(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-13
(45)【発行日】2022-04-21
(54)【発明の名称】マスク収納装置と、これを含む成膜装置
(51)【国際特許分類】
C23C 14/04 20060101AFI20220414BHJP
C23C 14/56 20060101ALI20220414BHJP
H05B 33/10 20060101ALI20220414BHJP
H01L 51/50 20060101ALI20220414BHJP
【FI】
C23C14/04 A
C23C14/56 G
H05B33/10
H05B33/14 A
(21)【出願番号】P 2020200879
(22)【出願日】2020-12-03
【審査請求日】2020-12-10
(31)【優先権主張番号】10-2019-0170750
(32)【優先日】2019-12-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】591065413
【氏名又は名称】キヤノントッキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】特許業務法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】菅原 洋紀
【審査官】今井 淳一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/001930(WO,A1)
【文献】特開2019-189939(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 14/04
C23C 14/56
H05B 33/10
H01L 51/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
成膜室において真空状態で蒸発源から蒸発された蒸着材料が蒸着パターンを介して被蒸着体である基板に蒸着される蒸着処理に使用され得る前記蒸着パターンが設けられたマスクを、前記成膜室と共に真空状態に維持されて収納するマスク収納装置であって、
鉛直方向に延びる回転軸と、
それぞれが
前記マスクを
複数収納する複数のマスク収納容器と、を含み、
前記複数のマスク収納容器は、前記回転軸の周囲であって、前記鉛直方向に垂直な面の異なる位置に配置され、
前記複数のマスク収納容器は、前記回転軸の周りを回転するように構成されたことを特徴とするマスク収納装置。
【請求項2】
前記複数のマスク収納容器は、前記回転軸の周囲にリボルバ状に配置されることを特徴とする請求項1に記載のマスク収納装置。
【請求項3】
前記複数のマスク収納容器は、前記回転軸を中心として同一円周上に配置されることを特徴とする請求項1に記載のマスク収納装置。
【請求項4】
前記回転軸には、前記回転軸から前記複数のマスク収納容器のそれぞれが配置される方向に延設された連結軸が連結され、
前記複数のマスク収納容器のそれぞれは、前記連結軸により前記回転軸に接続されることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のマスク収納装置。
【請求項5】
前記複数のマスク収納容器を前記鉛直方向に昇降させるための昇降機構をさらに含むことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のマスク収納装置。
【請求項6】
前記昇降機構は、前記複数のマスク収納容器を前記鉛直方向に、それぞれ個別に昇降させることを特徴とする請求項5に記載のマスク収納装置。
【請求項7】
前記昇降機構は、前記回転軸を昇降させる昇降シリンダであることを特徴とする請求項5に記載のマスク収納装置。
【請求項8】
前記昇降機構は、前記回転軸と前記マスク収納装置の底面との間に設置されることを特徴とする請求項
7に記載のマスク収納装置。
【請求項9】
前記昇降機構は、前記回転軸と前記マスク収納装置の天井との間に設置されることを特徴とする請求項
7に記載のマスク収納装置。
【請求項10】
前記マスク収納容器は、前記マスクを前記鉛直方向に多段式に収納可能なカセットであることを特徴とする請求項1から
9のいずれか1項に記載のマスク収納装置。
【請求項11】
成膜室において真空状態で蒸発源から蒸発された蒸着材料が蒸着パターンを介して被蒸着体である基板に蒸着される蒸着処理に使用され得る前記蒸着パターンが設けられたマスクを、前記成膜室と共に真空状態に維持されて収納するマスク収納装置であって、
それぞれが
前記マスクを
複数収納する複数のマスク収納容器を含み、
前記複数のマスク収納容器は、水平方向に並び配され、マスク受け渡し位置に入れ替わりで水平移動するように構成されたことを特徴とするマスク収納装置。
【請求項12】
前記複数のマスク収納容器は、同一円周上に配置されることを特徴とする請求項
11に記載のマスク収納装置。
【請求項13】
前記複数のマスク収納容器を鉛直方向に昇降させるための昇降機構をさらに含むことを特徴とする請求項
11または
12に記載のマスク収納装置。
【請求項14】
前記昇降機構は、前記複数のマスク収納容器を前記鉛直方向に、それぞれ個別に昇降させることを特徴とする請求項13に記載のマスク収納装置。
【請求項15】
前記昇降機構は、昇降シリンダであることを特徴とする請求項
13に記載のマスク収納装置。
【請求項16】
前記マスク収納容器は、前記マスクを鉛直方向に多段式に収納可能なカセットであることを特徴とする請求項
11から
15のいずれか1項に記載のマスク収納装置。
【請求項17】
前記マスクを収納する請求項1から
16のいずれか1項に記載の
前記マスク収納装置と、前記マスク収納装置から受け渡された前記マスクを使用し
前記基板に
前記蒸着処理により成膜を行う
前記成膜室とを含む成膜装置であって、
前記マスク収納装置からの前記マスクの搬送と、前記成膜室内での成膜工程を制御する制御部を含み、
前記制御部は、前記成膜室で前記基板と前記マスクの位置合わせをするアライメント動作が行われる間には、前記マスク収納装置内で前記複数のマスク収納容器を移動させないように制御することを特徴とする成膜装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マスクなどの処理体を収納する処理体収納装置と、これを含む成膜装置に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、フラットパネル表示装置として有機EL表示装置が脚光を浴びている。有機EL表示装置は自発光ディスプレイであり、応答速度、視野角、薄型化などの特性が液晶パネルディスプレイより優れており、モニタ、テレビ、スマートフォンに代表される各種携帯端末などで既存の液晶パネルディスプレイを早いスピードで代替している。また、自動車用ディスプレイ等にも、その応用分野を広げている。
【0003】
有機EL表示装置の素子は、2つの向かい合う電極(カソード電極、アノード電極)の間に発光を起こす有機物層が形成された基本構造を持つ。有機ELディスプレイ素子の有機物層と電極金属層は、真空チャンバー内で、画素パターンが形成されたマスクを介して基板に蒸着物質を蒸着することで製造される。
【0004】
基板に対する蒸着(成膜)工程が繰り返し行われることにつれ、マスク上には蒸着材料の残留物が次第に付着されるので、マスクは、所定枚数の基板の蒸着が終わったら、新しいマスクに交換される必要がある。このマスクの交換のため、通常、成膜室の隣には、蒸着処理に使用される前の新しいマスクと使用済みのマスクを収納する収納装置としてのマスクストック装置が設けられている。マスクストック装置へのマスクの搬入及び搬出は、通常、搬送ロボットによって行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このようなマスクを収納するマスクストック装置の構造を改善することで、より安定した姿勢で、より多くのマスクを収納できるようにし、かつ、内部に配置されるカセットの交換頻度を減らすことで、交換時のパーティクルの影響も抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下の構成を採用する。すなわち、
成膜室において真空状態で蒸発源から蒸発された蒸着材料が蒸着パターンを介して被蒸着体である基板に蒸着される蒸着処理に使用され得る前記蒸着パターンが設けられたマスクを、前記成膜室と共に真空状態に維持されて収納するマスク収納装置であって、
鉛直方向に延びる回転軸と、
それぞれが前記マスクを複数収納する複数のマスク収納容器と、を含み、
前記複数のマスク収納容器は、前記回転軸の周囲であって、前記鉛直方向に垂直な面の異なる位置に配置され、
前記複数のマスク収納容器は、前記回転軸の周りを回転するように構成されたことを特徴とするマスク収納装置である。
本発明はまた、以下の構成を採用する。すなわち、
成膜室において真空状態で蒸発源から蒸発された蒸着材料が蒸着パターンを介して被蒸着体である基板に蒸着される蒸着処理に使用され得る前記蒸着パターンが設けられたマスクを、前記成膜室と共に真空状態に維持されて収納するマスク収納装置であって、
それぞれが前記マスクを複数収納する複数のマスク収納容器を含み、
前記複数のマスク収納容器は、水平方向に並び配され、マスク受け渡し位置に入れ替わりで水平移動するように構成されたことを特徴とするマスク収納装置である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、より安定した姿勢で、より多くのマスクを収納することができ、内部に配置されるカセットの交換頻度を減らすことで、交換時のパーティクルの影響も抑制することができる。
なお、ここに記載された効果は必ずしも限定されるものではなく、本開示中に記載されたいずれかの効果であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、有機EL表示装置の製造ラインの一部の模式図である。
【
図2】
図2は、成膜室の構成を概略的に示す図である。
【
図3】
図3は、マスクを収納する収納容器としてのカセットを示す図である。
【
図4】
図4は、従来のマスクストック装置を示した側断面図である。
【
図5】
図5は、本発明に係るマスクストック装置を示したもので、
図5(a)は側断面図、
図5(b)は上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、本発明の好ましい実施形態及び実施例を説明する。ただし、以下の実施形態及び実施例は、本発明の好ましい構成を例示的に表すものであり、本発明の範囲は、これらの構成に限定されない。また、以下の説明において、装置のハードウェア構成及びソフトウェア構成、処理の流れ、製造条件、大きさ、材質、形状等は、特に特定的な記載がない限り、本発明の範囲をこれに限定しようとする趣旨ではない。
【0011】
本発明は、基板の表面に各種材料を堆積させて成膜を行う装置に適用することができ、真空蒸着によって所望のパターンの薄膜(材料層)を形成する装置に好ましく適用することができる。基板の材料としては、ガラス、高分子材料のフィルム、シリコンウェハ、金属などの任意の材料を選択することができ、基板は、例えば、ガラス基板上にポリイミドなどのフィルムが積層された基板であってもよい。また、蒸着材料としても、有機材料、金属性材料(金属、金属酸化物など)などの任意の材料を選択してもいい。なお、以下の説明において説明する真空蒸着装置以外にも、スパッタ装置やCVD(Chemical
Vapor Deposition)装置を含む成膜装置にも、本発明を適用することができる。本発明の技術は、具体的には、有機電子デバイス(例えば、有機発光素子、薄膜太陽電池)、光学部材などの製造装置に適用可能である。その中でも、蒸着材料を蒸発させてマスクを介して基板に蒸着させることで有機発光素子を形成する有機発光素子の製造装置は、本発明の好ましい適用例の一つである。
【0012】
<電子デバイス製造ライン>
図1は、電子デバイスの製造ラインの構成の一部を模式的に図示した平面図である。
図1の製造ラインは、例えば、スマートフォン用の有機EL表示装置の表示パネルの製造に用いられる。スマートフォン用の表示パネルの場合、例えば、第4.5世代の基板(約700mm×約900mm)や第6世代のフルサイズ(約1500mm×約1850mm)又はハーフカットサイズ(約1500mm×約925925mm)の基板に有機EL素子形成のための成膜を行った後、該基板を切り抜いて複数の小さなサイズのパネルに製作する。VR-HMD用の表示パネルの場合、例えば、所定のサイズ(例えば、300mm)のシリコンウェハに有機EL素子の形成のための成膜を行った後、素子形成領域の間の領域(スクライブ領域)に沿って該シリコンウェハを切り抜いて複数の小さなサイズのパネルを製作する。
【0013】
有機EL表示装置の製造ラインの一般的な成膜クラスタ1は、
図1に示すように、基板Sに対する処理(例えば、成膜)が行われる複数の成膜室11と、使用前後のマスクMが収納される複数のマスクストック装置12と、その中央に配置される搬送室13を具備する。
【0014】
搬送室13内には、複数の成膜室11の間で基板Sを搬送し、成膜室11とマスクストック装置12との間でマスクMを搬送する搬送ロボット14が設置される。搬送ロボット14は、例えば、多関節アームに、基板S又はマスクMを保持するロボットハンドが取り付けられた構造を有するロボットである。
【0015】
成膜クラスタ1には、基板Sの流れ方向において上流側からの基板Sを成膜クラスタ1に伝達するパス室15と、該成膜クラスタ1で成膜処理が完了した基板Sを下流側の他の成膜クラスタに伝えるためのバッファ室16が連結される。搬送室13の搬送ロボット14は、上流側のパス室15から基板Sを受け取って、当該成膜クラスタ1内の成膜室11の一つ(例えば、成膜室11a)に搬送する。また、搬送ロボット14は、当該成膜クラスタ1での成膜処理が完了した基板Sを複数の成膜室11の一つ(例えば、成膜室11b)から受け取って、下流側に連結されたバッファ室16に搬送する。バッファ室16とパス室15との間には、基板Sの方向を変える旋回室17が設けられる。これにより、上流側成膜クラスタと下流側成膜クラスタで基板の方向が同一になって、基板処理が容易になる。バッファ室16、旋回室17、パス室15は、成膜クラスタ間を連結する、いわゆる中継装置であり、成膜クラスタの上流側及び/又は下流側に設置される中継装置は、バッファ室、旋回室、パス室のうち少なくとも1つを含む。
【0016】
成膜室11、マスクストック装置12、搬送室13、バッファ室16、旋回室17などの各チャンバーは、有機EL表示パネルの製造過程で、高真空状態に維持される。
成膜クラスタ1は、制御部19を含んでいてもよい。制御部19はCPUやメモリなどの演算資源を持つ情報処理装置であり、例えばコンピュータやFPGA、ASICなどにより構成できる。制御部19は成膜クラスタ1内の各装置と有線または無線で接続され、マスク交換、マスクの搬送、アライメント、成膜室内での成膜工程などの処理を制御する。制御部19がプログラムやユーザの指示に従って動作することで実施例の処理が実現される。なお、制御部を構成する情報処理装置の数は単数でもよいし、複数の情報処理装置が連携して動作してもよい。
【0017】
図2を参照して、成膜室11の構成と成膜室11で行われる蒸着工程について説明する。
図2(a)に示したように、成膜室11は、基板Sに対して蒸着物質を蒸発させて放出する蒸発源ユニット100を含む。蒸発源ユニット100は、蒸着物質を収容する収容部と、蒸着物質を加熱して蒸発させるための加熱部などで構成された蒸発源110を含む。蒸発源110は、基板Sの蒸着面を向かって蒸着材料を放出する放出孔あるいはノズルを複数備える構造を持つが、これに限らず、基板S、マスクMのパターン、蒸着物質の種類等に合わせて、適宜選定すればよく、例えば、点(point)蒸発源や線状(linear)蒸発源、小型の蒸着物質収容部に、蒸着材料を放出する複数の放出孔を持つ拡散室を接続した構造の蒸発源などを用いてもよい。
【0018】
また、成膜室11は、
図2(b)に示されたように、膜厚モニタ114、膜厚計113、電源116、基板ホルダー111、マスクホルダー112などの他の構成部品を更に含むことができる。膜厚モニタ114は、蒸発源110から放出された蒸着材料の蒸発レートをモニタする。膜厚計113は、膜厚モニタ114からの入力信号を受けて膜厚を計測する。電源116は、蒸発源110に設けられた加熱装置を制御する。基板ホルダー111は、基板Sを保持し、基板SをマスクMや蒸発源に対して相対的に移動させることができる。マスクホルダー112は、マスクMを保持し、マスクMを基板Sや蒸発源110に対して相対的に移動させることができる。図示した成膜室11は、一つのチャンバー内に2つの基板Sが搬入され、その中の一つの基板Sに対して蒸着が行われる間(例えば、A側ステージ)に、他の基板Sに対しては(例えば、B側ステージ)、マスクMと基板S間の整列(アライメント)が行われる、いわゆる「デュアルステージ」構成の成膜室である
が、成膜室は、一つの基板が搬入され、アライメントおよび蒸着後、搬出される「シングルステージ」構成であっても良い。
【0019】
成膜室11内での蒸着工程は以下のような過程を介して行われる。蒸着対象である基板Sと蒸着パターンが形成されているマスクMをそれぞれ前述の搬送ロボット14によって成膜室11内に搬入して、基板ホルダー111及びマスクホルダー112上にそれぞれ配置する。続いて、マスクMに形成されたアライメントマークと基板Sに形成されたアライメントマークを利用し、マスクMと基板Sとのアライメントを行う。マスクMと基板Sとのアライメントは、基板ホルダー111を移動制御し基板を移動させて行ってもいいし、マスクホルダー112を移動制御しマスクを移動させて行ってもよい。アライメント終了後、蒸発源110のシャッターを開けて、蒸発源110に接続された回転移動部115を動かしながら、マスクMのパターンに沿って基板Sに成膜材料を蒸着する。この時、水晶振動子などの膜厚モニタ114は、蒸発レートを計測し、膜厚計113で膜厚に換算する。膜厚計113で換算された膜厚が目標膜厚になるまで蒸着を続ける。膜厚計113で換算した膜厚が目標膜厚に達すると、蒸発源110のシャッターを閉じ蒸着を終了する。
【0020】
<処理体収納装置>
以下、このような有機EL表示装置の製造ラインで使用できる、本発明に係る処理体収納装置の構造を、マスクストック装置12を例として説明する。
マスクMには、所定の蒸着パターンが形成されており、蒸発源から蒸発された蒸着材料は、このマスクMの蒸着パターンを介して被蒸着体である基板S上に蒸着される。蒸着(成膜)工程が繰り返し行われることにつれ、マスクM上には蒸着材料の残留物が徐々に付着されるが、この蒸着残留物によってマスクMの開口が詰まることで、基板Sに形成される蒸着パターンの精度が落ちる原因となり得る。このため、マスクMは所定枚数の基板Sに対する蒸着が行われたら、新しいマスクに交換する必要がある。
【0021】
マスクストック装置12は、このマスクM交換のために、蒸着処理に使われる前の新しいマスクと使用済みのマスクを収納する収納装置としての役割をする。つまり、使用済みのマスクは、前述した搬送室13の搬送ロボット14により成膜室11からマスクストック装置12内に搬送されて収納され、新しいマスクがマスクストック装置12から搬出され成膜室11内のマスクホルダー112に載置される。
【0022】
具体的に、マスクストック装置12内には、マスクMを収納する処理体収納容器としてのカセットが配置される。
図3は、カセット210の構成を示した正面図である。カセット210は、複数のマスクMが収納可能な複数の段(図示した例では、4段)構造となっている。つまり、カセット210は、カセットの両側壁にマスクMの両端を支持できる支持部211が上下に複数段設置された多段式となっており、これら支持部211段の間の空間に前述した搬送ロボット14のロボットハンドが進入し、カセットへのマスクMの搬入(または、カセットからのマスクMの搬出)を行うようになっている。
【0023】
図4は、このようなカセットが配置される従来のマスクストック装置120の構成を示す側面図である。
図4に示す従来のマスクストック装置120には、カセット205、215が配置される。成膜室11との間でのマスク搬出入についての理解を容易にするため、搬送室13を経て、成膜室11に接続されている様子を示している。
【0024】
図4に示す従来のマスクストック装置120では、マスクの収納容量を増加させるために、前述したカセットをマスクストック装置120の内部に上下に複数積層して配置していた。図示された例は、上下に2つのカセット205、215が配置されている例である。上下に積層配置されたカセット205、215は、図示していない昇降機構に接続されて、昇降機構の駆動によりマスクストック装置120の略中央高さの位置に設けられたマ
スク搬送口300に向かって昇降される。
【0025】
例えば、上下積層のカセット205、215において一番上のマスク収納位置からマスクを搬出(または、該位置にマスクを搬入)しようとする場合には、
図4(a)に図示されたように、積層されたカセット205,215をマスクストック装置120の底の位置まで下降させた後、搬送室13から搬送ロボット14を進入させマスクを受け渡す。また、上下積層のカセット205、215において一番下のマスク収納位置からマスクを搬出(または該位置にマスクを搬入)しようとする場合には、
図4(b)に図示されたように、積層されたカセット205、215をマスクストック装置120の天井位置まで上昇させた後、搬送室13から搬送ロボット14を進入させて、マスクを受け渡す。このようなカセット205、215の昇降機構としては、例えば、マスクストック装置120の両側壁にガイドレールを設け、このガイドレールに沿ってカセット205、215を載置したステージがモータ駆動により昇降するようにする構造などが採用される。
【0026】
このように、従来のマスクストック装置120は、カセットを上下に複数配置することで、マスク収納容量の増大を図っていた。しかし、このような従来のマスクストック装置120の構成は、マスクの交換頻度が高く、よって、より多くのマスクを安定的に収納する必要がある最近の要求には十分対応できない面がある。
【0027】
最近の有機EL表示装置は、画素密度が高くなっており(高精細化)、それによりマスク上の蒸着パターンもますます微細化されている。このような高精細用のマスクでは、蒸着材料の残留物などでマスクパターンが詰まりやすく、したがって交換頻度もかなり高いので、できるだけ多くのマスクをマスクストック装置内に収納する必要がある。
【0028】
しかし、前述した従来のマスクストック装置120のように上下にカセットを配置する構成では、マスク収納量の増大のためにカセットを大型化したり、カセットの積載段数を増やしたりする場合に、マスクストック装置120の全体的な高さが高くなってしまう。マスクストック装置120の背が高くなると、装置が建屋内に納まらない可能性があるだけでなく、全体的な重心が高いために、振動に大きく影響される。そして、この振動による影響は、成膜室にも伝わり、成膜室でのアライメント精度を落とす懸念もある。
本発明は、このような従来の問題点を改善した新しい構成のマスクストック装置を提案する。具体的に、本発明の一実施形態に係るマスクストック装置は、カセットを上下に配列する従来方式とは異なり、複数のカセットをマスクストック装置内で横に配置する。より具体的に、マスクストック装置内に、マスクを収納した複数のカセットを中央の回転軸を中心にリボルバ状(環状)に配置し、回転軸を回転させることで、搬出入対象のカセットを選択できるように構成する。
【0029】
図5は、本発明の一実施形態に係るマスクストック装置12の構成を示す図である。
図5の(a)は、前述した
図4の(a)と同様に、搬送室13を経て、成膜室11に接続されている様子を示す側断面図で、
図5の(b)は、マスクストック装置12の上面図である。
【0030】
図示したように、マスクストック装置12の中央には、回転軸250が鉛直方向に立設されており、この回転軸250の周囲にそれぞれマスクを複数の段に収納可能な複数のカセット210~240が同じ水平面内に配置されている。具体的には、複数のカセット210~240は、回転軸250を中心に同じ半径の位置にリボルバ状(環状)に配置される。回転軸250には、各カセット210~240が配置された方向に複数の連結軸260が水平方向に固定連結されており、各カセット210~240は、対応する連結軸260により回転軸250と連結され、回転軸250の回転時にともに回転できるように構成されている。つまり、複数のカセット210~240が水平面内(すなわち、鉛直方向に
垂直な面内)に横に配置され、中央に設置された回転軸250を回転させることで搬出入対象のカセットを選択することができる。
【0031】
搬送室13と接続されるマスクストック装置12の側壁の略中央高さ位置には、マスク搬送口300が設けられ、マスク搬出入のために、各カセット210~240は、マスク搬送口300に向かって昇降可能に構成される。カセット210~240を昇降させるための構成として、本発明の一実施形態では、回転軸250に昇降機構を設置している。例えば、
図5の(a)に図示されたように、回転軸250と、マスクストック装置12の底面との間に昇降駆動されるシリンダ構造体である昇降シリンダ270を設置し、この昇降シリンダ270によって回転軸250が昇降することで、回転軸250に接続された各カセット210~240が昇降するように構成することができる。このカセット210~240の昇降機構の構成は、例示的なもので、本発明はこれに限られるものではない。例えば、前述した昇降シリンダ270と同様の構成を回転軸250の上部、すなわち、回転軸250と、マスクストック装置12の天井との間に設置してもよい。また、前述した実施形態の昇降機構は、複数のカセット210~240全体を一括して昇降させる構成であるが、これに限定されず、各カセット210~240を個別に昇降させる構成であってもよい。
【0032】
このように、本発明は、複数のカセットを縦に(上下に)配置していた従来方式とは異なり、複数のカセットをマスクストック装置内で横に配置するように構成することで、マスクストック装置の全体的な重心を下げることができる。つまり、マスクストック装置の背を高くせずに、マスクの収納量を増大させることが可能になる。これにより、建屋内に装置を容易に納めることができ、また、低い重心で振動による影響も低減できるので、隣接する成膜室にてアライメント動作が行われる際の不安定も抑制することができる。
【0033】
また、マスク搬送口300の位置へのカセット210~240の昇降移動距離も短くすることができるので、マスク搬出入にかかる時間を短縮することができ、昇降駆動時の振動などの影響もより抑制することができる。また、前述した実施形態の例は、水平面内に4つのカセットを横に配置する構造であるが、水平面内に配置されるカセットの数は、例えば6個、8個などに増やすことが可能で、このように横に配置されるカセットの数を増やすことで、マスクストック装置12の高さを変えずに、マスクの収納量を容易に増大させることができる。さらに、このようにマスク収納量が増加できるので、マスクを収納したカセット自体の交換頻度は減らすことができる。したがって、カセットの交換時に行われるマスクストック装置を大気状態に開放する動作の頻度を減らすことができ、大気開放動作中に発生し得るパーティクルの流入などの影響も抑制することができる。
【0034】
また、前述したマスクストック装置12内でのカセット210~240の回転または昇降動作は、隣接の成膜室でアライメント動作が行われていない間に行われるように制御した方が、成膜室への振動伝達の抑制の観点からより好ましい。この場合、制御部19は、成膜室で基板とマスクの位置合わせをするアライメント動作が行われる間には、処理体収納装置内で複数の処理体収納容器を回転させないような制御を行う。
【0035】
以上、本発明を実施するための形態を具体的に説明したが、本発明の趣旨は、これらの記載に限定されることはなく、特許請求の範囲の記載に基づいて広く解釈されるべきである。また、これらの記載に基づいた、多様な変更、改変なども、本発明の趣旨に含まれることは言うまでもない。
【0036】
例えば、以上の説明では、マスクストック装置12に本発明を適用した例について主に説明したが、処理室での処理のため搬出入される処理体を収納する任意の処理体(例えば、基板)収納装置に対して、本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0037】
1:成膜クラスタ
11:成膜室
12、120:マスクストック装置
13:搬送室
14:搬送ロボット
M:マスク
210、220、230、240:カセット
250:回転軸
260:連結軸
270:昇降シリンダ