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特許7058422花きの品質管理用インジケータおよび花きの品質管理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-14
(45)【発行日】2022-04-22
(54)【発明の名称】花きの品質管理用インジケータおよび花きの品質管理方法
(51)【国際特許分類】
   A01G 7/00 20060101AFI20220415BHJP
【FI】
A01G7/00 603
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2019200597
(22)【出願日】2019-11-05
(65)【公開番号】P2021073852
(43)【公開日】2021-05-20
【審査請求日】2021-01-12
(73)【特許権者】
【識別番号】593038930
【氏名又は名称】インパック株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504173471
【氏名又は名称】国立大学法人北海道大学
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】特許業務法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】守重 碧朗
(72)【発明者】
【氏名】小関 成樹
【審査官】坂田 誠
(56)【参考文献】
【文献】特開平3-48792(JP,A)
【文献】森田 茜,メロンの成熟度を可視化:メイラード反応を用いた温度インジケータの開発,2018年,https://www.agr.hokudai.ac.jp/gs/master/2017/17034201.pdf,備考:2018年2月8日に開催された、北海道大学大学院農学院2017年度修士論文発表会における講演要旨であり、2
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 7/00
G04F 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
糖と溶媒とを有する第1成分溶液を収容する第1袋と、
前記第1袋と連結部を介して連結し、アミノ酸とpH調整剤と溶媒とを有する第2成分溶液を収容する第2袋と、
を有し、
前記糖の濃度は、2.0M以上3.5M以下であり、
前記アミノ酸の濃度は、2.0M以上2.5M以下であり、
前記pH調整剤の濃度は、0.2M以上0.6M以下であり、
前記第1袋または前記第2袋を押圧することにより、前記連結部を介して、前記第1成分溶液と前記第2成分溶液とを接触させ、前記第1成分溶液と前記第2成分溶液とのメイラード反応により、500℃・hに対応する透明から淡青色への第1変色、および1000℃・hに対応する青色から茶色への第2変色が生じる、花きの品質管理用インジケータ。
【請求項2】
糖と溶媒とを有する第1成分溶液を収容する第1袋と、
前記第1袋と連結部を介して連結し、アミノ酸とpH調整剤と溶媒とを有する第2成分溶液を収容する第2袋と、
を有し、
前記糖の濃度は、3.5M±0.25Mであり、
前記アミノ酸の濃度は、2.0M±0.25Mであり、
前記pH調整剤の濃度は、0.4M±0.1Mである、
前記第1袋または前記第2袋を押圧することにより、前記連結部を介して、前記第1成分溶液と前記第2成分溶液とを接触させ、前記第1成分溶液と前記第2成分溶液とのメイラード反応により、500℃・hに対応する透明から淡青色への第1変色、および1000℃・hに対応する青色から茶色への第2変色が生じる、花きの品質管理用インジケータ。
【請求項3】
請求項1または2記載の花きの品質管理用インジケータにおいて、
前記糖は、キシロース、グルコース、フルクトース、ガラクトース、アラビノース、マルトース、マンニトール、スクロースおよびラクトースからなる群より選ばれるいずれか1種以上である、花きの品質管理用インジケータ。
【請求項4】
請求項3記載の花きの品質管理用インジケータにおいて、
前記アミノ酸は、グリシン、アラニン、グルタミン酸、リジンおよびそれらの塩からなる群より選ばれるいずれか1種以上である、花きの品質管理用インジケータ。
【請求項5】
請求項4記載の花きの品質管理用インジケータにおいて、
前記pH調整剤は、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウムおよびリン酸三カリウムからなる群より選ばれるいずれか1種以上である、花きの品質管理用インジケータ。
【請求項6】
請求項5記載の花きの品質管理用インジケータにおいて、
前記糖がキシロースであり、前記アミノ酸がグリシンであり、前記pH調整剤がリン酸水素二ナトリウムである、花きの品質管理用インジケータ。
【請求項7】
請求項5記載の花きの品質管理用インジケータにおいて、
前記メイラード反応による色の変化を確認するための透明窓部と、
前記透明窓部に隣接して設けられた色彩表と、
を有する、花きの品質管理用インジケータ。
【請求項8】
請求項7記載の花きの品質管理用インジケータにおいて、
前記色彩表は、透明部、薄い青色部、青色部、茶色部を有する、花きの品質管理用インジケータ。
【請求項9】
請求項7記載の花きの品質管理用インジケータにおいて、
前記色彩表が印刷された側と反対側の面において、粘着部と、前記粘着部を覆うライナー部とを有する、花きの品質管理用インジケータ。
【請求項10】
花きに付けられたインジケータの色の変化に基づいた花きの品質管理方法であって、
前記インジケータとして、請求項1~9のいずれか1項に記載の花きの品質管理用インジケータを用い、
前記インジケータが透明である場合に、積算温度500℃・h以内であると判断する、花きの品質管理方法。
【請求項11】
花きに付けられたインジケータの色の変化に基づいた花きの品質管理方法であって、
前記インジケータとして、請求項1~9のいずれか1項に記載の花きの品質管理用インジケータを用い、
前記インジケータが青色である場合に、積算温度1000℃・h以内であると判断する、花きの品質管理方法。
【請求項12】
花きに付けられたインジケータの色の変化に基づいた花きの品質管理方法であって、
前記インジケータとして、請求項1~9のいずれか1項に記載の花きの品質管理用インジケータを用い、
前記インジケータが茶色でない場合に、積算温度1000℃・h未満であると判断し、
前記インジケータが茶色である場合に、積算温度1000℃・h以上であると判断する、花きの品質管理方法。
【請求項13】
糖と溶媒とを有する第1成分溶液を収容する第1袋と、
前記第1袋と連結部を介して連結し、アミノ酸とpH調整剤と溶媒とを有する第2成分溶液を収容する第2袋と、
を有し、
前記糖の濃度は、4.0M±0.25Mであり、
前記アミノ酸の濃度は、2.5M±0.25Mであり、
前記pH調整剤の濃度は、0.5M±0.1Mであり、
前記第1袋または前記第2袋を押圧することにより、前記連結部を介して、前記第1成分溶液と前記第2成分溶液とを接触させ、前記第1成分溶液と前記第2成分溶液とのメイラード反応により、透明から茶色への変色が生じ、
前記茶色への変色は、500℃・hに対応する、花きの品質管理用インジケータ。
【請求項14】
花きに付けられたインジケータの色の変化に基づいた花きの品質管理方法であって、
前記インジケータとして、請求項13に記載の花きの品質管理用インジケータを用い、
前記インジケータが茶色でない場合に、積算温度500℃・h未満であると判断し、
前記インジケータが茶色である場合に、積算温度500℃・h以上であると判断する、花きの品質管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、花きの品質管理用インジケータおよび花きの品質管理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
花には様々な魅力があり、生活を豊かにするため、様々な形で流通している。特に、切り花は手軽に楽しむことができる商品であるため、広く流通している。例えば、花きの販売農家(生産者)で育てられた花は、収穫(採花)され切り花となる。収穫された切り花は、10本~20本程度に束ねられ、複数の束が寝かされた状態でダンボールに梱包され出荷される。例えば、出荷された切り花は、市場に集められ、ブーケメーカー、小売店(スーパーマーケットなど)を介して消費者の手に渡る。
【0003】
このような切り花において、その商品価値を定める大きな指標として、“日持ち”がある。市場、ブーケメーカー、小売店(スーパーマーケットなど)および消費者において、切り花が“どのくらい日持ちするのか”は、重要な関心事である。
【0004】
例えば、「切り花の日持ち評価レファレンステストマニュアル」に基づき、実際の切り花の変化を調査シートに基づきチェックすることで“日持ち”を評価することが行われているが、評価基準が複雑であり、また、流通している際の温度変化など、切り花に対する影響を常に反映させることは困難である。
【0005】
このような状況において、より簡単に、一目で、確認できる、切り花の“日持ち”の指標を判断するためのインジケータやそれを用いた品質管理方法の策定が望まれる。
【0006】
例えば、特許文献1には、野菜や肉類、魚類のような生鮮食品や弁当、惣菜等の加工食品の原材料や中間、最終製品などの飲食品の他、ワクチンなどの薬剤、生化学用サンプル、化粧品など(飲食品等)の保存環境の温度や各環境下の保存経過時間によって変化する品質に影響する温度履歴を判定するためのインジケータが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】国際公開第2013/054952号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明者らは、切り花の品質向上に関する研究・開発に従事しており、前述した、より簡単に、一目で、確認できる、切り花の“日持ち”の指標を判断するためのインジケータやそれを用いた品質管理方法について、鋭意検討している。
【0009】
その中で、切り花の“日持ち”の指標を策定し、この指標にあったインジケータを見出し、切り花の品質管理方法を見出すに至った。
【課題を解決するための手段】
【0010】
[1]本発明の花きの品質管理用インジケータは、第1成分溶液を収容する第1袋と、前記第1袋と連結部を介して連結し、第2成分溶液を収容する第2袋と、を有し、前記第1袋または前記第2袋を押圧することにより、前記連結部を介して、前記第1成分溶液と前記第2成分溶液とを接触させ、前記第1成分溶液と前記第2成分溶液とのメイラード反応により、透明から淡青色への第1変色、および青色から茶色への第2変色が生じる。
【0011】
[2]上記花きの品質管理用インジケータにおいて、前記第1変色は、500℃・hに対応し、前記第2変色は、1000℃・hに対応する。
【0012】
[3]上記花きの品質管理用インジケータにおいて、前記第1成分溶液は、糖と溶媒とを有し、前記第2成分溶液は、アミノ酸とpH調整剤と溶媒とを有する。
【0013】
[4]上記花きの品質管理用インジケータにおいて、前記糖は、キシロース、グルコース、フルクトース、ガラクトース、アラビノース、マルトース、マンニトール、スクロースおよびラクトースからなる群より選ばれるいずれか1種以上である。
【0014】
[5]上記花きの品質管理用インジケータにおいて、前記アミノ酸は、グリシン、アラニン、グルタミン酸、リジンおよびそれらの塩からなる群より選ばれるいずれか1種以上である。
【0015】
[6]上記花きの品質管理用インジケータにおいて、前記pH調整剤は、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウムおよびリン酸三カリウムからなる群より選ばれるいずれか1種以上である。
【0016】
[7]上記花きの品質管理用インジケータにおいて、前記糖の濃度は、2.0M以上3.5M以下であり、前記アミノ酸の濃度は、2.0M以上2.5M以下であり、前記pH調整剤は、0.2M以上0.6M以下である。
【0017】
[8]上記花きの品質管理用インジケータにおいて、前記糖がキシロースであり、前記アミノ酸がグリシンであり、前記pH調整剤がリン酸水素二ナトリウムである。
【0018】
[9]上記花きの品質管理用インジケータにおいて、前記糖の濃度は、3.5M±0.25Mであり、前記アミノ酸の濃度は、2.0M±0.25Mであり、前記pH調整剤は、0.4M±0.1Mである。
【0019】
[10]上記花きの品質管理用インジケータにおいて、前記糖の濃度は、4.0M±0.25Mであり、前記アミノ酸の濃度は、2.0M±0.25Mであり、前記pH調整剤は、0.5M±0.1Mである。
【0020】
[11]上記花きの品質管理用インジケータにおいて、前記メイラード反応による色の変化を確認するための透明窓部と、前記透明窓部に隣接して設けられた色彩表と、を有する。
【0021】
[12]上記花きの品質管理用インジケータにおいて、前記色彩表は、透明部、淡青色部、青色部、茶色部を有する。
【0022】
[13]本発明の花きの品質管理方法は、花きに付けられたインジケータの色の変化に基づいた花きの品質管理方法であって、前記インジケータとして、上記花きの品質管理用インジケータを用い、前記インジケータが透明である場合に、積算温度500℃・h以内であると判断する。
【0023】
[14]上記花きに付けられたインジケータの色の変化に基づいた花きの品質管理方法であって、前記インジケータとして、上記花きの品質管理用インジケータを用い、前記インジケータが青色である場合に、積算温度1000℃・h以内であると判断する。
【0024】
[15]上記花きに付けられたインジケータの色の変化に基づいた花きの品質管理方法であって、前記インジケータとして、上記花きの品質管理用インジケータを用い、前記インジケータが茶色でない場合に、積算温度1000℃・h未満であると判断し、前記インジケータが茶色である場合に、積算温度1000℃・h以上であると判断する。
【0025】
[16]本発明の花きの品質管理用インジケータは、第1成分溶液を収容する第1袋と、前記第1袋と連結部を介して連結し、第2成分溶液を収容する第2袋と、を有し、前記第1袋または前記第2袋を押圧することにより、前記連結部を介して、前記第1成分溶液と前記第2成分溶液とを接触させ、前記第1成分溶液と前記第2成分溶液とのメイラード反応により、透明から茶色への変色が生じ、前記茶色への変色は、500℃・hに対応する。
【0026】
[17]上記花きの品質管理用インジケータにおいて、前記糖の濃度は、4.0M±0.25Mであり、前記アミノ酸の濃度は、2.5M±0.25Mであり、前記pH調整剤は、0.5M±0.1Mである。
【0027】
[18]本発明は、花きに付けられたインジケータの色の変化に基づいた花きの品質管理方法であって、前記インジケータとして、上記花きの品質管理用インジケータを用い、前記インジケータが茶色でない場合に、積算温度500℃・h未満であると判断し、前記インジケータが茶色である場合に、積算温度500℃・h以上であると判断する。
【発明の効果】
【0028】
本発明の花きの品質管理用インジケータによれば、切り花の品質管理を行う際に重要な指標となる、約500℃・h、約1000℃・hの積算温度を判定することができる。特に、このような積算温度の判定を、簡単に、一目で、確認することができる。
【0029】
本発明の花きの品質管理方法によれば、切り花の品質管理を行う際に重要な指標となる、約500℃・h、約1000℃・hの積算温度を容易に判定することができ、切り花の“日持ち”などの品質を管理することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】切り花の流通段階における必須の積算温度の算出例を示したものである。
図2】積算温度インジケータの変色の様子を示す図である。
図3】起動させたインジケータ(condition5)の色の変化を示す図である。
図4】実施例2の温度変化およびインジケータの色の変化を示す図である。
図5】実施例3の温度変化およびインジケータの色の変化を示す図である。
図6】実施例3の温度変化およびインジケータの色の変化を示す図である。
図7】実施例4の温度変化およびインジケータのR値、G値、B値を示す図である。
図8】実施例4の温度変化およびインジケータのR値、G値、B値を示す図である。
図9】花き用インジケータを示す図(模式図)である。
図10】花き用インジケータの製造方法の一例を示す図(模式図)である。
図11】花き用インジケータの応用例1の構成を示す図(模式図)である。
図12】花き用インジケータの応用例2の構成を示す図(模式図)である。
図13】出荷時のダンボールに花き用インジケータを貼り付けた様子を示す図である。
図14】花束に花き用インジケータを差し込んだ様子を示す図である。
図15】500℃・h用の花き用インジケータを示す図(模式図)である。
図16】インジケータの起動の様子を示す図である。
図17】インジケータの色の変化例を示す図である。
図18】1000℃・h用の花き用インジケータを示す図(模式図)である。
図19】インジケータの色の変化例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0032】
(実施の形態1)
<切り花の流通における積算温度>
図1は、切り花の流通段階における必須の積算温度(温度[℃]×時間[h]、温度時間値とも言う)の算出例を示したものである。
【0033】
図1に示すように、生産者(農家)では、採花において25℃×8h、その保管において6℃×12hの272℃・hが必須の積算温度となる。
【0034】
また、生産者(農家)から市場への輸送では、冷蔵輸送の場合7℃×10hの70℃・hが、常温輸送の場合30℃×10hの300℃・hが、必須の積算温度となる。
【0035】
また、市場では、保管において20℃×6hの120℃・hが必須の積算温度となる。
【0036】
また、市場からブーケメーカーへの輸送では、冷蔵輸送の場合7℃×5hの35℃・hが、常温輸送の場合30℃×5hの150℃・hが、必須の積算温度となる。
【0037】
また、ブーケメーカーでは、保管において5℃×10hの50℃・h、加工において20℃×5hの100℃・hが必須の積算温度となる。
【0038】
また、ブーケメーカーから小売店(スーパーマーケットなど)への輸送では、20℃×7hの140℃・hが必須の積算温度となる。
【0039】
例えば、このような算出例によれば、生産者(農家)からブーケメーカーまでの間において、冷蔵輸送を行った場合には、約500℃・hが必須の積算温度となり、常温輸送を行った場合には、約1000℃・hが必須の積算温度となる。
【0040】
なお、切り花の生命力を20℃で14日(20℃×14×24h=6720℃・h)とした場合、500℃・h(20℃で約1日)を引いても20℃で13日の品質が保証され、例えば、小売店で4日、消費者で7日の日持ちは、確保することができる。また、1000℃・h(20℃で約2日)を引いても、例えば、小売店で3日、消費者で7日の日持ちは、確保することができる。
【0041】
以上のとおり、約500℃・h、約1000℃・hの積算温度が、切り花の品質管理を行う際に重要な指標となる。以下において、約500℃・h、約1000℃・hの積算温度を判定できる積算温度インジケータ(TTI:time temperature indicator)の開発が望まれる。
【0042】
例えば、図2に示すように、500℃・hの前後で第1変色(例えば、透明→淡青)、1000℃・hの前後で第2変色(例えば、濃青→茶)する積算温度インジケータが得られれば有用である。図2は、積算温度インジケータの変色の様子を示す図である。
【0043】
<積算温度インジケータの検討>
本実施の形態の積算温度インジケータは、糖、アミノ酸、pH調整剤および溶媒を含有し、メイラード反応が開始・進行することで生じる色の変化に基づいて積算温度を判定するものである。そして、積算温度が、500℃・hの前後で第1変色(例えば、透明→淡青)し、1000℃・hの前後で第2変色(例えば、青→茶)するよう、成分組成を調整した物である。
【0044】
メイラード反応とは、糖とアミノ化合物との反応により褐色物質(メラノイジン)を生み出す反応であり、加熱時には短時間で進行するが、常温でも長時間をかけて進行する。本実施の形態の積算温度インジケータは、ゆっくりと長時間かけて進行する上記メイラード反応を利用したものである。
【0045】
以下、本実施の形態の積算温度インジケータについて、具体的な実施例を説明する。
【0046】
<実施例>
(実施例1)
キシロース水溶液およびグリシン水溶液を調整した。
【0047】
キシロースと水とを混合し、キシロースの濃度が2.0M~3.5Mとなるように調整したキシロース水溶液を複数準備した。
【0048】
グリシンとNaHPOと水とを混合し、グリシンの濃度が2.0M~2.5M、NaHPOの濃度が0.2M~0.4Mとなるように調整したグリシン水溶液を複数準備した。
【0049】
【表1】
ポリエチレンテレフタレート製の2つの透明パウチを2つ用意した。一方の透明パウチAは、45×30×1mmであり、他方の透明パウチBは、30×20×1mmである。透明パウチBに、キシロース水溶液を500μL注入し、熱封止した。透明パウチAに、グリシン水溶液を1000μL注入し、透明パウチBを投入した後、熱封止することによりインジケータを作製した。内側の透明パウチBの封止部(シール部)を指で押圧することにより破り、キシロース水溶液とグリシン水溶液とを混合することで、メイラード反応を開始させた(インジケータを起動させた)。
【0050】
起動させたインジケータを、5℃、10℃に設定したインキュベータで200時間保管し、それぞれ50時間間隔で色の変化を確認した。
【0051】
表1に示すキシロース、グリシン、NaHPOの組み合わせ(condition1~5)において、いずれの場合にも、以下の色の変化が確認できた。
【0052】
5℃のインキュベートでは、100時間前後で色が変化し始め、200時間では濃青色(濃い青色、紺色)を呈した。この場合、積算温度が500℃・h前後で色が変化し始め、1000℃・hで濃青色を呈したこととなる。
【0053】
また、10℃のインキュベートでは、50時間前後で色が変化し始め、100時間では濃青色を呈した。この場合、積算温度が500℃・h前後で色が変化し始め、1000℃・hで濃青色を呈したこととなる。
【0054】
特に、condition5において、色の変化が顕著であり、その様子を図3に示す。図3は、起動させたインジケータ(condition5)の色の変化を示す図(写真)である。
【0055】
図3に示すように、condition5のインジケータにおいて、5℃のインキュベートでは、100時間前後で色が変化し始め、淡青(薄い青)となり、200時間では濃青色を呈した。この場合、積算温度が500℃・h前後で色が、透明から淡青に変化し、1000℃・hで濃青色を呈した。
【0056】
また、10℃のインキュベートでは、50時間前後で色が変化し始め、淡青となり、100時間では濃青色を呈した。この場合、積算温度が500℃・h前後で色が、透明から淡青に変化し、1000℃・hで濃青色を呈した。
【0057】
さらに、10℃のインキュベートにおいて、100時間以降においては、濃青色から茶色への色の変化が確認されたことから、積算温度が1000℃・hを超えた段階で茶色を呈し、さらなる色の変化が確認できた。
【0058】
よって、本実施例のインジケータにおいて、色が、ほぼ透明(淡青まで)であれば、積算温度が500℃・h以内であることが分かる。また、本実施例のインジケータにおいて、色が、ほぼ青(濃青を含み、かつ、茶になっていない)であれば、積算温度が1000℃・h以内であることが分かる。
【0059】
(実施例2)
実施例1においては、5℃または10℃でインキュベートしたが、本実施例においてはcondition5のインジケータを用い、3℃でインキュベートした。図4は、実施例2の温度変化およびインジケータの色の変化を示す図である。図4(A)は、インキュベータ内の温度変化であり、図4(B)は、インジケータ(condition5)の色の変化(写真)である。なお、写真上のカラーバーは、写真のデジタル画像解析によるRGB値(RGB_value)に基づくものであり、写真の下に(R値,G値,B値)を示した。また、カラーバー上の数値は積算温度である。また、インキュベータ内(庫内)の温度変化は、データロガー(Thermo Recorder TR-7wf, GRAPHTEC midiLOGER GL240)で記録した。
【0060】
図4(B)に示すように、condition5のインジケータにおいて、3℃のインキュベートでは、積算温度が500℃・h前後で色が、透明から淡青に変化し、1000℃・hで濃青色を呈した。このように3℃のインキュベートにおいても、実施例1(5℃、10℃)の場合と同様の色の変化を呈した。
【0061】
(実施例3)
本実施例においては、インキュベータ内(庫内)の温度を3℃~16℃の範囲で変化させた場合について検討した。図5および図6は、実施例3の温度変化およびインジケータの色の変化を示す図である。図5は、起動後、初期の段階(80h以内)で16℃程度までの昇温を行った場合、図6は、起動後、後期の段階(80h以降)で16℃程度までの昇温を行った場合である。各図において、(A)は、インキュベータ内の温度変化およびRGB値を示し、(B)は、インジケータ(condition5)の色の変化(写真)を示す。なお、写真上のカラーバーは、写真のデジタル画像解析によるRGB値(RGB_value)に基づくものであり、写真の下に(R値,G値,B値)を示した。また、カラーバー上の数値は積算温度である。また、インキュベータ内(庫内)の温度変化は、データロガー(Thermo Recorder TR-7wf, GRAPHTEC midiLOGER GL240)で記録した。
【0062】
図5(B)に示すように、condition5のインジケータにおいて、図5(A)に示す温度変化のインキュベートでは、積算温度が500℃・h前後で色が、透明から淡青に変化し、1000℃・hで濃青色を呈した。また、図6(B)に示すように、condition5のインジケータにおいて、図6(A)に示す温度変化のインキュベートでは、積算温度が500℃・h前後で色が、透明から淡青に変化し、1000℃・hで濃青色を呈した。また、積算温度が1454℃・hでは茶色を呈した。
【0063】
このようにインキュベータ内(庫内)の温度を3℃~16℃の範囲で変化させた場合についても、実施例1(5℃、10℃)の場合と同様の色の変化を呈した。
【0064】
また、図5(A)、図6(A)において、R値、G値、B値のいずれにおいても、積算温度が500℃・h程度(図5(A)では50h近傍、図6(A)では90h近傍)で、各値(color_value)の急激な変化が確認できる。なお、color_valueにおいて、“1”側は白色側であり、“0”側は黒色側である。写真は白色を背景として撮影している。
【0065】
よって、インジケータの色(写真)のデジタル画像解析によるR値、G値、B値を求め、その変化率から色の変化を確認することができる。例えば、インジケータの写真をスマートフォンなどの携帯端末で撮影し、専用アプリ(デジタル画像解析プログラム)に格納された検量線により、積算温度を確認することができる。
【0066】
また、RGB値により、積算温度を確認してもよい。前述の図4図6に示す、R値、G値、B値から、例えば、RGB値(color_value、例えば、G値、B値)が、1~0.65の場合には、透明、0.65~0.45の場合には、淡青、0.45~0.25の場合には、青、0.25~0.1の場合には、濃青、0.1~0の場合には、茶と判断してもよい。よって、RGB値(color_value)が、1~0.45の場合には、透明または淡青であるため、積算温度が500℃・h以内であると、また、0.45~0.1の場合には、ほぼ青(濃青を含み、かつ、茶になっていない)であるため、積算温度が1000℃・h以内であると、判断することができる。なお、RGB値(color_value)としては、R値、G値、B値のいずれを用いてもよい。このインジケータでは、B値を用いることが好ましい。なお、値の範囲において、境界値はどちらに含めてもよい。
【0067】
(実施例4)
本実施例においては、表2に示す配合割合で、キシロース水溶液およびグリシン水溶液を調整し、実施例1の場合と同様にしてインジケータを作製し、色の変化を確認した。本実施例においても、実施例1と同様の色の変化を呈した。
【0068】
【表2】
この場合も、condition5において、色の変化が顕著であった。また、condition5において、各種温度でインジケータを起動させ、インジケータの色(写真)のデジタル画像解析によるR値、G値、B値を求めた。図7図8は、実施例4の温度変化(a~d)およびインジケータのR値、G値、B値を示す図である。図7に示す温度変化でインジケータを起動させ、インジケータの色(写真)のデジタル画像解析によるR値、G値、B値を求めた。
【0069】
図8(A)に示すように、いずれの温度変化の場合(a~d)も、積算温度500℃・hにおけるR値、G値、B値に大差はなかった。また、図8(B)に示すように、積算温度1000℃・hにおけるR値、G値、B値にも大差はなかった。
【0070】
よって、インジケータの色(写真)のデジタル画像解析によるR値、G値、B値に基づき、検量線などから、積算温度を確認しても問題ないことが判明した。
【0071】
(実施の形態2)
<インジケータの構成>
図9は、花き用インジケータを示す図(模式図)である。図9(A)に示すように、本実施の形態の花き用インジケータは、第1成分溶液L1を収容する第1袋(第1袋部)P1と、第2成分溶液L2を収容する第2袋(第2袋部)P2とを有する。これらの袋(袋部)は連結され、図9(B)に示すように連結部CNの近傍を指で押圧し、剥離することにより、第1成分溶液L1と第2成分溶液L2とが混合され、メイラード反応により、所定の積算温度経過後に、色の変化を呈する。
【0072】
第1袋P1内には、第1成分溶液L1として糖の溶液(糖および溶媒)が封入(収容)されている。糖としては、例えば、キシロース、グルコース、フルクトース、ガラクトース、アラビノース、マルトース、マンニトール、スクロースおよびラクトースからなる群より選ばれるいずれか1種以上を用いることができる。特に、花き用インジケータとしては、キシロースを用いることが好ましい。糖の溶液の濃度は、2.0M~3.5Mが好ましい。封入量に制限はないが、例えば、0.3ml~5ml程度である。
【0073】
第2袋P2内には、第2成分溶液L2としてアミノ酸およびpH調整剤の溶液(アミノ酸、pH調整剤糖および溶媒)が封入(収容)されている。糖とpH調整剤との接触によりメイラード反応とは別の反応により変色が生じ得るため、pH調整剤はアミノ酸側に封入することが好ましい。
【0074】
アミノ酸としては、例えば、グリシン、アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン、グルタミン酸、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、トレオニン、トリプトファン、チロシン、およびバリンおよびこれらの塩からなる群より選ばれるいずれか1種以上を用いることができる。特に、花き用インジケータとしては、グリシン、アラニンまたはこれらの塩を用いることが好ましい。上記アミノ酸の塩としては、例えば、塩酸塩、アンモニウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩並びにマグネシウム塩を用いることができる。pH調整剤としては、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウムおよびリン酸三カリウムからなる群より選ばれるいずれか1種以上を用いることができる。特に、花き用インジケータとしては、リン酸水素二カリウムまたはリン酸水素二ナトリウムを用い、糖とアミノ酸との混合物のpHを中性~弱塩基性に調整することが好ましい。アミノ酸の濃度は、2.0M~2.5Mが好ましい。pH調整剤の濃度は、0.2M~0.6Mが好ましい。封入量に制限はないが、例えば、0.3ml~5ml程度とすることができる。なお、第2成分溶液L2としてアミノ酸およびpH調整剤が含まれているため、第1成分溶液L1より多く封入してもよい。
【0075】
溶媒としては、糖、アミノ酸およびpH調整剤を溶解できる溶媒であれば制限はないが、水を用いることが好ましい。
【0076】
上記の第1成分溶液L1および第2成分溶液L2を混合させることにより、積算温度が500℃・hまたは1000℃・hの近傍で色の変化を生じるメイラード反応を起こさせることができる。別の言い方をすれば、花きの品質管理において重要な意味を有する500℃・hまたは1000℃・hの積算温度近傍で色の変化を呈するインジケータを得ることができる。
【0077】
第1袋P1および第2袋P2の材料は、封入する第1成分溶液L1および第2成分溶液L2により変質しないものであれば、制限はないが、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレン、エチレンエチルアクリレート(EEA)、エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂(EVA)あるいはアイオノマー樹脂などを用いることができる。特に、花き用インジケータとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンを用いることが好ましい。これらは、酸に対する安定性が高く、熱溶着により、容易に封止することができる。また、透明性が高く、色の変化を容易に認識することができる。
【0078】
上記材料を熱溶着することにより袋状とすることができる。連結部のシール強度は、他の部分のシール強度より小さくする。例えば、加熱温度や加熱圧力を小さくすることで連結部のシール強度を小さくすることができる。また、連結部の幅を他の部分より小さくすることで、連結部のシール強度を小さくすることができる。
【0079】
<インジケータの製法>
インジケータの製法に制限はないが、例えば、図10に示す工程で製造することができる。図10は、花き用インジケータの製造方法の一例を示す図(模式図)である。
【0080】
例えば、図10(A)に示すように、略矩形のフィルム材料(第1袋P1および第2袋P2の材料)を2つ折りとし、底部および側面(ここでは、右側)を熱溶着する。この際、連結部CNも熱溶着する。これにより、2つの袋(袋部、P1、P2)が形成される(図10(B))。
【0081】
この後、第1袋P1に第1成分溶液L1を注入し、第2袋P2に第2成分溶液L2を注入した後、袋(P1、P2)の上部を熱溶着することにより封止する。これによりインジケータを形成することができる。インジケータの大きさは、例えば、縦3cm~6cm程度、横3cm~6cm程度、厚さ3mm~10mmである。
【0082】
(応用例1)
図11は、花き用インジケータの応用例1の構成を示す図(模式図)である。第1袋P1および第2袋P2(インジケータ)としては、少なくともその一部に透明部(透明窓部)CLを有する構成であればよく、他の部分には、商品名や使用方法などが印刷されていてもよい。特に、透明部(透明窓部)CLの隣にカラーバー(色調表、色彩表)CBなどを印刷しておくことで、花きの残りの生命力(品質保持期間)の目安(概算)を知ることができる。
【0083】
カラーバー(色調表、色彩表)CBとしては、例えば、透明、淡青、青、茶などを印刷しておく。また、カラーバー(色調表、色彩表)CBとして、色見本(PANTONE)に基づいた色を印刷してもよい。色見本の組み合わせ例としては、例えば、透明、552C、5473C、412Cなどとすることができる。
【0084】
また、連結部CNの近傍に、押圧部を示すマークを印刷してもよい(図15等参照)。
【0085】
(応用例2)
図12は、花き用インジケータの応用例2の構成を示す図(模式図)である。インジケータ1に、花き用の箱などの包装体に取り付けるための部材を予め準備しておいてもよい。例えば、図12(A)に示すように、インジケータ1の裏面(印刷面と逆側の面)に両面テープを貼り付けてもよい。両面テープは、接着部(粘着部、接着剤)10と剥離ライナー13とを有し、剥離ライナー(ライナー部)13を剥すことで、接着部10を花きの包装体に貼り付けることができる(図13参照)。
【0086】
また、例えば、図12(B)に示すように、インジケータ1に紐15を取付け、例えば、花の茎や枝に紐をかけるまたは結ぶなどして、インジケータ1を取付けてもよい。紐の長さは適宜調整可能である。
【0087】
<花き用インジケータの使用方法>
次いで、花き用インジケータの使用方法の一例について説明する。図13は、出荷時のダンボールに花き用インジケータを貼り付けた様子を示す図である。このように、インジケータ1を駆動させ、ダンボールの外側に貼り付けることにより、花きの品質管理を行うことができる。インジケータ1の貼り付け箇所は、ダンボールの内側でもよい。また、収納されている花の束ごとにインジケータ1を取付けてもよい。
【0088】
本実施の形態のインジケータは、花きの流通の種々の段階で用いることができる(図1参照)。図14は、花束に花き用インジケータを差し込んだ様子を示す図である。このように、小売店(スーパーマーケットなど)において、加工された花束に、花きの品質管理用としてインジケータ1を取付けてもよい。図14においては、花きの透明ラッピングフィルムのポケットに花き用インジケータ1を差し込むことでインジケータ1を固定している。
【0089】
(実施の形態3)
実施の形態1の実施例1のインジケータ(condition5、図3)においては、500℃・hの前後で第1変色(透明→淡青)が目視において判別し難い。
【0090】
よって、実施の形態1のインジケータ(condition5、図3)、即ち、キシロースの濃度が3.5M、グリシンの濃度が2.0M、NaHPOの濃度が0.4Mの組み合わせのインジケータを、1000℃・h用のインジケータとし、キシロースの濃度が4.0M、グリシンの濃度が2.0M、NaHPOの濃度が0.5Mの組み合わせのインジケータを、500℃・h用のインジケータとしてもよい。キシロースの濃度を大きくすることにより、変色の程度を大きくし、茶色への変色の時間を短くすることができ、より判別しやすくなる。このように2種のインジケータを使い分けることで、より簡単に明確に品質管理を行うことができる。
【0091】
図15は、500℃・h用の花き用インジケータを示す図(模式図)である。このインジケータ(TTI=500)においては、透明部(透明窓部)CLの隣にカラーバー(色調表、色彩表)CBが印刷され、カラーバー(色調表、色彩表)CBとしては、例えば、透明、淡青、青、茶が印刷されている。そして、連結部の近傍に、押圧部を示すマークが印刷されている。
【0092】
このような500℃・h用のインジケータを図16に示すように起動させる。図16は、インジケータの起動の様子を示す図である。このようにして、前述した2つの液(第1成分溶液L1と第2成分溶液L2)を混合する。この後、メイラード反応により、所定の積算温度経過後(この場合は、500℃・h経過後)に、茶色への変化を呈する。
【0093】
図17は、インジケータの色の変化例を示す図である。例えば、図17(A)に示すように、透明部(透明窓部)CLの色が、青(茶でない)であれば、積算温度は500℃・h未満であり、例えば、高品質(OK)であると判定することができる。対して、図17(B)に示すように、透明部(透明窓部)CLの色が、茶であれば、積算温度は500℃・h以上であり、例えば、高品質と判定することはできない(NG)。
【0094】
図18は、1000℃・h用の花き用インジケータを示す図(模式図)である。このインジケータ(TTI=1000)においては、透明部(透明窓部)CLの隣にカラーバー(色調表、色彩表)CBが印刷され、カラーバー(色調表、色彩表)CBとしては、例えば、透明、淡青、青、茶が印刷されている。そして、連結部の近傍に、押圧部を示すマークが印刷されている。
【0095】
このような1000℃・h用のインジケータを起動させ(図16参照)、前述した2つの液(第1成分溶液L1と第2成分溶液L2)を混合する。この後、メイラード反応により、所定の積算温度経過後(この場合は、1000℃・h経過後)に、茶色への変化を呈する。
【0096】
図19は、インジケータの色の変化例を示す図である。例えば、図19(A)に示すように、透明部(透明窓部)CLの色が、青(茶でない)であれば、積算温度は1000℃・h未満であり、例えば、品質良(OK)であると判定することができる。対して、図19(B)に示すように、透明部(透明窓部)CLの色が、茶であれば、積算温度は1000℃・h以上であり、例えば、品質良と判定することはできない(NG)。
【0097】
ここで、上記2つのインジケータのキシロースの濃度およびグリシンの濃度は、±0.25Mの範囲で変化しても良好な色調の変化を維持することができる。また、NaHPOの濃度は、±0.1Mの範囲で変化しても良好な色調の変化を維持することができる。
【0098】
このように2種のインジケータを設計することで、茶への色変化を基準とし、花きの品質の良否を判断することができる。
【0099】
例えば、アプリなどを用い、RGB値により、積算温度を確認する場合には、RGB値(color_value)が、0.1以上である場合は、積算温度が基準(500℃・hまたは1000℃・h)以内であると、また、0.1未満である場合は、積算温度が基準を超えていると判断することができる。
【0100】
(実施の形態4)
実施の形態1(図1)においては、国内の花きの流通を例に、積算温度500℃・h、1000℃・hの重要性を説明したが、花きの流通においては、国際的な取引も考慮する必要がある。この場合、空輸や検疫などによる積算温度が加算され、花きの品質が大きく左右され得る。このような状況に鑑み、花きの商取引において、花きの品質管理を標準化すべく、国内ルールや国際ルールを策定することが好ましい。
【0101】
本発明のインジケータによれば、500℃・h、1000℃・hの積算温度を簡単に、一目で、確認することができ、花きの品質管理の標準化に有効に寄与するものと思われる。
【0102】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0103】
1 インジケータ
10 接着部
13 剥離ライナー
15 紐
CB カラーバー
CL 透明部
CN 連結部
L1 第1成分溶液
L2 第2成分溶液
P1 第1袋
P2 第2袋
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19