(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-12
(45)【発行日】2022-04-20
(54)【発明の名称】ガス検出装置及びガス検出方法
(51)【国際特許分類】
G01N 27/12 20060101AFI20220413BHJP
G01N 27/16 20060101ALI20220413BHJP
B01J 20/22 20060101ALI20220413BHJP
B01J 20/28 20060101ALI20220413BHJP
C01B 33/157 20060101ALI20220413BHJP
【FI】
G01N27/12 B
G01N27/16 A
B01J20/22 A
B01J20/28 Z
C01B33/157
(21)【出願番号】P 2021520690
(86)(22)【出願日】2020-05-01
(86)【国際出願番号】 JP2020018396
(87)【国際公開番号】W WO2020235335
(87)【国際公開日】2020-11-26
【審査請求日】2021-02-04
(31)【優先権主張番号】P 2019093817
(32)【優先日】2019-05-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000112439
【氏名又は名称】フィガロ技研株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000190301
【氏名又は名称】新コスモス電機株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】519135633
【氏名又は名称】公立大学法人大阪
(74)【代理人】
【識別番号】100086830
【氏名又は名称】塩入 明
(74)【代理人】
【識別番号】100096046
【氏名又は名称】塩入 みか
(72)【発明者】
【氏名】竹内 雅人
(72)【発明者】
【氏名】古野 純平
(72)【発明者】
【氏名】福井 健太
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 謙一
(72)【発明者】
【氏名】谷平 龍也
(72)【発明者】
【氏名】佐井 正和
(72)【発明者】
【氏名】谷口 卓史
(72)【発明者】
【氏名】三橋 弘和
【審査官】櫃本 研太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-044175(JP,A)
【文献】国際公開第2018/159348(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2006/0000352(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/00-27/49
B01J 20/22
B01J 20/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シロキサン除去フィルタと、前記フィルタを通過した雰囲気中のガスを検出するセンシング要素を備えている、ガス検出装置において、
前記フィルタは有機スルホン酸担持シリカを含み、かつ前記有機スルホン酸担持シリカは、窒素ガス吸着法により求めた比表面積が
550m
2
/g以上750m
2/g以下、細孔容積が
0.9cm
3
/g以上1.2cm
3/g以下、かつ窒素ガス吸着法により求めた微分細孔容積のピーク値の細孔直径が4nm以上8nm以下であることを特徴とする、ガス検出装置。
【請求項2】
前記有機スルホン酸担持シリカには、微分細孔容積が前記ピーク値の1/2となる細孔直径が、2nm未満と8nm超でかつ12nm以下に存在することを特徴とする、請求項1のガス検出装置。
【請求項3】
前記有機スルホン酸担持シリカは、窒素ガス吸着法により求めた、比表面積が570m
2/g以上750m
2/g以下、細孔容積が0.93cm
3/g以上1.2cm
3/g以下であることを特徴とする、
請求項1または2のガス検出装置。
【請求項4】
前記有機スルホン酸担持シリカは、295Kで相対圧(D4圧力とその飽和蒸気圧との比)が少なくとも0~0.6の範囲で測定した、D4(オクタメチルシクロテトラシロキサン)の吸着等温線において、相対圧が0.2でのD4吸着量が0.25mmol/g以上1.5mmol/g以下であることを特徴とする、
請求項1~3のいずれかのガス検出装置。
【請求項5】
シロキサン除去フィルタにより雰囲気中のガスからシロキサン化合物を除去し、前記フィルタを通過した雰囲気中のガスをセンシング要素により検出する、ガス検出方法において、
前記フィルタは有機スルホン酸担持シリカを含み、かつ前記有機スルホン酸担持シリカは、窒素ガス吸着法により求めた比表面積が
550m
2
/g以上750m
2/g以下、細孔容積が
0.9cm
3
/g以上1.2cm
3/g以下、かつ窒素ガス吸着法により求めた微分細孔容積のピーク値の細孔直径が4nm以上8nm以下であることを特徴とする、ガス検出方法。
【請求項6】
前記有機スルホン酸担持シリカには、微分細孔容積が前記ピーク値の1/2となる細孔直径が、2nm未満と8nm超でかつ12nm以下に存在することを特徴とする、
請求項5のガス検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はガス検出に関し、特にシロキサン除去フィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
ガスセンサには、シロキサン化合物により、検出材料の金属酸化物半導体や触媒、あるいは電極触媒、等が被毒されるという問題がある。シロキサン化合物を代表するものはD4(オクタメチルシクロテトラシロキサン)であるが、他にD5(デカメチルシクロペンタシロキサン)、D3(ヘキサメチルシクロトリシロキサン)等も有る。
【0003】
シロキサン除去フィルタとして、特許文献1(JP2015-44175A)は、平均細孔径(細孔径は細孔直径の意味)が3~20nm、BET比表面積が200~1000m2/g、細孔容積が0.5~1.5cm3/gのシリカゲルを担体とすることを開示している。そしてこのシリカゲルに、0.1~20mass%の濃度でパラトルエンスルホン酸等の有機スルホン酸を担持させる。ここで、担体のシリカゲルは、平均細孔径とシロキサン化合物の分子半径との比が大きい点が特徴的である。また有機スルホン酸は、吸着したシロキサン化合物を重合させて細孔内に固定し、脱離を防止する。
【0004】
特許文献1に加えて、シリカゲル担体に有機スルホン酸化合物とZrO2等のルイス酸を担持させることが提案されている(特許文献2:WO2018/159348A)。このシロキサンフィルタでは、ルイス酸によりシロキサン化合物の吸着を促進し、スルホン酸により重合させて細孔内に固定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】JP2015-44175A
【文献】WO2018/159348A
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながらシロキサンフィルタの性能は依然として不十分である。これはガスセンサの小形化が進み、シロキサンの影響を受けやすくなっているためである。
この発明の課題は、ガス検出装置でのフィルタのシロキサン除去性能を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明のガス検出装置は、シロキサン除去フィルタと、フィルタを通過した雰囲気中のガスを検出するセンシング要素を備えている。フィルタは有機スルホン酸担持シリカを含み、かつ有機スルホン酸担持シリカは、窒素ガス吸着法により求めた比表面積が500m2/g以上750m2/g以下、細孔容積が0.8cm3/g以上1.2cm3/g以下、かつ窒素ガス吸着法により求めた微分細孔容積のピーク値の細孔直径が4nm以上8nm以下である。
【0008】
この発明のガス検出方法は、シロキサン除去フィルタにより雰囲気中のガスからシロキサン化合物を除去し、フィルタを通過した雰囲気中のガスをセンシング要素により検出する。フィルタは有機スルホン酸担持シリカを含み、かつ有機スルホン酸担持シリカは、窒素ガス吸着法により求めた比表面積が500m2/g以上750m2/g以下、細孔容積が0.8cm3/g以上1.2cm3/g以下、かつ窒素ガス吸着法により求めた微分細孔容積のピーク値の細孔直径が4nm以上8nm以下である。
【0009】
ガス検出装置は、ガスセンサとこれとは別体のフィルタから成っていても良く、フィルタを内蔵するガスセンサから成っていても良い。実施例ではフィルタとセンシング要素を一体にしたガスセンサを説明する。ガスセンサの種類は任意で、例えば金属酸化物半導体ガスセンサ、接触燃焼式ガスセンサ、電気化学式ガスセンサ等がある。これらのガスセンサは、シロキサン化合物(以下「シロキサン」)による被毒を受けるおそれがある材料を用いている。実施例では、シロキサンによる被毒が特に問題となるMEMS(Micro Electro Mechanical System)金属酸化物半導体ガスセンサについて、フィルタの構成と効果を説明する。
【0010】
フィルタは有機スルホン酸担持のシリカ単独で構成される必要はない。この発明のフィルタを、例えば活性炭、シロキサンに比べ分子半径が小さいガスのみを透過させる気体選択性膜、等の他のガスフィルタと組み合わせても良い。なおこの明細書において、シリカはシリカゲルを意味する。有機スルホン酸担持のシリカは、シリカと有機スルホン酸以外に、例えばZrO2,TiO2,Nb2O5,Ta2O5等のルイス酸化合物、等を含んでいても良い。なおシリカ中のルイス酸がシロキサンを強く吸着することは、特許文献2により知られている。有機スルホン酸はスルホ基(-SO3H)を有する有機化合物、特にスルホ基を有する芳香族有機化合物である。実施例ではパラトルエンスルホン酸を用いるが、ナフタレンスルホン酸、ビスフェノール化合物のスルホン酸誘導体等でも良い。これらの有機スルホン酸は、シリカゲルの細孔をブロックするほどの分子半径を持たないので、シロキサンが細孔内に拡散することを阻害せず、シリカゲルの細孔表面に吸着されて保持される。
【0011】
有機スルホン酸担持のシリカの形状は顆粒状、粉末状、ディスク状等、任意である。またこの明細書において、ガス検出装置に関する記載は、そのままガス検出方法にも当てはまる。
【0012】
好ましくは、有機スルホン酸担持シリカには、微分細孔容積がピーク値の1/2となる細孔直径が、2nm未満と8nm超でかつ12nm以下に存在する。
【0013】
好ましくは、有機スルホン酸担持シリカは、窒素ガス吸着法により求めた、比表面積が550m2/g以上750m2/g以下、細孔容積が0.9cm3/g以上1.2cm3/g以下である。
【0014】
より好ましくは、有機スルホン酸担持シリカは、窒素ガス吸着法により求めた、比表面積が570m2/g以上750m2/g以下、細孔容積が0.93cm3/g以上1.2cm3/g以下である。
【0015】
特に好ましくは、有機スルホン酸担持シリカは、295Kで相対圧(D4圧力とその飽和蒸気圧との比)が少なくとも0~0.6の範囲で測定した、D4(オクタメチルシクロテトラシロキサン)の吸着等温線において、相対圧が0.2でのD4吸着量が0.25mmol/g以上1.5mmol/g以下である。
【0016】
この発明の有機スルホン酸担持のシリカフィルタを用いると、シロキサンに対するガスセンサの耐久性が向上する。しかも比表面積、細孔容積等が比較的近いシリカゲルを用いる場合に比べ、シロキサン耐久性は著しく向上する。例えば
図3~
図5は3種類の実施例でのシロキサン耐久性を示し、
図6は比較例を用いた際のシロキサン耐久性を示す。ガスセンサあるいはガス検出装置として実用化した際の耐久性は、実施例と比較例とで全く異なる。
【0017】
図8は、実施例1,2と比較例でのガスセンサのシロキサン耐久性を、シロキサンの組成と濃度を
図3~
図6の条件から変えて、測定した際の結果である。
図8でも、実施例と比較例では、シロキサン耐久性が著しく異なる。
【0018】
実施例と比較例での相違点は、有機スルホン酸担持後のシリカゲルの物性としては、比表面積と細孔容積及び微分細孔径のピーク値(表1)にある。即ち実施例では、比較例に比べ、比表面積と細孔容積が大きく、かつ微分細孔容積のピークが生じる細孔径(ピーク直径)が小さい。また実施例では比較例に比べ、微分細孔容積のピークの半値幅が狭い、言い換えると細孔径の分布が狭い。
【0019】
実施例と比較例との次の相違点は、シロキサンの吸着等温線において、低濃度域(飽和蒸気圧の20%以下)での、シロキサン吸着量が多いことにある(
図13)。細孔の物性(比表面積、細孔容積、細孔径のピーク位置等)とシロキサン吸着特性の差が、ガスセンサのシロキサン耐久性に大差を与えている。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図3】実施例1のシロキサンに対する耐久性を示す特性図
【
図4】実施例2のシロキサンに対する耐久性を示す特性図
【
図5】実施例3のシロキサンに対する耐久性を示す特性図
【
図6】比較例のシロキサン除去剤を用いたガスセンサの、シロキサンに対する耐久性を示す特性図
【
図7】比較例のガスセンサでの、シロキサンが無い環境での耐久性を示す特性図
【
図8】シロキサンへの被曝条件を変えた際の、実施例1、2及び比較例のガスセンサでの、シロキサン耐久性を示す特性図
【
図9】実施例1~3の窒素ガスへの吸脱着等温線を示す特性図
【
図10】実施例1~3での、有機スルホン酸担持前のシリカゲルの窒素ガスへの吸脱着等温線を示す特性図
【
図12】実施例1~3での、有機スルホン酸担持前のシリカゲルの細孔径分布を示す特性図
【
図13】実施例1~3及び比較例のD4吸着等温線を示す特性図
【
図14】実施例1~3での、有機スルホン酸担持前のシリカゲルのD4吸着等温線を示す特性図
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、本発明を実施するための最適実施例を示す。
【実施例】
【0022】
図1,
図2は実施例で用いたMEMSガスセンサ2とMEMSチップ4(センシング要素)を示し、フィルタ18の材質以外の点については、ガスセンサ2の構成は任意である。6はベース、7はピンで、MEMSチップ4の電極及びヒータはリード8によりピン7に接続されている。キャップ10がベース6に固定され、有機スルホン酸担持のシリカゲルから成るフィルタ18を収容している。12はフィルタ18の外側開口、14はフィルタ18の内側開口、15はフィルタ18を固定するための固定部材である。実施例では、フィルタ18からシリカの細粉が溢れ出すことを防止するため、開口12,14を不織布16で覆う。しかし細粉が溢れ出す可能性が低い場合、不織布16は不要である。さらに不織布16を気体選択性透過膜等に変えても良く、また不織布に変えて細かいメッシュの網に変えても良い。
【0023】
キャップ10の内径をr(7.7mm)、フィルタ18の充填高さをh(2.5mm)、開口12の直径をφ(4mm)、開口14の直径をτ(6mm)とした。またフィルタ18の質量は50mg、材料のシリカゲルは顆粒状に統一した。ただしフィルタの質量、シリカゲルの形態は任意である。
【0024】
図2にMEMSチップ4を示し、Si基板20にキャビティ22が設けられ、キャビティ22上に絶縁性の支持膜24が設けられている。支持膜24は、キャビテイ22を覆うダイアフラム状の要素でも、あるいは例えば4本の脚により支えられた島状の要素でも良い。キャビティ22上で支持膜24に金属酸化物半導体25の厚膜が設けられているが、金属酸化物半導体25の構成は任意である。金属酸化物半導体25の種類はSnO
2,TiO
2,WO
3,In
2O
3,ZnO等任意で、Pt、Pd、Au、その他の添加物を含んでいても良い。支持膜24に図示しないヒータ膜を設け、金属酸化物半導体25を動作温度へ加熱する。また支持膜24に図示しない電極を設け、金属酸化物半導体25の抵抗値を測定する。なおヒータを電極に兼用し、ヒータと金属酸化物半導体25の並列抵抗の値を出力としても良い。
【0025】
ガスセンサ2は以下の条件で駆動した: 加熱周期30秒、加熱時間100m秒、非加熱時間29.9秒、最高加熱温度450℃。水素1000ppmと5000ppm、メタン3000ppm、及び空気中での金属酸化物半導体25の抵抗値(金属酸化物半導体25の温度は最高加熱温度)を測定し、その推移を調べた。フィルタ18の種類毎に4個のガスセンサ2を用い、4個のガスセンサ2の平均値を求めた。シロキサン被毒により金属酸化物半導体25は水素中での抵抗値が低下し、ガスセンサ2の出力が増加する。検出対象ガスはメタン、水素に限らず任意で、ガスセンサ2の駆動条件は任意である。
【0026】
p-トルエンスルホン酸水溶液に顆粒状で単味のシリカゲルを浸漬し、減圧して顆粒の内部までp-トルエンスルホン酸水溶液を浸透させた。その後、溶媒の水を蒸発乾固させ、回収した固体を80℃で乾燥させることで、p-トルエンスルホン酸濃度が5mass%のp-トルエンスルホン酸担持シリカを得た。
【0027】
BET比表面積及び細孔容積とその分布は、以下のようにして測定した。各試料を100℃で真空排気した後、液体窒素温度(77K)にてN2吸脱着等温線を測定した。得られたN2吸着等温線からBETプロットを算出することで、比表面積を求めた。また、N2吸着等温線からBJHプロットを算出することで、細孔分布と細孔容積を求めた。
【0028】
D4の吸着等温線は、以下のようにして測定した。ガラスセルに所定量の試料を入れ、前処理として100℃で真空排気を行った。その後、ガラスセル内に一定量のD4蒸気を順次導入し、導入圧と平衡圧(吸着平衡に達した後の圧力)から、D4吸着量を算出した。各相対圧(平衡圧を、室温におけるD4の飽和蒸気圧で割った値)におけるD4吸着量(吸着剤の単位重量あたり)をプロットした図が、吸着等温線である。
【0029】
シロキサン耐久試験(
図3~
図6)では、室温で相対湿度が85%RH以上、D4濃度が20ppmの雰囲気中で、フィルタ18の種類毎に各4個のガスセンサ2を動作させた。図は4個のガスセンサの平均値を示している。なお
図7は、シロキサンを含まない雰囲気での比較例のデータである。
図8の測定では、室温で常湿、かつD3,D4,D5を各30ppm含む雰囲気中で、フィルタ18の種類毎に各3個のガスセンサ3を動作させ、3個のガスセンサの平均値を求めた。
図8の縦軸はメタン3000ppm相当のガスセンサ出力となる水素の濃度(水素警報濃度)を示す。この濃度が低下することは、シロキサンの影響により水素感度が増加したことを示す。
【0030】
物性の異なる4種類のシリカ(実施例1~3及び比較例)について、有機スルホン酸(パラトルエンスルホン酸5mass%)担持のシリカの比表面積、細孔容積、微分細孔容積のピークに対応するピーク直径と、ピーク幅に関するデータを表1に示す。また有機スルホン酸担持前の、対応するデータを表2に示す。表1の実施例1~3と比較例とを比較すると、実施例は比較例よりも比表面積と細孔容積が大きく、ピーク直径が小さく、かつピーク幅を示す半値直径も小さい。即ち実施例の有機スルホン酸担持のシリカは、比較例のシリカよりも、比表面積が大きく、均一でかつ小さな直径の細孔を備えている。また表1,表2から、スルホン酸の担持により、比表面積と細孔容積が減少すること、及びピーク直径と半値直径はほとんど変化しないことが分かる。
【0031】
【0032】
【0033】
パラトルエンスルホン酸担持のシリカの窒素吸着等温線を
図9に、担持前の吸着等温線を
図10に示す。パラトルエンスルホン酸担持のシリカの細孔直径の分布を
図11に、担持前の細孔直径の分布を
図12に示す。実施例1~3では、パラトルエンスルホン酸の担持前も担持後も、細孔径の分布は比較例よりも狭く、かつ細孔直径は比較例よりも小さい。なお比較例のデータは表1に示してある。
【0034】
図13は、パラトルエンスルホン酸(p-TSA)担持のシリカについて、実施例1~3及び比較例のD4吸着等温線を示す。
図14は、パラトルエンスルホン酸担持前の、実施例1~3のD4吸着等温線を示す。なお
図14では、実施例3に対し2回測定を行ったが、結果の再現性は極めて高かった。測定温度は22℃、D4の飽和蒸気圧P0はほぼ1Torrである。
【0035】
図13から、実施例は、比較例に比べ、相対圧(P/P0)0.2以下での吸着量が多いことが分かる。
図14を
図13と比較すると、パラトルエンスルホン酸担持前のシリカでは、D4吸着量は実施例1~3の間で大きく異なる。しかしパラトルエンスルホン酸担持後のシリカでは、実施例1~3のD4吸着量は接近している。
【0036】
シロキサン被曝への耐久性を
図3~
図7に示し、この内、
図3~
図5が実施例1~3に対応する実施例、
図6は比較例、
図7はシロキサンに曝していない参照例(比較例のシリカから成るフィルタを使用)である。これらの図では、空気(○)と、水素1000ppm(▲)、5000ppm(△)、及びメタン3000ppm(■)の出力を示す。なお破線の太い横軸は、メタン0.3%への基準出力を示す。
図3~
図5(実施例)では、シロキサンの影響は
図6(比較例)に比べ遙かに小さい。なお
図3~
図7の測定は高湿雰囲気中で行い、仮に、スルホン酸のためにシリカの細孔に水が凝縮し、フィルタの性能が低下する等のことがあっても、その影響が含まれている。
【0037】
図8は、D3,D4,D5のシロキサンを各30ppm含有する雰囲気に対する、ガスセンサ2の耐久性を示す。なおこの試験では、実施例1,2と比較例を比較した。この試験では、シロキサン濃度を合計90ppmと高め、かつD4以外のシロキサンへの耐久性も反映されるようにした。一般に、シロキサンとの接触により、金属酸化物半導体25は水素中での抵抗値が低下する。メタン3000ppm中での初期の抵抗値まで、金属酸化物半導体25の抵抗値を低下させる水素濃度を水素警報レベルとする。そして水素警報レベルが500ppmまで低下するまでの期間を、ガスセンサ2の寿命とした。実施例でも比較例でもシロキサンにより水素警報レベルが低下するが、実施例は比較例の約2倍の寿命を示した。
【符号の説明】
【0038】
2 ガスセンサ
4 MEMSチップ(センシング要素)
6 ベース
7 ピン
8 リード
10 キャップ
12,14 開口
15 固定部材
16 不織布
18 フィルタ
20 Si基板
22 キャビティ
24 支持膜
25 金属酸化物半導体
26 パッド