(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-15
(45)【発行日】2022-04-25
(54)【発明の名称】光学部材の位置調整支援装置、光学部材の位置調整支援方法、光学部材の位置調整支援プログラム、レンズ装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
G02B 7/02 20210101AFI20220418BHJP
H04N 5/232 20060101ALI20220418BHJP
G01M 11/02 20060101ALI20220418BHJP
【FI】
G02B7/02 C
G02B7/02 Z
H04N5/232
G01M11/02 B
(21)【出願番号】P 2020569474
(86)(22)【出願日】2020-01-09
(86)【国際出願番号】 JP2020000366
(87)【国際公開番号】W WO2020158325
(87)【国際公開日】2020-08-06
【審査請求日】2021-06-09
(31)【優先権主張番号】P 2019016083
(32)【優先日】2019-01-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002505
【氏名又は名称】特許業務法人航栄特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 和哉
【審査官】三宅 克馬
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-230745(JP,A)
【文献】特開2008-170981(JP,A)
【文献】特開2008-244494(JP,A)
【文献】特開2002-98875(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 7/02
H04N 5/232
G01M 11/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被調整光学部材を含む複数の光学部材を有するレンズ装置の結像位置と前記レンズ装置の光軸方向における評価位置との距離を複数の値に変えた状態において、前記評価位置にて得られた前記レンズ装置の第一の解像性能データに基づく実測評価データを取得する実測評価取得部と、
前記実測評価データと、前記レンズ装置と同じ構成の複数の仮想レンズ装置の各々の解像特性を予め決められた特性とするために必要な前記各仮想レンズ装置における前記被調整光学部材の位置の調整量を示す第一情報と、前記各仮想レンズ装置において前記距離を前記複数の値に変えた状態において、前記評価位置にて得られた前記各仮想レンズ装置の第二の解像性能データに基づく前記各仮想レンズ装置の設計評価データと、に基づいて、前記レンズ装置の解像特性を前記予め決められた特性とするために必要な前記レンズ装置における前記被調整光学部材の位置の調整量を示す情報である調整支援情報を出力する出力部と、を備える光学部材の位置調整支援装置。
【請求項2】
請求項1記載の光学部材の位置調整支援装置であって、
前記出力部は、前記各仮想レンズ装置の前記設計評価データの中から前記実測評価データに類似する1つの前記設計評価データを抽出し、前記抽出した前記設計評価データが得られる前記仮想レンズ装置の解像特性を前記予め決められた特性とするために必要な前記第一情報を、前記調整支援情報として出力する光学部材の位置調整支援装置。
【請求項3】
請求項1記載の光学部材の位置調整支援装置であって、
前記出力部は、前記各仮想レンズ装置の前記設計評価データの中から前記実測評価データに類似する複数の前記設計評価データを抽出し、前記複数の前記設計評価データの各々が得られる前記仮想レンズ装置の解像特性を前記予め決められた特性とするために必要な前記第一情報を用いて前記調整支援情報を生成する光学部材の位置調整支援装置。
【請求項4】
請求項1記載の光学部材の位置調整支援装置であって、
前記出力部は、前記設計評価データと前記第一情報を教師データとする機械学習によって生成されたモデルによって、前記実測評価データから前記調整支援情報を生成する光学部材の位置調整支援装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項記載の光学部材の位置調整支援装置であって、
前記第一の解像性能データは、前記距離が前記複数の値の各々である状態における前記レンズ装置の解像性能を示すデータであり、
前記実測評価データは、前記第一の解像性能データにおける前記解像性能のピーク値と、前記ピーク値が得られた状態の前記距離に対応する情報と、を含む光学部材の位置調整支援装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項記載の光学部材の位置調整支援装置であって、
前記実測評価データは、前記評価位置の第一像高における前記第一の解像性能データに基づく第一実測評価データと、前記評価位置の前記第一像高とは異なる第二像高における前記第一の解像性能データに基づく第二実測評価データと、を含む光学部材の位置調整支援装置。
【請求項7】
請求項6記載の光学部材の位置調整支援装置であって、
前記第二実測評価データは、前記評価位置の前記第二像高の第一位置における前記第一の解像性能データに基づく第一サブ実測評価データと、前記評価位置の前記第二像高の前記第一位置とは異なる第二位置における前記第一の解像性能データに基づく第二サブ実測評価データと、を含む光学部材の位置調整支援装置。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項記載の光学部材の位置調整支援装置であって、
前記第一の解像性能データは、第一空間周波数の評価対象物に対する第一サブ解像性能データと、前記第一空間周波数と異なる第二空間周波数の評価対象物に対する第二サブ解像性能データと、を含み、
前記実測評価データは、前記第一サブ解像性能データに基づくものと、前記第二サブ解像性能データに基づくものと、を含む光学部材の位置調整支援装置。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1項記載の光学部材の位置調整支援装置であって、
前記調整支援情報は、前記レンズ装置の光軸方向における前記被調整光学部材の位置の調整量と、前記被調整光学部材の光軸の傾きの調整量と、を含む光学部材の位置調整支援装置。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか1項記載の光学部材の位置調整支援装置であって、
前記レンズ装置は、複数の前記被調整光学部材と、位置調整が不要な少なくとも1つの固定光学部材と、を含む光学部材の位置調整支援装置。
【請求項11】
被調整光学部材を含む複数の光学部材を有するレンズ装置の結像位置と前記レンズ装置の光軸方向における評価位置との距離を複数の値に変えた状態にて得られるデータである、前記評価位置における前記レンズ装置の第一の解像性能データ、に基づく実測評価データを取得するステップと、
前記実測評価データと、前記レンズ装置と同じ構成の複数の仮想レンズ装置の各々の解像特性を予め決められた特性とするために必要な前記各仮想レンズ装置における前記被調整光学部材の位置の調整量を示す第一情報と、前記各仮想レンズ装置において前記距離を前記複数の値に変えた状態にて得られるデータである、前記評価位置における前記各仮想レンズ装置の第二の解像性能データ、に基づく前記各仮想レンズ装置の設計評価データと、に基づいて、前記レンズ装置の解像特性を前記予め決められた特性とするために必要な前記レンズ装置における前記被調整光学部材の位置の調整量を示す情報である調整支援情報を出力する出力ステップと、を備える光学部材の位置調整支援方法。
【請求項12】
請求項11記載の光学部材の位置調整支援方法であって、
前記出力ステップでは、前記各仮想レンズ装置の前記設計評価データの中から前記実測評価データに類似する1つの前記設計評価データを抽出し、前記抽出した前記設計評価データが得られる前記仮想レンズ装置の解像特性を前記予め決められた特性とするために必要な前記第一情報を、前記調整支援情報として出力する光学部材の位置調整支援方法。
【請求項13】
請求項11記載の光学部材の位置調整支援方法であって、
前記出力ステップでは、前記各仮想レンズ装置の前記設計評価データの中から前記実測評価データに類似する複数の前記設計評価データを抽出し、前記複数の前記設計評価データの各々が得られる前記仮想レンズ装置の解像特性を前記予め決められた特性とするために必要な前記第一情報を用いて前記調整支援情報を生成する光学部材の位置調整支援方法。
【請求項14】
請求項11記載の光学部材の位置調整支援方法であって、
前記出力ステップでは、前記設計評価データと前記第一情報を教師データとする機械学習によって生成されたモデルによって、前記実測評価データから前記調整支援情報を生成する光学部材の位置調整支援方法。
【請求項15】
請求項11から14のいずれか1項記載の光学部材の位置調整支援方法であって、
前記第一の解像性能データは、前記距離が前記複数の値の各々である状態における前記レンズ装置の解像性能を示すデータであり、
前記実測評価データは、前記第一の解像性能データにおける前記解像性能のピーク値と、前記ピーク値が得られた状態の前記距離に対応する情報と、を含む光学部材の位置調整支援方法。
【請求項16】
請求項11から15のいずれか1項記載の光学部材の位置調整支援方法であって、
前記実測評価データは、前記評価位置の第一像高における前記第一の解像性能データに基づく第一実測評価データと、前記評価位置の前記第一像高とは異なる第二像高における前記第一の解像性能データに基づく第二実測評価データと、を含む光学部材の位置調整支援方法。
【請求項17】
請求項16記載の光学部材の位置調整支援方法であって、
前記第二実測評価データは、前記評価位置の前記第二像高の第一位置における前記第一の解像性能データに基づく第一サブ実測評価データと、前記評価位置の前記第二像高の前記第一位置とは異なる第二位置における前記第一の解像性能データに基づく第二サブ実測評価データと、を含む光学部材の位置調整支援方法。
【請求項18】
請求項11から17のいずれか1項記載の光学部材の位置調整支援方法であって、
前記第一の解像性能データは、第一空間周波数の評価対象物に対する第一サブ解像性能データと、前記第一空間周波数と異なる第二空間周波数の評価対象物に対する第二サブ解像性能データと、を含み、
前記実測評価データは、前記第一サブ解像性能データに基づくものと、前記第二サブ解像性能データに基づくものと、を含む光学部材の位置調整支援方法。
【請求項19】
請求項11から18のいずれか1項記載の光学部材の位置調整支援方法であって、
前記調整支援情報は、前記レンズ装置の光軸方向における前記被調整光学部材の位置の調整量と、前記被調整光学部材の光軸の傾きの調整量と、を含む光学部材の位置調整支援方法。
【請求項20】
請求項11から19のいずれか1項記載の光学部材の位置調整支援方法であって、
前記レンズ装置は、複数の前記被調整光学部材と、位置調整が不要な少なくとも1つの固定光学部材と、を含む光学部材の位置調整支援方法。
【請求項21】
被調整光学部材を含む複数の光学部材を有するレンズ装置の結像位置と前記レンズ装置の光軸方向における評価位置との距離を複数の値に変えた状態において、前記評価位置にて得られた前記レンズ装置の第一の解像性能データに基づく実測評価データを取得するステップと、
前記実測評価データと、前記レンズ装置と同じ構成の複数の仮想レンズ装置の各々の解像特性を予め決められた特性とするために必要な前記各仮想レンズ装置における前記被調整光学部材の位置の調整量を示す第一情報と、前記各仮想レンズ装置において前記距離を前記複数の値に変えた状態において、前記評価位置にて得られた前記各仮想レンズ装置の第二の解像性能データに基づく前記各仮想レンズ装置の設計評価データと、に基づいて、前記レンズ装置の解像特性を前記予め決められた特性とするために必要な前記レンズ装置における前記被調整光学部材の位置の調整量を示す情報である調整支援情報を出力する出力ステップと、をコンピュータに実行させるための光学部材の位置調整支援プログラム。
【請求項22】
被調整光学部材を含む複数の光学部材を有するレンズ装置の製造方法であって、
前記レンズ装置の結像位置と前記レンズ装置の光軸方向における評価位置との距離を複数の値に変えた状態において、前記評価位置にて得られた前記レンズ装置の第一の解像性能データに基づく実測評価データを生成する第一工程と、
前記実測評価データと、前記レンズ装置と同じ構成の複数の仮想レンズ装置の各々の解像特性を予め決められた特性とするために必要な前記各仮想レンズ装置における前記被調整光学部材の位置の第一情報と、前記各仮想レンズ装置において前記距離を前記複数の値に変えた状態において、前記評価位置にて得られた前記各仮想レンズ装置の第二の解像性能データに基づく前記各仮想レンズ装置の設計評価データと、に基づいて、前記レンズ装置の解像特性を前記予め決められた特性とするために必要な前記レンズ装置における前記被調整光学部材の位置の調整量を示す情報である調整支援情報を出力する出力部を備える光学部材の位置調整支援装置に前記実測評価データを入力する第二工程と、
前記位置調整支援装置から出力された前記調整支援情報にしたがって、前記被調整光学部材の位置を調整する第三工程と、を備えるレンズ装置の製造方法。
【請求項23】
請求項22記載のレンズ装置の製造方法であって、
前記第一工程は、第一空間周波数の評価対象物に対する前記第一の解像性能データに基づく前記実測評価データを生成する第一サブ工程と、前記第一空間周波数よりも高い第二空間周波数の評価対象物に対する前記第一の解像性能データに基づく前記実測評価データを生成する第二サブ工程と、を含み、
前記第二工程は、前記第一サブ工程にて生成した前記実測評価データを前記位置調整支援装置に入力する第三サブ工程と、前記第二サブ工程にて生成した前記実測評価データを前記位置調整支援装置に入力する第四サブ工程と、を含み、
前記第三工程は、前記第三サブ工程によって前記位置調整支援装置から出力された前記調整支援情報にしたがって前記被調整光学部材の位置を調整する第五サブ工程と、前記第四サブ工程によって前記位置調整支援装置から出力された前記調整支援情報にしたがって前記被調整光学部材の位置を調整する第六サブ工程と、を含み、
前記第一サブ工程、前記第三サブ工程、前記第五サブ工程を行って前記被調整光学部材の位置の一次調整を行った後、前記第二サブ工程、前記第四サブ工程、前記第六サブ工程を行って前記被調整光学部材の位置の二次調整を行うレンズ装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学部材の位置調整支援装置、光学部材の位置調整支援方法、光学部材の位置調整支援プログラム、レンズ装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
デジタルカメラ等の撮像装置又はプロジェクタ等の投影装置等に用いられるレンズ装置は、レンズ、絞り、ミラー等の複数の光学部材を有する。このため、各光学部材の製造誤差及び組立誤差等により、設計通りにレンズ装置を製造しても、所望の解像特性を得られないことがある。
【0003】
そこで、特許文献1には、レンズ光学系において、所望の解像特性を得るために、レンズ光学系の光軸に垂直な面内における被調整レンズの位置の調整量を、機械学習を利用して求めることが記載されている。より具体的には、特許文献1には、レンズ光学系のズームレンズをテレ端とワイド端にそれぞれ移動させた状態においてレンズ光学系の性能値を求め、この性能値をニューラルネットワークに入力し、ニューラルネットワークによって被調整レンズの移動調整量を求める方法が記載されている。
【0004】
また、特許文献2及び特許文献3には、撮像素子とレンズとを含むモジュールにおいて、撮像素子により光軸方向の異なる位置でチャートを撮像して解像評価値を求め、この解像評価値に基づいて撮像素子とレンズとの位置調整を行うことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2008-170981号公報
【文献】特開2010-021985号公報
【文献】WO2015/129120号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の方法は、レンズ光学系の合焦位置を1つに固定した状態にてレンズ光学系の性能値を求め、この性能値に基づいて被調整レンズの調整量を求めるものである。このため、例えば被調整レンズが複数ある場合、被調整レンズの傾きを調整する必要がある場合、又は被調整レンズの光軸方向の位置を調整する必要がある場合等には、被調整レンズの位置調整を正確に行うことができない。
【0007】
特許文献2、3は、レンズと撮像素子との位置関係を調整する技術であり、レンズ装置内の光学部材の位置調整を行うものではない。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、レンズ装置における光学部材の高精度な位置調整を可能とする光学部材の位置調整支援装置、光学部材の位置調整支援方法、光学部材の位置調整支援プログラム、レンズ装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の光学部材の位置調整支援装置は、被調整光学部材を含む複数の光学部材を有するレンズ装置の結像位置と上記レンズ装置の光軸方向における評価位置との距離を複数の値に変えた状態において、上記評価位置にて得られた上記レンズ装置の第一の解像性能データに基づく実測評価データを取得する実測評価取得部と、上記実測評価データと、上記レンズ装置と同じ構成の複数の仮想レンズ装置の各々の解像特性を予め決められた特性とするために必要な上記各仮想レンズ装置における上記被調整光学部材の位置の調整量を示す第一情報と、上記各仮想レンズ装置において上記距離を上記複数の値に変えた状態にておいて、上記評価位置にて得られた上記各仮想レンズ装置の第二の解像性能データに基づく上記各仮想レンズ装置の設計評価データと、に基づいて、上記レンズ装置の解像特性を上記予め決められた特性とするために必要な上記レンズ装置における上記被調整光学部材の位置の調整量を示す情報である調整支援情報を出力する出力部と、を備えるものである。
【0010】
本発明の光学部材の位置調整支援方法は、被調整光学部材を含む複数の光学部材を有するレンズ装置の結像位置と上記レンズ装置の光軸方向における評価位置との距離を複数の値に変えた状態において、上記評価位置にて得られた上記レンズ装置の第一の解像性能データに基づく実測評価データを取得するステップと、上記実測評価データと、上記レンズ装置と同じ構成の複数の仮想レンズ装置の各々の解像特性を予め決められた特性とするために必要な上記各仮想レンズ装置における上記被調整光学部材の位置の調整量を示す第一情報と、上記各仮想レンズ装置において上記距離を上記複数の値に変えた状態において、上記評価位置にて得られた上記各仮想レンズ装置の第二の解像性能データに基づく上記各仮想レンズ装置の設計評価データと、に基づいて、上記レンズ装置の解像特性を上記予め決められた特性とするために必要な上記レンズ装置における上記被調整光学部材の位置の調整量を示す情報である調整支援情報を出力する出力ステップと、を備えるものである。
【0011】
本発明の光学部材の位置調整支援プログラムは、被調整光学部材を含む複数の光学部材を有するレンズ装置の結像位置と上記レンズ装置の光軸方向における評価位置との距離を複数の値に変えた状態において、上記評価位置にて得られた上記レンズ装置の第一の解像性能データに基づく実測評価データを取得するステップと、上記実測評価データと、上記レンズ装置と同じ構成の複数の仮想レンズ装置の各々の解像特性を予め決められた特性とするために必要な上記各仮想レンズ装置における上記被調整光学部材の位置の調整量を示す第一情報と、上記各仮想レンズ装置において上記距離を上記複数の値に変えた状態において、上記評価位置にて得られた上記各仮想レンズ装置の第二の解像性能データに基づく上記各仮想レンズ装置の設計評価データと、に基づいて、上記レンズ装置の解像特性を上記予め決められた特性とするために必要な上記レンズ装置における上記被調整光学部材の位置の調整量を示す情報である調整支援情報を出力する出力ステップと、をコンピュータに実行させるためのものである。
【0012】
本発明のレンズ装置の製造方法は、被調整光学部材を含む複数の光学部材を有するレンズ装置の製造方法であって、上記レンズ装置の結像位置と上記レンズ装置の光軸方向における評価位置との距離を複数の値に変えた状態において、上記評価位置にて得られた上記レンズ装置の第一の解像性能データに基づく実測評価データを生成する第一工程と、上記実測評価データと、上記レンズ装置と同じ構成の複数の仮想レンズ装置の各々の解像特性を予め決められた特性とするために必要な上記各仮想レンズ装置における上記被調整光学部材の位置の第一情報と、上記各仮想レンズ装置において上記距離を上記複数の値に変えた状態にておいて、上記評価位置にて得られた上記各仮想レンズ装置の第二の解像性能データに基づく上記各仮想レンズ装置の設計評価データと、に基づいて、上記レンズ装置の解像特性を上記予め決められた特性とするために必要な上記レンズ装置における上記被調整光学部材の位置の調整量を示す情報である調整支援情報を出力する出力部を備える光学部材の位置調整支援装置に上記実測評価データを入力する第二工程と、上記位置調整支援装置から出力された上記調整支援情報にしたがって、上記被調整光学部材の位置を調整する第三工程と、を備えるものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、レンズ装置における光学部材の高精度な位置調整を可能とする光学部材の位置調整支援装置、光学部材の位置調整支援方法、光学部材の位置調整支援プログラム、レンズ装置の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態である光学部材の位置調整支援装置100を利用して製造されるレンズ装置1の一例を示す模式図である。
【
図2】位置調整支援装置100の概略構成を示す模式図である。
【
図3】実測評価データの生成に必要な第一の解像性能データの測定系を示す模式図である。
【
図4】
図2に示す解像度チャート2を光軸方向Zにレンズ装置1側から見た図である。
【
図5】低周波パターンに対応する第一の解像性能データの一例を示す模式図である。
【
図6】高周波パターンに対応する第一の解像性能データの一例を示す模式図である。
【
図7】
図2に示すデータベース103に登録されているデータの一例を示す図である。
【
図8】位置調整支援装置100の第二変形例である位置調整支援装置100Aの構成を示す模式図である。
【
図9】レンズ装置1の製造方法の変形例を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0016】
図1は、本発明の一実施形態である光学部材の位置調整支援装置100を利用して製造されるレンズ装置1の一例を示す模式図である。レンズ装置1は、デジタルカメラ等の撮像装置又はプロジェクタ等の投影装置等に利用される。以下では、レンズ装置1が撮像装置に利用されるものとして説明する。
【0017】
レンズ装置1は、レンズ鏡筒10内に設けられた複数の光学部材(
図1の例では、第一レンズ11、第二レンズ12、第三レンズ13、及び第四レンズ14の4つの光学部材)を備える。第一レンズ11、第二レンズ12、第三レンズ13、及び第四レンズ14は、レンズ装置1の光軸Kに沿って被写体側からこの順番にて配置されている。光軸Kの延びる方向を光軸方向Zという。
【0018】
第一レンズ11、第二レンズ12、第三レンズ13、及び第四レンズ14のうち、例えば第四レンズ14はフォーカスレンズである。第四レンズ14が光軸方向Zに移動することによって、レンズ装置1による被写体の結像位置を変えることができる。
【0019】
レンズ装置1は、例えば次のようにして製造される。レンズ鏡筒10内に、設計値にしたがって、第一レンズ11、第二レンズ12、第三レンズ13、及び第四レンズ14を配置し、第一レンズ11と第四レンズ14をレンズ鏡筒10に固定する。また、第二レンズ12及び第三レンズ13は、レンズ鏡筒10に対して動かせるようレンズ鏡筒10に仮固定される。第一レンズ11と第四レンズ14がレンズ鏡筒10に固定され、第二レンズ12及び第三レンズ13がレンズ鏡筒10に仮固定された状態のレンズ装置1を、以下では調整前のレンズ装置1ともいう。調整前のレンズ装置1における第一レンズ11、第二レンズ12、第三レンズ13、及び第四レンズ14の各々の位置を初期位置という。
【0020】
その後、調整前のレンズ装置1の解像性能(具体的には光学伝達関数(Modulated Transfer Function:MTF))が予め決められた性能(以下、所望の性能という)となるように、第二レンズ12と第三レンズ13の各々の光軸方向Zの位置と、第二レンズ12と第三レンズ13の各々の光軸の傾きとを含む、第二レンズ12と第三レンズ13の各々の位置の調整を行う。この調整の終了後、第二レンズ12及び第三レンズ13がレンズ鏡筒10に本固定されて、レンズ装置1が完成される。
【0021】
以下で説明する位置調整支援装置100は、調整前のレンズ装置1の解像性能が所望の性能となるような、第二レンズ12と第三レンズ13の各々の光軸方向Zの位置の初期位置からの調整量と、第二レンズ12と第三レンズ13の各々の光軸の初期位置に対する傾きの調整量と、を膨大なシミュレーションデータに基づいて自動生成することによって、この位置調整作業を支援するものである。
【0022】
図2は、位置調整支援装置100の概略構成を示す模式図である。位置調整支援装置100は、実測評価取得部101と、調整支援情報生成部102と、データベース(DB)103と、を備える。位置調整支援装置100は、プログラムを実行して処理を行う各種のプロセッサと、RAM(Random Access Memory)と、ROM(Read Only Memory)を含む。データベース103は、例えばROMに含まれる。
【0023】
本明細書における各種のプロセッサとしては、プログラムを実行して各種処理を行う汎用的なプロセッサであるCPU(Central Processing Unit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)等の製造後に回路構成を変更可能なプロセッサであるプログラマブルロジックデバイス(Programmable Logic Device:PLD)、又はASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の特定の処理を実行させるために専用に設計された回路構成を有するプロセッサである専用電気回路等が含まれる。これら各種のプロセッサの構造は、より具体的には、半導体素子等の回路素子を組み合わせた電気回路である。
【0024】
位置調整支援装置100は、各種のプロセッサのうちの1つで構成されてもよいし、同種又は異種の2つ以上のプロセッサの組み合わせ(例えば、複数のFPGAの組み合わせ又はCPUとFPGAの組み合わせ)で構成されてもよい。
【0025】
位置調整支援装置100のプロセッサは、ROMに記憶された位置調整支援プログラムを含むプログラムを実行することにより、実測評価取得部101と、調整支援情報生成部102として機能する。
【0026】
実測評価取得部101は、調整前のレンズ装置1の解像性能を示す実測評価データの入力がなされた場合に、この実測評価データを取得してRAMに一時記憶する。
【0027】
実測評価データは、調整前のレンズ装置1の結像位置と、調整前のレンズ装置1の光軸方向Zにおける評価位置との距離を複数の値に変えた状態にて得られる、この評価位置におけるレンズ装置1の第一の解像性能データに基づくデータである。
【0028】
図3は、実測評価データの生成に必要な第一の解像性能データの測定系を示す模式図である。
図3に示す測定系は、調整前のレンズ装置1の被写体側前方の所定位置に、所定のパターンが形成された解像度チャート2が配置されている。また、調整前のレンズ装置1の被写体側と反対側の位置には、撮像素子3が光軸方向Zに移動自在に配置されている。
図3の測定系においては、光軸方向Zにおける撮像素子3の受光面の位置が、レンズ装置1の結像性能を評価する評価位置となる。
【0029】
図4は、
図2に示す解像度チャート2を光軸方向Zにレンズ装置1側から見た図である。解像度チャート2は、光軸方向Zに垂直な矩形平面であり、方向Xが撮像素子3の受光面の長手方向と一致しており、方向Xに垂直な方向Yが撮像素子3の受光面の短手方向と一致している。方向X及び方向Yは光軸方向Zに垂直となっている。
【0030】
解像度チャート2には、調整前のレンズ装置1の光軸Kと交わる中心部分に、第一のパターン21が形成されている。第一のパターン21は、
図4中に拡大図を示しているように、方向Yに延びる線が方向Xに第一の間隔で配列された空間周波数の低い低周波パターンLPと、方向Yに延びる線が方向Xに第一の間隔よりも狭い第二の間隔で配列された空間周波数の高い高周波パターンHPと、を含む。
【0031】
また、解像度チャート2には、調整前のレンズ装置1の光軸Kと交わる点を中心とした円24の円周上の所定の位置に第二のパターン22が形成されている。更に、円24の円周上の第二のパターン22が形成された位置とは異なる位置に、第三のパターン23が形成されている。第二のパターン22と第三のパターン23は、それぞれ、第一のパターン21と同様に、低周波パターンLPと高周波パターンHPのペアにより構成されている。
【0032】
なお、第一のパターン21、第二のパターン22、及び第三のパターン23の各々は、方向Yに延びる直線が方向Xに配列されたパターンであるが、方向Xに延びる直線が方向Yに配列されたパターンであってもよいし、これら両方のパターンを含むものであってもよい。また、解像度チャート2に含まれるパターンの数は、第一のパターン21、第二のパターン22、第三のパターン23の3つに限らず、4つ以上であってもよい。
【0033】
本明細書においては、解像度チャート2を撮像素子3によって撮像して得られる撮像画像において、光軸Kと交わる中心位置を基準の像高とし、この中心位置を中心とした円の円周上の位置を、この円の半径に応じた値の像高として定義する。
【0034】
したがって、
図4に示す解像度チャート2の撮像画像における円24の円周上にある第二のパターン22と第三のパターン23は、同じ像高のパターンと言うことができる。また、第一のパターン21と、第二のパターン22及び第三のパターン23とは、異なる像高のパターンと言うことができる。第一のパターン21の像高は第一の像高を構成し、第二のパターン22の像高は第二の像高を構成し、第三のパターン23の像高は第三の像高を構成する。
【0035】
図3に示す測定系では、更に、調整前のレンズ装置1の第四レンズ14の位置が予め決められた位置に固定されている。このように、
図3の測定系において、調整前のレンズ装置1の第四レンズ14の位置(換言すると焦点位置)は固定であり、解像度チャート2の位置も固定である。このため、調整前のレンズ装置1による解像度チャート2の結像位置は固定となっている。
【0036】
図3に示す測定系では、撮像素子3を光軸方向Zに所定の範囲にて移動させながら、各移動位置において撮像素子3によって解像度チャート2を撮像する。これにより、調整前のレンズ装置1によって結像される解像度チャート2の結像位置と、撮像素子3の受光面(評価位置)との距離(換言するとデフォーカス量)を複数の値に変化させた状態で、解像度チャート2の撮像画像が複数得られる。
【0037】
このようにして得られた、デフォーカス量の異なる複数の撮像画像の各々において、第一のパターン21の低周波パターンLPの画像、第二のパターン22の低周波パターンLPの画像、第三のパターン23の低周波パターンLPの画像、第一のパターン21の高周波パターンHPの画像、第二のパターン22の高周波パターンHPの画像、及び第三のパターン23の高周波パターンHPの画像のそれぞれから求められる各パターンの解像性能を示すMTF値を求めた結果の一例を
図5及び
図6に示す。
図5及び
図6において、横軸は、
図3の測定系における撮像素子3の受光面の光軸方向Zの位置を示し、縦軸はMTF値を示す。
【0038】
図5には、解像性能データ21Lと、解像性能データ22Lと、解像性能データ23Lと、が示されている。解像性能データ21Lは、上記の複数の撮像画像の各々における、第一のパターン21の低周波パターンLPのMTF値を示すデータである。解像性能データ22Lは、上記の複数の撮像画像の各々における、第二のパターン22の低周波パターンLPのMTF値を示すデータである。解像性能データ23Lは、上記の複数の撮像画像の各々における、第三のパターン23の低周波パターンLPのMTF値を示すデータである。
【0039】
図6には、解像性能データ21Hと、解像性能データ22Hと、解像性能データ23Hと、が示されている。解像性能データ21Hは、上記の複数の撮像画像の各々における、第一のパターン21の高周波パターンHPのMTF値を示すデータである。解像性能データ22Hは、上記の複数の撮像画像の各々における、第二のパターン22の高周波パターンHPのMTF値を示すデータである。解像性能データ23Hは、上記の複数の撮像画像の各々における、第三のパターン23の高周波パターンHPのMTF値の測定結果を示すデータである。解像性能データ21L、解像性能データ22L、解像性能データ23L、解像性能データ21H、解像性能データ22H、及び解像性能データ23Hは、それぞれ、第一の解像性能データを構成する。
【0040】
図5に示した解像性能データ21LにおけるMTF値のピーク値が実測評価データ21Lbとして生成され、そのピーク値が得られたときの撮像素子3の位置の情報が、実測評価データ21Laとして生成される。
【0041】
図5に示した解像性能データ22LにおけるMTF値のピーク値が実測評価データ22Lbとして生成され、そのピーク値が得られたときの撮像素子3の位置の情報が、実測評価データ22Laとして生成される。
【0042】
図5に示した解像性能データ23LにおけるMTF値のピーク値が実測評価データ23Lbとして生成され、そのピーク値が得られたときの撮像素子3の位置の情報が、実測評価データ23Laとして生成される。
【0043】
図6に示した解像性能データ21HにおけるMTF値のピーク値が実測評価データ21Hbとして生成され、そのピーク値が得られたときの撮像素子3の位置の情報が、実測評価データ21Haとして生成される。
【0044】
図6に示した解像性能データ22HにおけるMTF値のピーク値が実測評価データ22Hbとして生成され、そのピーク値が得られたときの撮像素子3の位置の情報が、実測評価データ22Haとして生成される。
【0045】
図6に示した解像性能データ23HにおけるMTF値のピーク値が実測評価データ23Hbとして生成され、そのピーク値が得られたときの撮像素子3の位置の情報が、実測評価データ23Haとして生成される。
【0046】
実測評価データ21La、実測評価データ22La、実測評価データ23La、実測評価データ21Ha、実測評価データ22Ha、及び実測評価データ23Haは、それぞれ、MTF値のピーク値が得られたときのレンズ装置1の結像位置と撮像素子3の受光面(評価位置)との距離に対応する情報となる。
【0047】
これら各実測評価データの生成は、
図3に示す測定系を例えばコンピュータによって自動制御することで行われる。
【0048】
なお、
図3に示す測定系は撮像素子3を移動させるものとしたが、これに限らない。例えば、
図3に示す測定系において、撮像素子3の位置は固定とし、解像度チャート2を光軸方向Zに移動させることで、レンズ装置1による解像度チャート2の結像位置と撮像素子3の受光面との距離を変化させてもよい。この場合には、実測評価データにおけるピーク値が得られたときの上記の距離(デフォーカス量)に対応する情報として、撮像素子3の位置の情報の代わりに、解像度チャート2の光軸方向Zの位置の情報が用いられる。
【0049】
また、
図3に示す測定系において、撮像素子3の位置は固定とし、フォーカスレンズである第四レンズ14を光軸方向Zに移動させることによって、レンズ装置1による解像度チャート2の結像位置と撮像素子3の受光面との距離を変化させてもよい。この場合には、実測評価データにおけるピーク値が得られたときの上記の距離(デフォーカス量)に対応する情報として、撮像素子3の位置の情報の代わりに、第四レンズ14の光軸方向Zの位置の情報が用いられる。
尚、解像性能データは、解像度チャート2をレンズ装置1を介してスクリーンに投影し、投影された画像を撮像することによって取得することもできる。この場合、
図3において、解像度チャート2を液晶表示パネル等の表示部に表示させた表示画像として、この表示画像をレンズ装置1によってスクリーン上に投影させる。更に、撮像素子3の代わりに、このスクリーンに投影された解像度チャート2の投影像を撮像する撮像装置を設ける。そして、例えば、スクリーンの位置は固定とし、レンズ装置1のフォーカス位置は固定として、表示部を光軸方向に移動させながら撮像装置によって投影像を撮像して第一の解像性能データを生成すればよい。この構成においては、撮像装置の位置が評価位置となって、表示部の移動により、レンズ装置1による解像度チャート2の結像位置と評価位置との距離が変化することになる。
【0050】
図2に示した調整支援情報生成部102は、実測評価取得部101によって取得された各実測評価データと、データベース103に登録されている設計評価データ及び第一情報とに基づいて、調整前のレンズ装置1の解像特性を所望の特性とするために必要なこのレンズ装置1における第二レンズ12及び第三レンズ13の位置の調整量を示す情報である調整支援情報を出力する。調整支援情報生成部102は、調整支援情報を出力する「出力部」としても機能する。
【0051】
図7は、
図2に示すデータベース103に登録されているデータの一例を示す図である。データベース103には、
図1のレンズ装置1と同じ構成のn個(nは2以上の自然数)の仮想レンズ装置A1、A2、A3、A4、A5、・・・、Anの誤差付設計データが登録されている。
【0052】
誤差付設計データは、レンズ装置1の第一レンズ11、第二レンズ12、第三レンズ13、及び第四レンズ14の各々の設計値(形状、屈折率等)と、第一レンズ11、第二レンズ12、第三レンズ13、及び第四レンズ14の配置に関する設計値(光軸方向Zの配置間隔等)とに、ランダムな誤差を付与したデータである。
【0053】
仮想レンズ装置A1~Anの各々に付与される誤差は、第一レンズ11、第二レンズ12、第三レンズ13、及び第四レンズ14の組立誤差、第一レンズ11、第二レンズ12、第三レンズ13、及び第四レンズ14の各々の製造誤差等の各種誤差の数倍の範囲の誤差を、例えばモンテカルロシミュレーションによってランダムに付与したものとなっている。
【0054】
データベース103には、このn個の誤差付設計データの各々に、第一の設計評価データと、第二の設計評価データと、第一情報と、が対応付けて登録されている。第一の設計評価データと第二の設計評価データを総称して設計評価データという。
【0055】
第一の設計評価データは、これに対応する仮想レンズ装置Ak(kは1~nのいずれか)の誤差付設計データに基づいて、この誤差付設計データの仮想レンズ装置を
図3の測定系に適用した場合に得られる
図5及び
図6に示した解像性能データ(第二の解像性能データ)をシミュレーションし、そのシミュレーション結果に基づいて得られた実測評価データ21La、実測評価データ21Lb、実測評価データ22La、実測評価データ22Lb、実測評価データ23La、及び実測評価データ23Lbのシミュレーション値である。
【0056】
第二の設計評価データは、これに対応する仮想レンズ装置Ak(kは1~nのいずれか)の誤差付設計データに基づいて、この誤差付設計データの仮想レンズ装置を
図3の測定系に適用した場合に得られる
図5及び
図6に示した解像性能データ(第二の解像性能データ)をシミュレーションし、そのシミュレーション結果に基づいて得られた実測評価データ21Ha、実測評価データ21Hb、実測評価データ22Ha、実測評価データ22Hb、実測評価データ23Ha、及び実測評価データ23Hbのシミュレーション値である。
【0057】
第一情報は、これに対応する仮想レンズ装置Ak(kは1~nのいずれか)の誤差付設計データに基づいて決まるこの仮想レンズ装置Akの解像性能を、上記の所望の性能にするために必要な第二レンズ12と第三レンズ13の調整量(光軸方向Zの位置調整量、光軸の傾き調整量)の情報である。第一情報もシミュレーションによって求められたものである。
【0058】
調整支援情報生成部102は、実測評価取得部101によって取得された12個の実測評価データの組み合わせに最も類似する設計評価データをデータベース103から抽出する。この抽出方法は様々である。例えば、12個の実測評価データから第一グラフを生成し、各設計評価データからn個の第二グラフを生成し、n個の第二グラフの形状と第一グラフの形状とを比較して、第一グラフの形状に最も近い第二グラフの生成元となった設計評価データを抽出結果とする。
【0059】
調整支援情報生成部102は、12個の実測評価データの組み合わせに最も類似する設計評価データを抽出すると、この抽出した設計評価データに対応する第一情報を調整支援情報として出力する。この調整支援情報は、例えば、図示しない表示部に表示されるなどして、レンズ装置1の製造者に通知される。製造者は、この調整支援情報にしたがって、第二レンズ12と第三レンズ13の光軸方向Zの位置及び光軸の傾きを調整する。
【0060】
第二レンズ12と第三レンズ13の光軸方向Zの位置及び光軸の傾きを人の手ではなく製造装置によって調整する場合には、上記の調整支援情報がこの製造装置に出力される。製造装置は、調整支援情報にしたがって、第二レンズ12と第三レンズ13の光軸方向Zの位置及び光軸の傾きを調整する。
【0061】
以上のように、位置調整支援装置100は、レンズ装置1の結像位置と撮像素子3の受光面の位置との距離を変えて得られる第一の解像性能データに基づいて生成された実測評価データを入力として調整支援情報を出力する。このため、調整支援情報として第二レンズ12、第三レンズ13の光軸の傾き及び光軸方向Zの位置の情報を含めることができる。したがって、光学部材の多いレンズ装置であっても、被調整光学部材の調整を精度よく行うことが可能となる。
【0062】
また、位置調整支援装置100によれば、データベース103に登録された設計評価データの中から、12個の実測評価データの組み合わせに最も類似する設計評価データを抽出するという簡易な処理によって、最適な調整支援情報を出力することができる。したがって、調整支援情報の出力までの時間短縮、位置調整支援装置100の製造コスト低減が可能となる。
【0063】
また、位置調整支援装置100は、MTF値のピーク値と、そのピーク値が得られたときの撮像素子3の位置を実測評価データとして取得する。このため、複数の被調整光学部材がある場合、被調整光学部材の傾きや光軸方向位置を調整する場合でも、高い解像特性を得ることが可能な調整支援情報を生成することができる。
【0064】
また、実測評価データと設計評価データは、それぞれ、光軸K近傍の第一のパターン21に対する解像性能を示すデータと、第一のパターン21よりも大きな像高にある第二のパターン22及び第三のパターン23に対する解像性能を示すデータとを含む。このため、レンズ装置1の光軸Kの周辺だけでなく、光軸Kから離れた位置での解像特性も含めて所望の特性となるような調整支援情報を生成することができる。
【0065】
また、実測評価データと設計評価データは、それぞれ、同じ像高の異なる位置にある第二のパターン22及び第三のパターン23に対する解像性能を示すデータを含む。このため、第二レンズ12及び第三レンズ13の各々の傾き、第二レンズ12と隣接光学部材の距離、第三レンズ13と隣接光学部材の距離を含めた調整支援情報を精度よく生成することができる。
【0066】
また、実測評価データと設計評価データは、それぞれ、空間周波数の低い低周波パターンLPに対する解像性能を示すデータと、空間周波数の高い高周波パターンHPに対する解像性能を示すデータとを含む。このため、調整支援情報の精度を高めることができる。
【0067】
以下、位置調整支援装置100の変形例を説明する。
【0068】
(第一変形例)
調整支援情報生成部102は、実測評価取得部101によって取得された12個の実測評価データの組み合わせに類似する複数の設計評価データをデータベース103から抽出し、この複数の設計評価データに対応する第一情報を利用して、調整支援情報を生成し出力してもよい。
【0069】
調整支援情報生成部102は、例えば、12個の実測評価データから第一グラフを生成し、各設計評価データからn個の第二グラフを生成し、n個の第二グラフの形状と第一グラフの形状とを比較して、第一グラフの形状に最も近い第二グラフの生成元となった設計評価データ(1番目設計評価データという)と、第一グラフの形状に2番目に近い第二グラフの生成元となった設計評価データ(2番目設計評価データという)とを抽出結果とする。
【0070】
そして、調整支援情報生成部102は、1番目設計評価データと2番目設計評価データの各々に対応する第一情報の平均値を調整支援情報として出力する。例えば、調整支援情報生成部102は、1番目設計評価データに対応する第一情報である傾き調整量と、2番目設計評価データに対応する第一情報である傾き調整量とを単純に平均して、光軸の傾きの調整支援情報として出力し、1番目設計評価データに対応する第一情報である位置調整量と、2番目設計評価データに対応する第一情報である位置調整量とを単純に平均して、光軸方向位置の調整支援情報として出力する。
【0071】
または、調整支援情報生成部102は、1番目設計評価データに対応する第一情報である傾き調整量と、2番目設計評価データに対応する第一情報である傾き調整量とを、1番目設計評価データに対応する方に重み付けを大きくして加重平均して、傾きの調整支援情報として出力する。また、調整支援情報生成部102は、1番目設計評価データに対応する第一情報である位置調整量と、2番目設計評価データに対応する第一情報である位置調整量とを、1番目設計評価データに対応する方に重み付けを大きくして加重平均して、光軸方向位置の調整支援情報として出力する。
【0072】
第一変形例によれば、複数の設計評価データに対応する複数の第一の情報によって調整支援情報が生成されるため、調整支援情報の精度を高めることができる。
【0073】
(第二変形例)
図8は、位置調整支援装置100の第二変形例である位置調整支援装置100Aの構成を示す模式図である。位置調整支援装置100Aは、調整支援情報生成部102が情報生成モデル102aによって調整支援情報を生成する点が位置調整支援装置100とは異なる。
【0074】
情報生成モデル102aは、データベース103に登録されたn個の設計評価データと、この各設計評価データに対応する第一情報とを教師データとする機械学習によって生成されたモデルであり、実測評価データを入力とし、この実測評価データに適した調整支援情報を生成して出力する。情報生成モデル102aを生成するための機械学習としては、ディープラーニング、部分的最小二乗法、サポートベクター回帰法、ランダムフォレスト法、決定木法等の任意のアルゴリズムを用いることができる。
【0075】
第二変形例によれば、機械学習によって生成された情報生成モデル102aによって調整支援情報が生成されるため、調整支援情報の精度を高めることができる。ここで、情報生成モデル102aは、調整支援情報を出力する「出力部」としても機能する。
【0076】
(第三変形例)
以上の説明では、位置調整支援装置100に12個の実測評価データを入力して最終的な調整支援情報を得て、この調整支援情報にしたがい、第二レンズ12と第三レンズ13を1度だけ調整してレンズ装置1を完成させるものとしたが。しかし、調整前のレンズ装置1の解像性能によっては、高周波パターンHPに対する実測評価データの信頼性が低くなる可能性がある。
【0077】
そこで、まず、低周波パターンLPに対する6個の実測評価データを位置調整支援装置100に入力し、一次調整のための調整支援情報を得て、この調整支援情報にしたがって第二レンズ12と第三レンズ13の粗調整を行う。次に、粗調整後のレンズ装置1によって得た高周波パターンHPに対する6個の実測評価データを位置調整支援装置100に入力し、最終調整のための調整支援情報を得て、この調整支援情報にしたがって第二レンズ12と第三レンズ13の最終調整(二次調整)を行うことが好ましい。以下、この場合の動作を詳細に説明する。
【0078】
図9は、レンズ装置1の製造方法の変形例を説明するためのフローチャートである。まず、調整前のレンズ装置1に対し、
図3に示す測定系を利用して、実測評価データ21La、実測評価データ21Lb、実測評価データ22La、実測評価データ22Lb、実測評価データ23La、及び実測評価データ23Lbからなる実測評価データ群MLが生成され(ステップS1)、実測評価データ群MLが位置調整支援装置100に入力される(ステップS2)。
【0079】
位置調整支援装置100では、実測評価取得部101が実測評価データ群MLを取得すると、調整支援情報生成部102が、データベース103の中から、実測評価データ群MLに最も類似する第一の設計評価データを抽出し、抽出した第一の設計評価データに対応する第一情報を、調整支援情報ILとして出力する(ステップS3)。
【0080】
次に、この調整支援情報ILにしたがって、第二レンズ12と第三レンズ13の位置調整作業(一次調整)が実施される(ステップS4)。その後、この位置調整作業後のレンズ装置1に対し、
図3に示す測定系を利用して、実測評価データ21Ha、実測評価データ21Hb、実測評価データ22Ha、実測評価データ22Hb、実測評価データ23Ha、及び実測評価データ23Hbからなる実測評価データ群MHが生成され(ステップS5)、実測評価データ群MHが位置調整支援装置100に入力される(ステップS6)。
【0081】
位置調整支援装置100では、実測評価取得部101が実測評価データ群MHを取得すると、調整支援情報生成部102が、データベース103の中から、実測評価データ群MHに最も類似する第二の設計評価データを抽出し、抽出した第二の設計評価データに対応する第一情報を、調整支援情報IHとして出力する(ステップS7)。
【0082】
次に、この調整支援情報IHにしたがって、第二レンズ12と第三レンズ13の位置調整作業(二次調整)が実施され(ステップS8)、その状態で、第二レンズ12と第三レンズ13がレンズ鏡筒10に固定されて、レンズ装置1が完成される。
【0083】
以上のように、低周波パターンLPに対応する実測評価データ群MLから調整支援情報ILを生成する処理と、高周波パターンHPに対応する実測評価データ群MHから調整支援情報IHを生成する処理と、を分けて行うことで、調整前のレンズ装置1の解像性能によらずに、第二レンズ12と第三レンズ13の位置を高精度に調整して、レンズ装置1の解像特性を所望の特性とすることができる。
【0084】
なお、調整支援情報生成部102が情報生成モデル102aによって調整支援情報を生成する場合には、情報生成モデル102aとして、第一の設計評価データとこれに対応する第一情報とを教師データとする機械学習によって生成された低周波用モデルと、第二の設計評価データとこれに対応する第一情報とを教師データとする機械学習によって生成された高周波用モデルと、を用意しておけばよい。
【0085】
そして、調整支援情報生成部102は、実測評価データ群MLが入力された場合には、これを低周波用モデルに適用して、低周波用モデルによって一次調整用の調整支援情報ILを生成し、実測評価データ群MHが入力された場合には、これを高周波用モデルに適用して、高周波用モデルによって二次調整用の調整支援情報IHを生成すればよい。
【0086】
また、レンズ装置1は、光学部材としてレンズのみを有する構成としているが、レンズ装置1が有する光学部材には絞り、プリズム、ミラー等のレンズ以外のものが含まれていてもよい。また、レンズ装置1における被調整光学部材は複数ではなく、1つのみであってもよい。
【0087】
以上説明してきたように、本明細書には以下の事項が開示されている。
【0088】
(1)
被調整光学部材(例えば上述した実施形態の第二レンズ12、第三レンズ13)を含む複数の光学部材(例えば上述した実施形態の第一レンズ11、第二レンズ12、第三レンズ13、第四レンズ14)を有するレンズ装置の結像位置と上記レンズ装置の光軸方向における評価位置との距離を複数の値に変えた状態において、上記評価位置にて得られた上記レンズ装置の第一の解像性能データ(例えば上述した実施形態の解像性能データ21L、解像性能データ22L、解像性能データ23L、解像性能データ21H、解像性能データ22H、及び解像性能データ23H)に基づく実測評価データを取得する実測評価取得部と、
上記実測評価データと、上記レンズ装置と同じ構成の複数の仮想レンズ装置の各々の解像特性を予め決められた特性とするために必要な上記各仮想レンズ装置における上記被調整光学部材の位置の調整量を示す第一情報と、上記各仮想レンズ装置において上記距離を上記複数の値に変えた状態において、上記評価位置にて得られた上記各仮想レンズ装置の第二の解像性能データに基づく上記各仮想レンズ装置の設計評価データと、に基づいて、上記レンズ装置の解像特性を上記予め決められた特性とするために必要な上記レンズ装置における上記被調整光学部材の位置の調整量を示す情報である調整支援情報を出力する出力部(例えば上述した実施形態の調整支援情報生成部102)と、を備える光学部材の位置調整支援装置。
【0089】
(2)
(1)記載の光学部材の位置調整支援装置であって、
上記出力部は、上記各仮想レンズ装置の上記設計評価データの中から上記実測評価データに類似する1つの上記設計評価データを抽出し、上記抽出した上記設計評価データが得られる上記仮想レンズ装置の解像特性を上記予め決められた特性とするために必要な上記第一情報を、上記調整支援情報として出力する光学部材の位置調整支援装置。
【0090】
(3)
(1)記載の光学部材の位置調整支援装置であって、
上記出力部は、上記各仮想レンズ装置の上記設計評価データの中から上記実測評価データに類似する複数の上記設計評価データを抽出し、上記複数の上記設計評価データの各々が得られる上記仮想レンズ装置の解像特性を上記予め決められた特性とするために必要な上記第一情報を用いて上記調整支援情報を生成する光学部材の位置調整支援装置。
【0091】
(4)
(1)記載の光学部材の位置調整支援装置であって、
上記出力部は、上記設計評価データと上記第一情報を教師データとする機械学習によって生成されたモデル(例えば上述した実施形態の情報生成モデル102a)によって、上記実測評価データから上記調整支援情報を生成する光学部材の位置調整支援装置。
【0092】
(5)
(1)から(4)のいずれか1つに記載の光学部材の位置調整支援装置であって、
上記第一の解像性能データは、上記距離が上記複数の値の各々である状態における上記レンズ装置の解像性能を示すデータであり、
上記実測評価データは、上記第一の解像性能データにおける上記解像性能のピーク値と、上記ピーク値が得られた状態の上記距離に対応する情報(例えば上述した実施形態の撮像素子3の位置)と、を含む光学部材の位置調整支援装置。
【0093】
(6)
(1)から(5)のいずれか1つに記載の光学部材の位置調整支援装置であって、
上記実測評価データは、上記評価位置の第一像高における上記第一の解像性能データに基づく第一実測評価データ(例えば上述した実施形態の実測評価データ21La、21Lb、21Ha、21Hb)と、上記評価位置の上記第一像高とは異なる第二像高における上記第一の解像性能データに基づく第二実測評価データ(例えば上述した実施形態の実測評価データ22La、22Lb、22Ha、22Hb)と、を含む光学部材の位置調整支援装置。
【0094】
(7)
(6)記載の光学部材の位置調整支援装置であって、
上記第二実測評価データは、上記評価位置の上記第二像高の第一位置における上記第一の解像性能データに基づく第一サブ実測評価データ(例えば上述した実施形態の実測評価データ22La、22Lb、22Ha、22Hb)と、上記評価位置の上記第二像高の上記第一位置とは異なる第二位置における上記第一の解像性能データに基づく第二サブ実測評価データ(例えば上述した実施形態の実測評価データ23La、23Lb、23Ha、23Hb)と、を含む光学部材の位置調整支援装置。
【0095】
(8)
(1)から(7)のいずれか1つに記載の光学部材の位置調整支援装置であって、
上記第一の解像性能データは、第一空間周波数の評価対象物(例えば上述した実施形態の低周波パターンLP)に対する第一サブ解像性能データ(例えば上述した実施形態の解像性能データ21L、22L、23L)と、上記第一空間周波数と異なる第二空間周波数の評価対象物(例えば上述した実施形態の高周波パターンHP)に対する第二サブ解像性能データ(例えば上述した実施形態の解像性能データ21H、22H、23H)と、を含み、
上記実測評価データは、上記第一サブ解像性能データに基づくもの(例えば上述した実施形態の実測評価データ21La、21Lb、22La、21Lb、23La、23Lb)と、上記第二サブ解像性能データに基づくもの(例えば上述した実施形態の実測評価データ21Ha、21Hb、22Ha、22Hb、23Ha、23Hb)と、を含む光学部材の位置調整支援装置。
【0096】
(9)
(1)から(8)のいずれか1つに記載の光学部材の位置調整支援装置であって、
上記調整支援情報は、上記レンズ装置の光軸方向における上記被調整光学部材の位置の調整量と、上記被調整光学部材の光軸の傾きの調整量と、を含む光学部材の位置調整支援装置。
【0097】
(10)
(1)から(9)のいずれか1つに記載の光学部材の位置調整支援装置であって、
上記レンズ装置は、複数の上記被調整光学部材と、位置調整が不要な少なくとも1つの固定光学部材(例えば上述した実施形態の第一レンズ11、第四レンズ14)と、を含む光学部材の位置調整支援装置。
【0098】
(11)
被調整光学部材を含む複数の光学部材を有するレンズ装置の結像位置と上記レンズ装置の光軸方向における評価位置との距離を複数の値に変えた状態において、上記評価位置にて得られた上記レンズ装置の第一の解像性能データに基づく実測評価データを取得するステップと、
上記実測評価データと、上記レンズ装置と同じ構成の複数の仮想レンズ装置の各々の解像特性を予め決められた特性とするために必要な上記各仮想レンズ装置における上記被調整光学部材の位置の調整量を示す第一情報と、上記各仮想レンズ装置において上記距離を上記複数の値に変えた状態において、上記評価位置にて得られた上記各仮想レンズ装置の第二の解像性能データに基づく上記各仮想レンズ装置の設計評価データと、に基づいて、上記レンズ装置の解像特性を上記予め決められた特性とするために必要な上記レンズ装置における上記被調整光学部材の位置の調整量を示す情報である調整支援情報を出力する出力ステップと、を備える光学部材の位置調整支援方法。
【0099】
(12)
(11)記載の光学部材の位置調整支援方法であって、
上記出力ステップでは、上記各仮想レンズ装置の上記設計評価データの中から上記実測評価データに類似する1つの上記設計評価データを抽出し、上記抽出した上記設計評価データが得られる上記仮想レンズ装置の解像特性を上記予め決められた特性とするために必要な上記第一情報を、上記調整支援情報として出力する光学部材の位置調整支援方法。
【0100】
(13)
(11)記載の光学部材の位置調整支援方法であって、
上記出力ステップでは、上記各仮想レンズ装置の上記設計評価データの中から上記実測評価データに類似する複数の上記設計評価データを抽出し、上記複数の上記設計評価データの各々が得られる上記仮想レンズ装置の解像特性を上記予め決められた特性とするために必要な上記第一情報を用いて上記調整支援情報を生成する光学部材の位置調整支援方法。
【0101】
(14)
(11)記載の光学部材の位置調整支援方法であって、
上記出力ステップでは、上記設計評価データと上記第一情報を教師データとする機械学習によって生成されたモデルによって、上記実測評価データから上記調整支援情報を生成する光学部材の位置調整支援方法。
【0102】
(15)
(11)から(14)のいずれか1つに記載の光学部材の位置調整支援方法であって、
上記第一の解像性能データは、上記距離が上記複数の値の各々である状態における上記レンズ装置の解像性能を示すデータであり、
上記実測評価データは、上記第一の解像性能データにおける上記解像性能のピーク値と、上記ピーク値が得られた状態の上記距離に対応する情報と、を含む光学部材の位置調整支援方法。
【0103】
(16)
(11)から(15)のいずれか1つに記載の光学部材の位置調整支援方法であって、
上記実測評価データは、上記評価位置の第一像高における上記第一の解像性能データに基づく第一実測評価データと、上記評価位置の上記第一像高とは異なる第二像高における上記第一の解像性能データに基づく第二実測評価データと、を含む光学部材の位置調整支援方法。
【0104】
(17)
(16)記載の光学部材の位置調整支援方法であって、
上記第二実測評価データは、上記評価位置の上記第二像高の第一位置における上記第一の解像性能データに基づく第一サブ実測評価データと、上記評価位置の上記第二像高の上記第一位置とは異なる第二位置における上記第一の解像性能データに基づく第二サブ実測評価データと、を含む光学部材の位置調整支援方法。
【0105】
(18)
(11)から(17)のいずれか1つに記載の光学部材の位置調整支援方法であって、
上記第一の解像性能データは、第一空間周波数の評価対象物に対する第一サブ解像性能データと、上記第一空間周波数と異なる第二空間周波数の評価対象物に対する第二サブ解像性能データと、を含み、
上記実測評価データは、上記第一サブ解像性能データに基づくものと、上記第二サブ解像性能データに基づくものと、を含む光学部材の位置調整支援方法。
【0106】
(19)
(11)から(18)のいずれか1つに記載の光学部材の位置調整支援方法であって、
上記調整支援情報は、上記レンズ装置の光軸方向における上記被調整光学部材の位置の調整量と、上記被調整光学部材の光軸の傾きの調整量と、を含む光学部材の位置調整支援方法。
【0107】
(20)
(11)から(19)のいずれか1つに記載の光学部材の位置調整支援方法であって、
上記レンズ装置は、複数の上記被調整光学部材と、位置調整が不要な少なくとも1つの固定光学部材と、を含む光学部材の位置調整支援方法。
【0108】
(21)
被調整光学部材を含む複数の光学部材を有するレンズ装置の結像位置と上記レンズ装置の光軸方向における評価位置との距離を複数の値に変えた状態において、上記評価位置にて得られた上記レンズ装置の第一の解像性能データに基づく実測評価データを取得するステップと、
上記実測評価データと、上記レンズ装置と同じ構成の複数の仮想レンズ装置の各々の解像特性を予め決められた特性とするために必要な上記各仮想レンズ装置における上記被調整光学部材の位置の調整量を示す第一情報と、上記各仮想レンズ装置において上記距離を上記複数の値に変えた状態において、上記評価位置にて得られた上記各仮想レンズ装置の第二の解像性能データに基づく上記各仮想レンズ装置の設計評価データと、に基づいて、上記レンズ装置の解像特性を上記予め決められた特性とするために必要な上記レンズ装置における上記被調整光学部材の位置の調整量を示す情報である調整支援情報を出力する出力ステップと、をコンピュータに実行させるための光学部材の位置調整支援プログラム。
【0109】
(22)
被調整光学部材を含む複数の光学部材を有するレンズ装置の製造方法であって、
上記レンズ装置の結像位置と上記レンズ装置の光軸方向における評価位置との距離を複数の値に変えた状態において、上記評価位置にて得られた上記レンズ装置の第一の解像性能データに基づく実測評価データを生成する第一工程(例えば上述した実施形態のステップS1、ステップS5)と、
上記実測評価データと、上記レンズ装置と同じ構成の複数の仮想レンズ装置の各々の解像特性を予め決められた特性とするために必要な上記各仮想レンズ装置における上記被調整光学部材の位置の第一情報と、上記各仮想レンズ装置において上記距離を上記複数の値に変えた状態において、上記評価位置にて得られた上記各仮想レンズ装置の第二の解像性能データに基づく上記各仮想レンズ装置の設計評価データと、に基づいて、上記レンズ装置の解像特性を上記予め決められた特性とするために必要な上記レンズ装置における上記被調整光学部材の位置の調整量を示す情報である調整支援情報を出力する出力部を備える光学部材の位置調整支援装置に上記実測評価データを入力する第二工程(例えば上述した実施形態のステップS2、ステップS6)と、
上記位置調整支援装置から出力された上記調整支援情報にしたがって、上記被調整光学部材の位置を調整する第三工程(例えば上述した実施形態のステップS4、ステップS8)と、を備えるレンズ装置の製造方法。
【0110】
(23)
(22)記載のレンズ装置の製造方法であって、
上記第一工程は、第一空間周波数の評価対象物に対する上記第一の解像性能データに基づく上記実測評価データを生成する第一サブ工程(例えば上述した実施形態のステップS1)と、上記第一空間周波数よりも高い第二空間周波数の評価対象物に対する上記第一の解像性能データに基づく上記実測評価データを生成する第二サブ工程(例えば上述した実施形態のステップS5)と、を含み、
上記第二工程は、上記第一サブ工程にて生成した上記実測評価データを上記位置調整支援装置に入力する第三サブ工程(例えば上述した実施形態のステップS2)と、上記第二サブ工程にて生成した上記実測評価データを上記位置調整支援装置に入力する第四サブ工程(例えば上述した実施形態のステップS6)と、を含み、
上記第三工程は、上記第三サブ工程によって上記位置調整支援装置から出力された上記調整支援情報にしたがって上記被調整光学部材の位置を調整する第五サブ工程(例えば上述した実施形態のステップS4)と、上記第四サブ工程によって上記位置調整支援装置から出力された上記調整支援情報にしたがって上記被調整光学部材の位置を調整する第六サブ工程(例えば上述した実施形態のステップS8)と、を含み、
上記第一サブ工程、上記第三サブ工程、上記第五サブ工程を行って上記被調整光学部材の位置の一次調整を行った後、上記第二サブ工程、上記第四サブ工程、上記第六サブ工程を行って上記被調整光学部材の位置の二次調整を行うレンズ装置の製造方法。
【産業上の利用可能性】
【0111】
本発明によれば、光学部材の位置調整を簡易且つ高精度に調整してレンズ装置の解像特性を所望の特性とすることができる。
【符号の説明】
【0112】
1 レンズ装置
10 レンズ鏡筒
11 第一レンズ
12 第二レンズ
13 第三レンズ
14 第四レンズ
K 光軸
Z 光軸方向
100、100A 位置調整支援装置
101 実測評価取得部
102 調整支援情報生成部
102a 情報生成モデル
103 データベース
2 解像度チャート
21 第一のパターン
22 第二のパターン
23 第三のパターン
24 円
LP 低周波パターン
HP 高周波パターン
21L、22L、23L、21H、22H、23H 解像性能データ
21La、21Lb、21Ha、21Hb 実測評価データ
22La、22Lb、22Ha、22Hb 実測評価データ
23La、23Lb、23Ha、23Hb 実測評価データ