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特許7059606払拭装置、払拭ユニット、ヘッドメンテナンス装置、液体を吐出する装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-18
(45)【発行日】2022-04-26
(54)【発明の名称】払拭装置、払拭ユニット、ヘッドメンテナンス装置、液体を吐出する装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/165 20060101AFI20220419BHJP
【FI】
B41J2/165 307
B41J2/165 305
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2017236625
(22)【出願日】2017-12-11
(65)【公開番号】P2019104132
(43)【公開日】2019-06-27
【審査請求日】2020-09-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 謙太
(72)【発明者】
【氏名】長谷部 大介
(72)【発明者】
【氏名】浅野 幸博
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 達郎
【審査官】中村 博之
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-205631(JP,A)
【文献】国際公開第2012/060310(WO,A1)
【文献】特開2012-051137(JP,A)
【文献】特開2017-052136(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0298475(US,A1)
【文献】特開平11-320900(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
払拭部材をロール状に巻き回した繰り出し側ロールの軸心部材と、
前記繰り出し側ロールから繰り出した前記払拭部材を巻き取る巻取り側ロールの軸心部材と、を備え、
前記繰り出し側の軸心部材と、前記巻取り側の軸心部材との間には、仕切り部材が配置されており、
前記仕切り部材は、変位可能であり、前記繰り出し側ロール及び前記巻取り側ロールの少なくともいずれかの周面に接触する
ことを特徴とする払拭装置。
【請求項2】
前記仕切り部材は、可撓性を有する部材であり、一端部が固定部に保持されている
ことを特徴とする請求項1に記載の払拭装置。
【請求項3】
前記仕切り部材は、一端部が回転可能に保持されている
ことを特徴とする請求項に記載の払拭装置。
【請求項4】
前記仕切り部材は、直線移動可能に配置されている
ことを特徴とする請求項に記載の払拭装置。
【請求項5】
前記仕切り部材は、液体を吸収しない部材で形成されている
ことを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の払拭装置。
【請求項6】
払拭部材をロール状に巻き回した繰り出し側ロールの軸心部材と、
前記繰り出し側ロールから繰り出した前記払拭部材を巻き取る巻取り側ロールの軸心部材と、を備え、
前記繰り出し側の軸心部材と、前記巻取り側の軸心部材との間には、仕切り部材が配置されており、
前記仕切り部材は、変位可能であり、前記繰り出し側ロール及び前記巻取り側ロールの少なくともいずれかの周面に接触する
ことを特徴とする払拭ユニット。
【請求項7】
液体吐出ヘッドのメンテナンスを行うヘッドメンテナンス装置であって、
前記液体吐出ヘッドのノズル面を払拭する請求項1ないし5のいずれかに記載の払拭装置、又は、請求項6に記載の払拭ユニットを備えている
ことを特徴とするヘッドメンテナンス装置。
【請求項8】
液体を吐出する液体吐出ヘッドと、
前記液体吐出ヘッドのノズル面を払拭する請求項1ないし5のいずれかに記載の払拭装置、又は請求項6に記載の払拭ユニット、若しくは請求項7に記載のメンテナンス装置と、を備えている
ことを特徴とする液体を吐出する装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は払拭装置、払拭ユニット、ヘッドメンテナンス装置、液体を吐出する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、液体を吐出する液体吐出ヘッドを使用する場合、ノズルの状態を維持回復するため、ノズル面をキャッピングするキャップ、ノズル面を払拭清掃する払拭装置などを含む維持回復機構(メンテナンス装置)を備える。
【0003】
従来、ノズル面を払拭する払拭部材としてウェブを使用するものが知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第5467117号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、ウェブなどの払拭部材を使用する場合には、払拭部材が繰り出される繰り出し側ロールの軸心となる繰り出しローラと、繰り出された払拭部材を巻き取った掻き取りロールの軸心となる巻取りローラとを配置する。
【0006】
このとき、繰り出し側ロールの未使用部分が巻取り側ロールの使用済部分と接触すると、払拭性能が低下するという課題がある。
【0007】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、払拭部材の未使用部分と使用済部分との接触を防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、本発明に係る払拭装置は、
払拭部材をロール状に巻き回した繰り出し側ロールの軸心部材と、
前記繰り出し側ロールから繰り出した前記払拭部材を巻き取る巻取り側ロールの軸心部材と、を備え、
前記繰り出し側の軸心部材と、前記巻取り側の軸心部材との間には、仕切り部材が配置されており、
前記仕切り部材は、変位可能であり、前記繰り出し側ロール及び前記巻取り側ロールの少なくともいずれかの周面に接触する
構成とした。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、払拭部材の未使用部分と使用済部分との接触を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の第1実施形態に係る払拭ユニットを含む本発明に係る払拭装置の要部側面説明図である。
図2】同払拭ユニットの平面説明図である。
図3】払拭動作に伴う繰り出し側ロール及び巻取り側ロールの遷移状態の説明に供する側面説明図である。
図4】仕切り部材の作用効果の説明に供する側面説明図である。
図5】比較例1の説明に供する側面説明図である。
図6】同実施形態及び比較例2の払拭装置の可動スペースの説明に供する側面説明図である。
図7】同実施形態の払拭装置自体のサイズの説明に供する側面説明図である。
図8】比較例2の払拭装置自体のサイズの説明に供する側面説明図である。
図9】本発明の第2実施形態に係る払拭装置の払拭ユニット部分の側面説明図である。
図10】同実施形態における仕切り部材の変位状態を示す説明図である。
図11】同仕切り部材の正面説明図である。
図12】本発明の第3実施形態に係る払拭装置の払拭ユニットの仕切り部材の説明に供する説明図である。
図13】本発明の第4実施形態に係る払拭装置の払拭ユニット部分の側面説明図である。
図14】同仕切り部材の変位構成の説明に供する説明図である。
図15】本発明の第5実施形態に係る払拭装置の払拭ユニット部分の側面説明図である。
図16】本発明に係るヘッドメンテナンス装置を含む液体を吐出する装置の正面説明図である。
図17】同装置のキャリッジにおけるヘッド配置の説明に供する平面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して説明する。本発明の第1実施形態について図1及び図2を参照して説明する。図1は本発明に係る払拭ユニットを含む本発明に係る払拭装置の要部側面説明図、図2は同払拭ユニットの平面説明図である。
【0012】
本実施形態では、払拭装置1によって払拭する払拭対象を、液体を吐出する装置の液体吐出ヘッド(以下、「ヘッド」ともいう。)20のノズル面20aとしている。
【0013】
払拭装置1は、払拭部材としてのウェブ2を巻き回した繰り出し側ロール2Aの軸心部材となる繰り出しローラ3と、搬送ローラ4、5と、繰り出し側ロール2Aから繰り出されたウェブ2を巻き取った巻取り側ロール2Bの軸心部材となる巻取りローラ6とを備えている。
【0014】
ウェブ2としては、吸収性を有し、少なくとも使用する液体に対して耐液性を有するとともに、毛羽立ちや発塵を生じないシート状の材料からなることが好ましく、例えば、不織布、布、フィルム、紙などが挙げられる。
【0015】
ウェブ2は、繰り出しローラ3の繰り出し側ロール2Aから繰り出され、搬送ローラ4、5を経て、巻取りローラ6に巻取り側ロール2Bとして巻き取られる。搬送ローラ4、5は、払拭ユニット100のハウジングを構成する側板18、19に回転可能に保持されている。
【0016】
ここでは、繰り出しローラ3を払拭方向Y1の上流側に、巻取りローラ6を払拭方向Y2の下流側に配置し、ウェブ2は払拭方向Y1に沿う方向に巻き取る構成としている。なお、「払拭方向Y1」は、本実施形態では、払拭装置1の払拭ユニット100が払拭対象である液体吐出ヘッド20のノズル面20aに対して相対的に移動する方向である。
【0017】
2つの搬送ローラ4、5の間には、ウェブ2を払拭対象であるノズル面20aに押し付ける押し付け部材11が配置されている。押し付け部材11は、ノズル面20aにウェブ2を接触させるときには、スプリング12によって所定の押し付け力でウェブ2をノズル面20aに押し付ける。
【0018】
搬送ローラ4にはコードホイール14を取り付け、このコードホイール14に形成したパターンを検出する透過型フォトセンサからなるエンコーダセンサ15を設けている。これらのコードホイール14とエンコーダセンサ15によってウェブ2の移動距離(送り量)を検出するエンコーダ16を構成している。
【0019】
さらに、繰り出しローラ3と巻取りローラ6との間には、仕切り部材7が配置されている。仕切り部材7は、マイラシートなどの摩擦の少ない滑らかな部材であることが好ましい。また、払拭動作によりウェブ2に付着する廃液などの払拭物が裏移りしないように吸水性のない部材であることが好ましい。
【0020】
これらのウェブ2、繰り出しローラ3、巻取りローラ6、搬送ローラ4、5、押し付け部材11などは払拭ユニット(ウェブカートリッジ)100としてユニット化され、払拭装置1のヘッド20に対して相対的に移動する移動部材30に着脱可能に搭載されている。なお、以下の実施形態においても、ウェブ2、繰り出しローラ3、巻取りローラ6などを払拭ユニットとしてユニット化することができるが、説明を省略する。
【0021】
払拭装置1の移動部材30には、払拭ユニット100を装着したときに巻取りローラ6に設けたギヤ39と噛み合う伝達機構37と、伝達機構37を介して巻取りローラ6を回転させる巻取りモータ38を備えている。
【0022】
また、移動部材30は、ヘッド20のノズル配列方向である矢印Y方向に往復移動可能に配置されている。この移動部材30の払拭方向Y1への移動は、ラック31及びピニオン32と、ピニオン32を回転させる移動部材移動モータ33を含む移動機構よって行われる。
【0023】
また、移動部材30は、ウェブ2がノズル面20aに対して進退する方向、ここでは上下方向に移動可能(昇降可能)に配置されている。移動部材30の昇降は、例えばカム35と、カム35を回転させる移動部材昇降モータ36を含む昇降機構によって行われる。
【0024】
次に、払拭装置1による払拭動作について説明する。
【0025】
払拭装置1によってヘッド20のノズル面20aを払拭するときには、移動部材30が上昇して、ヘッド20のノズル面20aの払拭開始となる一端部に、ウェブ2が所定の押し付け力で押付けられる。
【0026】
そして、移動部材30が払拭方向(Y1方向)に移動されることで、ウェブ2によってノズル面20aに残留している液体(廃液という)が払拭ないし吸収されて除去される。
【0027】
その後、又は、次の払拭動作の前に、巻取りローラ6を回転させてウェブ2を巻取り側ロール2Bに巻取り、ウェブ2の未使用部分が次に払拭するときにノズル面20aに接触するようにする。
【0028】
次に、払拭動作に伴う繰り出し側ロール及び巻取り側ロールの遷移状態について図3を参照して説明する。図3は同説明に供する側面説明図である。
【0029】
まず、図3(a)に示すように、初期では、繰り出し側ロール2Aの径が大きく、巻取り側ロール2Bの径は小さい状態である。この状態から払拭動作を繰り返し行うことで、巻取り側ロール2B側にウェブ2が巻き取られ、次第に、繰り出し側ロール2Aの径が小さくなり、巻取り側ロール2Bの径が大きくなる。
【0030】
そして、例えば、図3(b)に示すように、繰り出し側ロール2Aの径と巻取り側ロール2Bの径がほぼ同じなる段階を経て、図3(c)に示すように、繰り出し側ロール2Aの径が小さくなり、巻取り側ロール2Bの径が大きくなり、ウェブエンド(使用済)状態となる。
【0031】
次に、仕切り部材の作用効果について図4及び図5を参照して説明する。図4は本実施形態の作用効果の説明に供する側面説明図、図5は比較例1の説明に供する側面説明図である。
【0032】
図5に示す比較例1は、繰り出しローラ3(繰り出し側ロール2A)と巻取りローラ6(巻取り側ロール2B)との間に仕切り部材7を備えていない構成としている。
【0033】
この比較例1においては、例えば、繰り出し側ロール2Aのウェブ2の弛み2aが大きくなると、巻取り側ロール2Bに接触することがある。巻取り側ロール2Bは使用済のウェブ2が巻き取られているので、繰り出し側ロール2Aのウェブ2の未使用部分に、使用済部分に付着している廃液などが転移し、繰り出し側ロール2Aのウェブ2の未使用部分が汚れることがある。
【0034】
繰り出し側ロール2Aのウェブ2の未使用部分が汚れると、ノズル面20aを払拭して清掃するときに、ノズル面20a(払拭対象)を清浄化できなかったり、あるいは、ノズル面20aに汚れを再付着したりするなど、払拭不良が発生することになる。
【0035】
これに対して、本実施形態では、繰り出しローラ3(繰り出し側ロール2A)と巻取りローラ6(巻取り側ロール2B)との間に仕切り部材7を備えているので、図4に示すように、繰り出し側ロール2Aのウェブ2の弛み2aが大きくなっても、仕切り部材7で遮られて、巻取り側ロール2Bに接触することがなくなる。
【0036】
このように、本実施形態によれば、払拭部材の未使用部分と使用済部分との接触を防止することができ、これにより、払拭不良の発生を低減できる。また、繰り出し側ロール2Aと巻取り側ロール2Bとの接触が防止されることで、接触に伴う巻取りトルクの増大を抑制することもできる。
【0037】
次に、仕切り部材の他の作用効果について図6ないし図8を参照して説明する。図6は本実施形態及び比較例2の払拭装置の必要可動スペースの説明に供する側面説明図、図7は本実施形態の払拭装置自体のサイズの説明に供する側面説明図、図8は比較例2の払拭装置自体のサイズの説明に供する側面説明図である。
【0038】
本実施形態の払拭装置1は、上述したように、仕切り部材7によって繰り出し側ロール2Aのウェブ2が巻取り側ロール2Bに接触することが防止されているので、図6(a)にも示すように、繰り出しローラ3と巻取りローラ6を寄せて配置することができる。
【0039】
そこで、払拭方向Y1に沿う方向において、搬送ローラ4と搬送ローラ5との間に、繰り出しローラ3と巻取りローラ6が位置するように配置している。これによって、繰り出しローラ3と巻取りローラ6の配置間隔を短くすることができる。
【0040】
これに対して、比較例2は、図6(b)に示すように、仕切り部材7を備えていないため、前記比較例1における繰り出し側ロール2Aのウェブ2が巻取り側ロール2Bに接触することを防止する必要がある。
【0041】
そこで、払拭方向Y1に沿う方向において、搬送ローラ4と搬送ローラ5との外側に、繰り出しローラ3と巻取りローラ6が位置するように配置し、繰り出しローラ3と巻取りローラ6の間隔を十分に広くした構成としたものである。
【0042】
そして、ヘッド20のノズル面20aを払拭するときには、ノズル面20aの一端から他端までを払拭するので、本実施形態の払拭装置1の最小可動スペースは距離L1となるのに対し、比較例2の払拭装置の最小可動スペースは距離L2となる(L2>L1)。このように、比較例2では本実施形態よりも必要可動スペースが長くなる。
【0043】
また、払拭ユニット100のサイズについては、本実施形態では、仕切り部材7が移動(変位)する構成とした場合には、図7に示すように、払拭方向Y1に沿う方向においてサイズL3の範囲内に収めることができる。
【0044】
これに対して、比較例2では、繰り出し側ロール2Aの最大径と最小径との差分ΔL、巻取り側ロール2Bの最大径と最小径との差分Δを確保する必要があり、払拭方向Y1に沿う方向にいてサイズL4(L4>L3)となる。
【0045】
このように、本実施形態によれば、仕切り部材を設けることによって払拭装置や払拭ユニットの小型化を図ることができる。
【0046】
次に、本発明の第2実施形態について図9ないし図11を参照して説明する。図9は同実施形態に係る払拭装置の払拭ユニット部分の側面説明図、図10は仕切り部材の変位状態を示す説明図、図11は仕切り部材の正面説明図である。
【0047】
本実施形態では、仕切り部材7は、支持部7aを支点として変位可能、ここでは、図10に示すように揺動可能に配置している。
【0048】
これにより、図9(a)に示すように、初期では、仕切り部材7は繰り出し側ロール2Aの周面に押されて巻取り側ロール2B側に変位している。このとき、仕切り部材7は、例えば図10の破線図示の位置になる。
【0049】
この状態から払拭動作を繰り返し行うことで、巻取り側ロール2B側にウェブ2が巻き取られることで、図9(b)に示すように、仕切り部材7は繰り出しローラ2A側に次第に変位する。例えば、繰り出し側ロール2Aと巻取り側ロール2Bがほぼ同じ径であるときには、仕切り部材7は、図10の実線図示の位置になる。
【0050】
そして、巻取り側ロール2B側にウェブ2がすべて巻き取られたときには、図9(c)に示すように、仕切り部材7は繰り出しローラ2A側に変位する。このとき、仕切り部材7は、図10の二点鎖線の位置になる。
【0051】
つまり、仕切り部材7が固定であるときには、繰り出しローラ3及び巻取りローラ6と仕切り部材7との間隔は、繰り出し側ロール2A、巻取り側ロール2Bの最大半径以上とする必要がある。
【0052】
これに対し、本実施形態のように、繰り出し側ロール2A、巻取り側ロール2Bの半径の減少、増加に伴って仕切り部材7が変位する構成では、繰り出しローラ3と巻取りローラ6との間隔は、図9(b)の状態を確保できる距離であればよく、第1実施形態よりも短くできる。
【0053】
これにより、払拭装置の小型化を図ることができる。
【0054】
次に、本発明の第3実施形態について図12を参照して説明する。図12は同実施形態に係る払拭装置の払拭ユニットの仕切り部材の説明に供する説明図である。
【0055】
本実施形態では、仕切り部材7を変形可能な可撓性を有するマイラなどの部材で構成し、一端部を払拭ユニット100の固定部100aに接着などで固定している。
【0056】
これにより、繰り出し側ロール2A、巻取り側ロール2Bの半径の減少、増加に伴って仕切り部材7が、例えば破線図示の位置から実線図示の位置を経て二点鎖線の位置まで変形変位することができ、前記第2実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0057】
次に、本発明の第4実施形態について図13及び図14を参照して説明する。図13は同実施形態に係る払拭装置の払拭ユニット部分の側面説明図、図14は仕切り部材の変位構成の説明に供する説明図である。
【0058】
本実施形態では、仕切り部材7は、図14に示すように、両端部7b、7bがガイド溝71、71に移動可能に支持されている。これにより、仕切り部材7はガイド溝71に沿って直線移動可能に配置される。
【0059】
ここで、図13(a)に示すように、仕切り部材7を初期状態で巻取り側ロール2B側に寄せておけば、巻取り側ロール2Bの径が大きくなるに従って、図13(b)、(c)に示すように、仕切り部材7が繰り出し側ロール2A(繰り出しローラ3)側に移動する。
【0060】
これにより、前記第2実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0061】
次に、本発明の第5実施形態について図15を参照して説明する。図15は同実施形態に係る払拭装置の払拭ユニット部分の側面説明図である。
【0062】
本実施形態では、2つの仕切り部材7A、7Bを有し、各仕切り部材7A、7Bは、いずれも一端部が支持部7aに回転可能に支持されている。そして、仕切り部材7Aと仕切り部材7Bとの間には、例えば、仕切り部材7Aを繰り出し側ロール2Aの周面に、仕切り部材7Bを巻取り側ロール2Bの周面に接触させるように付勢する付勢部材(例えばバネ)7Cを配置している。
【0063】
このように、繰り出し側ロール2Aの周面、巻取り側ロール2Bの周面に仕切り部材7A、7Bを接触させることにより、繰り出し側ロール2A、巻取り側ロール2Bの弛みを防止することができる。
【0064】
次に、本発明に係るヘッドメンテナンス装置を含む液体を吐出する装置の概要について図16及び図17を参照して説明する。図16は液体を吐出する装置の正面説明図、図17は同装置のキャリッジにおけるヘッド配置の説明に供する平面説明図である。
【0065】
この液体を吐出する装置は、シリアル型装置であり、キャリッジ21に1又は複数の液体吐出ヘッド20(20A~20C)を搭載し、搬送手段22で媒体23を間欠的に搬送する。そして、キャリッジ21を矢印方向に移動させ、液体吐出ヘッド20から所要の液体を吐出して画像を形成する。
【0066】
また、キャリッジ21のホーム位置側には、液体吐出ヘッド20のノズル面20aをキャッピングするキャップ52と、前記第1ないし第5実施形態で説明したような払拭装置1で構成したヘッド清掃装置51とを含みヘッド20のメンテナンス(ヘッドメンテナンス)を行うヘッドメンテナンス装置50を配置している。
【0067】
このように、本発明に係る払拭装置を含むメンテナンス装置を備えていることで、ヘッド面を清浄化して安定した液体吐出を行うことができ、また、装置の小型化を図ることができる。
【0068】
本願において、吐出される液体は、ヘッドから吐出可能な粘度や表面張力を有するものであればよく、特に限定されないが、常温、常圧下において、または加熱、冷却により粘度が30mPa・s以下となるものであることが好ましい。より具体的には、水や有機溶媒等の溶媒、染料や顔料等の着色剤、重合性化合物、樹脂、界面活性剤等の機能性付与材料、DNA、アミノ酸やたんぱく質、カルシウム等の生体適合材料、天然色素等の可食材料、などを含む溶液、懸濁液、エマルジョンなどであり、これらは例えば、インクジェット用インク、表面処理液、電子素子や発光素子の構成要素や電子回路レジストパターンの形成用液、3次元造形用材料液等の用途で用いることができる。
【0069】
液体を吐出するエネルギー発生源として、圧電アクチュエータ(積層型圧電素子及び薄膜型圧電素子)、発熱抵抗体などの電気熱変換素子を用いるサーマルアクチュエータ、振動板と対向電極からなる静電アクチュエータなどを使用するものが含まれる。
【0070】
「液体吐出ユニット」は、液体吐出ヘッドに機能部品、機構が一体化したものであり、液体の吐出に関連する部品の集合体が含まれる。例えば、「液体吐出ユニット」は、ヘッドタンク、キャリッジ、供給機構、維持回復機構、主走査移動機構の構成の少なくとも一つを液体吐出ヘッドと組み合わせたものなどが含まれる。
【0071】
ここで、一体化とは、例えば、液体吐出ヘッドと機能部品、機構が、締結、接着、係合などで互いに固定されているもの、一方が他方に対して移動可能に保持されているものを含む。また、液体吐出ヘッドと、機能部品、機構が互いに着脱可能に構成されていても良い。
【0072】
例えば、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドとヘッドタンクが一体化されているものがある。また、チューブなどで互いに接続されて、液体吐出ヘッドとヘッドタンクが一体化されているものがある。ここで、これらの液体吐出ユニットのヘッドタンクと液体吐出ヘッドとの間にフィルタを含むユニットを追加することもできる。
【0073】
また、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドとキャリッジが一体化されているものがある。
【0074】
また、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドを走査移動機構の一部を構成するガイド部材に移動可能に保持させて、液体吐出ヘッドと走査移動機構が一体化されているものがある。また、液体吐出ヘッドとキャリッジと主走査移動機構が一体化されているものがある。
【0075】
また、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドが取り付けられたキャリッジに、維持回復機構の一部であるキャップ部材を固定させて、液体吐出ヘッドとキャリッジと維持回復機構が一体化されているものがある。
【0076】
また、液体吐出ユニットとして、ヘッドタンク若しくは流路部品が取付けられた液体吐出ヘッドにチューブが接続されて、液体吐出ヘッドと供給機構が一体化されているものがある。このチューブを介して、液体貯留源の液体が液体吐出ヘッドに供給される。
【0077】
主走査移動機構は、ガイド部材単体も含むものとする。また、供給機構は、チューブ単体、装填部単体も含むものする。
【0078】
「液体を吐出する装置」には、液体吐出ヘッド又は液体吐出ユニットを備え、液体吐出ヘッドを駆動させて液体を吐出させる装置が含まれる。液体を吐出する装置には、液体が付着可能なものに対して液体を吐出することが可能な装置だけでなく、液体を 気中や液中に向けて吐出する装置も含まれる。
【0079】
この「液体を吐出する装置」は、液体が付着可能なものの給送、搬送、排紙に係わる手段、その他、前処理装置、後処理装置なども含むことができる。
【0080】
例えば、「液体を吐出する装置」として、インクを吐出させて用紙に画像を形成する装置である画像形成装置、立体造形物(三次元造形物)を造形するために、粉体を層状に形成した粉体層に造形液を吐出させる立体造形装置(三次元造形装置)がある。
【0081】
また、「液体を吐出する装置」は、吐出された液体によって文字、図形等の有意な画像が可視化されるものに限定されるものではない。例えば、それ自体意味を持たないパターン等を形成するもの、三次元像を造形するものも含まれる。
【0082】
上記「液体が付着可能なもの」とは、液体が少なくとも一時的に付着可能なものであって、付着して固着するもの、付着して浸透するものなどを意味する。具体例としては、用紙、記録紙、記録用紙、フィルム、布などの被記録媒体、電子基板、圧電素子などの電子部品、粉体層(粉末層)、臓器モデル、検査用セルなどの媒体であり、特に限定しない限り、液体が付着するすべてのものが含まれる。
【0083】
上記「液体が付着可能なもの」の材質は、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックスなど液体が一時的でも付着可能であればよい。
【0084】
また、「液体を吐出する装置」は、液体吐出ヘッドと液体が付着可能なものとが相対的に移動する装置があるが、これに限定するものではない。具体例としては、液体吐出ヘッドを移動させるシリアル型装置、液体吐出ヘッドを移動させないライン型装置などが含まれる。
【0085】
また、「液体を吐出する装置」としては、他にも、用紙の表面を改質するなどの目的で用紙の表面に処理液を塗布するために処理液を用紙に吐出する処理液塗布装置、原材料を溶液中に分散した組成液を、ノズルを介して噴射させて原材料の微粒子を造粒する噴射造粒装置などがある。
【0086】
なお、本願の用語における、画像形成、記録、印字、印写、印刷、造形等はいずれも同義語とする。
【符号の説明】
【0087】
2 ウェブ(払拭部材)
2A 繰り出し側ロール
2B 巻取り側ロール
3 繰り出しローラ(軸心部材)
4、5 搬送ローラ
6 巻取りローラ(軸心部材)
7 仕切り部材
20 液体吐出ヘッド
21 キャリッジ
50 メンテナンス装置
51 ヘッド清掃装置
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