(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-18
(45)【発行日】2022-04-26
(54)【発明の名称】検査装置、画像読取装置、画像形成装置、検査方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
G01N 21/88 20060101AFI20220419BHJP
B41F 33/00 20060101ALI20220419BHJP
H04N 1/401 20060101ALI20220419BHJP
G01N 21/892 20060101ALI20220419BHJP
【FI】
G01N21/88 J
B41F33/00 280
H04N1/401
G01N21/892 A
(21)【出願番号】P 2018144301
(22)【出願日】2018-07-31
【審査請求日】2021-05-24
(31)【優先権主張番号】P 2018127179
(32)【優先日】2018-07-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【氏名又は名称】酒井 宏明
(72)【発明者】
【氏名】鎌田 卓治
【審査官】横尾 雅一
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-137481(JP,A)
【文献】特開2002-098646(JP,A)
【文献】特開2012-103225(JP,A)
【文献】特開2011-109318(JP,A)
【文献】特開2017-228877(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0062419(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0297042(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/84 - G01N 21/958
B41F 33/00
H04N 1/401
G01J 3/00 - G01J 3/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷データに基づく印刷物の印刷品質を印刷面の読み取り画像により検査する検査装置であって、
前記読み取り画像を検査対象画像として取得し、前記印刷データをリッピングした画像を基準画像として取得する基準画像取得手段と、
前記基準画像から前記検査対象画像の作成の際に生じるフレアに基づき、フレア逆補正値を計算する計算手段と、
前記フレア逆補正値に基づいて前記基準画像にフレア逆補正を実施して補正後基準画像を取得する補正後基準画像取得手段と、
前記補正後基準画像と前記検査対象画像とを比較して検査する検査手段と、
を備えることを特徴とする検査装置。
【請求項2】
印刷データに基づく印刷物の印刷品質を印刷面の読み取り画像により検査する検査装置であって、
前記読み取り画像を検査対象画像として取得し、前記印刷データをリッピングした画像を基準画像として取得する基準画像取得手段と、
前記基準画像から前記検査対象画像の作成の際に生じるフレアに基づき、フレア逆補正値を計算する計算手段と、
前記基準画像から領域ごとに算出した閾値画像を作成し、当該閾値画像に対して前記フレア逆補正値に基づくフレア逆補正を実施して補正後の閾値画像を取得する補正後閾値画像取得手段と、
前記フレア逆補正値を使用して補正した前記補正後の閾値画像と前記検査対象画像とを比較して検査する検査手段と、
を備えることを特徴とする検査装置。
【請求項3】
前記基準画像取得手段は、前記基準画像と前記検査対象画像との差分画像を作成し、
前記検査手段は、前記補正後の閾値画像と前記差分画像とを比較して検査する、
ことを特徴とする請求項2に記載の検査装置。
【請求項4】
前記補正後閾値画像取得手段は、前記基準画像の平坦度が高い領域に対してのみフレア逆補正を実施して、前記補正後の閾値画像を作成する、
ことを特徴とする請求項2に記載の検査装置。
【請求項5】
印刷データに基づく印刷物の印刷面を読み取って読み取り画像を生成する画像読取部と、
請求項1ないし4の何れか一項に記載の検査装置と、
を備えることを特徴とする画像読取装置。
【請求項6】
印刷データに基づく印刷物を生成する画像形成部と、
前記印刷物の印刷面を読み取って読み取り画像を生成する画像読取部と、
請求項1ないし4の何れか一項に記載の検査装置と、
を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項7】
印刷データに基づく印刷物の印刷品質を印刷面の読み取り画像により検査する検査装置における検査方法であって、
前記読み取り画像を検査対象画像として取得し、前記印刷データをリッピングした画像を基準画像として取得する基準画像取得工程と、
前記基準画像から前記検査対象画像の作成の際に生じるフレアに基づき、フレア逆補正値を計算する計算工程と、
前記フレア逆補正値に基づいて前記基準画像にフレア逆補正を実施して補正後基準画像を取得する補正後基準画像取得工程と、
前記補正後基準画像と前記検査対象画像とを比較して検査する検査工程と、
を含むことを特徴とする検査方法。
【請求項8】
印刷データに基づく印刷物の印刷品質を印刷面の読み取り画像により検査する検査装置における検査方法であって、
前記読み取り画像を検査対象画像として取得し、前記印刷データをリッピングした画像を基準画像として取得する基準画像取得工程と、
前記基準画像から前記検査対象画像の作成の際に生じるフレアに基づき、フレア逆補正値を計算する計算工程と、
前記基準画像から領域ごとに算出した閾値画像を作成し、当該閾値画像に対して前記フレア逆補正値に基づくフレア逆補正を実施して補正後の閾値画像を取得する補正後閾値画像取得工程と、
前記フレア逆補正値を使用して補正した前記補正後の閾値画像と前記検査対象画像とを比較して検査する検査工程と、
を含むことを特徴とする検査方法。
【請求項9】
印刷データに基づく印刷物の印刷品質を印刷面の読み取り画像により検査する検査装置を制御するコンピュータを、
前記読み取り画像を検査対象画像として取得し、前記印刷データをリッピングした画像を基準画像として取得する基準画像取得手段と、
前記基準画像から前記検査対象画像の作成の際に生じるフレアに基づき、フレア逆補正値を計算する計算手段と、
前記フレア逆補正値に基づいて前記基準画像にフレア逆補正を実施して補正後基準画像を取得する補正後基準画像取得手段と、
前記補正後基準画像と前記検査対象画像とを比較して検査する検査手段と、
として機能させるためのプログラム。
【請求項10】
印刷データに基づく印刷物の印刷品質を印刷面の読み取り画像により検査する検査装置を制御するコンピュータを、
前記読み取り画像を検査対象画像として取得し、前記印刷データをリッピングした画像を基準画像として取得する基準画像取得手段と、
前記基準画像から前記検査対象画像の作成の際に生じるフレアに基づき、フレア逆補正値を計算する計算手段と、
前記基準画像から領域ごとに算出した閾値画像を作成し、当該閾値画像に対して前記フレア逆補正値に基づくフレア逆補正を実施して補正後の閾値画像を取得する補正後閾値画像取得手段と、
前記フレア逆補正値を使用して補正した前記補正後の閾値画像と前記検査対象画像とを比較して検査する検査手段と、
として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検査装置、画像読取装置、画像形成装置、検査方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
プロダクションプリンティングにおいては、プリンタの印刷出力に対しても何らかの検査を行う要求がある。そこで、従来のプロダクションプリンティング用のプリンタにおいては、プリンタの印刷出力をカメラ・スキャナなどの撮像装置で読み取り、読み取り結果から印刷が正常に行われているかを検査する印刷検査装置を備えている。
【0003】
さらには、印刷検査装置で検出された異常画像の内容によっては、プリンタなどの機器のメンテナンス、修理を行う必要がある。
【0004】
印刷検査装置において、特に印刷品質の検査を行う場合には、読み取りによって得られる検査データ(撮像画像)と、ユーザが用意した原稿画像データのリッピング・印刷・読み取りを想定した、基準データ(マスター画像)との比較によって行われることが多い。この比較の結果、マスター画像と読み取り画像の差異を、ある閾値に基づいて欠陥か否かを判定する。
【0005】
撮影画像においては、スキャナ装置や複写機等で原稿の画像を読み取るときに、原稿を読み取る入射光の散乱や反射により生じる擬似信号であるフレアが生じる。マスター画像にはフレアの影響が無いため、マスター画像と読み取り画像の比較をした際に、フレアの影響による差異が生じる。
【0006】
特許文献1には、マスクパターンを検査する目的で、基準パターンと比較用のパターンに対して、フレアを補正して検査する技術が開示されている。また、特許文献2には、印刷物を検査する目的で、基準画像の領域ごとに閾値を制御して検査する技術が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来技術によれば、フレア補正量の計算処理に時間が掛かり、フレア補正量の計算が終わるまで次の処理を待たなければならない、という問題がある。また、フレア補正量の計算が早く終わっても、被検査(比較)画像が入力されるのを待たなくてはならない、という問題もある。
【0008】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、フレア補正を含む印刷品質の検査に際して処理の高速化を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、印刷データに基づく印刷物の印刷品質を印刷面の読み取り画像により検査する検査装置であって、前記読み取り画像を検査対象画像として取得し、前記印刷データをリッピングした画像を基準画像として取得する基準画像取得手段と、前記基準画像から前記検査対象画像の作成の際に生じるフレアに基づき、フレア逆補正値を計算する計算手段と、前記フレア逆補正値に基づいて前記基準画像にフレア逆補正を実施して補正後基準画像を取得する補正後基準画像取得手段と、前記補正後基準画像と前記検査対象画像とを比較して検査する検査手段と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、フレア補正を含む印刷品質の検査に際して処理の高速化を実現することができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、第1の実施の形態にかかる検査システムの構成例を示す図である。
【
図2】
図2は、検査装置のハードウェア構成例を示す図である。
【
図3】
図3は、従来の検査装置の検査手法を示す図である。
【
図4】
図4は、検査装置の機能構成を示すブロック図である。
【
図5】
図5は、検査装置の検査手法を示す図である。
【
図6】
図6は、欠陥検査処理の流れを示すフローチャートである。
【
図7】
図7は、第2の実施の形態にかかる検査装置の機能構成を示すブロック図である。
【
図8】
図8は、検査装置の検査手法を示す図である。
【
図9】
図9は、欠陥検査処理の流れを示すフローチャートである。
【
図10】
図10は、検査装置の検査手法の変形例を示す図である。
【
図11】
図11は、第3の実施の形態にかかる検査装置の機能構成を示すブロック図である。
【
図13】
図13は、検査機能が動作する画像読取装置のハードウェア構成例を示す図である。
【
図14】
図14は、検査機能が動作する画像形成装置のハードウェア構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に添付図面を参照して、検査装置、画像読取装置、画像形成装置、検査方法およびプログラムの実施の形態を詳細に説明する。
【0013】
(第1の実施の形態)
<システム構成>
図1は、第1の実施の形態にかかる検査システム1000の構成例を示す図である。
図1には、検査システム1000として、スキャナ140と検査装置100とが、所定のデータ伝送路N(例えば「ネットワークケーブル」や「シリアル/パラレルケーブル」など)で接続される構成例が示されている。
【0014】
スキャナ140は、印刷物の印刷面を光学的に読み取り、読み取り画像を取得する画像読取装置である。一方、検査装置100は、印刷面の読み取り画像により印刷物の印刷品質を検査する情報処理装置である。
【0015】
これにより、利用者は、次のような印刷物の印刷品質を検査するサービス(以下「検査サービス」という)を利用することができる。例えば、利用者は、検査装置100に、印刷物を得るための印刷データをリッピングした画像を、印刷品質を検査する上での基準画像として入力する。次に、利用者は、スキャナ140で印刷物の印刷面を読み取る。
【0016】
その結果、スキャナ140から検査装置100に読み取り画像が送信される。検査装置100では、受信した読み取り画像と入力された基準画像との比較により画素値の差分が検出され、検出された画素値の差分と設定された検査用の閾値(欠陥判定基準)とに基づく欠陥判定処理が行われる。これにより、利用者は、印刷品質の検査結果を得ることができる。
【0017】
以上のように、本実施形態に係る検査システム1では、上記システム構成により、印刷物の検査サービスを提供することができる。なお、上記検査システム1000では、1台の検査装置100に対して、複数のスキャナ140が接続される構成であってもよい。これにより、商業印刷のような大量の印刷物を検査する場合、複数のスキャナ140により複数の印刷物を同じに読み取り、検査装置100において欠陥判定処理を並列処理することで、印刷品質の検査を効率的に実施することができる。
【0018】
<ハードウェア構成>
次に、本実施形態に係る検査装置100のハードウェア構成について説明する。
【0019】
図2は、検査装置100のハードウェア構成例を示す図である。
図2に示すように、検査装置100は、入力装置101、表示装置102、ドライブ装置103、RAM(Random Access Memory)104、ROM(Read Only Memory)105、CPU(Central Processing Unit)106、インタフェース装置107、及びHDD(Hard Disk Drive)108などを備え、それぞれがバスBで相互に接続されている。
【0020】
入力装置101は、キーボードやマウスなどを含み、検査装置100に各操作信号を入力するのに用いられる。表示装置102は、ディスプレイなどを含み、検査装置100による処理結果を表示する。
【0021】
インタフェース装置107は、検査装置100をデータ伝送路Nに接続するインタフェースである。これにより、検査装置100は、インタフェース装置107を介して、スキャナ140を含む通信機能を有する他の機器とデータ通信を行うことができる。
【0022】
HDD108は、プログラムやデータを格納している不揮発性の記憶装置である。格納されるプログラムやデータには、検査装置全体を制御する情報処理システム(例えば「Windows(登録商標)」や「UNIX(登録商標)」などの基本ソフトウェアであるOS(Operating System))、及びシステム上において各種機能(例えば「検査機能」)を提供するアプリケーションなどがある。また、HDD108は、格納しているプログラムやデータを、所定のファイルシステム及び/又はDB(Data Base)により管理している。
【0023】
ドライブ装置103は、着脱可能な記録媒体103aとのインタフェースである。これにより、検査装置100は、ドライブ装置103を介して、記録媒体103aの読み取り及び/又は書き込みを行うことができる。記録媒体103aには、例えば、CD(Compact Disk)、及びDVD(Digital Versatile Disk)、ならびに、SDメモリカード(SD Memory card)やUSBメモリ(Universal Serial Bus memory)などがある。
【0024】
ROM105は、電源を切っても内部データを保持することができる不揮発性の半導体メモリ(記憶装置)である。ROM105には、検査装置100の起動時に実行されるBIOS(Basic Input/Output System)、情報処理システム設定、及びネットワーク設定などのプログラムやデータが格納されている。RAM104は、プログラムやデータを一時保持する揮発性の半導体メモリ(記憶装置)である。CPU106は、上記記憶装置(例えば「HDD」や「ROM」など)から、プログラムやデータをRAM上に読み出し、処理を実行することで、装置全体の制御や搭載機能を実現する演算装置である。
【0025】
本実施形態の検査装置100で実行されるプログラムは、インストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD-ROM、フレキシブルディスク(FD)、CD-R、DVD(Digital Versatile Disk)等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録されて提供される。
【0026】
また、本実施形態の検査装置100で実行されるプログラムを、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供するように構成しても良い。また、本実施形態の検査装置100で実行されるプログラムをインターネット等のネットワーク経由で提供または配布するように構成しても良い。
【0027】
また、本実施形態の検査装置100で実行されるプログラムを、ROM等に予め組み込んで提供するように構成してもよい。
【0028】
以上のように、本実施形態に係る検査装置100では、上記ハードウェア構成により、上記検査サービスを提供することができる。
【0029】
<検査機能>
本実施形態に係る検査機能の説明に先立ち、従来の検査機能について説明する。
【0030】
図3は、従来の検査装置の検査手法を示す図である。
図3に示すように、従来の検査装置では、印刷面の読み取り画像a(以下「検査対象画像」という)と印刷データをリッピングした画像b(以下「基準画像」という)とを取得する。検査装置は、取得した基準画像bにおいて、画素値の変化を表す平坦度を解析する。検査装置は、解析結果の平坦度から、種別ごとの画像領域を判別し、判別した画像領域に対する検査用の閾値(欠陥判定基準)を決定し閾値画像cとする。検査装置は、判別した画像領域にあたる閾値画像cの画素と判別した画像領域と同じ位置にあたる検査対象画像aの画素とを比較し、該当画素値の差分を検出する。検査装置は、検出した差分が閾値を超過しているか否かを判定し、印刷面の欠陥箇所を検査する。
【0031】
しかしながら、従来の検査機能によれば、検査対象画像の作成の際のフレア補正量の計算処理に時間が掛かり、フレア補正量の計算が終わるまで次の処理を待たなければならない、という問題がある。また、フレア補正量の計算が早く終わっても、基準画像が入力されるのを待たなくてはならない、という問題もある。
【0032】
そこで、本実施形態に係る検査装置100では、基準画像(印刷データをリッピングした画像)をフレア逆補正したフレア逆補正後の基準画像を作成し、閾値画像を作成するようにした。
【0033】
これにより、本実施の形態に係る検査装置100では、フレア補正を含む印刷品質の検査に際して処理の高速化を実現することができる、という効果を奏する。
【0034】
以下に、本実施形態に係る検査装置100のCPU106がプログラムに従って動作することにより実現される検査機能の構成とその動作について説明する。
【0035】
図4は、検査装置100の機能構成を示すブロック図である。
図5は、検査装置100の検査手法を示す図である。
【0036】
図4に示すように、検査装置100は、計算手段101と、基準画像取得手段102と、補正後基準画像取得手段103と、検査手段104と、を備えている。
【0037】
基準画像取得手段102は、印刷データをリッピングした画像の入力を受け付けることで、基準画像Aを取得する。また、基準画像取得手段102は、印刷面の読み取り画像をスキャナ140から受信することで、検査対象画像Bを取得する。
【0038】
計算手段101は、基準画像Aから検査対象画像Bの作成の際に生じるフレアに基づき、フレア逆補正値を計算する。すなわち、計算手段101は、基準画像Aとフレアが生じている検査対象画像Bとの差をフレア逆補正値として計算する。
【0039】
補正後基準画像取得手段103は、フレア逆補正値に基づいて基準画像Aにフレア逆補正を実施して補正後基準画像Cを取得する。すなわち、補正後基準画像取得手段103は、フレア逆補正値を基準画像Aに付加して補正後基準画像Cとする。
【0040】
検査手段104は、補正後基準画像Cから作成した補正後の閾値画像Dと検査対象画像Bとを比較して検査する。
【0041】
検査手段104は、領域判別手段(閾値決定手段)111、差分検出手段112、及び判定手段(欠陥検出手段)113などを有している。検査手段104は、文字部、絵柄部、ベタ部など領域ごとに閾値を変えたり、エッジ・非エッジで閾値を変えたりすることができる。
【0042】
領域判別手段(閾値決定手段)111は、周知の平坦度解析手法による解析結果(算出された平坦度を表す値)に基づき、補正後基準画像Cにおける種別ごとの画像領域を判別する機能部である。領域判別手段111は、上述したように、算出された平坦度を表す値に基づき、画線部の「背景領域」、「エッジ領域」、及び「絵柄領域」などを判別する。
【0043】
また、領域判別手段111は、判別した画像領域に対して、検査用の閾値(欠陥判定基準)を決定する。上述したように、画線部の検査精度を向上させるためには、平坦度が高く滑らかな領域(画素値の変化が小さい領域)と平坦度が低く滑らかでない領域(画素値の変化が大きい領域)と、異なる閾値を用いた欠陥判定処理を行うことが望ましい。よって、領域判別手段111では、予め段階的に設定しておいた複数の閾値(例えば「45」、「30」、「15」、「4」などの設定値)を、判別した画像領域の種別ごとに割り当てることで、欠陥判定処理時に用いる検査用の閾値(欠陥判定基準)を決定する。具体的には、次のような方法で検査用の閾値(欠陥判定基準)を決定する。
【0044】
例えば、判別された領域が画線部の「背景領域」の場合には、画線部において、注目画素と隣接画素との画素値の変化量(差)が最も小さく、微少な画素値の変化を検出しなければならないため、非画線部(「紙白領域」)や画線部(「絵柄領域」や「エッジ領域」)の他の領域に比べて最も小さい値(例えば「4」の設定値)を検査用の閾値として決定する。
【0045】
一方、判別された領域が画線部の「エッジ領域」の場合には、画線部において、注目画素と隣接画素との画素値の変化量(差)が最も大きく、微少な画素値の変化を検出する必要がないため、画線部の他の領域(「背景領域」や「絵柄領域」)に比べて最も大きい値(例えば「45」の設定値)を検査用の閾値として決定する。
【0046】
また、判別された領域が画線部の「絵柄領域」の場合には、画線部において、注目画素と隣接画素との画素値の変化量(差)が「背景領域」より大きく、かつ、「エッジ領域」より小さいことから、画線部の他の領域(「背景領域」や「エッジ領域」)に比べて中間の値(例えば「15」の設定値)を検査用の閾値として決定する。
【0047】
また、判別される領域の中で非画線部の「紙白領域」は、平坦度が最も高い。しかし、非画線部の「紙白領域」では、紙面上の汚れが欠陥箇所にあたり、その特性を考えると、注目画素(紙面上の汚れにあたる画素)と隣接画素との画素値の変化量(差)が大きく、微少な画素値の変化を検出すればよい。そのため、非画線部の「紙白領域」の場合には、画線部の「絵柄領域」と「エッジ領域」に割り当てた設定値の中間の値(例えば「30」の設定値)を検査用の閾値として決定する。
【0048】
このように、検査手段104では、補正後基準画像Cの解析により得た画素値の変化を表す平坦度に応じて、検査用の閾値(欠陥判定基準)が、画像領域の種別ごと(「紙白領域」、「背景領域」、「絵柄領域」、及び「エッジ領域」ごと)に切り換えられる。つまり、検査手段104では、補正後基準画像Cの平坦度に応じて、欠陥箇所の検出感度が切り換えられる。
【0049】
差分検出手段112は、補正後基準画像Cと基準画像取得手段102から受け取った検査対象画像Bとの比較から画素値の差分を検出する機能部である。差分検出手段112は、判別した画像領域にあたる補正後基準画像Cの画素と判別した画像領域と同じ位置にあたる検査対象画像Bの画素とを比較し、該当画素値の差分を検出する。
【0050】
判定手段(欠陥検出手段)113は、欠陥判定処理を実行する機能部である。判定手段113は、差分検出手段112により検出された差分が、領域判別手段111により決定された閾値(種別ごとの画像領域に対応する検査用の閾値)を超過しているか否かを判定し、判定結果に従って、印刷面に欠陥箇所が存在するか否かを判断する(印刷面の欠陥箇所を検査する)。具体的には、次のような方法で印刷面に欠陥箇所が存在するか否かを判断する。例えば、検出された差分が閾値を超過していると判定された場合には、検査対象画像Bの画像領域に異常(欠陥)があると判断する。
【0051】
このように、検査手段104では、判別された画像領域ごとに欠陥判定が行われ、印刷面の欠陥箇所が検査される。
【0052】
以上のように、本実施の形態に係る検査機能は、上記各機能部が連携動作することにより実現される。なお、本実施の形態に係る検査機能は、検査装置100に搭載(インストール)されるプログラム(検査機能を実現するソフトウェア)が、演算装置(例えば「CPU」)により、記憶装置(例えば「HDD」や「ROM」など)からメモリ(RAM)上に読み出され、以下の処理が実行されることで実現される。
【0053】
本実施の形態に係る検査機能の詳細な動作(機能部群の連携動作)について、処理手順を示すフローチャートを用いて説明する。
【0054】
図6は、本実施形態に係る欠陥検査処理の流れを示すフローチャートである。
図6に示すように、検査装置100(基準画像取得手段102)は、基準画像Aと検査対象画像Bとを取得する(ステップS1)。
【0055】
次いで、検査装置100(計算手段101)は、基準画像Aからフレア逆補正値を計算する(ステップS2)。
【0056】
次いで、検査装置100(補正後基準画像取得手段103)は、フレア逆補正値に基づいて基準画像Aにフレア逆補正を実施して補正後基準画像Cを取得する(ステップS3)。すなわち、補正後基準画像Cは、フレアの影響がある撮影画像(検査対象画像)Bと同じになる。
【0057】
次いで、検査装置100(検査手段104)は、補正後基準画像Cと検査対象画像Bとを比較して検査する(ステップS4)。
【0058】
このように本実施の形態によれば、検査対象画像Bについて処理が重いフレア補正をしなくとも補正後基準画像Cと検査対象画像Bとを比較することができるので、印刷品質の検査に際して処理の高速化を実現することができる。さらに、フレアの影響を除外できるので、精度良く検査できる。
【0059】
(第2の実施の形態)
次に、第2の実施の形態について説明する。
【0060】
第2の実施の形態は、第1の実施の形態とは、検査の手法が異なる。以下、第2の実施の形態の説明では、第1の実施の形態と同一部分の説明については省略し、第1の実施の形態と異なる箇所について説明する。
【0061】
図7は、第2の実施の形態にかかる検査装置100の機能構成を示すブロック図である。
図8は、検査装置100の検査手法を示す図である。
【0062】
図7に示すように、検査装置200は、計算手段101と、基準画像取得手段102と、補正後閾値画像取得手段201と、検査手段202と、を備えている。
【0063】
基準画像取得手段102は、印刷データをリッピングした画像の入力を受け付けることで、基準画像Aを取得する。また、基準画像取得手段102は、印刷面の読み取り画像をスキャナ140から受信することで、検査対象画像Bを取得する。
【0064】
計算手段101は、基準画像Aから検査対象画像Bの作成の際に生じるフレアに基づき、フレア逆補正値を計算する。すなわち、計算手段101は、基準画像Aとフレアが生じている検査対象画像Bとの差をフレア逆補正値として計算する。
【0065】
補正後閾値画像取得手段201は、基準画像Aから領域ごとに算出した閾値画像Eを作成し、閾値画像Eに対してフレア逆補正値に基づくフレア逆補正を実施して補正後の閾値画像Dを取得する。すなわち、補正後閾値画像取得手段201は、フレア逆補正値を閾値画像Eに付加して補正後の閾値画像Dとする。
【0066】
検査手段202は、フレア逆補正値を使用して補正した補正後の閾値画像Dと検査対象画像Bとを比較して検査する。
【0067】
本実施の形態に係る検査機能の詳細な動作(機能部群の連携動作)について、処理手順を示すフローチャートを用いて説明する。
【0068】
図9は、本実施形態に係る欠陥検査処理の流れを示すフローチャートである。
図9に示すように、検査装置100(基準画像取得手段102)は、基準画像Aと検査対象画像Bとを取得する(ステップS1)。
【0069】
次いで、検査装置100(計算手段101)は、基準画像Aからフレア逆補正値を計算する(ステップS2)。
【0070】
次いで、検査装置100(補正後閾値画像取得手段201)は、基準画像Aから閾値画像Eを作成し、閾値画像Eに対してフレア逆補正値に基づくフレア逆補正を実施して補正後の閾値画像Dを取得する(ステップS11)。
【0071】
次いで、検査装置100(検査手段202)は、補正後の閾値画像Dと検査対象画像Bとを比較して検査する(ステップS12)。
【0072】
このように本実施の形態によれば、検査対象画像Bについて処理が重いフレア補正をしなくとも補正後の閾値画像Dと検査対象画像Bとを比較することができるので、印刷品質の検査に際して処理の高速化を実現することができる。さらに、フレアの影響を除外できるので、精度良く検査できる。
【0073】
また、本実施の形態によれば、基準画像Aから閾値画像Eを作成している間に、基準画像Aからフレア逆補正値を計算することができる。
【0074】
ここで、
図10は検査装置100の検査手法の変形例を示す図である。
図10に示すように、検査装置100(基準画像取得手段102)は、基準画像Aと検査対象画像Bとの差分画像Fを作成するようにしてもよい。そして、検査装置100(検査手段202)は、補正後の閾値画像Dと差分画像Fとを比較して検査する。
【0075】
(第3の実施の形態)
次に、第3の実施の形態について説明する。
【0076】
第3の実施の形態は、第2の実施の形態とは、基準画像の特定領域のみフレア逆補正を行う点が異なる。以下、第3の実施の形態の説明では、第1の実施の形態または第2の実施の形態と同一部分の説明については省略し、第1の実施の形態または第2の実施の形態と異なる箇所について説明する。
【0077】
図11は、第3の実施の形態にかかる検査装置300の機能構成を示すブロック図である。
図11に示す検査装置300は、印刷面の読み取り画像により印刷物の印刷品質を検査するものである。
【0078】
図5に示すように、検査装置200は、計算手段101と、基準画像取得手段102と、補正後閾値画像取得手段301と、検査手段202と、を備えている。
【0079】
計算手段101は、基準画像Aから検査対象画像Bの作成の際に生じるフレアに基づき、フレア逆補正値を計算する。すなわち、計算手段101は、基準画像Aとフレアが生じている検査対象画像Bとの差をフレア逆補正値として計算する。
【0080】
基準画像取得手段102は、印刷データをリッピングした画像の入力を受け付けることで、基準画像Aを取得する。また、基準画像取得手段102は、印刷面の読み取り画像をスキャナ140から受信することで、検査対象画像Bを取得する。
【0081】
補正後閾値画像取得手段301は、基準画像Aから領域ごとに算出した閾値画像Eを作成し、閾値画像Eに対してフレア逆補正値に基づくフレア逆補正を実施して補正後の閾値画像Dを取得する。また、補正後閾値画像取得手段301は、基準画像A(閾値画像E)の特定領域(平坦部)に対してのみフレア逆補正して、補正後の閾値画像Dを作成する。ここで平坦部は、背景などの画素値の変化が小さい領域(平坦度が高い領域)である。
【0082】
検査手段202は、フレア逆補正値を使用して補正した補正後の閾値画像Dと検査対象画像Bとを比較して検査する。
【0083】
図12は、検査装置300の検査例を示す図である。
図12に示す例では、基準画像A(閾値画像E)の特定領域(平坦部(背景などの画素値の変化が小さい領域(平坦度が高い領域)))のみフレア逆補正して、補正後の閾値画像Dを作成するようにしたものである。一般に、平坦部の色を測色するような検査では高精度な検査が必要であることから、基準画像の平坦部などの検査が厳しい領域にのみフレア逆補正を実施する。
【0084】
このように本実施の形態によれば、基準画像Aの平坦部(背景などの画素値の変化が小さい領域(平坦度が高い領域))などの検査が厳しい領域にのみフレア逆補正を実施することができるので、ベタ部(平坦部)では数点だけ色味を見る厳しい検査をして、他の部分については甘い検査をするなどが可能となる。
【0085】
<変形例>
ここで、上記実施形態に対する変形例を説明する。
【0086】
(変形例1)
上記実施形態では、検査装置100を検査機能が動作するハードウェア環境として説明したが、この限りでない。例えば、
図13に示すような画像読取装置400であってもよい。
【0087】
図13は、検査機能が動作する画像読取装置400のハードウェア構成例を示す図である。
図13に示すように、画像読取装置400は、コントローラ410及びスキャナ440などを備え、それぞれが相互にバスBで接続されている。
【0088】
スキャナ440は、印刷物を光学的に読み取り、読み取り画像を生成する画像読取部である。コントローラ410は、CPU411、記憶装置412、ネットワークI/F413、及び外部記憶I/F414などを備える制御基板であり、それぞれが相互にバスBで接続されている。
【0089】
記憶装置412は、RAM、ROM、及び/又はHDDなどを含み、各種プログラムやデータを格納し保持する装置である。CPU411は、ROMやHDDから、プログラムやデータをRAM(メモリ)上に読み出し、処理を実行する(読み出したプログラムやデータの処理を実行する)ことで、装置全体の制御や搭載機能を実現する演算装置である。よって、上述した検査機能は、RAM上に読み出されたプログラムがCPU411により実行されることで実現できる。
【0090】
ネットワークI/F413は、画像読取装置400をデータ伝送路Nに接続するインタフェースである。これにより、画像読取装置400は、ネットワークI/F413を介して、通信機能を有する他の機器とデータ通信を行うことができる。外部記憶I/F414は、外部記憶装置にあたる記録媒体414aとのインタフェースである。記録媒体414aには、例えば、SDメモリカードやUSBメモリなどがある。これにより、画像読取装置400は、外部記憶I/F414を介して、記録媒体414aの読み取り及び/又は書き込みを行うことができる。
【0091】
以上のように、画像読取装置400では、上記ハードウェア構成により、印刷物の検査サービスを当該装置単体で提供することができる。
【0092】
(変形例2)
また、例えば、
図14に示すように、MFP(Multifunction Peripheral)などの画像形成装置であってもよい。
【0093】
図14は、検査機能が動作する画像形成装置500のハードウェア構成例を示す図である。
図14に示すように、画像形成装置500は、コントローラ510、操作パネル520、プロッタ530、及び画像読取部であるスキャナ540などを備え、それぞれが相互にバスBで接続されている。
【0094】
操作パネル520は、入力部や表示部を備えており、機器情報などの各種情報を利用者に提供したり、動作設定や動作指示などの各種利用者操作を受け付けたりする入力・表示装置である。プロッタ530は、画像形成部材を備えており、印刷データに基づき用紙に出力画像を形成する画像形成部である。出力画像を形成する方式には、例えば、電子写真プロセスやインクジェット方式などがある。
【0095】
コントローラ510は、CPU511、記憶装置512、ネットワークI/F513、及び外部記憶I/F514などを備える制御基板であり、それぞれが相互にバスBで接続されている。
【0096】
記憶装置512は、RAM、ROM、及びHDDなどを含み、各種プログラムやデータを格納及び/又は保持する装置である。CPU511は、ROMやHDDから、プログラムやデータをRAM上に読み出し、処理を実行する(記憶装置から読み出したプログラムやデータの処理を実行する)ことで、装置全体の制御や搭載機能を実現する演算装置である。よって、上述した検査機能は、RAM上に読み出されたプログラムがCPU511により実行されることで実現できる。
【0097】
ネットワークI/F513は、画像形成装置500をデータ伝送路Nに接続するインタフェースである。これにより、画像形成装置500は、ネットワークI/F513を介して、通信機能を有する他の機器とデータ通信を行うことができる。外部記憶I/F514は、外部記憶装置にあたる記録媒体514aとのインタフェースである。記録媒体514aには、例えば、SDメモリカードやUSBメモリなどがある。これにより、画像形成装置500は、外部記憶I/F514を介して、記録媒体514aの読み取り及び/又は書き込みを行うことができる。
【0098】
以上のように、画像形成装置500でも、上記ハードウェア構成により、画像読取装置400と同様に、印刷物の検査サービスを当該装置単体で提供することができる。
【0099】
また、上記実施形態では、スキャナ140と検査装置100とが接続される検査システム1000について説明を行ったが、この限りでない。例えば、検査装置100が、上記画像読取装置400や上記画像形成装置500と接続される構成であってもよい。この場合、上記画像読取装置400や上記画像形成装置500からは、検査装置100に対して、検査対象画像Bが送信されることになる。
【符号の説明】
【0100】
100,200,300 検査装置
101 計算手段
102 基準画像取得手段
103 補正後基準画像取得手段
104 検査手段
201 補正後閾値画像取得手段
202 検査手段
301 補正後閾値画像取得手段
400 画像読取装置
440 画像読取部
500 画像形成装置
530 画像形成部
540 画像読取部
【先行技術文献】
【特許文献】
【0101】
【文献】特許第5330019号公報
【文献】特許第5678595号公報