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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-20
(45)【発行日】2022-04-28
(54)【発明の名称】内視鏡
(51)【国際特許分類】
   A61B 1/005 20060101AFI20220421BHJP
   A61B 1/00 20060101ALI20220421BHJP
   G02B 23/24 20060101ALI20220421BHJP
【FI】
A61B1/005 512
A61B1/00 711
G02B23/24 A
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019052439
(22)【出願日】2019-03-20
(65)【公開番号】P2020151202
(43)【公開日】2020-09-24
【審査請求日】2021-01-22
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】池田 利幸
【審査官】北島 拓馬
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/043124(WO,A1)
【文献】特開2013-027466(JP,A)
【文献】特開2002-360505(JP,A)
【文献】特開2012-050557(JP,A)
【文献】国際公開第2018/096679(WO,A1)
【文献】米国特許第06203494(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 1/00 - 1/32
G02B 23/24 -23/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軟性部を有する挿入部と、
前記挿入部の基端側に連設された操作部と、
前記挿入部内に設けられた密着コイルばねを有し、前記密着コイルばねを圧縮させることにより前記軟性部の硬度を調整する硬度調整機構と、
前記操作部に設けられ、手動操作されることによって前記硬度調整機構に対して前記密着コイルばねを圧縮させるための駆動力を入力する第1駆動力入力部材と、
前記第1駆動力入力部材とは別に設けられ、前記硬度調整機構に対して前記密着コイルばねを圧縮させるための駆動力を入力する第2駆動力入力部材とを、
を有する内視鏡。
【請求項2】
前記第2駆動力入力部材に対して駆動力を入力する外部機構が着脱自在に接続される接続インタフェースを有する、請求項1に記載の内視鏡。
【請求項3】
前記外部機構が前記接続インタフェースに接続されているか否かに関わらず、前記第1駆動力入力部材の手動操作が可能である、請求項2に記載の内視鏡。
【請求項4】
前記外部機構はアクチュエータである、請求項3に記載の内視鏡。
【請求項5】
前記第1駆動力入力部材から入力される駆動力を前記硬度調整機構に伝達する伝達部材を有し、
前記第2駆動力入力部材は、前記伝達部材に接続されている、
請求項2に記載の内視鏡。
【請求項6】
前記第2駆動力入力部材はシャフトであり、
前記シャフトは、前記外部機構からの駆動力を減速する減速機構を介して前記伝達部材に接続されている、請求項5に記載の内視鏡。
【請求項7】
前記硬度調整機構は、
前記密着コイルばね内に挿通され、前記密着コイルばねの先端に固着されたワイヤと、
前記伝達部材に係合され、前記密着コイルばねの基端と前記ワイヤの基端とを離間させることで、前記密着コイルばねを圧縮させる可動部材と、
を有する、請求項5又は6に記載の内視鏡。
【請求項8】
前記ワイヤの基端を固定し、前記可動部材によって前記密着コイルばねの基端を押圧することで、前記密着コイルばねを圧縮させる、請求項7に記載の内視鏡。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、内視鏡に関する。
【背景技術】
【0002】
軟性部を有する挿入部を備え、挿入部内に設けられたコイル等の硬度調整用部材を収縮させることで、軟性部の硬度が調整可能とされた内視鏡が知られている。従来、内視鏡を例えば患者等の被検者の体内へ挿入する際には、医者等の術者が操作部に設けられた操作リング等を手動操作し、軟性部の硬度を調整しながら挿入を行っている。
【0003】
また、この内視鏡の軟性部の硬度調整を、アクチュエータ等によって駆動される硬度調整機構を用いて電動操作することが試みられている。例えば特許文献1には、挿入部に挿通されたコイルの先端部近辺に固着されたワイヤをアクチュエータ(モータ)等による動力装置によって牽引することで、コイルを圧縮変形させ、挿入部の硬度を変化させる内視鏡装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2003-00533号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、内視鏡の手技には、術者の熟練したスキルが必要になることに加えて、様々な作業が伴う。そのため、硬度調整操作を、術者自身が行う方が適切な場合もあれば、術者の作業負担を軽減するために、術者以外の手を借りる方が適切な場合もある。
【0006】
術者以外の手を借りる方法としては、特許文献1に記載されている内視鏡のように、アクチュエータを使用して硬度調整操作を行う方法がある他、アクチュエータを使用しない場合でも、術者を補助する補助者に硬度調整操作を任せるという方法も考えられる。
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の内視鏡では、硬度調整操作はアクチュエータを使用する他なく、術者自身が硬度調整操作を行うことができない。一方、硬度調整操作を術者自身の手動操作のみによって行う従来の一般的な内視鏡は、硬度調整操作を術者自身が行う他なく、術者以外の手を借りることができない。
【0008】
本開示は上記事実に鑑み、硬度調整操作に関して、術者自身の手動による操作方法と、術者以外の手を借りる操作方法の2つの操作方法が可能な内視鏡を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の第1態様に係る内視鏡は、軟性部を有する挿入部と、挿入部の基端側に連設された操作部と、操作部から軟性部にかけて設けられ、軟性部の硬度を調整する硬度調整機構と、操作部に設けられ、手動操作されることによって硬度調整機構に対して駆動力を入力する第1駆動力入力部材と、第1駆動力入力部材とは別に設けられ、硬度調整機構に対して駆動力を入力する第2駆動力入力部材とを、を有する。
【0010】
上記構成によれば、手動操作される第1駆動力入力部材とは別に第2駆動力入力部材が設けられているため、硬度調整操作に関して、術者自身の手動による操作方法と、術者以外の手を借りる操作方法の2つの操作方法が可能となる。
【0011】
本開示の第2態様に係る内視鏡は、第1態様に係る内視鏡において、第2駆動力入力部材に対して駆動力を入力する外部機構が着脱自在に接続される接続インタフェースを有する。
【0012】
上記構成によれば、第2駆動力入力部材を介して外部機構によって硬度調整機構に駆動力を供給することができる。ここで、外部機構は、接続インタフェースに着脱自在に接続されるため、必要に応じて外部機構の取り付け、取り外しを行うことができ、手技に応じて適切な使い方が可能となる。
【0013】
本開示の第3態様に係る内視鏡は、第2態様に係る内視鏡において、外部機構が接続インタフェースに接続されているか否かに関わらず、第1駆動力入力部材の手動操作が可能である。
【0014】
上記構成によれば、外部機構を接続インタフェースに接続した状態であっても、術者が手動操作によって軟性部の硬度を調整することができる。
【0015】
本開示の第4態様に係る内視鏡は、第3態様に係る内視鏡において、外部機構はアクチュエータである。
【0016】
上記構成によれば、第2駆動力入力機構を介してアクチュエータによって電動操作で軟性部の硬度を調整することができる。
【0017】
本開示の第5態様に係る内視鏡は、第2態様に係る内視鏡において、第1駆動力入力部材から入力される駆動力を硬度調整機構に伝達する伝達部材を有し、第2駆動力入力部材は、伝達部材に接続されている。
【0018】
上記構成によれば、第1駆動力入力部材からの駆動力と第2駆動力入力部材からの駆動力を、伝達部材を介してそれぞれ硬度調整機構に伝達することができる。これにより、第1駆動力入力部材からの駆動力を伝達する伝達部材とは別に、第2駆動力入力部材からの駆動力を伝達する伝達部材が設けられている構成と比較して、部品点数を減らすことができ、内視鏡の大型化を抑制することができる。
【0019】
本開示の第6態様に係る内視鏡は、第5態様に係る内視鏡において、第2駆動力入力部材はシャフトであり、シャフトは、外部機構からの駆動力を減速する減速機構を介して伝達部材に接続されている。
【0020】
上記構成によれば、第2駆動力入力部材がシャフトであるため、チューブ等である場合と比較して外部機構の駆動力を安定して伝達機構へ伝達することができる。また、シャフトが減速機構を介して伝達部材に接続されているため、減速機構を介さずに伝達部材に接続されている構成と比較して、小さい駆動力で軟性部の硬度を調整することができる。
【0021】
本開示の第7態様に係る内視鏡は、第5態様又は第6態様に係る内視鏡において、硬度調整機構は、挿入部内に設けられた密着コイルばねと、密着コイルばね内に挿通され、密着コイルばねの先端に固着されたワイヤと、伝達部材に係合され、密着コイルばねの基端とワイヤの基端とを離間させることで、密着コイルばねを圧縮させる可動部材と、を有する。
【0022】
上記構成によれば、伝達部材に係合された可動部材によって密着コイルばねの基端とワイヤの基端とを離間させることで、密着コイルばねを圧縮させて軟性部の硬度を調整することができる。
【0023】
本開示の第8態様に係る内視鏡は、第7態様に係る内視鏡において、ワイヤの基端を固定し、可動部材によって密着コイルばねの基端を押圧することで、密着コイルばねを圧縮させる。
【0024】
上記構成によれば、密着コイルばねの基端をワイヤの基端に対して移動させることで、密着コイルばねを圧縮させて軟性部の硬度を調整することができる。
【発明の効果】
【0025】
本開示によれば、硬度調整操作に関して、術者自身の手動による操作方法と、術者以外の手を借りる操作方法の2つの操作方法が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】実施形態の一例に係る内視鏡を示す全体概略図である。
図2図1に示す内視鏡の挿入部の内部構成を示す部分断面図である。
図3図1に示す内視鏡の操作部の内部構成を示す部分断面図である。
図4図1に示す内視鏡の操作部の内部構成を示す分解斜視図である。
図5図1に示す内視鏡の可能部材の駆動機構の操作前の状態を示す展開図である。
図6図1に示す内視鏡の可能部材の駆動機構の操作中の状態を示す展開図である。
図7】第1変形例に係る内視鏡の硬度調整機構を模式的に示す概略図である。
図8】第2変形例に係る内視鏡の硬度調整機構を模式的に示す概略図である。
図9】第3変形例に係る内視鏡の硬度調整機構を模式的に示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照して本開示の実施形態の一例に係る内視鏡について説明する。なお、図中において、矢印Xは内視鏡の挿入部の軸方向を指す。
【0028】
(内視鏡の全体構成)
本実施形態の内視鏡10は、例えば被検者の体内(具体的には胃及び大腸等の消化管内)の治療又は検査を行なうために管腔内に挿入されて、管腔内の撮影又は検査対象部位の生体組織の採取等の処置を行なう医療用の内視鏡である。
【0029】
図1に示すように、内視鏡10は、挿入部12と、挿入部に連設された操作部14と、を有している。なお、以下、内視鏡10の挿入部12が設けられている側(図1における右側)を「先端側」と呼び、内視鏡10の操作部14が設けられている側(図1における左側)を「基端側」と呼ぶ。
【0030】
(挿入部の構成)
挿入部12は、体内に挿入される長尺な部位であり、先端側(すなわち、操作部14と逆端側)に設けられた硬質な先端部16と、先端部16に繋がる湾曲可能な湾曲部18と、湾曲部18に繋がる軟性部20と、を有している。
【0031】
先端部16には、CCD(Charge Coupled Device)センサ又はCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)センサ、撮像レンズ等を一体的にユニット化してなる図示しない撮像ユニットが組み込まれている。また、先端部16には、照明光を観察部位に照射するための図示しない照明レンズ、生体組織採取用の鉗子を挿入させるための図示しない鉗子出口、及び送気送水を行うための図示しないノズル等も設けられている。
【0032】
湾曲部18は、先端部16を体内に挿入して観察部位に向けるために、例えば上下と左右の4方向に湾曲する部位である。図2に示すように、湾曲部18は、一例として、略円筒状の複数の湾曲駒22と、湾曲駒22を連結する複数のピン24と、を有しており、ピン24を軸として隣り合う湾曲駒22が互いに回動可能に接続されている。
【0033】
軟性部20は、先端部16及び湾曲部18と、操作部14とを繋ぐ部位であり、可撓性を有する長尺なチューブである。軟性部20(及び湾曲部18)には、鉗子チャンネル25、図示しない送気送水チャンネル、図示しない信号線、及び図示しないライトガイド等を備えた内蔵物が挿通されている。また、軟性部20の内部には、軟性部20の硬度を調整する後述する硬度調整機構50(図3参照)が設けられている。
【0034】
(操作部の構成)
操作部14は、内視鏡10の操作を行なう部位であり、図1に示すように、挿入部12の湾曲部18を湾曲操作する一対の操作ノブ26を有している。操作部14の内部には、操作ノブ26の回転に伴って回転されるスプロケット等の図示しない回転部材が設けられており、回転部材には、例えばチェーン等を介して図示しない一対の湾曲操作ワイヤが巻きかけられている。
【0035】
また、湾曲操作ワイヤの先端側の端部は、湾曲部18のピン24の内側に設けられた図示しないガイド部に挿通されて先端部に固定されている。これにより、操作ノブ26を手動操作して回転部材を回転させることで、チェーンを介して一対の湾曲操作ワイヤの一方が巻き取られて基端側に牽引され、他方が先端側に送り出される。
【0036】
すなわち、操作ノブ26によって一対の湾曲操作ワイヤを連動して進退させることで、湾曲部18を湾曲操作ワイヤの牽引方向に湾曲させる構成となっている。なお、操作ノブ26には、湾曲部18を湾曲状態で保持するためのロック28が設けられている。
【0037】
また、操作部14には、第1駆動力入力部材としての操作リング30が設けられている。操作リング30は、操作部14の外周面に挿入部12の軸周りに回転可能に取り付けられた円筒状の部材であり、術者によって手動操作されることにより、後述する硬度調整機構50(図3参照)に対して駆動力が入力可能とされている。
【0038】
さらに、操作部14には、外部機構の一例としてのアクチュエータ32が着脱自在に接続される接続インタフェース34が設けられている。なお、アクチュエータ32の操作は、例えば足によるペダル操作又は音声入力等によって行うことができ、術者が手を使わずに操作することが可能となっている。
【0039】
接続インタフェース34には、アクチュエータ32の駆動軸32Aが差し込まれる挿入孔34Aが形成されている。一方、図3に示すように、操作部14には、挿入孔34Aに臨む基端側の端面に図示しない接続凹部が形成された第2駆動力入力部材としてのシャフト36が設けられている。これにより、挿入孔34Aを通してアクチュエータ32の駆動軸32Aをシャフト36の接続凹部に接続することで、後述する硬度調整機構50に対してシャフト36を介してアクチュエータ32の駆動力が入力可能とされている。
【0040】
なお、シャフト36は、変形等による駆動伝達ロスが少ない材料で構成されていることが好ましい。具体的には、シャフト36は、例えば樹脂等に比べて曲げ剛性が高い金属等の材料で構成とされている。
【0041】
また、図1に示すように、操作部14には、挿入部12の先端部16の図示しない鉗子出口、及び軟性部20の鉗子チャンネル25に連通し、鉗子等の処置具を挿入するための鉗子挿入口38が設けられている。さらに、先端部16の鉗子出口から鉗子チャンネル25を通じて吸引を行なうための吸引ボタン40、及び先端部16に設けられた図示しないノズルから軟性部20の図示しない送気送水チャンネルを通じて送気送水を行なうための送気送水ボタン42等が配置されている。
【0042】
内視鏡10の操作部14には、その他、ズームスイッチ、静止画の撮影スイッチ、及びフリーズスイッチ等、撮像ユニットによって画像を観察又は撮影するための図示しない各種のスイッチが設けられている。
【0043】
また、操作部14には、ユニバーサルコード44が接続されている。ユニバーサルコード44には、図示しない送水送気チャンネル、吸引チャンネル、ライトガイド、及び信号線等が挿通されており、ユニバーサルコード44がコネクタ46を介して図示しない送水送気装置、光源装置、及びプロセッサ装置48等に接続されている。
【0044】
(硬度調整機構の構成)
次に、軟性部20の硬度を調整する硬度調整機構50の構成について、具体的に説明する。図2図3に示すように、硬度調整機構50は、密着コイルばね52と、密着コイルばね52の中空部に挿通されたワイヤ54と、密着コイルばね52を圧縮させる可動部材としての円筒状の可動リング56(図3参照)と、を有している。
【0045】
図2に示すように、密着コイルばね52及びワイヤ54は、操作部14から挿入部12の軟性部20にかけて挿入部12の軸方向に沿って延びており、ワイヤ54の先端側の端部が密着コイルばね52の先端側の端部に固定金具58によって固着されている。なお、密着コイルばね52、ワイヤ54、及び固定金具58は、軟性部20の内周面に接合されていない。
【0046】
図3に示すように、ワイヤ54の基端側の端部は、操作部14内に設けられた後述する支持フレーム66にスリーブ60を介して固定されている。一方、密着コイルばね52の基端側の端部は、操作部14内に設けられた可動リング56の内周面に形成された保持溝56Aにスリーブ62を介して保持されている。
【0047】
このため、可動リング56を挿入部12の軸方向に移動させて可動リング56によって密着コイルばね52の基端側の端部を先端側に向けて押圧することで、密着コイルばね52の基端側の端部とワイヤ54の基端側の端部とが離間する。一方、密着コイルばね52の先端の移動は固定金具58によって規制されているため、可動リング56によって密着コイルばね52が圧縮される。このように、軟性部20内に挿通された密着コイルばね52を圧縮させて密着コイルばね52の曲げ剛性を上げることで、軟性部20の硬度が調整可能とされている。
【0048】
(可能リングの駆動機構の構成)
次に、硬度調整機構50の可動リング56を挿入部12の軸方向に移動させる操作機構64の一例について、具体的に説明する。図3図4に示すように、操作機構64は、可動リング56の外周面に設けられた円筒状の支持フレーム66と、支持フレーム66の外周面に設けられた伝達部材としての円筒状のカムリング68と、を有している。また、カムリング68及び可動リング56は、支持フレーム66の内側面、外側面に沿って、周方向及び挿入部12の軸方向に摺動可能に配置されている。
【0049】
カムリング68の外周面には、操作リング30が配置されている。カムリング68の外周面には、操作リング30の内周面に形成された一対のキー溝30Aに嵌合する一対のキー68Aが形成されており、カムリング68は操作リング30の回転に連動して回転可能とされている。
【0050】
また、カムリング68の外周面には、減速機構を構成する大径ギア70が設けられている。図3に示すように、大径ギア70は、減速機構を構成する小径ギア72を介してシャフト36に接続されており、カムリング68はシャフト36の回転に連動して回転可能とされている。
【0051】
また、アクチュエータ32は、非駆動時には、駆動軸32Aが外力によって回転可能とされている。このため、アクチュエータ32の駆動軸32A(図1参照)がシャフト36に接続された状態であっても、外力が加われば駆動軸32Aはシャフト36とともに回転する。
【0052】
操作リング30を回転操作してカムリング68を回転させる際、大径ギア70及び小径ギア72を通じてシャフト36にも回転力が作用し、シャフト36はその力に従って回転する。このため、アクチュエータ32が非駆動時においてもシャフト36を回転させてカムリング68を回転させることができる。
【0053】
すなわち、アクチュエータ32が接続インタフェース34に接続されているか否かに関わらず、操作リング30の手動操作が可能となっている。なお、アクチュエータ32の駆動軸32Aを非駆動時に回転可能とする構成に代えて、例えば大径ギア70と小径ギア72との間に図示しないクラッチを設け、操作リング30の操作時にはクラッチによってカムリング68とシャフト36とを非接続状態とする構成としてもよい。
【0054】
図3図4に示すように、支持フレーム66には、軸方向(すなわち挿入部12の軸方向)に沿って長孔形状の一対の直線溝74が形成されている。また、支持フレーム66の直線溝74には、一対の第1カムピン76がそれぞれ係合しており、第1カムピン76の基端部は、可動リング56に形成された一対のピン孔78にそれぞれ挿入固定されている。
【0055】
一方、カムリング68には、カムリング68が回転した際に第1カムピン76を軸方向(すなわち挿入部12の軸方向)に移動させるための一対の第1カム溝80が形成されており、第1カムピン76の先端部は一対の第1カム溝80にそれぞれ係合されている。すなわち、カムリング68と可動リング56とが、支持フレーム66を挟んで第1カムピン76によって互いに係合されている。
【0056】
また、支持フレーム66の基端側における外周面には、一対の第2カムピン82が突設されており、第2カムピン82は、カムリング68に形成された一対の第2カム溝84に係合されている。なお、第2カムピン82は、支持フレーム66の固定位置から動かない固定ピンとされている。
【0057】
操作リング30又はシャフト36を回転操作することによってカムリング68を回転させると、図5図6に示すように、第1カム溝80は第1カムピン76に対して係合しながら移動し、第1カムピン76を支持フレーム66の直線溝74に沿って従動移動させる。これにより、第1カムピン76が固定された可動リング56も、支持フレーム66に対して挿入部12の軸方向に前進移動(すなわち先端側へ移動)する。
【0058】
また、カムリング68が回転して第2カム溝84が第2カムピン82に対して係合しながら移動することにより、カムリング68が挿入部12の軸方向に前進移動(すなわち先端側へ移動)する。このように、カムリング68及び可動リング56を前進移動させることで、可動リング56によって密着コイルばね52の基端側の端部を押圧し、密着コイルばね52を圧縮して軟性部20を硬化させることができる。
【0059】
なお、第2カム溝84及び第2カムピン82は、カムリング68を前進移動させることにより、カムリング68を固定位置で回転させる場合と比べて第1カムピン76及び可動リング56の前進移動量を稼ぐために設けられている。
【0060】
(作用及び効果)
本実施形態の内視鏡10によれば、硬度調整機構50に対して駆動力を入力する操作リング30とは別に、硬度調整機構50に対して駆動力を入力するシャフト36が設けられている。このため、硬度調整操作に関して、術者自身の手動による操作リング30の操作と、アクチュエータ32等による術者以外の手を借りたシャフト36の操作の2つの操作方法が可能となる。
【0061】
また、本実施形態によれば、外部機構としてのアクチュエータ32の駆動力が、第2駆動力入力部材としてのシャフト36を介して硬度調整機構50に入力されるため、電動操作で軟性部20の硬度を調整することができる。ここで、シャフト36は、樹脂等と比べて曲げ剛性が高い金属等の材料で構成されているため、第2駆動力入力部材が樹脂製のチューブ等の軟性部材である構成と比較して、アクチュエータ32の駆動力を安定してカムリング68へ伝達することができる。
【0062】
また、アクチュエータ32は、内視鏡10の操作部14に形成された接続インタフェース34に着脱自在に接続されている。このため、必要に応じてアクチュエータ32の取り付け、取り外しを行うことができ、手技に応じて適切な使い方が可能となる。また、不使用時にはアクチュエータ32を取り外しておくことができるため、アクチュエータ32を使用しない場合において、内視鏡10の操作部14が大型化して操作性が損なわれることを抑制することができる。
【0063】
また、例えば従来の内視鏡のようにアクチュエータのみを使用して硬度調整操作を電動で行う場合には、被検者の体内への挿入中にアクチュエータに不具合時が生じた際、硬度調整操作が不可能となり、内視鏡の挿入に支障がでる虞がある。
【0064】
ここで、本実施形態によれば、アクチュエータ32が接続インタフェース34に接続されているか否かに関わらず、術者が手動で操作リング30を操作することで軟性部20の硬度を調整することができる。このため、手動操作と電動操作を切り替える毎にアクチュエータ32を着脱する必要がなく、例えばアクチュエータ32の不具合時等の緊急時に容易に手動操作と電動操作を切り替えることができる。
【0065】
また、本実施形態によれば、シャフト36が、操作リング30から入力される駆動力を可動リング56に伝達するカムリング68に接続されている。すなわち、操作リング30からの駆動力とシャフト36からの駆動力は、それぞれカムリング68を介して可動リング56に伝達される。このため、操作リング30からの駆動力を伝達する伝達部材と、シャフト36からの駆動力を伝達する伝達部材とが別個に設けられている構成と比較して、部品点数を減らすことができ、内視鏡10の大型化を抑制することができる。
【0066】
また、本実施形態によれば、減速機構としての大径ギア70及び小径ギア72を介してシャフト36がカムリング68に接続されている。このため、シャフト36が減速機構を介さずにカムリング68に接続されている構成と比較して、小さい駆動力で軟性部20の硬度を調整することができる。
【0067】
また、本実施形態によれば、挿入部12内に設けられた密着コイルばね52と、密着コイルばね52の先端側の端部に固着されたワイヤ54と、密着コイルばね52の基端側の端部を押圧する可動リング56と、によって硬度調整機構50が構成されている。このため、ワイヤ54の基端側の端部を固定し、可動リング56によって密着コイルばね52の基端側の端部を押圧することで、密着コイルばね52を圧縮させて軟性部20の硬度を調整することができる。
【0068】
(その他の実施形態)
以上、本開示の実施形態の一例について記述したが、本開示は上記の実施形態に何ら限定されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲において種々なる態様で実施し得る。
【0069】
例えば、上記の実施形態では、外部機構としてのアクチュエータ32の駆動力を、第2駆動力入力部材としてのシャフト36を介して硬度調整機構50に入力する構成としていた。しかし、外部機構及び第2駆動力入力部材の構成は、実施形態の構成には限らず、例えば第2駆動力入力部材として、操作リング30とは別の手動操作用の操作ノブ等を設ける構成としてもよい。この場合、操作リング30を術者が手動操作し、操作ノブを術者以外の助手等が手動操作することができる。
【0070】
また、上記の実施形態では、シャフト36が減速機構としての大径ギア70及び小径ギア72を介してカムリングに接続されていたが、減速機構を介さずにシャフト36をカムリング68に接続する構成としてもよい。
【0071】
また、操作リング30及びシャフト36からの駆動力を硬度調整機構50に伝達するカムリング68(伝達部材)の構成も、実施形態には限らない。例えば、硬度調整機構50の密着コイルばね52を繰り返し使用すると、金属疲労による塑性変形が生じることにより、密着コイルばね52の自然長(すなわち外力が加わっていない状態における長さ)が変化することがある。このため、密着コイルばね52の長さ調整用の調整機構を、カムリング68に設ける構成としてもよい。
【0072】
また、上記の実施形態では、硬度調整機構50の密着コイルばね52とワイヤ54の先端同士を固着し、ワイヤ54の基端を固定して密着コイルばね52の基端を押圧することで、密着コイルばね52を圧縮する構成としていた。しかし、例えば図7に示すように、硬度調整機構86の密着コイルばね88とワイヤ90の先端同士を固着し、密着コイルばね88の基端を固定してワイヤ90の基端を牽引することで、密着コイルばね88を圧縮する構成としてもよい。
【0073】
さらに、上記実施形態では、第1駆動力入力部材としての操作リング30から入力される駆動力を硬度調整機構50に伝達するカムリング68(伝達部材)に、第2駆動力入力部材としてのシャフト36が接続されていた。しかし、カムリング68を用いずに、第1駆動力入力部材からの駆動力と第2駆動力入力部材からの駆動力を、それぞれ独立して硬度調整機構に伝達する構成としてもよい。
【0074】
具体的には、例えば、図8に示すように、先端が固定された密着コイルばね92と、密着コイルばね92の基端を押圧する押圧部材94と、によって硬度調整機構96を構成してもよい。この場合、第1駆動力入力部材としての第1シャフト98、及び第2駆動力入力部材としての第2シャフト100によって、押圧部材94をそれぞれ押圧することで、密着コイルばね92を圧縮させることができる。
【0075】
また、例えば図9に示すように、基端が固定された密着コイルばね102と、密着コイルばね102の先端にそれぞれ固着された第1ワイヤ104及び第2ワイヤ106と、によって硬度調整機構108を構成してもよい。この場合、第1ワイヤ104を第1駆動力入力部材によって牽引し、第2ワイヤ106を第2駆動力入力部材によって牽引することで、密着コイルばね102を圧縮させることができる。
【符号の説明】
【0076】
10 内視鏡
12 挿入部
14 操作部
16 先端部
18 湾曲部
20 軟性部
22 湾曲駒
24 ピン
26 操作ノブ
28 ロック
30 操作リング(第1駆動力入力部材の一例)
30A キー溝
32 アクチュエータ(外部機構の一例)
32A 駆動軸
34 接続インタフェース
34A 挿入孔
36 シャフト(第2駆動力入力部材の一例)
38 鉗子口
40 吸引ボタン
42 送気送水ボタン
44 ユニバーサルコード
46 コネクタ
48 プロセッサ装置
50 硬度調整機構
52 密着コイルばね
54 ワイヤ
56 可動リング(可動部材の一例)
56A 保持溝
58 固定金具
60 スリーブ
62 スリーブ
64 操作機構
66 支持フレーム
68 カムリング(伝達部材の一例)
68A キー
70 大径ギア(減速機構の一例)
72 小径ギア(減速機構の一例)
74 直線溝
76 第1カムピン
78 ピン孔
80 第1カム溝
82 第2カムピン
84 第2カム溝
86 硬度調整機構
88 密着コイルばね
90 ワイヤ
92 密着コイルばね
94 押圧部材
96 硬度調整機構
98 第1シャフト
100 第2シャフト
102 密着コイルばね
104 第1ワイヤ
106 第2ワイヤ
108 硬度調整機構
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9