(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-13
(45)【発行日】2022-04-21
(54)【発明の名称】磁気ディスク装置および磁気ディスク装置を製造する方法
(51)【国際特許分類】
G11B 33/14 20060101AFI20220414BHJP
G11B 5/82 20060101ALI20220414BHJP
G11B 33/02 20060101ALI20220414BHJP
G11B 33/12 20060101ALI20220414BHJP
G11B 23/00 20060101ALI20220414BHJP
【FI】
G11B33/14 501W
G11B5/82
G11B33/02 503Z
G11B33/12 313S
G11B23/00 601F
(21)【出願番号】P 2021035203
(22)【出願日】2021-03-05
【審査請求日】2021-07-19
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000107538
【氏名又は名称】株式会社UACJ
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【氏名又は名称】木村 満
(72)【発明者】
【氏名】北脇 高太郎
(72)【発明者】
【氏名】山田 涼平
(72)【発明者】
【氏名】東藤 慎平
(72)【発明者】
【氏名】畠山 英之
【審査官】中野 和彦
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2008/139537(WO,A1)
【文献】国際公開第2006/075639(WO,A1)
【文献】特開2018-156710(JP,A)
【文献】特開2010-211909(JP,A)
【文献】特開2010-267347(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G11B 33/14
G11B 5/82
G11B 33/02
G11B 33/12
G11B 23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中央部に貫通孔を有する円盤形状の複数の磁気ディスクと、
前記磁気ディスクの間に配置され、中央部に貫通孔を有するスペーサと、
前記磁気ディスクおよび前記スペーサの貫通孔に挿入されるハブと、
前記磁気ディスクおよび前記スペーサを押し付け保持するクランプと、を備え、
前記磁気ディスクと前記スペーサまたは前記クランプとが接触する面において、前記スペーサまたは前記クランプの外周部に接する前記磁気ディスクの上面の平面高さが、前記スペーサまたは前記クランプの内周部に接する前記磁気ディスクの上面の平面高さよりも低
く、
前記スペーサは、平坦である、
ことを特徴とする磁気ディスク装置。
【請求項2】
前記磁気ディスクと前記スペーサまたは前記クランプとが接触する面において、前記スペーサまたは前記クランプの外周部に接する前記磁気ディスクの平面高さと、前記スペーサまたは前記クランプの内周部に接する前記磁気ディスクの平面高さと、の差が-3.0μm以下である、
ことを特徴とする請求項1に記載の磁気ディスク装置。
【請求項3】
少なくとも最上部に配置される前記磁気ディスクは、前記磁気ディスクと前記クランプとが接触する面において、前記クランプの外周部に接する前記磁気ディスクの上面の平面高さが、前記クランプの内周部に接する前記磁気ディスクの上面の平面高さよりも低い、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の磁気ディスク装置。
【請求項4】
中央部に貫通孔を有する円盤形状の複数の磁気ディスクと、
前記磁気ディスクの間に配置され、中央部に貫通孔を有するスペーサと、
前記磁気ディスクおよび前記スペーサの貫通孔に挿入されるハブと、
前記磁気ディスクおよび前記スペーサを押し付け保持するクランプと、
を備える磁気ディスク装置を製造する方法であって、
前記スペーサまたは前記クランプの外周部に接する前記磁気ディスクの上面の平面高さと、前記スペーサまたは前記クランプの内周部に接する前記磁気ディスクの上面の平面高さと、を測定する工程と、
前記スペーサまたは前記クランプの外周部に接する前記磁気ディスクの上面の平面高さが、前記スペーサまたは前記クランプの内周部に接する前記磁気ディスクの上面の平面高さよりも低くなる配置で、前記磁気ディスクを前記ハブに挿入する工程と、
を備えることを特徴とする磁気ディスク装置を製造する方法。
【請求項5】
前記磁気ディスクと前記スペーサまたは前記クランプとが接触する面において、前記スペーサまたは前記クランプの外周部に接する前記磁気ディスクの平面高さと、前記スペーサまたは前記クランプの内周部に接する前記磁気ディスクの平面高さと、の差が-3.0μm以下である、
ことを特徴とする請求項4に記載の磁気ディスク装置を製造する方法。
【請求項6】
少なくとも最上部に配置される前記磁気ディスクは、前記磁気ディスクと前記クランプとが接触する面において、前記クランプの外周部に接する前記磁気ディスクの上面の平面高さが、前記クランプの内周部に接する前記磁気ディスクの上面の平面高さよりも低い、
ことを特徴とする請求項4または5に記載の磁気ディスク装置を製造する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気ディスク装置および磁気ディスク装置を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
スマートフォンやスマート家電の普及により、各個人の使用するデータ量が増加している。これらの膨大なデータはインターネットを通じデータセンター内の磁気ディスク装置(HDD:Hard Disk Drive)に保存される。膨大なデータ量を記録するため、磁気ディスク装置の高容量化が求められている。
【0003】
例えば、引用文献1は、安定してSPM(スピンドルモータ)のハブに固定され、SPMが組み込まれた磁気ディスク記録装置に強い衝撃が加えられた場合であっても、破損しない情報記録媒体用ガラス基板を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
磁気ディスク装置の高容量化を実現するための一例として、磁気ディスク装置に搭載する磁気ディスクの枚数を増やし、磁気ディスク装置1台あたりのデータ領域を拡大させるという技術動向がある。磁気ディスク装置はその寸法が規格で定められているため、搭載させる磁気ディスク枚数を増やすためには、磁気ディスクの厚さを薄くするなどの工夫が必要である。磁気ディスクの厚さを薄くすると、剛性が低下し、HDDを落下させたときなど衝撃が加わった時に、磁気ディスクが変形しやすくなるなど、耐衝撃性が低下する。すなわち、磁気ディスク装置の高容量化と、磁気ディスク装置の耐衝撃性は、ジレンマの関係にあり、優れた耐衝撃性および高いデータ容量を有する磁気ディスク装置が求められている。
【0006】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、優れた耐衝撃性および高いデータ容量を有する磁気ディスク装置および磁気ディスク装置を製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の第1の側面に係る磁気ディスク装置は、
中央部に貫通孔を有する円盤形状の複数の磁気ディスクと、
前記磁気ディスクの間に配置され、中央部に貫通孔を有するスペーサと、
前記磁気ディスクおよび前記スペーサの貫通孔に挿入されるハブと、
前記磁気ディスクおよび前記スペーサを押し付け保持するクランプと、を備え、
前記磁気ディスクと前記スペーサまたは前記クランプとが接触する面において、前記スペーサまたは前記クランプの外周部に接する前記磁気ディスクの上面の平面高さが、前記スペーサまたは前記クランプの内周部に接する前記磁気ディスクの上面の平面高さよりも低く、
前記スペーサは、平坦である。
【0008】
前記磁気ディスクと前記スペーサまたは前記クランプとが接触する面において、前記スペーサまたは前記クランプの外周部に接する前記磁気ディスクの平面高さと、前記スペーサまたは前記クランプの内周部に接する前記磁気ディスクの平面高さと、の差が-3.0μm以下であるとよい。
【0009】
少なくとも最上部に配置される前記磁気ディスクは、前記磁気ディスクと前記クランプとが接触する面において、前記クランプの外周部に接する前記磁気ディスクの上面の平面高さが、前記クランプの内周部に接する前記磁気ディスクの上面の平面高さよりも低いとよい。
【0010】
上記目的を達成するために、本発明の第1の側面に係る磁気ディスク装置を製造する方法は、
中央部に貫通孔を有する円盤形状の複数の磁気ディスクと、
前記磁気ディスクの間に配置され、中央部に貫通孔を有するスペーサと、
前記磁気ディスクおよび前記スペーサの貫通孔に挿入されるハブと、
前記磁気ディスクおよび前記スペーサを押し付け保持するクランプと、
を備える磁気ディスク装置を製造する方法であって、
前記スペーサまたは前記クランプの外周部に接する前記磁気ディスクの上面の平面高さと、前記スペーサまたは前記クランプの内周部に接する前記磁気ディスクの上面の平面高さと、を測定する工程と、
前記スペーサまたは前記クランプの外周部に接する前記磁気ディスクの上面の平面高さが、前記スペーサの内周部に接する前記磁気ディスクの上面の平面高さよりも低くなる配置で、前記磁気ディスクを前記ハブに挿入する工程と、
を備える。
前記磁気ディスクと前記スペーサまたは前記クランプとが接触する面において、前記スペーサまたは前記クランプの外周部に接する前記磁気ディスクの平面高さと、前記スペーサまたは前記クランプの内周部に接する前記磁気ディスクの平面高さと、の差が-3.0μm以下であるとよい。
少なくとも最上部に配置される前記磁気ディスクは、前記磁気ディスクと前記クランプとが接触する面において、前記クランプの外周部に接する前記磁気ディスクの上面の平面高さが、前記クランプの内周部に接する前記磁気ディスクの上面の平面高さよりも低いとよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、優れた耐衝撃性および高いデータ容量を有する磁気ディスク装置および磁気ディスク装置を製造する方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】(A)は、実施の形態に係る磁気ディスク装置を示す上面図であり、(B)は、磁気ディスク装置を示す側面図である。
【
図2】実施の形態に係る磁気ディスク装置が備える磁気ディスクとスペーサを示す断面図である。
【
図3】実施の形態に係る磁気ディスク装置が備える磁気ディスクとスペーサを示す拡大断面図である。
【
図4】実施の形態に係る磁気ディスク装置が備える磁気ディスクに衝撃が加えられたことを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態の磁気ディスク装置(HDD:Hard Disk Drive)およびスペーサについて説明する。
【0014】
本実施の形態の磁気ディスク装置100は、箱型の記録再生装置であり、
図1(A)および
図1(B)に示すように、筐体10と、基台20と、重ねて配置された複数の磁気ディスク30と、ヘッドスタックアッセンブリ40と、ボイスコイルモータ50と、ランプロード60と、クランプ70と、図示しないスピンドルモータおよび回路基板等の必要部材と、を備える。また、磁気ディスク装置100は、
図2に示すように、複数の磁気ディスク30の間に配置された複数のスペーサ80と、回転軸Zを中心に複数の磁気ディスク30を回転するハブ90と、を備える。
【0015】
図1に戻って、磁気ディスク装置100の寸法は共通規格で定められており、例えばデータセンター向けとして、SFF-8301という規格に準拠した寸法の3.5インチ磁気ディスク装置が好適に用いられている。この規格では、筐体10の高さHは、26.1mm、幅Wは、101.6mm、奥行Dは、147mmと定められている。
【0016】
筐体10は、一般的に金属製であり、一面が開放された立方体の箱形形状を有し、基台20と、磁気ディスク30と、ヘッドスタックアッセンブリ40と、ボイスコイルモータ50と、ランプロード60と、クランプ70と、スピンドルモータおよび回路基板等の必要部材と、を図示しないトップカバーにより密閉するものである。
【0017】
基台20は、筐体10の底に配置され、ボイスコイルモータ50、スピンドルモータおよび回路基板等が実装される部分である。基台20と筐体10は一体型の場合が多い。
【0018】
磁気ディスク30は、
図2に示すように、磁気的に情報を記録するための中央部に貫通孔を有する円盤形状の媒体であり、基板、下地層、磁性層、保護層、潤滑層から構成され、回転軸Zを中心に回転する。磁気記録方式として、垂直磁気記録方式(PMR:Perpendicular Magnetic Recording)や、瓦書き方式(SMR:Shingled Magnetic Recording)のものが好適に用いられている。さらなる高容量化の実現のため、熱アシスト磁気記録方式(HAMR:Heat Assisted Magnetic Recording)やマイクロ波アシスト磁気記録方式(MAMR:Microwave Assisted Magnetic Recording)といった技術が開発されている。基板としては、アルミニウム合金基板またはガラス基板が好適に用いられている。アルミニウム合金基板およびガラス基板の詳細については、後述する。
【0019】
磁気ディスク30の厚さTdは、好ましくは、0.2mm以上1.75mm以下、より好ましくは、0.2mm以上0.50mm以下、さらに好ましくは、0.48mm以下である。磁気ディスク30の外径2×Rdは、好ましくは95mmまたは97mm、内径は25mmである。また、本実施の形態の磁気ディスク装置100が備える磁気ディスク30の枚数Nは、好ましくは、8枚以上16枚以下である。磁気ディスク装置100の高容量化を実現するための一例として、搭載する磁気ディスク30の枚数を増やし、磁気ディスク装置100一台あたりのデータ領域を拡大させるという技術がある。しかしながら前述の通り、磁気ディスク装置100の寸法は規格で定められており、磁気ディスク30を搭載する空間には制限がある。そのため、搭載させる磁気ディスク30の枚数を増やすために、磁気ディスク30の厚さを薄くしている。
【0020】
図1に戻って、ヘッドスタックアッセンブリ40は、アーム41とアーム41の先端に取り付けられたヘッド部42と有する。HAMRにより記録する場合、ヘッド部42にレーザ素子を、MAMRにより記憶する場合、ヘッド部42にマイクロ波発生素子を搭載する。
【0021】
ボイスコイルモータ50は、ヘッドスタックアッセンブリ40を回動させる駆動用モータである。
【0022】
ランプロード60は、樹脂製の部品であり、磁気ディスク装置100の非動作時にヘッド部42を退避させることを目的に、磁気ディスク30外周部側で磁気ディスク30に最も接近した位置に搭載されたものである。
【0023】
クランプ70は、
図2に示すように、磁気ディスク30の上面と対向する面に、磁気ディスク30と接触する突起部71を有し、複数の磁気ディスク30およびスペーサ80をハブ90に押し付け保持して固定するものである。磁気ディスク30の上面にクランプ70の突起部71を押圧接触させることにより、磁気ディスク30はクランプ70により固定状態となる。磁気ディスク30の上面の内径側部分がこの突起部71によりクランプ固定されることにより、高速回転させてデータ処理する際における磁気ディスク30の離脱が防止される。クランプ70は、締結部材72によってハブ90に固定される。締結部材72は、例えば、ビスまたはT6~T8サイズのヘックスローブねじなどが使用される。なお、ボルト径はM2のものなどが使用される。
【0024】
スペーサ80は、リング状の薄板であり、複数の磁気ディスク30の間に配置される。複数の磁気ディスク30の間にスペーサ80が配置されることで、磁気ディスク30は、スピンドルモータのハブ90にクランプ70で強固に固定される。スペーサ80の役割は、複数の磁気ディスク30同士の間隔を確保すること、および、磁気ディスク30と接触・密着することで、ハブ90またはクランプ70と直接接触していない磁気ディスク30へハブ90の回転駆動力を伝えることである。このため、スペーサ80の形状は、スペーサ80両表面の平坦度が小さいものが望まれる。
【0025】
スペーサ80の厚さTsに関して、磁気ディスク30同士の間隔は狭いほど、限られた空間内に多くの磁気ディスク30を搭載することができ好ましいが、磁気ディスク30表面にはヘッドスタックアッセンブリ40を稼働させる空間が必要である。特に、先述したHAMRおよびMAMRの高容量化技術において、HAMRにより記録する場合、ヘッド部42にレーザ素子を、MAMRにより記憶する場合、ヘッド部42にマイクロ波発生素子を搭載する必要があり、ヘッドスタックアッセンブリ40の小型化は容易ではない。磁気ディスク30同士の間隔、すなわちスペーサの厚さTsは、少なくとも1mm以上、好ましくは1.5mm、より好ましくは1.6mm以上が必要である。
【0026】
スペーサ80は、
図3に示すように、表面と内外周端面の境界(以下、スペーサ内外周部)にはバリ取りなどを目的に面取り部81を有することが望ましい。磁気ディスク30とスペーサ80を積層する際に、スペーサ80内外周部のバリが磁気ディスク30に接触してキズを発生させる懸念があるからである。スペーサ80の外半径をRsoと、スペーサ80の内半径をRsiと、スペーサ80外周部の面取り部81の長さをLsoと、スペーサ80の内周部の面取り部82の長さをLsiと、スペーサ80と磁気ディスクの接触部83の外半径をRssoと、スペーサ80と磁気ディスク30の接触部83の内半径をRssiとすると、Rsso=Rso-Lso、Rssi=Rsi+Lsiとなる。接触部83の径方向における長さRstは、Rst=Rsso-Rssiとなる。接触部83は、スペーサ80と磁気ディスク30とが接触する部分である。スペーサ80の面取り部81、82は磁気ディスク30との接触に寄与せず、磁気ディスク30へハブ90の回転駆動力を伝えるという役割に寄与しないため、スペーサ80の面取り部81、82の長さLso、Lsi、はできる限り小さいほうが好ましく、具体的には0.1mm以下が好ましい。
【0027】
スペーサ80を形成する材料は、スペーサ80と磁気ディスク30との熱膨張係数の差が小さくなる材料から選択されることが望ましい。両者の熱膨張係数差が大きいと、磁気ディスク30装置動作時の環境温度が変化した場合に、スペーサ80と磁気ディスク30表面の位置ズレが発生し、読み書きエラーの原因となる。磁気ディスク30がアルミニウム合金基板からなる場合、スペーサ80はアルミニウムが好適に用いられる。磁気ディスク30がガラス基板からなる場合、スペーサ80はガラス、ステンレス、チタンなどが好適に用いられる。さらに、磁気ディスク30やスペーサ80への帯電防止を目的に、スペーサ80は導電性を有することが望ましい。スペーサ80にガラスを採用する場合は、ガラス製のスペーサ80の表面と側面にNi-Pめっき等の金属膜を備えることが望ましい。
【0028】
磁気ディスク装置100内に磁気ディスク30を複数枚搭載する場合について説明する。
図2に示すように、磁気ディスクの外半径をRdと、磁気ディスクの厚さをTdと、スペーサの外半径をRsoと、スペーサ80の厚さをTsと、磁気ディスク30とスペーサ80の積層高さをTとする。磁気ディスク30の内径とスペーサ80の内径は等しく、磁気ディスクの内半径=スペーサの内半径Rsiである。磁気ディスク30の内径とスペーサ80の内径2×Rsiは、例えば25mmである。また、スペーサ80の外径2×Rsoは、好ましくは、32mm以上65mm以下である。これにより、磁気ディスク装置100の耐衝撃性および耐フラッタリング性を維持したまま、磁気ディスク装置100内のデータ領域を拡大することができる。
【0029】
ここで、SFF-8301に準拠した筐体10の高さHが26.1mmの磁気ディスク装置100について考える。磁気ディスク装置100に厚さTdの磁気ディスク30をN枚と、厚さTsのスペーサ80を(N-1)枚交互に積層した場合、その積層高さT=N×Td+(N-1)×Tsは26.1mmよりも低い必要がある。しかし、磁気ディスク装置100は、磁気ディスク30とスペーサ80以外にも、基台20、回路基板、スピンドルモータ、クランプ70、ハブ90、トップカバー等の部品が装置内の空間に搭載されるため、磁気ディスク30とスペーサ80の積層高さTは20mm以下であることが好ましく、より好ましくは19mm以下である。先述した通り、磁気ディスク厚さTdの下限値は0.3mm、スペーサ80の厚さTsの下限値は1mm、磁気ディスク30とスペーサ80の積層高さTの上限値は20mmであることから、磁気ディスク30の枚数Nの上限値は16枚となる。また、磁気ディスク装置100の高容量化を実現するため、磁気ディスク30の枚数Nは、好ましくは、8枚以上である。
【0030】
ハブ90は、アルミニウム合金等の強磁性体でない金属で作成され、円筒状の形状を有する小径部91と大径部92が回転軸Zの方向に接続された形状を有し、回転軸Zを中心軸としてスピンドルモータにより回転する。小径部91の直径は、磁気ディスク30の内径およびスペーサ80の内径2Rsiと同一である。大径部92は、クランプ70と共に、磁気ディスク30およびスペーサ80を挟んで固定する。
【0031】
磁気ディスク30は、上述したように、磁気的に情報を記録するための円盤状の媒体であり、基板、下地層、磁性層、保護層、潤滑層から構成される。基板は、アルミニウム合金基板またはガラス基板が好適に用いられている。
【0032】
(アルミニウム合金基板)
アルミニウム合金基板は、従来から使用されているJIS5086合金等のAl-Mg系合金が、強度が強く好適に用いられる。あるいは、Al-Fe系合金が、剛性が高く好適に用いられる。
【0033】
具体的には、Al-Mg系合金は、Mg:1.0~6.5質量%を含有し、Cu:0.070質量%以下、Zn:0.60質量%以下、Fe:0.50質量%以下、Si:0.50質量%以下、Cr:0.20質量%以下、Mn:0.50質量%以下、Zr:0.20質量%以下の1種又は2種以上を更に含有し、残部がアルミニウムと不可避不純物やその他の微量元素からなるアルミニウム合金である。
【0034】
Al-Fe系合金は、必須元素であるFeと、選択元素であるMn及びNiのうち1種又は2種を含有し、これらFe、Mn及びNiの含有量の合計が1.00~7.00質量%の関係を有し、更に、Si:14.0質量%以下、Zn:0.7質量%以下、Cu:1.0質量%以下、Mg:3.5質量%以下、Cr:0.30質量%以下、Zr:0.20質量%以下の1種又は2種以上を更に含有し、残部がアルミニウムと不可避不純物やその他の微量元素からなるアルミニウム合金である。
【0035】
つぎに、アルミニウム合金基板の製造方法について説明する。
【0036】
まず、半連続鋳造法により鋳塊を作製し、それを熱間圧延および冷間圧延加工し、所望の厚さの板材を作製する。または、連続鋳造により板材を作製し、それを冷間圧延加工し、所望の厚さの板材を作製する。組織を均質化する目的で、鋳塊に熱処理を施してもよい。加工性を向上させる等の目的で、冷間圧延前、冷間圧延の途中、冷間圧延後の板材に熱処理を施してもよい。
【0037】
つぎに、前記の通り作製された板材を、プレス機で打抜き加工し、所望の内径寸法、外径寸法を有する円盤状のブランクを作製する。その後、ブランクの平坦度を小さくする目的で、ブランク同士を積層し、積層ブランクに荷重をかけ、加熱処理を行う。
【0038】
つぎに、ブランクの内径部、外径部を旋盤加工機で切削加工し、所望の内径寸法、外径寸法、および所望の長さの面取り部を有するTサブを作製する。さらにブランク両面の表面を切削加工し、所望の厚さの板厚を有するTサブとしてもよい。さらに切削加工により材料内部に発生した加工歪を取り除く目的で、Tサブに加熱処理を施してもよい。
【0039】
つぎに、Tサブ両面の表面を研削加工機で研削し、所望の厚さのGサブを作製する。さらに研削加工により材料内部に発生した加工歪を取り除く目的で、Gサブに加熱処理を施してもよい。
【0040】
つぎに、Gサブの表面、側面、面取り面を含む全ての面に所望の厚さのめっきを成膜したMサブを作製する。まずGサブにめっき密着性向上を目的に、前処理を行う。次いでめっき処理を行う。めっきはNi-P無電解めっきが好適に用いられる。さらにNi-P無電解めっきの内部応力を取り除く目的で、Mサブに加熱処理を施してもよい。
【0041】
つぎに、Mサブ両面の表面を研磨加工機で研磨し、所望の厚さの基板、すなわちアルミニウム合金基板を作製する。この方法で作製されるアルミニウム合金基板の厚さの下限値は0.3mmである。それは研磨加工機で研磨する際に、アルミニウム合金基板を保持するキャリアと呼ばれる部品の厚さに起因する。キャリアの厚さは被加工物であるアルミニウム合金基板の厚さ以上であれば任意に選択可能であるが、キャリアは薄すぎると強度が不足し研磨加工中に破損してしまう。キャリア強度の観点において、キャリアの厚さは0.3mm以上が好ましい。よって被加工物であるアルミニウム合金基板の厚さの下限値は0.3mmとなる。なお、キャリアはアラミド樹脂やエポキシ樹脂等の樹脂製のものが好適に用いられる。強度向上を目的に、炭素繊維やガラス繊維等の繊維状補強材を含有させることもある。
【0042】
つぎに、アルミニウム合金基板の表面に、下地層、磁性層、保護層、潤滑層を成膜する。これにより、磁気ディスク30が得られる。
【0043】
(ガラス基板)
ガラス基板は、アルミノシリケートガラスが、硬度が強く好適に用いられる。具体的には、アルミノシリケートガラスは、SiO2:55~70質量%を主成分として、Al2O3:25質量%以下、Li2O:12質量%以下、Na2O:12質量%以下、K2O:8質量%以下、MgO:7質量%以下、CaO:10質量%以下、ZrO2:10質量%以下、TiO2:1質量%以下の1種又は2種以上を含有し、残部が不可避不純物やその他の微量元素からなる。
【0044】
つぎに、ガラス基板の製造方法について説明する。
【0045】
まず、所定の化学成分に調製したガラス素材を溶解し、ダイレクトプレス法で、その溶融塊を両面からプレス成形して、所望の厚さを有するガラス元板を作製する。ガラス元板の作製は前記ダイレクトプレス法に限定されず、フロート法、フュージョン法、リドロー法などでも良い。
【0046】
つぎに、このガラス元板を円環状にコアリングし、さらに内径部と外径部を研磨加工し、所望の内径寸法、外径寸法、面取り長さを有する円環状ガラス板とする。
【0047】
つぎに、この円環状ガラス板両面の表面を、研削加工機で研削し、所望の板厚、平坦度を有する円環状ガラス基板とする。
【0048】
さらに、この円環状ガラス板両面の表面を、研磨加工機で研磨し、所望の厚さの基板、すなわちガラス基板を作製する。研磨加工の途中に、硝酸ナトリウム溶液や硝酸カリウム溶液等による化学強化処理を行ってもよい。
【0049】
この方法で作製されるガラス基板の厚さの下限値は0.3mmである。それは研磨加工機で研磨する際に、ガラス基板を保持するキャリアと呼ばれる部品の厚さに起因する。キャリアの厚さは被加工物であるガラス基板の厚さ以上であれば任意に選択可能であるが、キャリアは薄すぎると強度が不足し研磨加工中に破損してしまう。キャリア強度の観点において、キャリアの厚さは0.3mm以上が好ましい。よって被加工物であるガラス基板の厚さの下限値は0.3mmとなる。なお、キャリアはアラミド樹脂やエポキシ樹脂等の樹脂製のものが好適に用いられる。強度向上を目的に、炭素繊維やガラス繊維等の繊維状補強材を含有させることもある。
【0050】
(耐衝撃性)
磁気ディスク装置100が外部から衝撃を受けた場合、
図4に示すように、磁気ディスク30にたわみが生じ、磁気ディスク30と例えばランプロード60が衝突する。ランプロード60は、上述したように、磁気ディスク装置100の非動作時にヘッド部42を退避させることを目的に、磁気ディスク30外周部側で磁気ディスク30に最も接近した位置に搭載される樹脂製の部品である。磁気ディスク30とランプロード60が衝突すると、ランプロード60の一部が欠けて異物が発生したり、磁気ディスク30にキズついたりし、故障の原因となる。磁気ディスク30の剛性が高いほど、たわみ量は小さくなり、故障の発生確率は低減する。すなわち、磁気ディスク30の剛性が高いほど、耐衝撃性が向上する。
【0051】
(耐フラッタリング性)
磁気ディスク装置100の動作中に、磁気ディスク30は高速回転する。その回転数は例えば7200rpmである。磁気ディスク30が高速回転すると磁気ディスク30装置内の気体に乱流が生じ、磁気ディスク30が振動する。この振動現象をフラッタリングと呼ぶ。磁気ディスク30が振動すると、ヘッド部42の位置精度が低下し、読み取りエラーの原因となる。磁気ディスク30の剛性が高いほど、振動量は小さくなり、読み書きエラーの確率は低減する。すなわち、磁気ディスク30の剛性が高いほど、耐フラッタリング性が向上する。なお、磁気ディスク装置100内の気体の乱流を低減させる目的で、磁気ディスク装置100内に空気に代わりヘリウムを充填する技術が知られている。
【0052】
(磁気ディスクの剛性)
磁気ディスク30の耐衝撃性は、磁気ディスク30が衝撃による加速度を受けた際の磁気ディスク30のたわみ量の大小で示される。磁気ディスク30の耐フラッタリング性は、磁気ディスク30が高速回転することにより発生した気体の乱流を受けた際の磁気ディスク30のたわみ量の大小で示される。すなわち、磁気ディスク30の耐衝撃性と耐フラッタリング性は、磁気ディスク30がたわみ易いか否かで決まる。
【0053】
(磁気ディスクの平面高さ)
磁気ディスク30とスペーサ80が接触する面において、
図3に示すように、スペーサ80の外周部に接する磁気ディスク30の上面の平面高さH1が、スペーサ80の内周部に接する磁気ディスク30の上面の平面高さH2よりも低いこととする。平面高さH1および平面高さH2は、例えば、接触部83を基準として計測される。なお、最上部に配置された磁気ディスク30では、磁気ディスク30とクランプ70が接触する面において、クランプ70の外周部に接する磁気ディスク30の上面の平面高さH1が、クランプ70の内周部に接する磁気ディスク30の上面の平面高さH2よりも低いこととする。なお、磁気ディスク30の上面は、クランプ70に近い面をいう。好ましくは、少なくとも最上部に配置される磁気ディスク30は、磁気ディスク30とクランプ70が接触する面において、平面高さH1が平面高さH2よりも低い。より好ましくは、搭載される磁気ディスク30の総数の2分の1より多い枚数の磁気ディスク30は、磁気ディスク30とスペーサ80が接触する面において、平面高さH1が平面高さH2よりも低い。さらに好ましくは、全ての磁気ディスク30は、磁気ディスク30とスペーサ80が接触する面において、平面高さH1が平面高さH2よりも低い。磁気ディスク30の上面の平面高さH1および平面高さH2を上記の通り規定することで、耐衝撃性を向上させることができる。スペーサ80の外周部に接する磁気ディスク30の平面高さH1が、スペーサ80の内周部に接する磁気ディスク30の平面高さH2よりも高い場合は、締結した際に、外周部のスペーサ80と磁気ディスク30の下面との隙間が大きくなる。この状態で、磁気ディスク装置100に外部から下から上に衝撃が加わると、磁気ディスク30が大きく変形するため、耐衝撃性が低下する。一方、スペーサ80の外周部に接する磁気ディスクの平面高さH1が、スペーサ80の内周部に接する磁気ディスク30の平面高さH2よりも低い場合は、締結した際に、外周部のスペーサ80と磁気ディスク30の下面との隙間が小さくなる。この状態で、磁気ディスク装置100に外部から下から上に衝撃が加わると、隙間が小さいため、磁気ディスク30が直ぐにスペーサ80に接触し、磁気ディスク30が大きく変形するのを防ぐ効果を発揮し、耐衝撃性が向上する。なお、上面を上にして磁気ディスク装置100を落下等した場合、磁気ディスク装置100には、外部から下から上に衝撃が加わる。このため、磁気ディスク装置100には、外部から上から下に衝撃が加わる確率より、外部から下から上に衝撃が加わる確率が高いと考えられる。従って、磁気ディスク30の平面高さH1が、平面高さH2よりも低いことで、優れた耐衝撃性を得ることができる。スペーサ80の外周部に接する磁気ディスクの平面高さH1と、スペーサ80の内周部に接する磁気ディスクの平面高さH2の差(H1-H2)は、-3.0μm以下であることが好ましく、より好ましくは、-4.0μm以下である。なお、下限値は特に設けないが、-15μm程度である。
【0054】
(磁気ディスク装置を製造する方法)
磁気ディスク装置100を製造する方法は、スペーサ80の外周部に接する磁気ディスク30の上面の平面高さH1と、スペーサ80の内周部に接する磁気ディスク30の上面の平面高さH2と、を測定する工程と、スペーサ80の外周部に接する磁気ディスク30の上面の平面高さH1が、スペーサ80の内周部に接する磁気ディスク30の上面の平面高さH2よりも低くなる配置で、磁気ディスク30およびスペーサ80をハブ90に挿入する工程と、クランプ70により磁気ディスク30およびスペーサ80をハブ90に固定する工程と、備える。
【0055】
平面高さH1、H2を測定する工程は、以下のように実施する。なお、平面高さH1、H2とは、ある基準面(0μm)に対する磁気ディスク30の表面全体の山高さと谷深さで表される。
図3において、ある基準面として、下に配置されたスペーサ80を基準として図示している。スペーサ80の外周部に接する磁気ディスク30の平面高さH1とは、基板全体の平面高さを測定したあとに、スペーサ80の外周部に接する磁気ディスク30の位置(例えば、外半径Rssoの位置)において円周方向に高低差を測定し、最大山高さまたは最大谷深さを算出したものである。スペーサ80の内周部に接する磁気ディスクの平面高さH2とは、基板全体の平面高さを測定したあとに、スペーサ80の内周部に接する磁気ディスク30の位置(例えば、内半径Rssiの位置)において円周方向に高低差を測定し、最大山高さまたは最大谷深さを算出したものである。ここで、最大山高さは外周部または内周部における最も高い値であり、最大谷深さは外周部または内周部における最も低い値である。内周部の最大山高さが外周部の最大谷深さより大きい値の場合、H1(最大谷深さ)とH2(最大山高さ)の差はH1-H2で表され、その値が0μmよりも小さい場合、スペーサ80の外周部に接する磁気ディスク30の平面高さH1が、スペーサ80の内周部に接する磁気ディスク30の平面高さH2よりも低いと定義している。外周部の最大山高さが内周部の最大谷深より大きい値の場合、H1(最大山高さ)とH2(最大谷深さ)の差はH1-H2で表され、スペーサ80の外周部に接する磁気ディスク30の平面高さH1が、スペーサ80の内周部に接する磁気ディスク30の平面高さH2よりも高いと定義している。平面高さH1が、平面高さH2よりも高い場合、磁気ディスク30の厚みは一定であるため、裏返して測定すると、平面高さH1は、平面高さH2よりも低くなる。
【0056】
つぎに、磁気ディスク30およびスペーサ80をハブ90に挿入する工程について説明する。平面高さH1、H2を測定する工程において、測定された平面高さH1が、平面高さH2よりも低い場合、そのままの状態で、磁気ディスク30をハブ90に挿入する。測定された平面高さH1が、平面高さH2よりも高い場合、磁気ディスク30を裏返して、磁気ディスク30をハブ90に挿入する。その後、クランプ70により磁気ディスク30およびスペーサ80をハブ90に固定する。
【0057】
以上のように、本実施の形態の磁気ディスク装置100によれば、スペーサ80の外周部に接する磁気ディスク30の上面の平面高さH1が、スペーサ80の内周部に接する磁気ディスク30の上面の平面高さH2よりも低いことで、記録領域を少なくすることなく、耐衝撃性を向上させることができ、優れた耐衝撃性および高いデータ容量を有する3.5インチ磁気ディスク装置を提供することができる。磁気ディスク装置100をデータセンターに搭載することで、データセンターの高容量化に寄与することができる。また、スペーサ80の外周部に接する磁気ディスク30の上面の平面高さH1が、スペーサ80の内周部に接する磁気ディスク30の上面の平面高さH2よりも低いという本実施の形態の考え方は、3.5インチの磁気ディスク装置100に限らず、あらゆるサイズの磁気ディスク装置100に応用することができる。磁気ディスク30の種類はアルミニウム合金基板およびガラス基板からなる磁気ディスク30に限らず、あらゆる種類の磁気ディスク30に応用することができる。
【0058】
(変形例)
上述の実施の形態では、磁気ディスク装置100が3.5インチ磁気ディスク装置である例について説明したが、磁気ディスク装置100は、3.5インチ以外の装置であってもよく、例えば、2.5インチ磁気ディスク装置であってもよい。
【実施例】
【0059】
以下に、本発明を実施例に基づいて更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0060】
磁気ディスク用基板31として、表1に示す組成のめっき付きアルミニウム合金基板と、表2に示す組成のガラス基板を作製した。磁気ディスク用基板31のサイズは、内径:25mm、外径:97mm、板厚:0.50mmとした。磁気ディスク用基板31のスペーサ80の外周部に接する磁気ディスク用基板31の平面高さH1と、スペーサ80の内周部に接する磁気ディスク用基板31の平面高さH2と、の差(H1-H2)について、実施例1~8および比較例1~8を表1、実施例9~10および比較例9~10を表2に示す。実施例1~10について、H1とH2の測定は、
図3に示すように、表面(面A)にて実施した。H1はスペーサ80と磁気ディスク用基板31の接触部の外半径Rsso=15.8(公差+0、-0.5mm)にて測定を実施した。H2はスペーサ80と磁気ディスク用基板31の接触部の内半径Rssi=12.7(公差+0.5、-0mm)にて測定を実施した。平面高さH1およびH2の測定は、非接触平坦度測定機(MESA)(ZyGO社製)にて行った。
【0061】
【0062】
【0063】
つぎに、
図4に示すように、例えば、磁気ディスク用基板31の面Aを上(Z方向で
図2に示すクランプ70に近い方が上)にし、スペーサ80とクランプ70でハブ90に固定し、磁気ディスク用基板31の外周位置(基板中心からの距離r1:44.2mm)と、磁気ディスク用基板31の内周位置(基板中心からの距離r2:23mm)と、の衝撃によるたわみ量を静電容量式距離センサにより、加速度55~60G、作用時間2.7~3.0msの衝撃を下から上に付与して実測した。スペーサ80はアルミニウム製、外径32mm、内径25mm、厚さ1.7mmのものを使用した。
【0064】
衝撃による磁気ディスク用基板31の外周位置と内周位置でのたわみ量を実測し、外周位置と内周位置のたわみ量の差(「外周たわみ量」-「内周たわみ量」)を計算し、絶対値の最大値を加速度で除したもの(「たわみ量の差の絶対値の最大値」/「加速度」、以降、最大たわみ量と呼ぶ)を算出した。
【0065】
実施例1は、A面を上にして測定した場合であり、比較例1は、実施例1と同じ磁気ディスク用基板31の裏面である面Bを上にした場合である。実施例1および比較例1を各3回測定した。比較例2~10は、それぞれ実施例2~10と同じ磁気ディスク用基板31の裏面である面Bを上にして測定した場合である。同様に実施例2~10および比較例2~10を各3回測定した。その後、実施例1および比較例1の計6回の最大たわみ量の平均値を算出し、この平均値を100%として、実施例1の3回測定された最大たわみ量の相対値の平均値と、比較例1の3回測定された最大たわみ量の相対値の平均値と、をそれぞれ求めた。実施例2~10についても、それぞれ実施例2~10および比較例2~10の平均値の最大たわみ量を100%として、実施例2~10の最大たわみ量の相対値と比較例2~10の最大たわみ量の相対値とを求めた。なお、衝撃による磁気ディスク用基板31の最大たわみ量が大きいと、磁気ディスク装置内の部品、例えばランプロードに強く衝突し、ランプロードの一部が欠けて異物が発生したり、磁気ディスクにキズついたりし、故障の原因となる。基板の最大たわみ量が小さいほど、耐衝撃性は良い。
【0066】
スペーサ80の外周部に接する磁気ディスク用基板31の平面高さH1が、スペーサ80の内周部に接する磁気ディスク用基板31の平面高さH2よりも低い場合、磁気ディスク用基板の最大たわみ量が小さく、耐衝撃性は良いことが分かった。また、特に、スペーサ80の外周部に接する磁気ディスク用基板31の平面高さH1と、スペーサ80の内周部に接する磁気ディスク用基板31の平面高さH2と、の差(H1-H2)が、-3.0μm以下である場合、耐衝撃性が更に良くなることが分かる。一方で、スペーサ80の外周部に接する磁気ディスク用基板31の平面高さH1が、スペーサ80の内周部に接する磁気ディスク用基板31の平面高さH2よりも高い場合の場合は、最大たわみ量が大きく、耐衝撃性に劣っていた。
【0067】
以上のように、スペーサ80の外周部に接する磁気ディスク用基板31の上面の平面高さH1が、スペーサ80の内周部に接する磁気ディスク用基板31の上面の平面高さH2よりも低いことで、磁気ディスク用基板31の厚みをそのままにして、耐衝撃性を向上させることができることがわかった。なお、磁気ディスク用基板31は、磁気ディスク30と比較して、磁性層等を備えない点で異なるが、耐衝撃性等に関しては磁気ディスク30と同等であると考えられる。
【0068】
本発明は、本発明の広義の精神と範囲を逸脱することなく、様々な実施の形態及び変形が可能とされるものである。また、上述した実施の形態は、この発明を説明するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。すなわち、本発明の範囲は、実施の形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。そして、特許請求の範囲内及びそれと同等の発明の意義の範囲内で施される様々な変形が、この発明の範囲内とみなされる。
【符号の説明】
【0069】
10 筐体
20 基台
30 磁気ディスク
31 磁気ディスク用基板
40 ヘッドスタックアッセンブリ
41 アーム
42 ヘッド部
50 ボイスコイルモータ
60 ランプロード
70 クランプ
71 突起部
72 締結部材
80 スペーサ
81、82 面取り部
83 接触部
90 ハブ
91 小径部
92 大径部
100 磁気ディスク装置
D 奥行
W 幅
H 高さ
N 枚数
Z 回転軸
Rd 外半径
Td、Ts 厚さ
T 積層高さ
Rsi Rssi 内半径
Rso Rsso 外半径
【要約】
【課題】優れた耐衝撃性および高いデータ容量を有する磁気ディスク装置を提供することを目的とする。
【解決手段】磁気ディスク装置は、円盤形状の複数の磁気ディスク30と、スペーサ80と、ハブ90と、クランプ70と、を備える。磁気ディスク30は、中央部に貫通孔を有する。スペーサ80は、磁気ディスク30の間に配置され、中央部に貫通孔を有する。ハブ90は、磁気ディスク30およびスペーサ80の貫通孔に挿入される。クランプ70は、磁気ディスク30およびスペーサ80を押し付け保持する。磁気ディスク30とスペーサ80またはクランプ70とが接触する面において、スペーサ80またはクランプ70の外周部に接する磁気ディスク30の上面の平面高さが、スペーサ80またはクランプ70の内周部に接する磁気ディスク30の上面の平面高さよりも低い。
【選択図】
図2