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特許7061647固体撮像素子の製造方法、積層体、及びドライフィルム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-20
(45)【発行日】2022-04-28
(54)【発明の名称】固体撮像素子の製造方法、積層体、及びドライフィルム
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/004 20060101AFI20220421BHJP
   G02B 5/20 20060101ALI20220421BHJP
   G02B 5/22 20060101ALI20220421BHJP
   H04N 5/369 20110101ALI20220421BHJP
   H01L 27/146 20060101ALI20220421BHJP
【FI】
G03F7/004 501
G02B5/20 101
G02B5/22
H04N5/369
H01L27/146 D
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020134507
(22)【出願日】2020-08-07
(65)【公開番号】P2022030453
(43)【公開日】2022-02-18
【審査請求日】2020-11-06
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000220239
【氏名又は名称】東京応化工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】瀬下 武広
(72)【発明者】
【氏名】井上 朋之
【審査官】塚田 剛士
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-029191(JP,A)
【文献】特開2015-086357(JP,A)
【文献】特開2020-164749(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/004 - 7/18
H01L 27/146
G02B 5/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光電変換層を備える、第1積層体を準備する、第1積層体準備工程と、
支持層と、前記支持層の一方の面に積層された接着層とを備える、第2積層体を準備する、第2積層体準備工程と、
前記第1積層体と、前記第2積層体とを貼り合わせて第3積層体を得る、貼り合わせ工程と、
前記貼り合わせ工程後に、前記接着層を露光及び/又は加熱により硬化させて前記接着層を近赤外線吸収層とする、硬化工程と、を含み、
前記第1積層体が、光電変換層と、前記光電変換層上のカラーフィルター層と、前記カラーフィルター層上のレンズと、前記レンズを被覆する平坦化層とを備え、
前記接着層が、硬化性化合物と、近赤外吸収化合物とを含み、
前記硬化性化合物が、硬化剤の作用により、又は硬化剤の作用によらず露光及び/又は加熱により硬化する化合物であり、
前記第3積層体において、前記平坦化層の表面と、前記接着層の表面とが貼り合わせられている、固体撮像素子の製造方法。
【請求項2】
前記近赤外吸収化合物が、スクアリリウム化合物、ジイモニウム化合物、シアニン化合物、フタロシアニン化合物、及び銅錯体からなる群より選択される1種以上である、請求項1に記載の固体撮像素子の製造方法。
【請求項3】
前記硬化性化合物が、(メタ)アクリレートモノマー、及びエチレン性不飽和二重結合を有する樹脂から選択される少なくとも1種を含み、前記接着層が前記硬化剤として光又は熱重合開始剤を含む、請求項1又は2に記載の固体撮像素子の製造方法。
【請求項4】
前記硬化性化合物が、エポキシ基を有する化合物を含み、前記接着層が前記硬化剤としてエポキシ用硬化剤を含む、請求項1又は2に記載の固体撮像素子の製造方法。
【請求項5】
前記第2積層体準備工程において、前記支持層上に、前記硬化性化合物、前記近赤外吸収化合物、及び溶媒を含む硬化性組成物を塗布して塗布膜を形成し、次いで、塗布膜から前記溶媒の少なくとも一部を除去して前記接着層を形成する、請求項1~4のいずれか1項に記載の固体撮像素子の製造方法。
【請求項6】
前記支持層が、保護層である、請求項1~5のいずれか1項に記載の固体撮像素子の製造方法。
【請求項7】
前記支持層が、前記接着層から剥離可能な基材フィルムであり、
前記貼り合わせ工程後に、前記接着層から前記基材フィルムを剥離させ、前記基材フィルムの剥離により露出した前記接着層の面に保護層を貼り合わせ、
前記保護層を前記接着層に貼り合わせた後に、前記接着層硬化工程を行う、請求項1~5のいずれか1項に記載の固体撮像素子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体撮像素子の製造方法と、前述の固体撮像素子の製造方法において好適に用いることができる積層体、及びドライフィルムとに関する。
【背景技術】
【0002】
ビデオカメラやデジタルスチルカメラ等の撮像装置において、一般的に、イメージセンサとして機能する固体撮像素子が搭載されている。固体撮像素子としては、典型的には、CCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)構造の固体撮像素子が挙げられる。
【0003】
CCDイメージセンサやCMOSイメージセンサは、近紫外波長帯域から近赤外波長帯域に対して感度を有する。撮像装置においては、可視領域である波長400~700nm程度の範囲から外れる波長帯域の光信号はノイズ成分となる。かかるノイズ成分が、画像品質を低下させる。このため、一般の撮像装置では、固体撮像素子の光が入射する面に近い位置に赤外光カットフィルターを配置される。これにより、近赤外波長帯域の光が除去される。
【0004】
赤外線カットフィルターとしては、例えば、近赤外線吸収色素を透明樹脂に分散させた近赤外線吸収層が提案されている(特許文献を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2012/169447号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載される赤外線カットフィルターは、例えば、粘着剤等を用いて透明基材のような他の層に貼着されて、固体撮像素子等に組み込まれる(例えば、特許文献1の段落[0133]、及び段落[0134]等を参照)。しかし、粘着剤等を介して赤外線カットフィルターを積層して固体撮像素子等の素子を製造する場合、粘着剤の体積に起因して素子を小型化しにくい問題がある。
【0007】
本発明は、上記の課題に鑑みなされたものであって、小型の固体撮像素子を容易に製造できる固体撮像素子の製造方法と、前述の固体撮像素子の製造方法において好適に用いることができる積層体、及びドライフィルムとを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、光電変換層を備える第1積層体に、支持層と、近赤外吸収層の前駆層である接着層とからなる第2積層体を貼り合わせ、次いで、接着層を硬化させて近赤外吸収層とする方法により上記の課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。より具体的には、本発明は以下のものを提供する。
【0009】
本発明の第1の態様は、
光電変換層を備える、第1積層体を準備する、第1積層体準備工程と、
支持層と、支持層の一方の面に積層された接着層とを備える、第2積層体を準備する、第2積層体準備工程と、
第1積層体と、第2積層体とを貼り合わせて第3積層体を得る、貼り合わせ工程と、
貼り合わせ工程後に、接着層を露光及び/又は加熱により硬化させて接着層を近赤外線吸収層とする、硬化工程と、を含み、
第1積層体が、光電変換層と、光電変換層上のカラーフィルター層と、カラーフィルター層上のレンズと、レンズを被覆する平坦化層とを備え、
接着層が、硬化性化合物と、近赤外吸収化合物とを含み、
硬化性化合物が、硬化剤の作用により、又は硬化剤の作用によらず露光及び/又は加熱により硬化する化合物であり、
第3積層体において、平坦化層の表面と、接着層の表面とが貼り合わせられている、固体撮像素子の製造方法である。
【0010】
本発明の第2の態様は、
支持層と、支持層の一方の面に積層された接着層とを備え、
接着層が、硬化性化合物と、近赤外吸収化合物とを含み、
硬化性化合物が、硬化剤の作用により、又は硬化剤の作用によらず露光及び/又は加熱により硬化する化合物である、
固体撮像素子において近赤外線吸収層を形成するために用いられる積層体である。
【0011】
本発明の第3の態様は、
基材フィルムと、基材フィルムの表面に形成された接着層とを備え、
接着層が、硬化性化合物と、近赤外吸収化合物とを含み、
硬化性化合物が、硬化剤の作用により、又は硬化剤の作用によらず露光及び/又は加熱により硬化する化合物であり、
基材フィルムが、接着層から剥離可能である、
固体撮像素子において近赤外線吸収層を形成するために用いられる、ドライフィルムである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、小型の固体撮像素子を容易に製造できる固体撮像素子の製造方法と、前述の固体撮像素子の製造方法において好適に用いることができる積層体、及びドライフィルムとを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】第1積層体と第2積層体とが貼り合わせされる際の、第1積層体の断面と第2積層体の断面とを示す図である。
図2】第3積層体の断面を示す図である。
図3】固体撮像素子の断面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
≪固体撮像素子の製造方法≫
固体撮像素子の製造方法は、
光電変換層を備える、第1積層体を準備する、第1積層体準備工程と、
支持層と、支持層の一方の面に積層された接着層とを備える、第2積層体を準備する、第2積層体準備工程と、
第1積層体と、第2積層体とを貼り合わせて第3積層体を得る、貼り合わせ工程と、
貼り合わせ工程後に、接着層を露光及び/又は加熱により硬化させて接着層を近赤外線吸収層とする、硬化工程と、を含む。
第1積層体は、光電変換層と、光電変換層上のカラーフィルター層と、カラーフィルター層上のレンズと、レンズを被覆する平坦化層とを備える。
接着層は、硬化性化合物と、近赤外吸収化合物とを含む。
硬化性化合物は、硬化剤の作用により、又は硬化剤の作用によらず露光及び/又は加熱により硬化する化合物である。
第3積層体において、平坦化層の表面と、接着層の表面とが貼り合わせられている。
【0015】
以下、固体撮像素子の製造方法の好ましい一態様について、図1図3を参照しつつ説明する。
【0016】
<第1積層体準備工程>
第1積層体準備工程では、光電変換層11を備える、第1積層体10Aを準備する。
図1に示されるように、第1積層体11は、光電変換層11と、光電変換層11上のカラーフィルター層12と、カラーフィルター層12上のレンズ13と、レンズ13を被覆する平坦化層14とを備える。
光電変換層11、カラーフィルター層12、レンズ13、及び平坦化層14は、それぞれ公知の方法により形成され得る。
【0017】
光電変換層11は、光電変換層11に入射した光を電気信号として検出する。光電変換層11は、例えば、シリコン等からなる基板11A内に複数の光電変換部11Bを備えるように構成されている。
光電変換層11の構造は、特に限定されない。光電変換層11の構造としては、CCD構造やCMOS構造等を採用できる。光電変換部11Bは、例えば基板11Aにおいて、線状、又は行列状に配置され得る。
【0018】
カラーフィルター層12は、例えば、赤色光を透過させる赤色フィルター12R、緑色光を透過させる緑色フィルター12G、及び青色波長域の光を透過させる青色フィルター12Bから構成される。赤色フィルター12R、緑色フィルター12G、及び青色フィルター12Bは、規則的に配置される。規則的な配置としては、例えばベイヤー配列が挙げられる。このようなカラーフィルター層12を設けることにより、固体撮像装置1では、その色配列に対応した色の受光データが得られる。
【0019】
なお、赤色フィルター12R、緑色フィルター12G、及び青色フィルター12Bから構成されるカラーフィルター層12について説明したが、カラーフィルター層12を構成するカラーフィルターを透過する光の色相の組み合わせは特に限定されない。固体撮像素子の仕様等に応じてカラーフィルターを透過する光の色相の組み合わせを適宜選択できる。
【0020】
赤色フィルター12R、緑色フィルター12B、及び青色フィルター12Bを構成する材料は特に限定されない。赤色フィルター12R、緑色フィルター12B、及び青色フィルター12Bを構成する材料は、従来から各色のフィルターを形成するために用いられている材料から適宜選択され得る。
【0021】
赤色フィルター12R、緑色フィルター12G、及び青色フィルター12Bは、それぞれ対応する光電変換部11B上に配置される。各光電変換部11Bには、赤色フィルター12R、緑色フィルター12G、及び青色フィルター12Bをそれぞれ透過した特定の波長域の光が入射する。赤色フィルター12R、緑色フィルター12G、及び青色フィルター12Bを透過した光の強度は、各光電変換部11Bから出力される。
【0022】
カラーフィルター層12は、赤外波長域に極大吸収波長を有していてもよい。赤外波長域は、例えば、波長600nm以上1500nm以下の範囲である。このように、後述する近赤外線吸収層15に加えて、カラーフィルター層12に赤外線吸収能を付与することにより、赤外光除去性能がさらに向上する。赤色フィルター12R、緑色フィルター12B、及び青色フィルター12B等のカラーフィルターに、近赤外吸収化合物を含有させることにより、カラーフィルター層12に赤外光吸収能を付与できる。
【0023】
近赤外吸収化合物としては、スクアリリウム化合物、ジイモニウム化合物、アントラキノン化合物、シアニン化合物、フタロシアニン化合物、ピロロピロール化合物、チオ尿素化合物、アセチレンポリマー、KCuPO、周期表の第4周期の遷移金属を含有する化合物(例えば、酸化鉄、及び酸化タングステン)、導電性酸化物(例えば、酸化インジウムスズ(ITO))、アゾ錯体、ニッケル錯体、コバルト錯体、銅錯体、及び鉄錯体等が挙げられる。
【0024】
これらの近赤外吸収化合物の中では、耐熱性の点等から、スクアリリウム化合物、ジイモニウム化合物、シアニン化合物、フタロシアニン化合物、ピロロピロール化合物、周期表の第4周期の遷移金属を含有する化合物、導電性酸化物、アゾ錯体、ニッケル錯体、コバルト錯体、銅錯体、及び鉄錯体からなる群より選択される好ましく1種以上が好ましく、スクアリリウム化合物、ジイモニウム化合物、シアニン化合物、フタロシアニン化合物、及び銅錯体からなる群より選択される1種以上がより好ましい。
【0025】
レンズ13は、カラーフィルター層12上に設けられる。より具体的には、例えば、赤色フィルター12R、緑色フィルター12G、及び青色フィルタフィルター12B等のカラーフィルター層12を構成するカラーフィルター上に、光電変換部11Bに向かって入射光を集光させるようにレンズ13が設けられる。このため、レンズ13は透光性を有する。
【0026】
レンズ13の材質は、1.5よりも高い屈折率を有するのが好ましい。レンズ13の材質の好ましい例としては、酸化ケイ素(SiO)や窒化ケイ素(SiN)等の無機材料が挙げられる。
上記の無機材料以外に、エピスルフィド系樹脂、チエタン化合物、及びチエタン化合物の樹脂等の高屈折率を示す有機材料を用いることができる。金属チエタン化合物や、金属チエタン化合物を含む重合性組成物を用いることにより、特に屈折率の高いレンズ13を形成できる。
さらに、これらの樹脂に、TiO、ZrO、Ta、Nb、ZnO、及びSi等の2~2.5程度の高屈折率を示す酸化物や窒化物を添加することにより、より高屈折率が高いレンズ13を形成できる。
【0027】
レンズ13の形状は特に限定されない。レンズ13の形状は、例えば、半球形状、略半球形状、半円筒形状、略半円筒形状等であってよい。例えば、図1に示されるように、1つ光電変換部11Bごとに1つのレンズ13が設けられる。複数のレンズ13について、形状、及び材質は、異なっていても同一であってもよく、同一であるのが好ましい。また、レンズ13は、複数の光電変換部11B上に1つのレンズ13が設けられてもよい。
【0028】
例えば、レンズ13の材料からなる膜上にレンズ形状のレジスト膜を形成した後に、エッチバック処理を施すことによりレンズ13を形成することができる。また、感光性樹脂膜をフォトリソグラフィ技術でパターニングしてドットパターンを形成した後、加熱によるリフロー処理によって各ドットをレンズ形状に変形させることでも、レンズ13を形成できる。
【0029】
平坦化層14は、レンズ13を被覆する。平坦化層14は、レンズ13を被覆することにより平坦な表面を構成する。平坦化層14を形成する材料としては、光透過性を有し、且つレンズ13の材質の屈折率よりも低い屈折率を示す材料が好ましい。平坦化層14がこのような材料により構成されると、平坦化層14からレンズ13に入射した光が、平坦化層14とオンチップレンズ13との界面で屈折して、各レンズ13に対応する光電変換部11Bに良好に集光されやすい。
【0030】
レンズ13によるレンズ効果の点から、平坦化層14とオンチップレンズ13との屈折率の差は大きいほど好ましい。平坦化層14の材料としては、例えば、多孔質シリカ、フッ素化合物(例えば、MgF)、シリコーン樹脂等が挙げられる。多孔質シリカ及びフッ素化合物の屈折率は1.2以下である。シリコーン樹脂の屈折率は、1.3以上1.4以下である。
【0031】
平坦化層14の膜厚は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されず、レンズ13のサイズ等を勘案して適宜定められる。平坦化層14の膜厚は、例えば10nm以上2μm以下が好ましい。平坦化層14の膜厚は、レンズ13の表面に起因する凹凸を平坦化出来る限りにおいて薄ければ薄いほど好ましい。
【0032】
<第2積層体準備工程>
第2積層体準備工程では、支持層16と、支持層の一方の面に積層された接着層15Aとを備える、第2積層体10Bを準備する。かかる第2積層体10Bは、貼り合わせ工程において、第1積層体10Aに貼り合わせられる。
【0033】
〔支持層〕
支持層16は、接着層15Aと積層可能である層であれば特に限定されない。支持層16は、固体撮像素子1において何らかの機能を奏する機能層であるのが好ましい。
かかる機能層としては、保護層が挙げられる。保護層は、赤外吸収層15を化学的及び物理的に保護する層である。保護層の材料の好ましい具体例としては、酸化銀(I)(AgO)、一酸化銀(AgO)、酸化アルミニウム(Al)、フッ化アルミニウム(AlF)、フッ化バリウム(BaF)、酸化セリウム(IV)(CeO)、酸化クロム(III)(Cr)、硫化クロム(III)(Cr)、フッ化ガドリニウム(GdF3)、酸化ハフニウム(IV)(HfO)、酸化インジウムスズ(ITO)、フッ化ランタン(LaF3)、ニオブ酸リチウム(LiNbO)、フッ化マグネシウム(MgF)、酸化マグネシウム(MgO)、ヘキサフルオロアルミン酸ナトリウム(NaAlF)、ご酸化ニオブ(Nb)、ニッケルクロム合金(Ni-Cr)、ニッケルクロム合金の窒化物(NiCrNx)、窒酸化物(OxNy)、窒化シリコン(SiN)、酸化シリコン(SiO)、に酸化シリコン(SiO)、ご酸化タンタル(Ta)、三酸化チタン(Ti)、ご酸化チタン(Ti)、酸化チタン(TiO)、二酸化チタン(TiO)、酸化タングステン(WO)、酸化イットリウム(Y)、フッ化イットリウム(YF)、硫化亜鉛(ZnS)、二酸化ジルコニウム(ZrO)、及び酸化インジウム(In)等が挙げられる。
【0034】
例えば、基板上に上記の支持層16としての保護層を形成した後に、保護層上に接着層15Aを形成し、接着層15Aに保護層が接着した状態で基板から接着層15Aと支持層16としての保護層とが積層された第2積層体を剥離して、第2積層体が得られる。
【0035】
支持層16が上記の保護層である場合、接着層15Aを硬化させて形成される近赤外吸収層15Bの光や酸素等による分解や変質を抑制できる。その結果、長期に亘って優れた撮像性能が安定して得られるという効果を奏する。
【0036】
支持層16は、光反射防止層であってもよい。光反射防止層は、前述の保護層と積層されていてもよい。この場合、光反射防止層が接着層15Aに接していてもよく、保護層が接着層15Aに接していてもよい。
【0037】
光反射防止層は、高屈折材料からなるのが好ましい。かかる高屈折材料としては、TiO、Nb、TiO、Nb、CeO、Ta、ZnO、ZrO、In、SnO、及びHfO等が挙げられる。これらの材料は単独で使用されても、2種以上を組み合わせて使用されてもよい。光反射防止層の材料としては、低屈折材料を用いることもできる。低屈折率材料としては、MgF、AlF、MgF、AlF、及びSiO等が挙げられる。これらは単独で使用されても、2種以上を組み合わせて使用されてもよい。
【0038】
固体撮像素子1への入射光は、各層の界面においてわずかに反射される。界面において反射された光(反射光)が光電変換部11Bに到達することは、本来の結像光でない光の光電変換部11Bへの入射を意味する。この場合、固体撮像素子1の撮像性が低下する。
支持層16が光反射防止層を含むと、反射光の再反射を低減できる。よって、反射光の再反射による撮像性能の低下を抑制することが可能となるという効果を奏する。
【0039】
支持層16はバンドパス層であってもよい。支持層16は、バンドパス層とともに前述の保護層及び/又は光反射防止層を含んでいてもよい。この場合、バンドパス層が接着層15Aに接していてもよく、保護層又は光反射防止層が接着層15Aに接していてもよい。
【0040】
バンドパス層は、紫色光の一部又は全部と、紫色光より短い波長の光及び/又は赤外光とを反射(遮蔽)する。バンドパス層では、典型的には、高屈折率材料からなる第1反射層と、第1反射層の材料よりも低い屈折率を示す低屈折率材料からなる第2反射層とが交互に積層されている。
【0041】
第1反射層の材料としての高屈折率材料としては、TiO、Nb、TiO、Nb、CeO、Ta、ZnO、ZrO、In、SnO、及びHfO等が挙げられる。これらは単独で使用されても、2種以上を組み合わせて使用されてもよい。第2反射層の材料としての低屈折率材料としては、MgF、AlF、MgF、AlF、及びSiO等が挙げられる。これらは単独で使用されても、2種以上を組み合わせて使用されてもよい。なお、第1反射層と第2反射層の積層数は、特に限定されず、要求性能に応じて適宜設定できる。
【0042】
支持層16がバンドパス層を含む場合、接着層15Aを硬化させて形成される近赤外吸収層15Bとともにバンドパス層によっても、入射光に含まれる赤外光成分を除去できる。
バンドパス層は、多層膜間の光の干渉を利用する。このため、入射光の入射角度によっては、バンドパス層を透過する透過光の波長がシフトする場合がある。このような場合であっても、透過波長のシフトが原理的に生じない近赤外吸収層15Bによって透過波長帯域が維持されることができるため、優れた撮像性能を維持できる。
【0043】
さらに、支持層16は、ガラス、石英、透光性の樹脂からなる基材フィルムであってもよい。透光性の樹脂からなる基材フィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート樹脂等のポリエステルのフィルム、ポリカーボネート樹脂フィルム、アクリル樹脂フィルム等が挙げられる。かかる基材フィルムは、第1積層体10Aと第2積層体10Bとが積層された後に、接着層15、又は接着層15Aが硬化した近赤外吸収層15Bから剥離可能である。
第2積層体10Bの取り扱い性の点からは、支持層16が基材フィルムであるのが好ましい。
【0044】
接着層15Aは、硬化性化合物と、近赤外吸収化合物とを含む。硬化性化合物は、硬化剤の作用により、又は硬化剤の作用によらず露光及び/又は加熱により硬化する化合物である。硬化性化合物は、接着層15Aが、接着層15Aと平坦化層14とを貼り合わせ可能な接着性を有する限り特に限定されない。硬化性化合物は、種々の光硬化性化合物、及び熱硬化性化合物から適宜選択され得る。
【0045】
接着層15Aの形成方法は特に限定されない。好ましくは、接着層15Aは、硬化性化合物と、近赤外吸収化合物とを含む液状の硬化性組成物を支持層16上に塗布して形成される。
【0046】
硬化性組成物としては、従来公知の種々の液状の硬化性組成物に、近赤外吸収化合物を配合した組成物を用いることができる。
かかる硬化性組成物としては、(メタ)アクリレートモノマー、及びエチレン性不飽和二重結合を有する樹脂から選択される少なくとも1種と、硬化剤としての光又は熱重合開始剤とを含む組成物が挙げられる。
【0047】
(メタ)アクリレートモノマーには、単官能モノマーと多官能モノマーとがある。以下、単官能モノマー、及び多官能モノマーについて順に説明する。
なお、本願明細書において、「(メタ)アクリル酸」は、アクリル酸とメタクリル酸との両方を意味する。同様に、「(メタ)アクリレート」は、アクリレートとメタクリレートとの両方を意味する。
【0048】
単官能モノマーとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-フェノキシ-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイルオキシ-2-ヒドロキシプロピルフタレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチル-2-アミノエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、2,2,2-トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3-テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、フタル酸誘導体のハーフ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの単官能モノマーは、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0049】
多官能モノマーとしては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、2,2-ビス(4-(メタ)アクリロキシジエトキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-(メタ)アクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン、2-ヒドロキシ-3-(メタ)アクリロイルオキシプロピル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、フタル酸ジグリシジルエステルジ(メタ)アクリレート、グリセリンポリグリシジルエーテルポリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの多官能モノマーは、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0050】
エチレン性不飽和二重結合を有する樹脂としては、(メタ)アクリル酸、フマル酸、マレイン酸、フマル酸モノメチル、フマル酸モノエチル、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、エチレングリコールモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、エチレングリコールモノエチルエーテル(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、カルドエポキシジアクリレート等が重合したオリゴマー類;多価アルコール類と一塩基酸又は多塩基酸とを縮合して得られるポリエステルプレポリマーに(メタ)アクリル酸を反応させて得られるポリエステル(メタ)アクリレート;ポリオールと2個のイソシアネート基を持つ化合物とを反応させた後、(メタ)アクリル酸を反応させて得られるポリウレタン(メタ)アクリレート;ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、フェノール又はクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、レゾール型エポキシ樹脂、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、ポリカルボン酸ポリグリシジルエステル、ポリオールポリグリシジルエステル、脂肪族又は脂環式エポキシ樹脂、アミンエポキシ樹脂、ジヒドロキシベンゼン型エポキシ樹脂等のエポキシ樹脂と、(メタ)アクリル酸とを反応させて得られるエポキシ(メタ)アクリレート樹脂等が挙げられる。さらに、エポキシ(メタ)アクリレート樹脂に多塩基酸無水物を反応させた樹脂を好適に用いることができる。
【0051】
また、エチレン性不飽和二重結合を含む樹脂としては、エポキシ化合物と不飽和基含有カルボン酸化合物との反応物を、さらに多塩基酸無水物と反応させることにより得られる樹脂や、不飽和カルボン酸に由来する単位を含む重合体に含まれるカルボキシ基の少なくとも一部と、脂環式エポキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステル及び/又は(メタ)アクリル酸エポキシアルキルエステルとを反応させることにより得られる樹脂(以下、まとめて「エチレン性不飽和基を有する構成単位を含む樹脂」という)を好適に用いることができる。エチレン性不飽和基を有する構成単位におけるエチレン性不飽和基としては、(メタ)アクリロイルオキシ基が好ましい。
【0052】
その中でも、エチレン性不飽和二重結合を有する構成単位を含む樹脂又は下記式(a1)で表される化合物が好ましい。この式(a1)で表される化合物は、それ自体が、光硬化性が高い点で好ましい。
【化1】
【0053】
上記式(a1)中、Xは、下記一般式(a2)で表される基を表す。
【化2】
【0054】
上記式(a2)中、Ra01は、それぞれ独立に水素原子、炭素原子数1以上6以下の炭化水素基、又はハロゲン原子を表し、Ra02は、それぞれ独立に水素原子、又はメチル基を表し、Wは、単結合、又は下記構造式(a3)で表される基を表す。なお、式(a2)、及び式(a3)において「*」は、2価の基の結合手の末端を意味する。
【化3】
【0055】
上記式(a1)中、Yはジカルボン酸無水物から酸無水物基(-CO-O-CO-)を除いた残基を表す。ジカルボン酸無水物の例としては、無水マレイン酸、無水コハク酸、無水イタコン酸、無水フタル酸、無水テトラヒドロフタル酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水メチルエンドメチレンテトラヒドロフタル酸、無水クロレンド酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水グルタル酸等が挙げられる。
【0056】
また、上記式(a1)中、Zは、テトラカルボン酸二無水物から2個の酸無水物基を除いた残基を表す。テトラカルボン酸二無水物の例としては、無水ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ビフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。さらに、上記式(a1)中、nは、0以上20以下の整数を表す。
【0057】
エチレン性不飽和二重結合を含む樹脂の質量平均分子量は、1,000以上40,000以下が好ましく、2,000以上30,000以下がより好ましい。質量平均分子量を1,000以上とすることにより、良好な耐熱性と、膜強度とを有する硬化膜を形成しやすいので好ましい。また、質量平均分子量を40,000以下とすることにより、良好な現像性を得ることができるので好ましい。
【0058】
接着層15Aの形成に用いられる硬化性組成物における(メタ)アクリレートモノマー、及びエチレン性不飽和二重結合を有する樹脂の含有量は、所望する膜厚の接着層15Aを形成でき、接着層15Aが所望する硬化性を有する限り特に限定されない。(メタ)アクリレートモノマー、及びエチレン性不飽和二重結合を有する樹脂の含有量は、後述する溶媒以外の硬化性組成物の成分の質量の合計に対して50質量%以上99質量%以下が好ましく、55質量%以上97質量%以下がより好ましく、60質量%以上95質量%以下がより好ましい。
【0059】
(メタ)アクリレートモノマー、及びエチレン性不飽和二重結合を有する樹脂から選択される少なくとも1種を含む硬化性組成物は、硬化剤として光重合開始剤又は熱重合開始剤とを含む。硬化剤としては、硬化性組成物や接着層15Aの経時的な安定性の点等から光重合開始剤が好ましい。
【0060】
光重合開始剤は、露光により、(メタ)アクリレートモノマー、及びエチレン性不飽和二重結合を有する樹脂を硬化させる。光重合開始剤としては、特に限定されず、従来公知の光重合開始剤を用いることができる。
【0061】
光重合開始剤として、具体的には、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1-〔4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル〕-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、1-(4-イソプロピルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、1-(4-ドデシルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、ビス(4-ジメチルアミノフェニル)ケトン、2-メチル-1-〔4-(メチルチオ)フェニル〕-2-モルフォリノプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタン-1-オン、O-アセチル-1-[6-(2-メチルベンゾイル)-9-エチル-9H-カルバゾール-3-イル]エタノンオキシム、(9-エチル-6-ニトロ-9H-カルバゾール-3-イル)[4-(2-メトキシ-1-メチルエトキシ)-2-メチルフェニル]メタノンO-アセチルオキシム、1,2-オクタンジオン,1-[4-(フェニルチオ)-,2-(O-ベンゾイルオキシム)]、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、4-ベンゾイル-4’-メチルジメチルスルフィド、4-ジメチルアミノ安息香酸、4-ジメチルアミノ安息香酸メチル、4-ジメチルアミノ安息香酸エチル、4-ジメチルアミノ安息香酸ブチル、4-ジメチルアミノ-2-エチルヘキシル安息香酸、4-ジメチルアミノ-2-イソアミル安息香酸、ベンジル-β-メトキシエチルアセタール、ベンジルジメチルケタール、1-フェニル-1,2-プロパンジオン-2-(O-エトキシカルボニル)オキシム、o-ベンゾイル安息香酸メチル、2,4-ジエチルチオキサントン、2-クロロチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、1-クロロ-4-プロポキシチオキサントン、チオキサンテン、2-クロロチオキサンテン、2,4-ジエチルチオキサンテン、2-メチルチオキサンテン、2-イソプロピルチオキサンテン、2-エチルアントラキノン、オクタメチルアントラキノン、1,2-ベンズアントラキノン、2,3-ジフェニルアントラキノン、アゾビスイソブチロニトリル、ベンゾイルパーオキシド、クメンヒドロペルオキシド、2-メルカプトベンゾイミダゾール、2-メルカプトベンゾオキサゾール、2-メルカプトベンゾチアゾール、2-(o-クロロフェニル)-4,5-ジ(m-メトキシフェニル)-イミダゾリル二量体、ベンゾフェノン、2-クロロベンゾフェノン、p,p’-ビスジメチルアミノベンゾフェノン、4,4’-ビスジエチルアミノベンゾフェノン、4,4’-ジクロロベンゾフェノン、3,3-ジメチル-4-メトキシベンゾフェノン、ベンジル、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾイン-n-ブチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインブチルエーテル、アセトフェノン、2,2-ジエトキシアセトフェノン、p-ジメチルアセトフェノン、p-ジメチルアミノプロピオフェノン、ジクロロアセトフェノン、トリクロロアセトフェノン、p-tert-ブチルアセトフェノン、p-ジメチルアミノアセトフェノン、p-tert-ブチルトリクロロアセトフェノン、p-tert-ブチルジクロロアセトフェノン、α,α-ジクロロ-4-フェノキシアセトフェノン、チオキサントン、2-メチルチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン、ジベンゾスベロン、ペンチル-4-ジメチルアミノベンゾエート、9-フェニルアクリジン、1,7-ビス-(9-アクリジニル)ヘプタン、1,5-ビス-(9-アクリジニル)ペンタン、1,3-ビス-(9-アクリジニル)プロパン、p-メトキシトリアジン、2,4,6-トリス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-メチル-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-[2-(5-メチルフラン-2-イル)エテニル]-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-[2-(フラン-2-イル)エテニル]-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-[2-(4-ジエチルアミノ-2-メチルフェニル)エテニル]-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-[2-(3,4-ジメトキシフェニル)エテニル]-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(4-メトキシフェニル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(4-エトキシスチリル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(4-n-ブトキシフェニル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2,4-ビス-トリクロロメチル-6-(3-ブロモ-4-メトキシ)フェニル-s-トリアジン、2,4-ビス-トリクロロメチル-6-(2-ブロモ-4-メトキシ)フェニル-s-トリアジン、2,4-ビス-トリクロロメチル-6-(3-ブロモ-4-メトキシ)スチリルフェニル-s-トリアジン、2,4-ビス-トリクロロメチル-6-(2-ブロモ-4-メトキシ)スチリルフェニル-s-トリアジン等が挙げられる。これらの光重合開始剤(D1)は、単独又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0062】
これらの中でも、オキシム系の光重合開始剤が、感度の面で特に好ましい。好ましいオキシム系の光重合開始剤としては、O-アセチル-1-[6-(2-メチルベンゾイル)-9-エチル-9H-カルバゾール-3-イル]エタノンオキシム、O-アセチル-1-[6-(2-メチルベンゾイル)-9-エチル-9H-カルバゾール-3-イル]エタノンオキシム、及び1,2-オクタンジオン,1-[4-(フェニルチオ)-,2-(O-ベンゾイルオキシム)]が挙げられる。
【0063】
光重合開始剤の含有量は、後述する溶媒以外の硬化性組成物の成分の質量の合計に対して、0.1質量%以上30質量%以下が好ましく、0.3質量%以上20質量%以下がより好ましい。
【0064】
光重合開始剤に、光開始助剤を組み合わせてもよい。光開始助剤としては、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、4-ジメチルアミノ安息香酸メチル、4-ジメチルアミノ安息香酸エチル、4-ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、4-ジメチルアミノ安息香酸2-エチルヘキシル、安息香酸2-ジメチルアミノエチル、N,N-ジメチルパラトルイジン、4,4’-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、9,10-ジメトキシアントラセン、2-エチル-9,10-ジメトキシアントラセン、9,10-ジエトキシアントラセン、2-エチル-9,10-ジエトキシアントラセン、2-メルカプトベンゾチアゾール、2-メルカプトベンゾオキサゾール、2-メルカプトベンゾイミダゾール、2-メルカプト-5-メトキシベンゾチアゾール、3-メルカプトプロピオン酸、3-メルカプトプロピオン酸メチル、ペンタエリストールテトラメルカプトアセテート、3-メルカプトプロピオネート等のチオール化合物等が挙げられる。これらの光開始助剤は、単独又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0065】
接着層15Aが、硬化性化合物としてのエポキシ基を有する化合物と、硬化剤としてのエポキシ用硬化剤とを含むのも好ましい。
【0066】
エポキシ基を有するエポキシ化合物の例としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、及びビフェニル型エポキシ樹脂等の2官能エポキシ樹脂;9,9-ビス[4-(グリシジルオキシ)フェニル]-9H-フルオレン、9,9-ビス[4-[2-(グリシジルオキシ)エトキシ]フェニル]-9H-フルオレン、9,9-ビス[4-[2-(グリシジルオキシ)エチル]フェニル]-9H-フルオレン、9,9-ビス[4-(グリシジルオキシ)-3-メチルフェニル]-9H-フルオレン、9,9-ビス[4-(グリシジルオキシ)-3,5-ジメチルフェニル]-9H-フルオレン、及び9,9-ビス(6‐グリシジルオキシナフタレン-2-イル)-9H-フルオレン等のエポキシ基含有フルオレン化合物;テトラグリシジルアミノジフェニルメタン、トリグリシジル-p-アミノフェノール、テトラグリシジルメタキシリレンジアミン、及びテトラグリシジルビスアミノメチルシクロヘキサン等のグリシジルアミン型エポキシ樹脂;フロログリシノールトリグリシジルエーテル、トリヒドロキシビフェニルトリグリシジルエーテル、トリヒドロキシフェニルメタントリグリシジルエーテル、2-[4-(2,3-エポキシプロポキシ)フェニル]-2-[4-[1,1-ビス[4-(2,3-エポキシプロポキシ)フェニル]エチル]フェニル]プロパン、及び1,3-ビス[4-[1-[4-(2,3-エポキシプロポキシ)フェニル]-1-[4-[1-[4-(2,3-エポキシプロポキシ)フェニル]-1-メチルエチル]フェニル]エチル]フェノキシ]-2-プロパノール等の3官能型エポキシ樹脂;テトラヒドロキシフェニルエタンテトラグリシジルエーテル、テトラグリシジルベンゾフェノン、ビスレゾルシノールテトラグリシジルエーテル、及びテトラグリシドキシビフェニル等の4官能型エポキシ樹脂2,2-ビス(ヒドロキシメチル)-1-ブタノールの1,2-エポキシ-4-(2-オキシラニル)シクロヘキサン付加物が挙げられる。2,2-ビス(ヒドロキシメチル)-1-ブタノールの1,2-エポキシ-4-(2-オキシラニル)シクロヘキサン付加物は、EHPE-3150(ダイセル社製)として市販される。
【0067】
また、オリゴマー又はポリマー型の多官能エポキシ化合物もエポキシ化合物として、好ましく用いることができる。
典型的な例としては、フェノールノボラック型エポキシ化合物、臭素化フェノールノボラック型エポキシ化合物、オルソクレゾールノボラック型エポキシ化合物、キシレノールノボラック型エポキシ化合物、ナフトールノボラック型エポキシ化合物、ビスフェノールAノボラック型エポキシ化合物、ビスフェノールADノボラック型エポキシ化合物、ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂のエポキシ化物、ナフタレン型フェノール樹脂のエポキシ化物等が挙げられる。
【0068】
また、下記式(A1)で表される化合物も、オリゴマー又はポリマー型の多官能エポキシ化合物の好ましい例として挙げられる。
【化4】
(式(A1)中、OGlyは、グリシジルオキシ基であり、RA1は、ハロゲン原子、又は炭素原子数1以上8以下の1価の基であり、naは0以上4以下の整数であり、nbは括弧内のユニットの繰り返し数であり、aが2以上の整数である場合、ベンゼン環上で隣接する2つのRA1は、互いに結合して環を形成してもよく、RA2は、2価の脂肪族環式基、又は下記式(A1-1):
【化5】
で表される基であり、式(A1-1)中、OGlyは、グリシジルオキシ基であり、RA3は、芳香族炭化水素基であり、RA4は、ハロゲン原子、又は炭素原子数1以上4以下のアルキル基であり、ncは0又は1であり、ndは0以上8以下の整数であり、RA5は、水素原子、又は下記式(A1-2):
【化6】
で表される基であり、式(A1-2)中、OGlyは、グリシジルオキシ基であり、RA6は、ハロゲン原子、炭素原子数1以上4以下のアルキル基、又はフェニル基であり、neは0以上4以下の整数である。)
【0069】
上記式(A1)で表されるエポキシ化合物は、平均分子量が800以上であるのが好ましい。式(A1)で表されるエポキシ化合物として、かかる平均分子量を有する化合物を用いることにより、耐水性や強度に優れる硬化物を形成しやすい。
式(A1)で表されるエポキシ化合物の平均分子量は、1000以上が好ましく、1200以上がより好ましく、1500以上が特に好ましい。また、式(A1)で表されるエポキシ化合物の平均分子量は、50000以下が好ましく、20000以下がより好ましい。
【0070】
式(A1)中、RA1は、ハロゲン原子、又は炭素原子数1以上8以下の1価の基である。炭素原子数1以上8以下の1価の基の具体例としては、アルキル基、アルコキシ基、フェノキシ基、脂肪族アシル基、脂肪族アシルオキシ基、ベンゾイル基、ベンジル基、フェネチル基、及び不飽和脂肪族炭化水素基が挙げられる。
アルキル基、アルコキシ基、脂肪族アシル基、脂肪族アシルオキシ基、及び不飽和脂肪族炭化水素基は、直鎖状であっても、分岐鎖状であってもよい。
【0071】
A1としてのハロゲン原子の好適な例としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、及びヨウ素原子が挙げられる。RA1としてのアルキル基の好適な例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、及びtert-ブチル基が好ましく、メチル基、及びエチル基がより好ましい。
【0072】
A1が炭素原子数1以上8以下の1価の基である場合、当該1価の基としてはアルキル基、及びアルコキシ基が好ましい。
アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、及び2-エチルヘキシル基が挙げられる。
アルコキシ基の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、n-プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、n-ブチルオキシ基、イソブチルオキシ基、sec-ブチルオキシ基、tert-ブチルオキシ基、n-ペンチルオキシ基、n-ヘキシルオキシ基、n-ヘプチルオキシ基、n-オクチルオキシ基、及び2-エチルヘキシルオキシ基が挙げられる。
【0073】
また、naが2以上4以下の整数である場合に、複数のRA1のうちベンゼン環上で隣接する2のRA1は、互いに結合して環を形成してもよい。2のRA1が結合して形成される環は、芳香族環であっても脂肪族環であってもよく、炭化水素環であっても複素環であってもよい。
2のRA1が結合して形成される環が複素環である場合、当該環に含まれるヘテロ原子としては、N、O、S、及びSe等が挙げられる。
2のRA1が結合することにより、ベンゼン環とともに形成される基の好適な例としては、ナフタレン環、及びテトラリン環が挙げられる。
【0074】
式(A1)中、RA2としての2価の脂肪族環式基としては、特に限定されず、単環式基の2環以上の他環式基でもよい。なお、2価の脂肪族環式基は、通常その構造中にエポキシ基を含まず、エポキシ基を含まないのが好ましい。
2価の脂肪族環式基として、具体的には、モノシクロアルカン、ビシクロアルカン、トリシクロアルカン、テトラシクロアルカン等のポリシクロアルカンから2個の水素原子を除いた基等を例示できる。より具体的には、シクロペンタン、シクロヘキサン等のモノシクロアルカンや、アダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカン等のポリシクロアルカンから2個の水素原子を除いた基等が挙げられる。
2価の脂肪族環式基の炭素原子数は、3以上50以下が好ましく、3以上30以下がより好ましく、3以上20以下が特に好ましい。3以上15以下が最も好ましい。
【0075】
A2としての2価の脂肪族環式基の具体例としては、以下に示す基が挙げられる。
【化7】
【0076】
A3は、芳香族炭化水素基である。RA3としての芳香族炭化水素基の価数は、2+nc+ndである。芳香族炭化水素基としては特に限定されない。芳香族炭化水素基を構成する芳香族炭化水素環は、典型的には、6員芳香族炭化水素環(ベンゼン環)か、2以上のベンゼン環が、互いに縮合するか単結合を介して結合した環である。
芳香族炭化水素基を構成する芳香族炭化水素環の好適な具体例としては、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、ビフェニル、及びターフェニルである。これらの芳香族炭化水素環から2+nc+nd個の水素原子を除いた基が、RA3としての芳香族炭化水素基として好適である。
【0077】
式(A1-1)で表される基において、ncは0又は1である。つまり、芳香族炭化水素基であるRA3には、グリシジルオキシ基が結合していなくてもよく、1つのグリシジルオキシ基が結合していてもよい。
【0078】
式(A1-1)で表される基において、RA4は、ハロゲン原子、又は炭素原子数1以上4以下のアルキル基であり、dは0以上8以下の整数である。つまり、RA4は、芳香族炭化水素基であるRA3上の、グリシジルオキシ基以外の置換基であって、RA3上の置換基数0以上8以下である。ndは、0以上4以下の整数が好ましく、0以上2以下の整数がより好ましく、0又は1が特に好ましい。
A4としてのハロゲン原子の好適な例としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、及びヨウ素原子が挙げられる。RA4としてのアルキル基の好適な例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、及びtert-ブチル基が好ましく、メチル基、及びエチル基がより好ましい。
【0079】
式(A1-1)で表される基において、RA5は、水素原子、又は前述の式(A1-2)で表される基である。
式(A1-2)中のRA6は、ハロゲン原子、炭素原子数1以上4以下のアルキル基、又はフェニル基である。ハロゲン原子、及び炭素原子数1以上4以下のアルキル基の具体例については、RA4と同様である。
【0080】
以上説明した式(A1)で表されるエポキシ化合物について、RA2が、2価の脂肪族環式基であるか、又は前述の式(A1-1)で表される2価の基であって、ncが0であり、且つRA5が水素原子である基であるのが好ましい。
この場合、式(A1)で表されるエポキシ化合物に含まれる複数のエポキシ基の間に、適度な距離が存在することにより、より耐水性が良好な硬化物を形成しやすい。
【0081】
式(A1)で表されるエポキシ化合物は、市販品として入手可能である。市販品の具体例は、日本化薬株式会社製のNC-シリーズ、XD-シリーズ等が挙げられる。また、DIC株式会社、昭和電工株式会社からも特定の構造を有する同等品を入手することができる。
【0082】
式(A1)で表されるエポキシ化合物の好適な具体例の化学構造を以下に記す。下記式中、OGlyは、グリシジルオキシ基を表し、pは括弧内の単位の繰り返し数を表す。
【化8】
【0083】
エポキシ化合物の他の好適な例として、脂環式エポキシ基を有する多官能の脂環式エポキシ化合物が挙げられる。かかる脂環式エポキシ化合物の具体例としては、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル-5,5-スピロ-3,4-エポキシ)シクロヘキサン-メタ-ジオキサン、ビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ビス(3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキシル-3’,4’-エポキシ-6’-メチルシクロヘキサンカルボキシレート、ε-カプロラクトン変性3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3’,4’-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、トリメチルカプロラクトン変性3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3’,4’-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、β-メチル-δ-バレロラクトン変性3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3’,4’-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、メチレンビス(3,4-エポキシシクロヘキサン)、エチレングリコールのジ(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)エーテル、エチレンビス(3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)、及びトリシクロデセンオキサイド基を有する多官能エポキシ化合物や、下記式(a1-1)~(a1-5)で表される化合物が挙げられる。
これらの脂環式エポキシ化合物は単独で用いても2種以上混合して用いてもよい。
【0084】
【化9】
(式(a1-1)中、Zは単結合又は連結基(1以上の原子を有する二価の基)を示す。Ra1~Ra18は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、及び有機基からなる群より選択される基である。)
【0085】
連結基Zとしては、例えば、2価の炭化水素基、-O-、-O-CO-、-S-、-SO-、-SO-、-CBr-、-C(CBr-、-C(CF-、及び-Ra19-O-CO-からなる群より選択される2価の基及びこれらが複数個結合した基等を挙げることができる。
【0086】
連結基Zである二価の炭化水素基としては、例えば、炭素原子数が1以上18以下の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基、二価の脂環式炭化水素基等を挙げることができる。炭素原子数が1以上18以下の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基としては、例えば、メチレン基、メチルメチレン基、ジメチルメチレン基、ジメチレン基、トリメチレン基等を挙げることができる。上記二価の脂環式炭化水素基としては、例えば、1,2-シクロペンチレン基、1,3-シクロペンチレン基、シクロペンチリデン基、1,2-シクロヘキシレン基、1,3-シクロヘキシレン基、1,4-シクロヘキシレン基、シクロヘキシリデン基等のシクロアルキレン基(シクロアルキリデン基を含む)等を挙げることができる。
【0087】
a19は、炭素原子数1以上8以下のアルキレン基であり、メチレン基又はエチレン基であるのが好ましい。
【0088】
【化10】
(式(a1-2)中、Ra1~Ra18は、水素原子、ハロゲン原子、及び有機基からなる群より選択される基である。Ra2及びRa10は、互いに結合してもよい。Ra13及びRa16は互いに結合して環を形成してもよい。ma1は、0又は1である。)
【0089】
上記式(a1-2)で表される脂環式エポキシ化合物としては、上記式(a1-2)におけるma1が0である化合物に該当する、下記式(a1-2-1)で表される化合物が好ましい。
【化11】
(式(a1-2-1)中、Rc1~Rc12は、水素原子、ハロゲン原子、及び有機基からなる群より選択される基である。Ra2及びRa10は互いに結合して環を形成してもよい。)
【0090】
【化12】
(式(a1-3)中、Ra1~Ra10は、水素原子、ハロゲン原子、及び有機基からなる群より選択される基である。Ra2及びRa8は、互いに結合してもよい。)
【0091】
【化13】
(式(a1-4)中、Ra1~Ra12は、水素原子、ハロゲン原子、及び有機基からなる群より選択される基である。Ra2及びRa10は、互いに結合してもよい。)
【0092】
【化14】
(式(a1-5)中、Ra1~Ra12は、水素原子、ハロゲン原子、及び有機基からなる群より選択される基である。)
【0093】
式(a1-1)~(a1-5)中、Ra1~Ra18が有機基である場合、有機基は本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されず、炭化水素基であっても、炭素原子とハロゲン原子とからなる基であっても、炭素原子及び水素原子とともにハロゲン原子、酸素原子、硫黄原子、窒素原子、ケイ素原子のようなヘテロ原子を含むような基であってもよい。ハロゲン原子の例としては、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、及びフッ素原子等が挙げられる。
【0094】
有機基としては、炭化水素基と、炭素原子、水素原子、及び酸素原子からなる基と、ハロゲン化炭化水素基と、炭素原子、酸素原子、及びハロゲン原子からなる基と、炭素原子、水素原子、酸素原子、及びハロゲン原子からなる基とが好ましい。有機基が炭化水素基である場合、炭化水素基は、芳香族炭化水素基でも、脂肪族炭化水素基でも、芳香族骨格と脂肪族骨格とを含む基でもよい。有機基の炭素原子数は1以上20以下が好ましく、1以上10以下がより好ましく、1以上5以下が特に好ましい。
【0095】
炭化水素基の具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、2-エチルヘキシル基、n-ノニル基、n-デシル基、n-ウンデシル基、n-トリデシル基、n-テトラデシル基、n-ペンタデシル基、n-ヘキサデシル基、n-ヘプタデシル基、n-オクタデシル基、n-ノナデシル基、及びn-イコシル基等の鎖状アルキル基;ビニル基、1-プロペニル基、2-n-プロペニル基(アリル基)、1-n-ブテニル基、2-n-ブテニル基、及び3-n-ブテニル基等の鎖状アルケニル基;シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、及びシクロヘプチル基等のシクロアルキル基;フェニル基、o-トリル基、m-トリル基、p-トリル基、α-ナフチル基、β-ナフチル基、ビフェニル-4-イル基、ビフェニル-3-イル基、ビフェニル-2-イル基、アントリル基、及びフェナントリル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基、α-ナフチルメチル基、β-ナフチルメチル基、α-ナフチルエチル基、及びβ-ナフチルエチル基等のアラルキル基が挙げられる。
【0096】
ハロゲン化炭化水素基の具体例は、クロロメチル基、ジクロロメチル基、トリクロロメチル基、ブロモメチル基、ジブロモメチル基、トリブロモメチル基、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、2,2,2-トリフルオロエチル基、ペンタフルオロエチル基、ヘプタフルオロプロピル基、パーフルオロブチル基、及びパーフルオロペンチル基、パーフルオロヘキシル基、パーフルオロヘプチル基、パーフルオロオクチル基、パーフルオロノニル基、及びパーフルオロデシル基等のハロゲン化鎖状アルキル基;2-クロロシクロヘキシル基、3-クロロシクロヘキシル基、4-クロロシクロヘキシル基、2,4-ジクロロシクロヘキシル基、2-ブロモシクロヘキシル基、3-ブロモシクロヘキシル基、及び4-ブロモシクロヘキシル基等のハロゲン化シクロアルキル基;2-クロロフェニル基、3-クロロフェニル基、4-クロロフェニル基、2,3-ジクロロフェニル基、2,4-ジクロロフェニル基、2,5-ジクロロフェニル基、2,6-ジクロロフェニル基、3,4-ジクロロフェニル基、3,5-ジクロロフェニル基、2-ブロモフェニル基、3-ブロモフェニル基、4-ブロモフェニル基、2-フルオロフェニル基、3-フルオロフェニル基、4-フルオロフェニル基等のハロゲン化アリール基;2-クロロフェニルメチル基、3-クロロフェニルメチル基、4-クロロフェニルメチル基、2-ブロモフェニルメチル基、3-ブロモフェニルメチル基、4-ブロモフェニルメチル基、2-フルオロフェニルメチル基、3-フルオロフェニルメチル基、4-フルオロフェニルメチル基等のハロゲン化アラルキル基である。
【0097】
炭素原子、水素原子、及び酸素原子からなる基の具体例は、ヒドロキシメチル基、2-ヒドロキシエチル基、3-ヒドロキシ-n-プロピル基、及び4-ヒドロキシ-n-ブチル基等のヒドロキシ鎖状アルキル基;2-ヒドロキシシクロヘキシル基、3-ヒドロキシシクロヘキシル基、及び4-ヒドロキシシクロヘキシル基等のヒドロキシシクロアルキル基;2-ヒドロキシフェニル基、3-ヒドロキシフェニル基、4-ヒドロキシフェニル基、2,3-ジヒドロキシフェニル基、2,4-ジヒドロキシフェニル基、2,5-ジヒドロキシフェニル基、2,6-ジヒドロキシフェニル基、3,4-ジヒドロキシフェニル基、及び3,5-ジヒドロキシフェニル基等のヒドロキシアリール基;2-ヒドロキシフェニルメチル基、3-ヒドロキシフェニルメチル基、及び4-ヒドロキシフェニルメチル基等のヒドロキシアラルキル基;メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブチルオキシ基、イソブチルオキシ基、sec-ブチルオキシ基、tert-ブチルオキシ基、n-ペンチルオキシ基、n-ヘキシルオキシ基、n-ヘプチルオキシ基、n-オクチルオキシ基、2-エチルヘキシルオキシ基、n-ノニルオキシ基、n-デシルオキシ基、n-ウンデシルオキシ基、n-トリデシルオキシ基、n-テトラデシルオキシ基、n-ペンタデシルオキシ基、n-ヘキサデシルオキシ基、n-ヘプタデシルオキシ基、n-オクタデシルオキシ基、n-ノナデシルオキシ基、及びn-イコシルオキシ基等の鎖状アルコキシ基;ビニルオキシ基、1-プロペニルオキシ基、2-n-プロペニルオキシ基(アリルオキシ基)、1-n-ブテニルオキシ基、2-n-ブテニルオキシ基、及び3-n-ブテニルオキシ基等の鎖状アルケニルオキシ基;フェノキシ基、o-トリルオキシ基、m-トリルオキシ基、p-トリルオキシ基、α-ナフチルオキシ基、β-ナフチルオキシ基、ビフェニル-4-イルオキシ基、ビフェニル-3-イルオキシ基、ビフェニル-2-イルオキシ基、アントリルオキシ基、及びフェナントリルオキシ基等のアリールオキシ基;ベンジルオキシ基、フェネチルオキシ基、α-ナフチルメチルオキシ基、β-ナフチルメチルオキシ基、α-ナフチルエチルオキシ基、及びβ-ナフチルエチルオキシ基等のアラルキルオキシ基;メトキシメチル基、エトキシメチル基、n-プロポキシメチル基、2-メトキシエチル基、2-エトキシエチル基、2-n-プロポキシエチル基、3-メトキシ-n-プロピル基、3-エトキシ-n-プロピル基、3-n-プロポキシ-n-プロピル基、4-メトキシ-n-ブチル基、4-エトキシ-n-ブチル基、及び4-n-プロポキシ-n-ブチル基等のアルコキシアルキル基;メトキシメトキシ基、エトキシメトキシ基、n-プロポキシメトキシ基、2-メトキシエトキシ基、2-エトキシエトキシ基、2-n-プロポキシエトキシ基、3-メトキシ-n-プロポキシ基、3-エトキシ-n-プロポキシ基、3-n-プロポキシ-n-プロポキシ基、4-メトキシ-n-ブチルオキシ基、4-エトキシ-n-ブチルオキシ基、及び4-n-プロポキシ-n-ブチルオキシ基等のアルコキシアルコキシ基;2-メトキシフェニル基、3-メトキシフェニル基、及び4-メトキシフェニル基等のアルコキシアリール基;2-メトキシフェノキシ基、3-メトキシフェノキシ基、及び4-メトキシフェノキシ基等のアルコキシアリールオキシ基;ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、ブタノイル基、ペンタノイル基、ヘキサノイル基、ヘプタノイル基、オクタノイル基、ノナノイル基、及びデカノイル基等の脂肪族アシル基;ベンゾイル基、α-ナフトイル基、及びβ-ナフトイル基等の芳香族アシル基;メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n-プロポキシカルボニル基、n-ブチルオキシカルボニル基、n-ペンチルオキシカルボニル基、n-ヘキシルオキシカルボニル基、n-ヘプチルオキシカルボニル基、n-オクチルオキシカルボニル基、n-ノニルオキシカルボニル基、及びn-デシルオキシカルボニル基等の鎖状アルキルオキシカルボニル基;フェノキシカルボニル基、α-ナフトキシカルボニル基、及びβ-ナフトキシカルボニル基等のアリールオキシカルボニル基;ホルミルオキシ基、アセチルオキシ基、プロピオニルオキシ基、ブタノイルオキシ基、ペンタノイルオキシ基、ヘキサノイルオキシ基、ヘプタノイルオキシ基、オクタノイルオキシ基、ノナノイルオキシ基、及びデカノイルオキシ基等の脂肪族アシルオキシ基;ベンゾイルオキシ基、α-ナフトイルオキシ基、及びβ-ナフトイルオキシ基等の芳香族アシルオキシ基である。
【0098】
a1~Ra18は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1以上5以下のアルキル基、及び炭素原子数1以上5以下のアルコキシ基からなる群より選択される基が好ましく、特に機械的特性に優れる硬化膜を形成しやすいことから、Ra1~Ra18が全て水素原子であるのがより好ましい。
【0099】
式(a1-2)~(a1-5)中、Ra1~Ra18は、式(a1-1)におけるRa1~Ra18と同様である。式(a1-2)及び式(a1-4)において、Ra2及びRa10が、互いに結合する場合、式(a1-2)において、Ra13及びRa16が、互いに結合する場合、及び式(a1-3)において、Ra2及びRa8が、互いに結合する場合に形成される2価の基としては、例えば、-CH-、-C(CH-が挙げられる。
【0100】
式(a1-1)で表される脂環式エポキシ化合物のうち、好適な化合物の具体例としては、下記式(a1-1a)、式(a1-1b)、及び式(a1-1c)で表される脂環式エポキシ化合物や、2,2-ビス(3,4-エポキシシクロヘキサン-1-イル)プロパン[=2,2-ビス(3,4-エポキシシクロヘキシル)プロパン]等を挙げることができる。
【化15】
【0101】
式(a1-2)で表される脂環式エポキシ化合物のうち、好適な化合物の具体例としては、下記式(a1-2a)及び下記式(a1-2b)で表される脂環式エポキシ化合物が挙げられる。
【化16】
【0102】
式(a1-3)で表される脂環式エポキシ化合物のうち、好適な化合物の具体例としては、Sスピロ[3-オキサトリシクロ[3.2.1.02,4]オクタン-6,2’-オキシラン]等が挙げられる。
【0103】
式(a1-4)で表される脂環式エポキシ化合物のうち、好適な化合物の具体例としては、4-ビニルシクロヘキセンジオキシド、ジペンテンジオキシド、リモネンジオキシド、1-メチル-4-(3-メチルオキシラン-2-イル)-7-オキサビシクロ[4.1.0]ヘプタン等が挙げられる。
【0104】
式(a1-5)で表される脂環式エポキシ化合物のうち、好適な化合物の具体例としては、1,2,5,6-ジエポキシシクロオクタン等が挙げられる。
【0105】
さらに、下記式(a1)で表される化合物をエポキシ化合物(A)として好適に使用し得る。
【化17】
(式(a1)中、Xa1、Xa2、及びXa3は、それぞれ独立に、水素原子、又はエポキシ基を含んでいてもよい有機基であり、Xa1、Xa2、及びXa3が有するエポキシ基の総数が2以上である。)
【0106】
上記式(a1)で表される化合物としては、下記式(a1-6)で表される化合物が好ましい。
【化18】
(式(a1-6)中、Ra20~Ra22は、直鎖状、分岐鎖状又は環状のアルキレン基、アリーレン基、-O-、-C(=O)-、-NH-及びこれらの組み合わせからなる基であり、それぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよい。E~Eは、エポキシ基、オキセタニル基、エチレン性不飽和基、アルコキシシリル基、イソシアネート基、ブロックイソシアネート基、チオール基、カルボキシ基、水酸基及びコハク酸無水物基からなる群より選択される少なくとも1種の置換基又は水素原子である。ただし、E~Eのうち少なくとも2つは、エポキシ基及びオキセタニル基からなる群より選択される少なくとも1種である。)
【0107】
式(a1-6)中、Ra20とE、Ra21とE、及びRa22とEで示される基は、例えば、少なくとも2つが、それぞれ、下記式(a1-6a)で表される基であることが好ましく、いずれもが、それぞれ、下記式(a1-6a)で表される基であることがより好ましい。1つの化合物に結合する複数の式(a1-6a)で表される基は、同じ基であることが好ましい。
-L-C (a1-6a)
(式(a1-6a)中、Lは直鎖状、分岐鎖状又は環状のアルキレン基、アリーレン基、-O-、-C(=O)-、-NH-及びこれらの組み合わせからなる基であり、Cはエポキシ基である。式(a1-6a)中、LとCとが結合して環状構造を形成していてもよい。)
【0108】
式(a1-6a)中、Lとしての直鎖状、分岐鎖状又は環状のアルキレン基としては、炭素原子数1以上10以下のアルキレン基が好ましく、また、Lとしてのアリーレン基としては、炭素原子数5以上10以下のアリーレン基が好ましい。式(a1-6a)中、Lは、直鎖状の炭素原子数1以上3以下のアルキレン基、フェニレン基、-O-、-C(=O)-、-NH-及びこれらの組み合わせからなる基であることが好ましく、メチレン基等の直鎖状の炭素原子数1以上3以下のアルキレン基及びフェニレン基の少なくとも1種、又は、これらと、-O-、-C(=O)-及びNH-の少なくとも1種との組み合わせからなる基が好ましい。
【0109】
式(a1-6a)中、LとCとが結合して環状構造を形成している場合としては、例えば、分岐鎖状のアルキレン基とエポキシ基とが結合して環状構造(脂環構造のエポキシ基を有する構造)を形成している場合、下記式(a1-6b)又は(a1-6c)で表される有機基が挙げられる。
【化19】
(式(a1-6b)中、Ra23は、水素原子又はメチル基である。)
【0110】
以下、式(a1-6)で表される化合物の例としてオキシラニル基、又は脂環式エポキシ基を有するエポキシ化合物の例を示すが、これらに限定されない。
【化20】
【0111】
また、エポキシ化合物(A)として好適に使用し得る化合物としては、分子内に2以上のエポキシ基を有するシロキサン化合物(以下、単に「シロキサン化合物」とも記す。)を挙げることができる。
【0112】
シロキサン化合物は、シロキサン結合(Si-O-Si)により構成されたシロキサン骨格と、2以上のエポキシ基とを分子内に有する化合物である。
シロキサン化合物におけるシロキサン骨格としては、例えば、環状シロキサン骨格やかご型やラダー型のポリシルセスキオキサン骨格を挙げることができる。
【0113】
シロキサン化合物としては、なかでも、下記式(a1-7)で表される環状シロキサン骨格を有する化合物(以下、「環状シロキサン」という場合がある)が好ましい。
【化21】
【0114】
式(a1-7)中、Ra24、及びRa25は、エポキシ基を含有する一価の基又はアルキル基を示す。ただし、式(a1-7)で表される化合物におけるx1個のRa24及びx1個のRa25のうち、少なくとも2個はエポキシ基を含有する一価の基である。また、式(a1-7)中のx1は3以上の整数を示す。なお、式(a1-7)で表される化合物におけるRa24、Ra25は同一であってもよいし、異なっていてもよい。また、複数のRa24は同一であってもよいし、異なっていてもよい。複数のRa25も同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0115】
上記エポキシ基を含有する一価の基としては、-D-O-Ra26で表されるグリシジルエーテル基[Dはアルキレン基を示し、Ra26はグリシジル基を示す]が好ましい。上記D(アルキレン基)としては、例えば、メチレン基、メチルメチレン基、ジメチルメチレン基、ジメチレン基、トリメチレン基等の炭素原子数が1以上18以下の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基等を挙げることができる。
また、-D-Ra27で表される脂環式エポキシ基含有基も好ましい。Ra27は、エポキシシクロアルキル基である。Dは前述の通り、アルキレン基である。Dとしてのアルキレン基の好ましい例も、前述の通りである。Ra27としてのエポキシシクロアルキル基としては、2,3-エポキシシクロペンチル基、3,4-エポキシシクロヘキシル基、及び2,3-エポキシシクロヘキシル基が好ましい。-D-Ra27で表される基としては、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチル基が好ましい。
【0116】
a24、及びRa25としてのアルキル基の好ましい例としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基等の炭素原子数1以上18以下(好ましくは炭素原子数1以上6以下、特に好ましくは炭素原子数1以上3以下)の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基を挙げることができる。
【0117】
式(a1-7)中のx1は3以上の整数を示し、なかでも、硬化膜を形成する際の架橋反応性に優れる点で3以上6以下の整数が好ましい。
【0118】
シロキサン化合物が分子内に有するエポキシ基の数は2個以上であり、硬化膜を形成する際の架橋反応性に優れる点から2個以上6個以下が好ましく、特に好ましくは2個以上4個以下である。
【0119】
硬化性組成物は、式(a1-7)で表されるシロキサン化合物以外にも、脂環式エポキシ基含有環状シロキサン、特開2008-248169号公報に記載の脂環式エポキシ基含有シリコーン樹脂、及び特開2008-19422号公報に記載の1分子中に少なくとも2個のエポキシ官能性基を有するオルガノポリシルセスキオキサン樹脂等のシロキサン骨格を有する化合物を含有していてもよい。
【0120】
シロキサン化合物としては、より具体的には、下記式で表される、分子内に2以上のエポキシ基を有する環状シロキサン等を挙げることができる。また、シロキサン化合物としては、例えば、商品名「X-40-2670」、「X-40-2701」、「X-40-2728」、「X-40-2738」、「X-40-2740」(以上、信越化学工業社製)等の市販品を用いることができる。
【0121】
【化22】
【0122】
【化23】
【0123】
硬化性組成物中のエポキシ基を有する化合物の含有量は、後述する溶媒以外の硬化性組成物の成分の質量の合計に対して、例えば30質量%以上98質量%以下が好ましく、40質量%以上94質量%以下がより好ましく、45質量%以上92質量%以下がさらに好ましい。
【0124】
エポキシ用硬化剤としては、スルホニウム塩、ヨードニウム塩、アンモニウム塩等のオニウム塩や、フェノール系硬化剤、酸無水物系硬化剤、多価アミン系硬化剤、触媒型硬化剤等の従来公知のエポキシ用硬化剤から適宜選択することができる。
オニウム塩は、露光、又は加熱によりエポキシ基を有する化合物を硬化させ得る。他のエポキシ用硬化剤は、加熱によりエポキシ基を有する化合物を硬化させ得る。
【0125】
硬化性組成物中のエポキシ用硬化剤の含有量は、エポキシ用硬化剤の種類に応じた通常の使用量を考量して適宜決定される。硬化性組成物中のエポキシ用硬化剤の含有量は、エポキシ基を有する化合物100質量部に対して、典型的には、0.1質量部以上30質量部以下が好ましく、0.3質量部以上25質量部以下がより好ましい。
【0126】
接着層15Aの形成に用いられる硬化性組成物は、前述の近赤外吸収化合物を含む。硬化性組成物における近赤外吸収化合物の含有量は、後述する溶媒以外の硬化性組成物の成分の質量の合計に対して、0.1質量%以上30質量%以下が好ましく、0.2質量%以上25質量%以下がより好ましい。
【0127】
接着層15Aの形成に用いられる硬化性組成物は、近赤外吸収層15Bの性能を阻害しない範囲で、種々の添加剤を含んでいてもよい。かかる添加剤としては、例えば、シランカップリング剤、密着増強剤、分散剤、界面活性剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、消泡剤、粘度調整剤、及び樹脂等が挙げられる。
【0128】
接着層15Aの形成に用いられる硬化性組成物は、典型的には溶媒を含む。溶媒として使用され得る有機溶剤の好適な例としては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコール-n-プロピルエーテル、エチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ-n-プロピルエーテル、ジエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ-n-プロピルエーテル、プロピレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ-n-プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル等の(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等の(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等の他のエーテル類;メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、2-ヘプタノン、3-ヘプタノン等のケトン類;2-ヒドロキシプロピオン酸メチル、2-ヒドロキシプロピオン酸エチル等の乳酸アルキルエステル類;2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオン酸エチル、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-メトキシプロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、エトキシ酢酸エチル、ヒドロキシ酢酸エチル、2-ヒドロキシ-3-メチル部炭酸メチル、3-メチル-3-メトキシブチルアセテート、3-メチル-3-メトキシブチルプロピオネート、酢酸エチル、酢酸n-プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸n-ブチル、酢酸イソブチル、蟻酸n-ペンチル、酢酸イソペンチル、プロピオン酸n-ブチル、酪酸エチル、酪酸n-プロピル、酪酸イソプロピル、酪酸n-ブチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ピルビン酸n-プロピル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、2-オキソブタン酸エチル等の他のエステル類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;N-メチルピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド等のアミド類等が挙げられる。これらの溶媒は、単独又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0129】
接着層15Aの形成に用いられる硬化性組成物における溶媒の使用量は特に限定されない。硬化性組成物の塗布性の点や、所望する膜厚の接着層15Aの形成しやすさの点等から、溶媒の使用量は、硬化性組成物全体に対して、例えば30質量%以上99.9質量%以下であり、好ましくは50質量%以上98質量%以下である。
【0130】
第2積層体は、典型的には、支持層16上に、硬化性化合物、近赤外吸収化合物、及び溶媒を含む硬化性組成物を塗布して塗布膜を形成し、次いで、塗布膜から溶媒の少なくとも一部を除去して接着層15Aを形成することにより製造される。
支持層16がごく薄かったり、支持層16の強度が低かったりする場合等には、基板上に支持層16を形成した後に、支持層16上に硬化性組成物を塗布し、次いで、塗布膜を所望する程度に乾燥させることにより支持層16上に接着層15Aを形成できる。
【0131】
硬化性組成物を塗布する方法は特に限定されない。塗布方法としては、ロールコータ、リバースコーター、バーコーター等の接触転写型塗布装置や、スピンナー(回転式塗布装置)、スリットコーター、カーテンフローコーター等の非接触型塗布装置を用いる方法が挙げられる。
また、硬化性組成物の粘度を適切な範囲に調整したうえで、インクジェット法、スクリーン印刷法等の印刷法によって硬化性組成物の塗布を行ってもよい。
【0132】
次いで、必要に応じて、溶媒等の揮発成分を除去して硬化性組成物からなる塗布膜を乾燥させる。乾燥方法は特に限定されないが、例えば、必要に応じて、真空乾燥装置(VCD)を用いて室温にて塗布膜を減圧乾燥し、その後、ホットプレートにて60℃以上120℃以下、好ましくは70℃以上100℃以下の温度にて60秒以上180秒以下の間乾燥する方法が挙げられる。
【0133】
接着層15Aの膜厚は特に限定されず、固体撮像素子1のサイズ等を勘案して適宜決定される。接着層15Aの膜厚は、例えば、0.1μm以上100μm以下が好ましく、0.5μm以上80μm以下がより好ましい。接着層15Aの膜厚は、硬化による著しい収縮等が生じない限りにおいて、そのまま近赤外吸収層15Bの膜厚となる。
【0134】
<貼り合わせ工程>
貼り合わせ工程では、図1に示されるように第1積層体10Aと、第2積層体10Bとを貼り合わせて、図2に示される第3積層体10Cを得る。図1に示されるように、第1積層体10Aと、第2積層体10Bとが貼り合わせられる際に、平坦化層14の表面と、接着層15Aの表面とが貼り合わせられる。
第1積層体10Aと、第2積層体10Bとを貼り合わせる方法は、特に限定されない。典型的には、貼り合わせられる面に均等に力を加えながら第1積層体10Aと、第2積層体10Bとが圧着される。貼り合わせを行う際には、第1積層体10A、又は第2積層体10Bが変形したり、熱により劣化したりしない程度の温度で第1積層体10A、又は第2積層体10Bが暖められてもよい。
【0135】
<硬化工程>
硬化工程では、貼り合わせ工程後に、接着層15Aを、露光及び/又は加熱により硬化させて、接着層15Aと近赤外吸収層15Bとする。そうすることで、図3に示されるように、第3積層体10Cが、固体撮像素子1となる。
【0136】
露光は、例えば、エキシマレーザー光等の活性エネルギー線を接着層15Aに対して照射して行う。照射するエネルギー線量は、接着層15Aの組成によっても異なるが、例えば30mJ/cm以上2000mJ/cm以下が好ましく、50mJ/cm以上500mJ/cm以下がより好ましい。
加熱を行う際の温度は特に限定されず、100℃以上280℃以下が好ましく、120℃以上260℃以下がより好ましく、140℃以上250℃以下が特に好ましい。加熱時間は、典型的には、1分以上60分以下が好ましく、2分以上50分以下がより好ましく、5分以上40分以下が特に好ましい。
【0137】
以上の方法によれば、近赤外吸収層15Bが、粘着剤を介さずに平坦化層14に貼り付けられるため、小型の固体撮像素子の製造が容易である。
また、以上の方法により、平坦化層14の表面を、有機溶剤により荒らすことなく固体撮像素子を製造できる。
【0138】
なお、支持層16として保護層を用いて固体撮像素子1を製造する方法について説明したが、以下の方法によれば、支持層16として基材フィルムを用いても、近赤外吸収層15Bの平坦化層14に接する面とは反対の面に保護層が積層された固体撮像素子1を製造できる。
【0139】
具体的には、支持層16として、接着層15Aから剥離可能な基材フィルムを用いて、前述の方法に従って、第3積層体10Cを製造する。次いで、第3積層体から、基材フィルムを剥離させて、接着層15Aの表面を露出させる。露出した接着層15Aの表面に、保護層を貼り合わせた後に、接着層15Aを硬化させる硬化工程を行うことにより、近赤外吸収層15Bの平坦化層14に接する面とは反対の面に保護層が積層された固体撮像素子1を製造できる。
ここでは、保護層を用いる場合について説明したが、上記の方法により、固体撮像素子1において、種々の機能層を近赤外吸収層15Bの表面に積層出来る。
【0140】
≪積層体≫
積層体は、固体撮像素子1において近赤外吸収層15Bを形成するために好適に用いられる。
かかる積層体は、支持層16と、支持層16の一方の面に積層された接着層15Aとを備える。接着層15Aは、硬化性化合物と、近赤外吸収化合物とを含む。硬化性化合物は、硬化剤の作用により、又は硬化剤の作用によらず露光及び/又は加熱により硬化する化合物である。
つまり、上記の積層体は、前述の第2積層体に該当する。
【0141】
≪ドライフィルム≫
ドライフィルムは、固体撮像素子1において近赤外吸収層15Bを形成するために好適に用いられる。
かかるドライフィルムは、基材フィルムと、基材フィルムの一方の面に積層された接着層15Aとを備える。接着層15Aは、硬化性化合物と、近赤外吸収化合物とを含む。硬化性化合物は、硬化剤の作用により、又は硬化剤の作用によらず露光及び/又は加熱により硬化する化合物である。
つまり、上記のドライフィルムは、前述の支持層16として基材フィルムを備える前述の第2積層体に該当する。
図1
図2
図3