(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-15
(45)【発行日】2022-04-25
(54)【発明の名称】硬化性組成物、硬化膜、パターンの形成方法、光学フィルタおよび光センサ
(51)【国際特許分類】
G02B 5/20 20060101AFI20220418BHJP
G03F 7/004 20060101ALI20220418BHJP
G03F 7/031 20060101ALI20220418BHJP
G03F 7/027 20060101ALI20220418BHJP
C09B 67/20 20060101ALI20220418BHJP
C08G 59/42 20060101ALI20220418BHJP
C08F 290/12 20060101ALI20220418BHJP
G02B 5/22 20060101ALI20220418BHJP
【FI】
G02B5/20 101
G03F7/004 505
G03F7/031
G03F7/027 502
C09B67/20 F
C09B67/20 K
C08G59/42
C08F290/12
G02B5/22
(21)【出願番号】P 2020549105
(86)(22)【出願日】2019-09-20
(86)【国際出願番号】 JP2019036905
(87)【国際公開番号】W WO2020066871
(87)【国際公開日】2020-04-02
【審査請求日】2021-02-16
(31)【優先権主張番号】P 2018181022
(32)【優先日】2018-09-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】特許業務法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】森 全弘
【審査官】倉本 勝利
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/178346(WO,A1)
【文献】特開2015-041058(JP,A)
【文献】国際公開第2016/190162(WO,A1)
【文献】特開2013-231878(JP,A)
【文献】国際公開第2017/056831(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/20
G03F 7/004
G03F 7/031
G03F 7/027
C09B 67/20
C08G 59/42
C08F 290/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
色材、重合性化合物、光重合開始剤を含有する硬化性組成物であって、
前記色材の含有量が、前記
硬化性組成物の全固形分に対して30質量%以上であり、
前記重合性化合物の含有量は、前記硬化性組成物の全固形分中5.0~25質量%であり、
前記光重合開始剤は、メタノール中での波長365nmの吸光係数が1.0×10
3mL/gcm以上である光重合開始剤A1と、メタノール中での波長365nmの吸光係数が1.0×10
2mL/gcm以下で、かつ、波長254nmの吸光係数が1.0×10
3mL/gcm以上である光重合開始剤A2とを含み、
前記光重合開始剤A1はオキシム化合物であり、前記光重合開始剤A2はヒドロキシアルキルフェノン化合物であり、
前記硬化性組成物は、前記光重合開始剤A1の100質量部に対して、前記光重合開始剤A2を50~200質量部含有し、かつ、前記光重合開始剤A1の含有量は、前記硬化性組成物の全固形分中1.0~10.0質量%であり、前記光重合開始剤A2の含有量は、前記硬化性組成物の全固形分中0.5~7.5質量%であり、
前記
硬化性組成物の波長400~600nmの範囲における吸光度の最小値Aと、波長1000~1300nmの範囲における吸光度の最大値Bとの比であるA/Bが4.5以上である、硬化性組成物。
【請求項2】
前記オキシム化合物が、フッ素原子を含む化合物である、
請求項
1に記載の硬化性組成物。
【請求項3】
前記光重合開始剤A2が下記式(A2-1)で表される化合物である、
請求項1
または2に記載の硬化性組成物;
式(A2-1):
【化1】
式中Rv
1は、置換基を表し、Rv
2およびRv
3は、それぞれ独立して、水素原子または置換基を表し、Rv
2とRv
3とが互いに結合して環を形成していてもよく、mは0~5の整数を表す。
【請求項4】
前記硬化性組成物の全固形分中における前記光重合開始剤A1と前記光重合開始剤A2の合計の含有量が5~15質量%である、
請求項1~
3のいずれか1項に記載の硬化性組成物。
【請求項5】
前記重合性化合物がエチレン性不飽和基を3個以上含む化合物である、
請求項1~
4のいずれか1項に記載の硬化性組成物。
【請求項6】
前記重合性化合物がエチレン性不飽和基とアルキレンオキシ基とを含む化合物である、
請求項1~
5のいずれか1項に記載の硬化性組成物。
【請求項7】
前記光重合開始剤A1と前記光重合開始剤A2の合計100質量部に対して、前記重合性化合物を170~345質量部含有する、
請求項1~
6のいずれか1項に記載の硬化性組成物。
【請求項8】
前記色材が、ビスベンゾフラノン化合物、ペリレン化合物およびアゾ化合物の少なくとも1種を含む黒色色材である、
請求項1~
7のいずれか1項に記載の硬化性組成物。
【請求項9】
前記色材が少なくとも3種の化合物を含む、
請求項1~
8のいずれか1項に記載の硬化性組成物。
【請求項10】
さらに、環状エーテル構造を有する化合物と、前記環状エーテル構造を有する化合物の硬化促進剤とを含む、
請求項1~
9のいずれか1項に記載の硬化性組成物。
【請求項11】
さらに樹脂を含む、
請求項1~
10のいずれか1項に記載の硬化性組成物。
【請求項12】
前記樹脂は、フルオレン骨格を有する樹脂を含む、請求項11に記載の硬化性組成物。
【請求項13】
請求項1~
12のいずれか1項に記載の硬化性組成物を硬化して得られる硬化膜。
【請求項14】
請求項1~
12のいずれか1項に記載の硬化性組成物を用いて支持体上に硬化性組成物層を形成する工程と、
前記硬化性組成物層に対して、350nmを超え380nm以下の波長を有する光を照射し、パターン状に露光する第1の露光工程と、
前記硬化性組成物層を現像する現像工程と、
前記現像工程後に、前記硬化性組成物層に対して、254~350nmの波長を有する光を照射する第2の露光工程と、を有するパターンの形成方法。
【請求項15】
前記現像工程と前記第2の露光工程の間、および、前記第2の露光工程の後の少なくともいずれかの期間に、低酸素雰囲気下、200℃未満の温度で前記硬化性組成物層を加熱する工程を有する、
請求項
14に記載の方法。
【請求項16】
請求項
13に記載の硬化膜を有する光学フィルタ。
【請求項17】
請求項
13に記載の硬化膜を有する光センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化性組成物、硬化膜、パターンの形成方法、光学フィルタおよび光センサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電荷結合素子(CCD)イメージセンサなどの固体撮像素子においては、カラーフィルタを用いて画像のカラー化などの試みが行われている。例えば、特許文献1には、半導体基板と、2色以上のカラーフィルタ層と少なくとも異色のカラーフィルタ層間を隔てて分離する分離壁とを有するカラーフィルタアレイと、半導体基板とカラーフィルタアレイとの間に配置された集光手段と、を備えた固体撮像素子が記載されている。
【0003】
また、近年、近赤外線を感知する光センサについての検討がなされている。近赤外線は可視光線に比べて波長が長いので散乱しにくく、距離計測や、3次元計測などにも活用可能である。また、近赤外線は人間、動物などの目に見えないので、夜間に被写体を近赤外線で照らしても被写体に気付かれることなく、夜行性の野生動物を撮影する用途、防犯用途として相手を刺激せずに撮影することにも使用可能である。このように、近赤外線を感知する光センサは、様々な用途に展開が可能である。このような光センサにおいては、近赤外線透過フィルタなどの近赤外領域に透過帯を有するフィルタなどが用いられている(例えば、特許文献2、3参照)。
【0004】
通常、上記のようなカラーフィルタおよび近赤外線透過フィルタは、色材と、重合性化合物と、光重合開始剤とを含む硬化性組成物を用いて膜を形成し、加熱などによってこの膜を硬化することにより製造される。例えば、特許文献4には、光重合開始剤としてフッ素原子を含むオキシムエステル系光重合開始剤を用いた硬化性組成物を用いてカラーフィルタを製造することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】米国特許第9496164号明細書
【文献】特許第6034796号公報
【文献】特開2017-050322号公報
【文献】国際公開第2016/158114号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
今回、近赤外線透過フィルタ用の組成物を用いて硬化膜を形成する場合には、その分光特性から波長365nmの光が透過しにくいため、露光の際に、膜の表層部は硬化するものの深層部は硬化しにくいことが見出された。色材の濃度が高い場合には、組成物の深層部の硬化はさらに難しくなる。したがって、上記硬化性組成物を充分に硬化させ、下地との密着性を向上させるために、200℃以上の加熱処理をすることが考えられる。
しかしながら、近年、固体撮像素子において、高解像度、高感度、省電力および小型化などの観点から、Si系材料に替えて、有機材料、量子ドットおよびInGaAs(インジウムガリウム砒素)など、非Si系材料を用いて光電変換することが検討されている。上記のような非Si系材料は、Si系材料に比べ熱に弱いため、硬化性組成物を硬化させる際の加熱温度を200℃未満とすることが望まれる。
【0007】
よって、近年の技術動向を考慮すると、近赤外線透過フィルタ用の組成物を用いて硬化膜を形成する場合にも、低温下でも膜の深層部まで充分に硬化でき、密着性に優れる膜を得られることが望ましい。
【0008】
本発明は上記要望に鑑みてなされたものであり、密着性に優れる硬化膜を低温で形成することを可能とする硬化性組成物の提供を目的とする。
【0009】
また、本発明は、上記硬化性組成物を硬化して得られる硬化膜、上記硬化性組成物を用いたパターンの形成方法の提供を目的とする。さらに、本発明は、上記硬化膜を有する光学フィルタおよび光センサの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題は、波長365nmの光に対する透過率が低い硬化性組成物において、互いに異なる所定の吸光特性を有する2種の光重合開始剤を使用することにより、解決できた。具体的には、以下の手段<1>により、好ましくは<2>~<20>により、上記課題は解決された。
<1>
色材、重合性化合物、光重合開始剤を含有する硬化性組成物であって、
色材の含有量が、組成物の全固形分に対して30質量%以上であり、
光重合開始剤は、メタノール中での波長365nmの吸光係数が1.0×10
3mL/gcm以上である光重合開始剤A1と、メタノール中での波長365nmの吸光係数が1.0×10
2mL/gcm以下で、かつ、波長254nmの吸光係数が1.0×10
3mL/gcm以上である光重合開始剤A2とを含み、
組成物の波長400~600nmの範囲における吸光度の最小値Aと、波長1000~1300nmの範囲における吸光度の最大値Bとの比であるA/Bが4.5以上である、硬化性組成物。
<2>
光重合開始剤A1がオキシム化合物である、
<1>に記載の硬化性組成物。
<3>
オキシム化合物が、フッ素原子を含む化合物である、
<2>に記載の硬化性組成物。
<4>
光重合開始剤A2がヒドロキシアルキルフェノン化合物である、
<1>~<3>のいずれか1つに記載の硬化性組成物。
<5>
光重合開始剤A2が下記式(A2-1)で表される化合物である、
<1>~<3>のいずれか1つに記載の硬化性組成物;
式(A2-1):
【化1】
式中Rv
1は、置換基を表し、Rv
2およびRv
3は、それぞれ独立して、水素原子または置換基を表し、Rv
2とRv
3とが互いに結合して環を形成していてもよく、mは0~5の整数を表す。
<6>
光重合開始剤A1の100質量部に対して、光重合開始剤A2を50~200質量部含有する、
<1>~<5>のいずれか1つに記載の硬化性組成物。
<7>
硬化性組成物の全固形分中における光重合開始剤A1と光重合開始剤A2の合計の含有量が5~15質量%である、
<1>~<6>のいずれか1つに記載の硬化性組成物。
<8>
重合性化合物がエチレン性不飽和基を3個以上含む化合物である、
<1>~<7>のいずれか1つに記載の硬化性組成物。
<9>
重合性化合物がエチレン性不飽和基とアルキレンオキシ基とを含む化合物である、
<1>~<8>のいずれか1つに記載の硬化性組成物。
<10>
光重合開始剤A1と光重合開始剤A2の合計100質量部に対して、重合性化合物を170~345質量部含有する、
<1>~<9>のいずれか1つに記載の硬化性組成物。
<11>
硬化性組成物の全固形分中における重合性化合物の含有量が17.5~27.5質量%である、
<1>~<10>のいずれか1つに記載の硬化性組成物。
<12>
色材が、ビスベンゾフラノン化合物、ペリレン化合物およびアゾ化合物の少なくとも1種を含む黒色色材である、
<1>~<11>のいずれか1つに記載の硬化性組成物。
<13>
色材が少なくとも3種の化合物を含む、
<1>~<12>のいずれか1つに記載の硬化性組成物。
<14>
さらに、環状エーテル構造を有する化合物と、環状エーテル構造を有する化合物の硬化促進剤とを含む、
<1>~<13>のいずれか1つに記載の硬化性組成物。
<15>
さらに樹脂を含む、
<1>~<14>のいずれか1つに記載の硬化性組成物。
<16>
<1>~<15>のいずれか1つに記載の硬化性組成物を硬化して得られる硬化膜。
<17>
<1>~<15>のいずれか1つに記載の硬化性組成物を用いて支持体上に硬化性組成物層を形成する工程と、
硬化性組成物層に対して、350nmを超え380nm以下の波長を有する光を照射し、パターン状に露光する第1の露光工程と、
硬化性組成物層を現像する現像工程と、
現像工程後に、硬化性組成物層に対して、254~350nmの波長を有する光を照射する第2の露光工程と、を有するパターンの形成方法。
<18>
現像工程と第2の露光工程の間、および、第2の露光工程の後の少なくともいずれかの期間に、低酸素雰囲気下、200℃未満の温度で硬化性組成物層を加熱する工程を有する、
<17>に記載の方法。
<19>
<16>に記載の硬化膜を有する光学フィルタ。
<20>
<16>に記載の硬化膜を有する光センサ。
【発明の効果】
【0011】
本発明の硬化性組成物により、密着性に優れる硬化膜を低温で形成することが可能となる。そして、本発明の硬化性組成物により、本発明の硬化膜、パターンの形成方法、光学フィルタおよび光センサの提供が可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の主要な実施形態について説明する。しかしながら、本発明は、明示した実施形態に限られるものではない。
【0013】
本明細書において「~」という記号を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ下限値および上限値として含む範囲を意味する。
【0014】
本明細書において「工程」との語は、独立した工程だけではなく、その工程の所期の作用が達成できる限りにおいて、他の工程と明確に区別できない工程も含む意味である。
【0015】
本明細書における基(原子団)の表記について、置換および無置換を記していない表記は、置換基を有さないものと共に、置換基を有するものをも包含する意味である。例えば、単に「アルキル基」と記載した場合には、これは、置換基を有さないアルキル基(無置換アルキル基)、および、置換基を有するアルキル基(置換アルキル基)の両方を包含する意味である。
【0016】
本明細書において、「(メタ)アクリレート」は、「アクリレート」および「メタクリレート」の両方、または、いずれかを意味し、「(メタ)アクリル」は、「アクリル」および「メタクリル」の両方、または、いずれかを意味し、「(メタ)アクリロイル」は、「アクリロイル」および「メタクリロイル」の両方、または、いずれかを意味する。
【0017】
本明細書において、組成物中の全固形分の濃度は、その組成物の総質量に対する、溶剤を除く他の成分の質量百分率によって表される。
【0018】
本明細書において、温度は、特に述べない限り、23℃とする。
【0019】
本明細書において、重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)は、特に述べない限り、ゲル浸透クロマトグラフィ(GPC測定)に従い、ポリスチレン換算値として示される。この重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)は、例えば、HLC-8220(東ソー(株)製)を用い、カラムとしてガードカラムHZ-L、TSKgel Super HZM-M、TSKgel Super HZ4000、TSKgel Super HZ3000およびTSKgel Super HZ2000(東ソー(株)製)を用いることによって求めることができる。また、特に述べない限り、溶離液としてTHF(テトラヒドロフラン)を用いて測定したものとする。また、特に述べない限り、GPC測定における検出には、UV線(紫外線)の波長254nm検出器を使用したものとする。
【0020】
本明細書において、積層体を構成する各層の位置関係について、「上」または「下」と記載したときには、注目している複数の層のうち基準となる層の上側または下側に他の層があればよい。すなわち、基準となる層と上記他の層の間に、さらに第3の層や要素が介在していてもよく、基準となる層と上記他の層は接している必要はない。また、特に断らない限り、基材に対し層が積み重なっていく方向を「上」と称し、または、感光層がある場合には、基材から感光層へ向かう方向を「上」と称し、その反対方向を「下」と称する。なお、このような上下方向の設定は、本明細書中における便宜のためであり、実際の態様においては、本明細書における「上」方向は、鉛直上向きと異なることもありうる。
【0021】
<硬化性組成物>
本発明の硬化性組成物は、色材、重合性化合物、光重合開始剤を含有する。そして、本発明の硬化性組成物において、色材の含有量は、組成物の全固形分に対して30質量%以上である。さらに、光重合開始剤は、メタノール中での波長365nmの吸光係数が1.0×103mL/gcm以上である光重合開始剤A1と、メタノール中での波長365nmの吸光係数が1.0×102mL/gcm以下で、かつ、波長254nmの吸光係数が1.0×103mL/gcm以上である光重合開始剤A2とを含む。また、組成物の波長400~600nmの範囲における吸光度の最小値Aと、波長1000~1300nmの範囲における吸光度の最大値Bとの比であるA/Bは4.5以上であり、つまり、本発明の硬化性組成物は、可視光を吸収しやすくかつ近赤外線を透過しやすい分光特性を有する。そのため、例えば、近赤外線透過フィルタの製造に使用される。なお、本明細書において、「近赤外」は、700~2500nmの波長域周辺をいう。本発明の硬化性組成物において、上記のような分光特性の結果、可視光域の吸収特性の裾野の影響などにより、波長365nmの光に対する透過率も比較的低くなっている。
【0022】
本発明の硬化性組成物を用いることにより、密着性に優れる硬化膜を低温で形成することが可能となる。その作用は次のとおりと考えられる。
【0023】
従来、硬化性組成物の露光には、主として波長365nmの紫外線(いわゆる、i線)が使用されている。今回、そのような紫外線を用いて露光を行った場合に、本発明の硬化性組成物においては、膜の表層部で紫外線の多くが吸収されてしまい、深層部に充分な光量の紫外線が届かない場合がある問題が見出された。特に、近年、色材の濃度が高くなる傾向にあり、本発明のように、色材の含有量が、組成物の全固形分に対して30質量%以上という高濃度であるような場合には、上記問題は顕著に表れる。
【0024】
そこで、本発明において、硬化性組成物が光重合開始剤A1および光重合開始剤A2を含むことにより、350nmを超え380nm以下の波長(例えば365nm)を有する光を用いた露光(第1の露光)、および254~350nmの波長(例えば254nm)を有する光を用いた露光(第2の露光)の2段階で露光を実施し、200℃未満の低温下で充分な硬化が得られる設計としている。本明細書では、可視領域以外の電磁波についても「光」の用語を便義上使用し、可視領域以外の電磁波に対しては、「光」の意味は「電磁波」と同義とする。なお、上記非Si系材料を使用しない固体撮像素子に本発明の硬化性組成物を適用するなど、200℃未満の低温での硬化が求められていない場合には、上記第2の露光を実施せず、加熱処理で組成物を充分に硬化させることも可能である。つまり、本発明の硬化性組成物は、露光が2段階である方法に使用するほか、露光が1段階である方法に使用することも可能である。
【0025】
具体的には、次のとおりである。通常、露光では、光を吸収した光重合開始剤が活性種を発生させ、その活性種の活性作用により重合性化合物の重合が促進される。しかしながら、本発明の硬化性組成物のように、上記A/Bが4.5以上であるような組成物においては、例えばカラーフィルタ用組成物などに比べて、光重合開始剤以外の成分(特に色材)が可視光を吸収しやすい性質を有し、これに付随して、可視光域に近い365nmの波長の光も、光重合開始剤以外の成分によって吸収されやすい。このような組成物においては、365nmの波長の光を用いて露光を行っても、膜の表層部で光が吸収されて、膜の深層部まで光が届きにくいため、深層部の硬化不良が問題となる。一方、この露光において、深層部まで充分に硬化させようと、露光エネルギーを上げると、表層部で必要以上に発生した活性種が膜中で拡散し、パターンの表層部が目標のサイズより太くなってしまうという別の問題が生じる。
【0026】
そこで、本発明では、365nmの波長の光を用いた露光(第1の露光)は、現像に耐えうる程度の強度を硬化性組成物に付与する工程と位置づけ、第1の露光および現像後に、光重合開始剤A2を利用した第2の露光を実施する。第2の露光では、すでにパターンが切られており、過剰発生した活性種の拡散によるパターンサイズへの影響は小さいため、露光エネルギーを上げることができる。したがって、硬化性組成物の深層部まで光重合開始剤A2に充分な光を届かせることができ、深層部の硬化を充分に促進することができる。また、本発明においては、光重合開始剤A2の波長365nmの吸光係数が相対的に低く、第1の露光における光重合開始剤A2の消費を抑制できるため、第2の露光で、効率よく重合性化合物の重合が促進される。特に、色材の濃度が高く、さらに膜厚が厚い傾向にある近赤外線透過フィルタにおいて、膜の深層部の硬化不良は大きな問題であり、本発明は、そのような用途で使用される組成物に特に有用である。
【0027】
このような第2の露光の実施により、第1の露光で硬化性組成物の深層部の硬化が不充分であっても、第2の露光で組成物の深層部が充分に硬化し、膜深層部の機械的強度が向上することで、下地との密着性も向上させることができる。特に、波長400~600nmの光を遮光し、波長750nm以降の光を透過させる近赤外線透過フィルタや、波長400~750nmの光を遮光し、波長850nm以降の光を透過させる近赤外線透過フィルタの製造に使用する硬化性組成物の場合には、その分光特性に起因して、波長365nmの紫外光は、特に、膜の深層部まで届きにくかったため、上記2段階露光による恩恵は従来技術から予測できる範囲を超えている。
【0028】
上記A/Bは、5以上であることが好ましく、7.5以上であることがより好ましく、15以上であることがさらに好ましく、30以上であることが特に好ましい。また、上記A/Bは、500以下であることが好ましく、400以下であることがより好ましく、300以下であることがさらに好ましい。
ある波長λにおける吸光度Aλは、以下の式(1)により定義される。
Aλ=-log(Tλ/100) ・・・(1)
Aλは、波長λにおける吸光度であり、Tλは、波長λにおける透過率(%)である。
【0029】
本発明において、吸光度の値は、溶液の状態で測定した値であってもよく、硬化性組成物を用いて製膜した膜での値であってもよい。膜の状態で吸光度を測定する場合は、ガラス基板上にスピンコート等の方法により、乾燥後の膜の厚さが所定の厚さとなるように硬化性組成物を塗布し、ホットプレートを用いて100℃、120秒間乾燥して調製した膜を用いて測定することが好ましい。膜の厚さは、膜を有する基板について、触針式表面形状測定器(ULVAC社製 DEKTAK150)を用いて測定することができる。
【0030】
また、吸光度は、従来公知の分光光度計を用いて測定できる。波長400~600nmの範囲における吸光度の最小値Aが、0.1~3.0になるように調整した条件で、波長1000~1300nmの範囲における吸光度の最大値Bを測定することが好ましい。このような条件で吸光度を測定することで、測定誤差をより小さくできる。波長400~600nmの範囲における吸光度の最小値Aが、0.1~3.0になるように調整する方法としては、特に限定はない。例えば、溶液の状態で吸光度を測定する場合は、試料セルの光路長を調整する方法が挙げられる。また、膜の状態で吸光度を測定する場合は、膜厚を調整する方法などが挙げられる。吸光度は、例えば、紫外可視近赤外分光光度計を用いて測定できる。そのような装置としては、例えば、U-4100(日立ハイテク製)が使用できる。
【0031】
硬化性組成物は、以下の(1)~(4)のいずれかの分光特性を満たしていることがより好ましい。
【0032】
(1):波長400~640nmの範囲における吸光度の最小値Amin1と、波長800~1300nmの範囲における吸光度の最大値Bmax1との比であるAmin1/Bmax1が5以上であり、7.5以上であることが好ましく、15以上であることがより好ましく、30以上であることが更に好ましい。また、上記Amin1/Bmax1は、500以下であることが好ましく、400以下であることがより好ましく、300以下であることがさらに好ましい。この態様によれば、波長400~640nmの範囲の光を遮光して、波長750nm以降の近赤外線を透過可能な膜を形成することができる。このような膜は、例えば、波長400~640nmにおける透過率の最大値が20%で、波長750nmにおける透過率が70%以上である分光特性を有することが好ましい。
【0033】
(2):波長400~750nmの範囲における吸光度の最小値Amin2と、波長900~1300nmの範囲における吸光度の最大値Bmax2との比であるAmin2/Bmax2が5以上であり、7.5以上であることが好ましく、15以上であることがより好ましく、30以上であることが更に好ましい。また、上記Amin2/Bmax2は、500以下であることが好ましく、400以下であることがより好ましく、300以下であることがさらに好ましい。この態様によれば、波長400~750nmの範囲の光を遮光して、波長850nm以降の近赤外線を透過可能な膜を形成することができる。このような膜は、例えば、波長400~750nmにおける透過率の最大値が20%で、波長850nmにおける透過率が70%以上である分光特性を有することが好ましい。
【0034】
(3):波長400~850nmの範囲における吸光度の最小値Amin3と、波長1000~1300nmの範囲における吸光度の最大値Bmax3との比であるAmin3/Bmax3が5以上であり、7.5以上であることが好ましく、15以上であることがより好ましく、30以上であることが更に好ましい。また、上記Amin3/Bmax3は、500以下であることが好ましく、400以下であることがより好ましく、300以下であることがさらに好ましい。この態様によれば、波長400~830nmの範囲の光を遮光して、波長940nm以降の近赤外線を透過可能な膜を形成することができる。このような膜は、例えば、波長400~830nmにおける透過率の最大値が20%で、波長940nmにおける透過率が70%以上である分光特性を有することが好ましい。
【0035】
(4):波長400~950nmの範囲における吸光度の最小値Amin4と、波長1100~1300nmの範囲における吸光度の最大値Bmax4との比であるAmin4/Bmax4が5以上であり、7.5以上であることが好ましく、15以上であることがより好ましく、30以上であることが更に好ましい。また、上記Amin4/Bmax4は、500以下であることが好ましく、400以下であることがより好ましく、300以下であることがさらに好ましい。この態様によれば、波長400~950nmの範囲の光を遮光して、波長1040nm以降の近赤外線を透過可能な膜を形成することができる。このような膜は、例えば、波長400~950nmにおける透過率の最大値が20%で、波長1040nmにおける透過率が70%以上である分光特性を有することが好ましい。
【0036】
以下、硬化性組成物を構成し得る各成分について説明する。
<<色材>>
本発明の硬化性組成物は色材を含有する。本発明において、色材は、近赤外領域の光の少なくとも一部を透過し、かつ、可視領域の光を吸収する材料であることが好ましい。本発明において、色材は、紫色から赤色の波長領域の光を吸収する材料であることが好ましい。また、本発明において、色材は、波長400~600nmの波長領域の光を吸収する材料であることが好ましい。また、色材は、波長1000~1300nmの光を透過する材料であることが好ましい。本発明において、色材は、以下の(A)および(B)の少なくとも一方の要件を満たすことが好ましい。
(1):2種類以上の有彩色着色剤を含み、2種以上の有彩色着色剤の組み合わせで黒色を形成している。
(2):有機系黒色着色剤を含む。
【0037】
ここで、上記(2)の態様において、更に有彩色着色剤を含有することも好ましい。
【0038】
なお、本発明において、有彩色着色剤とは、白色着色剤および黒色着色剤以外の着色剤を意味する。また、本発明において、有機系黒色着色剤は、可視光を吸収するが、赤外線の少なくとも一部は透過する材料を意味する。したがって、本発明において、有機系黒色着色剤は、可視光および赤外線の両方を吸収する黒色着色剤、例えば、カーボンブラックやチタンブラックは含まない。有機系黒色着色剤は、波長400nm以上700nm以下の範囲に極大吸収波長を有する着色剤であることが好ましい。
【0039】
色材は、例えば、波長400~600nmの範囲における吸光度の最小値Aと、波長1000~1300nmの範囲における吸光度の最大値Bとの比であるA/Bが4.5以上である材料であることが好ましい。また、色材において、波長400~600nmの範囲における吸光度(吸光係数)が最大となる波長λpは、365nmよりも20nm以上大きいことが好ましく、30nm以上大きいことがより好ましい。波長λpが上記要件を満たすことにより、露光の照射光を効率よく、後述する光重合開始剤に吸収させることができる。
【0040】
上記分光特性は、1種類の素材で満たしていてもよく、複数の素材の組み合わせで満たしていてもよい。例えば、上記(1)の態様の場合、複数の有彩色着色剤を組み合わせて上記分光特性を満たしていることが好ましい。また、上記(2)の態様の場合、有機系黒色着色剤が単独で上記分光特性を満たしていてもよい。また、有機系黒色着色剤と有彩色着色剤との組み合わせで上記分光特性を満たしていてもよい。
【0041】
<<<有彩色着色剤>>>
本発明において、有彩色着色剤は、赤色着色剤、緑色着色剤、青色着色剤、黄色着色剤、紫色着色剤およびオレンジ色着色剤から選ばれる着色剤であることが好ましい。本発明において、有彩色着色剤は、顔料であってもよく、染料であってもよい。好ましくは顔料である。また、顔料には、無機顔料または有機‐無機顔料の一部を有機発色団で置換した材料を用いることもできる。無機顔料や有機‐無機顔料の一部を有機発色団で置換することで、色相設計をしやすくできる。顔料は、平均粒径(r)が、20nm≦r≦300nmであることが好ましく、25nm≦r≦250nmであることがより好ましく、30nm≦r≦200nmであることが更に好ましい。ここでいう「平均粒径」とは、顔料の一次粒子が集合した二次粒子についての平均粒径を意味する。また、使用しうる顔料の二次粒子の粒径分布(以下、単に「粒径分布」ともいう。)は、平均粒径±100nmの範囲に含まれる二次粒子が全体の70質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましい。なお、二次粒子の粒径分布は、散乱強度分布を用いて測定される。
【0042】
本発明で用いられる有彩色着色剤は、顔料を含むことが好ましい。また、有彩色着色剤中における顔料の含有量は、50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることが更に好ましく、90質量%以上であることが特に好ましい。また、有彩色着色剤は顔料のみであってもよい。顔料としては以下に示すものが挙げられる。
【0043】
カラーインデックス(C.I.)Pigment Yellow 1,2,3,4,5,6,10,11,12,13,14,15,16,17,18,20,24,31,32,34,35,35:1,36,36:1,37,37:1,40,42,43,53,55,60,61,62,63,65,73,74,77,81,83,86,93,94,95,97,98,100,101,104,106,108,109,110,113,114,115,116,117,118,119,120,123,125,126,127,128,129,137,138,139,147,148,150,151,152,153,154,155,156,161,162,164,166,167,168,169,170,171,172,173,174,175,176,177,179,180,181,182,185,187,188,193,194,199,213,214,231,232(メチン/ポリメチン系)等(以上、黄色顔料)、
C.I.Pigment Orange 2,5,13,16,17:1,31,34,36,38,43,46,48,49,51,52,55,59,60,61,62,64,71,73等(以上、オレンジ色顔料)、
C.I.Pigment Red 1,2,3,4,5,6,7,9,10,14,17,22,23,31,38,41,48:1,48:2,48:3,48:4,49,49:1,49:2,52:1,52:2,53:1,57:1,60:1,63:1,66,67,81:1,81:2,81:3,83,88,90,105,112,119,122,123,144,146,149,150,155,166,168,169,170,171,172,175,176,177,178,179,184,185,187,188,190,200,202,206,207,208,209,210,216,220,224,226,242,246,254,255,264,270,272,279,294(キサンテン系、Organo Ultramarine、Bluish Red)等(以上、赤色顔料)、
C.I.Pigment Green 7,10,36,37,58,59,62,63等(以上、緑色顔料)、
C.I.Pigment Violet 1,19,23,27,32,37,42,60(トリアリールメタン系),61(キサンテン系)等(以上、紫色顔料)、
C.I.Pigment Blue 1,2,15,15:1,15:2,15:3,15:4,15:6,16,22,29,60,64,66,79,80,87(モノアゾ系),88(メチン/ポリメチン系)等(以上、青色顔料)。
【0044】
また、緑色顔料として、1分子中のハロゲン原子数が平均10~14個であり、臭素原子数が平均8~12個であり、塩素原子数が平均2~5個であるハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料を用いることもできる。具体例としては、国際公開第2015/118720号に記載の化合物が挙げられる。また、緑色顔料としてCN106909027Aに記載の化合物、リン酸エステルを配位子として有するフタロシアニン化合物などを用いることもできる。
【0045】
また、青色顔料として、リン原子を有するアルミニウムフタロシアニン化合物を用いることもできる。具体例としては、特開2012-247591号公報の段落0022~0030、特開2011-157478号公報の段落0047に記載の化合物が挙げられる。
【0046】
また、黄色顔料として、特開2017-201003号公報に記載されている顔料、特開2017-197719号公報に記載されている顔料を用いることができる。また、黄色顔料として、下記式(I)で表されるアゾ化合物およびその互変異性構造のアゾ化合物から選ばれる少なくとも1種のアニオンと、2種以上の金属イオンと、メラミン化合物とを含む金属アゾ顔料を用いることもできる。
【0047】
【0048】
式中、R1およびR2はそれぞれ独立して、-OHまたは-NR5R6であり、R3およびR4はそれぞれ独立して、=Oまたは=NR7であり、R5~R7はそれぞれ独立して、水素原子またはアルキル基である。R5~R7が表すアルキル基の炭素数は1~10が好ましく、1~6がより好ましく、1~4が更に好ましい。アルキル基は、直鎖、分岐および環状のいずれであってもよく、直鎖または分岐が好ましく、直鎖がより好ましい。アルキル基は置換基を有していてもよい。置換基は、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、アルコキシ基、シアノ基およびアミノ基が好ましい。
【0049】
上記の金属アゾ顔料については、特開2017-171912号公報の段落0011~0062、0137~0276、特開2017-171913号公報の段落0010~0062、0138~0295、特開2017-171914号公報の段落0011~0062、0139~0190、特開2017-171915号公報の段落0010~0065、0142~0222の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0050】
また、黄色顔料として、特開2018-062644号公報に記載の化合物を用いることもできる。この化合物は顔料誘導体としても使用可能である。
【0051】
赤色顔料として、特開2017-201384号公報に記載の構造中に少なくとも1つ臭素原子が置換したジケトピロロピロール系顔料、特許第6248838号の段落0016~0022に記載のジケトピロロピロール系顔料などを用いることもできる。また、赤色顔料として、芳香族環に対して、酸素原子、硫黄原子または窒素原子が結合した基が導入された芳香族環基がジケトピロロピロール骨格に結合した構造を有する化合物を用いることもできる。
【0052】
染料としては特に制限はなく、公知の染料が使用できる。例えば、ピラゾールアゾ系、アニリノアゾ系、トリアリールメタン系、アントラキノン系、アントラピリドン系、ベンジリデン系、オキソノール系、ピラゾロトリアゾールアゾ系、ピリドンアゾ系、シアニン系、フェノチアジン系、ピロロピラゾールアゾメチン系、キサンテン系、フタロシアニン系、ベンゾピラン系、インジゴ系、ピロメテン系等の染料が挙げられる。また、特開2012-158649号公報に記載のチアゾール化合物、特開2011-184493号公報に記載のアゾ化合物、特開2011-145540号公報に記載のアゾ化合物、特開2018-012863号公報に記載の分子内イミド型のキサンテン染料も好ましく用いることができる。また、黄色染料として、特開2013-054339号公報の段落0011~0034に記載のキノフタロン化合物、特開2014-026228号公報の段落0013~0058に記載のキノフタロン化合物などを用いることもできる。
【0053】
黄色着色剤として、国際公開第2012/128233号、特開2017-201003号公報に記載されている色素を用いることができる。また、赤色着色剤として、国際公開第2012/102399号、国際公開第2012/117965号および特開2012-229344号公報に記載されている色素を用いることができる。また、緑色着色剤として、国際公開第2012/102395号に記載されている色素を用いることができる。その他、国際公開第2011/037195号に記載されている造塩型染料を用いることもできる。
【0054】
色材は、赤色着色剤、青色着色剤、黄色着色剤、紫色着色剤および緑色着色剤から選ばれる2種以上を含むことが好ましい。すなわち、色材は、赤色着色剤、青色着色剤、黄色着色剤、紫色着色剤および緑色着色剤から選ばれる2種類以上の着色剤の組み合わせで黒色を形成していることが好ましい。好ましい組み合わせとしては、例えば以下が挙げられる。
(1)赤色着色剤および青色着色剤の組み合わせ。
(2)赤色着色剤、青色着色剤および黄色着色剤の組み合わせ。
(3)赤色着色剤、青色着色剤、黄色着色剤および紫色着色剤の組み合わせ。
(4)赤色着色剤、青色着色剤、黄色着色剤、紫色着色剤および緑色着色剤の組み合わせ。
(5)赤色着色剤、青色着色剤、黄色着色剤および緑色着色剤の組み合わせ。
(6)赤色着色剤、青色着色剤および緑色着色剤の組み合わせ。
(7)黄色着色剤および紫色着色剤の組み合わせ。
【0055】
上記(1)の態様において、赤色着色剤と青色着色剤との質量比は、赤色着色剤:青色着色剤=20~80:20~80であることが好ましく、20~60:40~80であることがより好ましく、20~50:50~80であることが更に好ましい。
【0056】
上記(2)の態様において、赤色着色剤と青色着色剤と黄色着色剤の質量比は、赤色着色剤:青色着色剤:黄色着色剤=10~80:20~80:10~40であることが好ましく、10~60:30~80:10~30であることがより好ましく、10~40:40~80:10~20であることが更に好ましい。
【0057】
上記(3)の態様において、赤色着色剤と青色着色剤と黄色着色剤と紫色着色剤との質量比は、赤色着色剤:青色着色剤:黄色着色剤:紫色着色剤=10~80:20~80:5~40:5~40であることが好ましく、10~60:30~80:5~30:5~30であることがより好ましく、10~40:40~80:5~20:5~20であることが更に好ましい。
【0058】
上記(4)の態様において、赤色着色剤と青色着色剤と黄色着色剤と紫色着色剤と緑色着色剤の質量比は、赤色着色剤:青色着色剤:黄色着色剤:紫色着色剤:緑色着色剤=10~80:20~80:5~40:5~40:5~40であることが好ましく、10~60:30~80:5~30:5~30:5~30であることがより好ましく、10~40:40~80:5~20:5~20:5~20であることが更に好ましい。
【0059】
上記(5)の態様において、赤色着色剤と青色着色剤と黄色着色剤と緑色着色剤の質量比は、赤色着色剤:青色着色剤:黄色着色剤:緑色着色剤=10~80:20~80:5~40:5~40であることが好ましく、10~60:30~80:5~30:5~30であることがより好ましく、10~40:40~80:5~20:5~20であることが更に好ましい。
【0060】
上記(6)の態様において、赤色着色剤と青色着色剤と緑色着色剤の質量比は、赤色着色剤:青色着色剤:緑色着色剤=10~80:20~80:10~40であることが好ましく、10~60:30~80:10~30であることがより好ましく、10~40:40~80:10~20であることが更に好ましい。
【0061】
上記(7)の態様において、黄色着色剤と紫色着色剤の質量比は、黄色着色剤:紫色着色剤=10~50:40~80であることが好ましく、20~40:50~70であることがより好ましく、30~40:60~70であることが更に好ましい。
【0062】
黄色着色剤としては、C.I.Pigment Yellow 139,150,185が好ましく、C.I.Pigment Yellow 139,150がより好ましく、C.I.Pigment Yellow 139が更に好ましい。青色着色剤としては、C.I.Pigment Blue 15:6が好ましい。紫色着色剤としては、C.I.Pigment Violet 23が好ましい。赤色着色剤としては、Pigment Red 122,177,224,254が好ましく、Pigment Red 122,177,254がより好ましく、Pigment Red 254が更に好ましい。緑色着色剤としては、C.I.Pigment Green 7、36、58、59が好ましい。
【0063】
<<<有機系黒色着色剤>>>
本発明において、有機系黒色着色剤は、顔料であってもよく、染料であってもよく、好ましくは顔料である。有機系黒色着色剤は、例えば、ビスベンゾフラノン化合物(あるいはベンゾジフラノン化合物とも言われる。)、アゾメチン化合物、ペリレン化合物およびアゾ化合物などが挙げられる。有機系黒色着色剤は、ビスベンゾフラノン化合物、ペリレン化合物およびアゾ化合物の少なくとも1種を含むことが好ましい。ビスベンゾフラノン化合物としては、特表2010-534726号公報、特表2012-515233号公報、特表2012-515234号公報などに記載の化合物が挙げられ、例えば、BASF社製の「Irgaphor Black」として入手可能である。ペリレン化合物としては、C.I.Pigment Black 31、32、特開2017-226821号公報の段落0016~0020に記載の化合物などが挙げられる。アゾメチン化合物としては、特開平01-170601号公報、特開平02-034664号公報などに記載のものが挙げられ、例えば、大日精化社製の「クロモファインブラックA1103」として入手できる。
【0064】
本発明において、ビスベンゾフラノン化合物は、下記式で表される化合物およびこれらの混合物であることが好ましい。
【0065】
【0066】
式中、R1およびR2はそれぞれ独立して水素原子又は置換基を表し、R3およびR4はそれぞれ独立して置換基を表し、aおよびbはそれぞれ独立して0~4の整数を表し、aが2以上の場合、複数のR3は、同一であってもよく、異なってもよく、複数のR3は結合して環を形成していてもよく、bが2以上の場合、複数のR4は、同一であってもよく、異なってもよく、複数のR4は結合して環を形成していてもよい。
【0067】
R1~R4が表す置換基は、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アラルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、-OR301、-COR302、-COOR303、-OCOR304、-NR305R306、-NHCOR307、-CONR308R309、-NHCONR310R311、-NHCOOR312、-SR313、-SO2R314、-SO2OR315、-NHSO2R316または-SO2NR317R318を表し、R301~R318は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基またはヘテロアリール基を表す。
【0068】
ビスベンゾフラノン化合物の詳細については、特表2010-534726号公報の段落0014~0037の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0069】
本発明において、色材として有機系黒色着色剤を用いる場合、有彩色着色剤と組み合わせて使用することが好ましい。有機系黒色着色剤と有彩色着色剤とを併用することで、優れた分光特性が得られやすい。有機系黒色着色剤と組み合わせて用いる有彩色着色剤としては、例えば、赤色着色剤、青色着色剤、紫色着色剤などが挙げられ、赤色着色剤および青色着色剤が好ましい。これらは単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0070】
また、有彩色着色剤と有機系黒色着色剤との混合割合は、有機系黒色着色剤100質量部に対して、有彩色着色剤が10~200質量部が好ましく、15~150質量部がより好ましい。
【0071】
本発明において、色材における顔料の含有量は、色材の全量に対して95質量%以上であることが好ましく、97質量%以上であることがより好ましく、99質量%以上であることが更に好ましい。
【0072】
本発明の硬化性組成物において、色材の含有量は、組成物の全固形分に対して30質量%以上であり、35質量%以上がより好ましく、40質量%以上が更に好ましく、45質量%以上がより一層好ましく、50質量%以上が特に好ましい。また、色材の含有量は、組成物の全固形分に対して80質量%以下であることが好ましく、75質量%以下であることが好ましく、70質量%以下であることがより好ましい。
【0073】
<<<近赤外線吸収剤>>>
本発明の硬化性組成物は、近赤外線吸収剤を含有することができる。近赤外線吸収剤は、組成物の分光特性において、近赤外域で透過する光をより長波長側に限定する役割を有している。
【0074】
本発明において、近赤外線吸収剤としては、近赤外領域(好ましくは、波長700nmを超え1300nm以下)の波長領域に極大吸収波長を有する化合物を好ましく用いることができる。近赤外線吸収剤は、顔料であってもよく、染料であってもよい。
【0075】
本発明において、近赤外線吸収剤としては、単環または縮合環の芳香族環を含むπ共役平面を有する近赤外線吸収化合物を好ましく用いることができる。近赤外線吸収化合物が有するπ共役平面を構成する水素以外の原子数は、14個以上であることが好ましく、20個以上であることがより好ましく、25個以上であることが更に好ましく、30個以上であることが特に好ましい。上限は、例えば、80個以下であることが好ましく、50個以下であることがより好ましい。
【0076】
近赤外線吸収化合物が有するπ共役平面は、単環または縮合環の芳香族環を2個以上含むことが好ましく、前述の芳香族環を3個以上含むことがより好ましく、前述の芳香族環を4個以上含むことが更に好ましく、前述の芳香族環を5個以上含むことが特に好ましい。上限は、100個以下が好ましく、50個以下がより好ましく、30個以下が更に好ましい。前述の芳香族環としては、ベンゼン環、ナフタレン環、インデン環、アズレン環、ヘプタレン環、インダセン環、ペリレン環、ペンタセン環、クアテリレン環、アセナフテン環、フェナントレン環、アントラセン環、ナフタセン環、クリセン環、トリフェニレン環、フルオレン環、ピリジン環、キノリン環、イソキノリン環、イミダゾール環、ベンゾイミダゾール環、ピラゾール環、チアゾール環、ベンゾチアゾール環、トリアゾール環、ベンゾトリアゾール環、オキサゾール環、ベンゾオキサゾール環、イミダゾリン環、ピラジン環、キノキサリン環、ピリミジン環、キナゾリン環、ピリダジン環、トリアジン環、ピロール環、インドール環、イソインドール環、カルバゾール環、および、これらの環を有する縮合環が挙げられる。
【0077】
近赤外線吸収化合物は、波長700~1000nmの範囲に極大吸収波長を有する化合物であることが好ましい。なお、本明細書において、「波長700~1000nmの範囲に極大吸収波長を有する」とは、近赤外線吸収化合物の溶液での吸収スペクトルにおいて、波長700~1000nmの範囲に最大の吸光度を示す波長を有することを意味する。近赤外線吸収化合物の溶液中での吸収スペクトルの測定に用いる測定溶媒は、クロロホルム、メタノール、ジメチルスルホキシド、酢酸エチル、テトラヒドロフランが挙げられる。クロロホルムで溶解する化合物の場合は、クロロホルムを測定溶媒として用いる。クロロホルムで溶解しない化合物の場合は、メタノールを用いる。また、クロロホルムおよびメタノールのいずれにも溶解しない場合はジメチルスルホキシドを用いる。
【0078】
本発明において、近赤外線吸収化合物は、ピロロピロール化合物、シアニン化合物、スクアリリウム化合物、フタロシアニン化合物、ナフタロシアニン化合物、クアテリレン化合物、メロシアニン化合物、クロコニウム化合物、オキソノール化合物、ジイモニウム化合物、ジチオール化合物、トリアリールメタン化合物、ピロメテン化合物、アゾメチン化合物、アントラキノン化合物及びジベンゾフラノン化合物から選ばれる少なくとも1種が好ましく、ピロロピロール化合物、シアニン化合物、スクアリリウム化合物、フタロシアニン化合物、ナフタロシアニン化合物およびジイモニウム化合物から選ばれる少なくとも1種がより好ましく、ピロロピロール化合物、シアニン化合物およびスクアリリウム化合物から選ばれる少なくとも1種が更に好ましく、ピロロピロール化合物が特に好ましい。
【0079】
ピロロピロール化合物としては、例えば、特開2009-263614号公報の段落0016~0058に記載の化合物、特開2011-068731号公報の段落0011~0052に記載の化合物、国際公開第2015/166873号の段落0010~0033に記載の化合物などが挙げられ、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0080】
スクアリリウム化合物としては、例えば、特開2011-208101号公報の段落0044~0049に記載の化合物、特許第6065169号公報の段落0060~0061に記載の化合物、国際公開第2016/181987号の段落0040に記載の化合物、国際公開第2013/133099号に記載の化合物、国際公開第2014/088063号に記載の化合物、特開2014-126642号公報に記載の化合物、特開2016-146619号公報に記載の化合物、特開2015-176046号公報に記載の化合物、特開2017-025311号公報に記載の化合物、国際公開第2016/154782号に記載の化合物、特許5884953号公報に記載の化合物、特許6036689号公報に記載の化合物、特許5810604号公報に記載の化合物、特開2017-068120号公報に記載の化合物、特開2017-197437号公報に記載の化合物、国際公開第2017/213047号の段落0090~0107に記載の化合物などが挙げられ、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0081】
シアニン化合物としては、例えば、特開2009-108267号公報の段落0044~0045に記載の化合物、特開2002-194040号公報の段落0026~0030に記載の化合物、特開2015-172004号公報に記載の化合物、特開2015-172102号公報に記載の化合物、特開2008-088426号公報に記載の化合物などが挙げられ、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0082】
また、ジイモニウム化合物としては、例えば、特表2008-528706号公報に記載の化合物が挙げられ、この内容は本明細書に組み込まれる。フタロシアニン化合物としては、例えば、特開2012-077153号公報の段落0093に記載の化合物、特開2006-343631号公報に記載のオキシチタニウムフタロシアニン、特開2013-195480号公報の段落0013~0029に記載の化合物が挙げられ、これらの内容は本明細書に組み込まれる。ナフタロシアニン化合物としては、例えば、特開2012-077153号公報の段落0093に記載の化合物が挙げられ、この内容は本明細書に組み込まれる。また、シアニン化合物、フタロシアニン化合物、ナフタロシアニン化合物、ジイモニウム化合物およびスクアリリウム化合物は、特開2010-111750号公報の段落0010~0081に記載の化合物を使用してもよく、この内容は本明細書に組み込まれる。また、シアニン化合物は、例えば、「機能性色素、大河原信/松岡賢/北尾悌次郎/平嶋恒亮・著、講談社サイエンティフィック」を参酌することができ、この内容は本明細書に組み込まれる。また、近赤外線吸収化合物としては、特開2016-146619号公報に記載された化合物を用いることもでき、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0083】
また、近赤外線吸収剤として、特開2017-197437号公報に記載のスクアリリウム化合物、国際公開第2017/213047号の段落0090~0107に記載のスクアリリウム化合物、特開2018-054760号公報の段落0019~0075に記載のピロール環含有化合物、特開2018-040955号公報の段落0078~0082に記載のピロール環含有化合物、特開2018-002773号公報の段落0043~0069に記載のピロール環含有化合物、特開2018-041047号公報の段落0024~0086に記載のアミドα位に芳香環を有するスクアリリウム化合物、特開2017-179131号公報に記載のアミド連結型スクアリリウム化合物、特開2017-141215号公報に記載のピロールビス型スクアリリウム骨格又はクロコニウム骨格を有する化合物、特開2017-082029号公報に記載されたジヒドロカルバゾールビス型のスクアリリウム化合物、特開2017-068120号公報の段落0027~0114に記載の非対称型の化合物、特開2017-067963号公報に記載されたピロール環含有化合物(カルバゾール型)、特許第6251530号公報に記載されたフタロシアニン化合物などを用いることもできる。
【0084】
本発明において、近赤外線吸収化合物としては、市販品を用いることもできる。例えば、SDO-C33(有本化学工業(株)製)、イーエクスカラーIR-14、イーエクスカラーIR-10A、イーエクスカラーTX-EX-801B、イーエクスカラーTX-EX-805K((株)日本触媒製)、ShigenoxNIA-8041、ShigenoxNIA-8042、ShigenoxNIA-814、ShigenoxNIA-820、ShigenoxNIA-839(ハッコーケミカル社製)、EpoliteV-63、Epolight3801、Epolight3036(EPOLIN社製)、PRO-JET825LDI(富士フイルム(株)製)、NK-3027、NK-5060((株)林原製)、YKR-3070(三井化学(株)製)などが挙げられる。
【0085】
本発明の組成物において、近赤外線吸収剤として、無機粒子を用いることもできる。無機粒子の形状は特に制限されず、球状、非球状を問わず、シート状、ワイヤー状、チューブ状であってもよい。無機粒子としては、金属酸化物粒子または金属粒子が好ましい。金属酸化物粒子としては、例えば、酸化インジウムスズ(ITO)粒子、酸化アンチモンスズ(ATO)粒子、酸化亜鉛(ZnO)粒子、Alドープ酸化亜鉛(AlドープZnO)粒子、フッ素ドープ二酸化スズ(FドープSnO2)粒子、ニオブドープ二酸化チタン(NbドープTiO2)粒子などが挙げられる。金属粒子としては、例えば、銀(Ag)粒子、金(Au)粒子、銅(Cu)粒子、ニッケル(Ni)粒子などが挙げられる。また、無機粒子としては酸化タングステン系化合物を用いることもできる。酸化タングステン系化合物は、セシウム酸化タングステンであることが好ましい。酸化タングステン系化合物の詳細については、特開2016-006476号公報の段落0080を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0086】
本発明の組成物において、近赤外線吸収剤の含有量は、組成物の全固形分に対して1~30質量%であることが好ましい。上限は、20質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましい。下限は、3質量%以上が好ましく、5質量%以上がより好ましい。
【0087】
また、近赤外線吸収剤と色材との合計量は、組成物の全固形分の10~70質量%であることが好ましい。下限は、20質量%以上が好ましく、25質量%以上がより好ましい。
【0088】
また、近赤外線吸収剤と色材との合計量中における、近赤外線吸収剤の含有量は、5~40質量%であることが好ましい。上限は、30質量%以下が好ましく、25質量%以下がより好ましい。下限は、10質量%以上が好ましく、15質量%以上がより好ましい。
【0089】
本発明の組成物においては、近赤外線吸収剤は1種単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。近赤外線吸収剤を2種以上併用する場合は、その合計が上記範囲であることが好ましい。
【0090】
本発明において、近赤外線吸収化合物としては、市販品を用いることもできる。例えば、SDO-C33(有本化学工業(株)製)、イーエクスカラーIR-14、イーエクスカラーIR-10A、イーエクスカラーTX-EX-801B、イーエクスカラーTX-EX-805K((株)日本触媒製)、ShigenoxNIA-8041、ShigenoxNIA-8042、ShigenoxNIA-814、ShigenoxNIA-820、ShigenoxNIA-839(ハッコーケミカル社製)、EpoliteV-63、Epolight3801、Epolight3036(EPOLIN社製)、PRO-JET825LDI(富士フイルム(株)製)、NK-3027、NK-5060((株)林原製)、YKR-3070(三井化学(株)製)などが挙げられる。
【0091】
本発明の硬化性組成物が近赤外線吸収剤を含有する場合、近赤外線吸収剤の含有量は、硬化性組成物の全固形分に対して1~30質量%であることが好ましい。上限は、25質量%以下が好ましく、20質量%以下がより好ましい。下限は、3質量%以上が好ましく、5質量%以上がより好ましい。また、近赤外線吸収剤と色材との合計量は、硬化性組成物の全固形分の35~80質量%であることが好ましい。下限は、40質量%以上が好ましく、45質量%以上がより好ましく、50質量%以上が更に好ましく、55質量%以上が特に好ましい。上限は、75質量%以下が好ましく、70質量%以下がより好ましい。また、近赤外線吸収剤と色材との合計量中における、近赤外線吸収剤の含有量は、5~40質量%であることが好ましい。上限は、30質量%以下が好ましく、25質量%以下がより好ましい。下限は、10質量%以上が好ましく、15質量%以上がより好ましい。
【0092】
本発明の硬化性組成物においては、近赤外線吸収剤は1種単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。近赤外線吸収剤を2種以上併用する場合は、その合計が上記範囲であることが好ましい。
【0093】
<<重合性化合物>>
本発明の硬化性組成物は、重合性化合物を含有する。重合性化合物としては、エチレン性不飽和基を有する化合物などが挙げられる。エチレン性不飽和基としては、ビニル基、(メタ)アリル基、(メタ)アクリロイル基などが挙げられる。重合性化合物はラジカルにより重合可能な化合物(ラジカル重合性化合物)であることが好ましい。
【0094】
重合性化合物の分子量は、100~2000が好ましい。上限は、1500以下が好ましく、1000以下がより好ましい。下限は、150以上がより好ましく、250以上が更に好ましい。
【0095】
重合性化合物のエチレン性不飽和基価(以下、C=C価という)は、組成物の経時安定性の観点から2~14mmol/gであることが好ましい。下限は、3mmol/g以上であることが好ましく、4mmol/g以上であることがより好ましく、5mmol/g以上であることが更に好ましい。上限は12mmol/g以下であることが好ましく、10mmol/g以下であることがより好ましく、8mmol/g以下であることが更に好ましい。重合性化合物のC=C価は、重合性化合物の1分子中に含まれるエチレン性不飽和基の数を重合性化合物の分子量で割ることで算出した。
【0096】
重合性化合物は、エチレン性不飽和基を3個以上含む化合物であることが好ましく、エチレン性不飽和基を4個以上含む化合物であることがより好ましい。この態様によれば、露光による硬化性組成物の硬化性が良好である。エチレン性不飽和基の数の上限は、組成物の経時安定性の観点から15個以下であることが好ましく、10個以下であることがより好ましく、6個以下であることが更に好ましい。また、重合性化合物は、3官能以上の(メタ)アクリレート化合物であることが好ましく、3~15官能の(メタ)アクリレート化合物であることがより好ましく、3~10官能の(メタ)アクリレート化合物であることが更に好ましく、3~6官能の(メタ)アクリレート化合物であることが特に好ましい。
【0097】
重合性化合物は、エチレン性不飽和基とアルキレンオキシ基とを含む化合物であることも好ましい。このような重合性化合物は柔軟性が高く、エチレン性不飽和基が移動し易いため、露光時において重合性化合物同士が反応し易く、支持体などとの密着性に優れた硬化膜(画素)を形成できる。また、光重合開始剤としてヒドロキシアルキルフェノン化合物を用いた場合においては、重合性化合物と光重合開始剤とが近接して重合性化合物の近傍でラジカルを発生させて重合性化合物をより効果的に反応させることができると推測され、より優れた密着性や耐溶剤性を有する硬化膜(画素)を形成し易い。
【0098】
重合性化合物の1分子中に含まれるアルキレンオキシ基の数は、2個以上であることが好ましく、3個以上であることがより好ましく、4個以上であることがさらに好ましい。上限は、組成物の経時安定性の観点から20個以下が好ましい。
【0099】
また、エチレン性不飽和基とアルキレンオキシ基とを含む化合物のSP値(Solubility Parameter)は、組成物中の他の成分との相溶性の観点から9.0~11.0が好ましい。上限は、10.75以下が好ましく、10.5以下がより好ましい。下限は、9.25以上が好ましく、9.5以上が更に好ましい。なお、本明細書において、SP値はFedors法に基づく計算値を使用した。
【0100】
エチレン性不飽和基とアルキレンオキシ基とを有する化合物としては、下記式(M-1)で表される化合物が挙げられる。
【0101】
【0102】
式中A1は、エチレン性不飽和基を表し、L1は単結合または2価の連結基を表し、R1は、アルキレン基を表し、mは1~30の整数を表し、nは3以上の整数を表し、L2はn価の連結基を表す。
【0103】
A1が表すエチレン性不飽和基としては、ビニル基、(メタ)アリル基、(メタ)アクリロイル基が挙げられ、(メタ)アクリロイル基が好ましい。
【0104】
L1が表す2価の連結基としては、アルキレン基、アリーレン基、-O-、-CO-、-COO-、-OCO-、-NH-およびこれらの2種以上を組み合わせた基が挙げられる。アルキレン基の炭素数は、1~30が好ましく、1~20がより好ましく、1~15が更に好ましい。アルキレン基は、直鎖、分岐、環状のいずれでもよい。アリーレン基の炭素数は、6~30が好ましく、6~20がより好ましく、6~10が更に好ましい。
【0105】
R1が表すアルキレン基の炭素数は、1~10が好ましく、1~5がより好ましく、1~3が更に好ましく、2または3が特に好ましく、2が最も好ましい。R1が表すアルキレン基は、直鎖、分岐が好ましく、直鎖がより好ましい。R1が表すアルキレンの具体例は、エチレン基、直鎖または分岐のプロピレン基などが挙げられ、エチレン基が好ましい。
【0106】
mは、1~30の整数を表し、1~20の整数が好ましく、1~10の整数がより好ましく、1~5が更に好ましい。
nは3以上の整数を表し、4以上の整数が好ましい。nの上限は15以下の整数が好ましく、10以下の整数がより好ましく、6以下の整数が更に好ましい。
【0107】
L2が表すn価の連結基としては、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、複素環基およびこれらの組み合わせからなる基、ならびに、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基および複素環基から選ばれる少なくとも1種と、-O-、-CO-、-COO-、-OCO-および-NH-から選ばれる少なくとも1種とを組み合わせてなる基が挙げられる。脂肪族炭化水素基の炭素数は、1~30が好ましく、1~20がより好ましく、1~15が更に好ましい。脂肪族炭化水素基は、直鎖、分岐、環状のいずれでもよく、直鎖または分岐が好ましい。芳香族炭化水素基の炭素数は、6~30が好ましく、6~20がより好ましく、6~10が更に好ましい。複素環基は、非芳香族の複素環基であってもよく、芳香族複素環基であってもよい。複素環基は、5員環または6員環が好ましい。複素環基を構成するヘテロ原子の種類は窒素原子、酸素原子、硫黄原子などが挙げられる。複素環基を構成するヘテロ原子の数は1~3が好ましい。複素環基は、単環であってもよく、縮合環であってもよい。L2が表すn価の連結基は、多官能アルコールから誘導される基であることも好ましい。
【0108】
エチレン性不飽和基とアルキレンオキシ基とを有する化合物としては、下記式(M-2)で表される化合物がより好ましい。
【0109】
【0110】
式中R2は水素原子またはメチル基を表し、R1は、アルキレン基を表し、mは1~30の整数を表し、nは3以上の整数を表し、L2はn価の連結基を表す。式(M-2)のR1、L2、m、nは、式(M-1)のR1、L2、m、nと同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0111】
エチレン性不飽和基とアルキレンオキシ基とを有する重合性化合物の市販品としては、KAYARAD T-1420(T)、RP-1040(日本化薬(株)製)などが挙げられる。
【0112】
重合性化合物として、ジペンタエリスリトールトリアクリレート(市販品としてはKAYARAD D-330;日本化薬(株)製)、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート(市販品としてはKAYARAD D-320;日本化薬(株)製)、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート(市販品としてはKAYARAD D-310;日本化薬(株)製)、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート(市販品としてはKAYARAD DPHA;日本化薬(株)製、NKエステルA-DPH-12E;新中村化学工業(株)製)、およびこれらの(メタ)アクリロイル基がエチレングリコールおよび/またはプロピレングリコール残基を介して結合している構造の化合物(例えば、サートマー社から市販されている、SR454、SR499)などを用いることもできる。
【0113】
また、重合性化合物として、アロニックス M-402(東亞合成(株)製、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートとジペンタエリスリトールペンタアクリレートの混合物)を用いることも好ましい。
【0114】
また、重合性化合物として、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンプロピレンオキシ変性トリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエチレンオキシ変性トリ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸エチレンオキシ変性トリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートなどの3官能の(メタ)アクリレート化合物を用いることもできる。3官能の(メタ)アクリレート化合物の市販品としては、アロニックスM-309、M-310、M-321、M-350、M-360、M-313、M-315、M-306、M-305、M-303、M-452、M-450(東亞合成(株)製)、NKエステル A9300、A-GLY-9E、A-GLY-20E、A-TMM-3、A-TMM-3L、A-TMM-3LM-N、A-TMPT、TMPT(新中村化学工業(株)製)、KAYARAD GPO-303、TMPTA、THE-330、TPA-330、PET-30(日本化薬(株)製)などが挙げられる。
【0115】
重合性化合物として、酸基を有する重合性化合物を用いることも好ましい。酸基を有する重合性化合物を用いることで、現像時に未露光部の硬化性組成物層が除去されやすく、現像残渣の発生を抑制できる。酸基としては、カルボキシル基、スルホ基、リン酸基等が挙げられ、カルボキシル基が好ましい。酸基を有する重合性化合物としては、コハク酸変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。酸基を有する重合性化合物の市販品としては、アロニックスM-510、M-520、アロニックスTO-2349(東亞合成(株)製)等が挙げられる。酸基を有する重合性化合物の好ましい酸価としては、0.1~40mgKOH/gであり、より好ましくは5~30mgKOH/gである。重合性化合物の酸価が0.1mgKOH/g以上であれば、現像液に対する溶解性が良好であり、40mgKOH/g以下であれば、製造や取扱い上、有利である。
【0116】
重合性化合物は、カプロラクトン構造を有する化合物であることも好ましい。カプロラクトン構造を有する重合性化合物は、例えば、日本化薬(株)からKAYARAD DPCAシリーズとして市販されており、DPCA-20、DPCA-30、DPCA-60、DPCA-120等が挙げられる。
【0117】
重合性化合物は、特開2017-048367号公報、特許第6057891号公報、特許第6031807号公報に記載されている化合物、特開2017-194662号公報に記載されている化合物、8UH-1006、8UH-1012(以上、大成ファインケミカル(株)製)、ライトアクリレートPOB-A0(共栄社化学(株)製)などを用いることも好ましい。
【0118】
重合性化合物の含有量は、硬化性組成物の全固形分中5.0~35質量%であることが好ましい。上限は、30質量%以下であることが好ましく、25質量%以下であることがより好ましい。下限は、7.5質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましい。
【0119】
<<光重合開始剤>>
本発明の硬化性組成物は光重合開始剤を含有する。光重合開始剤としては、ハロゲン化炭化水素誘導体(例えば、トリアジン骨格を有する化合物、オキサジアゾール骨格を有する化合物など)、アシルホスフィンオキサイド等のアシルホスフィン化合物、ヘキサアリールビイミダゾール化合物、オキシム誘導体等のオキシム化合物、有機過酸化物、チオ化合物、ケトン化合物、芳香族オニウム塩、ケトオキシムエーテル化合物、アミノアルキルフェノン化合物、ヒドロキシアルキルフェノン化合物、フェニルグリオキシレート化合物などが挙げられる。光重合開始剤の具体例としては、例えば、特開2013-029760号公報の段落0265~0268、特許第6301489号公報の記載を参酌することができ、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0120】
フェニルグリオキシレート化合物としては、フェニルグリオキシリックアシッドメチルエステルなどが挙げられる。市販品としては、DAROCUR-MBF(BASF社製)などが挙げられる。
【0121】
アミノアルキルフェノン化合物としては、例えば、特開平10-291969号公報に記載のアミノアルキルフェノン化合物が挙げられる。また、アミノアルキルフェノン化合物としては、IRGACURE-907、IRGACURE-369、IRGACURE-379(いずれもBASF社製)を用いることもできる。
【0122】
アシルホスフィン化合物としては、特許第4225898号公報に記載のアシルホスフィン化合物が挙げられる。具体例としては、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイドなどが挙げられる。アシルホスフィン化合物としては、IRGACURE-819、DAROCUR-TPO(いずれもBASF社製)を用いることもできる。
【0123】
ヒドロキシアルキルフェノン化合物としては、下記式(V)で表される化合物が挙げられる。
【0124】
【0125】
式中Rv1は、置換基を表し、Rv2およびRv3は、それぞれ独立して水素原子または置換基を表し、Rv2とRv3とが互いに結合して環を形成していてもよく、mは0~5の整数を表す。
【0126】
Rv1が表す置換基としては、アルキル基(好ましくは、炭素数1~10のアルキル基)、アルコキシ基(好ましくは、炭素数1~10のアルコキシ基)が挙げられる。アルキル基およびアルコキシ基は、直鎖または分岐が好ましく、直鎖がより好ましい。Rv1が表すアルキル基およびアルコキシ基は、無置換であってもよく、置換基を有していてもよい。置換基としては、ヒドロキシル基や、ヒドロキシアルキルフェノン構造を有する基などが挙げられる。ヒドロキシアルキルフェノン構造を有する基としては、式(V)におけるRv1が結合したベンゼン環またはRv1から水素原子を1個除去した構造の基が挙げられる。
【0127】
Rv2およびRv3は、それぞれ独立して水素原子または置換基を表す。置換基としては、アルキル基(好ましくは炭素数1~10のアルキル基)が好ましい。また、Rv2とRv3は互いに結合して環(好ましくは炭素数4~8の環、より好ましくは、炭素数4~8の脂肪族環)を形成していてもよい。アルキル基は、直鎖または分岐が好ましく、直鎖がより好ましい。
【0128】
式(V)で表される化合物の具体例としては、下記化合物が挙げられる。
【化7】
【0129】
ヒドロキシアルキルフェノン化合物としては、IRGACURE-184、DAROCUR-1173、IRGACURE-500、IRGACURE-2959、IRGACURE-127(商品名:いずれもBASF社製)を用いることもできる。
【0130】
オキシム化合物としては、特開2001-233842号公報に記載の化合物、特開2000-080068号公報に記載の化合物、特開2006-342166号公報に記載の化合物、J.C.S.Perkin II(1979年、pp.1653-1660)に記載の化合物、J.C.S.Perkin II(1979年、pp.156-162)に記載の化合物、Journal of Photopolymer Science and Technology(1995年、pp.202-232)に記載の化合物、特開2000-066385号公報に記載の化合物、特開2000-080068号公報に記載の化合物、特表2004-534797号公報に記載の化合物、特開2006-342166号公報に記載の化合物、特開2017-019766号公報に記載の化合物、特許第6065596号公報に記載の化合物、国際公開第2015/152153号に記載の化合物、国際公開第2017/051680号に記載の化合物、特開2017-198865号公報に記載の化合物、国際公開第2017/164127号の段落0025~0038に記載の化合物などが挙げられる。オキシム化合物の具体例としては、3-ベンゾイルオキシイミノブタン-2-オン、3-アセトキシイミノブタン-2-オン、3-プロピオニルオキシイミノブタン-2-オン、2-アセトキシイミノペンタン-3-オン、2-アセトキシイミノ-1-フェニルプロパン-1-オン、2-ベンゾイルオキシイミノ-1-フェニルプロパン-1-オン、3-(4-トルエンスルホニルオキシ)イミノブタン-2-オン、及び2-エトキシカルボニルオキシイミノ-1-フェニルプロパン-1-オンなどが挙げられる。市販品としては、IRGACURE-OXE01、IRGACURE-OXE02、IRGACURE-OXE03、IRGACURE-OXE04(以上、BASF社製)、TR-PBG-304(常州強力電子新材料有限公司製)、アデカオプトマーN-1919((株)ADEKA製、特開2012-014052号公報に記載の光重合開始剤2)が挙げられる。
【0131】
またオキシム化合物としては、カルバゾール環のN位にオキシムが連結した特表2009-519904号公報に記載の化合物、ベンゾフェノン部位にヘテロ置換基が導入された米国特許第7626957号明細書に記載の化合物、色素部位にニトロ基が導入された特開2010-015025号公報および米国特許出願公開第2009/0292039号明細書に記載の化合物、国際公開第2009/131189号に記載のケトオキシム化合物、トリアジン骨格とオキシム骨格を同一分子内に含有する米国特許第7556910号明細書に記載の化合物、405nmに吸収極大を有し、g線光源に対して良好な感度を有する特開2009-221114号公報に記載の化合物などを用いてもよい。好ましくは、例えば、特開2013-029760号公報の段落0274~0306を参酌することができ、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0132】
オキシム化合物は、フッ素原子を含むオキシム化合物であることが好ましい。フッ素原子を含むオキシム化合物は、フッ素原子を有するアルキル基(以下、含フッ素アルキル基ともいう)、および、フッ素原子を有するアルキル基を含む基(以下、含フッ素基ともいう)を有することが好ましい。含フッ素基としては、-ORF1、-SRF1、-CORF1、-COORF1、-OCORF1、-NRF1RF2、-NHCORF1、-CONRF1RF2、-NHCONRF1RF2、-NHCOORF1、-SO2RF1、-SO2ORF1および-NHSO2RF1から選ばれる少なくとも1種の基が好ましい。RF1は、含フッ素アルキル基を表し、RF2は、水素原子、アルキル基、含フッ素アルキル基、アリール基またはヘテロ環基を表す。含フッ素基は、-ORF1が好ましい。
【0133】
アルキル基および含フッ素アルキル基の炭素数は、1~20が好ましく、1~15がより好ましく、1~10が更に好ましく、1~4が特に好ましい。アルキル基および含フッ素アルキル基は、直鎖、分岐、環状のいずれでもよいが、直鎖または分岐が好ましい。含フッ素アルキル基において、フッ素原子の置換率は40~100%であることが好ましく、50~100%であることがより好ましく、60~100%であることがさらに好ましい。なお、フッ素原子の置換率とは、アルキル基が有する全水素原子の数に対してフッ素原子に置換されている数の比率(%)をいう。
【0134】
アリール基の炭素数は、6~20が好ましく、6~15がより好ましく、6~10が更に好ましい。
【0135】
ヘテロ環基は、5員環または6員環が好ましい。ヘテロ環基は、単環であってもよく、縮合環であってもよい。縮合数は、2~8が好ましく、2~6がより好ましく、3~5が更に好ましく、3~4が特に好ましい。ヘテロ環基を構成する炭素原子の数は3~40が好ましく、3~30がより好ましく、3~20がより好ましい。ヘテロ環基を構成するヘテロ原子の数は1~3が好ましい。ヘテロ環基を構成するヘテロ原子は、窒素原子、酸素原子または硫黄原子が好ましく、窒素原子がより好ましい。
【0136】
フッ素原子を含む基は、式(1)または(2)で表される末端構造を有することが好ましい。
-CHF2 (1)
-CF3 (2)
フッ素原子を含むオキシム化合物中の全フッ素原子数は3以上が好ましく、4~10がより好ましい。
【0137】
フッ素原子を含むオキシム化合物は、式(OX-1)で表される化合物が好ましい。
(OX-1)
【化8】
【0138】
式(OX-1)において、Ar1およびAr2は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環を表し、R1は、フッ素原子を含む基を有するアリール基を表し、R2およびR3は、それぞれ独立に、アルキル基またはアリール基を表す。
【0139】
Ar1およびAr2は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環を表す。芳香族炭化水素環は、単環でもよく、縮合環であってもよい。芳香族炭化水素環の環を構成する炭素原子数は、6~20が好ましく、6~15がより好ましく、6~10が特に好ましい。芳香族炭化水素環は、ベンゼン環およびナフタレン環が好ましい。なかでも、Ar1およびAr2の少なくとも一方がベンゼン環であることが好ましく、Ar1がベンゼン環であることがより好ましい。Ar2は、ベンゼン環またはナフタレン環が好ましく、ナフタレン環がより好ましい。
【0140】
Ar1およびAr2が有してもよい置換基としては、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、ニトロ基、シアノ基、ハロゲン原子、-ORX1、-SRX1、-CORX1、-COORX1、-OCORX1、-NRX1RX2、-NHCORX1、-CONRX1RX2、-NHCONRX1RX2、-NHCOORX1、-SO2RX1、-SO2ORX1、-NHSO2RX1などが挙げられる。RX1およびRX2は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アリール基またはヘテロ環基を表す。
【0141】
ハロゲン原子は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などが挙げられ、フッ素原子が好ましい。置換基としてのアルキル基、ならびに、RX1およびRX2が表すアルキル基の炭素数は、1~30が好ましい。アルキル基は、直鎖、分岐、環状のいずれでもよいが、直鎖または分岐が好ましい。アルキル基は、水素原子の一部または全部がハロゲン原子(好ましくは、フッ素原子)で置換されていてもよい。また、アルキル基は、水素原子の一部または全部が、上記置換基で置換されていてもよい。置換基としてのアリール基、ならびに、RX1およびRX2が表すアリール基の炭素数は、6~20が好ましく、6~15がより好ましく、6~10が更に好ましい。アリール基は、単環であってもよく、縮合環であってもよい。また、アリール基は、水素原子の一部または全部が、上記置換基で置換されていてもよい。置換基としてのヘテロ環基、ならびに、RX1およびRX2が表すヘテロ環基は、5員環または6員環が好ましい。ヘテロ環基は、単環であってもよく、縮合環であってもよい。ヘテロ環基を構成する炭素原子の数は3~30が好ましく、3~18がより好ましく、3~12がより好ましい。ヘテロ環基を構成するヘテロ原子の数は1~3が好ましい。ヘテロ環基を構成するヘテロ原子は、窒素原子、酸素原子または硫黄原子が好ましい。また、ヘテロ環基は、水素原子の一部または全部が、上記置換基で置換されていてもよい。
【0142】
Ar1が表す芳香族炭化水素環は、無置換が好ましい。Ar2が表す芳香族炭化水素環は、無置換であってもよく、置換基を有していてもよい。置換基を有していることが好ましい。置換基としては、-CORX1が好ましい。RX1は、アルキル基、アリール基またはヘテロ環基が好ましく、アリール基がより好ましい。アリール基は置換基を有していてもよく、無置換であってもよい。置換基としては、炭素数1~10のアルキル基などが挙げられる。
【0143】
R1は、フッ素原子を含む基を有するアリール基を表す。アリール基の炭素数は、6~20が好ましく、6~15がより好ましく、6~10が更に好ましい。フッ素原子を含む基は、フッ素原子を有するアルキル基(含フッ素アルキル基)およびフッ素原子を有するアルキル基を含む基(含フッ素基)が好ましい。フッ素原子を含む基については、上述した範囲と同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0144】
R2は、アルキル基またはアリール基を表し、アルキル基が好ましい。アルキル基およびアリール基は、無置換であってもよく、置換基を有していてもよい。置換基としては、上述したAr1およびAr2が有してもよい置換基で説明した置換基が挙げられる。アルキル基の炭素数は、1~20が好ましく、1~15がより好ましく、1~10が更に好ましく、1~4が特に好ましい。アルキル基は、直鎖、分岐、環状のいずれでもよいが、直鎖または分岐が好ましい。アリール基の炭素数は、6~20が好ましく、6~15がより好ましく、6~10が更に好ましい。
【0145】
R3は、アルキル基またはアリール基を表し、アルキル基が好ましい。アルキル基およびアリール基は、無置換であってもよく、置換基を有していてもよい。置換基としては、上述したAr1およびAr2が有してもよい置換基で説明した置換基が挙げられる。R3が表すアルキル基の炭素数は、1~20が好ましく、1~15がより好ましく、1~10が更に好ましい。アルキル基は、直鎖、分岐、環状のいずれでもよいが、直鎖または分岐が好ましい。R3が表すアリール基の炭素数は、6~20が好ましく、6~15がより好ましく、6~10が更に好ましい。
【0146】
フッ素原子を有するオキシム化合物の具体例としては、特開2010-262028号公報に記載の化合物、特表2014-500852号公報に記載の化合物24、36~40、特開2013-164471号公報に記載の化合物(C-3)などが挙げられる。
【0147】
また、オキシム化合物は、フルオレン環を有するオキシム化合物を用いることもできる。フルオレン環を有するオキシム化合物の具体例としては、特開2014-137466号公報に記載の化合物が挙げられる。この内容は本明細書に組み込まれる。
【0148】
また、オキシム化合物は、ベンゾフラン骨格を有するオキシム化合物を用いることもできる。具体例としては、国際公開第2015/036910号に記載の化合物OE-01~OE-75が挙げられる。
【0149】
また、オキシム化合物は、カルバゾール環の少なくとも1つのベンゼン環がナフタレン環となった骨格を有するオキシム化合物を用いることもできる。そのようなオキシム化合物の具体例としては、国際公開第2013/083505号に記載の化合物が挙げられる。
【0150】
また、オキシム化合物は、ニトロ基を有するオキシム化合物を用いることができる。ニトロ基を有するオキシム化合物は、二量体とすることも好ましい。ニトロ基を有するオキシム化合物の具体例としては、特開2013-114249号公報の段落0031~0047、特開2014-137466号公報の段落0008~0012、0070~0079に記載の化合物、特許4223071号公報の段落0007~0025に記載の化合物などが挙げられる。
【0151】
オキシム化合物の具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0152】
【0153】
【0154】
そして、本発明では、上記のとおり、光重合開始剤として、メタノール中での波長365nmの吸光係数が1.0×103mL/gcm以上の光重合開始剤A1と、メタノール中での波長365nmの吸光係数が1.0×102mL/gcm以下で、かつ、波長254nmの吸光係数が1.0×103mL/gcm以上の光重合開始剤A2とを併用する。この態様によれば、露光によって組成物を充分に硬化させやすく、低温プロセス(例えば全工程を通じて200℃未満、または150℃以下、さらには120℃以下の温度下)にて、密着性に優れ、さらには、耐溶剤性、平坦性、および、パターンの矩形性にも優れる硬化膜を形成することができる。光重合開始剤A1および光重合開始剤A2としては、上述した化合物の中から上記の吸光係数を有する化合物を選択して用いることが好ましい。
【0155】
なお、本発明において、光重合開始剤の上記波長における吸光係数は、以下のようにして測定した値である。すなわち、光重合開始剤をメタノールに溶解させて測定溶液を調製し、前述の測定溶液の吸光度を測定することで算出した。具体的には、前述の測定溶液を幅1cmのガラスセルに入れ、Agilent Technologies社製UV-Vis-NIRスペクトルメーター(Cary5000)を用いて吸光度を測定し、下記式に当てはめて、波長365nmおよび波長254nmにおける吸光係数(mL/gcm)を算出した。
【0156】
【0157】
上記式においてεは吸光係数(mL/gcm)、Aは吸光度、cは光重合開始剤の濃度(g/mL)、lは光路長(cm)を表す。
【0158】
光重合開始剤A1のメタノール中での波長365nmにおける吸光係数は、1.0×103mL/gcm以上であり、1.0×104mL/gcm以上であることが好ましく、1.1×104mL/gcm以上であることがより好ましく、1.2×104~1.0×105mL/gcmであることが更に好ましく、1.3×104~5.0×104mL/gcmであることがより一層好ましく、1.5×104~3.0×104mL/gcmであることが特に好ましい。
【0159】
また、光重合開始剤A1のメタノール中での波長254nmの光の吸光係数は、1.0×104~1.0×105mL/gcmであることが好ましく、1.5×104~9.5×104mL/gcmであることがより好ましく、3.0×104~8.0×104mL/gcmであることが更に好ましい。
【0160】
光重合開始剤A1としては、オキシム化合物、アミノアルキルフェノン化合物、アシルホスフィン化合物が好ましく、オキシム化合物およびアシルホスフィン化合物がより好ましく、オキシム化合物が更に好ましく、組成物に含まれる他の成分との相溶性の観点からフッ素原子を含むオキシム化合物であることが特に好ましい。フッ素原子を含むオキシム化合物としては、上述した式(OX-1)で表される化合物が好ましい。光重合開始剤A1の具体例としては、1,2-オクタンジオン,1-[4-(フェニルチオ)-,2-(O-ベンゾイルオキシム)](市販品としては、例えば、IRGACURE-OXE01、BASF社製)、エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(O-アセチルオキシム)(市販品としては、例えば、IRGACURE-OXE02、BASF社製)、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキサイド(市販品としては、例えば、IRGACURE-819、BASF社製)、上記のオキシム化合物の具体例で示した(C-13)、(C-14)などが挙げられる。
【0161】
光重合開始剤A2のメタノール中での波長365nmの光の吸光係数は、1.0×102mL/gcm以下であり、10~1.0×102mL/gcmであることが好ましく、20~1.0×102mL/gcmであることがより好ましい。また、光重合開始剤A1のメタノール中での波長365nmの光の吸光係数と、光重合開始剤A2のメタノール中での波長365nmの光の吸光係数との差は、9.0×102mL/gcm以上であり、1.0×103mL/gcm以上であることが好ましく、5.0×103~3.0×104mL/gcmであることがより好ましく、1.0×104~2.0×104mL/gcmであることが更に好ましい。また、光重合開始剤A2のメタノール中での波長254nmの光の吸光係数は、1.0×103mL/gcm以上であり、1.0×103~1.0×106mL/gcmであることが好ましく、5.0×103~1.0×105mL/gcmであることがより好ましい。
【0162】
光重合開始剤A2としては、ヒドロキシアルキルフェノン化合物、フェニルグリオキシレート化合物、アミノアルキルフェノン化合物、アシルホスフィン化合物が好ましく、ヒドロキシアルキルフェノン化合物およびフェニルグリオキシレート化合物がより好ましく、ヒドロキシアルキルフェノン化合物が更に好ましい。また、ヒドロキシアルキルフェノン化合物としては、上述した式(V)で表される化合物が好ましい。光重合開始剤A2の具体例としては、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン(市販品としては、例えば、IRGACURE-184、BASF社製)、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン(市販品としては、例えば、IRGACURE-2959、BASF社製)などが挙げられる。
【0163】
光重合開始剤A1と光重合開始剤A2との組み合わせとしては、光重合開始剤A1がオキシム化合物であり、光重合開始剤A2がヒドロキシアルキルフェノン化合物である組み合わせが好ましく、光重合開始剤A1がオキシム化合物であり、光重合開始剤A2が上述した式(V)で表される化合物である組み合わせがより好ましく、光重合開始剤A1がフッ素原子を含むオキシム化合物であり、光重合開始剤A2が上述した式(V)で表される化合物である組み合わせが特に好ましい。
【0164】
光重合開始剤A1の含有量は、本発明の硬化性組成物の全固形分中1.0~20.0質量%であることが好ましい。現像後の硬化膜(パターン)の支持体への密着性の観点から光重合開始剤A1の含有量の下限は、2.0質量%以上であることが好ましく、3.0質量%以上であることがより好ましく、4.0質量%以上であることが更に好ましい。現像後のパターンの微細化の観点から光重合開始剤A1の含有量の上限は、15.0質量%以下であることが好ましく、12.5質量%以下であることがより好ましく、10.0質量%以下であることが更に好ましい。
【0165】
光重合開始剤A2の含有量は、本発明の硬化性組成物の全固形分中0.5~15.0質量%が好ましい。得られる硬化膜の耐溶剤性の観点から光重合開始剤A2の含有量の下限は、1.0質量%以上であることが好ましく、1.5質量%以上であることがより好ましく、2.0質量%以上であることが更に好ましい。現像後のパターンの微細化の観点から光重合開始剤A2の含有量の上限は、12.5質量%以下であることが好ましく、10.0質量%以下であることがより好ましく、7.5質量%以下であることが更に好ましい。
【0166】
本発明の硬化性組成物は、光重合開始剤A1の100質量部に対して、光重合開始剤A2を50~200質量部含有することが好ましい。現像後のパターンの微細化の観点から上限は、175質量部以下であることが好ましく、150質量部以下であることがより好ましい。また、得られる硬化膜の耐溶剤性の観点から下限は、60質量部以上であることが好ましく、70質量部以上であることが更に好ましい。
【0167】
本発明の硬化性組成物の全固形分中における光重合開始剤A1と光重合開始剤A2との合計の含有量は、5~15質量%以上であることが好ましい。組成物の経時安定性の観点から下限は、6質量%以上であることが好ましく、7質量%以上であることがより好ましく、8質量%以上であることが更に好ましい。現像後のパターンの微細化の観点から上限は、14.5質量%以下であることが好ましく、14.0質量%以下であることがより好ましく、13.0質量%以下であることが更に好ましい。
【0168】
本発明の硬化性組成物は、光重合開始剤として光重合開始剤A1および光重合開始剤A2以外の光重合開始剤(以下、他の光重合開始剤ともいう)を含有することもできるが、他の光重合開始剤は実質的に含有しないことが好ましい。他の光重合開始剤を実質的に含有しない場合とは、他の光重合開始剤の含有量が、光重合開始剤A1と光重合開始剤A2との合計100質量部に対して1質量部以下であることが好ましく、0.5質量部以下であることがより好ましく、0.1質量部以下であることが更に好ましく、他の光重合開始剤を含有しないことが一層好ましい。
【0169】
<<樹脂>>
本発明の組成物は、樹脂を含有することができる。本発明において樹脂は、例えば、顔料などの粒子を組成物中で分散させる用途やバインダーの用途で配合される。なお、主に顔料などの粒子を分散させるために用いられる樹脂を分散剤ともいう。ただし、樹脂のこのような用途は一例であって、このような用途以外の目的で樹脂を使用することもできる。
【0170】
樹脂の重量平均分子量(Mw)は、2,000~2,000,000が好ましい。上限は、1,000,000以下が好ましく、500,000以下がより好ましい。下限は、3,000以上が好ましく、5,000以上がより好ましい。
【0171】
樹脂としては、(メタ)アクリル樹脂、エポキシ樹脂、エン・チオール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリフェニレン樹脂、ポリアリーレンエーテルホスフィンオキシド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、環状オレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、スチレン樹脂などが挙げられる。これらの樹脂から1種を単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。環状オレフィン樹脂としては、耐熱性向上の観点からノルボルネン樹脂が好ましく用いることができる。ノルボルネン樹脂の市販品としては、例えば、JSR(株)製のARTONシリーズ(例えば、ARTON F4520)などが挙げられる。エポキシ樹脂としては、例えばフェノール化合物のグリシジルエーテル化物であるエポキシ樹脂、各種ノボラック樹脂のグリシジルエーテル化物であるエポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、脂肪族系エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂、グリシジルエステル系エポキシ樹脂、グリシジルアミン系エポキシ樹脂、ハロゲン化フェノール類をグリシジル化したエポキシ樹脂、エポキシ基をもつケイ素化合物とそれ以外のケイ素化合物との縮合物、エポキシ基を持つ重合性不飽和化合物とそれ以外の他の重合性不飽和化合物との共重合体等が挙げられる。また、マープルーフG-0150M、G-0105SA、G-0130SP、G-0250SP、G-1005S、G-1005SA、G-1010S、G-2050M、G-01100、G-01758(日油(株)製、エポキシ基含有ポリマー)などを用いることもできる。また、樹脂は、国際公開第2016/088645号の実施例に記載された樹脂、特開2017-057265号公報に記載された樹脂、特開2017-032685号公報に記載された樹脂、特開2017-075248号公報に記載された樹脂、特開2017-066240号公報に記載された樹脂を用いることもでき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。また、フルオレン骨格を有する樹脂を好ましく用いることもできる。フルオレン骨格を有する樹脂としては、下記構造の樹脂が挙げられる。以下の構造式中、Aは、ピロメリット酸二無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物およびジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物から選択されるカルボン酸二無水物の残基であり、Mはフェニル基またはベンジル基である。フルオレン骨格を有する樹脂については、米国特許出願公開第2017/0102610号明細書の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0172】
【0173】
本発明で用いる樹脂は、酸基を有していてもよい。酸基としては、例えば、カルボキシル基、リン酸基、スルホ基、フェノール性ヒドロキシル基などが挙げられ、カルボキシル基が好ましい。これら酸基は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。酸基を有する樹脂はアルカリ可溶性樹脂として用いることもできる。
【0174】
酸基を有する樹脂としては、側鎖にカルボキシル基を有するポリマーが好ましい。具体例としては、メタクリル酸共重合体、アクリル酸共重合体、イタコン酸共重合体、クロトン酸共重合体、マレイン酸共重合体、部分エステル化マレイン酸共重合体、ノボラック樹脂などのアルカリ可溶性フェノール樹脂、側鎖にカルボキシル基を有する酸性セルロース誘導体、ヒドロキシル基を有するポリマーに酸無水物を付加させた樹脂が挙げられる。特に、(メタ)アクリル酸と、これと共重合可能な他のモノマーとの共重合体が、アルカリ可溶性樹脂として好適である。(メタ)アクリル酸と共重合可能な他のモノマーとしては、アルキル(メタ)アクリレート、アリール(メタ)アクリレート、ビニル化合物などが挙げられる。アルキル(メタ)アクリレートおよびアリール(メタ)アクリレートとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、トリル(メタ)アクリレート、ナフチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等、ビニル化合物としては、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、グリシジルメタクリレート、アクリロニトリル、ビニルアセテート、N-ビニルピロリドン、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、ポリスチレンマクロモノマー、ポリメチルメタクリレートマクロモノマー等が挙げられる。また他のモノマーは、特開平10-300922号公報に記載のN位置換マレイミドモノマー、例えば、N-フェニルマレイミド、N-シクロヘキシルマレイミド等を用いることもできる。なお、これらの(メタ)アクリル酸と共重合可能な他のモノマーは1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0175】
酸基を有する樹脂は、更に重合性基を有していてもよい。重合性基としては、アリル基、メタリル基、(メタ)アクリロイル基等が挙げられる。市販品としては、ダイヤナールNRシリーズ(三菱レイヨン(株)製)、Photomer6173(カルボキシル基含有ポリウレタンアクリレートオリゴマー、Diamond Shamrock Co.,Ltd.製)、ビスコートR-264、KSレジスト106(いずれも大阪有機化学工業株式会社製)、サイクロマーPシリーズ(例えば、ACA230AA)、プラクセル CF200シリーズ(いずれも(株)ダイセル製)、Ebecryl3800(ダイセルユーシービー(株)製)、アクリキュアーRD-F8((株)日本触媒製)などが挙げられる。
【0176】
酸基を有する樹脂は、ベンジル(メタ)アクリレート/(メタ)アクリル酸共重合体、ベンジル(メタ)アクリレート/(メタ)アクリル酸/2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート共重合体、ベンジル(メタ)アクリレート/(メタ)アクリル酸/他のモノマーからなる多元共重合体が好ましく用いることができる。また、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートを共重合したもの、特開平07-140654号公報に記載の、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート/ポリスチレンマクロモノマー/ベンジルメタクリレート/メタクリル酸共重合体、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピルアクリレート/ポリメチルメタクリレートマクロモノマー/ベンジルメタクリレート/メタクリル酸共重合体、2-ヒドロキシエチルメタクリレート/ポリスチレンマクロモノマー/メチルメタクリレート/メタクリル酸共重合体、2-ヒドロキシエチルメタクリレート/ポリスチレンマクロモノマー/ベンジルメタクリレート/メタクリル酸共重合体なども好ましく用いることができる。
【0177】
酸基を有する樹脂は、下記式(ED1)で示される化合物および/または下記式(ED2)で表される化合物(以下、これらの化合物を「エーテルダイマー」と称することもある。)を含むモノマー成分に由来する繰り返し単位を含むポリマーであることも好ましい。
【0178】
【0179】
式(ED1)中、R1およびR2は、それぞれ独立して、水素原子または置換基を有していてもよい炭素数1~25の炭化水素基を表す。
【0180】
【0181】
式(ED2)中、Rは、水素原子または炭素数1~30の有機基を表す。式(ED2)の詳細については、特開2010-168539号公報の記載を参酌できる。
【0182】
エーテルダイマーの具体例としては、例えば、特開2013-029760号公報の段落0317を参酌することができ、この内容は本明細書に組み込まれる。エーテルダイマーは、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0183】
酸基を有する樹脂は、下記式(X)で示される化合物に由来する繰り返し単位を含んでいてもよい。
【化14】
【0184】
式(X)において、R1は、水素原子またはメチル基を表し、R2は炭素数2~10のアルキレン基を表し、R3は、水素原子またはベンゼン環を含んでもよい炭素数1~20のアルキル基を表す。nは1~15の整数を表す。
【0185】
酸基を有する樹脂については、特開2012-208494号公報の段落0558~0571(対応する米国特許出願公開第2012/0235099号明細書の段落0685~0700)の記載、特開2012-198408号公報の段落0076~0099の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。また、酸基を有する樹脂は市販品を用いることもできる。例えば、アクリベースFF-426(藤倉化成(株)製)などが挙げられる。
【0186】
酸基を有する樹脂の酸価は、30~200mgKOH/gが好ましい。下限は、50mgKOH/g以上が好ましく、70mgKOH/g以上がより好ましい。上限は、150mgKOH/g以下が好ましく、120mgKOH/g以下がより好ましい。
【0187】
酸基を有する樹脂としては、例えば下記構造の樹脂などが挙げられる。以下の構造式中、Meはメチル基を表す。
【化15】
【0188】
本発明の組成物は、分散剤としての樹脂を含むこともできる。分散剤は、酸性分散剤(酸性樹脂)、塩基性分散剤(塩基性樹脂)が挙げられる。ここで、酸性分散剤(酸性樹脂)とは、酸基の量が塩基性基の量よりも多い樹脂を表す。酸性分散剤(酸性樹脂)は、酸基の量と塩基性基の量の合計量を100モル%としたときに、酸基の量が70モル%以上を占める樹脂が好ましく、実質的に酸基のみからなる樹脂がより好ましい。酸性分散剤(酸性樹脂)が有する酸基は、カルボキシル基が好ましい。酸性分散剤(酸性樹脂)の酸価は、40~105mgKOH/gが好ましく、50~105mgKOH/gがより好ましく、60~105mgKOH/gがさらに好ましい。また、塩基性分散剤(塩基性樹脂)とは、塩基性基の量が酸基の量よりも多い樹脂を表す。塩基性分散剤(塩基性樹脂)は、酸基の量と塩基性基の量の合計量を100モル%としたときに、塩基性基の量が50モル%を超える樹脂が好ましい。塩基性分散剤が有する塩基性基は、アミノ基であることが好ましい。
【0189】
分散剤として用いる樹脂は、酸基を有する繰り返し単位を含むことが好ましい。分散剤として用いる樹脂が酸基を有する繰り返し単位を含むことにより、フォトリソグラフィ法によりパターン形成する際、画素の下地に発生する残渣をより低減することができる。
【0190】
分散剤として用いる樹脂は、グラフト共重合体であることも好ましい。グラフト共重合体は、グラフト鎖によって溶剤との親和性を有するために、顔料の分散性、及び、経時後の分散安定性に優れる。グラフト共重合体の詳細は、特開2012-255128号公報の段落0025~0094の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。また、グラフト共重合体の具体例は、下記の樹脂が挙げられる。以下の樹脂は酸基を有する樹脂(アルカリ可溶性樹脂)でもある。また、グラフト共重合体としては特開2012-255128号公報の段落0072~0094に記載の樹脂が挙げられ、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0191】
【0192】
また、本発明において、樹脂(分散剤)は、主鎖及び側鎖の少なくとも一方に窒素原子を含むオリゴイミン系分散剤を用いることも好ましい。オリゴイミン系分散剤としては、pKa14以下の官能基を有する部分構造Xを有する構造単位と、原子数40~10,000の側鎖Yを含む側鎖とを有し、かつ主鎖及び側鎖の少なくとも一方に塩基性窒素原子を有する樹脂が好ましい。塩基性窒素原子とは、塩基性を呈する窒素原子であれば特に制限はない。オリゴイミン系分散剤については、特開2012-255128号公報の段落0102~0166の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。オリゴイミン系分散剤としては、下記構造の樹脂や、特開2012-255128号公報の段落0168~0174に記載の樹脂を用いることができる。
【0193】
【0194】
分散剤は、市販品としても入手可能であり、そのような具体例としては、Disperbyk-111(BYKChemie社製)、ソルスパース76500(日本ルーブリゾール(株)製)などが挙げられる。また、特開2014-130338号公報の段落0041~0130に記載された顔料分散剤を用いることもでき、この内容は本明細書に組み込まれる。また、上述した酸基を有する樹脂などを分散剤として用いることもできる。
【0195】
その他、特開2017-206689号公報の段落0041~0060に記載の樹脂も好適に使用することができる。
【0196】
樹脂の含有量は、本発明の組成物の全固形分に対し、1~50質量%が好ましい。下限は、2質量%以上が好ましく、3質量%以上がより好ましく、5質量%以上が更に好ましく、10質量%以上が特に好ましい。上限は、40質量%以下がより好ましく、30質量%以下が更に好ましい。また、酸基を有する樹脂の含有量は、本発明の組成物の全固形分に対し、1~50質量%が好ましい。下限は、2質量%以上が好ましく、3質量%以上がより好ましく、5質量%以上が更に好ましく、10質量%以上が特に好ましい。上限は、40質量%以下がより好ましく、30質量%以下が更に好ましい。本発明の組成物は、樹脂を、1種のみを含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合は、それらの合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0197】
<<フリル基含有化合物>>
本発明の硬化性組成物は、フリル基を含む化合物(以下、フリル基含有化合物ともいう)を含有することが好ましい。この態様によれば、上記フリル基と、上記重合性化合物が有するエチレン性不飽和基とが、Diels-Alder反応により、200℃未満の低温でも結合を形成するため、低温硬化に優れる。
【0198】
フリル基含有化合物は、フリル基(フランから1つの水素原子を除いた基)を含んでいれば特にその構造が限定されるものではない。フリル基含有化合物については、特開2017-194662号公報の段落0049~0089に記載された化合物を用いることができる。また、特開2000-233581号公報、特開1994-271558号公報、特開1994-293830号公報、特開1996-239421号公報、特開1998-508655号公報、特開2000-001529号公報、特開2003-183348号公報、特開2006-193628号公報、特開2007-186684号公報、特開2010-265377号公報、特開2011-170069号公報などに記載されている化合物を用いることもできる。
【0199】
フリル基含有化合物は、モノマーであってもよく、オリゴマー、ポリマーであってもよい。得られる膜の耐久性を向上させやすいという理由からポリマーであることが好ましい。ポリマーの場合、重量平均分子量は、2000~70000が好ましい。上限は、60000以下が好ましく、50000以下がより好ましい。下限は、3000以上が好ましく、4000以上がより好ましく、5000以上が更に好ましい。モノマーの場合、重量平均分子量は、2000未満が好ましい。なお、ポリマータイプのフリル基含有化合物は、本発明の硬化性組成物における樹脂にも該当する成分であり、モノマータイプのフリル基含有化合物は、本発明の硬化性組成物における重合性化合物にも該当する成分である。
【0200】
モノマータイプのフリル基含有化合物(以下、フリル基含有モノマーともいう)としては、下記式(fur-1)で表される化合物が挙げられる。この化合物は、フリル基に加えて、重合性基も有する化合物である。
【0201】
【0202】
式中、Rf1は水素原子またはメチル基を表し、Rf2は2価の連結基を表す。
【0203】
Rf2が表す2価の連結基としては、アルキレン基、アリーレン基、-O-、-CO-、-COO-、-OCO-、-NH-、-S-およびこれらの2種以上を組み合わせた基が挙げられる。アルキレン基の炭素数は、1~30が好ましく、1~20がより好ましく、1~15が更に好ましい。アルキレン基は、直鎖、分岐、環状のいずれでもよい。アリーレン基の炭素数は、6~30が好ましく、6~20がより好ましく、6~10が更に好ましい。アルキレン基およびアリーレン基は置換基を有していてもよい。置換基としては、ヒドロキシル基などが挙げられる。
【0204】
フリル基含有モノマーは、下記式(fur-2)で表される化合物であることが好ましい。
【0205】
【0206】
式中、Rf1は水素原子またはメチル基を表し、Rf11は-O-または-NH-を表し、Rf12は単結合または2価の連結基を表す。Rf12が表す2価の連結基としては、アルキレン基、アリーレン基、-O-、-CO-、-COO-、-OCO-、-NH-、-S-およびこれらの2種以上を組み合わせた基が挙げられる。アルキレン基の炭素数は、1~30が好ましく、1~20がより好ましく、1~15が更に好ましい。アルキレン基は、直鎖、分岐、環状のいずれでもよい。アリーレン基の炭素数は、6~30が好ましく、6~20がより好ましく、6~10が更に好ましい。アルキレン基およびアリーレン基は置換基を有していてもよい。置換基としては、ヒドロキシル基などが挙げられる。
【0207】
フリル基含有モノマーの具体例としては、下記構造の化合物が挙げられる。以下の構造式中、Rf1は水素原子またはメチル基を表す。
【0208】
【0209】
ポリマータイプのフリル基含有化合物(以下、フリル基含有ポリマーともいう)としては、フリル基を含む繰り返し単位を含む樹脂であることが好ましく、上記式(fur-1)で表される化合物由来の繰り返し単位を含む樹脂であることがより好ましい。フリル基含有ポリマー中のフリル基の濃度は、フリル基含有ポリマー1gあたり0.5~6.0mmolが好ましく、1.0~4.0mmolがさらに好ましい。フリル基の濃度が0.5mmol以上、好ましくは1.0mmol以上であると耐溶剤性などにより優れた画素を形成しやすい。フリル基の濃度が6.0mmol以下、好ましくは4.0mmol以下であれば、硬化性組成物の経時安定性がより良好である。
【0210】
フリル基含有ポリマーは、フリル基を有する繰り返し単位の他に、酸基を有する繰り返し単位および/または重合性基を有する繰り返し単位を含んでいてもよい。酸基としては、カルボキシル基、リン酸基、スルホ基、フェノール性ヒドロキシル基などが挙げられる。重合性基としては、ビニル基、(メタ)アリル基、(メタ)アクリロイル基等のエチレン性不飽和基が挙げられる。フリル基含有ポリマーが酸基を有する繰り返し単位を含む場合、その酸価は10~200mgKOH/gが好ましく、40~130mgKOH/gがより好ましい。
【0211】
フリル基含有ポリマーが重合性基を有する繰り返し単位を含む場合は、より耐溶剤性などに優れた画素を形成しやすい。
【0212】
フリル基含有ポリマーは、特開2017-194662号公報の段落0052~0101に記載された方法で製造することができる。
【0213】
フリル基含有化合物の含有量は、硬化性組成物の全固形分中0.1~70質量%であることが好ましい。下限は、2.5質量%以上であることが好ましく、5.0質量%以上であることがより好ましく、7.5質量%以上であることが更に好ましい。上限は、65質量%以下であることが好ましく、60質量%以下であることがより好ましく、50質量%以下であることが更に好ましい。
【0214】
また、フリル基含有化合物としてフリル基含有ポリマーを用いた場合、硬化性組成物に含まれる樹脂中におけるフリル基含有ポリマーの含有量は、0.1~100質量%であることが好ましい。下限は、10質量%以上であることが好ましく、15質量%以上であることがより好ましい。上限は、90質量%以下であることが好ましく、80質量%以下であることがより好ましい。
【0215】
<<環状エーテル基を有する化合物>>
本発明の硬化性組成物は、更に、環状エーテル基を有する化合物を含有することができる。また、この場合、本発明の硬化性組成物は、この環状エーテル基を有する化合物の硬化促進剤を含有することが好ましい。環状エーテル基は、例えば、エポキシ基およびオキセタン基であり、エポキシ基が好ましい。
【0216】
エポキシ基を有する化合物としては、1分子内にエポキシ基を2つ以上有する化合物が好ましい。エポキシ基は、1分子内に2~100個有することが好ましい。上限は、例えば、10個以下とすることもでき、5個以下とすることもできる。エポキシ基を有する化合物のエポキシ当量(=エポキシ基を有する化合物の分子量/エポキシ基の数)は、500g/eq以下であることが好ましく、100~400g/eqであることがより好ましく、100~300g/eqであることがさらに好ましい。エポキシ基を有する化合物は、低分子化合物(例えば、分子量1000未満)でもよいし、高分子化合物(macromolecule)(例えば、分子量1000以上、ポリマーの場合は、重量平均分子量が1000以上)のいずれでもよい。エポキシ基を有する化合物の分子量(ポリマーの場合は、重量平均分子量)は、200~100000が好ましく、500~50000がより好ましい。分子量(ポリマーの場合は、重量平均分子量)の上限は、3000以下が好ましく、2000以下がより好ましく、1500以下が更に好ましい。なお、環状エーテル基を有する化合物がポリマータイプである場合には、この化合物は、本発明の硬化性組成物における樹脂にも該当する成分である。
【0217】
エポキシ基を有する化合物としては、特開2013-011869号公報の段落0034~0036、特開2014-043556号公報の段落0147~0156、特開2014-089408号公報の段落0085~0092に記載された化合物、特開2017-179172号公報に記載された化合物を用いることもできる。これらの内容は、本明細書に組み込まれる。
【0218】
環状エーテル基を有する化合物の市販品としては、例えば、EHPE3150((株)ダイセル製)、EPICLON N-695(DIC(株)製)、マープルーフG-0150M、G-0105SA、G-0130SP、G-0250SP、G-1005S、G-1005SA、G-1010S、G-2050M、G-01100、G-01758(以上、日油(株)製、エポキシ基含有ポリマー)等が挙げられる。
【0219】
本発明の組成物が、環状エーテル基を有する化合物を含有する場合、この化合物の含有量は、組成物の全固形分中0.1~20質量%が好ましい。下限は、0.5質量%以上がより好ましく、1質量%以上が更に好ましい。上限は、15質量%以下がより好ましく、10質量%以下が更に好ましい。環状エーテル基を有する化合物は、1種単独であってもよいし、2種以上を併用してもよい。2種以上を併用する場合は、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0220】
また、環状エーテル基を有する化合物の硬化促進剤は、後述する硬化促進剤の中でも、特に、エポキシ化合物用の硬化促進剤として一般的に使用されている化合物を使用でき、例えば、酸無水物、アミン、カルボン酸およびアルコールなどが好ましい。
【0221】
硬化促進剤としての酸無水物は、例えば、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、無水ナジック酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、2,4-ジエチル無水グルタル酸、ブタンテトラカルボン酸無水物、ビシクロ[2,2,1]ヘプタン-2,3-ジカルボン酸無水物、メチルビシクロ[2,2,1]ヘプタン-2,3-ジカルボン酸無水物、シクロヘキサン-1,3,4-トリカルボン酸-3,4-無水物等が、耐光性、透明性、作業性の観点から好ましい。
【0222】
硬化促進剤としてのカルボン酸は、2~6官能のカルボン酸が好ましい。このようなカルボン酸は、例えば、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸、1,2,3-プロパントリカルボン酸、1,3,5-ペンタントリカルボン酸、クエン酸等のアルキルトリカルボン酸類;フタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、メチルヘキサヒドロフタル酸、テトラヒドロフタル酸、メチルテトラヒドロフタル酸、シクロヘキサントリカルボン酸、ナジック酸、メチルナジック酸等の脂肪族環状多価カルボン酸類;リノレン酸やオレイン酸などの不飽和脂肪酸の多量体およびそれらの還元物であるダイマー酸類;リンゴ酸等の直鎖アルキル二酸類等が好ましく、さらにはヘキサン二酸、ペンタン二酸、ヘプタン二酸、オクタン二酸、ノナン二酸、デカン二酸が好ましく、特にブタン二酸が、耐熱性、膜の透明性の観点からより好ましい。
【0223】
硬化促進剤としてのアミンは、多価アミンが好ましく、ジアミンがより好ましい。このようなアミンは、例えば、ヘキサメチレンジアミン、トリエチレンテトラミン、ポリエチレンイミンなどである。
【0224】
硬化促進剤としてのアルコールは、多価アルコールが好ましく、ジオールがより好ましい。このようなアルコールは、例えば、ポリエーテルジオール化合物、ポリエステルジオール化合物、ポリカーボネートジオール化合物等である。
【0225】
そのほか、上記のような硬化促進剤として、特許第5765059号公報の段落0085~0092に記載の反応促進剤を使用してもよい。
【0226】
本発明の組成物が、上記硬化促進剤を含有する場合、この硬化促進剤の含有量は、環状エーテル基を有する化合物100質量部に対して、1~30質量部が好ましく、5~25質量部がより好ましく、10~20質量部がさらに好ましい。上記硬化促進剤は、1種単独であってもよいし、2種以上を併用してもよい。2種以上を併用する場合は、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0227】
<<溶剤>>
本発明の硬化性組成物は、溶剤を含有することが好ましい。溶剤としては、有機溶剤が挙げられる。溶剤は、各成分の溶解性や硬化性組成物の塗布性を満足すれば基本的には特に制限はない。有機溶剤としては、エステル系溶剤、ケトン系溶剤、アルコール系溶剤、アミド系溶剤、エーテル系溶剤、炭化水素系溶剤などが挙げられる。これらの詳細については、国際公開第2015/166779号の段落0223を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。また、環状アルキル基が置換したエステル系溶剤、環状アルキル基が置換したケトン系溶剤を好ましく用いることもできる。有機溶剤の具体例としては、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、ジクロロメタン、3-エトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、エチルセロソルブアセテート、乳酸エチル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、酢酸ブチル、3-メトキシプロピオン酸メチル、2-ヘプタノン、シクロヘキサノン、酢酸シクロヘキシル、シクロペンタノン、エチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、3-ブトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミドなどが挙げられる。ただし溶剤としての芳香族炭化水素類(ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等)は、環境面等の理由により低減したほうがよい場合がある(例えば、有機溶剤全量に対して、50質量ppm(parts per million)以下とすることもでき、10質量ppm以下とすることもでき、1質量ppm以下とすることもできる)。
【0228】
本発明においては、金属含有量の少ない溶剤を用いることが好ましく、溶剤の金属含有量は、例えば10質量ppb(parts per billion)以下であることが好ましい。必要に応じて質量ppt(parts per trillion)レベルの溶剤を用いてもよく、そのような高純度溶剤は例えば東洋合成社が提供している(化学工業日報、2015年11月13日)。
【0229】
溶剤から金属等の不純物を除去する方法としては、例えば、蒸留(分子蒸留や薄膜蒸留等)やフィルタを用いたろ過を挙げることができる。ろ過に用いるフィルタのフィルタ孔径としては、10μm以下が好ましく、5μm以下がより好ましく、3μm以下が更に好ましい。フィルタの材質は、ポリテトラフロロエチレン、ポリエチレンまたはナイロンが好ましい。
【0230】
溶剤は、異性体(原子数が同じであるが構造が異なる化合物)が含まれていてもよい。また、異性体は、1種のみが含まれていてもよいし、複数種含まれていてもよい。
【0231】
本発明において、有機溶剤中の過酸化物の含有率が0.8mmol/L以下であることが好ましく、過酸化物を実質的に含まないことがより好ましい。
【0232】
硬化性組成物中における溶剤の含有量は、60~95質量%であることが好ましい。上限は90質量%以下であることが好ましく、87.5質量%以下であることがより好ましく、85質量%以下であることが更に好ましい。下限は、65質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、75質量%以上であることが更に好ましい。
【0233】
また、本発明の硬化性組成物は、環境規制の観点から環境規制物質を実質的に含有しないことが好ましい。なお、本発明において、環境規制物質を実質的に含有しないとは、硬化性組成物中における環境規制物質の含有量が50質量ppm以下であることを意味し、30質量ppm以下であることが好ましく、10質量ppm以下であることが更に好ましく、1質量ppm以下であることが特に好ましい。環境規制物質は、例えばベンゼン;トルエン、キシレン等のアルキルベンゼン類;クロロベンゼン等のハロゲン化ベンゼン類等が挙げられる。これらは、REACH(Registration Evaluation Authorization and Restriction of CHemicals)規則、PRTR(Pollutant Release and Transfer Register)法、VOC(Volatile Organic Compounds)規制等のもとに環境規制物質として登録されており、使用量や取り扱い方法が厳しく規制されている。これらの化合物は、本発明の硬化性組成物に用いられる各成分などを製造する際に溶媒として用いられることがあり、残留溶媒として硬化性組成物中に混入することがある。人への安全性、環境への配慮の観点よりこれらの物質は可能な限り低減することが好ましい。環境規制物質を低減する方法としては、系中を加熱や減圧して環境規制物質の沸点以上にして系中から環境規制物質を留去して低減する方法が挙げられる。また、少量の環境規制物質を留去する場合においては、効率を上げる為に該当溶媒と同等の沸点を有する溶媒と共沸させることも有用である。また、ラジカル重合性を有する化合物を含有する場合、減圧留去中にラジカル重合反応が進行して分子間で架橋してしまうことを抑制するために重合禁止剤等を添加して減圧留去してもよい。これらの留去方法は、原料の段階、原料を反応させた生成物(例えば重合した後の樹脂溶液や多官能モノマー溶液)の段階、またはこれらの化合物を混ぜて作製した硬化性組成物の段階いずれの段階でも可能である。
【0234】
<<顔料誘導体>>
本発明の硬化性組成物は、顔料誘導体を含有することができる。顔料誘導体としては、発色団の一部分を、酸基、塩基性基またはフタルイミドメチル基で置換した構造を有する化合物が挙げられる。顔料誘導体を構成する発色団としては、キノリン系骨格、ベンゾイミダゾロン系骨格、ジケトピロロピロール系骨格、アゾ系骨格、フタロシアニン系骨格、アンスラキノン系骨格、キナクリドン系骨格、ジオキサジン系骨格、ペリノン系骨格、ペリレン系骨格、チオインジゴ系骨格、イソインドリン系骨格、イソインドリノン系骨格、キノフタロン系骨格、スレン系骨格、金属錯体系骨格等が挙げられ、キノリン系骨格、ベンゾイミダゾロン系骨格、ジケトピロロピロール系骨格、アゾ系骨格、キノフタロン系骨格、イソインドリン系骨格およびフタロシアニン系骨格が好ましく、アゾ系骨格およびベンゾイミダゾロン系骨格がより好ましい。顔料誘導体が有する酸基としては、スルホ基、カルボキシル基が好ましく、スルホ基がより好ましい。顔料誘導体が有する塩基性基としては、アミノ基が好ましく、三級アミノ基がより好ましい。顔料誘導体の具体例としては、例えば、特開2011-252065号公報の段落0162~0183の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0235】
顔料誘導体の含有量は、顔料100質量部に対し、1~30質量部が好ましく、3~20質量部がさらに好ましい。顔料誘導体は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0236】
<<硬化促進剤>>
本発明の硬化性組成物は、重合性化合物の反応を促進させたり、硬化温度を下げる目的で、硬化促進剤を添加してもよい。硬化促進剤としては、分子内に2個以上のメルカプト基を有する多官能チオール化合物などが挙げられる。多官能チオール化合物は安定性、臭気、解像性、現像性、密着性等の改良を目的として添加してもよい。多官能チオール化合物は、2級のアルカンチオール類であることが好ましく、式(T1)で表される化合物であることがより好ましい。
【0237】
【0238】
式(T1)中、nは2~4の整数を表し、Lは2~4価の連結基を表す。式(T1)において、連結基Lは炭素数2~12の脂肪族基であることが好ましく、nが2であり、Lが炭素数2~12のアルキレン基であることが特に好ましい。
【0239】
また、硬化促進剤は、メチロール系化合物(例えば特開2015-034963号公報の段落0246において、架橋剤として例示されている化合物)、アミン類、ホスホニウム塩、アミジン塩、アミド化合物(以上、例えば特開2013-041165号公報の段落0186に記載の硬化剤)、塩基発生剤(例えば、特開2014-055114号公報に記載のイオン性化合物)、シアネート化合物(例えば、特開2012-150180号公報の段落0071に記載の化合物)、アルコキシシラン化合物(例えば、特開2011-253054号公報に記載のエポキシ基を有するアルコキシシラン化合物)、オニウム塩化合物(例えば、特開2015-034963号公報の段落0216に酸発生剤として例示されている化合物、特開2009-180949号公報に記載の化合物)などを用いることもできる。
【0240】
本発明の硬化性組成物が硬化促進剤を含有する場合、硬化促進剤の含有量は、硬化性組成物の全固形分中0.3~8.9質量%が好ましく、0.8~6.4質量%がより好ましい。
【0241】
<<シランカップリング剤>>
本発明の硬化性組成物は、シランカップリング剤を含有することできる。シランカップリング剤としては、一分子中に少なくとも2種の反応性の異なる官能基を有するシラン化合物が好ましい。シランカップリング剤は、ビニル基、エポキシ基、スチレン基、メタクリル基、アミノ基、イソシアヌレート基、ウレイド基、メルカプト基、スルフィド基、および、イソシアネート基から選ばれる少なくとも1種の基と、アルコキシ基とを有するシラン化合物が好ましい。シランカップリング剤の具体例としては、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン(信越化学工業(株)製、KBM-602)、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製、KBM-603)、3-アミノプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製、KBM-903)、3-アミノプロピルトリエトキシシラン(信越化学工業(株)製、KBE-903)、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製、KBM-503)、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製、KBM-403)等が挙げられる。シランカップリング剤の詳細については、特開2013-254047号公報の段落0155~0158の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。本発明の硬化性組成物がシランカップリング剤を含有する場合、シランカップリング剤の含有量は、硬化性組成物の全固形分中0.001~20質量%が好ましく、0.01~10質量%がより好ましく、0.1質量%~5質量%が特に好ましい。本発明の硬化性組成物は、シランカップリング剤を、1種のみを含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合は、それらの合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0242】
<<重合禁止剤>>
本発明の硬化性組成物は、重合禁止剤を含有することができる。重合禁止剤としては、ハイドロキノン、p-メトキシフェノール、ジ-t-ブチル-p-クレゾール、ピロガロール、t-ブチルカテコール、ベンゾキノン、4,4'-チオビス(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)、2,2'-メチレンビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、N-ニトロソフェニルヒドロキシルアミン塩(アンモニウム塩、第一セリウム塩等)等が挙げられる。本発明の硬化性組成物が重合禁止剤を含有する場合、重合禁止剤の含有量は、硬化性組成物の全固形分中0.0001~5質量%が好ましい。本発明の硬化性組成物は、重合禁止剤を、1種のみを含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合は、それらの合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0243】
<<紫外線吸収剤>>
本発明の硬化性組成物は、紫外線吸収剤を含有することができる。紫外線吸収剤は、共役ジエン化合物、アミノジエン化合物、サリシレート化合物、ベンゾフェノン化合物、ベンゾトリアゾール化合物、アクリロニトリル化合物、ヒドロキシフェニルトリアジン化合物、インドール化合物、トリアジン化合物などを用いることができる。これらの詳細については、特開2012-208374号公報の段落0052~0072、特開2013-068814号公報の段落0317~0334、特開2016-162946号公報の段落0061~0080の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。紫外線吸収剤の市販品としては、例えば、UV-503(大東化学(株)製)などが挙げられる。また、ベンゾトリアゾール化合物としては、ミヨシ油脂製のMYUAシリーズ(化学工業日報、2016年2月1日)が挙げられる。また、紫外線吸収剤として特許第6268967号公報の段落0049~0059に記載の化合物も使用できる。本発明の硬化性組成物が紫外線吸収剤を含有する場合、紫外線吸収剤の含有量は、硬化性組成物の全固形分中0.1~10質量%が好ましく、0.1~5質量%がより好ましく、0.1~3質量%が特に好ましい。また、紫外線吸収剤は、1種のみを用いてもよく、2種以上を用いてもよい。2種以上を用いる場合は、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0244】
<<界面活性剤>>
本発明の硬化性組成物は、界面活性剤を含有することができる。界面活性剤としては、フッ素系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、シリコン系界面活性剤などの各種界面活性剤を使用することができる。界面活性剤については、国際公開第2015/166779号の段落0238~0245を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0245】
本発明において、界面活性剤はフッ素系界面活性剤であることが好ましい。硬化性組成物にフッ素系界面活性剤を含有させることで液特性(特に、流動性)がより向上し、省液性をより改善することができる。また、厚さムラの小さい膜を形成することもできる。
【0246】
フッ素系界面活性剤中のフッ素含有率は、3~40質量%が好適であり、より好ましくは5~30質量%であり、特に好ましくは7~25質量%である。フッ素含有率がこの範囲内であるフッ素系界面活性剤は、塗布膜の厚さの均一性や省液性の点で効果的であり、硬化性組成物中における溶解性も良好である。
【0247】
フッ素系界面活性剤としては、特開2014-041318号公報の段落0060~0064(対応する国際公開第2014/017669号の段落0060~0064)等に記載の界面活性剤、特開2011-132503号公報の段落0117~0132に記載の界面活性剤が挙げられ、これらの内容は本明細書に組み込まれる。フッ素系界面活性剤の市販品としては、例えば、メガファックF171、F172、F173、F176、F177、F141、F142、F143、F144、R30、F437、F475、F479、F482、F554、F780、EXP、MFS-330(以上、DIC(株)製)、フロラードFC430、FC431、FC171(以上、住友スリーエム(株)製)、サーフロンS-382、SC-101、SC-103、SC-104、SC-105、SC-1068、SC-381、SC-383、S-393、KH-40(以上、旭硝子(株)製)、PolyFox PF636、PF656、PF6320、PF6520、PF7002(以上、OMNOVA社製)等が挙げられる。
【0248】
また、フッ素系界面活性剤は、フッ素原子を含有する官能基を持つ分子構造を有し、熱を加えるとフッ素原子を含有する官能基の部分が切断されてフッ素原子が揮発するアクリル系化合物も好適に使用できる。このようなフッ素系界面活性剤としては、DIC(株)製のメガファックDSシリーズ(化学工業日報、2016年2月22日)(日経産業新聞、2016年2月23日)、例えばメガファックDS-21が挙げられる。
【0249】
また、フッ素系界面活性剤は、フッ素化アルキル基またはフッ素化アルキレンエーテル基を有するフッ素原子含有ビニルエーテル化合物と、親水性のビニルエーテル化合物との重合体を用いることも好ましい。このようなフッ素系界面活性剤は、特開2016-216602号公報の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0250】
フッ素系界面活性剤は、ブロックポリマーを用いることもできる。例えば特開2011-089090号公報に記載された化合物が挙げられる。フッ素系界面活性剤は、フッ素原子を有する(メタ)アクリレート化合物に由来する繰り返し単位と、アルキレンオキシ基(好ましくはエチレンオキシ基、プロピレンオキシ基)を2以上(好ましくは5以上)有する(メタ)アクリレート化合物に由来する繰り返し単位と、を含む含フッ素高分子化合物も好ましく用いることができる。下記化合物も本発明で用いられるフッ素系界面活性剤として例示される。
【0251】
【0252】
上記の化合物の重量平均分子量は、好ましくは3000~50000であり、例えば、14000である。上記の化合物中、繰り返し単位の割合を示す%はモル%である。
【0253】
また、フッ素系界面活性剤は、エチレン性不飽和基を側鎖に有する含フッ素重合体を用いることもできる。具体例としては、特開2010-164965号公報の段落0050~0090および段落0289~0295に記載された化合物、例えばDIC(株)製のメガファックRS-101、RS-102、RS-718K、RS-72-K等が挙げられる。フッ素系界面活性剤は、特開2015-117327号公報の段落0015~0158に記載の化合物を用いることもできる。
【0254】
ノニオン系界面活性剤としては、グリセロール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン並びにそれらのエトキシレート及びプロポキシレート(例えば、グリセロールプロポキシレート、グリセロールエトキシレート等)、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリエチレングリコールジラウレート、ポリエチレングリコールジステアレート、ソルビタン脂肪酸エステル、プルロニックL10、L31、L61、L62、10R5、17R2、25R2(BASF社製)、テトロニック304、701、704、901、904、150R1(BASF社製)、ソルスパース20000(日本ルーブリゾール(株)製)、NCW-101、NCW-1001、NCW-1002(富士フイルム和光純薬(株)製)、パイオニンD-6112、D-6112-W、D-6315(竹本油脂(株)製)、オルフィンE1010、サーフィノール104、400、440(日信化学工業(株)製)などが挙げられる。
【0255】
シリコン系界面活性剤としては、例えば、トーレシリコーンDC3PA、トーレシリコーンSH7PA、トーレシリコーンDC11PA、トーレシリコーンSH21PA、トーレシリコーンSH28PA、トーレシリコーンSH29PA、トーレシリコーンSH30PA、トーレシリコーンSH8400(以上、東レ・ダウコーニング(株)製)、TSF-4440、TSF-4300、TSF-4445、TSF-4460、TSF-4452(以上、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製)、KP-341、KF-6001、KF-6002(以上、信越化学工業(株)製)、BYK307、BYK323、BYK330(以上、ビックケミー社製)等が挙げられる。
【0256】
硬化性組成物の全固形分中における界面活性剤の含有量は、0.001~5.0質量%が好ましく、0.005~3.0質量%がより好ましい。界面活性剤は1種のみでもよく、2種以上でもよい。2種以上の場合は、それらの合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0257】
<<その他添加剤>>
本発明の硬化性組成物には、必要に応じて、各種添加剤、例えば、充填剤、密着促進剤、酸化防止剤、凝集防止剤等を配合することができる。これらの添加剤としては、特開2004-295116号公報の段落0155~0156に記載の添加剤を挙げることができ、この内容は本明細書に組み込まれる。また、酸化防止剤としては、例えばフェノール化合物、リン系化合物(例えば特開2011-090147号公報の段落0042に記載の化合物)、チオエーテル化合物などを用いることができる。市販品としては、例えば(株)ADEKA製のアデカスタブシリーズ(AO-20、AO-30、AO-40、AO-50、AO-50F、AO-60、AO-60G、AO-80、AO-330など)が挙げられる。また、酸化防止剤として、国際公開第2017/006600号に記載された多官能ヒンダードアミン酸化防止剤、国際公開第2017/164024号に記載された酸化防止剤、特許第6268967号公報の段落0023~0048に記載された酸化防止剤を用いることもできる。酸化防止剤は1種のみを用いてもよく、2種以上を用いてもよい。また、本発明の硬化性組成物は、必要に応じて、潜在酸化防止剤を含有してもよい。潜在酸化防止剤としては、酸化防止剤として機能する部位が保護基で保護された化合物であって、100~250℃で加熱するか、又は酸/塩基触媒存在下で80~200℃で加熱することにより保護基が脱離して酸化防止剤として機能する化合物が挙げられる。潜在酸化防止剤の具体例としては、国際公開第2014/021023号、国際公開第2017/030005号、特開2017-008219号公報に記載された化合物が挙げられる。市販品としては、アデカアークルズGPA-5001((株)ADEKA製)等が挙げられる。また、本発明の硬化性組成物は、特開2004-295116号公報の段落0078に記載の増感剤や光安定剤、同公報の段落0081に記載の熱重合防止剤、特開2018-091940号公報の段落0242に記載の貯蔵安定化剤を含有することができる。
【0258】
本発明の硬化性組成物は、顔料などと結合または配位していない遊離の金属の含有量が100ppm以下であることが好ましく、50ppm以下であることがより好ましく、10ppm以下であることが更に好ましく、実質的に含有しないことが特に好ましい。この態様によれば、顔料分散性の安定化(凝集抑止)、分散性向上に伴う分光特性の向上、硬化性成分の安定化や、金属原子・金属イオンの溶出に伴う導電性変動の抑止、表示特性の向上などの効果が期待できる。上記の遊離の金属の種類としては、Na、K、Ca、Sc、Ti、Mn、Cu、Zn、Fe、Cr、Fe、Co、Mg、Al、Ti、Sn、Zn、Zr、Ga、Ge、Ag、Au、Pt、Cs、Bi等が挙げられる。また、本発明の硬化性組成物は、顔料などと結合または配位していない遊離のハロゲンの含有量が100質量ppm以下であることが好ましく、50質量ppm以下であることがより好ましく、10質量ppm以下であることが更に好ましく、実質的に含有しないことが特に好ましい。硬化性組成物中の遊離の金属やハロゲンの低減方法としては、イオン交換水による洗浄、ろ過、限外ろ過、イオン交換樹脂による精製等の方法が挙げられる。
【0259】
本発明の硬化性組成物は、テレフタル酸エステルを実質的に含まないことも好ましい。ここで、「実質的に含まない」とは、テレフタル酸エステルの含有量が、組成物の固形分中、1000質量ppb以下であることを意味し、500質量ppb以下であることがより好ましく、ゼロであることが特に好ましい。
【0260】
<収容容器>
本発明の硬化性組成物の収容容器としては、特に限定はなく、公知の収容容器を用いることができる。また、収容容器として、原材料や硬化性組成物中への不純物混入を抑制することを目的に、容器内壁を6種6層の樹脂で構成する多層ボトルや6種の樹脂を7層構造にしたボトルを使用することも好ましい。このような容器としては例えば特開2015-123351号公報に記載の容器が挙げられる。また、容器内壁からの金属溶出を防ぎ、組成物の保存安定性を高め、成分変質を抑制する観点から、収容容器の内壁はガラス製やステンレス製であることが好ましい。
【0261】
<硬化性組成物の製造方法>
本発明の硬化性組成物は、前述の成分を混合することにより製造できる。硬化性組成物の製造に際しては、全成分を同時に溶剤に溶解および/または分散して硬化性組成物を製造してもよいし、必要に応じて、各成分を適宜2つ以上の溶液または分散液としておいて、使用時(塗布時)にこれらを混合して組成物を製造してもよい。
【0262】
また、硬化性組成物の製造に際して、顔料などの粒子を分散させるプロセスを含んでいてもよい。顔料を分散させるプロセスにおいて、顔料の分散に用いる機械力としては、圧縮、圧搾、衝撃、剪断、キャビテーションなどが挙げられる。これらプロセスの具体例としては、ビーズミル、サンドミル、ロールミル、ボールミル、ペイントシェーカー、マイクロフルイダイザー、高速インペラー、サンドグラインダー、フロージェットミキサー、高圧湿式微粒化、超音波分散などが挙げられる。またサンドミル(ビーズミル)における顔料の粉砕においては、径の小さいビーズを使用する、ビーズの充填率を大きくする事等により粉砕効率を高めた条件で処理することが好ましい。また、粉砕処理後にろ過、遠心分離などで粗粒子を除去することが好ましい。また、顔料を分散させるプロセスおよび分散機は、「分散技術大全、株式会社情報機構発行、2005年7月15日」や「サスペンション(固/液分散系)を中心とした分散技術と工業的応用の実際 総合資料集、経営開発センター出版部発行、1978年10月10日」、特開2015-157893号公報の段落0022に記載のプロセス及び分散機を好適に使用出来る。また顔料を分散させるプロセスにおいては、ソルトミリング工程にて粒子の微細化処理を行ってもよい。ソルトミリング工程に用いられる素材、機器、処理条件等は、例えば特開2015-194521号公報、特開2012-046629号公報の記載を参酌できる。
【0263】
硬化性組成物の製造にあたり、異物の除去や欠陥の低減などの目的で、硬化性組成物をフィルタでろ過することが好ましい。フィルタとしては、従来からろ過用途等に用いられているフィルタであれば特に限定されることなく用いることができる。例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素樹脂、ナイロン(例えばナイロン-6、ナイロン-6,6)等のポリアミド樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン樹脂(高密度、超高分子量のポリオレフィン樹脂を含む)等の素材を用いたフィルタが挙げられる。これら素材の中でもポリプロピレン(高密度ポリプロピレンを含む)およびナイロンが好ましい。
【0264】
フィルタの孔径は、0.01~7.0μmが好ましく、0.01~3.0μmがより好ましく、0.05~0.5μmが更に好ましい。フィルタの孔径が上記範囲であれば、微細な異物をより確実に除去できる。フィルタの孔径値については、フィルタメーカーの公称値を参照することができる。フィルタは、日本ポール株式会社(DFA4201NIEYなど)、アドバンテック東洋株式会社、日本インテグリス株式会社(旧日本マイクロリス株式会社)および株式会社キッツマイクロフィルタ等が提供する各種フィルタを用いることができる。
【0265】
また、フィルタとしてファイバ状のろ材を用いることも好ましい。ファイバ状のろ材としては、例えばポリプロピレンファイバ、ナイロンファイバ、グラスファイバ等が挙げられる。市販品としては、ロキテクノ社製のSBPタイプシリーズ(SBP008など)、TPRタイプシリーズ(TPR002、TPR005など)、SHPXタイプシリーズ(SHPX003など)が挙げられる。
【0266】
フィルタを使用する際、異なるフィルタ(例えば、第1のフィルタと第2のフィルタなど)を組み合わせてもよい。その際、各フィルタでのろ過は、1回のみでもよいし、2回以上行ってもよい。また、上述した範囲内で異なる孔径のフィルタを組み合わせてもよい。また、第1のフィルタでのろ過は、分散液のみに対して行い、他の成分を混合した後で、第2のフィルタでろ過を行ってもよい。
【0267】
<硬化膜および光学フィルタ>
本発明の硬化膜は、上述した本発明の硬化性組成物の膜を形成し、この膜を乾燥し、硬化させることにより製造できる。本発明の硬化膜は、近赤外線透過フィルタとして好ましく用いることができる。この硬化膜の厚さは、目的に応じて適宜調整でき、100μm以下が好ましく、15μm以下がより好ましく、5μm以下がさらに好ましく、3μm以下が特に好ましい。厚さの下限は、0.1μm以上が好ましく、0.2μm以上がより好ましく、0.3μm以上がさらに好ましい。
【0268】
厚さが1μm、2μm、3μm、4μmまたは5μmの上記硬化膜を形成した際に、膜の厚さ方向における光の透過率について、波長400~600nmの範囲における最大値が20%以下であり、波長1000~1300nmの範囲における最小値が70%以上である分光特性を満たしていることが好ましい。波長400~600nmの範囲における最大値は、15%以下が好ましく、10%以下がより好ましい。波長1000~1300nmの範囲における最小値は、75%以上が好ましく、80%以上がより好ましい。
【0269】
本発明の硬化膜は、以下の(11)~(14)のいずれかの分光特性を満たしていることがより好ましい。
【0270】
(11):厚さ1μm、2μm、3μm、4μmまたは5μmの上記硬化膜を形成した際に、膜の厚さ方向における光の透過率について、波長400~640nmの範囲における最大値が20%以下(好ましくは15%以下、より好ましくは10%以下)であり、波長800~1300nmの範囲における最小値が70%以上(好ましくは75%以上、より好ましくは80%以上)である。
【0271】
(12):厚さ1μm、2μm、3μm、4μmまたは5μmの上記硬化膜を形成した際に、膜の厚さ方向における光の透過率について、波長400~750nmの範囲における最大値が20%以下(好ましくは15%以下、より好ましくは10%以下)であり、波長900~1300nmの範囲における最小値が70%以上(好ましくは75%以上、より好ましくは80%以上)である。
【0272】
(13):厚さ1μm、2μm、3μm、4μmまたは5μmの上記硬化膜を形成した際に、膜の厚さ方向における光の透過率について、波長400~830nmの範囲における最大値が20%以下(好ましくは15%以下、より好ましくは10%以下)であり、波長1000~1300nmの範囲における最小値が70%以上(好ましくは75%以上、より好ましくは80%以上)である。
【0273】
(14):厚さ1μm、2μm、3μm、4μmまたは5μmの上記硬化膜を形成した際に、膜の厚さ方向における光の透過率について、波長400~950nmの範囲における最大値が20%以下(好ましくは15%以下、より好ましくは10%以下)であり、波長1100~1300nmの範囲における最小値が70%以上(好ましくは75%以上、より好ましくは80%以上)である。
【0274】
本発明の光学フィルタは、例えば、近赤外線透過フィルタであり、本発明の上記硬化膜を含む。本発明の光学フィルタは、硬化膜の表面に特開2017-151176号公報の段落0073~0092に記載の保護層が設けられていてもよい。また、本発明の光学フィルタは、有彩色着色剤を含むRGB用カラーフィルタを備えていてもよい。このようなカラーフィルタは、上記色材の説明で述べた有彩色着色剤と同様の有彩色着色剤を含む硬化性組成物を用いて製造される。
【0275】
<パターンの形成方法>
本発明のパターンの形成方法は、本発明の硬化性組成物を用いて支持体上に硬化性組成物層を形成する工程と、この硬化性組成物層に対して、350nmを超え380nm以下の波長を有する光を照射し、パターン状に露光する第1の露光工程と、硬化性組成物層を現像する現像工程と、現像工程後に、硬化性組成物層に対して、254~350nmの波長を有する光を照射する第2の露光工程とを含む。そして、本発明のパターンの形成方法では、全工程を通じて200℃未満の温度下で処理を行うことができ、好ましくは150℃以下の温度下で行うこともできる。なお、本発明において、「全工程を通じて200℃未満の温度で処理を行う」とは、硬化性組成物を用いてパターン状の硬化膜を形成する工程の全てを、200℃未満の温度で行うことを意味する。本発明のパターンの形成方法において、第2の露光工程後に、さらに加熱する工程を設けることもできる。ただし、この場合には、加熱温度は200℃未満とする。以下、各工程について詳細を述べる。
【0276】
<<硬化性組成物層の形成工程>>
硬化性組成物層を形成する工程では、支持体上に本発明の硬化性組成物を塗布して硬化性組成物層を形成する。支持体は、例えば、ガラス基板や樹脂基板である。樹脂基板としては、ポリカーボネート基板、ポリエステル基板、芳香族ポリアミド基板、ポリアミドイミド基板、ポリイミド基板等が挙げられる。これらの基板上には有機発光層や光電変換層が形成されていてもよい。また、基板には、上部の層との密着性改良、物質の拡散防止或いは表面の平坦化のために下塗り層が設けられていてもよい。下塗り層は、例えば、本発明の硬化性組成物から色材を抜いたような硬化性組成物を塗布することで形成してもよい。
【0277】
組成物の塗布方法としては、公知の方法を用いることができる。例えば、滴下法(ドロップキャスト);スリットコート法;スプレー法;ロールコート法;回転塗布法(スピンコーティング);流延塗布法;スリットアンドスピン法;プリウェット法(たとえば、特開2009-145395号公報に記載されている方法);インクジェット(例えばオンデマンド方式、ピエゾ方式、サーマル方式)、ノズルジェット等の吐出系印刷、フレキソ印刷、スクリーン印刷、グラビア印刷、反転オフセット印刷、メタルマスク印刷法などの各種印刷法;金型等を用いた転写法;ナノインプリント法などが挙げられる。インクジェットでの適用方法としては、特に限定されず、例えば「広がる・使えるインクジェット-特許に見る無限の可能性-、2005年2月発行、住ベテクノリサーチ」に示された方法(特に115ページ~133ページ)や、特開2003-262716号公報、特開2003-185831号公報、特開2003-261827号公報、特開2012-126830号公報、特開2006-169325号公報などに記載の方法が挙げられる。また、組成物の塗布方法については、国際公開第2017/030174号、国際公開第2017/018419号の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0278】
支持体上に形成した硬化組成物層は、乾燥(プリベーク)してもよい。プリベークを行う場合、プリベーク温度は、80℃以下が好ましく、70℃以下がより好ましく、60℃以下が更に好ましく、50℃以下が特に好ましい。下限は、例えば、40℃以上とすることができる。プリベーク時間は、10~3600秒が好ましい。プリベークは、ホットプレート、オーブン等で行うことができる。
【0279】
<<第1の露光工程>>
第1の露光工程では、硬化性組成物層に対して、350nmを超え380nm以下の波長の光を照射してパターン状に露光する。例えば、硬化性組成物層に対し、ステッパー等の露光装置を用いて、所定のマスクパターンを有するマスクを介して露光することで、パターン状に露光することができる。これにより、硬化性組成物層の露光部分を硬化させることができる。露光に際して用いることができる光としては、350nmを超え380nm以下の波長の光であり、波長355~370nmの光が好ましく、i線(365nm)がより好ましい。また、この露光処理は、KR1020170122130Aに記載されているように、i線よりも短い波長の光をカットしながら行ってもよい。
【0280】
照射量(露光量)としては、例えば、30~1500mJ/cm2が好ましく、50~1000mJ/cm2がより好ましい。露光時における酸素濃度については適宜選択することができ、大気下で行う他に、例えば酸素濃度が19体積%以下の低酸素雰囲気下(例えば、15体積%、5体積%、実質的に無酸素)で露光してもよく、酸素濃度が21体積%を超える高酸素雰囲気下(例えば、22体積%、30体積%、50体積%)で露光してもよい。また、露光照度は適宜設定することが可能であり、通常1000W/m2~100000W/m2(例えば、5000W/m2、15000W/m2、35000W/m2)の範囲から選択することができる。酸素濃度と露光照度は適宜条件を組み合わせてよく、例えば、酸素濃度10体積%で照度10000W/m2、酸素濃度35体積%で照度20000W/m2などとすることができる。
【0281】
第1の露光工程において、露光後の硬化性組成物層中の重合性化合物の反応率は、30%を超え80%未満であることが好ましい。このような反応率にすることにより重合性化合物を適度に硬化させた状態にすることができる。色材の濃度が高く、光が透過しにくい傾向にある近赤外線透過フィルタ用の組成物においては、現像に耐えうる程度に深層部を硬化させるため、カラーフィルタ用の組成物の場合に比べ、上記反応率は、高めに設定することが好ましい。さらに、本発明において、上記反応率は、40~75%であることがより好ましく、50~70%であることがさらに好ましい。ここで、重合性化合物の反応率とは、第1の露光工程前において重合性化合物が有していた重合性基のうち、反応した重合性基の割合をいう。重合性化合物の反応率は、赤外吸収スペクトル法により810cm-1付近のピーク面積を解析することにより、膜の厚さ方向の平均値として求めることができる。
【0282】
<<現像工程>>
現像工程では、硬化性組成物層の未露光部を現像除去してパターン(画素)を形成する。硬化性組成物層の未露光部の現像除去は、現像液を用いて行うことができる。これにより、露光工程における未露光部の硬化性組成物層が現像液に溶出し、光硬化した部分だけが残る。現像液としては、有機溶剤、アルカリ現像液などが挙げられ、アルカリ現像液であることが好ましい。現像液の温度は、例えば、20~30℃が好ましい。現像時間は、20~180秒が好ましい。また、残渣除去性を向上するため、現像液を60秒ごとに振り切り、さらに新たに現像液を供給する工程を数回繰り返してもよい。
【0283】
アルカリ現像液は、アルカリ剤を純水で希釈したアルカリ性水溶液であることが好ましい。アルカリ剤としては、例えば、アンモニア、エチルアミン、ジエチルアミン、ジメチルエタノールアミン、ジグリコールアミン、ジエタノールアミン、ヒドロキシアミン、エチレンジアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、エチルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、ベンジルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、ジメチルビス(2-ヒドロキシエチル)アンモニウムヒドロキシド、コリン、ピロール、ピペリジン、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセンなどの有機アルカリ性化合物や、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウムなどの無機アルカリ性化合物が挙げられる。アルカリ剤は、分子量が大きい化合物の方が環境面および安全面で好ましい。アルカリ性水溶液のアルカリ剤の濃度は、0.001~10質量%が好ましく、0.01~1質量%がより好ましい。また、現像液は、さらに界面活性剤を含有していてもよい。界面活性剤としては、上述した界面活性剤が挙げられ、ノニオン系界面活性剤が好ましい。現像液は、移送や保管の便宜などの観点より、一旦濃縮液として製造し、使用時に必要な濃度に希釈してもよい。希釈倍率は特に限定されないが、例えば1.5~100倍の範囲に設定することができる。
【0284】
また、現像後純水で洗浄(リンス)することも好ましい。また、リンスは、現像後の硬化性組成物層が形成された支持体を回転させつつ、現像後の硬化性組成物層へリンス液を供給して行うことが好ましい。また、リンス液を吐出させるノズルを支持体の中心部から支持体の周縁部に移動させて行うことも好ましい。この際、ノズルの支持体中心部から周縁部へ移動させるにあたり、ノズルの移動速度を徐々に低下させながら移動させてもよい。このようにしてリンスを行うことで、リンスの面内ばらつきを抑制できる。また、ノズルを支持体中心部から周縁部へ移動させつつ、支持体の回転速度を徐々に低下させても同様の効果が得られる。
【0285】
<<第2の露光工程>>
第2の露光工程では、波長254~350nmの光を照射して硬化性組成物層を露光する。照射する光は、波長300nm以下の光を含むことが好ましく、波長254nmの光を含むことがより好ましい。第2の露光工程は、例えば紫外線フォトレジスト硬化装置を用いて行うことができる。紫外線フォトレジスト硬化装置からは、例えば波長254~350nmの光とともに、これ以外の光(例えばi線)が照射されてもよい。上述した現像前の露光で用いられる光の波長と、現像後の露光(後露光)で用いられる光の波長の差は、200nm以下であることが好ましく、100~150nmであることがより好ましい。
【0286】
照射量(露光量)は、30~4000mJ/cm2が好ましく、50~3500mJ/cm2がより好ましい。露光時における酸素濃度については、第1の露光工程時の条件と同様に、適宜選択することができる。
【0287】
第2の露光工程において、露光後の硬化性組成物層中の重合性化合物の反応率は、60%以上であることが好ましい。上限は、100%以下とすることもでき、90%以下とすることもできる。このような反応率にすることにより、露光後の硬化性組成物層の硬化状態をより強固にすることができる。
【0288】
本発明では、現像前および現像後の2段階で硬化性組成物層を露光することにより、第1の露光(現像前の露光)で硬化性組成物層を適度に硬化させることができ、第2の露光(現像後の露光)で硬化性組成物層全体をほぼ完全に硬化させることができる。結果として、200℃未満の低温条件でも、硬化性組成物を充分に硬化させて、密着性に優れ、さらには、耐溶剤性、平坦性および矩形性にも優れるパターン状の硬化膜を形成することができる。
【0289】
<<ポストベーク>>
本発明のパターン形成においては、さらに、現像工程と第2の露光工程の間、および、第2の露光工程の後の少なくともいずれかの期間に、所定の温度で硬化性組成物層を加熱する工程(ポストベーク)を行ってもよい。ポストベークの加熱温度は、200℃未満であることが好ましく、150℃以下であることがより好ましく、120℃以下であることがさらに好ましい。また、ポストベークの加熱温度は、45℃以上であることが好ましく、50℃以上であることがより好ましく、80℃以上であることがさらに好ましい。特に、樹脂基板を使用する場合や、光電変換層を有機材料などで構成した場合においては、加熱温度は、50~120℃であることが好ましく、80~100℃がより好ましく、80~90℃がさらに好ましい。加熱時間は、適宜選択でき、例えば1~10分であり、2~8分であることが好ましく、3~6分であることがより好ましい。
【0290】
ポストベークは、大気下で行ってもよく、低酸素雰囲気下で行ってもよい。ポストベークは、組成物の酸化による劣化を抑制する等の観点から、例えば酸素濃度が19体積%以下の低酸素雰囲気下で行うことが好ましく、酸素濃度は、15体積%以下であることがより好ましく、5体積%以下であることがさらに好ましく、1体積%以下(実質的に無酸素)であることが特に好ましい。
【0291】
ポストベークは、ホットプレートやコンベクションオーブン(熱風循環式乾燥機)、高周波加熱機等の加熱手段を用いて、連続式あるいはバッチ式で行うことができる。一方、露光後の構造体を加熱することに支障がある場合や、硬化性組成物層が充分に硬化している場合には、ポストベークは行わなくてもよい。
【0292】
第2の露光工程後(第2の露光工程後にポストベークを行った場合はポストベーク後)のパターン状の硬化膜の厚さは、0.1~5.0μmであることが好ましい。下限は、0.2μm以上であることが好ましく、0.5μm以上であることがより好ましい。上限は、4.0μm以下であることが好ましく、2.5μm以下であることがより好ましい。硬化膜のパターンの幅は、0.5~20.0μmであることが好ましい。下限は、1.0μm以上であることが好ましく、2.0μm以上であることがより好ましい。上限は、15.0μm以下であることが好ましく、10.0μm以下であることがより好ましい。パターン状の硬化膜のヤング率は、0.5~20GPaが好ましく、2.5~15GPaがより好ましい。ヤング率は、例えば、ナノインデンテーション法を用いて測定できる。
【0293】
<光センサ>
本発明の光センサは、例えば、受光素子を構成する固体撮像素子と、この固体撮像素子の受光側に設置された本発明の近赤外線透過フィルタを有する。このような構成により、所望の波長範囲の近赤外線を受光素子で受光することができる。本発明の近赤外線透過フィルタが組み込まれた光センサは、CCD(電荷結合素子)イメージセンサおよびCMOS(相補型金属酸化膜半導体)イメージセンサなどに応用することができ、生体認証用途、監視用途、モバイル用途、自動車用途、農業用途、医療用途、距離計測用途、ジェスチャー認識用途などの用途に好ましく用いることができる。
【実施例】
【0294】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。「部」、「%」は特に述べない限り、質量基準である。
【0295】
<分散液の調製>
下記の表に記載の原料を混合したのち、混合原料100質量部に対して、直径0.3mmのジルコニアビーズ230質量部を加えて、ペイントシェーカーを用いて5時間分散処理を行い、ビーズをろ過で分離して分散液を製造した。下記の表に記載の数値は質量部である。
【0296】
【0297】
<組成物の調製>
下記の表に記載の原料を混合して、組成物(硬化性組成物)を調製した。下記の表に記載の数値は質量部である。
【0298】
【0299】
上記表に記載の原料は以下の通りである。
【0300】
<<着色剤>>
IB :Irgaphor Black S 0100 CF(BASF社製、下記構造の化合物、ラクタム系顔料)
【化23】
PBk32 :C.I.Pigment Black 32(下記構造の化合物、ペリレン系顔料)
【化24】
PR254 :C.I.Pigment Red 254
PY139 :C.I.Pigment Yellow 139
PB15:6 :C.I.Pigment Blue 15:6
PB16 :C.I.Pigment Blue 16
PV23 :C.I.Pigment Violet 23
【0301】
<<顔料誘導体>>
B1:下記構造の化合物。
【化25】
【0302】
<<分散剤>>
C1:下記構造の樹脂。主鎖に付記した数値はモル比であり、側鎖に付記した数値は繰り返し単位の数である。Mw=20,000。
C2:下記構造の樹脂。主鎖に付記した数値はモル比であり、側鎖に付記した数値は繰り返し単位の数である。Mw=24,000。
【化26】
【0303】
<<樹脂>>
P1:下記構造の樹脂(Mw=11,000、主鎖に付記した数値はモル比である。)
【化27】
P2:下記構造の樹脂
【化28】
【0304】
<<重合性化合物>>
D1:TMPEOTA(ダイセル・オルネクス社製)
D2:下記構造のモノマー。
【化29】
D3:下記構造のモノマー。
【化30】
D4:下記構造の化合物の混合物(左側化合物(6官能の(メタ)アクリレート化合物)と右側化合物(5官能の(メタ)アクリレート化合物)とのモル比が7:3の混合物)
【化31】
D5:下記構造の化合物(アルキレンオキシ基を有する4官能の(メタ)アクリレート化合物)
【化32】
【0305】
<<光重合開始剤>>
I-A1:IRGACURE-OXE02(BASF社製)
I-A2:IRGACURE-OXE03(BASF社製)
I-A3:IRGACURE379(BASF社製)
I-B1:IRGACURE2959(BASF社製)
I-B2:IRGACURE1173(BASF社製)
【0306】
<<界面活性剤>>
F1:下記構造の化合物(Mw=14000、繰り返し単位の割合を示す%の数値はモル%である、フッ素系界面活性剤)
【化33】
【0307】
<<重合禁止剤>>
G1:p-メトキシフェノール
【0308】
<<溶剤>>
J1:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)
【0309】
<<シランカップリング剤>>
H1:下記構造
【化34】
【0310】
<<エポキシ樹脂>>
Q1:EPICLON N-695(DIC(株)製)
Q2:EHPE3150((株)ダイセル製)
【0311】
<<硬化剤>>
R1:ピロメリット酸無水物
【0312】
<吸光度および分光特性>
ポストベーク後の膜厚が下記表に記載の膜厚となるように、各組成物をガラス基板上にスピンコート法により塗布し、ホットプレートを用いて、100℃で120秒間加熱乾燥した後、さらに、200℃で300秒間加熱処理(ポストベーク)を行い、膜を形成した。膜が形成されたガラス基板を、紫外可視近赤外分光光度計U-4100(日立ハイテク製)を用いて、波長400~600nmの範囲における吸光度の最小値A、波長1000~1300nmの範囲における吸光度の最大値Bを測定した。
【0313】
<密着性の評価>
8インチ(1インチは約2.54cm)のシリコンウエハ上に、CT-4000L(富士フイルムエレクトロニクスマテリアルズ(株)製)をスピンコートで均一に塗布して塗布膜を形成し、形成された塗布膜を220℃のオーブンで1時間処理し、塗布膜を硬化させ、下塗り層を形成した。なお、スピンコートの塗布回転数は、加熱処理後の下塗り層の膜厚が約0.1μmとなるように調整した。
【0314】
次に、上記で得た各組成物を、上記シリコンウエハの下塗り層上に、乾燥後膜厚が下記表に記載の膜厚となるようにスピンコーターを用いて塗布し、ホットプレートを用いて100℃で120秒間乾燥した。
【0315】
次に、i線ステッパー露光装置FPA-i5+(キヤノン(株)製)を使用して、塗布膜に365nmの波長の光を、2.0μm四方のアイランドパターンを有するマスクを通し、50~1700mJ/cm2の露光量で照射し、第1の露光を実施した。露光後、アルカリ現像液(CD-2000、富士フイルムエレクトロニクスマテリアルズ(株)製)を使用して、25℃40秒間の条件で現像した。その後、流水で30秒間リンスした後、スプレー乾燥した。その後、ガラスウェハ全体に、紫外線フォトレジスト硬化装置(MMA-802-HC-552、ウシオ電気(株)製)を用いて、10000mJ/cm2の露光量で照射し、第2の露光を実施して、パターン状の硬化膜を得た。
【0316】
得られたパターンについて、セロハンテープを剥離試験用圧着ローラー(2kg)を用いて圧着させ、テープの端を45°の角度に傾けながら秒速75mmの速さで引き剥がし、膜が残っているパターンの数を以下のように評価した。また光学顕微鏡を用いて以下の基準で密着性の評価を行った。
【0317】
5点:はがれが全く生じていない。
4点:はがれが生じている。はがれが生じた碁盤目の数が全体の5%未満。
3点:はがれが生じている。はがれが生じた碁盤目の数が全体の5%以上25%未満。
2点:はがれが生じている。はがれが生じた碁盤目の数が全体の25%以上60%未満。
1点:はがれが生じている。はがれが生じた碁盤目の数が全体の60%以上。
【0318】
【0319】
上記表に示すように、実施例の組成物は密着性に優れたパターンを形成することができた。