(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-18
(45)【発行日】2022-04-26
(54)【発明の名称】ラマン増幅用光源、ラマン増幅用光源システム、ラマン増幅器、ラマン増幅システム
(51)【国際特許分類】
G02F 1/35 20060101AFI20220419BHJP
【FI】
G02F1/35 501
(21)【出願番号】P 2020082190
(22)【出願日】2020-05-07
(62)【分割の表示】P 2015210487の分割
【原出願日】2015-10-27
【審査請求日】2020-06-08
(32)【優先日】2015-05-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大越 春喜
(72)【発明者】
【氏名】森本 政仁
【審査官】井部 紗代子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2002/0067539(US,A1)
【文献】特開2001-222036(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0097480(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2005/0201675(US,A1)
【文献】特開2007-171548(JP,A)
【文献】特開2009-152605(JP,A)
【文献】特表2009-505378(JP,A)
【文献】特許第3676167(JP,B2)
【文献】VAKHSHOORI, D. et. al.,Raman Amplification Using High-Power Incoherent Semiconductor Pump Sources,OFC 2003,IEEE,2003年03月28日,PD47-1 - PD47-3
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/35
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光伝送ファイバを伝送する信号光を該光伝送ファイバ中の誘導ラマン散乱現象によりラマン増幅するためのラマン増幅用光源であって、
インコヒーレント光を出力する複数のインコヒーレント光源と、
前記インコヒーレント光をラマン増幅する波長を有する2次励起光を出力する複数の励起光源と、
前記複数のインコヒーレント光源および前記複数の励起光源に接続されており、入力された前記インコヒーレント光を入力された前記2次励起光によりラマン増幅して出力するラマン増幅用光ファイバと、
前記光伝送ファイバに接続されており、前記ラマン増幅用光ファイバによりラマン増幅されたインコヒーレント増幅光が入力され、前記インコヒーレント増幅光を、前記信号光をラマン増幅する波長を有しかつ前記信号光を前方励起する方向に前記光伝送ファイバを伝搬する1次励起光として前記光伝送ファイバに出力する出力部と、
を備え
、前記複数の励起光源は、ファブリぺロー(FP)型、FP型と光ファイバブラッググレーティング(FBG)とを組み合わせたFP-FBG型、DFB型、およびDBR型の半導体レーザの少なくとも一つを含むことを特徴とするラマン増幅用光源。
【請求項2】
前記複数のインコヒーレント光源および前記複数の励起光源は、前記2次励起光が前記インコヒーレント光を前方励起するように前記ラマン増幅用光ファイバに接続されていることを特徴とする請求項1に記載のラマン増幅用光源。
【請求項3】
前記複数のインコヒーレント光源および前記複数の励起光源は、前記2次励起光が前記インコヒーレント光を後方励起するように前記ラマン増幅用光ファイバに接続されていることを特徴とする請求項1に記載のラマン増幅用光源。
【請求項4】
光伝送ファイバを伝送する信号光を該光伝送ファイバでラマン増幅するためのラマン増幅用光源であって、
インコヒーレント光を出力する複数のインコヒーレント光源と、
前記インコヒーレント光をラマン増幅する波長を有する2次励起光を出力する複数の励起光源と、
前記複数のインコヒーレント光源、前記複数の励起光源および前記光伝送ファイバに接続されており、入力された前記インコヒーレント光および前記2次励起光を、前記光伝送ファイバを同一方向に伝搬するように出力する出力部と、
を備え、
前記複数の励起光源は、ファブリぺロー(FP)型、FP型と光ファイバブラッググレーティング(FBG)とを組み合わせたFP-FBG型、DFB型、およびDBR型の半導体レーザの少なくとも一つを含み、
前記光伝送ファイバにおいて、入力された前記インコヒーレント光が入力された前記2次励起光によりラマン増幅され、前記信号光をラマン増幅する波長を有しかつ前記信号光を前方励起する方向に前記光伝送ファイバを伝搬する1次励起光が生成されることを特徴とするラマン増幅用光源。
【請求項5】
前記複数の励起光源のうちの少なくとも1つが出力する2次励起光をラマン増幅する波長を有する励起光を出力する励起光源を備えることを特徴とする請求項4に記載のラマン増幅用光源。
【請求項6】
前記複数のインコヒーレント光源は、SLD(Super Luminescent Diode)、SOA(Semiconductor Optical Amplifier)および希土類添加光ファイバを備えたASE(Amplified Spontaneous Emission)光源の少なくとも一つを含むことを特徴とする請求項1~5のいずれか一つに記載のラマン増幅用光源。
【請求項7】
前記複数のインコヒーレント光源は、SLDおよびSOAを有し、SLDから出力されるインコヒーレント光をSOAで光増幅して出力するように構成されたインコヒーレント光源を含むことを特徴とする請求項1~6のいずれか一つに記載のラマン増幅用光源。
【請求項8】
前記複数のインコヒーレント光源は、SOAが多段接続されて構成されたインコヒーレント光源を含むことを特徴とする請求項1~7のいずれか一つに記載のラマン増幅用光源。
【請求項9】
前記複数のインコヒーレント光源は、互いに異なる波長帯域のインコヒーレント光を出力するインコヒーレント光源を含むことを特徴とする請求項1~
8のいずれか一つに記載のラマン増幅用光源。
【請求項10】
請求項4に記載のラマン増幅用光源を2つ備え、前記各ラマン増幅用光源の出力部が、前記1次励起光が前記信号光を双方向励起するように前記光伝送ファイバに接続されていることを特徴とするラマン増幅用光源システム。
【請求項11】
光伝送ファイバを伝送する信号光を該光伝送ファイバでラマン増幅するためのラマン増幅用光源システムであって、
インコヒーレント光を出力する第1の複数のインコヒーレント光源と、前記第1の複数のインコヒーレント光源および前記光伝送ファイバに接続されており、前記インコヒーレント光を前記光伝送ファイバに出力する第1の出力部と、を備える第1の光源部と、
前記インコヒーレント光をラマン増幅する波長を有する2次励起光を出力する第1の複数の励起光源と、前記第1の複数の励起光源および前記光伝送ファイバに接続されており、前記2次励起光を前記光伝送ファイバに出力する第2の出力部と、を備える第2の光源部と、
を備え、
前記第1の複数の励起光源は、互いに波長が異なるファブリぺロー(FP)型、FP型と光ファイバブラッググレーティング(FBG)とを組み合わせたFP-FBG型、DFB型、およびDBR型の半導体レーザの少なくとも一つを含み、
前記第1の出力部と前記第2の出力部とは、前記インコヒーレント光と前記2次励起光とが、前記第1の出力部と前記第2の出力部との間で前記光伝送ファイバを反対方向に伝搬するように前記光伝送ファイバに接続されており、
前記第1の出力部と前記第2の出力部との間の前記光伝送ファイバにおいて、入力された前記インコヒーレント光が入力された前記2次励起光によりラマン増幅され、前記信号光をラマン増幅する波長を有しかつ前記信号光を前方励起する方向に前記光伝送ファイバを伝搬する1次励起光が生成されることを特徴とするラマン増幅用光源システム。
【請求項12】
前記第2の光源部は、前記2次励起光によりラマン増幅される波長を有する第2のインコヒーレント光を出力する第2の複数のインコヒーレント光源を備え、
前記第1の光源部は、前記第2のインコヒーレント光をラマン増幅する波長を有する第2の2次励起光を出力する第2の複数の励起光源を備え、
前記第2の複数の励起光源は、互いに波長が異なるファブリぺロー(FP)型、FP型と光ファイバブラッググレーティング(FBG)とを組み合わせたFP-FBG型、DFB型、およびDBR型の半導体レーザの少なくとも一つを含み、
前記第2の光源部の第2の出力部は、前記第2の複数のインコヒーレント光源に接続されており、前記第2のインコヒーレント光を前記光伝送ファイバに出力し、
前記第1の光源部の第1の出力部は、前記第2の複数の励起光源に接続されており、前記第2の2次励起光を前記光伝送ファイバに出力し、
前記第1の出力部と前記第2の出力部とは、前記第2のインコヒーレント光と前記第2の2次励起光とが、前記第1の出力部と前記第2の出力部との間で前記光伝送ファイバを反対方向に伝搬するように前記光伝送ファイバに接続されており、
前記第1の出力部と前記第2の出力部との間の前記光伝送ファイバにおいて、入力された前記第2のインコヒーレント光が入力された前記第2の2次励起光によりラマン増幅され、前記信号光をラマン増幅する波長を有する第2の1次励起光が生成されることを特徴とする請求項
11に記載のラマン増幅用光源システム。
【請求項13】
前記複数のインコヒーレント光源は、SLD(Super Luminescent Diode)、SOA(Semiconductor Optical Amplifier)および希土類添加光ファイバを備えたASE(Amplified Spontaneous Emission)光源の少なくとも一つを含むことを特徴とする請求項
10~
12のいずれか一つに記載のラマン増幅用光源システム。
【請求項14】
前記複数のインコヒーレント光源は、SLDおよびSOAを含み、SLDから出力されるインコヒーレント光をSOAで光増幅して出力するように構成されたインコヒーレント光源を含むことを特徴とする請求項
10~
13のいずれか一つに記載のラマン増幅用光源システム。
【請求項15】
前記複数のインコヒーレント光源は、SOAが多段接続されて構成されたインコヒーレント光源を含むことを特徴とする請求項
10~
14のいずれか一つに記載のラマン増幅用光源システム。
【請求項16】
前記複数のインコヒーレント光源は、互いに異なる波長帯域のインコヒーレント光を出力するインコヒーレント光源を含むことを特徴とする請求項
10~
15のいずれか一つに記載のラマン増幅用光源システム。
【請求項17】
請求項1~
9のいずれか一つに記載のラマン増幅用光源または請求項
10~
16のいずれか一つに記載のラマン増幅用光源システムと、
前記光伝送ファイバと、
を備えることを特徴とするラマン増幅器。
【請求項18】
請求項1~
9のいずれか一つに記載のラマン増幅用光源または請求項
10~
16のいずれか一つに記載のラマン増幅用光源システムと、
前記光伝送ファイバと、
を備えることを特徴とするラマン増幅システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラマン増幅用光源、ラマン増幅用光源システム、ラマン増幅器、ラマン増幅システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
これまで光ファイバ通信において、エルビウム添加ファイバ増幅器(EDFA)を用いて、伝送距離、伝送容量の拡大が成されてきた。しかし現在では、EDFAだけでなくラマン増幅を活用し、両者を有効に組み合せることが必要不可欠な技術となっている。現在、ラマン増幅として主に用いられているのは、ラマン増幅用の光ファイバに対して、信号光の伝搬方向と反対の方向に伝搬するように励起光を入射する後方励起ラマン増幅である。しかし、次世代に向けた更なる高速化(100Gb/s)、長距離化(100km伝送)、広帯域化(L、S-bandの活用)のためには、前方励起ラマン増幅と呼ばれる、ラマン増幅用の光ファイバに対して信号光の伝搬方向と同一方向に伝搬するように励起光を入射する方式を後方励起ラマン増幅と同時に用いることが鍵となっている。この方式は、双方向励起ラマン増幅と呼ばれる。なお、波長多重励起方式を用いることにより後方励起ラマン増幅のみでもラマン利得の平坦化、広帯域化は達成できるが、双方向励起ラマン増幅を利用しないと雑音指数(NF)の平坦化が達成できないことが報告されている(非特許文献1、2)。
【0003】
ここで、これまでEDFA用励起光源として広く用いられてきた14XXnm帯半導体レーザモジュール(LDM)とは別に、なぜ新たにインコヒーレントな前方励起ラマン増幅用励起光源が必要であるかを述べる。ラマン増幅、特には前方励起ラマン増幅で必要とされる主な特性を下記に挙げる。
(1)低RINトランスファー(Relative Intensity Noise :相対強度雑音)
(2)低SBS(Stimulated Brillouin Scattering :誘導ブリルアン散乱)
(3)低非線形効果
これに加えて、現在の広帯域な波長多重伝送(DWDM伝送)に対応するために、
(4)広帯域な波長域で増幅利得を制御して光増幅
を行える必要がある。
【0004】
RINとは、レーザ光の微小な強度変動成分を全光出力で規格化した指標である。ラマン増幅という現象は、利得を生み出す励起準位の寿命が短い(≒数fsec)ため、励起光源に強度雑音があるとそのまま増幅過程を通じて信号光の雑音となってしまう。EDFAでは励起準位の寿命が長い(≒10msec)ためこのようなおそれはなかった。ラマン増幅は、単位長さ当たりの利得がEDFAに比べて非常に小さいが、前方励起ラマン増幅では、信号光と励起光とが長距離にわたって光ファイバ中を一緒に伝播することにより、徐々に励起光の雑音が信号光の雑音として乗り移る。これをRINトランスファーと呼ぶ。後方励起ラマン増幅では、信号光と励起光が対向しているので、ある雑音成分を持った励起光と信号光が交差する時間が短く、励起光の雑音が信号光に与える影響は少ない。また、励起光の雑音はランダムであるため、信号光が影響を受けたとしても対向して進むうちに平均化される。以上のことから分かるように、前方励起ラマン増幅では、RINトランスファーが低いという特性が要求され、特に信号光と励起光の群速度差が小さく、平行して光ファイバ内を伝送する時間が長くなる分散シフトファイバ(DSF)などでは、このRINトランスファーの低減は重要である。
【0005】
SBSは、3次の非線形光学効果の1つであり、光によって光ファイバ中に励起された音響フォノンによって光の一部が後方に散乱される現象である。励起光についてはSBSが起こると励起光が後方に散乱され、有効にラマン増幅に寄与しなくなるので好ましくない。一般的に全光出力強度が同じであれば、シングルモード発振、狭線幅なレーザ光を出力する励起光源はSBSを容易に発生するので、発振縦モードの数を増やして縦モード1本当たりの光出力を減らした励起光源の方が、ラマン利得を減らさずにSBSを抑制することができる。発振縦モードが連続的でブロードなスペクトル幅を持った光源なら尚更有効にSBSを抑制できる。
【0006】
非線形効果は信号光の歪を引き起こし、通信品質劣化に繋がるので避けなければならない。現在の光通信は波長多重通信が一般的であり、1つの波長の信号光のパワーが小さくても、多重化することで全体のパワーは大きくなる。例えば各波長の信号光のパワーが1mWでも100波多重化を行うと全体のパワーは100mWとなる。信号光に対して光増幅を行って伝送路の損失を補償する時に、EDFAのような集中定数型の増幅器で一度にある位置で信号光を増幅すると、その増幅された信号光のパワーが伝送路に一度に導入されるので非線形効果が引き起こされやすい。これを避けるには、ラマン増幅の様な分布定数型増幅器で徐々に増幅するのが有利である。しかし、前方励起ラマン増幅では、伝送路の入射側で、ラマン増幅利得が、伝送路である光ファイバの伝送損失を上回り、この部分では光ファイバ中の信号光のパワーが信号光の入射端におけるパワーよりも大きくなり、非線形効果が引き起こされやすくなる。これを避けるため、ラマン励起光をカスケード的に信号光の励起光として使える波長までラマン増幅を繰り返す高次ラマン増幅が検討されている。たとえば、1550nm帯の信号光をラマン増幅するためには1450nm程度の波長の励起光が用いられるが、このとき1350nm程度の波長の励起光で1450nmの励起光をラマン増幅し、そのラマン増幅された1450nmの励起光が1550nm帯の信号光をラマン増幅するという原理のものである。このようにすることで、伝送路の入射端では信号光をラマン増幅する1450nmの励起光はパワーが小さいため、1550nm帯の信号光のラマン利得が小さく、信号光が伝送するにしたがって1450nmの励起光が1350nmの励起光により増幅されて1550nm帯の信号光に対するラマン利得が大きくなる。これにより、伝送路全体としてみると伝送路の損失とラマン利得が上手くキャンセルしてあたかも光ファイバの伝送損失が0であるかのような伝送路と見做すことが可能になり、非線形効果をさらに低減可能であるとされている。この時、1450nmの励起光は1次励起光と呼ばれ、1350nmの励起光は2次励起光と呼ばれ、このシステムは2次励起システムと呼ばれる。同様の原理で3次、4次と言った高次のラマン励起システムが検討されているが、このような高次ラマン励起システムであっても、低RINトランスファー、低SBSは高品質な伝送には必須である。
【0007】
従来、上記の4つの課題を解決するために、様々な技術が開示されている(非特許文献3、4、特許文献1~4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特許第3676167号公報
【文献】米国特許第07190861号明細書
【文献】米国特許第07215836号明細書
【文献】米国特許第07233431号明細書
【非特許文献】
【0009】
【文献】S.Kado, Y.Emori, S.Namiki, N.Tsukiji, J.Yoshida, and T.Kimura: ECOC'01(2001), PD Paper 1.8.
【文献】江森,門,並木:“双方向励起方式によるラマンアンプの雑音指数スペクトル設計”古河電工時報,第111号(2003),第10頁
【文献】前方励起ラマン増幅用励起光源の開発,古河電工時報,2003年7月,No.112,第5-10頁
【文献】Kafing Keita, Philippe Delaye, Robert Fray and Gerald Roosen,"Relative intensity noise transfer of large-bandwidth pump lasers in Raman fiber," Journal of Optical Society America B, Vol.23, No.12, pp.2479-2485, December 2006.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、前記した4つの課題を同時に解決可能なラマン増幅用光源、ラマン増幅用光源システム、ラマン増幅器およびラマン増幅システムは未だ実用に至る程の特性に達していない。
【0011】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、4つの課題を同時に解決可能なラマン増幅用光源、ラマン増幅用光源システム、ラマン増幅器およびラマン増幅システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の一態様に係るラマン増幅用光源は、光伝送ファイバを伝送する信号光を該光伝送ファイバ中の誘導ラマン散乱現象によりラマン増幅するためのラマン増幅用光源であって、インコヒーレント光を出力する複数のインコヒーレント光源と、前記インコヒーレント光をラマン増幅する波長を有する2次励起光を出力する複数の励起光源と、前記複数のインコヒーレント光源および前記複数の励起光源に接続されており、入力された前記インコヒーレント光を入力された前記2次励起光によりラマン増幅して出力するラマン増幅用光ファイバと、前記光伝送ファイバに接続されており、前記ラマン増幅用光ファイバによりラマン増幅されたインコヒーレント増幅光が入力され、前記インコヒーレント増幅光を、前記信号光をラマン増幅する波長を有する1次励起光として前記光伝送ファイバに出力する出力部と、を備えることを特徴とする。
【0013】
本発明の一態様に係るラマン増幅用光源は、前記複数のインコヒーレント光源および前記複数の励起光源は、前記2次励起光が前記インコヒーレント光を前方励起するように前記ラマン増幅用光ファイバに接続されていることを特徴とする。
【0014】
本発明の一態様に係るラマン増幅用光源は、前記複数のインコヒーレント光源および前記複数の励起光源は、前記2次励起光が前記インコヒーレント光を後方励起するように前記ラマン増幅用光ファイバに接続されていることを特徴とする。
【0015】
本発明の一態様に係るラマン増幅用光源は、前記出力部は、前記1次励起光が前記信号光を前方励起するように前記光伝送ファイバに接続されていることを特徴とする。
【0016】
本発明の一態様に係るラマン増幅用光源は、前記出力部は、前記1次励起光が前記信号光を後方励起するように前記光伝送ファイバに接続されていることを特徴とする。
【0017】
本発明の一態様に係るラマン増幅用光源は、光伝送ファイバを伝送する信号光を該光伝送ファイバでラマン増幅するためのラマン増幅用光源であって、インコヒーレント光を出力する複数のインコヒーレント光源と、前記インコヒーレント光をラマン増幅する波長を有する2次励起光を出力する複数の励起光源と、前記複数のインコヒーレント光源、前記複数の励起光源および前記光伝送ファイバに接続されており、入力された前記インコヒーレント光および前記2次励起光を、前記光伝送ファイバを同一方向に伝搬するように出力する出力部と、を備え、前記光伝送ファイバにおいて、入力された前記インコヒーレント光が入力された前記2次励起光によりラマン増幅され、前記信号光をラマン増幅する波長を有する1次励起光が生成されることを特徴とする。
【0018】
本発明の一態様に係るラマン増幅用光源は、前記複数の励起光源のうちの少なくとも1つが出力する2次励起光をラマン増幅する波長を有する励起光を出力する励起光源を備えることを特徴とする。
【0019】
本発明の一態様に係るラマン増幅用光源は、前記複数のインコヒーレント光源は、SLD(Super Luminescent Diode)、SOA(Semiconductor Optical Amplifier)および希土類添加光ファイバを備えたASE(Amplified Spontaneous Emission)光源の少なくとも一つを含むことを特徴とする。
【0020】
本発明の一態様に係るラマン増幅用光源は、前記複数のインコヒーレント光源は、SLDおよびSOAを有し、SLDから出力されるインコヒーレント光をSOAで光増幅して出力するように構成されたインコヒーレント光源を含むことを特徴とする。
【0021】
本発明の一態様に係るラマン増幅用光源は、前記複数のインコヒーレント光源は、SOAが多段接続されて構成されたインコヒーレント光源を含むことを特徴とする。
【0022】
本発明の一態様に係るラマン増幅用光源は、前記複数の励起光源は、ファブリぺロー(FP)型、FP型と光ファイバブラッググレーティング(FBG)とを組み合わせたFP-FBG型、DFB型、およびDBR型の半導体レーザの少なくとも一つを含むことを特徴とする。
【0023】
本発明の一態様に係るラマン増幅用光源は、前記複数のインコヒーレント光源は、互いに異なる波長帯域のインコヒーレント光を出力するインコヒーレント光源を含むことを特徴とする。
【0024】
本発明の一態様に係るラマン増幅用光源システムは、本発明の一態様に係るラマン増幅用光源と、本発明の一態様に係るラマン増幅用光源とを備え、前記各ラマン増幅用光源の出力部が、前記1次励起光が前記信号光を双方向励起するように前記光伝送ファイバに接続されていることを特徴とする。
【0025】
本発明の一態様に係るラマン増幅用光源システムは、本発明の一態様に係るラマン増幅用光源を2つ備え、前記各ラマン増幅用光源の出力部が、前記1次励起光が前記信号光を双方向励起するように前記光伝送ファイバに接続されていることを特徴とする。
【0026】
本発明の一態様に係るラマン増幅用光源システムは、光伝送ファイバを伝送する信号光を該光伝送ファイバでラマン増幅するためのラマン増幅用光源システムであって、インコヒーレント光を出力する第1の複数のインコヒーレント光源と、前記第1の複数のインコヒーレント光源および前記光伝送ファイバに接続されており、前記インコヒーレント光を前記光伝送ファイバに出力する第1の出力部と、を備える第1の光源部と、前記インコヒーレント光をラマン増幅する波長を有する2次励起光を出力する第1の複数の励起光源と、前記第1の複数の励起光源および前記光伝送ファイバに接続されており、前記2次励起光を前記光伝送ファイバに出力する第2の出力部と、を備える第2の光源部と、を備え、前記第1の出力部と前記第2の出力部とは、前記インコヒーレント光と前記2次励起光とが、前記第1の出力部と前記第2の出力部との間で前記光伝送ファイバを反対方向に伝搬するように前記光伝送ファイバに接続されており、前記第1の出力部と前記第2の出力部との間の前記光伝送ファイバにおいて、入力された前記インコヒーレント光が入力された前記2次励起光によりラマン増幅され、前記信号光をラマン増幅する波長を有する1次励起光が生成されることを特徴とする。
【0027】
本発明の一態様に係るラマン増幅用光源システムは、前記第2の光源部は、前記2次励起光によりラマン増幅される波長を有する第2のインコヒーレント光を出力する第2の複数のインコヒーレント光源を備え、前記第1の光源部は、前記第2のインコヒーレント光をラマン増幅する波長を有する第2の2次励起光を出力する第2の複数の励起光源を備え、前記第2の光源部の第2の出力部は、前記第2の複数のインコヒーレント光源に接続されており、前記第2のインコヒーレント光を前記光伝送ファイバに出力し、前記第1の光源部の第1の出力部は、前記第2の複数の励起光源に接続されており、前記第2の2次励起光を前記光伝送ファイバに出力し、前記第1の出力部と前記第2の出力部とは、前記第2のインコヒーレント光と前記第2の2次励起光とが、前記第1の出力部と前記第2の出力部との間で前記光伝送ファイバを反対方向に伝搬するように前記光伝送ファイバに接続されており、前記第1の出力部と前記第2の出力部との間の前記光伝送ファイバにおいて、入力された前記第2のインコヒーレント光が入力された前記第2の2次励起光によりラマン増幅され、前記信号光をラマン増幅する波長を有する第2の1次励起光が生成されることを特徴とする。
【0028】
本発明の一態様に係るラマン増幅用光源システムは、前記複数のインコヒーレント光源は、SLD(Super Luminescent Diode)、SOA(Semiconductor Optical Amplifier)および希土類添加光ファイバを備えたASE(Amplified Spontaneous Emission)光源の少なくとも一つを含むことを特徴とする。
【0029】
本発明の一態様に係るラマン増幅用光源システムは、前記複数のインコヒーレント光源は、SLDおよびSOAを含み、SLDから出力されるインコヒーレント光をSOAで光増幅して出力するように構成されたインコヒーレント光源を含むことを特徴とする。
【0030】
本発明の一態様に係るラマン増幅用光源システムは、前記複数のインコヒーレント光源は、SOAが多段接続されて構成されたインコヒーレント光源を含むことを特徴とする。
【0031】
本発明の一態様に係るラマン増幅用光源システムは、前記複数の励起光源は、互いに波長が異なるファブリぺロー(FP)型、FP型と光ファイバブラッググレーティング(FBG)とを組み合わせたFP-FBG型、DFB型、およびDBR型の半導体レーザの少なくとも一つを含むことを特徴とする。
【0032】
本発明の一態様に係るラマン増幅用光源システムは、前記複数のインコヒーレント光源は、互いに異なる波長帯域のインコヒーレント光を出力するインコヒーレント光源を含むことを特徴とする。
【0033】
本発明の一態様に係るラマン増幅器は、本発明の一態様に係るラマン増幅用光源またはラマン増幅用光源システムと、前記光伝送ファイバと、を備えることを特徴とする。
【0034】
本発明の一態様に係るラマン増幅システムは、本発明の一態様に係るラマン増幅用光源またはラマン増幅用光源システムと、前記光伝送ファイバと、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0035】
本発明によれば、4つの課題を同時に解決可能なラマン増幅用光源、ラマン増幅用光源システム、ラマン増幅器およびラマン増幅システムを実現できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】
図1は、実施の形態1に係るラマン増幅用光源を用いたラマン増幅システムの模式的な構成図である。
【
図2】
図2は、WDMカプラの構成の一例を示す図である。
【
図3】
図3は、WDMカプラの構成の別の一例を示す図である。
【
図4】
図4は、インコヒーレント光および2次励起光の波長の配置の一例を示す図である。
【
図5】
図5は、実施の形態2に係るラマン増幅用光源を用いたラマン増幅システムの模式的な構成図である。
【
図6】
図6は、実施の形態3に係るラマン増幅用光源を用いたラマン増幅システムの模式的な構成図である。
【
図7】
図7は、実施の形態4に係るラマン増幅用光源を用いたラマン増幅システムの模式的な構成図である。
【
図8】
図8は、実施の形態5に係るラマン増幅用光源を用いたラマン増幅システムの模式的な構成図である。
【
図9】
図9は、実施の形態6に係るラマン増幅用光源を用いたラマン増幅システムの模式的な構成図である。
【
図10】
図10は、実施の形態7に係るラマン増幅用光源システムを用いたラマン増幅システムの模式的な構成図である。
【
図11】
図11は、実施の形態8に係るラマン増幅用光源システムを用いたラマン増幅システムの模式的な構成図である。
【
図12】
図12は、実施の形態9に係るラマン増幅用光源システムを用いたラマン増幅システムの模式的な構成図である。
【
図13】
図13は、実施の形態10に係るラマン増幅用光源システムを用いたラマン増幅システムの模式的な構成図である。
【
図14】
図14は、インコヒーレント光源の構成の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下に、図面を参照して本発明に係るラマン増幅用光源、ラマン増幅用光源システム、ラマン増幅器およびラマン増幅システムの実施の形態を詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。また、各図面において、同一または対応する要素には適宜同一の符号を付している。
【0038】
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1に係るラマン増幅用光源を用いたラマン増幅システムの模式的な構成図である。
図1に示すように、ラマン増幅システム100は、1.55μm帯のWDM信号光である信号光S1を送信する送信器1001と、信号光S1を伝送する伝送路である光伝送ファイバ1002と、信号光S1を受信する受信器1003と、を備える光伝送システム1000に適用されている。ラマン増幅システム100は、ラマン増幅用光源10と光伝送ファイバ1002とで構成されている。なお、本実施の形態1に係るラマン増幅システム100および以下に示す各実施形態に係るラマン増幅システムは、ラマン増幅器としても構成されている。
【0039】
ラマン増幅用光源10は、複数のインコヒーレント光源11と、複数の励起光源12と、WDMカプラ13と、ラマン増幅用光ファイバ14と、出力部としてのWDMカプラ15と、を備えている。
【0040】
複数のインコヒーレント光源11は、それぞれ互いに異なる波長を有するインコヒーレント光ILを出力する。なお、インコヒーレント光とは、単一または複数の離散的なモード(縦モード)で発振するレーザ光源ではなく、連続的なスペクトルを持った無相関な光子の集合からなる光を意味する。複数のインコヒーレント光源11は、SLD(Super Luminescent Diode)、SOA(Semiconductor Optical Amplifier)および希土類添加光ファイバ(たとえばEDF)を備えたASE(Amplified Spontaneous Emission)光源の少なくとも一つを含むが、本実施の形態1では、全てがSLDであるとする。
【0041】
複数の励起光源12は、それぞれ、互いに異なる波長であり、かつインコヒーレント光ILをラマン増幅する波長を有する2次励起光SPLを出力する。複数の励起光源12は、互いに波長が異なるファブリぺロー(FP)型、FP型と光ファイバブラッググレーティング(FBG)とを組み合わせたFP-FBG型、DFB型、およびDBR型の半導体レーザの少なくとも一つを含むが、本実施の形態1では、全てがFP型半導体レーザであるとする。
【0042】
WDMカプラ13は、各インコヒーレント光ILと各2次励起光SPLとを合波して出力する。
図2は、WDMカプラ13の構成の一例を示す図である。WDMカプラ13は、誘電体多層膜フィルタからなる複数のWDMカプラ13aと、誘電体多層膜フィルタからなる複数のWDMカプラ13bとが光ファイバにより直列に接続された構成を有する。各WDMカプラ13aは、光ファイバにより各インコヒーレント光源11に接続されており、接続されたインコヒーレント光源11から出力されるインコヒーレント光ILを反射し、その他の波長の光を透過する波長特性を有する。同様に、各WDMカプラ13bは、光ファイバにより各励起光源12に接続されており、接続された励起光源12から出力される2次励起光SPLを反射し、その他の波長の光を透過する波長特性を有する。これにより、WDMカプラ13は、各インコヒーレント光ILと各2次励起光SPLとを合波して出力ポート13cから出力できる。
【0043】
図3は、WDMカプラの構成の別の一例であるWDMカプラ13´を示す図である。WDMカプラ13´は、平面光波回路(PLC)を用いたAWG(Arrayed Waveguide Gratings)13´aを備えている。AWG13´aの多ポート側の複数のポート13´aaのそれぞれは、各インコヒーレント光源11に接続されており、複数のポート13´abのそれぞれは、各励起光源12に接続されている。これにより、WDMカプラ13´は、各インコヒーレント光ILと各2次励起光SPLとを合波して出力ポート13´acから出力できる。
【0044】
図1に戻る。ラマン増幅用光ファイバ14は、WDMカプラ13を介して複数のインコヒーレント光源11および複数の励起光源12に接続されており、入力された各インコヒーレント光ILを入力された各2次励起光SPLによりラマン増幅し、インコヒーレント増幅光として出力する。ラマン増幅用光ファイバ14は、高非線形性光ファイバなどの公知の光ファイバである。ここで、複数のインコヒーレント光源11および複数の励起光源12は、各2次励起光SPLが各インコヒーレント光ILを前方励起するように、WDMカプラ13を介してラマン増幅用光ファイバ14に接続されている。すなわち、ラマン増幅用光ファイバ14中において各2次励起光SPLと各インコヒーレント光ILとは伝搬方向が同一方向である。
【0045】
出力部としてのWDMカプラ15は、光伝送ファイバ1002に接続されており、インコヒーレント増幅光が入力され、これを、信号光S1をラマン増幅する波長を有する1次励起光FPLとして光伝送ファイバ1002に出力する。WDMカプラ15は誘電体多層膜フィルタなどを用いた公知のWDMカプラである。ここで、WDMカプラ15は、1次励起光FPLが信号光S1を前方励起するように光伝送ファイバ1002に接続されている。すなわち、WDMカプラ15は、1次励起光FPLの伝搬方向が信号光S1の伝搬方向と同一方向になるように光伝送ファイバ1002に接続されている。これにより、光伝送ファイバ1002を伝送する信号光S1は光伝送ファイバ1002中の誘導ラマン散乱現象によって、1次励起光FPLによりラマン増幅される。
【0046】
1次励起光としてインコヒーレント光を用いると、1次励起光から信号光へのRINトランスファーが低減できることは知られているが、インコヒーレント光源はその出力パワーが一般的に小さいため、そのままラマン増幅用の1次励起光源として使うことは困難である。
【0047】
これに対して、本発明者らは、FP型半導体レーザなどのコヒーレントな2次励起光によりラマン増幅したインコヒーレント光を1次励起光とした場合でも、信号光へのRINトランスファーが低減できることを見出した。そして、ラマン増幅システム100では、ラマン増幅用光源10において、FP型半導体レーザからなる複数の励起光源12を2次励起光SPLとしてラマン増幅用光ファイバ14によりラマン増幅したインコヒーレント光を1次励起光FPLとして信号光S1を光伝送ファイバ1002によりラマン増幅する構成としている。これにより、低RINトランスファーが実現される。
【0048】
また、インコヒーレント光ILは、FP型半導体レーザなどのコヒーレント光源と比較して発光の波長帯域が広く、発光の全体の強度に対してピーク強度が低い。そのため、これを増幅して1次励起光FPLとして使用することで低SBSを実現できる。さらに、インコヒーレント光ILの発光の波長帯域の広さにより、代表的な非線形効果である4光波混合はその位相整合条件を満たすことが困難となり、4光波混合の発生が抑制される。これにより、低非線形効果を実現できる。
【0049】
さらには、それぞれ互いに異なる波長を有するインコヒーレント光ILを出力する複数のインコヒーレント光源11と、それぞれ互いに異なる波長を有する2次励起光SPLを出力する複数の励起光源12を備えているため、広帯域な波長域で信号光の増幅利得を制御して光増幅することができる。
【0050】
このように、ラマン増幅用光源10により、前記した4つの課題を同時に解決することができる。
【0051】
なお、励起光源12およびインコヒーレント光源11の波長、数、帯域、パワーは、増幅すべき信号光S1の増幅帯域、所望の利得および利得平坦性によって適宜調整することが可能である。
【0052】
つぎに、インコヒーレント光と2次励起光との波長の配置とパワーの例について説明する。
図4は、インコヒーレント光および2次励起光の波長の配置の一例を示す図である。
図4に示す例では、インコヒーレント光源11(SLD)の数が2であり、励起光源12(励起FP-LD)の数が4であるとする。
図4に示すように、2次励起光SPLA、SPLB、SPLC、SPLDの波長をそれぞれ1350nm、1370nm、1380nm、1400nmとし、パワーはいずれも250mWとする。また、インコヒーレント光ILA、ILBの波長をそれぞれ1450nm、1480nmし、3dB帯域幅をいずれも30nmとし、パワーをいずれも5mWとする。2次励起光SPLA、SPLB、SPLC、SPLDのそれぞれから約100nmだけラマンシフトした長波長側の位置に、各2次励起光によるラマンピークRPA、RPB、RPC、RPDをピーク位置としたラマン利得帯域が形成される。これにより、インコヒーレント光ILA、ILBがラマン増幅され、1次励起光FPLとなる。ここで、
図4に示す例では、インコヒーレント光ILA、ILBのピーク波長に対して長波長側の光強度が低い波長と短波長側の光強度が低い波長とにラマンピークRPA、RPB、RPC、RPDが位置するように2次励起光SPLA、SPLB、SPLC、SPLDの波長を設定しているので、インコヒーレント光ILA、ILBの光強度が低い波長の光に対して高いラマン利得を与えることができる。その結果、1次励起光FPLは波長に対してより平坦なスペクトル形状となる。
【0053】
たとえば、実施の形態1において、上記のように2次励起光SPLA、SPLB、SPLC、SPLD、インコヒーレント光ILA、ILBを設定した場合、高パワーであり、かつ1430nm~1500nm程度の広帯域なインコヒーレントラマン増幅光(1次励起光)が得られ、1530nmから1625nm程度までの、光通信で使用されるC+Lバンドの信号光をラマン増幅可能である。
【0054】
なお、複数のインコヒーレント光源11において、SLDとEDFによるASE光源、SOAとASE光源、SOAとSLDなど、互いに異なる波長帯域のインコヒーレント光を出力する別種のインコヒーレント光源を組み合わせることで、励起光波長帯域を広帯域化すれば、利得帯域の広帯域化が容易となる。例えば1480nm帯を中心とした数十nmの波長帯で動作するSOAをインコヒーレント光源として用いる場合、当該SOAをそれ以外の波長では動作させるのは困難である。そこで、当該SOAとSLDやASE光源とを併用すると、励起光波長帯域を1480nm帯だけでなく1300nm帯や1550nm帯まで拡大することが可能である。また、ASE光源として異なる希土類元素(ErまたはErとAl2O3やYbの共ドープ、PbSの半導体量子ドット)を添加した光ファイバを接続した光ファイバや、異なる希土類元素を共添加した光ファイバを用いたASE光源を利用することで、励起光波長帯域を広帯域化することができる。
【0055】
(実施の形態2)
図5は、実施の形態2に係るラマン増幅用光源を用いたラマン増幅システムの模式的な構成図である。ラマン増幅システム100Aは、ラマン増幅用光源10Aと光伝送ファイバ1002とで構成されている。
【0056】
ラマン増幅用光源10Aは、複数のインコヒーレント光源11と、複数の励起光源12と、WDMカプラ13Aa、13Abと、ラマン増幅用光ファイバ14と、WDMカプラ15と、を備えている。
【0057】
WDMカプラ13Aaは、各インコヒーレント光ILを合波して出力する。WDMカプラ13Abは、各2次励起光SPLを合波して出力する。WDMカプラ13Aa、13Abは、
図2、3に例示するような誘電体多層膜フィルタやAWGを用いて構成できる。
【0058】
ラマン増幅用光ファイバ14は、WDMカプラ13Aaを介して複数のインコヒーレント光源11に接続されており、WDMカプラ13Abを介して複数の励起光源12に接続されている。ラマン増幅用光ファイバ14は、入力された各インコヒーレント光ILを入力された各2次励起光SPLによりラマン増幅し、インコヒーレント増幅光として出力する。ここで、複数のインコヒーレント光源11および複数の励起光源12はそれぞれ、各2次励起光SPLが各インコヒーレント光ILを後方励起するように、WDMカプラ13Aa、13Abのそれぞれを介してラマン増幅用光ファイバ14に接続されている。すなわち、ラマン増幅用光ファイバ14中において各2次励起光SPLと各インコヒーレント光ILとは伝搬方向が反対方向である。
【0059】
WDMカプラ15は、光伝送ファイバ1002に接続されており、インコヒーレント増幅光が入力され、これを、信号光S1をラマン増幅する波長を有する1次励起光FPLとして光伝送ファイバ1002に出力する。ここで、WDMカプラ15は、1次励起光FPLが信号光S1を前方励起するように光伝送ファイバ1002に接続されている。これにより、信号光S1は光伝送ファイバ1002中で1次励起光FPLによりラマン増幅される。
【0060】
このラマン増幅用光源10Aによっても、ラマン増幅用光源10と同様に、前記した4つの課題を同時に解決することができる。さらに、このラマン増幅用光源10Aでは、ラマン増幅用光ファイバ14において、各2次励起光SPLは各インコヒーレント光ILを後方励起によりラマン増幅する。これにより、各2次励起光SPLは各インコヒーレント光ILのRINトランスファーがさらに低減されるので、信号光S1へのRINトランスファーもさらに低減される。
【0061】
(実施の形態3)
図6は、実施の形態3に係るラマン増幅用光源を用いたラマン増幅システムの模式的な構成図である。ラマン増幅システム100Bは、ラマン増幅用光源10Bと光伝送ファイバ1002とで構成されている。
【0062】
ラマン増幅用光源10Bは、ラマン増幅用光源10のWDMカプラ15をWDMカプラ15Bに置き換えた構成を有する。WDMカプラ15Bは、光伝送ファイバ1002に接続されており、インコヒーレント増幅光が入力され、これを、信号光S1をラマン増幅する波長を有する1次励起光FPLとして光伝送ファイバ1002に出力する。ここで、WDMカプラ15Bは、1次励起光FPLが信号光S1を後方励起するように光伝送ファイバ1002に接続されている。すなわち、WDMカプラ15Bは、1次励起光FPLの伝搬方向が信号光S1の伝搬方向と反対方向になるように光伝送ファイバ1002に接続されている。これにより、信号光S1は光伝送ファイバ1002中で1次励起光FPLによりラマン増幅される。
【0063】
このラマン増幅用光源10Bによっても、ラマン増幅用光源10と同様に、前記した4つの課題を同時に解決することができる。また、ラマン増幅用光源10Bの場合、ラマン増幅用光源10のような前方励起型の場合よりも、低非線形効果を更に抑制可能である。これは後方励起型のため、信号光S1が光伝送ファイバ1002の伝送損失を受け始めてパワーが小さくなり始めてから1次励起光FPLによるラマン増幅により増幅されるため、信号光S1のパワーが前方励起型より光伝送ファイバ1002内で小さく保てることと、1次励起光FPLと信号光S1とが逆方向に伝搬するので、非線形効果を起こす位相整合条件を満たすことが前方励起より困難であることによる。
【0064】
(実施の形態4)
図7は、実施の形態4に係るラマン増幅用光源を用いたラマン増幅システムの模式的な構成図である。ラマン増幅システム100Cは、ラマン増幅用光源10Cと光伝送ファイバ1002とで構成されている。
【0065】
ラマン増幅用光源10Cは、ラマン増幅用光源10AのWDMカプラ15をWDMカプラ15Cに置き換えた構成を有する。WDMカプラ15Cは、光伝送ファイバ1002に接続されており、インコヒーレント増幅光が入力され、これを、信号光S1をラマン増幅する波長を有する1次励起光FPLとして光伝送ファイバ1002に出力する。ここで、WDMカプラ15Cは、1次励起光FPLが信号光S1を後方励起するように光伝送ファイバ1002に接続されている。すなわち、WDMカプラ15Cは、1次励起光FPLの伝搬方向が信号光S1の伝搬方向と反対方向になるように光伝送ファイバ1002に接続されている。これにより、信号光S1は光伝送ファイバ1002中で1次励起光FPLによりラマン増幅される。
【0066】
このラマン増幅用光源10Cによっても、ラマン増幅用光源10と同様に、前記した4つの課題を同時に解決することができる。さらに、このラマン増幅用光源10Cでは、ラマン増幅用光源10Aと同様に、ラマン増幅用光ファイバ14において、各2次励起光SPLは各インコヒーレント光ILを後方励起によりラマン増幅する。これにより、各2次励起光SPLは各インコヒーレント光ILのRINトランスファーがさらに低減されるので、信号光S1へのRINトランスファーもさらに低減される。
【0067】
(実施の形態5)
図8は、実施の形態5に係るラマン増幅用光源を用いたラマン増幅システムの模式的な構成図である。ラマン増幅システム100Dは、ラマン増幅用光源システム10Dと光伝送ファイバ1002とで構成されている。
【0068】
ラマン増幅用光源システム10Dは、ラマン増幅用光源10と、ラマン増幅用光源10Bとを備えており、ラマン増幅用光源10、10BのWDMカプラ15、15Bが、WDMカプラ15、15Bのそれぞれから出力される1次励起光FPLが信号光S1を双方向励起するように光伝送ファイバ1002に接続されている。すなわち、ラマン増幅システム100Dは、ラマン増幅用光源システム10Dを用いた双方向励起システムである。
【0069】
このラマン増幅用光源システム10Dによっても、前記した4つの課題を同時に解決することができる。さらに、ラマン増幅用光源システム10Dによれば、双方向励起型であることにより、ラマン利得の波長平坦化、広帯域化、NFの波長平坦化も達成容易となる。
【0070】
なお、ラマン増幅用光源10Aと、ラマン増幅用光源10Cとでラマン増幅用光源システムを構成し、ラマン増幅用光源10A、10CのWDMカプラ15、15Cを、それぞれから出力される1次励起光FPLが信号光S1を双方向励起するように光伝送ファイバ1002に接続し、ラマン増幅システム100Dと同様の双方向励起ラマン増幅システムを構成してもよい。
【0071】
(実施の形態6)
図9は、実施の形態6に係るラマン増幅用光源を用いたラマン増幅システムの模式的な構成図である。ラマン増幅システム100Eは、ラマン増幅用光源10Eと光伝送ファイバ1002とで構成されている。
【0072】
ラマン増幅用光源10Eは、複数のインコヒーレント光源11と、複数の励起光源12と、出力部としてのWDMカプラ13とを備えている。
【0073】
WDMカプラ13は、複数のインコヒーレント光源11、複数の励起光源12および光伝送ファイバ1002に接続されており、各インコヒーレント光源11から入力された各インコヒーレント光ILおよび各励起光源12から入力された各2次励起光SPLを、光伝送ファイバ1002を同一方向に伝搬するように出力する。さらに、WDMカプラ13は、各インコヒーレント光ILおよび各2次励起光SPLが光伝送ファイバ1002中で信号光S1と同一方向に伝搬するように光伝送ファイバ1002に接続されている。このような構成は、
図2に示すWDMカプラ13を、入力ポート13dから信号光S1が入力され、出力ポート13cから出力されるように光伝送ファイバ1002に接続することにより実現できる。また、
図3に示すWDMカプラ13´を使用する場合には、信号光合波用のポート13´adを設け、ポート13´adから信号光S1が入力され、出力ポート13´acから信号光S1と各インコヒーレント光ILと各2次励起光SPLとが合波されて出力されるように光伝送ファイバ1002に接続すればよい。
【0074】
このラマン増幅システム100Eでは、光伝送ファイバ1002において、各インコヒーレント光ILが各2次励起光SPLにより徐々にラマン増幅され、信号光S1をラマン増幅する波長を有する1次励起光FPLが生成される。1次励起光FPLは、信号光S1と同一方向に伝搬し、信号光S1をラマン増幅する。すなわち、ラマン増幅システム100Eは、前方励起型かつ2次励起型のラマン増幅システムである。
【0075】
このラマン増幅用光源10Eによっても、前記した4つの課題を同時に解決することができる。さらに、このラマン増幅用光源10Eによれば、WDMカプラ13の近傍の光伝送ファイバ1002では信号光S1をラマン増幅する1次励起光FPLはパワーが小さいため、信号光S1のラマン利得が小さいが、信号光S1が光伝送ファイバ1002を伝送するにしたがってインコヒーレント光ILが2次励起光SPLにより増幅されて1次励起光FPLのパワーが大きくなり、信号光S1に対するラマン利得が大きくなる。これにより、光伝送ファイバ1002全体としてみると伝送損失とラマン利得が上手くキャンセルしてあたかも光ファイバの伝送損失が0、または光伝送ファイバ1002の長手方向での信号光S1のパワーの変動が小さい伝送路と見做すことが可能になり、非線形効果をさらに低減可能である。
【0076】
なお、ラマン増幅システム100Eの構成で、
図4に例示するように、2次励起光SPLA、SPLB、SPLC、SPLDの波長をそれぞれ1350nm、1370nm、1380nm、1400nmとし、パワーはいずれも250mWとし、インコヒーレント光ILA、ILBの波長をそれぞれ1450nm、1480nmし、3dB帯域幅をいずれも30nmとし、パワーをいずれも5mWとして、ラマン増幅の実験を行った。信号光S1は4つの信号光からなるWDM信号光とし、その波長は1530nm、1560nm、1590nm、1620nmとした。また、光伝送ファイバ1002の長さを50kmとした。その結果、各信号光の波長で約10dBのラマン利得が得られた。また、4つの信号光の波長における最大のラマン利得と最小のラマン利得との差は1dB以下であった。
【0077】
また、ラマン増幅用光源10Eによれば、ラマン増幅システム100Eは、2次励起光SPLの波長の設定により、2次励起システムとしてだけでなく、3次励起システムまたはそれ以上の高次の励起システムとしても動作可能である。例えば、2次励起光SPLの波長として(a)1380nm±20nmを用い、インコヒーレント光源11として(b)1480nm±20nmのSLDを用いると、(b)が(a)によってラマン増幅され、その増幅された(b)が1590nm±20nm前後の波長域の信号光S1をラマン増幅する2次励起ラマン増幅システムとして動作する。
【0078】
また、例えば2次励起光SPLの波長として(a)1290nm±20nmおよび(a´)1380nm±20nmを用い、インコヒーレント光源11として(b)1480nm±20nmのSLDを用いると、(a´)が(a)によってラマン増幅され、その増幅された(a´)及び(a´)が(b)をラマン増幅し、そのラマン増幅された(b)が1590nm±20nm前後の波長域の信号光S1をラマン増幅する3次励起ラマン増幅システムとして動作する。この場合、ラマン増幅用光源10Eは、複数の励起光源12のうちの少なくとも1つが出力する2次励起光SPLをラマン増幅する波長を有する励起光を出力する励起光源を備える。この時、(a)、(a´)、(b)のパワーを調整すると、前記4つの課題を同時に達成可能で且つ、ラマン利得の平坦化、広帯域化、NFの平坦化も達成容易となる。
【0079】
(実施の形態7)
図10は、実施の形態7に係るラマン増幅用光源システムを用いたラマン増幅システムの模式的な構成図である。ラマン増幅システム100Fは、ラマン増幅用光源システム10Fと光伝送ファイバ1002とで構成されている。
【0080】
ラマン増幅用光源システム10Fは、ラマン増幅用光源10Eと、ラマン増幅用光源10EAとを備えている。ラマン増幅用光源10EAは、ラマン増幅用光源10Eにおいて、WDMカプラ13を、出力ポート13cから信号光S1が入力され、入力ポート13dから出力されるように光伝送ファイバ1002に接続した構成を有する。光伝送ファイバ1002において、ラマン増幅用光源10EAから入力された各インコヒーレント光ILが各2次励起光SPLにより徐々にラマン増幅され、信号光S1をラマン増幅する波長を有する1次励起光FPLが生成される。1次励起光FPLは、信号光S1と反対方向に伝搬し、信号光S1をラマン増幅する。一方、ラマン増幅用光源10Eにより生成された1次励起光FPLは、信号光S1と同一方向に伝搬し、信号光S1をラマン増幅する。
【0081】
このように、各ラマン増幅用光源10E、10EAのWDMカプラ13は、1次励起光FPLが信号光S1を双方向励起するように光伝送ファイバ1002に接続されており、ラマン増幅システム100Fは、ラマン増幅用光源システム10Fを用いた双方向励起型かつ2次励起型のラマン増幅システムとなっている。
【0082】
このラマン増幅用光源システム10Fによっても、前記した4つの課題を同時に解決することができるとともに、ラマン増幅用光源10Eの場合と同様に、非線形効果をさらに低減可能であり、さらには、双方向励起型であるので、光伝送ファイバ1002の長手方向における信号光S1のパワーの分布の設計の自由度を高くできる。たとえば、ラマン増幅用光源10E、10EAのそれぞれにおける各励起光源12およびインコヒーレント光源11の波長、数、帯域、パワーにより、増幅すべき信号光S1の増幅帯域、所望の利得および利得平坦性に加え、長手方向における信号光S1のパワーの分布を調整できる。さらに、ラマン増幅用光源システム10Fによれば、ラマン増幅システム100Fは、ラマン増幅システム100Eと同様に、2次励起システムとしてだけでなく、3次励起システムまたはそれ以上の高次の励起システムとしても動作可能である。
【0083】
(実施の形態8)
図11は、実施の形態8に係るラマン増幅用光源システムを用いたラマン増幅システムの模式的な構成図である。ラマン増幅システム100Hは、ラマン増幅用光源システム10Hと光伝送ファイバ1002とで構成されている。
【0084】
ラマン増幅用光源システム10Hは、第1の光源部10HAと第2の光源部10HBとを備えている。第1の光源部10HAは、インコヒーレント光ILを出力する第1の複数のインコヒーレント光源11Aと、第1の複数のインコヒーレント光源11Aおよび光伝送ファイバ1002に接続されており、インコヒーレント光ILを光伝送ファイバ1002に出力する第1の出力部であるWDMカプラ16と、を備える。第2の光源部10HBは、インコヒーレント光ILをラマン増幅する波長を有する2次励起光SPLを出力する第1の複数の励起光源12Aと、第1の複数の励起光源12Aおよび光伝送ファイバ1002に接続されており、2次励起光SPLを光伝送ファイバ1002に出力する第2の出力部であるWDMカプラ17と、を備える。
【0085】
第1の複数のインコヒーレント光源11Aは、複数のインコヒーレント光源11と同様に、それぞれ互いに異なる波長を有するインコヒーレント光ILを出力する。第1の複数のインコヒーレント光源11Aは、SLD、SOAおよび希土類添加光ファイバを備えたASE光源の少なくとも一つを含むが、本実施の形態8では、全てがSLDであるとする。各インコヒーレント光源11Aから出力されるインコヒーレント光ILのパワーはたとえば40mWである。
【0086】
第1の複数の励起光源12Aは、複数の励起光源12と同様に、それぞれ、互いに異なる波長であり、かつインコヒーレント光ILをラマン増幅する波長を有する2次励起光SPLを出力する。第1の複数の励起光源12Aは、互いに波長が異なるFP型、FP型とFBGとを組み合わせたFP-FBG型、DFB型、およびDBR型の半導体レーザの少なくとも一つを含むが、本実施の形態8では、全てがFP型半導体レーザであるとする。各励起光源12Aから出力される2次励起光SPLのパワーはたとえば500mWである。
【0087】
WDMカプラ16とWDMカプラ17とは、インコヒーレント光ILと2次励起光SPLとが、WDMカプラ16とWDMカプラ17との間で光伝送ファイバ1002を反対方向に伝搬するように光伝送ファイバ1002に接続されている。これにより、具体的には、インコヒーレント光ILは信号光S1と同一方向に伝搬し、2次励起光SPLは信号光S1と反対方向に伝搬する。
【0088】
このラマン増幅用光源システム10Hでは、WDMカプラ16とWDMカプラ17との間の光伝送ファイバ1002において、入力されたインコヒーレント光ILが2次励起光SPLにより徐々にラマン増幅され、信号光S1をラマン増幅する波長を有する1次励起光FPLが生成される。1次励起光FPLは、信号光S1と同一方向に伝搬し、信号光S1をラマン増幅する。すなわち、ラマン増幅システム100Hは、前方励起型かつ2次励起型のラマン増幅システムである。
【0089】
このラマン増幅用光源システム10Hによっても、前記した4つの課題を同時に解決することができる。さらに、このラマン増幅用光源システム10Hによれば、ラマン増幅用光源10Eと同様の作用により、光伝送ファイバ1002全体としてみると伝送損失とラマン利得が上手くキャンセルしてあたかも光ファイバの伝送損失が0、または光伝送ファイバ1002の長手方向での信号光S1のパワーの変動が小さい伝送路と見做すことが可能になり、非線形効果をさらに低減可能である。さらに、ラマン増幅用光源システム10Hによれば、ラマン増幅システム100Hは、ラマン増幅システム100Eと同様に、2次励起システムとしてだけでなく、3次励起システムまたはそれ以上の高次の励起システムとしても動作可能である。
【0090】
(実施の形態9)
図12は、実施の形態9に係るラマン増幅用光源システムを用いたラマン増幅システムの模式的な構成図である。ラマン増幅システム100Iは、ラマン増幅用光源システム10Iと光伝送ファイバ1002とで構成されている。
【0091】
このラマン増幅用光源システム10Iも、ラマン増幅用光源システム10Hと同様に、第1の光源部10HAと第2の光源部10HBとを備えている。また、WDMカプラ16とWDMカプラ17とが、インコヒーレント光ILと2次励起光SPLとが、WDMカプラ16とWDMカプラ17との間で光伝送ファイバ1002を反対方向に伝搬するように光伝送ファイバ1002に接続されている点もラマン増幅用光源システム10Hと同様である。しかし、ラマン増幅用光源システム10Hとは異なり、WDMカプラ16とWDMカプラ17とは、インコヒーレント光ILが信号光S1と反対方向に伝搬し、2次励起光SPLは信号光S1と同一方向に伝搬するように光伝送ファイバ1002に接続されている。
【0092】
このラマン増幅用光源システム10Iにおいても、ラマン増幅用光源システム10Hの場合と同様に、WDMカプラ16とWDMカプラ17との間の光伝送ファイバ1002において、入力されたインコヒーレント光ILが2次励起光SPLにより徐々にラマン増幅され、信号光S1をラマン増幅する波長を有する1次励起光FPLが生成される。ただし、ラマン増幅用光源システム10Hの場合とは異なり、1次励起光FPLは、信号光S1と反対方向に伝搬し、信号光S1をラマン増幅する。すなわち、ラマン増幅システム100Hは、後方励起型かつ2次励起型のラマン増幅システムである。
【0093】
このラマン増幅用光源システム10Iによっても、前記した4つの課題を同時に解決することができる。さらに、ラマン増幅用光源システム10Iによれば、ラマン増幅システム100Iは、ラマン増幅システム100Eと同様に、2次励起システムとしてだけでなく、3次励起システムまたはそれ以上の高次の励起システムとしても動作可能である。
【0094】
(実施の形態10)
図13は、実施の形態10に係るラマン増幅用光源システムを用いたラマン増幅システムの模式的な構成図である。ラマン増幅システム100Jは、ラマン増幅用光源システム10Jと光伝送ファイバ1002とで構成されている。
【0095】
ラマン増幅用光源システム10Jは、第1の光源部10HAAと第2の光源部10HBAとを備えている。第1の光源部10HAAは、インコヒーレント光ILを出力する第1の複数のインコヒーレント光源11Aと、更に第2の2次励起光SPL2を出力する第2の複数の励起光源12Bと、第1の複数のインコヒーレント光源11A、第2の複数の励起光源12Bおよび光伝送ファイバ1002に接続されており、インコヒーレント光ILおよび第2の2次励起光SPL2を光伝送ファイバ1002に出力する第1の出力部であるWDMカプラ16Aと、を備える。第2の光源部10HBAは、2次励起光SPLを出力する第1の複数の励起光源12Aと、第2のインコヒーレント光IL2を出力する第2の複数のインコヒーレント光源11Bと、第1の複数の励起光源12A、第2の複数のインコヒーレント光源11Bおよび光伝送ファイバ1002に接続されており、第2のインコヒーレント光IL2および2次励起光SPLを光伝送ファイバ1002に出力する第2の出力部であるWDMカプラ17Aと、を備える。
【0096】
第2の複数のインコヒーレント光源11Bは、第2の複数の励起光源12Bが出力する第2の2次励起光SPL2によりラマン増幅される波長を有する第2のインコヒーレント光IL2を出力する。第1の複数の励起光源12Aは、第1の複数のインコヒーレント光源11Aが出力するインコヒーレント光ILをラマン増幅する波長を有する2次励起光SPLを出力する。
【0097】
WDMカプラ16AとWDMカプラ17Aとは、インコヒーレント光ILと2次励起光SPLとが、WDMカプラ16AとWDMカプラ17Aとの間で光伝送ファイバ1002を反対方向に伝搬し、かつ、第2のインコヒーレント光IL2と第2の2次励起光SPL2とが、WDMカプラ16AとWDMカプラ17Aとの間で光伝送ファイバ1002を反対方向に伝搬するように光伝送ファイバ1002に接続されている。これにより、具体的には、インコヒーレント光ILおよび第2の2次励起光SPL2は信号光S1と同一方向に伝搬し、2次励起光SPLおよび第2のインコヒーレント光IL2は信号光S1と反対方向に伝搬する。
【0098】
このラマン増幅用光源システム10Jでは、WDMカプラ16AとWDMカプラ17Aとの間の光伝送ファイバ1002において、入力されたインコヒーレント光ILが2次励起光SPLにより徐々にラマン増幅され、信号光S1をラマン増幅する波長を有する1次励起光FPLが生成される。さらに、このラマン増幅用光源システム10Jでは、WDMカプラ16AとWDMカプラ17Aとの間の光伝送ファイバ1002において、入力された第2のインコヒーレント光IL2が第2の2次励起光SPL2により徐々にラマン増幅され、信号光S1をラマン増幅する波長を有する第2の1次励起光FPL2が生成される。1次励起光FPLは信号光S1と同一方向に伝搬し、第2の1次励起光FPL2は信号光S1と反対方向に伝搬して、それぞれ信号光S1をラマン増幅する。すなわち、ラマン増幅システム100Hは、双方向励起型かつ2次励起型のラマン増幅システムである。
【0099】
このラマン増幅用光源システム10Jによっても、前記した4つの課題を同時に解決することができる。さらに、このラマン増幅用光源システム10Jによれば、双方向励起型であるので、光伝送ファイバ1002の長手方向における信号光S1のパワーの分布の設計の自由度を高くできる。たとえば、光源部10HAA、10HBAのそれぞれにおける各励起光源12A、12Bおよびインコヒーレント光源11A、11Bの波長、数、帯域、パワーにより、増幅すべき信号光S1の増幅帯域、所望の利得および利得平坦性に加え、長手方向における信号光S1のパワーの分布を調整できる。さらに、ラマン増幅システム100Jにおいて、前方から入力されるインコヒーレント光ILをラマン増幅する2次励起光は後方から導入される2次励起光SPLに限定されるものではなく、前方から入力される第2の2次励起光SPL2が前方から入力されるインコヒーレント光ILをラマン増幅しても良い。どの2次励起光がどのインコヒーレント光をラマン増幅するかは、システムの設計に依存するものである。さらに、ラマン増幅用光源システム10Jによれば、ラマン増幅システム100Jは、ラマン増幅システム100Eと同様に、2次励起システムとしてだけでなく、3次励起システムまたはそれ以上の高次の励起システムとしても動作可能である。
【0100】
なお、上記実施の形態において、複数のインコヒーレント光源11、11Aまたは11Bは、
図14(a)に示すように、SOA11aが多段接続されて構成され、インコヒーレント光ILまたはIL2を出力するインコヒーレント光源11Cを含んでいてもよいし、
図14(b)に示すように、SLD11bおよびSOA11aを含み、SLD11bから出力されるインコヒーレント光をSOA11aで光増幅してインコヒーレント光ILまたはIL2として出力するように構成されたインコヒーレント光源11Dを含んでいてもよい。これにより、インコヒーレント光ILまたはIL2のパワーを大きくすることができる。
【0101】
また、上記実施の形態により本発明が限定されるものではない。上述した各構成要素を適宜組み合わせて構成したものも本発明に含まれる。また、さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。よって、本発明のより広範な態様は、上記の実施の形態に限定されるものではなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0102】
10、10A、10B、10C、10E、10EA ラマン増幅用光源
10D、10F、10H、10I、10J ラマン増幅用光源システム
10HA、10HAA 第1の光源部
10HB、10HBA 第2の光源部
11、11A、11B、11C、11D インコヒーレント光源
12 、12A、12B 励起光源
13、13´、13a、13b、13Aa、13Ab、15、15B、15C、16、16A、17、17A WDMカプラ
13´a AWG
13c、13´ac 出力ポート
13d 入力ポート
13´aa、13´ab、13´ad ポート
14 ラマン増幅用光ファイバ
100、100A、100B、100C、100D、100E、100F、100H、100I、100J ラマン増幅システム
1000 光伝送システム
1001 送信器
1002 光伝送ファイバ
1003 受信器
FPL 1次励起光
FPL2 第2の1次励起光
IL、ILA、ILB インコヒーレント光
IL2 第2のインコヒーレント光
RPA、RPB、RPC、RPD ラマンピーク
S1 信号光
SPL、SPLA 2次励起光
SPL2 第2の2次励起光