(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-14
(45)【発行日】2022-04-22
(54)【発明の名称】水生動物脱出装置および定置網
(51)【国際特許分類】
A01K 69/00 20060101AFI20220415BHJP
【FI】
A01K69/00
(21)【出願番号】P 2019507029
(86)(22)【出願日】2018-03-23
(86)【国際出願番号】 JP2018011789
(87)【国際公開番号】W WO2018174258
(87)【国際公開日】2018-09-27
【審査請求日】2021-02-04
(31)【優先権主張番号】P 2017057599
(32)【優先日】2017-03-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成28年度沿岸漁業海亀混獲防止対策事業、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】504196300
【氏名又は名称】国立大学法人東京海洋大学
(73)【特許権者】
【識別番号】591018877
【氏名又は名称】日東製網株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100082991
【氏名又は名称】佐藤 泰和
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100152205
【氏名又は名称】吉田 昌司
(72)【発明者】
【氏名】塩出 大輔
(72)【発明者】
【氏名】胡 夫祥
(72)【発明者】
【氏名】平井 良夫
【審査官】吉田 英一
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-28929(JP,A)
【文献】米国特許第4739574(US,A)
【文献】米国特許第5076000(US,A)
【文献】米国特許第4805335(US,A)
【文献】田村怜子,塩出大輔,金子由香里,胡夫祥,東海正,小林真人,阿部寧,中層・底層定置網の箱網用海亀脱出装置に対する海亀の行動,日本水産学会誌,第80巻第6号,日本,2014年,900-907頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 69/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
定置網用の水生動物脱出装置であって、
第1の端部および第2の端部を有するスリット部が設けられた網体と、
前記網体に設けられた第1および第2の浮体と、を備え、
前記第1の浮体は、前記第1の端部および前記第2の端部を結ぶ直線を含む帯状領域のうち、前記第1の端部から前記スリット部の反対側に延びる第1の浮体取付領域に設けられ、
前記第2の浮体は、前記帯状領域のうち、前記第2の端部から前記スリット部の反対側に延びる第2の浮体取付領域に設けられていることを特徴とする水生動物脱出装置。
【請求項3】
定置網用の水生動物脱出装置であって、
第1の上辺部、第1の側辺部および第2の側辺部を有する第1の網部材と、
第2の上辺部、第3の側辺部および第4の側辺部を有する第2の網部材と、
第1の斜辺部において前記第1の網部材の前記第1の側辺部に接続され、第2の斜辺部において前記第2の網部材の前記第3の側辺部に接続された第3の網部材と、
第3の斜辺部において前記第1の網部材の前記第2の側辺部に接続され、第4の斜辺部において前記第2の網部材の前記第4の側辺部に接続された第4の網部材と、を備え、
前記第1の網部材の前記第1の上辺部と、前記第2の網部材の前記第2の上辺部とは、少なくとも一部分において互いに接続されておらず、
前記第3の網部材に第1の浮体が設けられ、前記第4の網部材に第2の浮体が設けられており、
前記第1の浮体と前記第2の浮体の浮力により前記第1の上辺部と前記第2の上辺部の両端が外方向に引っ張られて、前記第1の上辺部と前記第2の上辺部間の脱出口が閉じることを特徴とする水生動物脱出装置。
【請求項9】
前記第1の網部材は、前記第1の上辺部から延在する第1の延在部をさらに有し、前記第2の網部材は、前記第2の上辺部から延在する第2の延在部をさらに有し、前記第3の網部材は、前記第1の斜辺部と前記第2の斜辺部を接続する第3の上辺部をさらに有し、前記第4の網部材は、前記第3の斜辺部と前記第4の斜辺部を接続する第4の上辺部をさらに有し、
前記第1の延在部は、前記第1の側辺部から延出する第1の側端部と、前記第2の側辺部から延出する第2の側端部とを有し、
前記第2の延在部は、前記第3の側辺部から延出する第3の側端部と、前記第4の側辺部から延出する第4の側端部とを有し、
前記第1の延在部と前記第2の延在部は、上下に重なるように配置され、
前記第1および第3の側端部が前記第3の上辺部に接続され、前記第2および第4の側端部が前記第4の上辺部に接続されていることを特徴とする請求項3または4に記載の水生動物脱出装置。
【請求項12】
請求項1~11のいずれかに記載の水生動物脱出装置が天井網に設けられた定置網。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水生動物脱出装置、より詳しくは、定置網に入網した漁獲対象外の水生動物が自立的に網外に脱出することを可能とする水生動物脱出装置、および当該水生動物脱出装置が設けられた定置網に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、固定式漁具の一つとして定置網が知られている。定置網は、袋状または垣根状の漁網、水底の所定の場所に漁網を固定する杭やロープ、および漁網の上部に取り付けられる浮子等から構成されている。定置網漁は、回遊する魚群を誘い込んで漁獲することから、トロール網漁等の能動的に魚を追いかける漁法に比べて過剰漁獲に陥りにくく、環境にやさしい漁法であると言われている。
【0003】
なお、特許文献1には、トロール網に設けられる海亀排除装置(Turtle Excluder Device:TED)が記載されている。この装置では、金属製の枠体を有する格子がトロール網に取り付けられ、この格子に遮られることで海亀がトロール網に入網しないように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
定置網漁においても、漁獲対象の魚類とともに漁獲対象外の水生動物を漁獲してしまう混獲の問題がある。例えば、定置網に入網した海亀が水面に浮上できずに溺死してしまうことがある。環境省の報告(2000年)によれば、国際自然保護連合(IUCN)において、海亀類のタイマイは絶滅危惧IAに分類され、アカウミガメおよびアオウミガメは絶滅危惧IIに分類されている。海亀のように国際的に保護が求められている希少生物が定置網に漁獲されないようにすることが強く求められている。
【0006】
本発明は、上記の認識に基づいてなされたものであり、その目的は、定置網に入網した漁獲対象外の水生動物を脱出させることができるとともに、漁獲対象の魚類を逃すことを防止することができる水生動物脱出装置、および定置網を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る水生動物脱出装置は、
定置網用の水生動物脱出装置であって、
第1の端部および第2の端部を有するスリット部が設けられた網体と、
前記網体に設けられた第1および第2の浮体と、を備え、
前記第1の浮体は、前記第1の端部および前記第2の端部を結ぶ直線を含む帯状領域のうち、前記第1の端部から前記スリット部の反対側に延びる第1の浮体取付領域に設けられ、
前記第2の浮体は、前記帯状領域のうち、前記第2の端部から前記スリット部の反対側に延びる第2の浮体取付領域に設けられていることを特徴とする。
【0008】
また、前記水生動物脱出装置において、
前記第1の浮体は前記第1の端部に設けられ、前記第2の浮体は前記第2の端部に設けられていてもよい。
【0009】
本発明に係る水生動物脱出装置は、
定置網用の水生動物脱出装置であって、
第1の上辺部、第1の側辺部および第2の側辺部を有する第1の網部材と、
第2の上辺部、第3の側辺部および第4の側辺部を有する第2の網部材と、
第1の斜辺部において前記第1の網部材の前記第1の側辺部に接続され、第2の斜辺部において前記第2の網部材の前記第3の側辺部に接続された第3の網部材と、
第3の斜辺部において前記第1の網部材の前記第2の側辺部に接続され、第4の斜辺部において前記第2の網部材の前記第4の側辺部に接続された第4の網部材と、を備え、
前記第1の網部材の前記第1の上辺部と、前記第2の網部材の前記第2の上辺部とは、少なくとも一部分において互いに接続されておらず、
前記第3の網部材に第1の浮体が設けられ、前記第4の網部材に第2の浮体が設けられていることを特徴とする。
【0010】
また、前記水生動物脱出装置において、
前記第1の浮体は、前記第3の網部材の上側領域に設けられ、前記第2の浮体は、前記第4の網部材の上側領域に設けられていてもよい。
【0011】
また、前記水生動物脱出装置において、
前記第1の浮体は、前記第1の斜辺部および前記第2の斜辺部が交わる前記第3の網部材の頂点から前記第3の網部材の下辺部に下ろした垂線上に設けられ、前記第2の浮体は、前記第3の斜辺部および前記第4の斜辺部が交わる前記第4の網部材の頂点から前記第4の網部材の下辺部に下ろした垂線上に設けられていてもよい。
【0012】
また、前記水生動物脱出装置において、
前記第1の浮体は、前記第1の斜辺部および前記第2の斜辺部が交わる前記第3の網部材の頂点に設けられ、前記第2の浮体は、前記第3の斜辺部および前記第4の斜辺部が交わる前記第4の網部材の頂点に設けられていてもよい。
【0013】
また、前記水生動物脱出装置において、
前記第1の網部材は、前記第1の上辺部から延在する第1の延在部をさらに有してもよい。
【0014】
また、前記水生動物脱出装置において、
前記第2の網部材は、前記第2の上辺部から延在する第2の延在部をさらに有してもよい。
【0015】
また、前記水生動物脱出装置において、
前記第1の網部材は、前記第1の上辺部から延在する第1の延在部をさらに有し、前記第2の網部材は、前記第2の上辺部から延在する第2の延在部をさらに有し、前記第3の網部材は、前記第1の斜辺部と前記第2の斜辺部を接続する第3の上辺部をさらに有し、前記第4の網部材は、前記第3の斜辺部と前記第4の斜辺部を接続する第4の上辺部をさらに有し、
前記第1の延在部は、前記第1の側辺部から延出する第1の側端部と、前記第2の側辺部から延出する第2の側端部とを有し、
前記第2の延在部は、前記第3の側辺部から延出する第3の側端部と、前記第4の側辺部から延出する第4の側端部とを有し、
前記第1の延在部と前記第2の延在部は、上下に重なるように配置され、
前記第1および第3の側端部が前記第3の上辺部に接続され、前記第2および第4の側端部が前記第4の上辺部に接続されているようにしてもよい。
【0016】
また、前記水生動物脱出装置において、
前記第1の網部材の側面が水平面となす角度、および、前記第2の網部材の側面が水平面となす角度は、0°より大きく且つ30°以下であるようにしてもよい。
【0017】
また、前記水生動物脱出装置において、
前記第1の上辺部および第2の上辺部の少なくとも中央部分には浮体が設けられていないようにしてもよい。
【0018】
本発明に係る定置網は、
本発明に係る水生動物脱出装置が天井網に設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、定置網に入網した漁獲対象外の水生動物を脱出させることができるとともに、漁獲対象の魚類を逃すことを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】一例に係る定置網100と、第1の実施形態に係る水生動物脱出装置1が設けられた金庫網70とを示す斜視図である。
【
図2】第1の実施形態に係る水生動物脱出装置1の平面図である。
【
図3】水生動物脱出装置1を構成する網体の分解平面図である。
【
図4】水生動物脱出装置1(浮体を除く。)の斜視図である。
【
図5】網部材30の浮体取付領域Tを示す図である。
【
図6】海亀が脱出する際の水生動物脱出装置1の斜視図である。
【
図7】網部材10側から見た水生動物脱出装置1の側面図である。
【
図8】第1の実施形態の変形例に係る水生動物脱出装置1Aの平面図である。
【
図9】第2の実施形態に係る水生動物脱出装置1Bの平面図である。
【
図10】水生動物脱出装置1Bを構成する網体の分解平面図である。
【
図11】第2の実施形態の変形例に係る水生動物脱出装置を構成する網体の分解平面図である。
【
図12】第3の実施形態に係る水生動物脱出装置1Cの平面図である。
【
図13】水生動物脱出装置1Cを構成する網体の分解平面図である。
【
図14】第4の実施形態に係る水生動物脱出装置1Dの平面図である。
【
図15】水生動物脱出装置1Dの網体2における浮体取付領域U1,U2を示す図である。
【
図16】脱出口Dが形成された状態における水生動物脱出装置1Dの平面図である。
【
図17】実験に係る写真(脱出口Dが開いた状態)を示す図である。
【
図18】実験に係る写真(脱出口Dが閉じた状態)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係る実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0022】
(第1の実施形態)
まず、本発明の第1の実施形態に係る水生動物脱出装置1の構成について
図1~
図5を参照して説明する。
図1は、水生動物脱出装置1が天井網に設けられた定置網100の斜視図を示している。
図2は、水生動物脱出装置1の平面図を示している。
図3は、水生動物脱出装置1を構成する網体の分解平面図を示している。
図4は、水生動物脱出装置1の斜視図を示している。なお、
図4では、浮体51,52(後述)は図示していない。
図5は、網部材30の浮体取付領域Tを説明するための図である。
【0023】
水生動物脱出装置1は、定置網100に取り付けられる。本願で言う「定置網」は、海だけでなく、川または湖沼に静置される網も含む。本実施形態では、
図1に示すように、定置網100の金庫網(「落とし網」または「第2箱網」などとも呼ばれる。)70の天井網に水生動物脱出装置1が設けられている。使用状態において水生動物脱出装置1は水中に配置される。
【0024】
なお、本発明に係る水生動物脱出装置が設けられる定置網は、
図1に示すものに限られず、他の種類の定置網であってもよい。金庫網70の天井網は、
図1に示すような傾斜を有する凸形状に限られず、傾斜を有しないフラットな形状であってもよい。
【0025】
また、本発明に係る水生動物脱出装置の設置場所は、金庫網の天井網に限らず、定置網を構成する天井網部分であればどこに設けてもよい。例えば、中層定置網、底層定置網における箱網の天井網に設けることも可能である。
【0026】
また、水生動物脱出装置1は、定置網100と一体的に設けられていてもよい。この場合、後述の下辺部14,24,33,43は存在しない。
【0027】
水生動物脱出装置1は、
図2に示すように、網部材10(第1の網部材)と、網部材20(第2の網部材)と、網部材30(第3の網部材)と、網部材40(第4の網部材)と、浮体51(第1の浮体)と、浮体52(第2の浮体)と、を備えている。網部材10、網部材20、網部材30および網部材40は、網糸により構成されている。これらの網部材は、例えば、定置網100を構成する網糸と同じ網糸から構成されてもよい。なお、網部材10,20,30,40の各々は、1枚の網片から構成されてもよいし、複数枚の網片から構成されてもよい。
【0028】
網部材10、網部材20、網部材30および網部材40は、漁網糸で結び合わされている。例えば、これら網部材同士は、ロープ(図示せず)を介して結び合わされている。これに対し、網部材10の上辺部11と上辺部21は結び合われておらず、水生動物が脱出するための開口部(脱出口)を形成可能に構成されている。
【0029】
なお、上辺部11と上辺部21は、その全体にわたって互いに接続されない場合に限らず、少なくとも一部分において互いに接続されていなければよい。例えば、上辺部11と上辺部21は、中央部分において互いに接続されていなくてもよい。この場合、上辺部11と上辺部21の端部(すなわち、頂点A1,A2近傍)では互いに接続されていてもよい。また、網部材10、網部材20、網部材30および網部材40のうち少なくとも2つの網部材が1枚の網片から構成されてもよい。
【0030】
図2に示すように、浮体51は網部材30に設けられ、浮体52は網部材40に設けられている。後ほど
図7を参照して詳しく説明するように、浮体51,52の浮力によって上辺部11と上辺部21間の脱出口が閉塞する。なお、本実施形態では浮体51,52の形状は球状であるが、これに限られない。
【0031】
以下、水生動物脱出装置1の各構成要素について詳しく説明する。
【0032】
網部材10は、
図3に示すように、上辺部11(第1の上辺部)と、側辺部12(第1の側辺部)と、側辺部13(第2の側辺部)と、下辺部14とを有する略台形状の網部材である。側辺部12は、上辺部11の一端に接続する(すなわち、点a1で上辺部11に接続する)。側辺部13は、上辺部11の他端に接続する(すなわち、点b1で上辺部11に接続する)。
【0033】
網部材20は、上辺部21(第2の上辺部)と、側辺部22(第3の側辺部)と、側辺部23(第4の側辺部)と、下辺部24とを有する略台形状の網部材である。側辺部22は、上辺部21の一端に接続する(すなわち、点a2で上辺部21に接続する)。側辺部23は、上辺部21の他端に接続する(すなわち、点b2で上辺部21に接続する)。
【0034】
なお、網部材10の上辺部11および網部材20の上辺部21の長さは、漁獲対象外の水生動物の大きさに基づいて決められる。また、網部材10と網部材20を合わせた形状を有する一つの網部材を用意し、切れ目を入れることにより上辺部11と上辺部21を形成してもよい。
【0035】
網部材30は、
図3に示すように、斜辺部31(第1の斜辺部)と、斜辺部32(第2の斜辺部)と、下辺部33とを有する略三角形状の網部材である。この網部材30は、斜辺部31において網部材10の側辺部12に接続され、斜辺部32において網部材20の側辺部22に接続されている。
【0036】
網部材40は、斜辺部41(第3の斜辺部)と、斜辺部42(第4の斜辺部)と、下辺部43とを有する略三角形状の網部材である。この網部材40は、斜辺部41において網部材10の側辺部13に接続され、斜辺部42において網部材20の側辺部23に接続されている。
【0037】
図3に示すように、網部材10、網部材20および網部材30は、網部材10の点a1と、網部材20の点a2と、網部材30の点a3とが重なるように接続されている。また、網部材10、網部材20および網部材40は、網部材10の点b1と、網部材20の点b2と、網部材40の点b3とが重なるように接続されている。
図4に示す頂点A1は、点a1,a2,a3が重なった点であり、頂点A2は点b1,b2,b3が重なった点である。換言すれば、頂点A1は斜辺部31と斜辺部32とが交わる点であり、頂点A2は斜辺部41と斜辺部42とが交わる点である。
【0038】
網部材10の上辺部11と、網部材20の上辺部21とは互いに接続されていない。より具体的には、本実施形態において、上辺部11を構成する第1のロープ(図示せず)と、上辺部21を構成する第2のロープ(図示せず)とは互いに結び合わされていない。
【0039】
図4において、θ1は網部材30の網面が水平面となす角度であり、θ2は網部材10の網面が水平面となす角度である。漁獲対象外の水生動物にとって、角度θ1が大きい方が、水生動物脱出装置1の上部に容易に移動できる。その一方、角度θ1が大きいと、後述の浮体51,52の浮力に基づく脱出口を閉じる力が弱くなる。これらの点を考慮すると、網部材30,40の網面が水平面となす角度は、0°より大きく且つ30°以下であることが好ましい。
【0040】
角度θ1を上記範囲に設定することで、漁獲対象外の水生動物が水生動物脱出装置1の上部に容易に移動し、脱出口を通って脱出することができるとともに、浮体51,52の浮力により脱出口を閉じ易くすることができる。海亀の場合、呼吸のために海面へ急ぎ出ようとする結果、天井網を突き上げる行動をとる。この突き上げ行動により、海亀は水生動物脱出装置1の上部に容易に到達できるようになる。
【0041】
次に、浮体51,52について説明する。浮体は、浮子(あば)とも呼ばれる。なお、所定の浮力が得られるのであれば、定置網100に取り付けられた浮体と同様のものを浮体51,52に適用することが可能である。
【0042】
図2に示すように、浮体51は網部材30に設けられ、浮体52は網部材40に設けられている。好ましくは、
図5に示すように、浮体51は網部材30の上側領域である浮体取付領域Tに取り付けられる。この浮体取付領域Tは、網部材30の斜辺部31および32を含む。
【0043】
ここで、「上側領域」とは、
図5に示すように、網部材30の上側半分の領域のことである。
図5において、垂点B1は、網部材30の頂点A1から下辺部33に下ろした垂線の足である。中点C1は、網部材30の頂点A1と垂点B1の中点である。浮体52についても浮体51と同様に、網部材40の上側領域に取り付けられることが好ましい。
【0044】
このように浮体51,52を網部材30,40の上側領域にそれぞれ設けることで、後述のように上辺部11,21の両端を十分な力で外方向に引っ張ることができ、通常状態(すなわち、漁獲対象外の水生動物が脱出するとき以外の状態)において脱出口がしっかり閉じ易くなる。
【0045】
なお、より好ましくは、浮体51は、網部材30の上側領域内であって、かつ網部材30の頂点A1から下辺部33に下ろした垂線上に設けられる。すなわち、浮体51は、頂点A1と中点C1間に設けられる。浮体52についても同様であり、浮体52は、網部材40の上側領域内であって、かつ網部材40の頂点A2から下辺部43に下ろした垂線上に設けられることがより好ましい。これにより、上辺部11,21の両端をさらに大きな力で外方向に引っ張ることができ、脱出口がしっかり閉じ易くなる。
【0046】
また、より好ましくは、浮体51は、網部材30の頂点A1に設けられることが好ましい。また、浮体52は、網部材40の頂点A2に設けられることが好ましい。これにより、上辺部11,21の両端をさらに大きな力で外方向に引っ張ることができ、脱出口がしっかりと閉じ易くなる。
【0047】
次に、上述した水生動物脱出装置1の動作について、
図6および
図7を参照して説明する。
図6は、海亀が脱出する際の水生動物脱出装置1の斜視図であり、
図7は、網部材10側から見た水生動物脱出装置1の側面図である。
【0048】
前述のように、網部材10の上辺部11と、網部材20の上辺部21とは互いに接続されておらず、開放されている。このため、
図6に示すように、定置網100に入網した漁獲対象外の水生動物(ここでは海亀)が水生動物脱出装置1の上部に接触すると、上辺部11と上辺部21が離間して脱出口Dが形成される。そして、漁獲対象外の水生動物は、脱出口Dを通って定置網100の外へ脱出することができる。
【0049】
なお、漁獲対象外の水生動物は、定置網に入網するものであれば海亀に限らず、例えばアシカ、トド、あるいはオットセイ等の他の水生動物であってもよい。
【0050】
水生動物が脱出した後、浮体51,52の浮力により上辺部11および21の両端が外方向に引っ張られるため、上辺部11と上辺部21間の脱出口Dは自然に閉じる。このため、定置網100に漁獲された魚類を逃すことを防止することができる。
【0051】
ここで、上辺部11,21間の脱出口が自然に閉じるメカニズムについて、
図7を参照して詳しく説明する。浮体51,52は周囲の水から浮力を受ける。浮体51は網部材30に取り付けられているので、網部材30は、浮体51により上方に引っ張られて立ち上がることになる。その結果、上辺部11,21の左端は左側に引っ張られることになる。
【0052】
同様に、浮体52は網部材40に取り付けられているので、網部材40は、浮体52により上方に引っ張られて立ち上がることになる。その結果、上辺部11,21の右端は
図7において右側に引っ張られることになる。
【0053】
上記のようにして上辺部11および21の両端が外方向に引っ張られるため、脱出口は閉じることとなる。よって、通常状態において脱出口の閉状態を安定的に維持することができる。
【0054】
なお、上辺部11および上辺部21の少なくとも中央部分には浮体が設けられていないことが好ましい。これにより、上辺部11と上辺部21が浮体の浮力によって離間し、通常状態において脱出口が形成されてしまうことを防止できる。
【0055】
以上説明したように、第1の実施形態によれば、定置網に入網した漁獲対象外の水生動物を脱出させることができるとともに、漁獲対象の魚類を逃すことを防止することができる。
【0056】
さらに、水生動物脱出装置1は、金属製のフレーム等の剛体を使用せずに、漁網や浮体(浮子)といった定置網で用いられている材料により構成することが可能である。したがって、水生動物脱出装置1は、今までの漁網と同様の取り扱いをすることができ、漁業の操業に影響を与えずに使用できる。
【0057】
<第1の実施形態の変形例>
ここで、第1の実施形態の変形例に係る水生動物脱出装置1Aについて、
図8を参照して説明する。本変形例に係る水生動物脱出装置1Aでは、網部材30に浮体51Aおよび51Bが設けられ、網部材40に浮体52Aおよび52Bが設けられている。
【0058】
このように本変形例では、浮体を網部材30および40に複数個ずつ設ける。これにより、浮体の浮力を増やして網部材30および40を立ち上がらせる力を増加させることができるため、通常状態において脱出口をより確実に閉塞することができる。
【0059】
なお、
図8に示すように、浮体51Aと浮体51Bは、頂点A1と頂点A2を結ぶ線に対して対称な位置に設けられることが好ましい。同様に、浮体52Aと浮体52Bは、頂点A1とA2を結ぶ線に対して対称な位置に設けられることが好ましい。これにより、頂点A1と頂点A2を結ぶ線と平行な方向に引っ張り力(上辺部11,21の端部を外方向に引っ張る力)を発生させることができる。
【0060】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態に係る水生動物脱出装置1Bについて、
図9および
図10を参照して説明する。
図9は、本実施形態に係る水生動物脱出装置1Bの平面図を示し、
図10は、水生動物脱出装置1Bを構成する網体の分解平面図を示している。
【0061】
第1の実施形態と第2の実施形態との相違点は、通常状態において脱出口を閉塞するための延在部15が網部材10に設けられていることである。以下、相違点を中心に第2の実施形態について説明する。
【0062】
図9に示すように、水生動物脱出装置1Bは、網部材10と、網部材20と、網部材30と、網部材40と、浮体51と、浮体52と、を備えている。
【0063】
網部材10、網部材20、網部材30および網部材40は、漁網糸で結び合わされている。より詳しくは、網部材10、網部材20および網部材30は、
図10に示すように、網部材10の点a1と、網部材20の点a2と、網部材30の点a3とが重なるように接続されている。また、網部材10、網部材20および網部材40は、網部材10の点b1と、網部材20の点b2と、網部材30の点b3とが重なるように接続されている。
【0064】
図10に示すように、第2の実施形態では、網部材10は、上辺部11から延在する網状の延在部15(第1の延在部)をさらに有している。この延在部15は、
図9に示すように、網部材20の上辺部21近傍を覆う。なお、本実施形態では上辺部11にロープは設けられず、延在部15の先端部15aにロープ(図示せず)が設けられている。
【0065】
延在部15の幅(上辺部11からの延出量)は、潮の流れ等の外力を受けて上辺部11と上辺部21が離間しても脱出口が形成されることを防止可能な程度に長い。かつ、延在部15の幅は、漁獲対象外の水生動物の脱出を妨げない程度に短い。延在部15の幅は、例えば3cm~20cm程度である。
【0066】
上記のように第2の実施形態では、網部材10に延在部15を設けることにより、通常状態において、潮の流れ等の外力を受けて上辺部11と上辺部21との間に隙間が生じても、脱出口が形成されることを防止できる。このため、潮の流れ等により網の形状が大きく変化する場合でも、漁獲対象の魚類が網外に脱出することを効果的に防止できる。
【0067】
なお、延在部は、網部材10ではなく網部材20に設けられてもよい。
【0068】
<第2の実施形態の変形例>
本変形例では、
図11に示すように、網部材10だけでなく、網部材20にも延在部が設けられている。すなわち、網部材20は、上辺部21から延在する網状の延在部25(第2の延在部)をさらに有している。延在部25は網部材10の上辺部11を部分的に覆い、延在部15は網部材20の上辺部21を部分的に覆う。なお、延在部25の幅は、例えば3cm~20cm程度である。なお、本変形例では上辺部21にロープは設けられず、延在部25の先端部25aにロープ(図示せず)が設けられている。
【0069】
網部材10および網部材20の両方に延在部を設けることで、例えば延在部15が潮に流されて網部材20の上辺部21を覆わなくなっても、延在部25が網部材10の上辺部11を部分的に覆うため、脱出口が形成されることを防止できる。これにより、本変形例によれば、通常状態において開口部が形成されて漁獲対象の魚類が網外に脱出することをより効果的に防止できる。
【0070】
(第3の実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態に係る水生動物脱出装置1Cについて、
図12および
図13を参照して説明する。
図12は、本実施形態に係る水生動物脱出装置1Cの平面図を示し、
図13は、水生動物脱出装置1Cを構成する網体の分解平面図を示している。
【0071】
第3の実施形態は、網部材30および40が略三角形状の第2の実施形態と異なり、網部材30および40が上辺部を有する略台形状である。以下、相違点を中心に第3の実施形態について説明する。
【0072】
図12に示すように、水生動物脱出装置1Cは、網部材10と、網部材20と、網部材30と、網部材40と、浮体51と、浮体52と、を備えている。
【0073】
網部材10および網部材20は、第2の実施形態の変形例と同様の構成を有する。すなわち、網部材10は、上辺部11から延在する網状の延在部15を有し、網部材20は、上辺部21から延在する網状の延在部25を有している。
【0074】
図13に示すように、延在部15は、側端部e1(第1の側端部)と、側端部e2(第2の側端部)とを有する。側端部e1は側辺部12から延出し、側端部e2は側辺部13から延出している。延在部25は、側端部e3(第3の側端部)と、側端部e4(第4の側端部)とを有する。側端部e3は側辺部22から延出し、側端部e4は側辺部23から延出している。
【0075】
延在部15の幅と延在部25の幅は、ほぼ等しい。すなわち、側端部e1、側端部e2、側端部e3および側端部e4の長さはほぼ等しい。
【0076】
第3の実施形態では、延在部15と延在部25は、
図12に示すように、全体にわたって上下に重なるように配置される。また、網部材10の上辺部11と、網部材20の上辺部21とは離間して配置される。
【0077】
第3の実施形態では、網部材30は、
図13に示すように、斜辺部31、斜辺部32および下辺部33に加えて上辺部34を有する略台形状の網部材である。同様に、網部材40は、斜辺部41、斜辺部42および下辺部43に加えて上辺部44を有する略台形状の網部材である。
【0078】
図13に示すように、上辺部34は斜辺部31と斜辺部32を接続し、上辺部44は斜辺部41と斜辺部42を接続する。上辺部34の長さは、側端部e1およびe3の長さにほぼ等しい。また、上辺部44の長さは、側端部e2およびe4の長さにほぼ等しい。
【0079】
網部材10、網部材20、網部材30および網部材40は、漁網糸で結び合わされている。網部材30は、上辺部34において延在部15および延在部25に結びつけられ、網部材40は、上辺部44において延在部15および延在部25に結びつけられている。
【0080】
図13に示すように、網部材10、網部材20および網部材30は、延在部15の側端部e1、延在部25の側端部e3および網部材30の上辺部34が互いに重なるように接続されている。すなわち、側端部e1および側端部e3は上辺部34に接続されている。
【0081】
同様に、網部材10、網部材20および網部材40は、延在部15の側端部e2、延在部25の側端部e4および網部材40の上辺部44が互いに重なるように接続されている。すなわち、側端部e2および側端部e4は上辺部44に接続されている。
【0082】
図12に示すように、浮体51は網部材30に設けられ、浮体52は網部材40に設けられている。好ましくは、浮体51は上辺部34の中点(図示せず)から下辺部33に下ろした垂線上に設けられ、浮体52は上辺部44の中点(図示せず)から下辺部43に下ろした垂線上に設けられる。より好ましくは、浮体51は上辺部34に設けられ、浮体52は上辺部44に設けられる。
【0083】
次に、第3の実施形態に係る水生動物脱出装置1Cの動作について説明する。
【0084】
定置網100に入網した漁獲対象外の水生動物が水生動物脱出装置1Cの上部に接触すると、延在部15と延在部25の重なりが解けて脱出口が形成される。漁獲対象外の水生動物は、延在部15と延在部25の間に形成された脱出口を通って定置網100の外へ脱出することができる。水生動物が脱出した後、浮体51,52の浮力により上辺部34および上辺部44がそれぞれ外方向に引っ張られる。これにより、延在部15および延在部25が重なる状態に戻り、脱出口は自然に閉じる。このため、定置網100に漁獲された魚類を逃すことを防止することができる。
【0085】
以上説明したように、第3の実施形態によれば、定置網に入網した漁獲対象外の水生動物を脱出させることができるとともに、漁獲対象の魚類を逃すことを防止することができる。
【0086】
(第4の実施形態)
次に、本発明の第4の実施形態に係る水生動物脱出装置1Dについて、
図14~
図18を参照して説明する。
【0087】
水生動物脱出装置1Dは、
図14に示すように、網体2と、この網体2に設けられた浮体51および浮体52と、を備えている。本実施形態において網体2は1枚の網片から構成されているが、複数枚の網片を繋ぎ合わせて網体2を構成してもよい。第1~第3の実施形態と同様に、水生動物脱出装置1Dは網体2が定置網に取り付けられた状態で使用される。このため、使用状態において網体2の縁部2e,2fは定置網に固定される。浮体51,52は、紐などの接続部材により網体2に取り付けられている。
【0088】
網体2には、端部3a(第1の端部)および端部3b(第2の端部)を有するスリット部3が設けられている。本実施形態では、このスリット部3は、網体2に形成された切れ込みである。なお、切れ込みはロープ等で端部処理されていてもよい。また、網体2が複数枚の網片から構成される場合、網体2は、第2の実施形態や第3の実施形態のように、スリット部3を覆う延在部(図示せず)を有してもよい。この場合、スリット部3は所定の幅を有してもよい。
【0089】
浮体51は浮体取付領域U1に設けられ、浮体52は浮体取付領域U2に設けられている。浮体取付領域U1は、
図14および
図15に示すように、帯状領域BAのうち、端部3aからスリット部3の反対側に(すなわち、縁部2e側に)延びる領域である。浮体取付領域U2は、帯状領域BAのうち、端部3bからスリット部3の反対側に(すなわち、縁部2f側に)延びる領域である。ここで、帯状領域BAは、端部3aおよび端部3bを結ぶ直線(仮想線)Lを含む帯状の領域である。この帯状領域BAの幅Wは、例えば、浮体51,52の直径と同程度である。
【0090】
なお、浮体取付領域U1の境界線上に浮体51が設けられてもよい。同様に、浮体取付領域U2の境界線上に浮体52が設けられてもよい。また、浮体取付領域U1,U2に複数の浮体が設けられてもよい。
【0091】
好ましくは、浮体51が端部3aに設けられ、浮体52が端部3bに設けられる。これにより、スリット部3の両端を十分な力で外方向に引っ張ることができ、通常状態(すなわち、漁獲対象外の水生動物が脱出するとき以外の状態)において脱出口がしっかり閉じ易くなる。
【0092】
なお、浮体取付領域U1の画定にあたっては、端部3aから切れ込みの一部が縫い合わされている場合、縫い合わされていない切れ込みの端部を端部3aとみなす。浮体取付領域U2についても同様である。すなわち、浮体取付領域U2の画定にあたっては、端部3bから切れ込みの一部が縫い合わされている場合、縫い合わされていない切れ込みの端部を端部3bとみなす。
【0093】
図15に示す固定点F1,F2は、網体2の縁部2e,2fにおいて、網体2の網糸が定置網に固定される部分を示している。なお、固定点F1,F2は必ずしも直線L上になくてもよい。また、網体2は、固定点F1,F2以外の部分において定置網に固定されてもよい。
【0094】
次に、水生動物脱出装置1Dの動作について、
図16を参照して説明する。
図16に示すように、浮体51は網糸2yに取り付けられ、浮体52は網糸2zに取り付けられている。
【0095】
定置網に入網した漁獲対象外の水生動物が網体2(例えばスリット部3の近傍部分)に接触すると、
図16に示すように、脱出口Dが形成される。これにより、海亀等の漁獲対象外の水生動物が脱出口Dを通って定置網の外へ脱出することが可能となる。脱出口Dが形成された後、浮体51および浮体52は、自身に作用する浮力により浮上しようとする。しかし、浮体51は固定点F1に一端が固定された網糸2yに引っ張られるため、浮体51には
図16の左向き矢印の方向の力が作用する。同様に、浮体52は固定点F2に一端が固定された網糸2zに引っ張られるため、浮体52には
図16の右向き矢印の方向の力が作用する。これにより、スリット部3の両端はスリット部3の外側に引っ張られる。
【0096】
このようにしてスリット部3の両端が外方向に引っ張られる結果、脱出口Dが閉じることとなる。なお、浮体51,52が網糸2y,2zに取り付けられていなくとも、網糸2y,2zの近傍の網糸に取り付けられていれば、浮体51,52の浮力により脱出口Dが閉じることは可能である。
【0097】
次に、水生動物脱出装置1Dの実証実験について説明する。
図17および
図18は、脱出口Dの閉塞動作を実証するために行った実験の写真を示している。
図17は脱出口Dが形成された状態を示し、
図18は脱出口Dが閉じた状態を示している。
【0098】
実験では、中央領域に切れ込みが形成された網体2を、籠60の開口縁部に紐61で、張った状態に固定した。籠60は定置網に相当する。浮体51,52としては、釣り用の球状の浮子を用いた。そして、網体2が固定された籠60を水槽に入れ、水槽内に注水を行った。
【0099】
水槽内の水量が増加し、浮体51,52に作用する浮力が大きくなると、浮体51が網糸2yに引っ張られるとともに浮体52が網糸2zに引っ張られることにより脱出口Dが閉じる様子が観察された。
【0100】
以上説明したように、第4の実施形態によれば、第1ないし第3の実施形態と同様に、定置網に入網した漁獲対象外の水生動物を脱出させることができるとともに、漁獲対象の魚類を逃すことを防止することができる。
【0101】
さらに、第4の実施形態によれば、第1~第3の実施形態よりも、水生動物脱出装置を簡素な構成にすることができる。その結果、水生動物脱出装置の製造性を向上させるとともに、製造コストを低減することができる。
【0102】
上記の記載に基づいて、当業者であれば、本発明の追加の効果や種々の変形を想到できるかもしれないが、本発明の態様は、上述した実施形態に限定されるものではない。特許請求の範囲に規定された内容及びその均等物から導き出される本発明の概念的な思想と趣旨を逸脱しない範囲で種々の追加、変更及び部分的削除が可能である。
【符号の説明】
【0103】
1,1A,1B,1C,1D 水生動物脱出装置
2 網体
2e,2f 縁部
2y,2z 網糸
3 スリット部
3a,3b 端部
10,20,30,40 網部材
11,21,34,44 上辺部
12,13,22,23 側辺部
14,24,33,43 下辺部
15,25 延在部
15a,25a (延在部の)先端部
31,32,41,42 斜辺部
51,52 浮体
60 籠
61 紐
70 金庫網
100 定置網
a1,a2,a3,b1,b2,b3 点
e1,e2,e3,e4 側端部
A1,A2 頂点
B1,B2 垂点
C1 中点
BA 帯状領域
D 脱出口
F1,F2 固定点
L 直線
T,U1,U2 浮体取付領域
W 幅
θ1,θ2 角度