(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-18
(45)【発行日】2022-04-26
(54)【発明の名称】液体吐出ヘッド、液体吐出ユニット、液体を吐出する装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/14 20060101AFI20220419BHJP
B41J 2/175 20060101ALI20220419BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20220419BHJP
B41J 2/165 20060101ALI20220419BHJP
【FI】
B41J2/14 305
B41J2/14 613
B41J2/175 121
B41J2/01 303
B41J2/175 503
B41J2/165 203
(21)【出願番号】P 2017235431
(22)【出願日】2017-12-07
【審査請求日】2020-09-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】230100631
【氏名又は名称】稲元 富保
(72)【発明者】
【氏名】黒田 隆彦
(72)【発明者】
【氏名】水上 智
【審査官】中村 博之
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-003483(JP,A)
【文献】特開2015-047855(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0313901(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0018938(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に表面処理膜が形成されたヘッド構成部材を有し、
前記表面処理膜は、Siを含む酸化膜であり、
前記酸化膜は、不動態膜を形成する遷移金属を含み、
前記表面処理膜は、前記ヘッド構成部材との界面近傍におけるSiの含有率が、前記表面処理膜の内部におけるSiの含有率より高く、かつ、20at%以上であり
、
前記Siの含有率が高い領域の厚みは3~7nmの範囲であり、
前記表面処理膜と、前記ヘッド構成部材との界面におけるSiO
2
膜の占有面積率が70%以上である
ことを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項2】
前記表面処理膜は、前記ヘッド構成部材との界面近傍における前記遷移金属の含有率が、10at%以下である
ことを特徴とする請求項1に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項3】
前記表面処理膜の内部におけるSiの含有率が、10
at%以上15at%以下である
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項4】
前記表面処理膜の内部における前記遷移金属の含有率が、15at%以上である
ことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の液体吐出ヘッド。
【請求項5】
前記表面処理膜は、前記ヘッド構成部材との界面とは反対側の表面におけるSiの含有率が、前記表面処理膜の内部におけるSiの含有率より高く、かつ、20at%以上である
ことを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の液体吐出ヘッド。
【請求項6】
前記表面処理膜は、第4族又は第5族から選ばれる遷移金属を少なくとも一種以上含んでいる
ことを特徴とする請求項1ないし
5のいずれかに記載の液体吐出ヘッド。
【請求項7】
前記ヘッド構成部材は、液体の流路を形成する流路形成部材である
ことを特徴とする請求項1ないし
6のいずれかに記載の液体吐出ヘッド。
【請求項8】
前記流路形成部材は、他のヘッド構成部材と接着剤で接合されている
ことを特徴とする請求項
7に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項9】
前記ヘッド構成部材は、液体を吐出するノズル板であり、
前記ノズル板の吐出面に前記表面処理膜が形成され、
前記表面処理膜の表面に撥液膜が形成されている
ことを特徴とする請求項1ないし
8のいずれかに記載の液体吐出ヘッド。
【請求項10】
請求項1ないし
9のいずれかに記載の液体吐出ヘッドを含むことを特徴とする液体吐出ユニット。
【請求項11】
前記液体吐出ヘッドに供給する液体を貯留するヘッドタンク、前記液体吐出ヘッドを搭載するキャリッジ、前記液体吐出ヘッドに液体を供給する供給機構、前記液体吐出ヘッドの維持回復を行う維持回復機構、前記液体吐出ヘッドを主走査方向に移動させる主走査移動機構の少なくともいずれか一つと前記液体吐出ヘッドとを一体化した
ことを特徴とする請求項
10に記載の液体吐出ユニット。
【請求項12】
請求項1ないし
9のいずれかに記載の液体吐出ヘッド、請求項
10若しくは
11に記載の液体吐出ユニットを備えている
ことを特徴とする液体を吐出する装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体吐出ヘッド、液体吐出ユニット、液体を吐出する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液体吐出ヘッドにおいては、液体の流路を形成する流路形成部材などのヘッド構成部材の壁面(表面)に表面処理膜を形成して耐接液性を高めることが行われている。
【0003】
例えば、流路形成部材の表面に、表面処理膜としてSiを含む酸化膜を形成し、酸化膜は不動態膜を形成する遷移金属を含んでいる膜としたものが知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示の構成においては、表面処理膜と接着剤との接着性の向上と表面処理膜の耐接液性の向上との両立を図ることができるが、表面処理膜と流路形成部材などのヘッド構成部材との密着性が十分でない場合が生じるという課題があることが判明した。
【0006】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、表面処理膜とヘッド構成部材との密着性の向上を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明に係る液体吐出ヘッドは、
表面に表面処理膜が形成されたヘッド構成部材を有し、
前記表面処理膜は、Siを含む酸化膜であり、
前記酸化膜は、不動態膜を形成する遷移金属を含み、
前記表面処理膜は、前記ヘッド構成部材との界面近傍におけるSiの含有率が、前記表面処理膜の内部におけるSiの含有率より高く、かつ、20at%以上であり、
前記Siの含有率が高い領域の厚みは3~7nmの範囲であり、
前記表面処理膜と、前記ヘッド構成部材との界面におけるSiO
2
膜の占有面積率が70%以上である
構成とした。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、表面処理膜とヘッド構成部材との密着性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明に係る液体吐出ヘッドの第1実施形態のノズル配列方向と直交する方向に沿う断面説明図である。
【
図3】同ヘッドノズル配列方向に沿う要部断面説明図である。
【
図4】本発明の第1実施形態における表面処理膜の説明に供する
図1のA部に相当する拡大断面説明図である。
【
図5】同じく
図1のB部に相当する拡大断面説明図である。
【
図6】ALD法による表面処理膜の理想的な成膜状態の説明に供する模式的説明図である。
【
図7】ALD法による表面処理膜の実際の成膜状態の説明に供する模式的説明図である。
【
図8】表面処理膜とヘッド構成部材との界面におけるSiO
2膜の占有面積率と密着力(密着強度)の関係の一例を数値化した説明図である。
【
図10】表面処理膜とヘッド構成部材との界面におけるSiO
2膜の占有面積率の違いによるモデルを示す説明図である。
【
図11】
図8の含有元素Siの含有率と密着強度の関係をグラフ化した説明図である。
【
図12】本発明の第2実施形態の説明に供する
図4と同様な
図1のA部に相当する拡大断面説明図である。
【
図13】同じく
図5と同様な
図1のB部に相当する拡大断面説明図である。
【
図14】本発明の第3実施形態の説明に供する
図5と同様な
図1のB部に相当する拡大断面説明図である。
【
図15】本発明に係る液体を吐出する装置の一例の要部平面説明図である。
【
図17】本発明に係る液体吐出ユニットの他の例の要部平面説明図である。
【
図18】本発明に係る液体吐出ユニットの更に他の例の正面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照して説明する。本発明に係る液体吐出ヘッドの第1実施形態について
図1ないし
図3を参照して説明する。
図1は同ヘッドのノズル配列方向と直交する方向に沿う断面説明図、
図2は
図1の要部拡大断面説明図、
図3は同ヘッドノズル配列方向に沿う要部断面説明図である。
【0011】
液体吐出ヘッド100は、ノズル板1と、流路板2と、壁面部材である振動板部材3と、圧力発生素子である圧電素子11と、保持基板50と、FPCなどの配線部材60と、共通液室部材70と、カバー部材45とを備えている。
【0012】
ここで、流路板2、振動板部材3及び圧電素子11で構成される部分がアクチュエータ基板20となる。
【0013】
ノズル板1には、液体を吐出する複数のノズル4が形成されている。ここでは、ノズル4を配列したノズル列を4列配置した構成としている。
【0014】
流路板2は、ノズル板1及び振動板部材3とともに、ノズル4が通じる個別液室6、個別液室6に通じる流体抵抗部7、流体抵抗部7が通じる液導入部8を形成している。
【0015】
この液導入部8は振動板部材3の開口9と保持基板50の流路となる開口部51を介して共通液室部材70で形成される共通液室10に通じている。
【0016】
振動板部材3は、個別液室6の壁面の一部を形成する変形可能な振動領域30を形成している。そして、この振動板部材3の振動領域30の個別液室6と反対側の面には、振動領域30と一体的に圧電素子11が設けられ、振動領域30と圧電素子11によって圧電アクチュエータ構成している。
【0017】
圧電素子11は、振動領域30側から下部電極13、圧電層(圧電体)12及び上部電極14を順次積層形成して構成している。この圧電素子11上には絶縁膜21が形成されている。
【0018】
複数の圧電素子11の共通電極となる下部電極13は、共通配線15を介して共通電極電源配線パターン28に接続されている。なお、下部電極13は、ノズル配列方向ですべての圧電素子11に跨って形成される1つの電極層である。
【0019】
また、圧電素子11の個別電極となる上部電極14は、個別配線16を介して駆動回路部である駆動IC(以下、「ドライバIC」という。)500に接続されている。個別配線16などは絶縁膜22にて被覆されている。
【0020】
ドライバIC500は、圧電素子列の列間の領域を覆うようにアクチュエータ基板20にフリップチップボンディングなどの工法により実装されている。
【0021】
アクチュエータ基板20に搭載されたドライバIC500は、駆動波形(駆動信号)が供給される個別電極電源配線パターン29と接続されている。
【0022】
配線部材60に設けられた配線が、ドライバIC500と電気的に接続されており、配線部材60の他端側は装置本体側の制御部に接続される。
【0023】
そして、アクチュエータ基板20の振動板部材3側には、アクチュエータ基板20上の圧電素子11を覆っている保持基板50が接着剤で接合されている。
【0024】
保持基板50には、共通液室10と個別液室6側を通じる流路の一部となる開口部51と、圧電素子11を収容する凹部52と、ドライバIC500を収容する開口部53が設けられている。開口部51は、ノズル配列方向に亘って延びるスリット状の貫通穴であり、ここでは共通液室10の一部を構成している。
【0025】
この保持基板50は、アクチュエータ基板20と共通液室部材70との間に介在し、共通液室10の壁面の一部を形成している。
【0026】
共通液室部材70は、各個別液室6に液体を供給する共通液室10を形成する。なお、共通液室10は4つのノズル列に対応してそれぞれ設けられ、外部から所要の色の液体が供給される。
【0027】
共通液室部材70には、ダンパ部材90が接合されている。ダンパ部材90は、共通液室10の一部の壁面を形成する変形可能なダンパ91と、ダンパ91を補強するダンパプレート92とを有している。
【0028】
共通液室部材70はノズル板1の外周部及び保持基板50と接着剤で接合され、アクチュエータ基板20及び保持基板50を収容して、このヘッドのフレームを構成している。
【0029】
そして、ノズル板1の周縁部及び共通液室部材70の外周面の一部を覆うカバー部材45を設けている。
【0030】
この液体吐出ヘッド100においては、ドライバIC500から圧電素子11の上部電極14と下部電極13の間に電圧を与えることで、圧電層12が電極積層方向、すなわち電界方向に伸張し、振動領域30と平行な方向に収縮する。これにより、振動領域30の下部電極13側に引っ張り応力が発生し、振動領域30が個別液室6側に撓み、内部の液体を加圧することで、ノズル4から液体が吐出される。
【0031】
次に、本発明の第1実施形態における表面処理膜について
図4及び
図5を参照して説明する。
図4は
図1のA部に相当する拡大断面説明図、
図5は
図1のB部に相当する拡大断面説明図である。
【0032】
本実施形態においては、ノズル板1、流路板2、振動板部材3、保持基板50などの液体の流路を形成している流路形成部材がヘッド構成部材200となる。
【0033】
例えば、
図4に示すように、保持基板50の開口部51の壁面には表面処理膜112が形成されている。また、
図5に示すように、流路板2の個別液室6の壁面などの流路壁面、ノズル板1の両面にも表面処理膜112が形成されている。また、ノズル4の壁面にも表面処理膜112を形成できる。
【0034】
また、
図5に示すように、ノズル板1と流路板2とは接着剤201によって接合されている。
【0035】
ここで、表面処理膜112は、Siを含む酸化膜であり、酸化膜は、不動態膜を形成する遷移金属を含んでいる。
【0036】
表面処理膜112は、耐液信頼性が高く、不動態膜を形成する遷移金属種と接着剤201との接着性を向上させるSiの複合酸化膜となっている。
【0037】
接着剤201は、有機物の薄膜であるため、水分を透過する。そのため、表面処理膜112が耐液体信頼性を持たない場合、液体が接着剤201を介して、表面処理膜112を腐食させてしまい、接着剤201ごと剥離してしまう。
【0038】
しかし、上記遷移金属種は、安定した酸化物を形成することができるので、水溶液中でも安定した状態を保てることで、液体に対して耐性を持つことができる。
【0039】
また、Siを含む酸化膜は、接着剤201中に含まれるアニオン系の硬化剤、シランカップリング剤と相性が良く、表面処理膜112と接着剤201との接着性を向上させる。
【0040】
このように、ヘッド構成部材200の表面には、表面処理膜112が形成され、表面処理膜112は、Siを含む酸化膜であり、酸化膜は、不動態膜を形成する遷移金属を含んでいる構成としている。これにより、表面処理膜112と接着剤201との界面の接着性の向上及び耐液体信頼性の向上の両立を図ることができる。
【0041】
つまり、SiO2を含むことで、部材との密着性が高く、かつ接着剤との接着性も、アミン系硬化剤やシランカップリング剤を用いることで耐水性の高い接着力を確保できる。また、不動態膜を形成することで、表面処理膜112は、表面に安定した耐腐食性膜が形成されるため、液体に触れても、長期的に安定する。
【0042】
また、遷移金属は、d軌道ないしf軌道などの内殻軌道に空位の軌道を持つことで、複数の酸化数を取ることができる。そのため、表面処理膜112に遷移金属種を含むことにより、膜全体の酸化数への対応性が増すことで酸素原子の過不足への許容幅が広くなり、膜中の酸素数の欠損や過剰に対して高い安定性を示す。
【0043】
遷移金属を含まない場合には、酸素原子の過不足による表面処理膜112の欠陥が生じ、欠陥はエネルギー状態が高いため溶解が起こり易くなる。これに対し、遷移金属を含むことで、表面処理膜の欠陥を低減でき、酸化膜の安定度が上昇し、液体への溶解性を低減することができる。
【0044】
このような遷移金属の中でも、バルブメタルのような不動態膜を形成する金属を用いると、表面処理膜112の溶解性をより低減させることができる。
【0045】
不動態膜を形成する金属としては、酸化数への対応性が高い遷移金属であるタンタル、ニオブ、チタン、ハフニウム、ジルコニウム、タングステンが好ましい。
【0046】
また、タンタル、ニオブ、ハフニウム、ジルコニウムは、接触する液体のpHが酸性、アルカリ性に関わらず、非常に安定した酸化膜を形成するので、酸性、アルカリ性によらず状態を保つことができるという利点がある。
【0047】
言い換えれば、表面処理膜112は、不動態膜を形成する第4族及び第5族属遷移金属を含んでいることが好ましい。不動態膜を形成する第4族及び第5族遷移金属は第4族であるSiと似た電子軌道を持っており、SiO2膜に導入することで、Siと前記金属種とがOを介して、強く結合することができ、膜の充填性が向上し密な膜を形成できる。
【0048】
そして、充填性向上に加えて、Si-O結合によって、強固な結合を表面処理膜112中に存在させることで、液体に接触した際の腐食反応を抑制することができる。これにより、液体に耐性をもった酸化膜を形成でき、十分な耐性を確保し、ヘッドの信頼性を向上できる。
【0049】
この場合、不動態膜を形成する第4族及び第5族遷移金属としては、Hf、Ta、Zrのうち、少なくとも1種以上を含んでいることが好ましい。
【0050】
Hf、Ta、Zrのうち、少なくとも1種以上をSiO2膜に導入することで、遷移金属種は非常に強くOと結合し、不動態膜を形成する。この時、膜の充填性向上に加えて、不動態膜の機能を表面処理膜112中に存在させることで、酸性、アルカリ性両方の液体に接触した際の腐食反応を強く抑制することができる。これにより、酸性やアルカリ性の液体に耐性をもった酸化膜を形成できる。
【0051】
また、表面処理膜112は、完全に酸化されていることが好ましい。これにより、表面処理膜112の結晶構造がアモルファスになり、液体に晒された際に、腐食が発生しやすい結晶の粒界が殆ど存在せず、液体に対して高い耐性を示すことができる。
【0052】
また、表面処理膜112において、遷移金属は膜中に2at%以上含まれていることが好ましい。これにより、表面処理膜112の密度が確実に向上し、液体への耐性が向上する。
【0053】
次に、表面処理膜112を成膜する工法としてのALD(Atomic Layer Deposition)法について説明する。特に、表面処理膜112を形成する基材となるヘッド構成部材が加熱処理で変形するような材料で形成されているときには、160℃以下、特に120℃以下でのALD法で表面処理膜112を成膜することが好ましい。
【0054】
ALD法は、原子1層毎に成膜反応を完了させる形式であるので、通常のCVD法や蒸着法に比べて、非常に緻密で欠陥の少ない膜を作ることができる。また、部材へのガスの吸着が可能な箇所には成膜が可能なため、垂直壁やエッジ部がある部材にも均一に成膜することができる。
【0055】
また、ヘッド構成部材200は、接合面以外の液体に接する面も表面処理膜112でコーティングすることが好ましい。このような構成にすることによって、耐接液性の低い部品や接着性向上材料は溶出しにくくなり、よって信頼性の高い構成を提供することができる。
【0056】
また、流路形成部材としての振動板部材3の表面に表面処理膜112を成膜するとき、振動板105の動作特性に影響を与えるような厚い膜であることは好ましくない。したがって、表面処理膜112は、少なくとも200nm以下、好ましくは50nm以下である。
【0057】
次に、ALD法による表面処理膜の成膜状態について
図6及び
図7を参照して説明する。
図6及び
図7は同説明に供する模式的説明図である。
【0058】
ALD法によって表面処理膜112を成膜する場合、ALD法では1分子毎にデジタル的に成膜することができる。したがって、
図6(a)に示すように、Si基板からなるヘッド構成部材200の表面に1サイクル目でTa
2O
5膜112tを成膜し、
図6(b)に示すように、2サイクル目でSiO
2膜112sを成膜する場合、1分子層毎の膜として均一に成膜されて積層されるのが理想的である。
【0059】
ところが、実際には、表面エネルギーのバラツキなどによって、均一の膜ではなく、島状に成膜されていることが判明した。つまり、
図7(a)に示すように、ヘッド構成部材200の表面に1サイクル目でTa
2O
5膜を成膜したとき、Ta
2O
5膜が島状に成膜され、
図7(b)に示すように、2サイクル目でSiO
2膜を成膜したとき、SiO
2膜も島状に成膜されて1サイクル目のTa
2O
5膜の間に入り込む部分が生じる。
【0060】
したがって、表面処理膜112は、ヘッド構成部材200との界面において、島状に成膜されたTa2O5膜112tとSiO2膜112sとが混在している状態になる。
【0061】
ここで、表面処理膜112のヘッド構成部材200との密着性(密着力)は、表面処理膜112とヘッド構成部材200との界面におけるTa2O5膜とSiO2膜との接触面積比に依存する。
【0062】
そこで、ヘッド構成部材200と表面処理膜112との界面におけるSiO
2膜の占有面積率と、ヘッド構成部材200と表面処理膜112との界面における密着力(密着強度)の関係について
図8及び
図9を参照して説明する。
図8は同関係の一例を数値化した説明図、
図9は
図8をグラフ化した説明図である。
【0063】
これらの
図8及び
図9から分かるように、表面処理膜112のヘッド構成部材200に対する密着性は、表面処理膜112とヘッド構成部材200との界面におけるTa
2O
5膜とSiO
2膜の接触面積比に依存している。そして、表面処理膜112とヘッド構成部材200との界面におけるSiO
2膜の占有面積率が70%以上になると密着力が急激に上昇する。
【0064】
次に、表面処理膜112とヘッド構成部材200との界面におけるSiO
2膜の占有面積率、Siの含有率と密着力の関係について
図10及び
図11を参照して説明する。
図10は表面処理膜112とヘッド構成部材200との界面におけるSiO
2膜の占有面積率の違いによるモデルを示す説明図である。
図11は
図8の含有元素Siの含有率と密着強度の関係をグラフ化した説明図である。
【0065】
図10(a)に示すように、表面処理膜112とヘッド構成部材200との界面において、表面処理膜112のSiO
2膜112sの占有面積率が低いときには、界面におけるSi含有率は少なくなる。これに対し、
図10(b)に示すように、表面処理膜112とヘッド構成部材200との界面において、表面処理膜112のSiO
2膜112sの占有面積率が高いときには、界面におけるSi含有率が多くなる。
【0066】
なお、「含有率」は、Siの物質量(mol)とTaの物質量(mol)とOの物質量(mol)の合計の物質量に対するSiの物質量(mol)を百分率で表した値である。また、「占有面積率」は、表面処理膜のヘッド構成部材との界面近傍における、SiO2の占有面積とTa2O5の占有面積の合計に対するSiO2の占有面積を百分率で表した値である。
【0067】
そして、Ta
2O
5よりもSiO
2の方がSi基板からなるヘッド構成部材200との密着力が高いので、
図11に示すように、ヘッド構成部材200との界面における表面処理膜112のSiの含有率を高くすることによって、密着力が向上する。
【0068】
具体的には、
図11を参照して、ヘッド構成部材200との界面における表面処理膜112のSiの含有率が20at%程度までは、比較的低い密着力であるが、20at%以上になれば密着力が高くなり、特に、25at%以上では高い密着力に安定する。
【0069】
また、ヘッド構成部材200との界面における表面処理膜112のTaの含有率は、10at%以下が好ましい。
【0070】
ここで、Siの含有率約33at%であるとき、ヘッド構成部材200の表面と接しているのは、SiO2のみ(SiO2が100%)となる。
【0071】
そこで、
図4及び
図5を参照して、表面処理膜112は、ヘッド構成部材200との界面近傍領域112aにおけるSi含有率を20%以上とすることによって、表面処理膜112のヘッド構成部材200に対する密着性が向上して、表面処理膜112がヘッド構成部材200から剥離することを防止できる。
【0072】
一方、表面処理膜112は耐接液性を確保する必要があるので、表面処理膜112の内部においては、Siの含有率を界面近傍領域112aにおける含有率(20at%以上)よりも少なくする。例えば、表面処理膜112の内部におけるSiの含有率は、10~15at%程度の範囲内とすることが好ましい。また、表面処理膜112の内部におけるTaの含有率は、15at%以上が好ましい。
【0073】
ここで、表面処理膜112のSi含有率をALD法で変化させるには、通常は、SiO2膜を成膜するステップの次にTa2O5膜の成膜ステップを行い、各膜を1ステップずつ交互に成膜するが、Si含有率を大きくする場合は、SiO2膜の成膜を連続して複数ステップ処理すればよい。
【0074】
また、Si含有率は、複数ステップの回数を変えることによって調整できる。
【0075】
また、表面処理膜112のSi含有率を内部より高くする領域(界面近傍領域112a)は、ヘッド構成部材200との界面から1~10nmの厚み範囲とすることが、内部の耐接液性との関係で好ましい。さらに、表面処理膜112の剥離防止と耐液性の確保との両立を図る上では、ヘッド構成部材200との界面から5nm程度(3~7nm)の厚み範囲のSi含有率を内部より高く、20at%以上とすることがより好ましい。
【0076】
このように、表面処理膜112の厚さ方向でSiの含有率を変化させることにより、表面処理膜112は、ヘッド構成部材200との界面近傍におけるSiの割合が、表面処理膜112の内部におけるSiの含有率より高く、かつ、20at%以上である構成とする。
【0077】
これにより、ヘッド構成部材200との密着性を向上してヘッド構成部材200からの剥離を防止し、耐接液性の向上も図ることができる。
【0078】
なお、ここでは、表面処理膜112に含まれる不動態膜を形成する遷移金属がTaの例で説明しているが、不動態膜を形成する遷移金属として、Zr、その他の第4族及び第5族遷移金属を含んでいる表面処理膜についても、上記実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0079】
次に、本発明の第2実施形態における表面処理膜について
図12及び
図13を参照して説明する。
図12は
図4と同様な
図1のA部に相当する拡大断面説明図、
図13は
図5と同様な
図1のB部に相当する拡大断面説明図である。
【0080】
表面処理膜112は、ヘッド構成部材200との界面近傍に、表面処理膜112の内部よりもSiの含有率が高く、かつ、20at%以上である層112Aを有している。そして、このSiの含有率が高い層112A以外の表面処理膜112の内部を含む領域は、耐接液性を向上するためにSiの含有率を例えば7~20at%とする層112Bとしている。
【0081】
これにより、前記第1実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0082】
次に、本発明の第3実施形態における表面処理膜について
図14を参照して説明する。
図14は
図5と同様な
図1のB部に相当する拡大断面説明図である。
【0083】
表面処理膜112は、ヘッド構成部材200との界面と反対側の表面にも、表面処理膜112の内部よりもSiの含有率が高く、かつ、20at%以上である層112Cを有している。
【0084】
つまり、表面処理膜112の両面に、内部よりもSiの含有率の高い層112A、112Cを形成し、層112A、112C以外の表面処理膜112の内部を含む領域は、耐接液性を向上するためにSiの含有率を例えば7~20at%とする層112Bとしている。
【0085】
この場合、表面処理膜112は、流路板2とノズル板1とを接合する接着剤201とも接し、表面処理膜112と接着剤201との密着性もヘッド品質に影響を与える。同様に、アクチュエータ基板20と保持基板50も接着剤で接合されており、この部分の表面処理膜112と接着剤との密着性もヘッド品質に影響を与える。
【0086】
また、ノズル板1の吐出面1a側には表面処理膜112が形成され、表面処理膜112の表面に撥液膜80が成膜されており、表面処理膜112と撥液膜80との密着性を確保する必要がある。表面処理膜112と撥液膜80との密着においても、シロキサン結合(O-Si-O結合)が最も密着性が高くなる。
【0087】
したがって、表面処理膜112の両面に、内部よりもSiの含有率の高い層112A、112Cを形成することで、表面処理膜112と接着剤201、あるいは、表面処理膜112と撥液膜80との密着性も向上することができる。
【0088】
なお、Siの含有率が20at%以上である層112A、112Cの厚みは同じでも、異なってもよい。
【0089】
次に、本発明に係る液体を吐出する装置の一例について
図15及び
図16を参照して説明する。
図15は同装置の要部平面説明図、
図16は同装置の要部側面説明図である。
【0090】
この装置は、シリアル型装置であり、主走査移動機構493によって、キャリッジ403は主走査方向に往復移動する。主走査移動機構493は、ガイド部材401、主走査モータ405、タイミングベルト408等を含む。ガイド部材401は、左右の側板491A、491Bに架け渡されてキャリッジ403を移動可能に保持している。そして、主走査モータ405によって、駆動プーリ406と従動プーリ407間に架け渡したタイミングベルト408を介して、キャリッジ403は主走査方向に往復移動される。
【0091】
このキャリッジ403には、本発明に係る液体吐出ヘッド404及びヘッドタンク441を一体にした液体吐出ユニット440を搭載している。液体吐出ユニット440の液体吐出ヘッド404は、例えば、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(K)の各色の液体を吐出する。また、液体吐出ヘッド404は、複数のノズルからなるノズル列を主走査方向と直交する副走査方向に配置し、吐出方向を下方に向けて装着している。
【0092】
液体吐出ヘッド404の外部に貯留されている液体を液体吐出ヘッド404に供給するための供給機構494により、ヘッドタンク441には、液体カートリッジ450に貯留されている液体が供給される。
【0093】
供給機構494は、液体カートリッジ450を装着する充填部であるカートリッジホルダ451、チューブ456、送液ポンプを含む送液ユニット452等で構成される。液体カートリッジ450はカートリッジホルダ451に着脱可能に装着される。ヘッドタンク441には、チューブ456を介して送液ユニット452によって、液体カートリッジ450から液体が送液される。
【0094】
この装置は、用紙410を搬送するための搬送機構495を備えている。搬送機構495は、搬送手段である搬送ベルト412、搬送ベルト412を駆動するための副走査モータ416を含む。
【0095】
搬送ベルト412は用紙410を吸着して液体吐出ヘッド404に対向する位置で搬送する。この搬送ベルト412は、無端状ベルトであり、搬送ローラ413と、テンションローラ414との間に掛け渡されている。吸着は静電吸着、あるいは、エアー吸引などで行うことができる。
【0096】
そして、搬送ベルト412は、副走査モータ416によってタイミングベルト417及びタイミングプーリ418を介して搬送ローラ413が回転駆動されることによって、副走査方向に周回移動する。
【0097】
さらに、キャリッジ403の主走査方向の一方側には搬送ベルト412の側方に液体吐出ヘッド404の維持回復を行う維持回復機構420が配置されている。
【0098】
維持回復機構420は、例えば液体吐出ヘッド404のノズル面(ノズルが形成された面)をキャッピングするキャップ部材421、ノズル面を払拭するワイパ部材422などで構成されている。
【0099】
主走査移動機構493、供給機構494、維持回復機構420、搬送機構495は、側板491A,491B、背板491Cを含む筐体に取り付けられている。
【0100】
このように構成したこの装置においては、用紙410が搬送ベルト412上に給紙されて吸着され、搬送ベルト412の周回移動によって用紙410が副走査方向に搬送される。
【0101】
そこで、キャリッジ403を主走査方向に移動させながら画像信号に応じて液体吐出ヘッド404を駆動することにより、停止している用紙410に液体を吐出して画像を形成
する。
【0102】
このように、この装置では、本発明に係る液体吐出ヘッドを備えているので、高画質画像を安定して形成することができる。
【0103】
次に、本発明に係る液体吐出ユニットの他の例について
図17を参照して説明する。
図17は同ユニットの要部平面説明図である。
【0104】
この液体吐出ユニットは、前記液体を吐出する装置を構成している部材のうち、側板491A、491B及び背板491Cで構成される筐体部分と、主走査移動機構493と、キャリッジ403と、液体吐出ヘッド404で構成されている。
【0105】
なお、この液体吐出ユニットの例えば側板491Bに、前述した維持回復機構420、及び供給機構494の少なくともいずれかを更に取り付けた液体吐出ユニットを構成することもできる。
【0106】
次に、本発明に係る液体吐出ユニットの更に他の例について
図18を参照して説明する。
図18は同ユニットの正面説明図である。
【0107】
この液体吐出ユニットは、液体供給部材である流路部品444が取付けられた液体吐出ヘッド404と、流路部品444に接続されたチューブ456で構成されている。
【0108】
なお、流路部品444はカバー442の内部に配置されている。流路部品444に代えてヘッドタンク441を含むこともできる。また、流路部品444の上部には液体吐出ヘッド404と電気的接続を行うコネクタ443が設けられている。
【0109】
本願において、吐出される液体は、ヘッドから吐出可能な粘度や表面張力を有するものであればよく、特に限定されないが、常温、常圧下において、または加熱、冷却により粘度が30mPa・s以下となるものであることが好ましい。より具体的には、水や有機溶媒等の溶媒、染料や顔料等の着色剤、重合性化合物、樹脂、界面活性剤等の機能性付与材料、DNA、アミノ酸やたんぱく質、カルシウム等の生体適合材料、天然色素等の可食材料、などを含む溶液、懸濁液、エマルジョンなどであり、これらは例えば、インクジェット用インク、表面処理液、電子素子や発光素子の構成要素や電子回路レジストパターンの形成用液、3次元造形用材料液等の用途で用いることができる。
【0110】
液体を吐出するエネルギー発生源として、圧電アクチュエータ(積層型圧電素子及び薄膜型圧電素子)、発熱抵抗体などの電気熱変換素子を用いるサーマルアクチュエータ、振動板と対向電極からなる静電アクチュエータなどを使用するものが含まれる。
【0111】
「液体吐出ユニット」は、液体吐出ヘッドに機能部品、機構が一体化したものであり、液体の吐出に関連する部品の集合体が含まれる。例えば、「液体吐出ユニット」は、ヘッドタンク、キャリッジ、供給機構、維持回復機構、主走査移動機構の構成の少なくとも一つを液体吐出ヘッドと組み合わせたものなどが含まれる。
【0112】
ここで、一体化とは、例えば、液体吐出ヘッドと機能部品、機構が、締結、接着、係合などで互いに固定されているもの、一方が他方に対して移動可能に保持されているものを含む。また、液体吐出ヘッドと、機能部品、機構が互いに着脱可能に構成されていても良い。
【0113】
例えば、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドとヘッドタンクが一体化されているものがある。また、チューブなどで互いに接続されて、液体吐出ヘッドとヘッドタンクが一体化されているものがある。ここで、これらの液体吐出ユニットのヘッドタンクと液体吐出ヘッドとの間にフィルタを含むユニットを追加することもできる。
【0114】
また、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドとキャリッジが一体化されているものがある。
【0115】
また、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドを走査移動機構の一部を構成するガイド部材に移動可能に保持させて、液体吐出ヘッドと走査移動機構が一体化されているものがある。また、液体吐出ヘッドとキャリッジと主走査移動機構が一体化されているものがある。
【0116】
また、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドが取り付けられたキャリッジに、維持回復機構の一部であるキャップ部材を固定させて、液体吐出ヘッドとキャリッジと維持回復機構が一体化されているものがある。
【0117】
また、液体吐出ユニットとして、ヘッドタンク若しくは流路部品が取付けられた液体吐出ヘッドにチューブが接続されて、液体吐出ヘッドと供給機構が一体化されているものがある。このチューブを介して、液体貯留源の液体が液体吐出ヘッドに供給される。
【0118】
主走査移動機構は、ガイド部材単体も含むものとする。また、供給機構は、チューブ単体、装填部単体も含むものする。
【0119】
「液体を吐出する装置」には、液体吐出ヘッド又は液体吐出ユニットを備え、液体吐出ヘッドを駆動させて液体を吐出させる装置が含まれる。液体を吐出する装置には、液体が付着可能なものに対して液体を吐出することが可能な装置だけでなく、液体を 気中や液中に向けて吐出する装置も含まれる。
【0120】
この「液体を吐出する装置」は、液体が付着可能なものの給送、搬送、排紙に係わる手段、その他、前処理装置、後処理装置なども含むことができる。
【0121】
例えば、「液体を吐出する装置」として、インクを吐出させて用紙に画像を形成する装置である画像形成装置、立体造形物(三次元造形物)を造形するために、粉体を層状に形成した粉体層に造形液を吐出させる立体造形装置(三次元造形装置)がある。
【0122】
また、「液体を吐出する装置」は、吐出された液体によって文字、図形等の有意な画像が可視化されるものに限定されるものではない。例えば、それ自体意味を持たないパターン等を形成するもの、三次元像を造形するものも含まれる。
【0123】
上記「液体が付着可能なもの」とは、液体が少なくとも一時的に付着可能なものであって、付着して固着するもの、付着して浸透するものなどを意味する。具体例としては、用紙、記録紙、記録用紙、フィルム、布などの被記録媒体、電子基板、圧電素子などの電子部品、粉体層(粉末層)、臓器モデル、検査用セルなどの媒体であり、特に限定しない限り、液体が付着するすべてのものが含まれる。
【0124】
上記「液体が付着可能なもの」の材質は、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックスなど液体が一時的でも付着可能であればよい。
【0125】
また、「液体を吐出する装置」は、液体吐出ヘッドと液体が付着可能なものとが相対的に移動する装置があるが、これに限定するものではない。具体例としては、液体吐出ヘッドを移動させるシリアル型装置、液体吐出ヘッドを移動させないライン型装置などが含まれる。
【0126】
また、「液体を吐出する装置」としては、他にも、用紙の表面を改質するなどの目的で用紙の表面に処理液を塗布するために処理液を用紙に吐出する処理液塗布装置、原材料を溶液中に分散した組成液を、ノズルを介して噴射させて原材料の微粒子を造粒する噴射造粒装置などがある。
【0127】
なお、本願の用語における、画像形成、記録、印字、印写、印刷、造形等はいずれも同義語とする。
【符号の説明】
【0128】
1 ノズル板
2 流路板
3 振動板部材
4 ノズル
10 共通液室
20 アクチュエータ基板
50 保持基板
100 液体吐出ヘッド
112 表面処理膜
200 ヘッド構成部材
403 キャリッジ
404 液体吐出ヘッド
440 液体吐出ユニット