(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-18
(45)【発行日】2022-04-26
(54)【発明の名称】硬化膜形成組成物
(51)【国際特許分類】
C09D 133/26 20060101AFI20220419BHJP
C09D 201/00 20060101ALI20220419BHJP
C09D 7/63 20180101ALI20220419BHJP
C09D 7/40 20180101ALI20220419BHJP
【FI】
C09D133/26
C09D201/00
C09D7/63
C09D7/40
(21)【出願番号】P 2018541078
(86)(22)【出願日】2017-09-20
(86)【国際出願番号】 JP2017033810
(87)【国際公開番号】W WO2018056281
(87)【国際公開日】2018-03-29
【審査請求日】2020-08-13
(31)【優先権主張番号】P 2016184455
(32)【優先日】2016-09-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003986
【氏名又は名称】日産化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】特許業務法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】湯川 昇志郎
(72)【発明者】
【氏名】星野 有輝
【審査官】井上 恵理
(56)【参考文献】
【文献】特許第6900951(JP,B2)
【文献】国際公開第2014/199958(WO,A1)
【文献】特開昭61-148208(JP,A)
【文献】特表2004-531617(JP,A)
【文献】国際公開第2011/162001(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 1/00 -201/10
C08F22/00 - 22/40
C08L 1/00 -101/14
G03F 7/004- 7/115
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)成分として、下記式(1)の構造を有する第1モノマー由来の構造単位を含む重合体、
(B)成分として光酸発生剤、
(C)成分として微粒子、及び
溶剤を含有することを特徴とする、硬化膜形成用樹脂組成物。
【化30】
(式中、R
1は水素またはメチル基を表し、R
2はそれが結合する酸素原子を伴って脱離可能な有機基を表す。)
【請求項2】
(D)成分として、(A)成分以外のその他重合体をさらに含有する請求項1に記載の硬化膜形成用樹脂組成物。
【請求項3】
R
2が、分岐および/または環化していてもよく、芳香族環、-O-、-S-、-CO-、-CS-、-NH-、又はこれらの組合せにより中断されていてもよく、フッ素で置換されていてもよい炭化水素基を表す、請求項1又は2に記載の硬化膜形成用樹脂組成物。
【請求項4】
R
2の炭素原子数が2以上である、請求項1乃至3に記載の硬化膜形成用樹脂組成物。
【請求項5】
(A)成分の重合体が、熱により(A)成分の重合体同士の間、又は(A)成分の重合体と(D)成分の重合体との間に共有結合を形成し得る基
であって、ヒドロキシ基、カルボキシル基、アミド基、アルコキシシリル基、イソシアネート基、ブロック化イソシアネート基、及び下記式(2)で表される基からなる群から選ばれる少なくとも1つの基(基(x))を有する第2モノマー由来の構造単位をさらに含有することを特徴とする、請求項2乃至4のいずれか一項に記載の硬化膜形成用樹脂組成物。
【化31】
(式中、R
3
はアルキル基、アルコキシ基、またはフェニル基を表す。)
【請求項6】
(D)成分の重合体が、熱により(A)成分の重合体同士の間、又は(A)成分の重合体と(D)成分の重合体との間に共有結合を形成し得る基
であって、ヒドロキシ基、カルボキシル基、アミド基、アルコキシシリル基、イソシアネート基、ブロック化イソシアネート基、及び下記式(2)で表される基からなる群から選ばれる少なくとも1つの基(基(x))を有するモノマー由来の構造単位を含有することを特徴とする、請求項2乃至5のいずれか一項に記載の硬化膜形成用樹脂組成物。
【化32】
(式中、R
3
はアルキル基、アルコキシ基、またはフェニル基を表す。)
【請求項7】
(E)成分として基(x)と熱反応し得る基を一分子あたり2つ以上有する化合物をさらに含有する、請求項5又は6に記載の硬化膜形成用樹脂組成物。
【請求項8】
(A)成分の重合体中のフッ素含有率が、重合体の全重量に基づいて5重量%以上である、請求項3乃至7のいずれか一項に記載の硬化膜形成用樹脂組成物。
【請求項9】
(D)成分の重合体中のフッ素含有率が、重合体の全重量に基づいて5重量%未満である、請求項2乃至8のいずれか一項に記載の硬化膜形成用樹脂組成物。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか一項に記載の硬化膜形成用樹脂組成物を用いて得られ、紫外線露光部が未露光部より親液化することを特徴とする硬化膜。
【請求項11】
紫外線露光部と未露光部の接触角の差が40°以上となる溶媒が少なくとも1種存在する、請求項10に記載の硬化膜。
【請求項12】
請求項10又は11の硬化膜からなる配線形成補助層。
【請求項13】
紫外線露光部が未露光部より親液化する硬化膜の製造のための、請求項1乃至9のいずれか一項に記載の硬化膜形成用樹脂組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルコキシメチル基を有する重合体及び無機微粒子を含む硬化膜形成組成物に関するものであり、更には該組成物を用いて作製された硬化膜及び電子デバイスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子デバイスの製造工程において、電極や機能性薄膜のパターン形成にあたり、液体の濡れ性の差を利用した塗り分け技術を機能性薄膜のパターニングに応用することが提案されている。これは、基板表面に、液体に濡れやすい領域と液体に濡れにくい領域とからなるパターニング層を作り、次いでこのパターニング層上に機能性薄膜形成材料の含有液体を塗布し続いて乾燥させることで、液体に濡れやすい領域にのみ機能性薄膜を形成させ、電子デバイスにおける配線などを作製するという方法である。
【0003】
上記電極のパターン形成に用いる画像形成液をインクジェットやスクリーン印刷などの各種印刷法にて印刷する際に、目的とする部位以外の領域に液の濡れ広がりを抑えるためには、目的とする部位のみを親水性化し、該部位以外の領域表面は疎水性化する必要がある。
近年、電極や機能性薄膜等のパターニング層として疎水性側鎖を含有するポリイミド前駆体または該ポリイミド前駆体から得られるポリイミドを採用し、ポリイミド膜の親疎水性を変化させることにより、水接触角を変化する事が可能であることを利用して、塗布型機能材料を塗り分ける技術が広く研究されている。
【0004】
例えば、脂肪族環を有するポリイミド前駆体又はポリイミドを用いて得られる濡れ性変化層の特性が明示されている(例えば特許文献1参照)。該文献においては、ポリイミドの脂肪族環が開裂することが、親疎水性の変化をもたらす要因の一つであると推察されており、側鎖の量(すなわち側鎖の数)が多いほど、表面エネルギー(臨界表面張力)が低くなり、疎液性になるとも推察されている。
また同文献の実施例において、脂肪族環を有する酸二無水物と炭化水素基を側鎖に有するジアミンを用いて得られるポリアミド酸を濡れ性変化層として用いた場合に、紫外線照射により親疎水性が大きく変化したとする結果が示されており、また該濡れ性変化層上にPEDOT/PSSからなる電極層を形成して、電子素子を作製したことが示されている。
また、フォトクロミック化合物と微粉末からなる材料により、超撥水性を有する材料の親水性を光により変化させる技術が研究されている(例えば特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2006/137366号パンフレット
【文献】特開平10-114888号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
画像形成液は溶質の溶解性、分散質の分散性、安全性などの必要性から表面張力の高い水を主溶媒とした溶液が用いられる場合が多くある。
しかし、上記文献1に例示される材料では、露光部の親水性を十分なものとするために高い露光量が必要であった。
また、画像形成液には水以外の有機溶媒が混合されている場合が多く、また濡れ性変化層は画像形成液塗布後に洗浄や上層材料の塗布といった目的のために有機溶媒に接触する場合がある。しかし、上記文献1および2に例示される材料では濡れ性変化層が架橋構造を形成していないため画像形成液およびその後の工程に使用される溶媒の種類によっては濡れ性変化層が溶解してしまうという問題があった。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、形成された画像形成用下層膜が高い撥液性(疎液性)を有し、少ない紫外線露光量で親撥液性を容易に変化させることができ、しかも、表面張力の高い液体に対しても親液部が高い親液性を有し、また有機溶媒に対する耐溶剤性を有する硬化膜形成用樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記目的を達成するため、鋭意検討を重ねた結果、脱離可能な側鎖を有する特定モノマー由来の構造単位を含む重合体と微粒子とを組み合わせることにより、紫外線照射によって親撥液性を大きく変化させることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
本発明は以下を包含する。
[1] (A)成分として、下記式(1)の構造を有する第1モノマー由来の構造単位を含む重合体、
(B)成分として光酸発生剤、
(C)成分として微粒子、及び
溶剤を含有することを特徴とする、硬化膜形成用樹脂組成物。
【化1】
(式中、R
1は水素またはメチル基を表し、R
2はそれが結合する酸素原子を伴って脱離可能な有機基を表す。)
[2] (D)成分として、(A)成分以外のその他重合体をさらに含有する請求項1に記載の硬化膜形成用樹脂組成物。
[3] R
2が、分岐および/または環化していてもよく、芳香族環、-O-、-S-、-CO-、-CS-、-NH-、又はこれらの組合せにより中断されていてもよく、フッ素で置換されていてもよい炭化水素基を表す、[1]又は[2]に記載の硬化膜形成用樹脂組成物。
[4] R
2の炭素原子数が2以上である、[1]乃至[3]のいずれかに記載の硬化膜形成用樹脂組成物。
[5] (A)成分の重合体が、熱により(A)成分の重合体同士の間、又は(A)成分の重合体と(D)成分の重合体との間に共有結合を形成し得る基(基(x))を有する第2モノマー由来の構造単位をさらに含有することを特徴とする、[1]乃至[4]のいずれか一項に記載の硬化膜形成用樹脂組成物。
[6] (D)成分の重合体が、熱により(D)成分の重合体同士の間、又は(A)成分の重合体と(D)成分の重合体との間に共有結合を形成し得る基(基(x))を有するモノマー由来の構造単位を含有することを特徴とする、[2]乃至[5]のいずれか一項に記載の硬化膜形成用樹脂組成物。
[7] 基(x)がヒドロキシ基、カルボキシル基、アミド基、アルコキシシリル基、イソシアネート基、ブロック化イソシアネート基、及び下記式(2)で表される基からなる群から選ばれる少なくとも1つの基である[5]又は[6]に記載の硬化膜形成用樹脂組成物。
【化2】
(式中、R
3はアルキル基、アルコキシ基、またはフェニル基を表す。)
[8] (E)成分として基(x)と熱反応し得る基を一分子あたり2つ以上有する化合物をさらに含有する、[5]乃至[7]のいずれか一項に記載の硬化膜形成用樹脂組成物。
[9] (A)成分の重合体中のフッ素含有率が、重合体の全重量に基づいて5重量%以上である、[3]乃至[8]のいずれか一項に記載の硬化膜形成用樹脂組成物。
[10] (D)成分の重合体中のフッ素含有率が、重合体の全重量に基づいて5重量%未満である、[2]乃至[9]のいずれか一項に記載の硬化膜形成用樹脂組成物。
[11] [1]乃至[10]のいずれか一項に記載の硬化膜形成用樹脂組成物を用いて得られ、紫外線露光部が未露光部より親液化することを特徴とする硬化膜。
[12] 紫外線露光部と未露光部の接触角の差が40°以上となる溶媒が少なくとも1種存在する、[11]に記載の硬化膜。
[13] [11]又は[12]の硬化膜からなる配線形成補助層。
[14] 紫外線露光部が未露光部より親液化する硬化膜の製造のための、[1]乃至[10]のいずれか一項に記載の硬化膜形成用樹脂組成物の使用。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る脱離可能な側鎖を有する特定モノマー由来の構造単位を含む重合体および微粒子を含む硬化膜形成用樹脂組成物は、これより形成された膜において、高表面張力の溶媒を主溶媒として用いた画像形成液に対しても、紫外線照射によって大きな接触角変化つまり親撥液性の変化を付与する事ができ、露光部で十分な親液性を付与することができる。従って、こうした特性を利用して電極などの機能性材料等の画像形成が可能な下層膜を形成することができる。
さらに、本発明の組成物から形成される硬化膜は、画像形成液をインクジェットのみならずスピンコートやディップ法など様々な方法で塗布することが可能であるため、生産性の点で有効な材料となる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、基板表面上に、親液性領域と撥液性領域とを含む画像形成用下層膜である硬化膜を形成するために好適な樹脂組成物を提供するものである。本発明の組成物は、(A)成分として、下記式(1)の構造を有する第1モノマー由来の構造単位を含む重合体、(B)成分として光酸発生剤、(C)成分として微粒子、及び溶剤を含有する。
【0012】
本発明に係る樹脂組成物を基板上に塗布し、未乾燥塗膜を形成する。
【0013】
次にこの未乾燥塗膜を加熱により乾燥し、パターニング用硬化膜とする。このとき、(C)成分の微粒子の影響により、塗膜の表面には(A)成分の重合体で覆われた微細な凹凸が形成される。
【0014】
パターニング用硬化膜に紫外線をパターン状に照射する。この場合の照射量は、従来技術における照射量より低くて足る。その後、塗膜に加熱処理を行う。本発明に係る樹脂組成物に含まれる光酸発生剤から発生する酸が存在する状態で加熱処理を行うことにより、表面に存在する重合体の紫外線に露光した領域が有機基を(例えばアルコール分子として)放出して自己架橋を起こす。このため、紫外線に露光した領域は撥液性を失い、親液性に変化する。かくしてパターニング用硬化膜を、効率的に親液性領域と撥液性領域とを含む画像形成用下層膜とすることができる。親液性化した領域は、選択的に画像形成液を受け入れることができるようになる。
【0015】
本発明の硬化膜形成組成物は、(A)成分として下記式(1)の構造を有するモノマー由来の構造単位を含む重合体、(B)成分として光酸発生剤、(C)成分として微粒子、及び溶剤を含有することを特徴とする、硬化膜形成用樹脂組成物である。
【化3】
(式中、R
1は水素またはメチル基を表し、R
2はそれが結合する酸素原子を伴って脱離可能な有機基を表す。)
【0016】
さらに、(A)成分、(B)成分、(C)成分および溶剤に加えて、(D)成分として(A)成分以外のその他重合体、(E)成分として架橋剤を含有することができる。さらに、本発明の効果を損なわない限りにおいて、その他の添加剤を含有することができる。
【0017】
以下の項目に沿って本発明について説明する。
【0018】
<(A)成分>
本発明の硬化膜形成組成物に含有される(A)成分は、上記式(1)の構造を有する第1モノマー由来の構造単位を含む重合体である。
本発明の硬化膜形成組成物に含有される(A)成分は、少なくとも上記式(1)の構造を有するモノマー由来の構造単位を含む重合体である(式中、R1、およびR2は上に定義したとおりである。)。
【0019】
本発明における(A)成分の重合体には、上記式(1)の構造を有するモノマーに加えて、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、スチレン、又はそれらの誘導体等の不飽和二重結合を有するモノマーを用いて共重合を行って得られる重合体も含まれる。
【0020】
従って、本発明における(A)成分には、
(a) 上記式(1)の構造を有するモノマー一種の単独重合体、
(b) 上記式(1)の構造を有するモノマー二種以上の共重合体、
(c) 上記式(1)の構造を有するモノマー(一種又は二種以上)とアクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、スチレン、又はそれらの誘導体等の不飽和二重結合を有するモノマーの共重合体が包含される。
(A)成分の重合体(以下、特定共重合体ともいう)は、斯かる構造を有する重合体であればよく、重合体を構成する高分子の主鎖の骨格及び側鎖の種類などについて特に限定されない。
【0021】
(A)成分の重合体は、重量平均分子量が1,000乃至200,000であることが好ましく、2,000乃至150,000であることがより好ましく、3,000乃至100,000であることがさらに好ましい。重量平均分子量が200,000を超えて過大なものであると、溶剤に対する溶解性が低下しハンドリング性が低下する場合があり、重量平均分子量が1,000未満で過小なものであると、熱硬化時に硬化不足になり溶剤耐性及び耐熱性が低下する場合がある。なお、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、標準試料としてポリスチレンを用いて得られる値である。以下、本明細書においても同様とする。
【0022】
式(1)におけるR2はそれが結合する酸素原子を伴って脱離可能な有機基を表す。
好ましくは、R2は炭化水素基、またはフッ素で置換された炭化水素基(本明細書中では、フッ素で置換されていてもよい炭化水素基とも言う)を表す。
当該フッ素で置換されていてもよい炭化水素基は分岐および/または環化していてもよい。また、当該炭化水素基は、芳香族環、-O-、-S-、-CO-、-CS-、-NH-、又はこれらの組合せにより中断されていてもよい。かかる中断基を例示すると、フェニレン、ナフチレン、ビフェニレン、エーテル、チオエーテル、カルボニル、カルボキシル、アミド、ウレア等が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
R2の炭素原子数は好ましくは2以上、より好ましくは2~18、最も好ましくは2~10である。
【0023】
式(1)におけるR2は炭化水素基である場合、代表的なR2の一つはアルキル基である。
【0024】
上記アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、1-メチル-n-ブチル基、2-メチル-n-ブチル基、3-メチル-n-ブチル基、1,1-ジメチル-n-プロピル基、1,2-ジメチル-n-プロピル基、2,2-ジメチル-n-プロピル基、1-エチル-n-プロピル基、n-ヘキシル基、1-メチル-n-ペンチル基、2-メチル-n-ペンチル基、3-メチル-n-ペンチル基、4-メチル-n-ペンチル基、1,1-ジメチル-n-ブチル基、1,2-ジメチル-n-ブチル基、1,3-ジメチル-n-ブチル基、2,2-ジメチル-n-ブチル基、2,3-ジメチル-n-ブチル基、3,3-ジメチル-n-ブチル基、1-エチル-n-ブチル基、2-エチル-n-ブチル基、1,1,2-トリメチル-n-プロピル基、1,2,2-トリメチル-n-プロピル基、1-エチル-1-メチル-n-プロピル基、1-エチル-2-メチル-n-プロピル基、n-ヘプチル基、1-メチル-n-ヘキシル基、2-メチル-n-ヘキシル基、3-メチル-n-ヘキシル基、1,1-ジメチル-n-ペンチル基、1,2-ジメチル-n-ペンチル基、1,3-ジメチル-n-ペンチル基、2,2-ジメチル-n-ペンチル基、2,3-ジメチル-n-ペンチル基、3,3-ジメチル-n-ペンチル基、1-エチル-n-ペンチル基、2-エチル-n-ペンチル基、3-エチル-n-ペンチル基、1-メチル-1-エチル-n-ブチル基、1-メチル-2-エチル-n-ブチル基、1-エチル-2-メチル-n-ブチル基、2-メチル-2-エチル-n-ブチル基、2-エチル-3-メチル-n-ブチル基、n-オクチル基、1-メチル-n-ヘプチル基、2-メチル-n-ヘプチル基、3-メチル-n-ヘプチル基、1,1-ジメチル-n-ヘキシル基、1,2-ジメチル-n-ヘキシル基、1,3-ジメチル-n-ヘキシル基、2,2-ジメチル-n-ヘキシル基、2,3-ジメチル-n-ヘキシル基、3,3-ジメチル-n-ヘキシル基、1-エチル-n-ヘキシル基、2-エチル-n-ヘキシル基、3-エチル-n-ヘキシル基、1-メチル-1-エチル-n-ペンチル基、1-メチル-2-エチル-n-ペンチル基、1-メチル-3-エチル-n-ペンチル基、2-メチル-2-エチル-n-ペンチル基、2-メチル-3-エチル-n-ペンチル基、3-メチル-3-エチル-n-ペンチル基、n-ノニル基、n-デシル基等が挙げられる。
【0025】
このようなモノマーの具体例としては、N-ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-エトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド等のヒドロキシメチル基又はアルコキシメチル基で置換されたアクリルアミド化合物又はメタクリルアミド化合物が挙げられる。なお(メタ)アクリルアミドとはメタクリルアミドとアクリルアミドの双方を意味する。
【0026】
式(1)におけるR2がフッ素で置換された炭化水素基である場合、代表的なR2の一つはフルオロアルキル基である。
上記フルオロアルキル基の炭素原子数は、2以上、2乃至50、2乃至30、2乃至18、2乃至10、4乃至10、4乃至8の順で好ましい。これらは分岐および/または環化していてもよい。
このようなフルオロアルキル基としては、2,2,2-トリフルオロエチル基、2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピル基、2-(パーフルオロブチル)エチル基、3-パーフルオロブチル-2-ヒドロキシプロピル基、2-(パーフルオロヘキシル)エチル基、3-パーフルオロヘキシル-2-ヒドロキシプロピル基、2-(パーフルオロオクチル)エチル基、3-パーフルオロオクチル-2-ヒドロキシプロピル基、2-(パーフルオロデシル)エチル基、2-(パーフルオロ-3-メチルブチル)エチル基、3-(パーフルオロ-3-メチルブチル)-2-ヒドロキシプロピル基、2-(パーフルオロ-5-メチルヘキシル)エチル基、2-(パーフルオロ-5-メチルヘキシル)-2-ヒドロキシプロピル基、2-(パーフルオロ-7-メチルオクチル)エチル基、及び2-(パーフルオロ-7-メチルオクチル)-2-ヒドロキシプロピル基、等が挙げられる。
【0027】
式(1)におけるR2がフッ素で置換された炭化水素基であって、その炭化水素基が-O-により中断されていてもよい場合、代表的なR2の一つはフルオロアルキルエーテル基である。
例えば、下記式1で表されるポリフルオロエーテル構造からなるRf基(a)が挙げられる。
-(X-O)n-Y ・・・式1
式1中、Xは、炭素原子数1~10の2価飽和炭化水素基又は炭素原子数1~10のフルオロ化された2価飽和炭化水素基であって、nで括られた単位毎に同一の基又は異なる基を示し、Yは、水素原子(Yに隣接する酸素原子に隣接する炭素原子にフッ素原子が結合していない場合に限る)、炭素原子数1~20の1価飽和炭化水素基又は炭素原子数1~20のフルオロ化された1価飽和炭化水素基を示し、nは2~50の整数を示す。ただし、式1におけるフッ素原子の総数は2以上である。
【0028】
式1におけるX、Yの態様として、好ましくは、Xは、炭素原子数1~10の水素原子1個を除いてフルオロ化されたアルキレン基又は炭素原子数1~10のパーフルオロ化されたアルキレン基であって、nで括られた単位毎に同一の基又は異なる基を示し、Yは、炭素原子数1~20の水素原子1個を除いてフルオロ化されたアルキル基又は炭素原子数1~20のパーフルオロ化されたアルキル基を示すものが挙げられる。
【0029】
式1におけるX、Yの態様として、より好ましくは、Xは、炭素原子数1~10のパーフルオロ化されたアルキレン基であって、nで括られた単位毎に同一の基又は異なる基を示し、Yは、炭素原子数1~20のパーフルオロ化されたアルキル基を示すものが挙げられる。
【0030】
式1においてnは2~50の整数を示す。nは2~30が好ましく、2~15がより好ましい。nが2以上であると、撥液性が良好である。nが50以下であると、露光部での撥液基の脱離が起こりやすくなり親液性が良好となる。
【0031】
また、式1で表されるポリフルオロエーテル構造からなるRf基(a)における炭素原子の総数は2以上、2乃至50、2乃至30、2乃至18、2乃至10、4乃至10、4乃至8の順で好ましい。当該範囲では、(A)成分である重合体は良好な撥液性を奏する。
【0032】
Xの具体例としては、-CF2-、-CF2CF2-、-CF2CF2CF2-、-CF2CF(CF3)-、-CF2CF2CF2CF2-、-CF2CF2CF(CF3)-、及びCF2CF(CF3)CF2-が挙げられる。
【0033】
Yの具体例としては、-CF3、-CF2CF3、-CF2CHF2、-(CF2)2CF3、-(CF2)3CF3、-(CF2)4CF3、-(CF2)5CF3、-(CF2)6CF3、-(CF2)7CF3、-(CF2)8CF3、-(CF2)9CF3、及び(CF2)11CF3、-(CF2)15CF3が挙げられる。
【0034】
式1で表されるポリフルオロエーテル構造からなるRf基(a)の好ましい態様としては、式2で表されるRf基(a)が挙げられる。
【0035】
-Cp-1F2(p-1)-O-(CpF2p-O)n-1-CqF2q+1 ・・・式2
式2中、pは2又は3の整数を示し、nで括られた単位毎に同一の基であり、qは1~20の整数、nは2~50の整数を示す。
【0036】
式2で表されるRf基(a)として、具体的には、
-CF2O(CF2CF2O)n-1CF3 (nは2~9)、
-CF(CF3)O(CF2CF(CF3)O)n-1C6F13 (nは2~6)、
-CF(CF3)O(CF2CF(CF3)O)n-1C3F7 (nは2~6)
が合成の容易さの点から好ましく挙げられる。
【0037】
(A)成分である重合体内のRf基(a)は、全て同一でもよいし、異なっていてもよい。
【0038】
上記したように、本発明に係る樹脂組成物に含まれる光酸発生剤(詳細は後述)から発生する酸により、(A)成分である重合体の紫外線に露光した部分が式(1)の構造から有機基を(例えばアルコール分子として)放出して架橋を起こす。
式(1)の構造以外にも、(A)成分の重合体は、熱により(A)成分の重合体同士の間、又は(A)成分の重合体と(D)成分のその他重合体との間に共有結合を形成し得る基(基(x))を有する第2モノマー由来の構造単位をさらに含有することができる(なお、別に添加してもよい架橋剤については(E)成分の項で説明する)。
【0039】
好ましくは基(x)は、ヒドロキシ基、カルボキシル基、アミド基、アルコキシシリル基、イソシアネート基、ブロック化イソシアネート基、及び下記式(2)で表される基からなる群から選ばれる少なくとも1つの基である。
【化4】
(式中、R
3はアルキル基、アルコキシ基、またはフェニル基を表す。)
これらのうち、ヒドロキシ基、カルボキシル基またはアミド基が好ましい。
【0040】
これらの熱反応性部位は直接結合又は連結基を介して(A)成分の他の重合体、又は(B)成分の重合体と共有結合を形成することができ、そのような連結基としては、炭素原子数1乃至15の直鎖状アルキレン基、炭素原子数3乃至20の分岐状アルキレン基、炭素原子数3乃至20の環状アルキレン基及びフェニレン基から選ばれる二価の基であるか、又は当該二価の基が複数結合してなる基である。この場合、連結基を構成する二価の基同士の結合、及び連結基と熱反応性部位との結合としては、単結合、エステル結合、アミド結合、ウレア結合またはエーテル結合が挙げられる。上記二価の基が複数となる場合は、二価の基同士は同一でも異なっていてもよく、上記結合が複数となる場合は、結合同士は同一でも異なっていてもよい。
【0041】
前記炭素原子数1乃至15の直鎖状アルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、n-プロピレン基、n-ブチレン基、n-ペンチレン基、n-ヘキシレン基、n-ヘプチレン基、n-オクチレン基、n-ノニレン基、n-デシレン基、n-ウンデシレン基、n-ドデシレン基、n-トリデシレン基、n-テトラデシレン基、n-ペンタデシレン基が挙げられる。
【0042】
前記炭素原子数3乃至20の分岐状アルキレン基としては、例えば、i-プロピレン基、i-ブチレン基、s-ブチレン基、t-ブチレン基、1-メチル-n-ブチレン基、2-メチル-n-ブチレン基、3-メチル-n-ブチレン基、1,1-ジメチル-n-プロピレン基、1,2-ジメチル-n-プロピレン基、2,2-ジメチル-n-プロピレン基、1-エチル-n-プロピレン基、1-メチル-n-ペンチレン基、2-メチル-n-ペンチレン基、3-メチル-n-ペンチレン基、4-メチル-n-ペンチレン基、1,1-ジメチル-n-ブチレン基、1,2-ジメチル-n-ブチレン基、1,3-ジメチル-n-ブチレン基、2,2-ジメチル-n-ブチレン基、2,3-ジメチル-n-ブチレン基、3,3-ジメチル-n-ブチレン基、1-エチル-n-ブチレン基、2-エチル-n-ブチレン基、1,1,2-トリメチル-n-プロピレン基、1,2,2-トリメチル-n-プロピレン基、1-エチル-1-メチル-n-プロピレン基及び1-エチル-2-メチル-n-プロピレン基等の他、炭素原子数が20までの範囲で且つ任意の箇所で分岐しているアルキレン基等が挙げられる。
【0043】
前記炭素原子数3乃至20の環状アルキレン基としては、例えば、シクロプロピレン基、シクロブチレン基、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基、シクロヘプチレン基及びシクロオクチレン基等の単環式アルキレン基、並びにノルボルニレン基、トリシクロデシレン基、テトラシクロドデシレン基及びアダマンチレン基等の多環式アルキレン基が挙げられる。
【0044】
上記式(2)において、R3が表すアルキル基としては、例えば、炭素原子数1乃至20のアルキル基が挙げられ、炭素原子数1乃至5のアルキル基が好ましい。
そのようなアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、1-メチル-n-ブチル基、2-メチル-n-ブチル基、3-メチル-n-ブチル基、1,1-ジメチル-n-プロピル基、1,2-ジメチル-n-プロピル基、2,2-ジメチル-n-プロピル基、1-エチル-n-プロピル基、n-ヘキシル基、1-メチル-n-ペンチル基、2-メチル-n-ペンチル基、3-メチル-n-ペンチル基、4-メチル-n-ペンチル基、1,1-ジメチル-n-ブチル基、1,2-ジメチル-n-ブチル基、1,3-ジメチル-n-ブチル基、2,2-ジメチル-n-ブチル基、2,3-ジメチル-n-ブチル基、3,3-ジメチル-n-ブチル基、1-エチル-n-ブチル基、2-エチル-n-ブチル基、1,1,2-トリメチル-n-プロピル基、1,2,2-トリメチル-n-プロピル基、1-エチル-1-メチル-n-プロピル基、1-エチル-2-メチル-n-プロピル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デカニル基、n-ウンデシル基、n-ドデシル基、n-トリデシル基、n-テトラデシル基、n-ペンタデシル基、n-ヘキサデシル基、n-ヘプタデシル基、n-オクタデシル基、n-ノナデシル基、n-エイコシル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基及びシクロヘプチル基等が挙げられる。
その中でも、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基及びイソブチル基等が好ましい。
【0045】
上記式(2)において、R3が表すアルコキシ基としては、例えば、炭素原子数1乃至20のアルコキシ基が挙げられ、炭素原子数1乃至5のアルコキシ基が好ましい。
そのようなアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、i-プロポキシ基、n-ブトキシ基、i-ブトキシ基、s-ブトキシ基、t-ブトキシ基、n-ペントキシ基、1-メチル-n-ブトキシ基、2-メチル-n-ブトキシ基、3-メチル-n-ブトキシ基、1,1-ジメチル-n-プロポキシ基、1,2-ジメチル-n-プロポキシ基、2,2-ジメチル-n-プロポキシ基、1-エチル-n-プロポキシ基、n-ヘキシルオキシ基、1-メチル-n-ペンチルオキシ基、2-メチル-n-ペンチルオキシ基、3-メチル-n-ペンチルオキシ基、4-メチル-n-ペンチルオキシ基、1,1-ジメチル-n-ブトキシ基、1,2-ジメチル-n-ブトキシ基、1,3-ジメチル-n-ブトキシ基、2,2-ジメチル-n-ブトキシ基、2,3-ジメチル-n-ブトキシ基、3,3-ジメチル-n-ブトキシ基、1-エチル-n-ブトキシ基、2-エチル-n-ブトキシ基、1,1,2-トリメチル-n-プロポキシ基、1,2,2,-トリメチル-n-プロポキシ基、1-エチル-1-メチル-n-プロポキシ基、1-エチル-2-メチル-n-プロポキシ基、n-ヘプチルオキシ基、n-オクチルオキシ基、n-ノニルオキシ基、n-デシルオキシ基、n-ウンデシルオキシ基、n-ドデシルオキシ基、n-トリデシルオキシ基、n-テトラデシルオキシ基、n-ペンタデシルオキシ基、n-ヘキサデシルオキシ基、n-ヘプタデシルオキシ基、n-オクタデシルオキシ基、n-ノナデシルオキシ基、n-エイコサデシルオキシ基、シクロプロポキシ基、シクロブトキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基及びシクロヘプチルオキシ基等が挙げられる。
その中でも、メトキシ基、エトキシ基及びn-プロポキシ基等が好ましい。
【0046】
式(1)で表される第1モノマー由来の構造単位に加えて、熱により(A)成分の重合体同士の間、又は(A)成分の重合体と(D)成分の重合体との間に共有結合を形成し得る基(基(x))であって、好ましくはヒドロキシ基、カルボキシル基、アミド基、アルコキシシリル基、イソシアネート基、ブロック化イソシアネート基、及び上記式(2)で表される基からなる群から選ばれる少なくとも1つの基(x)を有する第2モノマー由来の構造単位を含む共重合体の合成方法としては、式(1)の構造を有する第1モノマーと、熱により(A)成分の重合体同士の間、又は(A)成分の重合体と(B)成分の重合体との間に共有結合を形成し得る基(基(x))であって、好ましくはヒドロキシ基、カルボキシル基、アミド基、アルコキシシリル基、イソシアネート基、ブロック化イソシアネート基、及び上記式(2)で表される基からなる群から選ばれる少なくとも1つの基(x)を有する第2モノマーとを重合する方法が簡便である。
【0047】
ヒドロキシ基、カルボキシル基、アミド基、アルコキシシリル基、イソシアネート基、ブロック化イソシアネート基、及び上記式(2)で表される基からなる群から選ばれる少なくとも1つの基(x)を有するモノマーとしては、例えば、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、2-ヒドロキシプロピルアクリレート、2-ヒドロキシプロピルメタクリレート、4-ヒドロキシブチルアクリレート、4-ヒドロキシブチルメタクリレート、2,3-ジヒドロキシプロピルアクリレート、2,3-ジヒドロキシプロピルメタクリレート、グリセリンモノメタクリレート、ジエチレングリコールモノアクリレート、ジエチレングリコールモノメタクリレート、カプロラクトン2-(アクリロイルオキシ)エチルエステル、カプロラクトン2-(メタクリロイルオキシ)エチルエステル、ポリ(エチレングリコール)アクリレート、ポリ(プロピレングリコール)アクリレート、ポリ(エチレングリコール)エチルエーテルアクリレート、ポリ(エチレングリコール)エチルエーテルメタクリレート、5-アクリロイルオキシ-6-ヒドロキシノルボルネン-2-カルボキシリック-6-ラクトン、及び5-メタクリロイルオキシ-6-ヒドロキシノルボルネン-2-カルボキシリック-6-ラクトン等のヒドロキシ基を有するモノマー;アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、モノ-(2-(アクリロイルオキシ)エチル)フタレート、モノ-(2-(メタクリロイルオキシ)エチル)フタレート、N-(カルボキシフェニル)マレイミド、N-(カルボキシフェニル)メタクリルアミド、及びN-(カルボキシフェニル)アクリルアミド等のカルボキシル基を有するもモノマー;ヒドロキシスチレン、N-(ヒドロキシフェニル)メタクリルアミド、N-(ヒドロキシフェニル)アクリルアミド、N-(ヒドロキシフェニル)マレイミド、及びN-(ヒドロキシフェニル)マレイミド等のフェノール性ヒドロキシ基を有するモノマー;アクリルアミド、メタクリルアミド、N-メチルアクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、N,N-ジエチルアクリルアミド等のアミド基を有するモノマー;3-アクリロイルオキシトリメトキシシラン、3-アクリロイルオキシトリエトキシシラン、3-メタクリロイルオキシトリメトキシシラン、3-メタクリロイルオキシトリエトキシシラン等のアルコキシシリル基を有するモノマー;2-アセトアセトキシエチルアクリレート、2-アセトアセトキシエチルメタクリレート(エチレングリコールモノアセトアセテートモノメタクリレート)等の上記式(2)で表される基を有するモノマー;2-アクリロイルオキシエチルイソシアナート、2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネート等のイソシアネート基を有するモノマー;メタクリル酸 2-(0-[1’-メチルプロピリデンアミノ]カルボキシアミノ)エチル、2-[(3,5-ジメチルピラゾリル)カルボニルアミノ]エチルメタクリレート、ジエチル2-((2-(メタクリロイロキシ)エチル)カルバモイル)マロネート等のブロック化イソシアネート基を有するモノマーが挙げられる。
【0048】
また、本発明の硬化膜形成用樹脂組成物に含有される(A)成分は、式(1)で表されるモノマー由来の構造単位、ヒドロキシ基、カルボキシル基、アミド基、アルコキシシリル基、イソシアネート基、ブロック化イソシアネート基、及び上記式(2)で表される基からなる群から選ばれる少なくとも1つの基(x)を有するモノマー由来の構造単位、並びに上記以外のモノマー由来の構造単位を有する共重合体とすることもできる。
【0049】
このような共重合体の合成方法としては、式(1)で表されるモノマーと、ヒドロキシ基、カルボキシル基、アミド基、アルコキシシリル基、イソシアネート基、ブロック化イソシアネート基、及び上記式(2)で表される基からなる群から選ばれる少なくとも1つの基(x)を有するモノマー(以下、ヒドロキシ基、カルボキシル基、アミド基、アルコキシシリル基、イソシアネート基、ブロック化イソシアネート基、及び上記式(2)で表される基を特定官能基1ともいう)と、上記以外のモノマー(以下、第3モノマーともいう)とを重合する方法が簡便である。
【0050】
なお、式(1)で表されるモノマー、及び上記少なくとも1つの基(x)を有するモノマーについては上述した通りである。上記の第3モノマーとは、第1、第2モノマー以外のモノマーをいう。
そのようなモノマーの具体例としては、アクリル酸エステル化合物、メタクリル酸エステル化合物、マレイミド化合物、アクリロニトリル、マレイン酸無水物、スチレン化合物及びビニル化合物等が挙げられる。
以下、第3モノマーの具体例を挙げるが、これらに限定されるものではない。
【0051】
前記アクリル酸エステル化合物としては、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、イソプロピルアクリレート、ベンジルアクリレート、ナフチルアクリレート、アントリルアクリレート、アントリルメチルアクリレート、フェニルアクリレート、2,2,2-トリフルオロエチルアクリレート、tert-ブチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、イソボルニルアクリレート、2-メトキシエチルアクリレート、メトキシトリエチレングリコールアクリレート、2-エトキシエチルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、3-メトキシブチルアクリレート、2-メチル-2-アダマンチルアクリレート、2-プロピル-2-アダマンチルアクリレート、8-メチル-8-トリシクロデシルアクリレート、及び8-エチル-8-トリシクロデシルアクリレート等が挙げられる。
【0052】
前記メタクリル酸エステル化合物としては、例えば、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、ナフチルメタクリレート、アントリルメタクリレート、アントリルメチルメタクリレート、フェニルメタクリレート、2,2,2-トリフルオロエチルメタクリレート、tert-ブチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート、2-メトキシエチルメタクリレート、メトキシトリエチレングリコールメタクリレート、2-エトキシエチルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、3-メトキシブチルメタクリレート、2-メチル-2-アダマンチルメタクリレート、γ-ブチロラクトンメタクリレート、2-プロピル-2-アダマンチルメタクリレート、8-メチル-8-トリシクロデシルメタクリレート、及び8-エチル-8-トリシクロデシルメタクリレート等が挙げられる。
【0053】
前記ビニル化合物としては、例えば、メチルビニルエーテル、ベンジルビニルエーテル、ビニルナフタレン、ビニルカルバゾール、アリルグリシジルエーテル、及び3-エテニル-7-オキサビシクロ[4.1.0]ヘプタン等が挙げられる。
【0054】
前記スチレン化合物としては、例えば、スチレン、メチルスチレン、クロロスチレン、及びブロモスチレン等が挙げられる。
【0055】
前記マレイミド化合物としては、例えば、マレイミド、N-メチルマレイミド、N-フェニルマレイミド、及びN-シクロヘキシルマレイミド等が挙げられる。
【0056】
特定共重合体を得るために用いる各モノマーの使用量は、全モノマーの合計量に基づいて、式(1)で表されるモノマーが10乃至90モル%、ヒドロキシ基、カルボキシル基、アミド基、アルコキシシリル基、イソシアネート基、ブロック化イソシアネート基、及び上記式(2)で表される基からなる群から選ばれる少なくとも1つの基(x)を有するモノマーが10乃至90モル%であることが好ましい。特定官能基1を有するモノマーの含有量が10モル%よりも少ないと、充分な熱硬化性を付与し難いことがあり、得られた硬化膜の溶剤耐性を維持し難いことがある。
また、特定共重合体を得る際に第3モノマーを併用する場合、その使用量は、全モノマーの合計量に基づいて、90モル%以下であることが好ましい。
【0057】
本発明に用いる特定共重合体を得る方法は特に限定されないが、例えば、第1及び第2モノマーと所望により第3モノマーと重合開始剤等とを共存させた溶剤中において、50乃至110℃の温度下で重合反応により得られる。その際、用いられる溶剤は、第1及び第2モノマー、所望により用いられる第3モノマー及び重合開始剤等を溶解するものであれば特に限定されない。具体例としては、後述する<溶剤>に記載する。
前記方法により得られる特定共重合体は、通常、溶剤に溶解した溶液の状態である。
【0058】
また、上記方法で得られた特定共重合体の溶液を、攪拌下のジエチルエーテルや水等に投入して再沈殿させ、生成した沈殿物を濾過・洗浄した後に、常圧又は減圧下で、常温乾燥又は加熱乾燥し、特定共重合体の粉体とすることができる。前記操作により、特定共重合体と共存する重合開始剤及び未反応のモノマーを除去することができ、その結果、精製した特定共重合体の粉体が得られる。一度の操作で充分に精製できない場合は、得られた粉体を溶剤に再溶解させ、上記の操作を繰り返し行えば良い。
【0059】
本発明においては、特定共重合体は粉体形態で、あるいは精製した粉末を後述する溶剤に再溶解した溶液形態で用いてもよい。
【0060】
また、本発明においては、(A)成分の特定共重合体は、複数種の特定共重合体の混合物であってもよい。
【0061】
<(B)成分>
本実施の形態の硬化膜形成用樹脂組成物は、(A)成分及び溶剤に加えて、(B)成分として光酸発生剤をさらに含有する。
【0062】
(B)成分の光酸発生剤は、紫外線照射時に光分解して酸を発生する化合物であれば特に限定されるものではない。
【0063】
光酸発生剤が光分解した際に発生する酸としては、例えば、塩酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、プロパンスルホン酸、ブタンスルホン酸、ペンタンスルホン酸、オクタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、カンファスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、p-フェノールスルホン酸、2-ナフタレンスルホン酸、メシチレンスルホン酸、p-キシレン-2-スルホン酸、m-キシレン-2-スルホン酸、4-エチルベンゼンスルホン酸、1H,1H,2H,2H-パーフルオロオクタンスルホン酸、パーフルオロ(2-エトキシエタン)スルホン酸、ペンタフルオロエタンスルホン酸、ノナフルオロブタン-1-スルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸等のスルホン酸又はその水和物や塩等が挙げられる。
【0064】
光により酸を発生する化合物としては、例えば、ビス(トシルオキシ)エタン、ビス(トシルオキシ)プロパン、ビス(トシルオキシ)ブタン、p-ニトロベンジルトシレート、o-ニトロベンジルトシレート、1,2,3-フェニレントリス(メチルスルホネート)、p-トルエンスルホン酸ピリジニウム塩、p-トルエンスルホン酸モルフォニウム塩、p-トルエンスルホン酸エチルエステル、p-トルエンスルホン酸プロピルエステル、p-トルエンスルホン酸ブチルエステル、p-トルエンスルホン酸イソブチルエステル、p-トルエンスルホン酸メチルエステル、p-トルエンスルホン酸フェネチルエステル、シアノメチルp-トルエンスルホネート、2,2,2-トリフルオロエチルp-トルエンスルホネート、2-ヒドロキシブチルp-トルエンスルホネート、N-エチル-p-トルエンスルホンアミド、下記式[PAG-1]~式[PAG-41]で表される化合物等を挙げることができる。
【0065】
【0066】
【0067】
【0068】
【0069】
【0070】
【0071】
【0072】
本発明の硬化膜形成用樹脂組成物における(B)成分の含有量は、(A)成分の重合体と後述の(D)成分のその他重合体との合計質量を100質量部としたとき、好ましくは0.1質量部乃至20質量部、より好ましくは0.5質量部乃至20質量部、更に好ましくは1質量部乃至15質量部、最も好ましくは5質量部乃至15質量部である。(B)成分の含有量が20質量部より多い場合、組成物の保存安定性が低下する場合がある。
【0073】
<(C)成分>
本実施の形態の硬化膜形成用樹脂組成物は、(A)成分、(B)成分及び溶剤に加えて、(C)成分として、組成物中及び成膜後の膜中で溶解せず、安定である微粒子をさらに含有する。
【0074】
(C)成分の微粒子は、本実施の形態の硬化膜の表面に微細な凹凸形状にして親液部の親液性、撥液部の撥液性を増幅する役割を持つ。また、微粒子の構造により硬化膜に耐溶剤性、耐熱性といった安定性や、透明性、光拡散性、屈折率制御といった光学特性を付与できる場合もある。
【0075】
(C)成分の微粒子は前述の役割を果たすものであれば特に限定されないが、有機微粒子、無機微粒子を挙げることができる。
【0076】
前記有機・無機微粒子の形状は特に限定されないが、例えば、ビーズ状の略球形であってもよく、ビーズが連結した鎖状や、粉末等の不定形のものであってもよい。本発明で使用する前記有機微粒子の平均粒径は、5nm~10μmであることが望ましい。ここで平均粒径(μm)とは、Mie理論に基づくレーザー回折・散乱法により測定して得られる50%体積径(メジアン径)である。
【0077】
前記有機微粒子としては、例えば、ポリメタクリル酸メチル粒子(PMMA粒子)、シリコーン粒子、ポリスチレン粒子、ポリカーボネート粒子、アクリルスチレン粒子、ベンゾグアナミン粒子、メラミン粒子、ポリオレフィン粒子、ポリエステル粒子、ポリアミド粒子、ポリイミド粒子、ポリフッ化エチレン粒子等があげられる。
【0078】
前記有機微粒子は、市販品を好適に用いることができ、例えば、テクポリマー(登録商標)MBXシリーズ、同SBXシリーズ、同MSXシリーズ、同SMXシリーズ、同SSXシリーズ、同BMXシリーズ、同ABXシリーズ、同ARXシリーズ、同AFXシリーズ、同MBシリーズ、同MBPシリーズ、同MB-Cシリーズ、同ACXシリーズ、同ACPシリーズ[以上、積水化成品工業(株)製];トスパール(登録商標)シリーズ[モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン(同)製];エポスター(登録商標)シリーズ、同MAシリーズ、同STシリーズ、同MXシリーズ[以上、(株)日本触媒製];オプトビーズ(登録商標)シリーズ[日産化学工業(株)製];フロービーズシリーズ[住友精化(株)製];トレパール(登録商標)PPS、同PAI、同PES、同EP[以上、東レ(株)製];3M(登録商標)ダイニオンTFマイクロパウダーシリーズ[3M社製];ケミスノー(登録商標)MXシリーズ、同MZシリーズ、同MRシリーズ、同KMRシリーズ、同KSRシリーズ、同MPシリーズ、同SXシリーズ、同SGPシリーズ[以上、綜研化学(株)製];タフチック(登録商標)AR650シリーズ、同AR-750シリーズ、同FH-Sシリーズ、同A-20、同YKシリーズ、同ASFシリーズ、同HUシリーズ、同Fシリーズ、同Cシリーズ、同WSシリーズ[以上、東洋紡(株)製];アートパール(登録商標)GRシリーズ、同SEシリーズ、同Gシリーズ、同GSシリーズ、同Jシリーズ、同MFシリーズ、同BEシリーズ[以上、根上工業(株
)製];信越シリコーン(登録商標)KMPシリーズ[信越化学工業(株)製]等を用いることができる。
前記無機微粒子としては、例えばシリカ、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、タルク、炭酸カルシウム、マイカ、水酸化マグネシウム、酸化スズ、酸化ジルコニウム、酸化チタニウム等が挙げられる。
【0079】
これらの無機微粒子の中でもシリカが好ましく、特に平均一次粒子径が5nm~100nmの値を有するコロイダルシリカ粒子が好ましい。ここで平均一次粒子径は透過型電子教観察により測定される一次粒子径の平均値である。
【0080】
上述したコロイダルシリカ粒子としては、シリカゾルを用いることができる。シリカゾルはケイ酸ナトリウム水溶液を原料として公知の方法により製造される水性シリカゾルまたはその水性シリカゾルの分散媒である水を有機溶媒に置換して得られる有機溶媒分散シリカゾルを使用することができる。
【0081】
また、メチルシリケートやエチルシリケート等のアルコキシシランをアルコール等の有機溶媒中で触媒(例えば、アンモニア、有機アミン化合物、水酸化ナトリウム等のアルカリ触媒)の存在下に加水分解し、縮合して得られるシリカゾルまたはそのシリカゾルの分散媒を他の有機溶媒に溶媒置換したオルガノシリカゾルを用いることもできる。
【0082】
上記オルガノシリカゾルの市販品の例としては、例えば商品名MA-ST-S(メタノール分散シリカゾル、日産化学工業(株)製)、商品名MT-ST(メタノール分散シリカゾル、日産化学工業(株)製)、商品名MA-ST-UP(メタノール分散シリカゾル、日産化学工業(株)製)、商品名MA-ST-M(メタノール分散シリカゾル、日産化学工業(株)製)、商品名MA-ST-L(メタノール分散シリカゾル、日産化学工業(株)製)、商品名IPA-ST-S(イソプロパノール分散シリカゾル、日産化学工業(株)製)、商品名IPA-ST(イソプロパノール分散シリカゾル、日産化学工業(株)製)、商品名IPA-ST-UP(イソプロパノール分散シリカゾル、日産化学工業(株)製)、商品名IPA-ST-L(イソプロパノール分散シリカゾル、日産化学工業(株)製)、商品名IPA-ST-ZL(イソプロパノール分散シリカゾル、日産化学工業(株)製)、商品名NPC-ST-30(n-プロピルセロソルブ分散シリカゾル、日産化学工業(株)製)、商品名PGM-ST(1-メトキシ-2-プロパノール分散シリカゾル、日産化学工業(株)製)、商品名DMAC-ST(ジメチルアセトアミド分散シリカゾル、日産化学工業(株)製)、商品名XBA-ST(キシレン・n-ブタノール混合溶媒分散シリカゾル、日産化学工業(株)製)、商品名EAC-ST(酢酸エチル分散シリカゾル、日産化学工業(株)製)、商品名PMA-ST(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート分散シリカゾル、日産化学工業(株)製)、商品名MEK-ST(メチルエチルケトン分散シリカゾル、日産化学工業(株)製)、商品名MEK-ST-UP(メチルエチルケトン分散シリカゾル、日産化学工業(株)製)、商品名MEK-ST-L(メチルエチルケトン分散シリカゾル、日産化学工業(株)製)及び商品名MIBK-ST(メチルイソブチルケトン分散シリカゾル、日産化学工業(株)製)等を挙げることができるが、これらに限定されない。
これらの有機および無機微粒子は、一種類を単独で使用してもよいし、二種類以上を併用してもよい。
【0083】
本発明の硬化膜形成用樹脂組成物における(C)成分の含有量は、(A)成分、(B)成分、後述の(D)成分及び(E)成分の合計質量を100質量部としたとき、好ましくは20質量部乃至900質量部、より好ましくは60質量部乃至700質量部、更に好ましくは150質量部乃至400質量部である。(C)成分の含有量が20質量部より少ない場合、硬化膜表面に十分な凹凸が形成されない場合がある。また、(C)成分の含有量が900質量部より多い場合、硬化膜の製膜性が低下する場合がある。
【0084】
<(D)成分>
本発明の硬化膜形成用樹脂組成物は、(A)成分に加えて、(D)成分としてその他の重合体を混合し、所謂ポリマーブレンドの形態をとることができる。
このポリマーブレンドにおいて、含有する重合体((A)成分、(D)成分、及びその他の重合体)の構造等を適宜調整することにより、硬化膜を形成した際に膜内の厚さ方向で各重合体の濃度勾配を生じさせることが可能となるため、有用な手段として利用できる。
【0085】
例えば、親撥液性の変化が問題となるのは膜表面のみであるため、この観点からは、本発明の酸発生剤の効果により脱離するアルキル基を有する重合体は硬化膜の上層(表面層)にのみ存在すればよい。
各成分の配合割合については「硬化膜形成組成物の調製」の項で述べる。
【0086】
適当な構造の(D)成分を選択して上記ポリマーブレンドを行うことによって製膜性の向上、基板との密着性向上などの効果を付与することができる。
【0087】
上述のように、硬化膜の下層を低撥液層、上層を親撥液性変換層と為すには、それらの層を順次積層して作製することも可能であるが、操作が煩雑である。
このとき、低撥液性の材料と親撥液性変換層の材料(すなわち本発明の(A)成分の重合体)とを混合し、その際、上層の材料の極性又は分子量を、下層のものと比較して小さいものとすれば、混合液を基板に塗布・乾燥して溶媒が蒸発する間、上層の材料が表面に移行し層を形成する挙動を示すため、上述の濃度勾配(ここでいう層分離)を容易に制御することができる。
【0088】
前記下層を形成し得る膜の形成材料として最も好ましいものはアクリル重合体である。
下層材として用いられ得るその他の材料としては、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリプロピレン、ポリビニルアルコール、ポリビニルフェノール、ポリイソブチレン、ポリエステル、ポリイミドなどの一般的な有機ポリマーが挙げられる。
【0089】
また、上記ポリマーブレンドを、例えば膜厚400nm前後を要求される用途に用いる場合、硬化膜表面物性の面内におけるばらつきが大きくなることを防止するためには、該(A)成分の重合体を少なくとも5重量%以上含有することが好ましい。
【0090】
本発明の組成物において、(A)成分の式(1)におけるR2がフッ素で置換された炭化水素基である場合、すなわち、(A)成分が含フッ素重合体である場合は、成膜性の観点から、本発明の組成物が(D)成分であるその他重合体を含むことが好ましい。その際、(D)成分であるその他重合体のフッ素含有率は、重合体の全重量基準に基づくフッ素含有率が(A)成分以下であることが好ましい。すなわち、重合体(D)成分は、フッ素原子を含まないか、含んでいても微量である貧フッ素重合体であり、本樹脂組成物が基板上に塗布されたとき、塗布層の基板側に相対的に高濃度で存在するものであることが好ましい。好ましくは(D)成分の重合体中のフッ素含有率は、重合体の全重量に基づいて5重量%未満である。
【0091】
(A)成分の式(1)におけるR2がフッ素で置換された炭化水素基である場合、すなわち、(A)成分が含フッ素重合体である場合は、(D)成分としては、単位構造として、N-アルコキシメチル基を有するポリマーが好ましい。
【0092】
N-アルコキシメチル基のN、すなわち窒素原子としては、アミドの窒素原子、チオアミドの窒素原子、ウレアの窒素原子、チオウレアの窒素原子、ウレタンの窒素原子、含窒素へテロ環の窒素原子の隣接位に結合した窒素原子等が挙げられる。従って、N-アルコキシメチル基としては、アミドの窒素原子、チオアミドの窒素原子、ウレアの窒素原子、チオウレアの窒素原子、ウレタンの窒素原子、含窒素へテロ環の窒素原子の隣接位に結合した窒素原子等から選ばれる窒素原子にアルコキシメチル基が結合した構造が挙げられる。
【0093】
N-アルコキシメチル基を与えるモノマーとしては、上記の基を有するものであればよいが、好ましくは、上記式(1)においてR2がアルキル基である化合物が挙げられる。
【0094】
(D)成分の重合体は、熱により(D)成分の他の重合体と、又は(A)成分の重合体と共有結合を形成し得る基(基(x))を有するモノマー由来の構造単位を含有することができる。
例えば、本発明の硬化膜形成組成物に含有される(D)成分としては、ヒドロキシ基、カルボキシル基、アミド基、アルコキシシリル基、イソシアネート基、ブロック化イソシアネート基、及び上記式(2)で表される基からなる群から選ばれる基(x)(以下、特定官能基2ともいう。)を少なくとも2つ有する化合物を含有させることができる。
【0095】
(D)成分である高分子化合物としては、例えば、アクリル重合体、ポリアミック酸、ポリイミド、ポリビニルアルコール、ポリエステル、ポリエステルポリカルボン酸、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリアルキレンイミン、ポリアリルアミン、セルロース類(セルロース又はその誘導体)、フェノールノボラック樹脂等の直鎖構造又は分岐構造を有するポリマー、及びシクロデキストリン類等の環状ポリマー等が挙げられる。
【0096】
(D)成分である高分子化合物としては、好ましくは、アクリル重合体、シクロデキストリン類、セルロース類、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、及びフェノールノボラック樹脂が挙げられる。
【0097】
(D)成分の高分子化合物の好ましい一例であるアクリル重合体としては、アクリル酸、メタクリル酸、スチレン、ビニル化合物等の不飽和二重結合を有するモノマーを重合して得られる重合体であって、基(x)を含むモノマー又はその混合物を重合させることにより得られる重合体であればよく、アクリル重合体を構成する高分子の主鎖の骨格および側鎖の種類などについて特に限定されない。
【0098】
ヒドロキシ基、カルボキシル基、アミド基、アルコキシシリル基、イソシアネート基、ブロック化イソシアネート基、及び上記式(2)で表される基からなる群から選ばれる少なくとも1つの基(x)を有するモノマーとしては、好ましい例も含めて、上記(A)成分の項で挙げた「第2モノマー」が挙げられる。
【0099】
また、本発明においては、(D)成分の例であるアクリル重合体を合成するに際し、本発明の効果を損なわない限り、特定官能基を有さないモノマーを併用することができる。
【0100】
そのようなモノマーの具体例としては、好ましい例も含めて、上記(A)成分の項で挙げた「第3モノマー」が挙げられる。
【0101】
(D)成分の例であるアクリル重合体を得るために用いる第2モノマーの使用量は、(D)成分であるアクリル重合体を得るために用いる全モノマーの合計量に基づいて、2重量%乃至100重量%であることが好ましい。第2モノマーが過小の場合は、得られる硬化膜の塗布性が不充分となることがある。
また、アクリル重合体を得る際に第3モノマーを併用する場合、その使用量は、全モノマーの合計量に基づいて、98重量%以下であることが好ましい。
【0102】
(D)成分の例であるアクリル重合体を得る方法は特に限定されないが、例えば、第2モノマーと、所望により第3モノマーと、重合開始剤等とを共存させた溶剤中において、50℃乃至110℃の温度下で重合反応により得られる。その際、用いられる溶剤は、第2モノマーと、所望により第3モノマーおよび重合開始剤等を溶解するものであれば特に限定されない。具体例としては、後述する<溶剤>の項に記載する。
【0103】
以上の方法により得られる(D)成分の例であるアクリル重合体は、通常、溶剤に溶解した溶液の状態である。
【0104】
また、上記方法で得られた(D)成分の例であるアクリル重合体の溶液を、攪拌下のジエチルエーテルや水等に投入して再沈殿させ、生成した沈殿物を濾過・洗浄した後に、常圧又は減圧下で、常温乾燥又は加熱乾燥し、(D)成分の例であるアクリル重合体の粉体とすることができる。上述の操作により、(D)成分の例であるアクリル重合体と共存する重合開始剤及び未反応のモノマーを除去することができ、その結果、精製した(D)成分の例であるアクリル重合体の粉体が得られる。一度の操作で充分に精製できない場合は、得られた粉体を溶剤に再溶解させ、上述の操作を繰り返し行えば良い。
【0105】
(D)成分の好ましい例であるアクリル重合体は、重量平均分子量が3,000乃至200,000であることが好ましく、4,000乃至150,000であることがより好ましく、5,000乃至100,000であることがさらに好ましい。重量平均分子量が200,000を超えて過大なものであると、溶剤に対する溶解性が低下しハンドリング性が低下する場合があり、重量平均分子量が3,000未満で過小なものであると、熱硬化時に硬化不足になり溶剤耐性および耐熱性が低下する場合がある。
【0106】
(D)成分の高分子化合物の好ましい一例であるシクロデキストリン類としては、α-シクロデキストリン、β-シクロデキストリン及びγ-シクロデキストリン等のシクロデキストリン;メチル-α-シクロデキストリン、メチル-β-シクロデキストリン、及びメチル-γ-シクロデキストリン等のメチル化シクロデキストリン;ヒドロキシメチル-α-シクロデキストリン、ヒドロキシメチル-β-シクロデキストリン、ヒドロキシメチル-γ-シクロデキストリン、2-ヒドロキシエチル-α-シクロデキストリン、2-ヒドロキシエチル-β-シクロデキストリン、2-ヒドロキシエチル-γ-シクロデキストリン、2-ヒドロキシプロピル-α-シクロデキストリン、2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン、2-ヒドロキシプロピル-γ-シクロデキストリン、3-ヒドロキシプロピル-α-シクロデキストリン、3-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン、3-ヒドロキシプロピル-γ-シクロデキストリン、2,3-ジヒドロキシプロピル-α-シクロデキストリン、2,3-ジヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン、及び2,3-ジヒドロキシプロピル-γ-シクロデキストリン等のヒドロキシアルキルシクロデキストリン等が挙げられ、例えば、ヒドロキシアルキルシクロデキストリンが好ましい。
【0107】
(D)成分の高分子化合物の好ましい一例であるセルロース類としては、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等のヒドロキシアルキルセルロース類、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルエチルセルロース等のヒドロキシアルキルアルキルセルロース類及びセルロース等が挙げられ、例えば、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等のヒドロキシアルキルセルロース類が好ましい。
【0108】
次に、(D)成分の高分子化合物の好ましい一例であるポリエーテルポリオールとしては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、プロピレングリコールやビスフェノールA、トリエチレングリコール、ソルビトール等の多価アルコールにプロピレンオキサイドやポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等を付加したものが挙げられる。ポリエーテルポリオールの具体例としては、ADEKA製アデカポリエーテルPシリーズ、Gシリーズ、EDPシリーズ、BPXシリーズ、FCシリーズ、CMシリーズ、日油製ユニオックス(登録商標)HC-40、HC-60、ST-30E、ST-40E、G-450、G-750、ユニオール(登録商標)TG-330、TG-1000、TG-3000、TG-4000、HS-1600D、DA-400、DA-700、DB-400、ノニオン(登録商標)LT-221、ST-221、OT-221等が挙げられる。
【0109】
(D)成分の高分子化合物の好ましい一例であるポリエステルポリオールとしては、アジピン酸、セバシン酸、イソフタル酸等の多価カルボン酸にエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のジオールを反応させたものが挙げられる。ポリエステルポリオールの具体例としては、DIC製ポリライト(登録商標)OD-X-286、OD-X-102、OD-X-355、OD-X-2330、OD-X-240、OD-X-668、OD-X-2108、OD-X-2376、OD-X-2044、OD-X-688、OD-X-2068、OD-X-2547、OD-X-2420、OD-X-2523、OD-X-2555、OD-X-2560、クラレ製ポリオールP-510、P-1010、P-2010、P-3010、P-4010、P-5010、P-6010、F-510、F-1010、F-2010、F-3010、P-1011、P-2011、P-2013、P-2030、N-2010、PNNA-2016等が挙げられる。
【0110】
(D)成分の高分子化合物の好ましい一例であるポリカーボネートポリオールとしては、トリメチロールプロパンやエチレングリコール等の多価アルコールに炭酸ジエチル、炭酸ジフェニルやエチレンカーボネート等を反応させたものが挙げられる。ポリカーボネートポリオールの具体例としてはダイセル化学製プラクセル(登録商標)CD205、CD205PL、CD210、CD220、クラレ製ポリカーボネートジオールC-590、C-1050、C-2050、C-2090、C-3090等が挙げられる。
【0111】
(D)成分の高分子化合物の好ましい一例であるポリカプロラクトンポリオールとしては、トリメチロールプロパンやエチレングリコール等の多価アルコールを開始剤としてε-カプロラクトンを開環重合させたものが挙げられる。ポリカプロラクトンポリオールの具体例としてはDIC製ポリライト(登録商標)OD-X-2155、OD-X-640、OD-X-2568、ダイセル化学製プラクセル(登録商標)205、L205AL、205U、208、210、212、L212AL、220、230、240、303、305、308、312、320等が挙げられる。
【0112】
(D)成分の高分子化合物の好ましい一例であるフェノールノボラック樹脂としては、例えば、フェノール-ホルムアルデヒド重縮合物等が挙げられる。
【0113】
本発明の硬化膜形成用樹脂組成物において、(D)成分の化合物は、粉体形態で、又は精製した粉末を後述する溶剤に再溶解した溶液形態で用いてもよい。
【0114】
また、本発明の硬化膜形成用樹脂組成物において、(D)成分は、一種単独であってもよいし、(D)成分として例示された化合物の複数種の混合物であってもよい。
【0115】
本発明の硬化膜形成用樹脂組成物における(D)成分の含有量は、(A)成分がフッ素を含有する重合体である場合には、(A)成分10質量部に対して、5乃至95質量部、30乃至95質量部、50乃至95質量部、60乃至95質量部、80乃至95質量部の順で好ましい。(D)成分の含有量が過大である場合には画像形成能力が低下するという問題がある。過少である場合は製膜性が低下するという問題がある。
【0116】
<(E)成分>
本発明に係る硬化膜形成用樹脂組成物は、(E)成分として基(x)と熱反応し得る基を一分子あたり2つ以上有する化合物をさらに含有することができる。(E)成分は架橋剤であり、任意選択的に組成物中に導入されるものである。例えば、(A)、(D)成分が有するヒドロキシ基等と熱反応により橋架け構造を形成しうる構造を有する化合物である。
【0117】
以下、具体例を挙げるがこれらに限定されるものではない。熱架橋剤は、例えば、(E-1)フェノプラスト系化合物、(E-2)エポキシ系化合物、(E-3)イソシアネート基またはブロック化イソシアネート基を一分子あたり2個以上有する架橋性化合物、(E-4)メルドラム酸構造を一分子あたり2個以上有する架橋性化合物が好ましい。また、基(x)がイソシアネート基、ブロック化イソシアネート基、アルコキシシリル基である場合には基(x)を一分子あたり2個以上有する化合物を架橋剤として用いることができる。これらの架橋剤は単独または2種以上の組み合わせで使用することができる。
【0118】
(E-1)フェノプラスト系化合物の具体例としては、例えば、2,6-ビス(ヒドロキシメチル)フェノール、2,6-ビス(ヒドロキシメチル)クレゾール、2,6-ビス(ヒドロキシメチル)-4-メトキシフェノール、3,3’,5,5’-テトラキス(ヒドロキシメチル)ビフェニル-4,4’-ジオール、3,3’-メチレンビス(2-ヒドロキシ-5-メチルベンゼンメタノール)、4,4’-(1-メチルエチリデン)ビス[2-メチル-6-ヒドロキシメチルフェノール]、4,4’-メチレンビス[2-メチル-6-ヒドロキシメチルフェノール]、4,4’-(1-メチルエチリデン)ビス[2,6-ビス(ヒドロキシメチル)フェノール]、4,4’-メチレンビス[2,6-ビス(ヒドロキシメチル)フェノール]、2,6-ビス(メトキシメチル)フェノール、2,6-ビス(メトキシメチル)クレゾール、2,6-ビス(メトキシメチル)-4-メトキシフェノール、3,3’,5,5’-テトラキス(メトキシメチル)ビフェニル-4,4’-ジオール、3,3’-メチレンビス(2-メトキシ-5-メチルベンゼンメタノール)、4,4’-(1-メチルエチリデン)ビス[2-メチル-6-メトキシメチルフェノール]、4,4’-メチレンビス[2-メチル-6-メトキシメチルフェノール]、4,4’-(1-メチルエチリデン)ビス[2,6-ビス(メトキシメチル)フェノール]、4,4’-メチレンビス[2,6-ビス(メトキシメチル)フェノール]、等が挙げられる。市販品としても入手が可能であり、その具体例としては、26DMPC、46DMOC、DM-BIPC-F、DM-BIOC-F、TM-BIP-A、BISA-F、BI25X-DF、BI25X-TPA(以上、旭有機材工業(株)製)等が挙げられる。
【0119】
これらの架橋性化合物は、単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0120】
また本発明の硬化膜形成用樹脂組成物は、(E-2)成分として、エポキシ系化合物を含有することができる。
エポキシ系化合物としては、例えば式(e2)で表される架橋性化合物を含有することができる。
【化12】
(式中、kは2~10の整数、mは0~4の整数を示し、R
21はk価の有機基を表す)
【0121】
かかる成分は、式(e2)で表されるシクロアルケンオキサイド構造を有する化合物であれば特に限定されない。その具体例としては、下記式E-2-1及びE-2-2や、以下に示す市販品等が挙げられる。
【化13】
【化14】
【0122】
市販品としては、エポリードGT-401、同GT-403、同GT-301、同GT-302、セロキサイド2021、セロキサイド3000(ダイセル化学工業(株)製 商品名)、脂環式エポキシ樹脂であるデナコールEX-252(ナガセケムッテクス(株)製 商品名)、CY175、CY177、CY179(以上、CIBA-GEIGY A.G製 商品名)、アラルダイトCY-182、同CY-192、同CY-184(以上、CIBA-GEIGY A.G製 商品名)、エピクロン200、同400(以上、DIC(株)製 商品名)、エピコート871、同872(以上、油化シェルエポキシ(株)製 商品名)、ED-5661、ED-5662(以上、セラニーズコーティング(株)製 商品名)、等を挙げることができる。また、サイクロマーM-100((株)ダイセル製 商品名)等を原料として得られる重合体を用いることができる。
【0123】
また、エポキシ系化合物としては、例えば下記式(E-2-3)の部分構造を有する化合物を用いることができる。
【化15】
(式中、pは2~10の整数を示し、R
31はp価の有機基を表す。)
【0124】
式(E-2-3)で表されるオキシラン構造を有する化合物であれば特に限定されない。その具体例としては、下記式(E-2-4)や、以下に示す市販品等が挙げられる。
【化16】
【0125】
市販品としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂としては、例えば、「エピコート828」、「エピコート834」、「エピコート1001」、「エピコート1004」(商品名、いずれもジャパンエポキシレジン社製)、「エピクロン850」、「エピクロン860」、「エピクロン4055」(商品名、いずれも大日本インキ化学工業(株)製)等が挙げられる。ビスフェノールF型エポキシ樹脂としては、例えば、「エピコート807」(商品名、ジャパンエポキシレジン(株)製)、「エピクロン830」(商品名、大日本インキ化学工業(株)製)等が挙げられる。フェノールノボラック型エポキシ樹脂としては、例えば、「エピクロンN-740」、「エピクロンN-770」、「エピクロンN-775」(商品名、いずれも大日本インキ化学工業(株)製)、「エピコート152」、「エピコート154」(商品名、いずれもジャパンエポキシレジン(株)製)等が挙げられる。クレゾールノボラック型エポキシ樹脂としては、例えば、「エピクロンN-660」、「エピクロンN-665」、「エピクロンN-670」、「エピクロンN-673」、「エピクロンN-680」、「エピクロンN-695」、「エピクロンN-665-EXP」、「エピクロンN-672-EXP」(商品名、いずれも大日本インキ化学工業(株)製)等が挙げられる。グリシジルアミン型エポキシ樹脂としては、例えば、「エピクロン430」、「エピクロン430-L」(商品名、大日本インキ化学工業(株)製)、「TETRAD-C」、「TETRAD-X」(商品名、いずれも三菱ガス化学(株)製)、「エピコート604」、「エピコート630」(商品名、いずれもジャパンエポキシレジン(株)製)、「スミエポキシELM120」、「スミエポキシELM100」、「スミエポキシELM434」、「スミエポキシELM434HV」(商品名、いずれも住友化学工業(株)製)、「エポトートYH-434」、「エポトートYH-434L」(商品名、いずれも東都化成(株)製)、「アラルダイトMY-720」(商品名、旭チバ(株)製)等を挙げることができる。また、グリシジルメタクリレート等を原料として得られる重合体を用いることができる。
【0126】
これらの架橋性化合物は、単独または2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0127】
(E-3)成分は、イソシアネート基またはブロック化イソシアネート基を1分子中に2個以上有する化合物であれば特に限定されない。その具体例としては、下記に示す市販品等が挙げられる。
市販品としては、B-830、B-815N、B-842N、B-870N、B-874N、B-882N、B-7005、B-7030、B-7075、B-5010(以上、三井化学(株)製)、デュラネート(登録商標)17B-60PX、同TPA-B80E、同MF-B60X、同MF-K60X、同E402-B80T(以上、旭化成ケミカルズ(株)製)等が挙げられる。
また、カレンズ(登録商標)AOI、カレンズMOI、カレンズMOI-BM、カレンズMOI-BP、カレンズMOI-DEM(以上、昭和電工(株)製)等のブロック化イソシアネート基を有するモノマー等を原料として得られる重合体を用いることができる。
【0128】
(E-4)成分は、メルドラム酸構造を一分子あたり2個以上有する架橋性化合物である。この中でも、下記式[A]で表される化合物が好ましい。
【化17】
(式中、W
1はk
1価の有機基を表す。V
1は、-H、-OH、-SR、-ORまたは-NHRを表し、Rは、ベンゼン環、シクロヘキサン環、ヘテロ環、フッ素、エーテル結合、エステル結合、アミド結合を任意の場所に含んでいてもよい炭素原子数が1~35の一価の有機基を表す。k
1は、1~8の整数を表す。)
【0129】
k
1が2である場合、W
1としてはC
2~C
10の直鎖、分岐または環状のアルキレンが好ましい。このような化合物は、製造方法も含めて、国際特許出願公開WO2012/091089号公報に記載されている。
このような化合物としては、下記式(E4)で表される化合物が特に好ましい。
【化18】
【0130】
上記式[A]で表される架橋剤は、1種類でもよく、また、2種類以上を併用してもよい。
【0131】
また、基(x)がイソシアネート基、ブロック化イソシアネート基、アルコキシシリル基である場合には基(x)を一分子あたり2個以上有する化合物を架橋剤として用いることができる。
その具体例としては、例えば、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、アジピン酸、アジポアミド、1-(4-(2-(4-(3-オキソーブチル)-フェノキシ)-エトキシ)-フェニル)-ブタン―1,3-ジオン、1,4-ブタンジオールジアセトアセテート等が挙げられる。
また、基(x)を1分子鎖あたり2個以上有する高分子化合物として(D)成分として規定された重合体のうち、基(x)を1分子鎖あたり2個以上有する重合体を用いることもできる。
【0132】
これらのうち、反応性及び耐溶剤性の観点からメルドラム酸構造を有する架橋性化合物、ジエチル2-((2-(メタクリロイロキシ)エチル)カルバモイル)マロネートのモノマーを原料として得られる、ブロック化イソシアネート基を有する重合体が好ましい。
【0133】
上記架橋剤として(E)成分を添加した場合の含有量は、(A)成分と(D)成分の合計100質量部に対して3~50質量部、好ましくは7~40質量部、より好ましくは10~30質量部である。架橋性化合物の含有量が少ない場合には、架橋性化合物によって形成される架橋の密度が十分ではないため、パターン形成後の耐溶剤性を向上させる効果が得られない場合がある。一方、50質量部を超える場合には、未架橋の架橋性化合物が存在し、パターン形成後の耐熱性、耐溶剤性、長時間の焼成に対する耐性等が低下し、また、硬化膜形成用樹脂組成物の保存安定性が悪くなる場合がある。
【0134】
<その他の添加剤>
本発明の実施形態の硬化膜形成用樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない限りにおいて、その他の添加剤を含有することができる。
その他の添加剤としては、例えば、増感剤を含有することができる。増感剤は、本実施形態の硬化膜形成組成物から本発明の実施形態の硬化膜を形成するに際し、その光反応を促進することにおいて有効となる。
【0135】
増感剤としては、ベンゾフェノン、アントラセン、アントラキノンおよびチオキサントン等の誘導体並びにニトロフェニル化合物等が挙げられる。これらのうちベンゾフェノンの誘導体であるN,N-ジエチルアミノベンゾフェノンおよびニトロフェニル化合物である2-ニトロフルオレン、2-ニトロフルオレノン、5-ニトロアセナフテン、4-ニトロビフェニル、4-ニトロけい皮酸、4-ニトロスチルベン、4-ニトロベンゾフェノン、5-ニトロインドールが特に好ましい。
これらの増感剤は特に上述のものに限定されるものではない。これらは、単独または2種以上の化合物を併用することが可能である。
【0136】
本発明の実施形態において、増感剤の使用割合は、(A)成分、(B)成分及び必要に応じて(D)成分並びに(E)成分の合計量の100質量部に対して0.1質量部乃至20質量部であることが好ましく、より好ましくは0.2質量部乃至10質量部である。この割合が過小である場合には、増感剤としての効果を充分に得られない場合があり、過大である場合には、形成される硬化膜の透過率が低下したり塗膜が荒れたりすることがある。
【0137】
また、本発明の実施形態の硬化膜形成組成物は、本発明の効果を損なわない限りにおいて、その他の添加剤として、シランカップリング剤、界面活性剤、レオロジー調整剤、顔料、染料、保存安定剤、消泡剤、酸化防止剤等を含有することができる。
【0138】
<溶剤>
本発明の実施形態の硬化膜形成用樹脂組成物は、溶剤に溶解・分散した分散液状態で用いられることが多い。その際に用いられる溶剤は、(A)成分、(B)成分および(C)成分、必要に応じて(D)成分、(E)成分および/または、その他の添加剤を分散・溶解するものであり、そのような溶解能を有する溶剤であれば、その種類および構造などは特に限定されるものでない。
【0139】
溶剤の具体例を挙げると、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールプロピルエーテルアセテート、シクロペンチルメチルエーテル、イソプロピルアルコール、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、2-ブタノン、3-メチル-2-ペンタノン、2-ペンタノン、2-ヘプタノン、γ―ブチロラクトン、2-ヒドロキシプロピオン酸エチル、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオン酸エチル、エトキシ酢酸エチル、ヒドロキシ酢酸エチル、2-ヒドロキシ-3-メチルブタン酸メチル、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-メトキシプロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸メチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、乳酸ブチル、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、およびN-メチルピロリドン等が挙げられる。
【0140】
これらの溶剤は、一種単独で、または二種以上の組合せで使用することができる。これら溶剤のうち、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、シクロヘキサノン、2-ヘプタノン、プロピレングリコールプロピルエーテル、プロピレングリコールプロピルエーテルアセテート、乳酸エチル、乳酸ブチル、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-メトキシプロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸エチルおよび3-エトキシプロピオン酸メチルは成膜性が良好で安全性が高いためより好ましい。
【0141】
本発明に係る硬化膜形成用樹脂組成物から溶剤を除いた成分を固形分とみなすと、当該組成物に対する固形分の割合は、例えば1質量%以上30質量%以下である。
【0142】
<硬化膜形成組成物の調製>
本発明に係る硬化膜形成用樹脂組成物は、(A)成分として、上記式(1)の構造を有する第1モノマー由来の構造単位を含む重合体と、(B)成分として光酸発生剤と、(C)成分として微粒子と、溶剤とを含有する。また、(D)成分として、成分(A)以外の重合体であって、重合体の全重量基準に基づくフッ素含有率が(A)成分以下である重合体と、(E)成分として架橋剤を含有することができる。そして、本発明の効果を損なわない限りにおいて、その他の添加剤を含有することができる。
【0143】
本発明に係る硬化膜形成用樹脂組成物の好ましい例は、以下のとおりである。
[1]:(A)成分として、上記式(1)の構造を有する第1モノマー由来の構造単位を含む重合体と、(A)成分100質量部に対して0.1質量部乃至20質量部の(B)成分の光酸発生剤と、(C)成分として、(A)成分と(B)成分との合計量の100質量部に対して20乃至900質量部の微粒子、及び溶剤を含有する硬化膜形成用樹脂組成物。
[2]:(A)成分として、上記式(1)の構造を有する第1モノマー由来の構造単位を含む重合体と、(D)成分として(A)成分以外の重合体とを、(A)成分:(D)成分の質量比5-67:95-33で含み、(A)成分と(D)成分との合計量の100質量部に対して0.1質量部乃至20質量部の(B)成分の光酸発生剤と、(C)成分として、(A)成分と(B)成分と(D)成分との合計量の100質量部に対して20乃至900質量部の微粒子、及び溶剤を含有する硬化膜形成用樹脂組成物。
[3]:(A)成分として、上記式(1)の構造を有する第1モノマー由来の構造単位を含む重合体と、(A)成分100質量部に対して0.1質量部乃至20質量部の(B)成分の光酸発生剤と、(A)成分100質量部に対して3質量部乃至50質量部の(E)成分の架橋剤と、(C)成分として、(A)成分と(B)成分と(E)成分との合計量の100質量部に対して20乃至900質量部の微粒子、及び溶剤を含有する硬化膜形成用樹脂組成物。
[4]:(A)成分として、上記式(1)の構造を有する第1モノマー由来の構造単位を含む重合体と、(D)成分として(A)成分以外の重合体とを、(A)成分:(D)成分の質量比5-67:95-33で含み、(A)成分と(D)成分との合計量の100質量部に対して0.1質量部乃至20質量部の(B)成分の光酸発生剤と、(A)成分と(D)成分との合計量の100質量部に対して3質量部乃至50質量部の(E)成分の架橋剤と、(C)成分として、(A)成分と(B)成分と(D)成分と(E)成分との合計量の100質量部に対して20乃至900質量部の微粒子、及び溶剤を含有する硬化膜形成用樹脂組成物。
【0144】
本発明に係る硬化膜形成組成物を溶液として用いる場合の配合割合、調製方法等を以下に詳述する。
本実施形態の硬化膜形成組成物における固形分の割合は、各成分が均一に溶剤に溶解・分散している限り、特に限定されるものではないが、1質量%乃至80質量%であり、好ましくは2質量%乃至60質量%であり、より好ましくは3質量%乃至40質量%である。ここで、固形分とは、硬化膜形成組成物の全成分から溶剤を除いたものをいう。
【0145】
本実施形態の硬化膜形成組成物の調製方法は、特に限定されない。調製法としては、例えば、溶剤に溶解した(A)成分の溶液に(B)成分および(C)成分、さらには(D)成分、(E)成分を所定の割合で混合し、均一な分散液とする方法、または、この調製法の適当な段階において、必要に応じてその他添加剤をさらに添加して混合する方法が挙げられる。
【0146】
本実施形態の硬化膜形成組成物の調製においては、溶剤中の重合反応によって得られる特定共重合体の溶液をそのまま使用することができる。この場合、例えば、(A)成分の重合体を調製した溶液に、(B)成分、(C)成分、(D)成分、(E)成分、その他の任意成分を加えて均一な分散液とする。この際に、濃度調整を目的としてさらに溶剤を追加投入してもよい。このとき、(A)成分の調製過程で用いられる溶剤と、硬化膜形成組成物の濃度調整に用いられる溶剤とは同一であってもよく、また異なってもよい。
【0147】
また、調製された硬化膜形成組成物の分散液は、(C)成分である微粒子の粒子径に応じて孔径が0.2~20μm程度のフィルタなどを用いて濾過した後、使用することが好ましい。
【0148】
<塗膜及び硬化膜の製造方法>
本発明の硬化膜形成用樹脂組成物をポリプロピレン、ポリエチレン、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリエチレンナフタレート、ポリイミドなどの汎用のプラスチック基板やガラス基板などの上に、ディップ法、スピンコート法、転写印刷法、ロールコート法、インクジェット法、スプレー法、刷毛塗り等によって塗布し、その後、ホットプレートまたはオーブン等でこの塗膜を乾燥・加熱処理することにより、画像形成用下層膜や絶縁膜として使用できるパターニング用硬化膜が形成される。
【0149】
上記加熱処理の方法としては特に限定されるものでないが、ホットプレートやオーブンを用いて、適切な雰囲気下、即ち大気、窒素等の不活性ガス、真空中等で行う方法を例示することができる。
焼成温度は、(A)成分の式(1)の構造および(B)成分の光酸発生剤の分解を抑制するために200℃以下であることが好ましい。
焼成は2段階以上の温度変化をつけてもよい。段階的に焼成することで得られる膜の均一性をより高めることができる。
【0150】
上述の通り作製された本発明の硬化膜は、画像形成用下層膜として用いる際、膜厚が薄すぎると紫外線照射後のパターニング性が低下し、また厚すぎると表面の均一性が損なわれる。従って、その膜厚としては、5nm乃至1,000nmが好ましく、より好ましくは10nm乃至800nmであり、最も好ましくは20nm乃至500nmである。
【0151】
また、本発明の硬化膜は、十分絶縁性が高い場合、絶縁膜として機能させることもできる。その場合、該硬化膜は、例えば有機FET素子において、直接ゲート電極上に配置しゲート絶縁膜として使用される。その際、該硬化膜の膜厚は絶縁性を確保する目的で、上述の画像形成用下層膜として用いる場合よりも厚い方が望ましい。その膜厚としては好ましくは20nm乃至1,000nmであり、より好ましくは50nm乃至800nmであり、最も好ましくは100nm乃至500nmである。
【0152】
<画像形成用下層膜としての使用:画像形成用電極の製造方法>
本発明の画像形成用下層膜に紫外線をパターン状に照射し、続いて、後述する画像形成液を塗布することにより、画像形成用電極を製造することができる。
【0153】
本発明において、上記画像形用成下層膜に対して紫外線をパターン状に照射する方法は特に限定されないが、例えば電極パターンが描かれたマスクを介して照射する方法、レーザー光を用いて電極パターンを描画する方法などが挙げられる。
上記マスクとしては、材質や形状は特に限定されることはなく、電極を必要とする領域が紫外線を透過し、それ以外の領域が紫外線に不透過であればよい。
【0154】
このとき、一般に200nm乃至500nmの範囲の波長を有する紫外線を照射に用いる事が出来、フィルタ等を介して適宜波長を選択する事が望ましい。具体的には、248nm、254nm、303nm、313nm、365nmなどの波長が挙げられる。特に好ましくは、365nmである。
【0155】
本発明の画像形成用下層膜は、紫外線の照射によってその表面エネルギーが徐々に上昇し、十分な照射量とともに飽和する。この表面エネルギーの上昇は、画像形成液の接触角の低下をもたらし、結果として紫外線照射部における画像形成液の濡れ性が向上する。
【0156】
従って、紫外線照射後の本発明の画像形成用下層膜上に画像形成液を塗布すると、画像形成用下層膜に表面エネルギーの差として描かれているパターン形状に沿って、画像形成液が自己組織的にパターンを形成し、任意のパターン形状の電極を得ることができる。
【0157】
このため、画像形成用下層膜に対する紫外線の照射量は、画像形成液の接触角が十分変化する量を照射する必要があるが、エネルギー効率および製造工程の時間短縮など点から40J/cm2以下であることが好ましく、20J/cm2以下であることがより好ましく、10J/cm2以下であることがもっとも好ましい。
【0158】
また、画像形成用下層膜の紫外線照射部と未照射部とで画像形成液の接触角の差が大きいほどパターニングが容易となり、複雑なパターンや微細なパターン形状に電極を加工する事が可能となる。表面張力が低い溶液を用いた場合、露光部と未露光部の接触角差は5°以上であることが好ましく、10°以上であることがより好ましく、20°以上であることが最も好ましい。しかし、画像形成液の塗布方法、画像形成液の表面張力、画像の精細度、膜の平坦性を考慮し適宜最適化したほうがよい。
同様の理由で、画像形成液の接触角が、紫外線未照射部では30°以上であり、紫外線照射部では20°以下であることが好ましい。
【0159】
本発明における画像形成液とは、基板に塗布した後、そこに含まれる溶媒を蒸発させることで、機能性薄膜として使用することができる塗布液であり、例えば、電荷輸送性物質が少なくとも一種の溶媒に溶解もしくは均一に分散したものが挙げられる。ここで、電荷輸送性とは導電性と同義であり、正孔輸送性、電子輸送性、正孔および電子の両電荷輸送性のいずれかを意味する。
【0160】
上記の電荷輸送性物質としては、正孔または電子を輸送可能な導電性を有していれば、特に限定されない。その例としては、例えば、金、銀、銅、アルミニウムなどの金属微粒子やカーボンブラック、フラーレン類、カーボンナノチューブなどの無機材料や、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリピロール、ポリフルオレンおよびこれらの誘導体など有機π共役ポリマーなどが挙げられる。
【0161】
また、電荷輸送物質の電荷輸送能を向上させる目的でハロゲン、ルイス酸、プロトン酸、遷移金属化合物(具体例としてはBr2、I2、Cl2、FeCl3、MoCl5、BF4、AsF6、SO4、HNO4、H2SO4、ポリスチレンスルホン酸等)などの電荷受容性物質、あるいはアルカリ金属、アルキルアンモニウムイオン(具体例としてはLi、Na、K、Cs、テトラエチレンアンモニウム、テトアブチルアンモニウム等)などの電荷供与性物質をドーパントとして更に画像形成液に加えても良い。
【0162】
画像形成液の溶媒としては、上記電荷輸送性物質あるいはドーパントを溶解もしくは均一に分散させるものであればとくに限定されない。
【0163】
画像形成液の溶媒としては特に限定されないが、アルコール類、ケトン類、エーテル類、エステル類、芳香族炭化水素類、グリコール類などの各種有機溶剤を用いる事ができる。アルコール類としては、メタノール、イソプロパノール、ノルマルブタノール、イソブタノール、セカンダリーブタノール、イソアミルアルコール、オクタノールなどが挙げられる。ケトン類としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン・ジアセトンアルコールなどが挙げられる。エーテル類としては、エーテル・イソプロピルエーテル、ジオキサン、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブなどなどが挙げられる。エステル類としては、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸アミル、酢酸セロソルブ、脂肪酸メチルエステルなどが挙げられる。芳香族炭化水素類としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレンなどが挙げられる。脂肪族炭化水素類としては、ノルマルヘキサン、イソヘキサン、シクロヘキサン、ミネラルターペン、ノルマルペンタンなどが挙げられる。グリコール類としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどが挙げられる。
【0164】
また、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、2-ピロリドン、N-メチル-2-ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドン、N-ビニル-2-ピロリドン、N-メチルカプロラクタム、ジメチルスルホキシド、テトラメチル尿素などの極性溶媒も有機系の電荷輸送性物質の溶解性に優れる観点から好ましいが、これらは、本発明の画像形成用下層膜へのダメージが少ない範囲において使用することが好ましい。
また、水など特に表面張力の大きな溶媒も用いる事が可能である。
【0165】
画像形成液における電荷輸送性物質の濃度は、0.01乃至30質量%が好ましく、0.1乃至10質量%であることがより好ましく、最も好ましくは1乃至5質量%である。
【0166】
本発明に係る画像形成液の具体例としては、Baytron(登録商標) P(ポリエチレンジオキシチオフェン、バイエル社製)などの導電性ポリマー溶液、ドータイトXA-9069(藤倉化成社製)、W4A(住友電工製)、NPS-J(ハリマ化成社製)などの銀微粒子分散液などが挙げられる。
【0167】
本発明に係る電極は、本発明の画像形成用下層膜上に上記画像形成液を塗布し、画像を形成した後に、溶媒を蒸発させることで作製される。溶媒の蒸発方法としては特に限定されるものではないが、ホットプレートやオーブンを用いて、適切な雰囲気下、即ち大気、窒素等の不活性ガス、真空中等で蒸発を行い、均一な成膜面を得る事が可能である。
【0168】
溶媒を蒸発させる温度は特に限定されないが、40乃至250℃で行うのが好ましい。画像形成用下層膜形状の維持及び膜厚の均一性を達成させる等の観点から、2段階以上の温度変化をつけても良い。
【0169】
本発明の画像形成用下層膜において、非画像形成部では未反応の光酸発生剤、脱離していない撥液基が残存する。画像形成用下層膜の信頼性を高めるため、画像形成液の塗布を行った後に、紫外線照射、加熱、または紫外線照射後に加熱を行うことで画像形成用下層膜の画像非形成部での反応を進行させても良い。
【0170】
この画像形成液から作成された電極は、電子デバイス同士を接続する配線としてのみならず電界効果トランジスタ、バイポーラトランジスタ、各種ダイオード、各種センサーなどの電子デバイスの電極などとして利用される。
【0171】
本発明に係る電子デバイスは、上記本発明の画像形成用下層膜上に形成された、画像形成液より作製された電極を有するものである。
以下に本発明の画像形成用下層膜を有機FET素子に用いた例を示すが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0172】
はじめにITO電極が片面に成膜されたガラス基板を用意する。基板は予め、洗剤、アルコール、純水等による液体洗浄を行って浄化しておき、使用直前にオゾン処理、酸素-プラズマ処理等の表面処理を行う事が好ましい。ITO電極付基板上に、本発明の硬化膜形成用樹脂組成物を、前述の[塗膜及び硬化膜の製造方法]の手順に従い成膜する。層の膜厚は、駆動電圧と電気絶縁性の兼ね合いから100nm乃至1000nmとするのがもっとも好ましい。その後、紫外線をマスク等を用いるなどしてパターン状に照射する。
【0173】
続いて、画像形成液を、画像形成用下層膜表面に塗布する。塗布された画像形成液は撥液性部(紫外線未照射部)をはじくように親液性部(紫外線照射部)に速やかに広がって安定化し、乾燥させることで、パターン化したソース及びドレイン電極が形成される。画像形成液の塗布法は、スピンコート法、キャスト法など特に限定されないが、液量がコントロールしやすいインクジェットプリント法やスプレー塗布法が好ましい。
【0174】
最後に、有機FETの活性層である、ペンタセン、ポリチオフェンなどの有機半導体材料を成膜する事により完成する。有機半導体材料の成膜方法は特に限定されないが、例えば真空蒸着や溶液をスピンコート法、キャスト法、インクジェットプリント法やスプレー塗布法などが挙げられる。
【0175】
このようにして、作製された有機FETは、製造工程が大幅に削減可能であり、さらには、マスク蒸着法よりも短いチャネルの有機FETが作製可能であるため、活性層として低移動度の有機半導体材料を用いた場合においても大電流を取り出すことが可能となる。
【実施例】
【0176】
以下、実施例を挙げて、本実施の形態をさらに詳しく説明する。しかし、本発明は、これら実施例に限定されるものでない。
【0177】
[実施例等で用いる組成成分とその略称]
以下の実施例および比較例で用いられる各組成成分は、次のとおりである。なお、FMAAおよびCL1の合成方法は後に記す。
【0178】
<特定重合体原料>
HPMA:4-ヒドロキシフェニルメタクリレート
HEMA:2-ヒドロキシエチルメタクリレート
PEGMA:ポリ(エチレングリコール)メタクリレート Average Mn 360(SIGMA-ALDRICH製)
GLM:グリセリンモノメタクリレート
BMAA:N-ブトキシメチルアクリルアミド
AIBN:α,α’-アゾビスイソブチロニトリル
【0179】
F9MAA:下記式(A1)で示される化合物
【化19】
【0180】
F7MAA:下記式(A2)で示される化合物
【化20】
【0181】
F13MAA:下記式(A3)で示される化合物
【化21】
【0182】
<架橋剤原料>
カレンズMOI-DEM(昭和電工社製):下記式(D1)で示される化合物
【化22】
【0183】
<架橋剤>
CL1:下記式(D2)で示される化合物
【化23】
【0184】
<光酸発生剤>
光酸発生剤は式(C1)で表されるIrgacure PAG121(BASF社製)および式(C2)で表されるNAI-105(みどり化学社製)を使用した。
【化24】
【化25】
【0185】
<微粒子>
微粒子はPGM-ST(1-メトキシ-2-プロパノール分散シリカゾル、日産化学工業(株)製)および酸化チタン含有核粒子T1を使用した。
【0186】
<溶剤>
実施例および比較例の各硬化膜形成組成物は溶剤を含有し、その溶剤として、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PM-P)およびプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PMA-P)、シクロヘキサノン(CH)を用いた。
【0187】
[重合体の分子量の測定]
重合体の分子量の測定は、装置として日本分光社製GPCシステムを用い、カラムとしてShodex(登録商標)KF-804L及び803Lを用い、下記の条件にて実施した。
カラムオーブン:40℃
流量:1ml/分
溶離液:テトラヒドロフラン
【0188】
<合成例1>
化合物F9MAA(下記式[3])の合成
【化26】
200mlの三つ口フラスコにN-ヒドロキシメチルアクリルアミド[1](10.0g、98.91mmоl)、3,3,4,4,5,5,6,6,6-ノナフルオロヘキサン-1-オール[2](13.1g、49.46mmоl)、リン酸(0.24g、2.47mmоl)、2,6-ジ-ターシャリー-ブチル-4-メチルフェノール(0.11g、0.49mmоl)とテトラヒドロフラン(54.6g)を加え、50℃で20時間撹拌を行った。HPLCにて反応の進行を確認後、得られた溶液にヘキサン(300g)を加え、分液ロートを用いてイオン交換水(100g)で3回洗浄を行った。その後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(100g)で洗浄を行い、エバポレータで濃縮することで化合物[3]を8.38g得た。
【0189】
<合成例2>
化合物F7MAA(下記式[3])の合成
【0190】
【0191】
200mlの三つ口フラスコにN-ヒドロキシメチルアクリルアミド[1](10.0g、98.91mmоl)、2,2,3,3,4,4,4-ヘプタフルオロ-1-ブタノール[2](9.89g、49.46mmоl)、リン酸(0.24g、2.47mmоl)、2,6-ジ-ターシャリー-ブチル-4-メチルフェノール(0.11g、0.49mmоl)とテトラヒドロフラン(54.6g)を加え、50℃で20時間撹拌を行った。HPLCにて反応の進行を確認後、得られた溶液にヘキサン(300g)を加え、分液ロートを用いてイオン交換水(100g)で3回洗浄を行った。その後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(100g)で洗浄を行い、エバポレータで濃縮することで化合物[3]を6.83g得た。
【0192】
<合成例3>
化合物F13MAA(下記式[3])の合成
【0193】
【0194】
200mlの三つ口フラスコにN-ヒドロキシメチルアクリルアミド[1](10.0g、98.91mmоl)、2-(ペルフルオロヘキシル)エタノール[2](18.0g、49.46mmоl)、リン酸(0.24g、2.47mmоl)、2,6-ジ-ターシャリー-ブチル-4-メチルフェノール(0.11g、0.49mmоl)とテトラヒドロフラン(54.6g)を加え、50℃で20時間撹拌を行った。HPLCにて反応の進行を確認後、得られた溶液にヘキサン(300g)を加え、分液ロートを用いてイオン交換水(100g)で3回洗浄を行った。その後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(100g)で洗浄を行い、エバポレータで濃縮することで化合物[3]を10.8g得た。
【0195】
<合成例2>
化合物CL1(上記式(D2)で表される化合物)の合成
【化29】
窒素雰囲気中、脱水塩化メチレン393ml、メルドラム酸33.4g(23.2mmоl)、及びN,N-ジメチル-4-アミノピリジン36.7g(30.0mоl)を0℃にて仕込み、セバコイルクロリド27.7g(11.6mоl)を60mlの脱水塩化メチレンに溶解させた溶液を滴下した。滴下終了後、徐々に温度を上げ室温で20時間攪拌を行った。その後2規定塩酸70mlと水20mlの混合溶液で水洗を1回行った。得られた有機層を2規定塩酸25mlと水200mlの混合溶液で水洗を1回行い、有機層を硫酸マグネシウム10gで乾燥した。その後、ろ過により硫酸マグネシウムを除去し、得られたろ液を濃縮して得た粗物をアセトン112gで加熱溶解させ、その後冷却して析出した結晶を乾燥させて薄黄色固体のCL1を得た(21.9g(4.81mоl)、収率41.5%)。この化合物の構造は
1H-NMR分析により以下のスペクトルデータを得て確認した。
1H-NMR(CDCl
3):δ3.06(t,4H),1.74-1.66(m,16H),1.43-1.34(m,8H).
【0196】
<合成例5>
(C)成分に用いられるT1の合成
以下のようにして酸化チタン含有核粒子(T1と略す)分散ゾルを調製した。1リットルの容器に純水126.2gを入れ、メタスズ酸17.8g(SnO2換算で15g含有)、チタンテトライソプロポキシド284g(TiO2換算で80g含有)、シュウ酸二水和物84g(シュウ酸換算で70g)、35質量%水酸化テトラエチルアンモニウム水溶液438gを攪拌下に添加した。得られた混合溶液は、シュウ酸/チタン原子のモル比0.78、水酸化テトラエチルアンモニウム/チタン原子のモル比1.04であった。該混合溶液950gを、80℃で2時間保持し、更に580Torrまで減圧して2時間保持し、チタン混合溶液を調製した。調製後のチタン混合溶液のpHは4.7、TiO2濃度8.4質量%であった。3リットルのガラスライニングされたオートクレーブ容器に上記チタン混合溶液950g、純水950gを投入し、140℃で5時間水熱処理を行った。室温に冷却後、取り出された水熱処理後の溶液は淡い乳白色の酸化チタンコロイド粒子の水分散ゾルであった。得られたゾルは、pH3.9、TiO2濃度4.2質量%、水酸化テトラエチルアンモニウム4.0質量%、シュウ酸1.8質量%、動的光散乱法粒子径16nm、透過型電子顕微鏡観察では、一次粒子径5~15nmの楕円粒子が観察された。得られたゾルを110℃で乾燥させた粉末のX線回折分析を行い、ルチル型結晶であることが確認された。得られた酸化チタンコロイド粒子を酸化チタン含有核粒子(B1)とした。次いで珪酸ナトリウム水溶液(3号珪曹、SiO2として34質量%含有、富士化学(株)製)27.9gを純水27.9gにて希釈を行った後、スズ酸ナトリウム・3水和物(SnO2として55質量%含有、昭和化工(株)製)8.6gを添加し、攪拌下で溶解し、珪酸-スズ酸ナトリウムの水溶液を得た。得られた珪酸-スズ酸ナトリウム水溶液64.4gを純水411gで希釈し、水素型陽イオン交換樹脂(アンバーライト(登録商標)IR-120B)を充填したカラムに通液することにより、二酸化ケイ素-スズ酸複合酸化物コロイド粒子の水分散ゾル(pH2.7、SnO2として0.83質量%、SiO2として1.67質量%を含有、SiO2/SnO2質量比2.0)570gを得た。次いで、得られた水分散ゾルにジイソプロピルアミンを2.9g添加した。得られたゾルはアルカリ性の二酸化ケイ素-スズ酸複合酸化物コロイド粒子の水分散ゾルであり、pH8.2、一次粒子径5nm以下のコロイド粒子であった。得られた二酸化ケイ素-スズ酸複合酸化物コロイド粒子を被覆物(B2)とした。次いで、撹拌下で酸化チタン含有核粒子(A)1900gに二酸化ケイ素-スズ酸複合酸化物からなる被覆物(B2)570gを添加した後、温度95℃で3時間保持し、変性酸化チタン複合コロイド粒子の水性ゾルを得た。その後、得られた変性酸化チタン複合コロイド粒子の水性ゾルを水素型陽イオン交換樹脂(アンバーライト(登録商標)IR-120B)を充填したカラムに通し、酸性の変性酸化チタン複合コロイド粒子の水性ゾル2730gを得た。得られたゾルはpH2.7、全金属酸化物濃度は4.0質量%であった。得られたゾルにジイソブチルアミンを2.2g添加した。このときのゾルのpHは4.5であった。次いで得られたゾルをナス型フラスコ付きエバポレータに投入して濃縮し、メタノールを添加しながら600Torrで水を留去することにより、ジイソブチルアミンが結合した変性酸化チタンコロイド粒子のメタノールゾル533gを得た。得られたメタノールゾルは、比重0.949、粘度1.2mPa・s、pH4.8(ゾルと同質量の水で希釈)、全金属酸化物濃度20.5質量%、水分3.1%であった。得られたメタノールゾル533gにポリエーテル変性シラン(信越シリコーン製:商品名X-12-641)を5.5g添加し、還留加熱を5時間行い、ポリエーテル基を変性酸化チタンコロイド粒子の表面に結合させた。次いでエバポレータを用いて80Torrでプロピレングリコールモノメチルエーテルを添加しながらメタノールを留去することによりメタノールをプロピレングリコールモノメチルエーテルに置換して、ポリエーテル基が表面に結合した変性酸化チタンコロイド粒子のプロピレングリコールモノメチルエーテル分散ゾルが270g得られた。得られたゾルは比重1.353、粘度7.0mPa・s、全金属酸化物濃度40.3質量%、透過型電子顕微鏡観察による1次粒子径は5~10nm、動的光散乱法粒子径は9nmであった。表面変性酸化チタンコロイド粒子の表面に結合した有機ケイ素化合物は4質量%であった。
次いで、140℃における固形残物換算で52質量%となるようにエバポレータを用いて濃縮し、(C)成分の金属酸化物ゾル(T1)を得た。
【0197】
<重合例1>
F9MAA 2.56g、HEMA 2.0g、重合触媒としてAIBN 0.3gをPMA-P 41.2gに溶解し、80℃にて20時間反応させることによりアクリル共重合体溶液(固形分濃度10質量%)(P1)を得た。得られたアクリル共重合体のMnは5,872、Mwは8,555であった。
【0198】
<重合例2>
BMAA 8.0g、HEMA 2.0g、重合触媒としてAIBN 0.3gをPM-P 41.2gに溶解し、80℃にて20時間反応させることによりアクリル共重合体溶液(固形分濃度20質量%)(P2)を得た。得られたアクリル共重合体のMnは3,789、Mwは7,514であった。
【0199】
<重合例3>
BMAA 4.0g、HPMA 4.0g、HEMA 2.0g、重合触媒としてAIBN 0.3gをPM 41.2gに溶解し、80℃にて20時間反応させることによりアクリル共重合体溶液(固形分濃度20質量%)(P3)を得た。得られたアクリル共重合体のMnは10,103、Mwは25,498であった。
【0200】
<重合例4>
カレンズMOI-DEM(昭和電工社製) 10.0g、重合触媒としてAIBN 0.3gをPM-P 41.2gに溶解し、80℃にて20時間反応させることによりアクリル共重合体溶液(固形分濃度20質量%)(P4)を得た。得られたアクリル共重合体のMnは17,279、Mwは54,273であった。
【0201】
<重合例5>
MMA 100.0g、HEMA 11.1g、重合触媒としてAIBN 1.1gをPM-P 450.0gに溶解し、80℃にて20時間反応させることによりアクリル共重合体溶液(固形分濃度20質量%)(P12)を得た。得られたアクリル共重合体のMnは16,700、Mwは29,900であった。
【0202】
<重合例6>
F9MAA 2.56g、PEGMA 2.0g、重合触媒としてAIBN 0.3gをPM-P 12.2g、PMA-P 12.2gに溶解し、80℃にて20時間反応させることによりアクリル共重合体溶液(固形分濃度20質量%)(P6)を得た。得られたアクリル共重合体のMnは22,262、Mwは50,083であった。
【0203】
<重合例7>
F9MAA 2.56g、GLM 2.0g、重合触媒としてAIBN 0.3gをPM-P 12.2g、PMA-P 12.2gに溶解し、80℃にて20時間反応させることによりアクリル共重合体溶液(固形分濃度20質量%)(P7)を得た。得られたアクリル共重合体のMnは23,029、Mwは51,421であった。
【0204】
<重合例8>
F7MAA 2.56g、HEMA 2.0g、重合触媒としてAIBN 0.3gをPM-P 12.2g、PMA-P 12.2gに溶解し、80℃にて20時間反応させることによりアクリル共重合体溶液(固形分濃度20質量%)(P8)を得た。得られたアクリル共重合体のMnは14,352、Mwは28,460であった。
【0205】
<重合例9>
F13MAA 2.56g、HEMA 2.0g、重合触媒としてAIBN 0.3gをPM-P 12.2g、PMA-P 12.2gに溶解し、80℃にて20時間反応させることによりアクリル共重合体溶液(固形分濃度20質量%)(P9)を得た。得られたアクリル共重合体のMnは12,074、Mwは19,702であった。
【0206】
<重合例10>
BMAA 8.0g、GLM 2.0g、重合触媒としてAIBN 0.3gをPM-P 41.2gに溶解し、80℃にて20時間反応させることによりアクリル共重合体溶液(固形分濃度20質量%)(P10)を得た。得られたアクリル共重合体のMnは7,548、Mwは21,239であった。
【0207】
<重合例11>
BMAA 8.0g、PEGMA 2.0g、重合触媒としてAIBN 0.3gをPM-P 41.2gに溶解し、80℃にて20時間反応させることによりアクリル共重合体溶液(固形分濃度20質量%)(P11)を得た。得られたアクリル共重合体のMnは13,237、Mwは16,329であった。
【0208】
[硬化膜形成組成物の調製]
表1に示す組成にて実施例および比較例の各硬化膜形成組成物を調製した。ただし、各組成物の固形分濃度はいずれも5重量%とした。次に、各硬化膜形成組成物を用い、硬化膜を形成し、得られた硬化膜のそれぞれについて、接触角測定およびn-nоnane、PMA-Pに対する耐溶剤性の評価を行った。なお、表1中の組成比は固形分での比を表すものとする。
【0209】
【0210】
[接触角評価]
実施例1乃至6、8、9および比較例1,3,4の接触角評価は以下のように行った。各硬化膜形成組成物をシリコンウエハ上にスピンコーターを用いて塗布した後、温度140℃で120秒間、ホットプレート上で加熱乾燥を行い、膜厚200nmの塗膜を形成した。膜厚はFILMETRICS製 F20を用いて測定した。この塗膜を二つの領域に分け、一方の領域にキヤノン(株)製紫外線照射装置PLA-600FAにより365nmにおける光強度が100mJ/cm2の紫外線を塗膜面に対し照射した。次いで、120℃で120秒間ホットプレート上においてポストベークを行い、得られた塗布膜の未露光部と露光部の接触角測定を行った(以下、この領域を「露光部」、それ以外の領域を「未露光部」と称する)。
実施例7および比較例2の接触角評価は以下のように行った。各硬化膜形成組成物をシリコンウエハ上にスピンコーターを用いて塗布した後、温度100℃で60秒間、ホットプレート上で加熱乾燥を行い、膜厚300nmの塗膜を形成した。膜厚はFILMETRICS製 F20を用いて測定した。この塗膜を二つの領域に分け、一方の領域に(株)オーク製作所製無電極ランプシステムにより365nmにおける光強度が1J/cm2の紫外線を一定時間、塗膜面に対し照射した。次いで、180℃で60秒間ホットプレート上においてポストベークを行い、得られた塗布膜の未露光部と露光部の接触角測定を行った(以下、この領域を「露光部」、それ以外の領域を「未露光部」と称する)。
接触角の測定は、恒温恒湿環境(25℃±2℃、50%RH±5%)において、全自動接触角計 CA-W(協和界面科学(株)製)を使用し測定した。なお、PMA-Pおよび純水(DIW)の接触角は着液後5秒間静止してから測定した。
【0211】
[耐溶剤性評価]
実施例1乃至6、8、9および比較例1,3,4の耐溶剤性評価は以下のように行った。各硬化膜形成組成物をシリコンウエハ上にスピンコーターを用いて30秒間回転塗布した後、温度140℃で120秒間、ホットプレート上で加熱乾燥を行い、膜厚200nmの塗膜を形成した。膜厚はFILMETRICS製 F20を用いて測定した。この塗膜を二つの領域に分け、一方の領域にキヤノン(株)製紫外線照射装置PLA-600FAにより365nmにおける光強度が100mJ/cm2の紫外線を塗膜面に対し照射した(以下、この領域を「露光部」、それ以外の領域を「未露光部」と称する)。次いで、120℃で120秒間ホットプレート上においてポストベークを行った。得られた硬化膜の未露光部と露光部をPMA-Pに1分間浸漬前後膜厚を測定し、残膜率を算出することで耐溶剤性評価とした。
実施例7および比較例2の耐溶剤性評価は以下のように行った。各硬化膜形成組成物をシリコンウエハ上にスピンコーターを用いて30秒間回転塗布した後、温度100℃で60秒間、ホットプレート上で加熱乾燥を行い、膜厚300nmの塗膜を形成した。膜厚はFILMETRICS製 F20を用いて測定した。この塗膜を二つの領域に分け、一方の領域に(株)オーク製作所製無電極ランプシステムにより365nmにおける光強度が1J/cm2の紫外線を塗膜面に対し照射した(以下、この領域を「露光部」、それ以外の領域を「未露光部」と称する)。次いで、180℃で60秒間ホットプレート上においてポストベークを行った。得られた硬化膜の未露光部と露光部をPMA-Pに1分間浸漬前後膜厚を測定し、残膜率を算出することで耐溶剤性評価とした。
【0212】
[評価の結果]
以上の評価を行った結果を表2に示す。
【表2】
【0213】
接触角評価の結果、実施例1乃至6はPMA-Pに対して、実施例7乃至9はDIWに対して未露光部と露光部とで大きな接触角差を示した。一方、比較例1、2では露光部と未露光部とで十分な接触角差が得られなかった。また、比較例3、4では露光部と未露光部とで接触角差が全く得られなかった。
また、耐溶剤性評価の結果、実施例1乃至9及び比較例1乃至4はいずれもPMA-Pに対し高い耐溶剤性を示した。また、微粒子を添加した実施例7は微粒子を添加していない比較例2に比べてより高い耐溶剤性を示した。
【産業上の利用可能性】
【0214】
以上のように、本発明の硬化膜形成組成物から得られた硬化膜は、溶剤耐性、親撥液性コントラストの両方で優れた性能を示し、PMA-Pを始めとする有機溶媒のみならず水に対しても効果を発現することが可能であった。