(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-21
(45)【発行日】2022-05-02
(54)【発明の名称】レポート作成装置及びレポート作成方法
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/06 20120101AFI20220422BHJP
G06Q 10/06 20120101ALI20220422BHJP
【FI】
G06Q50/06
G06Q10/06 328
(21)【出願番号】P 2019089310
(22)【出願日】2019-05-09
【審査請求日】2020-03-17
【審判番号】
【審判請求日】2021-03-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000001063
【氏名又は名称】栗田工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100178847
【氏名又は名称】服部 映美
(72)【発明者】
【氏名】河原林 直也
(72)【発明者】
【氏名】上田 晃弘
【合議体】
【審判長】渡邊 聡
【審判官】中野 浩昌
【審判官】相崎 裕恒
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-288361(JP,A)
【文献】特開2010-179294(JP,A)
【文献】特開2008-59144(JP,A)
【文献】特開2002-133044(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0022241(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象期間よりも前に予め測定された水処理に関する処理量である基準処理量のデータと、前記対象期間において測定された水処理に関する処理量である期間内処理量のデータとを取得し、前記基準処理量に応じた金額である基準金額と前記期間内処理量に応じた金額である期間内金額とを導出し、前記基準金額に対する前記期間内金額の削減額を導出する削減額導出部と、
導出された前記削減額を表すレポートを作成する作成部と
を備え、
前記作成部は、受信された水処理に関する信号に含まれていた情報に基づいて、前記対象期間において水質の条件が満たされていたことを表す情報を作成し、前記対象期間において水質の条件が満たされていたことを表す情報と前記削減額とを表す前記レポートを作成
し、
前記削減額導出部は、前記基準金額を前記対象期間ごとに導出する、
レポート作成装置。
【請求項2】
前記削減額導出部は、受信された水処理に関する信号に含まれていた情報である、凝集剤の使用量と中和剤の使用量と汚泥の発生量とのうちの少なくとも一つに関して、前記基準処理量のデータと前記期間内処理量のデータとを取得し、前記基準金額と前記期間内金額とを導出し、前記基準金額に対する前記期間内金額の削減額を導出する、
請求項1に記載のレポート作成装置。
【請求項3】
前記凝集剤の使用量と前記中和剤の使用量と前記汚泥の発生量とのうちの少なくとも一つの削減量を導出する削減量導出部を更に備え、
前記作成部は、前記削減量を更に表すレポートを作成する、
請求項2に記載のレポート作成装置。
【請求項4】
前記作成部は、前記基準金額及び前記期間内金額を更に表すレポートを作成する、
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のレポート作成装置。
【請求項5】
前記作成部は、前記対象期間における水質の時系列のグラフを更に表すレポートを作成する、
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のレポート作成装置。
【請求項6】
前記対象期間の長さは、1か月間である、
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のレポート作成装置。
【請求項7】
水処理に関するレポートを作成するレポート作成装置が実行するレポート作成方法であって、
対象期間よりも前に予め測定された水処理に関する処理量である基準処理量のデータと、前記対象期間において測定された水処理に関する処理量である期間内処理量のデータとを取得し、前記基準処理量に応じた金額である基準金額と前記期間内処理量に応じた金額である期間内金額とを導出し、前記基準金額に対する前記期間内金額の削減額を導出する削減額導出ステップと、
導出された前記削減額を表すレポートを作成する作成ステップと
を含み、
前記作成ステップでは、受信された水処理に関する信号に含まれていた情報に基づいて、前記対象期間において水質の条件が満たされていたことを表す情報を作成し、前記対象期間において水質の条件が満たされていたことを表す情報と前記削減額とを表す前記レポートを作成
し、
前記削減額導出ステップでは、前記基準金額を前記対象期間ごとに導出する、
レポート作成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レポート作成装置及びレポート作成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水処理システムでは、凝集槽における濁質の凝集状態を検出するセンサが用いられることによって、凝集状態に影響する薬品の注入量が精度よく制御可能となった。これによって、水処理に使用される薬品等のコストが精度よく予測可能となった。そこで、水処理システムの導入を検討する顧客に対して、新たな水処理システムが導入された場合に削減可能なコストの予測値が提示される場合がある(特許文献1、2及び3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-139035号公報
【文献】特開2018-142104号公報
【文献】特開2018-142105号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、顧客は、新たな水処理システムが導入されたことによって削減されたコスト(削減額)の実績値を、分かり易い形式では知ることができなかった。すなわち、水処理システムが導入された場合に削減されたコストの実績値が顧客に分かり易く提示されない場合があった。
【0005】
上記事情に鑑み、本発明は、水処理システムが導入された場合に削減されたコストの実績値を顧客に提示することが可能であるレポート作成装置及びレポート作成方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、対象期間よりも前に予め測定された水処理に関する処理量である基準処理量のデータと、前記対象期間において測定された水処理に関する処理量である期間内処理量のデータとを取得し、前記基準処理量に応じた金額である基準金額と前記期間内処理量に応じた金額である期間内金額とを導出し、前記基準金額に対する前記期間内金額の削減額を導出する削減額導出部と、導出された前記削減額 を表すレポートを作成する作成部とを備えるレポート作成装置である。
【0007】
本発明の一態様は、上記のレポート作成装置であって、前記削減額導出部は、凝集剤の使用量と中和剤の使用量と汚泥の発生量とのうちの少なくとも一つに関する前記削減額を導出する。
【0008】
本発明の一態様は、上記のレポート作成装置であって、前記凝集剤の使用量と前記中和剤の使用量と前記汚泥の発生量とのうちの少なくとも一つの削減量を導出する削減量導出部を更に備え、前記作成部は、前記削減量を更に表すレポートを作成する。
【0009】
本発明の一態様は、上記のレポート作成装置であって、前記作成部は、前記基準金額及び前記期間内金額を更に表すレポートを作成する。
【0010】
本発明の一態様は、上記のレポート作成装置であって、前記作成部は、前記対象期間における水質の時系列のグラフを更に表すレポートを作成する。
【0011】
本発明の一態様は、上記のレポート作成装置であって、前記対象期間の長さは、1か月間である。
【0012】
本発明の一態様は、水処理に関するレポートを作成するレポート作成装置が実行するレポート作成方法であって、対象期間よりも前に予め測定された水処理に関する処理量である基準処理量のデータと、前記対象期間において測定された水処理に関する処理量である期間内処理量のデータとを取得し、前記基準処理量に応じた金額である基準金額と前記期間内処理量に応じた金額である期間内金額とを導出し、前記基準金額に対する前記期間内金額の削減額を導出する削減額導出ステップと、導出された前記削減額を表すレポートを作成する作成ステップとを含むレポート作成方法である。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、水処理システムが導入された場合に削減されたコストの実績値を顧客に提示することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】実施形態における、水処理管理システムの構成例を示す図である。
【
図2】実施形態における、データテーブルの例を示す図である。
【
図3】実施形態における、顧客用のポータルサイトの表示例を示す図である。
【
図4】実施形態における、月次レポートの第1例を示す図である。
【
図5】実施形態における、月次レポートの第2例を示す図である。
【
図6】実施形態における、レポート作成装置の動作例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
図1は、水処理管理システム1の構成例を示す図である。水処理管理システム1は、水処理システムの運転を管理するシステム(リアルタイム・モニタリング・システム)である。水処理管理システム1は、水処理システム2と、通信回線3と、情報処理装置4と、レポート作成装置5とを備える。
【0016】
水処理システム2は、原水に対して水処理を実行するシステムであり、例えば、浄水処理設備、下水処理設備、車両製造工場設備、化学工場設備又は製紙工場設備である。水処理システム2は、通信回線3を介して、水処理に関する信号をレポート作成装置5に送信する。通信回線3は、インターネット等の回線である。
【0017】
情報処理装置4は、スマートフォン端末、タブレット端末、パーソナルコンピュータ等の情報処理装置である。情報処理装置4は、通信部と、液晶ディスプレイ等の表示部と、キーボード又はタッチパネル等の操作部とを備える。
【0018】
情報処理装置4の通信部は、水処理システム2を運転する顧客用のポータルサイト(ウェブページ)の画像を、レポート作成装置5から受信する。顧客用のポータルサイトの画像は、例えば、HTML(HyperText Markup Language)等の言語を用いて記述されている。情報処理装置4の表示部は、顧客用(情報処理装置4のユーザ用)のポータルサイトの画像を表示する。
【0019】
顧客用のポータルサイトの画像には、例えば、水処理システム2における水処理に関するトレンドグラフと、薬品タンク内の薬品量を表す情報とが含まれている。顧客用のポータルサイトの画像には、顧客用のポータルサイトのユーザ認証用の画像と、水処理システム2における水処理に関するレポートの画像とが含まれていてもよい。
【0020】
情報処理装置4の操作部は、情報処理装置4のユーザ(顧客)による操作を受け付ける。ユーザによる操作とは、例えば、顧客用のポータルサイトのユーザ認証のための識別番号及びパスワード情報をレポート作成装置5に送信するための操作、水処理に関するレポートの作成命令をレポート作成装置5に送信するための操作である。情報処理装置4は、水処理に関するレポートの作成命令を、情報処理装置4のユーザによる操作に応じて例えば1か月ごとに送信する。
【0021】
レポート作成装置5は、水処理システム2における水処理に関するレポートを作成する情報処理装置であり、例えば、サーバ装置である。レポート作成装置5は、例えば、水処理システム2における水処理に関する月次レポートを作成する。月次レポートには、レポートの対象月間における削減額が記載されている。この削減額とは、例えば、水処理システム2にセンサ25が設置されていない場合のコストを基準として、水処理システム2にセンサ25が設置されている場合(新たな水処理システムが導入された場合)に削減されたコスト(削減額)の実績値である。このコストとは、例えば、凝集剤の使用量と中和剤の使用量と汚泥の発生量とに応じた処理コスト(金額)である。汚泥の発生量は、凝集剤及び中和剤の使用量と、凝集剤及び中和剤の種類と、汚泥の含水率とに応じて定まる。
【0022】
次に、水処理システム2の詳細を説明する。
水処理システム2は、反応槽100と、調整槽101と、凝集槽102と、沈殿槽103とを備える。水処理システム2は、水処理制御装置20と、薬注制御装置21と、第1凝集剤注入装置22と、調整剤注入装置23と、第2凝集剤注入装置24と、センサ25と、脱水剤注入装置26と、ゲートウェイ装置27とを備える。
【0023】
反応槽100では、無機凝集剤又は有機凝集剤が原水に注入される。反応槽100の水は、調整槽101に送られる。調整槽101の水には、中和剤(pH調整剤)が注入される。調整槽101の水は、凝集槽102に送られる。凝集槽102の水には、高分子凝集剤が注入される。凝集槽102の水は、沈殿槽103に送られる。沈殿槽103の水では、汚泥(sludge)が沈殿する。沈殿槽103は、汚泥が分離された水(処理水)を、所定の水槽に送る。
【0024】
水処理制御装置20は、水処理に関する制御を実行する情報処理装置であり、例えば、パーソナルコンピュータ、ワークステーションである。水処理制御装置20は、運転信号を薬注制御装置21に出力する。運転信号は、例えば、薬品の注入タイミングを表す信号を含む。水処理制御装置20は、薬品の注入量を表す信号を、薬注制御装置21から取得してもよい。水処理制御装置20は、水処理に関する信号を、ゲートウェイ装置27に出力する。水処理に関する信号は、例えば、薬品の注入量の情報と、センサ25による水質検出結果の情報と、排水量の情報とを含む。
【0025】
水処理制御装置20は、顧客用のポータルサイトの画像を、ゲートウェイ装置27を介してレポート作成装置5から取得してもよい。水処理制御装置20の表示部は、顧客用のポータルサイトの画像を表示してもよい。
【0026】
薬注制御装置21は、薬品の注入量を制御する装置であり、例えば、プログラマブル・ロジック・コントローラ(programmable logic controller : PLC)である。薬注制御装置21は、運転信号を水処理制御装置20から受信した場合、薬品の注入量を制御する。薬注制御装置21は、凝集槽102の水に含まれている濁質の凝集状態に応じて、第1凝集剤注入装置22と調整剤注入装置23と第2凝集剤注入装置24と脱水剤注入装置26とのうちの少なくとも一つに、薬品の注入量を制御するための信号(以下「薬注制御信号」という。)を出力する。
【0027】
第1凝集剤注入装置22は、無機凝集剤又は有機凝集剤を反応槽100に注入する装置であり、例えば、電動ポンプである。第1凝集剤注入装置22は、薬注制御信号に基づく量の無機凝集剤又は有機凝集剤を、反応槽100に注入する。第1凝集剤注入装置22は、例えば、ポリ塩化アルミニウム(Poly Aluminium Chloride : PAC)又は塩化鉄ポリ鉄を、反応槽100に注入する。
【0028】
調整剤注入装置23は、中和剤を調整槽101に注入する装置であり、例えば、電動ポンプである。調整剤注入装置23は、薬注制御信号に基づく量の中和剤を、調整槽101に注入する。第2凝集剤注入装置24は、高分子凝集剤を凝集槽102に注入する装置であり、例えば、電動ポンプである。第2凝集剤注入装置24は、薬注制御信号に基づく量の高分子凝集剤を、調整槽101に注入する。
【0029】
センサ25は、濁質の凝集状態(濁度等の水質)を検出する装置である。センサ25は、凝集槽102の水に含まれている濁質の凝集状態を検出する。センサ25は、濁質の凝集状態を表す信号を、薬注制御装置21に出力する。脱水剤注入装置26は、脱水剤を汚泥に注入する装置であり、例えば、電動ポンプである。脱水剤注入装置26は、薬注制御信号に基づく量の脱水剤を汚泥に注入する。
【0030】
ゲートウェイ装置27は、通信装置である。ゲートウェイ装置27は、TCP/IP(Transmission Control Protocol / Internet Protocol)等のプロトコルに従って、通信回線3を介してレポート作成装置5と通信する。ゲートウェイ装置27は、水処理システム2における水処理に関する信号を、レポート作成装置5に送信する。
【0031】
ゲートウェイ装置27は、顧客用のポータルサイトのユーザ認証のための識別番号及びパスワード情報を、レポート作成装置5に送信してもよい。ゲートウェイ装置27は、顧客用のポータルサイトの画像を、レポート作成装置5から取得してもよい。ゲートウェイ装置27は、水処理システム2における水処理に関するレポートを、レポート作成装置5から取得してもよい。
【0032】
次に、レポート作成装置5の詳細を説明する。
レポート作成装置5は、通信装置50と、バス51と、記憶装置52と、情報処理部53とを備える。レポート作成装置5の各機能部の一部又は全部は、CPU(Central Processing Unit)又はGPU(Graphics Processing Unit)等のプロセッサが、不揮発性の記録媒体(非一時的な記録媒体)である記憶装置52に記憶されたプログラムを実行することにより、ソフトウェアとして実現される。レポート作成装置5の各機能部の一部又は全部は、例えば、LSI(Large Scale Integration)又はFPGA(Field Programmable Gate Array)等のハードウェアを用いて実現されてもよい。
【0033】
通信装置50は、TCP/IP等のプロトコルに従って、通信回線3を介してゲートウェイ装置27及び情報処理装置4と通信する。通信装置50は、顧客用のポータルサイトのユーザ認証のための識別番号及びパスワード情報を、ゲートウェイ装置27又は情報処理装置4から取得する。通信装置50は、情報処理部53によって認証された顧客用のポータルサイトの画像を、ゲートウェイ装置27又は情報処理装置4に送信する。通信装置50は、情報処理部53によって作成されたレポートを、レポートを要求したゲートウェイ装置27又は情報処理装置4に送信する。バス51は、レポート作成装置5の各機能部及び記憶装置52の間のデータを伝送する。
【0034】
記憶装置52は、プログラムを記憶する。記憶装置52は、顧客用のポータルサイトのパスワード情報と、データテーブルとを、顧客ごとに記憶する。データテーブルは、例えば、通信装置50によってゲートウェイ装置27から受信された水処理に関する信号に含まれていた情報を含む。
【0035】
図2は、データテーブルの例を示す図である。
図2に示されたデータテーブルでは、年月日と、時刻と、排水量と、凝集剤の使用量と、中和剤の使用量と、汚泥の発生量と、凝集槽102の水の濁度とが対応付けられている。これらの各情報は、通信装置50によってゲートウェイ装置27から受信された水処理に関する信号に含まれていた情報である。
【0036】
時刻は、一例として1時間ごとの時刻である。排水量は、1時間あたりで水処理システム2から排出された処理水の量であり、1時間あたりで水処理システム2に入った原水の量にほぼ等しい。なお、データテーブルでは、凝集剤の添加率と、中和剤の添加率とが更に対応付けられていてもよい。
【0037】
図1に戻り、水処理管理システム1の構成例の説明を続ける。情報処理部53は、情報処理を実行する機能部である。情報処理部53は、認証部530と、制御部531と、削減量導出部532と、削減額導出部533と、作成部534とを備える。認証部530は、ユーザ認証処理を実行する機能部である。制御部531は、ユーザ認証処理において認証された顧客用のポータルサイトの画像を生成する。制御部531は、認証された顧客用のポータルサイトの画像を、通信装置50を介してゲートウェイ装置27又は情報処理装置4に送信する。
【0038】
図3は、顧客用のポータルサイトの表示例を示す図である。顧客用のポータルサイトの画像は、認証された顧客の水処理制御装置20又は情報処理装置4の表示部に表示される。顧客用のポータルサイトの画像には、水処理システム2の設備状況を表す画像と、薬品残量を表す画像と、キー画像200とが含まれている。
【0039】
情報処理装置4のユーザによってキー画像200が操作された場合、情報処理装置4は、水処理に関するレポートの作成命令を、レポート作成装置5に送信する。水処理システム2のユーザによってキー画像200が操作された場合、ゲートウェイ装置27は、水処理に関するレポートの作成命令を、レポート作成装置5に送信する。
【0040】
レポート作成装置5では、制御部531は、水処理に関するレポートの作成命令を取得した場合、水処理に関するレポートの作成を、削減量導出部532と削減額導出部533と作成部534とに指示する。削減量導出部532は、対象期間よりも前に予め測定された水処理に関する処理量(以下「基準処理量」という。)の情報を、記憶装置52から取得する。削減量導出部532は、対象期間において測定された水処理に関する処理量(以下「期間内処理量」という。)の情報を、記憶装置52から取得する。期間内処理量の情報は、通信装置50によってゲートウェイ装置27から受信された水処理に関する信号に含まれていた情報である。
【0041】
削減量導出部532は、水処理システム2における水処理に関する信号に基づいて、基準処理量に対する、対象期間における期間内処理量の削減量を導出する。例えば、削減量導出部532は、凝集剤の使用量と中和剤の使用量と汚泥の発生量とのうちの少なくとも一つの削減量を導出する。なお、削減量導出部532は、対象期間における削減量又は処理量を日ごとに導出してもよいし、対象期間における削減量又は処理量の累積値を導出してもよい。
【0042】
削減額導出部533は、基準処理量のデータを記憶装置52から取得する。削減額導出部533は、期間内処理量のデータを記憶装置52から取得する。削減額導出部533は、凝集剤の単価と中和剤の単価と汚泥処分費用の単価とのうちの少なくとも一つのデータを、記憶装置52から取得する。
【0043】
削減額導出部533は、基準処理量及び各単価に基づいて、基準金額(=基準処理量×単価)を導出する。削減額導出部533は、期間内処理量及び各単価に基づいて、期間内金額(=期間内処理量×単価)を導出する。削減額導出部533は、基準金額と対象期間における期間内金額との差額を導出する。すなわち、削減額導出部533は、基準金額に対する、対象期間における期間内金額の削減額を導出する。
【0044】
作成部534は、対象期間における削減額(コストのメリット)を表すレポートを作成する。作成部534は、対象期間における期間内金額と、基準金額とを更に表すレポートを作成してもよい。作成部534は、対象期間における水質の時系列のグラフ(トレンドグラフ)を更に表すレポートを作成してもよい。作成されたレポートのデータは、レポートの作成を命令した水処理システム2又は情報処理装置4に送信される。
【0045】
図4は、月次レポートの第1例を示す図である。月次レポートでは、基準金額(「基本データ」の「コスト」)と、期間内金額(「10月実績」の「コスト」)と、削減額(「削減量」の「コスト」)とが、互いに対応付けられている。
【0046】
表示領域300は、薬品の削減量(薬品削減量)を表示するための領域である。表示領域301は、汚泥の発生量の削減量(汚泥削減量)を表示するための領域である。表示領域302は、コストの削減額の合計(合計削減費)を表示するための領域である。表示領域303は、月次レポートの内容に関する所見を表示する領域である。この所見は、例えば、レポート作成装置5の管理者によって月次レポートに記入される。
【0047】
なお、月次レポートが顧客に提示される場合、対象期間において水質の条件が満たされていたことを表す情報と、削減額とが、顧客に提示されてもよい。水質の条件とは、例えば、処理水の濁度が低レベルを維持しているという条件である。
【0048】
図5は、月次レポートの第2例を示す図である。
図5に示された月次レポートは、
図4に示された月次レポートと比較して、平均値情報とトレンドグラフと集計データのグラフとを更に含む。平均値情報は、対象期間における1時間あたりの濁度等の平均値の情報である。トレンドグラフは、排水量の時系列のグラフと、凝集剤(ポリ鉄)の時系列のグラフと、濁度の時系列のグラフとを表す。集計データのグラフは、薬品の使用量を日ごとに表すグラフである。
【0049】
次に、レポート作成装置5の動作例を説明する。
図6は、レポート作成装置5の動作例を示すフローチャートである。レポート作成装置5は、レポートの作成命令を水処理システム2又は情報処理装置4から受信した場合、
図6に示された動作手順を実行する。
【0050】
削減額導出部533は、所定の対象期間よりも前に測定された基準処理量のデータを取得する(ステップS101)。削減額導出部533は、所定の対象期間に測定された期間内処理量のデータを取得する(ステップS102)。削減額導出部533は、凝集剤の単価と中和剤の単価と汚泥処分費用の単価とのうちの少なくとも一つのデータを取得する(ステップS103)。削減額導出部533は、基準処理量及び各単価に基づいて、基準金額を導出する(ステップS104)。削減額導出部533は、期間内処理量及び各単価に基づいて、期間内金額を導出する(ステップS105)。
【0051】
削減額導出部533は、基準金額に対する期間内金額の削減額を導出する(ステップS106)。作成部534は、対象期間における削減額を表すレポートを作成する(ステップS107)。通信装置50は、作成部534によって作成されたレポートを、レポートを要求したゲートウェイ装置27又は情報処理装置4に出力する(ステップS108)。
【0052】
以上のように、実施形態のレポート作成装置5は、削減額導出部533と、作成部534とを備える。削減額導出部533は、対象期間よりも前に予め測定された水処理に関する処理量である基準処理量のデータを取得する。対象期間の長さは、例えば1か月間である。削減額導出部533は、対象期間において測定された水処理に関する処理量である期間内処理量のデータを取得する。対象期間は、予め定められた月間(例えば、10月の期間)である。削減額導出部533は、基準処理量に応じた金額である基準金額と、期間内処理量に応じた金額である期間内金額とを導出する。削減額導出部533は、基準金額に対する期間内金額の削減額を導出する。作成部534は、
図4に示された「合計削減費」のように、対象期間における削減額を表すレポート(月次レポート)を作成する。
【0053】
これによって、水処理システム2が導入されない場合と比較して、水処理システム2が導入された場合に削減されたコストの実績値を、顧客(ユーザ)に対して提示することが可能である。
【0054】
削減額導出部533は、例えば、凝集剤の使用量と中和剤の使用量と汚泥の発生量とのうちの少なくとも一つに関する削減額を導出する。レポート作成装置5は、削減量導出部532を更に備えてもよい。削減量導出部532は、凝集剤の使用量と中和剤の使用量と汚泥の発生量とのうちの少なくとも一つの削減量を導出してもよい。作成部534は、導出された薬品削減量及び汚泥削減量を更に表すレポートを、
図4のように作成してもよい。
【0055】
作成部534は、基準金額(「基本データ」の「コスト」)と、期間内金額(「10月実績」の「コスト」)とを更に表すレポートを、
図4のように作成してもよい。作成部534は、
図5のように、対象期間における濁度等の水質と排水量と使用量との時系列のグラフ(トレンドグラフ)を更に表すレポートを作成してもよい。作成部534は、
図5のように、集計データのグラフを更に表すレポートを作成してもよい。作成部534は、対象期間において水質の条件が満たされていたことを表す文字列「OK」等を表すレポートを作成してもよい。これによって、コストの実績値が削減された上で水質の条件が満たされていたことを顧客に提示することが可能である。
【0056】
(第1の変形例)
削減量導出部532は、所定の基準排出量に対して、水処理システム2における二酸化炭素の排出量の削減量を導出してもよい。二酸化炭素の排出量は、例えば、汚泥の発生量に応じて定まる。削減額導出部533は、例えば、水処理システム2における二酸化炭素の排出量の削減量に応じた削減額を導出してもよい。レポート作成装置5は、水処理システム2における二酸化炭素の排出量の削減量を表すレポート(月次レポート)を作成してもよい。
【0057】
(第2の変形例)
削減額導出部533は、基準処理量に応じた金額である基準金額を、対象期間ごとに導出してもよい。例えば、削減額導出部533は、対象月間の期間内金額の削減額を導出する場合、対象月間の前月の期間内金額を基準金額としてもよい。削減額導出部533は、例えば9月の期間内金額に基づく基準金額に対する、10月の期間内金額の削減額を導出する。これによって、レポート作成装置5は、対象期間ごとに最適化された請求金額を表すレポートを、顧客に提示することができる。この請求金額は、例えば、削減額(コストのメリット)に応じて定められる。
【0058】
(第3の変形例)
削減量導出部532は、所定の基準処理量に対して、水処理システム2における人的コストの削減量を導出してもよい。薬注制御装置21が薬品の使用量を精度よく制御するので、薬品の使用量を運転員が調整する必要がないため(業務省力化)、水処理システム2における人的コストは削減される。削減額導出部533は、例えば、水処理システム2における人件費に関する削減額を導出してもよい。レポート作成装置5は、水処理システム2における人件費に関する削減額を表すレポート(月次レポート)を作成してもよい。
【0059】
(第4の変形例)
ゲートウェイ装置27又は情報処理装置4がレポートの作成を要求していない場合でも、例えば毎月の所定タイミング(例えば、対象期間である月間の次月の月初のタイミング)で、通信装置50は、情報処理部53によって作成されたレポートのデータを、プッシュ方式でゲートウェイ装置27又は情報処理装置4に送信してもよい。
【0060】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明は、水処理システム等に関するレポートを作成するサーバ装置に適用可能である。
【符号の説明】
【0062】
1…水処理管理システム、2…水処理システム、3…通信回線、4…情報処理装置、5…レポート作成装置、20…水処理制御装置、21…薬注制御装置、22…第1凝集剤注入装置、23…調整剤注入装置、24…第2凝集剤注入装置、25…センサ、26…脱水剤注入装置、100…反応槽、101…調整槽、102…凝集槽、103…沈殿槽、50…通信装置、51…バス、52…記憶装置、53…情報処理部、200…キー画像、300…表示領域、301…表示領域、302…表示領域、303…表示領域、530…認証部、531…制御部、532…削減量導出部、533…削減額導出部、534…作成部