させるために前記第1の方向の成分を含む力が前記粘着ユニットに印加された状態で、前記軸部に対して前記第2の方向の成分を含む力を与えることを特徴とする請求項1に記載の基板剥離装置。
【請求項3】
前記剥離手段は、前記複数の粘着ユニットについて別々に、それぞれが有する前記軸部に対して前記第2の方向の成分を含む力を与えることを特徴とする請求項1または2に記載の基板剥離装置。
【請求項4】
前記剥離手段は、前記複数の粘着ユニットについて同時に、それぞれが有する前記軸部に対して前記第2の方向の成分を含む力を与えることを特徴とする請求項1または2に記載の基板剥離装置。
【請求項5】
前記剥離手段は、前記軸部の前記第1端とは反対の第2端側に対して前記第2の方向の成分を含む力を与えることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の基板剥離
装置。
【請求項6】
前記剥離手段は、電磁コイルに対して、該電磁コイルの内部に前記磁性部材を引き込む電磁力を発生させた状態で、該電磁コイルを前記第2の方向に移動させることを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載の基板剥離装置。
【請求項7】
前記剥離手段は、
前記電磁コイルを支持する支持台と、
前記支持台を前記第2の方向に移動させる駆動装置と、を備えることを特徴とする請求項に記載の基板剥離装置。
【請求項8】
前記磁性部材は永久磁石であることを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載の基板剥離装置。
【請求項9】
前記第1の方向における前記磁性部材の一端側と端側で磁極が異なることを特徴とする請求項に記載の基板剥離装置。
【請求項10】
基板を保持する保持面を有する基体と、複数の粘着ユニットと、を備える基板保持部材から、保持された基板を剥離する基板剥離装置であって、
前記基板保持部材に備えられた前記複数の粘着ユニットのそれぞれは、
前記保持面と交差する第1の方向に延びる軸部と、
前記軸部の第1端側に連結され、粘着力により前記基板に貼り付く粘着パッドと、
前記軸部の前記第1端とは反対の第2端側に設けられた磁性部材と、を有し、
前記基板剥離装置は、
前記磁性部材に作用する電磁力を発生させる電磁コイルを有する電磁コイルユニットと、
前記電磁コイルユニットを支持する支持台と、
前記電磁力によって前記軸部及び前記粘着パッドを傾かせるために前記支持台を前記保持面と平行な第2の方向に移動させる駆動装置と、を備える
ことを特徴とする基板剥離装置。
【請求項11】
前記電磁コイルに電流が流れている状態で、前記駆動装置が前記支持台を前記第2の方向に移動させることを特徴とする請求項10に記載の基板剥離装置。
【請求項12】
前記電流によって生じる前記電磁コイルの電磁力が、前記第1の方向において前記粘着パッドを前記基板から離れさせる向きの力として、前記磁性部材に作用することを特徴とする請求項11に記載の基板剥離装置。
【請求項13】
記電磁コイルを、前記基板保持部材の有する前記複数の粘着ユニットがそれぞれ有する前記磁性部材のそれぞれに対応する位置に複数有することを特徴とする請求項10から12のいずれか一項に記載の基板剥離装置。
【請求項14】
前記駆動装置によって前記複数の電磁コイルを移動させることを特徴とする請求項13に記載の基板剥離装置。
【請求項15】
前記基板保持部材に保持された基板上に成膜を施す成膜装置と、
請求項1から14のいずれか一項に記載の基板剥離装置と、を備えることを特徴とする基板処理装置。
【請求項16】
基板を保持する保持面を有する基体と、それぞれが前記保持面と交差する第1の方向に
延びる軸部と、前記軸部の第1端側に連結され、粘着力により前記基板に貼り付く粘着パッドと、前記軸部の前記第1端とは反対の第2端側に設けられた磁性部材と、を有する複数の粘着ユニットと、を備える基板保持部材から、保持された基板を剥離する基板剥離方法であって、
前記磁性部材に作用する電磁力を発生させて、前記磁性部材に対して前記保持面と平行な第2の方向の成分を含む力を与えることで、前記軸部及び前記粘着パッドを傾かせて、前記粘着パッドを前記基板から剥がす剥離工程を含むことを特徴とする基板剥離方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板剥離装置、基板処理装置、及び基板剥離方法に関する。
【背景技術】
【0002】
基板上に成膜を行う際など、基板に対して各種処理を行う場合には、基板保持部材(基板キャリア)に基板を保持した状態で各種の処理が行われる。基板保持部材に基板を保持させる手法としては、基板の周辺部分をクランプ機構等によって狭持する方法や、静電チャックを用いる方法、粘着パッドのような粘着部材を用いる方法等が検討されている。
【0003】
特許文献1には、保持板上に設けられた粘着部材(粘着パッド)によってガラス基板を保持し、粘着保持されたガラス基板を保持板ごと搬送および反転し、保持板に粘着保持された状態でガラス基板を処理する構成が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2013-55093号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
各種処理が終了したら、基板保持部材から基板を剥がす必要がある。しかし、基板保持部材から無理に基板を剥がそうとすると、基板に対して局所的に応力が集中するおそれがあり、基板が破損してしまうおそれもある。
【0006】
本発明はかかる課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、基板保持部材に粘着部材を用いて保持された基板を基板保持部材から剥がす際に、基板を良好に剥離するための技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するために以下の手段を採用した。
【0008】
すなわち、本発明の基板剥離装置は、
基板を保持する保持面を有する基体と、複数の粘着ユニットと、を備える基板保持部材から、保持された基板を剥離する基板剥離装置であって、
前記基板保持部材に備えられた前記複数の粘着ユニットのそれぞれは、
前記保持面と交差する第1の方向に延びる軸部と、
前記軸部の第1端側に連結され、粘着力により前記基板に貼り付く粘着パッドと、
前記軸部の前記第1端とは反対の第2端側に設けられる磁性部材と、を有し、
前記軸部の前記第1の方向における長さは、前記保持面と平行な第2の方向における前記粘着パッドの長さよりも長く、
前記基板剥離装置は、前記軸部に対して前記第2の方向の成分を含む力を与えることで、前記軸部及び前記粘着パッドを傾かせて、前記粘着パッドを前記基板から剥がす剥離手段を備え、
前記剥離手段は、電磁力によって前記磁性部材に対し前記第2の方向の成分を含む力を与えるための電磁コイルを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
以上説明したように、本発明によれば、基板保持部材に粘着部材を用いて保持された基板を基板保持部材から剥がす際に、基板を良好に剥離することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は本発明の実施例に係る基板保持部材の平面図である。
図2図2は本発明の実施例に係る基板保持部材の模式的断面図である。
図3図3は本発明の実施例に係る基板保持部材の模式的断面図である。
図4図4は本発明の実施例に係る基板保持装置の動作説明図である。
図5図5は本発明の実施例に係る基板保持装置の動作説明図である。
図6図6は本発明の実施例に係る基板保持装置の動作説明図である。
図7図7は本発明の実施例に係る基板保持装置の動作説明図である。
図8図8は本発明の実施例に係る反転装置の動作説明図である。
図9図9は本発明の実施例に係る成膜装置の動作説明図である。
図10図10は本発明の実施例に係る基板剥離装置の動作説明図である。
図11図11は本発明の実施例に係る基板保持装置の動作説明図である。
図12図12は本発明の実施例に係る基板保持装置の動作説明図である。
図13図13は本発明の実施例に係る基板保持装置の動作説明図である。
図14図14は本発明の実施例に係る反転装置の動作説明図である。
図15図15は本発明の実施例に係る基板剥離装置の動作説明図である。
図16図16は本発明の実施例に係る有機EL表示装置の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に図面を参照して、この発明を実施するための形態を、実施例に基づいて例示的に詳しく説明する。ただし、この実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは、特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0012】
本発明は、基板を保持するための基板保持装置および基板保持方法、それを用いた成膜装置および成膜方法、成膜された基板を用いた電子デバイスの製造装置および電子デバイスの製造方法などに、好ましく適用できる。成膜方法は蒸着やスパッタリングなど方法を問わず、成膜材料や蒸着材料の種類を問わない。本発明はまた、基板保持方法や成膜方法をコンピュータに実行させるプログラムや、当該プログラムを格納した記憶媒体としても捉えられる。記憶媒体は、コンピュータにより読み取り可能な非一時的な記憶媒体であってもよい。
【0013】
(実施例)
図1図16を参照して、本発明の実施例に係る基板保持装置、基板処理装置、基板保持方法、成膜方法、及び電子デバイスの製造方法について説明する。以下の説明においては、電子デバイスを製造するための装置に備えられる基板保持装置等を例にして説明する。また、電子デバイスを製造するための成膜方法として、真空蒸着法を採用した場合を例にして説明する。ただし、本発明は、成膜方法としてスパッタリング法を採用する場合にも適用可能である。また、本発明の基板保持装置等は、成膜工程に用いられる装置以外においても、基板を保持させる必要のある各種装置にも応用可能であり、特に大型基板が処理対象となる装置や、基板を反転する工程がある装置に好ましく適用できる。なお、本発明に適用される基板の材料としては、ガラスの他、半導体(例えば、シリコン)、高分子材料のフィルム、金属などの任意の材料を選ぶことができる。また、基板として、例えば、シリコンウエハ、又はガラス基板上にポリイミドなどのフィルムが積層された基板を採用することもできる。
【0014】
<基板保持部材(基板キャリア)>
特に、図1図3を参照して、本実施例に係る基板保持部材(基板キャリア)100について説明する。図1は本発明の実施例に係る基板保持部材の平面図である。なお、説明の便宜上、図1においては、特徴的な構成を強調して示しているため、縮尺については、実際の製品とは通常大きく異なる。図2は本発明の実施例に係る基板保持部材の模式的断面図であり、図1中のAA断面図である。図3は本発明の実施例に係る基板保持部材の模式的断面図であり、図1中のBB断面図である。なお、図1及び図2においては、基板10と基板10を上下動させるためのピン240の配置関係を分かり易くするために、これ
らの部材についても点線にて示している。
【0015】
基板保持部材100は、基板10を保持する面(以下、保持面110Xと称する)を有する基体を備えている。本実施例では、基体は、保持面110Xが平面で構成される平板状部材110と、平板状部材110を支持する枠体115とを備えている。この平板状部材110には、基板10を上下動させるためのピン240を、平板状部材110における保持面110Xから出没させるための貫通孔111が複数設けられている。また、基板保持部材100は、粘着力を利用して基板10を保持するための粘着ユニット120を複数備えている。また、平板状部材110には、粘着ユニット120の構成部材(粘着パッド123等)を移動可能に構成する貫通孔112も複数設けられている。後述するように粘着パッド駆動機構によって粘着パッド123を駆動することで、粘着パッド123を、貫通孔112を介して保持面110Xから突出または没入させたり、粘着パッド123の粘着面を保持面110Xと面一の状態にさせたりすることができる。更に、基板保持部材100は、基板10の周囲を平板状部材110に固定させるための固定具130を複数備えている。なお、本実施例では、固定具130の一例としてクランプの場合を示すが、固定具としてはクランプに限られず、各種公知技術を採用することができる。また、平板状部材110の形状及び寸法については、基板10のサイズ、及び基板10における成膜領域に応じて適宜設定される。そして、貫通孔111、粘着ユニット120及び固定具130の個数及び配置に関しても、基板10のサイズ、及び基板10における成膜領域に応じて適宜設定される。なお、本実施例では、基体が平板状部材110と枠体115とで構成される例について説明するが、本発明はこれに限定はされない。すなわち、基体は平板状部材110および枠体115の少なくとも一方を備えていればよい。あるいは、基体は平面状の保持面110Xを有する構成であれば、他の任意の部材で構成することもできる。
【0016】
<粘着ユニット>
特に、図3を参照して、粘着ユニット120について、より詳細に説明する。本実施例においては、粘着ユニット120は、断面L字形状の粘着ユニット保持部材150に保持される。この粘着ユニット保持部材150は、枠体115に固定される被固定部151と、粘着ユニット120を保持する保持部152とを備えている。保持部152には貫通孔153が設けられている。なお、本実施例では粘着ユニット保持部材150が枠体115に固定される例を説明するが、これに限定はされず、粘着ユニット保持部材150は基体に固定されていればよい。
【0017】
粘着ユニット120は、軸部121と、軸部121の一端に固定される支持フランジ部122と、支持フランジ部122に固定される粘着パッド123とを備えている。なお、軸部121は、粘着パッド123を支持する支持部として機能する。粘着パッド123は、粘着性を有するシートなどにより構成される。粘着パッド123は、粘着性を有し把持面(または粘着面)を有する粘着層と、粘着層を支持フランジ部122に接着するための接着層とが積層された構造を有していてもよい。また、粘着ユニット120は、軸部121の他端側に固定されるストッパ部124と、軸部121が挿通され、かつストッパ部124に隣接した状態で軸部121に固定される円筒状の永久磁石125と、永久磁石125を軸部121に固定させるためのワッシャ126及びナット127とを備えている。なお、軸部122の他端側には雌ネジが形成されており、この雌ネジにナット127をねじ込むことで永久磁石125を軸部121に固定させることができる。なお、支持フランジ部122及びストッパ部124については、ネジ締結や溶接等によって軸部121に固定することができる。また、ナット127がねじ込まれた状態においては、軸部121と、支持フランジ部122と、粘着パッド123と、ストッパ部124と、永久磁石125と、ワッシャ126及びナット127は一体化された状態となっている。以下、これらが一体化されたものについて、適宜、「一体化された軸部121等」と称する。また、円筒状の永久磁石125は軸方向の一端側と他端側で磁極が異なるように構成されている。図示
の例では、粘着パッド123が設けられている側がN極で、その反対側がS極となる場合を示しているが、逆向きに配置させてもよい。
【0018】
そして、粘着ユニット120は、軸部121の往復移動(上下動)を可能にしつつ、軸部121の揺動を可能にした状態で、一体化された軸部121等を支持するための弾性体128を備えている。本実施例においては、弾性体128の一例として、金属製のスプリング(コイルバネ)が用いられている。ただし、弾性体については、金属製の板バネやエラストマー材料からなる円筒状の部材など、適宜の構成を採用し得る。しかしながら、基板保持部材100を真空中で使用する場合には、弾性体128としては、構成材料からの脱ガスを低減する観点から、金属製の弾性部材を用いることが好ましい。
【0019】
保持部152を挟んで保持面110X側に粘着パッド123等が配され、その反対側にストッパ部124等が配されるように、貫通孔153に軸部121が挿通された状態で、粘着ユニット120は粘着ユニット保持部材150に保持される。このとき、弾性体128の一端は支持フランジ部122に固定され、他端は保持部152に固定された状態で設けられる。なお、弾性体128の内周側の面と軸部121の外周面との間には隙間が設けられ、弾性体128と軸部121は接しないように構成されている。また、ストッパ部124は貫通孔153よりも大径に設定されることで、一体化された軸部121等が貫通孔153から抜け落ちてしまうことを防止している。以上のように、粘着ユニット120は、弾性体128の他端のみが保持部152に固定されており、粘着ユニット120を構成する他の部材は、粘着ユニット120以外の構成部材には接しないように構成されている。このように構成することで、接触摩耗による異物(パーティクル)の発生を抑制することができる。なお、本実施例ではストッパ部124が、永久磁石125と隣接して配置され、永久磁石125の軸部121の軸方向における位置決め固定機能と、保持部152と突き当たることで一体化された軸部121等が貫通孔153から抜け落ちることを防止する機能(メカストッパ機能)との両方を有するが、この構成には限定はされない。すなわち、メカストッパ機能を有するストッパ部124とは別に、永久磁石125の位置決め固定機能を備えた部材を設けてもよい。
【0020】
基板保持部材100について、保持面110Xが水平面に平行かつ鉛直方向上方を向いた状態で、粘着ユニット120には、その自重のみが作用している状態においては、粘着パッド123は、保持面110Xよりも僅かに鉛直方向上方に飛び出した状態となる(図3参照)。この状態においては、一体化された軸部121等は、弾性体128によってのみ支持されており、その他の拘束力は作用しない。これにより、一体化された軸部121等は、往復移動(上下動)及び揺動(首振り動作)が許容されている。従って、粘着パッド123は保持面110Xの内外に出没可能となっており、かつ粘着パッド123における粘着面の保持面110Xに対する傾き(保持面に平行な面をXY平面とした場合に、任意のXY方向に対する傾き)の変更も許容されている。なお、本実施例では上述の状態において粘着パッド123が保持面110Xよりも僅かに突出した状態となる例について説明するが、これに限定はされず、上述の状態において粘着パッド123の粘着面が保持面110Xと同一平面上に位置してもよい。
【0021】
<基板処理装置による処理工程の概要>
基板処理装置による一連の処理工程(本実施例においては、成膜工程(成膜方法)に相当する)の概要を説明する。
【0022】
本実施例においては、まず、基板保持装置により、基板保持部材100に基板10が保持される処理が施される(以下、適宜、「基板保持工程」と称する)。次に、基板10が保持された基板保持部材100が、反転装置によって反転される処理が施される(以下、適宜、「反転工程」と称する)。次に、基板10を間に挟んだ状態で、基板保持部材10
0にマスクが保持される処理が施される(以下、適宜、「マスク保持工程」と称する)。次に、マスクを介して基板に成膜処理が施される(以下、適宜、「成膜工程」と称する)。その後、マスクが取り外された後に、基板保持部材100から基板10が剥離される処理が施される(以下、適宜、「基板剥離工程」と称する)。
【0023】
<基板処理装置による処理工程の詳細>
特に、図4図15を参照して、基板処理装置による一連の処理工程について、工程順に詳細に説明する。図4図10においては、各工程における装置全体の概略構成を断面的に示している。なお、図4図10においては、複数の貫通孔111,112に沿って基板保持部材100等を切断した断面を概略的に示している。なお、図4図10においては、基板保持部材100に関しては、平板状部材110を中心に、簡略的に示している。また、図11図15においては、各工程における粘着ユニット120付近の様子を断面的に示している。なお、各工程における装置に対しては、電源710から電力が供給され、かつ、各装置の動作はコンピュータなどの制御部720により制御される。電源710及び制御部720については、各装置に対して個別に設けることができる。また、複数の装置に対して共通の電源710及び制御部720を設けることもできる。各種の動作を行う装置に電力を供給するための電源が設けられ、各種動作が制御部により制御されること自体は周知技術であるので、電源710及び制御部720の具体的な構成等については、その説明は省略する。
【0024】
<<基板保持工程>>
基板保持装置によって、基板保持部材100に基板10を保持させる処理について説明する。図4図7は基板保持装置の全体の概略構成を断面的に示している。基板保持装置は、基板保持室(第1のチャンバ)R1を備えている。この基板保持室R1内は、真空雰囲気となるように構成されている。なお、本明細書における真空とは、通常の大気圧(1013hPa)より低い圧力の気体で満たされた空間の状態を意味する。そして、基板保持装置は、基板10を上下動させるためのピンユニット200(基板移動機構)と、電磁コイル360を有する電磁コイルユニット300(粘着パッド駆動機構)と、基板10を押圧するための押圧ユニット400(押圧機構)と、基板保持部材100を支持(固定)する支持台500とを備えている。支持台500に基板保持部材100が支持された状態においては、基板保持部材100(平板状部材110)における保持面110Xは水平面と平行になるように構成されている。
【0025】
ピンユニット200は、モータ210と、モータ210により回転するネジ軸220と、ネジ軸220の回転動作に伴って、ネジ軸220に沿って上下動するナット部230と、ナット部230に固定され、ナット部230と共に上下動するピン240とを備えている。なお、ナット部230の内周面とネジ軸220の外周面との間には、複数のボールが無限循環するように構成されている。このように、本実施例においては、ボールねじ機構により、ピン240を上下動させる構成を採用する場合を示したが、本発明においては、そのような構成に限定されることはない。ピン240を上下動させるアクチュエータについては、ラックアンドピニオン方式など、その他の公知技術を採用し得る。また、図示の例では、一つのピン240に対して、それぞれモータ210等の駆動機構が備えられる場合を示しているが、一つの駆動機構によって、複数のピン240を同時に駆動させる構成を採用することもできる。例えば、上記のボールねじ機構を採用する場合には、一つのナット部230に複数のピン240を設ければよい。従って、一つの基板保持装置に一つのピンユニット200のみ(ただし、ピン240は複数設けられる)が備えられる構成も採用し得る。
【0026】
電磁コイルユニット300は、モータ310と、モータ310により回転するネジ軸320と、ネジ軸320の回転動作に伴って、ネジ軸320に沿って上下動するナット部3
30と、ナット部330に固定され、ナット部330と共に上下動する軸部340と、軸部340の先端に設けられる支持部350と、支持部350に支持される電磁コイル360とを備えている。なお、ナット部330の内周面とネジ軸320の外周面との間には、複数のボールが無限循環するように構成されている。このように、本実施例においては、ボールねじ機構により、電磁コイル360を上下動させる構成を採用する場合を示したが、本発明においては、そのような構成に限定されることはない。電磁コイル360を上下動させるアクチュエータについては、ラックアンドピニオン方式など、その他の公知技術を採用し得る。また、図示の例では、一つの電磁コイル360に対して、それぞれモータ310等の駆動機構が備えられる場合を示しているが、一つの駆動機構によって、複数の電磁コイル360を同時に駆動させる構成を採用することもできる。例えば、上記のボールねじ機構を採用する場合には、一つのナット部330に対して、複数の軸部340,支持部350及び電磁コイル360を設ければよい。従って、一つの基板保持装置に一つの電磁コイルユニット300のみ(ただし、電磁コイル360は複数設けられる)が備えられる構成も採用し得る。また、電磁コイル360に対しては電源710(図11等参照)によって、電流が流れるように構成されている。なお、本実施例においては、制御部720により、電磁コイル360に対して流す電流の向きや電流の大きさが変更制御されるように構成されている。
【0027】
ここで、電磁コイル360は、それぞれが複数の粘着ユニット120のそれぞれに対応するように、複数設けられている。すなわち、電磁コイル360の中心軸線と、粘着ユニット120における軸部121の中心軸線が一致するように、各粘着ユニット120に対して、それぞれ電磁コイル360が設けられている。以上のように構成される電磁コイルユニット300は、粘着ユニット120における粘着パッド123を駆動させるための粘着パッド駆動機構としての役割を担っている。
【0028】
押圧ユニット400は、モータ410と、モータ410により回転するネジ軸420と、ネジ軸420の回転動作に伴って、ネジ軸420に沿って上下動するナット部430と、ナット部430に固定され、ナット部430と共に上下動する軸部440と、軸部440の先端に設けられる押圧部450とを備えている。なお、ナット部430の内周面とネジ軸420の外周面との間には、複数のボールが無限循環するように構成されている。このように、本実施例においては、ボールねじ機構により、押圧部450を上下動させる構成を採用する場合を示したが、本発明においては、そのような構成に限定されることはない。押圧部450を上下動させるアクチュエータについては、ラックアンドピニオン方式など、その他の公知技術を採用し得る。また、図示の例では、一つの押圧部450に対して、それぞれモータ410等の駆動機構が備えられる場合を示しているが、一つの駆動機構によって、複数の押圧部450を同時に駆動させる構成を採用することもできる。例えば、上記のボールねじ機構を採用する場合には、一つのナット部430に対して、複数の軸部440及び押圧部450を設ければよい。従って、一つの基板保持装置に一つの押圧ユニット400のみ(ただし、押圧部450は複数設けられる)が備えられる構成も採用し得る。
【0029】
ここで、押圧部450は、それぞれが複数の粘着ユニット120のそれぞれに対応するように、複数設けられている。すなわち、軸部440の中心軸線と、粘着ユニット120における軸部121の中心軸線が一致するように、各粘着ユニット120に対して、それぞれ押圧部450が設けられている。また、押圧ユニット400を構成する軸部440については、軸方向に弾性を有するのが望ましい。例えば、軸部440全体を弾性体で構成することもできるし、軸部440の少なくとも一部を弾性体(例えば、金属製のスプリングなど)により構成することもできる。
【0030】
基板保持室R1は、基板処理領域A1と、第1駆動源配置領域A2と、第2駆動源配置
領域A3に区画される。基板処理領域A1を介して、鉛直方向下方に第1駆動源配置領域A2が設けられ、鉛直方向上方に第2駆動源配置領域A3が設けられる。基板処理領域A1には、基板保持部材100などが配される。そして、第1駆動源配置領域A2には、ピンユニット200におけるモータ210、及び電磁コイルユニット300におけるモータ310などが配される。また、第2駆動源配置領域A3には、押圧ユニット400におけるモータ410などが配される。このような構成により、モータ210,310,410の回転によって発生する異物や、ボールねじ機構部分の摺動部で発生する異物が基板処理領域A1に侵入してしまうことを抑制することができる。なお、本実施形態では上記の3つの領域(A1~A3)をすべて基板保持室R1の真空雰囲気内に配置する構成を説明したが、これに限定はされない。例えば、基板処理領域A1のみを基板保持室R1の真空雰囲気内に配置し、第1駆動源配置領域A2および第2駆動源配置領域A3は大気雰囲気化に配置してもよい。このようにすることで、上述の、異物が基板処理領域A1に侵入してしまうことを抑制する効果をより高めることができる。
【0031】
<<<準備状態>>>
基板10の保持動作が行われる前の準備状態においては、ピン240、電磁コイル360、及び押圧部450は、それぞれ、モータ210,310,410によって、いずれも移動範囲(上下動の範囲)のうち、鉛直方向上方の位置で待機している。このとき、ピン240は、基板保持部材100における平板状部材110の貫通孔111から保持面110Xよりも鉛直方向上方に飛び出した状態となっている。また、電磁コイル360は、粘着ユニット120における永久磁石125に近づいた状態となっている。本実施例では、永久磁石125の一部が電磁コイル360の内側に進入した状態となっている。ただし、永久磁石125と電磁コイル360が十分近づいていれば、永久磁石125が電磁コイル360に進入しない構成も採用し得る。更に、押圧部450は、基板保持部材100から十分離れた状態となっている。
【0032】
この状態で、基板保持室R1の基板処理領域A1に基板10が搬入される。基板10を搬入させるための装置等については、公知技術であるので、詳細説明は省略するが、例えば、ロボットハンドを備えるロボットにより基板10の搬入動作が行われる。搬入された基板10は、複数のピン240の上に載置される。図4は、基板10が複数のピン240の上に載置された状態を示している。
【0033】
<<<基板保持部材への基板の載置工程>>>
複数のピン240の上に基板10が載置された後に、電磁コイル360に電流を流すことで、電磁コイル360の内部に永久磁石125を引き込む電磁力を発生させる。これにより、粘着ユニット120における弾性体128の弾性反発力(スプリングのバネ力)に抗して、一体化された軸部121等は鉛直方向下方に移動する(「粘着パッド123を、保持面110Xよりも基板10から離れた位置に移動させる第1の工程」)。これにより、粘着パッド123は、保持面110Xよりも鉛直方向下方(保持面110Xと垂直な第1の方向)に移動する(図11参照)。換言すれば、これにより、粘着パッド123は、保持面110Xよりも基板10から離れた位置に移動する。あるいは、これにより、粘着パッド123は、保持面110Xから没入した状態となると言うこともできる。なお、粘着パッド123を保持面110Xよりも鉛直方向下方に移動させるための動作については、準備工程で(例えば、基板10が搬入される前に)行っても構わない。なお、ここでは基板保持ユニット120が永久磁石125を有するものとしたが、本発明はこれに限定はされず、永久磁石ではなくとも磁性体によって構成された磁性部材を用いてもよい。磁性体としては強磁性体または反磁性体を用いることが好ましい。これにより、電磁コイル360によって発生した電磁力によって、一体化された軸部121等を鉛直方向下方または上方に移動させることができる。
【0034】
粘着パッド123が保持面110Xよりも鉛直方向下方に位置した状態、かつ、複数のピン240の上に基板10が載置された後に、モータ210によって、ピン240が鉛直方向下方に移動する。これにより、ピン240の先端は、平板状部材110の下面(保持面110Xとは反対側の面)よりも鉛直方向下方に移動する。そして、ピン240の先端が保持面110Xを通過する時点で、基板10は保持面110Xに載置された状態となる(粘着パッド123が保持面110Xよりも基板10から離れた状態のまま、基板10を保持面110Xに接触させる第2の工程)。このように、制御部720によって、粘着パッド123を、保持面110Xよりも基板移動機構によって移動されて近づけられる基板10から離れた位置に移動させた状態で、基板10を近づけて基板10を保持面110Xに接触させるように、粘着パッド駆動機構および基板移動機構の制御がなされる。図5及び図11は、ピン240が下方に移動し、基板10が保持面110Xに載置された状態を示している。基板10は、保持面110Xに載置されることで、平面状の保持面110Xにならうように矯正されて平らな状態へと近づくが、撓みやうねりが多少残り、多少、曲がりくねった状態で保持面110Xに載置される。例えば、大型のガラス基板の場合、保持面110Xから数ミリ程度浮いた部分が複数個所に存在し得る。なお、複数のピン240は、同時に下方に移動させるのが望ましい。これにより、基板10と保持面110Xが平行な状態を保ったまま(あるいは、保持面110Xに対する基板10の姿勢を保ったまま)基板10を下方に移動させることが可能となる。
【0035】
<<<基板の押圧工程>>>
次に、押圧機構による基板10の押圧が行われる。基板10が保持面110Xに載置された後に、モータ410によって、押圧部450が鉛直方向下方に移動する。これにより、基板10は、押圧部450により押圧され、保持面110Xと押圧部450によって挟み込まれ、曲がりくねった状態から平らな状態へと矯正される。
【0036】
ここで、複数の押圧部450により同時に基板10を押圧させることもできるが、矯正効果を高めるために、以下のように押圧させるのが望ましい。すなわち、特定の開始地点から特定の終了地点に向けて、順次、押圧部450による押圧動作を進行させることで、基板10が保持面110Xと押圧部450により挟み込まれる位置が徐々にずれるようにするのが望ましい。換言すれば、複数の押圧部450のうちの少なくとも1つずつを順に基板10に接触させるようにし、基板10の全領域のうち、保持面110Xと押圧部450とにより挟み込まれる部分を含む領域が、特定の開始地点から特定の終了地点に向かって徐々に広がるようにするのが望ましい。これにより、より効果的に、基板10を平らな状態へと矯正することができる。なお、押圧動作を順次行わせるためには、押圧工程の開始時点において、複数の押圧部450のそれぞれにおいて押圧部450と基板10との距離が異なるようにしておき、複数の押圧部450の間の位置関係を保ったまま複数の押圧部450を同時に移動させたり、複数の押圧部450の移動を個々に制御させたりすることにより実現可能である。なお、前者の場合には、上記の通り、軸部440が軸方向に弾性を有するように構成することで、押圧部450が基板10に接した後に、モータ410による軸部440に対する鉛直方向下方への移動動作が続けられていても、基板10に悪影響を及ぼすことはない。
【0037】
以下、より具体的な制御の仕方を説明する。例えば、基板10の長手方向の一端側を開始地点、他端側を終了地点とし、一端側から他端側に向けて、順次、押圧部450による押圧動作が行われるように制御することができる。この場合、図1中、左側から右側、または右側から左側に向けて、順次、基板10が保持面110Xと押圧部450により挟み込まれていくことになる。また、基板10の短手方向の一端側を開始地点、他端側を終了地点とし、一端側から他端側に向けて、順次、押圧部450による押圧動作が行われるように制御することができる。この場合、図1中、上側から下側、または下側から上側に向けて、順次、基板10が保持面110Xと押圧部450により挟み込まれていくことにな
る。また、基板10の長手方向の中央を開始地点、両端側をそれぞれ終了地点とし、中央から両端側に向けて、順次、押圧部450による押圧動作が行われるように制御することができる。この場合、図1中、中央から左右に向けて、順次、基板10が保持面110Xと押圧部450により挟み込まれていくことになる。また、基板10の短手方向の中央を開始地点、両端側をそれぞれ終了地点とし、中央から両端側に向けて、順次、押圧部450による押圧動作が行われるように制御することができる。この場合、図1中、中央から上下に向けて、順次、基板10が保持面110Xと押圧部450により挟み込まれていくことになる。また、基板10の中心を開始地点、4隅をそれぞれ終了地点とし、中心から4隅に向けて、順次、押圧部450による押圧動作が行われるように制御することができる。この場合、図1中、中心から4隅に向けて、順次、基板10が保持面110Xと押圧部450により挟み込まれていくことになる。更に、基板の4隅のうちの一つを開始地点とし、対角側の隅を終了地点とし、順次、押圧部450による押圧動作が行われるように制御することができる。この場合、図1中、4隅のうちの一つから対角側の隅に向けて、順次、基板10が保持面110Xと押圧部450により挟み込まれていくことになる。
【0038】
図6及び図12は、押圧部450が下方に移動し、基板10が保持面110Xと押圧部450により挟み込まれた状態を示している。
【0039】
<<<貼り付き工程>>>
基板10が保持面110Xと押圧部450により挟み込まれた後に、電磁コイル360への通電を停止させるように制御する。これにより、弾性体128の弾性反発力(スプリングのバネ力)によって、一体化された軸部121等は鉛直方向上方に移動し、粘着パッド123が基板10に突き当たる。そして、基板10は押圧部450と粘着パッド123によって挟み込まれた状態となる。また、粘着パッド123の粘着力により、粘着パッド123は基板10に貼り付いて固定された状態となる(保持面110Xに接触した状態の基板10に、粘着パッド123を接触させ、粘着パッド123を基板10に貼り付かせる第3の工程)。
【0040】
ここで、上記の載置工程や押圧工程によって、基板10は平らな状態へと矯正されるものの、多少は曲がりくねった部分が存在し得る。また、基板保持部材100の平板状部材110も、多少の歪を有する場合がある。そのため、粘着パッド123が基板10に突き当たる前の状態においては、基板10と粘着パッド123の対向面同士が平行であるとは限らない。しかしながら、粘着ユニット120における軸部121は、上記の通り、揺動(首振り動作)が許容されている。そのため、粘着パッド123が基板10に突き当たる際に、軸部121が傾くことで、基板10と粘着パッド123の対向面同士は平行な状態で密着する。従って、粘着パッド123による粘着力を十分に発揮させることができる。図13は、粘着パッド123が基板10に突き当たり、基板10が押圧部450と粘着パッド123によって挟み込まれた状態を示している。
【0041】
なお、一体化された軸部121等を鉛直方向上方に移動させるために、電磁コイル360への通電を停止させるのではなく、電流の流す方向を逆向きに変更させる制御を行うようにしてもよい。この場合には、電磁コイル360の外部に永久磁石125を押し出す電磁力が発生する。そのため、一体化された軸部121等は、弾性体128の弾性反発力(スプリングのバネ力)と共に、電磁力が加えられた状態で、鉛直方向上方に移動する。従って、基板10は、押圧部450と粘着パッド123によって、より大きな挟持力により挟み込まれた状態となる。そして、粘着パッド123が基板10に固定された後に、電磁コイル360への通電を停止させればよい。あるいは、電磁コイル360への通電を弱めることによっても、一体化された軸部121等を鉛直方向上方に移動させることができる。なお、電磁コイル360への通電を停止させる必要は必ずしもなく、弾性体128の弾性反発力を弱めるように、電磁コイル360に微弱な電力を供給し続けてもよい。このよ
うに、制御部720は、保持面110Xに基板10が接触した状態で、粘着パッド駆動機構によって、粘着パッド123を第1の方向(本実施例では鉛直方向)を含む方向に移動させることで、粘着パッド123を基板10に貼り付かせるように制御する。
【0042】
その後、モータ410によって、押圧部450は鉛直方向上方に移動し、モータ310によって、電磁コイル360は鉛直方向下方に移動する。また、固定具130によって、基板10の周囲が基板保持部材100に固定される(図7参照)。なお、固定具130を駆動させるための電源(電池)、及び、固定具130を駆動制御するための制御部に関しては、基板保持部材100に設けることができる。この場合、基板保持部材100に備えられる制御部に対しては、装置外部から命令信号を通信により送るようにすればよい。
【0043】
なお、押圧部450を鉛直方向上方に移動させる動作と、電磁コイル360を鉛直方向下方に移動させる動作と、固定具130による基板10の固定動作については、同時に行われるように制御してもよいし、適宜、順次(順不同)行わせるように制御してもよい。
【0044】
以上により、基板保持工程が終了し、基板10を保持した基板保持部材100は基板保持室R1から搬出される。なお、基板保持室R1、後述する反転室R2、アライメント室、成膜室R3等の各チャンバへの基板保持部材100の搬送は、不図示の搬送手段によって行われる。搬送手段は各チャンバの内部が真空に維持された状態で、基板保持部材100をチャンバ間で移動させることができる。搬送手段としては、ロボットハンドや基板搬送ローラ、リニアモータを用いたリニア搬送システム等を用いることができる。
【0045】
なお、本実施例では基板保持部材100の保持面110Xが水平面と平行かつ鉛直方向上向きを向くように配置された状態で基板保持部材100に基板10を保持させるものとしたが、本発明はこれに限定はされない。例えば、基板保持部材100の保持面110Xが水平面と直交するように配置された状態、すなわち、保持面110Xが水平方向を向くように配置された状態で、基板保持部材100に基板10を保持させるようにしてもよい。この場合には、基板移動機構として、基板10の主面(成膜面)が水平方向を向いた状態で基板10を支持し、その状態で基板10を基板保持部材100の保持面110Xに近づけたり離したりすることができる機構を用いればよい。このような基板移動機構としては従来公知の機構を採用することができるが、例えば、主面が水平方向を向いた状態の基板10の上辺および下辺をクランプするクランプ部と、クランプ部を水平方向に移動させるアクチュエータと、を用いることができる。あるいは、主面が水平方向を向いた状態の基板10の成膜面とは反対側の面を静電吸着する静電チャックと、静電チャックを水平方向に移動させるアクチュエータと、を用いることもできる。
【0046】
また、本実施例では基板移動機構としてピン240およびアクチュエータを備えたピンユニット200を用いたが、本発明はこれに限定はされないことは上述のとおりである。基板移動機構としては、上述の例の他、主面(成膜面)が水平面と平行な状態で配置された基板10の周辺部を支持する1つまたは複数の支持部(受け爪)と、この支持部を移動させるアクチュエータと、を用いることもできる。この場合には、基板保持部材100の基体は、1つまたは複数の支持部のそれぞれに対応した位置に切り欠き等が設けられており、支持部による支持面と基板保持部材100の保持面110Xとを同一平面状に位置させることができるようにすることが好ましい。
【0047】
<<反転工程>>
図8(a)(b)は反転装置の全体の概略構成を断面的に示している。反転装置は、反転室R2を備えている。この反転室R2内は、真空雰囲気となるように構成されている。反転装置は、基板保持部材100を保持する保持部材610と、保持部材610に固定される回転軸620と、回転軸620を回転させるモータ630と、回転軸620を軸支す
る支持部材640とを備えている。
【0048】
基板10を保持した基板保持部材100は、基板保持室R1から搬出された後に、反転装置(反転室R2)に送られる。そして、反転室R2内に搬入された基板保持部材100は保持部材610により保持される(図8(a)参照)。その後、モータ630により、基板保持部材100は反転(180°回転)される。これにより、基板10は基板保持部材100に対して、鉛直方向下向きに向いた状態となる。図8(b)及び図14は反転後の状態を示している。基板保持部材100が反転した状態においては、ストッパ部124が粘着ユニット保持部材150の保持部152に突き当たった状態となる。これにより、基板10は平行な状態を維持したまま複数の粘着ユニット120により保持された状態となる。
【0049】
以上により、反転工程が終了し、基板10を保持した基板保持部材100は反転室R2から搬出される。
【0050】
<<マスク保持工程>>
基板10を保持した基板保持部材100は、反転室R2から搬出された後に、アライメント装置(アライメント室)に送られる。アライメント室においては、基板10に対して位置合わせ(アライメント)を行った状態で、基板10上にマスク20が保持される。なお、マスク20を保持する手法としては、永久磁石や電磁石、永電磁石等による磁気力を利用することもできるし、クランプなどの機械的な保持手段を採用することもできる。勿論、これらを併用することもできる。基板10に対して位置合わせを行った状態でマスク20を保持させるための装置に関しては、各種公知技術を適用すればよいので、その説明は省略する。
【0051】
以上により、マスク保持工程が終了し、基板10とマスク20を保持した基板保持部材100は、アライメント室から搬出される。
【0052】
<<成膜工程>>
図9は成膜装置(本実施例においては蒸着装置)の全体の概略構成を断面的に示している。成膜装置は、成膜室(第2のチャンバ)R3を備えている。この成膜室R3内は、真空雰囲気となるように構成されている。また、成膜装置は、成膜源としての蒸発源30を備えている。
【0053】
基板10とマスク20を保持した基板保持部材100は、アライメント室から搬出された後に、成膜装置(成膜室R3)に送られる。成膜室R3には成膜を行うための成膜源が配置されており、基板保持部材100に保持された基板10上に、マスク20を介して成膜が行われる。本実施例においては、真空蒸着による成膜(蒸着)が行われる。具体的には、成膜源としての蒸発源30から成膜材料が蒸発または昇華し、基板10上に成膜材料が蒸着することにより基板10上に薄膜が形成される。蒸発源30については、公知技術であるので、その詳細な説明は省略する。例えば、蒸発源30は、坩堝等の成膜材料を収容する容器と、容器を加熱する加熱装置等により構成することができる。なお、成膜室R3は複数のチャンバで構成され、それぞれのチャンバに異なる成膜材料を成膜するための成膜源がそれぞれ配置されていてもよい。そして、基板10を保持した基板保持部材100がそれぞれのチャンバ内を順次搬送されることで、それぞれの成膜材料による成膜が順次なされてもよい。また、成膜源は蒸発源30に限定されるものではなく、成膜源はスパッタリングによって成膜を行うためのスパッタリングカソードであってもよい。
【0054】
以上により、成膜工程が終了する。その後、基板10からマスク20が取り外される。基板10からマスク20を取り外す装置等については、公知技術であるので、その説明は
省略する。また、マスク20が取り外された後に、別のマスクを用いて別の成膜材料による成膜がなされる工程が繰り返されることもある。そして、全ての成膜工程が完了し、マスクが取り外された後に、基板保持部材100から基板10が剥離される処理が施される。
【0055】
<<基板剥離工程>>
図10(a)(b)は基板剥離装置の全体の概略構成を断面的に示している。基板剥離装置は、基板剥離室R4を備えている。この基板剥離室R4内は、真空雰囲気となるように構成されている。基板剥離装置は、基板保持装置と同様に、基板10を上下動させるためのピンユニット200(基板移動機構)と、電磁コイルユニット300と、基板保持部材100を支持する支持台500とを備えている。これらの構成自体については、上記の通りであるので、その説明は省略する。
【0056】
そして、基板剥離装置は、電磁コイルユニット300を支持する支持台370と、支持台370を保持面110Xと平行に移動させることで電磁コイルユニット300を保持面110Xと平行に移動させることを可能とする駆動装置380とを備えている。なお、駆動装置380に関しては、ボールねじ機構、ラックアンドピニオン方式によるアクチュエータなど各種公知技術を適用することができる。なお、図示の例では、複数の電磁コイルユニット300が設けられており、支持台370は全ての電磁コイルユニット300を支持するように構成されている。また、電磁コイル360と駆動装置380とによって、粘着パッド123を基板10から剥がす剥離機構を構成している。なお、電磁コイル360は、支持部としての軸部121に対して保持面110Xと垂直な第1の方向を含む方向に力を与える機能を有している。また、駆動装置380は、軸部121に対して保持面110Xと平行な第2の方向を含む方向に力を与える機能を有している。
【0057】
マスクが取り外された後に、基板10を保持した基板保持部材100は、基板剥離室R4に搬入される。そして、この基板保持部材100は、支持台500に支持される(固定される)。図10(a)は基板保持部材100が支持台500に支持された状態を示している。その後、電磁コイル360に電流を流すことで、電磁コイル360の内部に永久磁石125を引き込む電磁力を発生させる。本実施例においては、粘着パッド123の粘着力が高いため、この電磁力だけでは、粘着パッド123が基板10から剥がれることはない。
【0058】
そして、上記の電磁力を発生させた状態で、駆動装置380により、支持台370を移動させることによって、全ての電磁コイル360を、同時に保持面110Xと平行に移動させる。これにより、粘着ユニット120における永久磁石125が保持面110Xと平行な方向に引っ張られて、軸部121が少し傾くことで、粘着パッド123も傾き、基板10から剥がれた状態となる。すなわち、電磁コイル360の移動によって、粘着パッド123をひねって剥がすことができる。図15は、粘着パッド123が基板10から剥がれた直後の状態を示している。その後、弾性体128の弾性反発力に抗して、一体化された軸部121等は、電磁力によって鉛直方向下方に移動することで、粘着パッド123は基板10から離れた状態となる。なお、本実施例においては、一つの支持台370と一つの駆動装置380により、同時に全ての電磁コイル360を移動させる場合を示した。しかしながら、本発明はそのような構成に限定されることはない。例えば、複数の電磁コイル360について、複数組に分け、各組に対して、それぞれ支持台370と駆動装置380を設けることもできる。この場合、全ての組について、同時に電磁コイル360を移動させてもよいし、組毎に時期を分けて電磁コイル360を移動させてもよい。各組には一つ以上の電磁コイル360が存在すればよい。なお、各組に複数の電磁コイル360が存在する場合においては、一つの電磁コイル360に対して、個々にモータ310等の駆動機構が備えられる構成を採用することもできるし、上記の通り、一つの駆動機構によって
、複数の電磁コイル360を同時に駆動させる構成を採用することもできる。従って、各組については、一つの電磁コイルユニット300のみ(ただし、電磁コイル360は複数設けられる)が備えられる構成も採用し得る。また、基板剥離装置には、一つの電磁コイルユニット300のみ(ただし、電磁コイル360は複数設けられる)が備えられる構成も採用し得る。
【0059】
粘着パッド123が基板10から離れた後に、固定具130による基板10の固定が解除される。図10(b)は支持台370が移動し、かつ固定具130による基板10の固定が解除された状態を示している。なお、固定具130による基板10の固定の解除動作については、支持台370を移動させる前に行うように制御してもよい。その後、モータ210によって、ピン240が鉛直方向上方に移動し、基板10は複数のピン240によって持ち上げられて、基板保持部材100から離間する。その後、基板10は基板剥離室R4から搬出される。
【0060】
なお、本実施例では基板保持部材100の保持面110Xが水平面と平行かつ鉛直方向上向きを向くように配置された状態で基板保持部材100から基板10を剥離させるものとしたが、本発明はこれに限定はされない。例えば、基板保持部材100の保持面110Xが水平面と直交するように配置された状態、すなわち、保持面110Xが水平方向を向くように配置された状態で、基板保持部材100から基板10を剥離させるようにしてもよい。また、基板移動機構としては、基板保持工程の説明において述べたとおり、従来公知の他の機構を用いることができることは言うまでもない。
【0061】
<電子デバイスの製造方法>
上記の基板処理装置を用いて、電子デバイスを製造する方法について説明する。ここでは、電子デバイスの一例として、ディスプレイ装置などに用いられる有機EL素子の場合を例にして説明する。なお、本発明に係る電子デバイスはこれに限定はされず、薄膜太陽電池や有機CMOSイメージセンサであってもよい。本実施例においては、上記の成膜方法を用いて、基板10上に有機膜を形成する工程を有する。また、基板10上に有機膜を形成させた後に、金属膜または金属酸化物膜を形成する工程を有する。このような工程により得られる有機EL表示装置60の構造について、以下に説明する。
【0062】
図16(a)は有機EL表示装置60の全体図、図16(b)は一つの画素の断面構造を表している。図16(a)に示すように、有機EL表示装置60の表示領域61には、発光素子を複数備える画素62がマトリクス状に複数配置されている。発光素子のそれぞれは、一対の電極に挟まれた有機層を備えた構造を有している。なお、ここでいう画素とは、表示領域61において所望の色の表示を可能とする最小単位を指している。本図の有機EL表示装置の場合、互いに異なる発光を示す第1発光素子62R、第2発光素子62G、第3発光素子62Bの組合せにより画素62が構成されている。画素62は、赤色発光素子と緑色発光素子と青色発光素子の組合せで構成されることが多いが、黄色発光素子とシアン発光素子と白色発光素子の組み合わせでもよく、少なくとも1色以上であれば特に制限されるものではない。また、各発光素子は複数の発光層が積層されて構成されていてもよい。
【0063】
また、画素62を同じ発光を示す複数の発光素子で構成し、それぞれの発光素子に対応するように複数の異なる色変換素子がパターン状に配置されたカラーフィルタを用いて、1つの画素が表示領域61において所望の色の表示を可能としてもよい。例えば、画素62を少なくとも3つの白色発光素子で構成し、それぞれの発光素子に対応するように、赤色、緑色、青色の各色変換素子が配列されたカラーフィルタを用いてもよい。あるいは、画素62を少なくとも3つの青色発光素子で構成し、それぞれの発光素子に対応するように、赤色、緑色、無色の各色変換素子が配列されたカラーフィルタを用いてもよい。後者
の場合には、カラーフィルタを構成する材料として量子ドット(Quantum Dot:QD)材料を用いた量子ドットカラーフィルタ(QD-CF)を用いることで、量子ドットカラーフィルタを用いない通常の有機EL表示装置よりも表示色域を広くすることができる。
【0064】
図16(b)は、図16(a)のA-B線における部分断面模式図である。画素62は、基板10上に、第1電極(陽極)64と、正孔輸送層65と、発光層66R,66G,66Bのいずれかと、電子輸送層67と、第2電極(陰極)68と、を備える有機EL素子を有している。これらのうち、正孔輸送層65、発光層66R,66G,66B、電子輸送層67が有機層に当たる。また、本実施形態では、発光層66Rは赤色を発する有機EL層、発光層66Gは緑色を発する有機EL層、発光層66Bは青色を発する有機EL層である。なお、上述のようにカラーフィルタまたは量子ドットカラーフィルタを用いる場合には、各発光層の光出射側、すなわち、図16(b)の上部または下部にカラーフィルタまたは量子ドットカラーフィルタが配置されるが、図示は省略する。
【0065】
発光層66R,66G,66Bは、それぞれ赤色、緑色、青色を発する発光素子(有機EL素子と記述する場合もある)に対応するパターンに形成されている。また、第1電極64は、発光素子ごとに分離して形成されている。正孔輸送層65と電子輸送層67と第2電極68は、複数の発光素子62R,62G,62Bと共通で形成されていてもよいし、発光素子毎に形成されていてもよい。なお、第1電極64と第2電極68とが異物によってショートするのを防ぐために、第1電極64間に絶縁層69が設けられている。さらに、有機EL層は水分や酸素によって劣化するため、水分や酸素から有機EL素子を保護するための保護層Pが設けられている。
【0066】
次に、電子デバイスとしての有機EL表示装置の製造方法の例について具体的に説明する。まず、有機EL表示装置を駆動するための回路(不図示)および第1電極64が形成された基板10を準備する。
【0067】
次に、第1電極64が形成された基板10の上にアクリル樹脂をスピンコートで形成し、アクリル樹脂をリソグラフィ法により、第1電極64が形成された部分に開口が形成されるようにパターニングし絶縁層69を形成する。この開口部が、発光素子が実際に発光する発光領域に相当する。
【0068】
次に、絶縁層69がパターニングされた基板10を第1の成膜装置に搬入し、基板保持ユニットにて基板を保持し、正孔輸送層65を、表示領域の第1電極64の上に共通する層として成膜する。正孔輸送層65は真空蒸着により成膜される。実際には正孔輸送層65は表示領域61よりも大きなサイズに形成されるため、高精細なマスクは不要である。ここで、本ステップでの成膜や、以下の各レイヤーの成膜において用いられる成膜装置は、上記各実施形態のいずれかに記載された成膜装置である。
【0069】
次に、正孔輸送層65までが形成された基板10を第2の成膜装置に搬入し、基板保持ユニットにて保持する。基板とマスクとのアライメントを行い、基板をマスクの上に載置し、基板10の赤色を発する素子を配置する部分に、赤色を発する発光層66Rを成膜する。本例によれば、マスクと基板とを良好に重ね合わせることができ、高精度な成膜を行うことができる。
【0070】
発光層66Rの成膜と同様に、第3の成膜装置により緑色を発する発光層66Gを成膜し、さらに第4の成膜装置により青色を発する発光層66Bを成膜する。発光層66R、66G、66Bの成膜が完了した後、第5の成膜装置により表示領域61の全体に電子輸送層67を成膜する。電子輸送層65は、3色の発光層66R、66G、66Bに共通の
層として形成される。本実施形態では、電子輸送層67、発光層66R、66G、66Bは真空蒸着により成膜される。
【0071】
電子輸送層67までが形成された基板をスパッタリング装置に移動し、第2電極68を成膜し、その後プラズマCVD装置に移動して保護層Pを成膜して、有機EL表示装置60が完成する。なお、ここでは第2電極68をスパッタリングによって形成するものとしたが、これに限定はされず、第2電極68も電子輸送層67までと同様に真空蒸着により形成されてもよい。
【0072】
絶縁層69がパターニングされた基板10を成膜装置に搬入してから保護層Pの成膜が完了するまでは、水分や酸素を含む雰囲気にさらしてしまうと、有機EL材料からなる発光層が水分や酸素によって劣化してしまうおそれがある。従って、本例において、成膜装置間の基板の搬入搬出は、真空雰囲気または不活性ガス雰囲気の下で行われる。
【0073】
<本実施例に係る基板剥離装置(基板剥離方法)等の優れた点>
本実施例においては、粘着ユニット120は、軸部121と、軸部121の一端側に設けられる粘着パッド123とを有しており、軸部121の他端側に対して保持面110Xと平行な方向に力を与えることで、軸部121と共に粘着パッド123を傾かせて、粘着パッド123を基板10から剥がす構成を採用している。従って、個々の粘着パッド123を弱い力でも引きはがすことができる。つまり、粘着パッド123を基板10の表面に対して垂直方向に引き剥がす場合に比べて、相当弱い力で粘着パッド123を引き剥がすことができる。これにより、全ての粘着パッド123を比較的弱い力で引き剥がすことができる。また、基板10に局所的に応力が集中してしまうこともない。
【0074】
また、本実施例においては、粘着ユニット120は、軸部121の他端側に設けられる永久磁石125を有しており、基板剥離装置内に設けられた電磁コイル360に対して、電磁コイル360の内部に永久磁石125を引き込む電磁力を発生させた状態で、電磁コイル360を保持面110Xと平行な方向に移動させる構成を採用している。これにより、軸部121の他端側に対して保持面110Xと平行な方向に力を与えるようにしている。従って、直接、軸部121に接することなく軸部121の他端側に力を付与させることができる。そのため、摩耗粉などが発生してしまうことを抑制することができる。
【0075】
また、複数の粘着ユニット120における軸部121の他端側に対して、同時に保持面110Xと平行な方向に力を与えることで、剥離作業の時間を短縮することができる。特に、全ての複数の粘着ユニット120における全ての軸部121の他端側に対して、同時に保持面110Xと平行な方向に力を与えることで、全ての粘着パッド123を一度に引き剥がすことができ、剥離作業の時間をより一層短くすることができる。
【0076】
(その他)
上記実施例においては、粘着ユニット120が、断面L字形状の粘着ユニット保持部材150に保持される構成を示した。しかしながら、粘着ユニット120は、枠体110に直接保持される構成を採用することもできる。この場合、枠体110に対して、保持面110X側が大径で、その反対側が小径となるような段付きの貫通孔を設ければよい。これにより、貫通孔のうち、小径の部分が、粘着ユニット保持部材150における保持部152の貫通孔153に相当し、大径部の部分に、弾性体128や粘着パッド123が配されるようにすればよい。
【0077】
また、上記実施例においては、粘着パッド123を駆動させるための粘着パッド駆動機構として、電磁コイルユニット300を用いる場合の構成について示した。このような構成を採用することで、基板保持室R1における基板処理領域A1内に備えられる各種部材
については、互いに摺動する個所をなくすことができる。これにより、摩耗粉などの発生をなくすことができる。しかしながら、使用環境等によって、摩耗粉などがそれほど問題にならない場合には、粘着パッド123を駆動させるための機構については、電磁コイルユニット300を用いずに、ボールねじ機構やラックアンドピニオン方式などの機械的な機構のみで行うこともできる。この場合、例えば、粘着ユニットについては、上記の粘着ユニット120のうち、永久磁石125を備えていない構成として、ボールねじ機構などによって、粘着ユニット側の軸部121を単に上方に押圧したり、押圧を解除したりする構成にすればよい。このように、本発明においては、電磁コイルユニットや永久磁石については必ずしも必須ではない。なお、ボールねじ機構やラックアンドピニオン方式のみで粘着パッド123を駆動させる場合で、粘着パッド123の粘着面の保持面110Xに対する傾きを変更可能に構成したい場合には、粘着ユニット120における軸部を、粘着パッド123側の軸部と、駆動源側の軸部に分けて、これらを自在接手(ユニバーサルジョイント)などによって接続させる構成を採用すると好適である。以上のような構成を採用した場合であっても、粘着パッド123を駆動させるための機構全体を保持面110Xと平行に移動させることで、軸部121の他端側に対して保持面110Xと平行な方向に力を与えることができる。
【符号の説明】
【0078】
10 基板
20 マスク
30 蒸発源
100 基板保持部材(基板キャリア)
110・・・枠体,110X・・・保持面,111・・・貫通孔
120 粘着ユニット
121・・・軸部,122・・・支持フランジ部,122・・・軸部,123・・・粘着パッド,124・・・ストッパ部,125・・・永久磁石,126・・・ワッシャ,127・・・ナット,128・・・弾性体
130 固定具
150 粘着ユニット保持部材
151・・・被固定部,152・・・保持部,153・・・貫通孔
200 ピンユニット
210・・・モータ,220・・・ネジ軸,230・・・ナット部,240・・ピン
300 電磁コイルユニット
310・・・モータ,320・・・ネジ軸,330・・・ナット部,340・・・軸部,350・・・支持部,360・・・電磁コイル,370・・・支持台,380・・・駆動装置
400 押圧ユニット
410・・・モータ,420・・・ネジ軸,430・・・ナット部,440・・・軸部,450・・・押圧部
500 支持台
610 保持部材
620 回転軸
630 モータ
640 支持部材
710 電源
720 制御部
A1 基板処理領域
A2 第1駆動源配置領域
A3 第2駆動源配置領域
R1 基板保持室
R2 反転室
R3 成膜室
R4 基板剥離室
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
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