(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-19
(45)【発行日】2022-04-27
(54)【発明の名称】荷電粒子線装置、試料加工方法及び観察方法
(51)【国際特許分類】
H01J 37/20 20060101AFI20220420BHJP
H01J 37/26 20060101ALI20220420BHJP
H01J 37/317 20060101ALI20220420BHJP
【FI】
H01J37/20 F
H01J37/20 A
H01J37/26
H01J37/317 D
(21)【出願番号】P 2020518858
(86)(22)【出願日】2018-05-15
(86)【国際出願番号】 JP2018018784
(87)【国際公開番号】W WO2019220543
(87)【国際公開日】2019-11-21
【審査請求日】2020-10-30
(73)【特許権者】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテク
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】特許業務法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野間口 恒典
(72)【発明者】
【氏名】三瀬 大海
【審査官】大門 清
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-500722(JP,A)
【文献】特開2015-204296(JP,A)
【文献】特開平04-282545(JP,A)
【文献】特開平06-036085(JP,A)
【文献】特開2004-325136(JP,A)
【文献】特開2008-270073(JP,A)
【文献】特開2001-332205(JP,A)
【文献】特開2011-076960(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0169989(US,A1)
【文献】米国特許第9564291(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 37/20
H01J 37/26
H01J 37/317
G01N 1/00-1/44
G06K 19/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料を加工する荷電粒子線装置において、
前記荷電粒子線装置に挿入された前記試料から観察対象を切り取る切り取り部と、
前記試料から切り取られた
前記観察対象を支持部材に載置するプローブと、
前記支持部材に載置された前記観察対象を観察する観察部と、
前記観察対象の情報を取得する制御部と、
前記支持部材の書き込み位置に
、前記取得された前記観察対象の情報を書き込む書き込み部と、を備えることを特徴とする荷電粒子線装置。
【請求項2】
請求項1に記載の荷電粒子線装置において、
前記観察対象の情報は、前記観察対象の位置と前記書き込み位置との位置関係を含むことを特徴とする荷電粒子線装置。
【請求項3】
請求項2に記載の荷電粒子線装置において、
前記書き込み位置は、前記位置関係の基準位置であることを特徴とする荷電粒子線装置。
【請求項4】
請求項1に記載の荷電粒子線装置において、
前記書き込み部は、荷電粒子線により前記観察対象の情報を前記支持部材に書き込むことを特徴とする荷電粒子線装置。
【請求項5】
請求項1に記載の荷電粒子線装置において、
前記書き込み部は、前記支持部材に書き込みを行うプレス機を含むことを特徴とする荷電粒子線装置。
【請求項6】
請求項1に記載の荷電粒子線装置において、
前記制御部は、前記観察対象の情報から、前記支持部材に書き込まれるパターンを生成し、
前記観察対象の情報は、前記パターンとして書き込まれることを特徴とする荷電粒子線装置。
【請求項7】
請求項1に記載の荷電粒子線装置において、
表示部をさらに備え、
前記表示部は、前記支持部材に書き込まれる前記観察対象の情報を表示することを特徴とする荷電粒子線装置。
【請求項8】
荷電粒子線を用いて観察対象を観察する荷電粒子線装置において、
前記観察対象が載置され
、前記観察対象の情報が書き込み位置に書き込まれた支持部材を載置する試料ステージと、
前記荷電粒子線を用いて前記観察対象を観察する観察部と、
前記観察対象の情報を読み取る制御部と、
前記観察された前記観察対象の新たな情報を書き込む書き込み部と、を備え、
前記観察部は、前記支持部材の書き込み位置に書き込まれた前記観察対象の情報を観察し、
前記制御部は、前記観察対象の情報から、前記観察対象の位置と前記書き込み位置との位置関係を読み取り、
前記試料ステージは、前記位置関係に基づいて、前記観察対象を前記荷電粒子線の照射位置に移動させ、
前記観察部は、前記観察対象を観察
し、
前記書き込み部は、前記観察部の観察により得られた前記観察対象の新たな情報を前記支持部材に書き込むことを特徴とする荷電粒子線装置。
【請求項9】
請求項8に記載の荷電粒子線装置において、
前記観察部は、前記観察対象の情報を観察する前に、前記観察対象の情報を観察するよりも低い倍率で、前記支持部材に書き込まれた前記観察対象の情報を探索することを特徴とする荷電粒子線装置。
【請求項10】
請求項8に記載の荷電粒子線装置において、
表示部をさらに備え、
前記表示部は、前記観察部により観察された前記観察対象の情報を表示することを特徴とする荷電粒子線装置。
【請求項11】
荷電粒子線装置を用いて試料を加工する方法において、
前記荷電粒子線装置に前記試料を挿入するステップと、
前記試料から観察対象を切り取るステップと、
前記荷電粒子線装置に支持部材を挿入するステップと、
前記支持部材に前記観察対象を載置するステップと、
前記支持部材に載置された前記観察対象を観察するステップと、
前記観察対象の情報を取得するステップと、
前記支持部材の書き込み位置に
、前記取得された前記観察対象の情報を書き込むステップと、を備えることを特徴とする加工方法。
【請求項12】
請求項11に記載の加工方法において、
前記書き込むステップの後、前記支持部材を移動させるステップをさらに備えることを特徴とする加工方法。
【請求項13】
荷電粒子線装置を用いて観察対象を観察する観察方法において、
前記観察対象が載置された支持部材を前記荷電粒子線装置に挿入するステップと、
前記支持部材の書き込み位置に書き込まれた前記観察対象の情報を観察するステップと、
前記観察対象の情報から、前記観察対象の位置を判断するステップと、
前記判断された前記観察対象の位置を観察できるように前記支持部材を移動するステップと、
前記観察対象を観察するステップと、
前記観察により得られた前記観察対象の新たな情報を前記支持部材に書き込むステップと、を備えることを特徴とする観察方法。
【請求項14】
請求項13に記載の観察方法において、
前記観察対象の情報は、前記観察対象の位置と、前記観察対象の情報が書き込まれた前記
支持部材上の位置との位置関係を含むことを特徴とする観察方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷電粒子線装置、試料加工方法及び観察方法に関する。
【背景技術】
【0002】
透過電子顕微鏡(TEM)や走査透過電子顕微鏡(STEM)で観察する試料の前処理を集束イオンビーム(FIB)装置やイオンミリング装置を用いて行うことは、半導体分野をはじめ様々な分野で広く行われている。この際、前処理を実施する装置から観察を行う装置へ試料を移動させる必要があり、前処理を施した箇所の位置情報といった観察対象の情報を装置間で容易に共有する方法が望まれている。このような技術として、例えば特許文献1には、装置間で共用可能な試料ホルダを準備し、該試料ホルダに観察対象の情報を記録する記憶媒体を備えることで、観察対象の情報を共有する方法が開示されている。特許文献2には、試料を支持する試料カートリッジに、試料に関するデータを記憶する記憶媒体を設けた荷電粒子線装置用試料保持装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2006-156263号公報
【文献】特開2001-291483号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1及び2に記載の方法においては、情報の書き換えが可能な記憶媒体を用いていることから、書き込まれた観察対象の情報が消失してしまう可能性がある。また、試料ホルダ又は試料カートリッジから試料を着脱する際に、取り違いが起こってしまう可能性がある。さらに、試料を着脱する度にユーザーが情報の移動又は書き換えを行わなければならないため、手間である。
【0005】
そこで、本発明は、複数の装置間の移動を必要とする試料の観察において、装置間の移動が容易となる荷電粒子線装置、試料加工方法及び観察方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
代表的な本発明の荷電粒子線装置の一つは、荷電粒子線を用いて試料上の観察対象を加工する荷電粒子線装置において、前記試料を載置する試料ステージと、前記観察対象を観察する観察部と、前記試料の書き込み位置に前記観察対象の情報を書き込む書き込み部と、を備えることを特徴とする。
【0007】
また、本発明の荷電粒子線装置の一つは、荷電粒子線を用いて試料上の観察対象を観察する荷電粒子線装置において、前記試料を載置する試料ステージと、前記荷電粒子線を用いて前記試料を観察する観察部と、前記観察対象の情報を読み取る制御部と、を備え、前記観察部は、前記試料の書き込み位置に書き込まれた前記観察対象の情報を観察し、前記制御部は、前記観察対象の情報から、前記観察対象の位置と前記書き込み位置との位置関係を読み取り、前記試料ステージは、前記位置関係に基づいて、前記観察対象を前記荷電粒子線の照射位置に移動させ、前記観察部は、前記観察対象を観察することを特徴とする。
【0008】
代表的な本発明の試料加工方法の一つは、荷電粒子線装置を用いて試料を加工する方法において、前記荷電粒子線装置に前記試料を挿入するステップと、前記試料上の観察対象を観察するステップと、前記試料の書き込み位置に前記観察対象の情報を書き込むステップと、を備えることを特徴とする。
【0009】
代表的な本発明の観察方法の一つは、荷電粒子線装置を用いて試料上の観察対象を観察する観察方法において、前記試料に書き込まれた前記観察対象の情報を観察するステップと、前記観察対象の情報から、前記観察対象の位置を判断するステップと、前記判断された前記観察対象の位置を観察できるように前記試料を移動するステップと、前記観察対象を観察するステップと、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、複数の装置間の移動を必要とする試料の観察において、装置間の移動を容易にすることができる。
【0011】
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】第1の実施形態に係る荷電粒子線装置を示す概略図。
【
図2】第1の実施形態に係る試料の加工方法を示すフローチャート。
【
図3A】試料の加工時における荷電粒子線装置1の動作を示す概略図。
【
図3B】試料の加工時における荷電粒子線装置1の動作を示す概略図。
【
図3C】試料の加工時における荷電粒子線装置1の動作を示す概略図。
【
図3D】試料の加工時における荷電粒子線装置1の動作を示す概略図。
【
図3E】試料の加工時における荷電粒子線装置1の動作を示す概略図。
【
図3F】試料の加工時における荷電粒子線装置1の動作を示す概略図。
【
図4A】試料に書き込まれるパターンの一例を示す概略図。
【
図4B】試料に書き込まれるパターンの一例を示す概略図。
【
図4C】試料に書き込まれるパターンの一例を示す概略図。
【
図6】第1の実施形態に係るTEM装置を示す概略図。
【
図7】第1の実施形態に係る試料の観察方法を示すフローチャート。
【
図9】第2の実施形態に係る荷電粒子線装置を示す概略図。
【
図10】第2の実施形態に係る試料の観察方法を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。なお、図面は専ら発明の理解のために用いるものであり、権利範囲を減縮するものではない。また、各図において共通の構成については同一の参照番号が付されている。
【0014】
(1)第1の実施形態
<試料を加工する荷電粒子線装置の構成例>
図1を参照して、第1の実施形態に係る荷電粒子線装置1の構成について説明する。
図1は、本実施形態に係る荷電粒子線装置1を示す概略図である。
【0015】
荷電粒子線装置1は、
図1に示すように、イオンビームカラム101a(書き込み部)、イオンビームカラム制御器131、電子ビームカラム102a、電子ビームカラム制御器132、試料103が載置される試料ステージ104、試料ステージ制御器134、試料室105、荷電粒子検出器106(観察部)、荷電粒子検出器107、検出器制御器136及び137、X線検出器109、X線検出器制御器139、統合コンピュータ130(制御部)、入力デバイス151、並びにディスプレイ152(表示部)を備える。
【0016】
イオンビームカラム101aは、イオンビーム101bを発生するためのイオン源、イオンビーム101bを集束するためのレンズ、イオンビーム101bを走査し、シフトするための偏向系など、FIB装置として必要な構成要素を全て含んだ系である。イオンビーム101bとして、一般にガリウムイオンが使用されるが、加工や観察の目的に応じてイオン種は適宜変更することができる。また、イオンビーム101bは、集束イオンビームに限られず、ブロードなイオンビームでもよい。
【0017】
イオンビームカラム制御器131は、イオンビームカラム101aを制御する。例えば、イオンビームカラム101aのイオン源によるイオンビーム101bの発生、偏向系の駆動等を制御する。
【0018】
電子ビームカラム102aは、電子ビーム102bを発生するための電子源、電子ビーム102bを集束するためのレンズ、電子ビーム102bを走査し、シフトするための偏向系など、SEM装置として必要な構成要素を全て含んだ系である。
【0019】
電子ビームカラム制御器132は、電子ビームカラム102aを制御する。例えば、電子ビームカラム102aの電子源による電子ビーム102bの発生や、偏向系の駆動等を制御する。
【0020】
イオンビームカラム101aを通過したイオンビーム101b及び電子ビームカラム102aを通過した電子ビーム102bは、主にイオンビームカラムの光軸101cと電子ビームカラムの光軸102cとの交点であるクロスポイント171にフォーカスされる。
【0021】
本実施形態においては、
図1に示すように、イオンビームカラム101aを垂直配置し、電子ビームカラム102aを傾斜配置しているが、これに限られず、イオンビームカラム101aを傾斜配置し、電子ビームカラム102aを垂直配置してもよい。また、イオンビームカラム101aと電子ビームカラム102aの双方を傾斜配置してもよい。イオンビームカラム101a及び電子ビームカラム102aの代わりに、ガリウム集束イオンビームカラム、アルゴン集束イオンビームカラム及び電子ビームカラムを備えたトリプルカラム構成としてもよい。また、荷電粒子線装置1は、イオンビームカラム101aのみを備えていてもよいし、電子ビームカラム102aのみを備えていてもよい。すなわち、イオンビームカラム101aのみ、あるいは電子ビームカラム102aのみにより、試料103の加工及び観察を行うことができる。また、電子ビームカラム102aは、SEM装置に限られず、試料を透過した電子を用いて観察を行うTEM装置やSTEM装置とすることもできる。
【0022】
試料ステージ104は、試料室105内において、試料103にイオンビーム101b及び電子ビーム102bを照射できる位置に設けられる。試料ステージ104は、試料ステージ制御器134によりその駆動が制御され、平面移動や垂直移動、回転移動が可能である。試料ステージ104を駆動することにより、試料103の位置や向きを変更することができる。試料ステージ104は、例えば、イオンビーム101bの照射位置や電子ビーム102bの照射位置に試料103上の所望の箇所が位置するように移動させる。
【0023】
荷電粒子検出器106は、電子ビーム102bを試料103に照射した際に発生する荷電粒子を検出する。荷電粒子検出器107は、イオンビーム101bを試料103に照射した際に発生する荷電粒子を検出する。荷電粒子検出器106及び107として、電子だけでなくイオンの検出も可能な複合荷電粒子検出器を用いてもよい。
【0024】
検出器制御器136は、荷電粒子検出器106を制御する。検出器制御器137は、荷電粒子検出器107を制御する。検出器制御器136及び137は、それぞれ荷電粒子検出器106及び107からの検出信号を演算処理し、画像化する回路又は演算処理部(図示せず)を備える。
【0025】
X線検出器109は、試料103が発するX線を検出する。X線検出器109の代わりに、質量分析器などを搭載してもよい。
【0026】
X線検出器制御器139は、X線検出器109を制御する。X線検出器制御器139は、X線検出器109からの検出信号を演算処理し、画像化する回路又は演算処理部(図示せず)を備える。
【0027】
統合コンピュータ130は、イオンビームカラム制御器131、電子ビームカラム制御器132、試料ステージ制御器134、検出器制御器136及び137、並びにX線検出器制御器139のそれぞれと互いに通信可能であり、荷電粒子線装置1全体の動作を制御する。統合コンピュータ130は、入力デバイス151によるユーザーからの指示により、あるいは予め設定された条件に従い、上記の各制御器を制御し、試料103へのパターンの書き込みや、パターンに基づく観察対象の情報の読み取り、観察対象の観察等を行わせる。また、統合コンピュータ130は、荷電粒子線装置1の各制御器から受信した情報等を記憶するための記憶部(図示せず)を備える。
【0028】
入力デバイス151は、例えば観察対象の情報の入力、イオンビーム101bや電子ビーム102bの照射条件の変更、試料ステージ104の位置の変更といった各種指示をユーザーが入力するためのデバイスである。例えば、キーボード、マウス等を入力デバイスとすることができる。
【0029】
ディスプレイ152は、GUI画面153等を表示する。GUI画面153は、荷電粒子線装置1の各構成を制御するための画面であり、GUI画面153に各種指示が入力されると、該指示を統合コンピュータ130に送信する。ディスプレイ152は、GUI画面153として、例えば、観察対象の情報を入力する画面、荷電粒子線装置1の各構成の状態を示す画面、観察により取得された観察対象の情報(画像を含む)を表示する画面、イオンビーム101b及び電子ビーム102bの照射条件を変更するための指示画面、試料ステージ104の位置を変更するための指示画面等を表示することができる。ディスプレイ152は、1つであっても複数設けられてもよい。
【0030】
試料室105には、上記以外にも、ガスデポジションユニット(図示せず)、マイクロプローブ110が搭載されていてもよい。ガスデポジションユニット、マイクロプローブ110は、それぞれその駆動を制御する制御器を有する。
【0031】
ガスデポジションユニットは、試料103への保護膜の作製やマーキングに使用され、荷電粒子線の照射により堆積膜を形成するデポガスを貯蔵する。デポガスは、必要に応じてノズル先端から供給することができる。
【0032】
マイクロプローブ110は、プローブ駆動部によって試料室105内を移動できるプローブを含む。マイクロプローブ110は、イオンビームカラム101aにより加工又は切断された試料103の特定箇所をピックアップする。プローブは、試料103に形成された微小な試料片を摘出したり、試料103の表面に接触することで試料へ電位を供給したりすることにも使用することができる。
【0033】
試料室105には、真空排気するための減圧装置、コールドトラップ、光学顕微鏡などを搭載してもよい。また、試料室105には、三次電子検出器やSTEM検出器、後方散乱電子検出器、低エネルギー損失電子検出器などの検出器を搭載してもよい。
【0034】
<試料の加工方法>
次に、
図2~5を参照して、本実施形態に係る荷電粒子線装置1による試料の加工方法について説明する。以下において、荷電粒子線装置1のイオンビームカラム101aをFIB装置とし、電子ビームカラム102aをSEM装置としたFIB-SEM装置を用いて、TEM(又はSTEM)用試料を加工する場合を想定する。
【0035】
本実施形態において、第1の試料103は、観察対象となる箇所を有する試料であり、例えばウエハ、半導体材料、プリント基板等である。第2の試料113は、第1の試料103から採取された観察対象173と、観察対象173の支持部材183を含むTEM(又はSTEM)用試料である。支持部材183は、例えば、切欠きメッシュやメッシュである。
【0036】
図2は、本実施形態に係る試料の加工方法を示すフローチャートである。
図3A~3Fは、本実施形態に係る試料の加工時における荷電粒子線装置1の動作を示す概略図である。
図3において、図示の簡略化のため、荷電粒子線装置1のイオンビームカラム101a、試料ステージ104及びマイクロプローブ110以外の構成は図示を省略している。
図4A~4Cは、試料に書き込まれるパターンの一例を示す図である。
図5は、GUI画面の一例を示す図である。
【0037】
まず、ステップS1において、ユーザーは、荷電粒子線装置1の試料室105に第1の試料103を挿入し、試料ステージ104上に載置する(
図3A)。
【0038】
ステップS2において、試料ステージ制御器134は、ユーザーによりGUI画面153から入力された指示、あるいは予め設定された観察対象となる位置172を統合コンピュータ130から受信し、試料ステージ104を移動する。ユーザーは、イオンビームカラム101a又は電子ビームカラム102aを用いて、第1の試料103において観察対象となる位置172を確認する(
図3B)。位置172は、ユーザーが本ステップS2において任意に決定してもよいし、予め設定した箇所でもよい。位置172が予め設定されている場合、ユーザーは、GUI画面153から指示を入力することにより、位置172を微調整してもよい。確認された位置172は、統合コンピュータ130に送信される。
【0039】
ステップS3において、統合コンピュータ130は、ステップS2において確認された位置172をイオンビームカラム制御器131に送信する。イオンビームカラム制御器131は、イオンビームカラム101aを駆動して、イオンビーム101bにより位置172から観察対象173を切り取る(
図3C)。統合コンピュータ130は、位置172をプローブ駆動部に送信して、プローブ駆動部は、マイクロプローブ110を駆動し、位置172から観察対象173をピックアップする(
図3D)。
【0040】
ステップS4において、ユーザーは、第1の試料103を試料ステージ104から退避させ、観察対象173を支持するための支持部材183を荷電粒子線装置1に挿入する。
図3A~3Fにおいては、支持部材183が切欠きメッシュである例を示す。支持部材183は、試料ステージ104に支持されても構わないし、異なる試料ステージに支持されても構わない。
【0041】
ステップS5において、ユーザーは、観察対象173の位置と、観察対象173が搭載される支持部材183上の搭載位置とをイオンビームカラム101a又は電子ビームカラム102aで確認する(
図3E)。このとき、ユーザーは、観察対象173の位置と、支持部材183の搭載位置とを、GUI画面153へ入力することにより、統合コンピュータ130に指示する。
【0042】
ステップS6において、プローブ駆動部は、統合コンピュータ130から観察対象173の位置と、支持部材183の搭載位置とを受信する。そしてプローブ駆動部は、マイクロプローブ110を駆動して、ステップS5において確認した支持部材183上の搭載位置に、ピックアップした観察対象173を搭載し、第2の試料113とする(
図3E)。このとき、例えば固定用のガスを用いて観察対象173を支持部材183に固定させることが好ましい。固定用のガスとして、例えばフェナントレン(C
14H
10)やヘキサカルボニルタングステン(W(CO)
6)等を用いることができる。
【0043】
ステップS7において、ユーザーは、支持部材183上の観察対象173が搭載位置に搭載されているかどうかをイオンビームカラム101a又は電子ビームカラム102aで確認する。
【0044】
ステップS8において、試料ステージ制御器134は、観察対象173に関する情報を書き込むための書き込み位置174がイオンビーム101bの照射位置に位置するように試料ステージ104を駆動し、第2の試料113を移動させる。このとき、統合コンピュータ130は、観察対象173の位置と書き込み位置174との位置関係を記憶する。該位置関係は、例えば、観察対象173から書き込み位置174への移動距離及び移動方向を示すベクトルや、X座標及びY座標の変位等とすることができる。また、統合コンピュータ130は、書き込み位置174の座標をさらに記憶してもよい。
【0045】
ステップS9において、ユーザーは、入力デバイス151を用いて、
図5に示すGUI画面153に、その他観察対象173の情報を適宜入力する。GUI画面153は、観察対象173の情報として、観察対象173の識別番号(名前やロット番号など)、観察対象173の位置、大きさ、組成、コメント、作業日等を入力する箇所を有していてもよい。ユーザーが観察対象173の情報を入力後、GUI画面153上の「Write」ボタンをクリックすることで、統合コンピュータ130は、入力された観察対象173の情報を受信する。
【0046】
統合コンピュータ130は、ステップS8において記憶された観察対象173の位置と書き込み位置174との位置関係、及びステップS9において入力された観察対象173の情報に基づいて、第2の試料113に書き込むパターンを生成する。ユーザーが観察対象173の情報を入力せずに「Write」ボタンをクリックした場合は、ステップS8において記憶された観察対象173の位置と書き込み位置174との位置関係のみに基づいてパターンを生成する。パターンは、文字(
図4A)でも構わないし、バーコード(
図4B)、QRコード(登録商標)(
図4C)などのような2次元パターンでも構わない。書き込まれるパターンの形状は目的に応じて適宜変更することができる。
【0047】
ステップS10において、イオンビームカラム制御器131は、統合コンピュータ130が生成したパターンを受信して、イオンビームカラム101aを駆動してイオンビーム101bを照射させ、書き込み位置174にパターンを書き込む(
図3F)。
図3Fに示すように、パターンを書き込みやすいように、第2の試料113の向きを変更して、支持部材183における観察対象173の載置面でない面にパターンを書き込むこともできる。パターンの書き込み位置は、支持部材183における観察対象173の載置面とすることもできる。
【0048】
なお、パターンの書き込み手段は、イオンビーム101bの照射に限定されず、適宜変更可能である。例えば、電子ビーム102bとガスデポジションユニットを用いた堆積膜、プレス、レーザー加工、エッチング等によりパターンを書き込むこともできる。また、書き込まれるパターンは、第2の試料113を貫通していてもよいし、貫通していなくても良い。
【0049】
本実施形態においては、観察対象173と書き込み位置174との位置関係を書き込むこととしたが、
図11A~11Dにおいて後述するように、書き込み位置174とは別に基準位置を設け、該基準位置と観察対象173との位置関係を書き込み位置174に書き込んでも構わない。基準位置は、支持部材183に予め備えられている特徴的な形状でも構わないし、支持部材183の中心や端部などのように特定可能な位置でも構わない。また、書き込みの後に、FIB装置を用いた加工痕や、電子ビームを用いて作られた堆積膜などを形成して、基準位置とすることもできる。さらに、書き込み位置174を基準位置とすることもできる。
【0050】
最後に、ステップS11において、ユーザーは、第2の試料113を荷電粒子線装置1から取り出し、保管する。
【0051】
本実施形態においては、第2の試料113を荷電粒子線装置1(FIB-SEM装置)で加工した後、TEM装置へ移動させて観察することを想定しているため、第2の試料113を荷電粒子線装置1から取り出したが、必ずしも第2の試料113を取り出すとは限らない。例えば、荷電粒子線装置に複数の分析器が備えられている場合には、第1の分析位置から、第2の分析位置へ第2の試料113を移動させるプロセスとなるかもしれない。また、荷電粒子線装置が、複数の試料が待機又は保管できる空間を備える場合は、待機場所又は保管場所に第2の試料113を移動するプロセスとなるかもしれない。
【0052】
以上のように、本実施形態においては、支持部材183上に載せる観察対象173が1つの場合を例として示したが、観察対象173は複数あっても構わない。
【0053】
<試料を観察する荷電粒子線装置の構成例>
次に、
図6を参照して、本実施形態に係る試料を観察する荷電粒子線装置の構成について説明する。本実施形態においては、TEM装置6による観察を例として説明する。
図6は、本実施形態に係るTEM装置6の概略図である。
【0054】
TEM装置6は、荷電粒子線装置1により観察対象173の情報が書き込まれた第2の試料113を観察するための装置である。TEM装置6は、
図6に示すように、電子ビームカラム602a(観察部)、電子ビームカラム制御器632、第2の試料113が載置されるTEM用試料ステージ614、TEM用試料ステージ制御器644、試料交換室611、荷電粒子検出器606及び608、検出器制御器636及び638、X線検出器609、X線検出器制御器639、プレス機612、プレス機制御器642、統合コンピュータ630(制御部)、入力デバイス651並びにディスプレイ652を備える。
【0055】
電子ビームカラム602aは、電子ビームを発生するための電子源、電子ビームを集束するためのレンズ、電子ビームを走査、シフトするための偏向系など、TEM(又はSTEM)装置として必要な構成要素を全て含んだ系である。電子ビームカラム602aを通過した電子ビームは、第2の試料113に照射される。
【0056】
電子ビームカラム制御器632は、電子ビームカラム602aを制御する。具体的には、電子ビームカラム602aの電子源による電子ビームの発生や、偏向系の駆動等を制御する。
【0057】
なお、本実施形態においては、
図6に示すように、電子ビームカラム602aを垂直配置しているが、これに限られず、電子ビームカラム602aを傾斜配置してもよい。
【0058】
TEM用試料ステージ614は、試料室605内において、第2の試料113に電子ビームを照射できるように設けられる。TEM用試料ステージ614は、TEM用試料ステージ制御器644によりその駆動が制御され、平面移動や垂直移動、回転移動が可能である。TEM用試料ステージ614を駆動することにより、第2の試料113の位置や向きを変更することができる。例えば、TEM用試料ステージ614は、電子ビームの照射位置に試料が位置するように移動する。
【0059】
試料交換室611は、試料室605に挿入されるTEM用試料を交換する場所である。
【0060】
荷電粒子検出器606及び608は、電子ビームを第2の試料113に照射した際に発生する荷電粒子を検出する。荷電粒子検出器606及び608として、電子だけでなくイオンの検出も可能な複合荷電粒子検出器を用いてもよい。
【0061】
検出器制御器636は、荷電粒子検出器606を制御する。検出器制御器638は、荷電粒子検出器608を制御する。検出器制御器636及び638は、検出信号を演算処理し、画像化する回路又は演算処理部(図示せず)を備える。
【0062】
試料室605には、
図1に示した荷電粒子線装置1と同様に、ガスデポジションユニット、マイクロプローブ等が搭載されてもよい。
【0063】
X線検出器609は、第2の試料113が発するX線を検出する。X線検出器609の代わりに、質量分析器などを搭載してもよい。
【0064】
X線検出器制御器639は、X線検出器609を制御する。X線検出器制御器639は、X線検出器609からの検出信号を演算処理し、画像化する回路又は演算処理部(図示せず)を備える。
【0065】
プレス機612は、観察により得られた観察対象173の情報を第2の試料113に書き込む機構である。
図6では、情報を書き込むために試料交換室611にプレス機612を搭載したが、情報を書き込む目的に応じてその手段は変更可能である。
【0066】
プレス機制御器642は、プレス機612の駆動を制御する。
【0067】
試料室605には、真空排気するための減圧装置、コールドトラップ、光学顕微鏡などを搭載してもよい。また、試料室605には、三次電子検出器やSTEM検出器、後方散乱電子検出器、低エネルギー損失電子検出器などの検出器を搭載してもよい。
【0068】
統合コンピュータ630は、電子ビームカラム制御器632、TEM用試料ステージ制御器644、検出器制御器636及び638、X線検出器制御器639のそれぞれと互いに通信可能であり、TEM装置6全体の動作を制御する。統合コンピュータ630は、入力デバイス651によるユーザーからの指示により、あるいは予め設定された条件に従い、上記の各制御器を制御し、観察対象173の情報の読み取り、第2の試料113への観察対象173の情報の書き込み、観察対象173の観察等を行わせる。また、統合コンピュータ630は、TEM装置6の各制御器から受信した情報等を記憶するための記憶部(図示せず)を備える。
【0069】
入力デバイス651は、電子ビームの照射条件の変更、TEM用試料ステージ614の位置の変更といった各種指示をユーザーが入力するためのデバイスである。例えば、キーボード、マウス等を入力デバイスとすることができる。
【0070】
ディスプレイ652は、
図8に示すGUI画面653等を表示する。GUI画面653は、TEM装置6を制御するための画面であり、入力デバイス651によりGUI画面653に各種指示が入力されると、該指示を統合コンピュータ630に送信する。ディスプレイ652は、GUI画面653として、例えば、TEM装置6の各構成の状態を示す画面、観察により取得された観察対象173の情報(画像を含む)を表示する画面、観察により得られた観察対象173の情報を入力する画面、電子ビームの照射条件を変更するための指示画面、TEM用試料ステージ614の位置を変更するための指示画面等を表示することができる。ディスプレイ652は、1つであっても複数設けられてもよい。
【0071】
なお、本実施形態において、TEM装置6の代わりに、STEM装置とすることもできる。
【0072】
<試料の観察方法>
次に、
図7及び8を参照して、本実施形態に係るTEM装置6による試料の観察方法を説明する。
図7は、本実施形態に係る試料の観察方法を示すフローチャートである。
図8は、GUI画面653を示す概略図である。
【0073】
まず、ステップS12において、ユーザーは、TEM装置6に、パターンが書き込まれた第2の試料113を挿入し、TEM用試料ステージ614上に載置する。
【0074】
ステップS13において、ユーザーは、電子ビームカラム602aを用いて、第2の試料113の全体を低倍率で観察することにより、パターンを探索する。TEM用試料ステージ制御器644は、パターンの書き込み位置174が電子ビームの照射位置に位置するように、TEM用試料ステージ614を移動する。
【0075】
パターンの書き込み位置174は、予め登録してあってもよい。例えば、パターンの書き込み位置174は、
図2のステップS8におけるパターンの書き込み位置174の座標をユーザーが入力することにより、予め登録することができる。
【0076】
また、ステップS13におけるパターンの探索は、自動で行われてもよい。パターンの探索が自動で行われる場合、荷電粒子線装置1の統合コンピュータ130と、TEM装置6の統合コンピュータ630が互いに通信可能であることが好ましい。この場合、統合コンピュータ630は、書き込み位置174の座標を統合コンピュータ130から受信し、TEM用試料ステージ制御器644に送信する。これにより、TEM用試料ステージ制御器644は、書き込み位置174が電子ビームの照射位置に位置するようにTEM用試料ステージ614を移動することができる。
【0077】
ステップS14において、電子ビームカラム602aは、書き込み位置174に電子ビームを照射して、第2の試料113に書き込まれたパターンを観察する。観察は、二次電子検出器を用いてもよいし、透過電子検出器を用いてもよい。また、
図6には図示されていないが、TEM装置6は、パターンを観察するためのカメラなど、読み取り機を別途搭載しても良い。パターンの観察手段は、目的に応じて適宜変更することができる。
【0078】
ステップS15において、ディスプレイ652は、ステップS14において観察されたパターンをGUI画面653として表示する。このとき、ユーザーは、パターンに焦点が合うように、GUI画面653から指示を入力して、電子ビームカラム602aの観察倍率を適宜変更してもよい。
【0079】
ステップS16において、統合コンピュータ630は、観察されたパターンに基づいて、観察対象173の位置と書き込み位置174との位置関係、その他の観察対象173の情報を読み取る。
【0080】
ステップS17において、ディスプレイ652は、
図8に示すように、読み取った観察対象173の情報を統合コンピュータ630から受信して、GUI画面653に表示する。
【0081】
ステップS18において、統合コンピュータ630は、読み取られた観察対象173の位置と書き込み位置174との位置関係をTEM用試料ステージ制御器644に送信する。TEM用試料ステージ制御器644は、観察対象173が電子ビームの照射位置に位置するように、TEM用試料ステージ614を移動させる。
【0082】
ステップS19において、ユーザーは、適宜観察倍率を上げ、観察対象173を観察する。観察は、マニュアルで行われてもよいし、統合コンピュータ630等により自動で行われても良い。
【0083】
ステップS20において、ディスプレイ652は、観察対象173の観察結果を表示する。また、統合コンピュータ630は、観察対象173の観察結果を記憶部に保存する。観察結果を保存する場合、ステップS16において読み込まれた情報と紐づけて保存しても良い。
【0084】
最後に、ステップS21において、ユーザーは、第2の試料113をTEM装置6から取り出し、保管又は破棄する。第2の試料113を保管する場合には、TEM装置6から取り出す前に、プレス機612を用いて、観察により新たに得られた観察対象173の情報を第2の試料113に書き込むことができる。また、第2の試料113の保管する空間を備えるTEM装置6の場合には、第2の試料113をTEM装置6から取り出さず、保管場所に移動させても良い。
【0085】
<技術的効果>
以上のように、本実施形態によれば、試料自体に観察対象の情報を書き込む構成を採用している。このため、観察対象の情報を容易に装置間で共有することができ、装置間の移動が容易となる。また、試料自体に観察対象の情報が書き込まれているため、ユーザーが試料と観察対象の情報を紐づける必要がない。この点は、複数の装置を用いて観察や分析を多角的に行う場合に非常に大きなメリットである。装置間を移動するたびに、ユーザーが観察対象の情報を入力したり、移動させたりすると、その度に情報を取り違う可能性が生じる。しかし、試料自体に観察対象の情報が書き込まれていると、ユーザーの作業は軽減され、情報を取り違える可能性もなくなる。この点は、トレーサビィティーの観点からも非常に優れている。
【0086】
また、試料に観察対象の位置が書き込まれているため、一度装置から試料を取り出しても、再度装置に試料を挿入すれば、同じ位置を観察できるように試料を移動させることができ、定点観察を行いたい場合にも便利である。従って、例えば、一定時間試料を大気に放置した後の経過観察や、ガス雰囲気化で反応させた後の変化を観察したい場合などにも有効である。
【0087】
(2)第2の実施形態
<試料を観察する荷電粒子線装置の構成例>
図9を参照して、第2の実施形態に係る荷電粒子線装置9の構成について説明する。
図9は、第2の実施形態に係る荷電粒子線装置9を示す概略図である。本実施形態における荷電粒子線装置9の構成は、イオンビームカラム101a及びイオンビームカラム制御器131の代わりに、プレス機912及びプレス機制御器942が備わっている点において、第1の実施形態における荷電粒子線装置1と異なる。また、荷電粒子線装置9において、電子ビームカラム102aを垂直配置している。それ以外の構成は、第1の実施形態の荷電粒子線装置1と同様であるため、説明を省略する。
【0088】
プレス機912は、試料に情報を書き込む機構である。プレス機制御器942は、プレス機912の駆動を制御する。これにより得られる効果は、第1の実施形態と同じである。また、本実施形態においてはプレス機912を備えたが、マイクロプローブをプレス機912として用いて試料に情報を書き込むこともできる。
【0089】
本実施形態に係る荷電粒子線装置9は、他の荷電粒子線装置、あるいは過去に荷電粒子線装置9により加工又は観察された試料903の観察対象273を観察し、観察対象273の情報を試料903に書き込むための装置である。荷電粒子線装置9は、例えばSEM装置、TEM装置又はSTEM装置等とすることができる。
【0090】
<試料の観察方法>
次に、
図10を参照して、第2の実施形態に係る荷電粒子線装置9による試料の観察方法について説明する。
図10は、本実施形態に係る試料の観察方法を示すフローチャートである。本実施形態に係る試料の観察方法は、観察対象273を探索して観察後、観察対象の位置を記憶する点で、第1の実施形態と異なっている。
【0091】
まず、ステップS101において、ユーザーは、試料903を荷電粒子線装置9に挿入し、試料ステージ104上に載置する。
【0092】
ステップS102において、ユーザーは、電子ビームカラム102aを用いて、試料903の全体を観察することにより、試料903上の観察対象273を探索する。
【0093】
観察対象273の探索は、自動で行われてもよい。この場合、観察対象273の位置は、例えば、観察対象273の加工又は観察を行った他の装置から観察対象273の位置を統合コンピュータ130が受信することにより、自動で特定することができる。また、過去に荷電粒子線装置9により観察対象273を観察した際に記憶した観察対象273の位置を統合コンピュータ130が受信することにより、観察対象273の位置を自動で特定することもできる。
【0094】
ステップS103において、試料ステージ制御器134は、観察対象273が電子ビームの照射位置に位置するように試料ステージ104を移動する。その後、ユーザーは、電子ビームカラム102aを用いて、観察対象273を観察する。
【0095】
ステップS104において、統合コンピュータ130は、試料903上の観察対象273の位置を記憶する。本ステップにおいて記憶される観察対象273の位置は、X座標及びY座標でもよいし、書き込み位置274との位置関係や試料903の基準位置との位置関係でもよい。
【0096】
ステップS105において、試料ステージ制御器134は、観察対象273の情報を書き込む位置である書き込み位置274が、プレス機912による書き込みが行われる位置に位置するように、試料ステージ104を移動する。
【0097】
書き込み位置274は、本ステップにおいてユーザーが任意に設定してもよいし、予め登録されていてもよい。書き込み位置274を予め登録する場合、例えば、観察対象273の加工又は観察を行った他の装置における書き込み位置274や、過去に荷電粒子線装置9により観察対象273を観察した際にパターンを書き込んだ書き込み位置274と同じ位置を登録してもよいし、異なる位置を登録してもよい。
【0098】
図11A~11Dを参照して、ステップS105における書き込み位置274の例について説明する。
図11A~11Dは、書き込み位置274の一例を示す概略図である。上述のように、書き込み位置274とは別に基準位置を設け、該基準位置と観察対象との位置関係を試料の書き込み位置274に書き込むこともできる。基準位置は、試料に予め備えられている特徴的な形状でも構わないし、試料の中心や端部などのように特定可能な位置でも構わない。また、書き込みの後に、基準位置として、FIB装置を用いた加工痕や電子ビームを用いた堆積膜などを形成しても構わない。
【0099】
図11Aは、FIB-SEM装置により作成されたTEM用試料903aを示している。観察対象273の位置を示すための基準位置は、書き込み位置274の一部としても良いし、
図11Aに示すように、支持部材としてのメッシュ283aの第1の特徴点284のようなエッジ部としてもよいし、第2の特徴点285のような2つの稜線が交わる点としてもよい。また、
図11Aに示すように、1つの書き込み位置274に、複数の観察対象273a~273cの情報を書き込んでもよい。
【0100】
図11Bは、メッシュ283bの上に観察対象273が支持されたTEM用試料903bを示している。
図11Bに示すように、メッシュ283bの淵を書き込み位置274としても良い。また、メッシュの種類は様々有り、予め数字などが刻印されたものもある。その場合には、それらの刻印を基準位置として利用してもよい。
【0101】
図11Cは、SEM用試料903cの一例を示している。
図11Cに示すように、1つのSEM用試料903cに観察対象となる複数の位置272a、272bがある場合には、複数の観察対象ごとに書き込み位置274a、274bを設けてもよい。
【0102】
図11Dは、ウエハ903dを示している。ウエハ903dの場合、ウエハ903dの方位を示すノッチ907を基準位置としてもよい。
図11Dでは、観察対象の位置272c、272dが2つ示されているが、1つでも構わないし、2つ以上あっても構わない。また、書き込み位置274は、図示された位置に限られない。
【0103】
ステップS106において、ユーザーは、入力デバイス151を用いて、観察対象273の情報をGUI画面153に適宜入力する。なお、本ステップにおける観察対象273の情報の入力は、ステップS101~S105のどの段階で行われても構わない。ユーザーが観察対象273の情報を入力後、GUI画面153上の「Write」ボタンをクリックすることで、統合コンピュータ130は、入力された観察対象273の情報を受信する。このとき、統合コンピュータ130は、観察対象273の位置に関する情報、及び入力された観察対象273の情報に基づいて、書き込みパターンを生成する。
【0104】
ステップS107において、プレス機制御器942は、統合コンピュータ130が生成したパターンを受信し、プレス機912を駆動して該パターンを試料903に書き込む。
【0105】
最後に、ステップS108において、ユーザーは、試料903を装置から取り出し、保管又は破棄する。
【0106】
本実施形態における観察方法は、第1の実施形態においても適用可能である。
【0107】
<技術的効果>
以上のように、本実施形態によれば、観察対象の位置を記憶する構成を採用しているため、一度装置から試料を取り出しても、再度装置に試料を挿入すれば、同じ位置を観察できるように試料を移動させることができる。従って、例えば、定点観察を行いたい場合に特に有効であり、一定時間試料を大気に放置した後の経過観察や、ガス雰囲気化で反応させた後の変化を観察したい場合などに有効である。
【符号の説明】
【0108】
101a:イオンビームカラム
101b:イオンビーム
101c:イオンビームカラムの光軸
102a、602a:電子ビームカラム
102b:電子ビーム
102c:電子ビームカラムの光軸
103、903:試料
104:試料ステージ
105、605:試料室
106、107、606、608:荷電粒子検出器
109、609:X線検出器
130、630:統合コンピュータ
131:イオンビームカラム制御器
132、632:電子ビームカラム制御器
134:試料ステージ制御器
136、137、636、638:検出器制御器
139、639:X線検出器制御器
151、651:入力デバイス
152、652:ディスプレイ
153、653:GUI画面
171:クロスポイント
110:マイクロプローブ
113:第2の試料
172、272、272a~272d:観察対象の位置
173、273:観察対象
174、274、274a、274b:書き込み位置
183:支持部材
611:試料交換室
612、912:プレス機
614:TEM用試料ステージ
644:TEM用試料ステージ制御器
642、942:プレス機制御器
284:第1の特徴点
285:第2の特徴点
283a、283b:メッシュ
903a、903b:TEM用試料
903c:SEM用試料
903d:ウエハ
907:ノッチ