(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-18
(45)【発行日】2022-04-26
(54)【発明の名称】光ファイバ集合体
(51)【国際特許分類】
G02B 6/44 20060101AFI20220419BHJP
G02B 6/036 20060101ALI20220419BHJP
G02B 6/032 20060101ALI20220419BHJP
【FI】
G02B6/44 371
G02B6/036
G02B6/032 Z
(21)【出願番号】P 2017061672
(22)【出願日】2017-03-27
【審査請求日】2019-12-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【氏名又は名称】森 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100108914
【氏名又は名称】鈴木 壯兵衞
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100115679
【氏名又は名称】山田 勇毅
(72)【発明者】
【氏名】武笠 和則
(72)【発明者】
【氏名】土田 幸寛
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 健吾
【審査官】山本 元彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-093520(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0104436(US,A1)
【文献】特表2007-532955(JP,A)
【文献】特開2015-121642(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0147366(US,A1)
【文献】欧州特許出願公開第3136143(EP,A1)
【文献】実開昭57-070204(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/02-6/06
G02B 6/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外側クラッドと、
前記外側クラッドから離間して、前記外側クラッドの内側に配置された内側クラッドと、
前記内側クラッドに外周を覆われたコアと、
前記外側クラッドと前記内側クラッドとの間に設けられた空気層と、
前記空気層中に設けられ、前記外側クラッドと前記内側クラッドとを接続する最外周接続部と
を有する光ファイバを、それぞれの長手方向を平行にして複数配列した光ファイバ集合体であって、
前記複数の光ファイバが
前記長手方向に垂直な方向の断面において直線状に配置されて、
前記長手方向に垂直な方向の断面において、前記外側クラッド、前記内側クラッド、前記コア及び前記空気層のそれぞれの外形は円形であり、
前記断面において、前記最外周接続部は円形、円環状又は多角形であり、且つ、隣り合う前記光ファイバの少なくとも一方の前記最外周接続部のすべてが、隣り合う前記光ファイバ同士で対向する位置から周方向に離間することを特徴とする光ファイバ集合体。
【請求項2】
前記最外周接続部は、前記複数の光ファイバのそれぞれの前記空気層に1つ設けられていることを特徴とする請求項1に記載の光ファイバ集合体。
【請求項3】
前記複数の光ファイバの少なくとも1つが、
前記内側クラッドの内側にさらに設けられた一又は複数の内側クラッドと、
それぞれの前記内側クラッドの間に設けられた空気層と、
それぞれの前記内側クラッドの間の前記空気層中に設けられ、それぞれの前記内側クラッド同士を接続する接続部と
を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の光ファイバ集合体。
【請求項4】
前記コアが空気コアであることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の光ファイバ集合体。
【請求項5】
前記少なくとも一方の前記最外周接続部が、前記対向する位置から前記周方向に30°以上離間することを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の光ファイバ集合体。
【請求項6】
前記少なくとも一方の前記最外周接続部が、前記対向する位置から前記周方向に60°以上離間することを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の光ファイバ集合体。
【請求項7】
前記少なくとも一方の前記最外周接続部が、前記対向する位置から前記周方向に90°以上離間することを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載の光ファイバ集合体。
【請求項8】
前記複数の光ファイバのそれぞれが、前記最外周接続部を複数有し、
前記断面において、隣り合う前記光ファイバの少なくとも一方の前記複数の最外周接続部が、隣り合う前記光ファイバ同士で対向する位置から周方向にそれぞれ離間することを特徴とする請求項1に記載の光ファイバ集合体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバテープ心線や光ファイバケーブル等の複数の光ファイバを集合した光ファイバ集合体、及び複数のコアを有するマルチコア光ファイバ(MCF)に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のMCFとして、隣り合うコア間の光の相互干渉(クロストーク)を低減するために、隣り合うコア間に複数の空孔を直線状に設け、隣り合うコア間の電磁界の重なりを遮蔽した構造が提案されている(非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】B. ヤオ(Yao) 他, 『空孔遮蔽型マルチコア光ファイバによるクロストークの低減(Reduction of Crosstalk by Hole-Walled Multi-Core Fiber)』 光ファイバ通信国際会議(Optical Fiber Communication Conference) 議事録, paper OM2D.5, 2012年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、非特許文献1に記載のMCFでは、隣り合うコア間に複数の空孔を設ける必要があるため製造プロセスが煩雑となり、構造も複雑化するという問題があった。
【0005】
本発明は、隣り合う光ファイバ間又は隣り合うコア間のクロストークを低減することができる光ファイバ集合体及びMCFを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、外側クラッドと、外側クラッドの内側に配置された内側クラッドと、外側クラッドと内側クラッドとの間に設けられた空気層と、空気層中に設けられ、外側クラッドと内側クラッドとを接続する最外周接続部とを有する光ファイバを、それぞれの長手方向を平行にして複数配列した光ファイバ集合体であって、光ファイバの長手方向に垂直な方向の断面において、隣り合う光ファイバの少なくとも一方の最外周接続部が、隣り合う光ファイバ同士で対向する位置から周方向に離間することを特徴とする。
【0007】
本発明の一態様における光ファイバ集合体において、複数の光ファイバの少なくとも1つが、内側クラッドの内側にさらに設けられた一又は複数の内側クラッドと、それぞれの内側クラッドの間に設けられた空気層と、それぞれの内側クラッドの間の空気層中に設けられ、それぞれの内側クラッド同士を接続する接続部とを有することを特徴とする。
【0008】
本発明の一態様における光ファイバ集合体において、複数の光ファイバの少なくとも1つが、内側クラッド内に設けられたコアを有することを特徴とする。
【0009】
本発明の一態様における光ファイバ集合体において、コアが空気コアであることを特徴とする。
【0010】
本発明の一態様における光ファイバ集合体において、少なくとも一方の最外周接続部が、隣り合う光ファイバ同士で対向する位置から周方向に30°以上離間することを特徴とする。
【0011】
本発明の一態様における光ファイバ集合体において、少なくとも一方の最外周接続部が、隣り合う光ファイバ同士で対向する位置から周方向に60°以上離間することを特徴とする。
【0012】
本発明の一態様における光ファイバ集合体において、少なくとも一方の最外周接続部が、隣り合う光ファイバ同士で対向する位置から周方向に90°以上離間することを特徴とする。
【0013】
本発明の一態様における光ファイバ集合体において、複数の光ファイバが直線状に配置されていることを特徴とする。
【0014】
本発明の一態様における光ファイバ集合体において、複数の光ファイバが六方最密充填構造状に配置されていることを特徴とする。
【0015】
本発明の一態様における光ファイバ集合体において、複数の光ファイバのそれぞれが、最外周接続部を複数有し、光ファイバの長手方向に垂直な方向の断面において、隣り合う光ファイバの少なくとも一方の複数の最外周接続部が、隣り合う光ファイバ同士で対向する位置から周方向にそれぞれ離間することを特徴とする。
【0016】
本発明の他の態様は、複数の内側クラッドと、複数の内側クラッドの周囲を、空気層を介して一括して覆うクラッド部と、空気層中に設けられ、クラッド部と複数の内側クラッドとを接続する最外周接続部とを有するマルチコア光ファイバであって、マルチコア光ファイバの長手方向に垂直な方向の断面において、隣り合う内側クラッドにそれぞれ接続された最外周接続部の少なくとも一方が、内側クラッド同士で対向する位置から周方向に離間することを特徴とする。
【0017】
本発明の一態様におけるマルチコア光ファイバにおいて、複数の内側クラッドのそれぞれが、最外周接続部を複数有し、マルチコア光ファイバの長手方向に垂直な方向の断面において、隣り合う内側クラッドにそれぞれ接続された複数の最外周接続部の少なくとも一方が、内側クラッド同士で対向する位置から周方向に離間することを特徴とする。
【0018】
本発明の更に他の態様は、外側クラッドと、外側クラッドの内側に配置された複数の管状の内側クラッドとを有するアンチレゾナント型光ファイバを、それぞれの長手方向を平行にして複数配列した光ファイバ集合体であって、長手方向に垂直な方向の断面において、隣り合うアンチレゾナント型光ファイバの少なくとも一方の内側クラッドが、隣り合うアンチレゾナント型光ファイバ同士で対向する位置から周方向に離間することを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、隣り合う光ファイバ間又は隣り合うコア間のクロストークを低減した光ファイバ集合体及びMCFを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る光ファイバテープ心線の一例を示す長手方向に垂直な方向の断面図である。
【
図2】第1の実施形態に係る光ファイバの一例を示す長手方向に垂直な方向の断面図である。
【
図3】
図3(a)~
図3(d)は、
図2に示した光ファイバの最外周接続部の直径が0.01μmの場合のEx成分、Ey成分、Ez成分、ベクトル成分のそれぞれのシミュレーション結果を示す概略図である。
【
図4】
図3(a)~
図3(d)は、
図2に示した光ファイバの最外周接続部の直径が0.50μmの場合のEx成分、Ey成分、Ez成分、ベクトル成分のそれぞれのシミュレーション結果を示す概略図である。
【
図5】第1の実施形態の比較例に係る光ファイバテープ心線の一例を示す長手方向に垂直な方向の断面図である。
【
図6】
図6(a)~
図6(c)は、第1の実施形態に係る光ファイバの配列方法の一例をそれぞれ示す概略図である。
【
図7】第1の実施形態に係る光ファイバテープ心線の他の一例を示す長手方向に垂直な方向の断面図である。
【
図8】第1の実施形態に係る光ファイバテープ心線の更に他の一例を示す長手方向に垂直な方向の断面図である。
【
図9】第1の実施形態の第1の変形例に係る光ファイバテープ心線の一例を示す長手方向に垂直な方向の断面図である。
【
図10】第1の実施形態の第1の変形例に係る光ファイバテープ心線の他の一例を示す長手方向に垂直な方向の断面図である。
【
図11】第1の実施形態の第1の変形例に係る光ファイバテープ心線の更に他の一例を示す長手方向に垂直な方向の断面図である。
【
図12】第1の実施形態の第1の変形例に係る光ファイバテープ心線の更に他の一例を示す長手方向に垂直な方向の断面図である。
【
図13】第1の実施形態の第1の変形例の比較例に係る光ファイバテープ心線の一例を示す長手方向に垂直な方向の断面図である。
【
図14】第1の実施形態の第2の変形例に係る光ファイバテープ心線の一例を示す長手方向に垂直な方向の断面図である。
【
図15】第1の実施形態の第2の変形例に係る光ファイバテープ心線の他の一例を示す長手方向に垂直な方向の断面図である。
【
図16】第1の実施形態の第2の変形例に係る光ファイバテープ心線の更に他の一例を示す長手方向に垂直な方向の断面図である。
【
図17】第1の実施形態の第2の変形例の比較例に係る光ファイバテープ心線の一例を示す長手方向に垂直な方向の断面図である。
【
図18】
図18(a)~
図18(d)は、第1の実施形態の第3の変形例に係る光ファイバの一例をそれぞれ示す長手方向に垂直な方向の断面図である。
【
図19】本発明の第2の実施形態に係る光ファイバケーブルの一例を示す長手方向に垂直な方向の断面図である。
【
図20】第2の実施形態の比較例に係る光ファイバケーブルの一例を示す長手方向に垂直な方向の断面図である。
【
図21】第2の実施形態に係る光ファイバケーブルの他の一例を示す長手方向に垂直な方向の断面図である。
【
図22】第2の実施形態に係る光ファイバケーブルの更に他の一例を示す長手方向に垂直な方向の断面図である。
【
図23】第2の実施形態に係る光ファイバケーブルの更に他の一例を示す長手方向に垂直な方向の断面図である。
【
図24】本発明の第3の実施形態に係るMCFの一例を示す長手方向に垂直な方向の断面図である。
【
図25】第3の実施形態の比較例に係るMCFの一例を示す長手方向に垂直な方向の断面図である。
【
図26】第3の実施形態に係るMCFを製造するための光ファイバ母材の一例を示す長手方向に垂直な方向の断面図である。
【
図27】第3の実施形態の第1の変形例に係るMCFの他の一例を示す長手方向に垂直な方向の断面図である。
【
図28】第3の実施形態の第1の変形例に係るMCFの更に他の一例を示す長手方向に垂直な方向の断面図である。
【
図29】第3の実施形態の第2の変形例に係るMCFの一例を示す長手方向に垂直な方向の断面図である。
【
図30】第3の実施形態の第2の変形例の比較例に係るMCFの一例を示す長手方向に垂直な方向の断面図である。
【
図31】第3の実施形態の第2の変形例に係るMCFの他の一例を示す長手方向に垂直な方向の断面図である。
【
図32】第3の実施形態の第2の変形例に係るMCFの更に他の一例を示す長手方向に垂直な方向の断面図である。
【
図33】
図33(a)及び
図33(b)は、本発明のその他の実施形態に係る光ファイバの配列の一例をそれぞれ示す長手方向に垂直な方向の断面図であり、
図33(c)は、比較例に係る光ファイバの配列の一例を示す長手方向に垂直な方向の断面図である。
【
図34】
図34(a)及び
図34(b)は、本発明のその他の実施形態に係る光ファイバの配列の一例をそれぞれ示す長手方向に垂直な方向の断面図であり、
図34(c)は、比較例に係る光ファイバの配列の一例を示す長手方向に垂直な方向の断面図である。
【
図35】
図35(a)及び
図35(b)は、本発明のその他の実施形態に係る光ファイバの一例をそれぞれ示す長手方向に垂直な方向の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下において、本発明の第1~第3の実施形態を、図面を参照して説明する。以下の説明で参照する図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各層の厚みの比率等は現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な厚みや寸法は以下の説明を参酌して判断すべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0022】
更に、以下に示す第1~第3の実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための光ファイバ集合体及びマルチコア光ファイバを例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質や、それらの形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0023】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態に係る光ファイバ集合体は、
図1に示すように、直線状(リボン状)に並列に配列された複数(4本)の光ファイバ10a,10b,10c,10dと、複数の光ファイバ10a~10dを一括して覆うように配置された被覆層6とを備える光ファイバテープ心線である。光ファイバ10a~10dは、それぞれの長手方向を平行にして複数配列されている。
【0024】
光ファイバ10aは、コア1aと、コア1aの周囲に配置された内側クラッド2aと、内側クラッド2aの周囲に空気層(空気リング)5aを介して配置された管状の外側クラッド3aと、空気層5a中に設けられ、内側クラッド2aと外側クラッド3aとを接続する最外周接続部(接続部)4aとを備える。なお、光ファイバ10aは、必要に応じて単層または複数層からなる被覆層(図示しない)を有していても良い。
【0025】
ここで「最外周接続部」とは、光ファイバ10aが有する最外周の空気層に設けられる接続部を意味する。即ち、
図1に示すように光ファイバ10aが内側クラッド2aと外側クラッド3aの間の1層の空気層5aを有する場合には、その空気層5aが最外周の空気層であり、空気層5aに設けられる接続部4aが最外周接続部となる。また、詳細は後述するが、光ファイバが内側クラッドの内側に空気層を介して一又は複数の内側クラッドが更に周期的に設けられている場合には、複数の内側クラッドのうちの最外周の内側クラッドと外側クラッドの間の空気層が最外周の空気層であり、その最外周の空気層に設けられる接続部が最外周接続部となる。
【0026】
コア1a、内側クラッド2a及び外側クラッド3aの材料としては、例えば石英ガラス(シリカガラス)又は不純物元素(ドーパント)が添加(ドープ)された石英ガラス等の誘電体が使用可能である。コア1a、内側クラッド2a及び外側クラッド3aは、互いに同じ材料から構成されてもよく、異なる材料から構成されてもよい。コア1aの屈折率は、内側クラッド2aの屈折率と異なる。例えばコア1aを光が伝搬する通常のコアとして機能させる場合には、コア1aの屈折率は、内側クラッド2aの屈折率よりも高い。また、コア1aを屈折率変化部として機能させ、且つ内側クラッド2aを光が伝搬するコアとして機能させる場合には、コア1aの屈折率は、内側クラッド2aの屈折率よりも低くてもよい。
【0027】
最外周接続部4aは、光ファイバ10aの長手方向に平行に延伸するように、空気層5aの周方向の一部に配置され、内側クラッド2aの外周面及び外側クラッド3aの内周面に接続されている。最外周接続部4aの材料としては、石英ガラスやポリマー等が使用可能である。最外周接続部4aは、コア1a、内側クラッド2a及び外側クラッド3aと同じ材料から構成されていてもよく、異なる材料から構成されていてもよい。最外周接続部4aは、円形(ソリッド状)の断面形状を有する場合を例示するが、これに限定されない(最外周接続部4aの種類は第3の変形例で後述する)。被覆層6は紫外線硬化樹脂等からなる。
【0028】
図1に示した光ファイバ10b,10c,10dも、光ファイバ10aと同様の構造を有する。即ち、光ファイバ10bは、コア1bと、コア1bの周囲に配置された内側クラッド2bと、内側クラッド2bの周囲に空気層5bを介して配置された管状の外側クラッド3bと、空気層5b中に設けられ、内側クラッド2bと外側クラッド3bとを接続する最外周接続部4bとを備える。
【0029】
光ファイバ10cは、コア1cと、コア1cの周囲に配置された内側クラッド2cと、内側クラッド2cの周囲に空気層5cを介して配置された管状の外側クラッド3cと、空気層5c中に設けられ、内側クラッド2cと外側クラッド3cとを接続する最外周接続部4cとを備える。
【0030】
光ファイバ10dは、コア1dと、コア1dの周囲に配置された内側クラッド2dと、内側クラッド2dの周囲に空気層5dを介して配置された管状の外側クラッド3dと、空気層5d中に設けられ、内側クラッド2dと外側クラッド3dとを接続する最外周接続部4dとを備える。
【0031】
なお、
図1では4本の光ファイバ10a~10dが配列された4心テープ心線を例示したが、光ファイバ10a~10dの本数は特に限定されず、例えば2心テープ心線、8心テープ心線、12心テープ心線等であってもよい。また、光ファイバ10a~10dが隣接した構造を例示したが、光ファイバ10a~10dが互いに離間した構造であってもよい。
【0032】
従来の光ファイバにおいて、曲げ損失等の特性を改善するために、コアとクラッドの間に、コア及びクラッドよりも屈折率の低い、フッ素(F)を不純物元素として添加(ドープ)したシリカ等からなるトレンチ領域を設けた構造が知られている(
図23の中央の光ファイバ10g参照)。この構造では、不純物添加により実現できるトレンチ領域とその周囲との屈折率差が制約され、曲げ損失を大幅に抑制することは困難である。
【0033】
これに対して、
図1に示した光ファイバ10a~10dによれば、内側クラッド2a~2dの周囲に空気層5a~5dを設けたことにより、トレンチ領域を設けた構造と比較して曲げ損失を大幅に抑制することができる。また、最外周接続部4aが空気層5aの周方向の一部に連続しないように配置されているので、最外周接続部4aの個数が少なくて済み、構造の準備や制御が比較的容易となる。したがって、
図1に示した光ファイバ10a~10dによれば、所望の特性をより容易に実現可能となる。
【0034】
図1では、光ファイバ10a~10dの中心軸及び光ファイバ10a~10d同士の接点を通り、隣り合う光ファイバ10a~10dの空気層5a~5dの対向する位置を通る直線L1を破線で模式的に示している。複数の光ファイバ10a~10dの長手方向に垂直な方向の断面において、
図1の左側で隣り合う光ファイバ10a,10bに着目すると、光ファイバ10aの最外周接続部4aが、光ファイバ10a,10b同士の対向する位置に配置されている。一方、光ファイバ10bの最外周接続部4bが、光ファイバ10a,10b同士の対向する位置から周方向に180°離間する。
【0035】
また、
図1の中央で隣り合う光ファイバ10b,10cに着目すると、光ファイバ10bの最外周接続部4bが、光ファイバ10b,10c同士の対向する位置に配置されている。一方、光ファイバ10cの最外周接続部4cが、光ファイバ10b,10c同士の対向する位置から周方向に180°離間する。また、
図1の右側で隣り合う光ファイバ10c,10dに着目すると、光ファイバ10cの最外周接続部4cが、光ファイバ10c,10d同士の対向する位置に配置されている。一方、光ファイバ10dの最外周接続部4dが、光ファイバ10c,10d同士の対向する位置から周方向に180°離間する。
【0036】
ここで、
図1に示した光ファイバ10a~10dと類似する構造の光ファイバに対するシミュレーション結果について説明する。
図2に示すように、石英ガラスからなる内側クラッド2aと、内側クラッド2aの周囲に円環状の空気層5aを介して配置された石英ガラスからなる外側クラッド3aと、内側クラッド2aと外側クラッド3aとを接続するように空気層5aに配置された石英ガラスからなる円環状の断面形状の最外周接続部4aと備える光ファイバの構造について、光ファイバの周方向における最外周接続部4aの厚さを変化させて、フィールドのシミュレーションを行った。
【0037】
表1に示すように、内側クラッド2aの直径をD1=20μm、空気層5aの厚さをT=2.0μmに設定し、光ファイバの周方向における最外周接続部4aの厚さをt=0.01μm及びt=0.50μmの2種類で設定した。光ファイバの有効屈折率neffは最外周接続部4aの厚さt=0.01μm及びt=0.50μmの場合でほぼ一致し、閉じ込め損失は最外周接続部4aの厚さt=0.50μmの方が大きくなり、光ファイバの設計実効断面積Aeffは最外周接続部4aの厚さt=0.01μmの方が大きくなる。
【0038】
【0039】
図3(a)~
図3(d)は、最外周接続部4aの厚さをt=0.01μmに設定した場合のフィールドのEx成分、Ey成分、Ez成分、ベクトル成分をそれぞれ示す。
図4(a)~
図4(d)は、最外周接続部4aの厚さを厚くしてt=0.50μmに設定した場合のフィールドのEx成分、Ey成分、Ez成分、ベクトル成分をそれぞれ示す。
図3(a)~
図3(d)及び
図4(a)~
図4(d)では、
図3(a)及び
図4(a)の右側に示すように電界強度をグレースケールで表示している。
【0040】
図3(a)~
図3(d)に示す最外周接続部4aの厚さt=0.01μmの場合、
図4(a)~
図4(d)に示す最外周接続部4aの厚さt=0.50μmの場合のいずれでも、フィールドが偏りを有しているのが観察され、特に、最外周接続部4aの厚さt=0.50μmの方が顕著である。フィールドの偏りの方向は最外周接続部4aが存在する方向(
図3(a)~
図3(d)及び
図4(a)~
図4(d)の右側)であり、最外周接続部4aが光の抜け道となり、最外周接続部4aを介して光が外部に漏れてゆくと考えられる。この現象は、
図2に示した光ファイバと類似する
図1に示した光ファイバ10a~10dでも同様に生じると考えられる。
【0041】
ここで、比較例に係る光ファイバ集合体を
図5に示す。比較例に係る光ファイバ集合体では、光ファイバ10a~10dが無作為に配列された結果、
図5の左側で隣り合う光ファイバ10a,10bのそれぞれの最外周接続部4a,4bが、光ファイバ10a,10b同士の対向する位置に配置されているため、最外周接続部4a,4bを介して光が行き来し易くなり、光ファイバ10a,10b間のクロストークが増大する。また、
図5の右側で隣り合う光ファイバ10c,10dのそれぞれの最外周接続部4c,4dが、光ファイバ10c,10d同士の対向する位置に配置されているため、最外周接続部4c,4dを介して光が行き来し易くなり、光ファイバ10c,10d間のクロストークが増大する。
【0042】
これに対して、第1の実施形態に係る光ファイバ集合体では、
図1に示すように、複数の光ファイバ10a~10dの長手方向に垂直な方向の断面において、隣り合う光ファイバ10a~10dのそれぞれの最外周接続部4a~4dの少なくとも一方が、隣り合う光ファイバ10a~10d同士が対向する位置から離間する。即ち、隣り合う光ファイバ10a~10dの最外周接続部4a~4d同士が対向しないように配置することで、光ファイバ10a~10dの最外周接続部4a~4dを介して行き来する光の経路を長くすることができ、隣り合う光ファイバ10a~10d間のクロストークを低減させることができる。
【0043】
なお、隣り合う光ファイバ10a~10dのクロストーク低減の観点からは、隣り合う光ファイバ10a~10dの最外周接続部4a~4dの位置は、互いに離れるほど好ましい。例えば、2心のテープ心線の場合には、隣り合う光ファイバのそれぞれの最外周接続部が、隣り合う光ファイバ同士の対向する位置から180°離間するのが好ましい。
【0044】
また、
図6(a)に示すように、隣り合う光ファイバ10a,10bに着目した場合、最外周接続部4a,4bが光ファイバ10a,10b同士の対向する位置に対して、最外周接続部4bが周方向に30°以上離間してもよい。或いは、
図6(b)に示すように、最外周接続部4a,4bが光ファイバ10a,10b同士の対向する位置に対して、最外周接続部4bが周方向に60°以上離間してもよい。或いは、
図6(c)に示すように、最外周接続部4a,4bが光ファイバ10a,10b同士の対向する位置に対して、最外周接続部4bが周方向に90°以上離間してもよい。
【0045】
図6(a)~
図6(c)に示すように、最外周接続部4a,4bが光ファイバ10a,10b同士の対向する位置に対して、最外周接続部4bが30°以上、60°以上、或いは90°以上離間することにより、隣り合う光ファイバ10a,10b間のクロストークを効率的に低減することができる。なお、
図6(a)~
図6(c)では隣り合う光ファイバ10a,10bに着目して説明したが、隣り合う光ファイバ10b,10c、隣り合う光ファイバ10c,10dに着目した場合でも同様である。
【0046】
或いは、
図7に示すように、隣り合う光ファイバ10a~10dの最外周接続部4a~4dの両方が、光ファイバ10a~10d同士の対向する位置とは異なる位置に配置されていてもよい。即ち、
図7の左側で隣り合う光ファイバ10a,10bに着目すると、光ファイバ10a,10b同士の対向する位置に対して、最外周接続部4aが周方向に反時計回りに90°離間するとともに、最外周接続部4bが周方向に反時計回りに90°離間する。また、
図7の中央で隣り合う光ファイバ10b,10cに着目すると、光ファイバ10b,10c同士の対向する位置に対して、最外周接続部4bが周方向に時計回りに90°離間するとともに、最外周接続部4cが周方向に時計回りに90°離間する。また、
図7の右側で隣り合う光ファイバ10c,10dに着目すると、光ファイバ10c,10d同士の対向する位置に対して、最外周接続部4cが周方向に反時計回りに90°離間するとともに、最外周接続部4dが周方向に反時計回りに90°離間する。
【0047】
次に、第1の実施形態に係る光ファイバ集合体の製造方法の一例を説明する。なお、以下に述べる光ファイバ集合体の製造方法は一例であり、特許請求の範囲に記載した趣旨の範囲であれば、これ以外の種々の製造方法により実現可能であることは勿論である。
【0048】
まず、光ファイバ10aのコア1aを形成するための石英等からなるコア母材部と、内側クラッド2aを形成するための石英等からなる内側クラッド母材部の2層構造を用意する。内側クラッド母材部の周囲に、外側クラッド3aを形成するための管状の外側クラッド母材部を同心状に離間して配置し、2層構造及び外側クラッド母材部の端部をテープ又は接着剤等で仮止めして、内側クラッド母材部及び外側クラッド母材部の間のエアギャップを維持する。この内側クラッド母材部及び外側クラッド母材部の間に、最外周接続部4aを形成するためのガラス棒(接続母材部)を挿入し、融着等により固定する。この結果、光ファイバ母材が作製される。その後、ファイバ母材を線引きすることで、
図1に示した光ファイバ10aが製造される。他の光ファイバ10b~10dも、光ファイバ10aと同様の製造プロセスにより製造される。なお、必要に応じて、光ファイバ10a~10dの外側クラッド3a~3dの周囲に単層または複数層からなる被覆層を形成しても良い。
【0049】
そして、光ファイバ10a~10dを直線状に配列する。この際、
図1に示すように、複数の光ファイバ10a~10dの長手方向に垂直な方向の断面において、隣り合う光ファイバ10a~10dのそれぞれの最外周接続部4a~4dの少なくとも一方が、隣り合う光ファイバ10a~10d同士の対向する位置から離間するように、光ファイバ10a~10dを回転させて光ファイバ10a~10dの向きを調整する。配列した光ファイバ10a~10dの周囲を紫外線硬化樹脂で被覆し、紫外線を照射することで紫外線硬化樹脂を硬化させて被覆層6を形成する。この結果、
図1に示した光ファイバ集合体が完成する。
【0050】
<第1の変形例>
第1の実施形態に係る光ファイバ集合体として、光ファイバ10a~10dが最外周接続部4a~4dを1つずつ有する場合を例示したが、最外周接続部4a~4dの個数は限定されない。第1の実施形態の第1の変形例に係る光ファイバ集合体は、
図8に示すように、各光ファイバ10a~10dが最外周接続部41a,42a;41b,42b;41c,42c;41d,42dを2つずつ有する点が、第1の実施形態に係る光ファイバ集合体と異なる。
【0051】
図8の左側で隣り合う光ファイバ10a,10bに着目すると、光ファイバ10aの2つの最外周接続部41a,42aは、光ファイバ10a,10b同士の対向する位置からそれぞれ90°反対方向に離間する。一方、光ファイバ10bの2つの最外周接続部41b,42bは、光ファイバ10a,10b同士の対向する位置からそれぞれ90°反対方向に離間する。
【0052】
また、
図8の中央で隣り合う光ファイバ10b,10cに着目すると、光ファイバ10bの2つの最外周接続部41b,42bは、光ファイバ10b,10c同士の対向する位置からそれぞれ90°反対方向に離間する。一方、光ファイバ10cの2つの最外周接続部41c,42cは、光ファイバ10b,10c同士の対向する位置からそれぞれ90°反対方向に離間する。
【0053】
また、
図8の右側で隣り合う光ファイバ10c,10dに着目すると、光ファイバ10cの2つの最外周接続部41c,42cは、光ファイバ10c,10d同士の対向する位置からそれぞれ90°反対方向に離間する。一方、光ファイバ10dの2つの最外周接続部41d,42dは、光ファイバ10c,10d同士の対向する位置からそれぞれ90°反対方向に離間する。
【0054】
また、
図9に示す光ファイバテープ心線は、光ファイバ10aの最外周接続部41a,42a及び光ファイバ10cの最外周接続部41c,42cの位置が
図8に示した光ファイバテープ心線と異なる。
図9の左側で隣り合う光ファイバ10a,10bに着目すると、光ファイバ10aの一方の最外周接続部41aは、光ファイバ10a,10b同士の対向する位置から180°離間して配置され、他方の最外周接続部42aは、光ファイバ10a,10b同士の対向する位置に配置されている。
【0055】
図9の中央で隣り合う光ファイバ10b,10cに着目すると、光ファイバ10cの一方の最外周接続部41cは、光ファイバ10b,10c同士の対向する位置に配置され、他方の最外周接続部42cは、光ファイバ10b,10c同士の対向する位置から180°離間して配置されている。
図9の右側で隣り合う光ファイバ10c,10dに着目すると、光ファイバ10cの一方の最外周接続部41cは、光ファイバ10c,10d同士の対向する位置から180°離間して配置され、他方の最外周接続部42cは、光ファイバ10c,10d同士の対向する位置に配置されている。他の構成は、
図8に示した光ファイバテープ心線と同様である。
【0056】
また、
図10に示すように、各光ファイバ10a~10dの最外周接続部41a,42a;41b,42b;41c,42c;41d,42dのすべてが、隣り合う光ファイバ10a~10d同士の対向する位置から離間していてもよい。
図10の左側で隣り合う光ファイバ10a,10bに着目すると、光ファイバ10aの一方の最外周接続部41aは、光ファイバ10a,10b同士の対向する位置から反時計回りに135°離間して配置され、他方の最外周接続部42aは、光ファイバ10a,10b同士の対向する位置から時計回りに45°離間して配置されている。
【0057】
光ファイバ10bの一方の最外周接続部41bは、光ファイバ10a,10b同士の対向する位置から時計回りに45°離間して配置され、他方の最外周接続部42bは、光ファイバ10a,10b同士の対向する位置から反時計回りに135°離間して配置されている。
図10の中央で隣り合う光ファイバ10b,10cの関係、及び
図10の右側で隣り合う光ファイバ10c,10dの関係も、
図10の左側で隣り合う光ファイバ10a,10bの関係と同様である。
【0058】
また、各光ファイバ10a~10dの最外周接続部41a,42a;41b,42b;41c,42c;41d,42dは、各光ファイバ10a~10dの中心軸を挟んで対称的に配置されていなくてもよい。例えば
図11に示すように、光ファイバ10aの一方の最外周接続部4aが、隣り合う光ファイバ10a,10b同士の対向する位置から反時計回りに45°離間して配置され、他方の最外周接続部4bが、隣り合う光ファイバ10a,10b同士の対向する位置に配置されていてもよい。他の光ファイバ10b~10dも、光ファイバ10aと同様の構成を有する。
【0059】
また、各光ファイバ10a~10dの最外周接続部の数が互いに異なっていてもよい。例えば
図12に示すように、光ファイバ10a,10dが2つずつ最外周接続部41a,42a;41d,42dを有し、光ファイバ10b,10cが1つずつ最外周接続部41b;41cを有していてもよい。
【0060】
ここで、比較例に係る光ファイバテープ心線を
図13に示す。比較例に係る光ファイバテープ心線では、
図13の左側で隣り合う光ファイバ10a,10bの最外周接続部42a,41bが、隣り合う光ファイバ10a,10b同士の対向する位置に配置されているため、最外周接続部42a,41bを介して光が行き来し易くなり、隣り合う光ファイバ10a,10b間のクロストークが増大する。また、
図13の中央で隣り合う光ファイバ10b,10cの最外周接続部42b,41cが、隣り合う光ファイバ10b,10c同士の対向する位置に配置されているため、最外周接続部42b,41cを介して光が行き来し易くなり、隣り合う光ファイバ10b,10c間のクロストークが増大する。また、
図13の右側で隣り合う光ファイバ10c,10dの最外周接続部42c,41dが、隣り合う光ファイバ10c,10d同士の対向する位置に配置されているため、最外周接続部42c,41dを介して光が行き来し易くなり、隣り合う光ファイバ10c,10d間のクロストークが増大する。
【0061】
これに対して、
図8~
図12に示した第1の実施形態の第1の変形例に係る光ファイバテープ心線によれば、隣り合う光ファイバ10a~10dの最外周接続部41a,42a;41b,42b;41c,42c;41d,42dの少なくとも一方が、隣り合う光ファイバ10a~10d同士の対向する位置から離間するため、光ファイバ10a~10dの最外周接続部41a,42a;41b,42b;41c,42c;41d,42dを介して行き来する光の経路を長くすることができ、隣り合う光ファイバ10a~10d間のクロストークを低減させることができる。
【0062】
<第2の変形例>
第1の実施形態の第2の変形例に係る光ファイバ集合体は、
図14に示すように、各光ファイバ10a~10dが3つずつ最外周接続部41a,42a,43a;41b,42b,43b;41c,42c,43c;41d,42d,43dを有する点が、第1の実施形態に係る光ファイバ集合体と異なる。
【0063】
図14の左側で隣り合う光ファイバ10a,10bに着目した場合、光ファイバ10aの3つの最外周接続部41a,42a,43aは、互いに120°離間し、それぞれ、光ファイバ10a,10b同士の対向する位置から反時計周りに90°、時計回りに45°、時計回りに135°離間する。一方、光ファイバ10bの3つの最外周接続部41b,42b,43bは、互いに120°離間し、それぞれ、光ファイバ10a,10b同士の対向する位置から時計周りに90°、反時計回りに45°、反時計回りに135°離間する。
図14の中央で隣り合う光ファイバ10b,10cの関係、及び
図14の右側で隣り合う光ファイバ10c,10dの関係も、
図14の左側で隣り合う光ファイバ10a,10bの関係と同様である。即ち、
図14においては、隣り合う光ファイバ10a~10dのそれぞれの最外周接続部41a,42a,43a;41b,42b,43b;41c,42c,43c;41d,42d,43dのすべてが、隣り合う光ファイバ10a~10d同士の対向する位置から離間して配置されている。
【0064】
また、
図15に示すように、隣り合う光ファイバ10a~10dのそれぞれの最外周接続部41a,42a,43a;41b,42b,43b;41c,42c,43c;41d,42d,43dの一方の1つが、隣り合う光ファイバ10a~10d同士の対向する位置に配置されていてもよい。
図15の左側で隣り合う光ファイバ10a,10bに着目した場合、光ファイバ10aの3つの最外周接続部41a,42a,43aは、互いに120°離間し、最外周接続部42aが、光ファイバ10a,10b同士の対向する位置に配置されている。
図15の中央で隣り合う光ファイバ10b,10cの関係、及び
図15の右側で隣り合う光ファイバ10c,10dの関係も、
図15の左側で隣り合う光ファイバ10a,10bの関係と同様である。
【0065】
また、
図16に示す光ファイバテープ心線は、光ファイバ10bの最外周接続部41a,42a,43a及び光ファイバ10dの最外周接続部41d,42d,42dの位置が、
図14に示した光ファイバテープ心線と異なる。
図16の左側で隣り合う光ファイバ10a,10bに着目した場合、光ファイバ10aの3つの最外周接続部41a,42a,43aはそれぞれ、光ファイバ10a,10b同士の対向する位置から時計周りに45°、時計回りに135°、反時計回りに90°離間する。
【0066】
図16の中央で隣り合う光ファイバ10b,10cに着目した場合、光ファイバ10bの3つの最外周接続部41b,42b,43bはそれぞれ、光ファイバ10b,10c同士の対向する位置から反時計周りに135°、反時計回りに45°、時計回りに90°離間する。
図16の右側で隣り合う光ファイバ10c,10dに着目した場合、光ファイバ10dの3つの最外周接続部41d,42d,43dはそれぞれ、光ファイバ10c,10d同士の対向する位置から時計周りに45°、時計回りに135°、反時計回りに90°離間する。他の構成は、
図14に示した光ファイバテープ心線と同様である。
【0067】
ここで、比較例に係る光ファイバテープ心線を
図17に示す。比較例に係る光ファイバテープ心線では、
図17の左側で隣り合う光ファイバ10a,10bに着目すると、光ファイバ10aの最外周接続部42aと、光ファイバ10bの最外周接続部43bは、光ファイバ10a,10b同士の対向する位置に配置されているため、最外周接続部42a,43bを介して光が行き来し易くなり、隣り合う光ファイバ10a,10b間のクロストークが増大する。また、
図17の右側で隣り合う光ファイバ10c,10dに着目すると、光ファイバ10cの最外周接続部42cと、光ファイバ10dの最外周接続部43dは、光ファイバ10c,10d同士の対向する位置に配置されているため、最外周接続部42c,43dを介して光が行き来し易くなり、隣り合う光ファイバ10c,10d間のクロストークが増大する。
【0068】
これに対して、
図14~
図16に示した第1の実施形態の第2の変形例に係る光ファイバ集合体によれば、隣り合う光ファイバ10a~10dの最外周接続部41a,42a,43a;41b,42b,43b;41c,42c,43c;41d,42d,43dの少なくとも一方が、隣り合う光ファイバ10a~10d同士の対向する位置から離間するため、最外周接続部41a,42a,43a;41b,42b,43b;41c,42c,43c;41d,42d,43dを介して行き来する光の経路を長くすることができ、隣り合う光ファイバ10a~10d間のクロストークを低減させることができる。
【0069】
なお、第1の実施形態の第1の変形例において各光ファイバ10a~10dが2つずつ最外周接続部41a,42a;41b,42b;41c,42c;41d,42dを有する構造を例示し、第1の実施形態の第2の変形例において各光ファイバ10a~10dが3つずつ最外周接続部41a,42a,43a;41b,42b,43b;41c,42c,43c;41d,42d,43dを有する構造を例示したが、各光ファイバ10a~10dが有する最外周接続部の個数は特に限定されず、各光ファイバ10a~10dが4つ以上の最外周接続部をそれぞれ有していてもよい。
【0070】
<第3の変形例>
第1の実施形態の第3の変形例として、光ファイバテープ心線を構成する光ファイバ10a~10dの変形例を、光ファイバ10a~10dを代表して光ファイバ10aについて説明する。
図1では光ファイバ10aの最外周接続部4aが円形の断面形状である場合を例示したが、これに限定されず、例えば三角形、四角形等の多角形の断面形状を有していてもよい。例えば
図18(a)に示すように、光ファイバ10aの最外周接続部4aが板状(矩形)の断面形状を有していてもよい。また、
図18(b)に示すように、光ファイバ10aの最外周接続部4aが円環状(リング状)の断面形状を有していてもよい。
【0071】
また、
図18(c)に示すように、
図1に示した光ファイバ10aのコア1aが無く、内側クラッド2aの部分を光が伝搬するコアとして機能させる構造であってもよい。また、光ファイバ10aが複数の最外周接続部を有する場合に、複数の最外周接続部が互いに異なる形状を有していてもよい。例えば
図18(d)に示すように、光ファイバ10aが2つの最外周接続部41a,42aを有する場合、一方の最外周接続部41aが板状の断面形状を有し、他方の最外周接続部42aが円環状(リング状)の断面形状を有していてもよい。このように、光ファイバテープ心線を構成する光ファイバ10a~10dとしては種々の構造が採用可能である。
【0072】
(第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態に係る光ファイバ集合体は、
図19に示すように、複数の光ファイバ10a~10gと、複数の光ファイバ10a~10gを収容する外被7とを備える光ファイバケーブルの終端部構造(光ファイババンドル構造)である。例えば、マルチコアファイバの各コアとシングルコアファイバとを接続するための、ファンアウト用のバンドルファイバとして使用するものである。複数の光ファイバ10a~10gは、光ファイバ10gの周囲を光ファイバ10b~10gが取り囲むように、六方最密充填構造状にバンドル紐や外被7等によって束ねられて固定されている。複数の光ファイバ10a~10gは、それぞれの長手方向に直線状に配列されていてもよく、複数の光ファイバ10a~10fが撚られていてもよい。
【0073】
外被7の材料としては、ポリエチレン(PE)等の樹脂やシリカガラス等、一般的なバンドル構造に用いられる材料が使用可能である。光ファイバ10e~10gは、光ファイバ10a~10dと同様の構成を有する。光ファイバ10eは、コア1eと、コア1eの周囲に配置された内側クラッド2eと、内側クラッド2eの周囲に空気層5eを介して配置された外側クラッド3eと、空気層5e中に設けられ、内側クラッド2eと外側クラッド3eを接続する最外周接続部4eとを備える。
【0074】
光ファイバ10fは、コア1fと、コア1fの周囲に配置された内側クラッド2fと、内側クラッド2fの周囲に空気層5fを介して配置された外側クラッド3fと、空気層5f中に設けられ、内側クラッド2fと外側クラッド3fを接続する最外周接続部4fとを備える。光ファイバ10gは、コア1gと、コア1gの周囲に配置された内側クラッド2gと、内側クラッド2gの周囲に空気層5gを介して配置された外側クラッド3gと、空気層5g中に設けられ、内側クラッド2gと外側クラッド3gを接続する最外周接続部4gとを備える。
【0075】
なお、本発明の第2の実施形態に係る光ファイバケーブルの終端部構造は、必要に応じて光ファイバ10a~10gの周囲を覆う押巻きテープや、抗張力体(テンションメンバ)、引き裂き紐(リップコード)等を有していてもよい。
【0076】
図19では、隣り合う光ファイバ10a~10gの中心軸を結び、隣り合う光ファイバ10a~10g同士の接点と、隣り合う光ファイバ10a~10gの空気層5a~5gの対向する位置とを通る直線L31~L36,L41~L46を破線で模式的に示している。第2の実施形態に係る光ファイバケーブルの終端部構造では、隣り合う光ファイバ10a~10gの最外周接続部4a~4gの少なくとも一方が、隣り合う光ファイバ10a~10g同士の対向する位置から離間する。
【0077】
例えば、
図19の上側の光ファイバ10aは、光ファイバ10b,10f,10gと隣接している。隣り合う光ファイバ10a,10bに着目すると、光ファイバ10aの最外周接続部4aが、隣り合う光ファイバ10a,10b同士の対向する位置から周方向に反時計周りに120°離間する。一方、光ファイバ10bの最外周接続部4bが、隣り合う光ファイバ10a,10b同士の対向する位置から周方向に時計周りに120°離間する。また、隣り合う光ファイバ10a,10fに着目すると、光ファイバ10aの最外周接続部4aが、隣り合う光ファイバ10a,10f同士の対向する位置から周方向に時計周りに120°離間する。一方、光ファイバ10fの最外周接続部4fが、隣り合う光ファイバ10a,10f同士の対向する位置から周方向に反時計周りに120°離間する。また、隣り合う光ファイバ10a,10gに着目すると、光ファイバ10aの最外周接続部4aが、隣り合う光ファイバ10a,10g同士の対向する位置から周方向に180°離間する。一方、光ファイバ10gの最外周接続部4gが、隣り合う光ファイバ10a,10g同士の対向する位置に配置されている。
【0078】
このように、光ファイバ10aに隣接する光ファイバ10b,10f,10gが複数ある場合には、光ファイバ10aと光ファイバ10b,10f,10gのそれぞれとの関係において、隣り合う光ファイバ10a,10b,10f,10gの少なくとも一方の最外周接続部4a,4b,4f,4gが、隣り合う光ファイバ10a,10b,10f,10g同士の対向する位置から離間する。隣り合う光ファイバ10a,10b,10f,10gの最外周接続部4a,4b,4f,4gは、互いになるべく離れる位置に配置されることが好ましい。
【0079】
ここで、比較例に係る光ファイバケーブルの終端部構造を
図20に示す。比較例に係る光ファイバケーブルにおいては、隣り合う光ファイバ10a,10bの最外周接続部4a,4bが、隣り合う光ファイバ10a,10b同士の対向する位置に配置されているため、隣り合う光ファイバ10a,10b間のクロストークが増大する。また、隣り合う光ファイバ10c,10dの最外周接続部4c,4dが、隣り合う光ファイバ10c,10d同士の対向する位置に配置されているため、隣り合う光ファイバ10c,10d間のクロストークが増大する。また、隣り合う光ファイバ10e,10fの最外周接続部4e,4fが、隣り合う光ファイバ10e,10f同士の対向する位置に配置されているため、隣り合う光ファイバ10e,10f間のクロストークが増大する。
【0080】
これに対して、
図19に示すように、第2の実施形態に係る光ファイバケーブルの終端部構造によれば、隣り合う光ファイバ10a~10gの少なくとも一方の最外周接続部4a~4gが、隣り合う光ファイバ10a~10g同士の対向する位置から離間して配置される。即ち、隣り合う光ファイバ10a~10gの最外周接続部4a~4g同士が対向しないように配置することで、光ファイバ10a~10gの最外周接続部4a~4gを介して行き来する光の経路を長くすることができ、隣り合う光ファイバ10a~10g間のクロストークを容易且つ効果的に低減することができる。
【0081】
第2の実施形態に係る光ファイバケーブルの終端部構造の製造方法としては、第1の実施形態に係る光ファイバテープ心線の製造プロセスと同様に光ファイバ10a~10gを作製する。光ファイバ10a~10gをバンドル状に束ねる際に、隣り合う光ファイバ10a~10gの最外周接続部4a~4gの少なくとも一方が、隣り合う光ファイバ10a~10g同士の対向する位置から離間するように各光ファイバ10a~10gを回転させることにより、各光ファイバ10a~10gの向きを調整すればよい。その後、光ファイバ10a~10gの周囲に例えば図示を省略した押巻きテープ等を介して外被7を形成することで、
図19に示した第2の実施形態に係る光ファイバケーブルが完成する。
【0082】
なお、第2の実施形態に係る光ファイバケーブルの終端部構造として、光ファイバ10a~10gが六方最密充填構造状に束ねられた場合を例示したが、光ファイバ10a~10gの本数や配置はこれに限定されない。例えば、中心軸が三角形をなすように3本の光ファイバが隣接して配置されてもよく、中心軸が四角形(十字形)をなすように4本の光ファイバが隣接して配置されていてもよく、不規則に複数の光ファイバが隣接して配置されていてもよい。また、光ファイバ10a~10g同士が隣接していなくてもよく、光ファイバ10a~10gが互いに離間していてもよい。
【0083】
また、第2の実施形態に係る光ファイバケーブルの終端部構造の種類は限定されず、スロット型の光ファイバケーブルやドロップ型の光ファイバケーブルであってもよい。また、第2の実施形態に係る光ファイバケーブルにおいて、光ファイバの本数及び種類は特に限定されない。光ファイバの種類としては、空気層を有し、空気層に最外周接続部が配置された構造であればよく、光ファイバ素線、光ファイバ心線、光ファイバテープ心線、或いは複数の光ファイバを集合した光ファイバユニット等を採用可能である。第2の実施形態に係る光ファイバケーブルは、複数の光ファイバを集合した光ファイバユニットを複数有していてもよい。
【0084】
また、第2の実施形態において各光ファイバ10a~10gが1つずつ最外周接続部41a~41gを有する構造を例示したが、各光ファイバ10a~10gが有する最外周接続部の個数は限定されない。例えば、
図21に示すように、各光ファイバ10a~10gが2つずつ最外周接続部41a,42a;41b,42b;41c,42c;41d,42d;41e,42e;41f,42f;41g,42gを有していてもよい。
【0085】
また、
図22に示すように、各光ファイバ10a~10gが3つずつ最外周接続部41a,42a,43a;41b,42b,43b;41c,42c,43c;41d,42d,43d;41e,42e,43e;41f,42f,43f;41g,42g,43gを有していてもよい。更に、図示を省略するが、各光ファイバ10a~10dのそれぞれが4つ以上の最外周接続部を有していてもよい。
【0086】
また、各光ファイバ10a~10gの種類が異なっていてもよい。例えば
図23に示すように、各光ファイバ10a~10fは互いに同一の種類であるが、中心の光ファイバ10gが、空気層の代わりにシリカ等からなるトレンチ領域5xを有していてもよい。
【0087】
(第3の実施形態)
本発明の第3の実施形態に係る光ファイバ集合体は、
図24に示すように、複数(3つ)の内側クラッド12a,12b,12cと、複数の内側クラッド12a,12b,12cの周囲を、円環状の空気層(空気リング)15a,15b,15cを介して一括して覆うように配置されたクラッド部13と、各空気層15a,15b,15c中に設けられ、内側クラッド12a,12b,12cとクラッド部13を接続する最外周接続部14a,14b,14cとを備えるMCFである。
【0088】
内側クラッド12a内には、内側クラッド12aと異なる屈折率のコア11aが配置されている。内側クラッド12b内には、内側クラッド12bと異なる屈折率のコア11bが配置されている。内側クラッド12c内には、内側クラッド12cと異なる屈折率のコア11cが配置されている。例えばコア11a,11b,11cを光が伝搬する通常のコアとして機能させる場合には、コア11a,11b,11cの屈折率は内側クラッド12a,12b,12cの屈折率よりも高い。また、コア11a,11b,11cを屈折率変化部として機能させ、内側クラッド12a,12b,12cを光が伝搬するコアとして機能させる場合には、コア11a,11b,11cの屈折率は内側クラッド12a,12b,12cの屈折率よりも低くてもよい。
【0089】
最外周接続部14aは、内側クラッド12aの外周面とクラッド部13の内周面に接続されている。最外周接続部14bは、内側クラッド12bの外周面とクラッド部13の内周面に接続されている。最外周接続部14cは、内側クラッド12cの外周面とクラッド部13の内周面に接続されている。
【0090】
図24では、各内側クラッド12a,12b,12cの中心同士を結び、隣り合う内側クラッド12a,12b,12c同士の対向する位置を通る直線L11~L13を破線で模式的に示している。第3の実施形態に係るMCFにおいては、隣り合う空気層15a,15b,15cの少なくとも一方に配置された最外周接続部14a,14b,14cが、隣り合う内側クラッド12a,12b,12c同士の対向する位置から離間するように配置されている。
図24では、最外周接続部14a,14b,14cのそれぞれが、MCFの中心軸から最も離れた位置に配置されている。
【0091】
例えば、内側クラッド12aは、内側クラッド12b,12cのそれぞれと等間隔で隣り合っている。隣り合う内側クラッド12a,12bに着目した場合、最外周接続部14aが内側クラッド12a,12b同士の対向する位置から空気層15aの周方向に反時計回りに150°離間するとともに、最外周接続部14bが内側クラッド12a,12b同士の対向する位置から空気層15bの周方向に時計回りに150°離間する。また、隣り合う内側クラッド12a,12cに着目した場合、最外周接続部14aが内側クラッド12a,12c同士の対向する位置から空気層15aの周方向に時計回りに150°離間するとともに、最外周接続部14cが内側クラッド12a,12c同士の対向する位置から空気層15cの周方向に反時計回りに150°離間する。
【0092】
ここで、比較例に係るMCFを
図25に示す。比較例に係るMCFにおいては、隣り合う内側クラッド12a,12bの最外周接続部14a,14bが、隣り合う内側クラッド12a,12b同士の対向する位置に配置されているため、最外周接続部14a,14bを介して光が行き来し易くなり、内側クラッド12a,12b間のクロストークが増大する。
【0093】
これに対して、
図24に示すように、第3の実施形態に係るMCFによれば、隣り合う内側クラッド12a,12b,12cの少なくとも一方の最外周接続部14a,14b,14cが、隣り合う内側クラッド12a,12b,12c同士の対向する位置から離間して配置される。即ち、隣り合う内側クラッド12a,12b,12cの周囲の最外周接続部14a,14b,14c同士が対向しないように配置することで、最外周接続部14a,14b,14cを介して行き来する光の経路を長くすることができ、隣り合う内側クラッド12a,12b,12c間のクロストークを容易且つ効果的に低減することができる。
【0094】
更に、隣り合う内側クラッド12a~12cの周囲に1層ずつ空気層15a,15b,15cを有しており、従来のMCFのコア間に複数の空孔を直線状に設けた構造と比較して工程が簡易化でき、製造の煩雑さも緩和される。
【0095】
次に、第3の実施形態に係るMCFの製造方法の一例を説明する。
図26に示すように、コア11a,11b,11cを形成するための石英ガラス等からなるコア母材部51a,51b,51cと、内側クラッド12a,12b,12cを形成するための石英ガラス等からなる内側クラッド母材部52a,52b,52cとのそれぞれの2層構造と、クラッド部13を形成するための石英ガラス等からなるクラッド母材管53a,53b,53cとを同心円状に、クラッド部13を形成するための石英ガラス等からなる管状のジャケット56の内側に挿入する。
図26では図示を省略するが、必要に応じて、クラッド母材管53a,53b,53cの周囲には、位置決め用のガラス棒が隙間を埋めるように挿入される。
【0096】
更に、内側クラッド母材部52a,52b,52cとクラッド母材管53a,53b,53cとの間の空気層55a,55b,55cに、最外周接続部14a,14b,14cを形成するためのガラス棒(接続母材部)54a,54b,54cを挿入し、接着又は融着等により固定する。この際、位置合わせ用の治具等を用いて、隣り合うクラッド母材管53a,53b,53cの内側の空気層55a,55b,55cのガラス棒54a,54b,54cの少なくとも一方を、隣り合うクラッド母材管53a,53b,53c同士の対向する位置から離間させる。
【0097】
図26では、隣り合う内側クラッド母材部52a,52b,52cの中心軸を結び、クラッド母材管53a,53b,53c同士の接点と、隣り合うクラッド母材管53a,53b,53cの内側の空気層55a,55b,55cの対向する位置とを通る直線L14,L15,L16を破線で模式的に示している。この結果、
図26に示した光ファイバ母材が作製される。作製された光ファイバ母材を線引きすることにより、クラッド母材管53a,53b,53c及びジャケット56を一体化させて、
図24に示したMCFが完成する。
【0098】
なお、第3の実施形態に係るMCFの製造方法の一例として、管状のジャケット56を用いる場合を例示したが、例えばクラッド母材管53a,53b,53cの周囲を、樹脂や金属等からなる押え巻きテープで覆うことで光ファイバ母材を作製し、光ファイバ母材を線引きすることによりクラッド母材管53a,53b,53cを一体化させることによりMCF(マルチエレメントファイバともいう)を製造してもよい。
【0099】
<第1の変形例>
第3の実施形態に係るMCFでは、空気層15a,15b,15cに1つずつ最外周接続部14a,14b,14cが配置された場合を例示したが、空気層15a,15b,15cに配置する最外周接続部の個数は特に限定されない。第3の実施形態の第1の変形例に係るMCFは、
図27に示すように、各空気層15a,15b,15cに2つずつ最外周接続部141a,142a;141b,142b;141c,142cが配置されている。そして、隣り合う空気層15a,15b,15cの最外周接続部141a,142a;141b,142b;141c,142cが、隣り合う内側クラッド12a,12b,12c同士の対向する位置から離間するようにそれぞれ配置されている。
【0100】
また、
図28に示すように、各空気層15a,15b,15cに3つずつ最外周接続部141a,142a,143a;141b,142b,143b;141c,142c,143cが配置されていてもよい。そして、隣り合う空気層15a,15b,15cの最外周接続部141a,142a,143a;141b,142b,143b;141c,142c,143cが、隣り合う内側クラッド12a,12b,12c同士の対向する位置から離間するようにそれぞれ配置されている。更に、各空気層15a,15b,15cに4つ以上の最外周接続部が配置されていてもよい。また、各空気層15a,15b,15cの最外周接続部の個数が異なっていてもよい。
【0101】
<第2の変形例>
第3の実施形態に係るMCFでは、3つのコア11a~11c及び3つの内側クラッド12a~12cを有する場合を例示したが、コア及び内側クラッドの個数や配置は特に限定されない。第3の実施形態の第2の変形例に係るMCFは、
図29に示すように、5つのコア11,11a,11b,11c,11dを有し、4つの内側クラッド12a,12b,12c,12dを有する。コア11が中央に配置され、コア11を取り囲むように内側クラッド12a~12dが配置されている。内側クラッド12a~12dの内側にコア11a,11b,11c,11dが配置されている。
【0102】
内側クラッド12a~12dの周囲には空気層15a~15dが設けられ、空気層15a~15dには最外周接続部14a~14dが配置されている。一方、中央のコア11は空孔構造を有さない通常のコアである。このように、コア11,11a,11b,11c,11dのすべてが空孔構造でなくてもよく、通常のコア11が混在していてもよい。
【0103】
図29では、各内側クラッド12a~12dの中心同士を結び、隣り合う内側クラッド12a~12d同士の対向する位置を通る直線L21~L24を破線で模式的に示している。第3の実施形態の第2の変形例に係るMCFにおいては、隣り合う空気層15a~15dの少なくとも一方に配置された最外周接続部14a~14dが、隣り合う内側クラッド12a~12d同士の対向する位置から離間するように配置されている。
【0104】
例えば、内側クラッド12aは、内側クラッド12b,12dのそれぞれと等間隔で隣り合っている。隣り合う内側クラッド12a,12bに着目した場合、最外周接続部14aが内側クラッド12a,12b同士の対向する位置から空気層15aの周方向に反時計回りに135°離間するとともに、最外周接続部14bが内側クラッド12a,12b同士の対向する位置から空気層15bの周方向に時計回りに135°離間する。また、隣り合う空気層15a,15dに着目した場合、最外周接続部14aが内側クラッド12a,12d同士の対向する位置から空気層15aの周方向に時計回りに135°離間するとともに、最外周接続部14dが内側クラッド12a,12d同士の対向する位置から空気層15dの周方向に反時計回りに135°離間する。
【0105】
図29では、最外周接続部14a~14dのそれぞれが、MCFの中心軸から最も離れた位置に配置されている。更に、各内側クラッド12a~12dと中央のコア11とのクロストーク低減のために、最外周接続部14a~14dのそれぞれが、中央のコア11に対向する空気層15a~15dの位置から離間して配置されることが好ましい。
【0106】
ここで、比較例に係るMCFを
図30に示す。比較例に係るMCFにおいては、隣り合う内側クラッド12a,12bの周囲の空気層15a,15b中の最外周接続部14a,14bが、隣り合う内側クラッド12a,12b同士の対向する位置に配置されているため、最外周接続部14a,14bを介して光が行き来し易くなり、内側クラッド12a,12b間のクロストークが増大する。また、隣り合う内側クラッド12c,12dの空気層15c,15d中の最外周接続部14c,14dが、隣り合う内側クラッド12c,12d同士の対向する位置に配置されているため、最外周接続部14c,14dを介して光が行き来し易くなり、内側クラッド12c,12d間のクロストークが増大する。
【0107】
これに対して、
図29に示すように、第3の実施形態の第2の変形例に係るMCFによれば、隣り合う内側クラッド12a~12dの周囲の空気層15a~15d中の少なくとも一方の最外周接続部14a~14dが、隣り合う内側クラッド12a~12d同士の対向する位置から離間して配置される。即ち、隣り合う空気層15a~15d中の最外周接続部14a~14d同士が対向しないように配置することで、最外周接続部14a~14dを介して行き来する光の経路を長くすることができ、隣り合う内側クラッド12a~12d間のクロストークを容易且つ効果的に低減することができる。
【0108】
なお、第3の実施形態の第2の変形例に係るMCFでも、各空気層15a~15dに配置する最外周接続部の個数は特に限定されない。例えば
図30に示すように、各空気層15a~15dに2つずつ最外周接続部141a,142a;141b,142b;141c,142c;141d,142dが配置されていてもよい。また、
図31に示すように、各空気層15a~15dに3つずつ最外周接続部141a,142a,143a;141b,142b,143b;141c,142c,143c;141d,142d,143dが配置されていてもよい。更に、各空気層15a~15dに4つ以上の最外周接続部が配置されていてもよい。また、各空気層15a~15dの最外周接続部の個数が異なっていてもよい。
【0109】
(その他の実施形態)
上記のように、本発明は第1~第3の実施形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面は本発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
【0110】
例えば、第1の実施形態に係る光ファイバ集合体(光ファイバテープ心線)又は第2の実施形態に係る光ファイバ集合体(光ファイバケーブル)において、
図33(a)に示すように、アンチレゾナント(AR)型光ファイバ20a,20bが、それぞれの長手方向を平行にして複数配列されていてもよい。AR型光ファイバ20aは、管状の外側クラッド22と、外側クラッド22の内側に周方向に沿って配置され、外側クラッド22の内周面に接続する複数の管状の内側クラッド21a~21fを備える。内側クラッド21a~21fは、外側クラッド22の長手方向に平行に延伸する。内側クラッド21a~21fに囲まれた空気の領域が空気コアとして定義され、この空気コアを光が伝搬する。
【0111】
AR型光ファイバ20bは、外側クラッド24と、外側クラッド24の内側に周方向に沿って配置され、外側クラッド24の内周面に接続する複数の管状の内側クラッド(最外周接続部)23a~23fを備える。内側クラッド23a~23fは、外側クラッド24の長手方向に平行に延伸する。内側クラッド23a~21fに囲まれた空気の領域が空気コアとして定義され、この空気コアを光が伝搬する。
【0112】
AR型光ファイバ20a,20bにおいては、内側クラッド21a~21f;23a~23fの外側クラッド22,24との接続部分から光が漏れやすいと考えられる。このため、隣り合うAR型光ファイバ20a,20bのそれぞれの、内側クラッド21a~21f;23a~23fの外側クラッド22,24との接続部分の少なくとも一方を、隣り合うAR型光ファイバ20a,20b同士の対向する位置から離間させる。
【0113】
図33(a)では、隣り合うAR型光ファイバ20a,20bのそれぞれの、内側クラッド21a~21f;23a~23fの外側クラッド22,24との接続部分の両方が、隣り合うAR型光ファイバ20a,20b同士の対向する位置から離間している。また、
図33(b)に示すように、隣り合うAR型光ファイバ20a,20bの一方の内側クラッド23fの外側クラッド24との接続部分が、隣り合うAR型光ファイバ20a,20b同士の対向する位置に配置されていてもよい。
【0114】
比較例に係るAR型光ファイバ20a,20bの配列を
図33(c)に示す。比較例に係るAR型光ファイバ20a,20bの配列では、AR型光ファイバ20a,20bのそれぞれの内側クラッド21c,23fの外側クラッド22,24との接続部分が、隣り合うAR型光ファイバ20a,20b同士の対向する位置に配置されているため、内側クラッド21c,23fの外側クラッド22,24との接続部分を介して光が行き来し易くなり、AR型光ファイバ20a,20b間のクロストークが増大する。
【0115】
これに対して、
図33(a)及び
図33(b)に示したAR型光ファイバ20a,20bの配列によれば、隣り合うAR型光ファイバ20a,20bのそれぞれの、内側クラッド21a~21f;23a~23fの外側クラッド22,24との接続部分の少なくとも一方を、隣り合うAR型光ファイバ20a,20b同士の対向する位置から離間させるので、内側クラッド21a~21f;23a~23fを介して行き来する光の経路が長くなり、AR型光ファイバ20a,20b間のクロストークを低減させることができる。
【0116】
また、第1の実施形態に係る光ファイバテープ心線又は第2の実施形態に係る光ファイバケーブルにおいて、
図34(a)に示すように、ブラッグ型のエアコアファイバ30a,30bが配列されていてもよい。エアコアファイバ30aは、コア(空気コア)30を内側に定義し、エアコアファイバ30aの長手方向に延伸する管状の内側クラッド(コアガイド管)31aと、内側クラッド31aの周囲に複数の空気層(エアクラッド)を挟んで周期構造を構成するように多層に配置され、エアコアファイバ30aの長手方向に延伸する内側クラッド(管状層)31b~31d及び外側クラッド(管状層)31eを備える。内側クラッド31a~31dの間の空気層には、空気層を挟む内側クラッド31a~31dを接続する接続部32a~32cがそれぞれ配置されている。内側クラッド31dと外側クラッド31eの間の空気層には、内側クラッド31dと外側クラッド31eを接続する最外周接続部32dが配置されている。接続部32a~32c及び最外周接続部32dは、半径方向に沿って直線状に配置されている。
【0117】
エアコアファイバ30bは、コア(空気コア)33を内側に定義し、エアコアファイバ30bの長手方向に延伸する管状の内側クラッド(コアガイド管)34aと、内側クラッド34aの周囲に複数の空気層(エアクラッド)を挟んで周期構造を構成するように多層に配置され、エアコアファイバ30aの長手方向に延伸する内側クラッド(管状層)34b~34d及び外側クラッド(管状層)34eを備える。内側クラッド34a~34dの間の空気層には、空気層を挟む内側クラッド34a~34dを接続する接続部35a~35cがそれぞれ配置されている。内側クラッド34dと外側クラッド34eの間の空気層には、内側クラッド34dと外側クラッド34eを接続する最外周接続部35dが配置されている。接続部35a~35c及び最外周接続部35dは、半径方向に沿って直線状に配置されている。なお、エアコアファイバ30a,30bの内側クラッド31a~31d,34a~34dの数は限定されず、一又は複数の内側クラッドを有していればよい。
【0118】
隣り合うエアコアファイバ30a,30bにおいては、最も外側の最外周接続部32d,35dの少なくとも一方が、隣り合うエアコアファイバ30a,30b同士の対向する位置から離間して配置される。
図34(a)においては、エアコアファイバ30aの最も外側の最外周接続部32dが、隣り合うエアコアファイバ30a,30b同士の対向する位置から反時計周りに90°離間するとともに、エアコアファイバ30bの最も外側の最外周接続部35dが、隣り合うエアコアファイバ30a,30b同士の対向する位置から時計周りに90°離間する。
【0119】
また、
図34(b)に示すように、エアコアファイバ30a,30bのそれぞれにおいて、接続部32a~32c及び最外周接続部32d、接続部32a~35c及び最外周接続部35dが半径方向に沿って異なる位置に配置されていてもよい。この場合も、エアコアファイバ30aの最も外側の最外周接続部32dが、隣り合うエアコアファイバ30a,30b同士の対向する位置から反時計周りに90°離間するとともに、エアコアファイバ30bの最も外側の最外周接続部35dが、隣り合うエアコアファイバ30a,30b同士の対向する位置から時計周りに90°離間する。
【0120】
比較例に係るエアコアファイバ30a,30bの配列を
図34(c)に示す。比較例に係るエアコアファイバ30a,30bの配列では、エアコアファイバ30a,30bのそれぞれの最も外側の最外周接続部32d,35dが、隣り合うエアコアファイバ30a,30b同士の対向する位置に配置されているため、最外周接続部32d,35dを介して光が行き来し易くなり、エアコアファイバ30a,30b間のクロストークが増大する。
【0121】
これに対して、
図34(a)及び
図34(b)に示したエアコアファイバ30a,30bの配列によれば、隣り合うエアコアファイバ30a,30bにおいては、最も外側の最外周接続部32d,35dの少なくとも一方が、隣り合うエアコアファイバ30a,30b同士の対向する位置から離間して配置されるので、最外周接続部32d,35dを介して行き来する光の経路が長くなり、エアコアファイバ30a,30b間のクロストークを低減させることができる。
【0122】
なお、
図34(a)及び
図34(b)では接続部32a~32c及び最外周接続部32d、接続部32a~35c及び最外周接続部35dが板状の断面形状を有する場合を例示したが、接続部32a~32c及び最外周接続部32d、接続部32a~35c及び最外周接続部35dの形状は特に限定されない。例えば
図35(a)に示すように、接続部32a~32c及び最外周接続部32dが円形の断面形状を有していてもよい。或いは、
図35(b)に示すように、接続部32a~32c及び最外周接続部32dがリング状の端面形状を有していてもよい。更には、図示を省略するが、三角形等の多角形の端面形状を有していてもよい。
【0123】
また、エアコアファイバ30a,30bの最内周の内側クラッド(コアガイド管)31a,34aの代わりに、石英等からなる円柱状のコアを有する中実構造であってもよい。或いは、内側クラッド(コアガイド管)31a,34aの代わりに、石英等からなる円柱状の内側クラッドと、その円柱状の内側クラッドの内側に配置された石英等からなるコアとを有する中実構造であってもよい。
【0124】
また、
図1に示した光ファイバ集合体の断面と同様の光ファイバ集合体の端面に関して、空孔内のゴミの侵入等を抑制するために、低屈折率樹脂などで空気層を埋める可能性があるが、そのような場合においても同じ概念が利用できると考えられる。このように、特許請求の範囲に記載された本発明を逸脱しない範囲で、種々の光ファイバ集合体又はMCFに適用可能である。
【符号の説明】
【0125】
1a~1g,11,11a~11g,30,33…コア
2a~2g,12a~12g,21a~21f,23a~23f…内側クラッド
3a~3g,22,24,31e,34e…外側クラッド
4a~4g,14a~14d,41a~41g,42a~42g,43a~43g,141a~143a,141b~143b,141c~143c,32d,35d…最外周接続部
5a~5g,15a~15d,55a~55c…空気層
5x…トレンチ領域
6…被覆層
7…外被
10a~10g…光ファイバ
13…クラッド部
20a,20b…AR型光ファイバ
30a,30b…エアコアファイバ
31a,34a…内側クラッド(コアガイド管)
31b~31d,34b~34d…内側クラッド(管状層)
32a~32c,35a~35c…接続部
51a~51c…コア母材部
52a~52c…内側クラッド母材部
53a~53c…クラッド母材管
54a~54c…接続母材部
56…ジャケット