(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-18
(45)【発行日】2022-04-26
(54)【発明の名称】基板の伝熱構造
(51)【国際特許分類】
H05K 1/02 20060101AFI20220419BHJP
H01L 23/40 20060101ALI20220419BHJP
【FI】
H05K1/02 F
H05K1/02 C
H01L23/40 A
H01L23/40 C
(21)【出願番号】P 2018064228
(22)【出願日】2018-03-29
【審査請求日】2021-01-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】391045897
【氏名又は名称】古河AS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096091
【氏名又は名称】井上 誠一
(72)【発明者】
【氏名】力久 弘昭
(72)【発明者】
【氏名】本間 久雄
【審査官】柴垣 宙央
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-134491(JP,A)
【文献】特開2004-356292(JP,A)
【文献】特開2001-267481(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 1/02
H01L 23/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、前記基板に接続される伝熱部材とを有する基板の伝熱構造であって、
前記基板には、電子部品が搭載され、前記電子部品と電気的に接続された電気端子が設けられ、
前記伝熱部材は、本体部と、平面視において前記電子部品とは異なる位置において前記基板と接続される基板接続部と、前記電子部品と直接または間接的に面接触する第1面接触部と、外部部材と接合される外部接続部とが一体で形成され、
前記基板接続部および前記第1面接触部は、前記本体部に対して、前記基板側に向けて同一方向に向けて突出し、
前記電子部品と前記伝熱部材とは、電気的に接続されて
おらず、
前記基板と前記伝熱部材は、筐体の内部に配置され、
前記電気端子と、前記外部接続部が、前記筐体の同一面側から露出しており、
前記外部接続部は、前記筐体の外部において折り返されて、平面視において前記基板と重なる部位に配置されることを特徴とする基板の伝熱構造。
【請求項2】
基板と、前記基板に接続される伝熱部材とを有する基板の伝熱構造であって、
前記基板には、電子部品が搭載され、前記電子部品と電気的に接続された電気端子が設けられ、
前記伝熱部材は、本体部と、平面視において前記電子部品とは異なる位置において前記基板と接続される基板接続部と、前記電子部品と直接または間接的に面接触する第1面接触部と、外部部材と接合される外部接続部とが一体で形成され、
前記基板接続部および前記第1面接触部は、前記本体部に対して、前記基板側に向けて同一方向に向けて突出し、
前記電子部品と前記伝熱部材とは、電気的に接続されておらず、
前記電気端子と、前記外部接続部が、前記基板を挟んで互いに反対側に配置されていることを特徴とする基板の伝熱構造。
【請求項3】
基板と、前記基板に接続される伝熱部材とを有する基板の伝熱構造であって、
前記基板には、電子部品が搭載され、前記電子部品と電気的に接続された電気端子が設けられ、
前記伝熱部材は、本体部と、平面視において前記電子部品とは異なる位置において前記基板と接続される基板接続部と、前記電子部品と直接または間接的に面接触する第1面接触部と、外部部材と接合される外部接続部とが一体で形成され、
前記基板接続部および前記第1面接触部は、前記本体部に対して、前記基板側に向けて同一方向に向けて突出し、
前記電子部品と前記伝熱部材とは、電気的に接続されておらず、
さらに前記電子部品と直接または間接的に面接触する第2面接触部を有し、前記電子部品および前記基板を前記第1面接触部と前記第2面接触部とで挟み込むことを特徴とする基板の伝熱構造。
【請求項4】
基板と、前記基板に接続される伝熱部材とを有する基板の伝熱構造であって、
前記基板には、電子部品が搭載され、前記電子部品と電気的に接続された電気端子が設けられ、
前記伝熱部材は、本体部と、平面視において前記電子部品とは異なる位置において前記基板と接続される基板接続部と、前記電子部品と直接または間接的に面接触する第1面接触部と、外部部材と接合される外部接続部とが一体で形成され、
前記基板接続部および前記第1面接触部は、前記本体部に対して、前記基板側に向けて同一方向に向けて突出し、
前記電子部品と前記伝熱部材とは、電気的に接続されておらず、
前記第1面接触部は、前記電子部品に対応する部位の前記基板と面接触し、
前記基板にはスルーホールが設けられ、
前記スルーホールは、前記電子部品の周囲であって、前記基板の内部の少なくとも一部の導体層と接触するように形成され、前記基板接続部は、前記導体層の形成されていない部位で前記基板と接続されることを特徴とする基板の伝熱構造。
【請求項5】
前記基板と前記伝熱部材は、筐体の内部に配置され、
前記電気端子と、前記外部接続部が、前記筐体の同一面側から露出していることを特徴とする請求項2から請求項4のいずれかに記載の基板の伝熱構造。
【請求項6】
前記伝熱部材は、1枚の板部材からなり、前記基板接続部
は、前記本体部から前記基板側に向けて突出する突起部であり、前記第1面接触部は、前記本体部から
屈曲して前記本体部の表面から上方に離間して形成されていることを特徴とする請求項1
から請求項5のいずれかに記載の基板の伝熱構造。
【請求項7】
平面視において、少なくとも一部の前記基板接続部は、前記第1面接触部に対して、前記本体部に略平行な方向であって、前記外部接続部が形成される方向にずれた位置に配置されることを特徴とする請求項1
から請求項6のいずれかに記載の基板の伝熱構造。
【請求項8】
前記本体部と前記第1面接触部との間に、弾性変形容易部が形成されることを特徴とする請求項1から請求項
7のいずれかに記載の基板の伝熱構造。
【請求項9】
前記本体部と前記基板接続部との間に、弾性変形容易部が形成されることを特徴とする請求項1から請求項
7のいずれかに記載の基板の伝熱構造。
【請求項10】
前記第2面接触部は、前記本体部よりも小さいことを特徴とする請求項
3記載の基板の伝熱構造。
【請求項11】
前記電気端子に対して、前記外部接続部の厚みが厚いことを特徴とする請求項1から請求項10のいずれかに記載の基板の伝熱構造。
【請求項12】
前記電気端子に対して、前記基板の幅方向に対する前記外部接続部の幅が大きいことを特徴とする請求項1から請求項10のいずれかに記載の基板の伝熱構造。
【請求項13】
前記外部接続部は、幅方向の断面に屈曲部を有することを特徴とする請求項1から請求項12のいずれかに記載の基板の伝熱構造。
【請求項14】
前記外部接続部は、ねじ止め部を有することを特徴とする請求項1から請求項
13のいずれかに記載の基板の伝熱構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品が搭載された基板の熱を放熱することが可能な基板の伝熱構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、自動車等においては、数多くの電子部品が使用されているが、電子部品の高性能化や、自動車の軽量化等の要請から、基板に搭載される電子部品は年々小型化されている。このような電子部品の高性能化および小型化に伴い、電子部品から発生する熱の放熱が重要である。
【0003】
このため、電子部品が搭載された基板の背面に放熱部材が配置され、基板には、基板を貫通するスルーホールが形成される(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図8は、従来の基板の放熱構造100を示す図である。基板103の上面には電子部品105が搭載される。基板103の内部には、複数層の導体層129によって回路が形成される。また、基板103は表裏に貫通するスルーホール107が形成される。スルーホール107は、電子部品105からの熱を基板103の下面側に効率よく伝達する。
【0006】
基板103の裏面側には、放熱部材109が配置される。放熱部材109は、基板103の裏面と面接触する。これにより、電子部品105の熱は、放熱部材109によって放熱することができる。
【0007】
しかし、基板103の裏面に必ずしも放熱部材109を配置できるとは限られない。このため、離れた位置にある放熱部材まで伝熱するための伝熱部材が必要となる場合がある。この場合には、伝熱部材を基板103と接触させる必要がある。
【0008】
しかし、伝熱部材を用い、基板と伝熱部材とを接触させると、伝熱部材へ放熱部材109を接続する際などにおいて、伝熱部材に力が加わる場合がある。このような力が伝熱部材と基板103との接触部に伝わると、接触部における半田等が破損するおそれがある。一方、接触部に力が加わることを抑制する支持ホルダなどを用いると、構造が複雑化するとともに、支持ホルダを設けるためのスペースを基板に確保する必要があり、また、支持ホルダを基板に設ける作業工程や、伝熱部材を支持ホルダに固定する作業工程が必要である。
【0009】
また、従来の構造は、基板103の上面の熱を下面に効率よく伝達するためにスルーホール107が形成されるため、基板103と接触する伝熱部材と基板上の回路とが導通する。このため、伝熱部材と、他の部材との導通を避けるため、伝熱部材の取り回しに制約が生じる。
【0010】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、伝熱部材に作用する荷重で、面接触部が破損することを防止できるとともに、効率よく熱を伝達することが可能であり、取り回しの制約の少ない基板の伝熱構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前述した目的を達するために第1の発明は、基板と、前記基板に接続される伝熱部材とを有する基板の伝熱構造であって、前記基板には、電子部品が搭載され、前記電子部品と電気的に接続された電気端子が設けられ、前記伝熱部材は、本体部と、平面視において前記電子部品とは異なる位置において前記基板と接続される基板接続部と、前記電子部品と直接または間接的に面接触する第1面接触部と、外部部材と接合される外部接続部とが一体で形成され、前記基板接続部および前記第1面接触部は、前記本体部に対して、前記基板側に向けて同一方向に向けて突出し、前記電子部品と前記伝熱部材とは、電気的に接続されておらず、前記基板と前記伝熱部材は、筐体の内部に配置され、前記電気端子と、前記外部接続部が、前記筐体の同一面側から露出しており、前記外部接続部は、前記筐体の外部において折り返されて、平面視において前記基板と重なる部位に配置されることを特徴とする基板の伝熱構造である。
第2の発明は、基板と、前記基板に接続される伝熱部材とを有する基板の伝熱構造であって、前記基板には、電子部品が搭載され、前記電子部品と電気的に接続された電気端子が設けられ、前記伝熱部材は、本体部と、平面視において前記電子部品とは異なる位置において前記基板と接続される基板接続部と、前記電子部品と直接または間接的に面接触する第1面接触部と、外部部材と接合される外部接続部とが一体で形成され、前記基板接続部および前記第1面接触部は、前記本体部に対して、前記基板側に向けて同一方向に向けて突出し、前記電子部品と前記伝熱部材とは、電気的に接続されておらず、前記電気端子と、前記外部接続部が、前記基板を挟んで互いに反対側に配置されていることを特徴とする基板の伝熱構造である。
第3の発明は、基板と、前記基板に接続される伝熱部材とを有する基板の伝熱構造であって、前記基板には、電子部品が搭載され、前記電子部品と電気的に接続された電気端子が設けられ、前記伝熱部材は、本体部と、平面視において前記電子部品とは異なる位置において前記基板と接続される基板接続部と、前記電子部品と直接または間接的に面接触する第1面接触部と、外部部材と接合される外部接続部とが一体で形成され、前記基板接続部および前記第1面接触部は、前記本体部に対して、前記基板側に向けて同一方向に向けて突出し、前記電子部品と前記伝熱部材とは、電気的に接続されておらず、さらに前記電子部品と直接または間接的に面接触する第2面接触部を有し、前記電子部品および前記基板を前記第1面接触部と前記第2面接触部とで挟み込むことを特徴とする基板の伝熱構造である。
第4の発明は、基板と、前記基板に接続される伝熱部材とを有する基板の伝熱構造であって、前記基板には、電子部品が搭載され、前記電子部品と電気的に接続された電気端子が設けられ、前記伝熱部材は、本体部と、平面視において前記電子部品とは異なる位置において前記基板と接続される基板接続部と、前記電子部品と直接または間接的に面接触する第1面接触部と、外部部材と接合される外部接続部とが一体で形成され、前記基板接続部および前記第1面接触部は、前記本体部に対して、前記基板側に向けて同一方向に向けて突出し、前記電子部品と前記伝熱部材とは、電気的に接続されておらず、前記第1面接触部は、前記電子部品に対応する部位の前記基板と面接触し、前記基板にはスルーホールが設けられ、前記スルーホールは、前記電子部品の周囲であって、前記基板の内部の少なくとも一部の導体層と接触するように形成され、前記基板接続部は、前記導体層の形成されていない部位で前記基板と接続されることを特徴とする基板の伝熱構造である。
【0012】
前記基板と前記伝熱部材は、筐体の内部に配置され、前記電気端子と、前記外部接続部が、前記筐体の同一面側から露出していることが望ましい。
前記伝熱部材は、1枚の板部材からなり、前記基板接続部は、前記本体部から前記基板側に向けて突出する突起部であり、前記第1面接触部は、前記本体部から屈曲して前記本体部の表面から上方に離間して形成されていることが望ましい。
【0013】
平面視において、少なくとも一部の前記基板接続部は、前記第1面接触部に対して、前記本体部に略平行な方向であって、前記外部接続部が形成される方向にずれた位置に配置されることが望ましい。
【0017】
前記本体部と前記第1面接触部との間に、弾性変形容易部が形成されてもよい。
【0018】
前記本体部と前記基板接続部との間に、弾性変形容易部が形成されてもよい。
【0020】
第3の発明において、前記第2面接触部は、前記本体部よりも小さくてもよい。
【0021】
前記電気端子に対して、前記外部接続部の厚みが厚くてもよい。
【0022】
前記電気端子に対して、前記基板の幅方向に対する前記外部接続部の幅が大きくてもよい。
【0023】
前記外部接続部は、幅方向の断面に屈曲部を有してもよい。
【0025】
前記外部接続部は、ねじ止め部を有してもよい。
【0026】
第1から第3の発明によれば、伝熱部材が、電子部品と直接または間接的に面接触する第1面接触部を有するため、効率よく電子部品の熱を伝熱部材へ伝えることができる。また、第1面接触部とは別に、基板と接続される基板接続部が形成されるため、伝熱部材からの力を基板接続部で受けることができ、第1面接触部へ過剰な力が付与されることを抑制することができる。また、電子部品と伝熱部材とが電気的に接続されていないため、伝熱部材の取り回しにも制約がない。
【0027】
なお、電子部品と伝熱部材とが電気的に接続されていないとは、伝熱部材が、電子部品への電力供給や電気信号を伝える端子等と導通していないことを意味し、例えば、アース線などのGND接続は、前述した電気的な接続から除くものとする。すなわち、電子部品のGNDと伝熱部材とは導通してもよい。
【0028】
特に、伝熱部材が1枚の板部材からなり、基板接続部および第1面接触部が、本体部から折曲げられて形成され、基板接続部は、本体部から基板側に向けて突出する突起部であり、第1面接触部は、本体部から屈曲して本体部の表面から上方に離間して形成されることで、加工が容易である。
【0029】
また、平面視において、少なくとも一部の基板接続部が、本体部に略平行な方向であって、第1面接触部よりも外部接続部の方向にずれた位置に配置されれば、外部接続部から加わる力を、より確実に基板接続部で受けることができるため、第1面接触部へ加わる力をより効率よく抑制することができる。
【0030】
また、基板と伝熱部材が筐体の内部に配置される場合において、電気端子と外部接続部を筐体の同一面側に露出させることで、筐体の一側面にのみ開口部を形成すればよく、他の面に開口部を形成しなくてもよい。
【0031】
また、外部接続部が、筐体の外部において折り返されて、平面視において基板と重なる部位に配置されれば、放熱部材を基板と重なる位置に配置することができる。
【0032】
また、電気端子と外部接続部が、基板を挟んで互いに反対側に配置されれば、電気端子と接続される他の部材と、外部接続部との距離を離すことができ、両者の導通を防止することができる。
【0033】
また、本体部と第1面接触部との間に弾性変形容易部を形成することで、例えば外部接続部に強い力が付与された際に、第1面接触部に伝わる力を抑制することができる。
【0034】
同様に、本体部と基板接続部との間に弾性変形容易部を形成することで、例えば外部接続部に強い力が付与された際に、第1面接触部に伝わる力を抑制することができる。このため、基板等の損傷を抑制することができる。
【0035】
また、電子部品と直接または間接的に面接触する第2面接触部を設け、電子部品と基板を、第1面接触部と第2面接触部とで挟み込むことで、効率よく、電子部品から熱を伝熱部材に伝えることができる。
【0036】
また、第2面接触部を本体部よりも小さくすることで、第2面接触部が基板上の他の構成と干渉することを抑制することができる。
【0037】
また、電気端子は、機械的強度があまり考慮されていないため、振動などに弱いが、電気端子に対して外部接続部の厚みを厚くすることで、外部接続部の機械的強度を高めることができ、筐体や基板のずれなどを抑制することができる。このような効果は、電気端子に対して、基板の幅方向に対する外部接続部の幅を大きくしても同様に得ることができる。特に、外部接続部が幅方向の断面に屈曲部を有すれば、外部接続部に高い剛性を確保することができ、外部接続部の変形を抑制することができる。
【0038】
また、基板にはスルーホールが設けられ、スルーホールが基板の内部の少なくとも一部の導体層と接触する場合において、基板接続部が、導体層の形成されていない部位で基板と接続されれば、伝熱部材と電子部品とが導通することを防止することができる。
【0039】
また、外部接続部がねじ止め部を有すれば、他の放熱部材と確実に固定することができる。この際にも、外部接続部と、基板接続部および第1面接触部が離れているため、ねじ止め作業等の振動や衝撃が、直接基板に伝達されることを抑制することができる。
【発明の効果】
【0040】
本発明によれば、伝熱部材に作用する荷重で、面接触部が破損することを防止できるとともに、効率よく熱を伝達することが可能であり、取り回しの制約の少ない基板の伝熱構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【
図3】
図2のA-A線断面図であって、基板の伝熱構造1を示す断面図。
【
図4】(a)は
図3のB矢視図、(b)は(a)の他の実施形態を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。
図1は、基板の伝熱構造1を示す分解斜視図であり、
図2は、基板3を透過した平面図であり、
図3は、
図2のA-A線断面図である。なお、
図1、
図2においては、筐体および端子等の図示を省略する。基板の伝熱構造1は、主に、基板3と、基板3に接続される伝熱部材9等からなる。
【0043】
基板3には、電子部品5が搭載される。
図3に示すように、基板3には、電子部品5と電気的に接続された電気端子27が設けられる。なお、電子部品5は、例えば電界効果トランジスタや半導体ヒューズ等である。基板3の内部には、導体層29が設けられる。
【0044】
図1に示すように、基板3の電子部品5の周囲には、電子部品5を囲むように複数のスルーホール7bが設けられる。スルーホール7bは、前述した基板3の内部の少なくとも一部の導体層29と接触して導通する。また、基板3の四隅近傍には、スルーホール7aが設けられる。スルーホール7aは、導体層29が形成されていない部位に形成される。
【0045】
伝熱部材9は、主に、本体部11、基板接続部13、面接触部15、外部接続部17等から構成される。伝熱部材9は、金属製であり、例えば銅または銅合金製であり、1枚の板部材が折り曲げられて一体で形成される。
【0046】
本体部11には、基板3と接続される基板接続部13が複数個所に配置される。図示した例では、本体部11の四カ所に基板接続部13が配置される。基板接続部13は、本体部11から基板3側に向けて突出する突起部である。基板接続部13は、基板3の四隅近傍に形成されたスルーホール7aに挿通されて、例えば半田等で固定される。すなわち、基板接続部13は、平面視において、電子部品5とは異なる位置において、基板3と接続される。
【0047】
本体部11と基板接続部13との間には、弾性変形容易部21が形成される。弾性変形容易部21は、本体部11に対して、幅狭部、薄肉部、屈曲部、湾曲等などであり、本体部11に対して弾性変形しやすい部位である。
【0048】
本体部11の略中央には、第1の面接触部15が形成される。面接触部15は、本体部11に対して、基板3側に向けて基板接続部13と同一方向に向けて突出するように形成される。例えば、基板接続部13と面接触部15は、本体部11からそれぞれ折曲げられて形成されている。図示した例では、面接触部15は、本体部11から屈曲して本体部11の表面から上方に離間して、本体部11と略平行に形成される。なお、平面視において、少なくとも一部の基板接続部13は、面接触部15に対して、本体部11に略平行な方向であって、後述する外部接続部17の方向(
図3の左側)にずれた位置に配置される。
【0049】
面接触部15は、基板3の背面側であって、電子部品5に対応する部位と面接触する部位である。すなわち、面接触部15は、基板3を介して間接的に電子部品5と面接触する。ここで、間接的に電子部品5と面接触するとは、電子部品5と面接触する他の部材と、面接触部15とが面接触することをいう。なお、面接触部15が直接電子部品5と面接触してもよい。すなわち、面接触部15は、電子部品5と直接または間接的に面接触する。なお、面接触部15は、スルーホール7b以外の部位で基板3等と接触する。また、面接触部15は、基板3(電子部品5)と半田等で接合されてもよい。
【0050】
また、本体部11と面接触部15との間には、弾性変形容易部23が形成される。前述したように、弾性変形容易部23は、弾性変形容易部21と同様に、本体部11に対して容易に弾性変形が可能な部位である。
【0051】
本体部11の一方の端部には、外部接続部17が形成される。外部接続部17は、他の外部部材と接合される部位である。外部部材は、例えば放熱部材等である。外部接続部17には、ねじ止め部19が形成される。すなわち、外部接続部17には、放熱部材等をねじによって強固に固定することができる。
【0052】
ここで、通常は電子部品5が搭載される基板3は振動に弱い。したがって、電動工具などによって放熱部材を外部接続部17のねじ止め部19に固定すると、その振動が基板3に伝達される。しかし、基板接続部13と面接触部15とが別に形成されているため、振動や衝撃を基板接続部13で受けることができ、電子部品5と直接または間接的に面接触する面接触部15へ力が加わることを抑制することができる。特に、一部の基板接続部13が、面接触部15よりも外部接続部17側にずれて配置されることで、外部接続部17側から伝達される力を、まず基板接続部13で受けることができるため、面接触部15へ加わる力を効率よく抑制することができる。
【0053】
また、前述したように、伝熱部材9の本体部11は、基板接続部13との間に弾性変形容易部21が形成され、面接触部15との間に弾性変形容易部23が形成される。このため、弾性変形容易部21、23が本体部11の振動や衝撃を吸収するクッションとして機能し、基板3へ振動等が伝わることをさらに抑制することができる。
【0054】
図3に示すように、基板3と伝熱部材9は、筐体25の内部に配置される。なお、基板3上には、電子部品5と導通する電気端子27が接合される。電気端子27と、外部接続部17は、基板3を挟んで互いに反対側に配置されている。また、電気端子27と、外部接続部17は、筐体25の同一面側に貫通して露出している。
【0055】
図4(a)は、
図3のB矢視図である。前述したように、電気端子27と外部接続部17とは、基板3を挟んで反対側に配置される。電気端子27の厚み(図中Eであって、電気端子27の板厚)に対して、外部接続部17の厚み(図中Fであって、外部接続部17の板厚)は厚い。また、電気端子27の幅(図中C)に対して、基板3の幅方向(電気端子27の突出方向から見て電気端子27の板厚に直交する方向に平行な方向)に対する外部接続部17の幅(図中D)が大きい。このように、外部接続部17のサイズは、電気端子27のサイズよりも大きい。
【0056】
通常、電気端子27には機械的な強度はそれほど要求されていない。したがって、電気端子27は振動や衝撃に弱い。これに対し、外部接続部17が電気端子27の近傍に配置され、外部接続部17に十分な機械的強度を有するため、外部接続部17を、電気端子27の補強部材として機能させることができる。
【0057】
なお、外部接続部17による補強効果を高めるためには、
図4(b)に示すように、外部接続部17の幅方向の断面に屈曲部を形成してもよい。このようにすることで、外部接続部17の剛性をより高くすることができ、補強効果を高めることができる。
【0058】
ここで、前述したように、面接触部15は、スルーホール7bと異なる位置で基板3等と接触する。スルーホール7bは、基板3の内部の導体層29と導通しているが、面接触部15は、スルーホール7bと接触しないため、導体層29と導通しない。また、面接触部15は、電気端子27など、電子部品5と電気的に接続されていない。すなわち、電子部品5と伝熱部材9とは、電気的に接続されていない。
【0059】
ここで、電子部品5と伝熱部材9とが電気的に接続されていないとは、電子部品5への電力供給線(プラス端子)や信号の入出力等の導体部と導通していないこといい、例えばGND接続(アース線)などと導通することは除く。
【0060】
以上説明したように、本実施の形態によれば、伝熱部材9によって、基板3から離れた位置に配置される放熱部材まで効率良く伝熱することができる。この際、電子部品5の熱を奪うための面接触部15とは別に、基板接続部13によって基板と伝熱部材9とが接続されているため、伝熱部材9から加わる力を、基板接続部13で受けることができ、面接触部15に伝わる力を抑制することができる。
【0061】
また、スルーホール7aによって基板3の表面と裏面との間の熱抵抗を低減することができるとともに、スルーホール7aが面接触部15とは異なる位置に配置されるため、伝熱部材9と基板3の導体層29とが導通することを防止することができる。このように、伝熱部材9が電子部品5と電気的に接続されていないため、伝熱部材9(外部接続部17)の取り回しに制約が生じない。
【0062】
また、筐体25の一方の側面に、電気端子27と外部接続部17の両方を露出させるため、筐体25に穴を形成する面を一面にすることができ、他の面に穴を形成する必要がないため、加工性に優れ、密閉性にも優れる。
【0063】
また、外部接続部17の剛性を高めることで、電気端子27の補強部材として機能させることができる。また、弾性変形容易部21、23を形成することで、本体部11からの振動や衝撃が基板3等へ伝わることを抑制することができる。
【0064】
次に、第2の実施形態について説明する。
図5は、第2の実施形態にかかる、基板の伝熱構造1aを示す図である。なお、以下の説明において、第1の実施形態と同一の機能を奏する構成については、
図1~
図4と同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、以下の説明では、スルーホール7b及び導体層29の図示を省略する。
【0065】
基板の伝熱構造1aは、基板の伝熱構造1とほぼ同様の構造であるが、伝熱部材9aが用いられる点で異なる。基板の伝熱構造1aでは、外部接続部17は、筐体25の外部において折り返される。伝熱部材9aの外部接続部17は、平面視において基板3と重なる部位に配置される。なお、前述したように、平面視において、少なくとも一部の基板接続部13は、面接触部15に対して、本体部11に略平行な方向であって、外部接続部17の方向にずれた位置に配置される。この場合、外部接続部17の方向とは、本体部11における外部接続部17が形成されている方向を差し、
図5の左側である。
【0066】
外部接続部17のねじ止め部19は、基板3の下方に位置する。したがって、ねじ止め部19に放熱部材を接続する場合には、放熱部材を基板3の下方に配置することができる。なお、放熱部材を平面視において基板3と重なる部位に配置する際には、放熱部材と筐体25とは接触してもよく、接触しなくてもよい。
【0067】
第2の実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。また、外部接続部17を屈曲させることで、例えば放熱部材等の配置の自由度が高い。
【0068】
次に、第3の実施形態について説明する。
図6は、本実施形態に用いられる伝熱部材9bを示す図である。伝熱部材9bは、伝熱部材9とほぼ同様の構成であるが、第2の面接触部31が形成される点が異なる。
【0069】
面接触部31は、本体部11から屈曲して設けられ、面接触部15と対向する部位に配置される。すなわち、面接触部15と本体部11との間も弾性変形容易部となる。なお、面接触部31は、本体部11よりも小さい部位であり、面接触部15と面接触部31は、互いにほぼ平行な平面部を有する。
【0070】
図7は、伝熱部材9bを用いた基板の伝熱構造1bを示す断面図である。前述したように、面接触部15は基板3を介して間接的に電子部品5と接触する。また、面接触部31は、電子部品5の上面側に面接触する。なお、面接触部31も、電子部品5と直接接触しなくてもよく、電子部品5を封止する樹脂等を介して間接的に面接触してもよい。すなわち、面接触部15と面接触部31とで、電子部品5および基板3を挟み込む。
【0071】
なお、電子部品5の上面に端子等が露出している場合には、面接触部31は、導体部とは直接接触しない。すなわち、本実施形態でも、伝熱部材9bは、電子部品5と電気的には接続されない。このため、外部接続部17のレイアウトに制約がない。
【0072】
また、本実施形態では、面視において、少なくとも一部の基板接続部13は、面接触部15および面接触部31のいずれに対しても、本体部11に略平行な方向であって、外部接続部17の方向にずれた位置に配置されることが望ましい。
【0073】
第3の実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。また、面接触部15、31を設けることで、より効率良く電子部品5からの熱を伝熱部材9bへ伝えることができる。
【0074】
以上、添付図を参照しながら、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の技術的範囲は、前述した実施の形態に左右されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0075】
1、1a、1b………基板の伝熱構造
3………基板
5………電子部品
7a、7b………スルーホール
9、9a、9b………伝熱部材
11………本体部
13………基板接続部
15、31………面接触部
17………外部接続部
19………ねじ止め部
21、23………弾性変形容易部
25………筐体
27………電気端子
29………導体層
100………基板の放熱構造
103………基板
105………電子部品
107………スルーホール
109………放熱部材
129………導体層