(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-18
(45)【発行日】2022-04-26
(54)【発明の名称】ベルトコンベア用の付着物剥離装置及び付着物剥離装置付きベルトコンベア
(51)【国際特許分類】
B65G 45/16 20060101AFI20220419BHJP
【FI】
B65G45/16 B
(21)【出願番号】P 2018027637
(22)【出願日】2018-02-20
【審査請求日】2020-10-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 亨紀
(72)【発明者】
【氏名】原 博之
【審査官】寺川 ゆりか
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-171732(JP,A)
【文献】実開昭50-049177(JP,U)
【文献】実開昭52-150077(JP,U)
【文献】実開昭55-011997(JP,U)
【文献】特開2000-335731(JP,A)
【文献】米国特許第9445689(US,B1)
【文献】中国実用新案第212767991(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 45/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
付着物剥離装置がベルトコンベアに設置されてなる付着物剥離装置付きベルトコンベアであって、
前記ベルトコンベアは、
2個の回転ドラムと、
帯状の無端ベルトである搬送ベルトと、
円柱形状の支持棒と、を備えてなり、
各々の前記回転ドラムは、搬送路の始端と終端とにそれぞれ配置されていて、
前記搬送ベルトは、2個の前記回転ドラムの間を循環走行し、
前記支持棒は、前記搬送ベルトの下方に該搬送ベルトの走行方向に直交する向きに配置されていて、
前記付着物剥離装置は、
互いに直角に連接する第1側壁部、第2側壁部、第3側壁部、及び第4側壁部からなる4つの面により形成されている方形枠状の本体部と、
前記第1側壁部の上辺に設置されているスクレーパと、
前記第1側壁部の両端に連接していて相互に対向する前記第2側壁部及び前記第3側壁部の上辺の中間部には、円柱形状の棒に掛止可能な形状の先端部を有する一組の掛止部が設置されていて、該掛止部は前記支持棒に回転揺動可能に掛止されていて、
前記第1側壁部に対向する前記第4側壁部には、バランスウエイトが垂下されていて、
前記バランスウエイトは、垂下用ワイヤと、錘部材と、からなり、
前記垂下用ワイヤの端部が、前記第4側壁部に連結されていて、
前記付着物剥離装置の前記第4側壁部と、前記付着物剥離装置付きベルトコンベアの設置面とを繋いで設置されている跳ね上がり防止ワイヤを、更に備える、
付着物剥離装置付きベルトコンベア。
【請求項2】
前記スクレーパが塩化ビニルである、請求項1に記載の付着物剥離装置付きベルトコンベア。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベルトコンベア用の付着物剥離装置及び付着物剥離装置付きベルトコンベアに関する。
【背景技術】
【0002】
各種の製造プラントにおいて取り扱う原材料や中間生産物等を搬送する搬送装置の1つに、
図1に示すようなベルトコンベアがある。このようなベルトコンベアにおいては、搬送面に載せた被搬送物をベルトの反転により所定の位置に落下させるが、取り扱う被搬送物によってはベルトが反転して搬送面が下方に向いて走行する状態においても、下向きの搬送面に被搬送物が付着したままの状態でベルトが走行してしまうことがある。この結果、ベルトコンベアの周囲に被搬送物が散乱したり、或いは、搬送面上の付着物や散乱した被搬送物に起因してベルトコンベアの故障が発生してしまうことがあった。
【0003】
このような下向きのベルト搬送面への被搬送物の付着を防止して、これを速やかに落下させる手段としては、矩形板状のスクレーパ等をベルト搬送面に当接させることにより、付着している被搬送物を剥がし取って所定の位置に落下させる構造を有する各種の付着物除去手段が提案されている(特許文献1参照)。
【0004】
このようなスクレーパによる付着物の除去手段は、付着物が良好に剥がれるようにスクレーパ等をベルトの搬送面に確実に押し当てる必要がある。しかし、押し当てる力が強すぎるとベルトの損傷や亀裂の原因となる一方、押し当てる力が弱すぎるとベルトに付着した搬送物を十分除去できなくなる。又、搬送物の性状によっても、押し当てる力の適切な範囲は変動する。特許文献1に開示されているような、スクレーパ等の当接による付着物の除去手段においては、スクレーパをベルト搬送面に押し当てる力を常に最適に維持する調整が困難であった。
【0005】
一方で、スクレーパ等の当接にはよらず、搬送面に空気を吹きつけて付着物を除去する付着物除去装置も提案されている(特許文献2)。しかしながら、このような方式の付着物の除去装置においては、特に微細な付着物や、或いは、微細であって尚且つ粘性が高く付着力の強い付着物の場合、取り残しが多くなり、付着物を常に搬送面から十分な除去率(具体的な一般的な目安としては、全付着物に対して90%以上の除去率)で除去することは難しかった。又、このような方式の装置を稼働させるためには、当該装置に常に適切な空気量と空気圧で空気を導入することが可能なエアコンプレッサー等のポンプ装置の併設が必須であり、更には、発塵による作業環境の悪化を防止するための環境集塵装置等の追加的設置が必要となる場合もあった。このように、特許文献2に記載の付着物除去装置は、上記のスクレーパによる除去手段に比べて設置費用が嵩む点が、多くの製造現場で導入の妨げになっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2005-169164号公報
【文献】特開2015-40097号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、低廉なコストで設置可能でありながら、常時、適切な力で当該搬送面にスクレーパを当接させることができて、これにより、搬送面の付着物を、十分な除去率で除去することができるベルトコンベア用の付着物剥離装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、ベルトコンベア搬送面にスクレーパを押し当てる力を、梃子の原理によって調整するバランスウエイトを、簡易な手作業によって着脱可能な構造で本体部に垂下した付着物剥離装置により、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。具体的には、本発明は以下のものを提供する。
【0009】
(1) ベルトコンベア用の付着物剥離装置であって、互いに直角に連接する第1側壁部、第2側壁部、第3側壁部、及び第4側壁部からなる4つの面により形成されている方形枠状の本体部と、第1側壁部の上辺に設置されているスクレーパと、前記第1側壁部の両端に連接していて相互に対向する前記第2側壁部及び前記第3側壁部の上辺の中間部には、円柱形状の棒に掛止可能な形状の先端部を有する一組の掛止部が設置されていて、前記第1側壁部に対向する前記第4側壁部には、バランスウエイトが垂下されていて、前記バランスウエイトは、垂下用ワイヤと、錘部材と、からなり、前記垂下用ワイヤの端部が、前記第4側壁部に連結されている、ベルトコンベア用の付着物剥離装置。
【0010】
(2) 前記スクレーパが塩化ビニルである、(1)に記載のベルトコンベア用の付着物剥離装置。
【0011】
(3) (1)又は(2)に記載の付着物剥離装置が設置されてなる付着物剥離装置付きベルトコンベアであって、前記ベルトコンベアは、2個の回転ドラムと、帯状の無端ベルトである搬送ベルトと、円柱形状の支持棒と、を備えてなり、各々の前記回転ドラムは、搬送路の両端にそれぞれ配置されていて、前記搬送ベルトは、2個の前記回転ドラムの間を循環走行し、前記支持棒は、前記搬送ベルトの下方に該搬送ベルトの走行方向に直交する向きに配置されていて、前記付着物剥離装置は、前記掛止部が前記支持棒に回転揺動可能に掛止されている、付着物剥離装置付きベルトコンベア。
【0012】
(4) 付着物剥離装置の前記第4側壁部と、前記付着物剥離装置付きベルトコンベアの設置面とを繋いで設置されている跳ね上がり防止ワイヤを、更に備える、(3)に記載の付着物剥離装置付きベルトコンベア。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、低廉なコストで設置可能でありながら、常時、適切な力で当該搬送面にスクレーパを当接させることができて、これにより、搬送面の付着物を、十分な除去率で除去することができるベルトコンベア用の付着物剥離装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の付着物剥離装置付きベルトコンベアの構成を模式的に示した図である。
【
図2】本発明のベルトコンベア用の付着物剥離装置の斜視図である。
【
図3】本発明のベルトコンベア用の付着物剥離装置の側面図である。
【
図4】本発明のベルトコンベア用の付着物剥離装置に好ましく用いることができる錘部材の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明のベルトコンベア用の付着物剥離装置及び付着物剥離装置付きベルトコンベアの好ましい実施形態について説明する。但し、本発明は、以下の実施形態に限定されない。本発明が適用可能な無端ベルト式のベルトコンベアは、鉱業、建設業、物流等のサービス業も含めた産業界において、物を運ぶための手段として広く用いられているが、例えば、ウェルツ法による酸化亜鉛鉱の製造プラントにおいて、鉄鋼ダスト等の原材料を搬送するための装置として用いられている。本発明の各装置も、同様に、ウェルツ法による酸化亜鉛鉱の製造プラントに好ましく適用することができる。例えば上記に挙げた鉄鋼ダストは、水分を含んだ微粒の泥状物や、その造粒物であり、粒子径が小さくて粘着性が高いことから、ベルトコンベアのベルト搬送面に付着し易い。又、本発明の各装置は、これに限らず、粉状或いは微粒状で、且つ、粘性が高く搬送面に付着しやすい被搬送物を搬送する工程を行う各種の製造プラント等において、広く適用可能な装置である。
【0016】
<付着物剥離装置付きベルトコンベア>
図1は、本発明の付着物剥離装置付きベルトコンベア10の構成を模式的に示す図である。付着物剥離装置付きベルトコンベア10は、被搬送物Pを搬送するベルトコンベア2に、ベルトコンベア用の付着物剥離装置1が設置されてなる搬送装置である。又、通常、搬送ベルト21が搬送面を上に向けて走行する領域の始端部近傍の上方には、ベルトコンベア2に被搬送物Pを投入するシューター3が設置されている。
【0017】
付着物剥離装置付きベルトコンベア10においては、搬送対象の被搬送物Pの大部分は、ベルトコンベア2の上段側の終端部において、重力により落下し、被搬送物P1として被搬送物回収装置4に回収される。
【0018】
ベルトコンベア用の付着物剥離装置1は、ベルトコンベア2の下段側の回送路の下方の位置に設置され、下向きの搬送面に付着している被搬送物(付着物)P2をスクレーパによって掻き取って落下させる機能を有する。掻き取られた被搬送物(付着物)P2は、適宜、付着物回収装置5に回収される。
【0019】
ベルトコンベア用の付着物剥離装置1は、
図2に示すように、方形枠状の本体部11と、本体部11の第1側壁部111の上辺に設置されているスクレーパ12、本体部11の第2側壁部112A及び第3側壁部112Bのそれぞれの上辺の中間部に設置されている一組の掛止部13、及び、第4側壁部113に垂下されているバランスウエイト14により構成される。
【0020】
本体部11は、
図2に示すように、第1乃至第4側壁部(第1側壁部111、第2側壁部112A、第3側壁部112B、第4側壁部113)が、互いに直角に連接されて方形枠状に形成されたものである。第1側壁部111の両端に第2側壁部112Aと第3側壁部112Bとが、それぞれ第1側壁部111に直角に連接していて、第2側壁部112Aと第3側壁部112Bとは互いに平行に対面している。そして、第2側壁部112Aと第3側壁部112Bにおける第1側壁部111の連接部とは反対側の端部には、第4側壁部113が、第1側壁部111と平行に対面する態様で連接している。このような方形枠状の本体部11を形成する材料は、所望の強度、耐久性を有する材料であれば特に限定されないが、一般構造用圧延鋼材(いわゆるSS材)等を好ましく用いることができる。
【0021】
本体部11は、ベルトコンベア用の付着物剥離装置1において、以下に詳細を説明するスクレーパ12、掛止部13、及びバランスウエイト14等、各種の機能を発現する各構成部品を設置する台座部となり、又、掛止部13を支点、バランスウエイト14を力点とし、作用点となるスクレーパ12を、搬送ベルト21に押しつける梃子の役割を果たすベルトコンベア用の付着物剥離装置1の主要部分となる。
【0022】
尚、バランスウエイト14を垂下する第4側壁部113には、
図2に示すように、取り付け孔114が複数個形成されていることが好ましい。この取り付け孔114は、バランスウエイト14の垂下用ワイヤ141を連結させることができる貫通孔であればよい。又、必要に応じて必要な個数だけ垂下用ワイヤ141を連結させることができるように適切な複数個数の取り付け孔114が形成されていることが好ましい。
【0023】
スクレーパ12は、本体部11の第1側壁部111の上辺に設置されていて、搬送ベルト21が搬送面を下方に向けて走行する状態において、その先端側の側辺を当該搬送面に当接させて、当該搬送面に付着している被搬送物P2を掻き取って落下させる機能を有する構成部品である。
【0024】
スクレーパ12は、
図2及び
図3に示すような板状の部材であることが好ましい。このような板状の部材であるスクレーパ12は、その先端側の側辺を、支持棒24を支点とした梃子の原理により、搬送ベルト21の搬送面に適切な力で当接させることにより、スクレーパ12の先端側の側辺を、搬送ベルト21の搬送面に常時ほぼ隙間を空けることなく当接させることができる。これにより、付着物を十分に高い除去率で除去することができる。尚、スクレーパ12は、先端側に向けて板状の部材の厚みが次第に薄くなるように成型して、鋭角の刃先を備える形状としてもよい。
【0025】
スクレーパ12を形成する材料としては、付着物を掻き取る時の応力による破損が起こらないだけの強度を有するものであり、搬送ベルトを摩耗させにくいものであれば特に限定されないが、ゴム、塩化ビニル等のプラスチック、鋼材等の金属を好ましく用いることができる。これらの中でも、適度な強度と弾性を有することから、破損しにくく、搬送ベルトを摩耗させにくく、尚且つ、入手が容易で経済性にも優れる塩化ビニルを、スクレーパ12を形成する材料として好ましく用いることができる。
【0026】
掛止部13は、付着物剥離装置付きベルトコンベア10を構成する円柱状の支持棒24に掛止可能な形状の先端部を有する部材であって、第2側壁部112A及び第3側壁部112Bの上辺の中間部に設置されている。円柱状の支持棒24に掛止可能な形状の先端部とは、具体的には、
図3に示すような逆J字型のようなフック形状のことを言う。この逆J字型のようなフック形状からなる掛止部13の先端部は、その内周の形状が、支持棒24の外周の形状と係合して、ベルトコンベア用の付着物剥離装置1を、支持棒24の軸芯Oを回転軸として、回転搖動可能に掛止することができる形状であればよい。このような掛止部13を形成する材料としても、本体部11と同様、一般構造用圧延鋼材(いわゆるSS材)等を好ましく用いることができる。
【0027】
バランスウエイト14は、垂下用ワイヤ141と、これに連結されている錘部材142とからなる。垂下用ワイヤ141は、その一方の端部が本体部11の第4側壁部113に連結されている。この連結の態様は、落下の危険性を十分に小さくした上で、必要に応じて、簡易な手作業によって着脱可能な態様での連結とすることが好ましい。「着脱可能な態様での連結」の具体例としては、例えば、垂下用ワイヤ141の錘部材142との連結部分とは反対側の端部にフック状の掛止部を更に着接し、これを第4側壁部113の取り付け孔114に掛止させて、バランスウエイト14を垂下させる態様、或いは、垂下用ワイヤ141を第4側壁部113の取り付け孔114に縛り付けて、バランスウエイト14を垂下させる態様等を挙げることができる。一方、垂下用ワイヤ141の錘部材142側の端部についても、上記同様の態様で錘部材142に連結されていることが好ましい。
【0028】
垂下用ワイヤ141は、錘部材142の重量に対応した強度と耐久性を有する物であれば金属性のワイヤに代えてナイロン製ロープ等金属性以外の線状部材を用いることもできる。又、線状部材に限らず鎖状の部材を用いることもできる。尚、金属性のワイヤを用いる場合には、線径が3mm程度の番線を特に好ましく用いることができる。このような番線は、十分な強度を有し、上記態様で縛りつけた場合に、外れ難く、且つ、着脱が容易であるからである。
【0029】
錘部材142は、必要な重量を保持することができる材料からなる錘であればよく、
図4に示すように、垂下用ワイヤ141を連結させるための貫通孔143が形成されているものであることが好ましい。錘部材142は、例えば、使用済の配管用のステンレス材を適切なサイズに裁断した極めて廉価な廃材を再利用することによって形成することもできる。又、SS製のフランジを好適に用いることもできる。
【0030】
ベルトコンベア用の付着物剥離装置1には、
図2に示すような跳ね上がり防止用ワイヤ15が更に設置されていることが好ましい。適当な長さの跳ね上がり防止用ワイヤ15によって、第4側壁部113と、ベルトコンベア用の付着物剥離装置1を備えてなる付着物剥離装置付きベルトコンベア10の設置箇所の床等の設置面と繋いでおくことにより、スクレーパ12の搬送ベルト21の搬送面からの突発的で過剰な乖離と、これに伴って起こる第4側壁部113の過剰な跳ね上がりによる本体部11の搬送ベルト21の搬送面への不要な接触を防ぐことができる。又、上記の跳ね上がりによる支持棒24からの掛止部13の脱落を防止することができる。跳ね上がり防止用ワイヤ15としては、垂下用ワイヤ141と同様に、所望の強度と耐久性を有する物であれば、上記の金属性ワイヤ等、各種の線状の部材を用いることができる。
【0031】
ベルトコンベア2は、搬送路の始端と終端に配置された2個の回転ドラム22、23と、これらの両回転ドラム間を循環走行する帯状の無端ベルトである搬送ベルト21と、を備える。搬送ベルト21は、回転ドラム22、23を折り返し点とし、上段側の搬送路と下段側の回送路とからなる循環路をA方向に走行する。
【0032】
搬送ベルト21は、ベルトコンベア2の搬送路を構成する。搬送ベルト21は、その表面に、粉状或いは微粒状の被搬送物Pを載置した状態で所定の方向(例えば
図1におけるA方向)に走行することにより、被搬送物Pを搬送路の終端まで搬送する。
【0033】
ベルトコンベア2の回転ドラム22、23は、通常一方のドラム(例えば
図1における回転ドラム22)が駆動ドラムであり、他方のドラム(例えば
図1における回転ドラム23)が従動ドラムである。
【0034】
付着物剥離装置付きベルトコンベア10には、ベルトコンベア用の付着物剥離装置1を、ベルトコンベア2に掛止するための円柱状の支持棒24が設置されている。この支持棒24は、
図1に示すように、搬送ベルト21の下段側の回送路の下方の位置に、搬送ベルト21の走行方向に直交する向きで配置されている。支持棒24の配置態様は、ベルトコンベア2の搬送機能を阻害しない態様であって、これに掛止される付着物剥離装置1を安定的に支持できる配置態様であればよく、特に限定されない。例えば、ベルトコンベア2の両側面に配置される金属製フレームに溶接によって支持棒24の両端を接合する態様でこれを配置することができる。付着物剥離装置付きベルトコンベア10においては、
図1及び
図3に示すように、この支持棒24に、付着物剥離装置1が支持棒24の軸芯を回転軸とする回転揺動が可能な態様で掛止される。
【0035】
シューター3は、ベルトコンベア2の搬送ベルト21の上方に設置される被搬送物Pの投入装置である。シューター3は、例えば、被搬送物Pを一時的に貯留するための容器であるホッパーと、被搬送物Pを搬送ベルト21の表面に向けて排出するシュートとからなる。
【0036】
以上説明した構成からなるベルトコンベア10においては、
図3に示すように、支持棒24の軸心を支点Oとした梃子の原理によって、バランスウエイト14にかかる重力gを、スクレーパ12を搬送ベルトの搬送面に押し付ける上向きの力fとして作用させる。このとき、支点Oからの作用点及び力点までのそれぞれの距離l
1、l
2と、g、fの関係は、f×l
1=g×l
2となるので、予めl
1、l
2の比が最適範囲内となるように本体部11における掛止部13の設置位置を設計しておくことが好ましい。その上で、更に必要に応じて、gの値、即ち、バランスウエイト14を構成する錘部材142の重量や垂下するバランスウエイト14の個数を調整することで、スクレーパ12を搬送ベルト21に押し付ける力fを、常時、所望の大きさに維持することが容易に実現できる。
【0037】
尚、ベルトコンベア10の搬送ベルトは駆動する回転ドラム22に巻き付けられてその摩擦力で走行する他、搬送中の零れ防止や搬送量の確保等のために、中央部が下がった状態で撓んで使用されることが多い。このため、搬送ベルト21には可撓性のある物質、例えばゴムシートが用いられていて、これに起因して搬送面の垂直位置が微妙に変動する。又、搬送面に付着した付着物が特に固い場合には、搬送ベルト21が撓んでスクレーパ12を当接させるべき搬送面の垂直位置がスクレーパから遠ざかる方向に変動してしまうことがある。このような場合には、従来の除去装置においてはスクレーパによる除去が十分に行えなくなることがあった。しかしながら、本発明の付着物剥離装置付きベルトコンベア10においては、このような場合においても、梃子の原理を利用した上記作用効果により、常時、最適な力でスクレーパ12を搬送ベルト21に押し付けることができる。
【0038】
<酸化亜鉛鉱の製造プラントへの適用>
ウェルツ法による酸化亜鉛鉱の製造プラントは、鉄鋼ダスト等の亜鉛含有鉱を還元焙焼して粗酸化亜鉛ダストを得る還元焙焼工程、還元焙焼工程で得た粗酸化亜鉛ダストからフッ素及びカドミウムを分離除去して粗酸化亜鉛ケーキを得る湿式工程、湿式工程で得た粗酸化亜鉛ケーキを乾燥加熱して酸化亜鉛鉱(焼鉱)を得る乾燥加熱工程を順次行うプロセスを実施する工業プラントである。本発明の付着物剥離装置付きベルトコンベア10は、このような酸化亜鉛鉱の製造プラントにおいて、上述の通り、鉄鋼ダスト等の原材料を還元焙焼工程に搬送する装置、具体的には、還元焙焼キルンに装入する原料を、事前に炭材と混合造粒してペレットを作製する前処理工程における投入装置、搬出装置として、好ましく用いることができる。
【0039】
以上説明した構造からなる、本発明のベルトコンベア用の付着物剥離装置及び付着物剥離装置付きベルトコンベアは、以下の効果を奏する。
【0040】
(1)の発明、即ち、本発明のベルトコンベア用の付着物剥離装置によれば、梃子の原理を利用した構造により、スクレーパをベルトコンベアの搬送ベルトの搬送面に、適切な押しつけ力によって常時安定的に当接させることが可能となる。又、本体部に垂下するバランスウエイトの個数の調整や交換が容易な構造であることより、上記の押しつけ力を、被搬送物の物性やその他の操業条件に応じて簡単に調整することができる。又、このようにスクレーパの適切な当接によって搬送ベルトの搬送面から掻き落とした被搬送物を方形枠状の本体部の枠内の空間を通して速やかに下方の付着物回収装置内に落下させることができる。
【0041】
(2)の発明によれば、板状のスクレーパを塩化ビニルで形成することにより、(1)の発明における、スクレーパに適度な強度、弾性、及び、硬度が付与されることとなり、搬送ベルトの搬送面からの付着物の除去率を高い割合に維持しつつ、一方で、スクレーパとの接触に起因する搬送ベルト表面の損傷もより確実に防止することができる。
【0042】
(3)の発明、即ち、本発明の付着物剥離装置付きベルトコンベアによれば、(1)の発明と同様の効果を享受することができる。効果の一例として、付着物剥離装置付きベルトコンベアにおいて、板状のスクレーパを塩化ビニルで構成し、バランスウエイトの総重量を10kgとして、力のモーメントによりスクレーパを押し上げる力が5.2kg重となるように調整したものを実験的に稼働させた操業において、搬送ベルトの上段側搬送面の終端で回収できずに、ベルトコンベアの下段側の回送路において下向きの搬送面に付着していた被搬送物(付着物)のうち、90%以上の付着物を落下させて除去することができた。
【0043】
(4)の発明、即ち、跳ね上がり防止ワイヤを、更に備える、付着物剥離装置付きベルトコンベアによれば、(3)に記載の付着物剥離装置付きベルトコンベアの奏する上記効果を享受しつつ、更には、スクレーパ12の搬送ベルト21の搬送面からの突発的で過剰な乖離と、これに伴って起こる第4側壁部113の過剰な跳ね上がりによる本体部11の搬送ベルト21の搬送面への不要な接触を防ぐことができる。
【符号の説明】
【0044】
1 ベルトコンベア用付着物剥離装置
11 本体部
111 第1側壁部
112A 第2側壁部
112B 第3側壁部
113 第4側壁部
12 スクレーパ
13 掛止部
14 バランスウエイト
141 垂下用ワイヤ
142 錘部材
15 跳ね上がり防止ワイヤ
2 ベルトコンベア
21 搬送ベルト
22、23 回転ドラム
24 支持棒
3 シューター
4 被搬送物回収装置
5 付着物回収装置
P、P1、P2 被搬送物
10 付着物剥離装置付きベルトコンベア