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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-18
(45)【発行日】2022-04-26
(54)【発明の名称】薄膜状ナノ結晶複合体
(51)【国際特許分類】
   C01G 3/02 20060101AFI20220419BHJP
   B01J 23/72 20060101ALI20220419BHJP
【FI】
C01G3/02
B01J23/72 A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019504626
(86)(22)【出願日】2018-03-07
(86)【国際出願番号】 JP2018008689
(87)【国際公開番号】W WO2018164163
(87)【国際公開日】2018-09-13
【審査請求日】2020-12-21
(31)【優先権主張番号】P 2017043204
(32)【優先日】2017-03-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(74)【代理人】
【識別番号】100143959
【弁理士】
【氏名又は名称】住吉 秀一
(72)【発明者】
【氏名】都築 秀和
(72)【発明者】
【氏名】若江 真理子
(72)【発明者】
【氏名】久留須 一彦
【審査官】手島 理
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/010492(WO,A1)
【文献】特開2016-011247(JP,A)
【文献】特開2013-240756(JP,A)
【文献】国際公開第2017/010491(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0089739(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第103708551(CN,A)
【文献】国際公開第2013/133412(WO,A1)
【文献】VASEEM, M. et al.,Flower-shaped CuO nanostructures: structral, photocatalytic and XANES studies,Catalysis Communications,2008年07月29日,Vol.10, No.1,p.11-16,ISSN 1566-7367
【文献】KHUN, K. et al.,Urea Assisted Synthesis of Flower Like CuO Nanostructures and Their Chemical Sensing Application for,Electroanalysis,2013年06月,Vol.25, No.6,p.1425-1432,ISSN 1040-0397
【文献】ZHU, Lu-Ping et al.,Self-assembled 3D flower-like hierarchical beta-Ni(OH)2 hollow architectures and their in situ therm,Nanoscale Research Letters,2009年02月27日,Vol.4,p.550-557,ISSN 1931-7573
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01G 3/02
B01J 23/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
薄片状をなし、主表面および端面をもつ複数のナノ結晶片が相互に連結された、基材のない薄膜状の連結集合体からなり、
前記連結集合体の外側に露出する、前記複数のナノ結晶片の前記主表面が間隙を有して配置され、
前記連結集合体が、1mm以上の平面視面積を有し、
前記ナノ結晶片は、金属酸化物で構成されていることを特徴とする、薄膜状ナノ結晶複合体。
【請求項2】
前記ナノ結晶片は、厚さが0.5~100nmであり、かつ主表面の最小寸法が前記厚さの10倍以上である、請求項1に記載の薄膜状ナノ結晶複合体。
【請求項3】
前記平面視面積が100mm以上である、請求項1または2に記載の薄膜状ナノ結晶複合体。
【請求項4】
比表面積が5m/g以上である、請求項1~3のいずれか1項に記載の薄膜状ナノ結晶複合体。
【請求項5】
前記ナノ結晶片は、酸化銅で構成されており、
X線回折スペクトルの回折角度(2θ)にて、35.0~36.0度の間の最高ピーク強度をI1とし、38.5~40.0度の間の最高ピーク強度をI2としたときに、ピーク強度比I1/I2が1.05以上である結晶配向度を有する、請求項1~4のいずれか1項に記載の薄膜状ナノ結晶複合体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、取り扱い性に優れた薄膜状のナノ結晶複合体に関する。
【背景技術】
【0002】
ナノ結晶材料は、触媒や、電極材料等に様々な分野で広く用いられている。近年、ナノ結晶材料では、ナノメートルスケールの粒径をもつナノ粒子として、さらなる微細化や、活性面の制御等の検討が積極的に行われている。
【0003】
例えば特許文献1では、特定の単結晶の特定な面を一面とするナノ単結晶板材を、隣接するナノ単結晶板材間で触媒活性面同士を接面させることなく集積したナノ単結晶板材集積触媒(ナノフラワー)が提案されている。また特許文献1には、ナノ単結晶板材集積触媒を用いることによって、熱凝集しても、触媒活性面同士が接面されることがなく、触媒活性面の前にスペース(空隙部)が確保され、熱凝集による触媒活性の低下を抑制でき、触媒活性を高くすることができ、さらに、ナノ単結晶板材を、触媒活性面を(001)面とする、遷移金属酸化物であるCuOのナノ単結晶板材とすることによって、触媒の材料コストを低減できることが記載されている。
【0004】
しかし、特許文献1記載のナノ単結晶板材集積触媒や、一般的なナノ結晶粉末は、粒径がナノスケール(20~200nm程度)であるため、実際の使用にあたっては、取り扱い性に問題があった。
【0005】
例えば、次のような取り扱い性の問題が挙げられる。(i)粉末形状のナノ結晶材料は、そのままの状態では使用できないため、接着剤等を用いて、一定の大きさをもつ担体に固定する必要がある。その際、担持されるナノ結晶材料の量の10倍以上の材料を準備する必要があり、これは材料ロスの問題となる。また、(ii)担持するにあたっては接着剤に粉末形状のナノ結晶材料を分散させて埋め込むことになるため、例えば触媒としての使用を想定した場合には、担持した面に、ナノ結晶材料の活性面が効率的に配置できず、ナノ結晶材料としての触媒活性を十分に発揮できないという問題がある。さらに、(iii)粉末形状のナノ結晶材料は、微細であるため、飛散防止等の観点でその取り扱いに際して特殊な治具や設備が必要となるという問題がある。また、(iv)このような微細なナノ結晶材料は、製造後の洗浄や単離が煩雑であるほか、微細な状態での保管が困難で散逸の問題もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2013-240756号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、ナノ結晶材料としての特性(例えば優れた触媒活性等)を良好に維持しつつ、上記のような粉末形状のナノ結晶材料の問題点を解決した、取り扱い性に優れたナノ結晶材料としての薄膜状ナノ結晶複合体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、新規のナノ結晶複合体について鋭意研究を重ねた結果、薄膜状ナノ結晶複合体が、薄片状をなし、主表面および端面をもつ複数のナノ結晶片が相互に連結された、薄膜状の連結集合体からなり、前記連結集合体の外側に露出する、前記複数のナノ結晶片の前記主表面が間隙を有して配置され、前記連結集合体が、1mm以上の平面視面積を有することによって、特に、ナノ(メートル)スケールの特性を維持しつつ、ミリ(メートル)スケール以上の優れた取り扱い性を実現し得ることを見出し、かかる知見に基づき本発明を完成させるに至った。
【0009】
すなわち、本発明の要旨構成は、以下のとおりである。
[1] 薄片状をなし、主表面および端面をもつ複数のナノ結晶片が相互に連結された、薄膜状の連結集合体からなり、
前記連結集合体の外側に露出する、前記複数のナノ結晶片の前記主表面が間隙を有して配置され、
前記連結集合体が、1mm以上の平面視面積を有することを特徴とする、薄膜状ナノ結晶複合体。
[2] 前記ナノ結晶片は、厚さが0.5~100nmであり、かつ主表面の最小寸法が前記厚さの10倍以上である、上記[1]に記載の薄膜状ナノ結晶複合体。
[3] 前記平面視面積が100mm以上である、上記[1]または[2]に記載の薄膜状ナノ結晶複合体。
[4] 比表面積が5m/g以上である、上記[1]~[3]のいずれか1つに記載の薄膜状ナノ結晶複合体。
[5] 前記ナノ結晶片は、酸化銅で構成されており、
X線回折スペクトルの回折角度(2θ)にて、35.0~36.0度の間の最高ピーク強度をI1とし、38.5~40.0度の間の最高ピーク強度をI2としたときに、ピーク強度比I1/I2が1.05以上である結晶配向度を有する、上記[1]~[4]のいずれか1つに記載の薄膜状ナノ結晶複合体。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ナノスケールの特性を維持しつつ、ミリスケール以上の優れた取り扱い性を実現し得る、薄膜状ナノ結晶複合体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本発明にかかる薄膜状ナノ結晶複合体の概略斜視図である。
図2図2は、本発明にかかる薄膜状ナノ結晶複合体のより詳細な概略斜視図である。
図3図3は、図1の薄膜状ナノ結晶複合体の概略斜視図のI-I断面(X-Y面)を示す概略断面図である。
図4図4は、図2の薄膜状ナノ結晶複合体の概略斜視図のI-I断面(X-Y面)を示すより詳細な概略断面図である。
図5図5は、図1の薄膜状ナノ結晶複合体の領域Pを拡大して示す概略斜視図である。
図6図6は、図2の薄膜状ナノ結晶複合体の領域Pを拡大して示すより詳細な概略斜視図である。
図7図7は、図1の薄膜状ナノ結晶複合体から分離したナノ結晶片を、X-Y面で平面視して、拡大して示す概略図である。
図8図8は、図2の薄膜状ナノ結晶複合体から分離したナノ結晶片を、X-Y面で平面視して、拡大して示すより詳細な概略図である。
図9図9は、本発明のナノ結晶複合体X線回折で構造分析した際の、X線回折スペクトルの一例である。
図10図10は、本発明の実施例1に係る薄膜状ナノ結晶複合体の観察写真であり、特に、(a)は薄膜状ナノ結晶複合体の外観写真であり、(b)および(c)はSEM画像である。
図11図11は、本発明の実施例2に係る薄膜状ナノ結晶複合体のSEM画像である。
図12図12は、比較例1で作製した粉末状のナノ結晶片のSEM画像である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<薄膜状ナノ結晶複合体>
本発明に従う薄膜状ナノ結晶複合体は、薄片状をなし、主表面および端面をもつ複数のナノ結晶片が相互に連結された、薄膜状の連結集合体からなり、前記連結集合体の外側に露出する、前記複数のナノ結晶片の前記主表面が間隙を有して配置され、前記連結集合体が、1mm以上の平面視面積を有することを特徴とする。
【0013】
このようなナノ結晶複合体は、従来の粉末形状のナノ結晶材料とは異なり、複数のナノ結晶片が相互に連結されてミリスケール以上のマクロな大きさを有している。そのため、実際の使用にあたっては、薄膜形状やシート形状の材料のような使用が可能となるため、(i)担体の覆いたい部分を選択的に覆うことができ、必要な分量のナノ結晶複合体を準備すればよい。また、(ii)薄膜形状のナノ結晶複合体を接着剤で貼り付けて使用できるため、例えば触媒としての使用を想定した場合には、担体の担持したい部分(反応面)に、ナノ結晶複合体の活性面を効率的に配置でき、優れた触媒活性を実現できる。さらに、(iii)薄膜形状なので取り扱いが容易で、取り回し性に優れ、(iv)製造後の洗浄や単離も容易であるほか、散逸等の問題もないので保管も容易である。
【0014】
図1、2は、本発明に従う薄膜状ナノ結晶複合体の一実施形態を示したものであって、図1、2中、符号1は薄膜状ナノ結晶複合体(以下、単に「ナノ結晶複合体」ということがある。)である。また、図3、4は、それぞれ、図1、2に示す薄膜状ナノ結晶複合体1のI-I断面図(X-Y面)であって、図3、4中、符号11は連結集合体、13はナノ結晶片、15は連結部、15aは連結部15の表出部である。図5、6は、それぞれ、図1、2の薄膜状ナノ結晶複合体の領域Pを拡大して示す概略斜視図あって、図5、6中、符号13aはナノ結晶片13の主表面、13bはナノ結晶片13の端面である。
【0015】
図1図6に示されるように、本発明のナノ結晶複合体1は、薄片状をなし、主表面13aおよび端面13bをもつ複数のナノ結晶片が相互に連結された、薄膜状の連結集合体11からなる。ナノ結晶片の連結状態は特に限定されず、結晶成長のような化学的な結合であってもよいし、静電気力のような電気的な結合や、分子間力のような集積による結合であってもよく、全体としてナノ結晶片が連結して薄膜状の集合体を形成していればよい。特に、連結集合体11は、ナノ結晶片同士が互いに化学的な結合により連結一体化されていることが好ましい。
【0016】
また、図3、4に示されるように、連結集合体11は、1mm以上の平面視面積の表出部15aをもつ、薄膜状の連結部15を有する。連結部15の表出部15aは、ナノ結晶片が結晶成長してできた部位であってもよいし、ナノ結晶片が集積してできた部位であってもよい。このような表出部15aは、平面視面積で1mm以上であり、好ましくは100mm以上である。このようなミリスケール以上の表出部15aをもつ、連結集合体11は、実際の使用に際しての取り扱い性に優れる。
【0017】
また、連結部15の表出部15aには、複数のナノ結晶片がそれぞれの端面13bで連結されることで連結集合体11の外側に露出した、それぞれのナノ結晶片13の主表面13aが、間隔を有して配置されている。複数のナノ結晶片13の主表面13aは、表出部15aから連結集合体11の外方向へ突出しており、主表面13aは、薄膜状の連結部15の面方向に沿って配置されている。また、主表面13aは、表出部15aからランダムな方向へ突出している。さらに、ナノ結晶片13の主表面13aは、ランダムな方向を向いている。このような複数のナノ結晶片13を有する連結集合体11は、ミリスケール以上の大きさでありながら、ナノ結晶材料特有の特性を発揮し得る。このような連結集合体11において、連結部15の表出部15aから突出している主表面13aを有するナノ結晶片13の連結状態は、特に限定されず、上述のような結合状態が挙げられるが、特に、連結部15におけるナノ結晶片13の結合強度を高める観点からは、ナノ結晶片13は連結部15において化学的な結合により相互に連結されていることが好ましい。
【0018】
ここでナノ結晶片13は、連結集合体11を構成する部分であって、連結部15の表出部15aに、主表面13aが連結されている状態である。このようなナノ結晶片13は、図5、6に示されるように、薄片状をなし、主表面13aおよび端面13bをもつ。ここで、ナノ結晶片13の主表面13aとは、具体的には、薄片状のナノ結晶片13を構成する外面のうち、表面積が広い面のことであって、表面積が狭い端面13bの上下端縁を区画形成する両表面のことを意味する。ナノ結晶片13の主表面13aの最小寸法は1nm~2μmであることが好ましく、最大寸法は10nm~10μmであることが好ましい。また、ナノ結晶片13の端面の最大寸法は、主表面の最小寸法の1/10もしくは10nm以下であることが好ましい。また、ナノ結晶片13において、主表面13aの端面13bに対する表面積の割合は、10倍以上であることが、例えば触媒として用いた場合に優れた触媒活性を奏する点で好ましい。また、ナノ結晶片13の厚さtは、好ましくは0.5~100nmであり、より好ましくは1~20nmである。また、ナノ結晶片13の主表面13aの最小寸法は、厚さtとの関係では、厚さtの10倍以上であることが好ましく、より好ましくは20倍以上である。
【0019】
なお、ナノ結晶片13の主表面13aの最小寸法および最大寸法は、ナノ結晶片13の形状を損なわないように、連結部15から分離したナノ結晶片13を、個別のナノ結晶片として測定することにより求める。具体的には、例えば図7、8に示されるように、ナノ結晶片13としてのナノ結晶片の主表面13aに対し、外接する最小面積の長方形Qを描き、長方形Qの短辺L1および長辺L2を、ナノ結晶片13の最小寸法および最大寸法としてそれぞれ測定する。なお、具体的な測定方法は、実施例の頁にて説明する。
【0020】
また、連結集合体11は、連結部15の表出部15aから複数のナノ結晶片13が突出しているため、比表面積が比較的大きい。このような連結集合体11の比表面積は、5m/g以上であることが好ましく、10m/g以上であることがより好ましい。このような連結集合体11からなるナノ結晶複合体1は、例えば触媒として用いた場合に、優れた触媒活性を発揮する。なお、連結集合体11の比表面積の上限は特に限定しないが、製造上または物理上の限界としての上限は、例えば、100m/gである。
【0021】
本発明の結晶複合体1を構成するナノ結晶片は、金属および金属酸化物の少なくとも一方で構成されることが好ましい。
ここで、金属としては、例えば、貴金属や、遷移金属、これらの金属を含む合金が挙げられる。特に、貴金属およびその合金としては、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)、ルテニウム(Ru)、白金(Pt)、銀(Ag)および金(Au)の群から選択される1種の成分からなる金属またはこれらの群から選択される1種以上の成分を含む合金が挙げられる。また、遷移金属およびその合金としては、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)および亜鉛(Zn)の群から選択される1種の成分からなる金属またはこれらの群から選択される1種以上の成分を含む合金が挙げられる。
また、金属酸化物としては、例えば、貴金属、遷移金属またはそれらの合金の酸化物や複合酸化物等が挙げられる。貴金属や遷移金属は上記で例示したもの等が挙げられる。
【0022】
特にナノ結晶片は、遷移金属の群から選択される1種または2種以上の金属を含む金属酸化物からなることが好ましい。このような金属酸化物は、金属資源として地球上に豊富に存在しており、貴金属に比べて安価であることから、価格を抑える点で好ましい。中でも、Cu、Ni、CoおよびZnの群から選択される1種または2種以上の金属を含む金属酸化物からなることが好ましく、このような金属酸化物は少なくとも銅を含むことがより好ましい。また、上記のような金属酸化物としては、例えば、酸化ニッケル、酸化銅、Ni-Cu酸化物、Cu-Pd酸化物等が挙げられ、中でも酸化銅、Ni-Cu複合酸化物が好ましい。
【0023】
以上説明してきたように、本発明のナノ結晶複合体1は、ミリオーダー以上の一定の大きさをもつ薄膜状でありながら、複数のナノ結晶片が相互に連結された集積体であるため、ナノ結晶材料特有の特性も発揮する。このようなナノ結晶複合体1は、ミリオーダー以上のマクロな薄膜として取り扱うことができたため、ナノ結晶材料として、従来にはない優れた取り扱い性や作業性を実現できる。一方で、電解銅箔のような従来の金属箔等では実現できなかった表面性状を実現でき、薄膜形状でありながらナノ結晶粉末のようなナノ結晶材料特有の特性を発揮し得る。
【0024】
このような本発明のナノ結晶複合体1は、様々な用途に用いることができるが、例えば触媒や、電極材料、人工光合成材料として好適に用いることができる。
【0025】
特に、本発明のナノ結晶複合体1を触媒として用いる場合には、基材に担持する際に、ナノ結晶粉末のように接着剤中に分散させて埋め込む必要がないため、ナノ結晶複合体の活性面を効率的に反応表面に配置でき、触媒効率が向上する。
【0026】
このような触媒としての本発明のナノ結晶複合体1では、ナノ結晶片13の主表面13aが活性表面となるため、ナノ結晶片13の主表面13aが特定の結晶方位を有するように構成することが好ましい。また、ナノ結晶複合体1を触媒として用いる場合には、ナノ結晶片は金属酸化物により構成されることが好ましい。
【0027】
ここで、ナノ結晶片13の主表面13aが還元性の活性面になるように構成するには、ナノ結晶片を構成する金属酸化物において、触媒活性を発揮する金属原子の面を、主表面13aに位置するように配向させて、主表面13aを金属原子面で構成すればよく、具体的には、主表面13aに存在する金属酸化物を構成する、金属原子および酸素原子に占める金属原子の個数割合を80%以上とすることが好ましい。
【0028】
また主表面13aが酸化性の活性面になるように構成するには、ナノ結晶片を構成する金属酸化物において、触媒活性を発揮する酸素原子の面を、主表面13aに位置するように配向させて、主表面13aを酸素原子面で構成すればよく、具体的には、主表面13aに存在する金属酸化物を構成する、金属原子および酸素原子に占める酸素原子の個数割合を80%以上とすることが好ましい。
【0029】
活性面の役割に応じて、ナノ結晶片13の主表面13aに存在する金属酸化物を構成する、金属原子および酸素原子に占める金属原子または酸素原子の個数割合を調整することにより、主表面13aの触媒活性機能を高めることができ、ナノ結晶片13、ひいてはナノ結晶複合体1として、十分な触媒活性を発揮できる。
【0030】
また、ナノ結晶片13の主表面13aが特定の結晶方位を有するとしたのは、ナノ結晶片13を構成する金属酸化物の種類に応じて、主表面13aに多く存在する結晶方位が異なるためであり、このため、主表面13aの結晶方位は具体的には記載はしない。例えば、金属酸化物が酸化銅(CuO)の場合には、主表面を構成する単結晶の主な結晶方位は{001}であることが好ましい。
【0031】
また、ナノ結晶片13が酸化銅(CuO)で構成されている場合、このナノ結晶複合体1は、X線回折スペクトルの回折角度(2θ)の35.0~36.0度の間の最高ピーク強度をI1とし、38.5~40.0度の間の最高ピーク強度をI2としたときに、ピーク強度がI1>I2であることが好ましく、より好ましくはピーク強度比I1/I2が1.05以上であり、さらに好ましくはピーク強度がI1/I2が1.2以上である、結晶配向度を有することが望ましい。
【0032】
図9に、本発明のナノ結晶複合体1をX線回折で構造分析を行なった際の、X線回折スペクトルの一例を示すピークの結果を示す。なお、測定方法については、実施例の頁にて説明する。
【0033】
図9では、上記最高ピークI1とI2とが、ピーク強度でI1>I2の関係にあり、このとき、最高ピーク強度I1は、結晶面(002)の35.64度、最高ピーク強度I2は、(200)面の39.2度であった。
また一方で、上記最高ピークI1とI2とが、ピーク強度でI1<I2の関係である場合、最高ピーク強度I1は結晶面(-1 11)の35.76度、最高ピーク強度I2は(111)面の38.96度となる。
すなわち上記最高ピークI1とI2とが、I1>I2であり、かつピーク強度比I1/I2が1.05以上の場合、ナノ結晶複合体1の表面の酸化銅ナノ結晶(すなわち、ナノ結晶片13を構成する酸化銅ナノ結晶)は、触媒性能に有効な活性面である(002)に配向しており、高い触媒性能を発揮し得る。
【0034】
また、主表面13aを金属原子面とする構成としては、金属酸化物の結晶構造を、金属原子面と酸素原子面が規則的に交互に積層され、原子の並び方に規則性を有する規則構造として、主表面13aに金属原子面が位置するように構成することが好ましく、具体的には、主表面13aが、同じ配向をもつ単結晶の集合体で構成された構造の場合だけではなく、異なる結晶構造や異なる配向をもつ単結晶の集合体や、結晶粒界や多結晶を含んだ集合体で構成された構造であっても、主表面13aに金属原子面が存在する場合は含まれる。
【0035】
<薄膜状ナノ結晶複合体の製造方法>
本発明の薄膜状ナノ結晶複合体の製造方法としては、例えば、ナノ結晶片の二次元成長を優先的に起こす方法が挙げられる。このような方法では、例えば気体と溶液の間のような、異なる相が存在する境界に接する境界面を、核生成優先場所として利用する。すなわち、例えば気体と溶液の境界面、異なる種類の液体の界面、または溶液中に配置した基材(支持台)との界面等に、薄膜としてナノ結晶複合体を形成する。なお、本発明の製造方法では、核生成場所を限定して二次元成長させるので、通常の水熱法よりは低い温度で製造することが望ましい。
【0036】
ここで、二次元方向への成長を誘導する観点から、溶液内の、気体と溶液の境界面下方に支持台を設置することが望ましい。支持台の材質としては、特に限定しないが、例えば、金属や酸化物、窒化物等が挙げられ、また薄膜の支持の観点から、200度までの温度で、耐薬品性に優れるテフロン(登録商標)が望ましい。
【0037】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の概念および請求の範囲に含まれるあらゆる態様を含み、本発明の範囲内で種々に改変することができる。
【実施例
【0038】
次に、本発明の効果をさらに明確にするために、実施例および比較例について説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0039】
(実施例1)
2.0gの塩化銅(II)二水和物(純正化学株式会社製)と、1.6gの尿素(純正化学株式会社製)とを混合した後、180mlのエチレングリコール(純正化学株式会社製)と120mlの水を添加してさらに混合した。得られた塩化銅と尿素の混合溶液を、内容積500mlの耐圧硝子容器に注入し、該容器内の密閉雰囲気下で150℃、12時間の熱処理を行った。
その後、混合溶液を、室温に冷却して1日保持した後、さらに密閉容器から生成した薄膜形状の沈殿物を回収し、この沈殿物を、メタノールおよび純水で洗浄して、真空下、70℃で10時間真空乾燥させ、銅酸化物のナノ結晶片が連結された薄膜状の連結集合体からなるナノ結晶銅酸化物触媒を得た。
【0040】
(実施例2)
1.4gの塩化銅(II)二水和物(同上)と1.0gの尿素(同上)とを混合した後、108mlのエチレングリコール(同上)と72mlの水を添加してさらに混合した。得られた塩化銅と尿素の混合溶液を、内容積300mlのSUS製のオートクレーブ密閉容器に注入し、該容器内で150℃、24時間の熱処理を行った。
その後、混合溶液を、室温に冷却して1日保持した後、さらに密閉容器から生成した薄膜形状の沈殿物を回収し、この沈殿物を、メタノールおよび純水で洗浄して、真空下、70℃で10時間真空乾燥させ、銅酸化物のナノ結晶片が連結された薄膜状の連結集合体からなるナノ結晶銅酸化物触媒を得た。
【0041】
(比較例1)
2.0gの塩化銅(II)二水和物(同上)と1.4gの尿素(同上)とを混合した後、160mlのエチレングリコール(同上)と240mlの水を添加してさらに混合した。得られた塩化銅と尿素の混合溶液を、内容積500mlのSUS製のオートクレーブ密閉容器に注入し、該容器内で180℃、36時間の熱処理を行った。
その後、混合溶液を、室温に冷却した後、密閉容器から取り出した。さらに、混合溶液中に生成した沈殿物を回収し、この沈殿物を、メタノールおよび純水で洗浄し真空下、70℃で10時間真空乾燥させ、銅酸化物のナノ結晶片(粉末状)からなるナノ結晶銅酸化物触媒を得た。
【0042】
(比較例2)
比較例2として市販の酸化銅ナノ粒子(シグマ アルドリッチ ジャパン合同会社製 544868 Copper(II) oxide)を準備し、これを銅酸化物の球状ナノ結晶粒からなるナノ結晶銅酸化物触媒とした。
【0043】
[評価]
上記実施例および比較例に係る触媒を用いて、下記に示す特性評価を行った。各特性の評価条件は下記の通りである。結果を表1に示す。
【0044】
[1]組織観察
組織観察は、マイクロスコープ(株式会社キーエンス製)および走査型電子顕微鏡(SEM、日本電子株式会社製)を用いて行った。マイクロスコープ観察では、膜全体の全体外観と、膜としての連続性を確認した。また、SEM観察では、ナノ結晶の組織を確認した。なお、図10~12に、実施例1および2、並びに比較例1の観察結果を、写真として示す。特に図10(a)は、実施例1で作製した薄膜状の連結集合体からなるナノ結晶銅酸化物触媒(面積約255mm、重さ20.06g)の外観写真であり、(b)は倍率100倍で観察した際のSEM画像であり、(c)は倍率5万倍で観察した際のSEM画像である。また、図11は、実施例2で作製した薄膜状の連結集合体からなるナノ結晶銅酸化物触媒の倍率3万のSEM画像である。さらに図12は、比較例1で作製した粉末状のナノ結晶片からなるナノ結晶銅酸化物触媒を、倍率5万倍で観察した際のSEM画像である。
【0045】
ここで、連結集合体の連結部の平面視面積は、連結集合体の表面に対し鉛直方向から撮影した外観写真において、連結集合体の輪郭を特定し、画像解析することにより算出した。
また、連結集合体を構成するナノ結晶片と粉末状のナノ結晶片の厚さおよび最小寸法、並びに粉末状の球状ナノ結晶粒の粒径は、倍率5万倍のSEM画像を解析して測定した。特に、ナノ結晶片の厚さおよび最小寸法は、ナノ結晶片の形状を壊さないように個別化し、個別化したナノ結晶片を上記倍率で観察し、SEM画像を解析して算出した。
なお、連結集合体を構成するナノ結晶片と粉末状のナノ結晶片の厚さおよび最小寸法、並びに粉末状の球状ナノ結晶粒の粒径は、任意に選択した10個のナノ結晶片およびナノ結晶粒について測定し、平均した値である。
【0046】
[2]X線回折による結晶配向性測定
X線回折装置(D8 DISCOVER、ブルカー・エイエックスエス株式会社製)による構造分析を行なった。X線回折で、各触媒の組成の同定を行い、酸化銅(CuO)単体であることを確認した。さらに、X線回折スペクトルの回折角度(2θ)の35.0~36.0度の間の最高ピーク強度をI1とし、38.5~40.0度の間の最高ピーク強度をI2としたときの、ピーク強度比I1/I2を、結晶配向度として求めた。
【0047】
[3]比表面積測定
JIS Z 8830:2013に準拠したBET法により、高精度・多検体ガス吸着量測定装置(AutoSorb-iQ2、カンタクローム・インスツルメンツ・ジャパン合同会社製)で、窒素ガスを用いて測定した。なお、前処理条件として、200℃で3時間の真空脱気した後に、測定した。
【0048】
[4]取り出し率の測定(取り扱い性)
取り扱い性を評価するために、次の方法で取り出し率を測定した。
まず、長さ200mmのガラス試験管にガラスウール20mgを詰め、触媒を5mg秤量して上記試験管内のガラスウール上に載せ、さらに触媒上にガラスウール20mgを詰める。その後、すべてのガラスウールと、触媒を上記試験管から取り出し、薬包紙に並べ、再度、同じ手順で一度取り出したガラスウールと触媒を上記試験管に詰めた。そして、すべてのガラスウールと、触媒を上記試験管から取り出し、2度目に取り出された触媒の重量を測定し、最初に秤量した触媒の重量に対する比率(2度目に取り出された触媒の重量×100/最初に秤量した触媒の重量)を求め、取り出し率(%)として評価した。本実施例では、取り出し率が90%以上を合格レベルとした。
【0049】
[5]回収率の測定(耐散逸性)
耐散逸性を評価するために、次の方法で回収率を測定した。
まず、触媒10mgをガラスウールに分散させ、アルゴン(Ar)ガスを充填した密閉ガラス容器内に入れて、200℃に加熱後、該容器内に一酸化炭素(CO)と一酸化窒素(NO)の混合ガス(Ar:CO:NOが質量比で98:1:1)を導入し、該容器内のガスを上記混合ガスに置換し、触媒反応を行った。その後、触媒を、上記ガラス容器から取り出し、ガラスウールから分離して、回収した触媒の重量を測定した。最初に秤量した触媒の重量に対する比率(回収した触媒の重量×100/最初に秤量した触媒の重量)を求め、回収率(%)として評価した。本実施例では、回収率が90%以上を合格レベルとした。
【0050】
[6]触媒性能
触媒性能の評価は、ガス供給ライン、反応管およびガスサンプリング部よりなる装置を用いて行った。具体的には以下の通りである。
まず、反応管のガラスフィルタの間に、触媒を20mg充填した。次に、触媒を充填した反応管を、装置にセットし、反応管が入っている恒温槽を室温から200℃まで10℃/minで昇温した。このとき反応管入口ガス(原料ガス)および反応管出口ガスを採取し、ガス分析を行い、NO転換率およびCO転換率を算出した。
なお、原料ガスは、一酸化炭素と一酸化窒素の混合ガス(Ar:CO:NOが質量比で98:1:1)を用いた。原料ガスの流量は、各ガス(Ar、COおよびNO)の流量をフロート式流量計で計測し、二次圧変動型フローコントローラバルブで調節して、混合ガスの流量で50mL/minとなるように調節した。また、反応管の材質は石英ガラスであり、反応管へ供給するガスの予備加熱にはSUS管を接続して用いた。
また、反応管入口ガスおよび反応管出口ガスの採取は、四方バルブおよび三方バルブの出口から、1Lアルミニウムバッグで、20分間行った。採取したガスの分析は、窒素(N)、一酸化窒素(NO)および一酸化炭素(CO)にはガスクロマトグラフ(GC-8A、株式会社島津製作所製)を用い、二酸化炭素(CO)にはガスクロマトグラフ(GC-2010、株式会社島津製作所製)を用いた。さらにNO転換率およびCO転換率は、上記反応管の入口および出口で採取されたそれぞれのガス中の窒素、一酸化窒素、一酸化炭素および二酸化炭素の各量(ppm)から、下記式(1)および(2)により算出した。
NO転換率(%)={N(出口)-N(入口)}×100/NO(入口)・・・(1)
CO転換率(%)=CO(出口)×100/CO(原料ガス)・・・(2)
本実施例では、NO転換率およびCO転換率がそれぞれ50%以上を良好と評価した。
【0051】
【表1】
【0052】
図10(c)および図11に示されるように、実施例1および2では、複数のナノ結晶片の主表面が表出部から突出し、主表面は薄膜状の連結部の面方向に沿って配置されていることから、一定の連続性をもった薄膜状の連結集合体であることが確認された(なお、図10(a)および(b)は、実施例1のものであるが、実施例2でも同様の薄膜状の連結集合体が観察された)。従って、実施例1および2では、ナノ結晶片の粉末ではないことが確認された。このような本発明の薄膜状ナノ結晶複合体は、静電気の影響で多少容器等に付着するが、ピンセットで採取可能で、採取により崩れることはなく、自重を支える強度を有していることが確認された。また、本発明の薄膜状結晶複合体は、表1に示されるように、特に触媒として用いた場合に、取り扱い性、耐散逸性および触媒性能の全て項目で、バランスのとれた優れた特性を発揮することが確認された。また、本発明の薄膜状ナノ結晶複合体からなる触媒は、触媒反応の前後において形状等に変化は見られず、触媒反応に対する安定性も確認された。
【0053】
これに対し、比較例1の触媒は、図12に示されるように、複数のナノ結晶片の主表面が表出部から突出しておらず、粉末状のナノ結晶片が凝集して構成されていることが確認された。特に、比較例1の触媒は粉末形状であるため、ナノ結晶片同士の連続性は無く、ピンセットでつまむ等のまとまった状態での採取は不可能で、また、静電気の影響により大気中への飛散や、容器等への付着が生じるため、消失もし易い等、本発明の薄膜状ナノ結晶複合体(実施例1および2)に比べて、取り扱い性の観点で劣ることが確認された。なお、比較例1の粉末状のナノ結晶片からなる触媒も、触媒反応の前後において形状等に変化は見られず、触媒反応に対する安定性は確認された。
【0054】
また、比較例2の触媒は、粉末状の球状ナノ結晶粒で構成されている。そのため、特に、粉末形状であるため、比較例1のナノ結晶片の場合と同様、ピンセットでつまむ等のまとまった状態での採取は不可能で、また、静電気の影響により大気中への飛散や、容器等への付着が生じるため、消失もし易い等、本発明の薄膜状ナノ結晶複合体(実施例1および2)に比べて、取り扱い性の観点で劣ることが確認された。また、表1から、比較例1、2の触媒は、粉末状であるため、耐散逸性と取り出し率の観点でも、本発明の薄膜状ナノ結晶複合体(実施例1および2)に劣っていることが確認された。さらに、比較例1、2の触媒は、触媒性能のうちNO転換率の点でも本発明の薄膜状ナノ結晶複合体(実施例1および2)に著しく劣っていた。また、比較例2の触媒は、NO転換率だけではなく、CO転換率でも、実施例1および2に劣っていた。また、比較例2の触媒では、触媒反応の前後において、粉末の散逸と一部銅への変化が見られ、特に散逸性と触媒反応に対する不安定性が確認された。
【符号の説明】
【0055】
1 薄膜状ナノ結晶複合体
11 連結集合体
13 ナノ結晶片
13a 主表面
13b 端面
15 連結部
15a 表出部
図1
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図5
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