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特許7059186感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物、感活性光線性又は感放射線性膜、パターン形成方法、及び、電子デバイスの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-15
(45)【発行日】2022-04-25
(54)【発明の名称】感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物、感活性光線性又は感放射線性膜、パターン形成方法、及び、電子デバイスの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/039 20060101AFI20220418BHJP
   G03F 7/20 20060101ALI20220418BHJP
【FI】
G03F7/039 601
G03F7/20 501
G03F7/20 521
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2018536997
(86)(22)【出願日】2017-07-11
(86)【国際出願番号】 JP2017025277
(87)【国際公開番号】W WO2018042892
(87)【国際公開日】2018-03-08
【審査請求日】2019-01-22
【審判番号】
【審判請求日】2021-04-16
(31)【優先権主張番号】P 2016168316
(32)【優先日】2016-08-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2016250130
(32)【優先日】2016-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002505
【氏名又は名称】特許業務法人航栄特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】畠山 直也
(72)【発明者】
【氏名】米久田 康智
(72)【発明者】
【氏名】福原 敏明
(72)【発明者】
【氏名】冨賀 敬充
(72)【発明者】
【氏名】吉野 文博
【合議体】
【審判長】里村 利光
【審判官】下村 一石
【審判官】植前 充司
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-66382(JP,A)
【文献】特開2001-13687(JP,A)
【文献】特開2012-63728(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F7/004-7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(b)で表されるアルキレンオキシ鎖を有する繰り返し単位と、芳香族基を有する繰り返し単位と、酸の作用により分解し極性基を生じる基を有する繰り返し単位とを有する樹脂を含有し、固形分濃度が10質量%以上である感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
【化1】

上記一般式(b)中、Xは、水素原子、アルキル基、シアノ基又はハロゲン原子を表す。Aは、炭素数1~5のアルキレン基を表す。nは2以上の整数を示す。複数のAは、互いに同一であっても、異なっていてもよい。Rは、水素原子を表す。
【請求項2】
下記一般式(b)で表されるアルキレンオキシ鎖を有する繰り返し単位と、芳香族基を有する繰り返し単位と、酸の作用により分解し極性基を生じる基を有する繰り返し単位とを有する樹脂を含有し、固形分濃度が10質量%以上である感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物(ただし、下記組成物1及び組成物2を除く)であって、
前記アルキレンオキシ鎖を有する繰り返し単位が、酸の作用により分解し極性基を生じる基を有さない、感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物
【化2】

上記一般式(b)中、Xは、水素原子、アルキル基、シアノ基又はハロゲン原子を表す。Aは、炭素数1~5のアルキレン基を表す。nは2以上の整数を示す。複数のAは、互いに同一であっても、異なっていてもよい。Rは、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、又はアルケニル基を表す。
組成物1:
樹脂及び酸発生剤を含み、
樹脂が、式(a1-2)で表される構造単位及び式(a2-3)で表される構造単位を含む樹脂であるレジスト組成物。
【化3】

[式(a1-2)中、
a1'及びRa2'は、互いに独立に、水素原子又は炭素数1~12の炭化水素基を表し、Ra3'は、炭素数1~20の炭化水素基を表すか、Ra1'は、水素原子又は炭素数1~12の炭化水素基を表し、Ra2'及びRa3'は互いに結合して炭素数2~20の2価の炭化水素基を形成し、該炭化水素基及び該2価の炭化水素基に含まれるメチレン基は、酸素原子又は硫黄原子で置き換わってもよい。
a5は、水素原子又はメチル基を表す。
a6は、炭素数1~6のアルキル基又は炭素数1~6のアルコキシ基を表す。
mは、0~4の整数を表す。mが2以上のとき、複数のRa6は互いに同一でも異なっていてもよい。]
【化4】

[式(a2-3)中、
a9は、水素原子又はメチル基を表す。
a12は、炭素数1~6のアルキル基を表す。
a1は、炭素数1~6のアルカンジイル基を表す。
nは、1~30の整数を表す。nが2以上のとき、複数のLa1は互いに同一でも異なっていてもよい。]
組成物2:
式(I)で表される構造単位を有する樹脂、アルカリ可溶性樹脂、酸発生剤及び溶剤を含有するレジスト組成物。
【化5】

[式(I)中、Rは、水素原子、ハロゲン原子又はハロゲン原子を有してもよい炭素数1~6のアルキル基を表す。
は、置換基を有してもよい炭素数1~42の炭化水素基を表す。]
【請求項3】
前記一般式(b)におけるRが、水素原子である、請求項2に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
【請求項4】
前記固形分濃度が10~60質量%である請求項1~3のいずれか1項に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
【請求項5】
前記アルキレンオキシ鎖を有する繰り返し単位が、芳香族基を有さない、請求項1~のいずれか1項に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1~のいずれか1項に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物より形成された感活性光線性又は感放射線性膜。
【請求項7】
(i)下記一般式(b)で表されるアルキレンオキシ鎖を有する繰り返し単位と、酸の作用により分解し極性基を生じる基を有する繰り返し単位とを有する樹脂を含有する感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物によって基板上に膜厚が1μm以上の感活性光線性又は感放射線性膜を形成する工程、
(ii)前記感活性光線性又は感放射線性膜に活性光線又は放射線を照射する工程、及び、
(iii)前記活性光線又は放射線が照射された感活性光線性又は感放射線性膜を、現像液を用いて現像する工程、を有するパターン形成方法。
【化6】

上記一般式(b)中、Xは、水素原子、アルキル基、シアノ基又はハロゲン原子を表す。Aは、炭素数1~5のアルキレン基を表す。nは2以上の整数を示す。複数のAは、互いに同一であっても、異なっていてもよい。Rは、水素原子を表す。
【請求項8】
(i)下記一般式(b)で表されるアルキレンオキシ鎖を有する繰り返し単位と、酸の作用により分解し極性基を生じる基を有する繰り返し単位とを有する樹脂を含有する感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物によって基板上に膜厚が1μm以上の感活性光線性又は感放射線性膜を形成する工程、
(ii)前記感活性光線性又は感放射線性膜に活性光線又は放射線を照射する工程、及び、
(iii)前記活性光線又は放射線が照射された感活性光線性又は感放射線性膜を、現像液を用いて現像する工程、を有するパターン形成方法であって、
前記アルキレンオキシ鎖を有する繰り返し単位が、酸の作用により分解し極性基を生じる基を有さない、パターン形成方法
ただし、前記感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物が下記組成物1又は組成物2である場合を除く。
【化7】

上記一般式(b)中、Xは、水素原子、アルキル基、シアノ基又はハロゲン原子を表す。Aは、炭素数1~5のアルキレン基を表す。nは2以上の整数を示す。複数のAは、互いに同一であっても、異なっていてもよい。Rは、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、又はアルケニル基を表す。
組成物1:
樹脂及び酸発生剤を含み、
樹脂が、式(a1-2)で表される構造単位及び式(a2-3)で表される構造単位を含む樹脂であるレジスト組成物。
【化8】

[式(a1-2)中、
a1'及びRa2'は、互いに独立に、水素原子又は炭素数1~12の炭化水素基を表し、Ra3'は、炭素数1~20の炭化水素基を表すか、Ra1'は、水素原子又は炭素数1~12の炭化水素基を表し、Ra2'及びRa3'は互いに結合して炭素数2~20の2価の炭化水素基を形成し、該炭化水素基及び該2価の炭化水素基に含まれるメチレン基は、酸素原子又は硫黄原子で置き換わってもよい。
a5は、水素原子又はメチル基を表す。
a6は、炭素数1~6のアルキル基又は炭素数1~6のアルコキシ基を表す。
mは、0~4の整数を表す。mが2以上のとき、複数のRa6は互いに同一でも異なっていてもよい。]
【化9】

[式(a2-3)中、
a9は、水素原子又はメチル基を表す。
a12は、炭素数1~6のアルキル基を表す。
a1は、炭素数1~6のアルカンジイル基を表す。
nは、1~30の整数を表す。nが2以上のとき、複数のLa1は互いに同一でも異なっていてもよい。]
組成物2:
式(I)で表される構造単位を有する樹脂、アルカリ可溶性樹脂、酸発生剤及び溶剤を含有するレジスト組成物。
【化10】

[式(I)中、Rは、水素原子、ハロゲン原子又はハロゲン原子を有してもよい炭素数1~6のアルキル基を表す。
は、置換基を有してもよい炭素数1~42の炭化水素基を表す。]
【請求項9】
請求項又はに記載のパターン形成方法を含む、電子デバイスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物及び感活性光線性又は感放射線性膜、並びに、これらを用いたパターン形成方法及び電子デバイスの製造方法に関する。さらに詳しくは、本発明は、IC等の半導体製造工程、液晶、サーマルヘッド等の回路基板の製造、更にその他のフォトファブリケーション工程、平版印刷版、酸硬化性組成物に使用される感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物及び感活性光線性又は感放射線性膜、並びに、これらを用いたパターン形成方法及び電子デバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
化学増幅型レジスト組成物は、遠紫外光等の放射線の照射により露光部に酸を生成させ、この酸を触媒とする反応によって、活性放射線の照射部と非照射部の現像液に対する溶解性を変化させ、パターンを基板上に形成させるパターン形成材料である。
【0003】
例えば、従来、特定のレジスト組成物を用いて膜厚2~20μmの厚膜レジスト膜を形成し、厚膜レジスト膜を選択的に露光後、厚膜レジスト膜を現像して、3次元構造のメモリを作成するためのレジストパターンを形成する方法が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-57638号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、レジストパターンは、しばしば、測長SEM(CD-SEM:Critical Dimension-Scanning Electron Microscope)によって、レジストパターンの寸法が計測されることにより、その性能評価がなされる。ここで、レジストパターンは、通常、真空チャンバー内に収容された状態で、測長SEMにより計測される。
しかしながら、レジストパターンが特に厚膜レジスト膜により形成されたレジストパターンである場合、真空チャンバー内で、レジストパターンにクラックが発生しやすく、レジストパターンの正しい性能評価が実施し難いという問題があった。また、本発明者らは、レジスト膜の膜厚が厚くなるに従って、このクラックの問題が顕在化することを見出した。
【0006】
本発明は、厚膜の(例えば1μm以上の厚さを有する)レジスト膜から得られたレジストパターンが、測長SEMによって測定される際に、クラックが発生しにくいことにより、レジストパターンの性能評価を正確に実施可能な感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物、感活性光線性又は感放射線性膜、及び、パターン形成方法、並びに、これらを用いた電子デバイスの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明者らは、以下の構成により上記課題が解決できることを見出した。
<1>
下記一般式(b)で表されるアルキレンオキシ鎖を有する繰り返し単位と、芳香族基を有する繰り返し単位と、酸の作用により分解し極性基を生じる基を有する繰り返し単位とを有する樹脂を含有し、固形分濃度が10質量%以上である感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
【化101】

上記一般式(b)中、Xは、水素原子、アルキル基、シアノ基又はハロゲン原子を表す。Aは、炭素数1~5のアルキレン基を表す。nは2以上の整数を示す。複数のAは、互いに同一であっても、異なっていてもよい。Rは、水素原子を表す。
<2>
下記一般式(b)で表されるアルキレンオキシ鎖を有する繰り返し単位と、芳香族基を有する繰り返し単位と、酸の作用により分解し極性基を生じる基を有する繰り返し単位とを有する樹脂を含有し、固形分濃度が10質量%以上である感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物(ただし、下記組成物1及び組成物2を除く)であって、
上記アルキレンオキシ鎖を有する繰り返し単位が、酸の作用により分解し極性基を生じる基を有さない、感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物
【化102】

上記一般式(b)中、Xは、水素原子、アルキル基、シアノ基又はハロゲン原子を表す。Aは、炭素数1~5のアルキレン基を表す。nは2以上の整数を示す。複数のAは、互いに同一であっても、異なっていてもよい。Rは、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、又はアルケニル基を表す。
組成物1:
樹脂及び酸発生剤を含み、
樹脂が、式(a1-2)で表される構造単位及び式(a2-3)で表される構造単位を含む樹脂であるレジスト組成物。
【化103】

[式(a1-2)中、
a1'及びRa2'は、互いに独立に、水素原子又は炭素数1~12の炭化水素基を表し、Ra3'は、炭素数1~20の炭化水素基を表すか、Ra1'は、水素原子又は炭素数1~12の炭化水素基を表し、Ra2'及びRa3'は互いに結合して炭素数2~20の2価の炭化水素基を形成し、該炭化水素基及び該2価の炭化水素基に含まれるメチレン基は、酸素原子又は硫黄原子で置き換わってもよい。
a5は、水素原子又はメチル基を表す。
a6は、炭素数1~6のアルキル基又は炭素数1~6のアルコキシ基を表す。
mは、0~4の整数を表す。mが2以上のとき、複数のRa6は互いに同一でも異なっていてもよい。]
【化104】

[式(a2-3)中、
a9は、水素原子又はメチル基を表す。
a12は、炭素数1~6のアルキル基を表す。
a1は、炭素数1~6のアルカンジイル基を表す。
nは、1~30の整数を表す。nが2以上のとき、複数のLa1は互いに同一でも異なっていてもよい。]
組成物2:
式(I)で表される構造単位を有する樹脂、アルカリ可溶性樹脂、酸発生剤及び溶剤を含有するレジスト組成物。
【化105】

[式(I)中、Rは、水素原子、ハロゲン原子又はハロゲン原子を有してもよい炭素数1~6のアルキル基を表す。
は、置換基を有してもよい炭素数1~42の炭化水素基を表す。]
<3>
上記一般式(b)におけるRが、水素原子である、<2>に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
<4>
上記固形分濃度が10~60質量%である<1>~<3>のいずれか1項に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。

上記アルキレンオキシ鎖を有する繰り返し単位が、芳香族基を有さない、<1>~<>のいずれか1項に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。

<1>~<>のいずれか1項に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物より形成された感活性光線性又は感放射線性膜。

(i)下記一般式(b)で表されるアルキレンオキシ鎖を有する繰り返し単位と、酸の作用により分解し極性基を生じる基を有する繰り返し単位とを有する樹脂を含有する感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物によって基板上に膜厚が1μm以上の感活性光線性又は感放射線性膜を形成する工程、
(ii)上記感活性光線性又は感放射線性膜に活性光線又は放射線を照射する工程、及び、
(iii)上記活性光線又は放射線が照射された感活性光線性又は感放射線性膜を、現像液を用いて現像する工程、を有するパターン形成方法。
【化106】

上記一般式(b)中、Xは、水素原子、アルキル基、シアノ基又はハロゲン原子を表す。Aは、炭素数1~5のアルキレン基を表す。nは2以上の整数を示す。複数のAは、互いに同一であっても、異なっていてもよい。Rは、水素原子を表す。

(i)下記一般式(b)で表されるアルキレンオキシ鎖を有する繰り返し単位と、酸の作用により分解し極性基を生じる基を有する繰り返し単位とを有する樹脂を含有する感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物によって基板上に膜厚が1μm以上の感活性光線性又は感放射線性膜を形成する工程、
(ii)上記感活性光線性又は感放射線性膜に活性光線又は放射線を照射する工程、及び、
(iii)上記活性光線又は放射線が照射された感活性光線性又は感放射線性膜を、現像液を用いて現像する工程、を有するパターン形成方法であって、
上記アルキレンオキシ鎖を有する繰り返し単位が、酸の作用により分解し極性基を生じる基を有さない、パターン形成方法
ただし、上記感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物が下記組成物1又は組成物2である場合を除く。
【化107】

上記一般式(b)中、Xは、水素原子、アルキル基、シアノ基又はハロゲン原子を表す。Aは、炭素数1~5のアルキレン基を表す。nは2以上の整数を示す。複数のAは、互いに同一であっても、異なっていてもよい。Rは、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、又はアルケニル基を表す。
組成物1:
樹脂及び酸発生剤を含み、
樹脂が、式(a1-2)で表される構造単位及び式(a2-3)で表される構造単位を含む樹脂であるレジスト組成物。
【化108】

[式(a1-2)中、
a1'及びRa2'は、互いに独立に、水素原子又は炭素数1~12の炭化水素基を表し、Ra3'は、炭素数1~20の炭化水素基を表すか、Ra1'は、水素原子又は炭素数1~12の炭化水素基を表し、Ra2'及びRa3'は互いに結合して炭素数2~20の2価の炭化水素基を形成し、該炭化水素基及び該2価の炭化水素基に含まれるメチレン基は、酸素原子又は硫黄原子で置き換わってもよい。
a5は、水素原子又はメチル基を表す。
a6は、炭素数1~6のアルキル基又は炭素数1~6のアルコキシ基を表す。
mは、0~4の整数を表す。mが2以上のとき、複数のRa6は互いに同一でも異なっていてもよい。]
【化109】

[式(a2-3)中、
a9は、水素原子又はメチル基を表す。
a12は、炭素数1~6のアルキル基を表す。
a1は、炭素数1~6のアルカンジイル基を表す。
nは、1~30の整数を表す。nが2以上のとき、複数のLa1は互いに同一でも異なっていてもよい。]
組成物2:
式(I)で表される構造単位を有する樹脂、アルカリ可溶性樹脂、酸発生剤及び溶剤を含有するレジスト組成物。
【化110】

[式(I)中、Rは、水素原子、ハロゲン原子又はハロゲン原子を有してもよい炭素数1~6のアルキル基を表す。
は、置換基を有してもよい炭素数1~42の炭化水素基を表す。]

>又は<>に記載のパターン形成方法を含む、電子デバイスの製造方法。
本発明は上記<1>~<>に関するものであるが、本明細書には参考のためその他の事項についても記載した。
【0008】
〔1〕
アルキレンオキシ鎖を有する繰り返し単位と、芳香族基を有する繰り返し単位とを有する樹脂を含有し、固形分濃度が10質量%以上である感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
〔2〕
上記固形分濃度が10~60質量%である〔1〕に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
〔3〕
上記アルキレンオキシ鎖を有する繰り返し単位が、酸の作用により分解し極性基を生じる基を有さない、〔1〕又は〔2〕に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
〔4〕
上記アルキレンオキシ鎖を有する繰り返し単位が、芳香族基を有さない、〔1〕~〔3〕のいずれか1項に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
〔5〕
上記アルキレンオキシ鎖が、下記一般式(a)で表される、〔1〕~〔4〕のいずれか1項に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
【化1】

上記一般式(a)中、Aは、炭素数1~5のアルキレン基を表す。nは2以上の整数を示す。複数のAは、互いに同一であっても、異なっていてもよい。
〔6〕
上記アルキレンオキシ鎖を有する繰り返し単位が、下記一般式(b)で表される、〔5〕に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
【化2】

上記一般式(b)中、Xは、水素原子、アルキル基、シアノ基又はハロゲン原子を表す。Aは、炭素数1~5のアルキレン基を表す。nは2以上の整数を示す。複数のAは、互いに同一であっても、異なっていてもよい。Rは、水素原子、又は、有機基を表す。
〔7〕
上記一般式(b)におけるRが、水素原子である、〔6〕に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
〔8〕
上記樹脂が、酸の作用により分解し極性基を生じる基を有する繰り返し単位を有する、〔1〕~〔7〕のいずれか1項に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
〔9〕
〔1〕~〔8〕のいずれか1項に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物より形成された感活性光線性又は感放射線性膜。
〔10〕
(i)アルキレンオキシ鎖を有する繰り返し単位を有する樹脂を含有する感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物によって基板上に膜厚が1μm以上の感活性光線性又は感放射線性膜を形成する工程、
(ii)上記感活性光線性又は感放射線性膜に活性光線又は放射線を照射する工程、及び、
(iii)上記活性光線又は放射線が照射された感活性光線性又は感放射線性膜を、現像液を用いて現像する工程、を有するパターン形成方法。
〔11〕
〔10〕に記載のパターン形成方法を含む、電子デバイスの製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、厚膜の(例えば1μm以上の厚さを有する)レジスト膜から得られたレジストパターンが、測長SEMによって測定される際に、クラックが発生しにくいことにより、レジストパターンの性能評価を正確に実施可能な感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物、感活性光線性又は感放射線性膜、及び、パターン形成方法、並びに、これらを用いた電子デバイスの製造方法を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
本明細書における基(原子団)の表記において、置換及び無置換を記していない表記は、置換基を有さないものと共に置換基を有するものをも包含するものである。例えば、「アルキル基」とは、置換基を有さないアルキル基(無置換アルキル基)のみならず、置換基を有するアルキル基(置換アルキル基)をも包含するものである。
本明細書における「活性光線」又は「放射線」とは、例えば、水銀灯の輝線スペクトル、エキシマレーザーに代表される遠紫外線、極紫外線(EUV光)、X線、電子線(EB)等を意味する。また、本明細書において「光」とは、活性光線又は放射線を意味する。
本明細書における「露光」とは、特に断らない限り、水銀灯、エキシマレーザーに代表される遠紫外線、極紫外線、X線、EUV光などによる露光のみならず、電子線、イオンビーム等の粒子線による描画も含む。
本明細書において、粘度は、25.0℃における粘度であり、TOKI SANGYO製RE-85Lにより測定されるものである。
【0011】
本明細書において「~」とはその前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
本明細書において、(メタ)アクリレートはアクリレート及びメタクリレートを表し、(メタ)アクリルはアクリル及びメタクリルを表す。
本明細書において、樹脂の重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、及び分散度(Mw/Mn)は、GPC(Gel Permeation Chromatography)装置(東ソー製HLC-8120GPC)によるGPC測定(溶媒:テトラヒドロフラン、流量(サンプル注入量):10μl、カラム:東ソー社製TSK gel Multipore HXL-M(×4本)、カラム温度:40℃、流速:1.0mL/分、検出器:示差屈折率(RI)検出器)によるポリスチレン換算値として定義される。
【0012】
[感活性光線又は感放射線性樹脂組成物]
本発明に係る感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物(以下、「本発明の組成物」とも言う。)及びパターン形成方法は、感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物が、アルキレンオキシ鎖を有する繰り返し単位を有する樹脂を含有する。
上記構成により、厚膜の(例えば1μm以上の厚さを有する)レジスト膜から得られたレジストパターンが、測長SEMによって測定される際に、クラックが発生しにくくなり、レジストパターンの性能評価を正確に実施できる。
その理由は明らかではないが、以下の通りと推測される。
【0013】
先ず、樹脂が、アルキレンオキシ鎖を有する繰り返し単位を有することで、感活性光線性又は感放射線性膜の流動性が向上する。これにより、感活性光線性又は感放射線性膜の形成時において、感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物中の溶剤が揮発しやすくなり、形成された感活性光線性又は感放射線性膜中に残留する溶剤の量がより低減される。このような残留溶剤の量が低減された感活性光線性又は感放射線性膜から形成されたレジストパターンは、測長SEMによる計測時に真空チャンバー内に収容されても、レジストパターンの中から溶剤が揮発しにくい。よって、本発明におけるレジストパターンでは、レジストパターンの中から溶剤が揮発することに伴う応力変化が生じにくく、レジストパターンにクラックが発生しにくくなったものと推測される。
【0014】
本発明の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物は、KrF露光用であることが好ましい。
本発明の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物は、アルカリ現像用のポジ型レジスト組成物であっても、有機溶剤現像用のネガ型レジスト組成物であってもよいが、アルカリ現像用のポジ型レジスト組成物であることが好ましい。また本発明に係る組成物は、典型的には化学増幅型のレジスト組成物である。
【0015】
<樹脂(A)>
〔アルキレンオキシ鎖を有する繰り返し単位〕
本発明の組成物は、アルキレンオキシ鎖を有する繰り返し単位を有する樹脂(A)を含有する。
【0016】
アルキレンオキシ鎖を有する繰り返し単位におけるアルキレンオキシ鎖としては、下記一般式(a)で表される鎖を好適に挙げることができる。
【0017】
【化3】
【0018】
上記一般式(a)中、Aは、炭素数1~5のアルキレン基を表す。nは2以上の整数を示す。複数のAは、互いに同一であっても、異なっていてもよい。
【0019】
Aとしての炭素数1~5のアルキレン基は、直鎖状のアルキレン基であっても、分岐状のアルキレン基であってもよい。
Aとしての炭素数1~5のアルキレン基は、炭素数2又は3のアルキレン基であることが好ましく、例えば、エチレン基、及び、イソプロピレン基を好適に挙げることができる。
nは、3以上であることがより好ましい。また、nは、20以下であることが好ましい。
【0020】
アルキレンオキシ鎖を有する繰り返し単位は、下記一般式(b)で表されることが好ましい。
【0021】
【化4】
【0022】
一般式(b)中、Xは、水素原子、アルキル基、シアノ基又はハロゲン原子を表す。Aは、炭素数1~5のアルキレン基を表す。nは2以上の整数を示す。複数のAは、互いに同一であっても、異なっていてもよい。Rは、水素原子、又は、有機基を表す。
【0023】
Xとしてのハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、及び、ヨウ素原子を挙げることができる。
Xは、好ましくは、水素原子、又は、アルキル基(より好ましくは、炭素数1~3のアルキル基)である。
Aとしての炭素数1~5のアルキレン基の具体例及び好ましい例、及び、nの好ましい範囲は、上記一般式(a)におけるものと同様である。
【0024】
Rとしての有機基は、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルケニル基などを挙げることができる。これら基は更に置換基を有していてもよい。
Rとしてのアルキル基としては、置換基を有していてもよく、好ましくは炭素数1~20の直鎖及び分岐アルキル基であり、アルキル鎖中に酸素原子、硫黄原子、窒素原子を有していてもよい。
Rとしてのシクロアルキル基としては、置換基を有していてもよく、好ましくは炭素数3~20の単環シクロアルキル基又は多環シクロアルキル基であり、環内に酸素原子、硫黄原子、窒素原子を有していてもよい。
Rとしてのアリール基としては、置換基を有していてもよく、好ましくは炭素数6~14のものが挙げられ、例えば、フェニル基及びナフチル基等が挙げられる。
Rとしてのアラルキル基としては、置換基を有していてもよく、好ましくは炭素数7~20のものが挙げられ、例えば、ベンジル基及びフェネチル基等が挙げられる。
Rとしてのアルケニル基は、置換基を有していてもよく、直鎖状であってもよく、分岐鎖状であってもよい。このアルケニル基の炭素数は、3~20であることが好ましい。このようなアルケニル基としては、例えば、ビニル基、アリル基及びスチリル基等が挙げられる。
Rが更に置換基を有する場合の置換基としては、例えばハロゲン原子、直鎖、分岐または環状のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、シアノ基、カルボキシル基、水酸基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、アミノ基、ニトロ基、ヒドラジノ基及び、ヘテロ環基などが挙げられる。
【0025】
Rは水素原子であることが好ましく、これにより、本発明の効果がより高まる傾向となる。
【0026】
アルキレンオキシ鎖を有する繰り返し単位は、酸の作用により分解し極性基を生じる基(酸分解性基)を有さないことが好ましい。
また、アルキレンオキシ鎖を有する繰り返し単位は、芳香族基を有さないことが好ましい。
【0027】
アルキレンオキシ鎖を有する繰り返し単位の含有量は、樹脂(A)の全繰り返し単位に対して、1~30モル%であることが好ましく、3~25モル%であることがより好ましく、5~20モル%であることが更に好ましい。
【0028】
以下、アルキレンオキシ鎖を有する繰り返し単位の好ましい具体例を示すが、これらに限定されるものではない。
【0029】
【化5】

【0030】
〔芳香族基を有する繰り返し単位〕
樹脂(A)は、芳香族基を有する繰り返し単位を有することが好ましい。
芳香族基を有する繰り返し単位における芳香環としては、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フルオレン環、フェナントレン環などの芳香族炭化水素環(好ましくは炭素数6~18)、及び、チオフェン環、フラン環、ピロール環、ベンゾチオフェン環、ベンゾフラン環、ベンゾピロール環、トリアジン環、イミダゾール環、ベンゾイミダゾール環、トリアゾール環、チアジアゾール環、チアゾール環等のヘテロ環を含む芳香族ヘテロ環等を挙げることができる。中でも、ベンゼン環、ナフタレン環が解像性の観点で好ましく、ベンゼン環が最も好ましい。
上記芳香族基は、更に、置換基を有していてもよく、置換基の具体例としては、水酸基、及び、後述の一般式(X)のRとして挙げた各基などが挙げられる。
芳香族基を有する繰り返し単位としては、下記一般式(A)により表される繰り返し単位が好ましい。
【0031】
【化6】
【0032】
上記一般式(A)中、
11、R12及びR13は、各々独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、ハロゲン原子、シアノ基又はアルコキシカルボニル基を表す。但し、R12はLと結合して環を形成していてもよく、その場合のR12は単結合又はアルキレン基を表す。
Xは、単結合、-COO-、又は-CONR30-を表し、R30は、水素原子又はアルキル基を表す。
Lは、単結合又は2価の連結基を表す。R12がLと結合して環を形成する場合は、Lは3価の連結基を表す。3価数の連結基は、2価の連結基から任意の水素原子を除いた基を表す。
Zは、芳香環を表し、R12と結合して環を形成しても良い。
【0033】
上記一般式(A)中のR11、R12、R13、X、Lの具体例及び好ましい例等は、それぞれ後述する一般式(I)中のR41、R42、R43、X、Lと同様である。
また、Zの具体例及び好ましい例等は、上記した芳香環におけるものと同様である。
【0034】
芳香環基を有する繰り返し単位としては、フェノール性水酸基を有する繰り返し単位を好適に挙げることができる。
本明細書において、フェノール性水酸基とは、芳香環の水素原子をヒドロキシ基で置換してなる基である。
【0035】
フェノール性水酸基を有する繰り返し単位としては、例えば、下記一般式(I)又は(I-1)で表される繰り返し単位が挙げられる。
【0036】
【化7】
【0037】
式中、
41、R42及びR43は、各々独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、ハロゲン原子、シアノ基又はアルコキシカルボニル基を表す。但し、一般式(I)においてR42はArと結合して環を形成していてもよく、その場合のR42は単結合又はアルキレン基を表す。
は、単結合、-COO-、又は-CONR64-を表し、R64は、水素原子又はアルキル基を表す。
は、それぞれ独立して単結合又は2価の連結基を表す。
Arは、(n+1)価の芳香環基を表す。Arは、一般式(I)においてR42と結合して環を形成する場合には(n+2)価の芳香環基を表す。
nは、1~5の整数を表す。
一般式(I)又は(I-1)の繰り返し単位を高極性化する目的では、nが2以上の整数、またはXが-COO-、又は-CONR64-であることも好ましい。
【0038】
一般式(I)及び(I-1)におけるR41、R42、R43のアルキル基としては、好ましくは置換基を有していてもよいメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、ヘキシル基、2-エチルヘキシル基、オクチル基、ドデシル基など炭素数20以下のアルキル基が挙げられ、より好ましくは炭素数8以下のアルキル基、特に好ましくは炭素数3以下のアルキル基が挙げられる。
【0039】
一般式(I)及び(I-1)におけるR41、R42、R43のシクロアルキル基としては、単環型でも、多環型でもよい。好ましくは置換基を有していてもよいシクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などの炭素数3~8個で単環型のシクロアルキル基が挙げられる。
一般式(I)及び(I-1)におけるR41、R42、R43のハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子が挙げられ、フッ素原子が特に好ましい。
一般式(I)及び(I-1)におけるR41、R42、R43のアルコキシカルボニル基に含まれるアルキル基としては、上記R41、R42、R43におけるアルキル基と同様のものが好ましい。
【0040】
上記各基における好ましい置換基としては、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アミノ基、アミド基、ウレイド基、ウレタン基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、ハロゲン原子、アルコキシ基、チオエーテル基、アシル基、アシロキシ基、アルコキシカルボニル基、シアノ基、ニトロ基等を挙げることができ、置換基の炭素数は8以下が好ましい。
【0041】
Arは、(n+1)価の芳香環基を表す。nが1である場合における2価の芳香環基は、置換基を有していてもよく、例えば、フェニレン基、トリレン基、ナフチレン基、アントラセニレン基などの炭素数6~18のアリーレン基、あるいは、例えば、チオフェン、フラン、ピロール、ベンゾチオフェン、ベンゾフラン、ベンゾピロール、トリアジン、イミダゾール、ベンゾイミダゾール、トリアゾール、チアジアゾール、チアゾール等のヘテロ環を含む芳香環基を好ましい例として挙げることができる。
【0042】
nが2以上の整数である場合における(n+1)価の芳香環基の具体例としては、2価の芳香環基の上記した具体例から、(n-1)個の任意の水素原子を除いた基を好適に挙げることができる。
(n+1)価の芳香環基は、更に置換基を有していてもよい。
【0043】
上述したアルキル基、シクロアルキル基、アルコキシカルボニル基及び(n+1)価の芳香環基が有し得る置換基としては、例えば、一般式(I)におけるR41、R42、R43で挙げたアルキル基、メトキシ基、エトキシ基、ヒドロキシエトキシ基、プロポキシ基、ヒドロキシプロポキシ基、ブトキシ基などのアルコキシ基;フェニル基などのアリール基;等が挙げられる。
により表わされる-CONR64-(R64は、水素原子、アルキル基を表す)におけるR64のアルキル基としては、好ましくは置換基を有していてもよいメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、ヘキシル基、2-エチルヘキシル基、オクチル基、ドデシル基など炭素数20以下のアルキル基が挙げられ、より好ましくは炭素数8以下のアルキル基が挙げられる。
としては、単結合、-COO-、-CONH-が好ましく、単結合、-COO-がより好ましい。
【0044】
としての2価の連結基としては、アルキレン基、アリーレン基であることが好ましく、アルキレン基としては、好ましくは置換基を有していてもよいメチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ヘキシレン基、オクチレン基等の炭素数1~8個のもの、フェニレン基、ナフチレン基等の炭素数6~12のアリーレン基が挙げられる。
Arとしては、置換基を有していてもよい炭素数6~18の芳香環基がより好ましく、ベンゼン環基、ナフタレン環基、ビフェニレン環基が特に好ましい。
一般式(I)で表される繰り返し単位は、ヒドロキシスチレン構造を備えていることが好ましい。即ち、Arは、ベンゼン環基であることが好ましい。
【0045】
一般式(I)において、Xは、単結合又は-COO-が好ましく、Arはアリーレン基が好ましく、Lは単結合が好ましく、nは1が好ましい。
【0046】
フェノール性水酸基を有する繰り返し単位としては、好ましくは、下記一般式(p1)で表される繰り返し単位が挙げられる。
【0047】
【化8】
【0048】
一般式(p1)におけるRは、水素原子、ハロゲン原子又は1~4個の炭素原子を有する直鎖もしくは分岐のアルキル基を表す。複数のRは、各々同じでも異なっていてもよい。一般式(p1)中のRとしては水素原子が特に好ましい。
【0049】
一般式(p1)におけるArは芳香環を表し、例えば、上記のArで挙げられたものと同様である。
【0050】
一般式(p1)におけるmは、1~5の整数を表し、好ましくは1である。
【0051】
以下、フェノール性水酸基を有する繰り返し単位の具体例を示すが、本発明は、これに限定されるものではない。式中、aは1又は2を表す。また、フェノール性水酸基を有する繰り返し単位の具体例として、特開2014-232309号公報の[0177]~[0178]に記載の具体例が援用でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0052】
【化9】
【0053】
【化10】
【0054】
樹脂(A)がフェノール性水酸基を有する繰り返し単位を有する場合、フェノール性水酸基を有する繰り返し単位を1種有していても、2種以上有していてもよい。
【0055】
樹脂(A)がフェノール性水酸基を有する繰り返し単位を有する場合、フェノール性水酸基を有する繰り返し単位の含有量は、樹脂(A)の全繰り返し単位に対して、10~95モル%であることが好ましく、20~90モル%であることがより好ましく、30~85モル%であることが更に好ましい。
【0056】
芳香族基を有する繰り返し単位は、下記一般式(X)で表される繰り返し単位であってもよい。
【0057】
【化11】
【0058】
一般式(X)中、
61、R62及びR63は、各々独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、ハロゲン原子、シアノ基、又はアルコキシカルボニル基を表す。但し、R63はArと結合して環を形成していてもよく、その場合のR63は単結合又はアルキレン基を表す。
Arは、(n+1)価の芳香環基を表し、R63と結合して環を形成する場合には(n+2)価の芳香環基を表す。
は、それぞれ独立に、炭素数1~10の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、アルコキシ基又はアシロキシ基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、ハロゲン原子、エステル基(-OCOR又は-COOR:Rは炭素数1~6のアルキル基又はフッ素化アルキル基)、又はカルボキシル基を表す。
nは、0以上の整数を表す。
【0059】
下記一般式(X)は、下記一般式(V)又は下記一般式(VI)で表される繰り返し単位であることも好ましい。
【0060】
【化12】
【0061】
式中、nは0~4の整数を表す。nは0~6の整数を表す。
は、メチレン基、酸素原子又は硫黄原子である。
は、上記一般式(X)のRと同義である。
【0062】
一般式(X)で表される繰り返し単位の具体例を下記に示すが、これらに限定されない。
【0063】
【化13】
【0064】
【化14】
【0065】
樹脂(A)が一般式(X)で表される繰り返し単位を有する場合、一般式(X)で表される繰り返し単位を1種有していても、2種以上有していてもよい。
【0066】
樹脂(A)が一般式(X)で表される繰り返し単位を有する場合、一般式(X)で表される繰り返し単位の含有量は、樹脂(A)の全繰り返し単位に対して、5~50モル%であることが好ましく、5~40モル%であることがより好ましく、5~30モル%であることが更に好ましい。
【0067】
また、芳香族基を有する繰り返し単位は、後述する、酸分解性基を有する繰り返し単位において、芳香族基を有するものであっても良い。
【0068】
樹脂(A)が芳香族基を有する繰り返し単位を有する場合、樹脂(A)は、芳香族基を有する繰り返し単位を1種有していても、2種以上有していてもよい。
【0069】
芳香族基を有する繰り返し単位の含有量は、樹脂(A)の全繰り返し単位に対して、10~100モル%であることが好ましく、20~95モル%であることがより好ましく、30~90モル%であることが更に好ましい。
【0070】
また、樹脂(A)は、典型的には、酸の作用によって分解し、現像液に対する溶解性が変化する樹脂である。樹脂(A)は、酸の作用によりアルカリ現像液に対する溶解性が増大し、又は、酸の作用により有機溶剤を主成分とする現像液に対する溶解性が減少する樹脂であることが好ましい。樹脂(A)は、樹脂の主鎖又は側鎖、又は、主鎖及び側鎖の両方に、酸の作用により分解し極性基を生じる基(以下、「酸分解性基」ともいう)を有することがより好ましい。
【0071】
酸分解性基は、酸の作用により分解し脱離する基で極性基が保護された構造を有することが好ましい。
極性基としては、フェノール性水酸基、カルボキシル基、フッ素化アルコール基、スルホン酸基、スルホンアミド基、スルホニルイミド基、(アルキルスルホニル)(アルキルカルボニル)メチレン基、(アルキルスルホニル)(アルキルカルボニル)イミド基、ビス(アルキルカルボニル)メチレン基、ビス(アルキルカルボニル)イミド基、ビス(アルキルスルホニル)メチレン基、ビス(アルキルスルホニル)イミド基、トリス(アルキルカルボニル)メチレン基、トリス(アルキルスルホニル)メチレン基等の酸性基(従来レジストの現像液として用いられている、2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液中で解離する基)、及びアルコール性水酸基等が挙げられる。
好ましい極性基としては、カルボキシル基、フッ素化アルコール基(好ましくはヘキサフルオロイソプロパノール基)、スルホン酸基が挙げられる。
【0072】
酸分解性基として好ましい基は、これらの極性基の水素原子を酸の作用により脱離する基で置換した基である。
酸の作用により脱離する基としては、例えば、-C(R36)(R37)(R38)、-C(R36)(R37)(OR39)、-C(R01)(R02)(OR39)、-C(R01)(R02)-C(=O)-O-C(R36)(R37)(R38)又は-CH(R36)(Ar)等を挙げることができる。
式中、R36~R39は、各々独立に、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基又はアルケニル基を表す。R36とR37とは、互いに結合して環を形成してもよい。
01及びR02は、各々独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基又はアルケニル基を表す。
Arは、アリール基を表す。
【0073】
36~R39、R01、又はR02としてのアルキル基は、炭素数1~8のアルキル基であることが好ましく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、へキシル基及びオクチル基が挙げられる。
36~R39、R01、又はR02としてのシクロアルキル基は、単環のシクロアルキル基であってもよく、多環のシクロアルキル基であってもよい。単環のシクロアルキル基としては、炭素数3~8のシクロアルキル基が好ましく、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロへキシル基及びシクロオクチルが挙げられる。多環のシクロアルキル基としては、炭素数6~20のシクロアルキル基が好ましく、例えば、アダマンチル基、ノルボルニル基、イソボルニル基、カンファニル基、ジシクロペンチル基、α-ピナニル基、トリシクロデカニル基、テトラシクロドデシル基及びアンドロスタニル基が挙げられる。なお、シクロアルキル基中の炭素原子の一部は、酸素原子等のヘテロ原子によって置換されていてもよい。
36~R39、R01、R02、又はArとしてのアリール基は、炭素数6~14のアリール基であることが好ましく、例えば、フェニル基、ナフチル基及びアントリル基が挙げられる。
36~R39、R01、又はR02としてのアラルキル基は、炭素数7~12のアラルキル基であることが好ましく、例えば、ベンジル基、フェネチル基及びナフチルメチル基が好ましい。
36~R39、R01、又はR02としてのアルケニル基は、炭素数2~8のアルケニル基であることが好ましく、例えば、ビニル基、アリル基、ブテニル基及びシクロへキセニル基が挙げられる。
【0074】
36とR37とが互いに結合して形成し得る環は、単環型であってもよく、多環型であってもよい。単環型としては、炭素数3~8のシクロアルカン構造が好ましく、例えば、シクロプロパン構造、シクロブタン構造、シクロペンタン構造、シクロへキサン構造、シクロヘプタン構造及びシクロオクタン構造が挙げられる。多環型としては、炭素数6~20のシクロアルカン構造が好ましく、例えば、アダマンタン構造、ノルボルナン構造、ジシクロペンタン構造、トリシクロデカン構造及びテトラシクロドデカン構造が挙げられる。なお、環構造中の炭素原子の一部は、酸素原子等のヘテロ原子によって置換されていてもよい。
上記各基は、置換基を有していてもよい。この置換基としては、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アミノ基、アミド基、ウレイド基、ウレタン基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、ハロゲン原子、アルコキシ基、チオエーテル基、アシル基、アシロキシ基、アルコキシカルボニル基、シアノ基及びニトロ基が挙げられる。これら置換基は、炭素数が8以下であることが好ましい。
【0075】
酸分解性基としてはより好ましくは、クミルエステル基、エノールエステル基、アセタールエステル基、第3級のアルキルエステル基等である。更に好ましくは、第3級アルキルエステル基である。
【0076】
〔酸分解性基を有する繰り返し単位〕
樹脂(A)は、酸分解性基を有する繰り返し単位を有することが好ましい。
樹脂(A)が含有し得る、酸分解性基を有する繰り返し単位としては、下記一般式(AI)で表される繰り返し単位が好ましい。
【0077】
【化15】
【0078】
一般式(AI)に於いて、
Xaは、水素原子、又は、アルキル基を表す。
Tは、単結合又は2価の連結基を表す。
Rx~Rxは、各々独立に、アルキル基(直鎖若しくは分岐)又はシクロアルキル基(単環若しくは多環)を表す。
Rx~Rxのいずれか2つが結合して、シクロアルキル基(単環若しくは多環)を形成してもよい。
【0079】
Xaにより表されるアルキル基は、置換基を有しても有さなくてもよく、例えば、メチル基又は-CH-R11で表される基が挙げられる。R11は、ハロゲン原子(フッ素原子など)、ヒドロキシル基又は1価の有機基を表す。1価の有機基は、例えば、炭素数5以下のアルキル基、炭素数5以下のアシル基が挙げられ、好ましくは炭素数3以下のアルキル基であり、より好ましくはメチル基である。Xaは、一態様において、好ましくは水素原子、メチル基、トリフルオロメチル基又はヒドロキシメチル基等である。
Tの2価の連結基としては、アルキレン基、-COO-Rt-基、-O-Rt-基等が挙げられる。式中、Rtは、アルキレン基又はシクロアルキレン基を表す。
Tは、単結合又は-COO-Rt-基が好ましい。Rtは、炭素数1~5のアルキレン基が好ましく、-CH-基、-(CH-基、-(CH-基がより好ましい。
【0080】
Rx~Rxのアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基などの炭素数1~4のものが好ましい。
Rx~Rxのシクロアルキル基としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などの単環のシクロアルキル基、ノルボルニル基、テトラシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基、アダマンチル基などの多環のシクロアルキル基が好ましい。
Rx~Rxのいずれか2つが結合して形成されるシクロアルキル基としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などの単環のシクロアルキル基、ノルボルニル基、テトラシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基、アダマンチル基などの多環のシクロアルキル基が好ましい。炭素数5~6の単環のシクロアルキル基が特に好ましい。
Rx~Rxのいずれか2つが結合して形成されるシクロアルキル基は、例えば、環を構成するメチレン基の1つが、酸素原子等のヘテロ原子、又は、カルボニル基等のヘテロ原子を有する基で置き換わっていてもよい。
一般式(AI)で表される繰り返し単位は、例えば、Rxがメチル基又はエチル基であり、RxとRxとが結合して上述のシクロアルキル基を形成している態様が好ましい。
【0081】
上記各基は置換基を有していてもよく、置換基としては、例えば、アルキル基(炭素数1~4)、ハロゲン原子、水酸基、アルコキシ基(炭素数1~4)、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基(炭素数2~6)などが挙げられ、炭素数8以下が好ましい。
【0082】
酸分解性基を有する繰り返し単位の好ましい具体例を以下に示すが、本発明は、これに限定されるものではない。
具体例中、Rxは、水素原子、CH、CF、又はCHOHを表す。Rxa、Rxbは各々炭素数1~4のアルキル基を表す。Zは、極性基を含む置換基を表し、複数存在する場合は各々独立である。pは0以上の整数を表す。Zにより表される極性基を含む置換基としては、例えば、水酸基、シアノ基、アミノ基、アルキルアミド基又はスルホンアミド基を有する、直鎖又は分岐のアルキル基、シクロアルキル基が挙げられ、好ましくは、水酸基を有するアルキル基である。分岐状アルキル基としてはイソプロピル基が特に好ましい。
【0083】
【化16】
【0084】
また、酸分解性基を有する繰り返し単位としては、下記一般式(A)で表される繰り返し単位であることも好ましい。
【0085】
【化17】
【0086】
式中、R01、R02及びR03は、各々独立に、例えば、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、ハロゲン原子、シアノ基又はアルコキシカルボニル基を表す。Arは、芳香環基を表す。R03がアルキレン基を表し、Arと結合して、-C-C-鎖と共に、5員又は6員環を形成していてもよい。
n個のYは、各々独立に、水素原子又は酸の作用により脱離する基を表す。但し、Yの少なくとも1つは、酸の作用により脱離する基を表す。
nは、1~4の整数を表し、1~2が好ましく、1がより好ましい。
【0087】
01~R03としてのアルキル基は、例えば、炭素数20以下のアルキル基であり、好ましくは、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、ヘキシル基、2-エチルヘキシル基、オクチル基又はドデシル基である。より好ましくは、これらアルキル基は、炭素数8以下のアルキル基である。なお、これらアルキル基は、置換基を有していてもよい。
アルコキシカルボニル基に含まれるアルキル基としては、上記R01~R03におけるアルキル基と同様のものが好ましい。
シクロアルキル基は、単環のシクロアルキル基であってもよく、多環のシクロアルキル基であってもよい。好ましくは、シクロプロピル基、シクロペンチル基及びシクロヘキシル基等の炭素数3~8の単環のシクロアルキル基が挙げられる。なお、これらシクロアルキル基は、置換基を有していてもよい。
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子が挙げられ、フッ素原子が好ましい。
【0088】
03がアルキレン基を表す場合、このアルキレン基としては、好ましくは、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ヘキシレン基、又はオクチレン基等の炭素数1~8のものが挙げられる。
Arとしての芳香環基は、炭素数6~14のものが好ましく、例えば、ベンゼン環、トルエン環又はナフタレン環が挙げられる。なお、これら芳香環基は、置換基を有していてもよい。
上記Yの少なくとも1つとしての酸の作用により脱離する基は、上述したものを好適に挙げることできる。
【0089】
上記Yの少なくとも1つとしての酸の作用により脱離する基は、下記一般式(B)で表される構造であることがより好ましい。
【0090】
【化18】
【0091】
式中、L及びLは、各々独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基又はアラルキル基を表す。
Mは、単結合又は2価の連結基を表す。
Qは、アルキル基、シクロアルキル基、環状脂肪族基、芳香環基、アミノ基、アンモニウム基、メルカプト基、シアノ基又はアルデヒド基を表す。環状脂肪族基及び芳香環基は、ヘテロ原子を含んでいてもよい。
Q、M、Lの少なくとも2つが互いに結合して、5員又は6員環を形成していてもよい。
【0092】
及びLとしてのアルキル基は、例えば炭素数1~8のアルキル基であり、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、ヘキシル基及びオクチル基が挙げられる。
及びLとしてのシクロアルキル基は、例えば炭素数3~15のシクロアルキル基であり、具体的には、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ノルボルニル基及びアダマンチル基が挙げられる。
及びLとしてのアリール基は、例えば炭素数6~15のアリール基であり、具体的には、フェニル基、トリル基、ナフチル基及びアントリル基が挙げられる。
及びLとしてのアラルキル基は、例えば炭素数6~20のアラルキル基であり、具体的には、ベンジル基及びフェネチル基が挙げられる。
【0093】
Mとしての2価の連結基は、例えば、アルキレン基(例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ヘキシレン基又はオクチレン基)、シクロアルキレン基(例えば、シクロペンチレン基又はシクロヘキシレン基)、アルケニレン基(例えば、エチレン基、プロペニレン基又はブテニレン基)、アリーレン基(例えば、フェニレン基、トリレン基又はナフチレン基)、-S-、-O-、-CO-、-SO-、-N(R)-、又は、これらの2以上の組み合わせである。ここで、Rは、水素原子又はアルキル基である。Rとしてのアルキル基は、例えば炭素数1~8のアルキル基であり、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、ヘキシル基及びオクチル基が挙げられる。
【0094】
Qとしてのアルキル基及びシクロアルキル基は、上述したL及びLとしての各基と同様である。
Qとしての環状脂肪族基又は芳香環基としては、例えば、上述したL及びLとしてのシクロアルキル基及びアリール基が挙げられる。これらシクロアルキル基及びアリール基は、好ましくは、炭素数3~15の基である。
Qとしてのヘテロ原子を含んだ環状脂肪族基又は芳香環基としては、例えば、チイラン、シクロチオラン、チオフェン、フラン、ピロール、ベンゾチオフェン、ベンゾフラン、ベンゾピロール、トリアジン、イミダゾール、ベンゾイミダゾール、トリアゾール、チアジアゾール、チアゾール及びピロリドン等の複素環構造を有した基が挙げられる。但し、炭素とヘテロ原子とで形成される環、又は、ヘテロ原子のみによって形成される環であれば、これらに限定されない。
Q、M及びLの少なくとも2つが互いに結合して形成し得る環構造としては、例えば、これらがプロピレン基又はブチレン基を形成してなる5員又は6員環構造が挙げられる。なお、この5員又は6員環構造は、酸素原子を含有している。
【0095】
一般式(B)におけるL、L、M及びQで表される各基は、置換基を有していてもよい。この置換基としては、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アミノ基、アミド基、ウレイド基、ウレタン基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、ハロゲン原子、アルコキシ基、チオエーテル基、アシル基、アシロキシ基、アルコキシカルボニル基、シアノ基及びニトロ基が挙げられる。これら置換基は、炭素数が8以下であることが好ましい。
-(M-Q)で表される基としては、炭素数1~20の基が好ましく、炭素数1~10の基がより好ましく、炭素数1~8が更に好ましい。
【0096】
酸分解性基を有する繰り返し単位の合計としての含有量は、樹脂(A)中の全繰り返し単位に対し、20~90モル%であることが好ましく、25~85モル%であることがより好ましく、30~80モル%であることが更に好ましい。
【0097】
〔環状炭酸エステル構造を有する繰り返し単位〕
樹脂(A)は、一態様において、環状炭酸エステル構造を有する繰り返し単位を含有することが好ましい。この環状炭酸エステル構造は、環を構成する原子群として-O-C(=O)-O-で表される結合を含む環を有する構造である。環を構成する原子群として-O-C(=O)-O-で表される結合を含む環は、5~7員環であることが好ましく、5員環であることが最も好ましい。このような環は、他の環と縮合し、縮合環を形成していてもよい。
【0098】
〔ラクトン構造又はスルトン構造を有する繰り返し単位〕
また、樹脂(A)は、ラクトン構造又はスルトン(環状スルホン酸エステル)構造を有する繰り返し単位を含有していてもよい。
ラクトン基又はスルトン基としては、ラクトン構造又はスルトン構造を有していればいずれでも用いることができるが、5~7員環のラクトン構造又はスルトン構造が好ましく、5~7員環のラクトン構造又はスルトン構造にビシクロ構造、スピロ構造を形成する形で他の環構造が縮環しているものがより好ましい。下記一般式(LC1-1)~(LC1-17)、(SL1-1)及び(SL1-2)のいずれかで表されるラクトン構造又はスルトン構造を有する繰り返し単位を有することが更に好ましい。また、ラクトン構造又はスルトン構造が主鎖に直接結合していてもよい。ラクトン構造又はスルトン構造としては(LC1-1)、(LC1-4)、(LC1-5)、(LC1-8)が好ましく、(LC1-4)がより好ましい。これらのラクトン構造又はスルトン構造を用いることでラインウィズスラフネス(LWR)、現像欠陥が良好になる。
【0099】
【化19】
【0100】
【化20】
【0101】
ラクトン構造部分又はスルトン構造部分は、置換基(Rb)を有していても有していなくてもよい。好ましい置換基(Rb)としては、炭素数1~8のアルキル基、炭素数4~7のシクロアルキル基、炭素数1~8のアルコキシ基、炭素数2~8のアルコキシカルボニル基、カルボキシル基、ハロゲン原子、水酸基、シアノ基、酸分解性基などが挙げられる。より好ましくは炭素数1~4のアルキル基、シアノ基、酸分解性基である。nは、0~4の整数を表す。nが2以上の時、複数存在する置換基(Rb)は、同一でも異なっていてもよく、また、複数存在する置換基(Rb)同士が結合して環を形成してもよい。
【0102】
ラクトン構造又はスルトン(環状スルホン酸エステル)構造を有する繰り返し単位の具体例を以下に挙げるが、本発明はこれらに限定されない。
【0103】
【化21】
【0104】
【化22】
【0105】
【化23】
【0106】
ラクトン基又はスルトン基を有する繰り返し単位は、通常光学異性体が存在するが、いずれの光学異性体を用いてもよい。また、1種の光学異性体を単独で用いても、複数の光学異性体を混合して用いてもよい。1種の光学異性体を主に用いる場合、その光学純度(ee)が90%以上のものが好ましく、95%以上のものがより好ましい。
【0107】
〔水酸基又はシアノ基を有する繰り返し単位〕
樹脂(A)は、一般式(AI)以外の水酸基又はシアノ基を有する繰り返し単位を有することが好ましい。これにより基板密着性、現像液親和性が向上する。水酸基又はシアノ基を有する繰り返し単位は、水酸基又はシアノ基で置換された脂環炭化水素構造を有する繰り返し単位であることが好ましく、酸分解性基を有さないことが好ましい。水酸基又はシアノ基で置換された脂環炭化水素構造に於ける、脂環炭化水素構造としては、アダマンチル基、ジアマンチル基、ノルボルナン基が好ましい。水酸基又はシアノ基で置換された脂環炭化水素構造としては、下記一般式で表される構造が好ましい。
【0108】
【化24】
【0109】
水酸基又はシアノ基を有する繰り返し単位の含有量は、樹脂(A)中の全繰り返し単位に対し、5~40モル%が好ましく、5~30モル%がより好ましく、10~25モル%が更に好ましい。
水酸基又はシアノ基を有する繰り返し単位の具体例としては、米国公開特許2012/0135348号公報の段落0340に開示された繰り返し単位を挙げることができるが、本発明はこれらに限定されない。
【0110】
〔アルカリ可溶性基を有する繰り返し単位〕
樹脂(A)は、アルカリ可溶性基を有する繰り返し単位を有してもよい。アルカリ可溶性基としてはカルボキシル基、スルホンアミド基、スルホニルイミド基、ビススルホニルイミド基、α位が電子求引性基で置換された脂肪族アルコール(例えばヘキサフロロイソプロパノール基)が挙げられる。アルカリ可溶性基は、カルボキシル基がより好ましい。アルカリ可溶性基を有する繰り返し単位を含有することによりコンタクトホール用途での解像性が増す。アルカリ可溶性基を有する繰り返し単位としては、アクリル酸、メタクリル酸による繰り返し単位のような樹脂の主鎖に直接アルカリ可溶性基が結合している繰り返し単位、連結基を介して樹脂の主鎖にアルカリ可溶性基が結合している繰り返し単位、又はアルカリ可溶性基を有する重合開始剤や連鎖移動剤を重合時に用いてポリマー鎖の末端に導入したもの、のいずれも好ましく、連結基は単環又は多環の環状炭化水素構造を有していてもよい。特に好ましくはアクリル酸、メタクリル酸による繰り返し単位である。
アルカリ可溶性基を有する繰り返し単位の含有量は、樹脂(A)中の全繰り返し単位に対し、0~20モル%が好ましく、3~15モル%がより好ましく、5~10モル%が更に好ましい。
アルカリ可溶性基を有する繰り返し単位の具体例としては、米国公開特許2012/0135348号公報の段落0344に開示された繰り返し単位を挙げることができるが、本発明は、これに限定されるものではない。
【0111】
〔極性基を持たない脂環炭化水素構造を有し、酸分解性を示さない繰り返し単位〕
本発明の樹脂(A)は、更に極性基(例えば、上記アルカリ可溶性基、水酸基、シアノ基等)を持たない脂環炭化水素構造を有し、酸分解性を示さない繰り返し単位を有することができる。このような繰り返し単位としては、一般式(IV)で表される繰り返し単位が挙げられる。
【0112】
【化25】
【0113】
一般式(IV)中、Rは少なくとも1つの環状構造を有し、極性基を有さない炭化水素基を表す。
Raは水素原子、アルキル基又は-CH-O-Ra基を表す。式中、Raは、水素原子、アルキル基又はアシル基を表す。Raは、水素原子、メチル基、ヒドロキシメチル基、トリフルオロメチル基が好ましく、水素原子、メチル基がより好ましい。
が有する環状構造は、単環式炭化水素基及び多環式炭化水素基が挙げられる。単環式炭化水素基としては、たとえば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロへプチル基、シクロオクチル基などの炭素数3~12のシクロアルキル基、シクロへキセニル基など炭素数3~12のシクロアルケニル基が挙げられる。好ましい単環式炭化水素基としては、炭素数3~7の単環式炭化水素基であり、より好ましくは、シクロペンチル基、シクロヘキシル基が挙げられる。
多環式炭化水素基は、環集合炭化水素基及び架橋環式炭化水素基が挙げられる。環集合炭化水素基の例としては、ビシクロヘキシル基、パーヒドロナフタレニル基などが挙げられる。架橋環式炭化水素環として、例えば、ピナン、ボルナン、ノルピナン、ノルボルナン、ビシクロオクタン環(ビシクロ[2.2.2]オクタン環、ビシクロ[3.2.1]オクタン環等)などの2環式炭化水素環及び、ホモブレダン、アダマンタン、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、トリシクロ[4.3.1.12,5]ウンデカン環などの3環式炭化水素環、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカン、パーヒドロ-1,4-メタノ-5,8-メタノナフタレン環などの4環式炭化水素環などが挙げられる。また、架橋環式炭化水素環は、縮合環式炭化水素環、例えば、パーヒドロナフタレン(デカリン)、パーヒドロアントラセン、パーヒドロフェナントレン、パーヒドロアセナフテン、パーヒドロフルオレン、パーヒドロインデン、パーヒドロフェナレン環などの5~8員シクロアルカン環が複数個縮合した縮合環も挙げられる。
好ましい架橋環式炭化水素環として、ノルボルニル基、アダマンチル基、ビシクロオクタニル基、トリシクロ[5、2、1、02,6]デカニル基、などが挙げられる。より好ましい架橋環式炭化水素環としてノルボルニル基、アダマンチル基が挙げられる。
これらの脂環式炭化水素基は置換基を有していても良く、好ましい置換基としてはハロゲン原子、アルキル基、水素原子が置換されたヒドロキシル基、水素原子が置換されたアミノ基などが挙げられる。好ましいハロゲン原子としては臭素、塩素、フッ素原子、好ましいアルキル基としてはメチル、エチル、ブチル、t-ブチル基が挙げられる。上記のアルキル基は更に置換基を有していても良く、更に有していてもよい置換基としては、ハロゲン原子、アルキル基、水素原子が置換されたヒドロキシル基、水素原子が置換されたアミノ基を挙げることができる。
上記水素原子が置換された基としては、たとえばアルキル基、シクロアルキル基、アラルキル基、置換メチル基、置換エチル基、アルコキシカルボニル基、アラルキルオキシカルボニル基が挙げられる。好ましいアルキル基としては、炭素数1~4のアルキル基、好ましい置換メチル基としてはメトキシメチル、メトキシチオメチル、ベンジルオキシメチル、t-ブトキシメチル、2-メトキシエトキシメチル基、好ましい置換エチル基としては、1-エトキシエチル、1-メチル-1-メトキシエチル、好ましいアシル基としては、ホルミル、アセチル、プロピオニル、ブチリル、イソブチリル、バレリル、ピバロイル基などの炭素数1~6の脂肪族アシル基、アルコキシカルボニル基としては炭素数1~4のアルコキシカルボニル基などが挙げられる。
樹脂(A)は、極性基を持たない脂環炭化水素構造を有し、酸分解性を示さない繰り返し単位を含有していても含有していなくてもよいが、含有する場合、この繰り返し単位の含有量は、樹脂(A)中の全繰り返し単位に対し、1~40モル%が好ましく、2~20モル%がより好ましい。
極性基を持たない脂環炭化水素構造を有し、酸分解性を示さない繰り返し単位の具体例としては、米国公開特許2012/0135348号公報の段落0354に開示された繰り返し単位を挙げることができるが、本発明はこれらに限定されない。
【0114】
〔その他の繰り返し単位〕
樹脂(A)は、上記の繰り返し構造単位以外に、ドライエッチング耐性や標準現像液適性、基板密着性、レジストプロファイル、更にレジストの一般的な必要な特性である解像力、耐熱性、感度等を調節する目的で様々な繰り返し構造単位を有することができる。このような繰り返し構造単位としては、下記の単量体に相当する繰り返し構造単位を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
これにより、樹脂(A)に要求される性能、特に、(1)塗布溶剤に対する溶解性、(2)製膜性(ガラス転移点)、(3)アルカリ現像性、(4)膜べり(親疎水性、酸基選択)、(5)未露光部の基板への密着性、又は(6)ドライエッチング耐性、等の微調整が可能となる。
【0115】
このような単量体として、例えばアクリル酸エステル類、メタクリル酸エステル類、アクリルアミド類、メタクリルアミド類、アリル化合物、ビニルエーテル類、ビニルエステル類等から選ばれる付加重合性不飽和結合を1個有する化合物等を挙げることができる。
その他にも、上記種々の繰り返し構造単位に相当する単量体と共重合可能である付加重合性の不飽和化合物であれば、共重合されていてもよい。
樹脂(A)において、各繰り返し構造単位の含有モル比はレジストのドライエッチング耐性や標準現像液適性、基板密着性、レジストプロファイル、更にはレジストの一般的な必要性能である解像力、耐熱性、感度等を調節するために適宜設定される。
【0116】
樹脂(A)は、常法(例えばラジカル重合)に従って合成することができる。例えば、一般的合成方法としては、モノマー種及び開始剤を溶剤に溶解させ、加熱することにより重合を行う一括重合法、加熱溶剤にモノマー種と開始剤の溶液を1~10時間かけて滴下して加える滴下重合法などが挙げられ、なかでもこの滴下重合法が好ましい。反応溶媒としては、例えばテトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、ジイソプロピルエーテルなどのエーテル類、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類、酢酸エチルなどのエステル溶媒、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどのアミド溶剤、更には後述のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、シクロヘキサノンなどの本発明の組成物を溶解する溶媒が挙げられる。本発明の組成物に用いられる溶剤と同一の溶剤を用いて重合することが好ましい。これにより保存時のパーティクルの発生が抑制できる。
重合反応は窒素やアルゴンなど不活性ガス雰囲気下で行われることが好ましい。重合開始剤として市販のラジカル開始剤(アゾ系開始剤、パーオキサイドなど)を用いて、重合を開始させる。ラジカル開始剤としてはアゾ系開始剤が好ましく、エステル基、シアノ基、カルボキシル基を有するアゾ系開始剤がより好ましい。好ましい開始剤としては、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスジメチルバレロニトリル、ジメチル2,2'-アゾビス(2-メチルプロピオネート)などが挙げられる。所望により開始剤を追加、あるいは分割で添加し、反応終了後、溶剤に投入して粉体あるいは固形回収等の方法で所望のポリマーを回収する。反応の濃度は5~50質量%であり、好ましくは10~30質量%である。反応温度は、通常10~150℃であり、好ましくは30~120℃、より好ましくは60~100℃である。
【0117】
樹脂(A)の重量平均分子量は、3,000以上であることが好ましく、5,000以上であることがより好ましい。一方、樹脂(A)の重量平均分子量は、通常、200,000以下であり、100,000以下であることが好ましい。
分散度(分子量分布)は、通常1.0~3.0であり、好ましくは1.0~2.6、より好ましくは1.0~2.0、更に好ましくは1.1~2.0の範囲のものが使用される。分子量分布の小さいものほど、解像度、レジスト形状が優れ、且つレジストパターンの側壁がスムーズであり、ラフネス性に優れる。
【0118】
樹脂(A)中に混在する残存モノマー{樹脂(A)を合成する際の原料モノマーのうち、未反応のモノマー}の量は、樹脂(A)に対して1質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以下であることがより好ましく、0.1質量%以下であることが更に好ましい。残存モノマー量が少ないほど、レジスト膜の光透過率が向上し、感度に優れる。
【0119】
樹脂(A)は、1種で使用してもよいし、複数併用してもよい。
【0120】
<酸発生剤(活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物)>
本発明の組成物は、酸発生剤を含有することが好ましい。酸発生剤は、活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物(以下、「酸発生剤」とも言う)であれば特に制限されない。
酸発生剤は、活性光線又は放射線の照射により有機酸を発生する化合物であることが好ましい。
【0121】
酸発生剤は、低分子化合物の形態であってもよく、重合体の一部に組み込まれた形態であってもよい。また、低分子化合物の形態と重合体の一部に組み込まれた形態を併用してもよい。
酸発生剤が、低分子化合物の形態である場合、分子量が3000以下であることが好ましく、2000以下であることがより好ましく、1000以下であることが更に好ましい。
酸発生剤が、重合体の一部に組み込まれた形態である場合、前述した樹脂(A)の一部に組み込まれてもよく、樹脂(A)とは異なる樹脂に組み込まれてもよい。酸発生剤が、重合体の一部に組み込まれた形態である場合の具体例としては、例えば、特開2013-54196の段落<0191>~<0209>を挙げることができる。
【0122】
酸発生剤としては、光カチオン重合の光開始剤、光ラジカル重合の光開始剤、色素類の光消色剤、光変色剤、あるいはマイクロレジスト等に使用されている、活性光線又は放射線の照射により酸を発生する公知の化合物及びそれらの混合物を適宜に選択して使用することができる。
例えば、酸発生剤としては、ジアゾニウム塩、ホスホニウム塩、スルホニウム塩、ヨードニウム塩、イミドスルホネート、オキシムスルホネート、ジアゾジスルホン、ジスルホン、o-ニトロベンジルスルホネートを挙げることができる。
【0123】
酸発生剤として、発生酸のpKaが-2以上である酸発生剤が好ましい。なかでも、形成されるパターン間での厚みのバラツキがより小さい点で、酸発生剤のpKaが-1.5以上がより好ましく、-1以上が更に好ましい。また、pKaの上限は特に制限されないが、1以下が好ましい。
pKa(酸強度)とは、酸の強さを定量的に表すための指標のひとつであり、酸性度定数と同義である。酸から水素イオンが放出される解離反応を考え、その平衡定数Kaをその負の常用対数pKaによって表したものである。pKaが小さいほど強い酸であることを示す。本明細書において、pKaは下記ソフトウェアパッケージ1を用いた計算により算出される値を表す。
ソフトウェアパッケージ1: Advanced Chemistry Development (ACD/Labs) Software V8.14 for Solaris (1994-2007 ACD/Labs)。
【0124】
酸発生剤の好ましい態様として、下記一般式(ZI)、(ZII)、(ZIII)で表される化合物を挙げることができる。
【0125】
【化26】
【0126】
一般式(ZI)において、
201、R202及びR203は、各々独立に、有機基を表す。
201、R202及びR203としての有機基の炭素数は、一般的に1~30、好ましくは1~20である。
また、R201~R203のうちいずれか2つが結合して環構造を形成してもよく、環内に酸素原子、硫黄原子、エステル結合、アミド結合、カルボニル基を含んでいてもよい。R201~R203の内のいずれか2つが結合して形成する基としては、アルキレン基(例えば、ブチレン基、ペンチレン基)を挙げることができる。
は、非求核性アニオンを表す。
としての非求核性アニオンとしては、例えば、スルホン酸アニオン、カルボン酸アニオン、スルホニルイミドアニオン、ビス(アルキルスルホニル)イミドアニオン、トリス(アルキルスルホニル)メチルアニオン等を挙げることができる。
【0127】
非求核性アニオンとは、求核反応を起こす能力が著しく低いアニオンであり、分子内求核反応による経時分解を抑制することができるアニオンである。これにより組成物の経時安定性が向上する。
スルホン酸アニオンとしては、例えば、脂肪族スルホン酸アニオン、芳香族スルホン酸アニオン、カンファースルホン酸アニオンなどが挙げられる。
カルボン酸アニオンとしては、例えば、脂肪族カルボン酸アニオン、芳香族カルボン酸アニオン、アラルキルカルボン酸アニオンなどが挙げられる。
【0128】
脂肪族スルホン酸アニオン及び脂肪族カルボン酸アニオンにおいて、脂肪族部位は、アルキル基であってもシクロアルキル基であってもよく、炭素数1~30のアルキル基又は炭素数3~30のシクロアルキル基が好ましく、芳香族スルホン酸アニオン及び芳香族カルボン酸アニオンにおいて、芳香族基は、炭素数6~14のアリール基が好ましく、例えば、フェニル基、トリル基、ナフチル基等を挙げることができる。
脂肪族スルホン酸アニオン及び芳香族スルホン酸アニオンにおけるアルキル基、シクロアルキル基及びアリール基は、置換基を有していてもよい。
その他の非求核性アニオンとしては、例えば、フッ素化燐(例えば、PF )、フッ素化硼素(例えば、BF )、フッ素化アンチモン等(例えば、SbF )を挙げることができる。
【0129】
の非求核性アニオンとしては、スルホン酸の少なくともα位がフッ素原子で置換された脂肪族スルホン酸アニオン、フッ素原子又はフッ素原子を有する基で置換された芳香族スルホン酸アニオン、アルキル基がフッ素原子で置換されたビス(アルキルスルホニル)イミドアニオン、アルキル基がフッ素原子で置換されたトリス(アルキルスルホニル)メチドアニオンが好ましい。非求核性アニオンとしては、炭素数4~8のパーフロロ脂肪族スルホン酸アニオン、フッ素原子を有するベンゼンスルホン酸アニオンがより好ましく、ノナフロロブタンスルホン酸アニオン、パーフロロオクタンスルホン酸アニオン、ペンタフロロベンゼンスルホン酸アニオン、3,5-ビス(トリフロロメチル)ベンゼンスルホン酸アニオンが更に好ましい。
【0130】
の非求核性アニオンは、一般式(2)で表されることが好ましい。この場合、発生酸の体積が大きく、酸の拡散が抑制される。
【0131】
【化27】
【0132】
一般式(2)中、
Xfは、各々独立に、フッ素原子、又は少なくとも1つのフッ素原子で置換されたアルキル基を表す。
及びRは、各々独立に、水素原子、フッ素原子、アルキル基、又は、少なくとも1つのフッ素原子で置換されたアルキル基を表し、複数存在する場合のR及びRは、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
Lは、2価の連結基を表し、複数存在する場合のLは同一でも異なっていてもよい。
Aは、環状構造を含む有機基を表す。
xは、1~20の整数を表す。yは、0~10の整数を表す。zは、0~10の整数を表す。
【0133】
一般式(2)のアニオンについて、更に詳しく説明する。
【0134】
Xfは、上記の通り、フッ素原子、又は少なくとも1つのフッ素原子で置換されたアルキル基を表す。フッ素原子で置換されたアルキル基におけるアルキル基としては、炭素数1~10のアルキル基が好ましく、炭素数1~4のアルキル基がより好ましい。また、Xfのフッ素原子で置換されたアルキル基は、パーフルオロアルキル基であることが好ましい。
Xfとして、好ましくは、フッ素原子又は炭素数1~4のパーフルオロアルキル基である。具体的には、フッ素原子、CF、C、C、C、C11、C13、C15、C17、CHCF、CHCHCF、CH、CHCH、CH、CHCH、CH、CHCHが挙げられる。中でもフッ素原子、CFが好ましい。特に、双方のXfがフッ素原子であることが好ましい。
【0135】
及びRは、上記の通り、水素原子、フッ素原子、アルキル基、又は、少なくとも1つのフッ素原子で置換されたアルキル基を表す。アルキル基は、炭素数1~4のものが好ましく、炭素数1~4のパーフルオロアルキル基がより好ましい。R及びRの少なくとも1つのフッ素原子で置換されたアルキル基の具体例としては、CF、C、C、C、C11、C13、C15、C17、CHCF、CHCHCF、CH、CHCH、CH、CHCH、CH、CHCHが挙げられ、中でもCFが好ましい。
【0136】
Lは、2価の連結基を表し、-COO-、-OCO-、-CO-、-O-、-S-、-SO-、-SO-、-N(Ri)-(式中、Riは水素原子又はアルキル基を表す)、アルキレン基(好ましくは炭素数1~6のアルキレン基、より好ましくは炭素数1~4のアルキレン基、更に好ましくはメチレン基又はエチレン基、特に好ましくはメチレン基)、シクロアルキレン基(好ましくは炭素数3~10)、アルケニレン基(好ましくは炭素数2~6)又はこれらの複数を組み合わせた2価の連結基などが挙げられる。Lは、-COO-、-OCO-、-CO-、-SO-、-CON(Ri)-、-SON(Ri)-、-CON(Ri)-アルキレン基-、-N(Ri)CO-アルキレン基-、-COO-アルキレン基-又は-OCO-アルキレン基-であることが好ましく、-SO-、-COO-、-OCO-、-COO-アルキレン基-、-OCO-アルキレン基-であることがより好ましい。-CON(Ri)-アルキレン基-、-N(Ri)CO-アルキレン基-、-COO-アルキレン基-、-OCO-アルキレン基-におけるアルキレン基としては、炭素数1~20のアルキレン基が好ましく、炭素数1~10のアルキレン基がより好ましい。複数存在する場合のLは同一でも異なっていてもよい。
Riについてのアルキル基は、炭素数1~10のアルキル基が好ましく、炭素数1~4のアルキル基がより好ましく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基等が挙げられる。
【0137】
Aの環状構造を含む有機基としては、環状構造を有するものであれば特に限定されず、脂環基、アリール基、複素環基(芳香族性を有するものだけでなく、芳香族性を有さないものも含み、例えば、テトラヒドロピラン環、ラクトン環構造、サルトン環構造も含む。)等が挙げられる。
脂環基としては、単環でも多環でもよく、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基などの単環のシクロアルキル基、ノルボルニル基、ノルボルネン-イル基、トリシクロデカニル基(例えば、トリシクロ[5.2.1.0(2,6)]デカニル基)、テトラシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基、アダマンチル基などの多環のシクロアルキル基が好ましく、アダマンチル基が特に好ましい。また、ピペリジン基、デカヒドロキノリン基、デカヒドロイソキノリン基等の窒素原子含有脂環基も好ましい。中でも、ノルボルニル基、トリシクロデカニル基、テトラシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基、アダマンチル基、デカヒドロキノリン基、デカヒドロイソキノリン基といった炭素数7以上のかさ高い構造を有する脂環基が、PEB(露光後加熱)工程での膜中拡散性を抑制できる点から好ましい。中でも、アダマンチル基、デカヒドロイソキノリン基が特に好ましい。
アリール基としては、ベンゼン環、ナフタレン環、フェナンスレン環、アントラセン環が挙げられる。中でも193nmにおける光吸光度の観点から低吸光度のナフタレン環が好ましい。
複素環基としては、フラン環、チオフェン環、ベンゾフラン環、ベンゾチオフェン環、ジベンゾフラン環、ジベンゾチオフェン環、ピリジン環が挙げられる。中でもフラン環、チオフェン環、ピリジン環が好ましい。その他の好ましい複素環基として、下記に示す構造を挙げることができる(式中、Xはメチレン基又は酸素原子を表し、Rは1価の有機基を表す)。
【0138】
【化28】
【0139】
上記環状構造を含む有機基は、置換基を有していてもよく、置換基としては、アルキル基(直鎖、分岐、環状のいずれであっても良く、炭素数1~12が好ましい)、アリール基(炭素数6~14が好ましい)、ヒドロキシ基、アルコキシ基、エステル基、アミド基、ウレタン基、ウレイド基、チオエーテル基、スルホンアミド基、スルホン酸エステル基等が挙げられる。
なお、環状構造を含む有機基を構成する炭素(環形成に寄与する炭素)はカルボニル炭素であっても良い。
【0140】
xは1~8が好ましく、1~4がより好ましく、1が更に好ましい。yは0~4が好ましく、0又は1がより好ましく、1が更に好ましい。zは0~8が好ましく、0~4がより好ましく、1が更に好ましい。
【0141】
上記一般式(2)中のアニオンにおいて、A以外の部分構造の組み合わせとして、SO3--CF-CH-OCO-、SO3--CF-CHF-CH-OCO-、SO3--CF-COO-、SO3--CF-CF-CH-、SO3--CF-CH(CF)-OCO-が好ましいものとして挙げられる。
【0142】
他の態様において、Zの非求核性アニオンは、ジスルホニルイミド酸アニオンであってもよい。
ジスルホニルイミド酸アニオンとしては、ビス(アルキルスルホニル)イミドアニオンであることが好ましい。
ビス(アルキルスルホニル)イミドアニオンにおけるアルキル基は、炭素数1~5のアルキル基が好ましい。
ビス(アルキルスルホニル)イミドアニオンにおける2つのアルキル基が互いに連結してアルキレン基(好ましくは炭素数2~4)を成し、イミド基及び2つのスルホニル基とともに環を形成していてもよい。ビス(アルキルスルホニル)イミドアニオンが形成していてもよい上記の環構造としては、5~7員環であることが好ましく、6員環であることがより好ましい。
これらのアルキル基、及び2つのアルキル基が互いに連結して成すアルキレン基が有し得る置換基としてはハロゲン原子、ハロゲン原子で置換されたアルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルオキシスルホニル基、アリールオキシスルホニル基、シクロアルキルアリールオキシスルホニル基等を挙げることができ、フッ素原子又はフッ素原子で置換されたアルキル基が好ましい。
【0143】
の非求核性アニオンは、(アニオン中に含まれる全フッ素原子の質量の合計)/(アニオン中に含まれる全原子の質量の合計)により表されるフッ素含有率が0.25以下であることが好ましく、0.20以下であることがより好ましく、0.15以下であることが更に好ましい。
【0144】
201、R202及びR203により表される有機基としては、例えば、後述する化合物(ZI-1)、(ZI-2)、(ZI-3)及び(ZI-4)における対応する基を挙げることができる。
なお、一般式(ZI)で表される構造を複数有する化合物であってもよい。例えば、一般式(ZI)で表される化合物のR201~R203の少なくとも1つが、一般式(ZI)で表されるもうひとつの化合物のR201~R203の少なくとも1つと、単結合又は連結基を介して結合した構造を有する化合物であってもよい。
【0145】
更に好ましい(ZI)成分として、以下に説明する化合物(ZI-1)、(ZI-2)、(ZI-3)及び(ZI-4)を挙げることができる。
【0146】
先ず、化合物(ZI-1)について説明する。
化合物(ZI-1)は、上記一般式(ZI)のR201~R203の少なくとも1つがアリール基である、アリールスルホニウム化合物、即ち、アリールスルホニウムをカチオンとする化合物である。
アリールスルホニウム化合物は、R201~R203の全てがアリール基でもよいし、R201~R203の一部がアリール基で、残りがアルキル基又はシクロアルキル基でもよい。
アリールスルホニウム化合物としては、例えば、トリアリールスルホニウム化合物、ジアリールアルキルスルホニウム化合物、アリールジアルキルスルホニウム化合物、ジアリールシクロアルキルスルホニウム化合物、アリールジシクロアルキルスルホニウム化合物を挙げることができる。
【0147】
アリールスルホニウム化合物のアリール基としては、フェニル基、ナフチル基が好ましく、フェニル基がより好ましい。アリール基は、酸素原子、窒素原子、硫黄原子等を有する複素環構造を有するアリール基であってもよい。複素環構造としては、ピロール残基、フラン残基、チオフェン残基、インドール残基、ベンゾフラン残基、ベンゾチオフェン残基等が挙げられる。アリールスルホニウム化合物が2つ以上のアリール基を有する場合に、2つ以上あるアリール基は同一であっても異なっていてもよい。
アリールスルホニウム化合物が必要に応じて有しているアルキル基又はシクロアルキル基は、炭素数1~15の直鎖又は分岐のアルキル基及び炭素数3~15のシクロアルキル基が好ましく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロヘキシル基等を挙げることができる。
【0148】
201~R203のアリール基、アルキル基、シクロアルキル基は、アルキル基(例えば炭素数1~15)、シクロアルキル基(例えば炭素数3~15)、アリール基(例えば炭素数6~14)、アルコキシ基(例えば炭素数1~15)、ハロゲン原子、水酸基、フェニルチオ基を置換基として有してもよい。
【0149】
次に、化合物(ZI-2)について説明する。
化合物(ZI-2)は、式(ZI)におけるR201~R203が、各々独立に、芳香環を有さない有機基を表す化合物である。ここで芳香環とは、ヘテロ原子を含有する芳香族環も包含する。
201~R203としての芳香環を含有しない有機基は、一般的に炭素数1~30であり、好ましくは炭素数1~20である。
201~R203は、各々独立に、アルキル基、シクロアルキル基、アリル基、ビニル基が好ましく、直鎖又は分岐の2-オキソアルキル基、2-オキソシクロアルキル基、アルコキシカルボニルメチル基がより好ましく、直鎖又は分岐の2-オキソアルキル基が更に好ましい。
【0150】
201~R203のアルキル基及びシクロアルキル基としては、好ましくは、炭素数1~10の直鎖又は分岐のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基)、炭素数3~10のシクロアルキル基(シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ノルボルニル基)を挙げることができる。
201~R203は、ハロゲン原子、アルコキシ基(例えば炭素数1~5)、水酸基、シアノ基、ニトロ基によって更に置換されていてもよい。
【0151】
次に、化合物(ZI-3)について説明する。
化合物(ZI-3)とは、以下の一般式(ZI-3)で表される化合物であり、フェナシルスルフォニウム塩構造を有する化合物である。
【0152】
【化29】
【0153】
一般式(ZI-3)中、
1c~R5cは、各々独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、アルキルカルボニルオキシ基、シクロアルキルカルボニルオキシ基、ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、アルキルチオ基又はアリールチオ基を表す。
6c及びR7cは、各々独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、ハロゲン原子、シアノ基又はアリール基を表す。
及びRは、各々独立に、アルキル基、シクロアルキル基、2-オキソアルキル基、2-オキソシクロアルキル基、アルコキシカルボニルアルキル基、アリル基又はビニル基を表す。
【0154】
1c~R5c中のいずれか2つ以上、R5cとR6c、R6cとR7c、R5cとR、及びRとRは、各々結合して環構造を形成してもよく、この環構造は、酸素原子、硫黄原子、ケトン基、エステル結合、アミド結合を含んでいてもよい。
上記環構造としては、芳香族若しくは非芳香族の炭化水素環、芳香族若しくは非芳香族の複素環、又は、これらの環が2つ以上組み合わされてなる多環縮合環を挙げることができる。環構造としては、3~10員環を挙げることができ、4~8員環であることが好ましく、5又は6員環であることがより好ましい。
【0155】
1c~R5c中のいずれか2つ以上、R6cとR7c、及びRとRが結合して形成する基としては、ブチレン基、ペンチレン基等を挙げることができる。
5cとR6c、及び、R5cとRが結合して形成する基としては、単結合又はアルキレン基であることが好ましく、アルキレン基としては、メチレン基、エチレン基等を挙げることができる。
Zcは、非求核性アニオンを表し、一般式(ZI)に於けるZと同様の非求核性アニオンを挙げることができる。
【0156】
1c~R5cとしてのアルキル基は、直鎖又は分岐のいずれであってもよく、例えば炭素数1~20のアルキル基、好ましくは炭素数1~12の直鎖又は分岐アルキル基を挙げることができる。
1c~R5cとしてのシクロアルキル基は、例えば炭素数3~10のシクロアルキル基を挙げることができる。
1c~R5cとしてのアリール基は、好ましくは炭素数5~15のアリール基である。
1c~R5cとしてのアルコキシ基は、直鎖、分岐、環状のいずれであってもよく、例えば炭素数1~10のアルコキシ基、好ましくは炭素数1~5の直鎖又は分岐アルコキシ基、及び、炭素数3~10の環状アルコキシ基を挙げることができる。
1c~R5cとしてのアルコキシカルボニル基におけるアルコキシ基の具体例は、上記R1c~R5cとしてのアルコキシ基の具体例と同様である。
1c~R5cとしてのアルキルカルボニルオキシ基及びアルキルチオ基におけるアルキル基の具体例は、上記R1c~R5cとしてのアルキル基の具体例と同様である。
1c~R5cとしてのシクロアルキルカルボニルオキシ基におけるシクロアルキル基の具体例は、上記R1c~R5cとしてのシクロアルキル基の具体例と同様である。
1c~R5cとしてのアリールオキシ基及びアリールチオ基におけるアリール基の具体例は、上記R1c~R5cとしてのアリール基の具体例と同様である。
【0157】
本発明における化合物(ZI-2)又は(ZI-3)におけるカチオンとしては、米国特許出願公開第2012/0076996号明細書の段落<0036>以降に記載のカチオンを挙げることができる。
【0158】
次に、化合物(ZI-4)について説明する。
化合物(ZI-4)は、下記一般式(ZI-4)で表される。
【0159】
【化30】
【0160】
一般式(ZI-4)中、
13は水素原子、フッ素原子、水酸基、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、又はシクロアルキル基を有する基を表す。これらの基は置換基を有してもよい。
14は、各々独立して、水酸基、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アルキルカルボニル基、アルキルスルホニル基、シクロアルキルスルホニル基、又はシクロアルキル基を有する基を表す。これらの基は置換基を有してもよい。
15は各々独立して、アルキル基、シクロアルキル基又はナフチル基を表す。これらの基は置換基を有してもよい。2個のR15が互いに結合して環を形成してもよい。2個のR15が互いに結合して環を形成するとき、環骨格内に、酸素原子、窒素原子などのヘテロ原子を含んでもよい。一態様において、2個のR15がアルキレン基であり、互いに結合して環構造を形成することが好ましい。
lは0~2の整数を表す。
rは0~8の整数を表す。
は、非求核性アニオンを表し、一般式(ZI)に於けるZと同様の非求核性アニオンを挙げることができる。
【0161】
一般式(ZI-4)において、R13、R14及びR15のアルキル基としては、直鎖状若しくは分岐状であり、炭素原子数1~10のものが好ましく、メチル基、エチル基、n-ブチル基、t-ブチル基等が好ましい。
本発明における一般式(ZI-4)で表される化合物のカチオンとしては、特開2010-256842号公報の段落<0121>、<0123>、<0124>、及び、特開2011-76056号公報の段落<0127>、<0129>、<0130>等に記載のカチオンを挙げることができる。
【0162】
次に、一般式(ZII)、(ZIII)について説明する。
一般式(ZII)、(ZIII)中、R204~R207は、各々独立に、アリール基、アルキル基又はシクロアルキル基を表す。
204~R207のアリール基としてはフェニル基、ナフチル基が好ましく、フェニル基がより好ましい。R204~R207のアリール基は、酸素原子、窒素原子、硫黄原子等を有する複素環構造を有するアリール基であってもよい。複素環構造を有するアリール基の骨格としては、例えば、ピロール、フラン、チオフェン、インドール、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン等を挙げることができる。
204~R207におけるアルキル基及びシクロアルキル基としては、好ましくは、炭素数1~10の直鎖又は分岐のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基)、炭素数3~10のシクロアルキル基(シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ノルボルニル基)を挙げることができる。
【0163】
204~R207のアリール基、アルキル基、シクロアルキル基は、置換基を有していてもよい。R204~R207のアリール基、アルキル基、シクロアルキル基が有していてもよい置換基としては、例えば、アルキル基(例えば炭素数1~15)、シクロアルキル基(例えば炭素数3~15)、アリール基(例えば炭素数6~15)、アルコキシ基(例えば炭素数1~15)、ハロゲン原子、水酸基、フェニルチオ基等を挙げることができる。
【0164】
は、非求核性アニオンを表し、一般式(ZI)に於けるZの非求核性アニオンと同様のものを挙げることができる。
酸発生剤として、更に、下記一般式(ZIV)、(ZV)、(ZVI)で表される化合物も挙げられる。
【0165】
【化31】
【0166】
一般式(ZIV)~(ZVI)中、
Ar及びArは、各々独立に、アリール基を表す。
208、R209及びR210は、各々独立に、アルキル基、シクロアルキル基又はアリール基を表す。
Aは、アルキレン基、アルケニレン基又はアリーレン基を表す。
【0167】
Ar、Ar、R208、R209及びR210のアリール基の具体例としては、上記化合物(ZI-1)におけるR201、R202及びR203としてのアリール基の具体例と同様のものを挙げることができる。
208、R209及びR210のアルキル基及びシクロアルキル基の具体例としては、各々、上記化合物(ZI-2)におけるR201、R202及びR203としてのアルキル基及びシクロアルキル基の具体例と同様のものを挙げることができる。
【0168】
Aのアルキレン基としては、炭素数1~12のアルキレン(例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、イソプロピレン基、ブチレン基、イソブチレン基など)を、Aのアルケニレン基としては、炭素数2~12のアルケニレン基(例えば、エテニレン基、プロペニレン基、ブテニレン基など)を、Aのアリーレン基としては、炭素数6~10のアリーレン基(例えば、フェニレン基、トリレン基、ナフチレン基など)を、各々挙げることができる。
【0169】
また、酸発生剤の他の態様としては、活性光線又は放射線の照射により、下記一般式(III)又は(IV)で表される酸を発生する化合物が挙げられる。
【0170】
【化32】
【0171】
一般式(III)及び(IV)に於いて、
Rb~Rbは、各々独立に、アルキル基、シクロアルキル基又はアリール基を表す。RbとRbが結合して環構造を形成してもよい。
【0172】
一般式(III)及び(IV)に於いて、Rb~Rbは、より好ましくは、1位がフッ素原子又はフロロアルキル基で置換されたアルキル基、フッ素原子又はフロロアルキル基で置換されたアリール基(好ましくはフェニル基)である。フッ素原子又はフロロアルキル基を有することにより、光照射によって発生した酸の酸性度が上がり、感度が向上する。Rb~Rbが、炭素原子を5個以上有する場合、少なくとも1つの炭素原子は全ての水素原子がフッ素原子で置換されていないことが好ましく、水素原子の数がフッ素原子より多いことがより好ましい。炭素数5以上のパーフロロアルキル基を有さないことにより生態毒性を軽減することができる。
Rb~Rbは、好ましくは、炭素数1~4のパーフロロアルキル基であり、より好ましくは、炭素数1~3のパーフロロアルキル基である。
RbとRbが結合して形成される基としては、アルキレン基、アリーレン基が挙げられる。
RbとRbが結合して形成される基として、好ましくは、炭素数2~4のパーフロロアルキレン基であり、より好ましくは、パーフロロプロピレン基である。RbとRbが結合して環構造を形成することで環構造を形成しないものと比べて酸性度が向上し、組成物の感度が向上する。
【0173】
Rb~Rbの特に好ましい様態として、下記一般式で表される基を挙げることができる。
【0174】
【化33】
【0175】
上記一般式に於いて、
Rcは、パーフロロアルキレン基を表し、好ましくは、炭素数2~4のパーフロロアルキレン基である。
Axは、単結合又は2価の連結基(好ましくは、-O-、-CO-、-S-、-SO-、-SON(Rd)-)を表す。Rdは、水素原子又はアルキル基を表し、Rcと結合して環構造を形成してもよい。
Rcは、水素原子、フッ素原子、アルキル基、シクロアルキル基又はアリール基を表す。Rcのアルキル基、シクロアルキル基、アリール基は、置換基としてフッ素原子を有さないことが好ましい。
【0176】
一般式(III)で表される酸の具体例を以下に示すが、本発明は、これに限定されるものではない。
【0177】
【化34】
【0178】
一般式(IV)で表される酸の具体例を以下に示すが、本発明は、これに限定されるものではない。
【0179】
【化35】
【0180】
活性光線又は放射線の照射により、一般式(III)又は(IV)で表される酸を発生する化合物としては、たとえば、ジアゾニウム塩、ホスホニウム塩、スルホニウム塩、ヨードニウム塩、イミドスルホネート、オキシムスルホネート、o-ニトロベンジルスルホネートを挙げることができる。
【0181】
活性光線又は放射線の照射により、一般式(III)又は(IV)で表される酸を発生する基、あるいは化合物をポリマーの主鎖又は側鎖に導入した化合物、たとえば、米国特許第3,849,137号、独国特許第3914407号、特開昭63-26653号、特開昭55-164824号、特開昭62-69263号、特開昭63-146038号、特開昭63-163452号、特開昭62-153853号、特開昭63-146029号等に記載の化合物を用いることができる。
【0182】
更に米国特許第3,779,778号、欧州特許第126,712号等に記載の光により酸を発生する化合物も使用することができる。
【0183】
(A)成分の中で、特に好ましいものの例を以下に挙げるが、本発明は、これに限定されるものではない。
【0184】
【化36】
【0185】
酸発生剤の中で、特に好ましい例としては、US2012/0207978A1 <0143>に例示された化合物を挙げることができる。
酸発生剤は、公知の方法で合成することができ、例えば、特開2007-161707号公報に記載の方法に準じて合成することができる。
酸発生剤は、1種類単独又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0186】
酸発生剤の組成物中の含有量(複数種存在する場合はその合計)は、組成物の全固形分を基準として、0.1~30質量%が好ましく、0.5~25質量%がより好ましく、0.5~20質量%が更に好ましく、0.5~15質量%が特に好ましい。
酸発生剤が上記一般式(ZI-3)又は(ZI-4)により表される場合(複数種存在する場合はその合計)には、その含有量は、組成物の全固形分を基準として、0.1~35質量%が好ましく、0.5~30質量%がより好ましく、0.5~25質量%が更に好ましい。
酸発生剤の具体例を以下に示すが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0187】
【化37】
【0188】
【化38】
【0189】
<酸拡散制御剤(D)>
本発明の組成物は、酸拡散制御剤(D)を含有することが好ましい。酸拡散制御剤(D)は、露光時に酸発生剤等から発生する酸をトラップし、余分な発生酸による、未露光部における酸分解性樹脂の反応を抑制するクエンチャーとして作用するものである。酸拡散制御剤(D)としては、塩基性化合物、窒素原子を有し酸の作用により脱離する基を有する低分子化合物、活性光線又は放射線の照射により塩基性が低下又は消失する塩基性化合物、又は、酸発生剤に対して相対的に弱酸となるオニウム塩を使用することができる。
【0190】
塩基性化合物としては、好ましくは、下記式(A)~(E)で示される構造を有する化合物を挙げることができる。
【0191】
【化39】
【0192】
一般式(A)及び(E)中、
200、R201及びR202は、同一でも異なってもよく、水素原子、アルキル基(好ましくは炭素数1~20)、シクロアルキル基(好ましくは炭素数3~20)又はアリール基(炭素数6~20)を表し、ここで、R201とR202は、互いに結合して環を形成してもよい。
203、R204、R205及びR206は、同一でも異なってもよく、炭素数1~20個のアルキル基を表す。
【0193】
上記アルキル基について、置換基を有するアルキル基としては、炭素数1~20のアミノアルキル基、炭素数1~20のヒドロキシアルキル基、又は炭素数1~20のシアノアルキル基が好ましい。
これら一般式(A)及び(E)中のアルキル基は、無置換であることがより好ましい。
【0194】
好ましい化合物として、グアニジン、アミノピロリジン、ピラゾール、ピラゾリン、ピペラジン、アミノモルホリン、アミノアルキルモルフォリン、ピペリジン等を挙げることができ、更に好ましい化合物として、イミダゾール構造、ジアザビシクロ構造、オニウムヒドロキシド構造、オニウムカルボキシレート構造、トリアルキルアミン構造、アニリン構造又はピリジン構造を有する化合物、水酸基及び/又はエーテル結合を有するアルキルアミン誘導体、水酸基及び/又はエーテル結合を有するアニリン誘導体等を挙げることができる。
好ましい化合物の具体例としては、US2012/0219913A1 <0379>に例示された化合物を挙げることができる。
好ましい塩基性化合物として、更に、フェノキシ基を有するアミン化合物、フェノキシ基を有するアンモニウム塩化合物、スルホン酸エステル基を有するアミン化合物及びスルホン酸エステル基を有するアンモニウム塩化合物を挙げることができる。
【0195】
アミン化合物は、1級、2級、3級のアミン化合物を使用することができ、少なくとも1つのアルキル基が窒素原子に結合しているアミン化合物が好ましい。アミン化合物は、3級アミン化合物であることがより好ましい。アミン化合物は、少なくとも1つのアルキル基(好ましくは炭素数1~20)が窒素原子に結合していれば、アルキル基の他に、シクロアルキル基(好ましくは炭素数3~20)又はアリール基(好ましくは炭素数6~12)が窒素原子に結合していてもよい。アミン化合物は、アルキル鎖中に、酸素原子を有し、オキシアルキレン基が形成されていることが好ましい。分子内のオキシアルキレン基の数は、1つ以上が好ましく、3~9個がより好ましく、4~6個が更に好ましい。オキシアルキレン基は、オキシエチレン基(-CHCHO-)又はオキシプロピレン基(-CH(CH)CHO-若しくは-CHCHCHO-)が好ましく、オキシエチレン基がより好ましい。
【0196】
アンモニウム塩化合物は、1級、2級、3級又は4級のアンモニウム塩化合物を使用することができ、少なくとも1つのアルキル基が窒素原子に結合しているアンモニウム塩化合物が好ましい。アンモニウム塩化合物は、少なくとも1つのアルキル基(好ましくは炭素数1~20)が窒素原子に結合していれば、アルキル基の他に、シクロアルキル基(好ましくは炭素数3~20)又はアリール基(好ましくは炭素数6~12)が窒素原子に結合していてもよい。アンモニウム塩化合物は、アルキル鎖中に、酸素原子を有し、オキシアルキレン基が形成されていることが好ましい。分子内のオキシアルキレン基の数は、1つ以上が好ましく、3~9個がより好ましく、4~6個が更に好ましい。オキシアルキレン基は、オキシエチレン基(-CHCHO-)又はオキシプロピレン基(-CH(CH)CHO-若しくは-CHCHCHO-)が好ましく、オキシエチレン基がより好ましい。
【0197】
アンモニウム塩化合物のアニオンとしては、ハロゲン原子、スルホネート、ボレート、フォスフェート等が挙げられるが、中でもハロゲン原子、スルホネートが好ましい。
また、下記化合物も塩基性化合物として好ましい。
【0198】
【化40】
【0199】
塩基性化合物としては、上述した化合物のほかに、特開2011-22560号公報〔0180〕~〔0225〕、特開2012-137735号公報〔0218〕~〔0219〕、WO2011/158687A1〔0416〕~〔0438〕に記載されている化合物等を使用することもできる。
これらの塩基性化合物は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0200】
本発明の組成物は、塩基性化合物を含有してもしなくてもよいが、含有する場合、塩基性化合物の含有量は、組成物の固形分を基準として、通常0.001~10質量%であり、好ましくは0.01~5質量%である。
酸発生剤(複数種類有する場合はその合計)と塩基性化合物の組成物中の使用割合は、酸発生剤/塩基性化合物(モル比)=2.5~300であることが好ましい。即ち、感度、解像度の点からモル比は2.5以上が好ましく、露光後加熱処理までの経時によるレジストパターンの太りによる解像度の低下抑制の点から300以下が好ましい。酸発生剤/塩基性化合物(モル比)は、より好ましくは5.0~200であり、更に好ましくは7.0~150である。
【0201】
窒素原子を有し酸の作用により脱離する基を有する低分子化合物(以下、「化合物(D-1)」ともいう。)は、酸の作用により脱離する基を窒素原子上に有するアミン誘導体であることが好ましい。
酸の作用により脱離する基として、アセタール基、カルボネート基、カルバメート基、3級エステル基、3級水酸基、ヘミアミナールエーテル基が好ましく、カルバメート基、ヘミアミナールエーテル基であることが特に好ましい。
化合物(D-1)の分子量は、100~1000が好ましく、100~700がより好ましく、100~500が特に好ましい。
化合物(D-1)は、窒素原子上に保護基を有するカルバメート基を有してもよい。カルバメート基を構成する保護基としては、下記一般式(d-1)で表すことができる。
【0202】
【化41】
【0203】
一般式(d-1)において、
Rbは、各々独立に、水素原子、アルキル基(好ましくは炭素数1~10)、シクロアルキル基(好ましくは炭素数3~30)、アリール基(好ましくは炭素数3~30)、アラルキル基(好ましくは炭素数1~10)、又はアルコキシアルキル基(好ましくは炭素数1~10)を表す。Rbは相互に連結して環を形成していてもよい。
Rbが示すアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基は、ヒドロキシル基、シアノ基、アミノ基、ピロリジノ基、ピペリジノ基、モルホリノ基、オキソ基等の官能基、アルコキシ基、ハロゲン原子で置換されていてもよい。Rbが示すアルコキシアルキル基についても同様である。
【0204】
Rbとして好ましくは、直鎖状、又は分岐状のアルキル基、シクロアルキル基、アリール基である。より好ましくは、直鎖状、又は分岐状のアルキル基、シクロアルキル基である。
2つのRbが相互に連結して形成する環としては、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基、複素環式炭化水素基若しくはその誘導体等が挙げられる。
一般式(d-1)で表される基の具体的な構造としては、US2012/0135348A1 <0466>に開示された構造を挙げることができるが、これに限定されるものではない。
【0205】
化合物(D-1)は、下記一般式(6)で表される構造を有するものであることが特に好ましい。
【0206】
【化42】
【0207】
一般式(6)において、Raは、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基又はアラルキル基を表す。lが2のとき、2つのRaは同じでも異なっていてもよく、2つのRaは相互に連結して式中の窒素原子と共に複素環を形成していてもよい。上記複素環には式中の窒素原子以外のヘテロ原子を含んでいてもよい。
Rbは、上記一般式(d-1)におけるRbと同義であり、好ましい例も同様である。
lは0~2の整数を表し、mは1~3の整数を表し、l+m=3を満たす。
一般式(6)において、Raとしてのアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基は、Rbとしてのアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基が置換されていてもよい基として前述した基と同様な基で置換されていてもよい。
【0208】
上記Raのアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、及びアラルキル基(これらのアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、及びアラルキル基は、上記基で置換されていてもよい)の具体例としては、Rbについて前述した具体例と同様な基が挙げられる。
特に好ましい化合物(D-1)の具体例としては、US2012/0135348A1 <0475>に開示された化合物を挙げることができるが、これに限定されるものではない。
【0209】
一般式(6)で表される化合物は、特開2007-298569号公報、特開2009-199021号公報などに基づき合成することができる。
化合物(D-1)は、1種単独でも又は2種以上を混合しても使用することができる。
本発明の組成物における化合物(D-1)の含有量は、組成物の全固形分を基準として、0.001~20質量%が好ましく、0.001~10質量%がより好ましく、0.01~5質量%が更に好ましい。
【0210】
活性光線又は放射線の照射により塩基性が低下又は消失する塩基性化合物(以下、「化合物(PA)」ともいう。)は、プロトンアクセプター性官能基を有し、且つ、活性光線又は放射線の照射により分解して、プロトンアクセプター性が低下、消失、又はプロトンアクセプター性から酸性に変化する化合物である。
【0211】
「プロトンアクセプター性官能基」とは、プロトンと静電的に相互作用し得る基或いは電子を有する官能基であって、例えば、環状ポリエーテル等のマクロサイクリック構造を有する官能基や、π共役に寄与しない非共有電子対をもった窒素原子を有する官能基を意味する。「π共役に寄与しない非共有電子対を有する窒素原子」とは、例えば、下記式に示す部分構造を有する窒素原子である。
【0212】
【化43】
【0213】
プロトンアクセプター性官能基の好ましい部分構造として、例えば、クラウンエーテル、アザクラウンエーテル、1~3級アミン、ピリジン、イミダゾール、ピラジン構造などを挙げることができる。
【0214】
化合物(PA)は、活性光線又は放射線の照射により分解してプロトンアクセプター性が低下、消失、又はプロトンアクセプター性から酸性に変化した化合物を発生する。ここで「プロトンアクセプター性の低下、消失、又はプロトンアクセプター性から酸性への変化」とは、プロトンアクセプター性官能基にプロトンが付加することに起因するプロトンアクセプター性の変化であり、具体的には、プロトンアクセプター性官能基を有する化合物(PA)とプロトンからプロトン付加体が生成する時、その化学平衡に於ける平衡定数が減少することを意味する。
プロトンアクセプター性は、pH測定を行うことによって確認することができる。
【0215】
活性光線又は放射線の照射により化合物(PA)が分解して発生する化合物の酸解離定数pKaは、pKa<-1を満たすことが好ましく、-13<pKa<-1を満たすことがより好ましく、-13<pKa<-3を満たすことが更に好ましい。
【0216】
本明細書に於いて、酸解離定数pKaとは、水溶液中での酸解離定数pKaのことを表し、例えば、化学便覧(II)(改訂4版、1993年、日本化学会編、丸善株式会社)に記載のものであり、この値が低いほど酸強度が大きいことを示している。水溶液中での酸解離定数pKaは、具体的には、無限希釈水溶液を用い、25℃での酸解離定数を測定することにより実測することができ、また、下記ソフトウェアパッケージ1を用いて、ハメットの置換基定数及び公知文献値のデータベースに基づいた値を、計算により求めることもできる。本明細書中に記載したpKaの値は、全て、このソフトウェアパッケージを用いて計算により求めた値を示している。
【0217】
ソフトウェアパッケージ1: Advanced Chemistry Development (ACD/Labs) Software V8.14 for Solaris (1994-2007 ACD/Labs)。
【0218】
化合物(PA)は、活性光線又は放射線の照射により分解して発生する上記プロトン付加体として、例えば、下記一般式(PA-1)で表される化合物を発生する。一般式(PA-1)で表される化合物は、プロトンアクセプター性官能基とともに酸性基を有することにより、化合物(PA)に比べてプロトンアクセプター性が低下、消失、又はプロトンアクセプター性から酸性に変化した化合物である。
【0219】
【化44】
【0220】
一般式(PA-1)中、
Qは、-SOH、-COH、又は-WNHWを表す。ここで、Rは、アルキル基(好ましくは炭素数1~20)、シクロアルキル基(好ましくは炭素数3~20)又はアリール基(好ましくは炭素数6~30)を表し、W及びWは、各々独立に、-SO-又は-CO-を表す。
Aは、単結合又は2価の連結基を表す。
Xは、-SO-又は-CO-を表す。
nは、0又は1を表す。
Bは、単結合、酸素原子、又は-N(R)R-を表す。ここで、Rは水素原子又は1価の有機基を表し、Rは単結合又は2価の有機基を表す。Rは、Rと結合して環を形成していてもよく、Rと結合して環を形成していてもよい。
Rは、プロトンアクセプター性官能基を有する1価の有機基を表す。
【0221】
一般式(PA-1)について更に詳細に説明する。
Aにおける2価の連結基としては、好ましくは炭素数2~12の2価の連結基であり、例えば、アルキレン基、フェニレン基等が挙げられる。より好ましくは少なくとも1つのフッ素原子を有するアルキレン基であり、好ましい炭素数は2~6、より好ましくは炭素数2~4である。アルキレン鎖中に酸素原子、硫黄原子などの連結基を有していてもよい。アルキレン基は、特に水素原子数の30~100%がフッ素原子で置換されたアルキレン基が好ましく、Q部位と結合した炭素原子がフッ素原子を有することがより好ましい。更にはパーフルオロアルキレン基が好ましく、パーフロロエチレン基、パーフロロプロピレン基、パーフロロブチレン基がより好ましい。
【0222】
における1価の有機基としては、好ましくは炭素数1~30の有機基であり、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルケニル基などを挙げることができる。これら基は更に置換基を有していてもよい。
におけるアルキル基としては、置換基を有していてもよく、好ましくは炭素数1~20の直鎖及び分岐アルキル基であり、アルキル鎖中に酸素原子、硫黄原子、窒素原子を有していてもよい。
におけるシクロアルキル基としては、置換基を有していてもよく、好ましくは炭素数3~20の単環シクロアルキル基又は多環シクロアルキル基であり、環内に酸素原子、硫黄原子、窒素原子を有していてもよい。
におけるアリール基としては、置換基を有してもよく、好ましくは炭素数6~14のものが挙げられ、例えば、フェニル基及びナフチル基等が挙げられる。
におけるアラルキル基としては、置換基を有してもよく、好ましくは炭素数7~20のものが挙げられ、例えば、ベンジル基及びフェネチル基等が挙げられる。
におけるアルケニル基は、置換基を有してもよく、直鎖状であってもよく、分岐鎖状であってもよい。このアルケニル基の炭素数は、3~20であることが好ましい。このようなアルケニル基としては、例えば、ビニル基、アリル基及びスチリル基等が挙げられる。
【0223】
が更に置換基を有する場合の置換基としては、例えばハロゲン原子、直鎖、分岐または環状のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、シアノ基、カルボキシル基、水酸基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、アミノ基、ニトロ基、ヒドラジノ基及び、ヘテロ環基などが挙げられる。
【0224】
における2価の有機基としては、好ましくはアルキレン基を挙げることができる。
とRが互いに結合して形成してもよい環構造としては、窒素原子を含む5~10員の環、特に好ましくは6員の環が挙げられる。
【0225】
Rにおけるプロトンアクセプター性官能基とは、上記の通りであり、アザクラウンエーテル、1~3級アミン、ピリジンやイミダゾールといった窒素原子を含む複素環式芳香族構造などを有する基が挙げられる。
このような構造を有する有機基として、好ましい炭素数は4~30の有機基であり、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルケニル基などを挙げることができる。
【0226】
Rにおけるプロトンアクセプター性官能基又はアンモニウム基を含むアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルケニル基に於けるアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルケニル基は、上記Rとして挙げたアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルケニル基と同様のものである。
【0227】
Bが-N(R)R-の時、RとRが互いに結合して環を形成していることが好ましい。環構造を形成することによって、安定性が向上し、これを用いた組成物の保存安定性が向上する。環を形成する炭素数は4~20が好ましく、単環式でも多環式でもよく、環内に酸素原子、硫黄原子、窒素原子を含んでいてもよい。
単環式構造としては、窒素原子を含む4員環、5員環、6員環、7員環、8員環等を挙げることができる。多環式構造としては、2又は3以上の単環式構造の組み合わせから成る構造を挙げることができる。
【0228】
Qにより表される-WNHW2におけるRとして、好ましくは炭素数1~6のフッ素原子を有してもよいアルキル基であり、より好ましくは炭素数1~6のパーフルオロアルキル基である。また、W及びW2は、少なくとも一方が-SO-であることが好ましく、W及びW2の両方が-SO-であることがより好ましい。
Qは、酸基の親水性の観点から、-SOH又は-COHであることが特に好ましい。
一般式(PA-1)で表される化合物の内、Q部位がスルホン酸である化合物は、一般的なスルホンアミド化反応を用いることで合成できる。例えば、ビススルホニルハライド化合物の一方のスルホニルハライド部を選択的にアミン化合物と反応させて、スルホンアミド結合を形成した後、もう一方のスルホニルハライド部分を加水分解する方法、あるいは環状スルホン酸無水物をアミン化合物と反応させ開環させる方法により得ることができる。
【0229】
化合物(PA)は、イオン性化合物であることが好ましい。プロトンアクセプター性官能基はアニオン部、カチオン部のいずれに含まれていてもよいが、アニオン部位に含まれていることが好ましい。
化合物(PA)として、好ましくは下記一般式(4)~(6)で表される化合物が挙げられる。
【0230】
【化45】
【0231】
一般式(4)~(6)において、A、X、n、B、R、R、W及びWは、一般式(PA-1)における各々と同義である。
はカウンターカチオンを示す。
カウンターカチオンとしては、オニウムカチオンが好ましい。より詳しくは、酸発生剤の一般式(ZI)におけるS(R201)(R202)(R203)として説明されているスルホニウムカチオン、一般式(ZII)におけるI(R204)(R205)として説明されているヨードニウムカチオンが好ましい例として挙げられる。
化合物(PA)の具体例としては、US2011/0269072A1 <0280>に例示された化合物を挙げることが出来る。
【0232】
一般式(PA-1)で表される化合物を発生する化合物以外の化合物(PA)も適宜選択可能である。例えば、イオン性化合物であって、カチオン部にプロトンアクセプター部位を有する化合物を用いてもよい。より具体的には、下記一般式(7)で表される化合物などが挙げられる。
【0233】
【化46】
【0234】
式中、Aは硫黄原子又はヨウ素原子を表す。
mは1又は2を表し、nは1又は2を表す。但し、Aが硫黄原子の時、m+n=3、Aがヨウ素原子の時、m+n=2である。
Rは、アリール基を表す。
は、プロトンアクセプター性官能基で置換されたアリール基を表す。Xは、対アニオンを表す。
の具体例としては、前述した酸発生剤のアニオンと同様のものを挙げることができる。
R及びRのアリール基の具体例としては、フェニル基が好ましく挙げられる。
【0235】
が有するプロトンアクセプター性官能基の具体例としては、前述の式(PA-1)で説明したプロトンアクセプター性官能基と同様である。
カチオン部にプロトンアクセプター部位を有するイオン性化合物の具体例としては、US2011/0269072A1 <0291>に例示された化合物を挙げることが出来る。
なお、このような化合物は、例えば、特開2007-230913号公報及び特開2009-122623号公報などに記載の方法を参考にして合成できる。
【0236】
化合物(PA)は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
化合物(PA)の含有量は、組成物の全固形分を基準として、0.1~10質量%が好ましく、1~8質量%がより好ましい。
【0237】
本発明の組成物では、酸発生剤に対して相対的に弱酸となるオニウム塩を酸拡散制御剤(D)として使用することができる。
酸発生剤と、酸発生剤から生じた酸に対して相対的に弱酸(好ましくはpKaが-1超の弱酸)である酸を発生するオニウム塩を混合して用いた場合、活性光線又は放射線の照射により酸発生剤から生じた酸が未反応の弱酸アニオンを有するオニウム塩と衝突すると、塩交換により弱酸を放出して強酸アニオンを有するオニウム塩を生じる。この過程で強酸がより触媒能の低い弱酸に交換されるため、見かけ上、酸が失活して酸拡散の制御を行うことができる。
【0238】
酸発生剤に対して相対的に弱酸となるオニウム塩としては、下記一般式(d1-1)~(d1-3)で表される化合物であることが好ましい。
【0239】
【化47】
【0240】
式中、R51は置換基を有していてもよい炭化水素基であり、Z2cは置換基を有していてもよい炭素数1~30の炭化水素基(ただし、Sに隣接する炭素にはフッ素原子は置換されていないものとする)であり、R52は有機基であり、Yは直鎖状、分岐鎖状若しくは環状のアルキレン基またはアリーレン基であり、Rfはフッ素原子を含む炭化水素基であり、Mは各々独立に、スルホニウムカチオン又はヨードニウムカチオンである。
【0241】
として表されるスルホニウムカチオン又はヨードニウムカチオンの好ましい例としては、酸発生剤の一般式(ZI)で例示したスルホニウムカチオン及び一般式(ZII)で例示したヨードニウムカチオンを挙げることができる。
【0242】
一般式(d1-1)で表される化合物のアニオン部の好ましい例としては、特開2012-242799号公報の段落〔0198〕に例示された構造を挙げることが出来る。
一般式(d1-2)で表される化合物のアニオン部の好ましい例としては、特開2012-242799号公報の段落〔0201〕に例示された構造を挙げることが出来る。
一般式(d1-3)で表される化合物のアニオン部の好ましい例としては、特開2012-242799号公報の段落〔0209〕及び〔0210〕に例示された構造を挙げることが出来る。
【0243】
酸発生剤に対して相対的に弱酸となるオニウム塩は、カチオン部位とアニオン部位を同一分子内に有し、かつ、上記カチオン部位とアニオン部位が共有結合により連結している化合物(以下、「化合物(D-2)」ともいう。)であってもよい。
化合物(D-2)としては、下記一般式(C-1)~(C-3)のいずれかで表される化合物であることが好ましい。
【0244】
【化48】
【0245】
一般式(C-1)~(C-3)中、
、R、Rは、炭素数1以上の置換基を表す。
は、カチオン部位とアニオン部位を連結する2価の連結基又は単結合を表す。
-Xは、-COO、-SO 、-SO 、-N-Rから選択されるアニオン部位を表す。Rは、隣接するN原子との連結部位に、カルボニル基:-C(=O)-、スルホニル基:-S(=O)-、スルフィニル基:-S(=O)-を有する1価の置換基を表す。
、R、R、R、Lは互いに結合して環構造を形成してもよい。また、(C-3)において、R~Rのうちいずれか2つを合わせて、N原子と2重結合を形成してもよい。
【0246】
~Rにおける炭素数1以上の置換基としては、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルキルオキシカルボニル基、シクロアルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキルアミノカルボニル基、シクロアルキルアミノカルボニル基、アリールアミノカルボニル基などが挙げられる。好ましくは、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基である。
【0247】
2価の連結基としてのLは、直鎖若しくは分岐鎖状アルキレン基、シクロアルキレン基、アリーレン基、カルボニル基、エーテル結合、エステル結合、アミド結合、ウレタン結合、ウレア結合、及びこれらの2種以上を組み合わせてなる基等が挙げられる。Lは、好ましくは、アルキレン基、アリーレン基、エーテル結合、エステル結合、及びこれらの2種以上を組み合わせてなる基である。
一般式(C-1)で表される化合物の好ましい例としては、特開2013-6827号公報の段落〔0037〕~〔0039〕及び特開2013-8020号公報の段落〔0027〕~〔0029〕に例示された化合物を挙げることが出来る。
一般式(C-2)で表される化合物の好ましい例としては、特開2012-189977号公報の段落〔0012〕~〔0013〕に例示された化合物を挙げることが出来る。
一般式(C-3)で表される化合物の好ましい例としては、特開2012-252124号公報の段落〔0029〕~〔0031〕に例示された化合物を挙げることが出来る。
【0248】
酸発生剤に対して相対的に弱酸となるオニウム塩の含有量は、組成物の固形分基準で、0.5~10.0質量%であることが好ましく、0.5~8.0質量%であることがより好ましく、1.0~8.0質量%であることがさらに好ましい。
【0249】
<溶剤>
本発明の組成物は、通常、溶剤を含有する。
組成物を調製する際に使用することができる溶剤としては、例えば、アルキレングリコールモノアルキルエーテルカルボキシレート、アルキレングリコールモノアルキルエーテル、乳酸アルキルエステル、アルコキシプロピオン酸アルキル、環状ラクトン(好ましくは炭素数4~10)、環を有してもよいモノケトン化合物(好ましくは炭素数4~10)、アルキレンカーボネート、アルコキシ酢酸アルキル、ピルビン酸アルキル等の有機溶剤を挙げることができる。
これらの溶剤の具体例は、米国特許出願公開2008/0187860号明細書[0441]~<0455>に記載のもの、及び、酢酸イソアミル、ブタン酸ブチル、2-ヒドロキシイソ酪酸メチル、イソ酪酸イソブチル、プロピオン酸ブチル等を挙げることができる。
【0250】
本発明においては、有機溶剤として構造中に水酸基を含有する溶剤と、水酸基を含有しない溶剤とを混合した混合溶剤を使用してもよい。
水酸基を含有する溶剤、水酸基を含有しない溶剤としては前述の例示化合物が適宜選択可能であるが、水酸基を含有する溶剤としては、アルキレングリコールモノアルキルエーテル、乳酸アルキル等が好ましく、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME、別名1-メトキシ-2-プロパノール)、乳酸エチルがより好ましい。また、水酸基を含有しない溶剤としては、アルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテート、アルキルアルコキシプロピオネート、環を含有してもよいモノケトン化合物、環状ラクトン、酢酸アルキルなどが好ましく、これらの中でもプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA、別名1-メトキシ-2-アセトキシプロパン)、エチルエトキシプロピオネート、2-ヘプタノン、γ-ブチロラクトン、シクロヘキサノン、酢酸ブチルがより好ましく、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチルエトキシプロピオネート、2-ヘプタノンが更に好ましい。
水酸基を含有する溶剤と水酸基を含有しない溶剤との混合比(質量)は、1/99~99/1が好ましく、10/90~90/10がより好ましく、20/80~60/40が更に好ましい。水酸基を含有しない溶剤を50質量%以上含有する混合溶剤が塗布均一性の点で特に好ましい。
溶剤は、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを含むことが好ましく、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート単独溶剤、又は、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを含有する2種類以上の混合溶剤であることがより好ましい。
【0251】
<その他添加剤>
本発明の組成物は、カルボン酸オニウム塩を含有してもしなくてもよい。このようなカルボン酸オニウム塩は、米国特許出願公開2008/0187860号明細書<0605>~<0606>に記載のものを挙げることができる。
これらのカルボン酸オニウム塩は、スルホニウムヒドロキシド、ヨードニウムヒドロキシド、アンモニウムヒドロキシドとカルボン酸とを、適当な溶剤中酸化銀と反応させることによって合成できる。
【0252】
本発明の組成物がカルボン酸オニウム塩を含有する場合、その含有量は、組成物の全固形分に対し、一般的には0.1~20質量%、好ましくは0.5~10質量%、より好ましくは1~7質量%である。
本発明の組成物には、必要に応じて更に、界面活性剤、酸増殖剤、染料、可塑剤、光増感剤、光吸収剤、アルカリ可溶性樹脂、溶解阻止剤及び現像液に対する溶解性を促進させる化合物(例えば、分子量1000以下のフェノール化合物、カルボキシル基を有する脂環族、又は脂肪族化合物)等を含有させることができる。
【0253】
このような分子量1000以下のフェノール化合物は、例えば、特開平4-122938号、特開平2-28531号、米国特許第4,916,210、欧州特許第219294等に記載の方法を参考にして、当業者において容易に合成することができる。
カルボキシル基を有する脂環族、又は脂肪族化合物の具体例としてはコール酸、デオキシコール酸、リトコール酸などのステロイド構造を有するカルボン酸誘導体、アダマンタンカルボン酸誘導体、アダマンタンジカルボン酸、シクロヘキサンカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0254】
本発明の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物は、膜厚が1μm以上の感活性光線性又は感放射線性膜を形成するため組成物であることが好ましく、感活性光線性又は感放射線性膜の膜厚は、4μm以上であることがより好ましく、8μm以上であることが更に好ましい。上記したように、レジストパターンのクラックの問題は、感活性光線性又は感放射線性膜(レジスト膜)の膜厚が厚くなるほど顕在化しやすいが、本発明は、感活性光線性又は感放射線性膜の膜厚がより厚くなっても(例えば、4μm以上や8μm以上)、クラックの発生を抑制できるという点で、非常に効果的である。
感活性光線性又は感放射線性膜の膜厚は、通常15μm以下である。
【0255】
上記したように、本発明の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物の主な用途は、厚膜の(例えば1μm以上の厚さを有する)レジスト膜の形成である。
厚膜のレジスト膜を形成する際の塗工性等の観点から、感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物の粘度は、100~500mPa・sであることが好ましく、120~480mPa・sであることがより好ましく、150~450mPa・sであることが更に好ましい。
【0256】
本発明の組成物の固形分濃度は、10質量%以上であり、10~60質量%であることが好ましく、15~55質量%であることがより好ましく、20~50質量%であることが更に好ましい。これにより、上記範囲の粘度を有する組成物を、好適に調製できる。
固形分濃度とは、組成物の総質量に対する、溶剤を除く他のレジスト成分の質量の質量百分率である。
【0257】
本発明の組成物は、上記の成分を所定の有機溶剤、好ましくは上記混合溶剤に溶解し、フィルター濾過した後、所定の基板上に塗布して用いる。濾過に用いるフィルターは、ポアサイズが1μm以下が好ましく、0.1μm以下がより好ましく、0.03μm以下が更に好ましく、ポリテトラフロロエチレン製、ポリエチレン製又はナイロン製のものが好ましい。フィルター濾過においては、例えば特開2002-62667号公報のように、循環的な濾過を行ったり、複数種類のフィルターを直列又は並列に接続して濾過を行ったりしてもよい。また、組成物を複数回濾過してもよい。更に、フィルター濾過の前後で、組成物に対して脱気処理などを行ってもよい。
【0258】
[パターン形成方法]
次に、本発明のパターン形成方法について説明する。
本発明のパターン形成方法は、
(i)アルキレンオキシ鎖を有する繰り返し単位を有する樹脂を含有する感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物によって基板上に膜厚が1μm以上の感活性光線性又は感放射線性膜(典型的には、レジスト膜であり、以下、単に膜とも言う)を形成(製膜)する工程、
(ii)上記感活性光線性又は感放射線性膜に活性光線又は放射線を照射する工程(露光工程)、及び、
(iii)上記活性光線又は放射線が照射された感活性光線性又は感放射線性膜を、現像液を用いて現像する工程(現像工程)、を有するパターン形成方法である。
【0259】
本発明のパターン形成方法は、(ii)露光工程の後に、(iv)加熱工程を含むことが好ましい。
本発明のパターン形成方法は、(ii)露光工程を、複数回含んでいてもよい。
本発明のパターン形成方法は、(iv)加熱工程を、複数回含んでいてもよい。
【0260】
本発明のパターン形成方法において、アルキレンオキシ鎖を有する繰り返し単位を有する樹脂は、上記した通りである。また、本発明の組成物を用いて膜を基板上に形成する工程、膜を露光する工程、及び現像工程は、一般的に知られている方法により行うことができる。
特に、膜を基板上に形成する工程としては、組成物を基板上に塗布する方法が挙げられ、塗布方法は一般的な従来の塗布シーケンス(例えば、レジスト組成物を滴下後、基板の回転数を増加させ、膜厚を決定する回転数で維持する方法)を用いることができる。また、厚膜レジスト膜を形成すべく、基板に高粘度を有する組成物を塗布する場合においては、通常の方法であるとレジスト膜の厚みのムラが生じる場合があり、以下の塗布方法によって改善することができる。その方法は、先ず、基板上にレジスト組成物を滴下した後、基板の回転数を第一の中速の回転数で維持し、その後、第二の低速の回転数で維持してレジスト組成物を段階的に塗り広げた後、膜厚を決定する回転数で維持する方法である。好ましくは、塗り広げのステップにおいて、第一の中速の回転のステップと、第二の低速の回転のステップとを交互に複数回繰り返すとよい。また第一の中速の回転数は好ましくは300rpm~1000rpmであり、第二の低速の回転数は好ましくは、50rpm~200rpmである。
【0261】
膜を形成する基板は特に限定されるものではなく、シリコン、SiN、SiO2やSiN等の無機基板、SOG等の塗布系無機基板等、IC等の半導体製造工程、液晶、サーマルヘッド等の回路基板の製造工程、更にはその他のフォトファブリケーションのリソグラフィー工程で一般的に用いられる基板を用いることができる。更に、必要に応じて、レジスト膜と基板の間に反射防止膜を形成させてもよい。反射防止膜としては、公知の有機系、無機系の反射防止膜を適宜用いることができる。
【0262】
上記の通り、本発明のパターン形成方法において感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物により形成される膜の膜厚は1μm以上が好ましく、4μm以上がより好ましく、8μm以上が更に好ましい。膜の膜厚は、通常15μm以下である。
【0263】
製膜後、露光工程の前に、前加熱工程(PB;Prebake)を含むことも好ましい。
露光工程の後かつ現像工程の前に、露光後加熱工程(PEB;Post Exposure Bake)を含むことも好ましい。
加熱温度はPB、PEB共に70~130℃で行うことが好ましく、80~120℃で行うことがより好ましい。
加熱時間は30~300秒が好ましく、30~180秒がより好ましく、30~90秒が更に好ましい。
加熱は通常の露光・現像機に備わっている手段で行うことができ、ホットプレート等を用いて行ってもよい。
ベークにより露光部の反応が促進され、感度やパターンプロファイルが改善する。
【0264】
本工程において使用される露光装置に用いられる光源波長に制限は無いが、赤外光、可視光、紫外光、遠紫外光、極紫外光、X線、電子線等を挙げることができ、好ましくは250nm以下、より好ましくは220nm以下、更に好ましくは1~200nmの波長の遠紫外光を用いることができる。具体的には、KrFエキシマレーザー(248nm)、ArFエキシマレーザー(193nm)、Fエキシマレーザー(157nm)、X線、EUV(Extreme Ultraviolet)(13nm)、電子線等が挙げられ、KrFエキシマレーザー、ArFエキシマレーザー、EUV又は電子線が好ましく、KrFエキシマレーザー、ArFエキシマレーザーがより好ましい。露光光としてKrF光を用いることが好ましい。
【0265】
露光は、グレースケール露光(グレイスケール露光)を実施することが好ましい。
グレースケール露光とは、所望の形状が得られるように、所定の光透過率を有するように所定の網点が形成されたマスクを介してレジスト膜に露光処理を施すものである。つまり、微小な開口をもつマスクに光を照射することにより、得られるパターン(レジストパターン)の高さに階調をもたせることができる露光処理である。
【0266】
また、本発明の露光を行う工程においては液浸露光方法を適用することができる。液浸露光方法は、位相シフト法、変形照明法などの超解像技術と組み合わせることが可能である。
液浸露光を行う場合には、(1)基板上に膜を形成した後、露光する工程の前に、及び/又は、(2)液浸液を介して膜に露光する工程の後、膜を加熱する工程の前に、膜の表面を水系の薬液で洗浄する工程を実施してもよい。
液浸液は、露光波長に対して透明であり、かつ膜上に投影される光学像の歪みを最小限に留めるよう、屈折率の温度係数ができる限り小さい液体が好ましい。特に露光光源がArFエキシマレーザー(波長;193nm)である場合には、上述の観点に加えて、入手の容易さ、取り扱いのし易さといった点から水を用いるのが好ましい。
水を用いる場合、水の表面張力を減少させるとともに、界面活性力を増大させる添加剤(液体)を僅かな割合で添加してもよい。この添加剤はウエハ上のレジスト膜を溶解させず、かつレンズ素子の下面の光学コートに対する影響が無視できるものが好ましい。
このような添加剤としては、例えば、水とほぼ等しい屈折率を有する脂肪族系のアルコールが好ましく、具体的にはメチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等が挙げられる。水とほぼ等しい屈折率を有するアルコールを添加することにより、水中のアルコール成分が蒸発して含有濃度が変化しても、液体全体としての屈折率変化を極めて小さくできるといった利点が得られる。
【0267】
一方で、193nm光に対して不透明な物質や屈折率が水と大きく異なる不純物が混入した場合、レジスト膜上に投影される光学像の歪みを招くため、使用する水としては、蒸留水が好ましい。更にイオン交換フィルター等を通して濾過を行った純水を用いてもよい。
液浸液として用いる水の電気抵抗は、18.3MΩcm以上であることが好ましく、TOC(有機物濃度)は20ppb以下であることが好ましく、脱気処理をしていることが好ましい。
【0268】
また、液浸液の屈折率を高めることにより、リソグラフィー性能を高めることが可能である。このような観点から、屈折率を高めるような添加剤を水に加えたり、水の代わりに重水(DO)を用いたりしてもよい。
レジスト膜の後退接触角は温度23±3℃、湿度45±5%において70°以上であることが好ましく、このような場合、液浸媒体を介して露光する場合に好適である。また、75°以上であることがより好ましく、75~85°であることが更に好ましい。
【0269】
上記後退接触角が小さすぎると、液浸媒体を介して露光する場合に好適に用いることができず、かつ水残り(ウォーターマーク)欠陥低減の効果を十分に発揮することができない。好ましい後退接触角を実現する為には、疎水性樹脂を組成物に含ませることが好ましい。あるいは、レジスト膜の上層に、疎水性樹脂により形成される液浸液難溶性膜(以下、「トップコート」ともいう)を設けてもよい。疎水性樹脂を含むレジスト膜の上層に、トップコートを設けてもよい。トップコートに必要な機能としては、レジスト膜上層部への塗布適正、液浸液難溶性である。トップコートは、レジスト膜と混合せず、更にレジスト膜上層に均一に塗布できることが好ましい。
トップコートの材料としては、具体的には、炭化水素ポリマー、アクリル酸エステルポリマー、ポリメタクリル酸、ポリアクリル酸、ポリビニルエーテル、シリコン含有ポリマー、フッ素含有ポリマーなどが挙げられる。トップコートから液浸液へ不純物が溶出することによる光学レンズの汚染を防止する観点からは、トップコートに含まれるポリマーの残留モノマー成分は少ない方が好ましい。トップコートは、塩基性化合物を含んでいてもよい。
【0270】
トップコートを剥離する際は、現像液を使用してもよいし、別途剥離剤を使用してもよい。剥離剤としては、膜への浸透が小さい溶剤が好ましい。剥離工程が膜の現像工程と同時にできるという点では、有機溶剤を含んだ現像液で剥離できることが好ましい。
トップコートと液浸液との間には屈折率の差がない方が、解像力が向上する。液浸液として水を用いる場合には、トップコートは液浸液の屈折率に近いことが好ましい。屈折率を液浸液に近くするという観点からは、トップコート中にフッ素原子を有することが好ましい。また、トップコートは、透明性及び屈折率の観点から薄膜の方が好ましい。
トップコートは、膜と混合せず、更に液浸液とも混合しないことが好ましい。この観点から、液浸液が水の場合には、トップコートに使用される溶剤は、本発明の組成物に使用される溶剤に難溶で、かつ非水溶性の媒体であることが好ましい。更に、液浸液が有機溶剤である場合には、トップコートは水溶性であっても非水溶性であってもよい。
トップコートの形成は、液浸露光の場合に限定されず、ドライ露光(液浸液を介さない露光)の場合に行ってもよい。トップコートを形成することにより、例えば、アウトガスの発生を抑制できる。
以下、トップコートの形成に用いられるトップコート組成物について説明する。
【0271】
本発明におけるトップコート組成物は溶剤が有機溶剤であることが好ましい。より好ましくはアルコール系溶剤である。
溶剤が有機溶剤である場合、レジスト膜を溶解しない溶剤であることが好ましい。使用しうる溶剤としては、アルコール系溶剤、フッ素系溶剤、炭化水素系溶剤を用いることが好ましく、非フッ素系のアルコール系溶剤を用いることがより好ましい。アルコール系溶剤としては、塗布性の観点からは1級のアルコールが好ましく、炭素数4~8の1級アルコールがより好ましい。炭素数4~8の1級アルコールとしては、直鎖状、分岐状、環状のアルコールを用いることができ、好ましくは、例えば、1-ブタノール、1-ヘキサノール、1-ペンタノール、3-メチル-1-ブタノール、2-エチルブタノール及びパーフルオロブチルテトラヒドロフラン等が挙げられる。
また、トップコート組成物用の樹脂としては、特開2009-134177号、特開2009-91798号に記載の酸性基を有する樹脂も、好ましく用いることができる。
樹脂の重量平均分子量は特に制限はないが、2000から100万が好ましく、より好ましくは5000から50万、更に好ましくは1万から10万である。ここで、樹脂の重量平均分子量は、GPC(Gel permeation chromatography)(キャリア:テトラヒドロフラン(THF)又はN-メチル-2-ピロリドン(NMP))によって測定したポリスチレン換算分子量を示す。
トップコート組成物のpHは、特に制限はないが、好ましくは0~10、より好ましくは0~8、更に好ましくは1~7である。
トップコート組成物は、光酸発生剤及び含窒素塩基性化合物などの添加剤を含有してもよい。含窒素塩基性化合物を含有するトップコート組成物の例としては、US2013/0244438Aに記載のものを挙げることができる。
【0272】
トップコート組成物中の樹脂の濃度は、好ましくは0.1~10質量%、より好ましくは0.2~5質量%、更に好ましくは0.3~3質量%である。トップコート材料には樹脂以外の成分を含んでもよいが、トップコート組成物の固形分に占める樹脂の割合は、好ましくは80~100質量%であり、より好ましくは90~100質量%、更に好ましくは95~100質量%である。
トップコート組成物の固形分濃度は、0.1~10質量%であることが好ましく、0.2~6質量%であることがより好ましく、0.3~5質量%であることが更に好ましい。固形分濃度を上記範囲とすることで、トップコート組成物をレジスト膜上に均一に塗布することができる。
【0273】
本発明のパターン形成方法では、基板上に上記組成物を用いてレジスト膜を形成し、レジスト膜上に上記トップコート組成物を用いてトップコートを形成することもできる。このレジスト膜の膜厚は、好ましくは10~100nmであり、トップコートの膜厚は、好ましくは10~200nm、より好ましくは20~100nm、更に好ましくは40~80nmである。
トップコートを形成する方法は特に制限されないが、上記レジスト膜の形成方法と同様の手段によりトップコート組成物を塗布、乾燥して形成することができる。
トップコートを上層に有するレジスト膜に、通常はマスクを通して、活性光線又は放射線を照射し、好ましくはベーク(加熱)を行い、現像する。これにより良好なパターンを得ることができる。
【0274】
液浸露光工程に於いては、露光ヘッドが高速でウエハ上をスキャンし露光パターンを形成していく動きに追随して、液浸液がウエハ上を動く必要があるので、動的な状態に於けるレジスト膜に対する液浸液の接触角が重要になる。このためレジストには、液滴が残存することなく、露光ヘッドの高速なスキャンに追随する性能が求められる。
【0275】
本発明の組成物を用いて形成された膜を現像する工程において使用する現像液は特に限定しないが、例えば、アルカリ現像液または有機溶剤を含有する現像液(以下、有機系現像液とも言う)を用いることが出来る。なかでも、アルカリ現像液を用いるのが好ましい。
アルカリ現像液としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、アンモニア水等の無機アルカリ類、エチルアミン、n-プロピルアミン等の第一アミン類、ジエチルアミン、ジ-n-ブチルアミン等の第二アミン類、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン等の第三アミン類、ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルコールアミン類、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、テトラペンチルアンモニウムヒドロキシド、テトラヘキシルアンモニウムヒドロキシド、テトラオクチルアンモニウムヒドロキシド、エチルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、ブチルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、メチルトリアミルアンモニウムヒドロキシド、ジブチルジペンチルアンモニウムヒドロキシド等のテトラアルキルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルフェニルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、トリエチルベンジルアンモニウムヒドロキシド等の第四級アンモニウム塩、ピロール、ピペリジン等の環状アミン類等のアルカリ性水溶液を使用することができる。更に、上記アルカリ性水溶液にアルコール類、界面活性剤を適当量添加して使用することもできる。アルカリ現像液のアルカリ濃度は、通常0.1~20質量%である。アルカリ現像液のpHは、通常10.0~15.0である。アルカリ現像液のアルカリ濃度及びpHは、適宜調製して用いることができる。アルカリ現像液は、界面活性剤や有機溶剤を添加して用いてもよい。
アルカリ現像の後に行うリンス処理におけるリンス液としては、純水を使用し、界面活性剤を適当量添加して使用することもできる。
【0276】
また、現像処理又はリンス処理の後に、パターン上に付着している現像液又はリンス液を超臨界流体により除去する処理を行うことができる。
【0277】
有機系現像液としては、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、アルコール系溶剤、アミド系溶剤、エーテル系溶剤等の極性溶剤及び炭化水素系溶剤を用いることができ、これらの具体例としては特開2013-218223号公報の段落<0507>に記載された溶剤、及び酢酸イソアミル、ブタン酸ブチル、酪酸ブチル、2-ヒドロキシイソ酪酸メチルなどを挙げることができる。
上記の溶剤は、複数混合してもよいし、上記以外の溶剤や水と混合し使用してもよい。但し、本発明の効果を十二分に奏するためには、現像液全体としての含水率が10質量%未満であることが好ましく、実質的に水分を含有しないことがより好ましい。
すなわち、有機系現像液に対する有機溶剤の使用量は、現像液の全量に対して、90質量%以上100質量%以下であることが好ましく、95質量%以上100質量%以下であることが好ましい。
【0278】
特に、有機系現像液は、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、アルコール系溶剤、アミド系溶剤及びエーテル系溶剤からなる群より選択される少なくとも1種類の有機溶剤を含有する現像液が好ましい。
【0279】
有機系現像液の蒸気圧は、20℃に於いて、5kPa以下が好ましく、3kPa以下が更に好ましく、2kPa以下が特に好ましい。有機系現像液の蒸気圧を5kPa以下にすることにより、現像液の基板上あるいは現像カップ内での蒸発が抑制され、ウエハ面内の温度均一性が向上し、結果としてウエハ面内の寸法均一性が良化する。
【0280】
有機系現像液には、必要に応じて界面活性剤を適当量添加することができる。
界面活性剤としては特に限定されないが、例えば、イオン性や非イオン性のフッ素系及び/又はシリコン系界面活性剤等を用いることができる。これらのフッ素及び/又はシリコン系界面活性剤として、例えば特開昭62-36663号公報、特開昭61-226746号公報、特開昭61-226745号公報、特開昭62-170950号公報、特開昭63-34540号公報、特開平7-230165号公報、特開平8-62834号公報、特開平9-54432号公報、特開平9-5988号公報、米国特許第5405720号明細書、同5360692号明細書、同5529881号明細書、同5296330号明細書、同5436098号明細書、同5576143号明細書、同5294511号明細書、同5824451号明細書記載の界面活性剤を挙げることができ、好ましくは、非イオン性の界面活性剤である。非イオン性の界面活性剤としては特に限定されないが、フッ素系界面活性剤又はシリコン系界面活性剤を用いることが好ましい。
【0281】
界面活性剤の使用量は現像液の全量に対して、通常0.001~5質量%、好ましくは0.005~2質量%、より好ましくは0.01~0.5質量%である。
【0282】
有機系現像液は、塩基性化合物を含んでいてもよい。本発明で用いられる有機系現像液が含みうる塩基性化合物の具体例及び好ましい例としては、酸拡散制御剤(D)として前述した塩基性化合物におけるものと同様である。
【0283】
現像方法としては、たとえば、現像液が満たされた槽中に基板を一定時間浸漬する方法(ディップ法)、基板表面に現像液を表面張力によって盛り上げて一定時間静止することで現像する方法(パドル法)、基板表面に現像液を噴霧する方法(スプレー法)、一定速度で回転している基板上に一定速度で現像液吐出ノズルをスキャンしながら現像液を吐出しつづける方法(ダイナミックディスペンス法)などを適用することができる。
【0284】
上記各種の現像方法が、現像装置の現像ノズルから現像液をレジスト膜に向けて吐出する工程を含む場合、吐出される現像液の吐出圧(吐出される現像液の単位面積あたりの流速)は好ましくは2mL/sec/mm以下、より好ましくは1.5mL/sec/mm以下、更に好ましくは1mL/sec/mm以下である。流速の下限は特に無いが、スループットを考慮すると0.2mL/sec/mm以上が好ましい。
吐出される現像液の吐出圧を上記の範囲とすることにより、現像後のレジスト残渣に由来するパターンの欠陥を著しく低減することができる。
このメカニズムの詳細は定かではないが、恐らくは、吐出圧を上記範囲とすることで、現像液がレジスト膜に与える圧力が小さくなり、レジスト膜及びレジストパターンが不用意に削られたり崩れたりすることが抑制されるためと考えられる。
なお、現像液の吐出圧(mL/sec/mm)は、現像装置中の現像ノズル出口における値である。
【0285】
現像液の吐出圧を調整する方法としては、例えば、ポンプなどで吐出圧を調整する方法や、加圧タンクからの供給で圧力を調整することで変える方法などを挙げることができる。
また、有機溶剤を含む現像液を用いて現像する工程の後に、他の溶剤に置換しながら、現像を停止する工程を実施してもよい。
【0286】
本発明のパターン形成方法においては、有機溶剤を含む現像液を用いて現像する工程(有機溶剤現像工程)、及び、アルカリ水溶液を用いて現像を行う工程(アルカリ現像工程)を組み合わせて使用してもよい。これにより、より微細なパターンを形成することができる。
本発明において、有機溶剤現像工程によって露光強度の弱い部分が除去されるが、更にアルカリ現像工程を行うことによって露光強度の強い部分も除去される。このように現像を複数回行う多重現像プロセスにより、中間的な露光強度の領域のみを溶解させずにパターン形成が行えるので、通常より微細なパターンを形成できる(特開2008-292975号公報 <0077>と同様のメカニズム)。
本発明のパターン形成方法においては、アルカリ現像工程及び有機溶剤現像工程の順序は特に限定されないが、アルカリ現像を、有機溶剤現像工程の前に行うことがより好ましい。
【0287】
有機溶剤を含む現像液を用いて現像する工程の後には、リンス液を用いて洗浄する工程を含むことが好ましい。
有機溶剤を含む現像液を用いて現像する工程の後のリンス工程に用いるリンス液としては、レジストパターンを溶解しなければ特に制限はなく、一般的な有機溶剤を含む溶液を使用することができる。リンス液としては、炭化水素系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、アルコール系溶剤、アミド系溶剤及びエーテル系溶剤からなる群より選択される少なくとも1種類の有機溶剤を含有するリンス液を用いることが好ましい。
炭化水素系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、アルコール系溶剤、アミド系溶剤及びエーテル系溶剤の具体例としては、有機溶剤を含む現像液において説明したものと同様のものを挙げることができる。
【0288】
有機溶剤を含む現像液を用いて現像する工程の後に、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、アルコール系溶剤、アミド系溶剤、及び炭化水素系溶剤からなる群より選択される少なくとも1種類の有機溶剤を含有するリンス液を用いて洗浄する工程を含むことがより好ましく、アルコール系溶剤又はエステル系溶剤を含有するリンス液を用いて洗浄する工程を含むことが更に好ましく、1価アルコールを含有するリンス液を用いて洗浄する工程を含むことが特に好ましく、炭素数5以上の1価アルコールを含有するリンス液を用いて洗浄する工程を含むことが最も好ましい。
【0289】
ここで、リンス工程で用いられる1価アルコールとしては、直鎖状、分岐状、環状の1価アルコールが挙げられ、具体的には、1-ブタノール、2-ブタノール、3-メチル-1-ブタノール、tert―ブチルアルコール、1-ペンタノール、2-ペンタノール、1-ヘキサノール、4-メチル-2-ペンタノール、1-ヘプタノール、1-オクタノール、2-ヘキサノール、シクロペンタノール、2-ヘプタノール、2-オクタノール、3-ヘキサノール、3-ヘプタノール、3-オクタノール、4-オクタノールなどであり、特に好ましい炭素数5以上の1価アルコールとしては、1-ヘキサノール、2-ヘキサノール、4-メチル-2-ペンタノール、1-ペンタノール、3-メチル-1-ブタノールなどが挙げられる。
リンス工程で用いられる炭化水素系溶剤としては、炭素数6~30の炭化水素化合物が好ましく、炭素数8~30の炭化水素化合物がより好ましく、炭素数7~30の炭化水素化合物が更に好ましく、炭素数10~30の炭化水素化合物が特に好ましい。中でも、デカン及び/又はウンデカンを含むリンス液を用いることにより、パターン倒れが抑制される。
【0290】
各成分は、複数混合してもよいし、上記以外の有機溶剤と混合し使用してもよい。
リンス液中の含水率は、10質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましく、3質量%以下が更に好ましい。含水率を10質量%以下にすることで、良好な現像特性を得ることができる。
【0291】
有機溶剤を含む現像液を用いて現像する工程の後に用いるリンス液の蒸気圧は、20℃に於いて0.05kPa以上5kPa以下が好ましく、0.1kPa以上5kPa以下がより好ましく、0.12kPa以上3kPa以下が更に好ましい。リンス液の蒸気圧を0.05kPa以上5kPa以下にすることにより、ウエハ面内の温度均一性が向上し、更にはリンス液の浸透に起因した膨潤が抑制され、ウエハ面内の寸法均一性が良化する。
【0292】
リンス液には、界面活性剤を適当量添加して使用することもできる。
リンス工程においては、有機溶剤を含む現像液を用いる現像を行ったウエハを上記の有機溶剤を含むリンス液を用いて洗浄処理する。洗浄処理の方法は特に限定されないが、たとえば、一定速度で回転している基板上にリンス液を吐出しつづける方法(回転塗布法)、リンス液が満たされた槽中に基板を一定時間浸漬する方法(ディップ法)、基板表面にリンス液を噴霧する方法(スプレー法)、などを適用することができる。この中でも回転塗布法で洗浄処理を行い、洗浄後に基板を2000rpm~4000rpmの回転数で回転させ、リンス液を基板上から除去することが好ましい。また、リンス工程の後に加熱工程(Post Bake)を含むことも好ましい。加熱工程によりパターン間及びパターン内部に残留した現像液及びリンス液が除去される。リンス工程の後の加熱工程は、通常40~160℃、好ましくは70~95℃で、通常10秒~3分、好ましくは30秒から90秒行う。
【0293】
本発明の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物、及び、本発明のパターン形成方法において使用される各種材料(例えば、レジスト溶剤、現像液、リンス液、反射防止膜形成用組成物、トップコート形成用組成物など)は、金属等の不純物を含まないことが好ましい。これら材料に含まれる不純物の含有量としては、1ppm以下が好ましく、10ppb以下がより好ましく、100ppt以下が更に好ましく、10ppt以下が特に好ましく、1ppt以下が最も好ましい。
上記各種材料から金属等の不純物を除去する方法としては、例えば、フィルターを用いた濾過を挙げることができる。フィルター孔径としては、ポアサイズ10nm以下が好ましく、5nm以下がより好ましく、3nm以下が更に好ましい。フィルターの材質としては、ポリテトラフロロエチレン製、ポリエチレン製、ナイロン製が好ましい。フィルターは、これらの材質とイオン交換メディアを組み合わせた複合材料であってもよい。フィルターは、有機溶剤であらかじめ洗浄したものを用いてもよい。フィルター濾過工程では、複数種類のフィルターを直列又は並列に接続して用いてもよい。複数種類のフィルターを使用する場合は、孔径及び/又は材質が異なるフィルターを組み合わせて使用しても良い。また、各種材料を複数回濾過してもよく、複数回濾過する工程が循環濾過工程であっても良い。
また、上記各種材料に含まれる金属等の不純物を低減する方法としては、各種材料を構成する原料として金属含有量が少ない原料を選択する、各種材料を構成する原料に対してフィルター濾過を行う、装置内をテフロン(登録商標)でライニングする等してコンタミネーションを可能な限り抑制した条件下で蒸留を行う等の方法を挙げることができる。各種材料を構成する原料に対して行うフィルター濾過における好ましい条件は、上記した条件と同様である。
フィルター濾過の他、吸着材による不純物の除去を行っても良く、フィルター濾過と吸着材を組み合わせて使用しても良い。吸着材としては、公知の吸着材を用いることができ、例えば、シリカゲル、ゼオライトなどの無機系吸着材、活性炭などの有機系吸着材を使用することができる。
上記各種材料に含まれる金属等の不純物を低減するためには、製造工程における金属不純物の混入を防止することが必要である。製造装置から金属不純物が十分に除去されたかどうかは、製造装置の洗浄に使用された洗浄液中に含まれる金属成分の含有量を測定することで確認することができる。使用後の洗浄液に含まれる金属成分の含有量は、100ppt(parts per trillion)以下が好ましく、10ppt以下がより好ましく、1ppt以下が更に好ましい。
【0294】
本発明の方法により形成されるパターンに対して、パターンの表面荒れを改善する方法を適用しても良い。パターンの表面荒れを改善する方法としては、例えば、WO2014/002808に開示された水素を含有するガスのプラズマによってレジストパターンを処理する方法が挙げられる。その他にも、特開2004-235468、US2010/0020297、特開2009-19969、Proc.of SPIE Vol.8328 83280N-1”EUV Resist Curing Technique for LWR Reduction and Etch Selectivity Enhancement”に記載されているような公知の方法を適用してもよい。
本発明のパターン形成方法は、DSA(Directed Self-Assembly)におけるガイドパターン形成(例えば、ACS Nano Vol.4 No.8 Page4815-4823参照)にも用いることができる。
上記の方法によって形成されたレジストパターンは、例えば特開平3-270227及び特開2013-164509に開示されたスペーサープロセスの芯材(コア)として使用できる。
【0295】
本発明は、上記した本発明のパターン形成方法を含む、電子デバイスの製造方法、及び、この製造方法により製造された電子デバイスにも関する。
本発明の電子デバイスは、電気電子機器(家電、OA・メディア関連機器、光学用機器及び通信機器等)に、好適に、搭載されるものである。
【実施例
【0296】
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明は、これに限定されるものではない。
【0297】
<感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物の調製>
表1に示す成分を溶剤に溶解させて各レジスト溶液を調製し、1μmのポアサイズを有するポリエチレンフィルターで濾過した。これにより、表1に記載の固形分濃度を有する感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物(レジスト組成物)を調製した。
【0298】
表1に評価に使用したレジスト組成物を示す。ここで、溶剤以外の各成分の含有量は、レジスト組成物の全固形分に対する含有量(質量%)で示す。溶剤の欄における数値は質量比を示す。
【0299】
【表1】
【0300】
上記表1における成分及び略号は、次の通りである。
【0301】
樹脂の構造、組成比(モル比)、重量平均分子量(Mw)、及び、分散度(Mw/Mn)は下記の通りである。
【0302】
【化49】
【0303】
【化50】
【0304】
【化51】
【0305】
酸発生剤の構造は下記のとおりである。
【0306】
【化52】
【0307】
酸拡散制御剤の構造は下記のとおりである。
【0308】
【化53】
【0309】
界面活性剤の構造は下記のとおりである。
【0310】
【化54】
【0311】
溶剤については以下のとおりである。
S-1:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
S-2:プロピレングリコールモノメチルエーテル
S-3:乳酸エチル
S-4:3-エトキシプロピオン酸エチル
S-5:2-ヘプタノン
S-6:3-メトキシプロピオン酸メチル
S-7:酢酸3-メトキシブチル
【0312】
<パターン形成及び評価>
東京エレクトロン製スピンコーターACT-8を利用して、ヘキサメチルジシラザン処理を施した8インチシリコンウエハ(Advanced Materials Technology社製)上に、反射防止層を設けることなく、上記で調製したレジスト組成物を基板が静止した状態で滴下した。ここで、1インチは25.4mmに相当する。レジスト組成物を滴下した後、基板を回転し、その回転数を、3秒間500rpmで維持し、その後2秒間100rpmで維持し、さらに3秒間500rpmで維持し、再び2秒間100rpmで維持した後、膜厚設定回転数(1200rpm)に上げて60秒間維持した。その後、ホットプレート上で130℃で60秒間加熱乾燥を行い、膜厚7.5μmのポジ型レジスト膜を形成した。このレジスト膜に対し、縮小投影露光及び現像後に形成されるパターンのスペース幅が3μm、ピッチ幅が33μmとなるような、ラインアンドスペースパターンを有するマスクを介して、KrFエキシマレーザースキャナー(ASML製、PAS5500/850C波長248nm)を用いて、NA=0.68、σ=0.60の露光条件でパターン露光した。露光後に130℃で60秒ベークし、2.38質量%テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TMAH)水溶液に60秒間浸漬した後、30秒間純水でリンスし、続いて乾燥して、スペース幅が3μm、ピッチ幅が33μmの孤立スペースパターンを形成した。
上記パターン露光は、縮小投影露光後のスペース幅が3μm、ピッチ幅が33μmとなるような、ラインアンドスペースパターンを有するマスクを介する露光であり、露光量は、スペース幅が3μm、ピッチ幅が33μmの孤立スペースパターンを形成する最適露光量(感度)(mJ/cm)とした。上記感度の決定において、パターンのスペース幅の測定は走査型電子顕微鏡(SEM)(株式会社日立ハイテクノロジーズ製9380II)を用いた。
【0313】
[クラック性能の評価方法]
上記孤立スペースパターンを有するウエハを、SEM(KLA-Tencor社製eCD2)内のチャンバーにて0.002Pa圧力下において、60秒間真空処理を行った。真空引き後のウエハを光学顕微鏡(オリンパス株式会社社製MX61L)により観察し、ウエハ表面のひび割れ(クラック)を観察した。ひび割れが50個以上の多数の場合D、ひび割れが5個~49個の場合C、ひび割れが1~4個の場合B、ひび割れ0個の場合をAとして評価した。
評価結果を表1に示す。
【0314】
表1の結果より、アルキレンオキシ鎖を有する繰り返し単位を有する樹脂を使用した実施例は、この樹脂を使用しなかった比較例と比較して、クラック性能が優れることが分かった。
また、一般式(b)で表される繰り返し単位を有するとともに、一般式(b)におけるRが水素原子とされた樹脂を使用した実施例2、4及び6は、クラック性能がより優れることが分かった。