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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-20
(45)【発行日】2022-04-28
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 21/00 20060101AFI20220421BHJP
   G03G 15/23 20060101ALI20220421BHJP
【FI】
G03G21/00 530
G03G15/23
G03G21/00 384
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018138791
(22)【出願日】2018-07-24
(65)【公開番号】P2020016729
(43)【公開日】2020-01-30
【審査請求日】2021-05-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100117215
【弁理士】
【氏名又は名称】北島 有二
(72)【発明者】
【氏名】二瓶 英憲
【審査官】山下 清隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-114638(JP,A)
【文献】特開2005-208200(JP,A)
【文献】特開2013-130709(JP,A)
【文献】特開2016-142764(JP,A)
【文献】特開2014-044306(JP,A)
【文献】特開2003-302846(JP,A)
【文献】特開2002-091105(JP,A)
【文献】特開2003-005460(JP,A)
【文献】特開2004-029494(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 21/00
G03G 15/23
G03G 21/14
G03G 15/00-15/01
G03G 15/16
G03G 15/20
B41J 29/00-29/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートが収容されて、シートを給送する給送装置と、
像担持体に形成されたトナー像をシートの表面に転写する転写部材と、
シートの表面に転写されたトナー像を加熱して定着する定着装置と、
前記転写部材の電気抵抗値を検知する抵抗検知手段と、
前記転写部材に印加される転写電圧を検知する電圧検知手段と、
前記定着装置で生じた熱気を前記給送装置に収容されたシートに向けて移動可能に構成された通気手段と、
を備え、
シートのオモテ面にのみトナー像を形成する片面印刷モードと、シートのオモテ面とウラ面とにそれぞれトナー像を形成する両面印刷モードと、を切替可能に構成され、
前記片面印刷モードが実行されるときには前記抵抗検知手段の検知結果に基づいて前記通気手段の稼働の要否を判断して、前記両面印刷モードが実行されるときには前記電圧検知手段の検知結果に基づいて前記通気手段の稼働の要否を判断して、その判断に基づいて前記通気手段を制御することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記抵抗検知手段は、前記像担持体に流れる転写電流を検知することで前記転写部材の電気抵抗値を間接的に検知し、
前記片面印刷モードが実行される場合に、前記抵抗検知手段によって検知された転写電流が所定値以上であるときには前記通気手段の稼働によって前記熱気が移動されて、前記抵抗検知手段によって検知された転写電流が前記所定値に達しないときには前記通気手段が稼働されないことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記両面印刷モードが実行される場合に、シートのオモテ面にトナー像が転写されるときに前記電圧検知手段によって検知された転写電圧と、当該シートのウラ面にトナー像が転写されるときに前記電圧検知手段によって検知された転写電圧と、の差異が所定の値以上であるときには前記通気手段の稼働によって前記熱気が移動されて、前記差異が前記所定の値に達しないときには前記通気手段が稼働されないことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記給送装置に収容されたシートに対向する位置に、当該画像形成装置の筐体の一部、又は、当該画像形成装置に設置されたユニットの筐体の一部、として機能するとともに、蓄熱可能に構成された蓄熱部材を備えたことを特徴とする請求項1~請求項3のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記蓄熱部材は、前記給送装置に収容されたシートに対向する側から、板金、防湿材、断熱材が積層されたものであることを特徴とする請求項4に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記通気手段は、
オン・オフ制御可能なファンと、
前記定着装置で生じた熱気を前記給送装置に収容されたシートに向けて導くダクトと、
前記給送装置の近傍の空気を当該画像形成装置の外部に排出するための排出経路と、
を具備したことを特徴とする請求項1~請求項5のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記定着装置で生じた熱気を前記給送装置の近傍を経由することなく当該画像形成装置の外部に排気可能に構成された排気手段を備え、
前記通気手段が稼働されないときには前記排気手段が稼働されて、前記通気手段が稼働されるときには前記排気手段が稼働されないことを特徴とする請求項1~請求項6のいずれかに記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、複写機、プリンタ、ファクシミリ、又は、それらの複合機等の画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、複写機やプリンタ等の画像形成装置において、感光体ドラムや中間転写ベルトなどの像担持体で形成されたトナー像を転写部材でシート(用紙)に転写して、転写部材でシートの表面に転写されたトナー像を定着装置で加熱して定着する技術が知られている(例えば、特許文献1、2参照。)。
【0003】
一方、特許文献1には、用紙(シート)の吸湿による異常画像の発生を防止することを目的として、定着部(定着装置)で生じた高温の空気をペーパーカセット(給送装置)に送り込み、用紙の吸湿を軽減する技術が開示されている。また、特許文献1では、ペーパーカセットに設置した温湿度センサの検知結果に基づいて、ペーパーカセットに設置した排出口の開口面積を調整している。
また、特許文献2には、加熱手段(定着装置)による加熱によって生じる水蒸気の量を低減することを目的として、転写部材の電気抵抗を検知して、その検知結果に基づいて除湿制御をおこなう技術が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の画像形成装置は、給送装置に収容されたシートの吸湿状態を精度良く検知することができず、シートがそれほど吸湿されていないにも関わらず、シートを過剰に温めてしまうことがあった。そして、そのような場合には、シートに丸まりが生じてしまったり、転写工程時に転写チリが生じてしまったりしていた。
一方、特許文献2の技術は、温湿度センサを用いることなく、転写部材の電気抵抗を検知しているため、給送装置に収容されたシートの吸湿状態をある程度精度良く把握することができる効果が期待できる。しかし、そのように転写部材の電気抵抗を検知する方法では、両面印刷モード時に給送装置に収容されたシートの吸湿状態を精度良く検知することができなかった。
【0005】
この発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、片面印刷モード時であっても、両面印刷モード時であっても、給送装置に収容されたシートの吸湿状態を精度良く検知して、シートを過剰に温めてしまうことなく、シートの吸湿による異常画像の発生を軽減することができる、画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明における画像形成装置は、シートが収容されて、シートを給送する給送装置と、像担持体に形成されたトナー像をシートの表面に転写する転写部材と、シートの表面に転写されたトナー像を加熱して定着する定着装置と、前記転写部材の電気抵抗値を検知する抵抗検知手段と、前記転写部材に印加される転写電圧を検知する電圧検知手段と、前記定着装置で生じた熱気を前記給送装置に収容されたシートに向けて移動可能に構成された通気手段と、を備え、シートのオモテ面にのみトナー像を形成する片面印刷モードと、シートのオモテ面とウラ面とにそれぞれトナー像を形成する両面印刷モードと、を切替可能に構成され、前記片面印刷モードが実行されるときには前記抵抗検知手段の検知結果に基づいて前記通気手段の稼働の要否を判断して、前記両面印刷モードが実行されるときには前記電圧検知手段の検知結果に基づいて前記通気手段の稼働の要否を判断して、その判断に基づいて前記通気手段を制御するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、片面印刷モード時であっても、両面印刷モード時であっても、給送装置に収容されたシートの吸湿状態を精度良く検知して、シートを過剰に温めてしまうことなく、シートの吸湿による異常画像の発生を軽減することができる、画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】この発明の実施の形態における画像形成装置を示す全体構成図である。
図2】転写部材から排紙ローラ対に至る排紙搬送路を示す拡大図である。
図3】除湿モード時の熱気の移動を示す図である。
図4】ファンの稼働制御を示すフローチャートである。
図5】給送装置の近傍を示す図である。
図6】変形例としての、画像形成装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、この発明を実施するための形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図中、同一又は相当する部分には同一の符号を付しており、その重複説明は適宜に簡略化ないし省略する。
【0010】
まず、図1にて、画像形成装置1における全体の構成・動作について説明する。
図1に示すように、本実施の形態における画像形成装置1は、モノクロの複写機である。
画像形成装置本体1の最上方には、原稿の画像情報を光学的に読み込む原稿読込部(スキャナ)が設置されている。
画像形成装置本体1の中央上方には、トナー容器102が着脱可能(交換可能)に設置されている。トナー容器102の側方には作像部4が設置されている。
画像形成装置本体1の下方には、用紙等のシートPが複数枚重ねて収容された給送装置12が設置されている。給送装置12は、シートPが収容されたカセット部が引出し可能に形成されていて、ユーザーはカセット部を適宜引出してシートPの補充をおこなうことになる。
また、画像形成装置本体1の右上方には、定着装置20を通過した後のシートPをスタック部100に向けて搬送(排紙)したり、定着装置20を通過した後のシートPを反転(スイッチバック)させて両面搬送路K5、転写ローラ89を経由して再び定着装置20に向けて搬送したりするための搬送装置30(搬送手段)が設置されている。
【0011】
作像部4には、像担持体としての感光体ドラム5が配設されている。また、感光体ドラム5の周囲には、帯電装置75、現像装置76、クリーニング装置77、除電装置、等が配設されている。そして、感光体ドラム5の表面で、作像プロセス(帯電工程、露光工程、現像工程、転写工程、クリーニング工程、除電工程)がおこなわれて、感光体ドラム5上にトナー像(画像)が形成されることになる。
【0012】
まず、原稿読込部2では、原稿の画像情報が光学的に読み取られる。そして、原稿読込部2で読み取られた光学的な画像情報は、電気信号に変換された後に、露光部3(書込み部)に送信される。そして、露光部3からは、その電気信号の画像情報に基づいたレーザ光が、感光体ドラム5の表面に向けて発せられる。
一方、像担持体としての感光体ドラム5は、駆動モータによって図1の反時計方向に回転駆動される。そして、帯電装置75の位置で、感光体ドラム5の表面が一様に帯電される(帯電工程である。)。
その後、感光体ドラム5の表面は、露光部3から発せられたレーザ光の照射位置に達して、この位置での露光走査によって静電潜像が形成される(露光工程である。)。
【0013】
その後、感光体ドラム5の表面は、現像装置76との対向位置に達して、この位置で静電潜像が現像されて、トナー像が形成される(現像工程である。)。
その後、感光体ドラム5の表面は、転写部材としての転写ローラ89との対向位置に達する。この位置では、転写ローラ89が、感光体ドラム5に当接して転写ニップを形成している。また、転写ローラ89には、転写電源93(図2参照)から定電流制御されたプラス極性の転写バイアス(トナー極性に対して逆極性の電圧である。)が印加されている。そして、感光体ドラム5上に形成されたトナー像は、この転写ニップの位置に搬送されたシートP上に転写される(転写工程である。)。このとき、感光体ドラム5上には、僅かながら未転写トナーが残存する。
【0014】
その後、感光体ドラム5の表面は、クリーニング装置77との対向位置に達して、この位置で感光体ドラム5上に残存した未転写トナーがクリーニング装置77のクリーニングブレードによって機械的に回収される(クリーニング工程である。)。
最後に、感光体ドラム5の表面は、除電装置との対向位置に達して、この位置で感光体ドラム5上の残留電位が除去される。
こうして、感光体ドラム5上でおこなわれる、一連の作像プロセスが終了する。
【0015】
なお、像担持体としての感光体ドラム5は、負帯電性の有機感光体であって、ドラム状導電性支持体上に感光層等を設けたものである。感光体ドラム5は、基層としての導電性支持体上に、絶縁層である下引き層、感光層としての電荷発生層及び電荷輸送層、表面層(保護層)が順次積層されている。
また、転写部材としての転写ローラ89は、ステンレス鋼、アルミニウム等からなる中空状の芯金上に、弾性層が形成(被覆)されたものである。転写ローラ89の弾性層は、ポリウレタン、EPDM、シリコーン等のゴム材料に、カーボン等の導電性フィラーを分散させたり、イオン性の導電材料を含有させたりして、ソリッド状又は発泡スポンジ状に形成することができる。
【0016】
ここで、転写ニップの位置に搬送されるシートPは、装置本体1の下方に配設された給送装置12から、第1搬送路K1を経由して搬送されたものである。
詳しくは、給送装置12には、用紙等のシートPが複数枚重ねて収容されている。そして、給紙ローラ31が図1の反時計方向に回転駆動されると、給紙ローラ31とフリクションパッド32との間に挟まれた最上方のシートPが、第1搬送路K1を形成するガイド板に案内されながら、レジストローラ対33(タイミングローラ対)のローラ間に向けて給送される。
【0017】
レジストローラ対33(タイミングローラ対)の位置に搬送されたシートPは、回転駆動を停止したレジストローラ対33のローラニップ(ニップ部)の位置で一旦停止する。
そして、感光体ドラム5上のトナー像にタイミングを合わせて、レジストローラ対33が回転駆動されて、シートPが転写ニップに向けて搬送される。こうして、シートP上に、所望の画像が転写される。
【0018】
その後、転写ニップの位置でトナー像が転写されたシートPは、定着装置20の位置に搬送される。そして、この位置(定着部材としての定着ベルト21と、加圧部材としての加圧ローラ22と、が圧接して形成された定着ニップである。)で、熱と圧力とにより、表面に担持されたトナー像がシートP上に定着される(定着工程である。)。
ここで、本実施の形態では、定着部材として定着ベルトを用いたが、定着部材として定着ローラや定着フィルムなどを用いることもできる。また、本実施の形態では、加圧部材として加圧ローラを用いたが、加圧部材として加圧ベルトや加圧パッドなどを用いることもできる。
【0019】
そして、定着工程後のシートPは、補助ローラ対53によって挟持・搬送されながら、切替部材45(分岐爪)によって排紙搬送路K2に案内されて、排紙ローラ対41によって、装置外へと排出される。排紙ローラ対41によって装置外に排出されたシートPは、出力画像として、スタック部100上に順次スタックされる。
こうして、画像形成装置における、一連の画像形成プロセスが完了する。
【0020】
ここで、上述した給送装置12からスタック部100に至るシートP(又は、画像形成装置1)の動作は、片面印刷モード(シートPのオモテ面にのみトナー像を形成するモードである。)が選択されている場合のものである。
なお、片面印刷モード時(又は、両面印刷モード時において両面へのプリントが終了した後のシートPをスタック部100に排出するとき)には、排紙搬送路K2を開放して中継搬送路K3を閉鎖するように切替部材45が支軸45a(回動軸)を中心にして反時計方向に回動した位置(図1図2で実線で示す位置である。)で停止することになる。
【0021】
これに対して、両面印刷モード(シートPのオモテ面とウラ面とにそれぞれトナー像を形成するモードである。)が選択されている場合には、以下のようにシートP(又は、画像形成装置1)が動作することになる。
給送装置12から給送されたシートPが、第1搬送路K1、転写ニップを経由して定着装置20に達するまでの工程は、片面印刷モード時のものと同様である。そして、定着工程後のシートP(オモテ面に画像が形成された状態のものである。)は、切替部材45によって中継搬送路K3を経由してスイッチバック搬送路K4に案内される。このとき、排紙搬送路K2を閉鎖して中継搬送路K3を開放するように切替部材45が支軸45a(回動軸)を中心にして時計方向に回動した位置(図2で破線で示す位置である。)で停止することになる。
そして、スイッチバック搬送路K4において、シートPの後端部(搬送方向の後端部である。)がスイッチバックローラ44のニップ部に達すると(シートPの後端部が中継搬送路K3と両面搬送路K5との分岐点を通過すると)、スイッチバックローラ44の回転駆動を一時的に停止させる。このとき、シートP(オモテ面に対して定着工程が施された後のシートPである。)は、スイッチバックローラ44によって後端部が保持された状態で、先端部の側が露呈部として装置の外部(スタック部100の上方の位置である。)に露呈した状態になる。
その後、スイッチバックローラ44を逆方向に回転駆動することで、シートPの搬送方向を逆転させて、両面搬送路K5に向けてシートPを搬送する。このとき、中継搬送路K3を閉鎖して排紙搬送路K2(及び、両面搬送路K5)を開放するように切替部材45が支軸45aを中心にして反時計方向に回動した位置で停止している。
【0022】
その後、図1を参照して、両面搬送路K5に導かれたシートPは、両面搬送路K5に設置された複数の搬送ローラ46、47によって搬送されて、転写ニップの位置に導かれる。そして、シートPは、この位置で、オモテ面への転写工程時と同じように、ウラ面への転写工程がおこなわれて、その後に定着装置20に向けて搬送されて、ウラ面への定着工程がおこなわれる。
そして、定着工程後のシートP(両面へのプリントが終了した後のシートPである。)は、先に説明したように、排紙搬送路K2を経て排紙ローラ対41のニップ部に導かれて、排紙ローラ対41によって装置外へと排出されて、スタック部100上に順次スタックされる。
【0023】
次に、図2にて、画像形成装置本体1に設置される定着装置20の構成・動作について詳述する。
図2を参照して、定着装置20は、定着部材としての定着ベルト21(ベルト部材)、固定部材26(定着ニップ形成部材)、補強部材23、加熱手段としてのヒータ25(熱源)、加圧部材としての加圧ローラ22、反射部材27、等で構成される。
【0024】
ここで、定着ベルト21(定着部材)は、薄肉で可撓性を有する無端状ベルトであって、図2中の矢印方向(反時計方向)に回転(走行)する。定着ベルト21は、内周面(固定部材26との摺接面である。)側から、基材層、弾性層、離型層が順次積層されていて、その全体の厚さが1mm以下に設定されている。
定着ベルト21の基材層は、層厚が30~50μmであって、ステンレス、ニッケル等の金属材料やポリイミド等の樹脂材料で形成されている。
定着ベルト21の弾性層は、層厚が100~300μmであって、シリコーンゴム、発泡性シリコーンゴム、フッ素ゴム、等のゴム材料で形成されている。
定着ベルト21の離型層は、層厚が5~50μmであって、PFA(テトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、ポリイミド、ポリエーテルイミド、PES(ポリエーテルサルファイド)、等の材料で形成されている。
【0025】
定着ベルト21の内部(内周面側)には、固定部材26、ヒータ25、補強部材23、反射部材27、等が固設されている。
ここで、固定部材26は、定着ベルト21の内周面に摺接するように固定されている。そして、固定部材26が定着ベルト21を介して加圧ローラ22に圧接することで、シートPが搬送される定着ニップが形成される。
そして、定着ベルト21は、その内部に設置されたヒータ25(加熱手段)の輻射熱(赤外粋光)により直接的に加熱される。
【0026】
加熱手段としてのヒータ25は、ハロゲンヒータ(赤外線ヒータ)であって、両端部が定着装置20の側板に固定されている。そして、装置本体1の定着電源により出力制御されたヒータ25の輻射熱によって、定着ベルト21において主として定着ニップを除く部分であってヒータ25に対向する対向面(定着ベルト21の周方向の一部である。)が加熱される。さらに、加熱された定着ベルト21の表面からシートP上のトナー像に熱が加えられる。なお、ヒータ25の出力制御(オン・オフ制御)は、定着ベルト21表面に対向するサーモパイル等の温度センサ28によるベルト表面温度の検知結果に基いておこなわれる。また、このようなヒータ25の出力制御によって、定着ベルト21の表面温度(定着温度)を所望の温度に設定することができる。
【0027】
ここで、本実施の形態では、定着ニップを形成する固定部材26の強度を補強する補強部材23が、定着ベルト21の内周面側に固設されている。そして、補強部材23が固定部材26及び定着ベルト21を介して加圧ローラ22に当接することで、定着ニップにおいて固定部材26が加圧ローラ22の加圧力を受けて大きく変形する不具合を抑止している。
また、本実施の形態では、補強部材23における、ヒータ25に対向する面の側に、反射部材27(反射板)が固設されている。すなわち、補強部材23は、その内部(凹部の内側)に反射部材27を介してヒータ25が配設されている。これにより、ヒータ25から補強部材23に向かう熱(補強部材23を加熱する熱)が反射部材27で反射されて定着ベルト21の加熱に用いられることになるために、定着ベルト21の加熱効率がさらに向上することになる。なお、反射部材27の材料としては、アルミニウムやステンレス等を用いることができる。
【0028】
図2を参照して、加圧部材としての加圧ローラ22は、中空構造の芯金上に弾性層を形成したものである。加圧ローラ22の弾性層は、発泡性シリコーンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム等の材料で形成されている。なお、弾性層の表層にPFA、PTFE等からなる薄肉の離型層を設けることもできる。加圧ローラ22は定着ベルト21に圧接して、双方の部材間に所望の定着ニップを形成する。また、加圧ローラ22には駆動モータの駆動ギアに噛合するギアが設置されていて、加圧ローラ22は図2中の矢印方向(時計方向)に回転駆動される。
【0029】
以下、上述のように構成された定着装置20の通常時の動作について簡単に説明する。
装置本体1の電源スイッチが投入されると、定着電源から定着装置20(ヒータ25)に電圧が供給されるとともに、加圧ローラ22の図2中の矢印方向の回転駆動が開始される。これにより、定着ニップにおける加圧ローラ22との摩擦力によって、定着ベルト21も図2中の矢印方向に従動回転する。
その後、給送装置12からシートPが給送されて、転写ローラ89(転写部材)の位置で、シートP上に未定着の画像が担持(転写)される。未定着画像(トナー像)が担持されたシートPは、搬送ガイド板に案内されながら図2の一点鎖線矢印方向に搬送されて、圧接状態にある定着ベルト21及び加圧ローラ22の定着ニップに送入される。
そして、ヒータ25によって加熱された定着ベルト21による加熱と、補強部材23によって補強された固定部材26と加圧ローラ22との押圧力とによって、シートPの表面にトナー像が定着される。その後、定着ニップから送出されたシートPは、分離板と搬送ガイド板との間を通過した後に、補助ローラ対53によって、破線矢印方向にさらに搬送されることになる。
【0030】
なお、本実施の形態では、定着ベルト21を加熱する加熱手段としてヒータ25を用いたが、定着ベルトを加熱する加熱手段として電磁誘導コイルや抵抗発熱体などを用いることもできる。また、本実施の形態では、加熱手段によって定着部材(定着ベルト21)を内周面側から加熱するように構成したが、加熱手段によって定着部材を外周面側から加熱するように構成することもできる。
【0031】
以下、本実施の形態における画像形成装置1の、特徴的な構成・動作について詳述する。
先に図1図2を用いて説明したように、本実施の形態における画像形成装置1には、給送装置12や、転写部材としての転写ローラ89や、定着装置20、などが設けられている。
給送装置12は、シートPがカセット部に収容されて、給紙ローラ31などからなる給送機構によってシートを給送するものである。
転写部材としての転写ローラ89は、像担持体としての感光体ドラム5に形成されたトナー像をシートPの表面に転写するためのものである。
定着装置20は、シートPの表面に転写されたトナー像を加熱して定着するためのものである。
【0032】
また、本実施の形態における画像形成装置1は、シートPのオモテ面にのみトナー像を形成する「片面印刷モード」と、シートPのオモテ面とウラ面とにそれぞれトナー像を形成する「両面印刷モード」と、を切替可能に構成されている。
「片面印刷モード」と「両面印刷モード」との切替は、装置本体1の外装に設置された操作パネル110(図1参照)をユーザーが操作することによりおこなわれる。詳しくは、操作パネル110には、「片面印刷モード」と「両面印刷モード」とを切替えるための操作ボタンが設けられていて、その操作ボタンをユーザーが操作することになる。
そして、先に説明したように、搬送装置30によって、片面印刷モード時には、オモテ面に定着工程が施された後のシートPがそのまま排紙搬送路K2に導かれ、両面印刷モード時には、オモテ面に定着工程が施された後のシートPが両面搬送路K5に向けて導かれることになる。
【0033】
ここで、図2を参照して、本実施の形態における画像形成装置1には、転写ローラ89(転写部材)の電気抵抗値を検知する抵抗検知手段としての電流検知部91と、転写ローラ89(転写部材)に印加される転写電圧を検知する電圧検知手段としての電圧検知部92と、が設けられている。
電流検知部91(抵抗検知手段)は、転写ローラ89からシートPを介して感光体ドラム5(像担持体)に流れる転写電流を検知することで転写ローラ89の電気抵抗値を間接的に検知するものである。具体的に、転写工程時に、感光体ドラム5に接続された回路に流れる電流(転写電流)が電流検知部91によって検知される。そして、制御部90で、電流検知部91で検知された転写電流が高い場合は、転写ローラ89の電気抵抗値が低いものと判断され、電流検知部91で検知された転写電流が低い場合は、転写ローラ89の電気抵抗値が高いものと判断される。
電圧検知部92(電圧検知手段)は、定電流制御された転写電源93から転写ローラ89に印加される電圧(転写電圧)を直接的に検知するものである。具体的に、転写工程時に、転写ローラ89に接続された回路に流れる電圧(転写電圧)が電圧検知部92によって検知される。そして、転写工程時に転写ニップを通過するシートPの含水分量が多いときには、含水分量が少ないときに比べて、シートPの電気抵抗が低くなり、転写電圧も小さくなる。
【0034】
また、図3を参照して、本実施の形態における画像形成装置1には、定着装置20で生じた熱気(定着装置20によって高温に暖められた周囲の空気である。)を給送装置12に収容されたシートPに向けて移動可能に構成された通気手段95~98が設けられている。
詳しくは、通気手段は、ファン95、96、ダクト97、排出経路98、などで構成されている。
ファン95、96は、オン・オフ制御可能なものであって、後述する「除湿モード」が実行されるときに制御部90による制御によって稼働されて、「除湿モード」が実行されないときに制御部90による制御によって稼働停止される。本実施の形態では、定着装置20の近傍の上方に第1ファン95が設置されて、給送装置12の近傍の側方に外部に連通するように第2ファン96が設置されている。
ダクト97は、定着装置20で生じた熱気を給送装置12に収容されたシートPに向けて導くものである。ダクト97は、第1ファン95(又は/及び、第2ファン96)によって形成された熱気による気流が効率的に給送装置12に流動するように、上流側開口から下流側開口にかけて略閉空間となる流路を形成している。
排出経路98は、給送装置12の近傍の空気を画像形成装置1の外部に排出するためのものである。本実施の形態では、排出経路98の排出口に第2ファン96が設置されていて、排出口からの排気を促進できるように構成されている。
【0035】
このように構成された通気手段によって、制御部90による制御によって第1ファン95(又は/及び、第2ファン)が稼働されると、図3の白矢印方向に熱気が流動することになる。
そして、このようにして給送装置12の位置に流動された熱気によって、給送装置12に収容されたシートPが温められて、シートPに含有された水分が除去(除湿)されることになる。
以下、このように、通気手段を稼働して熱気を流動させる制御を、適宜に「除湿モード」と呼ぶ。
【0036】
そして、本実施の形態では、「片面印刷モード」が実行されるときには、電流検知部91(抵抗検知手段)の検知結果に基づいてファン95、96(通気手段)の稼働の要否を制御部90で判断して、その判断に基づいてファン95、96(通気手段)を制御している。
詳しくは、「片面印刷モード」が実行される場合に、電流検知部91(抵抗検知手段)によって検知された転写電流が所定値X(本実施の形態では、100μAである。)以上であるときには、ファン95、96(通気手段)の稼働によって熱気が移動されて、除湿モードが実行される。これに対して、電流検知部91によって検知された転写電流が所定値Xに達しないときには、ファン95、96が稼働されない(除湿モードが実行されない)。
【0037】
このような制御をおこなうのは、転写ローラ89の電気抵抗は、湿度による依存性があって、転写ローラ89の周囲の空気の湿度の高低に加えて、転写ニップに搬送されるシートPの含水分量の大小によって、変化するためである。具体的に、周囲の空気の湿度が高かったり、シートPの含水分量が大きかったりすると、転写ローラ89の電気抵抗が低下して、電流検知部91で検知される転写電流が高くなる。
本実施の形態では、片面印刷モード時において、電流検知部91で検知される転写電流が所定値X(100μA)以上であるときには、給送装置12に収容されたシートPの含水分量が高くて、転写不良などの異常画像が生じてしまうものとして、除湿モードを実行している。これに対して、電流検知部91で検知される転写電流が所定値X(100μA)に達しないときには、給送装置12に収容されたシートPの含水分量が高くなくて、転写不良などの異常画像が生じにくく、かえって除湿モードを実行することでシートPを過剰に温めてしまい、シートPに丸まりが生じてしまったり、転写工程時に転写チリが生じてしまったりするものとして、除湿モードは実行しない。
【0038】
これに対して、「両面印刷モード」が実行されるときには、電圧検知部92(電圧検知手段)の検知結果に基づいてファン95、96(通気手段)の稼働の要否を制御部90で判断して、その判断に基づいてファン95、96(通気手段)を制御している。
詳しくは、「両面印刷モード」が実行される場合に、シートPのオモテ面にトナー像が転写されるときに電圧検知部92(電圧検知手段)によって検知された転写電圧Aと、そのシートPのウラ面にトナー像が転写されるときに電圧検知部92によって検知された転写電圧Bと、の差異C(=B-A)が所定の値W(本実施の形態では、1.1kVである。)以上であるときにはファン95、96(通気手段)の稼働によって熱気が移動されて、除湿モードが実行される。これに対して、上述した差異Cが所定の値Wに達しないときには、ファン95、96が稼働されない(除湿モードが実行されない)。
【0039】
このような制御をおこなうのは、シートPのウラ面に対する転写工程がおこなわれるときには、一度、シートPが定着装置20で加熱されているため、その含水分量が、オモテ面に対する転写工程がおこなわれるときのものに比べて小さく、もともとのシートPの含水分量が大きいものほど、その差異が大きくなるためである。
本実施の形態では、両面印刷モード時において、オモテ面印刷時の転写電圧Aとウラ面印刷時の転写電圧Bとの差異C(=B-A)が所定の値W(1.1kV)以上であるときには、給送装置12に収容されたシートPの含水分量が高くて、転写不良などの異常画像が生じてしまうものとして、除湿モードを実行している。これに対して、オモテ面印刷時の転写電圧Aとウラ面印刷時の転写電圧Bとの差異C(=B-A)が所定の値W(1.1kV)に達しないときには、給送装置12に収容されたシートPの含水分量が高くなくて、転写不良などの異常画像が生じにくく、かえって除湿モードを実行することでシートPを過剰に温めてしまい、シートPに丸まりが生じてしまったり、転写工程時に転写チリが生じてしまったりするものとして、除湿モードは実行しない。
【0040】
そして、このように両面印刷モード時には、片面印刷モード時のように電流検知部91(抵抗検知手段)を用いてシートPの吸湿状態を検知しないのは、オモテ面印刷時の転写電圧Aとウラ面印刷時の転写電圧Bとの差異C(電圧差)による検知の方が、周囲の湿度環境などの影響が少なく、精度の高い検知が可能になるためである。換言すると、転写ローラ89の電気抵抗を検知する方法では、両面印刷モード時に給送装置12に収容されたシートPの吸湿状態を精度良く検知することができないためである。
一方、片面印刷モード時には、両面印刷モード時のように電圧検知部92(電圧検知手段)によってオモテ面印刷時の転写電圧Aとウラ面印刷時の転写電圧Bとの差異C(電圧差)を検知することはできないため、電流検知部91(抵抗検知手段)を用いてシートPの吸湿状態を検知している。しかし、給送装置12に温湿度センサを設置して、その温度センサの検知結果に基づいてシートPの吸湿状態を検知する場合(例えば、特許文献1に開示された検知方法である。)に比べて、給送装置12内のシートPの吸湿状態を正確に把握することができる。すなわち、給送装置12に設置した温湿度センサの検知結果に基づいてシートPの吸湿状態を検知する場合には、温湿度センサで検知された環境下でどの程度の時間放置されていたかによって、シートPの吸湿状態が大きく変化するため、吸湿状態の正確な把握が難しくなる。これに対して、電流検知部91を用いた検知は、実際に転写工程時にシートPを通紙しながら直接的におこなうため、給送装置12内のシートPの吸湿状態を正確に把握しやすい。
【0041】
このように、本実施の形態では、片面印刷モードであるか両面印刷モードであるかによって最適な検知方法を選択している。そのため、片面印刷モード時であっても、両面印刷モード時であっても、給送装置12に収容されたシートPの吸湿状態を精度良く検知して、シートPを過剰に温めてしまうことなく、シートPの吸湿による異常画像の発生を軽減することができる。
【0042】
なお、本実施の形態では、画像形成装置1の機内温度が過剰に上昇するのを防止するために、定着装置20のヒータ25(図2参照)のオン時間(連続点灯時間)が所定時間を超えると、連続通紙時における紙間(給送装置12からシートPを給送する間隔であって、先行するシートPの後端と後行のシートPの先端との間隔である。)が長くなるような制御(以下、適宜に「低速モード」と呼ぶ。)をおこなっている。
このような低速モードが実行される例としては、給送装置12に収容されたシートPの含水分量が大きくなる場合がある。シートPの含水分量が大きくなると、定着工程時の蒸散効果で定着ベルト21の熱が奪われるので、そのままでは、ヒータ25のオン時間が長くなってしまうためである。
ところが、本実施の形態では、適宜に除湿モードを実行しているため、給送装置12に収容されたシートPの含水分量が大きくなりにくくなる。そのため、シートPの含水分量が大きくなることによる低速モードの実行頻度も少なくなって、連続通紙時における印刷の生産性ダウンを軽減することができる。
【0043】
以下、図4のフローを用いて、通気手段としてのファン95、96の可動制御(除湿モード制御)について、まとめとして説明する。
図4に示すように、まず、印刷が開始されると、その印刷が両面印刷モードであるのか片面印刷モードであるのかが判別される(ステップS1)。
その結果、片面印刷モードであると判別された場合には、転写工程において転写電源93から転写ローラ89に転写バイアスが印加されたときに、電流検知部91によって転写電流が検知される(ステップS2、S3)。そして、その検知結果に基づいて制御部90で転写ローラ89の電気抵抗値Rが算出されて(ステップS4)、算出された電気抵抗値Rが所定値X(100μA)以上であるかが判別される(ステップS5)。
その結果、電気抵抗値Rが所定値X以上であると判別された場合には、ファン95、96が稼働されて除湿モードが実行され(ステップS6)、シートPの搬送をともなう一連の印刷動作が終了する(ステップS7)。これに対して、ステップS5で、電気抵抗値Rが所定値X以上でないと判別された場合には、ファン95、96が稼働されることなく、シートPの搬送をともなう一連の印刷動作(画像形成動作)が終了する(ステップS7)。
【0044】
一方、ステップS1で、両面印刷モードであると判別された場合には、転写工程において転写電源93から転写ローラ89に転写バイアスが印加されたときに、電圧検知部92によって転写電圧が検知される(ステップS8、S9)。そして、その転写工程がウラ面印刷時のものであるかが判別される(ステップS10)。
その結果、オモテ面印刷であると判別された場合には、ステップS9で検知した転写電圧をAとして記憶部に保存して(ステップS11)、切替部材45による切替(反転切替)がおこなわれて定着工程後のシートPの両面搬送路K5への搬送がおこなわれる(ステップS12)。そして、ステップS8以降のフローが繰り返される。
そして、ステップS10でウラ面印刷であると判別された場合には、ステップS9で検知した転写電圧をBとして記憶部に保存して(ステップS13)、ステップS11で保存した転写電圧Aとの電圧差C(=B-A)が制御部90で算出される(ステップS14)。そして、算出された電圧差Cが所定の値W(1.1kV)以上であるかが判別される(ステップS15)。
その結果、電圧差Cが所定の値W以上であると判別された場合には、ファン95、96が稼働されて除湿モードが実行され(ステップS16)、シートPの搬送をともなう一連の印刷動作が終了する(ステップS7)。これに対して、ステップS15で、電圧差Cが所定の値W以上でないと判別された場合には、ファン95、96が稼働されることなく、シートPの搬送をともなう一連の印刷動作が終了する(ステップS7)。
【0045】
なお、本実施の形態では、除湿モード時に第1ファン95と第2ファン96との2つのファンを稼働したが、除湿モード時に第1ファン95のみを稼働して第2ファン96を稼働停止することもできる。そのような場合には、第2ファン96による熱気の積極的な排出がおこなわれずに、熱気が給送装置12の周囲に停滞することになるため、熱気によるシートPの温めが加速されることになる。また、そのような場合には、除湿モードが終了した後や、除湿モードが実行されていないときなどに、第1ファン95を稼働停止して第2ファン96のみを稼働することで、機内温度の上昇を軽減することができる。
【0046】
ここで、図1図3等に示すように、本実施の形態における画像形成装置1には、給送装置12に収容されたシートPに対向する位置に、画像形成装置1の筐体の一部として機能するとともに、蓄熱可能に構成された板状の蓄熱部材111が設けられている。
詳しくは、蓄熱部材111は、金属材料からなるステーであって、給送装置12と、露光部3などが設置された上方の空間と、を仕切る仕切板として機能するとともに、熱気の流路の一部を形成する部材としても機能する。そして、蓄熱部材111は、その位置に流動する熱気の熱を蓄熱するため、給送装置12に収容されたシートPの除湿性が高められることになる。
このように、画像形成装置1の筐体の一部をなす部材を蓄熱部材111として利用することで、蓄熱部材として機能する部材を専用に設置する場合に比べて、装置を低コスト化、省スペース化することができる。
なお、本実施の形態では、画像形成装置1の筐体の一部として機能する部材を蓄熱部材111として利用したが、画像形成装置1に設置されたユニット(例えば、露光部3である。)の筐体の一部を蓄熱部材111として利用することもできる。
【0047】
ここで、蓄熱部材111は、図5に示すように、給送装置12に収容されたシートPに対向する側から、板金111a、防湿材111b、断熱材111cが積層されたものとすることもできる。そのように構成した場合には、板金111aの部分が蓄熱部材の主部として機能して、断熱材111cによって板金111aの蓄熱性が高められるとともに、防湿材111bによって給送装置12の周囲の除湿性が高められることになる。
また、本実施の形態において、給送装置12の周囲の除湿性を高めるために、給送装置12やその近傍に除湿ヒータを設けることもできる。
【0048】
<変形例>
図6は、変形例としての画像形成装置1を示す図であって、本実施の形態における図3に対応する図である。
図6に示すように、変形例の画像形成装置1には、定着装置20で生じた熱気を給送装置12の近傍を経由することなく画像形成装置1の外部に排気可能に構成された排気手段としての第2通気経路99が設置されている。詳しくは、第2通気経路99(排気手段)は、画像形成装置1の内部において、定着装置20の側方から装置本体1の上部を経由して第2ファン96の位置に至るダクトが設けられている。
また、変形例では、通気手段95~98は、定着装置20で生じた熱気を給送装置12の近傍を経由して画像形成装置1の外部に排気可能に構成された第1通気経路として機能することになる。また、通気手段における排出経路98には、その流路を開閉可能に構成されたシャッタ120が設置されている。
そして、変形例では、通気手段95~98(第1通気経路)が稼働されないときには排気手段(第2通気経路)が稼働されて、通気手段95~98(第1通気経路)が稼働されるときには排気手段(第2通気経路)が稼働されるように制御している。
詳しくは、変形例においても、本実施の形態のものと同様に、印刷モードに応じて、電流検知部91又は電圧検知部92による検知結果に基づいて除湿モードが実行される。そして、除湿モードが実行されるときには、シャッタ120によって排出経路98が開放された状態で第1、第2ファン95、96が稼働される。これにより、熱気は図6の白矢印方向に移動して、給送装置12内のシートPが除湿されることになる。
これに対して、除湿モードが実行されないときには、シャッタ120によって排出経路98が閉鎖された状態で第2ファン96のみが稼働される。これにより、熱気は図6の黒矢印方向に移動して、画像形成装置1の機内温度の上昇が軽減されることになる。
【0049】
以上説明したように、本実施の形態における画像形成装置1は、転写ローラ89(転写部材)の電気抵抗値を検知する電流検知部91(抵抗検知手段)と、転写ローラ89に印加される転写電圧を検知する電圧検知部92(電圧検知手段)と、定着装置20で生じた熱気を給送装置12に収容されたシートPに向けて移動可能に構成された通気手段95~98と、が設けられている。そして、片面印刷モードが実行されるときには電流検知部91の検知結果に基づいてファン95、96(通気手段)の稼働の要否を判断して、両面印刷モードが実行されるときには電圧検知部92の検知結果に基づいてファン95、96の稼働の要否を判断して、その判断に基づいてファン95、96を制御している。
これにより、片面印刷モード時であっても、両面印刷モード時であっても、給送装置12に収容されたシートPの吸湿状態を精度良く検知して、シートPを過剰に温めてしまうことなく、シートPの吸湿による異常画像の発生を軽減することができる。
【0050】
なお、本実施の形態では、像担持体としての感光体ドラム5に担持されたトナー像が転写部材としての転写ローラ89によってシートP上に転写されるモノクロ画像形成装置1に対して本発明を適用したが、像担持体としての中間転写ベルト(中間転写体)に担持されたトナー像が転写部材としての2次転写ローラによってシート上に転写されるカラー画像形成装置に対しても当然に本発明を適用することができる。
そして、そのような場合であっても、本実施の形態のものと同様の効果を得ることができる。
【0051】
なお、本発明が本実施の形態に限定されず、本発明の技術思想の範囲内において、本実施の形態の中で示唆した以外にも、本実施の形態は適宜変更され得ることは明らかである。また、前記構成部材の数、位置、形状等は本実施の形態に限定されず、本発明を実施する上で好適な数、位置、形状等にすることができる。
【0052】
なお、本願明細書等において、「シート」とは、通常の用紙(紙)の他に、コート紙、ラベル紙、OHPシート、金属シート、フィルム、プリプレグ、布、等のシート状の記録媒体のすべてを含むものと定義する。
【符号の説明】
【0053】
1 画像形成装置(画像形成装置本体)、
5 感光体ドラム(像担持体)、
12 給送装置(給紙装置)、
20 定着装置、
21 定着ベルト(定着部材)、
22 加圧ローラ(加圧部材)、
89 転写ローラ(転写部材)、
91 電流検知部(抵抗検知手段)、
92 電圧検知部(電圧検知手段)、
95 第1ファン(通気手段)、
96 第2ファン(通気手段)、
97 ダクト(通気手段)、
98 排出経路(通気手段)、
99 第2通気経路(排気手段)、
111 蓄熱部材、
111a 板金(蓄熱板)、 111b 防湿材、 111c 断熱材、
K2 排紙搬送路、 K3 中継搬送路、 K4 スイッチバック搬送路、
K5 両面搬送路、 P シート(記録媒体)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0054】
【文献】特開平5-346717号公報
【文献】特開2016-142764号公報
図1
図2
図3
図4
図5
図6