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特許7058691二次イオン質量分析を用いた半導体測定および表面分析のためのシステムならびに手法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-14
(45)【発行日】2022-04-22
(54)【発明の名称】二次イオン質量分析を用いた半導体測定および表面分析のためのシステムならびに手法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/66 20060101AFI20220415BHJP
   H01J 37/05 20060101ALI20220415BHJP
   H01J 37/20 20060101ALI20220415BHJP
   H01J 49/46 20060101ALI20220415BHJP
   G01N 27/62 20210101ALI20220415BHJP
【FI】
H01L21/66 L
H01J37/05
H01J37/20 H
H01J49/46
G01N27/62 V
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020125263
(22)【出願日】2020-07-22
(62)【分割の表示】P 2017560483の分割
【原出願日】2016-02-10
(65)【公開番号】P2020202379
(43)【公開日】2020-12-17
【審査請求日】2020-07-22
(31)【優先権主張番号】62/114,521
(32)【優先日】2015-02-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/114,519
(32)【優先日】2015-02-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/114,524
(32)【優先日】2015-02-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518014357
【氏名又は名称】ノヴァ メジャリング インスツルメンツ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001830
【氏名又は名称】東京UIT国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】リード・デイビッド・エー.
(72)【発明者】
【氏名】シューラー・ブルーノ・ダブリュー.
(72)【発明者】
【氏名】ニューカム・ブルース・エイチ.
(72)【発明者】
【氏名】スメット・ロドニー
(72)【発明者】
【氏名】ベヴィス・クリス
【審査官】山口 祐一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-089816(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/66
H01J 37/05
H01J 37/20
H01J 49/46
G01N 27/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウエハの裏面接触抵抗を決定する方法であって,
第1の駆動信号を用いて駆動される主容量センサ電極と,上記第1の駆動信号と比較して振幅または位相シフトされる第2の駆動信号を用いて駆動される補償容量センサ電極との比較に基づいてウエハの表面のギャップ距離値を測定し,
上記第2の駆動信号を測定し,
基準インピーダンス標準に対して上記第2の駆動信号の値を較正して,接地に対する上記ウエハのインピーダンス値を決定し,
上記ギャップ距離値および接地に対する上記ウエハのインピーダンス値に基づいて上記ウエハの表面についての接触抵抗値を決定する,
方法。
【請求項2】
上記第2の駆動信号の値の測定が,上記第1の駆動信号の180度シフト・バージョンである上記第2の駆動信号を用いて上記補償容量センサを駆動し,上記第2の駆動信号の振幅を調整して上記主容量センサ電極および上記補償容量センサ電極の正味電流がゼロのときの振幅値を得ることを含み,上記基準インピーダンス標準に対する上記第2の駆動信号の値の較正が上記基準インピーダンス標準に対して上記振幅値を較正することを含む,請求項1の方法。
【請求項3】
上記第2の駆動信号の値の測定が,上記第1の駆動信号の位相シフト・バージョンである上記第2の駆動信号を用いて上記補償容量センサを駆動し,上記第2の駆動信号の位相角を調整して最小ギャップ距離値が得られるときの位相角度値を得ることを含み,上記基準インピーダンス標準に対する上記第2の駆動信号の値の較正が,上記基準インピーダンス標準に対して上記位相角度値を較正することを含む,請求項1の方法。
【請求項4】
上記第2の駆動信号の値の測定が,上記ウエハの表面からの上記補償容量センサ電極の距離を変更して最小ギャップ距離値を得ることを含み,上記基準インピーダンス標準に対する上記第2の駆動信号の値の較正が,上記基準インピーダンス標準に対して上記最小ギャップ距離値を較正することを含む,請求項1の方法。
【請求項5】
上記ギャップ距離値の測定が,上記主容量センサ電極および上記補償容量センサ電極の正味電流がゼロであるときの上記ギャップ距離値を測定することを含む,請求項1の方法。
【請求項6】
上記ウエハの表面に対して導電性電極を接触させ,
上記ウエハの表面の接触抵抗値が閾値未満であるときに上記ウエハの第2の表面に荷電粒子ビームを誘導することをさらに含む,請求項1の方法。
【請求項7】
上記ウエハの第2の表面に対する上記荷電粒子ビームの誘導が,上記ウエハの第2の表面の二次イオン質量分析(SIMS)測定を開始することを含む,請求項6の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
この出願は2015年2月10日出願の米国仮特許出願第62/114,521号の利益を主張するものであり,この米国仮特許出願の全体内容は引用により本書に組み込まれる。この出願はまた,2015年2月10日出願の米国仮特許出願第62/114,519号の利益を主張するものであり,この米国仮特許出願の全体内容は引用により本書に組み込まれる。この出願はまた,2015年2月10日出願の米国仮特許出願第62/114,524号の利益を主張するものであり,この米国仮特許出願の全体内容は引用により本書に組み込まれる。
【0002】
この発明の実施態様は,半導体測定(メトロロジ,metrology)の分野のもので,特に,二次イオン質量分析(法)(Secondary Ion Mass Spectrometry)(SIMS)を用いた半導体測定および表面分析のためのシステムならびに手法(アプローチ)に関するものである。
【背景技術】
【0003】
二次イオン質量分析(SIMS)は,集束(集光)一次イオンビーム(focused primary ion beam)を用いて試料(specimen)の表面をスパッタリングし,放出される二次イオンを収集および分析することによって,固体表面および薄膜の組成を分析するために使用される技術である。これらの二次イオンの質量/電荷比が質量分析計を用いて測定され,1~2ナノメートルの深さの表面の元素組成(elemental),同位体組成(isotopic),または分子組成(molecular composition)が決定される。様々な材料間のイオン化確率の大きなばらつき(変動)に起因して,SIMSは一般には定性的技術であると考えられているが,標準的な使用において定量(quantitation)が可能である。SIMSは元素検出限界が100万分の1から10億分の1に及ぶ,最も感度のよい表面分析技術である。
【0004】
一般にSIMSは10-4Pa未満の気圧を有する高真空を必要とする。高真空は,二次イオンが検出器に向かう途中で背景ガスと衝突しないようにするために必要とされ(すなわち検出器内のガス分子の平均自由路(mean free path)は装置のサイズに比べて大きくなければならない),かつさもなければ測定中に背景ガス粒子の吸着によって生じる表面汚染を防止するために必要とされる。
【0005】
3つの基本的なタイプのイオン銃(ion guns)がSIMS分析に用いられている。その一つでは,通常,デュオプラズマトロン(duoplasmatrons)を用いて,またはたとえば希ガス(40Ar+,Xe+),酸素(16-162+162-)などの電子イオン化(electron ionization)によって,またはSF5 +(SF6から生成される)もしくはC60 +(フラーレン)などのイオン化分子(ionized molecules)によって,ガス状元素イオン(ions of gaseous elements)が生成されるものである。このタイプのイオン銃は操作が簡単でかつ大まかに集束されるが高電流イオンビーム(high current ion beams)を生成する。第2のソースタイプは表面イオン化ソース(源)(surface ionization source)であり,133Cs+の一次イオンを生成する。セシウム原子が多孔質タングステン・プラグを通じて蒸発し,蒸発中にイオン化される。銃設計に依存して微焦点(fine focus)または高電流を得ることができる。第3のソースタイプは液体金属イオン銃(liquid metal ion gun)(LMIG)であり,室温またはわずかに高い温度において液体である金属または金属合金を用いて動作する。上記液体金属はタングステン先端を覆い,強電界の影響下においてイオンを放出する。ガリウムソースは元素ガリウムを用いて動作可能であるが,最近ではより低い融点の合金を使用する金,インジウムおよびビスマスの発生源が開発されている。LMIGは適度な強度を有する密集束イオンビーム(tightly focused ion bea,)(50ナノメートル未満)を提供し,さらには短パルスイオンビームを生成することができる。したがってこれが静的SIMS装置において一般的に使用されている。
【0006】
イオン種の選択およびイオン銃の選択は,要求される電流(パルスまたは連続),要求される一次イオンビームのビーム寸法,および分析される試料にそれぞれ依存する。正(陽性)二次イオンの発生確率の増加に起因する陽性元素を調査するために多くの場合酸素一次イオンが用いられるが,陰性元素が調査されるときには多くの場合セシウム一次イオンが用いられる。静的SIMSにおける短パルスイオンビームについては,分析のためにLMIGが最も頻繁に配備されている。LMIGは元素深度プロファイリング中において酸素銃またはセシウム銃と組み合わせることができ,分子深度プロファイリング中においてC60 +もしくはガスクラスターイオン・ソースと組み合わせることができる。
【0007】
SIMSのタイプに応じて,セクタ(sector),四重極(quadrupole),および飛行時間(time-of-flight)の3つの基本分析器を利用することができる。セクタフィールド質量分析器(sector field mass spectrometer)は,静電アナライザと磁気分析器の組み合わせを使用して二次イオンをそれらの質量電荷比(mass to charge ratio)によって分離するものである。四重極質量分析器は,選択された質量のみを通過させることができる共鳴電界(resonant electric fields)を用いて質量を分離するものである。飛行時間型質量分析器は,電界がないドリフト経路内のイオンを,それらの速度(velocity)にしたがって分離するものである。すべてのイオンは同じ運動エネルギ(kinetic energy)を持つので,速度,したがって飛行時間は質量によって変化する。飛行時間型質量分析器は,パルス一次イオン銃またはパルス二次イオン引き込み(pulsed secondary ion extraction)のいずれかを使用するパルス二次イオン生成を必要とする。飛行時間型質量分析器は,すべての発生した二次イオンを同時に検出することができる唯一の分析器タイプであり,静的SIMS計測器の標準分析器である。
【0008】
表面分析の分野では静的SIMSと動的SIMSとを区別するのが一般的である。静的SIMSは表面原子単層分析または表面分子分析に関するプロセスであり,通常はパルスイオンビームおよび飛行時間型質量分析計が用いられる。他方,動的SIMSはバルク分析(bulk analysis)に関するプロセスであり,スパッタリングプロセスに密接に関連する。動的SIMSはDC一次イオンビームと磁気セクタまたは四重極質量分析計とを使用する。
【0009】
SIMSは非常にパワフルな技術である。しかしながら,SIMS測定装置,システムおよび方法論の分野において改善が必要とされている。
【発明の開示】
【0010】
この発明の実施態様は,二次イオン質量分析(SIMS)を用いた半導体測定および表面分析のためのシステムおよび手法を含む。
【0011】
一実施態様において,二次イオン質量分析(SIMS)システムは試料ステージを含む。一次イオンビームが上記試料ステージに誘導される(向けられる,方向づけられる)(directed)。引き込みレンズ(extraction lens)が上記試料ステージに誘導される(向けられる,方向づけられる)。上記引き込みレンズは,試料ステージ上の試料から放出される二次イオンに対して低引き込み場(low extraction field)を提供するように構成される。SIMSシステムの光路に沿って磁気セクタ分析器(magnetic sector spectrograph)が上記引き込みレンズに結合される。上記磁気セクタ分析器は,磁気セクタアナライザ(magnetic sector analyzer)(MSA)に結合された静電アナライザ(静電分析器)(electrostatic analyzer)(ESA)を含む。
【0012】
一実施態様では,試料の表面電位の測定および制御の方法が,試料の表面から放出される荷電粒子(帯電粒子)の運動エネルギーを測定することを含む。上記方法は,荷電粒子の運動エネルギーにおけるシフトを決定することも含む。上記試料の表面の表面電位は荷電粒子の運動エネルギーのシフトに応じて変化する。
【0013】
一実施態様では,ウエハの裏面接触抵抗(wafer backside contact resistance)を測定する方法が,第1の駆動信号を用いて駆動される主容量センサ電極と上記第1の駆動信号と比較して振幅または位相シフトされる第2の駆動信号を用いて駆動される補償容量センサ電極の比較に基づいて,ウエハの表面のギャップ距離値を測定することを含む。第2の駆動信号の値が測定される。第2の駆動信号の値は,接地に対するウエハのインピーダンス値を決定するために,基準インピーダンス標準に対して較正される。上記ギャップ距離値と接地に対する上記ウエハのインピーダンス値に基づいて,上記ウエハの表面についての接触抵抗値が決定される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】この発明の一実施態様による,SIMS測定システムの概略配置を示す。
図2】この発明の一実施態様による,SIMSシステムの電荷補償考察を概略的に示す。
図3】この発明の一実施態様による,ファラデーカップを含むステージ領域と較正基準を格納する領域を示す。
図4A】この発明の一実施態様による,電荷補償システムを監視しかつ制御するための,静電アナライザおよび電流センサを備えるエネルギースリットのシステムの使用の概略表現である。
図4B】この発明の一実施態様による,電荷補償システムを監視しかつ制御するための,静電アナライザおよび電流センサを備えるエネルギースリットのシステムの使用の概略表現である。
図5】この発明の一実施態様による,上部スペクトロメータおよび曲がり静電アナライザ(ESA)部を通る二次イオンビーム経路を示す。
図6】この発明の一実施態様による,上部スペクトロメータおよび曲がり静電アナライザ(ESA)部を通る正(陽)イオンのための二次イオンビーム経路を示す。
図7】この発明の一実施態様による,静電アナライザの平均通過エネルギーを変化させるフィードバックとしての曲がりESA116が続く低エネルギー電流センサおよび高エネルギー電流センサを用いた,高エネルギーに向かうエネルギー分布走査を示す。
図8A】この発明の一実施態様による,図7に関連して説明される静電曲がりESA116および高エネルギースリット・センサおよび低エネルギースリット・センサを用いて二次イオンエネルギー分布を測定するための概略図である。
図8B】この発明の一実施態様による,図7に関連して説明される静電曲がりESA116および高エネルギースリット・センサおよび低エネルギースリット・センサを用いて二次イオンエネルギー分布を測定するための概略図である。
図8C】この発明の一実施態様による,図7に関連して説明される静電曲がりESA116および高エネルギースリット・センサおよび低エネルギースリット・センサを用いて二次イオンエネルギー分布を測定するための概略図である。
図8D】この発明の一実施態様による,図7に関連して説明される静電曲がりESA116および高エネルギースリット・センサおよび低エネルギースリット・センサを用いて二次イオンエネルギー分布を測定するための概略図である。
図9】この発明の一実施態様による,同じ電圧のESA116およびESA118における曲がりESA走査を含むエネルギー分布走査を示す。
図10】この発明の一実施態様による,表面帯電に起因する試料上の正電位を概略的に示す。
図11】この発明の一実施態様による,電子ビームに基づく電荷のニュートラル化および制御を示す概略図である。
図12】この発明の一実施態様による,可変強度の光子源を使用する試料の光電導を示す概略図である。
図13A】この発明の一実施態様による,試料から遠ざかる電子放出材料の使用による電荷ニュートラル化を示す概略図である。
図13B】この発明の一実施態様による,電子フラックスが,一次イオン誘発正表面電荷を超える場合の有効電荷ニュートラル化を示す概略図である。
図14】ギャップ距離を決定するために補償電極を用いることに関するいくつかのパラメータを概略的に示す。
図15】この発明の一実施態様による,例示的なコンピュータ・システムのブロック図を示す。
【実施例
【0015】
二次イオン質量分析法(SIMS)を用いた半導体測定および表面分析のためのシステムおよび手法を記載する。以下において,この発明の実施態様の完全な理解を提供するために,SIMS分析技術およびシステム構成といった複数の特定の詳細が記載される。当業者には,これらの特定の詳細を用いずにこの発明の実施形態を実施することができるのは明らかであろう。また,この発明の実施態様を不必要に不明瞭にしないために,半導体デバイス・スタックの全体といった周知の特徴は詳細には記載されていない。さらに,図面に示す様々な実施態様は例示的表現であって,必ずしも縮尺通りに描かれていないことを理解されたい。
【0016】
第1の観点におけるこの発明の実施態様は,二次イオン質量分析(SIMS)を用いて製造中の半導体ウエハ上の構造を特徴付けかつプロセス制御するためのシステムおよび方法に関するものである。
【0017】
本質的に最先端の半導体製造は数百のプロセス動作を伴う。各プロセス動作は処理変動の影響を受け,これが最終装置の性能の変動および劣化につながることがある。このため,製造工程が正しくかつ仕様内で実行されることを保証するとともに,製造プロセスを制御するためのフィードフォワードおよびフィードバックを提供するために,多くの測定および検査が行われる。プロセス制御は,その有効性を可能にするいくつかの重要な属性(sevaral key attributes)を必要とする。
【0018】
第一に,測定および検査のコストが経済的な装置製造と調和しなければならない。実際には,これは,ツールのコスト,消耗品のコスト,所有コスト(保守,較正およびその他のコストを含む),その有効寿命,測定に要する時間,およびその有効使用に関連する労働コストが,製造環境と調和することを意味する。おそらく最も重要なのは,その特性が非破壊的(nondestructive)であることであり,それは処理中の半導体ウエハのコストが非常に高く,破壊試験を必要とする技術が必ずしも実行可能ではないためである。
【0019】
第二に,検査および測定では,プロセス制御要件に直接に関係する試料を測定する必要があることである。「モニタ」ウエハのみを測定することができる技術,すなわち1回または数回のプロセス動作のみが適用されたウエハを測定することができる技術は,ツールの適正または粗い品質管理に有用であり得るものの,有効なプロセス制御は,測定される構造ができるだけ実際の装置の構造と類似しており,プロセスの変動やドリフトの速度と比較して測定サンプリングをできるだけ頻繁に行うことができることが要求される。
【0020】
第三に,おそらく最も重要なのは,検査または測定動作が,プロセス制御に必要とされる所望の情報内容,すなわち必要とされる関連性,分解能,正確度および精度を持たなければならないことである。
【0021】
さらに本質的に,二次イオン質量分析(SIMS)は既知の材料特性決定技術であり,元素組成の深さプロファイル(depth profile of elemental composition)を高い正確度および精度で決定することができるものである。このユニークな性能のために,SIMSは材料科学および分析ラボラトリ設定において広く使用されている。SIMSは現在では半導体製造における「オフライン」モードにおいて使用されており,「インライン」プロセス制御におけるその使用は,上述した実用的な問題に対処できないために現在では現実的ではない。したがって,インラインプロセス制御におけるその使用を妨げるギャップに対処しながら,SIMSの既知の性能を提供する二次イオン質量分析システムが求められている。
【0022】
インライン半導体製造環境の要件を満たすためには,現在のSIMS設計におけるいくつかのギャップに対処しなければならない。このようなギャップには,典型的なウエハ製品上の測定に関連する課題(challenges),測定を行うのにかかる時間,ツールの可用性/稼働時間(たとえば較正および検証のための時間を含む),および上記ツールのメンテナンスに関連するコストが含まれる。上記の一または複数の問題に対処する設計詳細を,この発明の一または複数の実施態様にしたがって以下に記載する。
【0023】
製品ウエハ上の測定に関し,製品ウエハ上でSIMS測定を行うことには,設計を制約する3つの課題を伴う。第一に,典型的には,製品ウエハ上の測定は50μm×50μmのパッドのような小さい指定領域にとどめなければならないことである。第二に,同時に製造者は,典型的には深さ方向のごくわずかな違いにおける組成変化に関心があることである。第三に,測定箇所への予測不可能な接地経路(unpredictable grounding path to the mESAurement site)が存在することがあることである。接地が不十分であるまたは存在しない場合,ウエハはSIMS測定中に帯電することがあり,これは,所望箇所から離れる一次ビームの偏向(deflection),検出される二次イオン信号の減少,二次イオン質量を正確に同定して解明する能力の低下を含むいくつかの課題を導く。
【0024】
製品ウエハ上で実行される測定に関する一または複数の上記問題に対処するために,この発明の一実施態様では,本書に記載のSIMS手法が,SIMS測定システムの二次引き込みレンズにおける低引き込み電圧の使用(use of a low extraction Voltage at a secondary extraction lens)を含むものである。特に,集束レンズと測定下の試料との間に非常に弱い電場のみが使用される。この手法は,引き込みレンズと試料との間に強電界を使用して二次イオンを上記レンズに向けて引き付け,収集されるイオンの数を増加させる典型的なSIMS設計とは正反対である。一実施態様において,上記引き込み場閾値(the extraction field threshold)は最大で約10Volts/mm(絶対値)である。
【0025】
図1は,この発明の一実施形態によるSIMS測定システム100の概略レイアウトを示している。
【0026】
図1を参照して,上記SIMS測定システム100は,分析のための試料を保持するXYステージを備えている。ステージはXYである必要はなく,XYZ,XY-シータ,R-シータなどの任意のタイプであってもよいことに留意されたい。XYステージは,以下に詳述するファラデーカップ(Faraday cup)およびフィデューシャル(基準マーク)(fiducials)を含むことができる。イオン・ソース(イオン源)によって生成され,質量フィルタによって精密化され(refined),かつ一連のイオン光学系を用いて集束された一次イオンビーム104が,たとえば40度の入射角でXYステージ102に誘導される(方向づけられる,向けられる)(directed)。図1に示すように,電荷補償電子銃(charge compensation electron gun)106をXYステージに方向づけてもよい。引き込みレンズ108がXYステージ102の上方に配置される。一実施態様では,上記引き込みレンズ108は,レンズと試料との間の小引き込み場(small extraction field)を,典型的には10V/mm以下のオーダーに維持するために,接地電位に近い部分(a portion near ground potential)を有している。二次イオンビーム110は,XYステージ上の試料から,引き込みレンズ108に向けてかつSIMSシステム100の収集/検出経路に向けて,収集される。図示は省略するが,図1のSIMS測定システム100は,真空環境を有する容器またはチャンバ内に収納することができることを理解されたい。
【0027】
再度図1を参照して,引き込みレンズ108に続いて,経路110に沿って,要素アレイ(arrya of elements)112を含めてもよい。図示する要素アレイ112は,二次イオン光学素子,偏向器,および/または追加の補償機構を含むことができる。次に二次イオンビーム110はスリット114を通るように誘導され,その後第1の静電アナライザ(first electrostatic analyzer)(ESA)116および第2のESA118に向かう。第1のESA116および第2のESA118の間にはスリット120が配置されている。スリットはエネルギーによってビーム110が拡がる位置に配置することができる。SIMSシステム100では,2つのESA116および118がビームをSIMSシステム100の底(the floor)に向ける。2つのESA116および118はまたエネルギーにしたがってビームが拡散する点を生成し,これを電荷補償システム106の信号(たとえば信号線121に沿う信号)として提供することができる。
【0028】
図1を再度参照して,ビーム110は次にスリット120Aおよび他の機構を通過するように誘導される。たとえば,有線スリットおよびアパーチャ122をビーム経路110に沿ういくつかの点に配置し,ビームを制限/成形し,かつ電流およびビーム位置を監視することができる。これらの多くは動作可能なアクチュエータ上にある。整列されかつ適切に成形されたビームを保持するために,上記経路110に沿って光学部品および偏向器などの様々な他の要素124が含まれている。
【0029】
図1を再度参照して,次にビーム110はスリット126を通じて第3のESA128に誘導され,スリット130を通りかつ追加の光学系132を通って外に出る。次にビーム110は磁気セクタアナライザ(magnetic sector analyzer)(MSA)134に誘導される。MSA134は,焦点面138に沿う複数(たとえば10個)の検出器136を含み,並列に10種までの検出が可能なもので,その詳細は後述する。MSA134および第3のESA128はともに磁気セクタ分析器を構成することを理解されたい。
【0030】
一実施態様において,システム100を再び参照して,引き込みレンズ108と試料102の間に低引き込み電圧(low extraction voltage)を用いることによって,通常のSIMS測定によって入手可能な信号の80%が犠牲にされる。しかしながら,その代わりに,上記一次ビームを正確に配置することが大変に簡単である。たとえば,引き込み場が強力なシステムでは,一次ビームは,上記場を通過するときに数十ミクロンまたは数百ミクロンに至るほど偏向され,これは一次ビームの狙いを変更して補償しなければならないことを意味する。これによって典型的なSIMS測定における制御を難しくし,微小な50μm領域におけるビームの正確なラスタリング(rastering)が非常に困難にする。
【0031】
引き込み場による上記一次ビームの偏向は,一次イオンのエネルギーが低いほど深刻になる。したがって典型的なまたは従来のSIMSオペレーションの下では,ビーム偏向を最小にするために,高一次エネルギー(high primary energy)を維持するインセンティブが働く。しかしながら,高エネルギーの一次ビームは深度分解能(depth resolution)を低下させる2つの影響をもたらす。第1に,高エネルギーの一次ビームが試料中のより深くに浸透し,表面ではない深度範囲にわたってイオンが生成されることである。第2に,上記より高いエネルギーは,試料の表面原子を基質の深部にまで押しやり,実質的に試料を深さ方向に汚す(smearing the material over depth)ことである。一実施態様では,典型的なSIMS測定において使用される高エネルギー一次ビームとは対照的に,低エネルギーの一次ビームの使用によって,半導体産業が要求する微細な深さ分解能が恩恵を受ける。したがって,一実施態様では,低引き込み場設計を用いることの上述した利点は,低エネルギー一次ビームの他の厳しい偏向が低引き込み場設計によって緩和されるので,最大深度分解能のために設計するときにより大きくなる。
【0032】
さらに,一実施態様では,低引き込み場を使用することによって,不十分な接地の場合の試料の荷電(帯電)(sample charging)に対処することがより簡単になる。たとえば,試料の上方の場を減少させることで(reducing the field above the sample),低エネルギーの電子フロード(溢れ)(electron flood)を使用して電荷をニュートラルにする(中和する)ことができる。対照的に,強引き込み場を使用するより典型的なSIMS設計では,電荷補償ビームを高エネルギーで動作させかつ正確に方向づけて(steered),上記場による偏向を克服しかつビームを正確に測定部位に位置決めしなければならず,これは非常に複雑なプロセスである。図2はSIMSシステムの電荷補償考察を概略的に示している。実施例にしたがって,以下に電荷補償システムの詳細をより詳しく説明する。
【0033】
図2を参照して,図1のシステム100の一部,特に第1および第2のESA116および118ならびに電荷補償システム106を含むセクションが,左側に描かれている。第1のシナリオ200において,分析ウエハが接地電位にある場合,イオンビームは名目上(nominally)スリット120の中間に位置する。ビームの尾(tails of the beam)が2つの電流検出器201のそれぞれに小さな信号を供給する。第2のシナリオ202において,ウエハが荷電(帯電)されると,イオンビームは上記電荷の符号に依存して上記スリット120の一方にシフトする。2つの検出器201内の電流が変化するので,これを電荷補償システム106を制御するために用いることができる。
【0034】
スループットに関して,ウエハ上の一連の測定を行うために必要とされる時間は測定技術の経済的適用において重要な要素である。この発明の一または複数の実施態様では,スループットを向上するために,いくつかの二次イオン種(several secondary ion species)が並行に(同時に)測定される。
【0035】
スループットについて本質的には,一般的なSIMS設計では(1)飛行時間型(TOF),(2)四重極検出型,および(3)磁気セクタ検出型の3つのカテゴリに分類することができる。TOF SIMSでは,一次ビームがパルスされ,スパッタリングされた二次イオン種が検出器に到達する時間にしたがって分類される。TOF SIMSは広範囲の二次イオン種が並行して収集される利点を有するが,上記測定のパルス特性が測定速度を低下させる。四重極検出手法では,一次ビームが連続的に供給されるが,検出器は一度に1つのイオン種を測定することができるのみである(ある種から別の種への切り替えは迅速に行うことができる)。最後に,第3の一般手法である磁気セクタ型は,電場と磁場の組み合わせを用いて質量/電荷にしたがってイオン種を分離する。四重極システムと同様に一次ビームは連続してオンされる。しかしながら典型的な磁気セクタシステムでは,スペクトロメータとして単一の検出器が使用され,これも一度に単一種の検出に制限される。
【0036】
上記の従来アプローチのいずれについても,半導体製造環境におそらく必要とされる速度および並行検出を提供するものではない。これとは対照的に,この発明の一または複数の実施態様では,磁器セクタ分析器(magnetic sector spectrograph)が用いられる。スペクトロメータと同様,磁気セクタ分析器は,磁場を通るビームを送ることによって様々な質量種を分離する。しかしながら,分析器設計では異なる質量を線または「焦点面」に沿って集束する。焦点面に沿って様々な位置に複数の検出器を配置することによって,異なる質量を並行して測定することができる。特定の実施態様では,SIMSシステム設計は,任意の単一の半導体測定に存在する大部分の種の測定が可能な10個の異なる検出器を含む。10個よりも少ないまたは多い検出器を用いてもよいことを理解されたい。TOF SIMSのように,この構成においては,利用可能な全質量範囲が並行して収集されない場合もあるが,所与の半導体プロセスにおいて典型的に使用される種の数は限られており,製造業者は通常,どの種が存在する可能性が高いかについて熟知している(good notion)ので,多数検出器手法は有害なものではないことも理解されたい。また,複数の検出器を並進ステージ(translation stage)に取り付けることができ,上記焦点面に沿うそれらの位置,したがって収集される種を,特定の測定の必要性にしたがって調整することができることにも留意すべきである。
【0037】
可用性(availability)と保守性(serviceability)に関しては,プロセス制御測定のタイムクリティカルな性質に起因して,ウエハが測定可能になった時点でツールを使用できることが不可欠である。このため,ツールの平均故障間隔が長く,修理の平均時間が短いことが重要である。さらに測定ツールは常時較正されていることが要求される。したがってSIMSツールは,その較正を自動的にチェックしかつ更新することができなければならない。
【0038】
一または複数の実施態様では,可用性および保守性に関する課題に対処するために,SISMシステムのいくつかの設計面が調整される。一実施態様では,ハードウエアの安定性を全体的に向上するために,モノリシックシステム構造が採用される。たとえば,引き込み光学系,下部一次コラム(lower primary column),および質量分析器などの主要サブシステムのそれぞれが,互いに強固に取り付けられる。柔軟なアライメントに対してはトレードオフになることもあるが,より確実なアライメントを保持することができるシステムとなる利点がある。これに加えて,一実施態様では,図1に示すように,2つの曲がり静電アナライザ(turning electrostatic analyzers)(ESAs)を二次経路に追加して,数百ポンドの分析器磁石を底の近くの主測定チャンバの下に取り付けることができる方向にビームをそらす(to divert the beam in a direction that allows a several-hundred pound spectrometer magnet to be mounted below a main measurement chamber, near the floor)。このような構成によってサービスアクセスおよび振動の安定性が改善される。
【0039】
一または複数の実施態様では,測定の一貫性(consistency)を維持するために,いくつかの内部チェックおよび較正がSIMSシステムに追加される。この内部チェックおよび較正は,(1)一次ビームの電流,位置および焦点を確認するための基準オーバーレイを備える図1に示すようなファラデーカップ,および/または(2)図1に示すように,スリットを機械的に走査してビームのアライメントを確認しかつアパーチャの摩耗を監視する能力を含む,二次経路に沿う複数のアパーチャおよびスリットにおいて電流を読み取る能力,の一または複数を含むことができる。
【0040】
一実施態様において,内部基準試料のセットがSIMSシステムに含まれる。内部試料を自動的に測定箇所に移動して,ビームの様々な重要な側面を定期的にチェックすることができる。これには,一次スパッタリング速度およびラスタ均一性を監視するための所定の厚さの層状材料,ラスタのサイズおよび位置を確認するための既知の寸法のパターン化ボックス(patterned boxes),および全体の信号強度を監視するためのさまざまな組成の単純なチップが含まれる。多数の主要なエネルギーおよび電流において,多数の試験を行うことができる。一例として,図3は,この発明の一実施態様による,ファラデーカップおよび較正基準(calibration standards)を格納するための領域を含むステージ領域を示している。
【0041】
図3を参照して,図1のシステム100の一部,特にXYステージ102および引き込みレンズ108を含むセクションが左側に示されている。ウエハまたは試料103が引き込みレンズ104の下方のXYステージ102上に配置される。XYステージ300はファラデーカップ300を含み,その上面も図3に示されている。搬送ロボット302を,既知の組成および/または膜厚の層状フィルムなどの1または複数の基準ウエハ用の「パーキング・ロット」とともに,含ませてもよい。
【0042】
第2の側面において,一または複数の実施態様は,放出された荷電粒子またはイオンの運動エネルギーのシフトを観察することによって,試料の表面電位を測定することを含む。一または複数の実施態様は,運動エネルギーのシフトをフィードバック機構として用いることによって表面電位を測定しかつ制御することを含む。
【0043】
本質的に,表面から原子を除去することによって二次イオンが生成され,その一部がイオン化される。二次イオンはある速度範囲で,または等価的には運動エネルギーの範囲で放出される。イオンが光学経路に沿って進むとき,任意点Aにおけるその運動エネルギーは,初期運動エネルギー(initial kinetic energy)(KE),試料の表面電位,Aにおける局所電位(local potential),および電気力学的要素(たとえば,バンチャー,サイクロトロンなど)からの任意のKE寄与分(any KE contribution)の合計となる。KE分布(KE distribution)を決定し,かつこれを既知の表面電位を備える基準試料からの分布と比較することによって上記試料電位の尺度(a measure of the sample potential)が提供される。
【0044】
表面電位を測定する主な理由は,試料に正負の電荷が不均一に流れることによって生じる絶縁試料の荷電(帯電)である。二次イオンは,原子,イオン,電子,または光子を表面に衝突させることによって形成することができる。イオンと電子は表面に電荷を加えるが,表面から放出される二次荷電粒子は電荷を取り除く。上記試料が導電性であれば,電荷輸送の不均衡を消散することができる。試料が安定した電位の電極に電気的に接続されていない場合,絶縁オーバーレイヤ(たとえばこれは,多くの場合,横向きにパターニングされている)が帯電され,かつ試料全体が帯電される。さらに,表面電位は物質が表面から除去されるときに,場合によっては試料導電率の変動または荷電粒子の放出の変動にさらされるときに測定することができる。
【0045】
この発明の一実施態様では,放出された二次イオンが静電アナライザに通され,イオンがそのエネルギーにしたがって空間に分散される。完全なKE分布は,分散されたイオンビームがイオン検出器120を通ってESAの電場を変化させることによって測定される。KEの変化はエネルギー分布の低いおよび/または高い尾部のみをインターセプトしつつ(while intercepting only the low and/or high tails of the energy distribution),尾部に配置される一つまたは二つの検出器を使用することによって(by using one or two detectors positioned at the tails)測定することができる。一実施態様では,尾部の傾斜(slope of a tail)が,ESA偏向場をわずかに変調することによって測定される。主な送信ビームの位置を保持するために,上記装置は2つのESAとそれらの間のイオン検出器120の配列を有することができる。この一実施態様では,第2のESAまたはマッチングレンズを備える第2のESAは,第1のESAと等しくかつ反対の分散強度(opposite dispersive strength)を持つ。
【0046】
この発明の特定の実施態様は,放出される荷電粒子の運動エネルギーのシフトを観察し,かつ運動エネルギーのシフトをフィードバック機構として用いることによって試料の表面電位を計測しかつ制御するものである。例示する実施態様は,SIMS測定に関連して記載されるが,本書に記載の実施態様は,他の測定および計測技術およびシステムに適用可能であることを理解されたい。
【0047】
一または複数の実施態様は,イオン電流センサ(複数)を装備したエネルギースリットを備える少なくとも一つの静電アナライザのシステムに関するものである。一または複数の実施態様は,質量分析器の前の,試料表面から運ばれる全二次荷電粒子のエネルギー分布およびエネルギーシフトを計測するためのシステムおよび/または手法に関する。一または複数の実施態様は,表面荷電(表面帯電)を監視するための静電アナライザおよびエネルギースリットフィードバックシステムの実施に関する。一または複数の実施態様は,表面電位を調整するための能動(アクティブ)制御システムの利用に関する。一実施態様では,イオン電流センサを装備する,エネルギースリットを備える少なくとも一つの静電アナライザのシステム,質量分析器の前の,試料表面から運ばれる全二次荷電粒子のエネルギー分布およびエネルギーシフトを計測するシステムおよび/または手法,ならびに表面荷電を監視するために実装される静電アナライザおよびエネルギースリットフィードバックシステムが,表面電位の変化のためにフィードバックシステムとして一緒に用いられる。
【0048】
主イオンビームが質量分析器を通じて送られるSIMS測定に適用可能な実施態様では,浸食領域(eroded area)のエッジ近くで発生する二次イオンを拒絶することが,多くの場合,分析的には望ましく,これは深度プロファイルを混乱させることがあるからである。主ビームが拒絶されている間に完全なKE分布を測定することは可能である。一実施態様では,主ビームが質量分析器を通過する間に分布の尾部(tails of distribution)が測定される。
【0049】
図4Aおよび図4Bは,この発明の一実施態様によるもので,電荷補償システム(charge compemsation system)を監視しかつ制御する,静電アナライザおよび電流センサを装備するエネルギースリットのシステムの使用についての概略図を含む。
【0050】
図4Aを参照して,フローチャート400の第1部分は動作402において開始され,電荷補償が必要とされるかどうかが決定される。電荷補償が必要でなければ,電荷補償は動作404においてオフとなる。これは動作406において曲がりESAにおいて電荷補償スリットを用いて確認され,図4Bの408に進む。電荷補償が必要とされる場合,電荷補償が動作410においてオンされる。これは動作412において曲がりESAにおいて電荷補償スリットを用いて監視される。動作414において,低エネルギー電荷補償(CC)あご部/Si強度の信号が消えていないかどうかを見るために(to see if no signal on low energy charge compensation (CC) Jaw/Si intensity fades away),症状が判定される。はいであれば判断は図4Bの416に進む。いいえであれば図4Bの418に進む。
【0051】
図4Bを参照して,経路408は動作420に進み,そこで解析の実行が開始される。経路416は動作422に進み,信号が減少し続けるかどうかが判定される。動作424において電荷補償の調整が行われる。動作426において,曲がりESAにおいて電荷補償スリットを用いて監視が行われる。動作428において全体のエネルギー分布が測定される。
【0052】
再度図4Bを参照して,経路418は動作430に進み,そこでは信号は一定であるが,正にバイアスされている。動作432において電荷補償が調整される。動作426において曲がりESAにおいて電荷補償スリットを用いて監視が行われる。ステップ428において全体のエネルギー分布が測定される。
【0053】
再度図4Bを参照して,動作428から,動作436において低エネルギー電荷補償(Chargecompensation)(CC) あご部/Si 強度が決定される。動作438において低エネルギーCCスリット信号についての電荷補償が調整され,導電性試料に類似するかどうかが判定される。いいえであれば動作440は動作424に戻る。はいであれば動作442は動作444に進み,安定したSi強度が決定される。次に動作446において,低エネルギーCCスリット信号が導電性試料に類似するかどうかが判定される。そうであれば,フローチャートは動作420に進み,分析の実行が開始される。
【0054】
図5は,この発明の一実施態様による,上部分析器(upper spectrometer )および曲がり静電アナライザ(ESA)を通る二次イオンビーム経路を示している。
【0055】
図5を参照して,特定の実施例についての図1のシステム100の一部分がより詳細に示されている。ESA118およびESA116間のスリット領域120におけるビーム110は,インナー(内側)・トレース(inner trace)110Aおよびアウター(外側)・トレース110Bに分割されている。インナー・トレース110Aは導電性試料(conductive sample)(たとえば表面電位=0V)を表す。アウター・トレース110Bは上記試料に+50V表面電位を有する,同一の二次イオン分布(identical secondary ion distribution)を表す。システム100に含まれる二次イオンブランカ―(secondary ion blanker)500の機能は,イオンを全イオン電流センサ(total ion current sensor)502に偏向させることである。
【0056】
図5を再度参照して,同一の二次イオンエネルギー分布について0Vから+50Vに試料バイアスを変化させる効果が示されている。正の試料バイアス(または表面の正荷電)は,ビーム経路を,上記曲がりESAのエネルギースリットの高エネルギーセンサに向けて効果的にシフトし,高エネルギースリットあご部(high energy slit jaw)における測定電流を増加させる(+50V試料バイアスのアウター・トレースを参照)。同時に,低エネルギースリットあご部は電流を効果的に測定しない(0Vバイアスについてのインナー・トレースを参照)。
【0057】
一実施態様において,高エネルギースリットセンサ信号は,(正の二次イオンについての)電荷ニュートラルシステムの効果を監視するために使用することができる。負の二次イオンまたは電子については,正の表面電位が低エネルギースリットセンサに向かうエネルギー分布のシフトをもたらし,極端には試料表面からの二次イオン放出を完全に抑制することができる(負の荷電粒子が正の試料電位に引き寄せられる)。
【0058】
図6は,この発明の一実施態様による,上部分析器および曲がり静電アナライザ(ESA)セクションを通る正のイオンについての二次イオンビーム経路を示している。
【0059】
図6を参照して,特定の実施例についての図1のシステム100の一部が,図示される試料位置103とともにより詳細に示されている。軌道トレースは,負の表面電位(たとえば-20V)に向けて帯電する表面を示している。すなわち,正の二次イオンは,低二次イオンエネルギーに向けてシフトするように見える。二次イオンは低エネルギースリットセンサにおいてカットオフ(遮断)される。
【0060】
一実施態様において,試料表面が負の電位を蓄積すると,正の二次イオンは明らかに低二次イオンエネルギーに向けてシフトする。このシフトは,全体的な試料電位が正の電位からより小さい正の電位に変化するときに生じる。このシフトの発生は以下の要因の一または複数に起因する。(a)低エネルギー二次イオンを除去するために用いられる意図的な試料バイアス,(b)一定の正の表面電位が半絶縁性の試料に誘導され,正味の負の表面電荷を生じさせる高エネルギー電子が試料に照射される場合,および/または(c)測定から低エネルギーイオンを排除するために,導電性試料に対して全体の試料バイアスがより負の電位に設定されること,である。
【0061】
図7は,この発明の一実施態様による,低エネルギーおよび高エネルギー電流センサに続くフィードバックとしての曲がりESA116を使用して,高エネルギーに向かうエネルギー分布走査を示すもので,静電分析装置の平均通過エネルギーを変化させるものである。
【0062】
図7を参照して,図1のシステム100の一部が特定の実施例についてより詳細に示されており,試料位置103が示されている。この手法はESA116だけの曲がりESA走査を含むもので(アウターESA Vo-10V,インナーVi+10V),他方ESA118は公称電圧(nominal voltage)にある。ESA118は依然として公称パスエネルギーに調整されているので,システムは二次イオンを質量分析器に送らない。
【0063】
図8A,8B,8Cおよび8Dは,この発明の一実施態様による,図7に関して記述した静電曲がりESA116および高および低エネルギースリットセンサを用いて二次イオンエネルギー分布を測定するための概略図800を含む。一実施態様では,図4Aおよび4Bに関して記述したような電荷補償システムの効果を監視するために同一のまたは類似する実験設定を使用することができる。この実施は,表面電位を調整するための上記の手法で説明したような,試料の表面電位を制御または調整する追加特徴と併せて行うことができる。
【0064】
図8Aを参照して,エネルギー分布走査は曲がりESA116の後の電荷補償(CC)スリット120で行われる。例示的な実施例では,試料はシリコンまたはSiGeであり,良好に接地されている。この設定は電荷補償基準にも用いられる。エネルギー調整は,イオンエネルギーをスリット検出器に戻すe-ビーム電流/エネルギーを通じて達成されなければならない。動作802において電荷補償がオフされる。動作804において曲がりESA116は公称電圧にある。動作806においてウエハオートz(wafer auto-z)が実行され,OKがチェックされる。対応する制御モジュール850において視覚システム/ステージ動作852が動作806を実行するために使用される。動作808においてシリコン極性セット(silicon polariry set)が標準設定値でロードされる。対応する制御モジュール850において,動作808を実行するために上部分析(upper spectro)(または下部分析)動作854が用いられる。動作810において一次ビームエネルギー/ラスタサイズ/回転調整が実行される。対応する制御モジュール850において,動作810を実行するために一次コラム動作(primary column operation)856が用いられる。動作812においてビームとの同期が実行される。対応する制御モジュール850において,動作812を実行するために上部分析動作858が用いられる。動作814および816においてそれぞれ,一次ビームはブランキングされ,次にオンにセットされる。対応する制御モジュール850において,動作814および816を実行するために上部分析動作860および一次電流動作862がそれぞれ用いられる。動作818において電荷補償スリット幅が設定される(たとえば,50eVのエネルギー路で3.5mm)。対応する制御モジュール850において,動作818を実行するためにスマートステージコントローラ動作864が用いられる。動作820においてスリット電流を測定することによって電荷補償(CC)が判定される。対応する制御モジュール850において,動作820を実行するためにスマートステージコントローラ動作866および上部分析電荷補償スリット電流動作868が用いられる。動作820からのフローは図8Bに続く。
【0065】
動作820からの図8Bを参照して,走査ブロック高エネルギー動作822が実行され,これはESA116においてスマートエネルギー走査動作824をマークし,図8Bに図示する動作824A~824Eに続く。ビームブランク設定をオフにする動作826において,電荷補償プログラム(charge compensation program)は動作822を終了する。曲がりESA116は次に動作828において公称に設定される。動作828からのフローは図8Cに続く。
【0066】
動作828からの図8Cを参照して,逆方向曲がりESA116走査が実行される。次に走査ブロック低エネルギー動作832が実行され,これは,ESA116におけるエネルギー走査開始動作834をマークし,図8Cに示す動作834A~834Eに進む。二次ビームブランク設定をオフする動作836で電荷補償プログラムは動作832を終了する。曲がりESA116は次に動作838で公称にセットされる。
【0067】
図8Dを参照して,しかしながらさらなる補償が必要とされる場合,さらなる判定が動作840において実行される。たとえば,動作840Aにおいて,必要とされる場合,電荷補償(CC)スリットは目標電圧のための一定幅に移動される(moved at constant width for a target voltage)。一実施態様では,電荷補償スリットは低エネルギー二次イオンを排除するために用いることができることも理解されたい。また,ESA116およびESA118への最小経路エネルギーの通過を可能にするために電圧オフセットを適用することができることも理解されたい。動作840Bにおいて一次ビームは停止される(オフ位置)。
【0068】
図9は,この発明の一実施態様による,同じ電圧のESA116およびESA118における曲がりESA走査を含むエネルギー分布走査を示している。図9を参照して,図1のシステム100の一部が特定の実施態様についてより詳細に示されている。この手法は,ESA116および118のアウター部をVo-10Vに設定することを含む。ESA116および118のインナー部はVi+10Vに設定される。
【0069】
すなわち,実施態様は試料の表面電位を制御する手法を含む。一実施態様では,試料表面の電位は,以下の一または複数を用いて制御することができる。(1)試料基板のバイアス電圧の調整(図10を参照してより詳細に記載する),(2)表面における電子ビームの誘導および試料表面に搬送される電流の変動(図11を参照してより詳細に記載する),(3)表面における電子ビームの誘導および二次電子係数が1を超える(試料電位をより正に駆動する),または1未満(試料電位をより負に駆動する)のいずれかとなるように電子の衝突エネルギーを変動すること,(4)電子ビームによって供給される正味の電荷フラックスを極性および強度の可変性のいずれかとすることができる(2)および(3)の組み合わせ,(5)試料中に電荷キャリアを生成し,その導電率が変化するように光子の可変強度を試料表面に誘導すること(図12を参照してより詳細に記載する),(6)試料から光電子が放出されるように光子の可変強度を試料表面に誘導し,試料電位をより正に駆動すること,(7)試料表面から離れる可変強度の光子を高二次電子係数の材料に誘導し,試料表面を低エネルギー電子で溢れさせること,すなわち試料電位をより負に駆動すること(図13Aおよび図13Bに関連して以下にさらに詳述する),および/または(8)電子放出材料に正または負の電位を与えて試料表面に衝突する電子フラックスおよびエネルギーを制御する(7)の手法である。
【0070】
図10はこの発明の一実施態様による,表面荷電(帯電)(surface charging)に起因する試料上の正電位を概略的に示している。
【0071】
図10を参照して,正の一次イオンビーム1002が試料1006の部位1004に誘導される(方向づけられる,向けられる)。二次イオン1008が生成され,引き込みモジュール1010において収集される。試料1006(および特に試料1006の部位1004)の試料電位は,たとえば試料基板のバイアス電圧を調整することによって,調整することができる。
【0072】
図11は,この発明の一実施態様による,電子ビームに基づく電荷のニュートラル化(中和)および制御を概略的に示している。
【0073】
図11を参照して,正の一次イオンビーム1102が試料1106の部位1104に誘導される。二次イオン1108が生成され,引き込みモジュール1110において収集される。電子1112のビームが表面の1104に誘導される。一方,試料表面に搬送される電流が変化する。
【0074】
図12はこの発明の一実施態様による,可変強度光子ソース(源)を用いる試料の光電導(photo conductivity)を概略的に示している。
【0075】
図12を参照して,正の一次イオンビーム1202が試料1206の部位1204に誘導される。二次イオン1208が生成され,引き込みモジュール1210において収集される。可変強度の光子1212が表面の1204に誘導され,荷電キャリアが試料内に生成され,その導電率(conductivity)が変化する。
【0076】
図13Aは,この発明の一実施態様による,試料から離れる電子放出材料の使用(use of an electron emitting material away from the sample)による電荷のニュートラル化を概略的に示している。図13Aを参照して,試料1306Aの領域1304Aが正に荷電されている。電子エミッタ1350Aがシステムに含まれている。低エネルギー電子1352Aが試料1306Aの領域1304Aの正の表面電位によって引き付けられる。
【0077】
図13Bはこの発明の一実施態様による,電子フラックスが一次イオン誘起性表面電荷を超えた場合の有効電荷ニュートラル化(effective charge neutralization if the electron flux exceeds the primary ion induced positive surface charge)を概略的に示している。図13Bを参照して,サンプル1306Bの領域1304Bが電荷ニュートラルである。電子エミッタ1350Bがシステムには含まれている。正味の表面電位は電子1352Bの最大電子エネルギーに等しい。図13Aおよび図13Bを総括的に参照すると,光子の可変強度が試料表面から離れて高二次電子係数の材料に向けられ,試料表面に低エネルギー電子が溢れ(flooded),試料電位がより負に駆動される。
【0078】
第三の観点において,この発明の実施態様は,複数の静電容量式高さセンサ(multiplecapacitive height sensors)を使用してウエハ裏面接触抵抗(wafer backside contact resistance)を決定する方法に関する。
【0079】
本質的に半導体ウエハの計測装置では,一次励起源として荷電粒子(電子/イオン)ビームを使用する,もしくはウエハから放出される荷電粒子の特性を測定する,またはその両方を使用するのが一般的である。ウエハの荷電(帯電)は,放出された粒子の特性の測定に誤差を生じさせるか,または一次荷電粒子を隣接領域に偏向させこれらの領域に損傷を与える可能性がある。ウエハが帯電しないようにするためには,ウエハの裏面に導電性電極を接触させることが一般的である。しかしながら,場合によっては,電極またはウエハの裏面の絶縁フィルムの汚染に起因して,電極とウエハとの間に高い抵抗が存在する。関連する一次イオンまたは電子ビームの試料への適用の確実性を保証するために,裏面接触抵抗を測定することが望ましいことがある。
【0080】
この発明の一実施態様では,複数の静電容量式高さセンサを用いることによって接触抵抗を測定する手法を記載する。本書において記載される概念を例示するために,良好に接地されたウエハへの高さを測定するために単一のセンサが使用される場合をはじめに考える。上記センサはウエハに対する感知距離内にある平行プレート電極を含む。この構造は一方のプレートがセンサであり,他方がウエハである平行プレート・キャパシタを形成するものである。AC電圧が上記センサに加えられると,電流がプレート間のギャップを流れる。ギャップを流れる電流の量は,電圧,プレートの面積,プレートを分離する材料(the material that separates the plates)およびプレート間の距離によって決定される。
【0081】
電流を記述する関連式は以下のとおりである。iac=xV,ここでiac=交流電流(アンペア),C=キャパシタンス(ファラッド),V=電圧であり,xは交流周波数のみに依存する定数である。キャパシタンス(C)は以下のように規定される。C=KE0A/D,ここでC=キャパシタンス(ファラッド),K=プレート間の材料の誘電率(たとえば,空気=1.0),E0=自由空間の誘電率(定数),A=プレートの面積(平方メートル),D=プレート間の距離(メートル)である。したがってセンサの面積が一定に維持される場合には,距離(D)は電圧(V)を電流(iac)で割った値に比例する。AC電圧の場合,これは回路のインピーダンスに正比例する。
【0082】
センサの電子制御はいくつかのやり方で実施することができる。たとえば,いくつかの容量性センサは電流を一定に保ちかつ電圧を変化させる。これらは定電流容量センサと呼ばれている。他の容量性センサは電圧を一定に保ちかつ電流を変化させる。これらは定電圧設計のものである。いずれか一方の設計が有利であるというものではない。
【0083】
上記の説明では,ウエハが測定電子回路に良好に接地されており,測定されるインピーダンスがセンサとウエハの間のギャップに起因するものとしている。ウエハが良好に接地されていない場合,センサからウエハへのギャップに起因するインピーダンスおよびウエハから接地へのインピーダンスの合計が測定されるものになる。残念ながら,これはウエハからセンサへのギャップとウエハのインピーダンスからの誤差の合計である距離が報告される結果となる。距離計測の誤差を低減するために,第2のセンサまたは補償電極を使用してウエハから接地への電流を最小にする手法を記載する。一般的な考え方は,主センサ電極に与えられる駆動信号の振幅および/または位相シフトされたバージョンであるAC電圧を第2の電極に供給することである。2つの電極の正味電流がゼロであるとき,主電極からの値はギャップ距離の正確な尺度となる。
【0084】
図14はギャップ距離を決定するために補償電極を使用することに関するパラメータのいくつかを概略的に示している。図14を参照して,センサ信号発生器1404に結合された補償電極1402が示されている。センサ1406がセンサ信号発生器1404に結合されている。図14の構成は,ターゲット1408に対する補償電極1402,センサ信号発生器1404およびセンサ1406の関係を示している。
【0085】
この発明の一実施態様では,補償電極に対して駆動される信号の値をさらに決定することが重要であることを理解されたい。この値は接地に対するウエハ・インピーダンスの尺度である。上記信号を決定し,接地と導電性ウエハとの間に追加された既知の基準インピーダンス標準を用いて信号を較正することによって,未知の接触抵抗を決定できるように信号を較正することができる。
【0086】
この発明の一実施態様では,補償電極信号の測定を実行するいくつかのオプションが存在する。第1の実施態様は,主電極信号の180度シフトされたバージョンを有する補償電極の駆動を含む手法である。振幅は正味電流がゼロになるまで(または主電極によって測定される距離が最小になるまで)調整される。次に補償電極上の電圧の振幅をインピーダンスに対して較正することができる。第2の実施態様では,補償電極が主信号の位相シフトされたバージョンによって駆動されているときに主センサによって示される距離が測定される。距離は複数の異なる位相角に対してプロットされ,曲線近似アルゴリズムが用いられて最小距離の位相角が決定される。得られた位相角が次にインピーダンスに対して較正される。第3の実施形態では,ウエハまでの補償電極またが補償電極の露出面積が変化する。主電極上の距離を測定して最小値が決定され,したがってインピーダンスに対して較正できる値が得られる。
【0087】
この発明の実施態様は,この発明による処理を実行するコンピュータシステム(または他の電子デバイス)をプログラムするために用いることができる,命令を格納した機械可読媒体を含むコンピュータプログラム製品またはソフトウエアとして提供することができる。機械読取可能媒体は,機械(たとえばコンピュータ)によって読み取り可能な形態で情報を格納または送信する任意の機構を含む。たとえば,機械読取可能(たとえばコンピュータ読取可能)媒体は,機械(たとえばコンピュータ)読取可能記憶媒体(たとえば読み取り専用メモリ(ROM),ランダムアクセスメモリ(RAM),磁気ディスク記憶メディア,光学記憶メディア,フラッシュメモリ装置など),機械(コンピュータ)読取可能送信媒体(電子的,光学的,音響的,または他の形態の伝播信号(たとえば赤外線信号,デジタル信号など))を含む。
【0088】
図15は,上述した方法のうちの一または複数を機械に実行させることができる命令セットを含むコンピュータ・システム1500の例示的な形態の機械の概略図を示している。変形例では,上記機械はローカルエリアネットワーク(LAN),イントラネット,エクストラネット,インターネット中の機械に接続(ネットワーク)することができる。上記機械は,クライアント-サーバ・ネットワーク環境内のサーバまたはクライアント・マシンの能力において,またはピアツーピア(もしくは分散型)ネットワーク環境内のピアマシンとして動作することができる。上記機械はパーソナル・コンピュータ(PC),タブレットPC,セットトップボックス(STB),パーソナルデジタルアシスタント(PDA),セルラー電話,ウエブアプライアンス,サーバ,ネットワークルータ,スイッチもしくはブリッジ,または上記機械が取るべきアクションを特定する指示セット(順次のものまたはその他)を実行可能な任意の機械とすることができる。さらに単一の機械のみが示されているが,用語「機械」は,本書に記載の方法論の任意の一または複数を実行する指示セット(または複数の指示セット)を個々にまたは共同して実行する任意の機械の集合(たとえば複数のコンピュータ)を含むものとする。たとえば,一実施態様において,機械は,二次イオン質量分析(SIMS)を用いて試料を測定する一または複数の指示を実行するように構成される。一実施態様において,上記コンピュータ・システム1500は図1に関連して図示しかつ記載したSIMSシステムのようなシステムとともに用いるのに適するものである。
【0089】
例示するコンピュータ・システム1500は,処理装置1502,主メモリ504(たとえば,読み取り専用メモリ(ROM),フラッシュメモリ,シンクロナスDRAM(SDRAM)のようなダイナミックランダムアクセスメモリ(DRAM)またはランバスDRAM(RDRAM)等),スタティックメモリ1506(たとえば,フラッシュメモリ,スタティックランダムアクセスメモリ(SRAM)等),およびバス1530を通じて他の装置のそれぞれと通信する二次メモリ1518(たとえばデータ記憶装置)を含む。
【0090】
処理装置1502はマイクロプロセッサ,中央処理装置などの一または複数の汎用処理装置を表す。より詳細には,処理装置1502は,CISC(complex instruction set computing)マイクロプロセッサ,RISC(reduced instruction set computing)マイクロプロセッサ,VLIW(very long instruction word)マイクロプロセッサ,他の命令セットを実装するプロセッサ,または命令セットの組み合わせを実装するプロセッサであってもよい。処理装置1502は,特定用途向け集積回路(ASIC),フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA),デジタル信号プロセッサ(DSP),ネットワークプロセッサなどのような一または複数の専用処理装置であってもよい。処理装置1502は本書に記載の動作を実行する処理ロジック1526を実行するように構成されている。
【0091】
上記コンピュータ・システム1500はさらに,ネットワークインターフェース装置1508を含むことができる。上記コンピュータ・システム1500はまたビデオ表示ユニット1510(たとえば,液晶表示装置(LCD)または陰極線管(CRT)),英数字入力装置1512(たとえばキーボード),カーソル制御装置1514(たとえばマウス)および信号生成装置1516(たとえばスピーカ)を含むことができる。
【0092】
二次メモリ1518は,本書に記載の方法論または機能のいずれか一つまたは複数を具体化する一または複数の命令セット(たとえばソフトウエア1522)が格納された機械アクセス可能な記憶媒体(またはより具体的にはコンピュータ読み取り可能な記憶媒体)1531を含むことができる。上記ソフトウエア1522はまた,コンピュータ・システム1500による実行中に主メモリ1504内におよび/または処理装置1502内に完全にまたは少なくとも部分的に存在させることができ,主メモリ1504および処理装置1502も機械可読記憶媒体を構成する。上記ソフトウエア1522はさらにネットワーク1520を介してネットワークインターフェース装置1508を通じて送信または受信することができる。
【0093】
機械アクセス可能な記憶媒体531が単一媒体であるとして例示的実施形態に示されているが,用語「機械読み取り可能な記憶媒体」は,一または複数の命令セットを記憶する単一媒体または複数の媒体(たとえば集中型もしくは分散型データベース,および/または関連付けられたキャッシュおよびサーバ)を含むことができる。用語「機械読み取り可能な記憶媒体」は,上記機械による実行のための指示セットを記憶するまたはエンコードすることが可能な,この発明のいずれか一つまたは複数の方法論を機械に実行させる,任意の媒体を含ませることができる。したがって用語「機械読み取り可能な記憶媒体」は,これに限定されるものではないが,ソリッドステートメモリ,ならびに光学媒体および磁気媒体を含むものとされる。
【0094】
このように,二次イオン質量分析(SIMS)を使用する半導体計測および表面分析のためのシステムおよび手法を記載した。
【0095】
一実施態様において,二次イオン質量分析(SIMS)システムは試料ステージを含む。一次イオンビームが試料ステージに誘導される。引き込みレンズが上記試料ステージに向けられる。引き込みレンズは試料ステージ上の試料から放出される二次イオンに対して低引き込み場(low extraction field)を提供するように構成されている。磁気セクタ分析器(magnetic sector spectrograph)がSIMSシステムの光路に沿って引き込みレンズに結合される。上記磁気セクタ分析器は磁気セクタアナライザ(MSA)に結合された静電アナライザ(ESA)を含む。
【0096】
一実施態様において,上記試料ステージはファラデーカップを含む。
【0097】
一実施態様において,上記SIMSシステムはさらに,上記磁気セクタ分析器の面に沿って間隔をおいて配置された複数の検出器を含む。
【0098】
一実施態様において,上記複数の検出器が,上記試料から放出される二次イオンのビームから対応する複数の様々な種(species)を検出するものである。
【0099】
一実施態様において,上記SIMSシステムはさらに,引き込みレンズと磁気セクタ分析器のESAとの間に,上記SIMSシステムの光路に沿って結合された第1の追加のESAを含み,上記第1の追加のESAと上記磁気セクタ分析器のESAの間に,上記SIMSシステムの光路に沿って結合された第2の追加のESAを含む。
【0100】
一実施態様において,上記第1の追加のESAが上記試料から放出される二次イオンのビームを拡散するように構成され,上記第2の追加のESAが上記第1の追加のESAから受け取った二次イオンのビームを集束する(concentrate)ように構成されている。
【0101】
一実施態様では,上記SIMSシステムはさらに,上記第1の追加のESAおよび第2の追加のESAの間に,上記SIMSシステムの光路に沿う一または複数のスリットを含む。
【0102】
一実施態様では,上記第1の追加のESA,第2の追加のESA,および一または複数のスリットが,上記SIMSシステムの電荷補償システム内に含まれている。
【0103】
一実施態様では,上記第1の追加のESAおよび第2の追加のESAが,SIMSシステムの光路を,上記試料ステージの上方から上記試料の下方に導くものである。
【0104】
一実施態様では,上記MSAの磁石が上記試料ステージの下方に配置されている。
【0105】
一実施態様では,低引き込み場が最大で約10Volts/mmの絶対値を有している。
【0106】
一実施態様では,SIMSシステムはさらに上記試料ステージに結合された搬送ロボット(transfer robot)を含む。
【0107】
一実施態様では,上記SIMSシステムはさらに,搬送ロボットに結合された容器(レセプタクル,貯蔵所,receptacle)を含み,上記容器が較正基準(calibration standards)を含む。
【0108】
一実施態様では,試料の表面電位の測定および制御の方法は,試料の表面から放出される帯電(荷電)粒子の運動エネルギーを測定することを含む。上記方法はまた,上記荷電粒子の運動エネルギーのシフトを決定することを含む。上記試料の表面の表面電位は,上記荷電粒子の運動エネルギーにおけるシフトに応じて荷電される。
【0109】
一実施態様では,上記試料の表面の表面電位が上記試料を支持する電極のバイアス電圧を調整することを含む。
【0110】
一実施態様では,上記試料の表面の表面電位を変化させることが,上記試料の表面に電子ビームを誘導する(方向づける,導く)ことを含む。
【0111】
一実施態様では,上記試料の表面に電子ビームを誘導させることが,上記試料の表面に搬送される電流を変動させる(varying a current delivered to the surface of the sample)ことを含む。
【0112】
一実施態様では,上記試料の表面に電子ビームを誘導することが,上記試料の表面における電子ビームの衝突エネルギーを変化させることを含む。
【0113】
一実施態様では,上記試料の表面の表面電位を変化させることが,上記試料表面に可変強度の光子を誘導することを含む。
【0114】
一実施態様では,上記試料表面に可変強度の光子を誘導することが,上記試料中に荷電キャリアを生成して上記試料の電導率(conductivity)を変化させることを含む。
【0115】
一実施態様では,上記試料表面に可変強度の光子を誘導することが,上記試料から光電子を放出して上記試料電位をより正に駆動することを含む。
【0116】
一実施態様では,上記試料の表面の表面電位を変化させることが,上記試料表面から離れるように可変強度の光子を誘導する(directing photons of variable intensity away from the sample surface)ことを含む。
【0117】
一実施態様では,上記方法は,上記試料の表面の表面電位を変化させた後に,上記試料の表面の二次イオン質量分析(SIMS)測定を実行することをさらに含む。
【0118】
一実施態様では,ウエハの裏面接触抵抗を決定する方法は,第1の駆動信号を用いて駆動される主容量センサ電極と,第1の駆動信号と比較して振幅または位相シフトされる第2の駆動信号を用いて駆動される補償容量センサ電極との比較に基づいてウエハの表面のギャップ距離値を測定することを含む。第2の駆動信号の値が測定される。第2の駆動信号の値は接地に対するウエハのインピーダンス値を決定するために,基準インピーダンス標準(reference impedance standard)に対して較正される。上記ギャップ距離値および接地に対するウエハのインピーダンス値に基づいて,ウエハの表面の接触抵抗値が決定される。
【0119】
一実施態様では,上記第1の駆動信号の値の測定が,上記第1の駆動信号の180度シフト・バージョンである第2の駆動信号を用いて上記補償容量センサを駆動し,上記第2の駆動信号の振幅を調整して,主容量センサ電極および補償容量センサ電極の正味電流(net current)がゼロのときの振幅値を得るものであり,上記基準インピーダンス標準に対する上記第2の駆動信号の値の較正が,上記基準インピーダンス標準に対して振幅値を較正することを含む。
【0120】
一実施態様では,上記第2の駆動信号の値の測定が,第1の駆動信号の位相シフト・バージョンである第2の駆動信号を用いて上記補償容量センサを駆動し,上記第2の駆動信号の位相角を調整して,最小ギャップ距離が得られるときの位相角度値を得ることを含み,上記基準インピーダンス標準に対する上記第2の駆動信号の値の較正が,上記基準インピーダンス標準に対する位相角度値を較正することを含む。
【0121】
一実施態様では,上記第2の駆動信号の値の測定が,上記ウエハの表面からの上記補償容量センサ電極の距離を変更することによって最小ギャップ距離値を得ることを含み,上記基準インピーダンス標準に対する上記第2の駆動信号の値の較正が,上記基準インピーダンス標準に対する上記最小ギャップ距離値を較正することを含む。
【0122】
一実施態様では,上記ギャップ距離値の測定が,上記主容量センサ電極と上記補償容量センサ電極の正味電流がゼロのときの上記ギャップ距離値を測定することを含む。
【0123】
一実施態様では,上記方法は,導電性電極を上記ウエハの表面に接触させ,上記ウエハの表面についての接触抵抗値が閾値未満であるときに荷電粒子ビームを上記ウエハの第2の表面に誘導することをさらに含む。
【0124】
一実施態様では,上記ウエハの第2の表面への上記荷電粒子ビームの誘導が,上記ウエハの第2の表面の二次イオン質量分析(SIMS)測定を開始することを含む。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8A
図8B
図8C
図8D
図9
図10
図11
図12
図13A
図13B
図14
図15