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特許7059598被覆材料、ケーブル、及びケーブルの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-18
(45)【発行日】2022-04-26
(54)【発明の名称】被覆材料、ケーブル、及びケーブルの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01B 13/14 20060101AFI20220419BHJP
   H01B 7/02 20060101ALI20220419BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20220419BHJP
【FI】
H01B13/14 A
H01B7/02 Z
C08L101/00
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2017232812
(22)【出願日】2017-12-04
(65)【公開番号】P2019099701
(43)【公開日】2019-06-24
【審査請求日】2020-06-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000005083
【氏名又は名称】日立金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 秀幸
(72)【発明者】
【氏名】児玉 壮平
【審査官】三宅 澄也
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-268065(JP,A)
【文献】国際公開第2012/141124(WO,A1)
【文献】特開2013-067756(JP,A)
【文献】特表2014-511411(JP,A)
【文献】特開2015-004040(JP,A)
【文献】特表平05-501734(JP,A)
【文献】特開2009-218035(JP,A)
【文献】加門隆,エポキシ樹脂の硬化反応-重合触媒型硬化剤による硬化を中心として-,熱硬化性樹脂,日本,Vol.1 No.3(1980),29-43
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08K 3/00- 13/08
C08L 1/00-101/14
H01B 7/00- 7/02
H01B 7/38- 7/40
H01B 7/308
H01B13/02- 13/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一部が光架橋性及び熱架橋性を有する樹脂と、
光開始剤と、
熱開始剤と、
を含み、
前記熱開始剤は、ラジカルを発生させる熱開始剤及びカチオンを発生させる熱開始剤を含み、前記光開始剤は、ラジカルを発生させる光開始剤及びカチオンを発生させる光開始剤を含むケーブル被覆材料。
【請求項2】
請求項1に記載のケーブル被覆材料であって、
押出成形可能なケーブル被覆材料。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のケーブル被覆材料であって、
前記樹脂は、アクリル基、メタクリル基、ビニル基、ビニルエーテル基、オキセタン基、エポキシ基、脂環式エポキシ基、アミノ基、マレイン酸、及び無水マレイン酸から成る群から選択される1以上で変性された、架橋性を有する樹脂を含み、
前記架橋性を有する樹脂は、前記樹脂の全質量のうち、5質量%以上を占めるケーブル被覆材料。
【請求項4】
請求項1に記載のケーブル被覆材料であって、
前記樹脂は、アクリル基、メタクリル基、ビニル基、ビニルエーテル基、オキセタン基、エポキシ基、脂環式エポキシ基、アミノ基、マレイン酸、及び無水マレイン酸から成る群から選択される1以上を有する架橋性モノマを含むケーブル被覆材料。
【請求項5】
請求項4に記載のケーブル被覆材料であって、
前記樹脂のうち前記架橋性モノマを除く成分100質量部に対し、1~30質量部の前記架橋性モノマを含むケーブル被覆材料。
【請求項6】
コアと、
前記コアを被覆する請求項1~のいずれか1項に記載のケーブル被覆材料と、
を備えるケーブル。
【請求項7】
コアを被覆材料で被覆し、前記被覆材料を架橋させるケーブルの製造方法であって、
前記被覆材料は、
少なくとも一部が光架橋性及び熱架橋性を有する樹脂と、
光開始剤と、
熱開始剤と、
を含み、
前記熱開始剤は、ラジカルを発生させる熱開始剤及びカチオンを発生させる熱開始剤を含み、前記光開始剤は、ラジカルを発生させる光開始剤及びカチオンを発生させる光開始剤を含むケーブルの製造方法。
【請求項8】
請求項に記載のケーブルの製造方法であって、
前記樹脂は、アクリル基、メタクリル基、ビニル基、ビニルエーテル基、オキセタン基、エポキシ基、脂環式エポキシ基、アミノ基、マレイン酸、及び無水マレイン酸から成る群から選択される1以上で変性された、架橋性を有する樹脂を含み、
前記架橋性を有する樹脂は、前記樹脂の全質量のうち、5質量%以上を占めるケーブルの製造方法。
【請求項9】
請求項に記載のケーブルの製造方法であって、
前記樹脂は、アクリル基、メタクリル基、ビニル基、ビニルエーテル基、オキセタン基、エポキシ基、脂環式エポキシ基、アミノ基、マレイン酸、及び無水マレイン酸から成る群から選択される1以上を有する架橋性モノマを含むケーブルの製造方法。
【請求項10】
請求項に記載のケーブルの製造方法であって、
前記樹脂は、前記樹脂のうち前記架橋性モノマを除く成分100質量部に対し、1~3
0質量部の前記架橋性モノマを含むケーブルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は被覆材料、ケーブル、及びケーブルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コアと、そのコアを被覆する被覆材料とを備えるケーブルが知られている。被覆材料は、押出機により押し出され、コアを被覆する。このケーブルの耐熱温度を向上させるために、被覆材料を架橋させることが広く行われている。被覆材料を架橋させる方法として、電子線照射架橋、有機化酸化物架橋、シラン-水架橋がある。また、特許文献1には、変性ポリマ、多官能モノマ、及び光開始剤を組み合わせて架橋させる方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】CN102702442A
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電子線照射架橋、及び特許文献1記載の技術では、被覆材料の肉厚が大きい場合や、被覆部材が着色品である場合等に、電子線や光が被覆材料の内部に到達しないことがある。この場合、被覆材料の内部における架橋が不十分になる。
【0005】
有機化酸化物架橋、シラン-水架橋の技術では、架橋に要する時間が長い。有機化酸化物架橋の技術において、有機化酸化物の量を増やし過ぎると押出機内で早期架橋が起こり、スコーチやヤケが生じてしまう。シラン-水架橋の技術でも、シラン化合物や触媒の量を増やし過ぎると早期架橋が生じてしまう。
本開示の一局面は、被覆材料の内部での架橋を促進することができ、早期架橋を抑制できる被覆材料、ケーブル、及びケーブルの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一局面は、少なくとも一部が光架橋性及び熱架橋性を有する樹脂と、光開始剤と、熱開始剤と、を含む被覆材料である。
本開示の一局面である被覆材料は、熱開始剤に加えて光開始剤を含む。そのため、開始剤として、熱開始剤のみを含む場合に比べて、熱開始剤の配合量を低減できる。その結果、早期架橋を抑制できる。
【0007】
また、本開示の一局面である被覆材料は、光開始剤に加えて、熱開始剤を含む。そのため、例えば、被覆材料の肉厚が大きい場合や、被覆材料が着色品である場合等でも、被覆材料の内部における架橋を促進することができる。
【0008】
本開示の別の局面は、コアと、前記コアを被覆する本開示の一局面である被覆材料と、を備えるケーブルである。
本開示の別の局面であるケーブルが備える被覆材料は、熱開始剤に加えて光開始剤を含む。そのため、開始剤として、熱開始剤のみを含む場合に比べて、熱開始剤の配合量を低減できる。その結果、早期架橋を抑制できる。
【0009】
また、本開示の別の局面であるケーブルが備える被覆材料は、光開始剤に加えて、熱開始剤を含む。そのため、例えば、被覆材料の肉厚が大きい場合や、被覆材料が着色品である場合等でも、被覆材料の内部における架橋を促進することができる。
【0010】
本開示の別の局面は、コアを被覆材料で被覆し、前記被覆材料を架橋させるケーブルの製造方法であって、前記被覆材料は、少なくとも一部が光架橋性及び熱架橋性を有する樹脂と、光開始剤と、熱開始剤と、を含むケーブルの製造方法である。
【0011】
本開示の別の局面であるケーブルの製造方法において、被覆材料は、熱開始剤に加えて光開始剤を含む。そのため、開始剤として、熱開始剤のみを含む場合に比べて、熱開始剤の配合量を低減できる。その結果、早期架橋を抑制できる。
【0012】
また、本開示の別の局面であるケーブルの製造方法において、被覆材料は、光開始剤に加えて、熱開始剤を含む。そのため、例えば、被覆材料の肉厚が大きい場合や、被覆材料が着色品である場合等でも、被覆材料の内部における架橋を促進することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】製造ライン1の構成を表す説明図である。
図2】樹脂成型装置7の構成を表す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本開示の例示的な実施形態を説明する。
1.被覆材料
(1-1)樹脂
本開示の被覆材料は樹脂を含む。樹脂の少なくとも一部は、光架橋性及び熱架橋性を有する樹脂である。樹脂の成分として、主成分の樹脂と、架橋性モノマとが挙げられる。主成分の樹脂として、架橋性を有さない樹脂と、架橋性を有する樹脂とが挙げられる。
【0015】
架橋性を有さない樹脂として、例えば、ポリオレフィン系樹脂、ゴム系樹脂、その他の樹脂が挙げられる。
ポリオレフィン系樹脂として、例えば、ポリプロピレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、エチレン-ブテン-1共重合体、エチレン-ヘキセン-1共重合体、エチレン-オクテン-1共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-エチルアクリレート共重合体、ポリブテン、ポリ-4-メチル-ペンテン-1、エチレン-ブテン-ヘキセン三元共重合体、エチレン-メチルメタクリレート共重合体、エチレン-メチルアクリレート共重合体、エチレン-グリシジルメタクリレート共重合体等が挙げられる。
【0016】
ゴム系樹脂として、例えば、スチレン-ジエン共重合体、スチレン-ジエン-スチレン共重合体、スチレン系ゴム等が挙げられる。スチレン-ジエン共重合体として、例えば、エチレン-プロピレン-ジエン共重合体、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-ブテン-1-ジエン共重合体、エチレン-オクテン-1-ジエン共重合体、アクリロニトリルブタジエンゴム、アクリルゴム、スチレンブタジエンゴム、スチレンイソプレンゴム等が挙げられる。
【0017】
スチレン-ジエン-スチレン共重合体として、例えば、スチレン-ブタジエン-スチレンゴム、スチレン-イソプレン-スチレンゴム等が挙げられる。
スチレン系ゴムは、例えば、スチレン-ジエン共重合体、又はスチレン-ジエン-スチレン共重合体に水素添加して得られるものである。
【0018】
その他の樹脂として、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、ABS樹脂(アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂)、AS樹脂、アクリル樹脂、ポリアミド 、ナイロン、ポリアセタール、ポリカーボネート、変性ポリフェニレンエーテル、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、環状ポリオレフィン、ポリフェニレンスルファイド、ポリスルホン、ポリエーテルサルフォン、ポリエーテルエーテルケトン、熱可塑性ポリイミド、ポリアミドイミド、フッ素樹脂等が挙げられる。架橋性を有さない樹脂は、上述した樹脂から選択される2種以上をブレンドしたものであってもよい。
【0019】
架橋性を有する樹脂は、ラジカル又はカチオンによる架橋を進めるため、樹脂の分子末端、分岐鎖、又は主鎖に反応性の官能基を導入し、変性したものである。反応性の官能基を導入する樹脂は、例えば、上記の架橋性を有さない樹脂から適宜選択することができる。
【0020】
導入する官能基として、例えば、アクリル基、メタクリル基、ビニル基、ビニルエーテル基、オキセタン基、エポキシ基、脂環式エポキシ基、アミノ基、マレイン酸、無水マレイン酸等が挙げられる。
【0021】
架橋性を有する樹脂は、樹脂の全質量のうち、5質量%以上を占めることが好ましい。この場合、被覆材料の架橋性が高くなる。
架橋性モノマは架橋助剤として機能する。架橋性モノマは、ラジカル又はカチオンで架橋、重合反応する官能基を有する。ラジカル又はカチオンで架橋、重合反応する官能基として、例えば、アクリル基、メタクリル基、ビニル基、ビニルエーテル基、オキセタン基、エポキシ基、脂環式エポキシ基、アミノ基、マレイン酸、及び無水マレイン酸から成る群から選択される1以上が挙げられる。
【0022】
架橋性モノマは、単官能モノマであってもよいし、多官能モノマであってもよい。1種類の架橋性モノマを単独で使用してもよいし、複数種類の架橋性モノマを組み合わせて使用してもよい。
【0023】
架橋性モノマとして、例えば、アクリル基を有するモノマ(アクリレートモノマ)、メタクリル基を有するモノマ(メタクリレート)、ビニル基やビニルエーテル基を有するモノマ等が挙げられる。
アクリル基を有するモノマには、単官能のモノマ、二官能のモノマ、三官能以上のモノマがある。単官能のモノマとして、例えば、イソボニルアクリレート、エトキシ化フェニルアクリレート等が挙げられる。二官能のモノマとして、例えば、ジプロピレングリコールジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート等が挙げられる。三官能以上のモノマとして、例えば、TMPTA(トリメチロールプロパントリアクリレート)、グリセリンプロポキシトリアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート等が挙げられる。
メタクリル基を有するモノマには、単官能のモノマ、二官能のモノマ、三官能以上のモノマがある。単官能のモノマとして、例えば、イソボニルメタクリレート、エトキシ化フェニルメタクリレート等が挙げられる。二官能のモノマとして、例えば、ジプロピレングリコールジメタクリレート、1,6-ヘキサンジオールジメタクリレート、トリプロピレングリコールジメタクリレート等が挙げられる。三官能以上のモノマとして、例えば、TMPTMA(トリメチロールプロパントリメタクリレート)、グリセリンプロポキシトリメタクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラメタクリレート等が挙げられる。
ビニル基やビニルエーテル基を有するモノマとして、例えば、酢酸ビニルモノマ、ブチルビニルエーテル、酪酸ビニルモノマ、シクロヘキシルビニルエーテル、2-メチル-1-ビニルイミダゾール等が挙げられる。
架橋性モノマの添加量は、目的とする樹脂の特性に応じて決めることができる。架橋性モノマの添加量は、樹脂のうち架橋性モノマを除く成分100質量部に対し、1~50質量部であることが好ましく、1~30質量部であることが一層好ましい。架橋性モノマの添加量が1質量部以上である場合、被覆材料の架橋性が高くなる。架橋性モノマの添加量が50質量部以下である場合、樹脂の伸びが大きく、樹脂が脆くなり難い。架橋性モノマの添加量が30質量部以下である場合、樹脂の伸びが一層大きく、樹脂が一層脆くなり難い。
【0024】
主成分の樹脂が、架橋性を有さない樹脂のみから成る場合、被覆材料は架橋性モノマを含む。主成分の樹脂が、架橋性を有する樹脂を含む場合でも、被覆材料は架橋性モノマを含むことが好ましい。
【0025】
(1-2)光開始剤
本開示の被覆材料は光開始剤を含む。光開始剤は、光によってラジカル又はカチオンを発生し、光架橋を進行させる。光として、例えば紫外線、電子線等が挙げられる。光開始剤は架橋反応の開始点となる。光開始剤として、例えば、光ラジカル発生剤、光カチオン発生剤等が挙げられる。光開始剤として、これらを単独または組み合わせて使用できる。
【0026】
光開始剤の添加量は、目的とする樹脂の特性に応じて決めることができる。光開始剤の添加量は、樹脂100質量部に対して0.1~15質量部であることが好ましい。光開始剤の添加量が0.1質量部以上である場合、被覆材料の架橋性が高くなる。光開始剤の添加量が15質量部以下である場合、樹脂の伸びが大きく、樹脂が脆くなり難い。
【0027】
光ラジカル発生剤として、例えば、アセトフェノン、4,4’-ジメトキシベンジル、ジフェニルエタンジオン、2-ヒドロキシ-2-フェニルアセトフェノン、ジフェニルケトン、ベンゾフェノン-2-カルボン酸、4,4'-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4'-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、4-ベンゾイル安息香酸、2,2'-ビス(2-クロロフェニル)-4,4',5,5'-テトラフェニル-1,2'-ビイミダゾール 、2-ベンゾイル安息香酸メチル、2-(1,3-ベンゾジオキソール-5-イル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン 、2-ベンジル-2-(ジメチルアミノ)-4'-モルホリノブチロフェノン、2,3-ボルナンジオン、2-クロロチオキサントン、4,4'-ジクロロベンゾフェノン、2,2-ジエトキシアセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2,4-ジエチルチオキサンテン-9-オン、ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、1,4-ジベンゾイルベンゼン、2-エチルアントラキノン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン、2-ヒドロキシ-4'-(2-ヒドロキシエトキシ)-2-メチルプロピオフェノン、フェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィン酸リチウム、2-メチル-4'-(メチルチオ)-2-モルホリノプロピオフェノン、2-イソニトロソプロピオフェノン、2-フェニル-2-(p-トルエンスルホニルオキシ)アセトフェノン、フェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシドが挙げられる。
【0028】
上述した光ラジカル発生剤のうちの1種類を単独で使用してもよいし、複数種類の光ラジカル発生剤を組み合わせて使用してもよい。
光カチオン発生剤として、例えば、ビス(4-tert-ブチルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスファート、ビス(4-フルオロフェニル)ヨードニウムトリフルオロメタンスルホナート、ベンジル(4-ヒドロキシフェニル)メチルスルホニウムヘキサフルオロアンチモナート、シクロプロピルジフェニルスルホニウムテトラフルオロボラート、テトラフルオロほう酸ジメチルフェナシルスルホニウム、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスファート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアルセナート、ジフェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホン酸、2-(3,4-ジメトキシスチリル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-[2-(フラン-2-イル)ビニル]-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、4-イソプロピル-4'-メチルジフェニルヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラート、2-[2-(5-メチルフラン-2-イル)ビニル]-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-(4-メトキシフェニル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-(4-メトキシスチリル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、(2-メチルフェニル)(2,4,6-トリメチルフェニル)ヨードニウムトリフルオロメタンスルホナート、(3-メチルフェニル)(2,4,6-トリメチルフェニル)ヨードニウムトリフルオロメタンスルホナート、(4-メチルフェニル)(2,4,6-トリメチルフェニル)ヨードニウムトリフルオロメタンスルホナート、4-ニトロベンゼンジアゾニウムテトラフルオロボラート、(4-ニトロフェニル)(フェニル)ヨードニウムトリフルオロメタンスルホナート、トリフェニルスルホニウムテトラフルオロボラート、トリフェニルスルホニウムブロミド、トリ-p-トリルスルホニウムヘキサフルオロホスファート、トリ-p-トリルスルホニウムトリフルオロメタンスルホナート、[3-(トリフルオロメチル)フェニル](2,4,6-トリメチルフェニル)ヨードニウムトリフルオロメタンスルホナート、[4-(トリフルオロメチル)フェニル](2,4,6-トリメチルフェニル)ヨードニウムトリフルオロメタンスルホナート、[ビス[4-n-アルキル(C10~C13)フェニル]ヨードニウムヘキサフルオロアンチモン酸塩]、テトラキスペンタフルオロフェニルホウ酸塩、ヨードニウム,(4-メチルフェニル)[4-(2-メチルプロピル)フェニル]-ヘキサフルオロフォスフェート(1-)、トリアリールスルフォニウム ヘキサフルオロフォスフェート、トリアリールスルフォニウム テトラキス-(ペンタフルオロフェニル)ボレート等が挙げられる。上述した光カチオン発生剤のうちの1種類を単独で使用してもよいし、複数種類の光カチオン発生剤を組み合わせて使用してもよい。
【0029】
(1-3)熱開始剤
本開示の被覆材料は熱開始剤を含む。熱開始剤は、熱によってラジカル又はカチオンを発生し、熱架橋を進行させる。熱開始剤は架橋反応の開始点となる。熱開始剤として、例えば、熱ラジカル発生剤、熱カチオン発生剤等が挙げられる。熱開始剤として、これらを単独または組み合わせて使用できる。
【0030】
熱開始剤の添加量は、目的とする樹脂の特性に応じて決めることができる。熱開始剤の添加量は、樹脂100質量部に対して0.1~15質量部であることが好ましい。熱開始剤の添加量が0.1質量部以上である場合、被覆材料の架橋性が高くなる。熱開始剤の添加量が15質量部以下である場合、樹脂の伸びが大きく、樹脂が脆くなり難い。
【0031】
熱ラジカル発生剤として、例えば、アゾ化合物類、ケトンパーオキサイド類、ジアシルパーオキサイド類、ハイドロパーオキサイド類、ジアルキルパーオキサイド類、パーオキシケタール類、アルキルパーエステル類、パーカーボネート類が挙げられる。
【0032】
熱ラジカル発生剤の具体例として、2,2'-アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2'-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2'-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、4,4'-アゾビス(4-シアノ吉草酸)、2,2'-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩、2,2'-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]二塩酸塩、過酸化ベンゾイル、tert-ブチルヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、ジ-tert-ブチルペルオキシド、2,2'-アゾビス(2-メチルプロピオン酸)ジメチル 、ジクミルペルオキシド等が挙げられる。上述した熱ラジカル発生剤のうちの1種類を単独で使用してもよいし、複数種類の熱ラジカル発生剤を組み合わせて使用してもよい。
【0033】
熱カチオン発生剤として、例えば、ジシアンジアミド、p-トルエンスルホン酸シクロヘキシル、ジフェニル(メチル)スルホニウムテトラフルオロボラート等が挙げられる。上述した熱カチオン発生剤のうちの1種類を単独で使用してもよいし、複数種類の熱カチオン発生剤を組み合わせて使用してもよい。
【0034】
熱開始剤の配合量が多いと、押出機中で熱によりラジカルが発生して、架橋が過早で進むため、早期架橋が生じ易い。本開示の被覆材料は、熱開始剤に加えて光開始剤を含む。そのため、開始剤として、熱開始剤のみを含む場合に比べて、熱開始剤の配合量を低減できる。その結果、早期架橋を抑制できる。また、熱開始剤の配合量を多くしなくても、架橋に要する時間を短縮できる。
【0035】
なお、光開始剤は熱に対して鈍感であるので、押出後に光照射するまでは架橋を誘起しない。そのため、光開始剤を配合しても早期架橋は生じ難い。
被覆材料の肉厚が大きい場合や、被覆材料が着色品である場合は、被覆材料の内部に光が届きにくい。そのため、開始剤として光開始剤のみを配合した場合、被覆材料の内部で架橋不足となることがある。本開示の被覆材料は、光開始剤に加えて、熱開始剤を含む。そのため、例えば、被覆材料の肉厚が大きい場合や、被覆材料が着色品である場合等でも、被覆材料の内部における架橋不足を抑制できる。
【0036】
(1-4)添加剤
本開示の被覆材料は、種々の添加剤を含んでいてもよい。添加剤は、例えば、被覆材料に特定の機能性を付与する。
【0037】
添加剤として、例えば、難燃剤が挙げられる。難燃剤として、例えば、金属水酸化物が挙げられる。金属水酸化物として、例えば、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム等が挙げられる。難燃剤の中でも、難燃効果の高い水酸化マグネシウムが好適である。金属水酸化物は、分散性の観点から表面処理されていることが望ましい。
【0038】
金属水酸化物の表面処理に用いる表面処理剤として、例えば、シラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤、脂肪酸、脂肪酸金属塩等が挙げられる。表面処理剤の中でも樹脂と金属水酸化物との密着性を高める点で、シラン系カップリング剤が望ましい。
【0039】
シラン系カップリング剤として、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β-メトキシエトキシ)シラン等のビニルシラン化合物、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-β-(アミノエチル)γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、β-(アミノエチル)γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-フェニル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノシラン化合物、β-(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン等のエポキシシラン化合物、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のアクリルシラン化合物、ビス(3-(トリエトキシシリル)プロピル)ジスルフィド、ビス(3-(トリエトキシシリル)プロピル)テトラスルフィドなどのポリスルフィドシラン化合物、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン等のメルカプトシラン化合物等が挙げられる。
【0040】
添加剤として、例えば、紫外線吸収剤が挙げられる。紫外線吸収剤は、使用目的に適合するものであれば、特に限定されない。紫外線吸収剤として、例えば、サリチル酸誘導体等が挙げられる。サリチル酸誘導体として、例えば、フェニル・サリシレート、p-第三-ブチルフェニル・サリシレート等が挙げられる。
紫外線吸収剤として、例えば、ヘ゛ンソ゛フェノン系が挙げられる。ヘ゛ンソ゛フェノン系として、例えば、2,4-ジヒドロキシ・ベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシ・ベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4-メトキシ・ベンゾフェノン、2,2‘ジヒドロキシ-4,4’-ジメトキシ・ベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-n-オクトキシ・ベンゾフェノン、2,2’,4,4’-テトラヒドロキシ・ベンゾフェノン、4-ドデシロキシ-2-ヒドロキシ・ベンゾフェノン、3,5-ジ-第三ブチル-4-ヒドロキシベンゾイル酸,n-ヘキサデシルエステル、ビス(5-ベンゾイル-4-ヒドロキシ-2-メトキシフェニル)メタン、1,4-ビス(4-ベンゾイル-3-ヒドロキシフェノキシ)ブタン、1,6-ビス(4-ベンゾイル-3-ヒドロキシフェノキシ)ヘキサン等が挙げられる。
紫外線吸収剤として、例えば、ヘ゛ンソ゛トリアソ゛ール系が挙げられる。ヘ゛ンソ゛トリアソ゛ール系として、例えば、2-(2’-ヒドロキシ-5’-メチル-フェニル)ベンゾトリアゾール、 2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-第三ブチル-フェニル)ベンゾトリアゾール、 2-(2’-ヒドロキシ-3’-ジ-第三ブチル-5’-メチル-フェニル)-5-クロロ・ベンゾトリアゾール、 2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-第三ブチル-フェニル)-5-クロロ・ベンゾトリアゾール、 2-(2’-ヒドロキシ-5’-第三オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、 2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-第三アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、 2,2’-メチレンビス[4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)-6-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)フェノール]、 2-[2-ヒドロキシ-3,5-ビス(α,α-ジメチルベンジル)フェニル]-2H-ベンゾトリアゾール等が挙げられる。
その他の紫外線吸収剤として、例えば、ベンゾトリアゾール誘導体、蓚酸アニリド誘導体、2-エチル・ヘキシル-2-シアノ-3,3-ジフェニル・アクリレート等が挙げられる。
上述した紫外線吸収剤のうちの1種類を単独で使用してもよいし、複数種類の紫外線吸収剤を組み合わせて使用してもよい。
【0041】
添加剤として、例えば、光安定剤が挙げられる。光安定剤は特に限定されない。光安定剤として、例えば、ヒンタ゛ート゛アミン系光安定剤等が挙げられる。光安定剤として、例えば、ポリ[[6-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)イミノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジイル][(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ]ヘキサメチレン[(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ]] 、 ポリ[(6-モルホリノ-s-トリアジン-2,4-ジイル)[2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル]イミノ]-ヘキサメチレン[(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ]] 、 N、N’-ビス(3-アミノプロピル)エチレンジアミン・2,4-ビス[N-ブチル-N-(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)アミノ]-6-クロロ-1,3,5-トリアジン縮合物 、 ジブチルアミン・1,3,5-トリアジン・N,N’-ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル-1,6-ヘキサメチレンジアミン・N-(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)ブチルアミンの重縮合物等が挙げられる。上述した光安定剤のうちの1種類を単独で使用してもよいし、複数種類の光安定剤を組み合わせて使用してもよい。
【0042】
添加剤として、例えば、プロセス油、加工助剤、難燃助剤、酸化防止剤、滑剤、無機充填剤、相溶化剤、安定剤、カーボンブラック、着色剤等が挙げられる。
2.ケーブル
本開示のケーブルは、コアと被覆材料とを備える。被覆材料はコアを被覆する。被覆材料は、前記「1.被覆材料」の項で述べたものである。
【0043】
コアは、金属導体、又は、金属導体上に何らかの被覆を施したものである。ケーブルとして、例えば、電線、光ファイバーを単独または複数用いたケーブル、金属導体と光ファイバーケーブルとの複合線等が挙げられる。
【0044】
3.ケーブルの製造方法
本開示のケーブルの製造方法では、コアを被覆材料で被覆し、その被覆材料を架橋させる。被覆材料は、前記「1.被覆材料」の項で述べたものである。
【0045】
本開示のケーブルの製造方法は、例えば、図1及び図2に示す製造ライン1を用いて実施することができる。
製造ライン1は、送出機3、巻取機5、樹脂成型装置7、架橋装置9、及び冷却装置11を備える。
【0046】
送出機3はコア13を供給する。供給されたコア13は、後述する成形ヘッド25に至る。巻取機5は、後述するように製造されたケーブル15を収納する。
樹脂成型装置7は押出機である。樹脂成型装置7の構成を図2に示す。樹脂成型装置7は、投入口17と、シリンダー19と、スクリュー21と、駆動装置23と、成形ヘッド25とを備える。
【0047】
被覆材料は投入口17に投入される。このとき、例えば、被覆材料の各成分を別々に投入口17に投入することができる。また、例えば、予め、被覆材料の各成分を、ミキサー、ブレンダー、ロール等を用いて混練してペレット化しておき、そのペレットを投入口17に投入することができる。
【0048】
スクリュー21はシリンダー19内に内挿されている。スクリュー21は、駆動装置23により駆動力を伝達され、回転する。投入口17に投入された被覆材料は、スクリュー21により溶融・混練を受けながら、シリンダー19の内部を進み、成形ヘッド25に至る。成形ヘッド25は、被覆材料を押し出す。押し出された被覆材料はコア13を被覆する。その結果、ケーブル15が製造される。
【0049】
架橋装置9は、ケーブル15が巻取機5に向かう経路上に設けられている。架橋装置9は、第1の光照射装置27と、第2の光照射装置29と、加熱装置31と、を備える。それらは、ケーブル15の搬送方向における上流側から下流側に向かって、第1の光照射装置27、第2の光照射装置29、加熱装置31の順に配置されている。
【0050】
第1の光照射装置27及び第2の光照射装置29は、ケーブル15に光を照射する。光は例えば紫外線である。光の照射により、被覆材料が含む樹脂において光架橋が進行する。
第1の光照射装置27及び第2の光照射装置29は、LED式でもよいし、放電管方式でもよい。放電管は、無電極であってもよいし、有電極であってもよい。放電管として、例えば、電極間に特定元素を封入することで、発光波長を調整したものを使用することができる。第1の光照射装置27及び第2の光照射装置29が照射する光のピーク波長は、光開始剤の吸収波長に適合する波長であることが好ましい。
【0051】
光照射装置の数は2以外であってもよい。被覆材料が複数種類の光開始剤を含み、それらの吸収波長がそれぞれ異なる場合、吸収波長ごとに、別々の光照射装置を備えることができる。
【0052】
加熱装置31は、ケーブル15を加熱する。加熱により、被覆材料が含む樹脂において熱架橋が進行する。加熱装置31は、被覆材料に含まれる熱開始剤に充分な熱量を与えられるものであれば特に限定されない。加熱装置31の熱源として、例えば、電気ヒーター、マイクロ波加熱、熱風ヒーター、赤外線ヒーター、水蒸気、過熱水蒸気等が挙げられる。加熱装置31の熱源は、上記の熱源のうちの1種類であってもよいし、複数種類の熱源の組み合わせであってもよい。
【0053】
第1の光照射装置27及び第2の光照射装置29が、熱架橋に必要な熱量をケーブル15に付与する場合は、加熱装置31を省略してもよい。
冷却装置11は、ケーブル15が巻取機5に向かう経路上であって、架橋装置9よりも下流側に設けられている。冷却装置11はケーブル15を冷却する。冷却装置11は、空冷式であってもよいし、水冷式であってもよい。冷却装置11により冷却されたケーブル15は巻取機5に収納される。冷却装置11がなくてもケーブル15の製造に問題がない場合は、冷却装置11を省略することができる。
【0054】
4.実施例
(4-1)被覆材料の製造
表1に示す各成分を含む、実施例1、参考例1~4、及び比較例1~3の被覆材料を製造した。表1における「実1」、「参1」~「参4」は、それぞれ実施例1、参考例1~4を意味する。表1における「比1」~「比3」は、それぞれ比較例1~3を意味する。
【0055】
【表1】
表1における配合量の単位は質量部である。被覆材料を製造するとき、まず、全成分のうち、熱ラジカル開始剤、熱カチオン開始剤、及び滑剤を除く成分を、ニーダーにて一括混練し、造粒機にてペレット化した。また、熱ラジカル開始剤及び熱カチオン開始剤を、滑剤から成る分散媒に分散して、分散液を作製した。最後に、ペレットと分散液とを混合して、被覆材料を製造した。
【0056】
(4-2)ケーブルの製造
前記(4-1)で製造した各実施例及び各比較例の被覆材料と、上述した製造ライン1とを用いて、ケーブル15を製造した。実施例1、各参考例及び各比較例の被覆材料は、押出成形が可能であった。
【0057】
コア13は、φ0.8mmの銅製の単線である。製造ライン1の具体的な構成は以下のとおりである。
樹脂成型装置7は単軸押出機である。シリンダー19の内径はφ40mmである。スクリュー21はフルフライトスクリューである。L/Dは29である。Lはスクリュー21の軸方向における長さである。Dはスクリュー21の外径である。シリンダー19の温度は170℃である。線速は30m/minである。
【0058】
第1の光照射装置27及び第2の光照射装置29は、それぞれ、紫外線照射装置である。第1の光照射装置27及び第2の光照射装置29は、それぞれ、オーク製作所製高圧メタルハライドランプを備える。第1の光照射装置27は、SMXシリーズ4kWランプを2本備える。第2の光照射装置29は、MXAシリーズ4kWランプを2本備える。加熱装置31は、炉長1mの電気炉である。加熱装置31の設定温度は220℃である。
【0059】
(4-3)ゲル分率の測定
実施例1、各参考例及び各比較例について、被覆材料のゲル分率を測定した。ゲル分率は、被覆材料の架橋度を評価する指標である。ゲル分率の測定方法は以下のとおりである。ケーブル15が備える被覆材料から、0.5gの試料片を切り出す。試料片を、110℃のキシレン中で24時間遊弋させる。その後、試料片をキシレンから取り出し、80℃で真空乾燥を4時間行う。その後、試料片の質量w(g)を測定する。以下の式(1)によりゲル分率Xを算出する。
【0060】
式(1) X=(w/0.5)×100
ゲル分率の測定結果を表2に示す。
【0061】
【表2】
実施例1では、ゲル分率が高かった。このことから、実施例1では、被覆材料の表面及び内部のいずれにおいても架橋度が高いことが確認できた。比較例1~3では、ゲル分率が低かった。特に、比較例1、3ではゲル分率が低かった。
【0062】
比較例1、3の被覆材料においてゲル分率が低い理由は以下のように推測される。比較例1、3の被覆材料は、熱開始剤を含まない。そのため、被覆材料の内部での架橋が不足し、ゲル分率が低くなったと推測される。
【0063】
(4-4)ホットセット試験
実施例1、各参考例及び各比較例について、ホットセット試験を行った。ホットセット試験は、被覆材料の機械的な耐熱性を評価する試験である。ホットセット試験は、JIS C 3660-2-1に準拠して行った。試料片は、コア13から分離した被覆材料である。具体的な試験条件は以下のとおりである。
【0064】
温度:200℃
荷重:20N/cm
荷重時間:15分
荷重時の伸びが100%以下であり、且つ、冷却後の永久伸びが25%以下であれば合格とし、それ以外を不合格とした。評価結果を上記表2に示す。
【0065】
実施例1、各参考例では合格であった。このことから、実施例1、各参考例では、被覆材料の表面及び内部のいずれにおいても架橋度が高いことが確認できた。各比較例では不合格であった。
比較例1、3の被覆材料において不合格であった理由は以下のように推測される。比較例1、3の被覆材料は、熱開始剤を含まない。そのため、被覆材料の内部での架橋が不足し、不合格になったと推測される。比較例2の被覆材料において不合格であった理由は以下のように推測される。比較例2の被覆材料は、光開始剤を含まない。そのため、被覆材料の表面での架橋が不足し、不合格になったと推測される。
【0066】
実施例1、各参考例では、実用に耐える架橋度を、30m/minの製造速度で実現できた。
5.他の実施形態
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は上述の実施形態に限定されることなく、種々変形して実施することができる。
【0067】
(1)上記各実施形態における1つの構成要素が有する機能を複数の構成要素に分担させたり、複数の構成要素が有する機能を1つの構成要素に発揮させたりしてもよい。また、上記各実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記各実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加、置換等してもよい。なお、特許請求の範囲に記載の文言から特定される技術思想に含まれるあらゆる態様が本開示の実施形態である。
【0068】
(2)上述した被覆材料、ケーブル、ケーブルの製造方法の他、当該ケーブルを構成要素とするシステム、被覆材料の製造方法等、種々の形態で本開示を実現することもできる。
【符号の説明】
【0069】
1…製造ライン、3…送出機、5…巻取機、7…樹脂成型装置、9…架橋装置、11…冷却装置、13…コア、15…ケーブル、17…投入口、19…シリンダー、21…スクリュー、23…駆動装置、25…成形ヘッド、27…第1の光照射装置、29…第2の光照射装置、31…加熱装置
図1
図2