(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-19
(45)【発行日】2022-04-27
(54)【発明の名称】半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/52 20060101AFI20220420BHJP
【FI】
H01L21/52 G
(21)【出願番号】P 2019204522
(22)【出願日】2019-11-12
【審査請求日】2021-05-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000226057
【氏名又は名称】日亜化学工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】田村 智紀
(72)【発明者】
【氏名】浜田 繁
【審査官】今井 聖和
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-005625(JP,A)
【文献】特開2014-216574(JP,A)
【文献】特開2019-096991(JP,A)
【文献】特開2001-274198(JP,A)
【文献】特開2018-041841(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/52
H01L 21/60
H01L 23/12
H05K 13/00
B05D 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円周方向に回転可能であり、平面視においてリング状の凹部を有するスタンプ台であって、前記円周方向と直交する断面において前記凹部の底面がV字状であるスタンプ台を準備する工程と、
上面を備える基板を準備する工程と、
前記凹部内に接着剤を供給し、前記接着剤に、スタンプピンの先端面を浸漬させて前記接着剤を前記スタンプピンの先端に付着させる工程と、
前記基板の上面に、前記スタンプピンの先端面に付着された前記接着剤を配置する工程と、
前記基板上の前記接着剤上に、半導体素子を載置する工程と、
を備える半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記凹部の底面は、円周方向と直交する断面において、中心軸側の第1底面と、外周側の第2底面と、を備えるV字状であり、前記第1底面と前記第2底面の傾斜角度は、水平面に対して、それぞれ1度~10度程度である、請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記凹部は、前記第1底面と前記第2底面の間に、平面部を備える、請求項2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記平面部の幅は、前記先端面の先端面の幅と同程度の幅か、それよりも大きい幅である、請求項3に記載の半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着剤を用いて半導体素子を接着させる半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
接着剤を入れた容器にピンの先端を浸漬して接着剤を付着させ、その付着した接着剤を基板上に転写する方法が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
容器から接着剤が漏れにくい方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、以下の構成を含む。
円周方向に回転可能であり、平面視においてリング状の凹部を有するスタンプ台であって、前記円周方向と直交する断面において前記凹部の底面がV字状であるスタンプ台を準備する工程と、
上面を備える基板を準備する工程と、
前記凹部内に接着剤を供給し、前記接着剤に、スタンプピンの先端面を浸漬させて前記接着剤を前記スタンプピンの先端に付着させる工程と、
前記基板の上面に、前記スタンプピンの先端面に付着された前記接着剤を配置する工程と、
前記基板上の前記接着剤上に、半導体素子を載置する工程と、
を備える半導体装置の製造方法。
【発明の効果】
【0006】
以上により、容器から接着剤が漏れにくくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1A】実施形態に係る半導体装置の製造方法に用いられるスタンプ台の一例を示す概略斜視図である。
【
図2】実施形態に係る半導体装置の製造方法に用いられるスタンプ台の変形例を示す概略斜視図である。
【
図3】実施形態に係る半導体装置の製造方法に用いられるスタンプ台の変形例を示す概略斜視図である。
【
図4A】実施形態に係る半導体装置の製造方法に用いられる基板の一例を示す概略斜視図である。
【
図5A】実施形態に係る半導体装置の製造方法の工程を説明する概略断面図である。
【
図5B】実施形態に係る半導体装置の製造方法の工程を説明する概略断面図である。
【
図5C】実施形態に係る半導体装置の製造方法の工程を説明する概略断面図である。
【
図6A】実施形態に係る半導体装置の製造方法の工程を説明する概略断面図である。
【
図6B】実施形態に係る半導体装置の製造方法の工程を説明する概略断面図である。
【
図7A】実施形態に係る半導体装置の製造方法の工程を説明する概略断面図である。
【
図7B】実施形態に係る半導体装置の製造方法の工程を説明する概略断面図である。
【
図8A】実施形態に係る半導体装置の製造方法の工程を説明する概略断面図である。
【
図8B】実施形態に係る半導体装置の製造方法の工程を説明する概略断面図である。
【
図8C】実施形態に係る半導体装置の製造方法の工程を説明する概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明を実施するための形態を、以下に図面を参照しながら説明する。ただし、以下に示す形態は、本発明の技術思想を具現化するための発光装置を製造方法例示するものであって、以下に限定するものではない。また、実施の形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、特定的な記載がない限り、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる例示に過ぎない。尚、各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするために誇張していることがある。
【0009】
本発明の実施形態に係る半導体装置の製造方法を説明する。詳細には、凹部を備えるスタンプ台を準備する工程と、基板を準備する工程と、スタンプ台の凹部内に接着剤を供給し、凹部内の接着剤をスタンプピンに付着させる工程と、スタンプピンの先端に付着された接着剤を基板上に配置する工程と、基板上の接着剤上に半導体素子を載置する工程と、を含む。
【0010】
以下、各工程について詳説する。
【0011】
(スタンプ台を準備する工程)
スタンプ台を準備する。
図1Aは、スタンプ台1の一例である。スタンプ台1は、液状又はペースト状の接着剤等の樹脂材料を入れておくための容器であり、例えば、ダイボンド装置等に組み込むことが可能な部品である。スタンプ台1は、上面視形状が円形である。スタンプ台1は、円の中心に備え付けられた回転軸2を中心軸として円周方向に回転可能である。スタンプ台1は、回転軸2の上側又は下側に取り付けることができる。また、スタンプ台1と回転軸2とは別体であってもよく、一体であってもよい。
【0012】
スタンプ台1は、上面に、リング状(円環状)の凹部10を備えている。樹脂材料、粉体の金属材料、活性剤などを主な成分とする接着剤4は、この凹部10内に保持される。
図1B及び
図1Cに示すように、凹部10は、円周方向と直交する断面において、中心軸を挟んで左右にそれぞれ1つ現れており、それぞれの凹部10の底面11がV字状になっている。
【0013】
凹部10の底面11の深さ(開口部12からの深さ)は、内周側の端部及び外周側の端部において、最下端部113よりも浅い。換言すると、凹部10の底面11は、内周側の端部及び外周側の端部から離れる位置において、最下端部113を有する。このようにすることで、同じ量の接着剤を底面11が平坦である凹部に保持する場合に比べて、凹部10内に保持される接着剤が外周端又は内周端から外部に漏れにくくすることができる。
【0014】
ここで、
図1Cに示すように、V字状の底面11の最下端部113から中心軸側(内周側)の部分を第1底面111とし、V字状の底面11の最下端部113から外周側の部分を第2底面112とする。
【0015】
第1底面111は、中心軸側に位置する第1底面上端部111aと最下端部113と間の面であり、第2底面112は、外周側に位置する第2底面上端部112aと最下端部113との間の面である。換言すると、スタンプ台1の凹部10の底面11は、円周方向と直交する断面において、中心軸側に位置する第1底面111と、第1底面111よりも外周側に位置する第2底面112と、を備える。第1底面111は外周側に向いた傾斜面であり、第2底面112は中心軸側に向いた面である。つまり、第1底面111は、中心軸側の端部の位置が、外周側の端部(つまり、最下端部)よりも高い位置にある。同様に、第2底面112は、中心軸側の端部(つまり、最下端部)よりも、外周側の端部が高い位置にある。
【0016】
第1底面111と第2底面112は、円周方向と直交する断面において、それぞれ傾斜した面である。第1底面111と第2底面112は、水平面に対してそれぞれ同じ角度で傾斜していることが好ましい。例えば、第1底面111と第2底面112の傾斜角度は、水平面に対して、それぞれ1度~10度程度とすることができる。
【0017】
最下端部113は、円周方向と直交する断面において、凹部10の底面11の中心に位置することができる。あるいは、第1底面111の傾斜、第2底面112の傾斜が形成されていれば、凹部10の底面11の中心から外周側又は中心軸側にずれた位置にあってもよい。
【0018】
また、凹部10の底面11の最下端部113は、
図1Cに示すように底面11の中心のみとすることができる。あるいは、
図2に示すスタンプ台1Aのように、凹部10の底面11の中心を含む平面部113aを最下端部113としてもよい。つまり、円周方向に直交する断面において、凹部10の底面11は、第1底面111と、第2底面112との間に、平面部113aを備える。最下端部113が平面部113aを備える場合、平面部113aの幅は、例えば、後述のスタンプピン3の先端面31の幅と同程度の幅、又は、それよりも広い幅とすることができる。これにより、スタンプピン3の先端面31に付着する接着剤の量のバラツキを低減することができる。
【0019】
凹部10の底面11は、
図1C等に示すように、円周方向に直交する断面において、底面11の全体がV字状であってもよい。つまり、平面視において、凹部10の開口部12の位置と、底面11の端部である第1底面111の第1底面上端部111a及び第2底面の第2底面上端部112aが、重なる位置にあってもよい。あるいは、凹部10の底面11のうち、70%~100%がV字状であってもよい。つまり、平面視において、凹部10の開口部12の位置よりも内側に、底面11の端部である第1底面111の第1底面上端部111a及び第2底面の第2底面上端部112aが位置していてよい。その場合は、凹部10の底面11は、V字状の部分よりも中心軸側、又はV字状の部分よりも外周側に、平坦な部分(平坦底面)を備える。
【0020】
凹部10は、開口部(上端)12と底面11との間に、側面13を有していてもよい。側面13を備えることで、接着剤4の漏れを効率的に抑制することができる。また、
図3に示すスタンプ台1Bのように、側面を備えない凹部10であってもよい。すなわち、凹部10は、側面を備えず、第1底面上端部111a又は第2底面上端部112aが、凹部10の開口部(上端)12と一致していてもよい。側面を備えないことで、スタンプ台1Bを洗浄し易くなる。さらに、側面を備えないことで、接着剤4の粘度や、スタンプ台の回転数によっては、接着剤4の廃棄率を低減することができる。例えば、側面を備えるスタンプ台1Bの場合、接着剤4の上面が側面の上面より下側に位置すると、スキージで接着剤4の量を一定にすることができないため使用することができなくなり廃棄処分となる。これに対し、側面を備えないスタンプ台1Bでは、そのような使用できない接着剤4の量を低減することができるため、凹部10内に接着剤4を有効に使用することができる。
【0021】
スタンプ台1の凹部10の容量は、スタンプピン3に一度に付着される接着剤4の容量に比して、大容量とすることが好ましい。これは、スタンプピン3に付着される接着剤4の量だけ、凹部10内の接着剤4の量が減っていくため、それによる凹部10内の接着剤4の高さ(表面の位置)が大きく変化しにくいようにするためである。つまり、凹部10内の接着剤4が多いほど、凹部10内の接着剤4の高さが変化しにくい。しかし、多すぎると外周側又は内周側から接着剤4が漏れやすくなる。本開示に係るスタンプ台1を用いることで、接着剤4を漏れにくくすることができる。
【0022】
(基板を準備する工程)
基板を準備する。
図4A及び
図4Bは、基板51の一例である。基板51は発光素子などの半導体素子が載置可能な上面51uを備えており、半導体装置の一部を構成する。基板51は、ダイボンド装置等の装置内において、後述のスタンプピン3の稼働範囲内に配置される。例えば、基板51は、ダイボンド装置内において、スタンプ台1の近傍に配置される試料台の上等に、基板51の上面を上側にして配置される。
図4A、
図4Bに例示する基板51は、金属板を所望の形状にパターニングしたリードフレーム51aと、リードフレーム51aと一体成型された樹脂成形体51bとを備える。基板51は複数の素子載置凹部51cを備えている。素子載置凹部51cは、その底面に一対の電極となるリードフレーム51aの一部が露出されている。素子載置凹部51cの側面は樹脂成形体51bで構成されている。尚、基板51は、このような、リードフレームと樹脂成形体とを備えた樹脂パッケージ基板のほか、セラミック基板やガラス基板、公知の基板を用いることができる。さらに、基板は、凹部を備えない平板状の基板や、フレキシブル基板等を用いることもできる。素子載置凹部51cを備える場合は、素子載置凹部51cの底面が、基板51の上面51uに相当する。
【0023】
(スタンプ台の凹部内の接着剤をスタンプピンに付着させる工程)
次に、スタンプ台1の凹部10内に接着剤4を供給する。例えば、スタンプ台1を回転数5ppm~15ppm程度で回転させながら、粘度2Pa・s~30Pa・s程度のエポキシ或はシリコーン樹脂を主成分とする接着剤4を供給する。スキージで高さをそろえながら、凹部10内に接着剤4を行き渡らせる。
【0024】
スタンプ台1の凹部10の上方には、
図5Aに示すように、スタンプピン3が配置されている。スタンプピン3は、垂直方向及び水平方向に移動可能である。スタンプ台1は、スタンプピン3に接着剤4を付着させるために必要な部分以外は、例えばカバー等によって覆われていてもよい。例えば、カバーは、外部より接着剤4を凹部10へ注入するための開口部を備えることができる。また、スタンプピン3が挿入可能な開口部を備えることができる。また、スタンプ台1の周辺部品として、凹部10内の接着剤4の高さを調整するためのスキージなどを備えていてもよい。
【0025】
次に、スタンプピン3に接着剤4を付着させる。詳細には、
図5Bに示すように、スタンプ台1の凹部10の上方に配置されたスタンプピン3を、下方向(
図5Bに示す矢印の方向)に移動させる。スタンプピン3の先端面31を含む先端部分が、スタンプ台1の凹部10内の接着剤4に浸漬する位置にまで移動(降下)させる。
【0026】
次に、
図5Cに示すように、スタンプピン3を上方向(
図7に示す矢印の方向)に移動(上昇)させることで、スタンプピン3の先端面31を含む先端部分に接着剤4を付着させる。
【0027】
(基板上に接着剤を配置する工程)
次に、基板51上に接着剤4を配置(塗布)する。詳細には、
図6Aに示すように、先端面を含む先端部に接着剤4を保持したスタンプピン3を、基板51の上方に位置するように移動させる。
図6Aに示す例では、素子載置凹部51cの中央部の上方にスタンプピン3を移動させる例を示している。その後、下方向(
図6Aに示す矢印の方向)にスタンプピン3移動させ、
図6Bに示すように、基板51の上面51uに接着剤4を当接させる。その後、スタンプピン3を上方向(
図6Bに示す矢印の方向)に移動(上昇)させることで、接着剤4を基板51の上面51u上に配置することができる。
【0028】
(接着剤上に半導体素子を載置する工程)
次いで、基板51上に配置された接着剤4上に発光素子等の半導体素子52を載置する。詳細には、まず
図7Aに示すように、コレット等の吸着部材6で吸着保持した半導体素子52を、基板51の上面51uに配置された接着剤4の上方に移動する。次に、吸着部材6を下方(
図7Aに示す矢印の方向)に移動する。
図7Bに示すように、半導体素子52を接着剤4に当接させた後、吸着部材6の吸着を解除(真空を解除)して吸着部材6から半導体素子52を外し、吸着部材6を上方(
図7Bに示す矢印の方向)に移動する。これにより、接着剤4上に半導体素子52を載置することができる。尚、この工程は、基板51の上面51uに配置された接着剤4が完全に硬化する前に行う必要がある。半導体素子52を接着剤4上に載置した後、加熱、光照射などの工程を行うことで接着剤4を硬化させる。
【0029】
(その他の工程)
本開示において、上記の工程のほかの工程を備えてもよい。例えば、
図8Aに示すように、基板51上に接着された半導体素子52に、通電のためにワイヤ53を接続する工程を備えてもよい。更に、
図8Bに示すように、半導体素子52やワイヤ53等を保護するための透光性樹脂などの封止部材54を形成する工程を備えてもよい。半導体素子を、導電性接合部材を用いてフリップチップ実装する場合は、ワイヤ接続工程は不要である。封止部材を形成する工程は、ポッティング(滴下)法、圧縮成型法、印刷法、トランスファモールド法、ジェットディスペンス法などを用いることができる。次に、
図8Cに示すように個片化することで、半導体装置50を得ることができる。
【符号の説明】
【0030】
1、1A、1B…スタンプ台
10…凹部
11…凹部の底面
111…第1底面
111a…第1底面上端部
112…第2底面
112a…第2底面上端部
113…最下端部
113a…最下端部の平面部
12…凹部の開口部(凹部の上端)
13…凹部の側面
2…回転軸
3…スタンプピン
31…スタンプピンの先端面
4…接着剤
5…半導体装置
51…基板
51a…リードフレーム
51b…樹脂成形体
51c…素子載置凹部
51u…基板の上面
52…半導体素子
53…ワイヤ
54…封止部材
6…吸着部材