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特許7060181硬化性樹脂、硬化性樹脂組成物、及び、硬化物
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  • 特許-硬化性樹脂、硬化性樹脂組成物、及び、硬化物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-18
(45)【発行日】2022-04-26
(54)【発明の名称】硬化性樹脂、硬化性樹脂組成物、及び、硬化物
(51)【国際特許分類】
   C08G 8/30 20060101AFI20220419BHJP
   C08F 20/20 20060101ALI20220419BHJP
   C08F 120/20 20060101ALI20220419BHJP
   C08L 33/10 20060101ALI20220419BHJP
   C08K 5/14 20060101ALI20220419BHJP
   C08K 5/51 20060101ALI20220419BHJP
   C08J 5/24 20060101ALI20220419BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20220419BHJP
   H05K 1/03 20060101ALI20220419BHJP
【FI】
C08G8/30
C08F20/20
C08F120/20
C08L33/10
C08K5/14
C08K5/51
C08J5/24 CEY
B32B27/00 Z
H05K1/03 610H
H05K1/03 630H
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2022505300
(86)(22)【出願日】2021-05-20
(86)【国際出願番号】 JP2021019096
【審査請求日】2022-01-25
(31)【優先権主張番号】P 2020097139
(32)【優先日】2020-06-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020214257
(32)【優先日】2020-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100177471
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 眞治
(74)【代理人】
【識別番号】100163290
【弁理士】
【氏名又は名称】岩本 明洋
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 孝幸
(72)【発明者】
【氏名】楊 立宸
(72)【発明者】
【氏名】松岡 龍一
(72)【発明者】
【氏名】神成 広義
【審査官】櫛引 智子
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-172917(JP,A)
【文献】特表2013-525569(JP,A)
【文献】特表2013-525568(JP,A)
【文献】特表2011-513581(JP,A)
【文献】特開2015-30776(JP,A)
【文献】国際公開第2014/017236(WO,A1)
【文献】特開2014-105335(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G,C08F,C08L,C08K
C08J,B32B,H05K
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表されることを特徴とする硬化性樹脂。
【化1】
(1)

(上記一般式(1)中、Zは、炭素数2~15の炭化水素であり、Yは、下記一般式(2)で表される置換基であり、nは、3~5の整数を示し、
【化2】
(2)

上記一般式(2)中、Ra及びRbは、それぞれ独立に、炭素数1~12のアルキル基、アリール基、アラルキル基、又は、シクロアルキル基で表され、mは、0~3の整数を示し、Xは、メタクリロイルオキシ基を表す。)
【請求項2】
上記一般式(1)が、下記一般式(1A)で表される請求項1に記載の硬化性樹脂。
【化3】
【請求項3】
前記nが、4である請求項1又は2に記載の硬化性樹脂。
【請求項4】
前記Zが、脂肪族炭化水素である請求項1~のいずれかに記載の硬化性樹脂。
【請求項5】
請求項1~のいずれかに記載の硬化性樹脂、ラジカル重合開始剤(B)、及び、難燃剤(C)を含有する硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
更に、請求項1~のいずれかに記載の硬化性樹脂以外の硬化性樹脂(D)を含有する請求項に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項7】
前記(B)成分が、ジアルキルパーオキサイド系の有機過酸化物である請求項のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項8】
前記(C)成分が、下記一般式(P-1)~(P-5)のいずれかで表されるリン系難燃剤を含有する請求項のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物。
【化4】
(P-1)

(上記一般式(P-1)中、R11は、それぞれ独立に炭素数1~12のアルキル基、アリール基、アラルキル基、または、シクロアルキル基を表し、R12は、アルキレン基またはアリーレン基を表し、aは、0~3の整数を示す。)
【化5】
(P-2)

(上記一般式(P-2)中、R13は、それぞれ独立に炭素数1~12のアルキル基、アリール基、アラルキル基、または、シクロアルキル基を表し、Mb+は、b価の金属イオンを表し、bは、1~3の整数を示す。)
【化6】
(P-3)

(上記一般式(P-3)中、R14は、それぞれ独立に炭素数1~12のアルキル基、アリール基、アラルキル基、または、シクロアルキル基を表し、R15は、アルキレン基またはアリーレン基を表し、Mc+は、c価の金属イオンを表し、c、d及びeは、それぞれ独立に1~3の整数を示し、c×d=2×eを満たす。)
【化7】
(P-4)

(上記一般式(P-4)中、R16は、それぞれ独立に炭素数1~12のアルキル基、アリール基、アラルキル基、または、シクロアルキル基を表し、リン原子と共に環状構造を形成してもよく、R17は、ビニル基、ビニルベンジル基、又は、(メタ)アクリロイルオキシ基を表し、f及びgは、それぞれ独立に、0又は1を示す。)
【化8】
(P-5)

(上記一般式(P-5)中、R18は、それぞれ独立に炭素数1~12のアルキル基、アリール基、アラルキル基、または、シクロアルキル基を表し、リン原子と共に環状構造を形成してもよく、R19は、アリーレン構造を有する2価の基を表し、R20は、(メタ)アクリロイルオキシ基、ビニルベンジルエーテル基、又は、アリルエーテル基を表し、hは、0又は1を示す。)
【請求項9】
前記(D)成分が、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、活性エステル樹脂、シアネートエステル樹脂、マレイミド樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、及び、ビニル樹脂からなる群より選択される少なくとも1種の硬化性樹脂である請求項のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項10】
請求項のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物を硬化反応させて得られる硬化物。
【請求項11】
請求項のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物を有機溶剤で希釈したものであるワニス。
【請求項12】
補強基材、及び、前記補強基材に含浸した請求項11に記載のワニスの半硬化物を有するプリプレグ。
【請求項13】
請求項12に記載のプリプレグ、及び、銅箔を積層し、加熱圧着成型して得られる回路基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定構造を有する硬化性樹脂、前記硬化性樹脂を含有する硬化性樹脂組成物、及び、前記硬化性樹脂組成物により得られる硬化物、ワニス、プリプレグ、及び、回路基板に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の情報通信量の増加に伴い、高周波数帯域での情報通信が盛んに行われるようになり、より優れた電気特性、なかでも高周波数帯域での伝送損失を低減させるため、低誘電率と低誘電正接を有する電気絶縁材料が求められてきている。
【0003】
さらにそれら電気絶縁材料が使われているプリント基板あるいは電子部品は、実装時に高温のハンダリフローに曝されるため、耐熱性に優れた高いガラス転移温度を示す材料が求められ、特に最近は、環境問題の観点から、融点の高い鉛フリーのハンダが使われるため、より耐熱性の高い電気絶縁材料の要求が高まってきている。
【0004】
これらの要求に対し、従来から、種々の化学構造を持つビニル基含有の硬化性樹脂が提案されている。このような硬化性樹脂としては、例えば、ビスフェノールのジビニルベンジルエーテル、あるいはノボラックのポリビニルベンジルエーテルなどの硬化性樹脂が提案されている(例えば、特許文献1及び2参照)。しかし、これらのビニルベンジルエーテルは、誘電特性が十分に小さい硬化物を与えることができず、得られる硬化物は高周波数帯域で安定して使用するには問題があり、さらにビスフェノールのジビニルベンジルエーテルは、耐熱性においても十分に高いとはいえないものであった。
【0005】
上記特性を向上させたビニルベンジルエーテルに対して、誘電特性等の向上を図るため、特定構造のポリビニルベンジルエーテルがいくつか提案されている(例えば、特許文献3~9参照)。しかし、誘電正接を抑える試みや、耐熱性を向上させる試みがなされているが、これらの特性の向上は、未だ十分とは言えず、さらなる特性改善が望まれている。
【0006】
このように、従来のポリビニルベンジルエーテルを含むビニル基含有の硬化性樹脂は、電気絶縁材料用途、特に高周波数対応の電気絶縁材料用途として必要な低い誘電正接と、鉛フリーのハンダ加工に耐えうる耐熱性とを兼備する硬化物を与えるものではなかった。
【0007】
また、プリント基板などの電気絶縁材料においては、難燃性も要求されるが、難燃性を満足するために難燃剤を多量に配合すると、誘電特性に劣るなど、難燃性と誘電特性を同時に満足できるまでには至っていないのが現状であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開昭63-68537号公報
【文献】特開昭64-65110号公報
【文献】特表平1-503238号公報
【文献】特開平5-43623号公報
【文献】特開平9-31006号公報
【文献】特開2005-281618号公報
【文献】特開2005-314556号公報
【文献】特開2015-030776号公報
【文献】特開2015-189925号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って、本発明が解決しようとする課題は、耐熱性、及び、低誘電特性に寄与できる特定構造を有する硬化性樹脂、前記硬化性樹脂、ラジカル重合開始剤、及び難燃剤を含有する硬化性樹脂組成物を使用することで、難燃性、耐熱性(高ガラス転移温度)、及び、誘電特性(低誘電特性)に優れた硬化物、これらの性能に寄与する、又は、これらの性能を兼備したワニス、プリプレグ、及び、回路基板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そこで、本発明者らは、上記課題を解決するため、鋭意検討した結果、耐熱性、及び、低誘電特性に寄与できる特定構造を有する硬化性樹脂、前記硬化性樹脂、ラジカル重合開始剤、及び難燃剤を含有する硬化性樹脂組成物を用いて得られ、難燃性、耐熱性(高ガラス転移温度)、及び、誘電特性(低誘電特性)に優れた硬化物、これらの性能に寄与する、又は、これらの性能を兼備したワニス、プリプレグ、及び、回路基板を得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
即ち、本発明は、下記一般式(1)で表される硬化性樹脂、前記硬化性樹脂、ラジカル重合開始剤(B)、及び、難燃剤(C)を含有することを特徴とする硬化性樹脂組成物に関する。
【化1】
(1)

(上記一般式(1)中、Zは、炭素数2~15の炭化水素であり、Yは、下記一般式(2)で表される置換基であり、nは、3~5の整数を示し、
【化2】
(2)

上記一般式(2)中、Ra及びRbは、それぞれ独立に、炭素数1~12のアルキル基、アリール基、アラルキル基、又は、シクロアルキル基で表され、mは、0~3の整数を示し、Xは、(メタ)アクリロイルオキシ基、ビニルベンジルエーテル基、又は、アリルエーテル基を表す。)
【0012】
本発明の硬化性樹脂は、上記一般式(1)が、下記一般式(1A)で表されることが好ましい。
【化3】
【0013】
本発明の硬化性樹脂は、前記nが、4であることが好ましい。
【0014】
本発明の硬化性樹脂は、前記Xが、メタクリロイルオキシ基であることが好ましい。
【0015】
本発明の硬化性樹脂は、前記Zが、脂肪族炭化水素であることが好ましい。
【0016】
本発明の硬化性樹脂組成物は、更に、前記硬化性樹脂以外の硬化性樹脂(D)を含有することが好ましい。
【0017】
本発明の硬化性樹脂組成物は、前記(B)成分が、ジアルキルパーオキサイド系の有機過酸化物であることが好ましい。
【0018】
本発明の硬化性樹脂組成物は、前記(C)成分が、下記一般式(P-1)~(P-5)のいずれかで表されるリン系難燃剤を含有することが好ましい。
【化4】
(P-1)

(上記一般式(P-1)中、R11は、それぞれ独立に炭素数1~12のアルキル基、アリール基、アラルキル基、または、シクロアルキル基を表し、R12は、アルキレン基またはアリーレン基を表し、aは、0~3の整数を示す。)
【化5】
(P-2)

(上記一般式(P-2)中、R13は、それぞれ独立に炭素数1~12のアルキル基、アリール基、アラルキル基、または、シクロアルキル基を表し、Mb+は、b価の金属イオンを表し、bは、1~3の整数を示す。)
【化6】
(P-3)

(上記一般式(P-3)中、R14は、それぞれ独立に炭素数1~12のアルキル基、アリール基、アラルキル基、または、シクロアルキル基を表し、R15は、アルキレン基またはアリーレン基を表し、Mc+は、c価の金属イオンを表し、c、d及びeは、それぞれ独立に1~3の整数を示し、c×d=2×eを満たす。)
【化7】
(P-4)

(上記一般式(P-4)中、R16は、それぞれ独立に炭素数1~12のアルキル基、アリール基、アラルキル基、または、シクロアルキル基を表し、リン原子と共に環状構造を形成してもよく、R17は、ビニル基、ビニルベンジル基、又は、(メタ)アクリロイルオキシ基を表し、f及びgは、それぞれ独立に、0又は1を示す。)
【化8】
(P-5)

(上記一般式(P-5)中、R18は、それぞれ独立に炭素数1~12のアルキル基、アリール基、アラルキル基、または、シクロアルキル基を表し、リン原子と共に環状構造を形成してもよく、R19は、アリーレン構造を有する2価の基を表し、R20は、(メタ)アクリロイルオキシ基、ビニルベンジルエーテル基、又は、アリルエーテル基を表し、hは、0又は1を示す。)
【0019】
本発明の硬化性樹脂組成物は、前記(D)成分が、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、活性エステル樹脂、シアネートエステル樹脂、マレイミド樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、及び、ビニル樹脂からなる群より選択される少なくとも1種の硬化性樹脂であることが好ましい。
【0020】
本発明は、前記硬化性樹脂組成物を硬化反応させて得られる硬化物に関する。
【0021】
本発明は、前記硬化性樹脂組成物を有機溶剤で希釈したものであるワニスに関する。
【0022】
本発明は、補強基材、及び、前記補強基材に含浸した前記ワニスの半硬化物を有するプリプレグに関する。
【0023】
本発明は、前記プリプレグ、及び、銅箔を積層し、加熱圧着成型して得られる回路基板に関する。
【発明の効果】
【0024】
本発明の硬化性樹脂は、耐熱性、及び、低誘電特性に優れ、前記硬化性樹脂、ラジカル重合開始剤、及び、難燃剤を含有する硬化性樹脂組成物により得られる硬化物は、難燃性、耐熱性、及び、低誘電特性に優れ、有用である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】実施例1で得られた硬化性樹脂のH-NMRスペクトルである。
図2】実施例2で得られた硬化性樹脂のH-NMRスペクトルである。
図3】実施例13で得られた硬化性樹脂のH-NMRスペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0027】
<硬化性樹脂>
本発明は、下記一般式(1)で表されることを特徴とする硬化性樹脂に関する。以下、下記一般式(1)で表されることを特徴とする硬化性樹脂を、硬化性樹脂(A)(「(A)成分」ともいう)と呼ぶ。

【化9】
(1)
【0028】
上記一般式(1)中、Zは、炭素数2~15の炭化水素であり、Yは、下記一般式(2)で表される置換基であり、nは、3~5の整数を示す。
【化10】
(2)
【0029】
上記一般式(2)中、Ra及びRbは、それぞれ独立に、炭素数1~12のアルキル基、アリール基、アラルキル基、又は、シクロアルキル基で表され、mは、0~3の整数を示し、Xは、(メタ)アクリロイルオキシ基、ビニルベンジルエーテル基、又は、アリルエーテル基を表す。
【0030】
前記(A)成分は、架橋基(X)を複数含むため、前記(A)成分を架橋し、得られる硬化物は架橋密度が高くなり、耐熱性に優れる。また、前記架橋基は極性基でもあるが、前記架橋基に隣接する置換基(特にRa)の存在により、前記架橋基の分子運動性が低く抑えられ、得られる硬化物が低誘電特性(特に低誘電正接)を満足することができ、好ましい。
【0031】
上記一般式(1)中、Zは炭素数2~15の炭化水素であり、好ましくは、炭素数2~10の炭化水素であり、より好ましくは、炭素数2~6の炭化水素である。前記炭素数が前記範囲内にあることにより、前記(A)成分は、低分子量体となり、高分子量体の場合に比べて、架橋密度が高くなり、得られる硬化物のガラス転移温度が高くなり、耐熱性に優れ、好ましい態様となる。なお、前記炭素数が2以上であると、得られる硬化性樹脂が高分子量体となり、前記炭素数が2未満の場合と比べて、前記硬化物の架橋密度が低くなり、フィルムなどを形成しやすい他、ハンドリング性、可撓性、柔軟性、及び、耐脆性に優れる傾向となり、また、前記炭素数が15以下であると、得られる硬化性樹脂が低分子量体となり、前記炭素数が15を超える場合と比べて、前記(A)成分中の架橋基(X)の占める割合が高くなり、これに伴い、架橋密度が向上し、得られる硬化物の耐熱性に優れ、好ましい。
【0032】
前記炭化水素としては、炭素数2~15の炭化水素であれば特に制限されないが、例えば、アルカン、アルケン、アルキン等の脂肪族炭化水素であることが好ましく、アリール基等を含む芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素と芳香族炭化水素とが組み合わせられた化合物等を挙げることができる。
【0033】
前記脂肪族炭化水素の中で、前記アルカンとしては、例えば、エタン、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン等が挙げられる。
前記アルケンとしては、例えば、ビニル基、1-メチルビニル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基等を含むものが挙げられる。
前記アルキンとしては、例えば、エチニル基、プロピニル基、ブチニル基、ペンチニル基、へキシニル基等を含むものが挙げられる。
前記芳香族炭化水素としては、例えば、アリール基として、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等を含むものが挙げられる。
前記脂肪族炭化水素と芳香族炭化水素とが組み合わせられた化合物としては、例えば、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基、トリルメチル基、トリルエチル基、トリルプロピル基、キシリルメチル基、キシリルエチル基、キシリルプロピル基、ナフチルメチル基、ナフチルエチル基、ナフチルプロピル基等を含むものが挙げられる。
【0034】
前記炭化水素の中でも、極性が低く、低誘電特性(低誘電率及び低誘電正接)を有する硬化物が得られる点から、炭素原子および水素原子のみからなる脂肪族炭化水素や芳香族炭化水素、脂環式炭化水素であることが好ましく、中でも、極性が非常に小さく、工業的に採用できる下記一般式(3-1)~(3-6)のような炭化水素が好ましく、より好ましくは、下記一般式(3-1)、(3-4)等の脂肪族炭化水素である。なお、下記一般式(3-1)中、kは0~5の整数を表し、好ましくは、0~3であり、下記一般式(3-1)、(3-2)、及び、(3-4)~(3-6)中のRcは、水素原子又はメチル基で表されることが好ましい。
【化11】
【0035】
上記一般式(2)中、Ra及びRbは、それぞれ独立に炭素数1~12のアルキル基、アリール基、アラルキル基、又は、シクロアルキル基を表し、好ましくは、炭素数1~4のアルキル基、アリール基、又は、シクロアルキル基である。前記炭素数1~12のアルキル基等であることで、ベンゼン環の近傍の平面性が低下し、結晶性低下により、溶剤溶解性が向上するとともに、融点が低くなり、好ましい態様となる。また、前記Ra及びRb(特に架橋基であるXに隣接するRa)を有することで、立体障害となり、前記架橋基(X)の分子運動性が更に低くなることが推測され、より低誘電特性(特に低誘電正接)の硬化物を得られるため、好ましい。さらには、前記Ra及びRbは加熱時に熱分解しないことがより好ましい。
【0036】
上記一般式(2)中、mは0~3の整数を表し、好ましくは、mが0又は1であり、より好ましくは、1である。mが前記範囲内にあることにより、置換基であるRbが立体障害となり、前記架橋基(X)の分子運動性が低くなり、低誘電特性に優れ、好ましい態様となる。なお、mが0の場合は、Rbは水素原子を表す。
【0037】
上記一般式(1)中、nは置換基数であり、3~5の整数を示し、好ましくは、3又は4であり、より好ましくは、4である。前記nが前記範囲内であることで、前記(A)成分は、低分子量体となり、高分子量体の場合に比べて、架橋密度が高くなり、得られる硬化物のガラス転移温度が高くなり、耐熱性に優れ、好ましい態様となる。なお、前記nが3以上であると、架橋基(X)が多くなり、得られる硬化物の架橋密度が高く、十分な耐熱性を得ることができるため好ましい。一方、前記nが5以下であると、前記硬化物の架橋密度が過度に高くなりすぎないため、フィルムなどを形成しやすい他、ハンドリング性、可撓性、柔軟性、及び、耐脆性に優れ、より好ましい。
【0038】
上記一般式(2)中、Xは、架橋基となる(メタ)アクリロイルオキシ基、ビニルベンジルエーテル基、又は、アリルエーテル基であり、好ましくは、(メタ)アクリロイルオキシ基であり、より好ましくは、メタクリロイルオキシ基である。前記(A)成分中に、前記架橋基を有することで、低い誘電正接を有する硬化物が得られ、好ましい態様となる。なお、前記メタクリロイルオキシ基は、その他の架橋基(例えば、ビニルベンジルエーテル基やアリルエーテル基などの極性基であるエーテル基)と比べて、前記(A)成分の構造中にメチル基を含むため、立体障害が大きくなり、分子運動性が更に低くなることが推測され、より低誘電正接の硬化物を得られるため、好ましい。また、架橋基が複数の場合、架橋密度が上がり、耐熱性が向上するため、好ましい。
また、前記架橋基であるXは、極性基でもあるが、置換基であるRaやRb(特にRa)が隣接することにより、立体障害となり、Xの分子運動性が抑制され、得られる硬化物の誘電正接が低くなり、好ましい態様となる。
【0039】
また、前記(A)成分は、上記一般式(1)が、下記一般式(1A)で表されることが好ましい。上記一般式(1)が、下記一般式(1A)の構造に特定されることにより、つまり下記一般式(1A)に記載の構造式は、上記一般式(1)に記載の構造式と比べて、Ra及びXに対して、Zの位置が固定(限定)されている。そして、このような下記一般式(1A)で示される構造を有する硬化性樹脂は、架橋基の反応性が高くなり、上記一般式(1)で示される構造を有する硬化性樹脂と比べて、緻密な架橋体の形成が可能となり、耐熱分解性の点でより優れており、好ましい態様となる。
【化12】
【0040】
前記(A)成分は、上記nが、4であることが好ましい。上記一般式(1A)中のnが4であることにより、前記(A)成分は、架橋密度が高くなり、また架橋基が多くなり過ぎないため、十分な耐熱性が得られと共に、ハンドリング性、可撓性、柔軟性、及び、耐脆性に優れ、より好ましい態様となる。
【0041】
前記(A)成分は、上記Xが、メタクリロイルオキシ基であることが好ましい。上記一般式(1A)中のXがメタクリロイルオキシ基であることにより、前記(A)成分中に、前記架橋基を有することで、低い誘電正接を有する硬化物が得られ、好ましい態様となる。なお、前記メタクリロイルオキシ基は、その他の架橋基(例えば、ビニルベンジルエーテル基やアリルエーテル基などの極性基であるエーテル基)と比べて、前記(A)成分の構造中にメチル基を含むため、立体障害が大きくなり、分子運動性が更に低くなることが推測され、より低誘電正接の硬化物を得られるため、より好ましい。また、架橋基が複数の場合、架橋密度が上がり、耐熱性が向上するため、より好ましい。
【0042】
前記(A)成分は、上記Zが、脂肪族炭化水素であることが好ましい。上記一般式(1A)中のZが脂肪族炭化水素であることにより、極性が低くなり、低誘電特性(低誘電率、低誘電正接)となり、より好ましい態様となる。
【0043】
また、上記一般式(1A)中、Zは炭素数2~15の脂肪族炭化水素であることが好ましく、より好ましくは、炭素数2~10の脂肪族炭化水素である。前記炭素数が2以上であると、前記炭素数2未満の場合と比べて、架橋密度が低く、耐脆性に優れ、前記炭素数が15以下であると、前記炭素数が15を超える場合と比べて、架橋密度が高くなり、耐熱性に優れ好ましい。なお、前記脂肪族炭化水素としては、上記一般式(1)中の炭化水素の例示の中の脂肪族炭化水素と共通する。
【0044】
上記一般式(1A)中、Ra、Rb、m、及び、nは、上記一般式(1)及び(2)中のRa、Rb、m、及び、nと共通する。
【0045】
なお、上記一般式(1)には、上記一般式(1A)だけでなく、下記一般式(1B)も含まれるが、上記一般式(1A)の方が、架橋基であるXが反応しやすい位置にあるため、硬化反応が進行しやすく、未硬化として残留し熱分解温度を低下させる恐れがなく、より好ましい。

【化13】
【0046】
<中間体フェノール化合物の製造方法>
前記(A)成分の製造方法として、まずは、前記(A)成分の原料(前駆体)である中間体フェノール化合物の製造方法を以下に説明する。
【0047】
前記中間体フェノール化合物の製造方法としては、下記一般式(4)~(9)で示されるアルデヒド化合物、又は、ケトン化合物と、下記一般式(10)~(16)で示されるフェノール又はその誘導体とを混合し、酸触媒存在下に反応させることにより、前記中間体フェノール化合物を得ることができる。なお、下記一般式(4)~(16)中のk、Ra、及び、Rbは、上記一般式(2)及び(3-1)中のk、Ra、及び、Rbと共通する。
【化14】

【化15】
【0048】
前記アルデヒド化合物、又は、ケトン化合物(以下、「化合物(a)」という場合がある。)の具体例としては、前記アルデヒド化合物が、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ピバルアルデヒド、ブチルアルデヒド、ペンタナール、ヘキサナール、トリオキサン、シクロヘキシルアルデヒド、ジフェニルアセトアルデヒド、エチルブチルアルデヒド、ベンズアルデヒド、グリオキシル酸、5-ノルボルネン-2-カルボキシアルデヒド、マロンジアルデヒド、スクシンジアルデヒド、サリチルアルデヒド、ナフトアルデヒド、グリオキサール、マロンジアルデヒド、スクシンアルデヒド、グルタルアルデヒド、クロトンアルデヒド、フタルアルデヒド等が挙げられる。前記アルデヒド化合物の中でも、工業的に入手が容易であることから、グリオキサール、グルタルアルデヒド、クロトンアルデヒド、フタルアルデヒドなどが好ましい。また、前記ケトン化合物としては、シクロヘキサンジオン、ジアセチルベンゼンが好ましく、中でもシクロヘキサンジオンが、工業的に入手が容易である点でより好ましい。前記化合物(a)は、その使用にあたっては、1種類のみに限定されるものではなく、2種以上の併用も可能である。
【0049】
また、前記フェノール又はその誘導体(以下、「化合物(b)」という場合がある。)としては、特に限定されないが、具体的には、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール等のクレゾール;フェノール;2,3-キシレノール、2,4-キシレノール、2,5-キシレノール、2,6-キシレノール(2,6-ジメチルフェノール)、3,4-キシレノール、3,5-キシレノール、3,6-キシレノール等のキシレノール;o-エチルフェノール(2-エチルフェノール)、m-エチルフェノール、p-エチルフェノール等のエチルフェノール;イソプロピルフェノール、ブチルフェノール、p-t-ブチルフェノール等のブチルフェノール;p-ペンチルフェノール、p-オクチルフェノール、p-ノニルフェノール、p-クミルフェノール等のアルキルフェノール;o-フェニルフェノール(2-フェニルフェノール)、p-フェニルフェノール、2-シクロヘキシルフェノール、2-ベンジルフェノール、2,3,6-トリメチルフェノール、2,3,5-トリメチルフェノール、2-シクロヘキシル-5-メチルフェノール、2-t-ブチル-5-メチルフェノール、2-イソプロピル-5-メチルフェノール、2-メチル-5-イソプロピルフェノール、2,6-t-ブチルフェノール、2,6-ジフェニルフェノール、2,6-ジシクロヘキシルフェノール、2,6-ジイソプロピルフェノール、3-ベンジルビフェニル-2-オール、2,4-ジ-t-ブチルフェノール、2,4-ジフェニルフェノール、2-t-ブチル-4-メチルフェノール等が挙げられる。これらフェノール又はその誘導体は、それぞれ単独で用いても良いし、2種以上を併用しても良い。中でも、例えば、2,6-キシレノールや2,4-キシレノールといったフェノール性水酸基に対してオルト位、パラ位のうち2つがアルキル置換された化合物を使用することが、より好ましい態様となる。但し、立体障害が大きすぎると、中間体フェノール化合物の合成時における反応性を阻害する場合も懸念されるため、例えば、メチル基、エチル基、イソプロピル基、シクロヘキシル基、又は、ベンジル基を有する化合物(b)を使用することが好ましい。
【0050】
本発明に用いる中間体フェノール化合物の製造方法においては、前記化合物(a)と前記化合物(b)を、前記化合物(a)に対する前記化合物(b)のモル比(化合物(b)/化合物(a))を、好ましくは0.1~10、より好ましくは0.2~8で仕込み、酸触媒存在下で反応させることにより、前記中間体フェノール化合物を得ることができる。
【0051】
前記反応に用いる酸触媒には、例えば、リン酸、塩酸、硫酸のような無機酸、シュウ酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、フルオロメタンスルホン酸等の有機酸、活性白土、酸性白土、シリカアルミナ、ゼオライト、強酸性イオン交換樹脂のような固体酸、ヘテロポリ酸塩等を挙げることができるが、反応後、塩基による中和と水による洗浄で簡便に除去できる均一系触媒である無機酸、シュウ酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、フルオロメタンスルホン酸を用いることが好ましい。
【0052】
前記酸触媒の配合量は、最初に仕込む原料の前記化合物(a)、及び、前記化合物(b)の総量100質量部に対して、酸触媒を0.001~40質量部の範囲で配合されるが、ハンドリング性と経済性の点から、0.001~25質量部が好ましい。
【0053】
前記反応温度は、通常30~150℃の範囲であればよいが、異性体構造の生成を抑制し、熱分解等の副反応を避け、高純度の中間体フェノール化合物を得るためには、60~120℃が好ましい。
【0054】
前記反応時間としては、短時間では反応が完全に進行せず、また長時間にすると生成物の熱分解反応等の副反応が起こることから、前記反応温度条件下で、通常は、のべ0.5~24時間の範囲であるが、好ましくは、のべ0.5~15時間の範囲である。
【0055】
前記中間体フェノール化合物の製造方法においては、フェノール又はその誘導体が溶剤を兼ねるため、必ずしも他の溶剤は用いなくても良いが、溶剤を用いることも可能である。
【0056】
前記中間体フェノール化合物を合成するために使用される有機溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、アセトフェノン等のケトン類、2-エトキシエタノール、メタノール、イソプロピルアルコールなどのアルコール類、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、N-メチル-2-ピロリドン、アセトニトリル、スルホラン等の非プロトン性溶媒、ジオキサン、テトラヒドロフラン等の環状エーテル類、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族系溶媒等が挙げられ、またこれらは単独で用いても混合して用いてもよい。
【0057】
前記中間体フェノール化合物の水酸基当量(フェノール当量)としては、耐熱性の観点から、好ましくは、80~500g/eqであり、より好ましくは、100~300g/eqである。なお、中間体フェノール化合物の水酸基当量(フェノール当量)は、滴定法により算出したものであり、JIS K0070に準拠した中和滴定法を指す。
【0058】
<硬化性樹脂(A)の製造方法>
前記(A)成分の製造方法(中間体フェノール化合物への(メタ)アクリロイルオキシ基、ビニルベンジルエーテル基、又は、アリルエーテル基の導入)について、以下に説明する。
【0059】
前記(A)成分は、塩基性、又は、酸性触媒存在下で、前記中間体フェノール化合物に、無水(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸クロリド、クロロメチルスチレン、クロロスチレン、塩化アリル、臭化アリル等(以下、「無水(メタ)アクリル酸等」という場合がある)との反応といった公知の方法によって得ることができる。これらを反応させることにより、中間体フェノール化合物中に架橋基(X)を導入することができ、また、低誘電率、低誘電正接な熱硬化性となり、好ましい態様となる。
【0060】
前記無水(メタ)アクリル酸としては、例えば、無水アクリル酸と無水メタクリル酸が挙げられる。前記(メタ)アクリル酸クロリドとしては、例えば、メタクリル酸クロリドとアクリル酸クロリドが挙げられる。また、クロロメチルスチレンとしては、例えば、p-クロロメチルスチレン、m-クロロメチルスチレンが挙げられ、前記クロロスチレンとしては、例えば、p-クロロスチレン、m-クロロスチレンが挙げられ、前記塩化アリルとしては、例えば、3-クロロ-1-プロペンが挙げられ、前記臭化アリルとしては、例えば、3-ブロモ-1-プロペンが挙げられる。これらはそれぞれ単独で用いても混合して用いてもよい。中でも、より低誘電正接の硬化物が得られる無水メタクリル酸や、メタクリル酸クロリドを用いることが好ましい。
【0061】
前記塩基性触媒としては、具体的には、ジメチルアミノピリジン、テトラブチルアンモニウムブロミド(TBAB)、アルカリ土類金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩、及び、アルカリ金属水酸化物等が挙げられる。前記酸性触媒としては、具体的には、硫酸、メタンスルホン酸等が挙げられる。特にジメチルアミノピリジンが触媒活性の点から優れている。
【0062】
前記中間体フェノール化合物と前記無水(メタ)アクリル酸等との反応としては、前記中間体フェノール化合物に含まれる水酸基1モルに対し、前記無水(メタ)アクリル酸等を1~10モルを添加し、0.01~0.2モルの塩基性触媒を一括添加、又は、徐々に添加しながら、30~150℃の温度で、1~40時間反応させる方法が挙げられる。
【0063】
また、前記無水(メタ)アクリル酸等との反応(架橋基の導入)時に、有機溶媒を併用することにより、前記(A)成分の合成における反応速度を高めることができる。このような有機溶媒としては特に限定されないが、例えば、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)等のケトン類、メタノール、エタノール、1-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、1-ブタノール、セカンダリーブタノール、ターシャリーブタノール等のアルコール類、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ等のセロソルブ類、テトラヒドロフラン、1、4-ジオキサン、1、3-ジオキサン、ジエトキシエタン等のエーテル類、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド等の非プロトン性極性溶媒、トルエン等が挙げられる。これらの有機溶媒は、それぞれ単独で使用してもよいし、また、極性を調製するために、適宜2種以上を併用してもよい。
【0064】
上述の無水(メタ)アクリル酸等との反応(架橋基の導入)の終了後は、反応生成物を貧溶媒に再沈した後、析出物を貧溶媒で20~100℃の温度で、0.1~5時間攪拌し、減圧濾過した後、析出物を40~80℃の温度で、1~10時間乾燥することで、目的の前記(A)成分を得ることができる。貧溶媒としてはヘキサンなどが挙げられる。
【0065】
前記(A)成分の軟化点としては、150℃以下であることが好ましく、20~140℃であることがより好ましい。前記(A)成分の軟化点が前記範囲内であると、加工性に優れるため好ましい。
【0066】
本発明は、前記硬化性樹脂(A)、及び、後述するラジカル重合開始剤(B)、難燃剤(C)を含有することを特徴とする前記硬化性樹脂組成物に関する。前記硬化性樹脂組成物は、難燃性、耐熱性、及び、低誘電特性に寄与でき、有用である。
【0067】
<硬化性樹脂(D)>
本発明の硬化性樹脂組成物は、更に、前記(A)成分以外の硬化性樹脂(D)(「(D)成分」ともいう。)を含有することが好ましい。前記(D)成分を含む硬化性樹脂組成物を用いることで、それぞれの硬化性樹脂に基づく性能を付与した硬化物を得ることができ、好ましい態様となる。
【0068】
前記(D)成分としては、高耐熱性、高密着性、低熱膨張性、混和性の観点から、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、活性エステル樹脂、シアネートエステル樹脂、マレイミド樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、及び、ビニル樹脂からなる群より選択される少なくとも1種の硬化性樹脂であることが好ましい。
【0069】
前記エポキシ樹脂としては、例えば、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、サリチルアルデヒドノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールFノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、ヒダントイン型エポキシ樹脂、イソシアヌレート型エポキシ樹脂、脂肪族環状エポキシ樹脂及びそれらのハロゲン化物、水素添加物、及び前記樹脂の混合物から選ばれた1種または2種以上の混合物等が挙げられる。
【0070】
前記フェノール樹脂としては、例えば、フェノールノボラック、o-クレゾールノボラック、p-クレゾールノボラック、t-ブチルフェノールノボラック、ジシクロペンタジエンクレゾール、ポリパラビニルフェノール、ビスフェノールA型ノボラック、フェノールアラルキル樹脂、ナフトールアラルキル樹脂、ビフェニル型フェノールノボラック樹脂、ビフェニル型ナフトールノボラック樹脂、デカリン変性ノボラック、ポリ(ジ-o-ヒドロキシフェニル)メタン、ポリ(ジ-m-ヒドロキシフェニル)メタン、及びポリ(ジ-p-ヒドロキシフェニル)メタン等が挙げられる。
【0071】
前記活性エステル樹脂としては、例えば、カルボン酸化合物および/またはチオカルボン酸化合物と、ヒドロキシ化合物および/またはチオール化合物とを反応させたものから得られる活性エステル化合物が挙げられる。
【0072】
前記シアネートエステル樹脂としては、例えば、ビス(4-シアナトフェニル)エタン、2,2-ビス(4-シアナトフェニル)プロパン、2,2-ビス(3,5-ジメチル-4-シアナトフェニル)メタン、2,2-ビス(4-シアナトフェニル)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、α,α’-ビス(4-シアナトフェニル)-m-ジイソプロピルベンゼン、フェノール付加ジシクロペンタジエン重合体のシアネートエステル化物等が挙げられる。
【0073】
前記マレイミド樹脂としては、例えば、4,4'-ジフェニルメタンビスマレイミド、m-フェニレンビスマレイミド、ビスフェノール A ジフェニルエーテルビスマレイミド、3,3'-ジメチル-5,5'-ジエチル-4,4'-ジフェニルメタンビスマレイミド、4-メチル-1,3-フェニレンビスマレイミド、1,6'-ビスマレイミド- (2,2,4-トリメチル)ヘキサンが挙げられる。
【0074】
前記ベンゾオキサジン樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型ベンゾオキサジン化合物、ビスフェノールF型ベンゾオキサジン化合物などのようにビスフェノール化合物とアミン化合物(例えば、アニリン等)の反応によって得られるFa型ベンゾオキサジン化合物、ジアミノジフェニルメタン型ベンゾオキサジン化合物などのようにフェニルジアミン化合物とフェノール化合物の反応によって得られるPd型ベンゾオキサジン化合物が挙げられる。
【0075】
前記ポリフェニレンエーテル樹脂としては、例えば、ポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレン)エーテル、ポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレン)エーテルとポリスチレンのアロイ化ポリマー、ポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレン)エーテルとスチレン-ブタジエンコポリマのアロイ化ポリマー等が挙げられる。
【0076】
前記ビニル樹脂としては、例えば、トリアリルイソシアヌレート等のトリアルケニルイソシアヌレート化合物、繰り返し単位が1,2-ブタジエン、シス-1,4-ブタジエン、トランス-1,4-ブタジエンのポリブタジエン樹脂、分子中にビニルベンジル基を有するスチレン、ジビニルベンゼン等のビニルベンジル化合物等が挙げられる。
【0077】
前記(D)成分として、誘電正接を低減させることから、特に、マレイミド樹脂、シアネートエステル樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、及び、ビニル樹脂が好ましい。
【0078】
本発明の硬化性樹脂組成物は、前記(A)成分100質量部に対して、前記(D)成分を0~80質量部含有することが好ましく、0~60質量部含有することがより好ましい。前記(D)成分は、本発明の特性を損なわない範囲で配合することができ、前記(A)成分を超えない範囲で、前記(D)成分に起因する特性を付与したい際に、適宜使用することができる。
【0079】
<ラジカル重合開始剤(B)>
本発明の硬化性樹脂組成物は、ラジカル重合開始剤(B)(「(B)成分」ともいう。)を含有することを特徴とする。前記(B)成分を含む硬化性樹脂組成物を用いることで、反応性が向上し、低分子量成分の残存が少なくなることで、耐熱性に優れた硬化物を得ることができ、好ましい態様となる。
【0080】
前記(B)成分としては、例えば、イソブチルパーオキサイド、α,α’-ビス(ネオデカノイルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、クミルパーオキシネオデカノエート、ジ-n-プロピルパーオキシジカルボネート、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、ジイソプロピルパーオキシジカルボネート、1-シクロへキシル-1-メチルエチルパーオキシネオデカノエート、ジ-2-エトキシエチルパーオキシジカルボネート、ジ(2-エチルヘキシルパーオキシ)ジカルボネート、t-ヘキシルパーオキシネオデカノエート、ジメトキシブチルパーオキシジデカネート、ジ(3-メチル-3-メトキシブチルパーオキシ)ジカルボネート、t-ブチルパーオキシネオデカノエート、t-ヘキシルパーオキシピバレート、t-ブチルパーオキシピバレート、3,5,5-トリメチルヘキサノイルパーオキシド、オクタノイルパーオキサイド、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、2,5-ジメチル-2,5-ジ(2-エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、1-シクロヘキシル-1-メチルエチルパーオキシ-2-エチルヘキサネート、t-ヘキシルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、m-トルオイルパーオキサイド、t-ブチルパーオキシイソブチレート、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、α,α’-ビス(t-ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、ジクミルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、t-ブチルクミルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキシン-3、t-ブチルトリメチルシリルパーオキサイド2,3-ジメチル-2,3-ジフェニルブタンなどが挙げられる。特に、架橋密度が向上することから、ジアルキルパーオキサイド系有機過酸化物であることが好ましく、中でも、α,α’-ビス(t-ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、ジクミルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、t-ブチルクミルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキシン-3の使用がより好ましい。
【0081】
本発明の硬化性樹脂組成物は、前記(A)成分100質量部に対して、前記(B)成分を0.05~30質量部含有することが好ましく、0.1~20質量部含有することがより好ましく、0.5~10質量部含有することが更に好ましい。なお、前記(B)成分が0.05質量部以上含有することで、反応性が向上し、低分子量成分の残存が少なくなり、得られる硬化物の耐熱性に優れるため好ましい。一方、前記(B)成分の含有量を100質量部以下とすることで、得られる硬化物は、誘電特性の悪化を抑えられるため、好ましい態様となる。
【0082】
<難燃剤(C)>
本発明の硬化性樹脂組成物は、難燃剤(C)(「(C)成分」ともいう。)を含有することを特徴とする。前記(C)成分を含む硬化性樹脂組成物を用いて得られる硬化物は、難燃性に優れ、好ましい態様となる。
【0083】
前記(C)成分としては、特に制限なく使用できるが、例えば、リン系難燃剤、窒素化合物、シリコーン系難燃剤、金属水酸化物、ポリシラン等が挙げられ、前記リン系難燃剤としては、有機リン系難燃剤、反応性有機リン系難燃剤、及び、有機系窒素含有リン化合物等が好ましい。
【0084】
前記有機リン系難燃剤としては、例えば、三光(株)製のHCA、HCA-HQ、HCA-NQ等のフェナントレン型リン化合物、昭和高分子(株)製のHFB-2006M等のリン含有ベンゾオキサジン化合物、味の素ファインテクノ(株)製のレオフォス30、50、65、90、110、TPP、RPD、BAPP、CPD、TCP、TXP、TBP、TOP、KP140、TIBP、ADEKA(株)製のFP-800、FP-600、北興化学工業(株)製のPPQ、大八化学(株)製のPX-200等のリン酸エステル化合物、クラリアント(株)製のOP930、OP935、OP945等の有機ホスフィン酸塩、東都化成(株)製のFX289、FX305等のリン含有エポキシ樹脂、東都化成(株)製のERF001等のリン含有フェノキシ樹脂、ジャパンエポキシレジン(株)製のYL7613等のリン含有エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0085】
前記反応性有機リン系難燃剤としては、例えば、片山化学工業(株)製のMC-2、MC-4、S-2、S-4、V1、V2、V3、V4、V5、W-1o、W-2h、W-2o、W-3o、W-4o等が挙げられる。
【0086】
前記有機系窒素含有リン化合物としては、例えば、四国化成工業(株)製のSP670、SP703等のリン酸エステルアミド化合物、大塚化学(株)製のSPB100、SPEl00、(株)伏見製作所製FP-series等のホスファゼン化合物等が挙げられる。
【0087】
前記金属水酸化物としては、例えば、宇部マテリアルズ(株)製のUD65、UD650、UD653等の水酸化マグネシウム、巴工業(株)製のB-30、B-325、B-315、B-308、B-303、UFH-20等の水酸化アルミニウム等が挙げられる。ポリシランとしては、大阪ガスケミカル(株)製のSI-10、SI-20、SI-30等が挙げられる。
【0088】
一般的な難燃剤は、その使用により、誘電正接が高くなる傾向にあるが、前記(C)成分として、特に誘電正接を低減させることが可能な観点から、大八化学(株)製のPX-200等のリン酸エステル化合物、クラリアント(株)製のOP930、OP935、OP945の有機ホスフィン酸塩、片山化学工業(株)製のMC-2、MC-4、S-2、S-4、V1、V2、V3、V4、V5、W-1o、W-2h、W-2o、W-3o、W-4o等の反応性有機リン系難燃剤が好ましい。
【0089】
前記(C)成分が、下記一般式(P-1)~(P-5)のいずれかで表されるリン系難燃剤を含有することが好ましい。
【化16】
(P-1)

上記一般式(P-1)中、R11は、それぞれ独立に炭素数1~12のアルキル基、アリール基、アラルキル基、または、シクロアルキル基を表し、低誘電正接の点から、好ましくは、2,6位に置換基を有するフェニル基であり、特に好ましくは、2,6-ジメチルフェニル基である。R12は、アルキレン基またはアリーレン基を表し、耐熱性の点から、好ましくは、フェニレン基である。aは、0~3の整数を示し、難燃性の点から、好ましくは、0または1である。
【0090】
【化17】
(P-2)

上記一般式(P-2)中、R13は、それぞれ独立に炭素数1~12のアルキル基、アリール基、アラルキル基、または、シクロアルキル基を表し、低誘電率の点から、好ましくは、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、シクロヘキシル基、ベンジル基、フェニル基である。Mb+は、b価の金属イオンを表し、前記金属としては、アルミニウム、マグネシウム、ナトリウム、カリウム、カルシウムなどが挙げられ、難燃性の点から、好ましくは、アルミニウムである。bは、1~3の整数を示し、難燃性の点から、好ましくは、3である。
【0091】
【化18】
(P-3)

上記一般式(P-3)中、R14は、それぞれ独立に炭素数1~12のアルキル基、アリール基、アラルキル基、または、シクロアルキル基を表し、低誘電率の点から、好ましくは、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、シクロヘキシル基、ベンジル基、フェニル基である。R15は、アルキレン基またはアリーレン基を表し、耐熱性の点から、好ましくは、フェニレン基である。Mc+は、c価の金属イオンを表し、前記金属としては、アルミニウム、マグネシウム、ナトリウム、カリウム、カルシウムなどが挙げられ、難燃性の点から、好ましくは、アルミニウムである。c、d及びeは、それぞれ独立に1~3の整数を示し、難燃性の点から、好ましくは、cは3、dは2、eは3であり、c×d=2×eを満たすことが好ましい。
【0092】
【化19】
(P-4)

上記一般式(P-4)中、R16は、それぞれ独立に炭素数1~12のアルキル基、アリール基、アラルキル基、または、シクロアルキル基を表し、耐熱性の点から、好ましくは、フェニル基である。リン原子と共に環状構造を形成してもよく、R17は、ビニル基、ビニルベンジル基、又は、(メタ)アクリロイルオキシ基を表し、低誘電正接の点から、好ましくは、ビニル基、ビニルベンジル基である。f及びgは、それぞれ独立に、0又は1を示す。なお、前記リン原子と共に環状構造を形成するリン系難燃剤としては、下記一般式(P1)などが挙げられる。
【化20】
(P1)
【0093】
【化21】
(P-5)

上記一般式(P-5)中、R18は、それぞれ独立に炭素数1~12のアルキル基、アリール基、アラルキル基、または、シクロアルキル基を表し、耐熱性の点から、好ましくは、フェニル基である。リン原子と共に環状構造を形成してもよく、R19は、アリーレン構造を有する2価の基を表し、耐熱性の点から、好ましくは、フェニル基である。R20は、(メタ)アクリロイルオキシ基、ビニルベンジルエーテル基、又は、アリルエーテル基を表し、低誘電正接の点から、好ましくは、ビニルベンジルエーテル基である。hは、0又は1を示す。なお、前記リン原子と共に環状構造を形成するリン系難燃剤としては、下記一般式(P2)などが挙げられる。
【化22】
(P2)
【0094】
本発明の硬化性樹脂組成物は、前記(A)成分100質量部に対して、前記(C)成分を0.05~300質量部含有することが好ましく、0.1~200質量部含有ことがより好ましく、1~100質量部含有することがより好ましく、5~50質量部含有することが更に好ましい。前記(C)成分が0.05質量部以上含有することで、得られる硬化物は、十分な難燃性を得られるため好ましい。一方、前記(C)成分の含有量を300質量部以下とすることで、得られる硬化物は、誘電特性の悪化を抑えられるため、好ましい態様となる。
【0095】
<その他樹脂等>
本発明の硬化性樹脂組成物には、前記(A)成分、(B)成分、(C)成分、及び、(D)成分に加えて、その他樹脂、硬化剤、硬化促進剤等を、本発明の目的を損なわない範囲で特に限定なく使用できる。前記硬化性樹脂組成物は、硬化剤や硬化促進剤を配合することなく、加熱等により硬化物を得ることができるが、例えば、前記(D)成分などを併せて配合する際には、別途、硬化剤や硬化促進剤などを配合することができる。
【0096】
<その他樹脂>
前記(A)成分や(D)成分だけでなく、必要に応じて、熱可塑性樹脂を配合してもよい。前記熱可塑性樹脂としては、例えば、スチレンブタジエン樹脂、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック樹脂、スチレン-イソプレン-スチレン樹脂、スチレン-無水マレイン酸樹脂、アクリロニトリルブタジエン樹脂、ポリブタジエン樹脂あるいはそれらの水素添加した樹脂、アクリル樹脂、及び、シリコーン樹脂などを用いることができる。前記熱可塑性樹脂を使用することで、その樹脂に起因する特性を硬化物に付与することができ、好ましい態様となる。例えば、付与できる性能としては、成形性、高周波特性、導体接着性、半田耐熱性、ガラス転移温度の調整、熱膨張係数、スミア除去性の付与などに寄与することができる。
【0097】
<硬化剤>
前記硬化剤としては、例えば、アミン系化合物、アミド系化合物、酸無水物系化合物、フェノ-ル系化合物、シアネートエステル化合物などが挙げられる。これらの硬化剤は、単独でも2種類以上の併用でも構わない。
【0098】
<硬化促進剤>
前記硬化促進剤としては、種々のものが使用できるが、例えば、リン系化合物、第3級アミン、イミダゾール類、有機酸金属塩、ルイス酸、アミン錯塩等が挙げられる。特に半導体封止材料用途として使用する場合には、硬化性、耐熱性、電気特性、耐湿信頼性等に優れる点から、トリフェニルフォスフィン等のリン系化合物、又は、イミダゾール類が好ましい。これらの硬化促進剤は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0099】
また、前記硬化促進剤としては、前記硬化性樹脂組成物に、前記(D)成分として、エポキシ樹脂を使用する場合には、例えば、有機ホスフィン化合物:TPP、TPP-K、TPP-S、TPTP-S(北興化学工業(株))、アミン類:ジシアンジアミド、ジアミノジフェニルエタン、グアニル尿素、ノバキュア(旭化成工業(株))、フジキュア(富士化成工業(株))などのアミンアダクト化合物、1,8-ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセン-7、4-ジメチルアミノピリジン(DMAP)、ベンジルジメチルアミン、2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール等、イミダゾール類:2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾリウムトリメリテイト、ベンゾイミダゾール、キュアゾール2MZ、2E4MZ、C11Z、C11Z-CN、C11Z-CNS、C11Z-A、2MZ-OK、2MA-OK、2PHZ(四国化成工業(株))を用いることができ、前記(D)成分として、マレイミド樹脂を使用する場合には、例えば、酸性触媒:p-トルエンスルホン酸、アミン化合物:トリエチルアミン、ピリジン、トリブチルアミン、第3級アミン化合物;第4級アンモニウム化合物、イミダゾール化合物、リン系化合物、有機過酸化物:ジクミルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ビス(t-ブチルパーオキシ)ヘキシン-3,2,5-ジメチル-2,5-ビス(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、t-ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、α,α’-ビス(t-ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、カルボン酸塩:マンガン、コバルト、亜鉛を用いることができ、前記(D)成分として、シアネートエステル樹脂を使用する場合には、イミダゾール化合物及びその誘導体、マンガン、コバルト、亜鉛等のカルボン酸塩;マンガン、コバルト、亜鉛等の遷移金属のアセチルアセトン錯体等の有機金属化合物などを用いることができる。
【0100】
<無機充填剤>
本発明の硬化性樹脂組成物には、必要に応じて、無機充填剤を配合することができる。前記無機充填剤として、例えば、シリカ(溶融シリカ、結晶シリカ)、アルミナ、硫酸バリウム、タルク、クレニ、雲母粉、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、窒化ホウ素、ホウ酸アルミニウム、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸ビスマス、酸化チタン、ジルコン酸バリウム、ジルコン酸カルシウムなどが挙げられる。またシランカップリング剤で表面処理をしてもよい。前記無機充填剤の配合量を特に大きくする場合は、溶融シリカを用いることが好ましい。前記溶融シリカは破砕状、球状のいずれでも使用可能であるが、溶融シリカの配合量を高め、かつ、成形材料の溶融粘度の上昇を抑制するためには、球状のものを主に用いる方が好ましい。更に球状シリカの配合量を高めるためには、球状シリカの粒度分布を適当に調整することが好ましい。
【0101】
<その他配合剤>
本発明の硬化性樹脂組成物は、必要に応じて、シランカップリング剤、離型剤、顔料、乳化剤等の種々の配合剤を添加することができる。
【0102】
<硬化物>
本発明は、前記硬化性樹脂組成物を硬化反応させて得られる硬化物に関する。前記硬化性樹脂組成物は、前記(A)成分、(B)成分、及び、(C)成分に加えて、目的に応じて、前記(D)成分や硬化剤等の各成分を均一に混合することにより得られ、従来知られている方法と同様の方法で容易に硬化物とすることができる。前記硬化物としては、積層物、注型物、接着層、塗膜、フィルム等の成形硬化物が挙げられる。
【0103】
前記硬化反応としては、熱硬化や紫外線硬化反応などが挙げられ、中でも熱硬化反応としては、無触媒下でも容易に行われるが、前記(B)成分を使用することで、さらに速く反応を進行させることができる。また、前記(B)成分に加えて、その他、重合開始剤や触媒等を使用することもできる。
【0104】
<ワニス>
本発明は、前記硬化性樹脂組成物を有機溶剤で希釈したものであるワニスに関する。前記ワニスの調製方法としては、公知の方法を使用でき、前記硬化性樹脂組成物を、有機溶剤に溶解(希釈)した樹脂ワニスとすることができる。
【0105】
<プリプレグ>
本発明は、補強基材、及び、前記補強基材に含浸した前記ワニスの半硬化物を有するプリプレグに関する。前記ワニス(樹脂ワニス)を補強基材に含浸させ、前記ワニス(樹脂ワニス)を含浸させた補強基材を熱処理することにより、前記硬化性樹脂組成物を半硬化(あるいは未硬化)させることで、プリプレグとすることができる。
【0106】
前記有機溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン、ジオキサン、テトラヒドロフラン等の中から、単独、あるいは、2種以上の混合溶媒として用いることができる。
【0107】
前記ワニス(樹脂ワニス)を含浸させる補強基材としては、ガラス繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維等の無機繊維、有機繊維からなる織布や不織布、またはマット、紙等であり、これらを単独、あるいは、組み合わせて用いることができる。
【0108】
前記プリプレグ中の硬化性樹脂組成物と補強基材の質量割合としては、特に限定されないが、通常、プリプレグ中の硬化性樹脂組成物(中の樹脂分)が20~60質量%となるように調製することが好ましい。
【0109】
前記プリプレグの熱処理の条件としては、使用する有機溶剤、触媒、各種添加剤の種類や使用量などに応じて、適宜選択されるが、通常、80~220℃の温度で、3分~30分といった条件で行われる。
【0110】
<積層体>
本発明の硬化物は、例えば、基材と、前記硬化物を含む層を有する積層体としてもよい。前記硬化物を含む層(硬化物層)より形成される積層体は、低誘電率、低誘電正接、高耐熱性であるため、高周波対応プリント基板などに使用することができ、好ましい。
【0111】
前記積層体に用いる基材としては、金属やガラス等の無機材料や、プラスチックや木材といった有機材料等、用途によって適時使用すればよく、例えば、ガラス繊維:Eガラス、Dガラス、Sガラス、Qガラス、球状ガラス、NEガラス、Lガラス、Tガラス、無機繊維:クォーツ、全芳香族ポリアミド:ポリパラフェニレンテレフタラミド(ケブラー(登録商標)、デュポン株式会社製)、コポリパラフェニレン・3,4’オキシジフェニレン・テレフタラミド(テクノーラ(登録商標)、帝人テクノプロダクツ株式会社製)、ポリエステル:2,6-ヒドロキシナフトエ酸・パラヒドロキシ安息香酸(ベクトラン(登録商標)、株式会社クラレ製)、ゼクシオン(登録商標、KBセーレン製)、有機繊維:ポリパラフェニレンベンズオキサゾール(ザイロン(登録商標)、東洋紡績株式会社製)、ポリイミドなどが挙げられる。
【0112】
前記積層体の形状としても、平板、シート状、あるいは3次元構造を有していても立体状であっても構わない。全面にまたは一部に曲率を有するもの等、目的に応じた任意の形状であってよい。また、基材の硬度、厚み等にも制限はない。また、本発明の硬化物を基材とし、更に本発明の硬化物を積層しても構わない。
【0113】
前記積層体を回路基板や半導体パッケージ基板に使用する場合、金属箔を積層することが好ましく、金属箔としては銅箔、アルミ箔、金箔、銀箔などが挙げられ、加工性が良好なことから銅箔を用いることが好ましい。
【0114】
前記積層体において、前記硬化物を含む層(硬化物層)は、基材に対して直接塗工や成形により形成してもよく、すでに成形したものを積層させても構わない。直接塗工する場合、塗工方法としては特に限定は無く、スプレー法、スピンコート法、ディップ法、ロールコート法、ブレードコート法、ドクターロール法、ドクターブレード法、カーテンコート法、スリットコート法、スクリーン印刷法、インクジェット法等が挙げられる。直接成形する場合は、インモールド成形、インサート成形、真空成形、押出ラミネート成形、プレス成形等が挙げられる。
【0115】
また、本発明の硬化物に対して、前記基材となりうる前駆体を塗工して硬化させることで積層させてもよく、前記基材となりうる前駆体または本発明の硬化性樹脂組成物が未硬化あるいは半硬化の状態で接着させた後に硬化させてもよい。前記基材となりうる前駆体としては特に限定はなく、各種硬化性樹脂組成物等を用いることもできる。
【0116】
<用途>
本発明の硬化性樹脂組成物により得られる硬化物が難燃性、耐熱性、及び、誘電特性に優れることから、耐熱部材や電子部材に好適に使用可能である。特に、プリプレグの製造に使用されるワニス、プリプレグ、回路基板、半導体封止材、半導体装置、ビルドアップフィルム、ビルドアップ基板、接着剤やレジスト材料などに好適に使用できる。また、繊維強化樹脂のマトリクス樹脂にも好適に使用でき、難燃性で高耐熱性のプリプレグとして特に適している。こうして得られる耐熱部材や電子部材は、各種用途に好適に使用可能であり、例えば、産業用機械部品、一般機械部品、自動車・鉄道・車両等部品、宇宙・航空関連部品、電子・電気部品、建築材料、容器・包装部材、生活用品、スポーツ・レジャー用品、風力発電用筐体部材等が挙げられるが、これらに限定される物ではない。
【0117】
以下、本発明の硬化性樹脂組成物を用いて製造される代表的な製品について例を挙げて説明する。
【0118】
<回路基板>
本発明は、前記プリプレグ、及び、銅箔を積層し、加熱圧着成型して得られる回路基板に関する。具体的には、本発明の硬化性樹脂組成物から回路基板を得る方法としては、上記プリプレグを、常法により積層し、適宜銅箔を重ねて、1~10MPaの加圧下に170~300℃で10分~3時間、加熱圧着成型させる方法が挙げられる。
【0119】
<半導体封止材>
半導体封止材としては、前記硬化性樹脂組成物を含有することが好ましい。具体的には、本発明の硬化性樹脂組成物から半導体封止材を得る方法としては、前記硬化性樹脂組成物に、更に任意成分である硬化促進剤、および無機充填剤等の配合剤とを必要に応じて押出機、ニ-ダ、ロ-ル等を用いて均一になるまで充分に溶融混合する方法が挙げられる。その際、無機充填剤としては、通常、溶融シリカが用いられるが、パワートランジスタ、パワーIC用高熱伝導半導体封止材として用いる場合は、溶融シリカよりも熱伝導率の高い結晶シリカ,アルミナ,窒化ケイ素などの高充填化、または溶融シリカ、結晶性シリカ、アルミナ、窒化ケイ素などを用いるとよい。その充填率は、硬化性樹脂組成物100質量部当たり、無機充填剤を30~95質量部の範囲で用いることが好ましく、中でも、難燃性や耐湿性や耐ハンダクラック性の向上、線膨張係数の低下を図るためには、70質量部以上がより好ましく、80質量部以上であることがさらに好ましい。
【0120】
<半導体装置>
半導体装置としては、前記半導体封止材を加熱硬化した硬化物を含むことが好ましい。具体的には、本発明の硬化性樹脂組成物から半導体装置を得る半導体パッケージ成形としては、上記半導体封止材を注型、または、トランスファー成形機、射出成形機などを用いて成形し、さらに50~250℃で、2~10時間の間、加熱硬化する方法が挙げられる。
【0121】
<ビルドアップ基板>
本発明の硬化性樹脂組成物からビルドアップ基板を得る方法としては、工程1~3を経由する方法が挙げられる。工程1では、まず、ゴム、フィラーなどを適宜配合した前記硬化性樹脂組成物を、回路を形成した回路基板にスプレーコーティング法、カーテンコーティング法等を用いて塗布した後、硬化させる。工程2では、必要に応じて、硬化性樹脂組成物が塗布された回路基板に所定のスルーホール部等の穴あけを行った後、粗化剤により処理し、その表面を湯洗することによって、前記基板に凹凸を形成させ、銅などの金属をめっき処理する。工程3では、工程1~2の操作を所望に応じて順次繰り返し、樹脂絶縁層及び所定の回路パターンの導体層を交互にビルドアップしてビルドアップ基板を成形する。なお、前記工程において、スルーホール部の穴あけは、最外層の樹脂絶縁層の形成後に行うとよい。また、ビルドアップ基板は、銅箔上で当該樹脂組成物を半硬化させた樹脂付き銅箔を、回路を形成した配線基板上に、170~300℃で加熱圧着することで、粗化面を形成、メッキ処理の工程を省き、ビルドアップ基板を作製することも可能である。
【0122】
<ビルドアップフィルム>
ビルドアップフィルムは、前記硬化性樹脂組成物を含有することが好ましい。本発明の硬化性樹脂組成物からビルドアップフィルムを得る方法としては、例えば、支持フィルム上に硬化性樹脂組成物を塗布したのち、乾燥させて、支持フィルムの上に樹脂組成物層を形成する方法が挙げられる。本発明の硬化性樹脂組成物をビルドアップフィルムに用いる場合、該フィルムは、真空ラミネート法におけるラミネートの温度条件(通常70~140℃)で軟化し、回路基板のラミネートと同時に、回路基板に存在するビアホール或いはスルーホール内の樹脂充填が可能な流動性(樹脂流れ)を示すことが肝要であり、このような特性を発現するよう前記各成分を配合することが好ましい。
【0123】
ここで、回路基板のスルーホールの直径は通常0.1~0.5mm、深さは通常0.1~1.2mmであり、通常この範囲で樹脂充填を可能とするのが好ましい。なお回路基板の両面をラミネートする場合はスルーホールの1/2程度充填されることが望ましい。
【0124】
前記したビルドアップフィルムを製造する具体的な方法としては、有機溶剤を配合してワニス化した樹脂組成物を調製した後、支持フィルム(Y)の表面に、前記ワニス化した樹脂組成物を塗布し、更に加熱、あるいは熱風吹きつけ等により有機溶剤を乾燥して、樹脂組成物層(X)を形成する方法が挙げられる。
【0125】
ここで用いる有機溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、カルビトールアセテート等の酢酸エステル類、セロソルブ、ブチルカルビトール等のカルビトール類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等を用いることが好ましく、また、不揮発分30~60質量%となる割合で使用することが好ましい。
【0126】
なお、形成される前記樹脂組成物層(X)の厚さは、通常、導体層の厚さ以上とする必要がある。回路基板が有する導体層の厚さは通常5~70μmの範囲であるので、前記樹脂組成物層(X)の厚さは10~100μmの厚みを有するのが好ましい。なお、本発明における前記樹脂組成物層(X)は、後述する保護フィルムで保護されていてもよい。保護フィルムで保護することにより、樹脂組成物層表面へのゴミ等の付着やキズを防止することができる。
【0127】
前記支持フィルム及び保護フィルムは、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリカーボネート、ポリイミド、更には離型紙や銅箔、アルミニウム箔等の金属箔などを挙げることができる。なお、前記支持フィルム及び保護フィルムはマッド処理、コロナ処理の他、離型処理を施してあってもよい。支持フィルムの厚さは特に限定されないが、通常10~150μmであり、好ましくは25~50μmの範囲で用いられる。また保護フィルムの厚さは1~40μmとするのが好ましい。
【0128】
前記支持フィルム(Y)は、回路基板にラミネートした後に、あるいは、加熱硬化することにより、絶縁層を形成した後に、剥離される。ビルドアップフィルムを構成する樹脂組成物層が加熱硬化した後に支持フィルム(Y)を剥離すれば、硬化工程でのゴミ等の付着を防ぐことができる。硬化後に剥離する場合、通常、支持フィルムには予め離型処理が施される。
【0129】
なお、前記のようにして得られたビルドアップフィルムから多層プリント回路基板を製造することができる。例えば、前記樹脂組成物層(X)が保護フィルムで保護されている場合はこれらを剥離した後、前記樹脂組成物の層(X)を回路基板に直接接するように回路基板の片面又は両面に、例えば真空ラミネート法によりラミネートする。ラミネートの方法はバッチ式であってもロールでの連続式であってもよい。また必要により、ラミネートを行う前にビルドアップフィルム及び回路基板を必要により加熱(プレヒート)しておいてもよい。ラミネートの条件は、圧着温度(ラミネート温度)を70~140℃とすることが好ましく、圧着圧力を1~11kgf/cm(9.8×10~107.9×10N/m)とすることが好ましく、空気圧を20mmHg(26.7hPa)以下の減圧下でラミネートすることが好ましい。
【0130】
<導電ペースト>
本発明の硬化性樹脂組成物から導電ペーストを得る方法としては、例えば、導電性粒子を該組成物中に分散させる方法が挙げられる。上記導電ペーストは、用いる導電性粒子の種類によって、回路接続用ペースト樹脂組成物や異方性導電接着剤とすることができる。
【実施例
【0131】
以下に、本発明を実施例、比較例により具体的に説明するが、「部」及び「%」は特に断わりのない限り、質量基準である。なお、以下に示す条件で、硬化性樹脂、及び、前記硬化性樹脂などを含有する硬化性樹脂組成物を用いて得られる硬化物を合成し、更に得られた硬化物について、以下の条件にて測定・評価を行った。
【0132】
H-NMR測定>
H-NMR:JEOL RESONANCE製「JNM-ECA600」
磁場強度:600MHz
積算回数:32回
溶媒:CDCl3
試料濃度:1質量%
上記H-NMR測定により、以下の製造方法により得られた硬化性樹脂の合成をアルデヒドのピークの消失により、確認した(実施例1の図1、実施例2の図2、および、実施例13の図3参照)。なお、実施例1、実施例2および実施例13以外についても、同様に、上記H-NMR測定により、硬化性樹脂の合成確認を行った(図示せず)。
【0133】
(実施例1)
冷却管を設置した100mlの二口フラスコに、2,6-キシレノール73g(0.60mol)、テレフタルアルデヒド20g(0.15mol)を仕込み、2-エトキシエタノール300mlに溶解させた。氷浴中で冷却しながら96%硫酸10gを添加した後、80℃のオイルバス中で2時間、攪拌しながら反応させた。反応終了後、得られた反応混合物(反応液)に水を加えて粗成生物を沈殿させた。回収した粗生成物をアセトンに溶解させ、再度水を加えて生成物を再沈殿させた。沈殿物を濾別し、真空乾燥させて、中間体フェノール化合物62g(0.11mol)を得た。
温度計、冷却管、攪拌機を取り付けた200mLフラスコに、トルエン80g及び前記中間体フェノール化合物62g(0.11mol)を混合して約85℃に加熱した。ジメチルアミノピリジン0.55g(0.0045mol)を添加した。固体がすべて溶解した後に、無水メタクリル酸88.7g(0.58mol)を徐々に添加した。得られた溶液を連続混合しながら85℃の状態で、3時間維持した。次に、得られた溶液を室温(25℃)に冷却して、1Lのビーカー中マグネチックスターラーで激しく撹拌したヘキサン360g中に30分かけて滴下した。得られた沈殿物を減圧濾過後乾燥し、下記構造式の硬化性樹脂38gを得た。H-NMR測定を行い(図1参照)、生成物である前記硬化性樹脂の構造を判断した。
【化23】
【0134】
(実施例2)
冷却管を設置した200mlの三口フラスコに、2,6-キシレノール73.7g(0.55mol)、96%硫酸53.7g、を仕込み、窒素フローしながらメタノール30mlに溶解させた。70℃のオイルバス中で昇温し、攪拌しながら50%グルタルアルデヒド水溶液25g(0.125mol)を6時間かけて添加した後、12時間攪拌しながら反応させた。反応終了後、得られた反応混合物(反応液)を室温(25℃)まで冷却し、この反応液にトルエン200mlを加え、ついで、水200mLを用いて洗浄した。その後、得られた有機層をヘキサン500mLに注ぎ込み、これにより析出した固体を濾別し、真空乾燥させて、中間体フェノール化合物22g(0.039mol)を得た。
温度計、冷却管、攪拌機を取り付けた200mLフラスコに、トルエン20g及び前記中間体フェノール化合物22g(0.039mol)を混合して約85℃に加熱した。ジメチルアミノピリジン0.19g(0.0016mol)を添加した。固体がすべて溶解した後に、無水メタクリル酸38.5g(0.25mol)を徐々に添加した。得られた溶液を連続混合しながら85℃の状態で、3時間維持した。次に、得られた溶液を室温(25℃)に冷却して、1Lのビーカー中、マグネチックスターラーで激しく撹拌したヘキサン360g中に30分かけて滴下した。得られた沈殿物を減圧濾過後乾燥し、下記構造式の硬化性樹脂38gを得た。H-NMR測定を行い(図2参照)、生成物である前記硬化性樹脂の構造を判断した。
【化24】
【0135】
(実施例3)
上記実施例2における50%グルタルアルデヒド水溶液を、40%グリオキサール溶液18.1g(0.125mol)に変更した以外は、上記実施例2と同様の方法で合成を実施し、下記構造式の硬化性樹脂を得た。
【化25】
【0136】
(実施例4)
上記実施例2における2,6-キシレノールの量を50.9g(0.38mol)に変更して、50%グルタルアルデヒド水溶液を、クロトンアルデヒド8.8g(0.125mol)に変更した以外は、上記実施例2と同様の方法で合成を実施し、下記構造式の硬化性樹脂を得た。
【化26】
【0137】
(実施例5)
温度計、冷却管、攪拌機を取り付けた200mLフラスコに、トルエン20g及び2,4,6-トリス(3’,5’-tert-ブチル-4’-ヒドロキシベンジル)メシチレン30.2g(0.039mol)を混合して約85℃に加熱した。ジメチルアミノピリジン0.19g(0.0016mol)を添加した。固体がすべて溶解した後に、無水メタクリル酸38.5g(0.25mol)を徐々に添加した。得られた溶液を連続混合しながら85℃の状態で、3時間維持した。次に、得られた溶液を室温(25℃)に冷却して、1Lのビーカー中マグネチックスターラーで激しく撹拌したヘキサン360g中に30分かけて滴下した。得られた沈殿物を減圧濾過後乾燥し、下記構造式の硬化性樹脂を得た。
【化27】
【0138】
(実施例6)
上記実施例2における2,6-キシレノールを、2-シクロヘキシルフェノール96.9g(0.55mol)に変更した以外は、上記実施例2と同様の方法で合成を実施し、下記構造式の硬化性樹脂を得た。
【化28】
【0139】
(実施例7)
上記実施例2における2,6-キシレノールを、2-フェニルフェノール93.6g(0.55mol)に変更した以外は、上記実施例2と同様の方法で合成を実施し、下記構造式の硬化性樹脂を得た。
【化29】
【0140】
(実施例8)
上記実施例2における2,6-キシレノールを、2-エチルフェノール67.2g(0.55mol)に変更した以外は、上記実施例2と同様の方法で合成を実施し、下記構造式の硬化性樹脂を得た。
【化30】
【0141】
(実施例9)
上記実施例2における2,6-キシレノールを、2-イソプロピルフェノール74.9g(0.55mol)に変更した以外は、上記実施例2と同様の方法で合成を実施し、下記構造式の硬化性樹脂を得た。
【化31】
【0142】
(実施例10)
上記実施例2における2,6-キシレノールを、2,5-キシレノールに変更した以外は、上記実施例2と同様の方法で合成を実施し、下記構造式の硬化性樹脂を得た。
【化32】
【0143】
(実施例11)
上記実施例2における2,6-キシレノールを、2,3,6-トリメチルフェノール74.9g(0.55mol)に変更した以外は、上記実施例2と同様の方法で合成を実施し、下記構造式の硬化性樹脂を得た。
【化33】
【0144】
(実施例12)
上記実施例2における2,6-キシレノールを、2,4-キシレノールに変更した以外は、上記実施例2と同様の方法で合成を実施し、下記構造式の硬化性樹脂を得た。
【化34】
【0145】
(実施例13)
上記実施例2における2,6-キシレノールを、2-シクロヘキシル-5-メチルフェノール104.7g(0.55mol)に変更した以外は、上記実施例2と同様の方法で合成を実施し、下記構造式の硬化性樹脂を得た。H-NMR測定を行い(図3参照)、生成物である前記硬化性樹脂の構造を判断した。
【化35】
【0146】
(実施例14)
上記実施例13におけるクロロメチルスチレンを、塩化アリル26g(0.34mol)に変更した以外は、上記実施例13と同様の方法で合成を実施し、下記構造式の硬化性樹脂を得た。
【化36】
【0147】
(実施例15)
冷却管を設置した200mlの三口フラスコに、2,6-キシレノール73.7g(0.55mol)、96%硫酸53.7g、を仕込み、窒素フローしながらメタノール30mlに溶解させた。70℃のオイルバス中で昇温し、攪拌しながら50%グルタルアルデヒド水溶液25g(0.125mol)を6時間かけて添加した後、12時間攪拌しながら反応させた。反応終了後、得られた反応混合物(反応液)を室温(25℃)まで冷却し、この反応液にトルエン200mlを加えて、ついで、水200mLを用いて洗浄した。その後、得られた有機層をヘキサン500mLに注ぎ込み、これにより析出した固体を濾別し、真空乾燥させて、中間体フェノール化合物22g(0.039mol)を得た。
温度計、冷却管、攪拌機を取り付けた300mLフラスコに、得られた中間体フェノール化合物22g(0.039mol)、2,4-ジニトロフェノール(2,4-DNP)0.046g(0.00025mol)、テトラブチルアンモニウムブロミド(TBAB)5.9g(0.018mol)、クロロメチルスチレン52.3g(0.34mol)、及び、メチルエチルケトン100gを加え攪拌しながら75℃に昇温した。次いで、75℃に保った反応容器に48%-NaOHaqを20分かけて滴下した。滴下終了後、さらに75℃で4h攪拌を継続した。4h後、室温(25℃)まで冷却し、トルエン100gを加え、さらに10%HClを加えて中和した。その後、水層を分液することにより分離し、さらに水300mで3回分液洗浄した。得られた有機層を蒸留することにより濃縮し、メタノールを加えて生成物を再沈殿した。沈殿を濾過・乾燥し、下記構造式の硬化性樹脂を得た。
【化37】
【0148】
(比較例1)
上記実施例12における2,4,6-トリス(3’,5’-tert-ブチル-4’-ヒドロキシベンジル)メシチレンを、2、2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)プロパン16.8g(0.059mol)に変更した以外は、上記実施例12と同様の方法で合成を実施し、下記構造式の硬化性樹脂を得た。
【化38】
【0149】
(比較例2)
上記実施例1におけるテレフタルアルデヒドを、ベンゼン-1,3,5-トリカルバルデヒド16.2g(0.1mol)に変更した以外は、上記実施例1と同様の方法で合成を実施し、下記構造式の硬化性樹脂を得た。
【化39】
【0150】
(比較例3)
上記実施例1における2,6-キシレノールを、フェノール56.5g(0.60mol)に変更した以外は、上記実施例1と同様の方法で合成を実施し、下記構造式の硬化性樹脂を得た。
【化40】
【0151】
(比較例4)
温度計、冷却管、攪拌機を取り付けた200mLフラスコに、トルエン20g及びペンタエリトリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナート]45.9g(0.039mol)を混合して約85℃に加熱した。ジメチルアミノピリジン0.19g(0.0016mol)を添加した。固体がすべて溶解した後に、無水メタクリル酸38.5g(0.25mol)を徐々に添加した。得られた溶液を連続混合しながら85℃の状態で、3時間維持した。次に、得られた溶液を室温(25℃)に冷却して、1Lのビーカー中マグネチックスターラーで激しく撹拌したヘキサン360g中に30分かけて滴下した。得られた沈殿物を減圧濾過後乾燥し、下記構造式の硬化性樹脂を得た。
【化41】
【0152】
<樹脂フィルム(硬化物)の作成>
実施例、及び、比較例で得られた硬化性樹脂(固体粉末)を5cm角の正方形の型枠に入れ、ステンレス板で挟み、真空プレスにセットした。常圧常温下で1.5MPaまで加圧した。次に10torrまで減圧後、熱硬化温度より50℃高い温度まで30分かけて加温した。さらに2時間静置後、室温(25℃)まで徐冷した。その結果、平均膜厚が100μmの均一な樹脂フィルム(硬化物)を作製した。
なお、実施例14(Xがアリルエーテル基)においては、硬化性樹脂単独での単独重合(架橋)が進行しないため、硬化性樹脂の製造確認のみを行い、以下の樹脂フィルム(硬化物)に基づく評価は行っていない。
【0153】
<耐熱性の評価(ガラス転移温度)>
得られた樹脂フィルム(硬化物)について、パーキンエルマー製DSC装置(Pyris Diamond)を用い、室温(25℃)から20℃/分の昇温条件で測定した際に観測される発熱ピーク温度(熱硬化温度)の観測後、それより50℃高い温度で30分間保持した。ついで、20℃/分の降温条件で室温(25℃)まで試料を冷却し、さらに、再度20℃/分の昇温条件で昇温し、樹脂フィルム(硬化物)のガラス転移点温度(Tg)(℃)を測定した。なお、ガラス転移点温度(Tg)としては、100℃以上であれば、実用上問題がなく、好ましくは、150℃以上である。
【0154】
<耐熱性の評価(5%重量減少温度)>
株式会社リガク製TG-DTA装置(TG-8120)を用いて、20mL/minの窒素流下、20℃/minの昇温速度で測定を行い、5%重量減少温度(Td5)を測定した。なお、5%重量減少温度(Td5)としては、300℃以上であれば、実用上問題がなく、好ましくは、350℃以上である。
【0155】
<誘電特性の評価>
得られた樹脂フィルム(硬化物)の面内方向の誘電特性について、キーサイト・テクノロジー社のネットワークアナライザーN5247Aを用いて、スプリットポスト誘電体共振器法により、周波数10GHzについて誘電率、及び、誘電正接を測定した。なお、誘電正接としては、10×10-3以下であれば、実用上問題がなく、好ましくは、3.0×10-3以下であり、より好ましくは2.5×10-3以下である。また、誘電率としては、3.0以下であれば、実用上問題がなく、好ましくは、2.7以下であることが好ましく、より好ましくは、2.5以下である。
【0156】
【表1】
【0157】
<硬化性樹脂組成物の調製>
上記実施例で得られた硬化性樹脂を用いて、表2および表3に示した組成で配合し(原料、配合量)、硬化性樹脂組成物を得た。表2および表3中に示す硬化性樹脂は、具体的には、実施例2で得られた硬化性樹脂を、硬化性樹脂(A1)、実施例13で得られた硬化性樹脂を、硬化性樹脂(A2)、実施例15で得られた硬化性樹脂を、硬化性樹脂(A3)とした。
なお、比較用として、下記構造式の、市販品の4,4’-イソプロピリデンジフェノールジメタクリラート(シグマアルドリッチ社製)を硬化性樹脂(A4)として用いた。
【化42】
これら硬化性樹脂組成物を用いて、以下に示す条件(温度、時間など)に基づき、評価用の試料(樹脂フィルム(硬化物))を調製し、これらを実施例及び比較例として、評価を行った。
【0158】
<樹脂フィルム(硬化物)の作製>
下記表2および表3に記載の配合内容の硬化性樹脂組成物を10cm角の正方形の型枠に入れ、ステンレス板で挟み、真空プレスにセットした。常圧30℃下で1.5MPaまで加圧した。次に10torrまで減圧後、100℃まで30分かけて加温し、1時間静置した。その後、220℃まで30分かけて加温し、2時間静置した。その後、室温(25℃)まで徐冷した。平均膜厚が100μmの均一な樹脂フィルム(硬化物)を作製した。
【0159】
<耐熱性の評価(ガラス転移温度)>
得られた樹脂フィルム(硬化物)について、パーキンエルマー製DSC装置(Pyris Diamond)を用い、室温(25℃)から20℃/分の昇温条件で測定した際に観測される発熱ピーク温度(熱硬化温度)の観測後、それより50℃高い温度で30分間保持した。ついで、20℃/分の降温条件で室温(25℃)まで試料を冷却し、さらに、再度20℃/分の昇温条件で昇温し、樹脂フィルム(硬化物)のガラス転移点温度(Tg)(℃)を測定した。なお、前記ガラス転移点温度(Tg)としては、100℃以上であれば、実用上問題がなく、好ましくは、150℃以上であり、より好ましくは、200℃以上である。
【0160】
<耐熱性の評価(10%重量減少温度)>
得られた樹脂フィルム(硬化物)について、株式会社リガク製TG-DTA装置(TG-8120)を用いて、20mL/分の窒素流下、20℃/分の昇温速度で測定を行い、10%重量減少温度(Td10)を測定した。なお、10%重量減少温度としては、400℃以上であれば、実用上問題がなく、好ましくは、410℃以上であり、より好ましくは、420℃以上である。
【0161】
<誘電特性の評価>
得られた樹脂フィルム(硬化物)の面内方向の誘電特性について、キーサイト・テクノロジー社のネットワークアナライザーN5247Aを用いて、スプリットポスト誘電体共振器法により、周波数10GHzについて誘電率、及び、誘電正接を測定した。なお、前記誘電正接としては、10.0×10-3以下であれば、実用上問題がなく、好ましくは、3.0×10-3以下であり、より好ましくは2.5×10-3以下である。また、前記誘電率としては、3.0以下であれば、実用上問題がなく、好ましくは、2.7以下であることが好ましく、より好ましくは、2.5以下である。
【0162】
<難燃性の評価>
樹脂フィルムを幅13mm、長さ100mmの短冊状に切断して難燃性評価用の試験片とした。UL94、20mm垂直燃焼試験を行い、以下の基準で評価した。なお、難燃性は、V-1であれば、実用上問題がなく、好ましくは、V-0である。
○:UL94 V-0
△:UL94 V-1
×:UL94 V-1未満
【0163】
下記表2および表3中の略記については、以下に詳細を示した。
V5:片山化学工業株式会社V5(9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ビニル-10-フォスファフェナントレン-10-オキシド)
OP930:クラリアントジャパン株式会社製OP930(アルミニウムトリス(ジエチルフォスフィネート))
PX-200:大八化学工業株式会社製PX-200(レゾルシノールビス(ジ-2,6-キシレニルホスフェート))剤
DT-4000:ロンザジャパン株式会社製DT-4000(ジシクロペンタジエン型シアネート樹脂)、
SA9000:SABICジャパン合同会社製SA9000(末端メタクリロイル変性ポリフェニレンエーテル樹脂)
BMI-5100:大和化成工業株式会社製BMI-5100(3,3'-ジメチル-5,5'-ジエチル-4,4'-ジフェニルメタンビスマレイミド)
【0164】
【表2】
【0165】
【表3】
【0166】
注)上記表2および表3において、配合量の単位は、特に断りのない限り「部」である。
【0167】
上記表1の評価結果より、実施例においては、硬化性樹脂を使用することで得られる硬化物は、耐熱性、及び、低誘電特性の両立を図ることができ、実用上問題のないレベルであることが確認できた。
【0168】
一方、上記表1の評価結果より、比較例1においては、架橋基であるXが2個であったため、ガラス転移温度(Tg)が低く、耐熱性に劣ることも確認された。比較例2においては、架橋奇数が6であり、Tgが高く、耐熱性を有することは確認されたが、一方で、硬化物の柔軟性や耐脆性が劣り、評価用試料である樹脂フィルムを形成することができず、実用上に問題があることが確認された。また、比較例3においては、硬化性樹脂の構造中にRaに相当する置換基がないため、立体障害が少なく、分子運動性が高くなることに伴い、誘電正接が非常に高くなり、比較例4においては、硬化性樹脂の中心構造にエステル基(酸素結合)を有するため、誘電正接および誘電率が高くなり、また、硬化性樹脂の中心構造(Zに相当)の炭素数が17と大きいため、架橋密度が低くなり、Tgが低くなり、耐熱性に劣ることが確認された。なお、比較例4においては、硬化性樹脂の構造中にRaに相当する置換基が、tert-ブチル基であることで、加熱時に熱分解しやすく、5%重量減少温度(Td5)が低い傾向を示した。
【0169】
上記表2及び表3の評価結果より、全ての実施例においては、所望の硬化性樹脂組成物を使用することで、得られた硬化物は、難燃性、耐熱性、及び、低誘電特性の向上を図ることができ、実用上問題のないレベルであることが確認できた。
【0170】
一方、上記表3の評価結果より、比較例5においては、(A)成分のみを使用し、比較例6においては、(A)成分および(B)成分を使用し、比較例7においては、(A)成分および(C)成分のみを使用し、比較例8においては、所望の構造を有さない硬化性樹脂を使用した硬化性樹脂組成物を用いて硬化物を作製したため、難燃性、耐熱性、及び、低誘電特性の全てを一度に満足するものは得られなかった。特に比較例5及び比較例7では、ラジカル重合開始剤である(B)成分を使用しなかったため、反応性が低下し、高温加熱時の重量減少が認められ、耐熱性に劣ることが確認された。また、比較例5及び比較例6では、難燃剤である(C)成分を配合しなかったため、難燃性に劣ることが確認された。また、比較例8では、所望の構造を有さない硬化性樹脂を(A)成分の代わりに使用したため、架橋基の極性基の分子運動性が高くなり、誘電正接が非常に高くなり、また、架橋基数が2つのせいで、耐熱性にも劣ることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0171】
本発明の硬化性樹脂、前記硬化性樹脂を含有する硬化制樹脂組成物を使用し得られる硬化物は、難燃性、耐熱性、及び、低誘電特性に優れることから、耐熱部材や電子部材に好適に使用可能であり、特に、プリプレグ、回路基板、ビルドアップフィルム、ビルドアップ基板等や、接着剤やレジスト材料に好適に使用可能である。また、繊維強化樹脂のマトリクス樹脂にも好適に使用可能であり、高耐熱性のプリプレグとして適している。
【要約】
特定構造を有する硬化性樹脂、ラジカル重合開始剤、及び、難燃剤を含有する硬化性樹脂組成物を使用することで、難燃性、耐熱性(高ガラス転移温度)、及び、誘電特性(低誘電特性)に優れた硬化物等を提供することを目的とする。具体的には、下記一般式(1)で表される硬化性樹脂、ならびに、前記硬化性樹脂、ラジカル重合開始剤(B)、及び、難燃剤(C)を含有することを特徴とする硬化性樹脂組成物を提供する。
[化1]

(1)
(上記一般式(1)中、Yは、下記一般式(2)で表される置換基であり
[化2]

(2)

上記一般式(1)、上記一般式(2)中に表される置換基、及び、置換基数の詳細は、本文記載の通りである。)
図1
図2
図3