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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-18
(45)【発行日】2022-04-26
(54)【発明の名称】分岐部ホルダ及びワイヤハーネス
(51)【国際特許分類】
   H02G 3/04 20060101AFI20220419BHJP
   B60R 16/02 20060101ALI20220419BHJP
   F16L 3/10 20060101ALI20220419BHJP
   H01B 7/00 20060101ALI20220419BHJP
【FI】
H02G3/04 087
B60R16/02 623V
F16L3/10 A
H01B7/00 301
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018103249
(22)【出願日】2018-05-30
(65)【公開番号】P2019208325
(43)【公開日】2019-12-05
【審査請求日】2021-01-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000005083
【氏名又は名称】日立金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002583
【氏名又は名称】特許業務法人平田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 範行
【審査官】石坂 知樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-175686(JP,A)
【文献】特開2018-046616(JP,A)
【文献】特開2011-239617(JP,A)
【文献】特開2002-367439(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 3/04
B60R 16/02
F16L 3/10
H01B 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電線をシースで一括被覆したケーブルに取り付けられると共に、前記シースから延出された前記複数の電線を分岐する分岐部を保持する分岐部ホルダであって、
底壁と側壁とに囲まれた凹状の収容空間を有すると共に、
前記側壁には、前記シース側の前記複数の電線を前記収容空間に導入するための入口穴と、前記収容空間から前記複数の電線の一部を延出するための複数の出口穴と、が形成されており、
前記複数の電線が、前記収容空間に、前記底壁からの前記側壁の突出方向に重なった状態で収容され、
前記シース及び前記シースから延出された前記複数の電線を覆うように設けられた熱収縮チューブの前記複数の電線の延出側の端部に干渉することで、前記熱収縮チューブの前記複数の電線の延出側への移動を規制するチューブ規制部をさらに有する、
分岐部ホルダ。
【請求項2】
前記入口穴及び前記複数の出口穴は、前記底壁と反対側に開口するように形成されており、
前記入口穴及び前記複数の出口穴の少なくとも1つに、当該穴の開口周縁の前記側壁から当該穴の開口を狭める方向に突出し、前記電線を抜け止めする電線係止突起が設けられている、
請求項1に記載の分岐部ホルダ。
【請求項3】
複数の電線をシースで一括被覆してなり、前記シースから延出された前記複数の電線を分岐する分岐部を有するケーブルと、
前記分岐部を保持する分岐部ホルダと、
脂モールドからなり、前記分岐部ホルダを覆う分岐部アウターと、を備え、
前記分岐部ホルダは、
底壁と側壁とに囲まれた凹状の収容空間を有すると共に、
前記側壁には、前記シース側の前記複数の電線を前記収容空間に導入するための入口穴と、前記収容空間から前記複数の電線の一部を延出するための複数の出口穴と、が形成されており、
前記複数の電線が、前記収容空間に、前記底壁からの前記側壁の突出方向に重なった状態で収容され、
前記複数の電線は、外径の異なる電線を含み、最も外径の大きい前記電線が最も前記収容空間の開口側となるように、前記収容空間に配置されている、
ワイヤハーネス。
【請求項4】
前記複数の電線は、一対の第1電線と、前記第1電線よりも外径が小さい一対の第2電線と、を有しており、
前記収容空間において、前記底壁上に前記一対の第2電線が配置され、前記一対の第2電線上に前記一対の第1電線が配置されている、
請求項に記載のワイヤハーネス。
【請求項5】
前記シース及び前記シースから延出された前記複数の電線を覆うように設けられた熱収縮チューブをさらに備え、
前記分岐部ホルダは、前記熱収縮チューブの前記複数の電線の延出側の端部に干渉することで、前記熱収縮チューブの前記複数の電線の延出側への移動を規制するチューブ規制部を有する、
請求項3または4に記載のワイヤハーネス。
【請求項6】
前記熱収縮チューブは、内部に接着剤を有する接着剤付熱収縮チューブであり、
前記接着剤付熱収縮チューブと前記接着剤付熱収縮チューブから延出されている前記シースの周囲を覆うように設けられ、前記接着剤付熱収縮チューブよりも収縮開始温度が高い固定用熱収縮チューブをさらに備えた、
請求項に記載のワイヤハーネス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分岐部ホルダ及びワイヤハーネスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両用のワイヤハーネスとして、複数の電線をシースで一括して覆ったケーブルを用い、シースから延出した複数の電線を分岐させて異なる配線先へと配索するように構成されたものが知られている。
【0003】
特許文献1では、ウレタン成形により、ケーブルの分岐部分を覆う分岐部アウター(止水部)を形成したワイヤハーネスが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-91731号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、樹脂をモールドして分岐部アウターを形成する場合、金型に各電線を所望のレイアウトで配置した状態で、金型に樹脂を流し込むことになる。この樹脂を流し込む際に、電線にばたつきが生じて電線が分岐部アウターから飛び出したりする等の不具合が生じてしまう場合があった。
【0006】
そこで、本発明は、ケーブルの分岐部への樹脂モールドの際における電線のばたつきを抑制可能な分岐部ホルダ及びワイヤハーネスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決することを目的として、複数の電線をシースで一括被覆したケーブルに取り付けられると共に、前記シースから延出された前記複数の電線を分岐する分岐部を保持する分岐部ホルダであって、底壁と側壁とに囲まれた凹状の収容空間を有すると共に、前記側壁には、前記シース側の前記複数の電線を前記収容空間に導入するための入口穴と、前記収容空間から前記複数の電線の一部を延出するための複数の出口穴と、が形成されており、前記複数の電線が、前記収容空間に、前記底壁からの前記側壁の突出方向に重なった状態で収容される、分岐部ホルダを提供する。
【0008】
また、本発明は、上記課題を解決することを目的として、複数の電線をシースで一括被覆してなり、前記シースから延出された前記複数の電線を分岐する分岐部を有するケーブルと、前記分岐部を保持する分岐部ホルダと、前記樹脂モールドからなる分岐部アウターと、を備え、前記分岐部ホルダは、底壁と側壁とに囲まれた凹状の収容空間を有すると共に、前記側壁には、前記シース側の前記複数の電線を前記収容空間に導入するための入口穴と、前記収容空間から前記複数の電線の一部を延出するための複数の出口穴と、が形成されており、前記複数の電線が、前記収容空間に、前記底壁からの前記側壁の突出方向に重なった状態で収容される、ワイヤハーネスを提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ケーブルの分岐部への樹脂モールドの際における電線のばたつきを抑制可能な分岐部ホルダ及びワイヤハーネスを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施の形態に係るワイヤハーネスが用いられた車両の構成を示す模式図である。
図2】ワイヤハーネスに用いるケーブルの断面図である。
図3】ワイヤハーネスの分岐部を示す斜視図である。
図4図3において、分岐部アウターを省略した斜視図である。
図5】ワイヤハーネスの断面図である。
図6】(a),(b)は、本発明の一実施の形態に係る分岐部ホルダの斜視図である。
図7】(a)~(c)は、分岐部ホルダの製造を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[実施の形態]
以下、本発明の実施の形態を添付図面にしたがって説明する。
【0012】
(ワイヤハーネスを適用する車両の説明)
図1は、本実施の形態に係るワイヤハーネスが用いられた車両の構成を示す模式図である。
【0013】
車両1は、車体10に4つのタイヤハウス100を有し、2つの前輪11及び2つの後輪12がそれぞれのタイヤハウス100内に配置されている。本実施の形態では、車両1が前輪駆動車であり、前輪11がエンジンや電動モータからなる図略の駆動源の駆動力を受けて駆動される。すなわち、本実施の形態では、前輪11が駆動輪であり、後輪12が従動輪である。
【0014】
また、車両1は、2つの電動パーキングブレーキ装置130と、制御装置14とを有している。電動パーキングブレーキ装置130は、2つの後輪12のそれぞれに対応して設けられ、制御装置14から供給される電流によって作動して、後輪12に制動力を発生させる。制御装置14は、車室内に設けられたパーキングブレーキ作動スイッチ140の操作状態を検出可能であり、運転者は、このパーキングブレーキ作動スイッチ140をオン/オフ操作することで、電動パーキングブレーキ装置130の作動状態と非作動状態とを切り替えることが可能である。
【0015】
例えば、停車時おいて運転者がパーキングブレーキ作動スイッチ140をオフ状態からオン状態にすると、制御装置14は、所定時間(例えば1秒間)にわたって電動パーキングブレーキ装置130を作動させるための作動電流を出力する。これにより、電動パーキングブレーキ装置130が作動し、後輪12に制動力を発生させる。この電動パーキングブレーキ装置130の作動状態は、制御装置14から電動パーキングブレーキ装置130を非作動状態にするための電流が出力されるまで維持される。このように、電動パーキングブレーキ装置130は、主として車両1の停止後に制動力を発生させる。
【0016】
制御装置14は、運転者の操作によってパーキングブレーキ作動スイッチ140がオン状態からオフ状態にされた場合に、電動パーキングブレーキ装置130を非作動状態にするための電流を出力する。なお、制御装置14は、パーキングブレーキ作動スイッチ140がオフ状態にされた場合の他、例えばアクセルペダルが踏込操作された場合にも、電動パーキングブレーキ装置130を非作動状態にするための電流を出力する。
【0017】
また、前輪11及び後輪12には、車輪速を検出するための車輪速センサ(ABSセンサ)131が設けられている。車輪速センサ131は、それ自体は周知のものであり、前輪11又は後輪12と共に回転する環状の磁気エンコーダの磁界を検出する磁界検出素子を有し、この磁界の向きが変化する周期によって車輪速(前輪11又は後輪12の回転速度)を検出する。
【0018】
制御装置14と、前輪11の車輪速センサ131とは、複数の電線からなる前輪用電線群151、及び前輪用ワイヤハーネス152によって電気的に接続されている。前輪用電線群151と前輪用ワイヤハーネス152とは、車体10に固定された中継ボックス153内で接続されている。中継ボックス153は、左右一対の前輪11のそれぞれの近傍に配置されている。
【0019】
また、制御装置14と、後輪12の電動パーキングブレーキ装置130及び車輪速センサ131とは、複数の電線からなる後輪用電線群154、及び本実施の形態に係るワイヤハーネス2によって電気的に接続されている。後輪用電線群154とワイヤハーネス2とは、車体10に固定された中継ボックス155内で接続されている。中継ボックス155は、左右一対の後輪12のそれぞれの近傍に配置されている。
【0020】
前輪用電線群151は、束ねられた状態で車体10に設けられた配線路150に配置されている。また、後輪用電線群154も、前輪用電線群151と同様に、束ねられた状態で車体10に設けられた配線路150に配置されている。
【0021】
前輪用ワイヤハーネス152は、一端部が前輪11の車輪速センサ131に接続され、他端部が中継ボックス153に収容されている。後輪用のワイヤハーネス2は、一端部が後輪12の電動パーキングブレーキ装置130及び車輪速センサ131に接続され、他端部が中継ボックス155に収容されている。前輪用ワイヤハーネス152及び後輪用のワイヤハーネス2には、車両1の走行に伴う前輪11及び後輪12の車体10に対する上下動に応じて屈曲されるので、高い屈曲耐久性が要求される。
【0022】
(ワイヤハーネス2に用いるケーブルの説明)
図2は、ワイヤハーネス2に用いるケーブル3の断面図である。ケーブル3は、複数の電線をシース33で一括被覆して構成されている。
【0023】
より詳細には、ケーブル3では、一対の信号線32は、互いに撚り合わせられている。ケーブル3では、撚り合わせた一対の信号線32と、一対の電源線31と、介在34とが撚り合わせられており、その周囲に螺旋状に押さえ巻きテープ35を巻き付けられている。押さえ巻きテープ35の外周には、シース33が被覆されている。電源線31及び信号線32は、本発明の電線の一態様である。また、電源線31は、本発明の第1電線の一態様であり、信号線32は、本発明の第2電線の一態様である。
【0024】
一対の電源線31の一端部には、電動パーキングブレーキ装置130との接続のための第1電源コネクタ(不図示)が取り付けられ、一対の電源線31の他端部には、中継ボックス155内における後輪用電線群154との接続のための第2電源コネクタ(不図示)が取り付けられている。
【0025】
一対の信号線32には、一端部に車輪速センサ131が取り付けられ、他端部には中継ボックス155内における後輪用電線群154との接続のための信号線接続コネクタ(不図示)が取り付けられている。
【0026】
一対の電源線31は、電動パーキングブレーキ装置130に電流を供給するために用いられる。一対の信号線32は、車輪速センサ131の検出信号を制御装置14に伝送するために用いられる。つまり、一対の信号線32は、車両1の走行時に、車両1の走行状態を示す車両状態量の検出信号を制御装置14に伝送する。
【0027】
一対の電源線31は、銅等の良導電性の導線からなる中心導体310を絶縁性の樹脂からなる絶縁体311で被覆した絶縁電線である。中心導体310は、複数の素線からなる撚線である。絶縁体311は、例えば架橋PE(ポリエチレン)又は難燃架橋PE(ポリエチレン)からなる。
【0028】
信号線32は、銅等の良導電性の導線からなる中心導体320を絶縁性の樹脂からなる絶縁体321で被覆した絶縁電線である。中心導体320は、複数の素線からなる撚線である。絶縁体321は、例えば架橋PE(ポリエチレン)又は難燃架橋PE(ポリエチレン)からなる。信号線32の外径は、電源線31の外径よりも小さい。このように、本実施の形態では、ケーブル3は、外径の異なる電線を含んでいる。
【0029】
電源線31及び信号線32は、シールド導体により被覆されていない。つまり、電源線31と信号線32との間には、電磁波を遮蔽する導電性の部材が配置されていない。これは、電源線31に電流が流れるのは主として車両1の停車中であり、信号線32が電気信号を伝送するのは主として車両1の走行中であるため、信号線32と電源線31との間には、シールド導体を設ける必要がないことに着目したものである。つまり、一対の電源線31に電流が流れた場合、この電流により発生する電磁波は、一対の信号線32の電位差に影響を及ぼし得るが、制御装置14は、車速がゼロである車両1の停車中には、信号線32の電気信号を無視することができ、車両1の走行に悪影響を及ぼさないようにすることができる。また、信号線32がシールド導体に被覆されていないことにより、ケーブル3の柔軟性が増し、屈曲性が高まると共に、ケーブル3の軽量化ならびに低コスト化にも寄与することができる。
【0030】
シース33は、絶縁性の樹脂からなる。本実施の形態では、シース33は、柔軟性及び耐久性に優れた軟質の熱可塑性ウレタンからなる。
【0031】
(分岐部の構成)
図3は、ワイヤハーネス2の分岐部を示す斜視図である。図4は、図3において、分岐部アウターを省略した斜視図である。図5は、ワイヤハーネス2の断面図である。
【0032】
図3乃至図5に示すように、本実施の形態に係るワイヤハーネス2では、ケーブル3は、シース33から延出された複数の電線(一対の電源線31及び一対の信号線32)を分岐する分岐部3aを有している。
【0033】
ワイヤハーネス2は、分岐部3aを保持し、分岐部3aを覆う樹脂モールドを形成する際に分岐部3aにおける複数の電線(一対の電源線31及び一対の信号線32)を保護する分岐部ホルダ4と、分岐部3aを覆う樹脂モールドからなる分岐部アウター5と、を備えている。
【0034】
分岐部ホルダ4は、分岐部アウター5を樹脂モールドにより形成する際に、分岐部3aを保護すると共に、樹脂の流れにより各電線(一対の電源線31及び一対の信号線32)がばたつくことを抑制するように保持する役割を果たす部材である。分岐部ホルダ4の詳細については、後述する。
【0035】
(分岐部アウター5)
分岐部アウター5は、分岐部3aを保護すると共に、分岐部3aにおいて一対の電源線31及び一対の信号線32を固定することで、一対の電源線31及び一対の信号線32の延出方向を固定する役割を果たす部材である。分岐部アウター5は、樹脂モールドにより形成されている。本実施の形態では、分岐部アウター5として、熱可塑性ウレタンからなるものを用いた。
【0036】
分岐部アウター5は、シース33の端部の周囲を覆うシース囲繞部51と、一対の電源線31の延出部分の周囲を一括して覆う電源線囲繞部52と、一対の信号線32の周囲を一括して覆う信号線囲繞部53と、分岐部ホルダ4を覆うホルダ囲繞部54と、を一体に有している。シース囲繞部51、電源線囲繞部52、及び信号線囲繞部53は、ホルダ囲繞部54から突出するようにそれぞれ設けられている。
【0037】
本実施の形態では、一対の信号線32の信号線囲繞部53からの延出方向は、シース囲繞部51内におけるシース33の長手方向と平行である。一対の電源線31の電源線囲繞部52からの延出方向は、一対の電源線31の電源線囲繞部52からの延出方向に対して傾斜(交差)している。一対の電源線31は、この傾斜の角度に応じて分岐部アウター5内(分岐部ホルダ4内)で屈曲されている。そして、この延出方向の傾斜により、車両1のタイヤハウス100内での一対の電源線31及び一対の信号線32の配索が容易化されている。
【0038】
シース囲繞部51は、略円筒状に形成されている。シース囲繞部51は、ホルダ囲繞部54と隙間を介して対向する環状の突壁511を有している。この突壁511とホルダ囲繞部54間の隙間に、分岐部アウター5を車体等の周囲の部材に固定するインシュロック等の固定部材(不図示)が設けられる。突壁511よりもシース33延出側のシース囲繞部51は、後述する固定用熱収縮チューブ7により覆われている。
【0039】
電源線囲繞部52は、略円筒状に形成されている。電源線囲繞部52の先端部には、径方向外方に突出する環状の係止壁521が形成されている。この係止壁521は、分岐部アウター5から延出された一対の電源線31の周囲を覆う保護用のコルゲートチューブを固定するためのものである。コルゲートチューブの端部は、電源線囲繞部52に挿し込まれ、係止壁521により係止されることで、分岐部アウター5に固定される。
【0040】
信号線囲繞部53は、略円筒状に形成されている。信号線囲繞部53の先端部には、径方向外方に突出する環状の係止壁531が形成されている。この係止壁531は、分岐部アウター5から延出された一対の信号線32の周囲を覆う保護用のコルゲートチューブを固定するためのものである。コルゲートチューブの端部は、信号線囲繞部53に挿し込まれ、係止壁531により係止されることで、分岐部アウター5に固定される。
【0041】
(熱収縮チューブ)
ワイヤハーネス2は、シース33及びシース33から延出された一対の電源線31及び一対の信号線32を覆うように設けられた熱収縮チューブである接着剤付熱収縮チューブ6と、接着剤付熱収縮チューブ6の固定用の固定用熱収縮チューブ7と、をさらに備えている。
【0042】
接着剤付熱収縮チューブ6は、熱収縮性を有する樹脂チューブ61と、樹脂チューブ61の内周面に設けられたホットメルト接着剤からなる接着剤層(不図示)と、を有している。本実施の形態では、ポリエチレンからなる樹脂チューブ61を用いた。接着剤層を構成するホットメルト接着剤としては、ポリアミドとポリエチレンからなるものを用いた。
【0043】
接着剤付熱収縮チューブ6の接着剤は、樹脂チューブ61を収縮させる際の熱により溶融して樹脂チューブ61、電源線31、信号線32、及びシース33間の隙間に入り込み、収縮後に硬化して樹脂チューブ61、電源線31、信号線32、及びシース33間の隙間を封止する。
【0044】
本実施の形態では、一対の電源線31と一対の信号線32とを有する4心のケーブル3を用いているため、例えば2心のケーブル等と比較して各電線間の隙間が大きくなる。そこで、本実施の形態では、各電線(一対の電源線31及び一対の信号線32)間の隙間を確実に封止できるように、接着剤付熱収縮チューブ6の接着剤に加えて別途接着剤を追加している。追加する接着剤としては、例えば、円環状に形成され、両電源線31及び両信号線32の周囲を囲うように配置可能なものを用いることができる。この円環状の接着剤は、接着剤付熱収縮チューブ6を収縮させる際の熱により溶融し、樹脂チューブ61内の空間を封止する。円環状の接着剤としては、接着剤付熱収縮チューブ6の接着剤と同じ成分のものを用いるとよく、ポリアミドとポリエチレンからなるものを用いることができる。
【0045】
接着剤付熱収縮チューブ6のシース33と重なる部分の長さL2は、5mm以上、好ましくは10mm以上とすることが望ましい。これは、長さL2が5mm未満と短いと、高温時にシース33から接着剤付熱収縮チューブ6が脱落するおそれが大きくなるためである。ここでは、長さL2を20mmとした。接着剤付熱収縮チューブ6のシース33と重ならない部分(つまりシース33から延出されている電源線31及び信号線32の周囲を覆う部分)の長さL1は、接着剤の封止により十分に防水性が確保できる程度の長さとすればよく、5mm以上、好ましくは10mm以上とすることが望ましい。ここでは、長さL1を10mmとした。
【0046】
固定用熱収縮チューブ7は、高温時における接着剤付熱収縮チューブ6の位置ずれを抑制するための部材であり、内部に接着剤(接着剤層)を有しておらず、樹脂チューブ71のみで構成されている。接着剤付熱収縮チューブ6は、固定用熱収縮チューブ7により押さえ込まれる必要があるため、その少なくとも一部が、分岐部アウター5から露出されている。
【0047】
固定用熱収縮チューブ7は、分岐部アウター5の一部(シース33延出側の端部)と、分岐部アウター5から露出されている接着剤付熱収縮チューブ6と、接着剤付熱収縮チューブ6から延出されているシース33の周囲と、を覆うように設けられている。固定用熱収縮チューブ7を構成する樹脂チューブ71の内周面は、分岐部アウター5端部の外周面、樹脂チューブ61の外周面、及びシース33の外周面に直接接触している。
【0048】
なお、固定用熱収縮チューブ7としては、接着剤付きのものを用いることはできない。これは、固定用熱収縮チューブ7として接着剤付きのものを用いた場合、高温時にその接着剤が溶融して潤滑油のように作用してしまい、接着剤付熱収縮チューブ6が収縮することによるケーブル長手方向に沿った移動を規制することができなくなり、接着剤付熱収縮チューブ6がシース33から脱落してしまうおそれがあるためである。
【0049】
また、本実施の形態では、固定用熱収縮チューブ7の収縮開始温度は、接着剤付熱収縮チューブ6の収縮開始温度よりも高い。固定用熱収縮チューブ7を収縮させる際には、熱により接着剤付熱収縮チューブ6の樹脂チューブ61の端部も同時に収縮する。このとき、固定用熱収縮チューブ7の収縮開始温度が接着剤付熱収縮チューブ6の収縮開始温度よりも低いと、接着剤付熱収縮チューブ6よりも先に固定用熱収縮チューブ7が収縮してしまい、収縮する固定用熱収縮チューブ7に押し出されて接着剤付熱収縮チューブ6に位置ずれが生じてしまったり、固定用熱収縮チューブ7の内部にて接着剤付熱収縮チューブ6(樹脂チューブ61)に皺がよってしまったりするおそれがある。接着剤付熱収縮チューブ6の位置ずれは、上述の距離L2の短縮による防水性の低下につながり、接着剤付熱収縮チューブ6の皺は、シース33及び樹脂チューブ71と樹脂チューブ61との間に隙間を生じさせて防水性の低下につながってしまう。
【0050】
本実施の形態のように固定用熱収縮チューブ7の収縮開始温度を接着剤付熱収縮チューブ6の収縮開始温度よりも高くすることで、固定用熱収縮チューブ7を収縮させる際に先に内側の接着剤付熱収縮チューブ6の樹脂チューブ61が収縮し、その後外側の固定用熱収縮チューブ7が収縮されることになるため、接着剤付熱収縮チューブ6の位置ずれや接着剤付熱収縮チューブ6の皺の発生を抑制し、防水性を高めることが可能になる。なお、収縮開始温度とは、樹脂チューブ61,71が収縮を開始する温度であり、その内径が収縮前の内径に対して1%以上収縮する温度をいう。
【0051】
また、固定用熱収縮チューブ7は、接着剤付熱収縮チューブ6よりも剛性が高い。これにより、接着剤付熱収縮チューブ6を強固に挟持して高温時の接着剤付熱収縮チューブ6の位置ずれを抑制し、接着剤付熱収縮チューブ6のシース33からの脱落を抑制することが可能になる。本実施の形態では、固定用熱収縮チューブ7の樹脂チューブ71として、半硬質のポリエチレンからなるものを用いた。
【0052】
さらに、固定用熱収縮チューブ7は、シース33よりも硬い材質からなる。なお、「固定用熱収縮チューブ7は、シース33よりも硬い材質からなる」とは、固定用熱収縮チューブ7とシース33とを同じ形状(例えば同じ内外径及び同じ長さの円筒状)とした場合に、シース33と比較して固定用熱収縮チューブ7の方がより曲げにくい(剛性が高い)ことを意味している。
【0053】
これにより、固定用熱収縮チューブ7の直近でケーブル3を曲げる配索レイアウトとするような場合であっても、固定用熱収縮チューブ7を設けた部分におけるケーブル3の屈曲を抑制すること(つまり曲げにくくすること)が可能になる。固定用熱収縮チューブ7を設けた部分でケーブル3を屈曲させると、曲げの外側で固定用熱収縮チューブ7とケーブル3との間に隙間が生じ易く防水性の観点から好ましくないが、固定用熱収縮チューブ7を設けた部分でケーブル3を曲げにくくすることで、このような隙間の発生を抑制し、防水性をより高めることが可能になる。
【0054】
(分岐部ホルダ4)
図6(a),(b)は、本実施の形態に係る分岐部ホルダ4の斜視図である。図3乃至図6に示すように、分岐部ホルダ4は、底壁41と、底壁41の周縁から、底壁41の表面に対して垂直な方向である上方に延びる側壁42と、底壁41と側壁42とに囲まれ上方に開口する凹状の収容空間43と、を有している。以下、説明の簡略化のため、底壁41からの側壁42の突出方向を上方といい、底壁41の表面に対して垂直な方向を上下方向というが、これらの方向は便宜上のものであり、ワイヤハーネス2の使用状態における分岐部3aの配置等を限定するものではない。
【0055】
側壁42には、シース33側の複数の電線(一対の電源線31及び一対の信号線32)を収容空間43に導入するための入口穴44と、収容空間43から複数の電線(一対の電源線31及び一対の信号線32)の一部を延出するための複数の出口穴45と、が形成されている。本実施の形態では、複数の出口穴45として、一対の電源線31を延出するための電源線出口穴451と、一対の信号線32を延出するための信号線出口穴452と、が側壁42に形成されている。入口穴44、電源線出口穴451、及び信号線出口穴452は、それぞれ上方(底壁41と反対側)に開口するように切欠き状に形成されている。なお、電源線出口穴451は、信号線出口穴452よりも大きい。
【0056】
また、側壁42には、側壁42を貫通するように複数のホルダ固定用穴48が形成されている。このホルダ固定用穴48は、分岐部アウター5の成形時に分岐部ホルダ4を金型(不図示)に固定するために用いられるものであり、金型に設けられたピン(不図示)が挿入されるものである。
【0057】
本実施の形態に係る分岐部ホルダ4では、収容空間43の底壁41上に、複数の電線(一対の電源線31及び一対の信号線32)が上下方向に重なった状態で収容される。つまり、分岐部ホルダ4では、複数の電線(一対の電源線31及び一対の信号線32)が、収容空間43に、底壁41からの側壁42の突出方向に重なった状態で収容される。本実施の形態では、複数の電線(一対の電源線31及び一対の信号線32)は、底壁41に直交する方向(底壁41の表面に対する法線方向)に重なった状態で、収容空間43内に配置される。
【0058】
より詳細には、本実施の形態では、一方の電源線31と一方の信号線32とが対となって上下に(底壁41に直交する方向に)重なると共に、他方の電源線31と他方の信号線32とが対となって上下に重なった状態となり、この上下に重なった電源線31と信号線32とが、収容空間43内で接触した状態で配置される。また、一対の電源線31同士、一対の信号線32同士も、収容空間43内で接触した状態で配置される。なお、本実施の形態では、収容空間43内において、電線が上下に重なっている部分(入口穴44の近傍)と、電線が上下に重なっていない部分(出口穴45の近傍)がある。
【0059】
例えば、1本1本の電線を個別に区画された収容室に収容することも考えられるが、この場合、分岐部ホルダ4が大型化してしまうおそれがある。また、収容室を縦横に配置した場合、収容室に電線を挿入する方向が1つの方向ではなくなり、例えばホルダを反転させて電線を挿入する等の作業が必要となり、作業性が低下するおそれがある。本実施の形態に係る分岐部ホルダ4では、ケーブル3を構成する全ての電線(一対の電源線31及び一対の信号線32)を1つの収容空間43に収容するため作業性が良好であり、かつ、電線を重ねた状態で1つの収容空間43に収容するため、収容空間43を区画する壁が不要となり分岐部ホルダ4の小型化が可能である。なお、例えば、収容空間43内で導体が露出している場合には、ショートを抑制するため電線を重ねて配置することは困難になるが、本実施の形態では、収容空間43内において導体が露出していないため、1つの収容空間43内に電線を上下方向に重ねた状態で配置することができる。
【0060】
本実施の形態では、収容空間43において、底壁41上に小径の一対の信号線32が配置され、その一対の信号線32上に大径の一対の電源線31が配置されている。つまり、より小径な一対の信号線32が、大径の一対の電源線31と底壁41に挟まれた状態となっている。小径の信号線32は、分岐部アウター5の成形時に樹脂の流れによってばたつきやすく、樹脂の流れを受けて分岐部ホルダ4の収容空間43からはみ出してしまうおそれがある。そこで、本実施の形態では、小径の信号線32を大径の電源線31で底壁41側に押さえつけることにより、信号線32のばたつきを抑制している。このように、ケーブル3が外径の異なる電線を含む場合には、細径な電線のばたつきを抑えるために、最も外径の大きい電線が最も収容空間43の開口側となるように各電線を配置することが望ましい。
【0061】
入口穴44には、一対の電源線31及び一対の信号線32が接着剤付熱収縮チューブ6で覆われた状態で配置される。分岐部ホルダ4は、接着剤付熱収縮チューブ6の先端部(複数の電線31,32の延出側の端部)に干渉することで、接着剤付熱収縮チューブ6の電線延出側への移動を規制するチューブ規制部46を有している。本実施の形態では、チューブ規制部46は、底壁41に形成された段差(貫通孔47周縁の段差)から構成されている。入口穴44の近傍の底壁41には、底壁41を貫通するように貫通孔47が形成されており、この貫通孔47を介して、分岐部アウター5を成形する際に収容空間43内に樹脂を導入し易くしている。
【0062】
入口穴44の底部は、接着剤付熱収縮チューブ6に沿うように湾曲した形状(半円形状)に形成されている。また、入口穴44には、入口穴44の開口周縁の側壁42から入口穴44の開口を狭める方向に突出し、電線(接着剤付熱収縮チューブ6で覆われた一対の電源線31及び一対の信号線32)を抜け止めするシース側電線係止突起44aが設けられている。
【0063】
電源線出口穴451の底部は、底壁41に平行に並ぶように配置された一対の電源線31の外径に沿う形状(略W字状)に形成されている。また、電源線出口穴451には、電源線出口穴451の開口周縁の側壁42から電源線出口穴451の開口を狭める方向に突出し、一対の電源線31を抜け止めする電源線側電線係止突起451aが設けられている。一対の電源線31は、電源線側電線係止突起451aと、電源線出口穴451の周囲の側壁42(上述の底部)とによって、しっかりと保持される。本実施の形態では、一対の電源線31が分岐部ホルダ4内で屈曲されるため、収容空間43には、入口穴44から挿入された一対の電源線31を屈曲して電源線出口穴451に導く湾曲部43aが形成されている。
【0064】
信号線出口穴452の底部は、底壁41に平行に並ぶように配置された一対の信号線32の外径に沿う形状(略W字状)に形成されている。また、信号線出口穴452には、信号線出口穴452の開口周縁の側壁42から信号線出口穴452の開口を狭める方向に突出し、一対の信号線32を抜け止めする信号線側電線係止突起452aが設けられている。一対の信号線32は、信号線側電線係止突起452aと、信号線出口穴452の周囲の側壁42(上述の底部)とによって、しっかりと保持される。
【0065】
分岐部ホルダ4は、分岐部アウター5と同じ材質である熱可塑性ウレタンからなる。分岐部ホルダ4と分岐部アウター5とを同じ材質とすることにより、分岐部ホルダ4と分岐部アウター5とが溶け合って密着するため、例えば外力が係った際に分岐部ホルダ4と分岐部アウター5とが分離し分岐部アウター5が破断してしまうといった不具合を抑制でき、分岐部アウター5を補強できる。また、熱可塑性ウレタンは比較的柔軟性を有しているため、電線係止突起44a,451a,452aがある場合であっても、入口穴44や出口穴45に電線を収容しやすく、ケーブル3を分岐部ホルダ4にセットする際の作業性も向上できる。
【0066】
分岐部ホルダ4を成型する際には、図7(a)に示すように、上型81と下型82とからなる金型を用い、図示しないゲート(樹脂流入口)から樹脂を流し込んで分岐部ホルダ4を形成する。この際、下側(下型82側)に収容空間43の開口が臨む姿勢で分岐部ホルダ4が成型される。その後、図7(b)に示すように、上型81を上方に移動させるが、この際に成型された分岐部ホルダ4が上型81側にくっつき上型81と共に移動してしまうと、成型装置を一時停止して上型81から分岐部ホルダ4を取り外す作業を行う必要が生じる。よって、作業性を向上するためには、成型後に上型81を上方に移動させる際に、成型後の分岐部ホルダ4を下型82側に残すことが臨まれる。
【0067】
本実施の形態では、電線係止突起44a,451a,452aを形成しているため、所謂アンダーカットの状態となっており、この電線係止突起44a,451a,452aに下型82の凸部82aが係止することにより、成型後の分岐部ホルダ4が上型81側にくっついてしまうことが抑制されている(図7では、一例として、電源線側電線係止突起451aのみを示している)。つまり、電線係止突起44a,451a,452aは、電線の抜け止めのみならず、分岐部ホルダ4の成型時の作業性を向上させる役割も果たしている。上型81を上方へ移動した後、図7(c)に示すように、成型後の分岐部ホルダ4を弾性変形させつつ下型82から取り外せば、分岐部ホルダ4が得られる。
【0068】
分岐部アウター5の成型時においては、ゲートから流れ込んだ高温の樹脂を直接電線(一対の電源線31及び一対の信号線32)に当てると、絶縁体311,321が溶けてしまう可能性があるため、ゲートの出口が分岐部ホルダ4の側壁42または底壁41と対向するように、金型を構成するとよい。本実施の形態では、図5における上側の側壁42とゲートの出口が対向するように金型を形成した。このように、分岐部ホルダ4は、分岐部アウター5の成型時に、高温の樹脂が直接電線(一対の電源線31及び一対の信号線32)にあたってしまうことを抑制する役割も果たしている。
【0069】
(実施の形態の作用及び効果)
以上説明したように、本実施の形態に係る分岐部ホルダ4では、底壁41と側壁42とに囲まれた凹状の収容空間43を有すると共に、側壁42には、シース33側の複数の電線(一対の電源線31及び一対の信号線32)を収容空間43に導入するための入口穴44と、収容空間43から複数の電線(一対の電源線31及び一対の信号線32)の一部を延出するための複数の出口穴45と、が形成されており、複数の電線(一対の電源線31及び一対の信号線32)が、収容空間43に、底壁41からの側壁42の突出方向に重なった状態で収容される。
【0070】
分岐部ホルダ4を用いて分岐部アウター5の成型(樹脂モールド)を行うことによって、成型の際における電線のばたつきや電線のダメージを抑制することが可能になる。また、分岐部ホルダ4では、複数の電線を1つの収容空間43に収容するため分岐部ホルダ4に分岐部3aを収容する際の作業性が良好である。また、分岐部ホルダ4では、複数の電線を重ねた状態で1つの収容空間43に収容するため、分岐部ホルダ4の小型化が可能である。
【0071】
(実施の形態のまとめ)
次に、以上説明した実施の形態から把握される技術思想について、実施の形態における符号等を援用して記載する。ただし、以下の記載における各符号等は、特許請求の範囲における構成要素を実施の形態に具体的に示した部材等に限定するものではない。
【0072】
[1]複数の電線(31,32)をシース(33)で一括被覆したケーブル(3)に取り付けられると共に、前記シース(33)から延出された前記複数の電線(31,32)を分岐する分岐部(3a)を保持する分岐部ホルダ(4)であって、底壁(41)と側壁(42)とに囲まれた凹状の収容空間(43)を有すると共に、前記側壁(42)には、前記シース(33)側の前記複数の電線(31,32)を前記収容空間(43)に導入するための入口穴(44)と、前記収容空間(43)から前記複数の電線(31,32)の一部を延出するための複数の出口穴(45)と、が形成されており、前記複数の電線(31,32)が、前記収容空間(43)に、前記底壁(41)からの前記側壁(42)の突出方向に重なった状態で収容される、分岐部ホルダ(4)。
【0073】
[2]前記入口穴(44)及び前記複数の出口穴(45)は、前記底壁(41)と反対側に開口するように形成されており、前記入口穴(44)及び前記複数の出口穴(45)の少なくとも1つに、当該穴の開口周縁の前記側壁(42)から当該穴の開口を狭める方向に突出し、前記電線(31,32)を抜け止めする電線係止突起(44a,451a,452a)が設けられている、[1]に記載の分岐部ホルダ(4)。
【0074】
[3]前記シース(33)及び前記シース(33)から延出された前記複数の電線(31,32)を覆うように設けられた熱収縮チューブ(6)の前記複数の電線(31,32)の延出側の端部に干渉することで、前記熱収縮チューブ(7)の前記複数の電線(31,32)の延出側への移動を規制するチューブ規制部(46)をさらに有する、[1]または[2]に記載の分岐部ホルダ(4)。
【0075】
[4]複数の電線(31,32)をシース(33)で一括被覆してなり、前記シース(33)から延出された前記複数の電線(31,32)を分岐する分岐部(3a)を有するケーブル(3)と、前記分岐部(3a)を保持する分岐部ホルダ(4)と、前記樹脂モールドからなる分岐部アウター(5)と、を備え、前記分岐部ホルダ(4)は、底壁(41)と側壁(42)とに囲まれた凹状の収容空間(43)を有すると共に、前記側壁(42)には、前記シース(33)側の前記複数の電線(31,32)を前記収容空間(43)に導入するための入口穴(44)と、前記収容空間(43)から前記複数の電線(31,32)の一部を延出するための複数の出口穴(45)と、が形成されており、前記複数の電線(31,32)が、前記収容空間(43)に、前記底壁(41)からの前記側壁(42)の突出方向に重なった状態で収容される、ワイヤハーネス(2)。
【0076】
[5]前記複数の電線(31,32)は、外径の異なる電線を含み、最も外径の大きい前記電線(31)が最も前記収容空間(43)の開口側となるように、前記収容空間(43)に配置されている、[4]に記載のワイヤハーネス(2)。
【0077】
[6]前記複数の電線(31,32)は、一対の第1電線(31)と、前記第1電線(31)よりも外径が小さい一対の第2電線(32)と、を有しており、前記収容空間(43)において、前記底壁(41)上に前記一対の第2電線(32)が配置され、前記一対の第2電線(32)上に前記一対の第1電線(31)が配置されている、[5]に記載のワイヤハーネス(2)。
【0078】
[7]前記シース(33)及び前記シース(33)から延出された前記複数の電線(31,32)を覆うように設けられた熱収縮チューブ(6)をさらに備え、前記分岐部ホルダ(4)は、前記熱収縮チューブ(6)の前記複数の電線(31,32)の延出側の端部に干渉することで、前記熱収縮チューブ(6)の前記複数の電線(31,32)の延出側への移動を規制するチューブ規制部(46)を有する、[4]乃至[6]の何れか1項に記載のワイヤハーネス(2)。
【0079】
[8]前記熱収縮チューブ(6)は、内部に接着剤を有する接着剤付熱収縮チューブ(6)であり、前記接着剤付熱収縮チューブ(6)と前記接着剤付熱収縮チューブ(6)から延出されている前記シース(33)の周囲を覆うように設けられ、前記接着剤付熱収縮チューブ(6)よりも収縮開始温度が高い固定用熱収縮チューブ(7)をさらに備えた、[7]に記載のワイヤハーネス(2)。
【0080】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上記に記載した実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。
【0081】
また、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変形して実施することが可能である。例えば、上記実施の形態では、一対の電源線31及び一対の信号線32を、それぞれ底壁41に対して平行な方向に並ぶように配置したが、これに限らず、一対の電源線31及び一対の信号線32を、それぞれ底壁41に対して垂直な方向に並ぶように配置してもよい。これにより、分岐部ホルダ4内でより小さい曲げ半径で一対の電源線31を曲げることが可能になるため、分岐部ホルダ4をより小型化することが可能になる。
【符号の説明】
【0082】
2…ワイヤハーネス
3…ケーブル
3a…分岐部
31…電源線(第1電線)
32…信号線(第2電線)
33…シース
4…分岐部ホルダ
41…底壁
42…側壁
43…収容空間
44…入口穴
44a…シース側電線係止突起
45…出口穴
451…電源線出口穴
451a…電源線側電線係止突起
452…信号線出口穴
452a…信号線側電線係止突起
46…チューブ規制部
5…分岐部アウター
6…接着剤付熱収縮チューブ(熱収縮チューブ)
7…固定用熱収縮チューブ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7