IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三菱レイヨン株式会社の特許一覧

特許7059828仕切り部材、組電池及び組電池の熱伝達制御方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-18
(45)【発行日】2022-04-26
(54)【発明の名称】仕切り部材、組電池及び組電池の熱伝達制御方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/651 20140101AFI20220419BHJP
   H01M 50/20 20210101ALI20220419BHJP
【FI】
H01M10/651
H01M50/20
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018122542
(22)【出願日】2018-06-27
(65)【公開番号】P2019102419
(43)【公開日】2019-06-24
【審査請求日】2021-02-17
(31)【優先権主張番号】P 2017231304
(32)【優先日】2017-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126505
【弁理士】
【氏名又は名称】佐貫 伸一
(74)【代理人】
【識別番号】100105407
【弁理士】
【氏名又は名称】高田 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】100151596
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 俊明
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 陽子
(72)【発明者】
【氏名】川井 友博
【審査官】寺谷 大亮
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-273348(JP,A)
【文献】特開2017-204358(JP,A)
【文献】国際公開第2016/152688(WO,A1)
【文献】特開2012-084347(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0331164(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/651
H01M 50/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一組の単電池間を仕切る仕切り部材、または一つの単電池と前記単電池以外の部材とを仕切る仕切り部材であって、
前記仕切り部材は、厚み方向と前記厚み方向に直交する面方向とを有するとともに前記面方向に夫々含まれる長軸方向と短軸方向とを有し、さらに、前記厚み方向において反対方向を向いた第1の面と第2の面とを有し、
前記仕切り部材の前記第1の面にある第1の点が150℃に達した場合において、前記第1の点と、前記第2の面内において、前記仕切り部材を前記厚み方向に二等分する分割面に対して前記第1の点と面対称の位置にある第2の点との温度の差に応じて定義される前記仕切り部材の前記厚み方向の単位面積当たりの熱抵抗(θd1)と、
前記第1の点と前記第2の点とを結ぶ直線と前記分割面とが交わる第1の交点における温度と、前記仕切り部材の前記長軸方向の長さの1/2の距離を前記第1の交点から前記長軸方向に進んだ位置にある、前記分割面上の点における温度との差に応じて定義される前記仕切り部材の前記面方向の単位面積当たりの熱抵抗(θp1)と、
前記第1の面全体を40℃にした場合において、前記第1の点と同じ位置にある第3の点と、前記第2の点と同じ位置にある第4の点との温度の差に応じて定義される前記仕切り部材の前記厚み方向の単位面積当たりの熱抵抗(θd2)と、
前記第3の点と前記第4の点とを結ぶ直線と前記分割面とが交わる第2の交点における温度と、前記仕切り部材の前記長軸方向の長さの1/2の距離を前記第2の交点から前記長軸方向に進んだ位置にある、前記分割面上の点における温度との差に応じて定義される前記仕切り部材の前記面方向の単位面積当たりの熱抵抗(θp2)とが下記式1を満たす仕切り部材。
0.03 ≦(θp1/θp2)/(θd1/θd2)< 1.0 ・・・(式1)
【請求項2】
厚み方向と前記厚み方向に直交する面方向とを有し、前記面方向に並んだn個(nは正の整数)の単電池の組と、前記面方向に並んだ前記n個の単電池の組と異なるm個(mは正の整数)の単電池の組、単電池以外の部材、及び前記m個の単電池と前記単電池以外の部材との組み合わせのいずれかとを仕切る仕切り部材であって、
前記仕切り部材は、前記面方向に夫々含まれる長軸方向と短軸方向とを有するとともに前記厚み方向において反対方向を向いた第1の面と第2の面とを有し、
前記n個の単電池の組は、前記第1の面に夫々接するとともに、第1の距離を空けて配置された第1の単電池と第3の単電池とを含み、前記m個の単電池の組は、前記第2の面に接し、前記第1の単電池と前記仕切り部材を介して対向する第2の単電池を含み、
前記第1の単電池が接する面全体を150℃とした場合に、前記第1の単電池が前記仕切り部材に接する面内の中心点から、前記長軸方向に、前記第3の単電池側に、前記第1の距離だけ進んだ第1の点と、前記第2の面内において、前記仕切り部材を前記厚み方向に二等分する分割面に対して前記第1の点と面対称の位置にある第2の点との温度の差に応じて定義される前記仕切り部材の前記厚み方向の単位面積当たりの熱抵抗(θd1)と、
前記第1の点と前記第2の点とを結ぶ直線と前記分割面が交わる第1の交点における温度と、前記分割面上の前記第1の交点から、前記分割面上において前記仕切り部材の前記面方向に、前記長軸方向において前記仕切り部材と前記第1の単電池とが接する長さの1/2であり且つ前記第1の距離より長い第2の距離を隔てた点における温度との差に応じて定義される前記仕切り部材の前記面方向の単位面積当たりの熱抵抗(θp1)と、
前記第1の単電池が接する面全体を40℃とした場合に、前記第1の点と同じ位置にある第3の点と、前記第2の点と同じ位置にある第4の点との温度の差に応じて定義される前記仕切り部材の前記厚み方向の単位面積当たりの熱抵抗(θd2)と、
前記第3の点と前記第4の点とを結ぶ直線と前記分割面とが交わる第2の交点における温度と、前記分割面上の前記第1の交点から、前記分割面上において前記仕切り部材の前記面方向に、前記第2の距離を隔てた点における温度との差に応じて定義される前記仕切り部材の前記面方向の単位面積当たりの熱抵抗(θp2)とが下記式1を満たす仕切り部材。
0.03 ≦(θp1/θp2)/(θd1/θd2)< 1.0・・・(式1)
【請求項3】
前記熱抵抗(θd1)と、前記熱抵抗(θp1)とが下記式2を満たす請求項1又は2に記載の仕切り部材。
θd1/θp1≧1.0 ×10・・・(式2)
【請求項4】
前記仕切り部材に接する前記単電池の厚みがL[mm]である場合に、厚みがL/50mm以上L/5mm以下である請求項1乃至3のいずれか1項に記載の仕切り部材。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の仕切り部材を含む組電池。
【請求項6】
前記仕切り部材の前記厚み方向の単位面積当たりの前記熱抵抗(θd1)が増加し、かつ面方向の単位面積当たりの前記熱抵抗(θp1)が減少して異常昇温した単電池から前記異常昇温した単電池に対して前記仕切り部材の前記厚み方向に対向する単電池へ伝わる熱量が制御される、請求項5に記載の組電池。
【請求項7】
一組の単電池間を仕切る仕切り部材、または一つの単電池と前記単電池以外の部材とを仕切る仕切り部材であって、
前記仕切り部材は、厚み方向と前記厚み方向に直交する面方向とを有するとともに前記面方向に夫々含まれる長軸方向と短軸方向とを有し、さらに、前記厚み方向において反対方向を向いた第1の面と第2の面とを有し、
前記仕切り部材の前記第1の面にある第1の点が150℃に達した場合において、前記第1の点と、前記第2の面内において、前記仕切り部材を前記厚み方向に二等分する分割面に対して前記第1の点と面対称の位置にある第2の点との温度の差に応じて定義される前記仕切り部材の前記厚み方向の単位面積当たりの熱抵抗(θd1)と、
前記第1の点と前記第2の点とを結ぶ直線と前記分割面とが交わる第1の交点における温度と、前記仕切り部材の前記長軸方向の長さの1/2の距離を前記第1の交点から前記長軸方向に進んだ位置にある、前記分割面上の点における温度との差に応じて定義される
前記仕切り部材の前記面方向の単位面積当たりの熱抵抗(θp1)と、
前記第1の面全体を40℃にした場合において、前記第1の点と同じ位置にある第3の点と、前記第2の点と同じ位置にある第4の点との温度の差に応じて定義される前記仕切り部材の前記厚み方向の単位面積当たりの熱抵抗(θd2)と、
前記第3の点と前記第4の点とを結ぶ直線と前記分割面とが交わる第2の交点における温度と、前記仕切り部材の前記長軸方向の長さの1/2の距離を前記第2の交点から前記長軸方向に進んだ位置にある、前記分割面上の点における温度との差に応じて定義される前記仕切り部材の前記面方向の単位面積当たりの熱抵抗(θp2)とが下記式1を満たして第1の単電池から前記仕切り部材を介して伝わる熱量を制御することを含む組電池の熱伝達制御方法。
0.03 ≦(θp1/θp2)/(θd1/θd2)< 1.0・・・(式1)
【請求項8】
厚み方向と前記厚み方向に直交する面方向とを有し、前記面方向に並んだn個(nは正の整数)の単電池の組と、前記面方向に並んだ前記n個の単電池の組と異なるm個(mは正の整数)の単電池の組、単電池以外の部材、及び前記m個の単電池と前記単電池以外の部材との組み合わせのいずれかとを仕切る仕切り部材であって、
前記仕切り部材は、前記面方向に夫々含まれる長軸方向と短軸方向とを有するとともに前記厚み方向において反対方向を向いた第1の面と第2の面とを有し、
前記n個の単電池の組は、前記第1の面に夫々接するとともに、第1の距離を空けて配置された第1の単電池と第3の単電池とを含み、前記m個の単電池の組は、前記第2面に接し、前記第1の単電池と前記仕切り部材を介して対向する第2の単電池を含み、
前記第1の単電池が接する面全体を150℃とした場合に、前記第1の単電池が前記仕切り部材に接する面内の中心点から、前記長軸方向に、前記第3の単電池側に、前記第1の距離だけ進んだ第1の点と、前記第2の面内において、前記仕切り部材を前記厚み方向に二等分する分割面に対して前記第1の点と面対称の位置にある第2の点との温度の差に応じて定義される前記仕切り部材の前記厚み方向の単位面積当たりの熱抵抗(θd1)と、
前記第1の点と前記第2の点とを結ぶ直線と前記分割面が交わる第1の交点における温度と、前記分割面上の前記第1の交点から、前記分割面上において前記仕切り部材の前記面方向に、前記長軸方向において前記仕切り部材と前記第1の単電池とが接する長さの1/2であり且つ前記第1の距離より長い第2の距離を隔てた点における温度との差に応じて定義される前記仕切り部材の前記面方向の単位面積当たりの熱抵抗(θp1)と、
前記第1の単電池が接する面全体を40℃とした場合に、前記第1の点と同じ位置にある第3の点と、前記第2の点と同じ位置にある第4の点との温度の差に応じて定義される前記仕切り部材の前記厚み方向の単位面積当たりの熱抵抗(θd2)と、
前記第3の点と前記第4の点とを結ぶ直線と前記分割面とが交わる第2の交点における温度と、前記分割面上の前記第1の交点から、前記分割面上において前記仕切り部材の前記面方向に、前記第2の距離を隔てた点における温度との差に応じて定義される前記仕切り部材の前記面方向の単位面積当たりの熱抵抗(θp2)とが下記式1を満たして前記第1の単電池から前記仕切り部材を介して伝わる熱量を制御する
ことを含む組電池の熱伝達制御方法。
0.03 ≦(θp1/θp2)/(θd1/θd2)< 1.0・・・(式1)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、仕切り部材、組電池及び組電池の熱伝達制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両等の電源としての使用が急増している二次電池について、車両等の限られた空間に搭載する際の自由度を向上させる目的や、一度の充電に対して走行可能な航続距離を伸ばす等の目的から、二次電池の高エネルギー密度化の検討が進められている。
【0003】
一方、二次電池の安全性はエネルギー密度とは相反する傾向にあり、高エネルギー密度を有する二次電池となるほど安全性は低下する傾向にある。例えば、航続距離が数百kmに及ぶような電気自動車に搭載される二次電池では、過充電や内部短絡等により二次電池が損傷した場合の電池表面温度が数百℃を超え、1000℃近くに及ぶ場合もある。
【0004】
車両等の電源に使用される二次電池は、一般に複数の単電池(以下、「セル」ともいう)から成る組電池として用いられるため、組電池を構成する単電池の一つが損傷して上記のような温度域に到達した場合、その発熱により隣接する単電池が損傷を受け、連鎖的に組電池全体に損傷が拡がるおそれがある。このような単電池間の損傷の連鎖を防ぐため、単電池と単電池の間に仕切り部材を設け、異常な発熱を生じた単電池から近隣の単電池に熱を速やかに移動させる技術や、損傷した単電池を冷却する技術が種々提案されている。
【0005】
例えば、特許文献1では、異常発熱した電池を冷却する方法が検討されている。具体的には、単電池の近傍に冷却材が収容された冷却ユニットを設け、該冷却ユニットにおいてシート状部分が封止されて形成された封止部を備え、かつ該封止部の一部に単電池が異常発熱した際に開封される開封部を設けた電池モジュールが開示されている。
【0006】
また、特許文献2では、異常発熱した電池を冷却するための冷却剤収納部の構造及び冷却剤放出機構についての検討がなされている。具体的には、複数の単電池で構成された電池ユニットと、少なくとも一方が開口端である収納部を有し、該収納部に該電池ユニットを収納する筐体と、開口部を有し、該筐体において、開口端を覆う蓋体と、吸熱材と、該吸熱材を内包する外装フィルムとを有し、該電池ユニットの側面に接触して設けられた吸熱部材と、を備え、該外層フィルムは樹脂層と該樹脂層の軟化温度よりも高い融点を有し、単電池の発熱により溶融する金属フィルムとの積層構造を有する電池モジュールが開示されている。
【0007】
更に、特許文献3では、電池間に設置した仕切り部材を溶融性の母材と熱硬化性樹脂で構成し、母材の溶融によって仕切り部材による熱伝導を抑制することで、異常発熱した電池から隣接する電池への熱伝達を抑制する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特許第5352681号公報
【文献】特許第4900534号公報
【文献】特許第5326480号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明者等がこれらの従来の技術を詳細に検討した結果、組電池を構成する単電池の発
熱量や、組電池を構成する電池以外の部材による伝熱の影響を定量的に考慮した上で、電池間の損傷の連鎖を防ぐために必要となる熱抵抗値についての検討は十分になされていないことがわかった。
【0010】
上記特許文献1では、異常発熱した電池を冷却する方法の詳細な検討はなされているが、異常発熱したセルの発熱量と冷却剤の冷却能についての定量的な検討はなされていない。また、上記特許文献2では、異常発熱した電池の発熱量と冷却剤の冷却能についての定量的な検討はなされていない。
【0011】
更に、上記特許文献3では、母材の溶融による仕切り部材の熱抵抗値の変化についての定量的な検討がなされてはおらず、仕切り部材の熱抵抗が変化する場合であっても、変化する温度域や変化前後の熱抵抗値等が適切に設計されていない場合、異常発熱した電池から隣接する電池の伝熱量の一部は抑制されるが、結果的に隣接する電池が異常発熱状態に到達することを防ぐことは困難であると考えられる。
【0012】
本発明は、組電池を構成する単電池間、または組電池を構成する単電池と単電池以外の部材との間の熱移動を制御することができる仕切り部材、組電池及び組電池の熱伝達制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者等はこれらの従来技術において十分に検討されていなかった電池間の損傷の連鎖を防ぐために必要となる熱抵抗値について着目し、その条件について詳細な検討を行った。その結果、厚み方向と厚み方向に直交する面方向とを有し、厚み方向において組電池を構成する単電池間、または組電池を構成する単電池と単電池以外の部材とを仕切る仕切り部材において、仕切り部材に接するいずれかの単電池が異常昇温した場合、及び仕切り部材に接するいずれかの単電池も異常昇温していない場合における、厚み方向及び面方向の熱抵抗値を適切に制御することが重要であることを見出し、本発明に至った。本発明は以下の通りである。
【0014】
本発明の態様の一つは、一組の単電池間を仕切る仕切り部材、または一つの単電池と前記単電池以外の部材とを仕切る仕切り部材であって、
前記仕切り部材は、厚み方向と前記厚み方向に直交する面方向とを有するとともに前記面方向に夫々含まれる長軸方向と短軸方向とを有し、さらに、前記厚み方向において反対方向を向いた第1の面と第2の面とを有し、
前記仕切り部材の前記第1の面にある第1の点が150℃に達した場合において、前記第1の点と、前記第2の面内において、前記仕切り部材を前記厚み方向に二等分する分割面に対して前記第1の点と面対称の位置にある第2の点との温度の差に応じて定義される前記仕切り部材の前記厚み方向の単位面積当たりの熱抵抗(θd1)と、
前記第1の点と前記第2の点とを結ぶ直線と前記分割面とが交わる第1の交点における温度と、前記仕切り部材の前記長軸方向の長さの1/2の距離を前記第1の交点から前記長軸方向に進んだ位置にある、前記分割面上の点における温度との差に応じて定義される前記仕切り部材の前記面方向の単位面積当たりの熱抵抗(θp1)と、
前記第1の面全体を40℃にした場合において、前記第1の点と同じ位置にある第3の点と、前記第2の点と同じ位置にある第4の点との温度の差に応じて定義される前記仕切り部材の前記厚み方向の単位面積当たりの熱抵抗(θd2)と、
前記第3の点と前記第4の点とを結ぶ直線と前記分割面とが交わる第2の交点における温度と、前記仕切り部材の前記長軸方向の長さの1/2の距離を前記第2の交点から前記長軸方向に進んだ位置にある、前記分割面上の点における温度との差に応じて定義される前記仕切り部材の前記面方向の単位面積当たりの熱抵抗(θp2)とが下記式1を満たす仕切り部材である。
0.03 ≦(θp1/θp2)/(θd1/θd2)< 1.0・・・(式1)
【0015】
本発明の他の態様は、厚み方向と前記厚み方向に直交する面方向とを有し、前記面方向に並んだn個(nは正の整数)の単電池の組と、前記面方向に並んだ前記n個の単電池の組と異なるm個(mは正の整数)の単電池の組、単電池以外の部材、及び前記m個の単電池と前記単電池以外の部材との組み合わせのいずれかとを仕切る仕切り部材であって、
前記仕切り部材は、前記面方向に夫々含まれる長軸方向と短軸方向とを有するとともに前記厚み方向において反対方向を向いた第1の面と第2の面とを有し、
前記n個の単電池の組は、前記第1の面に夫々接するとともに、第1の距離を空けて配置された第1の単電池と第3の単電池とを含み、前記m個の単電池の組は、前記第2面に接し、前記第1の単電池と前記仕切り部材を介して対向する第2の単電池を含み、
前記第1の単電池が接する面全体を150℃とした場合に、前記第1の単電池が前記仕切り部材に接する面内の中心点から、前記長軸方向に、前記第3の単電池側に、前記第1の距離だけ進んだ第1の点と、前記第2の面内において、前記仕切り部材を前記厚み方向に二等分する分割面に対して前記第1の点と面対称の位置にある第2の点との温度の差に応じて定義される前記仕切り部材の前記厚み方向の単位面積当たりの熱抵抗(θd1)と、
前記第1の点と前記第2の点とを結ぶ直線と前記分割面が交わる第1の交点における温度と、前記分割面上の前記第1の交点から、前記分割面上において前記仕切り部材の前記面方向に、前記長軸方向において前記仕切り部材と前記第1の単電池とが接する長さの1/2であり且つ前記第1の距離より長い第2の距離を隔てた点における温度との差に応じて定義される前記仕切り部材の前記面方向の単位面積当たりの熱抵抗(θp1)と、
前記第1の単電池が接する面全体を40℃とした場合に、前記第1の点と同じ位置にある第3の点と、前記第2の点と同じ位置にある第4の点との温度の差に応じて定義される前記仕切り部材の前記厚み方向の単位面積当たりの熱抵抗(θd2)と、
前記第3の点と前記第4の点とを結ぶ直線と前記分割面とが交わる第2の交点における温度と、前記分割面上の前記第1の交点から、前記分割面上において前記仕切り部材の前記面方向に、前記第2の距離を隔てた点における温度との差に応じて定義される前記仕切り部材の前記面方向の単位面積当たりの熱抵抗(θp2)とが下記式1を満たす仕切り部材である。
0.03 ≦(θp1/θp2)/(θd1/θd2)< 1.0・・・(式1)
【0016】
また、本発明は、上記仕切り部材を含む組電池であってもよい。さらに、本発明は、上記仕切り部材を含む組電池の熱伝達制御方法であってもよい。
【発明の効果】
【0017】
仕切り部材、組電池及び組電池の熱伝達制御方法によれば、組電池を構成する単電池間、または組電池を構成する単電池と単電池以外の部材との間の熱移動を制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1A】仕切り部材の厚み方向の熱抵抗について説明するための図である。
図1B】仕切り部材の面方向の熱抵抗について説明するための図である。
図1C】仕切り部材の面方向の熱抵抗について説明するための図である。
図2A】実施形態に係る仕切り部材構成例を示す平面図である。
図2B図2Aに示した仕切り部材をA-A線で切断した場合の端面を示す図である。
図2C】仕切り部材の内部に収容された流体保持部が有する流路の例を示す図である。
図3A】組電池を構成する単電池の一例を示す平面図である。
図3B】組電池を構成する単電池の一例を示す正面図である。
図3C】組電池を構成する単電池の一例を示す側面図である。
図4】複数の単電池を用いて形成された組電池を、単電池の端子を通る高さ方向の面で切断した場合の端面を示す図である。
図5】1つの単電池内で局所的な高温箇所が発生する第1のケースを模式的に示す図である。
図6】仕切り部材の厚み方向の二面のうちの一方に並列して配置される複数の単電池の一つが高温となる第2のケースを模式的に示す図である。
図7A】2セルから構成される2次元座標系簡易組電池モデルを例示する。
図7B】2セルから構成される2次元座標系簡易組電池モデルを例示する。
図8】4セルから構成される2次元座標系簡易組電池モデルを例示する。
図9A】比較例1-1におけるセル内部の温度変化を示すグラフである。
図9B】比較例1-1におけるセル21の仕切り部材側表面温度の推移を示すグラフである。
図9C】比較例1-1におけるセル22の仕切り部材側表面温度の推移を示すグラフである。
図9D】比較例1-1における仕切り部材内部の温度推移を示すグラフである。
図9E図9Dのグラフの一部を時間軸について拡大したグラフである。
図10A】比較例1-2におけるセル内部の温度変化を示すグラフである。
図10B】比較例1-2におけるセル21の仕切り部材側表面温度の推移を示すグラフである。
図10C】比較例1-2におけるセル22の仕切り部材側表面温度の推移を示すグラフである。
図10D】比較例1-2における仕切り部材内部の温度推移を示すグラフである。
図10E図10Dのグラフの一部を時間軸について拡大したグラフである。
図11A】実施例1-1におけるセル内部の温度変化を示すグラフである。
図11B】実施例1-1におけるセル21の仕切り部材側表面温度の推移を示すグラフである。
図11C】実施例1-1におけるセル22の仕切り部材側表面温度の推移を示すグラフである。
図11D】実施例1-1における仕切り部材内部の温度推移を示すグラフである。
図11E図12Dのグラフの一部を時間軸について拡大したグラフである。
図12A】比較例2-1におけるセル内部の温度変化を示すグラフである。
図12B】比較例2-1における仕切り部材のうちセル21とセル22に挟まれた部分の内部の温度推移を示すグラフである。
図12C】比較例2-1における仕切り部材のうちセル23とセル24に挟まれた部分の内部の温度推移を示すグラフである。
図12D図12Bに示す仕切り部材の内部温度の平均温度及び図13Cに示す仕切り部材の内部温度の平均温度の推移を示すグラフである。
図13A】比較例2-2におけるセル内部の温度変化を示すグラフである。
図13B】比較例2-2における仕切り部材のうちセル21とセル22に挟まれた部分の内部の温度推移を示すグラフである。
図13C】比較例2-2における仕切り部材のうちセル23とセル24に挟まれた部分の内部の温度推移を示すグラフである。
図13D図13Bに示す仕切り部材の内部温度の平均温度及び図13Cに示す仕切り部材の内部温度の平均温度の推移を示すグラフである。
図14A】実施例2-1におけるセル内部の温度変化を示すグラフである。
図14B】実施例2-1における仕切り部材のうちセル21とセル22に挟まれた部分の内部の温度推移を示すグラフである。
図14C】実施例2-1における仕切り部材のうちセル23とセル24に挟まれた部分の内部の温度推移を示すグラフである。
図14D図14Bに示す仕切り部材の内部温度の平均温度及び図14Cに示す仕切り部材の内部温度の平均温度の推移を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に本発明を詳細に説明する。以下に記載する説明は、本発明の実施例の一例であり、本発明はその要旨を超えない限り、実施例の内容に限定されない。
【0020】
一組の単電池間を仕切る仕切り部材、または一つの単電池と前記単電池以外の部材とを仕切る仕切り部材(本発明において、「本発明の第一の態様にかかる仕切り部材」と称することがある。)は、厚み方向と前記厚み方向に直交する面方向とを有するとともに前記面方向に夫々含まれる長軸方向と短軸方向とを有し、さらに、前記厚み方向において反対方向を向いた第1の面と第2の面とを有し、前記仕切り部材の前記第1の面にある第1の点が150℃に達した場合において、前記第1の点と、前記第2の面内において、前記仕切り部材を前記厚み方向に二等分する分割面に対して前記第1の点と面対称の位置にある第2の点との温度の差に応じて定義される前記仕切り部材の前記厚み方向の単位面積当たりの熱抵抗(θd1)と、前記第1の点と前記第2の点とを結ぶ直線と前記分割面とが交わる第1の交点における温度と、前記仕切り部材の前記長軸方向の長さの1/2の距離を前記第1の交点から前記長軸方向に進んだ位置にある、前記分割面上の点における温度との差に応じて定義される前記仕切り部材の前記面方向の単位面積当たりの熱抵抗(θp1)と、前記第1の面全体を40℃にした場合において、前記第1の点と同じ位置にある第3の点と、前記第2の点と同じ位置にある第4の点との温度の差に応じて定義される前記仕切り部材の前記厚み方向の単位面積当たりの熱抵抗(θd2)と、前記第3の点と前記第4の点とを結ぶ直線と前記分割面とが交わる第2の交点における温度と、前記仕切り部材の前記長軸方向の長さの1/2の距離を前記第2の交点から前記長軸方向に進んだ位置にある、前記分割面上の点における温度との差に応じて定義される前記仕切り部材の前記面方向の単位面積当たりの熱抵抗(θp2)とが下記式1を満たす。
0.03 ≦(θp1/θp2)/(θd1/θd2)< 1.0・・・(式1)
【0021】
また、厚み方向と前記厚み方向に直交する面方向とを有し、前記面方向に並んだn個(nは正の整数)の単電池の組と、前記面方向に並んだ前記n個の単電池の組と異なるm個(mは正の整数)の単電池の組、単電池以外の部材、及び前記m個の単電池と前記単電池以外の部材との組み合わせのいずれかとを仕切る仕切り部材(本発明において、「本発明の第二の態様にかかる仕切り部材」と称することがある。)は、前記仕切り部材は、前記面方向に夫々含まれる長軸方向と短軸方向とを有するとともに前記厚み方向において反対方向を向いた第1の面と第2の面とを有し、前記n個の単電池の組は、前記第1の面に夫々接するとともに、第1の距離を空けて配置された第1の単電池と第3の単電池とを含み、前記m個の単電池の組は、前記第2面に接し、前記第1の単電池と前記仕切り部材を介して対向する第2の単電池を含み、前記第1の単電池が接する面全体を150℃とした場合に、前記第1の単電池が前記仕切り部材に接する面内の中心点から、前記長軸方向に、前記第3の単電池側に、前記第1の距離だけ進んだ第1の点と、前記第2の面内において、前記仕切り部材を前記厚み方向に二等分する分割面に対して前記第1の点と面対称の位置にある第2の点との温度の差に応じて定義される前記仕切り部材の前記厚み方向の単位面積当たりの熱抵抗(θd1)と、前記第1の点と前記第2の点とを結ぶ直線と前記分割面が交わる第1の交点における温度と、前記分割面上の前記第1の交点から、前記分割面上において前記仕切り部材の前記面方向に、前記長軸方向において前記仕切り部材と前記第1の単電池とが接する長さの1/2であり且つ前記第1の距離より長い第2の距離を隔てた点における温度との差に応じて定義される前記仕切り部材の前記面方向の単位面積当たりの熱抵抗(θp1)と、前記第1の単電池が接する面全体を40℃とした場合に、前記第1の点と同じ位置にある第3の点と、前記第2の点と同じ位置にある第4の点との温
度の差に応じて定義される前記仕切り部材の前記厚み方向の単位面積当たりの熱抵抗(θd2)と、前記第3の点と前記第4の点とを結ぶ直線と前記分割面とが交わる第2の交点における温度と、前記分割面上の前記第1の交点から、前記分割面上において前記仕切り部材の前記面方向に、前記第2の距離を隔てた点における温度との差に応じて定義される前記仕切り部材の前記面方向の単位面積当たりの熱抵抗(θp2)とが下記式1を満たす。
0.03 ≦(θp1/θp2)/(θd1/θd2)< 1.0・・・(式1)
【0022】
単電池の一部または全体が熱暴走を開始する温度とは、当該単電池を高温状態で、一定雰囲気温度で保持する加熱試験をした場合、10時間保持しても熱暴走の発生が見られない上限温度である。従来型のリチウムイオン電池であれば、熱暴走を開始する温度は、簡略的に150℃(あるいは、130℃~180℃程度)としてもよい。また、定常状態において、単電池が仕切り部材と接する面の温度は、40℃とすることができる。
【0023】
上記仕切り部材であれば、仕切り部材の厚み方向の単位面積当たりの熱抵抗及び面方向の単位面積当たりの熱抵抗を制御することで、熱暴走を開始する温度以上に昇温した単電池から厚み方向への熱移動が抑制され、面方向への熱移動が促進される。したがって、熱暴走を開始する温度以上に昇温した単電池以外の単電池の熱暴走を回避することができる。
【0024】
なお、ある仕切り部材が本発明の第一の態様にかかる仕切り部材、或いは第二の態様にかかる仕切り部材に該当するかどうかは次のように確認すればよい。
【0025】
<第1の態様にかかる仕切り部材の確認方法>
[1.熱抵抗(θd1)及び熱抵抗(θp1)の決定]
1-1)確認の対象とする仕切り部材の一方の面におけるある領域を150℃に加熱する。この加熱した領域の中の点を第1の点とみなす。なお、この加熱方法はある一点を150℃に加熱することができる方法であればその方法は制限されない。
1-2)第1の点を基準として第2の点を決定する。
1-3)第1の点及び第2の点に基づいて後述の方法により熱抵抗(θd1)及び熱抵抗(θp1)を求める。
[2.熱抵抗(θd2)及び熱抵抗(θp2)の決定]
2-1)第1の点に基づき第3の点を決定する。この第3の点を含む面について面全体を40℃に加熱する。なお、この加熱方法はある面全体を40℃に加熱することができる方法であればその方法は制限されない。
2-2)第3の点を基準として第4の点を決定する。
2-3)第3の点及び第4の点に基づいて後述の方法により熱抵抗(θd2)及び熱抵抗(θp2)を求める。
[3.第1の態様にかかる仕切り部材の確認]
3-1)上記1-3)及び2-3)で求めた熱抵抗の値を用い、上記式1のいずれかを満たすかどうかを確認することにより第1の態様にかかる仕切る部材であるかどうかを確認することができる。
【0026】
<第2の態様にかかる仕切り部材の確認方法>
[1.熱抵抗(θd1)及び熱抵抗(θp1)の決定]
1-1)確認の対象とする仕切り部材の一方の面において第1の点を決定する。この第1の点を含む面全体を150℃に加熱する。なお、この加熱方法はある面全体を150℃に加熱することができる方法であればその方法は制限されない。
1-2)第1の点を基準として第2の点を決定する。
1-3)第1の点及び第2の点に基づいて後述の方法により熱抵抗(θd1)及び熱抵抗
(θp1)を求める。
[2.熱抵抗(θd2)及び熱抵抗(θp2)の決定]
2-1)第1の点に基づき第3の点を決定する。この第3の点を含む面について面全体を40℃に加熱する。なお、この加熱方法はある面全体を40℃に加熱することができる方法であればその方法は制限されない。
2-2)第3の点を基準として第4の点を決定する。
2-3)第3の点及び第4の点に基づいて後述の方法により熱抵抗(θd2)及び熱抵抗(θp2)を求める。
[3.第1の態様にかかる仕切り部材の確認]
3-1)上記1-3)及び2-3)で求めた熱抵抗の値を用い、上記式1のいずれかを満たすかどうかを確認することにより第2の態様にかかる仕切る部材であるかどうかを確認することができる。
【0027】
また、仕切り部材は、前記熱抵抗(θd1)と、前記熱抵抗(θp1)とが下記式2を満たすものであってもよい。
θd1/θp1≧1.0 ×10・・・(式2)
【0028】
また、仕切り部材は、前記仕切り部材に接する前記単電池の厚みがL[mm]である場合に、厚みがL/50mm以上L/5mm以下であってもよい。ここで、組電池を構成する単電池の厚み(L)について想定される範囲は、通常、10mm≦L≦100mm、好ましくは15mm≦L≦80mmである。
【0029】
また、本発明は、上記仕切り部材を含む組電池であってもよい。
【0030】
また、組電池は、前記仕切り部材の厚み方向の単位面積当たりの前記熱抵抗(θd1)が増加し、かつ面方向の単位面積当たりの前記熱抵抗(θp1)が減少して前記異常昇温した単電池から前記異常昇温した単電池に対して前記仕切り部材の厚み方向に対向する単電池へ伝わる熱量が制御されるものであってもよい。
【0031】
単電池を構成する電極や電解液等を構成する化学物質の一部ないし全てが、単電池内部で発熱を伴いながら分解反応を起こすことにより、単電池の温度が昇温し、単電池の一部ないし全領域が200℃以上になる場合がある。この状態を「異常昇温」又は「異常発熱」状態という。また、単電池を構成する電極や電解液等を構成する化学物質が、単電池200内部で一定以上の発熱速度を伴う分解反応を起こしていない状態を、「通常」状態という。
【0032】
上記組電池であれば、仕切り部材の厚み方向の単位面積当たりの熱抵抗が増加することにより、仕切り部材の厚み方向に対向する単電池への熱移動は抑制される。また、面方向の単位面積当たりの熱抵抗が減少することにより、異常昇温した単電池で発生した熱は、異常昇温していない単電池又は部材に面方向に移動する。異常昇温した単電池からの熱が、仕切り部材の厚み方向に対向する単電池以外の単電池又は部材に分散されるため、仕切り部材の厚み方向に対向する単電池が異常昇温状態となることが抑制される。
【0033】
また、本発明は、一組の単電池間を仕切る仕切り部材、または一つの単電池と前記単電池以外の部材とを仕切る仕切り部材であって、前記仕切り部材は、厚み方向と前記厚み方向に直交する面方向とを有するとともに前記面方向に夫々含まれる長軸方向と短軸方向とを有し、さらに、前記厚み方向において反対方向を向いた第1の面と第2の面とを有し、前記仕切り部材の前記第1の面にある第1の点が150℃に達した場合において、前記第1の点と、前記第2の面内において、前記仕切り部材を前記厚み方向に二等分する分割面に対して前記第1の点と面対称の位置にある第2の点との温度の差に応じて定義される前
記仕切り部材の前記厚み方向の単位面積当たりの熱抵抗(θd1)と、前記第1の点と前記第2の点とを結ぶ直線と前記分割面とが交わる第1の交点における温度と、前記仕切り部材の前記長軸方向の長さの1/2の距離を前記第1の交点から前記長軸方向に進んだ位置にある、前記分割面上の点における温度との差に応じて定義される前記仕切り部材の前記面方向の単位面積当たりの熱抵抗(θp1)と、前記第1の面全体を40℃にした場合において、前記第1の点と同じ位置にある第3の点と、前記第2の点と同じ位置にある第4の点との温度の差に応じて定義される前記仕切り部材の前記厚み方向の単位面積当たりの熱抵抗(θd2)と、前記第3の点と前記第4の点とを結ぶ直線と前記分割面とが交わる第2の交点における温度と、前記仕切り部材の前記長軸方向の長さの1/2の距離を前記第2の交点から前記長軸方向に進んだ位置にある、前記分割面上の点における温度との差に応じて定義される前記仕切り部材の前記面方向の単位面積当たりの熱抵抗(θp2)とが下記式1を満たして前記第1の単電池から前記仕切り部材を介して伝わる熱量を制御することを含む組電池の熱伝達制御方法であってもよい。
0.03 ≦(θp1/θp2)/(θd1/θd2)< 1.0・・・(式1)
【0034】
また、本発明は、厚み方向と前記厚み方向に直交する面方向とを有し、前記面方向に並んだn個(nは正の整数)の単電池の組と、前記面方向に並んだ前記n個の単電池の組と異なるm個(mは正の整数)の単電池の組、単電池以外の部材、及び前記m個の単電池と前記単電池以外の部材との組み合わせのいずれかとを仕切る仕切り部材であって、前記仕切り部材は、前記面方向に夫々含まれる長軸方向と短軸方向とを有するとともに前記厚み方向において反対方向を向いた第1の面と第2の面とを有し、前記n個の単電池の組は、前記第1の面に夫々接するとともに、第1の距離を空けて配置された第1の単電池と第3の単電池とを含み、前記m個の単電池の組は、前記第2面に接し、前記第1の単電池と前記仕切り部材を介して対向する第2の単電池を含み、前記第1の単電池が接する面全体を150℃とした場合に、前記第1の単電池が前記仕切り部材に接する面内の中心点から、前記長軸方向に、前記第3の単電池側に、前記第1の距離だけ進んだ第1の点と、前記第2の面内において、前記仕切り部材を前記厚み方向に二等分する分割面に対して前記第1の点と面対称の位置にある第2の点との温度の差に応じて定義される前記仕切り部材の前記厚み方向の単位面積当たりの熱抵抗(θd1)と、前記第1の点と前記第2の点とを結ぶ直線と前記分割面が交わる第1の交点における温度と、前記分割面上の前記第1の交点から、前記分割面上において前記仕切り部材の前記面方向に、前記長軸方向において前記仕切り部材と前記第1の単電池とが接する長さの1/2であり且つ前記第1の距離より長い第2の距離を隔てた点における温度との差に応じて定義される前記仕切り部材の前記面方向の単位面積当たりの熱抵抗(θp1)と、前記第1の単電池が接する面全体を40℃とした場合に、前記第1の点と同じ位置にある第3の点と、前記第2の点と同じ位置にある第4の点との温度の差に応じて定義される前記仕切り部材の前記厚み方向の単位面積当たりの熱抵抗(θd2)と、前記第3の点と前記第4の点とを結ぶ直線と前記分割面とが交わる第2の交点における温度と、前記分割面上の前記第1の交点から、前記分割面上において前記仕切り部材の前記面方向に、前記第2の距離を隔てた点における温度との差に応じて定義される前記仕切り部材の前記面方向の単位面積当たりの熱抵抗(θp2)とが下記式1を満たして前記第1の単電池から前記仕切り部材を介して伝わる熱量を制御することを含む組電池の熱伝達制御方法であってもよい。
0.03 ≦(θp1/θp2)/(θd1/θd2)< 1.0・・・(式1)
【0035】
<仕切り部材>
仕切り部材は一組の単電池間、または一つの単電池と単電池以外の部材とを仕切る仕切り部材である。また、仕切り部材は、厚み方向と厚み方向に直交する面方向とを有し、面方向に並んだn個(nは正の整数)の単電池の組と、面方向に並んだn個の単電池の組と異なるm個(mは正の整数)の単電池の組、単電池以外の部材、及びm個の単電池と単電池以外の部材との組み合わせのいずれかとを仕切る仕切り部材であってもよい。以下、実
施形態及び実施例において、仕切り部材は、上述の仕切り部材を含むものとする。図1A及び図1Bは、仕切り部材を例示する図である。図1A及び図1Bには、縦(高さ)、横(幅)、厚みを有する直方体(板体)の仕切り部材1が例示されている。仕切り部材1は、厚み方向において反対方向を向いた2つの面1a及び面1bを有している。
【0036】
仕切り部材1は、単電池間(または単電池と部材)を仕切るため、単電池間(または単電池と部材)に配置される。仕切り部材1が単電池間(または単電池と部材)を仕切る状態において、面1a及び面1bのそれぞれは、仕切り対象の単電池と対向した状態にされる。このとき、面1a及び面1bのそれぞれは対向する単電池と接触する状態であっても近接する状態であってもよい。
【0037】
図1Aに示す例では、面1a及び面1bを「仕切り部材の厚み方向の表裏二面」、すなわち、「厚み方向において反対方向を向いた第1の面と第2の面」として使用し得る。但し、仕切り部材1を用いた仕切り方によっては、「仕切り部材の厚み方向の表裏二面」の一方は単電池と対向しない場合もあり得る。
【0038】
本発明において、仕切り部材の厚み方向Dの単位面積当たりの熱抵抗(θ)とは、仕切り部材の厚み方向の単位断面積あたりの熱移動抵抗を意味する。仕切り部材の厚み方向の単位面積当たりの熱抵抗(θ)は、仕切り部材として使用される材料の厚み方向における熱伝導率(k[W/m・K])及び仕切り部材の厚み(d[m])を用いて表すことができる。なお、熱伝導率としては、対象とする環境において仕切り部材において流動や相変化などの熱移動に影響を及ぼす現象がともに進行する場合、それらの影響を含んだ有効熱伝導率を用いることができる。
【0039】
図1Aに示す仕切り部材1の厚み方向Dの単位面積当たりの熱抵抗(θ)について説明する。仕切り部材1の厚み方向の熱伝導率をk[W/m・K]、仕切り部材1の厚みをd[m]とする。また、高温側の面1b上の温度測定点T1の温度をt[℃]とする。低温側の面1a上の点であって、仕切り部材1を厚み方向Dに二等分する面1c(「分割面」の一例)に対して点tと面対称の位置にある点T2の温度をt[℃]とする。
【0040】
がtより低い場合、仕切り部材1の面1b側と面1a側とで表面温度差t-tが生じている。この場合、面方向の熱流束の影響が小さい場合には、仕切り部材1の厚み方向の単位断面積当たりの熱流量(熱流束)qは、以下の式3によって表すことができる。
= k(t-t)/d [W/m] ・・・(式3)
ここで、厚み方向の熱流束qは、厚み方向の単位面積当たりの熱抵抗(θ)を用いて以下の式4によって表すことができる。
= (1/θ)(t-t) ・・・(式4)
式3及び式4から、厚み方向の単位面積当たりの熱抵抗(θ)は、仕切り部材1の厚み方向の熱伝導率k及び仕切り部材の厚み(d)を用いて表すことができる。即ち、厚み方向の単位面積当たりの熱抵抗(θ)は以下の式5によって表すことができる。
θ= d/k[m・K/W] ・・・(式5)
【0041】
なお、温度測定点T1は、面1b上の任意の点とすることができる。面1b上の任意の点を温度測定点T1として、上述の方法により、点T1における厚み方向の単位面積当たりの熱抵抗(θ)を算出することができる。点T1は「第1の点」及び「第3の点」の一例である。点T2は、「第2の点」及び「第4の点」の一例である。
【0042】
図1Bに示す仕切り部材1の面方向Pの単位面積当たりの熱抵抗(θ)について説明する。仕切り部材1の面方向Pの熱伝導率をk[W/m・K]とする。なお、熱伝導率
としては、対象とする環境において仕切り部材において流動や相変化などの熱移動に影響を及ぼす現象がともに進行する場合、それらの影響を含んだ有効熱伝導率を用いることができる。点T1と点T2とを結ぶ直線と、仕切り部材1を厚み方向Dに二等分する面1cとが交わる点T3の温度をt[℃]とする。面1c上において、点T3と仕切り部材1の長軸方向に距離L[m]を隔てた点T4の温度をt[℃]とする。点T3は、「第1の交点」及び「第2の交点」の一例である。
【0043】
がtより低い場合、仕切り部材1の点T3と点T4とで温度差t-tが生じている。この場合、厚み方向の熱流束の影響が小さい場合には仕切り部材1の面方向の単位断面積当たりの熱流量(熱流束)qは、以下の式6によって表すことができる。
= k(t-t)/L[W/m] ・・・(式6)
ここで、面方向の熱流束qは、面方向の単位面積当たりの熱抵抗(θ)を用いて以下の式7によって表すことができる。
= (1/θ)(t-t) ・・・(式7)
式6及び式7から、面方向の単位面積当たりの熱抵抗(θ)は、仕切り部材1の面方向の熱伝導率k及び仕切り部材1内の前記点T3および点T4間の距離(L)を用いて表すことができる。即ち、面方向の単位面積当たりの熱抵抗(θ)は以下の式8によって表すことができる。
θ= L/k[m・K/W] ・・・(式8)
【0044】
図1Cに示す仕切り部材1の面方向Pの単位面積当たりの熱抵抗(θ)について説明する。単電池21及び単電池23の組と、単電池22と単電池24の組とは、仕切り部材1で仕切られる。単電池21と単電池23との間の距離、及び単電池22と単電池22との間の距離はx[m](「第1の距離」の一例)である。単電池23が仕切り部材に接する面(「第1の面」の一例)内の中心点T5から、仕切り部材1の長軸方向に、単電池21側にx[m]だけ進んだ点を点T1とする。単電池24が仕切り部材1と接する面(「第2の面」の一例)において、仕切り部材1を厚み方向Dに二等分する分割面に対して、点T1と面対称の位置にある点を点T2とする。点T1と点T2とを結ぶ直線と、分割面とが交わる点T3の温度をt[℃]とする。単電池23の幅方向の長さをL[m]とした場合、分割面上において、点T3と仕切り部材1の長軸方向に距離L/2[m](「第2の距離」の一例)を隔てた点T4の温度をt[℃]とする。点T3は、「第1の交点」及び「第2の交点」の一例である。また、x[m]は、距離L/2[m]よりも短いものとする。仕切り部材1の面方向Pの熱伝導率をk[W/m・K]とすると、図1Cに示す仕切り部材1の面方向Pの単位面積当たりの熱抵抗(θ)は、上記式6から式8と同様に算出される。ただし、点T3と点T4との間の距離は、L/2[m]として算出する。
【0045】
図2Aは、実施形態に係る仕切り部材の構成例を示す平面図である。図2Bは、図2Aに示した仕切り部材をA-A線で切断した場合の端面を示す図である。仕切り部材1の外形形状は、一例として、厚みを有する平板状、或いはシート状に形成される。図2Cは、仕切り部材の内部に収容された流体保持部が有する流路の例を示す。
【0046】
図2A及び図2Bに示す例では、仕切り部材1は、高さ、幅、厚みを有する平板状に形成され、厚み方向Dと面方向Pとを有する。面方向Pは厚み方向Dに直交する方向である。厚み方向Dと直交する限りにおいて、面方向Pは仕切り部材1の高さ方向H、幅方向W、及び斜め方向を含む。斜め方向は、面方向Pにおける高さ方向H、幅方向W以外の任意の方向を含む。
【0047】
仕切り部材1は、その厚み方向Dにおいて、一組の単電池間、又は一つの単電池と単電池以外の部材とを仕切るために使用される。また、仕切り部材1は、面方向に並んだn個
(nは正の整数)の単電池の組と、前記面方向に並んだ前記n個の単電池の組と異なるm個(mは正の整数)の単電池の組、単電池以外の部材、及び前記m個の単電池と前記単電池以外の部材との組み合わせのいずれかとを仕切るために使用される。
【0048】
仕切り部材1の厚みは、組電池を構成する単電池の厚みがL[mm]である場合に、厚みがL/50mm以上L/5mm以下であることが好ましい。ここで、組電池を構成する単電池の厚み(L)について想定される範囲は、通常、10mm≦L≦100mm、好ましくは15mm≦L≦80mmである。
【0049】
仕切り部材1は、常圧における沸点が80℃以上250℃以下である流体と、仕切り部材1の面方向に沿って延びる流体の流路とをその内部に有する。
【0050】
〔流体〕
「常圧における沸点が80℃~250℃である流体」は、常圧(1気圧)における沸点が80℃以上250℃以下の流体である。この流体は、上記した沸点を有するものであれば、特に制限されず、常圧において液体及び気体のいずれの状態もとり得るものである。なお、以下において、1種のみで常圧(1気圧)における沸点が80℃以上250℃以下の流体を例示する。しかし、1種のみの沸点ではこの温度範囲外であっても、2種以上の混合物とした場合に、この温度範囲内となる場合、本発明における流体として用いることができる。
【0051】
流体は、例えば、水、アルコール類、エステル類、エーテル類、ケトン類、炭化水素類、フッ素系化合物及びシリコーン系オイルからなる群から選ばれる少なくとも1つを含むことが好ましい。
【0052】
流体に用いることのできるアルコール類としては、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、ベンジルアルコール、フェニルエチルアルコール等の3~8個の炭素原子を含むアルコールや、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルキレングリコール等の二価以上のアルコール等が挙げられる。これらは1種のみでも、2種以上の混合物として用いることもできる。
【0053】
流体に用いることのできるエステル類としては、アルキル脂肪族カルボン酸エステル、アルキル炭酸ジエステル、アルキルシュウ酸ジエステル及びエチレングリコールの脂肪酸エステルなどが挙げられる。アルキル脂肪族カルボン酸エステルとしては、ギ酸メチル、ギ酸n-ブチル、ギ酸イソブチルなどの低級アルキルギ酸エステル;酢酸n-プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸n-ブチル、酢酸イソブチルなどの低級アルキル酢酸エステル及びプロピオン酸エチル、プロピオン酸n-プロピル、プロピオン酸イソプロピル、プロピオン酸n-ブチル、プロピオン酸イソブチルなどの低級アルキルプロピオン酸エステルなどの低級アルキル脂肪族カルボン酸エステルなどが挙げられる。アルキル炭酸ジエステルとしては、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸ジブチル、炭酸メチルエチルなどの低級アルキル炭酸ジエステルなどが挙げられる。アルキルシュウ酸ジエステルとしては、シュウ酸ジメチル、シュウ酸ジエチルなどの低級アルキルシュウ酸ジエステルなどが挙げられる。エチレングリコール酢酸エステルとしては、酢酸プロピル、酢酸ブチルなどが挙げられる。エチレングリコールの脂肪酸エステルとしては、エチレングリコール酢酸エステル等が挙げられる。これらは1種のみでも、2種以上の混合物として用いることもできる。
【0054】
流体に用いることのできるエーテル類としては、n-ブチルエーテル、n-プロピルエーテル、イソアミルエーテル等が挙げられる。これらは1種のみでも、2種以上の混合物として用いることもできる。
【0055】
流体に用いることのできるケトン類としては、エチルメチルケトン、ジエチルケトン等が挙げられる。これらは1種のみでも、2種以上の混合物として用いることもできる。
【0056】
流体に用いることのできる炭化水素類としては、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、トルエン、キシレン等が挙げられる。これらは1種のみでも、2種以上の混合物として用いることもできる。
【0057】
流体に用いることのできるフッ素系化合物としては、冷媒の1,1,2,2,3,3,4-ヘプタフルオロシクロペンタン(HFC-c447ef)、1,1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6-トリデカフルオロオクタン(HFC-76-13sf)等が挙げられる。これらは1種のみでも、2種以上の混合物として用いることもできる。
【0058】
流体に用いることのできるシリコーン系オイルとしては、メチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、環状メチルシロキサン、及びシリコーンポリエーテルコポリマー等の変性シリコーンオイル等が挙げられる。これらは1種のみでも、2種以上の混合物として用いることもできる。
【0059】
〔流体保持部〕
仕切り部材1の内部には、上述した流体を保持する流体保持部110が設けられることが好ましい。図2Cに示す例では、流体保持部110は、平板状又はシート状に形成され、流体保持部110が平板状又はシート状の包材120で密封されている。流体保持部110は、図2Cに示すような流体の流路130を有する。
【0060】
流体保持部110は、多孔質体を含む材料で形成されることが好ましい。多孔質体は、繊維質層及び粒子層の少なくとも一方を含むことが好ましい。繊維質層を含む多孔質体は、例えば、グラスファイバーシート、セラミックファイバーシート、紙、コットンシート、多孔質セラミックスプレート、多孔質ガラスプレート、ポリイミド繊維シート、アラミド繊維シート及びポリテトラフルオロエチレン(PTFE)繊維シートなる群から選ばれる少なくとも1つであることが好ましい。また、粒子層を含む多孔質体は、例えば、シリカ粒子、アルミナ粒子、ゼオライト粒子、ガラス粒子、炭素粒子からなる群から選ばれる少なくとも1つであることが好ましい。流体保持部110の全体が多孔質体で形成されていてもよい。以下の説明では、流体保持部110が多孔質体で形成されている場合について例示する。包材120は、多孔質体を内包する。
【0061】
流体は、流体保持部110に含まれる多孔質体が有する空洞や流路130にて保持される。例えば、流体保持部110を流体に浸漬して流体を含浸させることで、流体保持部110は流体を保持することができる。或いは、流体保持部110を内部に収容した包材120の開口部から流体を導入(充填)して、流体保持部110に流体を含ませることもできる。
【0062】
流体保持部110は、保持している流体が外部に流出し、空洞や流路130に空気や保持している流体の蒸気等の気体が含まれる状態となると、流体が含まれない部分の熱伝達率は低下し、断熱層として機能する。
【0063】
〔流路〕
仕切り部材1は面方向に延びる流体の流路を有する。本実施形態において、流路130は、流体が移動し得る長さが1mm以上連続する空間であって、この空間に内接し得る球の直径がこの空間の体積の90%以上の領域において0.1mm以上である空間を含むことが好ましい。
【0064】
図2Cは、流体保持部110が有する流路130の例を示す。図2Cの例では、流路130は、流体保持部110(仕切り部材1)の高さ方向Hに延びる流路と幅方向Wに延びる流路とが連結されたミアンダ状に形成されている。流路130の各端部は、流体保持部110の外縁に達している。但し、流路130を形成する流路の形状や流路の数は適宜設定可能であり、図2Cに示すように流路130の端部が流体保持部110の外縁に達することは必須ではない。例えば、仕切り部材1の高さ方向又は幅方向における流路130の長さが仕切り部材1の高さ方向又は幅方向の長さの1/2以上である、ように形成されていることが好ましい。また、流路130は、必ずしも直線状に形成されなくともよく、曲線状であってもよい。
【0065】
流路130は、流体保持部110の表面に形成された溝であっても、流体保持部110を貫通する線状の孔であっても、流体保持部110の内部に形成された空洞であってもよい。上述した様な流体保持部の材料からなる1つの部材に加工を施すことで流路130を形成してもよく、また、流路130は複数の流体保持部の材料を組み合わせることで形成してもよい。流路130は、面方向Pに沿って形成されるので、面方向Pに延びている場合の他、面方向Pから微細にずれた方向も含み得る。このように、本実施形態に係る仕切り部材1では、仕切り部材1の内部に流体を含ませた多孔質体(流体保持部110)が設けられており、流路130は多孔質体に形成されていることが好ましい。
【0066】
〔包材〕
包材120は、流体保持部110を内包し、流体を保持した流体保持部110を密封する。包材120としては、例えば、樹脂シート、樹脂フィルム、樹脂製のパウチ袋などを適用できる。例えば、二枚、又は二つ折りの樹脂シート或いは樹脂フィルムで流体保持部110を挟み込み、その熱融着や接着することで、流体を保持した流体保持部110を密封する。但し、包材120は必ずしも必要なものでなく、例えば、流体保持部110が吸水性の高い多孔質材等で形成されている場合、包材120が無くとも、流体保持部110が所望の時間、所望の量の流体を保持し得る。
【0067】
また、流体は熱移動媒体として作用するため、流体保持部110において流体をより多く含むほど熱移動をより促進することができる。流体保持部110が流体を含まない場合、流体保持部110は、断熱材として機能し、面方向の熱移動の促進効果は低減される。このため、流体保持部110は、所定量の流体を保持することが好ましい。具体的には、流路の体積と多孔質体の空隙の体積とを合わせた体積の20%以上の流体を保持させることが好ましく、50%以上を保持させることがより好ましく、一方、上限は特に制限されず、通常100%である。流体は必ずしも80℃以上250℃の範囲内において液体で無くてもよく、液体以外の状態である場合もあり得る。
【0068】
<組電池>
次に、仕切り部材1が適用される組電池について説明する。組電池は、例えば、電気自動車(EV、Electric Vehicle)、ハイブリッド電気自動車(HEV、Hybrid Electric Vehicle)、プラグインハイブリッド電気自動車(PHEV、Plug-in Hybrid Electric Vehicle)、電動重機、電動バイク、電動アシスト自転車、船舶、航空機、電車、無停電電源装置(UPS、Uninterruptible Power Supply)、家庭用蓄電システム、風力/太陽光/潮力/地熱等の再生可能エネルギーを利用した電力系統安定化用蓄電池システム等に搭載される電池パックに適用される。但し、組電池は、上述のEV等以外の機器に電力を供給する電力源としても使用し得る。
【0069】
〔単電池〕
図3Aは組電池を構成する単電池の一例を示す平面図であり、図3Bは単電池の一例を
示す正面図であり、図3Cは、単電池の一例を示す側面図である。
【0070】
単電池200は、縦(厚み)、横(幅)、高さを有する直方体状を有し、その上面に端子210、端子220が設けられている。単電池200は、例えば、リチウムイオンを吸蔵・放出可能な正極及び負極、並びに電解質を備えるリチウムイオン二次電池である。リチウムイオン二次電池以外に、リチウムイオン全固体電池、ニッケル水素電池、ニッケルカドミウム電池、鉛蓄電池等の二次電池を適用し得る。
【0071】
〔組電池〕
図4は、複数の単電池を用いて形成された組電池を、単電池の端子を通る高さ方向Hの面で切断した場合の端面を示す図である。組電池100は、底面及び四方の側面を有する筐体300に、複数の単電池200を収容している。各単電池200間には上述した仕切り部材1が配置され、隣接する単電池200間は、仕切り部材1の厚み方向Dにおいて仕切られている。隣り合う単電池200の正極端子(例えば端子210)と負極端子(例えば端子220)とがバスバー(図示なし)によって電気的に直列に接続されることにより、組電池100は、所定の電力を出力する。図4に示されるように、組電池100は、筐体300の底面と各単電池200との間に、仕切り部材1と同様の構成を有する仕切り部材1Aを配置するものであってもよい。
【0072】
<仕切り部材の作用>
図5は、1つの単電池内で局所的な異常発熱が発生する第1のケースを模式的に示す図である。図5のA1は、組電池の通常の運転時を仮定している。単電池21及び単電池22とは仕切り部材1Xで仕切られている。
【0073】
通常時(常温)では、図5のA1に示すように、仕切り部材1Xの流体保持部110において液体の流体が一様に分布している。このため、仕切り部材1Xは、仕切り部材1Xを挟んで対向する単電池200間(単電池21-単電池22間)で所望の熱伝導率を備える。
【0074】
図5のB1に示すように、単電池21が局所的に異常発熱となった場合を仮定する。この場合、単電池21の局所的な高温部(図5のB1中の7)と対向する流体保持部110の部分に存する流体が気化する。気化した流体は、仕切り部材1Xの高温部と対向しない箇所へ熱とともに移動する(B1の矢印Q1参照)。高温部と対向しない箇所の温度は高温部より低いので、気化した流体が凝縮し、再び液体となる。液体となった流体は潜熱とともに高温部へ移動する。このような流体の面方向の移動にともなう流体の循環によって面方向の有効熱伝導率が増加し高温部の熱が運搬され冷却される。また、高温部7に対応する位置にある流体のうち平面1a側にあって気化していない流体は、その温度が沸点以下に保たれることから、単電池21の局所的な高温部(図5のB1中の7)と、単電池22のうち単電池21の局所的な高温部に対面する部分に生じる温度差を緩和することで単電池21から単電池22に熱が移動するのを抑え、単電池22の熱上昇を抑える(B1の矢印Q2参照)。即ち、単電池21が局所的に異常発熱となった場合、仕切り部材1Xの面方向の熱抵抗は減少し、厚み方向の熱抵抗は増加する。
【0075】
流体保持部110において、高温部7と対向していない部分では、流体は液体の状態であり、通常時に近い単電池22への熱伝達率が維持されている。これにより、単電池22がヒートシンクとして作用し、高温部7から移動してきた熱を受け取る(B1の矢印Q3参照)。これにより、流体保持部110中の気化した流体が凝縮されて液体に戻り、高温部7側に戻る。すなわち、流体が仕切り部材1X(流体保持部110)内で循環する。
【0076】
ところで、流体保持部110に液体の流体が保持されている状態では、流体が単電池2
からの熱の伝達媒体となり、仕切り部材1Xの厚み方向において所定の熱伝導率を持つ。一方、流体が気化するとその気化した流体が存する流体保持部110の部分の熱伝導率は低下し、当該部分は断熱層として作用する。図5のC1に示すように、流体保持部11の一部が気体の流体或いは空気を含む状態になると、流体保持部110が断熱層として機能する。仕切り部材1Xの流体保持部11が気体の流体或いは空気を含む部分1Xaにおいて、仕切り部材の厚み方向の熱抵抗は増加し、単電池22に伝わる熱量は抑制される。従って、単電池22が単電池21からの熱を受けて異常発熱になることを回避することができる。
【0077】
図6は、仕切り部材の厚み方向の二面のうちの一方に並列して配置される複数の単電池の一つが高温となる第2のケースを模式的に示す。図6のA2は、組電池の通常の運転時を仮定している。単電池21及び単電池23と単電池22及び単電池24とは仕切り部材1Xで仕切られている。
【0078】
通常時(常温)では、図6のA2に示すように、仕切り部材1Xの流体保持部110において液体の流体が一様に分布している。このため、仕切り部材1Xは、仕切り部材1Xを挟んで対向する単電池2間(単電池21-単電池22間、単電池23-単電池24間)で所望の熱伝導率を備える。
【0079】
図6のB2に示すように、単電池24が異常発熱状態となった場合を仮定する。この場合、単電池24と対向する仕切り部材1Xの領域1hに対応する流体保持部110の部分に存する流体が気化し、仕切り部材1Xの面方向へ熱とともに移動する(B2の矢印Q1参照)。即ち、面方向の熱抵抗は減少する。また、領域1hに対応する位置にある流体のうち、仕切り部材1Xの領域1f側にあって気化していない流体は、その温度が沸点以下に保たれることから、単電池24と仕切り部材1Xを挟んで対向する単電池200(「対面側の単電池200」とも称する)である単電池23との間に生じる温度差を緩和することで単電池24から単電池23に熱が移動するのを抑え、単電池23の熱上昇を抑える(B2の矢印Q2参照)。即ち、単電池24が異常発熱状態となった場合、仕切り部材1Xの面方向の熱抵抗は減少し、厚み方向の熱抵抗は増加する。
【0080】
仕切り部材1Xの領域1eに対向する単電池21と、単電池21の対面側の単電池200であり仕切り部材1Xの領域1gに対向する単電池22との各温度が異常発熱状態でない(異常発熱より低い、または、常温である)場合、単電池21及び単電池22はヒートシンクとして機能し、仕切り部材1Xからの熱を受け取る(B2の矢印Q3参照)。これにより、流体保持部110中の気化した流体が凝縮され液体に戻り、高温部側に戻る。すなわち、流体が仕切り部材1X(流体保持部110)内で循環し、面方向の有効熱伝導率が増加する。
【0081】
図6のC2に示すように、気化した流体が仕切り部材1Xから放出され、流体保持部11が気体の流体或いは空気を含む状態になったと仮定する。この場合、流体保持部11に含まれる空気(気相の流体)によって断熱層が形成され、対面側の単電池23への熱伝達率が低下する。従って、単電池23が単電池24からの熱を受けて異常発熱になることを回避することができる。
【実施例
【0082】
次に実施例により本発明の具体的態様を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
【0083】
以下の各実施例及び比較例では、異常発熱した単電池(各実施例及び比較例において、セルともいう)200からの他のセル200への伝熱経路のうち、セル200間に配置さ
れる仕切り部材1を介する熱移動に着目し、仕切り部材1によるセル200間の延焼抑制の可能性を検討した。評価対象の組電池として、図7Aおよび図8に示すとおり、2セルから構成される2次元座標系簡易組電池モデルおよび、4セルから構成される2次元座標系簡易組電池モデルを構築した。
【0084】
図7Aに示す組電池モデルにおいて、セル21とセル22とは、仕切り部材1によって厚み方向Dに仕切られる。図7Aは、セル21及びセル22が面方向に垂直な高さ方向Hの面で切断した場合の端面を示す。2セルから構成される組電池モデルにおいては、セル21の面方向Pの端部TAに異常発生時相当の発熱速度として6.0x10[W/m
]を与えた。
【0085】
また、図8に示す組電池モデルにおいて、面方向Pに並列して配置されるセル21及びセル23と、セル21及びセル23のそれぞれに対向するセル22及びセル24とは、仕切り部材1によって厚み方向Dに仕切られる。図8は、セル21からセル24が面方向に垂直な高さ方向Hの面で切断した場合の端面を示す。4セルから構成される組電池モデルにおいては、セル21に熱暴走発生時相当の発熱量1.3×10[J/m](NMC系正極を用いたセル200の熱量評価から推定される総発熱量)を与えた。
【0086】
以下の各実施例及び比較例の条件において、熱伝導方程式を有限要素法によって解くことにより、各セル200の温度、並びに仕切り部材1の温度及び単位面積当たりの熱抵抗を推算した。ここで、解析にはCOMSOL AB社製の汎用物理シミュレーションソフトウエアであるCOMSOL Multiphysicsを用い、下記参考文献1、2を参照して解析した。(参考文献1:特開2006-010648号公報/参考文献2:R.M.Spotnitz et al., J.Power Sources 163,1080-1086,(2007))。
【0087】
まず、第一のケースとして、図7Aにおいてセル21の端部TAが局所的に高温となった場合に、隣接するセル22の内部の温度、並びに仕切り部材1の温度および厚み方向Dと面方向Pの双方について単位面積当たりの熱抵抗を推算し、仕切り部材1の厚み方向Dと面方向P双方の熱移動抵抗の変化による延焼抑制等の効果を評価した。なお、各セル2の内部の温度は、電極体(電極、セパレータ、電解液を含む構造体)の内部平均温度を計測したものと想定した。
【0088】
次に、第二のケースとして、図8においてセル21が異常発熱した場合に、周囲のセル22、セル23およびセル24の内部の温度、並びに仕切り部材1の温度及び厚み方向Dと面方向Pの双方について単位面積当たりの熱抵抗を推算し、仕切り部材1の厚み方向Dと面方向P双方の熱移動抵抗の変化による延焼抑制等の効果を評価した。なお、各セル2の内部の温度は、電極体(電極、セパレータ、電解液を含む構造体)の内部平均温度を計測したものと想定した。
【0089】
<第一のケース(単セル内面方向熱移動制御)>
【表1】
【0090】
(比較例1-1)
比較例1-1では、仕切り部材1は、仕切り部材1の内部において、セル21内部に与えた局所的な高温部に接する部位の内部平均温度が所定温度に達した時点で、厚み方向D、面方向Pともに熱伝導率が変化するスイッチング機能を有する高機能仕切り部材であるものと想定し、仕切り部材1のスイッチング温度を100℃、厚み方向の初期熱伝導率を1.0W/(m・K)、厚み方向スイッチング後の熱伝導率を0.10W/(m・K)、また面方向の初期熱伝導率を1.0W/(m・K)、面方向スイッチング後の熱伝導率を300W/(m・K)とした。膜厚は2.0mmとした。これらの条件下で、各セル200内の温度、並びに仕切り部材1の内部温度及び単位面積当たりの熱抵抗を推算した。
【0091】
図9Aは、比較例1-1におけるセルの内部の温度変化を示すグラフである。縦軸はセル2内部の絶対温度[K]、横軸はセル21の内部で局所的な高温部が発生してからの時間[秒]を示す。セル21の内部で局所的な高温部が発生してから約50秒後にはセル22の内部の温度は500Kを超え、セル21が異常発熱状態に至るとともに、異常発熱したセル21から熱を受けたセル22も異常発熱状態に至り、セル2間の延焼が発生することが示唆された。
【0092】
図9Bは、比較例1-1におけるセル21の仕切り部材側表面温度の推移を示すグラフである。図9Cは、比較例1-1におけるセル22の仕切り部材側表面温度の推移を示すグラフである。図9Bおよび図9Cの縦軸はセル200の仕切り部材側表面温度(K)、横軸はセル21内部で異常発熱部位が発生してからの時間[秒]を示す。図9Bのグラフは、図7Aに示す温度測定点T11からT15までの各点における温度の推移を示す。図9Cのグラフは、図7Aに示す温度測定点T21からT25までの各点における温度の推移を示す。
【0093】
また、図9Dは比較例1-1における仕切り部材内部の温度推移を示すグラフである。図9Dのグラフは、図7Bに示す仕切り部材1内部の温度測定点TS11からTS15までの各点における温度の推移を示す。仕切り部材1内部の各温度測定点における温度は、図9Bおよび図9Cに示したセル21およびセル22表面各点の温度の加重平均から求めた。縦軸は仕切り部材内部温度(℃)、横軸はセル21内部で局所的な高温部が発生してからの時間[秒]を示す。
【0094】
図9Eは、図9Dにおけるセル21内部で局所的な高温部が発生してから100秒後までの部分を時間軸について拡大したグラフである。仕切り部材内の各点における温度は、
セル21およびセル22表面各点の温度の加重平均から求めた。仕切り部材の内部においてセル21内部の局所的な高温部に最も近接するTS11の温度は約40秒後に150℃程度まで上昇するが、その時点でTS12の温度は90℃程度、TS13の温度は50℃程度、TS14の温度は30℃程度、TS15の温度は30℃程度であり、セル21の局所的な高温部から仕切り部材1に伝わった熱の分散度が低いことが示された。また、セル21内部で局所的な高温部が発生してから約60秒後には、セル21が異常発熱状態に至ることで仕切り部材内部温度も急上昇し、100秒後には約650℃でほぼ均一となるものと推算された。
【0095】
表1に、比較例1-1における仕切り部材物性の設定値および、該設定値から算出される厚み方向単位面積当たりの熱抵抗の値[m・K/W]および面方向単位面積当たりの熱抵抗の値[m・K/W]を示す。厚み方向単位面積当たりの熱抵抗初期値(θd)は2.0×10-3・K/W、厚み方向単位面積当たりの熱抵抗のスイッチング後の値(θd)は2.0×10-2・K/W、面方向単位面積当たりの熱抵抗初期値(θp)は7.4×10-2・K/W、面方向単位面積当たりの熱抵抗のスイッチング後の値(θp)は2.5×10-4・K/W、であった。なお、面方向単位面積当たりの熱抵抗値を算出するために用いた面方向熱移動距離は、7.4×10-2mとした。これらの値から、
(θp1/θp2)/(θd1/θd2)= 3.3×10-4
θd1/θp1= 8.1×10
と算出された。即ち、比較例1-1における仕切り部材1は、単位面積当たりの熱抵抗に関する上述の(式1)および(式2)のいずれの条件をも満たしていない。
【0096】
(比較例1-2)
比較例1-2では、仕切り部材1は、ポリプロピレン(PP)等の一般的な樹脂製であるものと想定し、膜厚は2mm、熱伝導率は0.20W/m・Kとした。これらの条件下で、各セル200内の温度、並びに仕切り部材1の内部温度及び単位面積当たりの熱抵抗を推算した。
【0097】
図10Aは、比較例1-2におけるセルの内部の温度変化を示すグラフである。縦軸はセル2内部の絶対温度[K]、横軸はセル21の内部で局所的な高温部が発生してからの時間[秒]を示す。セル21の内部で局所的な高温部が発生してから約200秒後にはセル21の内部の温度は500Kを超え、セル21が異常発熱状態に至るとともに、異常発熱したセル21から熱を受けたセル22も異常発熱状態に至り、セル2間の延焼が発生することが示唆された。
【0098】
図10Bは、比較例1-2におけるセル21の仕切り部材側表面温度の推移を示すグラフである。図10Cは、比較例1-2におけるセル22の仕切り部材側表面温度の推移を示すグラフである。図10Bおよび図10Cの縦軸はセル200の仕切り部材側表面温度(K)、横軸はセル21内部で局所的な高温部が発生してからの時間[秒]を示す。図10Bのグラフは、図7Aに示す温度測定点T11からT15までの各点における温度の推移を示す。図10Cのグラフは、図7Aに示す温度測定点T21からT25までの各点における温度の推移を示す。
【0099】
また、図10Dは比較例1-2における仕切り部材内部の温度推移を示すグラフである。図10Dのグラフは、図7Bに示す仕切り部材1内部の温度測定点TS11からTS15までの各点における温度の推移を示す。仕切り部材1内部の各温度測定点における温度は、図10Bおよび図10Cに示したセル21およびセル22表面各点の温度の加重平均から求めた。縦軸は仕切り部材内部温度(℃)、横軸はセル21内部で局所的な高温部が発生してからの時間[秒]を示す。
【0100】
図10Eは、図10Dにおけるセル21内部で局所的な高温部が発生してから100秒後までの部分を時間軸について拡大したグラフである。仕切り部材の内部において、セル21内部の局所的な高温部に最も近接するTS11の温度は約30秒後に150℃程度まで上昇するが、その時点でTS12の温度は70℃程度、TS13の温度は35℃程度、TS14の温度は30℃程度、TS15の温度は25℃程度であり、セル21の局所的な高温部から仕切り部材1に伝わった熱の分散度が低いことが示された。また、セル21内部で局所的な高温部が発生してから約40秒後には、セル21が異常発熱状態に至ることで仕切り部材1内部の温度も急上昇し、100秒後には約350℃でほぼ均一となるものと推算された。その後、異常発熱状態に至ったセル21から伝わった熱によりセル22が異常発熱状態に至り、仕切り部材内部温度は650℃程度まで上昇するものと推算された。
【0101】
表1に、比較例1-2における仕切り部材物性の設定値および、該設定値から算出される厚み方向単位面積当たりの熱抵抗の値[m・K/W]および面方向単位面積当たりの熱抵抗の値[m・K/W]を示す。厚み方向単位面積当たりの熱抵抗値(θd2=θd)は1.0×10-2・K/W、面方向単位面積当たりの熱抵抗値(θp2=θp)は3.7×10-1・K/W、であった。なお、面方向単位面積当たりの熱抵抗値を算出するために用いた面方向熱移動距離は、7.4×10-2mとした。これらの値から、
(θp1/θp2)/(θd1/θd2)= 1.0
θd1/θp1= 2.7×10-2
と算出された。即ち、比較例1-2における仕切り部材1は、単位面積当たりの熱抵抗に関する上述の(式1)および(式2)のいずれの条件をも満たしていない。
【0102】
(実施例1-1)
実施例1-1では、仕切り部材1は、面方向に高い熱伝導率を有するとともに、仕切り部材1の内部において、セル21内部に発熱量を与えて発生させた局所的な高温部に接する部位の内部平均温度が所定温度に達した時点で厚み方向Dに熱伝導率が変化するスイッチング機能を有する高機能仕切り部材であるものと想定し、膜厚は2.0mmとした。
【0103】
スイッチング機能を有する仕切り部材1は、例えば、厚み方向Dと厚み方向Dに直交する面方向Pとを有し、厚み方向Dと面方向Pとで熱伝導率の異方性を持ち、面方向Pにおいて高い熱伝導率を示すグラファイトシートのような材料と、厚み方向Dと厚み方向Dに直交する面方向Pとを有し、厚み方向Dにおいて単電池間、又は単電池と単電池以外の部材とを仕切る仕切り部材であって、常圧における沸点が80℃以上250℃以下である流体をその内部に有するように設計された構造物を厚み方向に積層するように設計された構造物とすることができる。このような構造物により、仕切り部材1の面方向の熱伝導率を500W/(m・K)とし、スイッチング温度を100℃、厚み方向の初期熱伝導率を1.0W/(m・K)、厚み方向スイッチング後の熱伝導率を0.10W/(m・K)とした。これらの条件下で、各セル200内の温度、並びに仕切り部材1の内部温度及び単位面積当たりの熱抵抗を推算した。
【0104】
図11Aは、実施例1-1におけるセル内部の温度変化を示すグラフである。縦軸はセル2内部の絶対温度[K]、横軸はセル21内部で局所的な高温部が発生してからの時間[秒]を示す。セル21内部で局所的な高温部が発生してから、セル21およびセル22の内部の温度は徐々に上昇するものの、いずれも350K以上に達することなく収束しており、セル21およびセル22セルともに異常発熱状態に至っていない。つまり、セル21が異常発熱状態に至ることを回避することで、セル22がセル21からの熱を受けて異常発熱状態に至ることも回避できる可能性があることが示された。
【0105】
図11Bは、実施例1-1におけるセル21の仕切り部材側表面温度の推移を示すグラフである。図11Cは、実施例1-1におけるセル22の仕切り部材側表面温度の推移を示すグラフである。図11Bおよび図11Cの縦軸はセル200の仕切り部材側表面温度(K)、横軸はセル21内部で局所的な高温部が発生してからの時間[秒]を示す。図11Bのグラフは、図7Aに示す温度測定点T11からT15までの各点における温度の推移を示す。図11Cのグラフは、図7Aに示す温度測定点T21からT25までの各点における温度の推移を示す。
【0106】
また、図11Dは実施例1-1における仕切り部材内部の温度推移を示すグラフである。図11Dのグラフは、図7Bに示す仕切り部材1内部の温度測定点TS11からTS15までの各点における温度の推移を示す。仕切り部材1内部の各温度測定点における温度は、図11Bおよび図11Cに示したセル21およびセル22表面各点の温度の加重平均から求めた。縦軸は仕切り部材内部温度(℃)、横軸はセル21内部で局所的な高温部が発生してからの時間[秒]を示す。
【0107】
図11Eは、図11Dにおけるセル21内部で局所的な高温部が発生してから100秒後までの部分を時間軸について拡大したグラフである。仕切り部材内の各点における温度は、セル21およびセル22表面各点の温度の加重平均から求めた。仕切り部材の内部においてセル21内部の局所的な高温部に最も近接するTS11の温度は約40秒後に150℃程度まで上昇するが、その時点でTS12の温度は90℃程度、TS13の温度は50℃程度、TS14の温度は35℃程度、TS15の温度は30℃程度に達しており、セル21の局所的な高温部から仕切り部材1に伝わった熱が、仕切り部材1の内部でよく分散されていることが示された。また、セル21が異常発熱状態に至ってからおよそ400秒後には仕切り部材内部温度は約50℃でほぼ均一となるものと推算された。
【0108】
表1に、実施例1-1における仕切り部材物性の設定値および、該設定値から算出される厚み方向単位面積当たりの熱抵抗の値[m・K/W]および面方向単位面積当たりの熱抵抗の値[m・K/W]を示す。厚み方向単位面積当たりの熱抵抗初期値(θd)は2.0×10-3・K/W、厚み方向単位面積当たりの熱抵抗のスイッチング後の値(θd)は2.0×10-2・K/W、面方向単位面積当たりの熱抵抗値(θp2=θp)は1.5×10-4・K/W、であった。なお、面方向単位面積当たりの熱抵抗値を算出するために用いた面方向熱移動距離は、7.4×10-2mとした。これらの値から、
(θp1/θp2)/(θd1/θd2)= 1.0×10-1
θd1/θp1= 1.4x10
と算出された。即ち、実施例1-1における仕切り部材1は、単位面積当たりの熱抵抗に関する上述の(式1)および(式2)の条件を満たしている。
【0109】
<第二のケース(単セル内面方向熱制御)>
【0110】
【表2】
【0111】
(比較例2-1)
比較例2-1では、仕切り部材1は、例えば、厚み方向と前記厚み方向に直交する面方向とを有し、前記厚み方向において単電池間、又は単電池と前記単電池以外の部材とを仕切る仕切り部材であって、常圧における沸点が80℃以上250℃以下である流体と、前記面方向に沿って延びる前記流体の流路とをその内部に有するように設計された構造物とすることができる。このような構造物により、仕切り部材1のスイッチング温度を100℃、厚み方向の初期熱伝導率を1.0W/(m・K)、厚み方向スイッチング後の熱伝導率を0.20W/(m・K)、また面方向の初期熱伝導率を1.0W/(m・K)、面方向スイッチング後の熱伝導率を300W/(m・K)とした。膜厚は2.0mmとした。これらの条件下で、各セル200内の温度、並びに仕切り部材1の内部温度及び単位面積当たりの熱抵抗を推算した。
【0112】
図12Aは、比較例2-1におけるセル内部の温度変化を示すグラフである。縦軸はセル200内部の絶対温度[K]、横軸はセル21が異常発熱状態に至ってからの時間[秒]を示す。セル21が異常発熱状態に至ってから、セル22、23、24の内部の温度は徐々に上昇し、セル23、セル24は450K付近まで上昇するものの異常発熱状態に至らないが、セル22は約250秒後に異常発熱状態に至るものと推算され、比較例2-1の条件においては、セル2間の延焼を抑制できないことが示された。
【0113】
図12Bは、比較例2-1における仕切り部材のうちセル21とセル22に挟まれた部分の内部の温度推移を示すグラフである。図12Bのグラフは、図8に示す仕切り部材1のうちセル21とセル22に挟まれた部分の内部の温度測定点TS21からTS25までの各点における温度の推移を示す。図12Cは、比較例2-1における仕切り部材のうちセル23とセル24に挟まれた部分の内部の温度推移を示すグラフである。図12Cのグラフは、図8に示す仕切り部材1のうちセル23とセル24に挟まれた部分の内部の温度測定点TS26からTS30までの各点における温度の推移を示す。図12Bおよび図12Cの縦軸は仕切り部材の内部温度(K)、横軸はセル21内部で異常発熱部位が発生してからの時間[秒]を示す。
【0114】
また、図12Dは比較例2-1における仕切り部材1のうちセル21とセル22に挟まれた部分の平均温度TS21-25の推移および、セル23とセル24に挟まれた部分の平均温度TS26-30の推移を示すグラフである。各温度は、図12Bおよび図12Cに示した各点の温度の加重平均より求めた。縦軸は仕切り部材内部温度(K)、横軸はセル21が異常発熱状態に至ってからの時間[秒]を示す。セル21が異常発熱状態に至った直後から、仕切り部材の内部においてセル21とセル22に挟まれた部分の平均温度は
600K付近まで上昇するが、その時点でセル23とセル24に挟まれた部分の平均温度は330K程度に満たない。つまり、仕切り部材1の内部において、異常発熱したセル21からセル22、セル23およびセル24に伝わる熱の分散度が適切ではないことが示された。その後、仕切り部材の内部においてセル21とセル22に挟まれた部分の平均温度は徐々に低下するが、異常発熱状態に至ったセル21から伝わった熱でセル22が異常発熱状態に至ることで、再び上昇し800K付近に到達するものと推算された。
【0115】
表2に、比較例2-1における仕切り部材物性の設定値および、該設定値から算出される厚み方向単位面積当たりの熱抵抗の値[m・K/W]および面方向単位面積当たりの熱抵抗の値[m・K/W]を示す。厚み方向単位面積当たりの熱抵抗初期値(θd)は2.0×10-3・K/W、厚み方向単位面積当たりの熱抵抗のスイッチング後の値(θd)は1.0×10-2・K/W、面方向単位面積当たりの熱抵抗初期値(θp)は7.4×10-2・K/W、面方向単位面積当たりの熱抵抗のスイッチング後の値(θp)は2.5×10-4・K/W、であった。なお、面方向単位面積当たりの熱抵抗値を算出するために用いた面方向熱移動距離は、7.4×10-2mとした。これらの値から、
(θp1/θp2)/(θd1/θd2)= 6.7×10-4
θd1/θp1= 4.1×10
と算出された。即ち、比較例2-1における仕切り部材1は、単位面積当たりの熱抵抗に関する上述の(式1)および(式3)のいずれの条件をも満たしていない。
【0116】
(比較例2-2)
比較例2-2では、仕切り部材1は、ポリプロピレン(PP)等の一般的な樹脂製であるものと想定し、膜厚は2mm、熱伝導率は0.20W/m・Kとした。これらの条件下で、各セル200内の温度、並びに仕切り部材1の内部温度及び単位面積当たりの熱抵抗を推算した。
【0117】
図13Aは、比較例2-2におけるセル内部の温度変化を示すグラフである。縦軸はセル200内部の絶対温度[K]、横軸はセル21が異常発熱状態に至ってからの時間[秒]を示す。セル21が異常発熱状態に至ってから、セル22の内部の温度は徐々に上昇し、セル22は約200秒後に異常発熱状態に至ることが示された。セル23、セル24における温度上昇はほとんど見られない。比較例2-2の条件においては、セル2間の延焼を抑制できないものと推定された。
【0118】
図13Bは、比較例2-2における仕切り部材のうちセル21とセル22に挟まれた部分の内部の温度推移を示すグラフである。図13Bのグラフは、図8に示す仕切り部材1のうちセル21とセル22に挟まれた部分の内部の温度測定点TS21からTS25までの各点における温度の推移を示す。図13Cは、比較例2-2における仕切り部材のうちセル23とセル24に挟まれた部分の内部の温度推移を示すグラフである。図13Cのグラフは、図8に示す仕切り部材1のうちセル23とセル24に挟まれた部分の内部の温度測定点TS26からTS30までの各点における温度の推移を示す。図13Bおよび図13Cの縦軸は仕切り部材の内部温度(K)、横軸はセル21が異常発熱状態に至ってからの時間[秒]を示す。
【0119】
また、図13Dは比較例2-2における仕切り部材1のうちセル21とセル22に挟まれた部分の平均温度TS21-25の推移および、セル23とセル24に挟まれた部分の平均温度TS26-30の推移を示すグラフである。各温度は、図13Bおよび図13Cに示した各点の温度の加重平均より求めた。縦軸は仕切り部材内部温度(K)、横軸はセル21が異常発熱状態に至ってからの時間[秒]を示す。セル21が異常発熱状態に至った直後から、仕切り部材の内部においてセル21とセル22に挟まれた部分の平均温度は
650K付近まで上昇するが、その時点でセル23とセル24に挟まれた部分の平均温度は室温からほとんど上昇していない。つまり、仕切り部材1の内部において、異常発熱したセル21からセル22、セル23およびセル24に伝わる熱の分散度が適切ではないことが示された。その後、仕切り部材の内部においてセル21とセル22に挟まれた部分の平均温度は徐々に低下するが、異常発熱状態に至ったセル21から伝わった熱でセル22が異常発熱状態に至ることで再び上昇し、900K付近に到達するものと推算された。
【0120】
表2に、比較例2-2における仕切り部材物性の設定値および、該設定値から算出される厚み方向単位面積当たりの熱抵抗の値[m・K/W]および面方向単位面積当たりの熱抵抗の値[m・K/W]を示す。厚み方向単位面積当たりの熱抵抗値(θd2=θd)は1.0×10-2・K/W、面方向単位面積当たりの熱抵抗値(θp2=θp)は3.7×10-1・K/W であった。なお、面方向単位面積当たりの熱抵抗値を算出するために用いた面方向熱移動距離は、7.4×10-2mとした。これらの値から、
(θp1/θp2)/(θd1/θd2)= 1.0
θd1/θp1= 2.7×10-2
と算出された。即ち、比較例2-2における仕切り部材1は、単位面積当たりの熱抵抗に関する上述の(式1)および(式3)のいずれの条件をも満たしていない。
【0121】
(実施例2-1)
実施例2-1では、仕切り部材1は、面方向Pに高い熱伝導率を有するとともに、異常発熱したセル21とそれに対向するセル22に挟まれた部分の平均温度が所定温度に達した時点で厚み方向に熱伝導率が変化するスイッチング機能を有する高機能仕切り部材であるものと想定し、膜厚は2.0mmとした。
【0122】
スイッチング機能を有する仕切り部材1は、例えば、厚み方向Dと厚み方向Dに直交する面方向Pとを有し、厚み方向Dと面方向Pとで熱伝導率の異方性を持ち、面方向Pにおいて高い熱伝導率を示すグラファイトシートのような材料と、厚み方向Dと厚み方向Dに直交する面方向Pとを有し、厚み方向Dにおいて単電池間、又は単電池と単電池以外の部材とを仕切る仕切り部材であって、常圧における沸点が80℃以上250℃以下である流体をその内部に有するように設計された構造物を厚み方向に積層するように設計された構造物とすることができる。このような構造物により、仕切り部材1の面方向の熱伝導率を1000W/(m・K)とし、スイッチング温度を100℃、厚み方向の初期熱伝導率を1.0W/(m・K)、厚み方向スイッチング後の熱伝導率を0.20W/(m・K)とした。これらの条件下で、各セル200内の温度、並びに仕切り部材1の内部温度及び単位面積当たりの熱抵抗を推算した。
【0123】
図14Aは、実施例2-1におけるセル内部の温度変化を示すグラフである。縦軸はセル2内部の絶対温度[K]、横軸はセル21が異常発熱状態に至ってからの時間[秒]を示す。セル21が異常発熱状態に至ってから、セル22、23、24の内部の温度は徐々に上昇するものの、異常発熱状態に至ることなく、約400K前後に収束しており、セル2間の延焼を抑制できる可能性があることが示された。
【0124】
図14Bは、実施例2-1における仕切り部材のうちセル21とセル22に挟まれた部分の内部の温度推移を示すグラフである。図14Bのグラフは、図8に示す仕切り部材1のうちセル21とセル22に挟まれた部分の内部の温度測定点TS21からTS25までの各点における温度の推移を示す。図14Cは、実施例2-1における仕切り部材のうちセル23とセル24に挟まれた部分の内部の温度推移を示すグラフである。図14Cのグラフは、図8に示す仕切り部材1のうちセル23とセル24に挟まれた部分の内部の温度測定点TS26からTS30までの各点における温度の推移を示す。図14Bおよび図1
4Cの縦軸は仕切り部材の内部温度(K)、横軸はセル21内部で異常発熱部位が発生してからの時間[秒]を示す。
【0125】
また、図14Dは実施例2-1における仕切り部材1のうちセル21とセル22に挟まれた部分の平均温度TS21-25の推移および、セル23とセル24に挟まれた部分の平均温度TS26-30の推移を示すグラフである。各温度は、図14Bおよび図14Cに示した各点の温度の加重平均より求めた。縦軸は仕切り部材内部温度(K)、横軸はセル21が異常発熱状態に至ってからの時間[秒]を示す。セル21が異常発熱状態に至った直後から、仕切り部材の内部においてセル21とセル22に挟まれた部分の平均温度は550K付近まで上昇するが、その時点でセル23とセル24に挟まれた部分の平均温度は340K程度に達している。その後、仕切り部材の内部においてセル21とセル22に挟まれた部分の平均温度は徐々に低下するが、セル23とセル24に挟まれた部分の平均温度はさらに上昇を続け、400K程度に達した後、徐々に低下している。つまり、仕切り部材1の内部において、異常発熱したセル21から伝わった熱がセル22、セル23およびセル24によく分散されており、それによってセル22、セル23、セル24のいずれも異常発熱状態に至らないことが示された。
【0126】
表2に、実施例2-1における仕切り部材物性の設定値および、該設定値から算出される厚み方向単位面積当たりの熱抵抗の値[m・K/W]および面方向単位面積当たりの熱抵抗の値[m・K/W]を示す。厚み方向単位面積当たりの熱抵抗初期値(θd)は2.0×10-3・K/W、厚み方向単位面積当たりの熱抵抗のスイッチング後の値(θd)は1.0×10-2・K/W、面方向単位面積当たりの熱抵抗値(θp=θp)は7.4×10-5・K/W であった。なお、面方向単位面積当たりの熱抵抗値を算出するために用いた面方向熱移動距離は、7.4×10-2mとした。これらの値から、
(θp1/θp2)/(θd1/θd2)= 2.0×10-1
θd1/θp1= 1.4×10
と算出された。即ち、実施例2-1における仕切り部材1は、単位面積当たりの熱抵抗に関する上述の(式1)および(式3)の条件を満たしている。
【符号の説明】
【0127】
1 仕切り部材
100 組電池
110 流体保持部
120 包材
130 流路
2、200 単電池(セル)
300 筐体
図1A
図1B
図1C
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図3C
図4
図5
図6
図7A
図7B
図8
図9A
図9B
図9C
図9D
図9E
図10A
図10B
図10C
図10D
図10E
図11A
図11B
図11C
図11D
図11E
図12A
図12B
図12C
図12D
図13A
図13B
図13C
図13D
図14A
図14B
図14C
図14D