(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-11
(45)【発行日】2022-04-19
(54)【発明の名称】樹脂組成物、膜、積層体、接合構造体、積層体の製造方法および接合構造体の製造方法
(51)【国際特許分類】
C08L 101/00 20060101AFI20220412BHJP
C08K 9/10 20060101ALI20220412BHJP
B32B 27/18 20060101ALI20220412BHJP
H05K 1/18 20060101ALI20220412BHJP
H05K 3/32 20060101ALI20220412BHJP
【FI】
C08L101/00
C08K9/10
B32B27/18 Z
H05K1/18 J
H05K3/32 B
(21)【出願番号】P 2020549193
(86)(22)【出願日】2019-09-24
(86)【国際出願番号】 JP2019037186
(87)【国際公開番号】W WO2020066974
(87)【国際公開日】2020-04-02
【審査請求日】2021-02-26
(31)【優先権主張番号】P 2018181635
(32)【優先日】2018-09-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】特許業務法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】堀田 吉則
【審査官】佐藤 玲奈
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-164125(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0029582(US,A1)
【文献】特開2002-356623(JP,A)
【文献】特開2002-163939(JP,A)
【文献】特開昭59-204591(JP,A)
【文献】特開2009-288577(JP,A)
【文献】特開2017-113911(JP,A)
【文献】特開2004-227730(JP,A)
【文献】特開2000-294889(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08K 3/00 - 13/08
C08L 1/00 -101/14
C08J 3/00 - 3/28
B32B 27/18
H05K 1/18
H05K 3/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂と、芯材を内包したカプセルと
、可塑剤とを含有する樹脂組成物であって、
前記カプセルは、最大径の算術平均が3μm以下であり、
前記芯材は、酸化剤、還元剤および反応性可塑剤から選ばれる少なくも1種を含む、樹脂組成物。
【請求項2】
樹脂と、芯材を内包したカプセルとを含有する樹脂組成物であって、
前記樹脂が熱硬化性樹脂であり、
前記カプセルは、最大径の算術平均が3μm以下であり、
前記芯材は、酸化剤、還元剤および反応性可塑剤から選ばれる少なくも1種を含む、樹脂組成物。
【請求項3】
前記カプセルの最大径の算術平均が0.1μm以上である、請求項1
または2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記樹脂組成物の全固形分中に前記カプセルを5~50質量%含有する、請求項1
~3のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
前記樹脂の100質量部に対して前記カプセルを10~50質量部含有する、請求項1~
4のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
前記カプセルは、10kPa~50MPaの圧力印加で破壊されるものである、請求項1~
5のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
前記カプセルは、120~300℃で破壊されるものである、請求項1~
6のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項8】
前記芯材の23℃における粘度が100mPa・s以下である、請求項1~
7のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項9】
前記樹脂組成物は更に可塑剤を含む、請求項
2に記載の樹脂組成物。
【請求項10】
前記樹脂はエポキシ樹脂を含む、請求項1~9のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項11】
前記樹脂組成物は更に硬化剤を含む、請求項1~10のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか1項に記載の樹脂組成物を用いて形成された膜。
【請求項13】
前記膜中における前記カプセルの体積分率が5%以上である、請求項12に記載の膜。
【請求項14】
電気的な導通端子となる突起部を有する部材と、
前記部材の前記突起部を有する側の表面に設けられた、樹脂と、芯材を内包したカプセルとを含有し、前記カプセルは、最大径の算術平均が3μm以下であり、前記芯材は、前記樹脂を分解する化合物および可塑剤から選ばれる少なくとも1種を含む樹脂組成物を用いて形成された膜と、を有する、積層体。
【請求項15】
前記部材は、絶縁性基材の両面に前記突起部を有し、前記膜は前記絶縁性基材の両面に有する、請求項14に記載の積層体。
【請求項16】
前記部材は複数の突起部を有し、突起部同士の間隔が前記カプセルの最大径の算術平均未満である、請求項14または15に記載の積層体。
【請求項17】
前記部材は、絶縁性基材と、前記絶縁性基材の厚み方向に貫通し、互いに絶縁された状態で設けられた導電性部材からなる複数の導通路とを有し、前記複数の導通路が前記絶縁性基材の表面から突出した突起部を有する異方導電性部材であり、
前記絶縁性基材の表面から突出した前記突起部が前記膜で覆われている、請求項14~16のいずれか1項に記載の積層体。
【請求項18】
前記膜中におけるカプセルは、前記絶縁性基材と前記膜が接する面とは反対側の表層部分に偏在している、請求項17に記載の積層体。
【請求項19】
電気的な導通端子となる突起部を有する第1の部材と、
電気的な導通端子となる突起部を有する第2の部材と、
前記第1の部材と前記第2の部材との間に設けられた、樹脂と、芯材を内包したカプセルとを含有し、前記カプセルは、最大径の算術平均が3μm以下であり、前記芯材は、前記樹脂を分解する化合物および可塑剤から選ばれる少なくとも1種を含む樹脂組成物を用いて形成された膜とを有し、
前記第1の部材の突起部と前記第2の部材の突起部とが電気的に接合している、接合構造体。
【請求項20】
前記第1の部材および前記第2の部材の一方が絶縁性基材と、前記絶縁性基材の厚み方向に貫通し、互いに絶縁された状態で設けられた導電性部材からなる複数の導通路とを有し、前記複数の導通路が、前記絶縁性基材の表面から突出した突起部を有する異方導電性部材であり、他方が配線基板である、請求項19に記載の接合構造体。
【請求項21】
電気的な導通端子となる突起部を有する部材に、樹脂と、芯材を内包したカプセルとを含有し、前記カプセルは、最大径の算術平均が3μm以下であり、前記芯材は、前記樹脂を分解する化合物および可塑剤から選ばれる少なくとも1種を含む樹脂組成物を適用して、前記突起部に接しかつ前記突起部の高さを超える厚さを有する樹脂組成物層を形成する樹脂組成物層形成工程を含む、積層体の製造方法。
【請求項22】
電気的な導通端子となる突起部を有する第1の部材に、樹脂と、芯材を内包したカプセルとを含有し、前記カプセルは、最大径の算術平均が3μm以下であり、前記芯材は、前記樹脂を分解する化合物および可塑剤から選ばれる少なくとも1種を含む樹脂組成物を適用して、前記突起部に接しかつ前記突起部の高さを超える厚さを有する樹脂組成物層を形成する樹脂組成物層形成工程と、
電気的な導通端子となる突起部を有する第2の部材の前記突起部を、第1の部材上に形成した前記樹脂組成物層に接触させる接触工程と、
前記樹脂組成物層中に含まれる前記カプセルを破壊した後、または、前記カプセルを破壊しながら、前記第1の部材と前記第2の部材とを圧接して前記第1の部材の突起部と前記第2の部材の突起部とを電気的に接合する接合工程と、を含む、接合構造体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂と、芯材を内包したカプセルとを含有する樹脂組成物に関する。更に詳しくは、電気的な導通端子となる突起部を有する部材同士の接合などに用いる樹脂組成物に関する。また、本発明は、樹脂組成物を用いた膜、積層体、接合構造体、積層体の製造方法および接合構造体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
絶縁性基材に設けられた微細孔に金属が充填されてなる金属充填微細構造体は、近年ナノテクノロジーでも注目されている分野のひとつであり、例えば、異方導電性部材としての用途が期待されている。この異方導電性部材は、半導体素子等の電子部品と回路基板との間に挿入し、加圧するだけで電子部品と回路基板間の電気的接続が得られるため、半導体素子等の電子部品等の電気的接続部材や機能検査を行う際の検査用コネクタ等として広く使用されている。特に、半導体素子等の電子部品は、ダウンサイジング化が顕著であり、従来のワイヤーボンディングのような配線基板を直接接続するような方式や、フィリップチップボンディング、サーモコンプレッション(熱圧着)ボンディングなどでは、接続の安定性を十分に保証することができないため、電子接続部材として異方導電性部材が注目されている。
【0003】
特許文献1、2には、無機材料からなる絶縁性基材と、絶縁性基材の厚み方向に貫通し、互いに絶縁された状態で設けられた、導電性部材からなる複数の導通路とを有し、複数の導通路が、絶縁性基材の表面から突出した突起部を有する異方導電性部材を用いて、複数の電極を有する配線基板を接合することが記載されている。また、特許文献1、2では、異方導電性部材の突起部と、配線基板の電極とを接合するにあたり、熱硬化性樹脂を用いて接着している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2016/006660号
【文献】特開2018-037509号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電気的な導通端子となる突起部を有する第1の部材と、配線基板などの電気的な導通端子となる突起部を有する第2の部材とを接合するにあたり、樹脂組成物などを用いて接合することで、優れた接合の信頼性を得ることができる。
【0006】
また、近年では、これらの部材同士を接合するにあたり、より低温で行うことが検討されている。しかしながら、接合温度を低下させるに伴い、両者の部材間にボイドが生じることがあった。
【0007】
よって、本発明の目的は、突起部を有する部材同士を接合する際に、両者の部材間でボイドの発生を抑制できる樹脂組成物を提供することにある。また、本発明は、樹脂組成物を用いた膜、積層体、接合構造体、積層体の製造方法および接合構造体の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者の検討によれば、後述する構成の樹脂組成物を用いることにより上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。よって、本発明は以下を提供する。
<1> 樹脂と、芯材を内包したカプセルとを含有する樹脂組成物であって、
上記カプセルは、最大径の算術平均が3μm以下であり、
芯材は、樹脂を分解する化合物および可塑剤から選ばれる少なくとも1種を含む、樹脂組成物。
<2> 上記カプセルの最大径の算術平均が0.1μm以上である、<1>に記載の樹脂組成物。
<3> 樹脂組成物の全固形分中に上記カプセルを5~50質量%含有する、<1>または<2>に記載の樹脂組成物。
<4> 樹脂の100質量部に対して上記カプセルを10~50質量部含有する、<1>~<3>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<5> 上記カプセルは、10kPa~50MPaの圧力印加で破壊されるものである、<1>~<4>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<6> 上記カプセルは、120~300℃で破壊されるものである、<1>~<5>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<7> 芯材の23℃における粘度が100mPa・s以下である、<1>~<6>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<8> 芯材は、酸化剤、還元剤および反応性可塑剤から選ばれる少なくも1種を含む、<1>~<7>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<9> 樹脂組成物は更に可塑剤を含む、<1>~<8>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<10> 樹脂が熱硬化性樹脂である、<1>~<9>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<11> <1>~<10>のいずれか1つに記載の樹脂組成物を用いて形成された膜。
<12> 膜中におけるカプセルの体積分率が5%以上である、<11>に記載の膜。
<13> 電気的な導通端子となる突起部を有する部材と、この部材の突起部を有する側の表面に設けられた<1>~<10>のいずれか1つに記載の樹脂組成物を用いて形成された膜とを有する、積層体。
<14> 上記部材は、絶縁性基材の両面に突起部を有し、上記膜は絶縁性基材の両面に有する、<13>に記載の積層体。
<15> 上記部材は複数の突起部を有し、突起部同士の間隔がカプセルの最大径の算術平均未満である、<13>または<14>に記載の積層体。
<16> 上記部材は、絶縁性基材と、絶縁性基材の厚み方向に貫通し、互いに絶縁された状態で設けられた導電性部材からなる複数の導通路とを有し、複数の導通路が絶縁性基材の表面から突出した突起部を有する異方導電性部材であり、
絶縁性基材の表面から突出した突起部が上記膜で覆われている、<13>~<15>のいずれか1つに記載の積層体。
<17> 膜中におけるカプセルは、絶縁性基材と膜が接する面とは反対側の表層部分に偏在している、<16>に記載の積層体。
<18> 電気的な導通端子となる突起部を有する第1の部材と、
電気的な導通端子となる突起部を有する第2の部材と、
第1の部材と第2の部材との間に設けられた<1>~<10>のいずれか1つに記載の樹脂組成物を用いて形成された膜とを有し、
第1の部材の突起部と第2の部材の突起部とが電気的に接合している、接合構造体。
<19> 第1の部材および第2の部材の一方が絶縁性基材と、絶縁性基材の厚み方向に貫通し、互いに絶縁された状態で設けられた導電性部材からなる複数の導通路とを有し、複数の導通路が、絶縁性基材の表面から突出した突起部を有する異方導電性部材であり、他方が配線基板である、<18>に記載の接合構造体。
<20> 電気的な導通端子となる突起部を有する部材に、<1>~<10>のいずれか1つに記載の樹脂組成物を適用して、突起部に接しかつ突起部の高さを超える厚さを有する樹脂組成物層を形成する樹脂組成物層形成工程を含む、積層体の製造方法。
<21> 電気的な導通端子となる突起部を有する第1の部材に、<1>~<10>のいずれか1つに記載の樹脂組成物を適用して、突起部に接しかつ突起部の高さを超える厚さを有する樹脂組成物層を形成する樹脂組成物層形成工程と、
電気的な導通端子となる突起部を有する第2の部材の突起部を、第1の部材上に形成した樹脂組成物層に接触させる接触工程と、
樹脂組成物層中に含まれるカプセルを破壊した後、または、カプセルを破壊しながら、第1の部材と第2の部材とを圧接して第1の部材の突起部と第2の部材の突起部とを電気的に接合する接合工程と、を含む、接合構造体の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、突起部を有する部材同士を接合する際に、両者の部材間でボイドの発生を抑制できる樹脂組成物を提供することができる。また、本発明は、樹脂組成物を用いた膜、積層体、接合構造体、積層体の製造方法および接合構造体の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図5】
図4の接合構造体の製造工程を示す図である。
【
図6】
図4の接合構造体の製造工程を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下において、本発明の内容について詳細に説明する。なお、本明細書において「~」とはその前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。
以下に記載する本発明における構成要素の説明は、本発明の代表的な実施形態に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施形態に限定されるものではない。
本明細書における基(原子団)の表記において、置換および無置換を記していない表記は、置換基を有さないものと共に置換基を有するものをも包含するものである。例えば、「アルキル基」とは、置換基を有さないアルキル基(無置換アルキル基)のみならず、置換基を有するアルキル基(置換アルキル基)をも包含するものである。
本明細書において、「(メタ)アクリル」は、「アクリル」および「メタクリル」の双方、または、いずれかを表す。
本明細書において「工程」との語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の作用が達成されれば、本用語に含まれる。
本発明における物性値は特に述べない限り、温度23℃、気圧101325Paの下での値とする。
本明細書において、重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)は、特に述べない限り、ゲル浸透クロマトグラフィ(GPC測定)によって測定されたものであり、ポリスチレン換算値として定義される。本明細書において、重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)は、例えば、HLC-8220(東ソー(株)製)を用い、カラムとしてガードカラムHZ-L、TSKgel Super HZM-M、TSKgel Super HZ4000、TSKgel Super HZ3000およびTSKgel Super HZ2000(東ソー(株)製)を用いることによって求めることができる。この測定において、溶離液は特に述べない限り、THF(テトラヒドロフラン)を用いる。また、検出は特に述べない限り、UV線(紫外線)の波長254nm検出器を使用したものとする。
【0012】
<樹脂組成物>
本発明の樹脂組成物は、樹脂と、芯材を内包したカプセルとを含有する樹脂組成物であって、
上記カプセルは、最大径の算術平均が3μm以下であり、
上記芯材は、樹脂を分解する化合物および可塑剤から選ばれる少なくとも1種を含むことを特徴とする。
【0013】
本発明の樹脂組成物を用いて突起部を有する部材同士を接合することで、両者の部材間でボイドの発生を抑制することができる。このような効果が得られる理由としては、次によるものであると推測される。この樹脂組成物に含まれる上記カプセルの最大径の算術平均は3μm以下であるので、両者の部材の突起部同士を接合する際の高さのばらつきを低減することができると推測される。このため、両者の部材の突起部同士を接合する際に、カプセルが破壊されやすく、カプセルの内部から芯材を効率よく染み出させることができると推測される。そして、カプセル内部から染み出した芯材によって樹脂が可塑化したり、樹脂が分解されて粘度が低下して流動性が向上すると推測される。このため、本発明の樹脂組成物を用いて突起部を有する部材同士を接合することで、両者の部材間でボイドの発生を抑制することができると推測される。また、部材同士を低温(例えば、250℃以下など)で接合した場合であっても、ボイドの発生を効果的に抑制することができるので、低温で接合する際において特に効果的である。また、上記カプセルの最大径の算術平均は3μm以下であることにより、樹脂組成物中におけるカプセルの分散性も良好である。
また、本発明によれば、接合時に樹脂の流動性を向上させることができるので、各部材の突起部同士をしっかりと接合させることもできる。このため、各部材の突起部が、電気的な導通端子となるものである場合においては、各部材の突起部同士を電気的にしっかりと接合させることもでき、部材間の接合抵抗を小さくすることができたり、接合性(接合確率)を向上させることもできる。
【0014】
本発明の樹脂組成物は、突起部を有する部材同士の接合用の組成物として好ましく用いられる。また、本発明で用いられる樹脂組成物は、絶縁性の樹脂組成物であることも好ましい。このような樹脂組成物は、電気的な導通端子となる突起部を有する部材同士の接合用の組成物として好ましく用いられる。以下、本発明の樹脂組成物について更に詳細に説明する。
【0015】
<<樹脂>>
本発明の樹脂組成物は、樹脂を含有する。樹脂としては、熱可塑性樹脂であってもよく、熱硬化性樹脂であってもよい。なかでも、デバイス同士の接着強度の維持、高湿下での信頼性を確保しやすいという理由から熱硬化性樹脂であることが好ましい。なお、本明細書において、熱可塑性樹脂とは、加熱により軟化ないし溶融する樹脂のことであり、熱硬化性樹脂とは、加熱により硬化する樹脂のことである。
【0016】
本発明の樹脂組成物に用いられる樹脂は、非導電性の樹脂であることが好ましく、体積抵抗率が1010Ω・cm以上となる非導電性の樹脂であることがより好ましい。また、熱硬化性の樹脂であることが好ましい。樹脂の重量平均分子量(Mw)は、1000~2000000が好ましい。上限は、1000000以下が好ましく、500000以下がより好ましい。下限は、2000以上が好ましく、3000以上がより好ましい。
【0017】
樹脂の種類としては、(メタ)アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリウレア樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリエステル樹脂、スチレン樹脂、フェノール樹脂、マレイミド樹脂、尿素-ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、環状オレフィン樹脂、シロキサン樹脂などが挙げられ、耐熱性、信頼性の観点からエポキシ樹脂およびポリイミド樹脂が好ましく、エポキシ樹脂がより好ましい。
【0018】
エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0019】
エポキシ樹脂の市販品としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂としては、jER825、jER827、jER828、jER834、jER1001、jER1002、jER1003、jER1055、jER1007、jER1009、jER1010(以上、三菱ケミカル(株)製)、EPICLON860、EPICLON1050、EPICLON1051、EPICLON1055(以上、DIC(株)製)等が挙げられる。ビスフェノールF型エポキシ樹脂としては、jER806、jER807、jER4004、jER4005、jER4007、jER4010(以上、三菱ケミカル(株)製)、EPICLON830、EPICLON835(以上、DIC(株)製)、LCE-21、RE-602S(以上、日本化薬(株)製)等が挙げられる。フェノールノボラック型エポキシ樹脂としては、jER152、jER154、jER157S70、jER157S65(以上、三菱ケミカル(株)製)、EPICLON N-740、EPICLON N-770、EPICLON N-775(以上、DIC(株)製)等が挙げられる。クレゾールノボラック型エポキシ樹脂としては、EPICLON N-660、EPICLON N-665、EPICLON N-670、EPICLON N-673、EPICLON N-680、EPICLON N-690、EPICLON N-695(以上、DIC(株)製)、EOCN-1020(日本化薬(株)製)等が挙げられる。脂肪族エポキシ樹脂としては、ADEKA RESIN EP-4080S、同EP-4085S、同EP-4088S(以上、(株)ADEKA製)、セロキサイド2021P、セロキサイド2081、セロキサイド2083、セロキサイド2085、EHPE3150、EPOLEAD PB 3600、同PB 4700(以上、(株)ダイセル製)、デナコール EX-212L、EX-214L、EX-216L、EX-321L、EX-850L(以上、ナガセケムテックス(株)製)等が挙げられる。その他にも、ADEKA RESIN EP-4000S、同EP-4003S、同EP-4010S、同EP-4011S(以上、(株)ADEKA製)、NC-2000、NC-3000、NC-7300、XD-1000、EPPN-501、EPPN-502(以上、(株)ADEKA製)、jER1031S(三菱ケミカル(株)製)等が挙げられる。
【0020】
本発明で用いられる樹脂の熱膨張係数は、50×10-6K-1以下であることが好ましく、5×10-6K-1~50×10-6K-1であることがより好ましく、5×10-6K-1~30×10-6K-1であることが更に好ましい。また、本発明の樹脂組成物が樹脂を2種以上含む場合は、2種以上の樹脂の混合物の熱膨張係数は、50×10-6K-1以下であることが好ましく、5×10-6K-1~50×10-6K-1であることがより好ましく、5×10-6K-1~30×10-6K-1であることが更に好ましい。
【0021】
樹脂の含有量は、樹脂組成物の全固形分中20~80質量%であることが好ましい。下限は、25質量%以上が好ましく、50質量%以上がより好ましい。上限は75質量%以下が好ましい。樹脂は1種のみ含有していてもよいし、2種以上含有していてもよい。樹脂を2種以上含有する場合は、それらの合計が上記範囲であることが好ましい。
【0022】
<<カプセル>>
本発明の樹脂組成物は、芯材を内包したカプセルを含有する。本発明の樹脂組成物に用いられるカプセルの芯材は、樹脂を分解する化合物および可塑剤から選ばれる少なくとも1種を含む。
【0023】
芯材に用いられる樹脂を分解する化合物としては、本発明の樹脂組成物に含まれる樹脂を分解する化合物であって、カプセルの壁材に対する分解性や溶解性の低い化合物が用いられる。例えば、酸化剤、還元剤などが挙げられ、樹脂組成物に含まれる樹脂の種類およびカプセルの壁材を構成する素材の種類に応じて適宜選択して用いることが好ましい。
【0024】
酸化剤としては、カルボン酸化合物、スルホン酸化合物が好ましい。カルボン酸化合物としては、例えば、酢酸、シュウ酸、プロピオン酸、1,10-ドデカンジカルボン酸、1,11-ウンデカンジカルボン酸、セバシン酸、安息香酸、フタル酸、テレフタル酸、1,3-ジカルボキシ-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサンなどが挙げられる。
スルホン酸化合物としては、例えば、トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、メタンスルホン酸などが挙げられる。
【0025】
還元剤としては、金属アルコキシド化合物が挙げられる。金属アルコキシド化合物は、M(OR)nで表される化合物である。ここで、Mは、金属元素を表し、Rは、アルキル基を表し、nは、金属元素Mの酸化数を表す。Mで表される金属元素としては、例えば、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、カルシウム(Ca)が挙げられる。Rが表すアルキル基の炭素数は、1~30が好ましく、1~10がより好ましく、1~5が更に好ましい。金属アルコキシド化合物の好ましい具体例としては、メトキシナトリウム(CH3ONa)、メトキシカリウム(CH3OK)などが挙げられる。
【0026】
例えば、樹脂としてエポキシ樹脂を用いた場合は、シュウ酸、ベンゼンスルホン酸、メトキシカリウム等が挙げられる。
【0027】
可塑剤としては、樹脂の粘度を低下させる化合物が好ましく用いられる。例えば、ポリエステル系可塑剤、グリセリン系可塑剤、多価カルボン酸エステル系可塑剤、ポリアルキレングリコール系可塑剤、フタル酸ジブチル、フタル酸ジ(2-エチルヘキシシル)等のフタル酸ジエステル系可塑剤、アジピン酸ジ(2-エチルヘキシシル)等の脂肪族二塩基酸エステル系可塑剤、リン酸トリクレジル等のリン酸トリエステル系可塑剤、ポリエチレングリコールエステル等のグリコールエステル系可塑剤等が挙げられる。また、反応性可塑剤がより好ましい。反応性可塑剤とは、反応性基を有する可塑剤のことで、反応性基としては、エポキシ基、フェノール基などが挙げられ、エポキシ基であることが好ましい。すなわち、反応性可塑剤は、エポキシ基を有する可塑剤であることが好ましい。たとえば鎖状ダイマーまたはそのエステル化合物のエポキシ化物であるグリシジルエステル化合物などが挙げられる。
【0028】
ポリエステル系可塑剤としては、アジピン酸、セバチン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸、ロジンなどの酸成分と、プロピレングリコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、エチレングリコール、ジエチレングリコールなどのジオール成分からなるポリエステルや、ポリカプロラクトンなどのヒドロキシカルボン酸からなるポリエステル等が挙げられる。これらのポリエステルは単官能カルボン酸若しくは単官能アルコールで末端封鎖されていてもよく、またエポキシ化合物などで末端封鎖されていてもよい。
【0029】
グリセリン系可塑剤としては、グリセリンモノアセトモノラウレート、グリセリンジアセトモノラウレート、グリセリンモノアセトモノステアレート、グリセリンジアセトモノオレート及びグリセリンモノアセトモノモンタネート、グリセリントリベンゾエート等が挙げられる。
【0030】
多価カルボン酸エステル系可塑剤としては、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジヘプチル、フタル酸ジベンジル、フタル酸ブチルベンジルなどのフタル酸エステル、トリメリット酸トリブチル、トリメリット酸トリオクチル、トリメリット酸トリヘキシル、トリメリット酸トリ(2-エチルヘキシル)などのトリメリット酸エステル、アジピン酸ジイソデシル、アジピン酸n-オクチル-n-デシル、アジピン酸メチルジグリコールブチルジグリコール、アジピン酸ベンジルメチルジグリコール、アジピン酸ベンジルブチルジグリコールなどのアジピン酸エステル、アセチルクエン酸トリエチル、アセチルクエン酸トリブチルなどのクエン酸エステル、アゼライン酸ジ-2-エチルヘキシルなどのアゼライン酸エステル、セバシン酸ジブチル、及びセバシン酸ジ-2-エチルヘキシル等が挙げられる。
【0031】
ポリアルキレングリコール系可塑剤としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリ(エチレンオキサイド・プロピレンオキサイド)ブロック及び/又はランダム共重合体、ポリテトラメチレングリコール、ビスフェノール類のエチレンオキシド付加重合体、ビスフェノール類のプロピレンオキシド付加重合体、ビスフェノール類のテトラヒドロフラン付加重合体などのポリアルキレングリコールあるいはその末端変性化合物等が挙げられる。
【0032】
反応性可塑剤としては、鎖状ダイマーまたはそのエステル化合物のエポキシ化物であるグリシジルエステル化合物などが挙げられる。
【0033】
その他の可塑剤の具体例としては、エチレングリコール、ネオペンチルグリコールジベンゾエート、ジエチレングリコールジベンゾエート、トリエチレングリコールジ-2-エチルブチレートなどの脂肪族ポリオールの安息香酸エステル、ステアリン酸アミドなどの脂肪酸アミド、オレイン酸ブチルなどの脂肪族カルボン酸エステル、アセチルリシノール酸メチル、アセチルリシノール酸ブチルなどのオキシ酸エステル、ペンタエリスリトール、各種ソルビトール等が挙げられる。
【0034】
カプセルが内包する芯材は、樹脂を分解する化合物および可塑剤のいずれか一方のみを含んでいてもよく、両者を含んでいてもよい。芯材が樹脂を分解する化合物を含む場合は、樹脂の硬化反応などを抑制させやすい。また、芯材が可塑剤を含む場合は、樹脂の流動性を向上させやすい。また、芯材が樹脂を分解する化合物と可塑剤とを含む場合は、両者の相乗効果により樹脂の移動性(流動性)をより向上させやすい。芯材が樹脂を分解する化合物と可塑剤とを含む場合、芯材が樹脂を分解する化合物の100質量部に対して可塑剤を10~90質量部含むことが好ましく、20~70質量部含むことがより好ましく、40~60質量部含むことが更に好ましい。
【0035】
また、部材同士の接合時における樹脂の硬化反応を低下させにくいという観点からは芯材は樹脂を分解する化合物を実質的に含まないことも好ましい。なお、芯材が樹脂を分解する化合物を実質的に含まない場合とは、芯材中における樹脂を分解する化合物の含有量が1質量%以下であることを意味し、0.5質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以下であることが更に好ましく、含有しないことが特に好ましい。
【0036】
また、部材同士の接合後の経時変化を抑制しやすいという観点からは、芯材は可塑剤を実質的に含まないことも好ましい。なお、芯材が可塑剤を実質的に含まない場合とは、芯材中における可塑剤の含有量が1質量%以下であることを意味し、0.5質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以下であることが更に好ましく、含有しないことが特に好ましい。
【0037】
本発明の樹脂組成物に用いられるカプセルが内包する芯材は、樹脂を分解する化合物および可塑剤を合計で50質量%以上含有することが好ましく、70質量%以上含有することがより好ましく、80質量%以上含有することが更に好ましい。上限は、100質量%以下とすることができ、90質量%以下とすることもできる。
【0038】
カプセルが内包する芯材は、上述した樹脂を分解する化合物および可塑剤以外の成分(他の成分)を更に含んでいてもよい。他の成分としては、金属の酸化防止剤(たとえばイミダゾール)、架橋剤、界面活性剤などが挙げられる。他の成分の含有量は、芯材中5質量%以下であることが好ましく、2質量%以下であることがより好ましく、1質量%以下であることが更に好ましい。
【0039】
カプセルが内包する芯材は、23℃における粘度が1000mPa・s以下であることが好ましく、200mPa・s以下であることがより好ましく、100mPa・s以下であることが更に好ましい。下限は、例えば、10mPa・s以上とすることができる。芯材の粘度が上記範囲であれば、樹脂への浸透性が良好である。
【0040】
本発明の樹脂組成物に用いられるカプセルは、熱または圧力印加によって破壊されるものであることが好ましい。より具体的には、熱または圧力印加によってカプセルの壁材が破壊されるものであることが好ましい。
【0041】
カプセルの好ましい一実施形態としては、カプセルは、10kPa~50MPa(好ましくは1MPa~5MPa、より好ましくは1MPa~3MPa)の圧力印加で破壊されるもの、より具体的には、上記圧力印加でカプセルの壁材が破壊されるものであることが好ましい。この場合、カプセルは、更に、120~300℃(好ましくは150~250℃、より好ましくは180~200℃)の温度で破壊されるものであってもよく、前述の温度で破壊されないものであってもよい。接合時に樹脂の流動性を発現させるという観点からは上記温度では破壊されるものであることが好ましい。また、塗布膜にした後の保存安定性という観点からは上記温度では破壊されないものであることが好ましい。
【0042】
カプセルの好ましい他の実施形態としては、120~300℃(好ましくは150~250℃、より好ましくは180~200℃)の温度で破壊されるもの、より具体的には、上記温度範囲でカプセルの壁材が破壊されるものであることが好ましい。この場合、カプセルは、更に10kPa~50MPa(好ましくは1MPa~5MPa、より好ましくは1MPa~3MPa)の圧力印加で破壊されるもの、より具体的には、カプセルの壁材が破壊されるものであることも好ましい。
【0043】
カプセルの壁材を構成する素材としては特に限定はない。例えば、ポリウレタン樹脂、ポリウレア樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、尿素-ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、ポリスチレン樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール等が挙げられ、ポリウレタン樹脂、ポリウレア樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂およびポリカーボネート樹脂が好ましく、ポリウレタン樹脂およびポリウレア樹脂がより好ましい。
【0044】
本発明で使用するカプセルは、樹脂を分解する化合物および可塑剤から選ばれる少なくとも1種を含む芯材を乳化した後、その油滴の周囲に高分子物質の壁を形成してカプセル化することが好ましい。この場合、高分子物質を形成する反応物を油滴の内部及び/又は油滴の外部に添加する。カプセルの好ましい製造方法等、本発明で好ましく使用することのできるカプセルについての詳細は、米国特許第3726804号、同3796696号の明細書に記載されており、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
また、例えば、ポリウレタン樹脂やポリウレア樹脂をカプセルの壁材として用いる場合、多価イソシアネート及びそれと反応して壁材を形成する第二の物質(例えばポリオール)を水相又はカプセル化すべき油性液体中に混合し、水中に乳化分散し温度を上昇することにより、油滴界面で高分子形成反応を起して、壁材を形成する。第二の物質を例えばポリアミンにするか、あるいは何も加えなければ、ポリウレア樹脂が生成する。
【0045】
多価イソシアネートおよびそれと反応するポリオール、ポリアミン(第二の物質)については米国特許3281383号、同3773695号、同3793268号の各明細書、特公昭48-040347号公報、特公昭49-024159号公報、特開昭48-80191号公報、特公昭48-84086号公報に記載されており、これらの内容についても、本明細書に組み込まれる。
【0046】
多価イソシアネートとしては、例えば、m-フェニレンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、ナフタレン-1,4-ジイソシアネート、ジフェニルメタン-4,4-ジイソシアネート、3,3’-ジメトキシ-4,4’-ビフェニル-ジイソシアネート、3,3’-ジメチルジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート、キシリレン-1,4-ジイソシアネート、4,4’-ジフェニルプロパンジイソシアネート、トリメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、プロピレン-1,2-ジイソシアネート、ブチレン-1,2-ジイソシアネート、シクロへキシレン-1,2-ジイソシアネート、シクロへキシレン-1,4-ジイソシアネート等のジイソシアネート、4,4’,4’-トリフェニルメタントリイソシアネート、トルエン-2,4,6-トリイソシアネートのごときトリイソシアネート、4,4’-ジメチルジフェニルメタン-2,2’,5,5’-テトライソシアネート等のテトライソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートとトリメチロールプロパンの付加物、2,4-トリレンジイソシアネートとトリメチロールプロパンの付加物、キシリレンジイソシアネートとトリメチロールプロパンの付加物、トリレンジイソシアネートとヘキサントリオールの付加物等のイソシアネートプレポリマー等が挙げられる。市販品としては、タケネートD-110N等のタケネートシリーズ等(三井化学(株)製)が挙げられる。
【0047】
ポリオールとしては、脂肪族、芳香族の多価アルコール、ヒドロキシポリエステル、ヒドロキシポリアルキレンエーテル等が挙げられる。具体例としては、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、プロピレングリコール、2,3-ジヒドロキシブタン、1,2-ジヒドロキシブタン、1,3-ジヒドロキシブタン、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール、2,4-ペンタンジオール、2,5-ヘキサンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ジヒドロキシシクロヘキサン、ジエチレングリコール、1,2,6-トリヒドロキシヘキサン、2-フェニルプロピレングリコール、1,1,1-トリメチロールプロパン、ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール、ペンタエリスリトールエチレンオキサイド付加物、グリセリンエチレンオキサイド付加物、グリセリン、1,4-ジ(2-ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、レゾルシノールジヒドロキシエチルエーテル等の芳香族多価アルコールとアルキレンオキサイドとの縮合生成物、p-キシリレングリコール、m-キシリレングリコール、α、α’-ジヒドロキシ-p-ジイソプロピルベンゼン、4,4’-ジヒドロキシ-ジフェニルメタン、2-(p,p’-ジヒドロキシジフェニルメチル)ベンジルアルコール、ビスフェノールAにエチレンオキサイドの付加物、ビスフェノールAにプロピレンオキサイドの付加物などが挙げられる。ポリオールはイソシアネート基1モルに対して、水酸基の割合が0.02~2モルで使用するのが好ましい。
【0048】
ポリアミンとしては、例えばエチレンジアミン、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、p-フェニレンジアミン、m-フェニレンジアミン、ピペラジン、2-メチルピペラジン、2,5-ジメチルピペラジン、2-ヒドロキシトリメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ジエチルアミノプロピルアミン、テトラエチレンペンタミン、エポキシ化合物のアミン付加物等が挙げられる。
【0049】
油相と混合する水相には界面活性剤を含有させてもよい。界面活性剤としては、公知の界面活性剤が挙げられる。例えば、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤の中から適宜選択して用いることができる。界面活性剤の具体例としては、アルキルベンゼンスルホン酸ソーダ(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム)、スルホコハク酸ジオクチルナトリウム塩、ポリアルキレングリコール(例えば、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル)等が挙げられる。
【0050】
本発明の樹脂組成物に含まれるカプセルの最大径の算術平均は、3μm以下であり、2.5μm以下であることが好ましく、2μm以下であることがより好ましく、1.5μm以下であることが更に好ましい。下限は、0.1μm以上であることが好ましい。
【0051】
カプセルの最大径は、ホモジナイザーの回転数、カプセル形成時の相分離状態の制御などの方法で調整することができる。例えば、ホモジナイザーの回転数を小さくすることでカプセルの最大径を大きくすることができ、ホモジナイザーの回転数を大きくすることでカプセルの最大径を小さくすることができる。
【0052】
なお、本明細書において、カプセルの最大径とは、カプセルが長軸と短軸とを有する形態の場合、長軸の粒径(長さ)がカプセルの最大径に該当する。ここで、長軸とは、カプセルの長さを最も長く取ることができる軸(直線)として決定する。一方、短軸とは、長軸と直交する直線で粒子長さを取ったときに長さが最も長くなる軸として決定する。また、本明細書において、平均粒子径は、HORIBA社LA-910((株)堀場製作所製)を用い、常法により、レーザー回折/散乱法により体積平均粒径として求めることができる。また、出来栄えを確認した後、50個のカプセルをランダムに抽出して電子顕微鏡で形状を観察することで、カプセルの最大径の算術平均を求めることができる。
【0053】
カプセルの含有量は、樹脂組成物の全固形分中5~50質量%であることが好ましい。下限は、6質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましい。上限は40質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましい。
また、本発明の樹脂組成物は、樹脂の100質量部に対してカプセルを10~50質量部含有することが好ましい。下限は、15質量部以上が好ましく、20質量部以上がより好ましい。上限は45質量部以下が好ましく、30質量部以下がより好ましい。樹脂とカプセルとの割合が上記範囲であれば、本発明の効果がより顕著に得られる。
また、カプセルの含有量は、樹脂組成物を用いて形成される膜中におけるカプセルの体積分率が5%以上となる量であることが好ましく、10%以上となる量であることがより好ましく、15%以上となる量であることが更に好ましく、20%以上となる量であることが特に好ましい。上限は、80%以下となる量であることが好ましく、50%以下となる量であることがより好ましく、30%以下となる量であることが更に好ましい。
【0054】
本発明の樹脂組成物は、カプセルを1種のみ含有していてもよいし、2種以上含有していてもよい。カプセルを2種以上含有する場合は、それらの合計が上記範囲であることが好ましい。また、本発明の樹脂組成物がカプセルを2種以上含む場合、芯材として樹脂を分解する化合物を含むカプセルを1種以上と、芯材として可塑剤を含むカプセルを1種以上とを併用してもよい。この態様の場合は機能分離による信頼性向上という効果が期待できる。また、同じ芯材を含むカプセルであって、カプセルの壁材のみが相違するカプセルを2種以上含んでいてもよい。この態様の場合は機能発現タイミング制御により、接合条件の緩和をさせやすい。
【0055】
<<溶剤>>
本発明の樹脂組成物はさらに溶剤を含有することが好ましい。溶剤は、公知の溶剤を任意に使用できる。溶剤は有機溶剤が好ましい。有機溶剤としては、エステル類、エーテル類、ケトン類、芳香族炭化水素類、スルホキシド類、アミド類などの化合物が挙げられる。エステル類として、例えば、酢酸エチル、酢酸-n-ブチル、酢酸イソブチル、ギ酸アミル、酢酸イソアミル、プロピオン酸ブチル、酪酸イソプロピル、酪酸エチル、酪酸ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、γ-ブチロラクトン、ε-カプロラクトン、δ-バレロラクトン、アルキルオキシ酢酸アルキル(例えば、アルキルオキシ酢酸メチル、アルキルオキシ酢酸エチル、アルキルオキシ酢酸ブチル(例えば、メトキシ酢酸メチル、メトキシ酢酸エチル、メトキシ酢酸ブチル、エトキシ酢酸メチル、エトキシ酢酸エチル等))、3-アルキルオキシプロピオン酸アルキルエステル類(例えば、3-アルキルオキシプロピオン酸メチル、3-アルキルオキシプロピオン酸エチル等(例えば、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-メトキシプロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸エチル等))、2-アルキルオキシプロピオン酸アルキルエステル類(例えば、2-アルキルオキシプロピオン酸メチル、2-アルキルオキシプロピオン酸エチル、2-アルキルオキシプロピオン酸プロピル等(例えば、2-メトキシプロピオン酸メチル、2-メトキシプロピオン酸エチル、2-メトキシプロピオン酸プロピル、2-エトキシプロピオン酸メチル、2-エトキシプロピオン酸エチル))、2-アルキルオキシ-2-メチルプロピオン酸メチルおよび2-アルキルオキシ-2-メチルプロピオン酸エチル(例えば、2-メトキシ-2-メチルプロピオン酸メチル、2-エトキシ-2-メチルプロピオン酸エチル等)、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ピルビン酸プロピル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、2-オキソブタン酸メチル、2-オキソブタン酸エチル等が好適なものとして挙げられる。エーテル類として、例えば、ジエチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート等が好適なものとして挙げられる。ケトン類として、例えば、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、2-ヘプタノン、3-ヘプタノン等が好適なものとして挙げられる。芳香族炭化水素類として、例えば、トルエン、キシレン、アニソール、リモネン等が好適なものとして挙げられる。スルホキシド類として、例えば、ジメチルスルホキシドが好適なものとして挙げられる。アミド類として、N-メチル-2-ピロリドン、N -エチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド等が好適なものとして挙げられる。溶剤は、塗布面性状の改良などの観点から、2種以上を混合する形態も好ましい。
【0056】
溶剤の含有量は、塗布性の観点から、本発明の樹脂組成物の全固形分濃度が1~70質量%になる量とすることが好ましく、5~50質量%となる量にすることがより好ましく、10~30質量%となる量にすることがさらに好ましい。溶剤は1種のみ含有していてもよいし、2種以上含有していてもよい。溶剤を2種以上含有する場合は、それらの合計が上記範囲であることが好ましい。
【0057】
<<可塑剤>>
本発明の樹脂組成物はさらに可塑剤を含有することができる。特に、可塑剤を含む芯材を内包したカプセルを用いた場合においては、本発明の樹脂組成物はさらに可塑剤を含有することが好ましい。この態様によれば、カプセル外にも可塑剤を有することにより、カプセルから染み出した可塑剤がカプセル外に存在する可塑剤と混じり合って樹脂の流動性をより向上させやすくできる。可塑剤としては、上述したカプセルの芯材の項で説明した材料が挙げられる。
【0058】
本発明の樹脂組成物が可塑剤を含む場合、その含有量は、樹脂組成物中1 ~50 質量%であることが好ましい。下限は、2質量%以上が好ましく、5質量%以上がより好ましい。上限は40質量%以下が好ましく、20質量%以下がより好ましい。可塑剤は1種のみ含有していてもよいし、2種以上含有していてもよい。可塑剤を2種以上含有する場合は、それらの合計が上記範囲であることが好ましい。
【0059】
<<硬化剤>>
本発明の樹脂組成物は、硬化剤を含んでいてもよい。特に、樹脂としてエポキシ樹脂を含むものを用いた場合は、硬化剤を含むことが好ましい。硬化剤としては、例えば、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、メタキシレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン、m-フェニレンジアミン、ジシアンジアミドなどのアミン化合物;無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、無水ピロメリット酸、無水トリメリット酸などの酸無水物;イミダゾール、2-エチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾール、4,5-ジフェニルイミダゾール、2-メチルイミダゾリン、2-フェニルイミダゾリン、2-ウンデシルイミダゾリン、2-ヘプタデシルイミダゾリン、2-イソプロピルイミダゾール、2,4-ジメチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、2-エチルイミダゾリン、2-イソプロピルイミダゾリン、2,4-ジメチルイミダゾリン、2-フェニル-4-メチルイミダゾリンなどのイミダゾール化合物および、これらの化合物のイミノ基がアクリロニトリル、フェニレンジイソシアネート、トルイジンイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、メチレンビスフェニルイソシアネート、メラミンアクリレートなどでマスクされた化合物;ビスフェノールF、ビスフェノールA、ビスフェノールS、ポリビニルフェノールなどのフェノール化合物並びに、これらの化合物とホルムアルデヒドやサリチルアルデヒドなどのアルデヒド類との縮合物及びこれらのハロゲン化物などが挙げられる。
【0060】
本発明の樹脂組成物が硬化剤を含む場合、その含有量は、樹脂組成物の全固形分中0.1~10質量%であることが好ましい。下限は、0.5質量%以上が好ましく、1質量%以上がより好ましい。上限は5質量%以下が好ましく、3質量%以下がより好ましい。
また、硬化剤の含有量は、樹脂100質量部に対して0.1~20質量部であることが好ましい。下限は、0.5質量部以上が好ましく、1質量部以上がより好ましい。上限は5質量部以下が好ましく、2質量部以下がより好ましい。硬化剤は1種のみ含有していてもよいし、2種以上含有していてもよい。硬化剤を2種以上含有する場合は、それらの合計が上記範囲であることが好ましい。
【0061】
<<他の添加剤>>
本発明の樹脂組成物は、必要に応じて、硬化促進剤、金属の酸化抑制材などの他の添加剤を更に含有することができる。他の添加剤の合計の含有量は、樹脂組成物の全固形分中5質量%以下であることが好ましく、3質量%以下であることがより好ましく、1質量%以下であることが更に好ましい。
【0062】
<樹脂組成物の調製方法>
本発明の樹脂組成物は、上記各成分を混合して調製することができる。混合方法は特に限定はなく、従来公知の方法で行うことができる。また、組成物中のゴミや微粒子等の異物を除去する目的で、フィルターを用いたろ過を行うことが好ましい。フィルターは、目的とするカプセル径の2倍程度の孔径を有するフィルターを用いることが好ましい。
フィルターの材質は、ポリテトラフロロエチレン、ポリエチレンまたはナイロンが好ましい。フィルターは、有機溶剤であらかじめ洗浄したものを用いてもよい。フィルターろ過工程では、複数種のフィルターを直列または並列に接続して用いてもよい。複数種のフィルターを使用する場合は、孔径または材質が異なるフィルターを組み合わせて使用してもよい。また、各種材料を複数回ろ過してもよい。複数回ろ過する場合は、循環ろ過であってもよい。また、加圧してろ過を行ってもよい。加圧してろ過を行う場合、加圧する圧力は0.05MPa以上0.3MPa以下が好ましい。フィルターを用いたろ過の他、吸着材を用いた不純物の除去処理を行ってもよい。フィルターろ過と吸着材を用いた不純物除去処理とを組み合わせてもよい。吸着材としては、公知の吸着材を用いることができる。例えば、シリカゲル、ゼオライトなどの無機系吸着材、活性炭などの有機系吸着材が挙げられる。
【0063】
<収容容器>
本発明の樹脂組成物の収容容器としては従来公知の収容容器を用いることができる。また、収容容器としては、原材料や組成物中への不純物混入を抑制することを目的に、容器内壁を6種6層の樹脂で構成された多層ボトルや、6種の樹脂を7層構造にしたボトルを使用することも好ましい。このような容器としては例えば特開2015-123351号公報に記載の容器が挙げられる。
【0064】
<膜>
次に、本発明の膜について説明する。本発明の膜は、上述した本発明の樹脂組成物を用いて形成された膜である。本発明の膜の膜厚は、用途や適用部位に応じて適宜選択することができる。例えば、0.1μm以上とすることができ、0.5μm以上とすることができる。また、上限値としては、10μm以下とすることができ、2μm以下とすることもでき、1μm以下とすることもできる。
【0065】
膜中における上記カプセルの体積分率は、5%以上であることが好ましく、10%以上であることがより好ましく、15%以上であることが更に好ましく、20%以上であることが特に好ましい。上限は、80%以下であることが好ましく、50%以下であることがより好ましく、30%以下であることが更に好ましい。
【0066】
<積層体>
次に、本発明の積層体を説明する。本発明の積層体は、電気的な導通端子となる突起部を有する部材と、この部材の突起部を有する側の表面に設けられた本発明の樹脂組成物を用いて形成された膜とを有する。部材としては、電気的な導通端子となる突起部を有するものであればよく、特に限定はない。また、突起の形状および高さについても特に限定はない。用途に応じて適宜選択することができる。また、部材には複数の突起が設けられていてもよい。電気的な導通端子となる突起部を有する部材としては、配線基板、異方導電性部材、半導体デバイス(プロセッサー(CPU(Central Processing Unit)、MPU(Microprocessor Unit))、メモリ、発電素子、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)、GPU(Graphics Processing Unit)、通信素子等)などが挙げられる。
【0067】
本発明の積層体において、部材の突起部は、本発明の樹脂組成物を用いて形成された膜によって覆われていることが好ましく、突起部の高さを超える厚さの膜で突起部が覆われていることがより好ましい。
【0068】
また、部材は、絶縁性基材の両面に突起部を有するものであることも好ましい。この場合において、上記膜は絶縁性基材の両面に有することが好ましく、絶縁性基材の両面に有する突起部が上記膜で覆われていることがより好ましく、絶縁性基材の両面に有する突起部が突起部の高さを超える厚さの膜で覆われていることが更に好ましい。
【0069】
本発明の積層体では、上記部材として複数の突起部を有するものが好ましく用いられる。例えば、複数の突起部を有する部材として異方導電性部材を用いる場合には異方導電性部材の突起部同士の間隔は、5nm~800nmであることが好ましく、10nm~200nmであることがより好ましく、20nm~60nmであることが更に好ましい。また、突起部同士の間隔は、膜に含まれるカプセルの最大径の算術平均未満であることが好ましく、カプセルの最大径の算術平均の95%以下であることがより好ましく、カプセルの最大径の算術平均の90%以下であることが更に好ましく、カプセルの最大径の算術平均の80%以下であることがより一層好ましく、50%以下であることが特に好ましい。また、突起部同士の間隔の下限は、絶縁性維持の観点から膜に含まれるカプセルの最大径の10%以上であることが好ましい。
【0070】
突起部同士の間隔が、膜に含まれるカプセルの最大径の算術平均未満であれば、例えば、
図1に示すように、突起部11の上方に膜20に含まれるカプセル21を偏在させることができる。すなわち、膜20中におけるカプセル21を、絶縁性基材12と膜20が接する面の反対側の表層部分に偏在させることができる。膜中のカプセルがこのように偏在していることで、配線基板などの他の部材の突起部を、この部材の突起部11と接合する際に、膜20に含まれるカプセル21が破壊されやすく、その結果、接合時における膜の流動性が向上して、両者の部材間のボイドの発生をより効果的に抑制できる。
【0071】
本発明の積層体では、上記部材として、絶縁性基材と、絶縁性基材の厚み方向に貫通し、互いに絶縁された状態で設けられた導電性部材からなる複数の導通路とを有し、複数の導通路が絶縁性基材の表面から突出した突起部を有する異方導電性部材が好ましく用いられる。異方導電性部材について以下説明する。
【0072】
異方導電性部材を構成する絶縁性基材は、絶縁性を有する材料で構成されたものであればよい。例えば、金属酸化物、金属窒化物、ガラス、セラミックス(例えば、シリコンカーバイド、シリコンナイトライド等)、カーボン(例えば、ダイヤモンドライクカーボン等)、ポリイミド、および、これらの複合材料で構成されたものが挙げられる。また、有機素材上に、セラミックス材料やカーボン材料を50質量%以上含む無機材料で成膜した材料であってもよい。
【0073】
絶縁性基材は、所望の平均開口径を有するマイクロポアが貫通孔として形成され、導通路を形成しやすいという理由から、金属酸化物基材であるのが好ましく、バルブ金属の陽極酸化膜であるのがより好ましい。ここで、上記バルブ金属としては、具体的には、例えば、アルミニウム、タンタル、ニオブ、チタン、ハフニウム、ジルコニウム、亜鉛、タングステン、ビスマス、アンチモン等が挙げられる。これらのうち、寸法安定性がよく、比較的安価であることからアルミニウムの陽極酸化膜(基材)であるのが好ましい。
【0074】
絶縁性基材の厚みは、1μm~1000μmであるのが好ましく、1μm~500μmであるのがより好ましく、1μm~100μmであるのが更に好ましい。絶縁性基材の厚みがこの範囲であると、絶縁性基材の取り扱い性が良好となる。ここで、絶縁性基材の厚みは、異方導電性部材の断面を電解放出型走査型電子顕微鏡により観察し、10点で測定した厚みの平均値をいう。
【0075】
また、本発明においては、上記絶縁性基材における上記各導通路の間隔は、5nm~800nmであることが好ましく、10nm~200nmであることがより好ましく、20nm~60nmであることが更に好ましい。絶縁性基材における各導通路の間隔がこの範囲であると、絶縁性基材が絶縁性の隔壁として十分に機能する。ここで、各導通路の間隔とは、隣接する導通路間の幅をいい、異方導電性部材の断面を電解放出型走査型電子顕微鏡により20万倍の倍率で観察し、隣接する導通路間の幅を10点で測定した平均値をいう。
【0076】
異方導電性部材を構成する複数の導通路は、上記絶縁性基材の厚み方向に貫通し、互いに絶縁された状態で設けられた、導電性部材からなる導通路である。また、上記導通路は、絶縁性基材の表面から突出した突起部を有している。
【0077】
上記導通路を構成する導電性部材は、電気抵抗率が103Ω・cm以下の材料であれば特に限定されず、その具体例としては、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、マグネシウム(Mg)、ニッケル(Ni)、インジウムがドープされたスズ酸化物(ITO)等が好適に例示される。中でも、電気伝導性の観点から、銅、金、アルミニウム、ニッケルが好ましく、銅、金がより好ましい。
【0078】
上記導通路の突起部は、導通路が絶縁性基材の表面から突出した部分である。
【0079】
異方導電性部材の導通路と、配線基板の電極など被接合部材(第2の部材)の電気的な導通端子となる突起部とを接合する際に、突起部が潰れた場合の面方向の絶縁性を十分に確保できる理由から、上記導通路の突起部のアスペクト比(突起部の高さ/突起部の直径)が0.5以上50未満であるのが好ましく、0.8~20であるのがより好ましく、1~10であるのが更に好ましい。
【0080】
また、本発明においては、配線基板などの被接合部材の表面形状への追従性の観点から、上記導通路の突起部の高さが、50nm~3000nmであるのが好ましく、100~2000nmであるのがより好ましく、200~1000nmであるのが更に好ましい。同様に、上記導通路の突起部の直径は、5nm超10μm以下であるのが好ましく、20nm~1000nmであるのがより好ましい。ここで、導通路の突起部の高さは、異方導電性部材の断面を電解放出型走査型電子顕微鏡により2万倍の倍率で観察し、導通路の突起部の高さを10点で測定した平均値をいう。同様に、導通路の突起部の直径は、異方導電性部材の断面を電解放出型走査型電子顕微鏡により観察し、導通路の突起部の直径を10点で測定した平均値をいう。
【0081】
異方導電性部材の作製方法は特に限定されないが、例えば、上記絶縁性基材に設けられた貫通孔に上記導電性材料を配置して上記導通路を形成する導通路形成工程と、導通路形成工程の後に上記絶縁性基材の表面のみを一部除去し、上記導通路を突出させるトリミング工程とを有する製造方法等が挙げられる。異方導電性部材の作製方法の詳細は、特開2018-037509号公報の段落番号0031~0050に記載された方法を用いることができ、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0082】
図1に示す積層体は本発明の積層体の好ましい一実施形態である。
図1の符号10は、異方導電性部材である。この異方導電性部材10は、絶縁性基材12と、絶縁性基材12の厚み方向に貫通し、互いに絶縁された状態で設けられた導電性部材からなる複数の導通路15とを有し、複数の導通路15が、絶縁性基材12の表面から突出した突起部11を有する構造をなしている。
【0083】
図1において、絶縁性基材12から突出した突起部11は、本発明の樹脂組成物で構成された膜20で覆われている。より詳細には、突起部11の高さを超える厚さの膜で突起部11が覆われている。突起部11の高さH1と、膜20の厚さH2との比(H1/H2)は、絶縁性を確保しやすいという理由から1~5であることが好ましく、1 ~1.5であることが更に好ましい。
【0084】
図1において、膜中に含まれるカプセル21は、突起部11の上方に偏在している。すなわち、カプセル21が、絶縁性基材12と膜が接する面とは反対側の表層部分に偏在している。
【0085】
なお、
図1の部材10においては、絶縁性基材12の片面のみに突起部11が設けられているが、絶縁性基材12の両面に突起部11が設けられていてもよい。また、両面に突起部11が設けられている場合は、
図2に示すように、絶縁性基材12の両面から突出した突起部11b、11cが本発明の樹脂組成物で構成された膜20で覆われていることが好ましい。
【0086】
<接合構造体>
次に、本発明の接合構造体について説明する。本発明の接合構造体は、電気的な導通端子となる突起部を有する第1の部材と、電気的な導通端子となる突起部を有する第2の部材と、第1の部材と第2の部材との間に設けられた本発明の樹脂組成物を用いて形成された膜とを有し、第1の部材の突起部と第2の部材の突起部とが電気的に接合している。
【0087】
本発明の接合構造体において、第1の部材および第2の部材の一方が絶縁性基材と、絶縁性基材の厚み方向に貫通し、互いに絶縁された状態で設けられた導電性部材からなる複数の導通路とを有し、複数の導通路が、絶縁性基材の表面から突出した突起部を有する異方導電性部材であり、他方が配線基板であることが好ましい。
【0088】
配線基板としては、基板と、高さが10μm以下の複数の電極とを有し、更に必要に応じて、その他の部材を有するものなどが挙げられる。ここで、電極の高さは、配線基板の断面を電解放出型走査型電子顕微鏡により10000倍の倍率で観察し、電極の高さを10点で測定した平均値をいう。また、本発明で用いられる配線基板は、基板(例えば、シリコン基板)上に集積回路が実装された半導体チップであってもよい。半導体チップとしては、メモリ、イメージセンサー、ロジック、パワー半導体等が挙げられる。
【0089】
配線基板における基板としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、プラスチック基板、ガラス基板などが挙げられる。また、基板の形状、大きさ、構造としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0090】
配線基板における電極の材料としては、金、銀、銅、アルミニウム等が挙げられる。電極の形状は、高さが10μm以下であれば特に限定されず、配線形状であってもよく、目的に応じて適宜選択することができる。また、電極の高さは、0.05μm以上であることが好ましく、0.1~5μmであることがより好ましい。
【0091】
図3は、本発明の接合構造体の一実施形態である。この接合構造体は、絶縁性基材12と、絶縁性基材12の厚み方向に貫通し、互いに絶縁された状態で設けられた導電性部材からなる複数の導通路15とを有し、複数の導通路15が、絶縁性基材12の表面(片面)から突出した突起部11を有する異方導電性部材10と、配線基板30の電極となる突起部31とを接合した接合構造体である。
【0092】
図4は、本発明の接合構造体の他の実施形態である。この接合構造体は、絶縁性基材12と、絶縁性基材12の厚み方向に貫通し、互いに絶縁された状態で設けられた導電性部材からなる複数の導通路15とを有し、複数の導通路15が、絶縁性基材12の表面(両面)から突出した突起部11b、11cを有する異方導電性部材10aと、配線基板30、40の電極となる突起部31、41とを接合した接合構造体である。
【0093】
<積層体の製造方法、接合構造体の製造方法>
次に、本発明の積層体の製造方法および接合構造体の製造方法について説明する。
本発明の積層体の製造方法は、電気的な導通端子となる突起部を有する部材に、本発明の樹脂組成物を適用して、突起部に接しかつ突起部の高さを超える厚さを有する樹脂組成物層を形成する樹脂組成物層形成工程を含む。
【0094】
また、本発明の接合構造体の製造方法は、電気的な導通端子となる突起部を有する第1の部材に、本発明の樹脂組成物を適用して、突起部に接しかつ突起部の高さを超える厚さを有する樹脂組成物層を形成する樹脂組成物層形成工程と、
電気的な導通端子となる突起部を有する第2の部材の突起部を、第1の部材上に形成した樹脂組成物層に接触させる接触工程と、
樹脂組成物層中に含まれるカプセルを破壊した後、または、カプセルを破壊しながら、第1の部材と第2の部材とを圧接して第1の部材の突起部と第2の部材の突起部とを電気的に接合する接合工程と、を含む。
【0095】
以下各工程について説明する。
<<樹脂組成物層形成工程>>
樹脂組成物層形成工程では、電気的な導通端子となる突起部を有する部材に、本発明の樹脂組成物を適用する。樹脂組成物の適用方法としては、限定されず、例えば、グラビアコート法、リバースコート法、ダイコート法、ブレードコーター、ロールコーター、エアナイフコーター、スクリーンコーター、バーコーター、カーテンコーター等、従来公知の塗布方法を使用できる。
【0096】
樹脂組成物を適用したのち、乾燥を行うことが好ましい。乾燥方法は特に限定されず、例えば、大気圧下において0~100℃の温度で、数秒~数十分間、加熱する処理や、減圧下において0~80℃の温度で、十数分~数時間、加熱する処理などが挙げられる。また、乾燥後の加熱処理を行ってもよい。
【0097】
<<接触工程>>
次に、電気的な導通端子となる突起部を有する第2の部材の突起部を、第1の部材上に形成した樹脂組成物層に接触(仮接合)させる(接触工程)。
接触工程における温度条件は特に限定されないが、40~100℃であることが好ましい。また、接触工程における加圧条件は特に限定されないが、10MPa以下であることが好ましく、5MPa以下であることがより好ましく、1MPa以下であることが特に好ましい。
【0098】
また、本発明では、この接触工程時に樹脂組成物層に含まれるカプセルを破壊してもよいが、次工程の接合工程時に破壊することが好ましい。
【0099】
また、本発明においては、接触工程をCoW(Chip On Wafer)プロセスで行うことも好ましい。半導体ウエハと半導体チップウエハを検査して良品チップと不良チップをあらかじめ分かるように(KGD:Known Good Die)して、半導体チップウエハの良品チップのみを、半導体ウエハ内の良品部分に接合することで、ロスを低減することができる。
【0100】
<<接合工程>>
次に、樹脂組成物層中に含まれるカプセルを破壊した後、または、カプセルを破壊しながら、第1の部材と第2の部材とを圧接して第1の部材の突起部と第2の部材の突起部とを電気的に接合する(接合工程)。本発明では、接合工程時に樹脂組成物層中に含まれるカプセルを破壊しながら第1の部材と第2の部材とを圧接して第1の部材の突起部と第2の部材の突起部とを電気的に接合することが好ましい。
【0101】
接合工程における温度条件は、180~300℃であることが好ましく、200~250℃であることがより好ましい。接合工程における加圧条件は特に限定されないが、10kPa~50MPaであることが好ましく、2~20MPaであることがより好ましい。また、接合工程の時間は特に限定されないが、1秒~60分であることが好ましく、5秒~10分であることがより好ましい。なお、接合工程は、チップ毎に行ってもよいが、タクトタイムを低減できる観点から、ウエハ一括で行うことが好ましい。
【0102】
本発明の接合構造体の製造方法は、多層配線基板の製造などにも適用することができる。
【0103】
図4に示す接合構造体の製造方法の一連の工程を、
図5、6を用いて説明する。まず、異方導電性部材10aの絶縁性基材12の両面に本発明の樹脂組成物を適用して樹脂組成物層(膜)20を形成して、絶縁性基材12の両面から突出した突起部11b、11cを樹脂組成物層(膜)20で覆い、
図2に示す構造の積層体を形成する。次に、
図5に示すように、異方導電性部材10aの一方の面側に設けられた樹脂組成物層(膜)20と、配線基板40の電極となる突起部41とを接触させる(仮接合)。次に、
図6に示すように、異方導電性部材10aの他方の面側に設けられた樹脂組成物層(膜)20と、配線基板30の電極となる突起部31とを接触させる(仮接合)。そして、矢印方向から圧接して、配線基板30、異方導電性部材10aおよび配線基板40を電気的に接合する。このようにして
図4に示す接合構造体を製造することができる。
【実施例】
【0104】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。
【0105】
<カプセルの最大径の算術平均の算出>
50個のカプセルをランダムに抽出して電子顕微鏡で形状を観察して、カプセルの最大径の算術平均を求めた。
【0106】
<カプセルの製造>
[カプセル1~3(カリウムエトキシドを芯材として含むカプセル)の製造]
(カプセル1の製造)
溶液A1として30%カリウムエトキシドメタノール溶液(富士フイルム和光純薬(株))社製を用意した。
15質量部のエチレン無水マレイン酸共重合体(Scripcet-520モンサント製)と水85質量部を加え60℃で混合し、pHを4に調整することにより乳化剤B1を得た。
またメラミンーホルムアルデヒド樹脂(商品名Sumirez Resin 615K、住友化学製)15質量部に水85質量部を加え60℃で混合することにより壁材C1を得た。
乳化剤B1の100質量部と溶液A1の100質量部を60℃でホモミキサーを用いて乳化した。次に壁材C1の50質量部をこの乳化物に加え、1000rpmの回転数で2時間撹拌することにより、カプセル1(最大径の算術平均2μm)の分散液(固形分40%)を得た。
【0107】
(カプセル2の製造)
カプセル1の分散液を更に回転数を2000rpmで4時間撹拌してカプセル2(最大径の算術平均1μm)の分散液(固形分40%)を得た。
【0108】
(カプセル3の製造)
乳化剤B1の100質量部と溶液A1の100質量部を60℃でホモミキサーを用いて乳化した。次に壁材C1の20質量部をこの乳化物に加え、2000rpmの回転数で10時間撹拌することによりカプセル3(最大径の算術平均0.2μm)の分散液(固形分40%)を得た。
【0109】
[カプセル4~6(反応性可塑剤を芯材として含むカプセル)の製造]
(カプセル4の製造)
エピオールES-F(ヤシ脂肪酸-グリシジルエステル:日油株式会社製、25℃の粘度6.2mPa・s、エポキシ当量400g/eq以下)を用意し、メタノールで50%に希釈して溶液A2を得た。乳化剤B1の100質量部と溶液A2の100質量部を60℃でホモミキサーを用いて乳化した。次に壁材C1の50質量部をこの乳化物に加え、1000rpmの回転数で2時間撹拌することによりカプセル4(最大径の算術平均2μm)の分散液(固形分40%)を得た。
【0110】
(カプセル5の製造)
カプセル4の分散液を更に回転数を2000rpmで4時間撹拌してカプセル5(最大径の算術平均1μm)の分散液(固形分40%)を得た。
【0111】
(カプセル6の製造)
乳化剤B1の100質量部と溶液A2の100質量部を60℃でホモミキサーを用いて乳化した。次に壁材C1の20質量部をこの乳化物に加え、2000rpmの回転数で10時間撹拌することによりカプセル6(最大径の算術平均0.2μm)の分散液(固形分40%)を得た。
【0112】
[カプセル7~9(シュウ酸を芯材として含むカプセル)の製造]
(カプセル7の製造)
溶液A3としてシュウ酸の5mol/L水溶液を用意した。
乳化剤B1の100質量部と溶液A3の100質量部を60℃でホモミキサーを用いて乳化した。次に壁材C1の50質量部をこの乳化物に加え、1000rpmの回転数で2時間撹拌することによりカプセル7(最大径の算術平均2μm)の分散液(固形分40%)を得た。
【0113】
(カプセル8の製造)
カプセル7の分散液を更に回転数を2000rpmで4時間撹拌してカプセル7(最大径の算術平均1μm)の分散液(固形分40%)を得た。
【0114】
(カプセル9の製造)
乳化剤B1の100質量部と溶液A3の100質量部を60℃でホモミキサーを用いて乳化した。次に壁材C1の20質量部をこの乳化物に加え、2000rpmの回転数で10時間撹拌することによりカプセル9(最大径の算術平均0.2μm)の分散液(固形分40%)を得た。
【0115】
[カプセル10~12(ベンゼンスルホン酸を芯材として含むカプセル)の製造]
(カプセル10の製造)
溶液A4としてベンゼンスルホン酸の1mol/L溶液を用意した。
乳化剤B1の100質量部と溶液A4の100質量部を60℃でホモミキサーを用いて乳化した。次に壁材C1の50質量部をこの乳化物に加え、1000rpmの回転数で2時間撹拌することによりカプセル10(最大径の算術平均2μm)の分散液(固形分40%)を得た。
【0116】
(カプセル11の製造)
カプセル10の分散液を更に回転数を2000rpmで4時間撹拌してカプセル10(最大径の算術平均1μm)の分散液(固形分40%)を得た。
【0117】
(カプセル12の製造)
乳化剤B1の100質量部と溶液A4の100質量部を60℃でホモミキサーを用いて乳化した。次に壁材C1の20質量部をこの乳化物に加え、2000rpmの回転数で10時間撹拌することによりカプセル12(最大径の算術平均0.2μm)の分散液(固形分40%)を得た。
【0118】
[カプセル13~15(グリセリン系可塑剤を芯材として含むカプセル)の製造]
(カプセル13の製造)
ポリビニルピロリドン(和光純薬製、ポリビニルピロリドンK25)4gをグリセリンジアセトモノラウレート(リケマールPL―012:理研ビタミン株式会社製)36gに溶解して均一な保護コロイド溶液D1を得た。別途KMC113(クレハ化学(株)製、アルキルナフタレン)6gに、多価イソシアネートのスミジュールN3200(住友バイエルウレタン(株)製)2.2g、コスモネートLK(三井東圧(株)製)2.2gを混合して溶液E1を得た。
溶液E1の10gを保護コロイド溶液D1の60g中にゆっくり添加し、ホモミキサーで乳化した後に、500rpmの回転数で撹拌しながら75℃で2時間多価イソシアネートを反応させ、カプセル13(最大径の算術平均1.8μm)の分散液(固形分40%)を得た。
【0119】
(カプセル14の製造)
溶液E1の10gを保護コロイド溶液D1の60g中にゆっくり添加し、ホモミキサーで乳化した後に、1000rpmで撹拌しながら75℃で4時間多価イソシアネートを反応させ、カプセル14(最大径の算術平均1μm)の分散液(固形分40%)を得た。
【0120】
(カプセル15の製造)
溶液E1の5gを保護コロイド溶液D1の60g中にゆっくり添加し、ホモミキサーで乳化した後に、2000rpmで撹拌しながら75℃で4時間多価イソシアネートを反応させ、カプセル15(最大径の算術平均0.3μm)の分散液(固形分20%)を得た。
【0121】
【0122】
<樹脂組成物の調製>
(実施例1~45)
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱ケミカル(株)製、エピコート1001、エポキシ当量470)の14.7gと、ビスフェノールF型エポキシ樹脂(東都化成工業(株)製、YDF8170、エポキシ当量160)の44.5gと、硬化剤としてフェノール樹脂型硬化剤(明和化成(株)製、MEH800H、水酸基当量141)の39.8gと、アミン系マイクロカプセル型潜在性硬化促進剤(旭化成ケミカルズ製、ノバキュアHX3722)の1.0gとをホモディスパー(特殊機化工業製)を用いて300~500rpmの条件で分散・混合した。得られた混合物の10gをとりわけ、ろ過後乾固した。この混合物に対し、下記表に記載のカプセルを、得られる膜中のカプセルの体積分率が下記表に記載となるように添加し、更にホモディスパーを用いて500rpmの条件で温度を15℃に維持しながら6時間分散混合して実施例の樹脂組成物を調製した。
【0123】
(比較例1)
カプセルを配合しなかった以外は実施例1と同様にして樹脂組成物を調製した。
【0124】
<評価用の試験体の製造方法>
樹脂組成物の評価用のTEG(test-element-group)を次のようにして作製した。まず、シリコンウェハ上に銅膜を形成し、レジストでパターンを形成し不要部の銅をエッチング除去することによりデイジーチェインと呼ばれる上下で交互に接合が可能となる電極をシリコンウェハの表面に作製した。電極サイズは幅が20μm、長さが60μmであり、上下の接合部分は20μm四方である。上側のチップウエハを「CHIP」と呼び、下側を「IP」と呼んで区別し、下側のIPには電気的な導通を測定するためにデイジーチェインの両端と間に10か所の引き出し配線を設け、途中の接合ができているか否かを判断できるようにし、CHIPよりもIPの方がサイズが大きくなるようにした。
各種の評価の際にはIPの上に、各種樹脂組成物を用いて形成した膜を有する異方導電性部材を挟んでCHIPを上面に位置合わせ(アライメント)をして積層したものを接合装置に配置して接合をし、ボイド、接合抵抗および接合性をそれぞれ評価した。
異方導電部材は、複数個の銅電極(直径60nm)が絶縁性基材(厚さ20um、材質陽極酸化アルミニウム)の上下から突出した部材を用いた。銅電極同士の間隔は20nmで、絶縁性基材からの銅電極の突出量は片面300nmで、銅電極の密度は約1億個/mm2である。また、この異方導電性部材の両面に、各樹脂組成物をスピンコートして厚さ400nmの膜を形成した。
【0125】
<ボイドの評価>
250℃、50MPa、30分、真空下で加熱加圧接合した後の積層体を厚み方向に切断しシリコンチップと異方導電部材との間に形成された膜(樹脂層)におけるボイドの発生の有無を断面観察により確認し、以下の基準でボイドを評価した。
5:膜(樹脂層)中に残留するボイドの大きさが10μm未満であって、かつ全残留ボイドの合計面積がCHIPの面積に対して1%未満である。
4:膜(樹脂層)中に残留するボイドの大きさが10μm未満であって、かつ全残留ボイドの合計面積がCHIPの面積に対して1%を超え10%未満である。
3:膜(樹脂層)中に残留するボイドの大きさが10μmを超え30μm未満であって、かつ全残留ボイドの合計面積がCHIPの面積に対して1%未満である。
2:膜(樹脂層)中に残留するボイドの大きさが10μmを超え30μm未満であって、かつ全残留ボイドの合計面積がCHIPの面積に対して1%を超え10%未満である。
1:膜(樹脂層)中に残留するボイドの大きさを問わず、全残留ボイドの合計面積が半導体素子の面積に対して10%以上である。
【0126】
<接合抵抗の評価>
250℃、50MPa、30分、真空下で加熱加圧接合した後のデイジーチェインの抵抗を4端子法で測定し、総チェイン数で割ることでジョイントあたりの抵抗を算出した。
【0127】
<接合性の評価>
200℃、20MPa、30分、還元性雰囲気下で加熱加圧接合し、デイジーチェインの内導通ができている部分の割合を求めた。測定用引き出しパッドはデイジーチェインの途中に設置されているので部分的に繋がっている接合チェイン数が算出されるので全体のチェイン数に対してどれだけ接合出来ているかを確率で示し、確率が高い方が良好である。(単位=%)
【0128】
【0129】
上記表に示すように、実施例の樹脂組成物は、ボイドの発生を抑制することができた。更には、接合抵抗も低く、接合性にも優れていた。
【符号の説明】
【0130】
10、10a:異方導電性部材
11、11b、11c:突起部
12:絶縁性基材
15:導通路
20:膜(樹脂組成物層)
21:カプセル
30、40:配線基板
31、41:突起部