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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-19
(45)【発行日】2022-04-27
(54)【発明の名称】ガスバリア層を形成するための塗工液
(51)【国際特許分類】
   C09D 129/04 20060101AFI20220420BHJP
   C09D 5/02 20060101ALI20220420BHJP
   C09D 133/02 20060101ALI20220420BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20220420BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20220420BHJP
【FI】
C09D129/04
C09D5/02
C09D133/02
B05D7/24 302M
B32B27/30 A
B32B27/30 102
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2017229397
(22)【出願日】2017-11-29
(65)【公開番号】P2019099623
(43)【公開日】2019-06-24
【審査請求日】2020-07-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080791
【弁理士】
【氏名又は名称】高島 一
(74)【代理人】
【識別番号】100125070
【弁理士】
【氏名又は名称】土井 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100136629
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 光宜
(74)【代理人】
【識別番号】100121212
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 弥栄子
(74)【代理人】
【識別番号】100163658
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 順造
(74)【代理人】
【識別番号】100174296
【弁理士】
【氏名又は名称】當麻 博文
(74)【代理人】
【識別番号】100137729
【弁理士】
【氏名又は名称】赤井 厚子
(74)【代理人】
【識別番号】100151301
【弁理士】
【氏名又は名称】戸崎 富哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122345
【弁理士】
【氏名又は名称】高山 繁久
(72)【発明者】
【氏名】大崎 伸浩
(72)【発明者】
【氏名】三浦 万紀子
(72)【発明者】
【氏名】柴田 大輔
【審査官】水野 明梨
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-324061(JP,A)
【文献】特開2009-006508(JP,A)
【文献】特開平06-220221(JP,A)
【文献】特開平05-140239(JP,A)
【文献】特開平11-192675(JP,A)
【文献】特開2001-040162(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 201/06
C09D 5/02
C09D 129/04
C09D 133/08
B05D 7/24
B32B 27/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスバリア層を形成するための塗工液であって、
前記塗工液が、水を含む液状媒体と、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アミノ基およびスルホ基からなる群から選ばれる少なくとも1種の官能基を有する樹脂とを含み、
前記樹脂が、平均重合度が800~3,000であるポリビニルアルコールと、重量平均分子量が200,000~5,000,000であるポリアクリル酸とを含み、並びに
前記樹脂の平均粒子径が100~600nmである塗工液。
【請求項2】
ポリアクリル酸の重量平均分子量が、300,000~5,000,000である請求項に記載の塗工液。
【請求項3】
請求項1または2に記載の塗工液から形成された、ガスバリア層として用いられる塗膜。
【請求項4】
基材と、前記基材上に形成された請求項に記載の塗膜とを含む積層体。
【請求項5】
請求項に記載の積層体をさらに成形して得られる成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスバリア層を形成するための塗工液に関する。ここで「ガスバリア層」とは、ガス(例えば、酸素)の透過を抑制するために用いられる層を意味する。
【背景技術】
【0002】
例えば食品、化粧品等の包装材料では、それらの酸化を防止するために、低い酸素透過度が求められる。酸素透過度が低い包装材料として、基材上にポリビニルアルコールまたはその誘導体を使用して形成されたガスバリア層を有する積層体が知られている。例えば、特許文献1および2には、ガスバリア層として、ポリビニルアルコールとポリ(メタ)アクリル酸とを含むフィルムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平6-220221号公報
【文献】特開2004-18650号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ポリビニルアルコールを使用して形成されたガスバリア層は、低湿度下では低い酸素透過度を示すが、高湿度下ではその酸素透過度が増大するという問題がある。本発明はこのような事情に着目してなされたものであって、その目的は、高湿度下で低い酸素透過度を示すガスバリア層を形成し得る塗工液を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成し得る本発明は、以下の通りである。
[1] ガスバリア層を形成するための塗工液であって、水を含む液状媒体と、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アミノ基およびスルホ基からなる群から選ばれる少なくとも1種の官能基を有する樹脂とを含み、前記樹脂の平均粒子径が100~600nmである塗工液。
[2] 前記樹脂が、ポリビニルアルコールを含む前記[1]に記載の塗工液。
[3] ポリビニルアルコールの平均重合度が、800~3,000である前記[2]に記載の塗工液。
[4] 前記樹脂が、ポリアクリル酸を含む前記[1]~[3]のいずれか一つに記載の塗工液。
[5] ポリアクリル酸の重量平均分子量が、200,0005,000,000である前記[4]に記載の塗工液。
[6] 前記[1]~[5]のいずれか一つに記載の塗工液から形成された、ガスバリア層として用いられる塗膜。
[7] 基材と、前記基材上に形成された前記[6]に記載の塗膜とを含む積層体。
[8] 前記[7]に記載の積層体をさらに成形して得られる成形体。
【発明の効果】
【0006】
本発明の塗工液によれば、高湿度下で低い酸素透過度を示すガスバリア層(塗膜)を形成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
<液状媒体>
本発明で使用する液状媒体は、水を含む。液状媒体は、水からなるものでもよく、水に加えて液状の有機媒体を含んでいてもよい。ここで「液状媒体」とは、25℃および1気圧で液状である媒体を意味し、「液状の有機媒体」とは、25℃および1気圧で液状である有機化合物を意味する。液状の有機媒体は、1種のみでもよく、2種以上でもよい。
【0008】
液状の有機媒体としては、例えば、1価アルコール、グリコール、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、アセトン等が挙げられる。1価アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール等が挙げられる。
【0009】
液状媒体は、好ましくは水および1価アルコールを含み、より好ましくは水および1価アルコールからなる。塗工液の安定性および塗膜の乾燥時間の観点から、前記液状媒体における1価アルコールの含有量は、水および1価アルコールの合計100重量%あたり、好ましくは1~50重量%、より好ましくは5~47重量%、さらに好ましくは10~45重量%である。この態様において、1価アルコールは、好ましくはエタノールおよびイソプロパノールからなる群から選ばれる少なくとも一つであり、さらに好ましくはイソプロパノールである。
【0010】
低い酸素透過度および造膜性の観点から、液状媒体の含有量は、塗工液100重量%あたり、好ましくは80~99.9重量%、より好ましくは85~99.5重量%、さらに好ましくは90~99重量%である。
【0011】
<樹脂>
本発明の塗工液は、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アミノ基およびスルホ基からなる群から選ばれる少なくとも1種の官能基を有する樹脂(以下「官能樹脂(functional resin)」と略称することがある)を含む。アミノ基は、無置換でもよく、アルキル基等で置換されていてもよい。また、カルボキシ基、アミノ基およびスルホ基は、いずれも塩の形態であってもよい。
【0012】
官能樹脂は、単独重合体でもよく、共重合体でもよい。共重合体は、ブロック共重合体、交互共重合体、ランダム共重合体、およびこれらの組合せのいずれでもよい。
【0013】
ヒドロキシ基、カルボキシ基およびアミノ基からなる群から選ばれる少なくとも1種の官能基を有する樹脂としては、例えば、ポリビニルアルコール(PVA)、ビニルアミン-ビニルアルコール共重合体、(メタ)アクリル酸-ビニルアルコール共重合体、エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、多糖類、およびこれらの誘導体等が挙げられる。スルホ基を有する樹脂としては、例えば、ポリビニルアルコール等のヒドロキシ基を有する樹脂において、そのヒドロキシ基をスルホ基で置換して得られる誘導体等が挙げられる。
【0014】
低い酸素透過度および造膜性の観点から、官能樹脂の含有量は、塗工液100重量%あたり、好ましくは0.1~20重量%、より好ましくは0.5~15重量%、さらに好ましくは1~10重量%である。
【0015】
官能樹脂は、好ましくはポリビニルアルコールを含む。低い酸素透過度および膜の耐久性の観点から、ポリビニルアルコールの平均重合度は、好ましくは800~3,000、より好ましくは900~2,500、さらに好ましくは1,000~2,000である。また、低い酸素透過度および造膜性の観点から、ポリビニルアルコールのけん化度は、好ましくは80~100%、より好ましくは90~100%、さらに好ましくは95~100%である。ポリビニルアルコールの平均重合度およびけん化度は、JIS K 6726:1994に従い測定することができる。
【0016】
低い酸素透過度および膜の耐久性の観点から、ポリビニルアルコールの重量平均分子量は、好ましくは100,000~500,000、より好ましくは150,000~400,000、さらに好ましくは170,000~300,000である。この重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって測定することができる。
【0017】
低い酸素透過度、造膜性および基材への密着性の観点から、ポリビニルアルコールを使用する場合、その含有量は、塗工液100重量%あたり、好ましくは0.05~10重量%、より好ましくは0.3~8重量%、さらに好ましくは0.7~6重量%である。
【0018】
官能樹脂は、好ましくはポリアクリル酸を含む。低い酸素透過度および造膜性の観点から、ポリアクリル酸の重量平均分子量は、好ましくは200,000~5,000,000、より好ましくは300,000~3,000,000、さらに好ましくは400,000~2,000,000である。この重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって測定することができる。
【0019】
低い酸素透過度および塗膜の耐水性の観点から、ポリアクリル酸を使用する場合、その含有量は、塗工液100重量%あたり、好ましくは0.05~10重量%、より好ましくは0.2~7重量%、さらに好ましくは0.3~4重量%である。
【0020】
官能樹脂は、より好ましくはポリビニルアルコールおよびポリアクリル酸を含み、さらに好ましくはポリビニルアルコールおよびポリアクリル酸からなる。この態様における、ポリビニルアルコールのけん化度、平均重合度、重量平均分子量および含有量、並びにポリアクリル酸の重量平均分子量および含有量は、上述した通りである。
【0021】
本発明の塗工液は、官能樹脂の平均粒子径が100~600nmであることを特徴の一つとする。このような官能樹脂を含む塗工液を用いることによって、後述の実施例欄に示しているように、低湿度下だけでなく、高湿度下でも酸素透過度の低いガスバリア層(塗膜)を形成することができる。
【0022】
官能樹脂の平均粒子径は、以下のようにして測定される値である。まず、塗工液を水で希釈して、固形分濃度が0.1~0.01重量%である希釈液を調製し、これを測定サンプルとして使用する。ここで、固形分濃度とは、希釈液中における液状媒体(水、または水および液状の有機媒体)以外の成分(官能樹脂、および必要に応じて使用する後述の他の成分)の濃度を意味する。次いで、JIS Z8828:2013に基づき、動的光散乱法による粒子径測定装置を用いて、24℃における前記希釈液中の官能樹脂の散乱光強度基準による調和平均粒子径を測定し、この値を、本発明における官能樹脂の平均粒子径として使用する。
【0023】
低い酸素透過度および膜の耐久性の観点から、官能樹脂の平均粒子径は、好ましくは110nm以上、より好ましくは120nm以上である。また、低い酸素透過度および膜の透明性の観点から、官能樹脂の平均粒子径は、好ましくは550nm以下、より好ましくは500nm以下、特に好ましくは400nm以下である。
【0024】
<他の成分>
本発明の塗工液は、本発明の効果(高湿度下での低い酸素透過度)を著しく阻害しない範囲で、液状媒体および前記樹脂とは異なる他の成分を含有していてもよい。他の成分としては、例えば、無機層状化合物、キレート化合物、界面活性剤等が挙げられる。他の成分は、いずれも、1種のみでもよく、2種以上でもよい。
【0025】
無機層状化合物としては、例えば、粘土鉱物が挙げられる。粘土鉱物は、1種のみでもよく、2種以上でもよい。粘度鉱物としては、例えば、カオリナイト、ディッカイト、ナクライト、ハロイサイト、アンチゴライト、クリソタイル、パイロフィライト、モンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ソーコナイト、スチーブンサイト、ヘクトライト、テトラシリリックマイカ、ナトリウムテニオライト、白雲母、マーガライト、タルク、バーミキュライト、金雲母、ザンソフィライト、緑泥石、ハイドロタルサイト等が挙げられる。粘土鉱物は、有機物での処理(例えばイオン交換等)によって、分散性等が改良されたものでもよい。
【0026】
無機層状化合物は、好ましくはスメクタイト族粘土鉱物である。スメクタイト族粘土鉱物は、1種のみでもよく、2種以上でもよい。スメクタイト族粘土鉱物としては、例えばモンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ソーコナイト、スチーブンサイト、ヘクトライトが挙げられる。無機層状化合物は、より好ましくはモンモリロナイトである。スメクタイト族粘土鉱物(特にモンモリロナイト)は、有機物での処理(例えばイオン交換等)によって、分散性等が改良されたものでもよい。
【0027】
塗工液中の無機層状化合物の平均粒子径は、好ましくは0.02~3μm、より好ましくは0.1~2μm、さらに好ましくは0.2~1μmである。ここで、「塗工液中の無機層状化合物の平均粒子径」とは、レーザー回折・散乱式粒度分布測定装置(例えば、堀場製作所社製「LA910」)を使用して測定される塗工液中の無機層状化合物の体積基準のメジアン径を意味する。
【0028】
粉末X線回折法によって測定することができる無機層状化合物の単位結晶層の厚さaに対する、上述の塗工液中の無機層状化合物の平均粒子径Lの比(L/a)は、好ましくは20~3,000、より好ましくは100~2,000、さらに好ましくは200~1,000である。なお、無機層状化合物とは、層状結晶構造を有する無機化合物を意味し、無機層状化合物の単位結晶層の厚さaとは、結晶構造の一つの層の厚さを意味する。
【0029】
無機層状化合物を使用する場合、その含有量は、低い酸素透過度および膜の柔軟性の観点から、塗工液100重量%あたり、好ましくは0.047~5重量%、より好ましくは0.05~4.5重量%、さらに好ましくは0.1~4.4重量%である。
【0030】
本発明の塗工液が無機層状化合物を含む場合、この塗工液を用いて上述の平均粒子径の測定法を行い、無機層状化合物の平均粒子径と官能樹脂の平均粒子径とが区別できる場合は、後者の測定値を、本発明における官能樹脂の平均粒子径として使用する。一方、上述の平均粒子径の測定法では無機層状化合物の平均粒子径と官能樹脂の平均粒子径とが区別できない場合は、塗工液のろ過などの処理によって、無機層状化合物を除去した塗工液を調製し、この塗工液を用いて上述の平均粒子径の測定法を行い、得られた測定値を本発明における官能樹脂の平均粒子径として使用する。
【0031】
<塗工液の製造>
官能樹脂の平均粒子径が100~600nmである本発明の塗工液は、高圧分散処理を行うことによって製造することができる。高圧分散処理では、通常、官能樹脂および液状媒体を含む混合物を、高圧分散装置のチャンバー内に形成された細管中やスリット間に高速で通過させ、せん断粉砕作用やキャビテーション作用を利用して、官能樹脂の微細化を行う。
【0032】
シングルノズルチャンバーを含む高圧分散装置(例えば、スギノマシン社製「スターバースト」)、ブレーカーリングを有するチャンバーを含む高圧分散装置(例えば、三和エンジニアリング社製「ホモゲナイザー」)、バルブボディーを有するチャンバーを含む高圧分散装置(例えば、日本テトラパック社製「ホモゲナイザー」)を用いることにより、官能樹脂の平均粒子径を本発明所定の範囲とすることができる。高圧分散処理の圧力は、好ましくは50~150MPaである。高圧分散処理の回数は、好ましくは2回以上であり、通常は5回以下である。
【0033】
<塗膜および積層体>
本発明の塗工液を基材上に塗布し、乾燥させることによって塗膜(ガスバリア層)を形成し、積層体(基材/塗膜)を製造することができる。従って本発明は、前記塗工液だけでなく、ガスバリア層として用いられる前記塗膜、および基材と、前記基材上に形成された前記塗膜とを含む積層体も提供する。
【0034】
積層体は、その片面のみに本発明の塗工液から形成される塗膜を有していてもよく、その両面に前記塗膜を有していてもよい。本発明の塗工液から形成される塗膜と基材との接着性を高めるために、塗工液が塗布される基材の面に、コロナ処理、オゾン処理、電子線処理、アンカーコート剤の塗布等の表面処理が施されていてもよい。
【0035】
基材の材料としては、例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂、紙、木材、金属等が挙げられる。これらの中で、熱可塑性樹脂が好ましい。熱可塑性樹脂としては、例えば、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-ブテン共重合体、エチレン-ヘキセン共重合体、エチレン-オクテン共重合体、ポリプロピレン、ポリ-4-メチルペンテン-1、環状オレフィン樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-メチルメタクリレート共重合体、アイオノマー樹脂等のオレフィン系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のエステル系樹脂;ポリアミド6(別名:ナイロン(登録商標)6)、ポリアミド66(別名:ナイロン(登録商標)66)、メタキシレンジアミン-アジピン酸縮重合体、ポリメチルメタクリルイミド等のアミド系樹脂;ポリメチルメタクリレート等のアクリル系樹脂;ポリスチレン、スチレン-アクリロニトリル共重合体、スチレン-アクリロニトリル-ブタジエン共重合体等のスチレン系樹脂;ポリアクリロニトリル;トリ酢酸セルロース、ジ酢酸セルロース等のセルロース系樹脂;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン等のハロゲン含有樹脂;ポリビニルアルコール、エチレン-ビニルアルコール共重合体等のビニルアルコール系樹脂;ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンオキシド、ポリメチレンオキシド等のエンジニアリングプラスチック;等が挙げられる。
【0036】
本発明において、基材の形状に特に限定は無い。基材の形状としては、例えば、織布、不織布、シート、フィルム、発泡体等が挙げられる。また基材は、複合材料であってもよい。複合材料の基材としては、例えば、樹脂にアルミニウム、アルミナおよびシリカからなる群から選ばれる少なくとも一つが蒸着されたものが挙げられる。
【0037】
熱可塑性樹脂フィルムを基材として使用する場合、該フィルムの製造方法に特に限定は無い。フィルムの製造方法としては、例えば、押出、キャスティング、カレンダー法、一軸延伸、二軸延伸等が挙げられる。基材の厚さは、好ましくは1~1,000μm、より好ましくは5~800μmである。
【0038】
塗工液の塗布方法に特に限定は無く、公知の方法を使用することができる。塗布方法としては、例えば、ダイレクトグラビア法、リバースグラビア法、マイクログラビア法等のグラビア法;2本ロールビートコート法、ボトムフィード3本リバースコート法等のロールコーティング法;ドクターナイフ法;ダイコート法;バーコーティング法;ディッピング法;スプレーコート法;カーテンコート法;スピンコート法;フレキソコート法;スクリーンコート法;刷毛等を用いるコート法等が挙げられる。
【0039】
塗布した塗工液の乾燥方法に特に限定は無く、公知の手段を使用することができる。乾燥としては、例えば、加熱による乾燥、減圧等の非加熱手段による乾燥、およびこれらの組合せによる乾燥が挙げられる。これらの中で、装置の簡便さから、加熱による乾燥が好ましい。加熱による乾燥に用いる装置としては、例えば、乾燥炉、熱ロール、赤外線加熱装置、マイクロ波加熱装置等が挙げられる。加熱による乾燥温度は、好ましくは40~150℃、より好ましくは50~140℃であり、その乾燥時間は、好ましくは0.01~1,440分、より好ましくは0.01~60分である。
【0040】
本発明の塗工液から形成される塗膜の厚さ(乾燥後の厚さ)は、好ましくは0.01~20μm、より好ましくは0.05~10μmである。
【0041】
積層体は、本発明の塗工液から形成される塗膜の上に、別の層が形成されていてもよい。また、積層体は、本発明の塗工液から形成される塗膜が形成されていない面の上に、別の層が形成されていてもよい。別の層としては、例えば、ヒートシール層等が挙げられる。ヒートシール層を構成する樹脂としては、例えば、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-ブテン共重合体、エチレン-ヘキセン共重合体、エチレン-4-メチル-1-ペンテン共重合体、エチレン-オクテン共重合体、ポリプロピレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-メタクリル酸メチル共重合体、エチレン-アクリル酸メチル共重合体、エチレン-アクリル酸共重合体、アイオノマー樹脂等のオレフィン系樹脂等が挙げられる。ヒートシール層と基材との接着性を高めるために、ヒートシール層が形成される基材の面に、コロナ処理、オゾン処理、電子線処理、アンカーコート剤の塗布等の表面処理が施されていてもよい。
【0042】
<成形体>
本発明は、前記積層体をさらに成形して得られる成形体を提供する。前記成形としては、例えば、特開平8-238667号公報、特開平5-220913号公報、特開昭54-90265、特開昭61-108542号公報、特開2006-137058号公報、特開2003-53823号公報、特開平2-69213号公報、特開平3-176128号公報、特開平5-104572号公報、特開昭61-249750号公報、特開昭61-244737号公報等に記載されているような、ブロー成形、真空成形、圧空成形、真空圧空成形等が挙げられる。得られる成形体としては、例えば、ボトル、ボトルキャップ、カートン容器、カップ、皿、トレー、プレススルーパック、タンク、チューブ、シリンジ等が挙げられる。
【実施例
【0043】
以下、実施例等を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例によって制限を受けるものではなく、上記・下記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
【0044】
1.原料
実施例等で使用した原料およびその略号を以下に記載する。
(1)樹脂
(a)ポリビニルアルコール(PVA)
PVA(1)(ポリビニルアルコール、クラレ社製「RS2117」、重量平均分子量:190,000、けん化度:99.6%、平均重合度:1,700)
PVA(2)(ポリビニルアルコール、クラレ社製「ポバール105」、重量平均分子量:65,000、けん化度:98.5%、平均重合度:500)
PVA(3)(ポリビニルアルコール、ユニチカケミカル社製「(UMR-10HH」、重量平均分子量:25,000、けん化度:98.9%、平均重合度:240)
(b)ポリアクリル酸(PAA)
PAA(1)(ポリアクリル酸、和光純薬工業社製、重量平均分子量:1,000,000)
PAA(2)(ポリアクリル酸、和光純薬工業社製、重量平均分子量:150,000)
PAA(3)(ポリアクリル酸、和光純薬工業社製、重量平均分子量:25,000)
【0045】
(2)液状媒体
イオン交換水(比電気伝導率:0.7μs/cm以下)
イソプロパノール
【0046】
2.高圧分散装置
実施例等で使用した高圧分散装置およびその略号を以下に記載する。
高圧分散装置(1)(スギノマシン社製「スターバースト」、シングルノズルチャンバーを含む高圧分散装置)
高圧分散装置(2)(三和エンジニアリング社製「ホモゲナイザーH100型」、ブレーカーリングを有するチャンバーを含む高圧分散装置)
高圧分散装置(3)(Microfluidics Corporation 社製「マイクロフルイダイザーM10-E/H」、インターアクションチャンバーを含む高圧分散装置)
【0047】
3.特性評価
(1)塗工液中の樹脂の平均粒子径
後述の塗工液をイオン交換水で希釈して、固形分濃度が0.1~0.01重量%である希釈液を調製し、これを測定サンプルとして用いた。JIS Z8828:2013に基づき、動的光散乱法による粒子径測定装置(マイクロトラック・ベル社製「Nanotrac WaveII-UT151」)を用いて、24℃における前記希釈液中の樹脂の散乱光強度基準による調和平均粒子径を測定し、この値を樹脂の平均粒子径として使用した。結果を表1に示す。
【0048】
(2)積層体の酸素透過度
後述の積層体の酸素透過度を、JIS K7126-2:2006に基づき、酸素透過度測定装置(MOCON 社製「OX-TRANML」)にて23℃および0%RHまたは85%RHの条件下で測定を行った。結果を表1に示す。
【0049】
4.塗工液の調製
実施例1:塗工液(1)の調製
(1)PVA(1)を含む混合物の調製
分散釜(浅田鉄工社製「デスパMH-L」)に、イオン交換水(112.86g)と、PVA(1)(5.94g)とを添加し、得られた混合物を1,500rpmおよび周速度4.1m/分で撹拌しながら、95℃に昇温した。混合物を95℃、1,500rpmおよび周速度4.1m/分で30分間撹拌した後、60℃に冷却し、1,500rpmおよび周速度4.1m/分でさらに撹拌しながら、混合物にイソプロパノール(212.4g)およびイオン交換水(73.26g)を5分間かけて滴下した。その後、混合物を室温まで冷却し、PVA(1)を含む混合物(404.46g)を得た。
【0050】
(2)PAA(1)を含む混合物の調製
別の分散釜(浅田鉄工社製「デスパMH-L」)に、イオン交換水(48.015g)と、PAA(1)(1.485g)とを添加し、得られた混合物を、室温、1,500rpmおよび周速度4.1m/分で撹拌して、PAA(1)を含む混合物(49.5g)を得た。
【0051】
(3)PVA(1)およびPAA(1)を含む混合物の調製
上記のようにして得られた分散釜(浅田鉄工社製「デスパMH-L」)中のPVA(1)を含む混合物(404.46g)を、室温、1,500rpmおよび周速度4.1m/分で撹拌しながら、そこにPAA(1)を含む混合物(49.5g)を徐々に添加して、PVA(1)およびPAA(1)を含む混合物(約454g)を得た。
【0052】
(4)高圧分散処理および塗工液(1)の調製
PVA(1)およびPAA(1)を含む混合物(約454g)を、高圧分散装置(1)のシングルノズルチャンバーにて、処理圧力150MPaで2度処理して、分散液を得た。得られた分散液(約454g)および水酸化ナトリウム水溶液(0.83g、濃度:10重量%)を混合し、得られた混合物を、23℃、1,500rpmおよび周速度4.1m/分で5分間撹拌して、塗工液(1)を得た(PVA(1)の含有量:1.31重量%、PAA(1)の含有量:0.33重量%、水の含有量:51.65重量%、イソプロパノールの含有量:46.7重量%)。
【0053】
実施例2:塗工液(2)の調製
(1)PVA(1)およびPAA(1)を含む混合物の調製
実施例1と同様にして、PVA(1)およびPAA(1)を含む混合物(約454g)を得た。
【0054】
(2)高圧分散処理および塗工液(2)の調製
PVA(1)およびPAA(1)を含む混合物(約454g)を、高圧分散装置(2)にて、処理圧力100MPaで2度処理して、分散液を得た。得られた分散液(約454g)および水酸化ナトリウム水溶液(0.83g、濃度:10重量%)を混合し、得られた混合物を、23℃、1,500rpmおよび周速度4.1m/分で5分間撹拌して、塗工液(2)を得た(PVA(1)の含有量:1.31重量%、PAA(1)の含有量:0.33重量%、水の含有量:51.65重量%、イソプロパノールの含有量:46.7重量%)。
【0055】
実施例3:塗工液(3)の調製
(1)PVA(1)およびPAA(1)を含む混合物の調製
実施例1と同様にして、PVA(1)およびPAA(1)を含む混合物(約454g)を得た。
【0056】
(2)高圧分散処理および塗工液(3)の調製
PVA(1)およびPAA(1)を含む混合物(約454g)を、高圧分散装置(2)にて、処理圧力50MPaで2度処理して、分散液を得た。得られた分散液(約454g)および水酸化ナトリウム水溶液(0.83g、濃度:10重量%)を混合し、得られた混合物を、23℃、1,500rpmおよび周速度4.1m/分で5分間撹拌して、塗工液(3)を得た(PVA(1)の含有量:1.31重量%、PAA(1)の含有量:0.33重量%、水の含有量:51.65重量%、イソプロパノールの含有量:46.7重量%)。
【0057】
比較例1:塗工液(4)の調製
(1)PVA(2)を含む混合物の調製
分散釜(浅田鉄工社製「デスパMH-L」)に、イオン交換水(90g)と、PVA(2)(10g)とを添加し、得られた混合物を1,500rpmおよび周速度4.1m/分で撹拌しながら、95℃に昇温した。混合物を95℃、1,500rpmおよび周速度4.1m/分で30分間撹拌した後、室温まで冷却し、PVA(2)を含む混合物(100g)を得た。
【0058】
(2)PAA(2)を含む混合物の調製
別の分散釜(浅田鉄工社製「デスパMH-L」)に、イオン交換水(75g)と、PAA(2)およびイオン交換水の混合物(和光純薬工業社製、PAA(2)およびイオン交換水の混合物中のPAA(2)の濃度:25重量%)50gとを添加し、得られた混合物を、室温、1,500rpmおよび周速度4.1m/分で撹拌して、PAA(2)を含む混合物(125g)を得た。
【0059】
(3)塗工液(4)の調製
上述のようにして得られた、PVA(2)を含む混合物(60g)とPAA(2)を含む混合物(40g)とを混合し、得られた混合物を、23℃、1,500rpmおよび周速度4.1m/分で30分間撹拌して、PVA(2)およびPAA(2)を含む混合物(100g)を得た。得られた混合物(100g)および水酸化ナトリウム水溶液(0.83g、濃度:10重量%)を混合し、23℃、1,500rpmおよび周速度4.1m/分で5分間撹拌して、塗工液(4)を得た(PVA(2)の含有量:5.95重量%、PAA(2)の含有量:3.97重量%、水の含有量:90重量%)。
【0060】
比較例2:塗工液(5)の調製
(1)PVA(3)を含む混合物の調製
分散釜(浅田鉄工社製「デスパMH-L」)に、イオン交換水(100g)と、PVA(3)(25g)とを添加し、得られた混合物を1,500rpmおよび周速度4.1m/分で撹拌しながら、95℃に昇温した。混合物を95℃、1,500rpmおよび周速度4.1m/分で30分間撹拌した後、室温まで冷却し、PVA(3)を含む混合物(125g)を得た。
【0061】
(2)PAA(3)を含む混合物の調製
別の分散釜(浅田鉄工社製「デスパMH-L」)に、イオン交換水(50.67g)と、PAA(3)(12g)と、水酸化ナトリウム(0.67g)とを添加し、得られた混合物を、室温、1,500rpmおよび周速度;4.1m/分で撹拌して、PAA(3)を含む混合物(63.34g)を得た。
【0062】
(3)塗工液(5)の調製
上述のようにして得られた、PVA(3)を含む混合物(21g)と、PAA(3)を含む混合物(51.72g)とを混合し、得られた混合物を、23℃、1,500rpmおよび周速度4.1m/分で撹拌して、塗工液(5)を得た(PVA(3)の含有量:5.78重量%、PAA(3)の含有量:13.47重量%、水の含有量:80重量%)。
【0063】
比較例3:塗工液(6)の調製
(1)PVA(1)およびPAA(1)を含む混合物の調製
実施例1と同様にして、PVA(1)およびPAA(1)を含む混合物(約454g)を得た。
【0064】
(2)高圧分散処理および塗工液(6)の調製
PVA(1)およびPAA(1)を含む混合物(約454g)を、高圧分散装置(3)のインターアクションチャンバーにて、処理圧力110MPaで1度処理して、分散液を得た。得られた分散液(約454g)および水酸化ナトリウム水溶液(0.83g、濃度:10重量%)を混合し、得られた混合物を、23℃、1,500rpmおよび周速度4.1m/分で5分間撹拌して、塗工液(6)を得た(PVA(1)の含有量:1.31重量%、PAA(1)の含有量:0.33重量%、水の含有量:51.65重量%、イソプロパノールの含有量:46.7重量%)。
【0065】
5.塗膜および積層体の調製
厚さ15μmの二軸延伸ナイロン(ONy)フィルム(ユニチカ社製「ON-U」)の片面をコロナ処理したものを基材として用いた。康井精機社製テストコーターを用いたマイクログラビア塗工法により、前記基材のコロナ処理面上に、実施例1~3および比較例1~3で得られた塗工液(1)~(6)のいずれかを塗工速度3m/分で塗布し、次いで乾燥炉を用いて100℃で2分間乾燥することによって、基材上に塗膜を形成して、積層体(基材/塗膜)を得た。
【0066】
なお、実施例1~3および比較例3で得られた塗工液(1)~(3)および(6)は、グラビアロールの線数:♯150(即ち、1インチに150本の溝)の条件で塗布し、比較例1で得られた塗工液(4)は、グラビアロールの線数:♯250(即ち、1インチに250本の溝)の条件で塗布し、比較例2で得られた塗工液(5)は、グラビアロールの線数:♯200(即ち、1インチに200本の溝)の条件で塗布した。
【0067】
基材上の塗膜の厚さ(乾燥後の厚さ)は、いずれも1μmであった。得られた積層体を、23℃および50%RH雰囲気下で24時間静置した後、23℃および0%RH、または23℃および80%RHの条件下での積層体の酸素透過度を、上述のようにして測定した。結果を表1に示す。また、表1には、実施例1~3および比較例1~3で使用した樹脂の種類および含有量、使用した高圧分散装置の種類、上述のようにして測定した樹脂の平均粒子径も記載する。
【0068】
【表1】
【0069】
表1の結果から示されるように、樹脂の平均粒子径が100~600nmである実施例1~3の塗工液から形成された積層体(基材/塗膜)は、前記平均粒子径の要件を満たさない比較例1~3の塗工液から形成された積層体に比べて、高湿度(85%RH)下での酸素透過度が低い。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明の塗工液から、高湿度下で低い酸素透過度を示すガスバリア層(塗膜)を形成することができる。基材上に前記塗膜が形成されている積層体は、食品、化粧品等の包装材料として有用である。