(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-18
(45)【発行日】2022-04-26
(54)【発明の名称】光変調器
(51)【国際特許分類】
G02B 6/30 20060101AFI20220419BHJP
G02F 1/03 20060101ALI20220419BHJP
【FI】
G02B6/30
G02F1/03 505
(21)【出願番号】P 2018069370
(22)【出願日】2018-03-30
【審査請求日】2020-08-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000183266
【氏名又は名称】住友大阪セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100196058
【氏名又は名称】佐藤 彰雄
(74)【代理人】
【識別番号】100206999
【氏名又は名称】萩原 綾夏
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 孝知
(72)【発明者】
【氏名】石川 佳澄
(72)【発明者】
【氏名】高野 真悟
【審査官】堀部 修平
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-146242(JP,A)
【文献】実開平07-019711(JP,U)
【文献】特開2006-178388(JP,A)
【文献】特開平10-020146(JP,A)
【文献】特開2006-301597(JP,A)
【文献】特開2012-047865(JP,A)
【文献】特開2005-157088(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0117812(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/26 - 6/27
G02B 6/30 - 6/34
G02F 1/00 - 1/125
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気光学効果を有する基板と、
前記基板に設けられた光導波路と、
前記光導波路の一端に接着された光ファイバと、
前記光ファイバの端部に設けられた固定部材と、
前記光ファイバと前記基板とを接着する光学接着剤層と、を有し、
前記光導波路の一端は、前記基板の端面に配置され、
前記光学接着剤層は、前記光ファイバ、前記固定部材および前記基板を接着するとともに、前記光ファイバの端面と前記光導波路の一端とを光学的に結合し、
前記基板の端面に面する前記固定部材の面の表面粗さは、前記固定部材の面に面する前記基板の端面の表面粗さと異な
り、
前記固定部材の面に面する前記基板の端面の表面粗さRa1と、前記固定部材の面の表面粗さRa2との差は、0.2μm以上であり、
前記表面粗さRa1は0.2μm以下であり、
前記表面粗さRa2は0.4μm以上3μm以下である光変調器。
【請求項2】
前記固定部材の面の表面粗さは、前記固定部材の面に面する前記基板の端面の表面粗さよりも大きい請求項1に記載の光変調器。
【請求項3】
前記光ファイバの端面と前記基板の端面との離間距離は、前記固定部材の面と前記基板の端面との離間距離よりも大きい請求項1
又は2に記載の光変調器。
【請求項4】
前記固定部材は、前記光ファイバを挿通可能な貫通孔を有する筒状部材である請求項1から
3のいずれか1項に記載の光変調器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光変調器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、基板上に光導波路が形成された光変調素子が提案されている。光変調素子の光入出力は、光変調素子における入出力端に光学接着剤を用いて光ファイバを接着し、固定して行うことがある。以下、本明細書においては、光変調素子における入出力端に光ファイバが固定された構成を「光変調器」と称する。
【0003】
光ファイバは、光を伝搬するコア部と、コア部を中心として同心円状に形成されるクラッド部とを有する構成が知られている。光ファイバにおいて、コア部の直径は10μm程度であり、クラッド部まで含んだ光ファイバ全体の直径は125μm程度である構成が知られている。このような光ファイバの端部の面積は、光変調素子の端面の面積に比べて小さい。
【0004】
このため、従来の光変調器は、光ファイバの端部が光変調素子の端面に接着固定された場合、接着固定された部分(接着固定部)の接着強度が十分に確保できず、接着固定部に負荷がかかると光ファイバが外れるなどの問題が生じやすかった。
【0005】
このような課題に対し、光ファイバの端部に取り付ける治具を用い、光ファイバと治具とを一体として光変調素子に対する接着面積を増やし、光変調素子の端部に接着した構成の光変調器が知られている(例えば、特許文献1参照)。このような光変調器では、光ファイバの接着強度を高めるとともに、接着固定部の光ファイバにかかる負荷を低減することができる。本明細書においては、このような治具を「固定部材」と称する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
光変調素子の端部に光ファイバを固定する際には、光ファイバの端面と光導波路の端面とをサブミクロン以下の精度で正確に位置合わせし、光ファイバと光導波路との接続位置での光損失を抑制することが求められる。そのため、通常は、光学接着剤を介して光変調素子の端面と光ファイバが挿入された固定部材の端面とを突き合わせた後、光変調素子の端面の面内方向に光ファイバが挿入された固定部材の端面を移動させながら、光ファイバの端面と光導波路の端面との位置合わせ(光結合調整)を行う。これにより、光損失を抑制しながら光ファイバと光変調素子とを接続することができる。
【0008】
一方、光ファイバの端面や光変調素子の端面は、光信号の乱反射による損失を抑制するため、通常は鏡面加工がされている。そのため、光学接着剤を介して光ファイバの端面と光変調素子の端面とを突き合わせると、周囲の大気圧により端面同士が吸着し、固定され易くなる。このような吸着が生じると、光変調素子の端面の面内方向に光ファイバの端面を移動させにくく、光ファイバと光導波路との光結合調整が困難となっていた。
【0009】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであって、光ファイバと光導波路との光結合調整を容易に行うことが可能であり、光損失が抑制された光変調器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するため、本発明の一態様は、電気光学効果を有する基板と、前記基板に設けられた光導波路と、前記光導波路の一端に接着された光ファイバと、前記光ファイバの端部に設けられた固定部材と、前記光ファイバと前記基板とを接着する光学接着剤層と、を有し、前記光導波路の一端は、前記基板の端面に配置され、前記光学接着剤層は、前記光ファイバ、前記固定部材および前記基板を接着するとともに、前記光ファイバの端面と前記光導波路の一端とを光学的に結合し、前記基板の端面に面する前記固定部材の面の表面粗さは、前記固定部材の面に面する前記基板の端面の表面粗さと異なる光変調器を提供する。
【0011】
本発明の一態様においては、前記固定部材の面の表面粗さは、前記固定部材の面に面する前記基板の端面の表面粗さよりも大きい構成としてもよい。
【0012】
本発明の一態様においては、前記固定部材の面に面する前記基板の端面の表面粗さRa1と、前記固定部材の面の表面粗さRa2との差は、0.2μm以上である構成としてもよい。
【0013】
本発明の一態様においては、前記表面粗さRa1は0.2μm以下であり、前記表面粗さRa2は0.4μm以上3μm以下である構成としてもよい。
【0014】
本発明の一態様においては、前記光ファイバの端面と前記基板の端面との離間距離は、前記固定部材の面と前記基板の端面との離間距離よりも大きい構成としてもよい。
【0015】
本発明の一態様においては、前記固定部材は、前記光ファイバを挿通可能な貫通孔を有する筒状部材である構成としてもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、光ファイバと光導波路との光結合調整を容易に行うことが可能であり、光損失が抑制された光変調器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図2】光変調器1の平面視における一部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、
図1~
図5を参照しながら、本実施形態に係る光変調器について説明する。なお、以下の全ての図面においては、図面を見やすくするため、各構成要素の寸法や比率などは適宜異ならせてある。
【0019】
図1は、光変調器1の概略斜視図である。
図1,2に示すように、光変調器1は、基板10、光導波路20、補助部材111,112、光ファイバ31,32、固定部材41,42、光学接着剤層50を有している。
【0020】
なお、以下の説明においてはXYZ座標系を設定し、このXYZ座標系を参照しつつ各部材の位置関係を説明する。この際、基板10の厚さ方向をZ軸方向、基板10の長手方向をX軸方向、基板10の幅方向をY軸方向とする。
【0021】
ここで、本実施形態の光変調器1を「平面視」する視野とは、Z軸方向からの視野を意味する。
【0022】
基板10は、電気光学効果を有する材料を形成材料とする平面視矩形の板状部材である。基板10の形成材料としては、ニオブ酸リチウム(LiNbO3:LN)、タンタル酸リチウム(LiTaO3)、ジルコン酸チタン酸ランタン(PLZT)などの結晶材料を用いることができる。
【0023】
基板10の形成材料として結晶材料を用いる場合、結晶材料を形成材料とする板材に対するTi等の金属の熱拡散、エッチング加工によるリブ形成、プロトン交換などの公知の技術を用いることで、光導波路を形成することができる。
【0024】
また、基板10の形成材料として、有機非線形光学化合物を高分子材料中に分散させた有機電気光学高分子材料も用いることができる。
【0025】
基板10の形成材料として有機電気光学高分子材料を用いる場合、まず、シリコンや石英などを基材とし、屈折率の異なる2種以上の高分子材料を用いて、基材上に低屈折率層、高屈折率層および低屈折率層の順に積層する。このとき、高屈折率層や低屈折率層に対し、エッチング加工やインプリントによる成形を施すことにより、光導波路をパターニングする。基板10は、有機電気光学高分子材料を高屈折率層と低屈折率層の少なくとも一部に用いることにより形成することができる。
【0026】
光導波路20は、基板10上において基板10の長手方向に形成されている。
図1に示すように、本実施形態の光変調器1が有する光導波路20は、単一のマッハツェンダ型光導波路である。光導波路20の一端20aは、基板10の一端面10aに配置され、光導波路20の他端20bは、基板10の他端面10bに配置されている。
【0027】
光導波路20は、基板10の長手方向に延在する2本の平行な第1導波路21および第2導波路22を有している。光導波路20の一端20aから光導波路20の内部に入射した偏波は、第1導波路21および第2導波路22にそれぞれ分岐して伝播する。
【0028】
光変調器1は、平面視において、第1導波路21、第2導波路22の近傍に、不図示の信号電極と接地電極とを有している。信号電極および接地電極は、信号電極と接地電極との間に印加した電界により、光導波路20の屈折率を変化させる。これにより、光導波路20を伝播する直線偏光の変調を行う。
【0029】
信号電極および接地電極の種類は特に限定されない。例えば、LiNbO3など結晶基板を基板10として用いる電気光学素子では、コプレーナ線路を採用することが多い。また、有機電気光学高分子材料を用いた基板を基板10として用いる電気光学素子では、マイクロストリップ線路を採用することが多い。
【0030】
補助部材111,112は、基板10の表面に接着された板状の部材である。
【0031】
補助部材111は、平面視において基板10の長手方向の一端面10a側であって、光導波路20の一端20aと重なる位置に設けられている。
【0032】
補助部材112は、平面視において基板10の長手方向の他端面10b側であって、光導波路20の他端20bと重なる位置に設けられている。
【0033】
補助部材111の一端面111aは、基板10の一端面10a側の面と同一平面となるように設けられている。
【0034】
一端面111aと一端面10a側の面とを同一平面に形成する方法として、補助部材を設けた後にダイサーなどによる精密切断によって端面形成を行う方法や、端面を研磨し、平坦化する方法などが挙げられる。
【0035】
補助部材112の他端面112aは、基板10の他端面10b側の面と同一平面となるように設けられている。
【0036】
補助部材111,112の形成材料としては、基板10と同じ材料を用いることができる。また、補助部材111,112の形成材料としては、シリコン基板、ガラス基板、セラミックス基板なども用いることができる。
【0037】
補助部材111および補助部材112は、光ファイバ31および光ファイバ32と基板10との接続を容易にする機能を有している。すなわち、補助部材111の一端面111aによって、基板10の一端面10aを拡張することができ、光ファイバ31が接着された後述の固定部材41の接合端面全体を一端面10aに接合することができる。これにより、光ファイバ31と一端面10aとの接着強度を増加することができる。
【0038】
同様に、補助部材112の他端面112aによって、基板10の他端面10bを拡張することができ、光ファイバ32が接着された後述の固定部材42の接合端面全体を他端面10bに接合することができる。これにより、光ファイバ32と他端面10bとの接着強度を増加することができる。
【0039】
光ファイバ31は、光信号を伝搬するコアと、コアの外側に同心状に設けられたクラッドとを備える。
【0040】
光ファイバ31,32の直径は、例えば、125μm程度である。光ファイバ31,32のコアの直径は、例えば、10μm程度である。
【0041】
光ファイバ31は、筒状の固定部材41に挿入され、固定部材41とともに基板10の一端面10aに接着されている。このとき、光ファイバ31のコアは、光導波路20の一端20aと光学的に接続されている。固定部材41の形成材料としては、ガラスやセラミックスを用いることができる。
【0042】
同様に、光ファイバ32は、筒状の固定部材42に挿入され、固定部材42とともに基板10の他端面10bに接着されている。このとき、光ファイバ32のコアは、光導波路20の他端20bと光学的に接続されている。
【0043】
図2は、光変調器1の平面視における一部拡大図であり、固定部材41の周辺構造を説明する説明図である。
【0044】
固定部材41は、光ファイバ31の一端311に設けられた筒状部材である。固定部材41の端面41aは、基板10の一端面10aに面し、光学接着剤層50を介して基板10の一端面10aに接着されている。固定部材41が有する貫通孔411には、光ファイバ31が挿入されている。
【0045】
光学接着剤層50は、光ファイバ31、固定部材41および基板10を接着するとともに、光ファイバ31の端面31aと光導波路20の一端20aとを光学的に結合している。図では、光学接着剤層50が貫通孔411の内部に侵入し、光ファイバ31の端面31aに接触していることとしている。
【0046】
なお、光ファイバ31と固定部材41とは、光結合調整時に互いに固定されていてもよい。
また、光ファイバ31と固定部材41は、光結合調整時には互いに固定されておらず、固定部材41と基板10とを接着する際に、あわせて光ファイバ31と固定部材41とも固定されることとしてもよい。
【0047】
光学接着剤層50を構成する光学接着剤は、通常知られた材料を用いることができる。
【0048】
本発明の光変調器1においては、固定部材41の端面41aの表面粗さは、基板10の一端面10aの表面粗さと異なっている。そのため、光学接着剤を介して光ファイバ31の端面31aと基板10の一端面10aとを突き合わせたとしても、周囲の大気圧による端面同士の吸着が生じ難く、吸着が抑制されやすい。そのため、基板10の一端面10aの面内方向に光ファイバ31および固定部材41を移動させやすく、光ファイバ31と光導波路20との光結合調整が容易となる。
【0049】
本実施形態においては、固定部材41の端面41aの表面粗さは、固定部材41の端面41aに面する基板10の一端面10aの表面粗さよりも大きい。
【0050】
また、基板10の一端面10aの表面粗さを固定部材41の端面41aの表面粗さよりも大きくすることも可能である。しかし、基板10の一端面10aの表面粗さを大きくすると、光導波路20の一端20aの表面粗さが大きくなり、光信号を散乱させるおそれがある。対して、本実施形態のように固定部材41の端面41aの表面粗さを大きくすることにより、上述のような光導波路20の一端20aにおける光信号の散乱を抑制することができる。
【0051】
また、固定部材41と光ファイバ31とは個別の部材であるため、個別に加工し、それぞれの表面粗さを異なるように調整することができる。例えば、光ファイバ31の端面31aの表面粗さよりも固定部材41の端面41aの表面粗さを大きくした場合、光ファイバ31の端面31aにおける光信号の散乱を抑制することができる。
【0052】
基板10の一端面10aの表面粗さRa1と、固定部材41の端面41aの表面粗さRa2との差は、0.2μm以上であることが好ましい。
また、一端面10aの表面粗さRa1は0.2μm以下であり、端面41aの表面粗さRa2は0.4μm以上3μm以下であることが好ましい。
一端面10aの表面粗さRa1および端面41aの表面粗さRa2が上記範囲であると、各部材の加工が容易であり、光結合の調整が容易となる。
【0053】
なお、本実施形態において「表面粗さRa1」「表面粗さRa2」は、JIS B 0601に規定する方法で測定した「算術表面粗さRa」の値を採用する。
【0054】
光ファイバ31の端面31aは、
図2に示すように、貫通孔411の途中に位置していることが好ましい。光ファイバ31の端面31aは、光導波路20の一端20a側からの視野において、固定部材41の端面41aよりも窪んだ位置に配置している。すなわち、光ファイバ31の端面31aと基板10の一端面10aとの離間距離は、固定部材41の端面41aと基板10の一端面10aとの離間距離よりも大きい。
【0055】
このような構成を採用する光変調器1においては、光結合の調整の際に光ファイバ31の端面31aが傷付きにくく、光ファイバ31の端面31aでの光散乱を抑制することができる。
【0056】
固定部材42の端面42aの表面粗さと基板10の他端面10bの表面粗さとの関係は、上述した固定部材41の端面41aの表面粗さと、基板10の一端面10aの表面粗さとの関係と同様に制御すると好ましい。
【0057】
すなわち、固定部材42の端面42aの表面粗さは、基板10の他端面10bの表面粗さと異なっており、固定部材42の端面42aの表面粗さは、基板10の他端面10bの表面粗さよりも大きいことが好ましい。
基板10の他端面10bの表面粗さRa1と、固定部材42の端面42aの表面粗さRa2との差は、0.2μm以上であることが好ましい。
また、他端面10bの表面粗さRa1は0.2μm以下であり、端面42aの表面粗さRa2は0.4μm以上3μm以下であることが好ましい。
【0058】
このような構成とすることで、基板10の他端面10bの面内方向に光ファイバ32および固定部材42を移動させやすく、光ファイバ32と光導波路20との光結合調整が容易となる。
【0059】
固定部材41の端面41aの表面粗さと、固定部材42の端面42aの表面粗さとは、同じであっても異なっていてもよい。固定部材41の端面41aの表面粗さと、固定部材42の端面42aの表面粗さとが同じであると、固定部材41および固定部材42として同じ部材を使用可能となり好ましい。
【0060】
基板10の一端面10aの表面粗さと、他端面10bの表面粗さとは、同じであっても異なっていてもよい。一端面10aの表面粗さと、他端面10bの表面粗さとが同じであると、基板10の一端面10aと、他端面10bとに同じ加工を施すことで基板10を調整することが可能となるため、製造が容易となり好ましい。
本実施形態の光変調器1は、以上のような構成となっている。
【0061】
以上のような構成の光変調器1によれば、光ファイバ31と光導波路20との光結合調整を容易に行うことが可能であり、光損失が抑制された光変調器となる。
【0062】
なお、本実施形態においては、固定部材41の端面41aの表面粗さRa2が基板10の一端面10aの表面粗さRa1よりも大きいこととしたが、表面粗さRa2が表面粗さRa1よりも小さいこととしてもよい。
【0063】
また、本実施形態においては、筒状の固定部材41,42を用いることとしたが、これに限らない。
【0064】
例えば固定部材はV溝を有するブロックとして、当該V溝に光ファイバ31を固定する構成としてもよい。
【0065】
この場合、ブロックの端面の表面粗さが、基板10の端面の表面粗さと異なる構成とすることで、基板10の端面の面内方向に光ファイバ31および固定部材を移動させやすくなる。これにより、光ファイバ31と光導波路20との光結合調整が容易となる。
【0066】
また、本実施形態においては、光導波路20端部における光導波路の数および光ファイバ31の数はそれぞれ1つとしたが、それぞれ複数でもよい。
【0067】
基板10に形成された光導波路と、複数の光ファイバ31とは、ファイバーアレイ等のブロックを固定部材として用いて固定される構成が知られている。このように、光ファイバ31が複数になると、複数の光ファイバを保持する固定部材が大型化し、固定部材の端面も大きくなる。その結果、基板10の端面と固定部材の端面との間の吸着力が大きくなり、光結合の調整が困難になる傾向にある。
【0068】
このような構成に対し、本発明を適応し、固定部材の端面の表面粗さを基板の端面の表面粗さと異なる構成とすると、複数の光ファイバ31と複数の光導波路の端面との光結合調整を容易に行うことが可能となる。
【0069】
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施の形態例について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。上述した例において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0070】
例えば、補助部材111の一端面111aの表面粗さを、固定部材41の端面41aの表面粗さよりも小さくしてもよい。このような構成にすることで、補助部材111と固定部材41との吸着を抑制することができ、光ファイバと光導波路との光結合調整を容易に行うことが可能となる。
【0071】
同様に、補助部材112の一端面112aの表面粗さを、固定部材42の端面42aの表面粗さよりも小さくしてもよい。このような構成にすることで、補助部材112と固定部材42との吸着をより抑制することができ、光ファイバと光導波路との光結合調整を容易に行うことが可能となる。
【0072】
また、補助部材111の一端面111aの表面粗さは、基板10の一端面10aの表面粗さと同じであってもよい。同様に、補助部材112の一端面112aの表面粗さは、基板10の他端面10bの表面粗さと同じであってもよい。
【0073】
このような構成にすることで、補助部材の一端面における表面粗さと、基板10の端面における表面粗さとが一様になるため、固定部材の表面粗さとの差も一様になり、光ファイバと光導波路との光結合調整を容易に行うことが可能となる。
【0074】
また、
図2では光ファイバ31の端面31aと基板10の一端面10aとの離間距離は、固定部材41の端面41aと基板10の一端面10aとの離間距離よりも大きいが、当該離間距離が同じでもよい。言い換えると固定部材41の端面41aと基板10の一端面10aとが同一平面となるようにしてもよい。
【0075】
また、
図2の構成において、光ファイバ31の端面31aと基板10の一端面10aとの間にレンズなどの光学部品を配置してもよい。この場合、当該光学部品は、固定部材41の端面41aより窪んだ位置に配置される。
【0076】
【0077】
図3に示す固定部材43は、貫通孔431を有する筒状部材であり、一端側に貫通孔431の中心軸Pの方向の視野において貫通孔431に重なる溝432を有する。これにより、固定部材43の端面S1の面積は、溝432を有さない単純な円筒の端面の面積と比べて小さくなっている。
【0078】
図4に示す固定部材44は、貫通孔441を有する筒状部材であり、一端側に貫通孔441の中心軸Pの方向の視野において貫通孔441に重なりX字状に交差する溝442を有する。これにより、固定部材44の端面S2の面積は、溝442を有さない単純な円筒の端面の面積と比べて小さくなっている。
【0079】
図5に示す固定部材45は、貫通孔451を有する筒状部材であり、一端側の外周縁452が面取りされている。これにより、固定部材45の端面S3の面積は、面取りされていない単純な円筒の端面の面積と比べて小さくなっている。
【0080】
これら固定部材43~45においては、光学接着剤を介して基板の端面と突き合わせた際に、基板の端面に吸着したとしても、単純な円筒状の固定部材と比べて吸着の強度が小さくなる。そのため、固定部材43~45を用いて光ファイバを固定すると、基板の端面の面内方向に光ファイバの端面を移動させやすく、光ファイバと光導波路との光結合調整が容易となる。
【符号の説明】
【0081】
1…光変調器、10…基板、20…光導波路、20a,311…一端、31,32…光ファイバ、31a,41a,S1,S2,S3…端面、41,42,43,44,45…固定部材、50…光学接着剤層、411,431,441,451…貫通孔