(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-14
(45)【発行日】2022-04-22
(54)【発明の名称】超音波システムおよび超音波システムの制御方法
(51)【国際特許分類】
A61B 8/14 20060101AFI20220415BHJP
【FI】
A61B8/14
(21)【出願番号】P 2020516285
(86)(22)【出願日】2019-04-18
(86)【国際出願番号】 JP2019016625
(87)【国際公開番号】W WO2019208387
(87)【国際公開日】2019-10-31
【審査請求日】2020-10-07
(31)【優先権主張番号】P 2018084305
(32)【優先日】2018-04-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【氏名又は名称】三橋 史生
(72)【発明者】
【氏名】宮地 幸哉
【審査官】松岡 智也
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-231892(JP,A)
【文献】特開2003-230560(JP,A)
【文献】特開2005-087266(JP,A)
【文献】特開2013-188461(JP,A)
【文献】特開2014-097406(JP,A)
【文献】米国特許第05538004(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0098750(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 8/00-8/15
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子セクタ走査を行う超音波プローブと画像表示装置とが接続された超音波システムであって、
前記超音波プローブは、
複数の振動子が配列方向に配列された振動子アレイと、
前記複数の振動子のうち前記配列方向における中央部に位置し且つ前記複数の振動子の数よりも少ない数の振動子からなる開口用振動子群を用いて前記超音波プローブによる超音波の送受信を行わせることにより音線信号を生成する送受信部と、
前記送受信部により生成された前記音線信号に基づいて画像情報データを生成する画像情報データ生成部と
を含み、
前記画像表示装置は、
前記超音波プローブの前記画像情報データ生成部により生成された前記画像情報データに基づいて超音波画像を表示する表示部を含み、
前記超音波プローブおよび前記画像表示装置の一方は、前記複数の振動子の前記配列方向における幅と、前記開口用振動子群の前記配列方向における幅と、前記電子セクタ走査におけるステア角度範囲とに基づいて、前記超音波画像のうち、浅部の深度範囲に位置する浅部画像領域を除いた表示画像領域を決定する表示画像領域決定部を有し、
前記画像表示装置の前記表示部は、前記表示画像領域決定部により決定された前記表示画像領域のみにおいて前記超音波画像を表示する超音波システム。
【請求項2】
前記表示画像領域決定部は、前記複数の振動子の前記配列方向における幅をWtr、前記開口用振動子群の前記配列方向における幅をWap、前記電子セクタ走査におけるステア角度範囲をAstとした場合に、前記超音波画像のうち前記振動子アレイの超音波送受信面から下記式(1)により表される深さDcutまでの領域を前記浅部画像領域として前記表示画像領域を決定する請求項1に記載の超音波システム。
Dcut=[(Wtr-Wap)/2]×tan[(180-Ast)/2] ・・・(1)
【請求項3】
前記浅部画像領域は、前記幅Wtrに相当する長さを有する下底と、前記幅Wapに相当する長さを有する上底と、前記深さDcutに相当する高さを有する等脚台形の形状を有している請求項2に記載の超音波システム。
【請求項4】
前記表示画像領域決定部は、前記超音波プローブ内に備えられ、
前記表示画像領域決定部により決定された前記表示画像領域のみの前記画像情報データが前記超音波プローブから前記画像表示装置に送られる請求項1~3のいずれか一項に記載の超音波システム。
【請求項5】
前記表示画像領域決定部は、前記画像表示装置内に備えられ、
前記超音波プローブから前記画像表示装置に送られた前記画像情報データのうち、前記表示画像領域決定部により決定された前記表示画像領域のみの前記画像情報データに基づいて前記超音波画像が前記表示部に表示される請求項1~3のいずれか一項に記載の超音波システム。
【請求項6】
前記画像情報データは、前記送受信部により生成された前記音線信号に超音波の反射位置の深度に応じた減衰補正および包絡線検波処理を施した信号である請求項1~5のいずれか一項に記載の超音波システム。
【請求項7】
前記画像情報データは、前記送受信部により生成された前記音線信号に超音波の反射位置の深度に応じた減衰補正および包絡線検波処理を施し、且つ、定められた画像表示方式に従って変換された超音波画像信号である請求項1~5のいずれか一項に記載の超音波システム。
【請求項8】
前記送受信部は、
前記振動子アレイから超音波の送信を行わせる送信部と、
前記振動子アレイにより取得された受信信号に基づいて前記音線信号を生成する受信部と
を含む請求項1~7のいずれか一項に記載の超音波システム。
【請求項9】
電子セクタ走査を行う超音波プローブと画像表示装置とが接続された超音波システムの制御方法であって、
前記超音波プローブの振動子アレイに配列された複数の振動子のうち配列方向における中央部に位置し且つ前記複数の振動子の数よりも少ない数の振動子からなる開口用振動子群を用いて超音波の送受信を行わせることにより音線信号を生成し、
生成された前記音線信号に基づいて画像情報データを生成し、
生成された前記画像情報データを前記超音波プローブから前記画像表示装置に送り、
前記複数の振動子の前記配列方向における幅と、前記開口用振動子群の前記配列方向における幅と、前記電子セクタ走査におけるステア角度範囲とに基づいて、
前記画像情報データに基づいて前記画像表示装置の表示部に表示される超音波画像のうち、浅部の深度範囲に位置する浅部画像領域を除いた表示画像領域を決定し、
前記超音波プローブにより生成された前記画像情報データに基づき、決定された前記表示画像領域のみにおいて前記超音波画像を
前記表示部に表示する超音波システムの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波システムおよび超音波システムの制御方法に係り、特に、電子セクタ走査を行う超音波システムおよび超音波システムの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、被検体の内部の画像を得るものとして、超音波診断装置が知られている。超音波診断装置は、一般的に、複数の超音波振動子が配列された振動子アレイが備えられた超音波プローブを備えている。この超音波プローブを被検体の体表に接触させた状態において、振動子アレイから被検体内に向けて超音波ビームが送信され、被検体からの超音波エコーを振動子アレイにおいて受信して素子データが取得される。さらに、超音波診断装置は、得られた素子データを電気的に処理して、被検体の当該部位に対する超音波画像を生成する。
【0003】
超音波ビームの走査方式として、特許文献1に開示されるように、複数の超音波振動子に供給される送信信号および複数の超音波振動子からの受信信号に対して遅延を与えることにより走査線の角度を変えて走査をする、いわゆる電子セクタ走査と呼ばれる走査方式がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電子セクタ走査方式の超音波プローブを用いて得られた超音波画像において、ユーザは、超音波画像に基づいて精確な診断を行う必要がある。このため、超音波診断装置の表示部において、超音波画像の観察範囲を大きく表示することが望まれている。例えば、可搬型の超音波診断装置においては、表示部が有する表示画面が、検査室等に設置されて使用されるいわゆる据置型の超音波診断装置の表示部が有する表示画面よりも小さいことが多いため、表示部に表示された超音波画像が小さく、ユーザが超音波画像に基づいて精確な診断を行うことが難しいことがあった。
【0006】
本発明は、このような問題点を解消するためになされたものであり、ユーザが超音波画像に基づいて精確な診断を行うことができる超音波システムおよび超音波システムの制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の超音波システムは、電子セクタ走査を行う超音波プローブと画像表示装置とが接続された超音波システムであって、超音波プローブは、複数の振動子が配列方向に配列された振動子アレイと、複数の振動子のうち配列方向における中央部に位置し且つ複数の振動子の数よりも少ない数の振動子からなる開口用振動子群を用いて超音波プローブによる超音波の送受信を行わせることにより音線信号を生成する送受信部と、送受信部により生成された音線信号に基づいて画像情報データを生成する画像情報データ生成部とを含み、画像表示装置は、超音波プローブの画像情報データ生成部により生成された画像情報データに基づいて超音波画像を表示する表示部を含み、超音波プローブおよび画像表示装置の一方は、複数の振動子の配列方向における幅と、開口用振動子群の配列方向における幅と、電子セクタ走査におけるステア角度範囲とに基づいて、超音波画像のうち、浅部の深度範囲に位置する浅部画像領域を除いた表示画像領域を決定する表示画像領域決定部を有し、前記画像表示装置の前記表示部は、前記表示画像領域決定部により決定された前記表示画像領域のみにおいて前記超音波画像を表示することを特徴とする。
【0008】
表示画像領域決定部は、複数の振動子の配列方向における幅をWtr、開口用振動子群の配列方向における幅をWap、電子セクタ走査におけるステア角度範囲をAstとした場合に、超音波画像のうち振動子アレイの超音波送受信面から下記式(1)により表される深さDcutまでの領域を浅部画像領域として表示画像領域を決定することができる。
Dcut=[(Wtr-Wap)/2]×tan[(180-Ast)/2] ・・・(1)
【0009】
この際に、浅部画像領域は、幅Wtrに相当する長さを有する下底と、幅Wapに相当する長さを有する上底と、深さDcutに相当する高さを有する等脚台形の形状を有することができる。
【0010】
また、表示画像領域決定部は、超音波プローブ内に備えられ、表示画像領域決定部により決定された表示画像領域のみの画像情報データが超音波プローブから画像表示装置に送られることができる。
もしくは、表示画像領域決定部は、画像表示装置内に備えられ、超音波プローブから画像表示装置に送られた画像情報データのうち、表示画像領域決定部により決定された表示画像領域のみの画像情報データに基づいて超音波画像が表示部に表示されることもできる。
【0011】
また、画像情報データは、送受信部により生成された音線信号に超音波の反射位置の深度に応じた減衰補正および包絡線検波処理を施した信号であることが好ましい。
もしくは、画像情報データは、送受信部により生成された音線信号に超音波の反射位置の深度に応じた減衰補正および包絡線検波処理を施し、且つ、定められた画像表示方式に従って変換された超音波画像信号であってもよい。
【0012】
また、送受信部は、振動子アレイから超音波の送信を行わせる送信部と、振動子アレイにより取得された受信信号に基づいて音線信号を生成する受信部とを含むことが好ましい。
【0013】
本発明の超音波システムの制御方法は、電子セクタ走査を行う超音波プローブと画像表示装置とが接続された超音波システムの制御方法であって、超音波プローブの振動子アレイに配列された複数の振動子のうち配列方向における中央部に位置し且つ複数の振動子の数よりも少ない数の振動子からなる開口用振動子群を用いて超音波の送受信を行わせることにより音線信号を生成し、生成された音線信号に基づいて画像情報データを生成し、生成された画像情報データを超音波プローブから画像表示装置に送り、複数の振動子の配列方向における幅と、開口用振動子群の配列方向における幅と、電子セクタ走査におけるステア角度範囲とに基づいて、超音波画像のうち、浅部の深度範囲に位置する浅部画像領域を除いた表示画像領域を決定し、超音波プローブにより生成された画像情報データに基づき、決定された表示画像領域のみにおいて超音波画像を画像表示装置の表示部に表示することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、超音波プローブおよび画像表示装置の一方が、複数の振動子の配列方向における幅と、開口用振動子群の配列方向における幅と、電子セクタ走査におけるステア角度範囲とに基づいて、超音波画像のうち、超音波の死角が形成される浅部の深度範囲に位置する浅部画像領域を除いた表示画像領域を決定する表示画像領域決定部を有し、画像表示装置の表示部は、表示画像領域決定部により決定された表示画像領域のみにおいて超音波画像を表示するため、ユーザが超音波画像に基づいて精確な診断を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施の形態1に係る超音波システムの構成を示すブロック図である。
【
図2】電子セクタ走査における浅部画像領域を模式的に示す図である。
【
図3】本発明の実施の形態1における受信部の内部構成を示すブロック図である。
【
図4】電子セクタ走査における表示画像領域を模式的に示す図である。
【
図5】本発明の実施の形態2に係る超音波システムの構成を示すブロック図である。
【
図6】本発明の実施の形態3に係る超音波システムの構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、この発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
実施の形態1
図1に本発明の実施の形態1に係る超音波システム1の構成を示す。
図1に示すように、超音波システム1は、超音波プローブ2と画像表示装置3を備えており、超音波プローブ2と画像表示装置3とは、無線通信により接続されている。
【0017】
超音波システム1の超音波プローブ2は、振動子アレイ11を備えており、振動子アレイ11に、送信部12および受信部13がそれぞれ接続されている。送信部12および受信部13は、送受信部14を形成しており、送信部12および受信部13に超音波送受信制御部15が接続されている。受信部13には、信号処理部16、画像処理部17および無線通信部18が順次接続されている。信号処理部16および画像処理部17は、画像情報データ生成部19を形成している。
【0018】
また、無線通信部18に、通信制御部20が接続され、画像情報データ生成部19に、表示画像領域決定部22が接続されている。さらに、超音波送受信制御部15、信号処理部16、画像処理部17、通信制御部20および表示画像領域決定部22に、プローブ制御部21が接続されている。また、超音波プローブ2は、バッテリ24を内蔵している。
送信部12、受信部13、超音波送受信制御部15、信号処理部16、画像処理部17、通信制御部20、プローブ制御部21および表示画像領域決定部22により、プローブ側プロセッサ25が構成されている。
【0019】
超音波システム1の画像表示装置3は、無線通信部32を備えており、無線通信部32に、表示制御部33および表示部34が順次接続されている。また、無線通信部32に、通信制御部35が接続されている。また、表示制御部33および通信制御部35に、本体制御部36が接続されており、本体制御部36に、操作部37および格納部38がそれぞれ接続されている。無線通信部32と本体制御部36とは、双方向に情報の受け渡しが可能に接続されており、本体制御部36と格納部38とは、双方向に情報の受け渡しが可能に接続されている。
【0020】
さらに、表示制御部33、通信制御部35および本体制御部36により、表示装置側プロセッサ39が構成されている。
また、超音波プローブ2の無線通信部18と画像表示装置3の無線通信部32とは、双方向に情報の受け渡しが可能に接続されており、これにより、超音波プローブ2と画像表示装置3とが無線通信により接続される。
【0021】
超音波プローブ2の振動子アレイ11は、1次元または2次元に配列された複数の超音波振動子を有している。例えば、
図2に示すように、複数の超音波振動子Tは、配列方向D1に沿って1次元に配列されることができる。これらの振動子は、それぞれ送信部12から供給される駆動電圧に従って超音波を送信すると共に被検体からの反射波を受信して受信信号を出力する。各振動子は、例えば、PZT(Lead Zirconate Titanate:チタン酸ジルコン酸鉛)に代表される圧電セラミック、PVDF(Poly Vinylidene Di Fluoride:ポリフッ化ビニリデン)に代表される高分子圧電素子およびPMN-PT(Lead Magnesium Niobate-Lead Titanate:マグネシウムニオブ酸鉛-チタン酸鉛固溶体)に代表される圧電単結晶等からなる圧電体の両端に電極を形成した素子を用いて構成される。
【0022】
プローブ側プロセッサ25の超音波送受信制御部15は、送受信部14の送信部12および受信部13を制御することにより、電子セクタ走査方式およびプローブ制御部21から指示された検査モードに基づいて、超音波ビームの送信および超音波エコーの受信を行う。
【0023】
また、この際に、超音波送受信制御部15は、
図2に示すように、振動子アレイ11を構成する複数の超音波振動子Tのうち、超音波振動子Tの配列方向D1における中央部に位置し、且つ、超音波の送信チャネルおよび受信チャネルとして、複数の超音波振動子Tの総数よりも少ない数の超音波振動子Tからなる開口用振動子群GTを用いて、超音波プローブ2による超音波の送受信を行わせるように、送受信部14を制御する。例えば、振動子アレイ11が64個の超音波振動子Tを含んでいる場合に、超音波送受信制御部15は、超音波振動子Tの配列方向D1における中央部に位置する32個の超音波振動子Tからなる開口用振動子群GTにより超音波の送受信を行わせるように、送受信部14を制御することができる。このように、本発明では、超音波の送信チャネルおよび受信チャネルとして、複数の超音波振動子Tの総数よりも少ない数の超音波振動子Tが用いられることにより、超音波プローブ2における消費電力を低減することができる。
【0024】
例えば、バッテリを電源として駆動する可搬型の超音波システムにおいては、消費電力の大きさが超音波システムの連続使用時間に大きな影響を及ぼすため、超音波の送受信に使用される送信チャネルおよび受信チャネルに使用される超音波振動子の数を、超音波システムの超音波プローブに含まれる超音波振動子の総数よりも少なくすることにより、バッテリにおける電力消費を低減することができる。
【0025】
送受信部14の送信部12は、例えば、複数のパルス発生器を含んでおり、超音波送受信制御部15からの制御信号に応じて選択された送信遅延パターンに基づいて、振動子アレイ11の複数の振動子から送信される超音波が超音波ビームを形成するようにそれぞれの駆動電圧を、遅延量を調節して複数の振動子に供給する。このように、振動子アレイ11の振動子の電極にパルス状または連続波状の電圧が印加されると、圧電体が伸縮し、それぞれの振動子からパルス状または連続波状の超音波が発生して、それらの超音波の合成波から、超音波ビームが形成される。
【0026】
このようにして送信された超音波ビームは、
図2に示すように、定められたステア角度範囲Ast内の走査線に沿って被検体内を伝搬する。この際に、送信部12は、超音波送受信制御部15からの制御信号に応じて、ステア角度範囲Ast内において走査線の傾きを変化させながら超音波ビームを被検体内に送信する。ここで、ステア角度範囲Astは、複数の超音波振動子Tの配列方向D1において左右対称に、例えば、最大で90度となるように設定される。
【0027】
被検体内に送信された超音波ビームは、例えば、被検体の部位等の対象において反射され、振動子アレイ11に向かって伝搬する。このように振動子アレイ11に向かって伝搬する超音波は、振動子アレイ11を構成するそれぞれの超音波振動子により受信される。この際に、振動子アレイ11を構成するそれぞれの超音波振動子は、伝搬する超音波エコーを受信することにより伸縮して電気信号を発生させ、これらの電気信号である受信信号を受信部13に出力する。
【0028】
送受信部14の受信部13は、超音波送受信制御部15からの制御信号に従って、振動子アレイ11から出力される受信信号の処理を行う。
図3に示すように、受信部13は、増幅部26、AD(Analog Digital)変換部27およびビームフォーマ28が直列接続された構成を有している。増幅部26は、振動子アレイ11を構成するそれぞれの振動子から入力された受信信号を増幅し、増幅した受信信号をAD変換部27に送信する。AD変換部27は、増幅部26から送信された受信信号をデジタル化された素子データに変換し、これらの素子データをビームフォーマ28に送出する。ビームフォーマ28は、超音波送受信制御部15からの制御信号に応じて選択された受信遅延パターンに基づき、設定された音速に従う各素子データにそれぞれの遅延を与えて加算(整相加算)を施す、受信フォーカス処理を行う。この受信フォーカス処理により、超音波エコーの焦点が一定の走査線上に絞り込まれた音線信号が生成される。
【0029】
本発明者は、電子セクタ走査方式の超音波プローブにおいて、複数の超音波振動子Tの総数よりも少ない数の超音波振動子Tからなる開口用振動子群Gを用いた場合、すなわち、送信チャネルおよび受信チャネルに使用される超音波振動子の数が超音波プローブに含まれる超音波振動子の総数よりも少ない場合において、超音波の死角となる領域が生じ、この領域が表示部における種々の表示の妨げとなることを見出した。
【0030】
ここで、
図2に示すように、超音波プローブ2の振動子アレイ11を構成する複数の超音波振動子Tは、超音波エコーを受信する際に、通常、複数の超音波振動子Tの配列方向D1に垂直な垂直方向D2において振動することにより電気信号を発生させて受信信号を生成する。そのため、例えば、ステア角度範囲Astの外側且つ振動子アレイ11に近い被検体の浅部の領域からの超音波エコーは、配列方向D1に沿った成分が大きい一方で垂直方向D2に沿った成分が小さいため、この超音波エコーに起因する超音波振動子Tの振動が小さくなる。これにより、被検体の浅部の領域からの超音波エコーに起因する受信信号の強度は、非常に小さくなることがある。このように、受信信号の強度が非常に小さくなる範囲を、以降の説明において超音波の死角と呼ぶ。通常、医師等のユーザが超音波画像を参照して被検体の診断を行う際には、超音波画像のうち、超音波の死角を含む浅部の深度範囲に位置する領域は有用ではなく、参照されないことが多い。
【0031】
本発明の実施の形態1におけるプローブ側プロセッサ25の表示画像領域決定部22は、
図2に示すように、超音波画像のうち、超音波の死角が形成される浅部の深度範囲に位置する浅部画像領域R1を除いた表示画像領域R2を決定する。ここで、例えば、振動子アレイ11が64個の超音波振動子Tにより構成されている場合には、配列方向D1における64個の超音波振動子Tの全体幅は、2cm程度であることが多い。さらに、本発明においては、振動子アレイ11を構成する複数の超音波振動子Tのうち配列方向D1における中央部に位置する一部の超音波振動子Tからなる開口用振動子群GTが超音波の送受信に用いられているため、振動子アレイ11の配列方向D1の両端からステア角度範囲Astの内側と外側の間の境界線BLまでの深さDcutを有する浅部の深度範囲には、少なくとも超音波の死角が含まれる。
【0032】
そのため、表示画像領域決定部22は、より具体的には、
図2に示すように、開口用振動子群GTの配列方向D1の一端から振動子アレイ11の配列方向D1の一端までの長さすなわち開口用振動子群GTの両側に位置し且つ超音波の送受信に使用されない超音波振動子群の幅をW1、ステア角度範囲Astの内側と外側の間の境界線BLに沿った方向と複数の超音波振動子Tの配列方向D1とがなす角度をA1として、下記式(1)により表される深さDcutまでの領域を浅部画像領域R1として算出し、超音波画像のうち、算出された浅部画像領域R1を除いた表示画像領域R2を決定する。これにより、超音波画像のうち、診断の際に有用ではない部分を除くことができる。
Dcut=W1×tan(A1) ・・・(1)
【0033】
配列方向D1における複数の超音波振動子Tの全体幅Wtr、配列方向D1における開口用振動子群GTの長さである開口幅Wapおよび電子セクタ走査におけるステア角度範囲Astがわかっていれば、表式(1)における幅W1は、下記式(2)で表され、角度A1は、下記式(3)で表される。
W1=(Wtr-Wap)/2 ・・・(2)
A1=(180-Ast)/2 ・・・(3)
【0034】
そのため、表示画像領域決定部22は、表式(1)は、下記式(4)として計算されることができる。
Dcut=[(Wtr-Wap)/2]×tan[(180-Ast)/2] ・・・(4)
【0035】
ここで、
図2に示す例では、浅部画像領域R1は、複数の超音波振動子Tの全体幅Wtrに相当する長さを有する下底と、開口用振動子群GTの開口幅Wapに相当する長さを有する上底と、深さDcutに相当する高さを有する等脚台形の形状を有している。
【0036】
画像情報データ生成部19は、表示画像領域決定部22により決定された表示画像領域R2のみに対応する画像情報データを生成し、生成した画像情報データを無線通信部18に送出する。
ここで、画像情報データ生成部19の信号処理部16は、受信部13のビームフォーマ28により生成された音線信号に対して、超音波が反射した位置の深度に応じて伝搬距離に起因する減衰の補正を施した後、包絡線検波処理を施して、被検体内の組織に関する断層画像情報である信号を生成する。
【0037】
また、画像情報データ生成部19の画像処理部17は、信号処理部16により生成された信号を、通常のテレビジョン信号の走査方式に従う画像信号にラスター変換し、このようにして生成された画像信号に対して、明るさ補正、諧調補正、シャープネス補正および色補正等の各種の必要な画像処理を施すことにより超音波画像信号を生成する。この際に、画像処理部17は、例えば、表示画像領域決定部22により決定された表示画像領域R2に基づいて、超音波画像信号から、浅部画像領域R1に対応する部分を除くことができる。さらに、画像処理部17は、このようにして生成された超音波画像信号を超音波プローブ2の無線通信部18に送出する。
【0038】
超音波プローブ2の無線通信部18は、電波の送信および受信を行うためのアンテナを含んでおり、画像表示装置3の無線通信部32と無線通信を行う。この際に、無線通信部18は、画像情報データ生成部19の画像処理部17により生成された、表示画像領域R2のみの超音波画像信号に基づいてキャリアを変調して伝送信号を生成し、生成された伝送信号を、画像表示装置3の無線通信部32に無線送信する。キャリアの変調方式としては、例えば、ASK(Amplitude Shift Keying:振幅偏移変調)、PSK(Phase Shift Keying:位相偏移変調)、QPSK(Quadrature Phase Shift Keying:四位相偏移変調)、16QAM(16 Quadrature Amplitude Modulation:16直角位相振幅変調)等が用いられる。
【0039】
プローブ側プロセッサ25の通信制御部20は、プローブ制御部21により設定された送信電波強度で超音波画像信号の伝送が行われるように超音波プローブ2の無線通信部18を制御する。
プローブ側プロセッサ25のプローブ制御部21は、予め記憶しているプログラム等に基づいて、超音波プローブ2の各部の制御を行う。
超音波プローブ2のバッテリ24は、超音波プローブ2に内蔵されており、超音波プローブ2の各回路に電力を供給する。
【0040】
画像表示装置3の無線通信部32は、電波の送信および受信を行うためのアンテナを含んでおり、超音波プローブ2の無線通信部18と無線通信を行う。この際に、画像表示装置3の無線通信部32は、例えば、超音波プローブ2の無線通信部18から無線送信された伝送信号を、アンテナを介して受信し、受信した伝送信号を復調することにより、超音波画像信号を出力し、出力された超音波画像信号を表示制御部33に送出する。
【0041】
表示装置側プロセッサ39の表示制御部33は、本体制御部36の制御の下、無線通信部32により復調された超音波画像信号に所定の処理を施して、表示部34に超音波画像を表示させる。
画像表示装置3の表示部34は、LCD(Liquid Crystal Display:液晶ディスプレイ)等のディスプレイ装置を含み、表示制御部33により生成された画像を表示する。この際に表示部34は、
図4に示すように、表示画像領域決定部22により決定された表示画像領域R2のみにおいて超音波画像Uを表示する。例えば、浅部画像領域R1の深さDcutが0.5cmである場合には、表示部34は、
図4に示す例のように、深度0cmからではなく、深度0.5cmから一定の深度までの超音波画像Uを表示する。このように、表示部34は、医師等のユーザによる診断の際に有用ではない、振動子アレイ11からの深さDcutを有する浅部画像領域R1を表示しないため、表示画像領域R2を比較的大きく表示することができる。
【0042】
表示装置側プロセッサ39の通信制御部35は、超音波プローブ2の無線通信部18からの伝送信号の受信が行われるように、画像表示装置3の無線通信部32を制御する。
表示装置側プロセッサ39の本体制御部36は、格納部38等に予め記憶されているプログラムおよび操作部37を介したユーザの操作に基づいて、画像表示装置3の各部の制御を行う。
【0043】
画像表示装置3の操作部37は、ユーザが入力操作を行うためのものであり、キーボード、マウス、トラックボール、タッチパッドおよびタッチパネル等を備えて構成することができる。
【0044】
画像表示装置3の格納部38は、画像表示装置3の動作プログラム等を格納するものであり、格納部38として、フラッシュメモリ、HDD(Hard Disc Drive:ハードディスクドライブ)、SSD(Solid State Drive:ソリッドステートドライブ)、FD(Flexible Disc:フレキシブルディスク)、MOディスク(Magneto-Optical disc:光磁気ディスク)、MT(Magnetic Tape:磁気テープ)、RAM(Random Access Memory:ランダムアクセスメモリ)、CD(Compact Disc:コンパクトディスク)、DVD(Digital Versatile Disc:デジタルバーサタイルディスク)、SDカード(Secure Digital card:セキュアデジタルカード)、USBメモリ(Universal Serial Bus memory:ユニバーサルシリアルバスメモリ)等の記録メディア、またはサーバ等を用いることができる。
【0045】
ここで、超音波プローブ2において、送受信部14、超音波送受信制御部15、画像情報データ生成部19、通信制御部20、プローブ制御部21および表示画像領域決定部22を有するプローブ側プロセッサ25と、画像表示装置3において、表示制御部33、通信制御部35および本体制御部36を有する表示装置側プロセッサ39は、CPU(Central Processing Unit:中央処理装置)、および、CPUに各種の処理を行わせるための制御プログラムから構成されるが、FPGA(Field Programmable Gate Array:フィードプログラマブルゲートアレイ)、DSP(Digital Signal Processor:デジタルシグナルプロセッサ)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit:アプリケーションスペシフィックインテグレイテッドサーキット)、GPU(Graphics Processing Unit:グラフィックスプロセッシングユニット)、その他のIC(Integrated Circuit:集積回路)を用いて構成されてもよく、もしくはそれらを組み合わせて構成されてもよい。
【0046】
また、プローブ側プロセッサ25の送受信部14、超音波送受信制御部15、画像情報データ生成部19、通信制御部20、プローブ制御部21および表示画像領域決定部22を部分的にあるいは全体的に1つのCPU等に統合させて構成することもできる。また、表示装置側プロセッサ39の表示制御部33、通信制御部35および本体制御部36を、部分的にあるいは全体的に1つのCPU等に統合させて構成することもできる。
【0047】
以上から、本発明の実施の形態1に係る超音波システム1によれば、表示画像領域決定部22により、超音波画像のうち、超音波の死角が形成される浅部の深度範囲に位置する浅部画像領域R1を除いた表示画像領域R2が決定され、表示部34により、診断の際に有用な表示画像領域R2のみにおいて超音波画像が表示されるため、ユーザが超音波画像に基づいて精確な診断を行うことができる。
【0048】
なお、実施の形態1では、画像情報データ生成部19の画像処理部17により、超音波画像信号から浅部画像領域R1に対応する部分を除くことが説明されているが、信号処理部16により浅部画像領域R1を除く処理が行われてもよい。この場合には、例えば、信号処理部16は、包絡線検波処理がなされた信号から浅部画像領域R1に対応する部分を除くことができる。また、例えば、信号処理部16は、送受信部14の受信部13により生成された音線信号に対して、浅部画像領域R1に対応する部分を除くこともできる。
【0049】
また、ステア角度範囲Astは、画像表示装置3の操作部37等を介してユーザにより設定されることができる。この場合には、操作部37を介してユーザにより入力された、ステア角度範囲Astを変更する旨の指令が画像表示装置3の無線通信部32を介して超音波プローブ2に無線送信される。プローブ側プロセッサ25の超音波送受信制御部15は、このようにして無線送信された指令に基づいて送受信部14を制御して、画像表示装置3の操作部37を介してユーザにより設定されたステア角度範囲Astに基づいて超音波の送受信を振動子アレイ11に行わせる。
なお、図示しないが、超音波プローブ2に操作部を設けた場合には、超音波送受信制御部15は、超音波プローブ2の操作部を介してユーザにより設定されたステア角度範囲に基づいて超音波の送受信を行うように、送受信部14を制御することができる。
【0050】
また、ステア角度範囲Astを適宜変更し、変更されたステア角度範囲Astを用いて浅部画像領域R1の深さDcutを算出することもできる。この際に、表式(4)により、算出される浅部画像領域R1の深さDcutの値は、ステア角度範囲Astが狭くなるほど大きくなり、ステア角度範囲Astが広くなるほど小さくなる。これにより、ステア角度範囲Astの広さに応じて表示画像領域R2の深さ範囲が決定され、超音波画像のうち診断においてより有用な部分のみが表示部34に表示されるため、ユーザがより精確な診断を行うことができる。
【0051】
また、実施の形態1では、超音波プローブ2と画像表示装置3とは、超音波プローブ2の無線通信部18および画像表示装置3の無線通信部32を用いて互いに無線接続されているが、有線接続されることもできる。例えば、超音波プローブ2と画像表示装置3に、それぞれ、情報の伝送が可能なケーブルを接続することができる接続端子を設け、これらの接続端子をケーブルにより互いに接続することにより、超音波プローブ2と画像表示装置3とを有線接続することができる。また、実施の形態1では、超音波システム1は可搬型(携帯型)の超音波システムを例に上げて説明したが、据置型の超音波システムにも適用されることができる。以下に説明する実施の形態2、3においても同様に、据置型の超音波システムに適用されることができる。
【0052】
実施の形態2
実施の形態2に係る超音波システム1Aは、
図5に示すように、超音波プローブ2Aおよび画像表示装置3Aを備えている。実施の形態2における超音波プローブ2Aは、
図1に示す実施の形態1における超音波プローブ2において、画像処理部17が除かれ、プローブ制御部21の代わりにプローブ制御部21Aが備えられたものである。
【0053】
また、実施の形態2における画像表示装置3Aは、
図1に示す実施の形態1における画像表示装置3において、画像処理部17が追加され、本体制御部36の代わりに本体制御部36Aが備えられたものである。実施の形態2における画像表示装置3Aに備えられている画像処理部17は、
図1に示す実施の形態1における超音波プローブ2に備えられている画像処理部17と同一である。
【0054】
図5に示すように、超音波プローブ2Aにおいて、信号処理部16は、無線通信部18に直接接続されており、信号処理部16により、画像情報データ生成部19Aが構成されている。また、超音波送受信制御部15、信号処理部16、無線通信部18、通信制御部20および表示画像領域決定部22に、プローブ制御部21Aが接続されている。さらに、送受信部14、超音波送受信制御部15、信号処理部16、通信制御部20、プローブ制御部21Aおよび表示画像領域決定部22により、プローブ側プロセッサ25Aが構成されている。
【0055】
また、画像表示装置3Aにおいて、無線通信部32に、画像処理部17、表示制御部33および表示部34が順次接続されている。また、画像処理部17、無線通信部32、表示制御部33および通信制御部35、操作部37および格納部38に、本体制御部36Aが接続されている。さらに、画像処理部17、表示制御部33、通信制御部35および本体制御部36Aにより表示装置側プロセッサ39Aが構成されている。
【0056】
プローブ側プロセッサ25Aの画像情報データ生成部19Aすなわち信号処理部16は、表示画像領域決定部22により決定された表示画像領域R2のみに対応する画像情報データとして、包絡線検波処理がなされた信号を生成する。より具体的には、信号処理部16は、表示画像領域決定部22により決定された表示画像領域R2に基づき、送受信部14の受信部13により生成された音線信号に対して減衰の補正および包絡線検波処理を施して、表示画像領域R2のみに対応する信号を生成する。信号処理部16は、このようにして生成された信号を、画像情報データとして超音波プローブ2Aの無線通信部18に送出する。
超音波プローブ2Aの無線通信部18は、信号処理部16により生成された信号に基づいてキャリアを変調して伝送信号を生成し、生成された伝送信号を画像表示装置3Aの無線通信部32に無線送信する。
【0057】
画像表示装置3Aの無線通信部32は、超音波プローブ2Aの無線通信部18から無線送信された伝送信号を復調して、復調された信号を表示装置側プロセッサ39Aの画像処理部17に送出する。
表示装置側プロセッサ39Aの画像処理部17は、無線通信部32から送出された信号を、通常のテレビジョン信号の走査方式に従う画像信号にラスター変換し、このようにして生成された画像信号に対して、明るさ補正、諧調補正、シャープネス補正および色補正等の各種の必要な画像処理を施すことにより超音波画像信号を生成した後、超音波画像信号を表示制御部33に送出する。
【0058】
表示装置側プロセッサ39Aの表示制御部33は、本体制御部36Aの制御の下、画像処理部17から送出された超音波画像信号に所定の処理を施して、表示部34に超音波画像を表示させる。
画像表示装置3Aの表示部34は、表示制御部33により生成された画像を表示する。この際に、表示部34は、
図4に示すように、プローブ側プロセッサ25Aの表示画像領域決定部22により決定された表示画像領域R2のみにおいて超音波画像Uを表示する。
【0059】
以上から、本発明の実施の形態2に係る超音波システム1Aによれば、画像処理部17が超音波プローブ2Aではなく画像表示装置3Aに備えられていても、実施の形態1と同様に、表示画像領域決定部22により、超音波画像のうち、超音波の死角が形成される浅部の深度範囲に位置する浅部画像領域R1を除いた表示画像領域R2が決定され、表示部34により、診断の際に有用な表示画像領域R2のみにおいて超音波画像が表示されるため、ユーザが超音波画像に基づいて精確な診断を行うことができる。
【0060】
実施の形態3
実施の形態3に係る超音波システム1Bは、
図6に示すように、超音波プローブ2Bおよび画像表示装置3Bを備えている。実施の形態3における超音波プローブ2Bは、
図1に示す実施の形態1における超音波プローブ2において、画像処理部17と表示画像領域決定部22が除かれ、プローブ制御部21の代わりにプローブ制御部21Bが備えられたものである。
【0061】
また、実施の形態3における画像表示装置3Bは、
図1に示す実施の形態1における画像表示装置3において、画像処理部17と表示画像領域決定部22が追加され、本体制御部36の代わりに本体制御部36Bが備えられたものである。ここで、画像表示装置3Bに備えられている画像処理部17および表示画像領域決定部22は、それぞれ、
図1に示す実施の形態1における画像処理部17および表示画像領域決定部22と同一である。
【0062】
図6に示すように、超音波プローブ2Bにおいて、信号処理部16は、無線通信部18に接続されており、信号処理部16により、画像情報データ生成部19Aが構成されている。また、超音波送受信制御部15、信号処理部16、無線通信部18および通信制御部20に、プローブ制御部21Bが接続されている。さらに、送受信部14、超音波送受信制御部15、信号処理部16、通信制御部20およびプローブ制御部21Bにより、プローブ側プロセッサ25Bが構成されている。
【0063】
また、画像表示装置3Bにおいて、無線通信部32に、画像処理部17、表示制御部33および表示部34が順次接続されており、画像処理部17には、表示画像領域決定部22が接続されている。また、画像処理部17、表示画像領域決定部22、無線通信部32、表示制御部33、通信制御部35、操作部37および格納部38に、本体制御部36Bが接続されている。さらに、画像処理部17、表示画像領域決定部22、表示制御部33、通信制御部35および本体制御部36Bにより、表示装置側プロセッサ39Bが構成されている。
【0064】
プローブ側プロセッサ25Bの画像情報データ生成部19Aすなわち信号処理部16は、送受信部14の受信部13により生成された音線信号に対して減衰の補正および包絡線検波処理を施して、被検体内の組織に関する断層画像情報である信号を生成する。信号処理部16は、このようにして生成された信号を、画像情報データとして超音波プローブ2Bの無線通信部18に送出する。
超音波プローブ2Bの無線通信部18は、信号処理部16により生成された信号に基づいてキャリアを変調して伝送信号を生成し、生成された伝送信号を画像表示装置3Aの無線通信部32に無線送信する。
【0065】
画像表示装置3Aの無線通信部32は、超音波プローブ2Aの無線通信部18から無線送信された伝送信号を復調して、復調された信号を表示装置側プロセッサ39Aの画像処理部17に送出する。
【0066】
表示装置側プロセッサ39Bの表示画像領域決定部22は、
図2に示すように、超音波画像のうち、超音波の死角が形成される浅部の深度範囲に位置する浅部画像領域R1を除いた表示画像領域R2を決定する。この際に、表示画像領域決定部22は、表式(1)または表式(4)を用いて浅部画像領域R1の深さDcutを算出する。
【0067】
表示装置側プロセッサ39Bの画像処理部17は、表示画像領域決定部22により決定された表示画像領域R2に基づき、画像表示装置3Bの無線通信部32から送出された信号から、表示画像領域R2のみに対応する超音波画像信号を生成し、生成された超音波画像信号を表示制御部33に送出する。
【0068】
表示装置側プロセッサ39Bの表示制御部33は、本体制御部36Bの制御の下、画像処理部17から送出された超音波画像信号に所定の処理を施して、表示部34に超音波画像を表示させる。
画像表示装置3Bの表示部34は、表示制御部33により生成された画像を表示する。この際に、表示部34は、
図4に示すように、表示装置側プロセッサ39Bの表示画像領域決定部22により決定された表示画像領域R2のみにおいて超音波画像Uを表示する。
【0069】
以上から、本発明の実施の形態3に係る超音波システム1Bによれば、表示画像領域決定部22が超音波プローブ2Bではなく画像表示装置3Bに備えられていても、実施の形態1および実施の形態2と同様に、表示画像領域決定部22により、超音波画像のうち、超音波の死角が形成される浅部の深度範囲に位置する浅部画像領域R1を除いた表示画像領域R2が決定され、表示部34により、診断の際に有用な表示画像領域R2のみにおいて超音波画像が表示されるため、ユーザが超音波画像に基づいて精確な診断を行うことができる。
【符号の説明】
【0070】
1,1A,1B 超音波システム、2,2A,2B 超音波プローブ、3,3A,3B 画像表示装置、11 振動子アレイ、12 送信部、13 受信部、14 送受信部、15 超音波送受信制御部、16 信号処理部、17 画像処理部、18,32 無線通信部、19,19A 画像情報データ生成部、20,35 通信制御部、21,21A,21B プローブ制御部、22 表示画像領域決定部、24 バッテリ、25,25A,25B プローブ側プロセッサ、26 増幅部、27 AD変換部、28 ビームフォーマ、33 表示制御部、34 表示部、36,36A,36B 本体制御部、37 操作部、38 格納部、39,39A,39B 表示装置側プロセッサ、A1 角度、Ast ステア角度範囲、BL 境界線、D1 配列方向、D2 垂直方向、Dcut 深さ、GT 開口用振動子群、R1 浅部画像領域、R2 表示画像領域、T 超音波振動子、U 超音波画像、W1 幅、Wap 開口幅、Wtr 全体幅。