(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-19
(45)【発行日】2022-04-27
(54)【発明の名称】潤滑油用添加剤組成物及び潤滑油組成物
(51)【国際特許分類】
C10M 145/14 20060101AFI20220420BHJP
C08F 220/28 20060101ALI20220420BHJP
C08F 236/20 20060101ALI20220420BHJP
C08L 33/04 20060101ALI20220420BHJP
C08L 91/00 20060101ALI20220420BHJP
C10N 30/06 20060101ALN20220420BHJP
C10N 30/08 20060101ALN20220420BHJP
C10N 40/00 20060101ALN20220420BHJP
C10N 40/02 20060101ALN20220420BHJP
C10N 40/04 20060101ALN20220420BHJP
C10N 40/06 20060101ALN20220420BHJP
C10N 40/08 20060101ALN20220420BHJP
C10N 40/12 20060101ALN20220420BHJP
C10N 40/25 20060101ALN20220420BHJP
C10N 40/30 20060101ALN20220420BHJP
【FI】
C10M145/14
C08F220/28
C08F236/20
C08L33/04
C08L91/00
C10N30:06
C10N30:08
C10N40:00 A
C10N40:00 D
C10N40:02
C10N40:04
C10N40:06
C10N40:08
C10N40:12
C10N40:25
C10N40:30
(21)【出願番号】P 2022506193
(86)(22)【出願日】2021-12-28
(86)【国際出願番号】 JP2021048899
【審査請求日】2022-01-28
(31)【優先権主張番号】P 2020219715
(32)【優先日】2020-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000183646
【氏名又は名称】出光興産株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】特許業務法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉田 幸生
(72)【発明者】
【氏名】加藤 将太
(72)【発明者】
【氏名】上村 秀人
【審査官】越本 秀幸
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/031404(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/043334(WO,A1)
【文献】特開2014-091767(JP,A)
【文献】特開2014-125570(JP,A)
【文献】国際公開第01/38449(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10M 145/14
C08F 220/28
C08F 236/20
C08L 33/04
C08L 91/00
C10N 30/00-40/36
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(a-1)で表されるアルキル(メタ)アクリレート(A)に由来する構成単位(a)と、下記一般式(b-1)で表される水酸基含有(メタ)アクリレート(B)に由来する構成単位(b)と、下記一般式(c-1)で表されるリン含有(メタ)アクリレート(C)に由来する構成単位(c)とを含むポリ(メタ)アクリレート系共重合体(X)を含有する、潤滑油用添加剤組成物。
【化1】
[上記一般式(a-1)中、R
a1は、水素原子又はメチル基である。R
a2は、炭素数8~20のアルキル基を示す。]
【化2】
[上記一般式(b-1)中、R
b1は、水素原子又はメチル基である。R
b2は、炭素数2~4のアルキレン基を示す。m1は、1~10の整数を示す。m1が2以上の整数の場合の複数のR
b2は、同一であっても異なっていてもよい。]
【化3】
[上記一般式(c-1)中、R
c1は、水素原子又はメチル基である。R
c2は、エチレン基を示す。m2は、1~6の整数を示す。m2が2以上の整数の場合の複数のR
c2は、同一であっても異なっていてもよい。nは、1又は2の整数を示す。n=1である場合、複数のR
c3のうちの少なくとも1つは水素原子を示す。n=2である場合、R
c3は水素原子である。]
【請求項2】
前記一般式(c-1)中、n=1である場合、複数のR
c3の一方が水素原子であり、他方がメチル基又はエチル基である、請求項1に記載の潤滑油用添加剤組成物。
【請求項3】
前記一般式(c-1)中、n=1である場合、複数のR
c3はいずれも水素原子である、請求項1に記載の潤滑油用添加剤組成物。
【請求項4】
前記ポリ(メタ)アクリレート系共重合体(X)が、さらに下記要件(α)を満たす、請求項1~3のいずれか1項に記載の潤滑油用添加剤組成物。
<要件(α)>
前記構成単位(a)と前記構成単位(b)との含有比率[(a)/(b)]が、モル比で、20/80~80/20である。
【請求項5】
前記ポリ(メタ)アクリレート系共重合体(X)が、さらに下記要件(β)を満たす、請求項1~4のいずれか1項に記載の潤滑油用添加剤組成物。
<要件(β)>
前記ポリ(メタ)アクリレート系共重合体(X)中のリン含有量が、前記ポリ(メタ)アクリレート系共重合体(X)の全量基準で、0.05質量%以上1.0質量%以下である。
【請求項6】
前記ポリ(メタ)アクリレート系共重合体(X)は、質量平均分子量(Mw)が5,000~100,000である、請求項1~5のいずれか1項に記載の潤滑油用添加剤組成物。
【請求項7】
前記リン含有(メタ)アクリレート(C)の酸価が、300mgKOH/g~600mgKOH/gである、請求項1~6のいずれか1項に記載の潤滑油用添加剤組成物。
【請求項8】
耐荷重添加剤として用いられる、請求項1~7のいずれか1項に記載の潤滑油用添加剤組成物。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載の潤滑油用添加剤組成物を、耐荷重添加剤として使用する、使用方法。
【請求項10】
請求項1~8のいずれか1項に記載の潤滑油用添加剤組成物と、潤滑油基油と、を含有する、潤滑油組成物。
【請求項11】
下記一般式(a-1)で表されるアルキル(メタ)アクリレート(A)と、下記一般式(b-1)で表される水酸基含有(メタ)アクリレート(B)と、下記一般式(c-1)で表されるリン含有(メタ)アクリレート(C)とを重合させて、ポリ(メタ)アクリレート系共重合体(X)を製造する工程(S)を含む、潤滑油用添加剤組成物の製造方法。
【化4】
[上記一般式(a-1)中、R
a1は、水素原子又はメチル基である。R
a2は、炭素数8~20のアルキル基を示す。]
【化5】
[上記一般式(b-1)中、R
b1は、水素原子又はメチル基である。R
b2は、炭素数2~4のアルキレン基を示す。m1は、1~10の整数を示す。m1が2以上の整数の場合の複数のR
b2は、同一であっても異なっていてもよい。]
【化6】
[上記一般式(c-1)中、R
c1は、水素原子又はメチル基である。R
c2は、エチレン基を示す。m2は、1~6の整数を示す。m2が2以上の整数の場合の複数のR
c2は、同一であっても異なっていてもよい。nは、1又は2の整数を示す。n=1である場合、複数のR
c3のうちの少なくとも1つは水素原子を示す。n=2である場合、R
c3は水素原子である。]
【請求項12】
前記一般式(c-1)中、n=1である場合、複数のR
c3の一方が水素原子であり、他方がメチル基又はエチル基である、請求項11に記載の潤滑油用添加剤組成物の製造方法。
【請求項13】
前記一般式(c-1)中、n=1である場合、複数のR
c3はいずれも水素原子である、請求項11に記載の潤滑油用添加剤組成物の製造方法。
【請求項14】
前記工程(S)において、前記アルキル(メタ)アクリレート(A)と前記水酸基含有(メタ)アクリレート(B)との配合比率[(A)/(B)]を、モル比で、20/80~80/20に調整する、請求項11~13のいずれか1項に記載の潤滑油用添加剤組成物の製造方法。
【請求項15】
前記工程(S)において、前記リン含有(メタ)アクリレート(C)と、前記アルキル(メタ)アクリレート(A)及び前記水酸基含有(メタ)アクリレート(B)の総量との配合比率[(C)/{(A)+(B)}]を、モル比で、0.1/100~10/100に調整する、請求項11~14のいずれか1項に記載の潤滑油用添加剤組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、潤滑油用添加剤組成物及び当該潤滑油用添加剤組成物を含有する潤滑油組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
潤滑油には、潤滑油として必要な性質及び性能を付与したり、補足増強したりする目的で、各種潤滑油用添加剤が配合される。
代表的な潤滑油用添加剤の一つとして、潤滑油に耐摩耗性及び極圧性を付与する耐荷重添加剤が挙げられる。耐荷重添加剤としては、例えば、リン酸エステル類、亜リン酸エステル類、及びホスホン酸エステル類等の、低分子量のリン系化合物が汎用されている。
【0003】
しかしながら、低分子量のリン系化合物は、潤滑油に優れた耐摩耗性及び極圧性を付与することができる一方で、熱安定性に乏しいものが多い。また、低分子量のリン系化合物の中には、熱安定性に優れるものも存在するが、このような化合物は耐摩耗性及び極圧性に劣ることが多い。
そこで、近年では、低分子量のリン系化合物に代わる耐荷重添加剤として、ポリマー系化合物に関する検討が各種進められつつある(特許文献1及び2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2004-2747号公報
【文献】特表2014-518925号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、耐荷重添加剤としての検討が進められているポリマー系化合物は、低分子量のリン系化合物と比較して、耐摩耗性及び極圧性が不十分であることが多い。また、熱安定性も未だ乏しいことが多い。
【0006】
そこで、本発明は、耐荷重添加剤として好適であり、耐摩耗性、極圧性、及び熱安定性に優れる潤滑油用添加剤組成物、並びに当該潤滑油用添加剤組成物を含有する潤滑油組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく、鋭意検討を行った。その結果、複数の特定のモノマー由来の構成単位を含むポリ(メタ)アクリレート系共重合体が、上記課題を解決し得ることを見出し、本発明の完成に至った。
【0008】
すなわち、本発明は、下記[1]~[4]に関する。
[1] 下記一般式(a-1)で表されるアルキル(メタ)アクリレート(A)に由来する構成単位(a)と、下記一般式(b-1)で表される水酸基含有(メタ)アクリレート(B)に由来する構成単位(b)と、下記一般式(c-1)で表されるリン含有(メタ)アクリレート(C)に由来する構成単位(c)とを含むポリ(メタ)アクリレート系共重合体(X)を含有する、潤滑油用添加剤組成物。
【化1】
[上記一般式(a-1)中、R
a1は、水素原子又はメチル基である。R
a2は、炭素数8~20のアルキル基を示す。]
【化2】
[上記一般式(b-1)中、R
b1は、水素原子又はメチル基である。R
b2は、炭素数2~4のアルキレン基を示す。m1は、1~10の整数を示す。m1が2以上の整数の場合の複数のR
b2は、同一であっても異なっていてもよい。]
【化3】
[上記一般式(c-1)中、R
c1は、水素原子又はメチル基である。R
c2は、エチレン基を示す。m2は、1~6の整数を示す。m2が2以上の整数の場合の複数のR
c2は、同一であっても異なっていてもよい。nは、1又は2の整数を示す。n=1である場合、複数のR
c3のうちの少なくとも1つは水素原子を示す。n=2である場合、R
c3は水素原子である。]
[2] 上記[1]に記載の潤滑油用添加剤組成物を、耐荷重添加剤として使用する、使用方法。
[3] 上記[1]に記載の潤滑油用添加剤組成物と、潤滑油基油と、を含有する、潤滑油組成物。
[4] 下記一般式(a-1)で表されるアルキル(メタ)アクリレート(A)と、下記一般式(b-1)で表される水酸基含有(メタ)アクリレート(B)と、下記一般式(c-1)で表されるリン含有(メタ)アクリレート(C)とを重合させて、ポリ(メタ)アクリレート系共重合体(X)を製造する工程(S)を含む、潤滑油用添加剤組成物の製造方法。
【化4】
[上記一般式(a-1)中、R
a1は、水素原子又はメチル基である。R
a2は、炭素数8~20のアルキル基を示す。]
【化5】
[上記一般式(b-1)中、R
b1は、水素原子又はメチル基である。R
b2は、炭素数2~4のアルキレン基を示す。m1は、1~10の整数を示す。m1が2以上の整数の場合の複数のR
b2は、同一であっても異なっていてもよい。]
【化6】
[上記一般式(c-1)中、R
c1は、水素原子又はメチル基である。R
c2は、エチレン基を示す。m2は、1~6の整数を示す。m2が2以上の整数の場合の複数のR
c2は、同一であっても異なっていてもよい。nは、1又は2の整数を示す。n=1である場合、複数のR
c3のうちの少なくとも1つは水素原子を示す。n=2である場合、R
c3は水素原子である。]
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、耐荷重添加剤として好適であり、耐摩耗性、極圧性、及び熱安定性に優れる潤滑油用添加剤組成物、並びに当該潤滑油用添加剤組成物を含有する潤滑油組成物を提供することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書に記載された数値範囲の上限値および下限値は任意に組み合わせることができる。例えば、数値範囲として「A~B」及び「C~D」が記載されている場合、「A~D」及び「C~B」の数値範囲も、本発明の範囲に含まれる。
また、本明細書に記載された数値範囲「下限値~上限値」は、特に断りのない限り、下限値以上、上限値以下であることを意味する。
また、本明細書において、実施例の数値は、上限値又は下限値として用いられ得る数値である。
なお、本明細書において、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート又はメタクリレートを意味し、他の類似の用語についても同様の意味である。
【0011】
[潤滑油用添加剤組成物の態様]
本実施形態の潤滑油用添加剤組成物は、ポリ(メタ)アクリレート系共重合体(X)を含有する。
ポリ(メタ)アクリレート系共重合体(X)は、下記一般式(a-1)で表されるアルキル(メタ)アクリレート(A)に由来する構成単位(a)と、下記一般式(b-1)で表される水酸基含有(メタ)アクリレート(B)に由来する構成単位(b)と、下記一般式(c-1)で表されるリン含有(メタ)アクリレート(C)に由来する構成単位(c)とを含む。
【化7】
[上記一般式(a-1)中、R
a1は、水素原子又はメチル基である。R
a2は、炭素数8~20のアルキル基を示す。]
【化8】
[上記一般式(b-1)中、R
b1は、水素原子又はメチル基である。R
b2は、炭素数2~4のアルキレン基を示す。m1は、1~10の整数を示す。m1が2以上の整数の場合の複数のR
b2は、同一であっても異なっていてもよい。]
【化9】
[上記一般式(c-1)中、R
c1は、水素原子又はメチル基である。R
c2は、エチレン基を示す。m2は、1~6の整数を示す。m2が2以上の整数の場合の複数のR
c2は、同一であっても異なっていてもよい。nは、1又は2の整数を示す。n=1である場合、複数のR
c3のうちの少なくとも1つは水素原子を示す。n=2である場合、R
c3は水素原子である。]
【0012】
本発明者らは、上記課題を解決すべく、鋭意検討を行った。その結果、上記一般式(a-1)で表されるアルキル(メタ)アクリレート(A)に由来する構成単位(a)と、上記一般式(b-1)で表される水酸基含有(メタ)アクリレート(B)に由来する構成単位(b)と、上記一般式(c-1)で表されるリン含有(メタ)アクリレート(C)に由来する構成単位(c)とを含むポリ(メタ)アクリレート系共重合体(X)が、耐摩耗性、極圧性、及び熱安定性に優れることを見出し、ポリ(メタ)アクリレート系共重合体(X)を潤滑油用添加剤として(特に耐荷重添加剤として)好適に用いることができることを見出すに至った。
ポリ(メタ)アクリレート系共重合体(X)が、耐摩耗性、極圧性、及び熱安定性に優れる理由は、上記構成単位(a)を含むことによって油溶性が確保されること、上記構成単位(b)を含むことによって多点吸着型のポリマーとなっていること、上記構成単位(c)を含むことによって、リン酸基又は酸性リン酸エステル由来の基が側鎖に導入されていることによるものと推察される。より詳細には、潤滑油組成物中では、ポリ(メタ)アクリレート系共重合体(X)の立体障害によって、側鎖に導入されたリン酸基又は酸性リン酸エステル由来の基が保護されて熱安定性が向上する。その一方で、摺動部では、ポリ(メタ)アクリレート系共重合体(X)が圧縮されて側鎖に導入されたリン酸基又は酸性リン酸エステル由来の基のリンが剥き出しになることによって、当該リンが金属と反応し耐摩耗性及び極圧性が向上するものと推察される。
【0013】
なお、以降の説明では、アルキル(メタ)アクリレート(A)、水酸基含有(メタ)アクリレート(B)、及びリン含有(メタ)アクリレート(C)を、それぞれ「モノマー(A)」、「モノマー(B)」、及び「モノマー(C)」ともいう。
【0014】
本実施形態において、ポリ(メタ)アクリレート系共重合体(X)は、モノマー(A)由来の構成単位(a)、モノマー(B)由来の構成単位(b)、及びモノマー(C)由来の構成単位(c)のみから構成されていてもよいが、本発明の効果を損なわない範囲で、構成単位(a)、(b)、及び(c)以外の他の構成単位を含んでいてもよい。
本実施形態において、ポリ(メタ)アクリレート系共重合体(X)における、構成単位(a)、(b)、及び(c)の合計含有量は、ポリ(メタ)アクリレート系共重合体(X)の全構成単位基準で、好ましくは70モル%~100モル%、より好ましくは80モル%~100モル%、更に好ましくは90モル%~100モル%である。
【0015】
以下、アルキル(メタ)アクリレート(A)、水酸基含有(メタ)アクリレート(B)、及びリン含有(メタ)アクリレート(C)について、詳細に説明する。
【0016】
<アルキル(メタ)アクリレート(A)>
本実施形態において使用されるアルキル(メタ)アクリレート(A)は、下記一般式(a-1)で表される。
【化10】
【0017】
アルキル(メタ)アクリレート(A)に由来する構成単位(a)は、ポリ(メタ)アクリレート系共重合体(X)において、主に油溶性を発揮させる機能を担う。
なお、アルキル(メタ)アクリレート(A)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。したがって、ポリ(メタ)アクリレート系共重合体(X)は、アルキル(メタ)アクリレート(A)に由来する構成単位(a)を1種単独で含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0018】
上記一般式(a-1)中、Ra1は、水素原子又はメチル基である。すなわち、アルキル(メタ)アクリレート(A)は、重合性官能基として、アクリロイル基又はメタクリロイル基を有する。
Ra1が水素原子及びメチル基以外の置換基であるモノマーは入手が困難であり、かつ当該モノマーは反応性が低いため、それらを重合することも困難である。
ここで、本実施形態では、ポリ(メタ)アクリレート系共重合体(X)の分子量を調整しやすくする観点から、Ra1は、水素原子であることが好ましい。すなわち、アルキル(メタ)アクリレート(A)は、重合性官能基として、アクリロイル基を有することが好ましい。
【0019】
上記一般式(a-1)中、Ra2は、炭素数8~20のアルキル基を示す。
当該アルキル基の炭素数が8未満である場合、当該アルキル基の炭素数が20超である場合、いずれもポリ(メタ)アクリレート系共重合体(X)の油溶性を確保し難くなる。
【0020】
Ra2として選択し得る、炭素数8~20のアルキル基としては、例えば、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、及びイコシル基等の鎖状アルキル基が挙げられる。これらは、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよい。
【0021】
ここで、ポリ(メタ)アクリレート系共重合体(X)の油溶性をより確保しやすくする観点から、当該アルキル基の炭素数は、好ましくは10~18、より好ましくは10~16、更に好ましくは10~14である。
【0022】
<水酸基含有(メタ)アクリレート(B)>
本実施形態において使用される水酸基含有(メタ)アクリレート(B)は、下記一般式(b-1)で表される。
【化11】
【0023】
水酸基含有(メタ)アクリレート(B)に由来する構成単位(b)は、ポリ(メタ)アクリレート系共重合体(X)を多点吸着型のポリマーにする機能を担っており、耐摩耗性及び極圧性の向上に資すると推察される。
なお、水酸基含有(メタ)アクリレート(B)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。したがって、ポリ(メタ)アクリレート系共重合体(X)は、水酸基含有(メタ)アクリレート(B)に由来する構成単位(b)を1種単独で含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0024】
上記一般式(b-1)中、Rb1は、水素原子又はメチル基である。すなわち、水酸基含有(メタ)アクリレート(B)は、重合性官能基として、アクリロイル基又はメタクリロイル基を有する。
Rb1が水素原子及びメチル基以外の置換基であるモノマーは入手が困難であり、かつ当該モノマーは反応性が低いため、それらを重合することも困難である。
ここで、本実施形態では、ポリ(メタ)アクリレート系共重合体(X)の分子量を調整しやすくする観点から、Rb1は、水素原子であることが好ましい。すなわち、水酸基含有(メタ)アクリレート(B)は、重合性官能基として、アクリロイル基を有することが好ましい。
【0025】
上記一般式(b-1)中、Rb2は、炭素数2~4のアルキレン基を示す。
当該アルキレン基の炭素数が1である場合、極性が高くなり油溶性が低下する。
また、当該アルキレン基の炭素数が5以上である場合、油溶性が向上し過ぎて金属への吸着性が低下する。
ここで、適切な油溶性と金属への適切な吸着性を確保しやすくする観点から、当該アルキレン基の炭素数は、好ましくは2~3、より好ましくは2である。
【0026】
m1は、1~10の整数を示す。m1が2以上の整数の場合の複数のRb2は、同一であっても異なっていてもよい。また、-(ORb2)m1で表される部分同士の結合態様は、ランダム結合でもブロック結合であってもよいが、重合のしやすさの観点からは、ランダム結合であることが好ましい。
m1が0である場合、水酸基含有(メタ)アクリレート(B)がカルボン酸となるため油溶性が低下する。
また、m1が11以上の整数である場合、-(ORb2)-部分の影響で極性が高くなり、油溶性が低下する。
ここで、適切な油溶性を確保しやすくする観点から、m1は、好ましくは1~6、より好ましくは1~4、更に好ましくは1~2、より更に好ましくは1である。
【0027】
<リン含有(メタ)アクリレート(C)>
本発明において使用されるリン含有(メタ)アクリレート(C)は、下記一般式(c-1)で表される。
【化12】
【0028】
リン含有(メタ)アクリレート(C)に由来する構成単位(c)は、ポリ(メタ)アクリレート系共重合体(X)の側鎖にリン酸基又は酸性リン酸エステル由来の基を導入することで、耐摩耗性及び極圧性を向上させる機能を担っていると推察される。
ここで、リンは熱安定性を低下させる要因となる元素であるため、熱安定性を確保する観点からは一般的には導入されない元素である。しかしながら、本発明者らは、耐摩耗性及び極圧性を向上させる観点から、リン酸基又は酸性リン酸エステル由来の基を導入することを検討する中で、アルキル(メタ)アクリレート(A)由来の構成単位(a)と水酸基含有(メタ)アクリレート(B)由来の構成単位(b)とが組み合わされたポリマー中に、リン含有(メタ)アクリレート(C)由来の構成単位(c)を導入することで、リンを導入することによる熱安定性の低下の問題が緩和され、ポリ(メタ)アクリレート系共重合体(X)全体として熱安定性に優れ、しかも耐摩耗性及び極圧性にも優れるポリマーとなることを見出した。
【0029】
なお、リン含有(メタ)アクリレート(C)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。したがって、ポリ(メタ)アクリレート系共重合体(X)は、リン含有(メタ)アクリレート(C)に由来する構成単位(c)を1種単独で含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0030】
上記一般式(c-1)中、Rc1は、水素原子又はメチル基である。すなわち、リン含有(メタ)アクリレート(C)は、重合性官能基として、アクリロイル基又はメタクリロイル基を有する。
Rc1が水素原子及びメチル基以外の置換基であるモノマーは入手が困難であり、かつ当該モノマーは反応性が低いため、それらを重合することも困難である。
ここで、本実施形態では、ポリ(メタ)アクリレート系共重合体(X)の分子量を調整しやすくする観点から、Rc1は、水素原子であることが好ましい。すなわち、リン含有(メタ)アクリレート(C)は、重合性官能基として、アクリロイル基を有することが好ましい。
【0031】
上記一般式(c-1)中、Rc2は、エチレン基を示す。
当該アルキレン基の炭素数が1である場合、極性が高くなり油溶性が低下する。
また、当該アルキレン基の炭素数が3以上である場合、油溶性が向上し過ぎて金属への吸着性が低下する。
【0032】
m2は、1~6の整数を示す。m2が2以上の整数の場合の複数のRc2は、同一であっても異なっていてもよい。また、-(ORc2)m2で表される部分同士の結合態様は、ランダム結合でもブロック結合であってもよいが、重合のしやすさの観点からは、ランダム結合であることが好ましい。
m2が0である場合、リン含有(メタ)アクリレート(C)の極性が高くなるため油溶性が低下する。
また、m2が7以上の整数である場合、-(ORb2)-部分の影響で極性が高くなり、油溶性が低下する。
ここで、適切な油溶性を確保しやすくする観点から、m2は、好ましくは1~4、より好ましくは1~2、更に好ましくは1である。
【0033】
nは、1又は2の整数を示す。n=1である場合、複数のRc3のうちの少なくとも1つは水素原子を示す。n=2である場合、Rc3は水素原子である。なお、n=1である場合、複数のRc3のうちの一方のみが水素原子であってもよい。この場合、複数のRc3のうちの他方は炭化水素基である。
ここで、n=1である場合、複数のRc3のうちの他方が炭化水素基であるならば、本発明の効果を発揮させやすくする観点から、当該炭化水素基は、メチル基又はエチル基であることが好ましい。
また、n=1である場合、本発明の効果をより発揮させやすくする観点から、複数のRc3はいずれも水素原子であることが好ましい。
ここで、本発明の効果を発揮させやすくする観点から、リン含有(メタ)アクリレート(C)は、n=1であるリン含有(メタ)アクリレート(C1)を主成分として含むことが好ましい。
本明細書において、「主成分」とは、その含有量が50質量%を超える成分をいう。すなわち、n=1であるリン含有(メタ)アクリレート(C1)の含有量は、リン含有(メタ)アクリレート(C)の全量基準で、好ましくは50質量%超~100質量%、より好ましくは60質量%~100質量%、更に好ましくは70質量%~100質量%、より更に好ましくは80質量%~100質量%、更になお好ましくは90質量%~100質量%である。
また、n=1であるリン含有(メタ)アクリレート(C1)に由来する構成単位(c1)の含有量は、リン含有(メタ)アクリレート(C)に由来する構成単位(c)の全量基準で、好ましくは50質量%超~100質量%、より好ましくは60質量%~100質量%、更に好ましくは70質量%~100質量%、より更に好ましくは80質量%~100質量%、更になお好ましくは90質量%~100質量%である。
【0034】
また、本実施形態で用いるリン含有(メタ)アクリレート(C)は、ポリ(メタ)アクリレート系共重合体(X)の耐摩耗性及び極圧性をより向上させやすくする観点から、酸価が300mgKOH/g~600mgKOH/gであることがより好ましく、350mgKOH/g~550mgKOH/gであることが更に好ましい。
本明細書において、リン含有(メタ)アクリレート(C)の酸価は、JIS K 2501 2003の7に規定する電位差法により測定される値を意味する。
【0035】
<要件(α)>
本実施形態のポリ(メタ)アクリレート系共重合体(X)は、本発明の効果をより発揮させやすくする観点及び基油への溶解性の観点から、要件(α)を満たすことが好ましい。すなわち、上記構成単位(a)と上記構成単位(b)との含有比率[(a)/(b)]が、モル比で、20/80~80/20であることが好ましい。
また、ポリ(メタ)アクリレート系共重合体(X)の基油への溶解性を更に良好なものとする観点から、[(a)/(b)]は、より好ましくは40/60以上、更に好ましくは50/50以上である。
さらに、本発明の効果を更に発揮させやすくする観点から、[(a)/(b)]は、より好ましくは75/25以下、更に好ましくは70/30以下である。
これらの数値範囲の上限値及び下限値は任意に組み合わせることができる。具体的には、より好ましくは40/60~75/25、更に好ましくは50/50~70/30である。
【0036】
<要件(β)>
本実施形態のポリ(メタ)アクリレート系共重合体(X)は、本発明の効果をより発揮させやすくする観点から、要件(β)を満たすことが好ましい。すなわち、ポリ(メタ)アクリレート系共重合体(X)のリン含有量は、ポリ(メタ)アクリレート系共重合体(X)の全量基準で、0.05質量%以上1.0質量%以下であることが好ましい。また、本発明の効果をより発揮させやすくする観点から、ポリ(メタ)アクリレート系共重合体(X)の全量基準で、より好ましくは0.10質量%以上、更に好ましくは0.20質量%以上である。また、より好ましくは0.70質量%以下、更に好ましくは0.50質量%以下、より更に好ましくは0.40質量%以下、更になお好ましくは0.30質量%以下である。
これらの数値範囲の上限値及び下限値は任意に組み合わせることができる。具体的には、より好ましくは0.10質量%~0.70質量%、更に好ましくは0.10質量%~0.50質量%、より更に好ましくは0.20質量%~0.40質量%、更になお好ましくは0.20質量%~0.30質量%である。
ポリ(メタ)アクリレート系共重合体(X)のリン含有量は、ポリ(メタ)アクリレート系共重合体(X)を有機溶剤(例えば、潤滑油基油)に所定量溶解した後、当該有機溶剤中のリン量をJIS-5S-38-03に準拠して測定した結果と、有機溶剤へのポリ(メタ)アクリレート系共重合体(X)の溶解量とに基づいて算出することができる。
【0037】
<他のモノマー>
ポリ(メタ)アクリレート系共重合体(X)は、上記構成単位(a)、(b)、及び(c)以外に、本発明の効果を阻害することのない範囲で、他のモノマー由来の構成単位を含有していてもよい。当該他のモノマーとしては、モノマー(A)、(B)、及び(C)以外の官能基含有モノマーが挙げられる。当該他の官能基含有モノマーとしては、例えば、モノマー(A)、(B)、及び(C)以外の官能基含有(メタ)アクリレートが挙げられる。
但し、本発明の効果をより発揮させやすくする観点から、ポリ(メタ)アクリレート系共重合体(X)は、上記構成単位(a)、(b)、及び(c)の合計含有量が、ポリ(メタ)アクリレート系共重合体(X)の全構成単位基準で、好ましくは50質量%超~100質量%、より好ましくは60質量%~100質量%、更に好ましくは70質量%~100質量%、より更に好ましくは80質量%~100質量%、更になお好ましくは90質量%~100質量%である。
また、本発明の効果をより発揮させやすくする観点から、ポリ(メタ)アクリレート系共重合体(X)は、モノマー(A)、(B)、及び(C)以外の官能基含有モノマーに由来する構成単位の含有量が、全構成単位基準で、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%未満、更に好ましくは30質量%未満、より更に好ましくは20質量%未満、更になお好ましくは10質量%未満である。
【0038】
<ポリ(メタ)アクリレート系共重合体(X)の物性等>
(質量平均分子量(Mw)、分子量分布(Mw/Mn))
本実施形態のポリ(メタ)アクリレート系共重合体(X)の質量平均分子量(Mw)は、本発明の効果をより発揮させやすくする観点及び基油への溶解性の観点から、好ましくは5,000~100,000、より好ましくは5,000~50,000、更に好ましくは5,000~40,000である。
また、本実施形態のポリ(メタ)アクリレート系共重合体(X)の分子量分布(Mw/Mn)は、本発明の効果をより発揮させやすくする観点から、好ましくは3.5以下、より好ましくは3.0以下、更に好ましくは2.8以下である。なお、本実施形態のポリ(メタ)アクリレート系共重合体(X)の分子量分布(Mw/Mn)は、1.01以上であってもよく、1.3以上であってもよく、1.5以上であってもよい。
質量平均分子量(Mw)及び分子量分布(Mw/Mn)は、後述する実施例に記載の方法にて測定又は算出される値である。
【0039】
(重合態様)
本実施形態のポリ(メタ)アクリレート系共重合体(X)の重合態様は特に限定されず、ブロック共重合、ランダム共重合、ブロック/ランダム共重合のいずれであってもよい。これらの中でも、重合反応の容易さの観点から、ランダム共重合であることが好ましい。
【0040】
[潤滑油用添加剤組成物の製造方法]
本実施形態の潤滑油用添加剤組成物の製造方法は、下記一般式(a-1)で表されるアルキル(メタ)アクリレート(A)と、下記一般式(b-1)で表される水酸基含有(メタ)アクリレート(B)と、下記一般式(c-1)で表されるリン含有(メタ)アクリレート(C)とを重合させて、ポリ(メタ)アクリレート系共重合体(X)を製造する工程(S)を含む。
【化13】
[上記一般式(a-1)中、R
a1は、水素原子又はメチル基である。R
a2は、炭素数8~20のアルキル基を示す。]
【化14】
[上記一般式(b-1)中、R
b1は、水素原子又はメチル基である。R
b2は、炭素数2~4のアルキレン基を示す。m1は、1~10の整数を示す。m1が2以上の整数の場合の複数のR
b2は、同一であっても異なっていてもよい。]
【化15】
[上記一般式(c-1)中、R
c1は、水素原子又はメチル基である。R
c2は、エチレン基を示す。m2は、1~6の整数を示す。m2が2以上の整数の場合の複数のR
c2は、同一であっても異なっていてもよい。nは、1又は2の整数を示す。n=1である場合、複数のR
c3のうちの少なくとも1つは水素原子を示す。n=2である場合、R
c3は水素原子である。]
【0041】
以下、ポリ(メタ)アクリレート系共重合体(X)を製造する工程(S)について、詳細に説明する。
【0042】
<ポリ(メタ)アクリレート系共重合体(X)を製造する工程(S)>
ポリ(メタ)アクリレート系共重合体(X)の製造方法(重合方法)は、特に限定されず、公知の方法のいずれかを適用して製造される。このような方法としては、例えば、乳化重合法、懸濁重合法、溶液重合法等が挙げられる。
ここで、本発明におけるポリ(メタ)アクリレート系共重合体(X)の用途、すなわち、潤滑油用添加剤組成物としての用途の観点から、ポリ(メタ)アクリレート系共重合体(X)の製造方法(重合方法)としては、潤滑油基油に溶解する溶剤を溶媒として使用する溶液重合法を採用することが好ましい。
【0043】
(溶液重合法)
溶液重合法は、例えば、モノマー(A)、(B)、及び(C)、並びに溶媒及び開始剤を反応器に仕込み、反応器内を窒素置換した後、60℃~100℃で、2時間~10時間、撹拌して反応させることにより行われる。反応器には、モノマー(A)、(B)、及び(C)以外の他のモノマーも任意に仕込まれる。
【0044】
溶液重合法において使用される溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、2-プロパノール、ブタノール等のアルコール類;ベンゼン、トルエン、キシレン、ヘキサン等の炭化水素類;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル等のエステル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;メトキシブタノール、エトキシブタノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジオキサン等のエーテル類;鉱油;ポリ-α-オレフィン、エチレン-α-オレフィン共重合体、アルキルベンゼン、アルキルナフタレン、ポリフェニルエーテル、アルキル置換ジフェニルエーテル、ポリオールエステル、二塩基酸エステル、ヒンダードエステル、モノエステル、GTL基油等の合成油が挙げられる。
これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0045】
溶液重合法において使用される開始剤としては、例えば、2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(2-アミジノプロパン)二塩酸塩、2,2’-アゾビス-(N,N-ジメチレンイソブチルアミジン)二塩酸塩、1,1’-アゾビス(シクロヘキシル-1-カルボニトリル)等のアゾ系開始剤;過酸化水素;過酸化ベンゾイル、t-ブチルヒドロパーオキシド、クメンヒドロパーオキシド、メチルエチルケトンパーオキシド、過安息香酸等の有機過酸化物;過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩;過酸化水素-Fe2+のレドックス開始剤;その他既存のラジカル開始剤が挙げられる。
【0046】
なお、ポリ(メタ)アクリレート系共重合体(X)の分子量は、公知の方法で制御される。例えば、反応温度、反応時間、開始剤の量、各モノマーの仕込み量、溶媒の種類、連鎖移動剤の使用等により、ポリ(メタ)アクリレート系共重合体(X)の分子量を制御することができる。
【0047】
(工程(S)における好適態様1)
工程(S)において、上記要件(α)を満たすポリ(メタ)アクリレート系共重合体(X)を製造する観点から、アルキル(メタ)アクリレート(A)と水酸基含有(メタ)アクリレート(B)との配合比率[(A)/(B)]を、モル比で、20/80~80/20に調整することが好ましい。
また、ポリ(メタ)アクリレート系共重合体(X)の基油への溶解性を更に良好なものとする観点から、[(A)/(B)]は、より好ましくは40/60以上、更に好ましくは50/50以上である。
さらに、本発明の効果を更に発揮させやすくする観点から、[(A)/(B)]は、より好ましくいは75/25以下、更に好ましくは70/30以下である。
これらの数値範囲の上限値及び下限値は任意に組み合わせることができる。具体的には、より好ましくは40/60~75/25、更に好ましくは50/50~70/30である。
【0048】
(工程(S)における好適態様2)
工程(S)において、上記要件(β)を満たすポリ(メタ)アクリレート系共重合体(X)を製造する観点から、リン含有(メタ)アクリレート(C)と、アルキル(メタ)アクリレート(A)及び水酸基含有(メタ)アクリレート(B)の総量との配合比率[(C)/{(A)+(B)}]を、モル比で、0.1/100~10/100に調整することが好ましい。
また、ポリ(メタ)アクリレート系共重合体(X)の耐摩耗性及び極圧性をより向上させやすくする観点から、[(C)/{(A)+(B)}]は、より好ましくは0.5/100以上、更に好ましくは1.0/100以上である。
更に、ポリ(メタ)アクリレート系共重合体(X)の熱安定性をより向上させやすくする観点から、[(C)/{(A)+(B)}]は、より好ましくは5.0/100以下、更に好ましくは3.0/100以下である。
これらの数値範囲の上限値及び下限値は任意に組み合わせることができる。具体的には、より好ましくは0.5/100~5.0/100、更に好ましくは1.0/100~3.0/100である。
【0049】
<潤滑油用添加剤組成物中のポリ(メタ)アクリレート系共重合体(X)の含有量>
本実施形態の潤滑油用添加剤組成物は、潤滑油基油に添加した際に本発明の効果をより発揮させやすくする観点から、ポリ(メタ)アクリレート系共重合体(X)の含有量が、潤滑油用添加剤組成物の全量基準で、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、更に好ましくは70質量%以上、より更に好ましくは80質量%以上、更になお好ましくは90質量%以上、一層好ましくは95質量%以上である。ポリ(メタ)アクリレート系共重合体(X)の純度を考慮すると、ポリ(メタ)アクリレート系共重合体(X)の含有量は、潤滑油用添加剤組成物の全量基準で、通常99質量%未満である。
なお、本実施形態の潤滑油用添加剤組成物は、潤滑油基油との溶解性や取扱性の観点から、希釈溶剤により希釈されていてもよい。なお、潤滑油用添加剤組成物中のポリ(メタ)アクリレート系共重合体(X)の含有量は、希釈溶剤を除いた、潤滑油用添加剤組成物中の有効成分の全量基準に対する含有量を意味する。
【0050】
<潤滑油用添加剤組成物の用途>
本実施形態の潤滑油用添加剤組成物は、耐摩耗性、極圧性、及び熱安定性に優れる。したがって、耐荷重添加剤として有用である。
したがって、本実施形態では、当該潤滑油用添加剤組成物を、耐荷重添加剤として使用する使用方法が提供される。
【0051】
[潤滑油組成物]
本実施形態の潤滑油組成物は、ポリ(メタ)アクリレート系共重合体(X)を含有する潤滑油用添加剤組成物と、潤滑油基油とを含有する。
潤滑油用添加剤組成物の含有量は、潤滑油用添加剤組成物の添加効果を良好に発揮させる観点から、ポリ(メタ)アクリレート系共重合体(X)の樹脂分の含有量が、潤滑油組成物の全量基準で、好ましくは0.3質量%~10質量%、より好ましくは0.6質量%~6.0質量%、更に好ましくは1.0質量%~5.0質量%となるように調整される。
また、潤滑油用添加剤組成物の含有量は、潤滑油用添加剤組成物の添加効果を良好に発揮させる観点から、ポリ(メタ)アクリレート系共重合体(X)由来のリン量が、潤滑油組成物の全量基準で、好ましくは10質量ppm~300質量ppm、より好ましくは20質量ppm~200質量ppm、更に好ましくは30質量ppm~150質量ppmである。
【0052】
<潤滑油基油>
潤滑油基油は、潤滑油組成物に用いられる一般的な基油を、特に制限なく用いることができる。具体的には、例えば、鉱油及び合成油からなる群から選択される1種以上が挙げられる。
潤滑油基油の100℃における動粘度は1mm2/s~50mm2/sの範囲にあることが好ましく、2mm2/s~30mm2/sの範囲にあることがより好ましく、3mm2/s~20mm2/sの範囲にあることが更に好ましい。また、潤滑油基油の粘度指数は80以上であることが好ましく、90以上であることがより好ましく、100以上であることがより更に好ましい。
潤滑油基油の動粘度及び粘度指数はJIS K2283:2000に準じて測定又は算出される値である。
【0053】
潤滑油基油の具体例を以下に挙げる。
鉱油としては、例えば、パラフィン基原油、中間基原油、又はナフテン基原油を常圧蒸留及び/又は減圧蒸留して得られる留出油;当該留出油を常法に従って精製することによって得られる精製油;等が挙げられる。精製油を得るための精製方法としては、例えば、溶剤脱ろう処理、水素化異性化処理、水素化仕上げ処理、白土処理等が挙げられる。
合成油としては、例えば、炭化水素系油、芳香族系油、エステル系油、エーテル系油等が挙げられる。また、合成油としては、天然ガスからフィッシャー・トロプシュ法等により製造されるワックス(GTLワックス,Gas To Liquids WAX)を異性化することで得られるGTL(Gas To Liquids)を用いてもよい。
【0054】
<他の添加剤>
本実施形態の潤滑油組成物は、上記潤滑油用添加剤組成物の効果を阻害しない範囲で、酸化防止剤、油性剤、清浄分散剤、粘度指数向上剤、防錆剤、金属不活性化剤、及び消泡剤等の他の添加剤を含有してもよい。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、本実施形態では、ポリ(メタ)アクリレート系共重合体(X)を含有する潤滑油用添加剤組成物とともに、ポリ(メタ)アクリレート系共重合体(X)を含有する潤滑油用添加剤組成物以外の他の添加剤として、酸化防止剤、油性剤、清浄分散剤、粘度指数向上剤、防錆剤、金属不活性化剤、及び消泡剤等から選択される1種以上の添加剤を含有する潤滑油組成物用の添加剤パッケージも提供される。
【0055】
(酸化防止剤)
酸化防止剤としては、従来の潤滑油組成物に使用されているアミン系酸化防止剤、フェノール系酸化防止剤等を使用することができる。これらの酸化防止剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
アミン系酸化防止剤としては、例えば、モノオクチルジフェニルアミン及びモノノニルジフェニルアミン等のモノアルキルジフェニルアミン系化合物;4,4’-ジブチルジフェニルアミン、4,4’-ジペンチルジフェニルアミン、4,4’-ジヘキシルジフェニルアミン、4,4’-ジヘプチルジフェニルアミン、4,4’-ジオクチルジフェニルアミン、及び4,4’-ジノニルジフェニルアミン等のジアルキルジフェニルアミン系化合物;テトラブチルジフェニルアミン、テトラヘキシルジフェニルアミン、テトラオクチルジフェニルアミン、及びテトラノニルジフェニルアミン等のポリアルキルジフェニルアミン系化合物;α-ナフチルアミン、フェニル-α-ナフチルアミン、ブチルフェニル-α-ナフチルアミン、ペンチルフェニル-α-ナフチルアミン、ヘキシルフェニル-α-ナフチルアミン、ヘプチルフェニル-α-ナフチルアミン、オクチルフェニル-α-ナフチルアミン、及びノニルフェニル-α-ナフチルアミン等のナフチルアミン系化合物が挙げられる。
フェノール系酸化防止剤としては、例えば、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール及び2,6-ジ-tert-ブチル-4-エチルフェノール等のモノフェノール系化合物;4,4’-メチレンビス(2,6-ジ-tert-ブチルフェノール)及び2,2’-メチレンビス(4-エチル-6-tert-ブチルフェノール)等のビスフェノール系化合物が挙げられる。
酸化防止剤の含有量は、潤滑油組成物の酸化安定性を保つのに必要な最低量を加えれば良い。具体的には、例えば、潤滑油組成物の全量基準で、0.01~1質量%が好ましい。
【0056】
(油性剤)
油性剤としては、脂肪族アルコール;脂肪酸及び脂肪酸金属塩等の脂肪酸化合物;ポリオールエステル、ソルビタンエステル、及びグリセライド等のエステル化合物;脂肪族アミン等のアミン化合物等を挙げることができる。
油性剤の含有量は、添加効果の点から、潤滑油組成物の全量基準で、通常0.1~20質量%であり、好ましくは0.5~10質量%である。
【0057】
(清浄分散剤)
清浄分散剤としては、金属スルホネート、金属サリチレート、金属フェネート、及びコハク酸イミド等が挙げられる。
清浄分散剤の含有量は、添加効果の点から、潤滑油組成物の全量基準で、通常0.01~10質量%であり、好ましくは0.1~5質量%である。
【0058】
(粘度指数向上剤)
粘度指数向上剤としては、例えば、ポリメタクリレート、分散型ポリメタクリレート、オレフィン系共重合体(例えば、エチレン-プロピレン共重合体等)、分散型オレフィン系共重合体、スチレン系共重合体(例えば、スチレン-ジエン水素化共重合体等)等が挙げられる。
粘度指数向上剤の含有量は、好ましくは、潤滑油組成物の全量基準で、0.3~5質量%である。
【0059】
(防錆剤)
防錆剤としては、金属系スルホネート、コハク酸エステル、並びにアルキルアミン及びモノイソプロパノールアミンなどのアルカノールアミン等を挙げることができる。
防錆剤の含有量は、添加効果の点から、潤滑油組成物の全量基準で、通常0.01~5質量%であり、好ましくは0.03~3質量%である。
【0060】
(金属不活性剤)
金属不活性剤としては、ベンゾトリアゾール及びチアジアゾール等を挙げることができる。
金属不活性剤の好ましい含有量は、添加効果の点から、潤滑油組成物の全量基準で、通常0.01~5質量%であり、好ましくは0.01~1質量%である。
【0061】
(消泡剤)
消泡剤としては、メチルシリコーン油、フルオロシリコーン油、及びポリアクリレート等を挙げることができる。
消泡剤の含有量は、添加効果の点から、潤滑油組成物の全量基準で、通常0.0005~0.01質量%である。
【0062】
<グリース組成物>
本実施形態の潤滑油用添加剤組成物は、グリース組成物に配合して用いることもできる。
すなわち、本実施形態では、上記潤滑油用添加剤組成物と、増ちょう剤と、潤滑油基油とを含有するグリース組成物を提供することもできる。
【0063】
<潤滑油組成物の物性等>
(動粘度、粘度指数)
本実施形態の潤滑油組成物の100℃動粘度は、好ましくは1.0mm2/s~50mm2/s、より好ましくは2.0mm2/s~30mm2/s、更に好ましくは3.0mm2/s~20mm2/sである。
本実施形態の潤滑油組成物の粘度指数は、好ましくは90以上、より好ましくは100以上、更に好ましくは110以上である。
潤滑油組成物の動粘度及び粘度指数は、JIS K2283:2000に準じて測定又は算出される値である。
【0064】
(耐摩耗性)
本実施形態の潤滑油組成物は、後述する実施例に記載のシェル摩耗試験による摩耗痕径が、好ましくは0.50mm以下、より好ましくは0.47mm以下、更に好ましくは0.45mm以下である。
【0065】
(極圧性)
本実施形態の潤滑油組成物は、後述する実施例に記載のシェル四球試験耐荷重性(EP)試験による最大非焼付荷重(LNL)が、好ましくは490N以上、より好ましくは618N以上、更に好ましくは785N以上である。
また、同試験による融着荷重(WL)が、好ましくは1569N以上、より好ましくは1961N以上である。
【0066】
(熱安定性)
本実施形態の潤滑油組成物は、後述する実施例に記載のISOT試験後において、スラッジの発生量が、好ましくは5.0mg/100mL未満である。
【0067】
[潤滑油組成物の用途]
本実施形態の潤滑油組成物は、ポリ(メタ)アクリレート系共重合体(X)を含有するため、耐摩耗性、極圧性、及び熱安定性に優れる。
そのため、本実施形態の潤滑油組成物は、例えば、ギア油(マニュアルトランスミッション油、デファレンシャル油等)、自動変速機油(オートマチックトランスミッション油等)、無段変速機油(ベルトCVT油、トロイダルCVT油等)、パワーステアリング油、ショックアブソーバー油、及び電動モーター油等の駆動系油;ガソリンエンジン用、ディーゼルエンジン用、及びガスエンジン用等の内燃機関(エンジン)用油;油圧作動油;タービン油;圧縮機油;流体軸受け油;転がり軸受油;冷凍機油等をはじめ各種の用途に好適に使用でき、これら各用途で使用される装置に充填し、当該装置に係る各部品間を潤滑する潤滑油組成物として好適に使用することができる。
【0068】
[潤滑油組成物を用いる潤滑方法]
本実施形態の潤滑油組成物を用いる潤滑方法としては、好ましくは、前記潤滑油組成物を、前述した各用途で使用される装置に充填し、当該各装置に係る各部品間を潤滑する方法が挙げられる。
【0069】
[提供される本発明の一態様]
本発明の一態様によれば、下記[1]~[15]が提供される。
[1] 下記一般式(a-1)で表されるアルキル(メタ)アクリレート(A)に由来する構成単位(a)と、下記一般式(b-1)で表される水酸基含有(メタ)アクリレート(B)に由来する構成単位(b)と、下記一般式(c-1)で表されるリン含有(メタ)アクリレート(C)に由来する構成単位(c)とを含むポリ(メタ)アクリレート系共重合体(X)を含有する、潤滑油用添加剤組成物。
【化16】
[上記一般式(a-1)中、R
a1は、水素原子又はメチル基である。R
a2は、炭素数8~20のアルキル基を示す。]
【化17】
[上記一般式(b-1)中、R
b1は、水素原子又はメチル基である。R
b2は、炭素数2~4のアルキレン基を示す。m1は、1~10の整数を示す。m1が2以上の整数の場合の複数のR
b2は、同一であっても異なっていてもよい。]
【化18】
[上記一般式(c-1)中、R
c1は、水素原子又はメチル基である。R
c2は、エチレン基を示す。m2は、1~6の整数を示す。m2が2以上の整数の場合の複数のR
c2は、同一であっても異なっていてもよい。nは、1又は2の整数を示す。n=1である場合、複数のR
c3のうちの少なくとも1つは水素原子を示す。n=2である場合、R
c3は水素原子である。]
[2] 前記一般式(c-1)中、n=1である場合、複数のR
c3の一方が水素原子であり、他方がメチル基又はエチル基である、上記[1]に記載の潤滑油用添加剤組成物。
[3] 前記一般式(c-1)中、n=1である場合、複数のR
c3はいずれも水素原子である、上記[1]に記載の潤滑油用添加剤組成物。
[4] 前記ポリ(メタ)アクリレート系共重合体(X)が、さらに下記要件(α)を満たす、上記[1]~[3]のいずれかに記載の潤滑油用添加剤組成物。
<要件(α)>
前記構成単位(a)と前記構成単位(b)との含有比率[(a)/(b)]が、モル比で、20/80~80/20である。
[5] 前記ポリ(メタ)アクリレート系共重合体(X)が、さらに下記要件(β)を満たす、上記[1]~[4]のいずれかに記載の潤滑油用添加剤組成物。
<要件(β)>
前記ポリ(メタ)アクリレート系共重合体(X)中のリン含有量が、前記ポリ(メタ)アクリレート系共重合体(X)の全量基準で、0.05質量%以上1.0質量%以下である。
[6] 前記ポリ(メタ)アクリレート系共重合体(X)は、質量平均分子量(Mw)が5,000~100,000である、上記[1]~[5]のいずれかに記載の潤滑油用添加剤組成物。
[7] 前記リン含有(メタ)アクリレート(C)の酸価が、300mgKOH/g~600mgKOH/gである、上記[1]~[7]のいずれかに記載の潤滑油用添加剤組成物。
[8] 耐荷重添加剤として用いられる、上記[1]~[7]のいずれかに記載の潤滑油用添加剤組成物。
[9] 上記[1]~[8]のいずれかに記載の潤滑油用添加剤組成物を、耐荷重添加剤として使用する、使用方法。
[10] 上記[1]~[8]のいずれかに記載の潤滑油用添加剤組成物と、潤滑油基油と、を含有する、潤滑油組成物。
[11] 下記一般式(a-1)で表されるアルキル(メタ)アクリレート(A)と、下記一般式(b-1)で表される水酸基含有(メタ)アクリレート(B)と、下記一般式(c-1)で表されるリン含有(メタ)アクリレート(C)とを重合させて、ポリ(メタ)アクリレート系共重合体(X)を製造する工程(S)を含む、潤滑油用添加剤組成物の製造方法。
【化19】
[上記一般式(a-1)中、R
a1は、水素原子又はメチル基である。R
a2は、炭素数8~20のアルキル基を示す。]
【化20】
[上記一般式(b-1)中、R
b1は、水素原子又はメチル基である。R
b2は、炭素数2~4のアルキレン基を示す。m1は、1~10の整数を示す。m1が2以上の整数の場合の複数のR
b2は、同一であっても異なっていてもよい。]
【化21】
[上記一般式(c-1)中、R
c1は、水素原子又はメチル基である。R
c2は、エチレン基を示す。m2は、1~6の整数を示す。m2が2以上の整数の場合の複数のR
c2は、同一であっても異なっていてもよい。nは、1又は2の整数を示す。n=1である場合、複数のR
c3のうちの少なくとも1つは水素原子を示す。n=2である場合、R
c3は水素原子である。]
[12] 前記一般式(c-1)中、n=1である場合、複数のR
c3の一方が水素原子であり、他方がメチル基又はエチル基である、上記[11]に記載の潤滑油用添加剤組成物の製造方法。
[13] 前記一般式(c-1)中、n=1である場合、複数のR
c3はいずれも水素原子である、上記[11]又は[12]に記載の潤滑油用添加剤組成物の製造方法。
[14] 前記工程(S)において、前記アルキル(メタ)アクリレート(A)と前記水酸基含有(メタ)アクリレート(B)との配合比率[(A)/(B)]を、モル比で、20/80~80/20に調整する、上記[11]~[13]に記載の潤滑油用添加剤組成物の製造方法。
[15] 前記工程(S)において、前記リン含有(メタ)アクリレート(C)と、前記アルキル(メタ)アクリレート(A)及び前記水酸基含有(メタ)アクリレート(B)の総量との配合比率[(C)/{(A)+(B)}]を、モル比で、0.1/100~10/100に調整する、上記[11]~[14]に記載の潤滑油用添加剤組成物の製造方法。
【実施例】
【0070】
本発明について、以下の実施例により具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0071】
[各種物性値の測定方法]
各実施例及び各比較例で用いた各原料並びに各実施例及び各比較例の潤滑油組成物の各性状の測定は、以下に示す要領に従って行ったものである。
【0072】
(1)動粘度、粘度指数
潤滑油組成物の40℃動粘度、100℃動粘度、及び粘度指数は、JIS K2283:2000に準拠して測定又は算出した。
【0073】
(2)リン量
潤滑油組成物のリン量は、JIS-5S-38-03に準拠して測定した。
潤滑油用添加剤組成物のリン含有量は、潤滑油組成物のリン量をJIS-5S-38-03に準拠して測定した結果と、潤滑油組成物への潤滑油用添加剤組成物の添加量(溶解量)とに基づいて算出した。
【0074】
(3)質量平均分子量(Mw)、分子量分布(Mw/Mn)
Waters社製の「1515アイソクラティックHPLCポンプ」、「2414示差屈折率(RI)検出器」に、東ソー社製のカラム「TSKguardcolumn SuperHZ-L」を1本、及び「TSKSuperMultipore HZ-M」を2本、上流側からこの順で取り付け、測定温度:40℃、移動相:テトラヒドロフラン、流速:0.35ml/分、試料濃度1.0mg/mlの条件で測定し、標準ポリスチレン換算にて求めた。
【0075】
[実施例1~6、比較例1~6]
以下に示す潤滑油基油及び潤滑油用添加剤組成物を、表1に示す配合量(質量%)で十分に混合し、実施例1~6及び比較例1~6の潤滑油組成物をそれぞれ調製した。
実施例1~6及び比較例1~6で用いた潤滑油基油及び潤滑油用添加剤組成物の詳細は、以下に示すとおりである。
【0076】
<潤滑油基油>
API分類でグループIIに分類される鉱油(150N)
【0077】
<潤滑油用添加剤組成物>
・ポリ(メタ)アクリレート系共重合体(X)-1:製造例1に説明する方法で製造した。
・ポリ(メタ)アクリレート系共重合体(X)-2:製造例2に説明する方法で製造した。
・ポリ(メタ)アクリレート系共重合体(X)-3:製造例3に説明する方法で製造した。
・ポリ(メタ)アクリレート系共重合体(X’)-1:比較製造例1に説明する方法で製造した。
・ポリ(メタ)アクリレート系共重合体(X’)-2:比較製造例2に説明する方法で製造した。
・ハイドロジェンホスホネート(P量:5.34質量%)
・アシッドホスフェート(P量:6.3質量%)
・トリアリールホスフェート(P量:8.30質量%)
【0078】
<製造例1~3、比較製造例1及び2>
(製造例1~3で用いたモノマー)
・「ドデシルアクリレート」:上記一般式(a-1)中、R
a1が水素原子であり、R
a2がドデシル基(炭素数12のアルキル基)である化合物である。アルキル(メタ)アクリレート(A)として使用した。
・「2-ヒドロキシエチルアクリレート」:上記一般式(b-1)中、R
b1が水素原子であり、R
b2がエチレン基(炭素数2のアルキレン基)であり、m1=1である化合物である。水酸基含有(メタ)アクリレート(B)として使用した。
・「P-1A(N)」:共栄社化学株式会社製、リン含有量=14.3質量%
上記一般式(c-1)中、n=1である化合物を主成分とし、n=2である化合物も含む混合物である。なお、両化合物とも、R
c1が水素原子であり、m2=1である。また、両化合物とも、R
c3は水素原子である。リン含有(メタ)アクリレート(C)として使用した。
なお、P-1A(N)の酸価(JIS K 2501 2003の7に規定する電位差法により測定した値)は、420~520mgKOH/gである。
(比較製造例1及び2で用いたモノマー)
・「P-1M」:共栄社化学株式会社製、リン含有量=14.7質量%
上記一般式(c-1)中、n=1である化合物を主成分とし、n=2である化合物も含む混合物である。なお、両化合物とも、R
c1がメチル基であり、m2=1である。また、両化合物とも、R
c3は水素原子である。
・「メチルメタクリレート」:上記一般式(a-1)中、R
a1がメチル基であり、R
a2がメチル基である化合物である。
・「ドデシルメタクリレート」:上記一般式(a-1)中、R
a1がメチル基であり、R
a2がドデシル基である化合物である。
・「テトラデシルメタクリレート」:上記一般式(a-1)中、R
a1がメチル基であり、R
a2がテトラデシル基である化合物である。
・「グリシジルメタクリレート」:下記構造を有する化合物である。
【化22】
【0079】
(製造例1:ポリ(メタ)アクリレート系共重合体(X)-1の製造)
温度計、窒素導入管、及び撹拌機を取り付けた200mL容の4つ口フラスコに、ドデシルアクリレートを36g(150mmоl)、2-ヒドロキシエチルアクリレートを11.5g(99mmоl)、P-1A(N)を0.944g(4.8mmоl)、溶媒として2-プロパノールを47.6g仕込んだ。
次いで、フラスコ内を窒素置換し、開始剤として2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)を0.2g添加した後、撹拌しながらゆっくり昇温し、75~85℃の温度で還流させながら4時間反応させて、反応終了後に溶媒を減圧留去することにより、ポリ(メタ)アクリレート系共重合体(X)-1を得た。
ポリ(メタ)アクリレート系共重合体(X)-1の質量平均分子量(Mw)は18,200であり、分子量分布(Mw/Mn)は2.1であった。また、ポリ(メタ)アクリレート系共重合体(X)-1のリン含有量は、0.28質量%であった。
ポリ(メタ)アクリレート系共重合体(X)-1は、ポリ(メタ)アクリレート系共重合体(X)-1の含有量が50質量%となるように鉱物油で希釈して、潤滑油基油に混合した。
【0080】
(製造例2:ポリ(メタ)アクリレート系共重合体(X)-2の製造)
製造例1において溶媒として2-プロパノールを95.2g仕込んだこと以外は同様の操作を行って、ポリ(メタ)アクリレート系共重合体(X)-2を得た。
ポリ(メタ)アクリレート系共重合体(X)-2の質量平均分子量(Mw)は11,500であり、分子量分布(Mw/Mn)は1.9であった。また、ポリ(メタ)アクリレート系共重合体(X)-2のリン含有量は、0.28質量%であった。
ポリ(メタ)アクリレート系共重合体(X)-2は、ポリ(メタ)アクリレート系共重合体(X)-2の含有量が50質量%となるように鉱物油で希釈して、潤滑油基油に混合した。
【0081】
(製造例3:ポリ(メタ)アクリレート系共重合体(X)-3の製造)
製造例1において溶媒として2-プロパノールを23.8g仕込んだこと以外は同様の操作を行って、ポリ(メタ)アクリレート系共重合体(X)-3を得た。
ポリ(メタ)アクリレート系共重合体(X)-3の質量平均分子量(Mw)は31,900であり、分子量分布(Mw/Mn)は2.6であった。また、ポリ(メタ)アクリレート系共重合体(X)-3のリン含有量は、0.28質量%であった。
ポリ(メタ)アクリレート系共重合体(X)-3は、ポリ(メタ)アクリレート系共重合体(X)-3の含有量が50質量%となるように鉱物油で希釈して、潤滑油基油に混合した。
【0082】
(比較製造例1:ポリ(メタ)アクリレート系共重合体(X’)-1の製造)
温度計、窒素導入管、及び撹拌機を取り付けた200mL容の4つ口フラスコに、メチルメタクリレートを8.5g(84.9mmоl)、ドデシルメタクリレートを25.0g(98.3mmоl)、テトラデシルメタクリレートを15.0g(53.1mmоl)、P-1Mを1.5g(7.1mmоl)、連鎖移動剤としてドデシルメルカプタンを0.5g(2.5mmоl)、溶媒として2-プロパノールを17.5g仕込んだ。
次いで、フラスコ内を窒素置換し、開始剤として2,2’-アゾビス(2、4-ジメチルバレロニトリル)を0.25g添加した後、撹拌しながらゆっくり昇温し、75~85℃の温度で還流させながら4時間反応させて、反応終了後に溶媒を減圧留去することにより、ポリ(メタ)アクリレート系共重合体(X’)-1を得た。
ポリ(メタ)アクリレート系共重合体(X’)-1の質量平均分子量(Mw)は24,500であり、分子量分布(Mw/Mn)は1.8であった。また、ポリ(メタ)アクリレート系共重合体(X’)-1のリン含有量は、0.44質量%であった。
ポリ(メタ)アクリレート系共重合体(X’)-1は、ポリ(メタ)アクリレート系共重合体(X’)-1の含有量が50質量%となるように鉱物油で希釈して、潤滑油基油に混合した。
【0083】
(比較製造例2:ポリ(メタ)アクリレート系共重合体(X’)-2の製造)
温度計、窒素導入管、及び撹拌機を取り付けた200mL容の4つ口フラスコに、グリシジルメタクリレートを1.6g(11.3mmоl)、ドデシルメタクリレートを37.4g(147.1mmоl)、連鎖移動剤としてドデシルメルカプタンを0.35g(1.7mmоl)、溶媒として鉱物油を16.9g仕込んだ。
次いで、フラスコ内を窒素置換し、開始剤として2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)を0.22g添加した後、撹拌しながらゆっくり昇温し、75~85℃の温度で還流させながら7時間反応させた。室温に冷却した後、リン酸ジブチルを2.49g(11.9mmоl)、溶媒として鉱物油を24.9g添加した後、撹拌しながらゆっくり昇温し、80~100℃の温度で還流させながら10時間反応させて、ポリ(メタ)アクリレート系共重合体(X’)-2(50質量%鉱物油希釈)を得た。
ポリ(メタ)アクリレート系共重合体(X’)-2の質量平均分子量(Mw)は26,800であり、分子量分布(Mw/Mn)は1.8であった。また、ポリ(メタ)アクリレート系共重合体(X’)-2のリン含有量は、0.86質量%であった。
ポリ(メタ)アクリレート系共重合体(X’)-2は、重合の際に用いた希釈溶媒で希釈された状態のまま(すなわち、50質量%鉱物油希釈の状態で)、潤滑油基油に混合した。
【0084】
[評価方法]
以下に説明する試験を実施し、耐摩耗性、極圧性、及び熱安定性について評価を行った。
【0085】
<シェル摩耗試験>
シェル摩耗試験機を用いて、ASTM D 4172に準拠して、試験条件を、荷重30kg、回転数1,200rpm、温度80℃、試験時間30分に設定して、潤滑油組成物の耐摩耗性を評価した。結果は、試験剛球の摩耗痕径(mm)で表した。
本試験においては摩耗痕径が0.50mm以下であれば、耐摩耗性が良好であると判断した。
【0086】
<シェル四球試験耐荷重性(EP)試験>
ASTM D 2783-03(2014)に準拠して、四球試験機により回転数1,800回転/分、油温(室温:25±5℃)の条件で行い、最大非焼付荷重(LNL)と、融着荷重(WL)とを測定した。これらの値が大きいほど極圧性が良好である。
本試験においては、最大非焼付荷重(LNL)が490N以上であり、融着荷重(WL)が1569以上であれば、極圧性が良好であると判断した。
【0087】
<ISOT試験>
試験油(潤滑油組成物)に触媒として片と鉄片を入れ、JIS K 2514-1:2013に準拠するISOT試験を実施して、試験油を強制劣化させた。試験温度(油温)は150℃とした。そして、ISOT試験開始から24時間後の試験油について、JIS B 9931に準拠して、スラッジ量(mg/100mL)を測定した。
そして、以下の基準により評価し、「なし」である場合を熱安定性が良好であると判断した。
・「なし」:スラッジ量が5.0mg/100mL未満
・「少」:スラッジ量が5.0mg/100mL以上20.0mg/100mL未満
・「中」:スラッジ量が20.0mg/100mL以上40.0mg/100mL未満
・「多」:スラッジ量が40.0mg/100mL以上
【0088】
結果を表1に示す。表1中、潤滑油用添加剤組成物の含有量の括弧内の数値は、樹脂分換算の含有量を意味する。
【0089】
【0090】
表1より、以下のことがわかる。
実施例1~6に示す結果から、ポリ(メタ)アクリレート系共重合体(X)-1、ポリ(メタ)アクリレート系共重合体(X)-2、又はポリ(メタ)アクリレート系共重合体(X-3)を配合した潤滑油組成物は、耐摩耗性、極圧性、及び熱安定性に優れることがわかる。
比較例1に示す結果から、低分子量のリン系化合物であるハイドロジェンホスホネートを配合した潤滑油組成物は、耐摩耗性、極圧性、及び熱安定性のいずれもが不十分であることがわかる。
比較例2及び3に示す結果から、低分子量のリン系化合物であるアシッドホスフェートを配合した潤滑油組成物は、アシッドホスフェートの配合量を増やすことで、耐摩耗性及び極圧性は確保できるものの、熱安定性は不十分であることがわかる。
比較例4に示す結果から、低分子量のリン系化合物であるトリアリールホスフェートを配合した潤滑油組成物は、耐摩耗性及び極圧性が不十分であることがわかる。
比較例5に示す結果から、ポリ(メタ)アクリレート系共重合体(X’)-1を配合した潤滑油組成物は、耐摩耗性及び極圧性は良好であるものの、熱安定性が不十分であることがわかる。
比較例6に示す結果から、ポリ(メタ)アクリレート系共重合体(X’)-2を配合した潤滑油組成物は、耐摩耗性及び熱安定性は良好であるものの、極圧性が不十分であることがわかる。
【要約】
耐荷重添加剤として好適であり、耐摩耗性、極圧性、及び熱安定性に優れる潤滑油用添加剤組成物、並びに当該潤滑油用添加剤組成物を含有する潤滑油組成物を提供することを課題とした。そして、当該課題を、特定のアルキル(メタ)アクリレート(A)に由来する構成単位(a)と、特定の水酸基含有(メタ)アクリレート(B)に由来する構成単位(b)と、特定のリン含有(メタ)アクリレート(C)に由来する構成単位(c)とを含むポリ(メタ)アクリレート系共重合体(X)を含有する、潤滑油用添加剤組成物とすることで解決した。