(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-13
(45)【発行日】2022-04-21
(54)【発明の名称】フレキシブル温度センサ
(51)【国際特許分類】
G01K 1/20 20060101AFI20220414BHJP
G01K 7/16 20060101ALI20220414BHJP
G01K 13/20 20210101ALI20220414BHJP
【FI】
G01K1/20
G01K7/16 B
G01K13/20 341P
(21)【出願番号】P 2018003813
(22)【出願日】2018-01-12
【審査請求日】2020-11-12
(73)【特許権者】
【識別番号】519135633
【氏名又は名称】公立大学法人大阪
(73)【特許権者】
【識別番号】000110217
【氏名又は名称】トッパン・フォームズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100206999
【氏名又は名称】萩原 綾夏
(72)【発明者】
【氏名】竹井 邦晴
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 久美
【審査官】平野 真樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-138773(JP,A)
【文献】特開平05-264367(JP,A)
【文献】特開2006-064497(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01K 1/00-19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルム基材と、前記フィルム基材の一方の主面に互いに間隔を空けて設けられた複数の金属配線部と、前記複数の金属配線部に跨るように設けられた感温材層と、前記フィルム基材の一方の主面に前記感温材層を覆うように設けられた樹脂層を含む感温材層カバー部とを有し、
前記感温材層カバー部は、前記樹脂層と前記感温材層との間及び前記樹脂層内の一方又は両方に確保された1又は複数の空隙部を含
み、前記空隙部内に熱伝導率が前記樹脂層及び前記フィルム基材の熱伝導率に比べて低いガスが封入され、前記ガスが不活性ガスあるいは二酸化炭素であるフレキシブル温度センサ。
【請求項2】
センサ周囲の気温の変動が前記フィルム基材を当接させた温度測定対象物の温度から45℃以内である場合の、前記感温材層による前記温度測定対象物の測定温度の変動が0.35℃以下である請求項1に記載のフレキシブル温度センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全体としてシート状に形成され可撓性を有するフレキシブル温度センサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、人の体温測定に使用されるいわゆる電子体温計が提供されている。電子体温計は、腋下等の人体の測定部位に挟み込み可能なプローブ部を有する体温計本体と、プローブ部の先端に取り付けられた金属製キャップ状の集熱部材とを有する構成が一般的である(例えば特許文献1)。この電子体温計は、集熱部材内面に取り付けられたサーミスタなどの温度センサによる温度計測結果を体温計本体に設けられた表示器に表示する。
【0003】
上述の電子体温計は、人の体温を測定する場合に腋下等の人体の測定部位にプローブ部及び集熱部材を挟み込んで使用することが一般的である。上述の電子体温計を使用した体温測定では、人体の測定部位に挟み込んだ集熱部材の人体表面との接触面積の安定確保が容易でなく、集熱部材の人体表面に対する接触面積が小さく周囲の空気との接触面積が大きいと集熱部材温度が周囲の空気温度の影響を受けやすくなり測定誤差が大きくなる。
【0004】
これに鑑みて、近年では、温度変化によるポリマー材料の抵抗値変化特性を温度測定に利用するフレキシブル温度センサも提案されている(例えば特許文献2)。このフレキシブル温度センサは可撓性に優れるシート状に形成できる。このフレキシブル温度センサは人体表面等にフィットしやすいため、人体表面に対する接触面積を安定確保できる。フレキシブル温度センサは、例えば人体表面に貼り付けて体温測定に利用できる。フレキシブル温度センサは、上述の電子体温計のように人体の測定部位に挟み込む必要が無く、体温測定を簡便に行えるため、近年、実用化に向けた開発が急速に進展しつつある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第4298509号公報
【文献】国際公開第2015/119205号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述のフレキシブル温度センサについては、人体等の温度測定対象物に貼付した側とは逆側の面全体が大気中に露呈した状態で温度を測定する使用状態が想定される。
しかしながら、従来のフレキシブル温度センサは、温度測定対象物側とは逆側の面全体が大気中に露呈した使用状態では、外気温の影響を受けて温度測定精度が低下しやすかった。
【0007】
本発明の態様が解決しようとする課題は、周囲の気温の影響を受けにくく、温度測定精度を向上できるフレキシブル温度センサを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明では以下の態様を提供する。
第1の態様のフレキシブル温度センサは、フィルム基材と、前記フィルム基材の一方の主面に互いに間隔を空けて設けられた複数の金属配線部と、前記複数の金属配線部に跨るように設けられた感温材層と、前記フィルム基材の一方の主面に前記感温材層を覆うように設けられた樹脂層を含む感温材層カバー部とを有し、前記感温材層カバー部は、前記樹脂層と前記感温材層との間及び前記樹脂層内の一方又は両方に確保された1又は複数の空隙部を含み、前記空隙部内に熱伝導率が前記樹脂層及び前記フィルム基材の熱伝導率に比べて低いガスが封入され、前記ガスが不活性ガスあるいは二酸化炭素である。
このフレキシブル温度センサは、センサ周囲の気温の変動が前記フィルム基材を当接させた温度測定対象物の温度から45℃以内である場合の、前記感温材層による前記温度測定対象物の測定温度の変動が0.35℃以下である構成を採用できる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の態様に係るフレキシブル温度センサは、感温材層カバー部の空隙部にガス(空気であっても良い)が封入された構成あるいは空隙部が真空である構成を採用できる。その結果、本発明の態様に係るフレキシブル温度センサは、感温材層カバー部の空隙部内のガスあるいは真空の空隙部によって、感温材層がフレキシブル温度センサの温度測定対象物側とは逆側の気温の影響を受けることを防止または抑制でき、温度測定精度を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の1実施形態に係るフレキシブル温度センサの構造を示す正断面図である。
【
図2】
図1のフレキシブル温度センサを用いて組み立てた温度測定表示装置の一例を示す平面図である。
【
図3】本発明の第2実施形態に係るフレキシブル温度センサの構造を示す正断面図である。
【
図4】
図3のフレキシブル温度センサを想定した温度分布シミュレーションにおけるフレキシブル温度センサの感温材層カバー部の空隙部の配列モデルを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態に係るフレキシブル温度センサについて、図面を参照して説明する。
【0012】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係るフレキシブル温度センサ10を示す正断面図である。
図1に示すように、この実施形態のフレキシブル温度センサ10は、フィルム基材11と、フィルム基材11の一方の主面11a(以下、第1主面、とも言う)に設けられた金属配線部12及び感温材層13と、フィルム基材11の第1主面11aに感温材層13を覆うように設けられた樹脂層14aを含む感温材層カバー部14とを有する。
【0013】
フレキシブル温度センサ10は、フィルム基材11に沿う方向を面方向とするシート状に形成されている。また、フレキシブル温度センサ10は使用者が手指で曲げ可能な可撓性を有する。
【0014】
フィルム基材11は合成樹脂製フィルムである。フィルム基材11の形成樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、アクリル樹脂、AS樹脂、ABS樹脂、ポリアミド、ポリアセタール、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリフェニレンスルファイド、ポリスルホン、ポリカーボネート、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、ポリウレタン、ポリイミド等を挙げることができる。
【0015】
金属配線部12は、フィルム基材11の第1主面11aに互いに間隔を空けて複数設けられている。金属配線部12は、例えば銅、アルミニウム、銀等の良導性の金属によって形成された金属配線である。
【0016】
感温材層13は、フィルム基材11の第1主面11aの複数の金属配線部12に跨るように設けられ、各金属配線部12と電気的に接続されている。
感温材層13は、フィルム基材11の第1主面11aに沿って延在形成されている。
【0017】
感温材層13は、樹脂材料に導電性粒子を分散させた導電性粒子含有ポリマー材料によって形成されている。感温材層13は、導電性粒子含有ポリマー材料の温度変化による抵抗値変化特性を温度測定に利用できるものである。
感温材層13は、特定の温度領域に達すると温度の上昇と共に電気抵抗値が負の温度係数(Negative Temperature Cofficient)で急激に減少する特性(以下、「NTC特性」という)を有するものである。感温材層13について、温度の上昇と共に電気抵抗値が負の温度係数で急激な増大を開始する温度を、以下、NTC温度とも言う。
【0018】
導電性粒子含有ポリマー材料の樹脂(ポリマー)は、正孔伝導可能な層(正孔輸送層)を形成できるものを採用する。導電性粒子含有ポリマー材料の樹脂としては、例えば、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)とポリスチレンスルホン酸(PSS)から成る複合物(PEDOT-PSS)、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)とポリ(ビニルスルホン酸)とから成る複合物、等を採用できる。
導電性粒子含有ポリマー材料は、その樹脂に、例えば、カーボンナノチューブ、グラフェン、銀粒子、銅粒子といった導電性粒子を分散させたものである。
NTC特性は、導電性粒子含有ポリマー材料の樹脂の正孔輸送が温度上昇によって活性化されて導電性粒子含有ポリマー材料の抵抗値が低くなる特性である。したがって、導電性粒子含有ポリマー材料の抵抗値変化を測定することで、温度変化を測定することができる。
【0019】
フィルム基材11は、厚みが数μm~2000μmのものを採用できる。
フレキシブル温度センサ10は、フィルム基材11の第1主面11aとは逆側の第2主面11bを温度測定対象物110に当接させて温度測定対象物110の温度測定に用いる。 フレキシブル温度センサ10は、第2主面11bを温度測定対象物110に当接させたフィルム基材11を介して感温材層13の温度変化による抵抗値変動が生じることで、温度測定対象物110の温度を測定する。
【0020】
温度測定対象物110にフィルム基材11を当接させた後、感温材層13の温度変化を生じるまでの所要時間を短縮する点では、フィルム基材11の厚みは薄い方が良い。
また、フレキシブル温度センサ10全体の厚みを薄くする点、センサ全体のフレキシブル性を高める点でも、フィルム基材11の厚みは薄い方が有利である。
これらの点に鑑みて、フィルム基材11の厚みは100μm以下であることが好ましく、50μm以下であることがより好ましく、20μm以下であることがさらに好ましい。
【0021】
感温材層13は、温度測定対象物110の温度を測定するセンサ本体である。
フィルム基材11の第1主面11aに金属配線部12及び感温材層13が設けられたものを、以下、センサ基板15とも言う。
また、センサ基板15の、フィルム基材11の第1主面11aが位置する側の面を第1面、フィルム基材11の第2主面11bが位置する側の面を第2面、とも言う。
【0022】
感温材層カバー部14は、センサ基板15の第1面に固定された樹脂層14aと、樹脂層14aに形成された凹部14cによって樹脂層14aとセンサ基板15との間に確保された空隙部14bとを有する構成である。換言すれば、樹脂層14aと感温材層13との間にのみ1つの空隙部を含んだ構成である。
【0023】
図1に示すフレキシブル温度センサ10の感温材層カバー部14の樹脂層14aは、感温材層13に臨む部分に凹部14cが形成された樹脂製シート状部材である。樹脂層14aの凹部14cは、樹脂層14aの片面の中央部に形成されている。
樹脂層14aの凹部14cが形成されている面を、以下、裏面、と言う。
樹脂層14aは、その裏面の凹部14cが形成されていない部分をセンサ基板15の第1面に位置するフィルム基材11(具体的にはその第1主面11a)に接着固定してフィルム基材11に取り付けられている。樹脂層14aは、その裏面の凹部14c開口部の外周に沿う周方向全周にわたってセンサ基板15の第1面に接着固定されている。樹脂層14aは、フィルム基材11の第1主面11aの金属配線部12が存在する箇所では金属配線部12に接着固定されている(
図1はフィルム基材11の第1主面11aに存在する金属配線部12に樹脂層14aが接着固定されている箇所を示す)。樹脂層14aをセンサ基板15の第1面に接着固定した接着固定部は、樹脂層14aの裏面の凹部14c開口部を取り囲むように延在し、空隙部14bとセンサ外側との間の空気流通を遮断する。
樹脂層14aは、凹部14c内面が空隙部14bを介して感温材層13に対面し、感温材層13との接触部分が存在しない状態で、センサ基板15の第1面に接着固定されている。
【0024】
樹脂層14aの形成樹脂は、例えば、フィルム基材11の形成樹脂と同様のものを採用可能であるが、この他、フレキシブル性、防水性の点で、ジメチルポリシロキサン(以下、PDMS)等が好適である。
樹脂層14aのフィルム基材11に対する接着固定は、例えば、樹脂層14aの裏面の凹部14cの周囲に樹脂層14aと同様の樹脂溶媒(PDMS等)を塗布し、裏面の樹脂溶媒を塗布した部分をセンサ基板15の第1面に当接させた状態を維持しまま、樹脂溶媒を硬化させて樹脂層14aをフィルム基材11に接着固定することが好適である。
【0025】
なお、樹脂層14aは、接着剤を用いてフィルム基材11に接着固定しても良い。
また、熱可塑性樹脂によって形成されている樹脂層14aは、例えば、熱溶着によってフィルム基材11に接合固定しても良い。
【0026】
感温材層カバー部14の空隙部14bは、樹脂層14aの凹部14c内面とセンサ基板15の第1面とによって囲まれた内側の空間である。
空隙部14bの内部は空気によって満たされている。
図1のフレキシブル温度センサ10の感温材層カバー部14は、樹脂層14aと空隙部14b内の空気とによって感温材層13を覆う構成である。
【0027】
樹脂層14aとセンサ基板15との間の接合部(接着剤による接着部も含む)には気密性が確保されている。
空隙部14bとフレキシブル温度センサ10外側の空間との間に空気流通は生じない。
【0028】
空気の熱伝導率は、樹脂層14a及びフィルム基材11の熱伝導率に比べて低い。空隙部14b内の空気は、フレキシブル温度センサ10周囲の空気の温度(気温)が、感温材層13による温度測定対象物110の温度測定に影響を与えることを防ぐ役割を果たす。
【0029】
フレキシブル温度センサ10の総厚、すなわちフィルム基材11の第2主面11b(センサ基板15の第2面)と、感温材層カバー部14の樹脂層14aのセンサ基板15とは逆側の面(外面)との距離は、6mm以下であることが好ましく、4mm以下であることがより好ましい。
【0030】
図2は、フレキシブル温度センサ10を用いて組み立てられた温度測定表示装置50の一例を示す平面図である。
図2に示すように、温度測定表示装置50は、フレキシブル温度センサ10と、フレキシブル温度センサ10による測定温度を数値表示する表示器52a(液晶ディスプレイ等。以下、温度表示器、とも言う)を含む測定結果表示部52と、フレキシブル温度センサ10の感温材層13への通電及びその制御を行なうコントローラ53とを有する。
コントローラ53は、フレキシブル温度センサ10の感温材層13の電気抵抗に応じた信号(以下、抵抗値信号、とも言う)を出力する。
コントローラ53は、測定結果表示部52の温度表示器52aの制御部52b(以下、表示器制御部、とも言う)と電気的に接続されている。表示器制御部52bはコントローラ53から出力された抵抗値信号を受信して、受信した抵抗値信号に応じた温度を温度表示器52aに数値表示させる。
【0031】
測定結果表示部52は、温度表示器52aと、温度表示器52aを収納する外装ケース52cとを有する。
図2に例示した温度測定表示装置50において、コントローラ53は外装ケース52c内に位置する。
温度表示器52aは、測定温度を数値表示する表示面を外装ケース52cに開口された窓孔(図示略)に位置合わせして外装ケース52cに組み込まれる。
コントローラ53は、信号線51を介してフレキシブル温度センサ10のセンサ基板15の金属配線部12と電気的に接続されている。測定結果表示部52のコントローラ53は、信号線51及びセンサ基板15の金属配線部12を介して感温材層13と電気的に接続されている。
【0032】
図2に例示した温度測定表示装置50の測定結果表示部52は、コントローラ53を温度表示器52a(具体的には表示器制御部52b)と電気的に接続するためのコネクタ52dを含む。コントローラ53はコネクタ52dに取り付けられている。
温度表示器52aには、コネクタ52dの接続用スロットに挿脱可能な接続用突片52eが設けられている。一方、コネクタ52dは、接続用スロット内に、コントローラ53と電気的に接続された接続端子を有する。接続用突片52eには、接続用突片52eをコネクタ52dの接続用スロットに挿入したときに、接続用スロット内の接続端子と接触して接続端子と温度表示器52aとを電気的に接続するための接続用回路が形成されている。
表示器制御部52bは、コネクタ52dの接続用スロットに挿入された接続用突片52eの接続用回路とコネクタ52d内の接続端子とを介して、コントローラ53と電気的に接続されている。
なお、コントローラ53は、信号線51を電気的に接続するためのコネクタを有する構成を好適に採用できる。コネクタは、信号線51を電気的に接続することができる種々の周知構成のものを採用できる。
【0033】
温度測定表示装置50は、フレキシブル温度センサ10と、フレキシブル温度センサ10の感温材層13に電気的に接続されたコントローラ53とを有する温度測定モジュールを含む。
また、温度測定表示装置50は、温度測定モジュールに、コントローラ53に温度表示器52a等の電気機器を電気的に接続するためのコネクタ52dが設けられた構成のコネクタ付き温度測定モジュールを含む。
なお、温度測定モジュール及びコネクタ付き温度測定モジュールは、温度測定表示装置の一部である構成に限定されない。温度測定モジュール及びコネクタ付き温度測定モジュールは、例えば、コントローラ53から出力された抵抗値信号を受信して受信した抵抗値信号に対応する電波信号等の無線信号を出力する無線信号出力器がコントローラ53に電気的に接続された構成等も採用可能である。
また、温度測定表示装置は、温度測定モジュール及びコネクタ付き温度測定モジュールのコントローラに温度表示器を電気的に接続した構成であればよく、
図2に例示した構成に限定されない。
【0034】
フレキシブル温度センサ10及びフレキシブル温度センサ10を用いて組み立てた温度測定表示装置50は、フレキシブル温度センサ10の感温材層カバー部14の空隙部14b内の空気によって、フレキシブル温度センサ10周囲の空気の温度(気温)が感温材層13による温度測定対象物110の温度測定に影響を与えることを防ぐことができる。
このため、温度測定対象物110の温度測定精度を向上できる。
【0035】
フレキシブル温度センサ10は、フィルム基材11の第1主面11aにパターン配線である金属配線部12が形成されたフレキシブルプリント基板を用いた構成も採用可能である。このフレキシブル温度センサ10は、フレキシブルプリント基板のフィルム基材11の第1主面11aに感温材層13を形成したセンサ基板15を有する。
また、フレキシブルプリント基板を用いたフレキシブル温度センサ10を有する温度測定表示装置は、フレキシブルプリント基板のその片面が感温材層カバー部14に覆われた領域から外側に位置する部分(外側延出部)にコントローラ53及び温度表示器52aを実装した構成も採用可能である。この構成の温度測定表示装置において、コントローラ53は、フレキシブルプリント基板のパターン配線(金属配線部12)を介して感温材層13と電気的に接続される。また、この構成の温度測定表示装置では、コントローラ53と温度表示器52aとの間を、フレキシブルプリント基板のパターン配線を介して電気的に接続した構成を採用できる。
【0036】
(第2実施形態)
次に、本発明に係る第2実施形態のフレキシブル温度センサを説明する。
図3に示すように、この実施形態のフレキシブル温度センサ20は、第1実施形態のフレキシブル温度センサ10について感温材層カバー部を変更したものである。
図3中、この実施形態のフレキシブル温度センサ20の第1実施形態のフレキシブル温度センサ10と同様の構成部分には共通の符号を付し、その説明を簡略化または省略する。
【0037】
図3に示すフレキシブル温度センサ20の感温材層カバー部21は、空隙部21bが多数内在する樹脂層21a(空隙部含有樹脂層)、である。
図3に示すフレキシブル温度センサ20の感温材層カバー部21は、樹脂層21aと、樹脂層21a中に内在する多数の空隙部21bとを有する。
空隙部21bは樹脂層21aの全体にわたって分散配置されている。換言すれば、樹脂層21a内のみに複数の空隙部を含んだ構成である。
【0038】
図3に示すように、感温材層カバー部21はセンサ基板15の第1面に沿って層状に設けられ、センサ基板15の感温材層13を覆っている。
感温材層カバー部21はシート状に形成された部材であり、センサ基板15の第1面に接着剤を用いて接着固定されている。
感温材層カバー部21の樹脂層21aの形成樹脂は、第1実施形態のフレキシブル温度センサ10の感温材層カバー部14の樹脂層14aに使用可能な形成樹脂を採用できる。
【0039】
感温材層カバー部21の厚みは、例えば0.3~5.0mmであるが、0.3~4.0mmであることが好ましく、0.4~3.0mmであることがより好ましい。
フレキシブル温度センサ20の総厚、すなわちフィルム基材11の第2主面11b(センサ基板15の第2面)と、感温材層カバー部21のセンサ基板15とは逆側の面との距離は、6mm以下であることが好ましく、4mm以下であることがより好ましい。
【0040】
感温材層カバー部21の空隙部21b内は空気によって満たされている。
感温材層カバー部21の空隙部21bのサイズ(直径)は、0.1~3.0mmであることが好ましい。
感温材層カバー部21の空隙部21bの密度は30~60%であることが好ましい。
【0041】
感温材層カバー部21は、熱伝導率0.12~0.52W/mK、密度900~2000kg/m3、定圧比熱容量840~2500J/kgKであるものを好適に用いることができる。
【0042】
この実施形態のフレキシブル温度センサ20は測定結果表示部を有する温度測定表示装置の組み立てに用いることができる。
フレキシブル温度センサ20を用いた温度測定表示装置は、例えば、
図2に示す温度測定表示装置50について第1実施形態のフレキシブル温度センサ10に代えてこの実施形態のフレキシブル温度センサ20を使用した構成のものである。
【0043】
また、この実施形態のフレキシブル温度センサ20は、第1実施形態のフレキシブル温度センサ10と同様にフレキシブルプリント基板を使用する構成を採用である。フレキシブルプリント基板を採用したフレキシブル温度センサ20も、フレキシブルプリント基板を採用した第1実施形態のフレキシブル温度センサ10と同様に、フレキシブルプリント基板に実装されたコントローラ53及び温度表示器52aを有する構成の温度測定表示装置の組み立てに用いることができる。コントローラ53及び表示器52aは、フレキシブルプリント基板のその片面が感温材層カバー部21に覆われた領域の外側に位置する部分(外側延出部)に実装される。
フレキシブルプリント基板を採用したフレキシブル温度センサ20を用いた温度測定表示装置は、空隙部21bが多数内在する樹脂層21a(空隙部含有樹脂層)である感温材層カバー部21を使用する点のみが、フレキシブルプリント基板を採用した第1実施形態のフレキシブル温度センサ10を用いる温度測定表示装置と異なる。
【0044】
フレキシブル温度センサ10及びフレキシブル温度センサ20を用いて組み立てた温度測定表示装置は、フレキシブル温度センサ20の感温材層カバー部21の空隙部21b内の空気によって、フレキシブル温度センサ20周囲の気温が感温材層13による温度測定対象物110の温度測定に影響を与えることを防ぐことができる。
このため、フレキシブル温度センサ20及びフレキシブル温度センサ20を用いて組み立てた温度測定表示装置は、温度測定対象物110の温度測定精度を向上できる。
【0045】
第1実施形態のフレキシブル温度センサ10及び第2実施形態のフレキシブル温度センサ20は、空隙部14b、21b内に空気以外のガスを封入した構成や、空隙部14b、21b内が真空である構成も採用可能である。
空隙部14b、21b内に封入するガスは、熱伝導率が、樹脂層14a、21a及びフィルム基材11の熱伝導率に比べて低いものを採用する。また、空隙部14b、21b内に封入するガスは、センサ基板15のフィルム基材11、金属配線部12、感温材層13や、樹脂層14a、21aの劣化を防ぐ点で、N2、Arといった不活性ガス、二酸化炭素等であることが好ましい。
【0046】
第2実施形態のフレキシブル温度センサ20の空隙部21bは、例えば、加熱溶融状態の樹脂層21aの形成樹脂中に、ガス供給ノズルからのガス供給によって空気あるいは空気以外のガスの気泡を混入させ、気泡混入状態の樹脂を冷却固化し樹脂層21aを成形することで確保(形成)できる。この場合、樹脂層21a中の気泡によって空隙部21bが確保される。
また、第2実施形態のフレキシブル温度センサ20の空隙部21bは、加熱溶融状態の樹脂層21aの形成樹脂中に熱分解型あるいは反応型の発泡剤を混入し、発泡剤からの発生ガスによって気泡混入状態とした樹脂を冷却固化し樹脂層21aを成形することで確保(形成)しても良い。この場合、樹脂層21a中の気泡によって空隙部21bが確保される。
【0047】
図1、
図3に示すように、フレキシブル温度センサ10、20のフィルム基材11の第1主面11aにおける感温材層カバー部14、21によって覆われた部分11cを、以下、保護面部、とも言う。
フレキシブル温度センサ10、20は、フィルム基材11の第2主面11bを当接させた温度測定対象物110の温度を感温材層13によってフィルム基材11を介して測定する。感温材層13は、具体的には、フィルム基材11の第1主面11aにおける保護面部11cの温度(以下、フィルム保護面部温度、とも言う)を測定する。
【0048】
フレキシブル温度センサ10、20のフィルム基材11は、温度測定対象物110表面に重ね合わせるように当接することで温度測定対象物110との間の熱エネルギーの移動によって、その温度が温度測定対象物110温度と同等あるいは実質同等となる。
フレキシブル温度センサ10、20を使用した温度測定対象物110の温度測定では、フレキシブル温度センサ10、20のフィルム基材11の第2主面11bを温度測定対象物110に当接させた後、フィルム保護面部温度の安定化のための待機時間(温度安定化待機時間)を経過した後に得られる温度値(測定温度)を採用する。
【実施例】
【0049】
本発明者は、種々検証の結果、フレキシブル温度センサは、周囲の気温(以下、外気温度、とも言う)がフィルム保護面部温度との差が45℃以内の範囲で変動した場合のフィルム保護面部温度の変化量を0.35℃以下に抑制可能であることを把握した。
【0050】
本発明者は、有限要素法を用いた温度分布シミュレーションによって、外気温度がフレキシブル温度センサのフィルム保護面部温度に与える影響(フィルム保護面部温度の変化)を評価した。
温度分布シミュレーションに使用したソフトウェア及びバージョンはCOMSOL 4.2aである。
シミュレーションの結果を、以下の表1に纏めた。
【0051】
【0052】
表1の「センサ構成」欄の「構造(1)」は第1実施形態のフレキシブル温度センサ10、「構造(2)」は第2実施形態のフレキシブル温度センサ20、を指す。
実施例1~4は第1実施形態のフレキシブル温度センサ10、実施例5~7は第2実施形態のフレキシブル温度センサ20、を適用してシミュレーションを行なった。
比較例1では、第1実施形態のフレキシブル温度センサから感温材層カバー部を省略した構成のフレキシブル温度センサを適用して評価を行なった。
比較例2では、第1実施形態のフレキシブル温度センサについて感温材層カバー部を空隙部確保のための凹部が形成されていないシート状の樹脂層に変更した構成のフレキシブル温度センサを適用して評価を行なった。
【0053】
本発明者は、試作したフレキシブル温度センサを用いた温度計測実験によって、外気温度がフレキシブル温度センサのフィルム保護面部温度に与える影響(フィルム保護面部温度の変化)を評価することも検討した。
温度計測実験に使用するフレキシブル温度センサは以下の方法により作製した。
【0054】
[感温材料の合成]
PEDOT/PSS 1.3wt%水分散液(SIGMA-ALDRICH製、型番:483095)にカーボンナノチューブ(SIGMA-ALDRICH製、)を重量比1:1で混合し、室温下で約3分間撹拌し、感温材料(PEDOT/PSS:CNT(CNTはカーボンナノチューブを指す)混合液)を得た。
【0055】
[温度センサの製造]
ポリエチレンテレフタレートフィルム(三菱ケミカル社製、厚み:12μm)上に、スクリーン印刷にて銀ペースト(アサヒ化学研究所製、型番:SW-1600C)を用いて70℃で30分乾燥させることにより銀配線(金属配線部)を形成した。更に、銀配線上に型形成した粘着テープをマスクとして上記感温材料(PEDOT/PSS:CNT混合液)を塗布、70℃で30分乾燥し、感温材層を膜状に形成した。
また、シリコーンゴム液(東レ・ダウコーニング社製、Sylgard184)の主剤と硬化剤とを10:1の比率で混合撹拌したものをアクリル板で形成した型に流し込み、70℃60分乾燥を行い、シリコーンゴム成形品(フレキシブル温度センサの樹脂層を構成する部材)を形成した。シリコーンゴム成形品をアクリル型から取り出した後、シリコーンゴム成形品の片面の外周部に上記シリコーンゴム液を塗布し、シリコーンゴム液塗布層をポリエチレンテレフタレートフィルムの感温材層の周囲に位置する部分に当接(銀配線が存在する箇所では銀配線にも当接)させてシリコーンゴム成形品をポリエチレンテレフタレートフィルム上に設置した。その後、シリコーンゴム液を室温にて24時間放置し硬化させて、シリコーンゴム成形品をポリエチレンテレフタレートフィルムに取り付け、フレキシブル温度センサを得た。
【0056】
実施例及び比較例について実施したシミュレーションでは、フレキシブル温度センサのフィルム基材11の第2主面11b温度(表1の「設定温度」)を35℃または39℃、外気温度を-10℃、40℃、26℃から選択したものに設定して、フレキシブル温度センサのフィルム保護面部温度(表1の「測定温度」)を求めた。
シミュレーションは、フレキシブル温度センサのフィルム基材11の第2主面11b(以下、フィルム基材底面、とも言う)を温度測定対象物に当接した状態ではフィルム基材底面温度が対象物温度と同じ温度になるものとして、フィルム基材底面の温度を設定して実施した。シミュレーションにおけるフィルム基材底面の温度設定は、表1の温度測定対象物の「設定温度」の設定に相当する。表1の対象物温度の「設定温度」は、シミュレーションにおいてはフィルム基材底面の設定温度を指す。
シミュレーションでは、温度測定対象物110温度は、外気と温度測定対象物110との間の熱エネルギーの移動や、フレキシブル温度センサと温度測定対象物110との間の熱エネルギーの移動が生じても、設定温度から変動しない設定とした。
【0057】
表1の「設定温度」は、シミュレーションにて設定するフィルム基材底面の温度を指す。
フレキシブル温度センサのフィルム基材底面は温度測定対象物表面に直接当接される。温度測定対象物表面に当接されたフィルム基材底面の温度は温度測定対象物表面の温度と実質的に同等となる。表1では、シミュレーションにおけるフィルム基材底面の温度を温度測定対象物表面の温度(対象物温度)に相当するものとして使用した。
表1の「測定温度」は、シミュレーションおいてフィルム基材底面の設定温度及び外気温度を作用させたフレキシブル温度センサのフィルム基材11の保護面部温度を指す。
【0058】
なお、シミュレーションでは、フレキシブル温度センサのフィルム基材11の第2主面11bとフレキシブル温度センサ周囲の空気との間での直接的な熱エネルギーの移動は無いものとして設定した。
【0059】
以下、実施例1~7、比較例1、2について説明する。
実施例1~7、比較例1、2のフレキシブル温度センサのそれぞれの具体的構成、及び設定温度(シミュレーションにおけるフレキシブル温度センサのフィルム基材底面の設定温度)は以下の通りである。
なお、実施例6、7については、フレキシブル温度センサの構成に違いが無く、フレキシブル温度センサのフィルム基材底面の設定温度のみが相違する関係となっている。
【0060】
(実施例1)
フィルム基材について、材質はポリエチレンテレフタレート、厚みは12μmとした。このフィルム基材について、熱伝導率を0.2W/mK、密度を910kg/m3、定圧比熱容量を1600J/kgKとした。
金属配線部及び感温材層に関する条件入力は無い。シミュレーションは金属配線部及び感温膜が存在しないものとして実施した。
感温材層カバー部の樹脂層の材質はPDMS(ジメチルポリシロキサン)とした。この樹脂層について、熱伝導率を0.2W/mK、密度を970kg/m3、定圧比熱容量を1700J/kgKとした。
【0061】
感温材層カバー部の空気層の厚み(表1の「厚み」欄内の「空気層」欄)は0.5mm、樹脂層の厚み(表1の「厚み」欄内の「樹脂層」欄)は0.5mmである。
【0062】
図1に示すフレキシブル温度センサ10の感温材層カバー部14の樹脂層14aの凹部14cには、フィルム基材11の第1主面11aに平行に延在する底面14d(以下、凹部底面、とも言う)が形成されている。樹脂層14aの凹部底面14dが位置する部分は、その全体にわたって一定の厚み(フィルム基材11面方向に垂直の方向(
図1上下方向)の寸法)で延在形成されている。
感温材層カバー部の空気層の厚み(表1の「厚み」欄内の「空気層」欄)は、
図1に示すフレキシブル温度センサ10におけるフィルム基材11の第1主面11aと樹脂層14aの凹部底面14dとの間の離隔距離である。
感温材層カバー部の樹脂層の厚み(表1の「厚み」欄内の「樹脂層」欄)は、
図1に示すフレキシブル温度センサ10の樹脂層14aの凹部底面14dが位置する部分の厚み(フィルム基材11面方向に垂直の方向(
図1上下方向)の寸法)である。
【0063】
感温材層カバー部の空隙部はその内部が空気で満たされているものとして条件入力した。
感温材層カバー部の空隙部内の空気の物性について、COMSOL 4.2aのパラメータを使用した。
また、実施例1ではフレキシブル温度センサのフィルム基材底面の設定温度を35℃としてシミュレーションを行なった。
【0064】
(実施例2)
実施例1のフレキシブル温度センサについて、空気層の厚み(表1の「厚み」欄内の「空気層」欄)を1.0mm、感温材層カバー部の樹脂層の厚み(表1の「厚み」欄内の「樹脂層」欄)を1.0mm、に変更したものを実施例2とした。
シミュレーションにおけるフィルム基材底面の設定温度は35℃(実施例1と同じ)である。
【0065】
(実施例3)
実施例2のフレキシブル温度センサについて、感温材層カバー部の樹脂層の厚み(表1の「厚み」欄内の「樹脂層」欄)を2.0mmに変更したフレキシブル温度センサを適用した。フィルム基材底面の設定温度は39℃に設定した。
【0066】
(実施例4)
実施例1のフレキシブル温度センサについて、感温材層カバー部の樹脂層の厚み(表1の「厚み」欄内の「樹脂層」欄)を1.0mmに変更したフレキシブル温度センサを適用した。フィルム基材底面の設定温度は39℃に設定した。
【0067】
(実施例5)
実施例5は、
図3に示す第2実施形態のフレキシブル温度センサ20の使用を想定した実施例である。
実施例5は、実施例1について、空気層の厚み(表1の「厚み」欄内の「空気層」欄)、感温材層カバー部の樹脂層の厚み(表1の「厚み」欄内の「樹脂層」欄)にかえて、
図3に示すフレキシブル温度センサ20の感温材層カバー部21に関する条件を設定(入力)したものである。但し、感温材層カバー部21に関する条件設定は、
図4に示す設定モデルに基づいて行なった。
実施例5の感温材層カバー部21に関する条件設定以外の入力条件は実施例1と同様である。
【0068】
図4は実施例5における感温材層カバー部21に関する設定条件を説明する図である。
感温材層カバー部21の樹脂層21aの材質、熱伝導率、密度、定圧比熱容量は実施例1と同じに設定(入力)した。
空隙部21bは、その内部が空気で満たされている直径(
図4中、符号d)2mmの球形、であるものとして条件入力した。シミュレーションにおいて空隙部内の空気については、COMSOL 4.2aのパラメータを使用した。
【0069】
図4の上下方向は樹脂層21aの厚み方向である。
図4において、樹脂層21a厚み方向に垂直の方向を、以下、樹脂層面方向、とも言う。
図4において、空隙部21bは、感温材層カバー部21の樹脂層21aに、0.1mmの間隔sを確保して樹脂層面方向に1列に複数配列した空隙列を複数並列に形成している。空隙列を形成する空隙部21bの配列方向は全ての空隙列について互いに平行である。樹脂層21aについて、空隙列を形成する空隙部21bの配列方向に一致する方向(
図4左右方向)を、以下、列延在方向、とも言う。
【0070】
樹脂層21aには、空隙列が0.1mmの列間間隔を確保して樹脂層面方向に互いに並列に複数配列された列ユニットが形成されている。列ユニットの各空隙列は、樹脂層21aの列延在方向における空隙部21bの位置を互いに同じに揃えて形成されている。
樹脂層21aには、複数の列ユニットが、樹脂層厚み方向に0.1mmの間隔y(ユニット間間隔)を確保して形成されている。但し、樹脂層厚み方向に互いに隣り合う列ユニットの空隙部21bは、空隙列における空隙部21bの配列ピッチの半分の寸法だけ列延在方向に位置を互いにずらして形成されている。また、樹脂層厚み方向に互いに隣り合う列ユニットの空隙部21bは、列ユニットにおける空隙列の間隔方向において、空隙列の配列ピッチの半分の寸法だけ位置を互いにずらして形成されている。
【0071】
表1の「厚み」欄内の「空気含有樹脂層」欄は、
図4の感温材層カバー部21の厚み(
図4上下方向の寸法)である。表1における実施例5~7の「厚み」欄内の「空気+樹脂合計」欄の数値は「空気含有樹脂層」欄と同じ数値となる。
実施例5では、感温材層カバー部21の厚み(表1の「厚み」欄内の「空気含有樹脂層」欄の数値)を1.0mmに設定(入力)した。
なお、実施例5のシミュレーションにおけるフィルム基材底面の設定温度は35℃(実施例1と同じ)である。
【0072】
(実施例6)
実施例5のフレキシブル温度センサについて、感温材層カバー部の厚み(表1の「厚み」欄内の「空気含有樹脂層」欄)を2.0mmに変更したフレキシブル温度センサを適用した。シミュレーションにおけるフィルム基材底面の設定温度は35℃(実施例1と同じ)である。
【0073】
(実施例7)
実施例6についてフレキシブル温度センサの構成を変更せず、設定温度を39℃に変更してシミュレーションを行ったものを実施例7とした。
【0074】
(比較例1)
実施例1のフレキシブル温度センサから感温材層カバー部を省略(表1の「厚み」欄内の「空気層」欄及び「樹脂層」欄の数値無し)した構成のフレキシブル温度センサを適用した。シミュレーションにおけるフィルム基材底面の設定温度は39℃である。
【0075】
(比較例2)
実施例2について空隙部を省略(表1の「厚み」欄内の「空気層」欄の数値無し)したものを比較例2とした。
なお、比較例2の温度測定対象物110の設定温度は35℃である。
【0076】
表1では、各実施例及び各比較例について、設定温度及び測定温度に加えて、設定温度と測定温度との差の絶対値(表1の「変化温度」欄の数値)も纏めて記載した。
表1に示すように、実施例1、2、5、6、比較例2については、-10℃、40℃の2通りの外気温度のそれぞれについて、設定温度と測定温度との差(変化温度)を求めた。
実施例3、4、7、比較例1については、外気温度26℃の環境下における設定温度と測定温度との差(変化温度)を求めた。
【0077】
表1の実施例1~7、比較例1、2について、フレキシブル温度センサの総厚(表1の「厚み」欄内の「空気+樹脂層合計」欄の数値と、フィルム基材の厚み(1.2μm)との合計)が0.1mm以上、3.2mm以下、かつ設定温度と測定温度との差が0.00℃以上、0.35℃以下、の評価条件に適合するか否かを評価した。
【0078】
実施例1~7は、いずれも、評価条件に適合するものであった。
比較例1、2は、いずれも、評価条件に適合しないものであった。
表1に示すように、設定温度35.00℃、外気気温-10℃の場合において、比較例2の測定温度は実施例1、2、6、7に比べて低かった。設定温度35.00℃、外気気温40℃の場合において、比較例2の測定温度は実施例1、2、6、7に比べて高かった。
比較例1の測定温度は実施例3、4、7の測定温度よりも低く、温度測定対象物の設定温度(39℃)に対する変化温度(温度変化量)が実施例3、4、7に比べて大きかった。
実施例1~7については、初期対象物温度と測定温度との差が0.1℃に満たない大きさであり、比較例1、2との対比で、外気温度変化が温度測定精度に与える影響が格段に小さいことを把握できた。
【0079】
本発明に係る実施形態のフレキシブル温度センサは、空隙部内の空気が、外気温度変化が感温材層による温度測定に影響を与えることを防ぐ役割を果たす。
その結果、本発明に係る実施形態のフレキシブル温度センサは、フィルム基材を貼付した温度測定対象物側とは逆側の面全体が大気中に露呈した使用状態であっても、周囲の気温の影響を受けにくく、高い温度測定精度を確保できる。
【0080】
このフレキシブル温度センサは、例えば人体表面にフィルム基材の第2主面を重ね合わせて貼付することで、人体の測定部位に挟み込まず、人体とは逆側の面全体がセンサ周囲の空気中に露呈した状態であっても、高い温度測定精度を確保できる。
また、このフレキシブル温度センサは、例えば、回路基板や電子機器筐体、電動モータ等の原動機、流体配管、化学プラントの反応槽等、の人体以外の種々の温度測定対象物にフィルム基材の第2主面を重ね合わせて貼付して温度測定に使用できる。
【0081】
また、本発明に係る実施形態のフレキシブル温度センサは、外気温度の変動がフィルム保護面部温度から45℃以内であれば、フィルム保護面部温度の変動を0.35℃以下とすることができる。
このフレキシブル温度センサは、フィルム保護面部温度が33~42℃であるときに、フィルム保護面部温度から45℃以内の外気温度の変動に対するフィルム保護面部温度を0.35℃よりも小さく抑えることに有利であり、フィルム保護面部温度の変動をより確実に0.35℃以下とすることができる。フィルム保護面部温度が35~39℃であるときは、フィルム保護面部温度が33~42℃であるときに比べて、フィルム保護面部温度から45℃以内の外気温度の変動に対するフィルム保護面部温度を小さく抑えることに有利である。
フィルム保護面部温度から45℃以内の外気温度変動に対するフィルム保護面部温度の変動を0.35℃以下とする点では、フィルム保護面部温度(外気温度変動前のフィルム保護面部温度)は20~50℃であることが好ましく、30~45℃であることがより好ましく、33~42℃であることがさらに好ましい。
【0082】
以上、本発明を最良の形態に基づいて説明してきたが、本発明は上述の最良の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。
感温材層カバー部は、樹脂層のフィルム基材側の面に形成された凹部によって確保された空隙部、及び樹脂層内に位置(内在)する空隙部、の両方を有する構成も採用可能である。
フレキシブル温度センサにおいて感温材層カバー部の樹脂層のフィルム基材側の面に形成された凹部によって確保された空隙部はひとつに限定されず、複数であっても良い。
感温材層カバー部は、樹脂層に、感温材層に沿って延在する空隙部が内在する構成も採用可能である。
【符号の説明】
【0083】
10…フレキシブル温度センサ、11…フィルム基材、11a…第1主面、11b…第2主面、11c…保護面部、12…金属配線部、13…感温材層、14…感温材層カバー部、14a…樹脂層、14b…空隙部、14c…凹部、15…センサ基板、20…フレキシブル温度センサ、21…感温材層カバー部、21a…樹脂層、21b…空隙部、50…温度測定表示装置、51…信号線、52…測定結果表示部、52a…温度表示器52a、52b…表示器制御部、52c…外装ケース、53…コントローラ。