(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-21
(45)【発行日】2022-05-02
(54)【発明の名称】監視装置及び監視システム
(51)【国際特許分類】
G08C 15/00 20060101AFI20220422BHJP
G08C 17/00 20060101ALI20220422BHJP
G06Q 10/10 20120101ALI20220422BHJP
C12M 1/00 20060101ALI20220422BHJP
C12M 1/34 20060101ALI20220422BHJP
【FI】
G08C15/00 D
G08C17/00 Z
G06Q10/10 300
C12M1/00 C
C12M1/34 D
(21)【出願番号】P 2020540099
(86)(22)【出願日】2019-06-25
(86)【国際出願番号】 JP2019025178
(87)【国際公開番号】W WO2020044754
(87)【国際公開日】2020-03-05
【審査請求日】2020-10-21
(31)【優先権主張番号】P 2018158930
(32)【優先日】2018-08-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】早川 洋平
【審査官】菅藤 政明
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-007169(JP,A)
【文献】特開2010-224701(JP,A)
【文献】特開2005-291986(JP,A)
【文献】特開2018-009745(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08C 15/00
G08C 17/00
G06Q 10/10
C12M 1/00
C12M 1/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
培養空間内の複数の培養容器の各々の培養環境に関する環境データを、予め定められた計測間隔で計測する1種類又は複数種類の複数の環境センサと、
前記培養空間内の培養に影響を及ぼすイベントを検出するイベント検出部と、
前記イベント検出部でイベントが検出された場合に、前記複数の環境センサの各々の計測間隔を、前記イベントを検出する前の間隔より短い間隔に変更する変更部と、
を備え、
前記環境センサの1つである第1の環境センサは、前記培養容器毎に設けられ、
さらに、前記第1の環境センサの各々は、前記イベント検出部の1つである第1のイベント検出部と、前記変更部の1つである第1の変更部とを備え、
前記第1のイベント検出部は、前記第1の環境センサが計測した環境データから前記培養容器毎の前記計測間隔の変更が必要な前記イベントである第1のイベントを検出し、
前記第1の変更部は、前記第1のイベントが検出された前記培養容器に対応する前記環境センサの前記計測間隔を変更する監視装置。
【請求項2】
前記第1のイベントの検出は、前記いずれかの培養容器の振動の検出、前記いずれかの培養容器の傾きの検出、前記いずれかの培養容器内の溶液の劣化の検出、前記いずれかの培養容器の培養空間への出入りの検出、及び前記いずれかの培養容器への作業者の接近の検出、の少なくとも1つである請求項
1記載の監視装置。
【請求項3】
前記培養空間が複数あり、
前記培養空間毎に中継機が設けられ、
前記環境センサの1つである第2の環境センサは、前記培養空間毎に設けられ、
さらに、前記中継機の各々は、前記イベント検出部の1つである第2のイベント検出部と、前記変更部の1つである第2の変更部とを備え、
前記
第2のイベント検出部は、
前記第2の環境センサが計測した環境データから前記培養空間の全ての培養容器
の前記計測間隔の変更が必要な第2のイベントを検出し、
前記
第2の変更部は、前記第2のイベントが検出された
前記中継機が設けられた前記培養空間の前記全ての培養容器に対する前記
第2の環境センサの
前記計測間隔を変更する請求項1
又は2のいずれか1項に記載の監視装置。
【請求項4】
前記第2のイベントの検出は、前記培養空間内の規定値外の温度の検出、前記培養空間内の規定値外の湿度の検出、前記培養空間内の規定値外のガス濃度の検出、前記培養空間を構成する構造物のドア開閉の検出、及び前記培養空間内の照明の点灯消灯の検出、の少なくとも1つである請求項
3記載の監視装置。
【請求項5】
前記イベント検出部は、複数種類のイベントを検出し、
前記変更部は、前記イベント検出部で検出されたイベントの種類に応じた間隔に変更する請求項1~4のいずれか1項に記載の監視装置。
【請求項6】
前記変更部は、前記計測間隔の変更から予め定められた時間内に前記イベント検出部による検出がなかった場合に、計測間隔を前記変更後の間隔より長い間隔に変更する請求項1~
5のいずれか1項に記載の監視装置。
【請求項7】
前記環境センサは、加速度センサ、振動センサ、地磁気センサ、温度センサ、照度センサ、カラーセンサ、紫外線センサ、ガス濃度センサ、気圧センサ、及び湿度センサのうち少なくとも1つである請求項1から
6のいずれか1項に記載の監視装置。
【請求項8】
前記イベント検出部は、前記培養空間を構成する構造物のドア開閉検出器、前記培養空間の温度検出器、前記培養空間の湿度検出器、前記培養空間のガス濃度検出器、前記培養空間に設けられたスイッチ、及び前記環境センサが計測した値に基づいてイベントを検出する検出器のうち少なくとも1つである請求項
7に記載の監視装置。
【請求項9】
前記培養空間は、インキュベータ、冷蔵庫、冷凍庫、クリーンルーム倉庫、恒湿恒温槽、又は作業室の内部空間である請求項1から
8のいずれか1項に記載の監視装置。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか1項に記載の監視装置に、
前記培養空間の複数の各々に中継機を設け、該中継機が前記培養空間内の前記イベント検出部おいて検出したイベントを収集し、かつ、前記イベント検出部で検出されたイベントをデータ収集サーバに送信する送信部をさらに設け、
前記データ収集サーバに、前記変更部を設けた監視システム。
【請求項11】
前記中継機に前記複数の環境センサの各々を識別する識別情報を前記データ収集サーバに送信する識別情報送信部をさらに設け、
前記変更部が、前記検出したイベントの種類に応じて、前記計測間隔を変更する必要がある前記識別情報の前記環境センサの計測間隔を前記イベントの検出より短い間隔に変更する請求項
10に記載の監視システム。
【請求項12】
前記識別情報は、前記培養空間内の前記培養容器の各々に対する前記環境センサの位置を表す情報を含む請求項
11記載の監視システム。
【請求項13】
前記データ収集サーバが、前記イベントの種類と発生時刻とを対応づけて記録する記録部を備えた請求項
10から12のいずれか1項に記載の監視システム。
【請求項14】
前記データ収集サーバが、前記イベントの種類と発生時刻とを、前記識別情報に対応づけて記録する記録部を備えた請求項
11又は
12に記載の監視システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、細胞培養を監視する監視装置及び監視システムに関する。
【背景技術】
【0002】
細胞培養において、昨今、無線センサーモジュールを培養環境に設置したり、培養容器に装着したりすることで、細胞の品質と環境との関連を把握しようとする試みがなされている。
【0003】
培養容器は、通常は温度、湿度、及びCO2濃度が一定値に管理された保管庫(インキュベータ、又は冷蔵庫など)に設置される。これらの保管庫の環境データ値は通常は大きく変化しない。このため、例えば5~10分程度の計測間隔で環境データ値の計測が行われる。
【0004】
しかし、培養容器は細胞操作を行うため一時的に保管庫外の作業場所に搬出されることがあり、この時は培養環境が急激に変化することになる。操作中の環境パラメータは品質と環境との関連を把握する上で重要となる。特に、衝撃が与えられた時の影響は大きいため、衝撃を検知した時の加速度データは重要である。
【0005】
そこで、特許第5916475号では、細胞培養中に細胞培養容器に振動が加わったり変位が生じたりした事実を加速度センサ、ジャイロセンサ、地磁気センサ、衝撃センサ、又は磁気位置センサなどを用いて検出し、検出結果を培養環境の解析に利用するようにしている。
【0006】
また、このような培養環境の解析を行うために、培養容器を置く培養トレイが収納される保管庫内で検出されたCO2濃度、温度、及び湿度などの環境因子を記録するためのシステムが設けられる。しかし、多数の細胞容器全ての環境因子を監視するのは労力がかかる。そこで、特開2016-7169号公報では、空間内の複数位置に配置された環境因子を計測するセンサの位置情報を記憶しておき、各々のセンサが計測した計測値と位置情報とに基づき、センサが置かれた位置における環境因子の予測値を算出する手法が開示されている。
【0007】
さらに、特開平9-107946号公報には、培養環境を一定にするために、環境センサと室内環境制御装置とを直接接続し、室内環境制御装置で環境データの測定間隔を変更する手法が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述の通り、通常は保管庫内の環境が一定であることを前提にしているので、環境を計測するセンサは決められた時間間隔で計測が行われる。しかし、保管庫のドアが開閉された場合には、環境データが大きく変化する。そのため、例えば5~10分程度の計測間隔で行われていた計測を、1~30秒程度の短い計測間隔に変更する必要がある。また、培養容器に対して振動が加えられた場合の影響は大きいため、衝撃を検知した時の加速度データは重要であり、検出後は、例えば0.01~0.1秒間隔程度のさらに短い計測間隔でデータを取得する必要がある。
【0009】
このように、細胞培養の環境を計測するセンサは周囲の変化に応じて適切な計測間隔、すなわちサンプリング周期でデータを取得する必要がある。また、培養容器にセンサを設ける場合には、人が操作を行ったり持ち運んだりすることを考えると無線センサーモジュールを用いるのが好ましい。一般的な無線センサーモジュールのデータ計測間隔は固定の値で与えられ、計測間隔を変更するためには人間が適切な値にその都度変更する必要がある。通常は複数の培養容器が保管庫に設置され、また、複数人が並行して細胞培養操作を行うため、全てのイベントに連動して人間が計測間隔の値を変更するのは現実的ではない。
【0010】
このような手間を省くために、常に0.01~0.1秒といった最も短い計測間隔でデータ計測することも考えられるが、一般に無線センサーモジュールは搭載された電池によって駆動されるため、電力消費量が過大となる弊害が生じる。消費電力が過大になると、例えば電池交換が頻繁となり使い勝手が低下する、といった問題が生ずる。例えば、0.1秒間隔でデータ計測すると一般的な電池では数時間程度で消耗してしまい、頻繁に電池交換が必要となる。一般的な培養では、培養容器を数日間連続して使用するため、その間は連続して計測する必要がある。
【0011】
そこで、本開示は、上述のような問題を解決するためになされたものであり、環境に影響を与えるイベントに対応して、センサのデータ計測間隔を自動的に適正な値に変更する監視装置及び監視システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本開示の監視装置は、培養空間内の複数の培養容器の各々の培養環境に関する環境データを、予め定められた計測間隔で計測する1種類又は複数種類の複数の環境センサと、培養空間内の培養に影響を及ぼすイベントを検出するイベント検出部と、イベント検出部でイベントが検出された場合に、複数の環境センサの各々の計測間隔を、イベントを検出する前の間隔より短い間隔に変更する変更部と、を備える。
【0013】
「イベントを検出」とは、培養空間内の培養環境の変化を表す信号の検出、又は検出した信号に基づいて培養環境に影響を与えると推定される変化の検出を指す。
【0014】
また、イベント検出部が、複数種類のイベントを検出するようにして、変更部は、イベント検出部で検出されたイベントの種類に応じた間隔に変更するものが望ましい。
【0015】
また、イベント検出部が、複数の培養容器のいずれかの培養容器に対する計測間隔の変更が必要な第1のイベントを検出するようにし、変更部は、第1のイベントが検出された場合は、第1のイベントが検出された培養容器に対する環境センサの計測間隔を第1のイベントの検出前より短い間隔に変更するものが望ましい。
【0016】
また、第1のイベントの検出は、いずれかの培養容器の振動の検出、いずれかの培養容器の傾きの検出、いずれかの培養容器内の溶液の劣化の検出、いずれかの培養容器の培養空間への出入りの検出、及びいずれかの培養容器への作業者の接近の検出、 の少なくとも1つであってもよい。
【0017】
また、イベント検出部は、培養空間の全ての培養容器に対する計測間隔の変更が必要な第2のイベントを検出し、変更部は、第2のイベントが検出された場合は、全ての培養容器に対する環境センサの計測間隔を第2のイベントの検出前より短い間隔に変更するのが望ましい。
【0018】
また、第2のイベントの検出は、培養空間内の規定値外の温度の検出、培養空間内の規定値外の湿度の検出、培養空間内の規定値外のガス濃度の検出、培養空間を構成する構造物のドア開閉の検出、及び培養空間内の作業室の照明の点灯消灯の検出、の少なくとも1つであってもよい。
【0019】
「規定値外」とは、正常である場合に表れる値の範囲を規定値の範囲とし、規定値の範囲から外れた範囲の値をいう。
【0020】
また、変更部は、計測間隔の変更から予め定められた時間内にイベント検出部による検出がなかった場合に、計測間隔を変更後の間隔より長い間隔に変更するものが望ましい。
【0021】
また、環境センサは、加速度センサ、振動センサ、地磁気センサ、温度センサ、照度センサ、カラーセンサ、紫外線センサ、ガス濃度センサ、気圧センサ 及び湿度センサのうち少なくとも1つであってもよい。
【0022】
また、イベント検出部は、培養空間を構成する構造物のドア開閉検出器、培養空間の温度検出器、培養空間の湿度検出器、培養空間のガス濃度検出器、培養空間に設けられたスイッチ、及び環境センサが計測した値に基づいてイベントを検出するようにしてもよい。
【0023】
また、培養空間は、インキュベータ、冷蔵庫、冷凍庫、クリーンルーム倉庫、恒湿恒温槽、又は作業室の内部空間であってもよい。
【0024】
また、複数の培養容器の各々に対する複数の環境センサの各々が、変更部を備えるようにしてもよい。
【0025】
また、本開示の監視システムは、上述の監視装置に、イベント検出部で検出されたイベントをデータ収集サーバに送信する送信部をさらに設けるようにして、データ収集サーバに、変更部を設けるようにしてもよい。
【0026】
また、複数の環境センサの各々を識別する識別情報をデータ収集サーバに送信する識別情報送信部をさらに設けるようにし、変更部が、検出したイベントの種類に応じて、計測間隔を変更する必要がある識別情報の環境センサの計測間隔をイベントの検出より短い間隔に変更するようにしてもよい。
【0027】
また、識別情報は、培養空間内の培養容器の各々に対する環境センサの位置を表す情報を含むものが望ましい。
【0028】
また、データ収集サーバが、イベントの種類と発生時刻とを対応づけて記録する記録部を備えるようにしてもよい。
【0029】
また、データ収集サーバが、イベントの種類と発生時刻とを、識別情報に対応づけて記録する記録部を備えるようにしてもよい。
【0030】
本開示の監視装置は、コンピュータに実行させるための命令を記憶するメモリと、記憶された命令を実行するよう構成されたプロセッサとを備え、プロセッサが前記メモリに記憶された命令を実行することにより、培養空間内の複数の培養容器の各々の培養環境に関する環境データを、予め定められた計測間隔で計測する1種類又は複数種類の複数の環境センサと、培養空間内の培養に影響を及ぼすイベントを検出し、イベント検出部でイベントが検出された場合に、複数の環境センサの各々の計測間隔を、イベントを検出する前の間隔より短い間隔に変更する。
【発明の効果】
【0031】
本開示によれば、環境に影響を与えるイベントに対応して、センサのデータ計測間隔を自動的に適正な値に変更することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】第1の実施の形態の監視システムの概略構成を示す図である。
【
図2】第1の実施の形態の環境センサの概略構成を示す図である。
【
図3】第1の実施の形態の中継機の概略構成を示す図である。
【
図4】イベントの種類と計測間隔の一例を示す図である。
【
図5】環境センサの処理の流れを示すフローチャートである。
【
図6】中継機の処理の流れを示すフローチャートである。
【
図7】データ収集サーバの処理の流れを示すフローチャートである。
【
図8】第2の実施の形態の環境センサの概略構成を示す図である。
【
図9】第2の実施の形態の中継機の概略構成を示す図である。
【
図10】第2の実施の形態のデータ収集サーバの概略構成を示す図である。
【
図11】環境センサの処理の流れを示すフローチャートである。
【
図12A】中継機の処理の流れを示すフローチャートである(その1)。
【
図12B】中継機の処理の流れを示すフローチャートである(その2)。
【
図13】データ収集サーバの処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、図を用いて本開示の監視システムについて説明する。
図1に、本開示の第1の実施の形態における監視システム1の概略構成を示す。本実施の形態では、複数箇所に設けられた培養空間の各々に複数の培養容器を保管して、培養空間各々の環境データを監視する場合について説明する。
【0034】
図1に示すように、監視システム1は、データ収集サーバ10、及び複数の培養空間20a~20fの各々に配置された監視装置で構成される。なお、複数の培養空間は、便宜上6つの培養空間20a~20fを例に説明するが、培養空間の個数については6つに限定されない。また、個々の培養空間を区別して説明する場合は、20a~20fのようにアルファベットを付した符号を用いて説明するが、培養空間を区別する必要が無い場合は、内部に培養空間を有し、かつ開閉可能なドアを備えた保管庫20として説明する。
【0035】
データ収集サーバ10は、CPU(Central Processing Unit)、メモリ、ストレージ、入出力インターフェース、通信インターフェース、及び、データバス等の周知のハードウェア構成を備えたコンピュータである。データ収集サーバ10には、オペレーティングシステムと各種プログラムがインストールされている。また、第1の実施の形態の監視システムのサーバとして機能させるために、各々の培養空間20内の環境データを記録するための記録プログラムがインストールされている。
【0036】
培養空間20は、細胞を培養するため、あるいは培養液など培養に用いる資材を管理するための密閉された空間であり、例えば、インキュベータ、冷蔵庫、冷凍庫、クリーンルーム倉庫、恒湿恒温槽、又は作業室の内部空間等である。保管庫20の少なくとも1つは、培養空間内の異常に関するイベントを検出する必要のある培養空間を有している。本実施の形態では、異常に関するイベントを検出する必要のある培養空間を備えた保管庫と、イベントの検出が必要でない培養空間を備えた保管庫とが混在して設けられた場合を例に説明する。例えば、
図1の培養空間20a~20cは、例えば、インキュベータ、冷蔵庫、冷凍庫、クリーンルーム倉庫、又は恒湿恒温槽であり、ドアの開閉等の培養空間を構成する構造物に関するイベント、又は、ガス検出等の培養空間内の異常に関するイベントを検出するイベント検出器23が各々設けられている。また、培養空間20d~20fは、例えば、安全キャビネット、顕微鏡、ウォーターバス、又は遠心分離器等の作業室である。これらには、イベント検出器23は設けられない場合がある。以下、培養空間20a~20fを、単に保管庫20として説明する。
【0037】
保管庫20には、複数の培養容器21、及び中継機22が設けられ、培養空間20a~20cには更にイベント検出器23が設けられる。培養容器21の各々には、予め設定された計測間隔で環境データを計測するために環境センサ30が設けられる。培養容器21は、例えば、セルスタック、培地ボトル、又は、遠沈管等である。環境センサ30は、振動、温度、及び傾き等を検出する無線センサーモジュールで構成される。
【0038】
中継機22は、環境センサ30と無線で送受信を行う。また、1種類又は複数種類のイベント検出器23と無線又は有線で接続される。さらに、中継機22は、データ収集サーバ10とネットワークで接続され、これらの環境センサ30で検出した環境データ及びイベント検出器23で検出したイベント情報を、中継機22はデータ収集サーバ10に送信する。また、ネットワークは、ローカルエリアネットワークであってもワイドエリアネットワークであってもよい。
【0039】
なお、本開示の監視装置は、一例として、環境センサ30、イベント検出器23、及び中継機22で構成される。
【0040】
イベントは、培養環境が変化する要因又は培養環境の変化に応じて発生し、上記のイベント検出器23で検出するイベントと、環境センサ30が計測した環境データに基づいて検出されるイベントとがある。また、イベントは、同じ保管庫20に置かれる複数の培養容器21のうちの1つの培養容器21に影響を与える第1のイベントと、同じ保管庫20に置かれる全ての培養容器21に対して影響を与える第2のイベントに分けられる。
【0041】
第1のイベントは、例えば、培養容器21の振動の検出、培養容器21の傾きの検出、培養容器21内の溶液の劣化の検出、培養容器21の保管庫20への作業者の出し入れの検出、又は培養容器21への作業者の接近の検出等である。
【0042】
第2のイベントは、例えば、培養空間20内の規定値外の温度の検出、培養空間20内の規定値外の湿度の検出、培養空間20内の規定値外のガス濃度の検出、培養空間20を構成する構造物のドア開閉の検出、又は培養空間20内の照明の点灯消灯の検出等である。
【0043】
図2に、環境センサ30の概略構成図を示す。
図2に示すように、環境センサ30は、計測部31、無線通信部32、イベント検出部33、及び変更部34を備える。
【0044】
計測部31は、培養に関連する環境に関する環境データを収集し、コンピュータで取り扱うことのできる信号に置き換える素子又は装置で構成されたセンサであり、設定された計測間隔で環境データを取得する。計測部31は、例えば、加速度センサ、振動センサ、地磁気センサ、カラーセンサ、温度センサ、照度センサ、紫外線センサ、ガス濃度センサ、気圧センサ、及び湿度センサ等の少なくとも1つで構成される。
【0045】
無線通信部32は、例えば、RFID(radio frequency identifier)等の無線通信を用いて、中継機22とデータをやりとりする。
【0046】
イベント検出部33は、計測部31の計測値に応じて、計測間隔の変更が必要なイベントの検出を行う。計測部31で計測された計測値が急激に変化したことが検出された場合、計測間隔の変更が必要なイベントが発生したと判断する。例えば、加速度センサが閾値以上の加速度を検出した場合は振動のイベントが発生したと判断する。
【0047】
変更部34は、イベント検出部33が検出したイベントに応じて、環境センサ30の計測間隔を、イベントを検出する前の間隔より短い間隔に変更する。あるいは、無線通信部32で中継機22から送信された計測間隔の変更通知を受信した場合に、計測間隔を変更する。例えば、通常、加速度センサの計測間隔は例えば600秒であるが、振動のイベントを検出すると、計測間隔をさらに短い間隔である例えば0.1秒に変更する。さらに、変更部34は、イベントが発生後に計測間隔の変更が行われてから、予め定められた時間内に同じイベントが検出されなかった場合には、短くした計測間隔を長い計測間隔に変更する。例えば、振動のイベントを検出してから、3秒間振動が発生しなかった場合には、加速度センサの計測間隔を元の計測間隔である例えば600秒に戻す。なお、イベントの発生に応じて短い間隔に変更した計測間隔を、イベント発生前の元の計測間隔などの長い計測間隔に変更する場合、直接長い計測間隔に変更しても良く、徐々に長い計測間隔に変更しても良い。
【0048】
また、計測間隔は、発生したイベントに応じて異なる間隔に変更することが好ましい。培養環境に対する影響が大きい場合、例えば振動が発生した場合には、計測間隔を例えば0.1秒に変更するが、培養環境に対する影響が振動に比べてそれほど大きくない場合、例えば急な温度変化が発生した場合には、計測間隔を例えば1秒に変更する。さらに、イベントが発生後に計測間隔の変更が行われてから所定の経過時間を過ぎると、短くした計測間隔を元の計測間隔に戻すが、経過時間も発生したイベントに応じて異なる経過時間を設定するのが好ましい。
【0049】
また、異なるイベントが短い間隔で連続して、すなわち立て続けに発生することにより、計測間隔の変更が重複する場合があり得る。異なるイベントの各々に対して設定されている計測間隔が異なる場合は、短い計測間隔を優先して計測間隔の変更を行うものとする。例えば、1秒間隔で温度計測を行っている最中に、10秒間隔への変更のイベントが発生したとしても、1秒間隔の計測を継続する。1秒間隔の計測に対して設けられた経過時間が経過してタイムアウトしても、10秒間隔の計測に対して設けられた経過時間が経過していなければ、10秒間隔への変更を行うようにするのが好ましい。
【0050】
環境センサ30は、培養容器21に直接取り付けて培養容器21の各々の培養環境の変化を計測するようにしてもよい。又は、環境センサ30は、培養容器21の上面から培養容器内の培養液の状態を計測することができるように培養容器21の上部の位置に取り付けて培養液の変化を計測するようにしてもよい。あるいは、培養容器21内の溶液のサンプリングするためのキュベットを培養容器21に設け、キュベット内の溶液の状態を計測できるように環境センサ30のキュベットに取り付けてもよい。
【0051】
また、各培養容器21には、必要に応じて1種類又は複数種類の環境センサ30が、計測対象に応じて設けられる。また、環境センサ30にはそれぞれ識別情報IDが予め割り当てられる。
【0052】
なお、第1のイベントを検出した場合には、同じ保管庫20に置かれる複数の培養容器21のうちの1つの培養容器21に対して計測間隔を変更し、第2のイベントを検出した場合には、同じ保管庫20に置かれる全ての培養容器21に対して計測間隔を変更する。
【0053】
第1のイベントは、培養容器21のそれぞれに対して設けられた環境センサ30から得られる。第1のイベントを検出するための環境センサ30は、例えば、培養容器21の振動を検出するセンサ、培養容器21の姿勢変化を検出するセンサ、又は培養容器21内の溶媒の劣化を検出するセンサを用いる。具体的には、培養容器21の振動を検出するセンサは、例えば、加速度センサであり、培養容器21の姿勢変化を検出するセンサは、例えば、地磁気センサ、又は加速度センサである。また、培養容器21内の溶媒液の劣化を検出するセンサは、例えば、培養液の色を検出するカラーセンサ、又は照度センサ等である。
【0054】
あるいは、環境センサ30で第2のイベントが得られるように、環境センサ30を保管庫20の所定の場所に設置して、保管庫20内の環境を計測するようにしてもよい。保管庫20内の環境を計測するセンサとして、例えば、温度センサ、湿度センサ、加速度(振動)センサ、地磁気センサ、紫外線(UV)センサ、気圧センサ、ガス濃度センサ(具体的には、揮発性有機化合物(VOC)センサ、二酸化炭素(CO2)センサ等)、カラーセンサ、又は照度センサ等が挙げられる。
【0055】
中継機22は、CPU、及びメモリが設けられた無線信号読取書込端末である。例えば、環境センサ30の無線通信部32がRFIDである場合には、RFIDリーダライタである。
【0056】
図3に中継機の概略構成図を示す。
図3に示すように、中継機22は、無線通信部24、イベント検出部25、送信部26、及び変更部27を備える。
【0057】
無線通信部24は、環境センサ30と無線でデータの送受信を行う。各環境センサ30から中継機22へ環境データを送信する際、環境センサ30の無線通信部32は、複数の保管庫20の各々に設けられた全ての中継機22の無線通信部24との通信を試みる。無線通信部24は、環境データを受信したときの通信強度を表す値、例えば、RSSI(Received Signal Strength Indication)を計測して、環境データと対応付けて中継機22のメモリに一旦記憶する。
【0058】
イベント検出部25は、1種類又は複数種類のイベント検出器23と有線又は無線で接続され、イベント検出器23のイベントを検出すると、変更部27にイベントの検出を通知する。イベント検出器23は、例えば、保管庫20のドアの開閉を検出するドア開閉検出器、保管庫20内に設けられ保管庫20内の温度を検出する温度検出器、保管庫20内に設けられた保管庫20内の湿度を検出する湿度検出器、保管庫20内に設けられた保管庫20内のガス濃度を検出するガス濃度検出器、保管庫20に設けられた保管庫の照明の点灯消灯のためのスイッチ等である。
【0059】
イベント検出部25は、各イベント検出器23から異常値を受信した場合に、イベントを検出したと判断する。あるいは、異常を示す信号(例えば、CO2等のガス濃度検出の異常信号)を受信した場合に、第2のイベントを検出したと判断するようにしてもよい。このような温度、湿度、又はガス濃度の異常は、保管庫20内の全体に影響があり第2のイベントに該当する。異常値は、正常である場合に表れる計測値の範囲を規定値の範囲とし、規定値の範囲から外れた範囲の計測値を異常値とする。
【0060】
あるいは、イベント検出部25は、無線通信部24で保管庫20の所定の場所に置かれた培養容器21に設けられた環境センサ30から受け取った温度、湿度、照度、紫外線、ガス濃度、又は気圧の値が異常値であった場合に、第2のイベントを検出したと判断して、変更部27にイベントの検出を通知するようにしてもよい。
【0061】
変更部27は、イベント検出部25で第2のイベントが検出された場合には、保管庫20内の全ての環境センサ30へ、無線通信部24から計測間隔の変更通知を送信する。全ての環境センサ30には、培養容器21に対して設けられた環境センサ30と、保管庫20内の所定の場所に置かれた環境センサ30が含まれる。
【0062】
また、環境センサ30は、無線通信部32で変更通知を受信すると、イベント検出部25で検出されたイベントの種類に応じた間隔で、計測間隔が第2のイベントを検出する前の間隔より短い間隔に変更される。
【0063】
例えば、イベントの検出前は温度の計測間隔を例えば600秒毎に設定しておき、ドア開閉検出器がドアの開閉を検出すると、無線通信部24は温度の計測間隔を短い計測間隔である例えば30秒毎に変更するように変更通知を保管庫20内の環境センサ30の各々に送信する。各環境センサ30の無線通信部32が変更通知を受信すると、温度を計測する環境センサ30の計測間隔が変更される。複数種類の環境センサ30が培養容器21に設けられている場合には、検出したイベントに応じて、計測間隔を変更する必要がある種類の環境センサ30のみの計測間隔を変更する。例えば、温度センサと振動センサとの2種類が培養容器21に設けられている場合には、ドア開閉検出器がドアが開けられたことを検出した場合は、温度センサの計測間隔だけを変更する。種類に応じた計測間隔は、中継機22が送信する変更通知に含めてもよいし、環境センサ30が種類と計測間隔のテーブルを記憶するようにしてもよい。
【0064】
さらに、変更部27は、計測間隔の変更が行われた時から予め定められた時間内に同じイベントが検出されなかった場合には、計測間隔を変更後の短くした計測間隔を長くする。例えば、ドアが開けられたことを検出してから600秒間ドアが再度開けられなかった場合には、温度センサの計測間隔を例えば600秒に戻す。多くの場合は、イベントの発生から一定の時間経過後に変更前の計測間隔に戻すが、何回かに分けて、短くした計測間隔を徐々に長くして行くようにしてもよい。あるいは、長時間同じイベントが発生しない場合には、時間の経過につれて初めに設定されていた計測間隔より計測間隔を長くしてもよい。
【0065】
図4に、イベントの種類と計測間隔の一例を示す。また、これらのイベントは、割り込み信号で中継機22に通知されてもよい。
【0066】
上記の環境センサ30の計測値が変化する要因になるイベントと、そのイベントを検出方法、計測間隔を変更する変更部が置かれる場所、及び環境センサの計測間隔を変更する方法の具体例を、下記の表1に示す。また、表1では、保管庫20は、二酸化炭素インキュベータ、冷蔵庫、冷凍庫、クリーンルーム倉庫、又は恒湿恒温槽を指し、作業室とは分けて記載する。作業室は、例えば、安全キャビネット、顕微鏡、ウォーターバス、又は遠心分離器である。
【0067】
【0068】
また、上記の表1以外に以下のようなイベントの検出するのが好ましい。
(1)保管庫20から培養容器21の出し入れを検出して、保管庫20に培養容器21が「入れた」、又は保管庫20から「出した」タイミングをイベントとする。例えば、環境センサ30と中継機22との通信強度から培養容器21の出し入れを検出する。
(2)培養容器21に液を「入れた」又は「出した」をイベントとする。例えば、液を出し入れするためのピペット又はアスピレータの位置をセンサで検出し、それらのボタン押下と近傍の培養容器の振動を合わせてイベントを検出する。
(3)培養容器21のキャップの開閉をイベントとする。例えば、キャップに開閉を検出するセンサを取り付ける。
(4)1個の培養容器21を保管庫20に「入れた」又は保管庫20から「出した」タイミングで、その近傍にある容器の計測間隔を変更する。センサは(1)と同様である。
(5)作業者が押しボタンを押したタイミングをイベントとする。押しボタンの位置とその近傍にある培養容器21を中継機22で検出する。押しボタンの押下が各培養容器21の培養環境を変えるトリガーとなるものである。複数種類の押しボタンがあり、それぞれに違う計測間隔を割り当ててもよい。
(6)培養容器21から少量のサンプルを取ったタイミングをイベントとする。例えば、サンプルを採取するためのピペットのボタン押下を検出するセンサを取り付ける。
(7)培養容器21にエタノールを吹きかけるタイミングをイベントとする。例えば、エタノール噴霧容器のレバー押下を検出するセンサを取り付ける。
(8)保管庫20内のスターラー(攪拌装置)に、培養容器21を「置いた」又は培養容器21を「取った」をイベントとする。例えば、スターラーの位置と環境センサ30の位置から検出する。環境センサ30の位置は環境センサ30と中継機22との通信強度から検出する。
(9)気圧が一定時間内に大きく変化した場合をイベントとする。例えば、気圧センサから検出する。
(10)地震発生をイベントとする。例えば、全国瞬時警報システム(Jアラート)からの情報から検出する。
【0069】
また、イベントに応じて計測間隔の変更する場合、下記の3つのモードがあり、予め作業者が選べるようにしてもよい。
(a) イベントを検出したタイミングですぐに変更する。
(b) イベントを検出したタイミングの少し後に変更する。
(c) イベントを検出したタイミングの少し前に変更する。
なお、(c)の場合は、環境センサ30が予め最短計測間隔での計測データをバッファリングすることで、中継機22から要求があった場合に、バッファに記憶している範囲内で必要となる過去データを送信することで実現することができる。環境センサ30の電池の消費は、データの送受信時に大きな消費となるので、不要なデータは送信しないため電池の消費を節約することが可能になる。
【0070】
送信部26は、データ収集サーバ10とネットワークを介して接続され、環境センサ30の環境データ、及びイベント検出部25で検出したイベントに関するイベント情報をデータ収集サーバ10に送信する。なお、送信部26は識別情報送信部としても機能し、環境データを送信する際は、メモリに記憶されている環境データを受信したときの通信強度と、環境データの送信元の環境センサ30の各々を識別する識別情報IDを一緒にデータ収集サーバ10に送信する。また、イベント情報には、イベントの種類、イベントの発生時刻、及びイベントが発生した保管庫20を特定するための情報が含まれる。保管庫20を特定するための情報は、例えば、中継機22に割り当てられているMAC(Media Access Control address)アドレス、又はIPアドレスを用いることができる。
【0071】
上述の通り、環境センサ30のイベント検出部33で検出されたイベントの種類が第1のイベントに該当する場合は、変更部34は環境センサ30自身の計測部31の計測間隔を変更する。一方、中継機22のイベント検出部25で検出したイベント、又は、環境センサ30のイベント検出部33で検出されたイベントの種類が第2のイベントに該当する場合は、変更部34は保管庫20内にある全ての環境センサ30の計測間隔を変更する。
【0072】
データ収集サーバ10の記録部11は、受信した環境センサ30の識別情報ID、環境データ、及び通信強度を対応付けてストレージに記録する。さらに、環境データの送信元の中継機22を特定する情報を対応付けて記録する。送信元の中継機22を特定する情報は、例えば、MACアドレス、又はIPアドレスを用いることができる。また、中継機22と環境センサ30間の通信強度は中継機22と環境センサ30間の距離が近いほど大きくなるので、1つの環境センサ30と各中継機22の通信強度が最大の中継機22を見つけることで、その環境センサ30が設けられた培養容器21が置かれている保管庫20を特定することができる。なお、環境センサ30に識別情報IDが割り当てられていない場合であっても、環境センサ30と各中継機22の間の通信強度から培養容器21の位置を特定して、この位置情報を識別情報としてもよい。
【0073】
あるいは、各培養容器21の設置位置とその培養容器21に設けられている環境センサ30とが予め対応付けられている場合には、環境センサ30に予め識別情報IDを割り当てておき、環境データと識別情報IDを一緒に送信するようにしておくことで、環境データが計測された位置を特定することができるようにしてもよい。
【0074】
また、記録部11は、保管庫20のイベント検出器23で検出したイベントのイベント情報もストレージに記録する。イベントの発生後に計測された環境データは、そのイベントの種類及び発生時刻との対応がわかる形式で記録する。これにより、環境データに特徴的な挙動があった場合、それが何時、何処で、どのイベントによりもたらされたのかが、容易にわかるようになる。
【0075】
次に、
図5~7のフローチャートに従って監視システムの処理の流れについて説明する。
図5は環境センサの処理の流れを示し、
図6は中継機の処理の流れを示し、
図7はデータ収集サーバの処理の流れを示す。
図5に従って、環境センサが加速度センサである場合に、環境センサで計測間隔を変更する例について説明する。
【0076】
最初に、
図5に示すように、環境センサ30の変更部34は、計測部31の計測間隔を初期値の例えば600秒に設定する(ステップS1)。計測部31は、設定された計測間隔で加速度センサの計測値を計測して環境データを取得する(ステップS2)。環境データを取得すると、無線通信部32は、複数の保管庫20の各々に設けられた中継機22と通信を試みて、通信可能な全ての中継機に取得した環境データを送信する。また、各環境センサ30の識別情報IDを環境データと一緒に中継機22に送信する(ステップS3)。さらに、環境データのイベントの種類及び発生時刻を含んだ形式で、環境データを送信するのが好ましい。
【0077】
次に、イベント検出部33は、第1のイベントである振動を検出したか否かを判断する(ステップS4)。イベント検出部33は、加速度センサの計測値が基準値以下の場合は振動(第1のイベント)は発生していないと判断し、イベントが発生するまで(ステップS4の判断が否定される)、ステップS2に戻って加速度センサの計測と、ステップS3の識別情報IDと環境データの中継機22への送信を繰り返す。
【0078】
イベント検出部33は加速度センサの計測値が基準値以上となると、振動が発生したと判断し(ステップS4の判断が肯定される)、変更部34は計測間隔をイベント発生前の計測間隔より短い計測間隔である例えば0.1秒に変更する(ステップS5)。計測部31は、変更された計測間隔で加速度の計測を開始する(ステップS6)。続いて、無線通信部32は、複数の保管庫20のうち通信可能な全ての中継機22に計測した加速度を環境データとして送信する(ステップS7)。次に、環境センサ30は、イベントの検出、つまり振動の検出から予め定められた経過時間、例えば3秒が過ぎたか否かを判断する(ステップS8)。経過時間を経過していないと判断された場合は(ステップS8の判断は否定される)、変更された計測間隔の0.1秒毎にステップS6の加速度の計測とステップS7の加速度の中継機22への送信を繰り返す。予め設定された経過時間が過ぎたと判断された場合は(ステップS8の判断が肯定される)、ステップS1に戻り、計測間隔を初期値の600秒に戻す。
【0079】
次に、
図5と
図6に従って、イベント検出器23がドア開閉検出器であり、環境センサ30が温度センサである場合に、ドアの開閉を検出すると中継機からの通知に従って環境センサの計測間隔を変更する例について説明する。
【0080】
まず、環境センサ30は
図5のステップS1で温度の計測間隔が例えば600秒に初期設定される。また、上述の通り、計測間隔に従って計測された環境データが環境センサ30から中継機22に送信される(ステップS2~ステップS4)。
【0081】
一方、
図6に示すように、中継機22の無線通信部24は、中継機22が設けられている保管庫20内にある環境センサ30だけでなく、通信可能な範囲にある他の保管庫20内にある環境センサ30とも通信を行い、通信可能な範囲内にある環境センサ30から送信された識別情報IDと環境データを全て受信する(ステップS11)。また、無線通信部24は環境データを受信した時の通信強度を取得し(ステップS12)、送信部26で環境データとその通信強度を識別情報IDと一緒にデータ収集サーバ10に送信する(ステップS13)。イベント検出器23で第2のイベントが検出されるまで(ステップ14の判断が否定され、ステップS19の判断も否定される)、ステップS11からステップS13の処理を繰り返し、識別情報ID、環境データ、及びその通信強度をデータ収集サーバ10に送信する。
【0082】
イベント検出器(ドア開閉検出器)23がドアの開閉を検出すると、イベント検出部25は第2のイベントが発生したと判断して(ステップ14の判断が肯定される)、変更部27に第2のイベントの発生を通知する。また、送信部26は検出したイベントのイベント情報をデータ収集サーバ10に送信する(ステップS15)。
【0083】
変更部27は、今回のイベント検出より前に同じ種類のイベント(つまり、ドアの開閉)が検出されていない場合は計測間隔が初期値の例えば600秒に設定されているので(ステップS16の判断が否定される)、無線通信部24からイベントを検出した中継機22が設けられている保管庫20内にある全ての環境センサ30に温度の計測間隔を30秒に変更するように変更通知を送信する(ステップS17)。
【0084】
図5に示すように、環境センサ30は、中継機22からの通知を無線通信部32で受信すると(ステップS9)、変更部34は通知が計測間隔の変更通知であるか否かを判断する(ステップS10)。通知が変更通知の場合はステップS10の判断が肯定され、環境センサ30の計測間隔を30秒に変更する(ステップS5)。
【0085】
図6に戻り、中継機22の変更部27は、変更通知の送信後、イベント発生後から設定された経過時間、例えば600秒を経過したか否かを判断する(ステップS18)。イベント発生から600秒を経過していない場合はステップ18の判断は否定され、ステップS11に戻って、環境センサ30から受信した識別情報ID、環境データ、及び通信強度をデータ収集サーバ10に送信する(ステップS11からステップS13)。また、温度の計測間隔が30秒に変更されている間は(ステップS14の判断が否定され、ステップS19の判断が肯定される)、経過時間をカウントしてイベント発生から600秒経過するまで(ステップS18の判断が否定される)、環境センサ30から30秒間隔で計測された環境データが、識別情報ID、及び通信強度と一緒にデータ収集サーバ10に送信する処理を繰り返す(ステップS11からステップS13)。
【0086】
しかし、設定された経過時間が過ぎる前に、再度、イベント検出器23がイベントを検出した場合は(ステップ14の判断が肯定される)、変更部27は検出したイベントが前回のイベントと同じ種類のイベント、つまりドアの開閉の検出であるか否かを判断する(ステップS16)。ドアの開閉のイベントである場合は(ステップS16の判断が肯定される)、経過時間をリセットして(ステップS21)、この時点から再度経過時間のカウントを開始する。
【0087】
経過時間のカウント開始から例えば600秒経過すると(ステップS18が肯定され)、無線通信部24からイベントを検出した中継機22が設けられている保管庫20内にある全ての環境センサ30に温度の計測間隔をリセットするリセット通知を送信する(ステップS20)。
【0088】
図5に戻り、環境センサ30は、中継機22からの通知を無線通信部32で受信すると(ステップS9)、変更部34は受信した通知が計測間隔の変更通知であるかリセット通知であるかを判断する(ステップS10)。通知がリセット通知の場合は、ステップS10の判断が否定され、環境センサ30の計測間隔を初期値に変更する(ステップS1)。これで、再び環境センサ30の温度の計測間隔が600秒に戻る。
【0089】
次に、
図7に従って、データ収集サーバの処理について説明する。
【0090】
データ収集サーバ10は、全ての中継機22から送信された環境データ、環境データの送信元の環境センサ30の識別情報ID、及び環境センサ30と各中継機22との通信強度を受信すると(ステップS31)、記録部11は、環境データ、識別情報ID、及び通信強度を対応付けて記録する(ステップS32)。さらに、中継機22から送信されたイベント情報を記録する(ステップS33)。ステップS31からステップS33の処理を繰り返して、全ての中継機22から送信され環境データとイベント情報を記録することで、イベント発生に伴って計測された環境データに特徴的な挙動があった場合、それが何時、何処で、どのイベントによりもたらされたのかが、容易にわかるようになり、様々な解析に用いることが可能になる。また、イベント情報は、イベントの種類及び発生時刻も一緒に記録するのが望ましい。
【0091】
以上詳細に説明したように、培養環境に影響を与える特定のイベントを検出すると、環境センサの計測間隔を短くすることで、そのイベントによる影響を観察することが可能になる。また、一定の時間が経過した後に、計測間隔を元に戻すことで、環境センサの電池を必要以上に消費することがないため、長期間に及ぶ培養環境を観察することが可能になる。
【0092】
上述では、保管庫20に設けられる中継機22から、保管庫20にある全ての環境センサ30の計測間隔を変更する場合について説明したが、この機能を、データ収集サーバ10に設けるようにしてもよい。データ収集サーバ10が各保管庫20に対して、中継機22に計測間隔を変更するように指示すると、さらに、中継機22から保管庫20内の全ての環境センサ30の計測間隔を変更するように、指示をするようにしてもよい。
【0093】
また、培養容器21の各々に対して環境センサとして2種類以上のセンサが設けられ、イベントの種類に応じて、それぞれ異なる計測間隔と経過時間を設定するようにするのが望ましい。
【0094】
また、中継機22から環境センサ30にデータを送信するために、本実施の形態では、環境センサ30に割り当てられた識別情報IDを用いる場合について説明したが、環境データに対応付けられている通信強度から距離を求めて、該当する環境センサ30を特定するようにしてもよい。
【0095】
(第2の実施の形態)
次に、本開示の第2の実施の形態における監視システムについて説明する。本実施の形態では、データ収集サーバが、全ての計測間隔の変更を管理する場合について説明する。本実施の形態の監視システム1の構成は第1の実施の形態と同じ構成であるので省略する。また、環境センサ及び中継機については、第1の実施の形態と相違する構成のみ詳細な説明を行い、第1の実施の形態と略同じ機能を備える構成には、同一符号を付して詳細な説明を省略する。
【0096】
第2の実施の形態では、環境センサとして温度センサと加速度センサの2種類が設けられ、第1のイベントが振動であり、第2のイベントがドアの開閉である場合について説明する。また、保管庫に設けられるイベント検出器はドア開閉検出器である。
【0097】
なお、本開示の監視装置は、環境センサ30a、イベント検出器23、及び中継機22aで構成される。
【0098】
図8に第2の実施の形態の環境センサ30aの概略構成図を示す。
図8に示すように、環境センサ30aは、計測部31、無線通信部32、及び変更部34aを備える。
【0099】
変更部34aは、データ収集サーバ10から送信された変更通知に従って、計測間隔を変更する。
【0100】
図9に第2の実施の形態の中継機22aの概略構成図を示す。
図9に示すように、本実施の形態の中継機22aは、無線通信部24、イベント検出部25a、送信部26、及び変更部27aを備える。
【0101】
イベント検出部25aは、イベント検出器23と接続され、イベント検出器23のイベントを検出すると、送信部26にイベントの検出を通知する。
【0102】
変更部27aは、データ収集サーバ10から送信された計測間隔の変更通知を、指定された識別情報IDの環境センサ30aに送信する機能を備える。環境センサ30aの計測間隔の変更通知については後述する。
【0103】
データ収集サーバ10には、記録プログラム、イベント検出プログラム、及びデータ計測間隔を変更する変更処理プログラムがインストールされ、CPUによってメモリに記録されたプログラムの命令が実行されることにより本開示のデータ収集サーバの各部として機能する。各プログラムは、ネットワークストレージ又はネットワークに接続されたサーバコンピュータの記憶装置に、外部からアクセス可能な状態で記憶され、外部からの要求に応じてコンピュータにダウンロードされた後にインストールされる。あるいは、各プログラムは、DVD(Digital Versatile Disc)及びCD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)などの記録媒体に記録されて配布され、その記録媒体からコンピュータにインストールされてもよい。
【0104】
図10に、第2の実施の形態のデータ収集サーバ10aの概略構成図を示す。
図10に示すように、上記の各プログラムを実行することにより、データ収集サーバ10は、記録部11、イベント検出部12、及び変更部13として機能する。記録部11は、第1の実施の形態と同様であるので詳細な説明は省略する。
【0105】
イベント検出部12は、中継機22aから送信されてきた環境データの中から異常値を検出するとイベントの発生であると判断して、変更部13に通知する。また、異常値を計測した環境センサ30aと各中継機22aの通信強度最大値を見つけることで、その環境センサ30aが設けられた培養容器21が置かれている保管庫20を特定する。あるいは、保管庫20のイベント検出部25aで検出したイベントのイベント情報を受信するとイベントの発生と判断して、変更部13に通知する。
【0106】
変更部13は、イベント検出部12で検出したイベントは、培養容器21に対して計測間隔の変更が必要な第1のイベントであるか、同じ保管庫20に置かれる培養空間の全ての培養容器に対する計測間隔の変更が必要な第2のイベントであるかを判断する。
【0107】
第1のイベントである場合には、変更部13はイベントが検出された異常値を示す環境データの送信元である環境センサ30aに計測間隔を変更させるための変更通知を、中継機22aの変更部27aを介して送信する。変更通知は、異常値を計測した環境センサ30aが置かれている保管庫20に設けられた中継機22aに送信する。そこで、イベントが検出された環境データに対応付けられている通信強度が最大の中継機22aを特定して変更通知を送信する。また、中継機22aから更に変更通知を転送する環境センサ30aは、イベントが検出された環境データに対応付けられている識別情報IDに基づいて特定することができる。そこで、変更通知には、環境センサ30aの識別情報IDを含める。
【0108】
一方、第2のイベントである場合には、変更部13は、異常値を計測した環境センサ30aが置かれている中継機22a、又は、イベント情報の送信元の中継機22aに計測間隔の変更通知を送信する。
【0109】
中継機22aの変更部27aは、データ収集サーバ10aから第1のイベントに対して計測間隔の変更するための変更通知を受け取った場合には、識別情報IDに基づいて、計測間隔の変更が必要な環境センサ30aに変更通知を送信する。また、第2のイベントに対して計測間隔の変更するための変更通知を受け取った場合には、中継機22aが置かれた保管庫20内の全ての環境センサ30aに変更通知を送信する。
【0110】
次に、
図11~
図13のフローチャートに従って第2の実施の形態の監視システムの処理の流れについて説明する。
図11は環境センサの処理の流れを示し、
図12Aと
図12Bは中継機の処理の流れを示し(
図12Aは環境データ等を送信するときの処理の流れ、
図12Bは通知を受信したときの処理の流れ)、
図13はデータ収集サーバの処理の流れを示す。
図11~13に従って、環境センサの計測間隔を変更する処理の流れについて説明する。
【0111】
最初に、
図11に示すように、環境センサ30aの計測間隔を初期値、例えば600秒に設定する(ステップS41)。計測部31は、設定された計測間隔で計測して環境データを取得する(ステップS42)。環境センサ30aの無線通信部32は、複数の保管庫20の各々に設けられた中継機22aと通信を試み、通信可能な全ての中継機22aに計測した環境データを送信する。また、各環境センサ30aの識別情報IDを環境データと一緒に送信する(ステップS43)。計測間隔が変更されるまで、600秒間隔で環境データの計測を繰り返して、識別情報ID、環境データ、及び通信強度を中継機22aに送信する(ステップS42からステップS43)。
【0112】
図12Aに示すように、中継機22aでは、無線通信部24で中継機22aが設けられている保管庫20内にある環境センサ30aだけでなく、通信可能な範囲にある他の保管庫20内にある環境センサ30aとも通信を行い、通信可能な範囲内にある環境センサ30aから送信された識別情報ID、及び環境データを全て受信する(ステップS51)。また、無線通信部24は環境データを受信した時の通信強度を取得し(ステップS52)、送信部26で環境データとその通信強度を識別情報IDと一緒にデータ収集サーバ10に送信する(ステップS53)。保管庫20のイベント検出器23で第2のイベントが検出されるまで(ステップS54の判断が否定される)、ステップS11からステップS13の処理を繰り返し、識別情報ID,環境データ、及びその通信強度をデータ収集サーバ10に送信する。
【0113】
保管庫20の検出器(ドア開閉検出器)23でドアの開閉を検出すると、イベント検出部25aは第2のイベントが発生したと判断して(ステップS54の判断が肯定される)、変更部27aに第2のイベントの発生を通知する。また、送信部26は検出したイベントのイベント情報をデータ収集サーバ10に送信する(ステップS55)。
【0114】
図13に示すように、データ収集サーバ10aは、全ての中継機22aから送信された環境データ、環境データの送信元の環境センサ30aの識別情報ID、及び環境センサ30aと各中継機22aとの通信強度を受信すると(ステップS61)、記録部11は、環境データ、識別情報ID、及び通信強度を対応付けてストレージに記録する(ステップS62)。第1のイベント又は第2のイベントを中継機22aから受信するまで(ステップS63の判断が否定され、ステップS64の判断が否定され、ステップS65の判断が否定され、ステップS68が否定される)、ステップS61からステップS62の処理を繰り返して、全ての中継機22から送信された環境データ、識別情報ID、及び通信強度を記録する。
【0115】
イベント検出部12は、第1のイベントを環境センサ30aの加速度センサで計測された加速度の計測値に基づいて判断する。中継機22aから送信された環境データの加速度の計測値が基準値以上となると、振動のイベントが発生したと判断し(ステップS63の判断が肯定される)、変更部13にイベントの発生を通知する。
【0116】
変更部13は、同じ環境センサ30aから今回のイベント検出より前に同じ種類のイベント(振動)が検出されていない場合は計測間隔が初期値の600秒に設定されているので(ステップS66の判断が否定される)、無線通信部24は、変更通知に振動を検出した環境センサ30aの識別情報IDを含めて中継機22aに送信する(ステップS67)。また、振動を検出した環境センサ30aとの通信強度から環境センサ30aが置かれている中継機22aを特定して、特定した中継機22aに変更通知を送信する。
【0117】
図12Bに示すように、データ収集サーバ10aから送信された変更通知を中継機22aの無線通信部24が受信すると(ステップS56)、変更通知が第1のイベントの通知であるか第2のイベントの通知であるかを判断する(ステップS57)。変更通知は第1のイベントに対して行われているので(ステップS57の判断が肯定される)、変更部27aは、変更通知に含まれる識別情報IDの環境センサ30aに対して、変更通知を送信する。
【0118】
一方、
図11に示すように、環境センサ30aは、無線通信部24が通知を受信すると(ステップS46)、通知が加速度センサの計測間隔の変更通知である場合には(ステップS47の判断が肯定される)、環境センサ30aの加速度センサの計測間隔を、例えば0.1に変更する(ステップS45)。設定後は、変更された計測間隔で加速度が計測される(ステップS42)。
【0119】
図13に戻って、データ収集サーバ10aの変更部13は、第1のイベントの発生後から設定された経過時間、例えば3秒を経過するまでは(ステップS68の判断が否定される)、ステップS61に戻って、環境センサ30aから受信した識別情報ID、環境データ、及び通信強度をデータ収集サーバ10aに記録する処理を繰り返す(ステップS61からステップS62)。
【0120】
さらに、データ収集サーバ10aの変更部13は、第1のイベントの検出から所定の時間例えば3秒経過すると(ステップS68の判断が肯定される)、第1のイベントのリセット通知を、変更通知の送信先と同じ中継機22aに送信する(ステップS69)。また、リセット通知には、振動を検出した環境センサ30aの識別情報IDを含める。
【0121】
図12Bに示すように、中継機22aは、リセット通知を受信すると(ステップS56)、第1のイベントの通知である場合は(ステップS57の判断が肯定される)、前述の変更通知と同様に、変更部27aでデータ収集サーバ10から送信されたリセット通知を、リセット通知に含まれる識別情報IDの環境センサ30aに対して送信する(ステップS58)。
【0122】
図11に示すように、環境センサ30aは、無線通信部24が通知を受信すると(ステップS46)、通知がリセット通知である場合には(ステップS47の判断が否定される)、環境センサ30aの加速センサの計測間隔を初期値に変更する(ステップS41)。設定後は、元の計測間隔で加速度が計測される(ステップS42)。
【0123】
次に、第2のイベントを検出した場合について説明する。
【0124】
図13に示すように、保管庫20に設けられたイベント検出器23のイベントが発生すると、中継機22aからデータ収集サーバ10へイベント情報を送信する(ステップS70)。データ収集サーバ10がイベント情報を受信すると、記録部11はイベント情報をストレージに記録する(ステップS71)。イベント検出部12は、受信したイベント情報がドアの開閉を示している場合は、第2のイベントを検出したと判断して(ステップS63が否定され、ステップS64が肯定される)、変更部13に通知する。
【0125】
変更部13は、今回のイベント検出より前に同じ種類のイベント(ドアの開閉)が検出されていない場合は温度センサの計測間隔が初期値の例えば600秒に設定されているので(ステップS66の判断が否定される)、無線通信部24から、第2のイベントを検出した中継機22aに計測間隔を変更するために変更通知を送信する(ステップS67)。変更通知の送信先は、イベント情報に含まれる中継機22aの情報から第2のイベントが発生した中継機22aを特定して送信する。
【0126】
図12Bに示すように、データ収集サーバ10から送信された変更通知を中継機22aの無線通信部24が受信すると(ステップS56)、通知が第1のイベントであるか第2のイベントであるかを判断する(ステップS57)。通知は第2のイベントに対して行われているので(ステップS57の判断が否定される)、変更部27aは、保管庫20内の全ての環境センサ30aに対して、変更通知を送信する。
【0127】
図13に戻って、データ収集サーバ10の処理について説明する。変更部13は、第2のイベントの検出後から設定された経過時間、例えば600秒が経過したと判断すると(ステップS68の判断が肯定される)、第2のイベントのリセット通知を、変更通知の送信先と同じ中継機22aに送信する(ステップS69)。
【0128】
図12Bに示すように、中継機22aは、リセット通知を受信すると(ステップS56)、第2のイベントのリセット通知である場合は(ステップS57の判断が否定される)、前述の変更通知と同様に、変更部13でデータ収集サーバ10から送信されたリセット通知を、保管庫20内の全ての環境センサ30aに対して送信する(ステップS59)。
【0129】
第2のイベントが発生した場合も、環境センサ30aの各々が変更通知を受信したときの処理の流れは第1のイベントが発生したときと同じであるので、詳細な説明は省略する。
【0130】
また、イベントの発生に応じて計測間隔を短くするように変更した後に、設定された経過時間が過ぎると計測間隔を元の間隔に戻す。しかし、計測間隔を元に戻す前に、再度同じイベントが発生したことを検出した場合には(ステップS66が肯定される)、経過時間のカウントをリセットして(ステップS72)、最後にイベントが発生した時から、設定された経過時間が過ぎた時に(ステップS68が肯定される)、計測間隔を元の間隔に戻すようにリセット通知を保管庫20に送信する(ステップS69)。
【0131】
第2のイベントが発生した場合も、環境センサ30aの各々がリセット通知を受信したときの処理の流れは第1のイベントが発生したときと同じであるので、詳細な説明は省略する。
【0132】
あるいは、保管庫20に設けられているイベント検出器23がデータ収集サーバ10に接続されて、イベント検出器23がイベントを検出すると、データ収集サーバ10のイベント検出部12で第2のイベントを検出して、データ収集サーバ10から第2のイベントの検出をイベント検出器23が設けられている保管庫20の中継機22aに通知するようにしてもよい。第2のイベントの検出を中継機22aに通知後の処理についは、第2の実施の形態と同様である。
【0133】
以上詳細に説明したように、培養環境に影響が出る特定のイベントを検出すると、環境センサの計測間隔を短くすることで、そのイベントによる影響を観察することが可能になる。また、一定の時間が経過した後に、計測間隔を元に戻すことで、環境センサのバッテリーを必要以上に消費することがないため、長期間に及ぶ培養環境を観察することが可能になる。
【0134】
第2の実施の形態において、第1のイベントを検出した場合には、第1の実施の形態と同様に、環境センサ30a自身で、計測間隔を変更するようにしてもよい。
【0135】
なお、上記の各実施の形態において、中継機、データ収集サーバ、及び環境センサの各種の処理を実行する処理部(processing unit)のハードウェア的な構造は、次に示すような各種のプロセッサ(processor)である。各種のプロセッサには、ソフトウエア(プログラム)を実行して各種の処理部として機能する汎用的なプロセッサであるCPU(Central Processing Unit)、FPGA (Field Programmable Gate Array) などの製造後に回路構成を変更可能なプロセッサであるプログラマブルロジックデバイス(Programmable Logic Device:PLD)、又はASIC(Application Specific Integrated Circuit)などの特定の処理を実行させるために専用に設計された回路構成を有するプロセッサである専用電気回路などが含まれる。
【0136】
1つの処理部は、これら各種のプロセッサのうちの1つで構成されてもよいし、同種又は異種の2つ以上のプロセッサの組み合せ(例えば、複数のFPGA、又はCPUとFPGAの組み合わせ等)で構成されてもよい。また、複数の処理部を1つのプロセッサで構成してもよい。複数の処理部を1つのプロセッサで構成する例としては、第1に、クライアントやサーバ等のコンピュータに代表されるように、1つ以上のCPUとソフトウエアの組み合わせで1つのプロセッサを構成し、このプロセッサが複数の処理部として機能する形態がある。第2に、システムオンチップ(System On Chip:SoC)等に代表されるように、複数の処理部を含むシステム全体の機能を1つのIC(Integrated Circuit)チップで実現するプロセッサを使用する形態がある。このように、各種の処理部は、ハードウェア的な構造として、上記各種のプロセッサの1つ以上を用いて構成される。