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  • 特許-設置自由度の高い静電容量型センサ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-14
(45)【発行日】2022-04-22
(54)【発明の名称】設置自由度の高い静電容量型センサ
(51)【国際特許分類】
   G01D 5/241 20060101AFI20220415BHJP
   G01N 27/22 20060101ALI20220415BHJP
【FI】
G01D5/24 A
G01N27/22 Z
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2017171572
(22)【出願日】2017-09-06
(65)【公開番号】P2019045432
(43)【公開日】2019-03-22
【審査請求日】2020-08-20
(73)【特許権者】
【識別番号】591282205
【氏名又は名称】島根県
(73)【特許権者】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】特許業務法人 谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩田 史郎
(72)【発明者】
【氏名】今若 直人
(72)【発明者】
【氏名】大峠 忍
(72)【発明者】
【氏名】野村 健一
(72)【発明者】
【氏名】堀井 美徳
(72)【発明者】
【氏名】鍛冶 良作
(72)【発明者】
【氏名】牛島 洋史
【審査官】菅藤 政明
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-155539(JP,A)
【文献】特表2013-516601(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2011-0124089(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 5/24-5/241
G01N 27/22
G01V 3/08
H01H 36/00
H03K 17/955
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円形状の基材と、
前記基材の第1の表面に同心円状に形成された第1の印刷電極と、
前記基材の前記第1の表面とは反対側の第2の表面に同心円状に形成され、前記第1の印刷電極よりも面積が大きい第2の印刷電極と、
前記第1の印刷電極に電圧を印加する第1の引き出し印刷配線と、
前記第2の印刷電極に電圧を印加する第2の引き出し印刷配線と、
を備え、非可展面上に固定設置される静電容量型センサであって、
前記基材は、前記第1及び第2の引き出し印刷配線に並行して直線的に形成され、前記第1及び第2の引き出し印刷配線を分断しないように形成された1又は複数の第1の切込み部を有し、
前記第2の印刷電極は、前記第2の引き出し印刷配線に並行して直線的に形成され、前記第2の引き出し印刷配線を分断しないように形成された1又は複数の第2の切込み部を有していることを特徴とする静電容量型センサ。
【請求項2】
前記第2の切込み部によって前記第2の印刷電極を部分的に分断することによって形成された浮遊電極をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の静電容量型センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電容量型センサに関し、より詳細には、従来よりも設置自由度が高い静電容量型センサに関する。
【背景技術】
【0002】
空間内の導電物質の存否又は導電物質の動きの情報を検出する近接センサ、パック内の内容物の有無を検出する内包センサ、温度又は湿度を検出する温湿度センサとして、静電容量型センサが利用されている。このような静電容量型センサにおいては、製造コストを低減するために、製造プロセスに印刷技術を適用したものが実現されている。また、基材の片面のみに検出電極層等の積層構造を印刷した場合には、製造バラツキが生じるため、これを防止するために、薄膜基材の両面に薄膜電極を配置した静電容量型センサも現れている(例えば、特許文献1及び2参照)。
【0003】
図1(a)は、特許文献1に示されるような、両面に薄膜電極を配置した従来の静電容量型センサを示し、図1(b)はその断面図を示す。図1(a)及び(b)には、薄膜フィルムなどからなる基材11と、基材11の第1の表面に形成された第1の印刷電極12と、基材11の第1の表面とは反対側の第2の表面に形成された第2の印刷電極13と、第1の表面において引き出されて第1の印刷電極12に電圧を印加する第1の引き出し印刷配線14と、第2の表面において引き出されて第2の印刷電極13に電圧を印加する第2の引き出し印刷配線15と、を備えた静電容量型センサ10が示されている。
【0004】
第1の印刷電極12、第2の印刷電極13、第1の引き出し印刷配線14及び第2の引き出し印刷配線15は、例えば、スクリーン印刷法などの印刷法を用いて基材11上に形成されている。例えば第1の印刷電極12をシグナル電極とし、第2の印刷電極13をグラウンド電極とした場合、グラウンド電極として機能する第2の印刷電極13の方がシグナル電極として機能する第1の印刷電極12よりも面積が大きくなるように構成することができる。
【0005】
図1に示されるような従来の静電容量型センサ10では、第1の印刷電極12及び第2の印刷電極13は、それぞれ、第1の引き出し印刷配線14及び第2の引き出し印刷配線15を介して所定の周波数及び所定の振幅の交流電圧が印加されている。それにより、第1の印刷電極12及び第2の印刷電極13間の電流及び電圧を測定し、当該測定値に基づいて静電容量型センサ10の静電容量値を算出している。
【0006】
静電容量型センサ10では、第1の印刷電極12及び第2の印刷電極13の一方から他方に向かう電気力線を利用して検出範囲を定めている。静電容量型センサ10の検出範囲内に物体が入ると、当該物体により電気力線の一部が吸収されて静電容量型センサ10の静電容量値が減少する。静電容量値の減少量は、物体が静電容量型センサ10に近づくほど増加する。このように、静電容量型センサ10の静電容量値の変化を検出することにより、物体の存否や動き情報を取得することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2016-19588号公報
【文献】特開2014-137240号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
図2(a)及び図2(b)は、従来の静電容量型センサを円筒台座上及び球面台座上にそれぞれ配置した例を示す。図2(a)に示されるように、従来の静電容量型センサ10は、基材11等が可撓性のある材料で形成されているため、可展面を有する円筒台座に設置する場合には、基材11等が円筒台座の設置面に沿って変形して、全面が円筒台座の設置面に接触するように安定的に固定設置することができる。
【0009】
しかしながら、図2(b)に示されるように、直線的要素を有さない複曲面を有する球面台座に従来の静電容量型センサ10を設置する場合、従来の静電容量型センサ10では図2中のようにXY平面から選ばれる任意の一軸周りにしか曲がらないため、基材11等が部分的にしか球面台座に設置面に接触せず、当該非接触部分については安定的な固定設置ができなかった。また、ねじれ面からなる箇所に従来の静電容量型センサ10を設置する場合も同様に、安定的な固定設置ができなかった。
【0010】
そのため、従来の静電容量型センサ10を複曲面又はねじれ面(以下、複曲面又はねじれ面を「非可展面」と総称する)に設置した場合、その不安定な設置により、周囲の微細な振動や周囲からの圧力の影響を受けて静電容量型センサ10に揺れが生じ、電気力線の分布が安定せず、測定確度の高いセンシングを実現できなかった。
【0011】
一方で、静電容量型センサの基材としてエラストマーなどの伸縮可能な材料を用いることにより、非可展面に静電容量型センサを設置することも可能ではある。しかし、エラストマー等の伸縮可能な材料はその伸び縮みにより非可展面に一時的に設置可能である一方で、元に戻ろうとする力が常に働いて少しずつ設置位置がずれていくため、安定的な固定設置が困難であり、結果的に信頼度の高いセンシングを実現できないことになる。
【0012】
以上のように、従来の静電容量型センサでは、非可展面上に安定的に固定設置することができず、設置自由度が制限されていた。
【0013】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、従来よりも設置自由度が高い静電容量型センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
このような目的を達成するために、本発明の一実施形態に係る静電容量型センサは、円形状の基材と、前記基材の第1の表面に同心円状に形成された第1の印刷電極と、前記基材の前記第1の表面とは反対側の第2の表面に同心円状に形成され、前記第1の印刷電極よりも面積が大きい第2の印刷電極と、前記第1の印刷電極に電圧を印加する第1の引き出し印刷配線と、前記第2の印刷電極に電圧を印加する第2の引き出し印刷配線と、を備え、非可展面上に固定設置される静電容量型センサであって、前記基材は、前記第1及び第2の引き出し印刷配線に並行して直線的に形成され、前記第1及び第2の引き出し印刷配線を分断しないように形成された1又は複数の第1の切込み部を有し、前記第2の印刷電極は、前記第2の引き出し印刷配線に並行して直線的に形成され、前記第2の引き出し印刷配線を分断しないように形成された1又は複数の第2の切込み部を有していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、従来よりも設置自由度の高い静電容量型センサを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】従来の静電容量型センサを例示する図である。
図2】従来の静電容量型センサの配置例を示す図である。
図3】本発明の実施例に係る静電容量型センサを例示する図である。
図4】本発明の実施例に係る静電容量型センサを配置した場合における配置例を示す図である。
図5】本発明の実施例に係る静電容量型センサを配置した場合における電界強度分布を示す図である。
図6】導体接近時の静電容量型センサにおける静電容量値の変化量ΔCを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(実施例)
図3は、本発明の実施例に係る静電容量型センサを示す。図3には、基材101と、基材101の第1の表面に形成された第1の印刷電極102と、基材101の第1の表面とは反対側の第2の表面に形成された第2の印刷電極103と、第1の印刷電極102に電圧を印加する第1の引き出し印刷配線104と、第2の印刷電極103に電圧を印加する第2の引き出し印刷配線105と、を備えた静電容量型センサ100が示されている。
【0018】
第1の印刷電極102、第2の印刷電極103、第1の引き出し印刷配線104及び第2の引き出し印刷配線105は、例えば、銅、銀、金、アルミニウム、ニッケル、錫、カーボンなどの材料で構成することができ、スクリーン印刷法などの印刷法を用いて基材101上に形成されている。基材101としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリイミドなどで構成された薄膜フィルムを用いることができる。
【0019】
第1の印刷電極102をシグナル電極とし、第2の印刷電極103をグラウンド電極とした。第1の印刷電極102及び第2の印刷電極103は、グラウンド電極として機能する第2の印刷電極103の方がシグナル電極として機能する第1の印刷電極102よりも面積が大きくなるように構成されている。本実施例では、基材101、第1の印刷電極102及び第2の印刷電極103を円形状とした。
【0020】
図3に示されるように、基材101は1又は複数の第1の切込み部101aを有し、グラウンド電極として機能する第2の印刷電極103は1又は複数の第2の切込み部103aを有する。基材101の第1の切込み部101a及び第2の印刷電極103の第2の切込み部103aは、線状に形成され、第1の引き出し印刷配線104及び第2の引き出し印刷配線105に対して並行となるように直線的に設けられている。また、基材101の第1の切込み部101aは少なくとも第1の引き出し印刷配線104及び第2の引き出し印刷配線105を分断しない部位に配置されており、第2の印刷電極103の第2の切込み部103aは、第2の印刷電極103を分断しない部位に配置されている。
【0021】
本実施例の静電容量型センサは、第1の切込み部101a及び第2の切込み部103aを有することにより、平面状の基材101および第2の印刷電極103が球面などの非可展面に沿って変形する際に、第1の切込み部101a及び第2の切込み部103aが拡がるため、球面などの非可展面と平面状の基材101および第2の印刷電極103との間に生ずる歪みを吸収することができる。このような観点から、第1及び第2の切込み部101a及び103aは、第1の引き出し印刷配線104及び第2の引き出し印刷配線105に対して「並行となるように直線的に」設けることに限らず、第2の印刷電極103、第1の引き出し印刷配線104及び第2の引き出し印刷配線105を少なくとも分断しなければ、設置面に応じて例えば曲線的に設ける等、どのような形態で設けてもよい。さらに、第1及び第2の切込み部101a及び103aは、線状の切込みに限らず、面状の切込みで形成してもよく、さらに線状の切込みと面状の切込みとの組合せで形成してもよい。第1及び第2の切込み部101a及び103aを線状の切込みにした場合、第2の印刷電極103の面積は切り込み前後で等しいため検出感度を維持することが可能となる。
【0022】
図4(a)及び図4(b)は、本実施例に係る静電容量型センサを円筒台座上及び球面台座上にそれぞれ配置した場合における配置例を示す。図4で用いた静電容量型センサでは、第1の印刷電極102の直径を5mm、第2の印刷電極103の直径を54mm、1又は複数の第1の切込み部101a間及び1又は複数の第2の切込み部103a間の間隔を2.5mm、第1の引き出し印刷配線104及び第2の引き出し印刷配線105の幅を0.5mmとし、基材101の厚みを0.125mmとしたが、これに限定されない。
【0023】
図4(b)に示すように、本実施例に係る静電容量型センサ100は、第1及び第2の切込み部101a及び103aが図4中X軸方向に拡がることにより、XY平面内の任意の一軸であるX軸周りだけでなくY軸周りにも平面状態をほぼ保ったまま曲げることが可能であるため、球面台座上に配置してもその接触面積を従来よりも大幅に増やすことができる。そのため、本実施例に係る静電容量型センサ100は、非可展面からなる球面台座上に設置した場合であっても、従来の静電容量型センサ10と比較して安定的に固定設置が可能である。
【0024】
図5(a)及び図5(b)は、図4(a)及び図4(b)でそれぞれ説明した配置状態の静電容量型センサにおける電界強度分布を示す。この例では、印刷電極102および引き出し印刷配線104と、印刷電極103および引き出し印刷電極105に印加する電圧条件を、周波数200kHz、振幅1Vとし、基材101の比誘電率を3.06と設定した。
【0025】
図5(a)及び図5(b)に示すように、本実施例に係る静電容量型センサ100では、球面台座上に配置した場合であっても円筒台座上に配置した場合の電界強度分布と同様の電界強度分布を得ることができているため、設置面に関わらず従来と同等の検出領域を確保できていることが判る。
【0026】
図6は、導体接近時の静電容量型センサにおける静電容量値の変化量ΔCを示す。ここで、静電容量値の変化量ΔCは、|(導体検出後の静電容量値)-(導体検出前の静電容量値)|を指す。図6に示されるように、本発明に係る静電容量型センサ100では、円筒面配置及び球面配置のいずれの場合であっても、従来の静電容量型センサ10と同等の変化量ΔCを得ることができているため、設置面に関わらず従来と同等の検出感度を確保できていることが判る。
【0027】
以上のように、本発明によると、従来よりも設置自由度が高い静電容量型センサを提供することが可能となるため、非可展面に設置した場合であっても安定的な固定設置を容易に実現可能である。
【0028】
本実施例では、基材101、第1の印刷電極102及び第2の印刷電極103を円形状としたが、これに限定されず、例えば四角形状等、設置面に合わせて適宜構成することができる。
【0029】
また、本実施例では、設置面が球面である場合を例に挙げて説明したが、設置面がドーナツ型などその他の形態の非可展面であっても本実施例と同様に従来と同等の検出感度を確保できる。
【0030】
さらに、本実施例では、第2の印刷電極103の第2の切込み部103aを第2の印刷電極103が分断されないように配置したが、これに限定されず、第2の切込み部103aにより第2の印刷電極103を部分的に分断することによって、当該分断した電極により浮遊電極を形成してもよい。当該浮遊電極の形状を調整するように第2の印刷電極103を切り込んで分断することにより、第2の印刷電極103の面積を減少させて検出感度を簡易に調整することが可能となる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6